[go: up one dir, main page]

JP2016084264A - 層状複水酸化物緻密膜の形成方法 - Google Patents

層状複水酸化物緻密膜の形成方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2016084264A
JP2016084264A JP2014219760A JP2014219760A JP2016084264A JP 2016084264 A JP2016084264 A JP 2016084264A JP 2014219760 A JP2014219760 A JP 2014219760A JP 2014219760 A JP2014219760 A JP 2014219760A JP 2016084264 A JP2016084264 A JP 2016084264A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
substrate
ldh
film
layered double
double hydroxide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2014219760A
Other languages
English (en)
Inventor
宏太 浅井
Kota Asai
宏太 浅井
恵実 藤▲崎▼
Megumi FUJISAKI
恵実 藤▲崎▼
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
NGK Insulators Ltd
Original Assignee
NGK Insulators Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by NGK Insulators Ltd filed Critical NGK Insulators Ltd
Priority to JP2014219760A priority Critical patent/JP2016084264A/ja
Publication of JP2016084264A publication Critical patent/JP2016084264A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Compounds Of Alkaline-Earth Elements, Aluminum Or Rare-Earth Metals (AREA)

Abstract

【課題】基材の表面に、高度に緻密化されたLDH緻密膜をムラなく均一に形成する方法の提供。【解決手段】基材の表面に層状複水酸化物緻密膜を形成する方法であって、層状複水酸化物緻密膜が、一般式:M2+1−xM3+x(OH)2An−x/n・mH2O(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4である)で表される層状複水酸化物からなり、(a)pH5〜8の略全域において負のゼータ電位を呈する基材を用意する工程と、(b)層状複水酸化物の構成元素を含む原料水溶液中で、基材に水熱処理を施して、層状複水酸化物緻密膜を基材の表面に形成させる工程とを含む、方法【選択図】図4

Description

本発明は、層状複水酸化物緻密膜の形成方法、より具体的には基材の表面に層状複水酸化物緻密膜を形成する方法に関する。
ハイドロタルサイトに代表される層状複水酸化物(Layered Double Hydroxide)(以下、LDHともいう)は、水酸化物の層と層の間に交換可能な陰イオンを有する物質群であり、その特徴を活かして触媒や吸着剤、耐熱性向上のための高分子中の分散剤等として利用されている。特に、近年、水酸化物イオンを伝導する材料として注目され、アルカリ形燃料電池の電解質や亜鉛空気電池の触媒層への添加についても検討されている。
従来の適用分野である触媒等を考えた場合、高比表面積が必要であることから粉末状LDHでの合成及び使用で十分であった。一方、アルカリ形燃料電池などの水酸化物イオン伝導性を活かした電解質への応用を考えた場合、燃料ガスの混合を防ぎ、十分な起電力を得るためにも高い緻密性のLDH膜が望まれる。
特許文献1及び2並びに非特許文献1には配向LDH膜が開示されており、この配向LDH膜は高分子基材の表面を尿素及び金属塩を含有する溶液中に水平に浮かせてLDHを核生成させ配向成長させることにより作製されている。これらの文献で得られた配向LDH薄膜のX線回折結果はいずれも(003)面の強いピークが観察されるものである。
中国登録特許公報CNC1333113号 国際公開第2006/050648号
本発明者らは、LDHの緻密なバルク体(以下、LDH緻密体という)の作製に先だって成功している。また、LDH緻密体について水酸化物イオン伝導度の評価を実施する中で、LDH粒子の層方向にイオンを伝導させることで高い伝導度を示すことを知見している。しかしながら、亜鉛空気電池やニッケル亜鉛電池等のアルカリ二次電池へ固体電解質セパレータとしてLDHの適用を考えた場合、LDH緻密体が高抵抗であるとの問題がある。したがって、LDHの実用化のためには薄膜化による低抵抗化が望まれる。この点、特許文献1及び2並びに非特許文献1に開示される配向LDH膜は配向性及び緻密性において十分なものとはいえない。そこで、高度に緻密化されたLDH膜、好ましくは配向LDH膜が望まれる。しかしながら、基材上にLDH緻密膜を均一に形成することは、必ずしも容易なことではない。特に、基材上にLDH緻密膜の形成を試みた場合、疎密のばらつきが起こりやすく、基材全面にLDH緻密膜を確実かつ均一に成膜する手法が望まれる。
本発明者らは、今般、基材として、pH5〜8の略全域において負のゼータ電位を呈するものを用意し、その表面に水熱処理によりLDH緻密膜を形成させることにより、基材の表面に、高度に緻密化されたLDH緻密膜をムラなく均一に形成できるとの知見を得た。
したがって、本発明の目的は、基材の表面に、高度に緻密化されたLDH緻密膜をムラなく均一に形成する方法を提供することにある。
本発明の一態様によれば、基材の表面に層状複水酸化物緻密膜を形成する方法であって、前記層状複水酸化物緻密膜が、一般式:M2+ 1−x3+ (OH)n− x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4である)で表される層状複水酸化物からなり、
(a)pH5〜8の略全域において負のゼータ電位を呈する基材を用意する工程と、
(b)前記層状複水酸化物の構成元素を含む原料水溶液中で、前記基材に水熱処理を施して、前記層状複水酸化物緻密膜を前記基材の表面に形成させる工程と、
を含む、方法が提供される。
本発明の方法により得られるLDH含有複合材料の一態様を示す模式断面図である。 LDH含有複合材料の他の一態様を示す模式断面図である。 層状複水酸化物(LDH)板状粒子を示す模式図である。 例A1〜A5において観察された膜試料の表面微構造を示すSEM画像である。 例A1及びA2に用いたポリスチレン基材の、各種pHにおけるゼータ電位を示す図である。 例A3〜A5に用いた3YSZ基材(例A3及びA4)及びチタニア基材(例A5)の、各種pHにおけるゼータ電位を示す図である。 例B1においてFT−IRのATR法により測定された、各濃硫酸浸漬時間でスルホン化処理したポリスチレン板の透過スペクトルである。 例B2において試料9の結晶相に対して得られたXRDプロファイルである。 例B3において観察された試料1〜6の表面微構造を示すSEM画像である。 例B3において観察された試料9〜16の表面微構造を示すSEM画像である。 例B3において観察された比較試料18の表面微構造を示すSEM画像である。 例B3において観察された試料9の破断断面微構造のSEM画像である。 例B3において観察された試料9の研磨断面微構造のSEM画像である。 例B3において観察された試料2の研磨断面微構造のSEM画像である。 緻密性判定試験に用いられる緻密性判別測定系の分解斜視図である。 緻密性判定試験に用いられる緻密性判別測定系の模式断面図である。
LDH緻密膜の形成方法
本発明は、基材の表面に層状複水酸化物緻密膜(LDH緻密膜)を形成する方法に関する。基材は無孔質基材であってもよいし、多孔質基材であってもよい。多孔質基材の場合における、「基材の表面」は、多孔質基材の概形を板として巨視的に見た場合の板面の最表面を主として指すが、多孔質基材中における微視的に見て板面最表面の近傍に存在する孔の表面をも付随的に包含しうるのはいうまでもない。LDH緻密膜は、一般式:M2+ 1−x3+ (OH)n− x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4である)で表される層状複水酸化物(LDH)からなる。上記一般式において、M2+は任意の2価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはMg2+、Ca2+及びZn2+が挙げられ、より好ましくはMg2+である。M3+は任意の3価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはAl3+又はCr3+が挙げられ、より好ましくはAl3+である。An−は任意の陰イオンでありうるが、好ましい例としてはOH及びCO 2−が挙げられる。したがって、上記一般式において、M2+がMg2+を含み、M3+がAl3+を含み、An−がOH及び/又はCO 2−を含むのが好ましい。nは1以上の整数であるが、好ましくは1又は2である。xは0.1〜0.4であるが、好ましくは0.2〜0.35である。mは任意の実数である。
本発明の方法によるLDH緻密膜の形成は、(a)pH5〜8の略全域において負のゼータ電位を呈する基材を用意し、(b)原料水溶液中で基材に水熱処理を施してLDH緻密膜を形成させることにより行われる。このように、基材として、pH5〜8の略全域において負のゼータ電位を呈するものを用意し、その表面に水熱処理によりLDH緻密膜を形成させることにより、基材の表面に、高度に緻密化されたLDH緻密膜をムラなく均一に形成することができる。前述のとおり、基材(特にセラミックス基材)上にLDH緻密膜の形成を試みた場合、疎密のばらつきが起こりやすく、基材全面にLDH緻密膜を確実かつ均一に成膜する手法が望まれる。この点、本発明の上記手法によれば、(水熱処理によるLDHの成膜過程で原料水溶液が経ることになる主たる液性領域である)pH5〜8の略全域において基材が負のゼータ電位を呈することで、以下のようなメカニズムによりLDHの核形成及び成長が促進されうものと考えられる。すなわち、(i)基材に付着した(LDHの中間層を構成しうる)陰イオン基によって基材の負のゼータ電位がもたらされ、それにより該陰イオン基を中間層として取り込んだ形でLDHの核を形成し、そこからLDHが成長する、(ii)負に帯電した基材表面に正電荷である金属イオン(すなわちMg2+、Al3+等のLDH構成元素の金属イオン)が静電的に吸着し、この吸着された金属イオンがLDHの核を形成し、そこからLDHが成長する、及び/又は(iii)負に帯電した基材表面に正電荷を帯びたLDHの核が吸着し、そこからLDHが成長する、といったメカニズムが想定される。いずれにしても、本発明の上記手法によれば、基材にLDHの結晶成長の起点を均一にもたらし、これらの起点からLDHの結晶成長を均一に促すことができる。その結果、基材の表面に、高度に緻密化されたLDH緻密膜をムラなく均一に形成することができる。
(a)基材の用意
この(a)工程においては、pH5〜8、好ましくはpH4〜8、さらに好ましくはpH3〜8の略全域において負のゼータ電位を呈する基材を用意する。基材は、固有の性質として負のゼータ電位を呈するものであってもよいし、そのようなゼータ電位をもともと有してないが表面処理を施して事後的に負のゼータ電位を付与した基材であってもよい。基材は、セラミックス材料、金属材料、及び高分子材料からなる群から選択される少なくとも1種で構成されるのが好ましい。セラミックス材料の好ましい例としては、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、スピネル、カルシア、コージライト、ゼオライト、ムライト、フェライト、酸化亜鉛、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、及びそれらの任意の組合せが挙げられ、より好ましくは、アルミナ、ジルコニア、チタニア、及びそれらの任意の組合せであり、特に好ましくはアルミナ、ジルコニア(例えばイットリア安定化ジルコニア(YSZ))、及びその組合せである。これらのセラミックスを用いるとLDH緻密膜の緻密性を向上しやすい。金属材料の好ましい例としては、アルミニウム及び亜鉛が挙げられる。高分子材料の好ましい例としては、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、ポリフェニレンサルファイド、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。上述した各種の好ましい材料はいずれも電池の電解液に対する耐性として耐アルカリ性を有するものである。基材を用いる場合、超音波洗浄、イオン交換水での洗浄等を基材に施すのが好ましい。
基材に事後的に負のゼータ電位を付与する場合、工程(a)は、(a1)pH5〜8(好ましくはpH4〜8、さらに好ましくはpH3〜8)の少なくとも一部のpH域において正のゼータ電位を呈する基材を用意する工程と、(a2)基材の表面に、該表面がpH5〜8(好ましくはpH4〜8、さらに好ましくはpH3〜8)の略全域において負のゼータ電位を呈するように表面処理を行う工程とを含むこととなる。工程(a2)における表面処理は、上記負のゼータ電位を付与することができる手法であればいかなる手法であってもよく特に限定されないが、(i)基材の表面をスルホン化すること、(ii)基材の表面を界面活性剤で処理すること、基材の表面をプラズマ処理すること、(iii)基材の表面を酸又はアルカリで処理することからなる群から選択される少なくとも1つにより行われるのが好ましい。
(i)基材表面のスルホン化
上記(a2)工程における基材表面のスルホン化は、基材に負のゼータ電位を付与することができるかぎり、いかなる方法によって行ってもよい。例えば、スルホン化処理は、スルホン化可能な基材又はスルホン化可能に表面処理された基材を、硫酸(例えば濃硫酸)、発煙硫酸、クロロスルホン酸、無水硫酸等のスルホン化可能な酸に浸漬すればよく、他のスルホン化技術を用いてもよい。スルホン化可能な酸への浸漬は室温又は高温(例えば50〜150℃)で行えばよく、浸漬時間は特に限定されないが、例えば1〜14日間である。スルホン化可能な基材の好ましい例としては高分子基材が挙げられる。スルホン化可能な高分子基材は、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、ポリプロピレン、エポキシ樹脂、及びポリフェニレンサルファイドからなる群から選択される少なくとも一種からなるのが好ましい。特に、芳香族系高分子基材がスルホン化しやすい点で好ましく、そのような芳香族系高分子基材は、例えば、ポリスチレン、ポリエーテルサルフォン、エポキシ樹脂、及びポリフェニレンサルファイドからなる群から選択される少なくとも一種からなり、最も好ましくはポリスチレンからなる。あるいは、スルホン化可能でない又はスルホン化に適さない基材であってもスルホン化が可能となるように表面処理すれば、上記スルホン化可能な基材と同様にしてスルホン化を行うことができる。そのような表面処理は基材へのポリマーの付着により行われるのが好ましく、そのようなポリマーとしては上述したスルホン化可能な高分子基材と同様の高分子材料を用いるのが好ましい。また、基材へのポリマーへの付着は、ポリマーを溶解させた溶液(以下、ポリマー溶液という)を基材の表面に塗布することにより行われるのが好ましい。ポリマー溶液は、例えば、ポリマー固形物(例えばポリスチレン基板)を有機溶媒(例えばキシレン溶液)に溶解することにより容易に作製することができる。基材が多孔質の場合、ポリマー溶液は多孔質基材の内部にまで浸透させないようにするのが、均一な塗布を実現しやすい点で好ましい。この点、ポリマー溶液の付着ないし塗布はスピンコートにより行うのが極めて均一に塗布できる点で好ましい。
(ii)基材表面の界面活性剤処理
上記(a2)工程における基材表面の界面活性剤処理は、基材に負のゼータ電位を付与することができるかぎり、いかなる方法によって行ってもよい。界面活性剤は基材の表面に負のゼータ電位を付与できるものであれば特に限定されないが、陰イオン界面活性剤が好ましい。このような界面活性剤は、LDHの構造の一部となりうる陰イオンを与える親水基(例えば−SOHやO−SOH)を含むものであってもよいし、LDHの構造の一部とならない陰イオンを与える親水基(例えば−COOHやO−P(OH))を含むものであってもよい。陰イオン界面活性剤の好ましい例としては、スルホン酸型陰イオン界面活性剤、硫酸エステル型陰イオン界面活性剤、リン酸エステル型陰イオン界面活性剤、カルボン酸型陰イオン界面活性剤、及びそれらの任意の組合せが挙げられる。スルホン酸型陰イオン界面活性剤の例としては、ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンスルホコハク酸アルキル2Na、ポリスチレンスルホン酸Na、ジオクチルスルホコハク酸Na、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミンが挙げられる。硫酸エステル型陰イオン界面活性剤の例としては、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルNaが挙げられる。カルボン酸型陰イオン界面活性剤の例としては、ポリカルボン酸型アニオン界面活性剤、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸Naが挙げられる。基材の界面活性剤での処理は、基材の表面に界面活性剤の陰イオン性親水基又はそれに由来する陰イオンを付着させることができる手法であれば特に限定されず、界面活性剤を含む溶液を基材に塗布する、又は界面活性剤を含む溶液に基材を浸漬することにより行うのが好ましい。この処理は界面活性剤を含む溶液に基材を浸漬することにより行うのがより好ましい。この場合、界面活性剤を含む溶液への基材の浸漬は、溶液を撹拌しながら室温又はそれよりも高温(例えば40〜80℃)で行えばよく、浸漬時間は特に限定されないが、例えば1〜7日間である。
(iii)基材表面の酸又はアルカリ処理
上記(a2)工程における基材表面の酸又はアルカリ処理は、基材に負のゼータ電位を付与することができるかぎり、いかなる方法によって行ってもよい。そのような酸の好ましい例としては、硫酸、塩酸、及び硝酸が挙げられる。そのようなアルカリの好ましい例としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム、及び炭酸ナトリウムが挙げられる。
ところで、基材は多孔質基材であってもよい。LDH膜を支持する基材が多孔質であることで、固体電解質セパレータとしてLDH膜の適用を考えた場合、電解液中の水酸化物イオンがLDH膜を通して移動させることができる。多孔質基材はその表面に所望のLDH緻密膜を形成できるものであればよく、その材質や多孔構造は特に限定されない。いずれにしても、多孔質基材は透水性を有する多孔構造を有するのが、電池用セパレータとして電池に組み込まれた場合に電解液をLDH膜に到達可能に構成できる点で好ましい。多孔質基材は、セラミックス材料で構成されるのがより好ましい。セラミックス材料製の多孔質基材は、市販品であってもよいし、公知の手法に従って作製したものであってもよく、特に限定されない。例えば、セラミックス粉末(例えばジルコニア粉末(例えばYSZ粉末)、ベーマイト粉末、チタニア粉末等)、メチルセルロース、及びイオン交換水を所望の配合比で混練し、得られた混練物を押出成形に付し、得られた成形体を70〜200℃で10〜40時間乾燥した後、900〜1300℃で1〜5時間焼成することによりセラミックス材料製の多孔質基材を作製することができる。メチルセルロースの配合割合はセラミックス粉末100重量部に対して、1〜20重量部とするのが好ましい。また、イオン交換水の配合割合はセラミックス粉末100重量部に対して、10〜100重量部とするのが好ましい。
多孔質基材は0.001〜1.5μmの平均気孔径を有するのが好ましく、より好ましくは0.001〜1.25μm、さらに好ましくは0.001〜1.0μm、特に好ましくは0.001〜0.75μm、最も好ましくは0.001〜0.5μmである。これらの範囲内とすることで多孔質基材に所望の透水性を確保しながら、透水性(望ましくは透水性及び通気性)を有しない程に緻密なLDH緻密膜を形成することができる。なお、本明細書において「透水性を有しない」とは、次段落で述べる緻密性判定試験又はそれに準ずる手法ないし構成で透水性を評価した場合に、測定対象物(すなわちLDH緻密膜及び/又は多孔質基材)の一面側に接触した水が他面側に透過しないことを意味する。本発明において、平均気孔径の測定は多孔質基材の表面の電子顕微鏡画像をもとに気孔の最長距離を測長することにより行うことができる。この測定に用いる電子顕微鏡画像の倍率は20000倍以上であり、得られた全ての気孔径をサイズ順に並べて、その平均値から上位15点及び下位15点、合わせて1視野あたり30点で2視野分の平均値を算出して、平均気孔径を得ることができる。測長には、SEMのソフトウェアの測長機能や画像解析ソフト(例えば、Photoshop、Adobe社製)等を用いることができる。
なお、膜試料が透水性を有しない程の緻密性を有することを確認するための、緻密性判定試験の手順の一例は以下のとおりである。まず、図15Aに示されるように、複合材料試料(すなわちLDH緻密膜及び/又は多孔質基材)120(1cm×1cm平方に切り出されたもの)の膜試料側に、中央に0.5cm×0.5cm平方の開口部122aを備えたシリコンゴム122を接着し、得られた積層物を2つのアクリル製容器124,126で挟んで接着する。シリコンゴム122側に配置されるアクリル製容器124は底が抜けており、それによりシリコンゴム122はその開口部122aが開放された状態でアクリル製容器124と接着される。一方、複合材料試料120の多孔質基材側に配置されるアクリル製容器126は底を有しており、その容器126内にはイオン交換水128が入っている。すなわち、組み立て後に上下逆さにすることで、複合材料試料120の多孔質基材側にイオン交換水128が接するように各構成部材が配置されてなる。これらの構成部材等を組み立て後、総重量を測定する。なお、容器126には閉栓された通気穴(図示せず)が形成されており、上下逆さにした後に開栓されることはいうまでもない。図15Bに示されるように組み立て体を上下逆さに配置して25℃で1週間保持した後、総重量を再度測定する。このとき、アクリル製容器124の内側側面に水滴が付着している場合には、その水滴を拭き取る。そして、試験前後の総重量の差を算出することにより緻密度を判定する。25℃で1週間保持した後においても、イオン交換水の重量に変化は見られなかった場合に、膜試料は透水性を有しない程に高い緻密性を有するものと判定する。
多孔質基材の表面は、10〜60%の気孔率を有するのが好ましく、より好ましくは15〜55%、さらに好ましくは20〜50%である。これらの範囲内とすることで多孔質基材に所望の透水性を確保しながら、透水性(望ましくは透水性及び通気性)を有しない程に緻密なLDH緻密膜を形成することができる。ここで、多孔質基材の表面の気孔率を採用しているのは、以下に述べる画像処理を用いた気孔率の測定がしやすいことによるものであり、多孔質基材の表面の気孔率は多孔質基材内部の気孔率を概ね表しているといえるからである。すなわち、多孔質基材の表面が緻密であれば多孔質基材の内部もまた同様に緻密であるといえる。本発明において、多孔質基材の表面の気孔率は画像処理を用いた手法により以下のようにして測定することができる。すなわち、1)多孔質基材の表面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得し、2)Photoshop(Adobe社製)等の画像解析ソフトを用いてグレースケールのSEM画像を読み込み、3)[イメージ]→[色調補正]→[2階調化]の手順で白黒の2値画像を作成し、4)黒い部分が占めるピクセル数を画像の全ピクセル数で割った値を気孔率(%)とする。なお、この画像処理による気孔率の測定は多孔質基材表面の6μm×6μmの領域について行われるのが好ましく、より客観的な指標とするためには、任意に選択された3箇所の領域について得られた気孔率の平均値を採用するのがより好ましい。
(b)水熱処理
この(b)工程においては、LDHの構成元素を含む原料水溶液中で、基材に水熱処理を施して、LDH緻密膜を基材の表面に形成させる。工程(a)を経ることでpH5〜8の略全域において基材が負のゼータ電位を呈するため、上述したメカニズムにより、基材の表面に、高度に緻密化されたLDH緻密膜をムラなく均一に形成することができる。
好ましい原料水溶液は、マグネシウムイオン(Mg2+)及びアルミニウムイオン(Al3+)を所定の合計濃度で含み、かつ、尿素を含んでなる。尿素が存在することで尿素の加水分解を利用してアンモニアが溶液中に発生することによりpH値が上昇し、共存する金属イオンが水酸化物を形成することによりLDHを得ることができる。また、加水分解に二酸化炭素の発生を伴うため、陰イオンが炭酸イオン型のLDHを得ることができる。原料水溶液に含まれるマグネシウムイオン及びアルミニウムイオンの合計濃度(Mg2++Al3+)は0.20〜0.40mol/Lが好ましく、より好ましくは0.22〜0.38mol/Lであり、さらに好ましくは0.24〜0.36mol/L、特に好ましくは0.26〜0.34mol/Lである。このような範囲内の濃度であると核生成と結晶成長をバランスよく進行させることができ、配向性のみならず緻密性にも優れたLDH緻密膜を得ることが可能となる。すなわち、マグネシウムイオン及びアルミニウムイオンの合計濃度が低いと核生成に比べて結晶成長が支配的となり、粒子数が減少して粒子サイズが増大する一方、この合計濃度が高いと結晶成長に比べて核生成が支配的となり、粒子数が増大して粒子サイズが減少するものと考えられる。
好ましくは、原料水溶液に硝酸マグネシウム及び硝酸アルミニウムが溶解されており、それにより原料水溶液がマグネシウムイオン及びアルミニウムイオンに加えて硝酸イオンを含んでなる。そして、この場合、原料水溶液における、尿素の硝酸イオン(NO )に対するモル比(尿素/NO )が、2〜6が好ましく、より好ましくは4〜5である。
基材は原料水溶液に所望の向きで(例えば水平又は垂直に)浸漬させればよい。基材を水平に保持する場合は、吊るす、浮かせる、容器の底に接するように基材を配置すればよく、例えば、容器の底から原料水溶液中に浮かせた状態で基材を固定としてもよい。基材を垂直に保持する場合は、容器の底に基材を垂直に設置できるような冶具を置けばよい。いずれにしても、基材にLDHを略垂直方向又はそれに近い方向(すなわちLDH板状粒子がそれらの板面が基材の表面(基材面)と略垂直に又は斜めに交差するような向きに)に成長させる構成ないし配置とするのが好ましい。
原料水溶液中で、基材に水熱処理を施して、LDH緻密膜を基材の表面に形成させる。この水熱処理は密閉容器(好ましくはオートクレーブ)の中、60〜150℃で行われるのが好ましく、より好ましくは65〜120℃であり、さらに好ましくは65〜100℃であり、特に好ましくは70〜90℃である。水熱処理の上限温度は基材(例えば高分子基材)が熱で変形しない程度の温度を選択すればよい。水熱処理時の昇温速度は特に限定されず、例えば10〜200℃/hであってよいが、好ましくは100〜200℃/hである、より好ましくは100〜150℃/hである。水熱処理の時間はLDH緻密膜の目的とする密度と厚さに応じて適宜決定すればよい。
水熱処理後、密閉容器から基材を取り出し、イオン交換水で洗浄するのが好ましい。
上記のようにして製造されたLDH緻密膜は、LDH板状粒子が高度に緻密化したものであり、しかも伝導に有利な略垂直方向に配向したものである。すなわち、LDH緻密膜は、典型的には、高度な緻密性に起因して透水性(望ましくは透水性及び通気性)を有しない。具体的には、LDH緻密膜は80%以上の表面膜密度を有するのが好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは93%以上である(表面膜密度の測定方法は後述するものとする)。また、LDH緻密膜を構成するLDHが複数の板状粒子の集合体で構成され、該複数の板状粒子がそれらの板面が基材の表面と略垂直に又は斜めに交差するような向きに配向してなるのが典型的である。したがって、十分なガスタイト性を有する緻密性を有するLDH緻密膜を亜鉛空気電池等の電池に用いた場合、発電性能の向上が見込めると共に、従来適用できなかった電解液を用いる亜鉛空気電池の二次電池化の大きな障壁となっている亜鉛デンドライト進展阻止及び二酸化炭素侵入防止用セパレータ等への新たな適用が期待される。また、同様に亜鉛デンドライト進展が実用化の大きな障壁となっているニッケル亜鉛電池にも適用が期待される。
ところで、上記製造方法により得られるLDH緻密膜は基材の両面に形成されうる。このため、LDH緻密膜を多孔質基材上に形成してセパレータとして好適に使用可能な形態とするためには、成膜後に多孔質基材の片面のLDH緻密膜を機械的に削るか、あるいは成膜時に片面にはLDH緻密膜が成膜できないような措置を講ずるのが望ましい。
LDH緻密膜及びLDH含有複合材料
本発明の方法を用いて、LDH緻密膜及びそれを備えたLDH含有複合材料を製造することができる。本発明の好ましい態様によるLDH含有複合材料は、多孔質基材と、この多孔質基材上及び/又は多孔質基材中に形成される機能層(典型的にはLDH緻密膜)とを備えてなる。機能層は、一般式:M2+ 1−x3+ (OH)n− x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4である)で表される層状複水酸化物(LDH)を含んでなり、透水性(望ましくは透水性及び通気性)を有しない。すなわち、多孔質材料は孔の存在により透水性を有しうるが、機能層は典型的には透水性を有しない程にまでLDHで緻密化されている。機能層は多孔質基材上に形成されるのが好ましい。例えば、図1に示されるように、LDH含有複合材料10は、多孔質基材12上に機能層14がLDH緻密膜として形成されるのが好ましい。この場合、多孔質基材12の性質上、図1に示されるように多孔質基材12の表面及びその近傍の孔内にもLDHが形成されてよいのはいうまでもない。あるいは、図2に示されるLDH複合材料10’のように、多孔質基材12中(例えば多孔質基材12の表面及びその近傍の孔内)にLDHが緻密に形成され、それにより多孔質基材12の少なくとも一部が機能層14’を構成するものであってもよい。この点、図2に示される複合材料10’は図1に示される複合材料10の機能層14における膜相当部分を除去した構成となっているが、これに限定されず、多孔性基材12の表面と平行に機能層が存在していればよい。いずれにせよ、本態様のLDH含有複合材料において、機能層は透水性を有しない程にまでLDHで緻密化されているため、水酸化物イオン伝導性を有するが透水性を有しないという特有の機能を有することができる。
このように、本態様のLDH含有複合材料においては、透水性を有しうる多孔質基材を用いるにもかかわらず、透水性(望ましくは透水性及び通気性)を有しない程に緻密な機能層が形成されたものである。その結果、本態様のLDH含有複合材料は、全体として、水酸化物イオン伝導性を有するが透水性を有しないものとなり、電池用セパレータとしての機能を呈することができる。前述したとおり、電池用固体電解質セパレータとしてLDHの適用を考えた場合、バルク形態のLDH緻密体では高抵抗であるとの問題があったが、本態様の複合材料においては、多孔質基材により強度を付与できるため、LDH含有機能層を薄くして低抵抗化を図ることができる。その上、多孔質基材は透水性を有しうるため、電池用固体電解質セパレータとして使用された際に電解液がLDH含有機能層に到達可能な構成となりうる。すなわち、本態様のLDH含有複合材料は、金属空気電池(例えば亜鉛空気電池)及びその他各種亜鉛二次電池(例えばニッケル亜鉛電池)等の各種電池用途に適用可能な固体電解質セパレータとして、極めて有用な材料となりうる。
本態様の複合材料における機能層は、一般式:M2+ 1−x3+ (OH)n− x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4である)で表される層状複水酸化物(LDH)を含んでなり、透水性を有しない。上記一般式において、M2+は任意の2価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはMg2+、Ca2+及びZn2+が挙げられ、より好ましくはMg2+である。M3+は任意の3価の陽イオンでありうるが、好ましい例としてはAl3+又はCr3+が挙げられ、より好ましくはAl3+である。An−は任意の陰イオンでありうるが、好ましい例としてはOH及びCO 2−が挙げられる。したがって、上記一般式は、少なくともM2+にMg2+を、M3+にAl3+を含み、An−にOH及び/又はCO 2−を含むのが好ましい。nは1以上の整数であるが、好ましくは1又は2である。xは0.1〜0.4であるが、好ましくは0.2〜0.35である。mは任意の実数である。
機能層は、多孔質基材上及び/又は多孔質基材中、好ましくは多孔質基材上に形成される。例えば、図1に示されるように機能層14が多孔質基材12上に形成される場合には、機能層14はLDH緻密膜の形態であり、このLDH緻密膜は典型的にはLDHからなる。また、図2に示されるように機能層14’が多孔質基材12中に形成される場合には、多孔質基材12中(典型的には多孔質基材12の表面及びその近傍の孔内)にLDHが緻密に形成されることから、機能層14’は典型的には多孔質基材12の少なくとも一部及びLDHからなる。図2に示される複合材料10’及び機能層14’は、図1に示される複合材料10から機能層14における膜相当部分を研磨、切削等の公知の手法により除去することにより得ることができる。
機能層は透水性(望ましくは透水性及び通気性)を有しない。例えば、機能層はその片面を25℃で1週間水と接触させても水を透過させない。すなわち、機能層は透水性を有しない程にまでLDHで緻密化されている。もっとも、局所的且つ/又は偶発的に透水性を有する欠陥が機能膜に存在する場合には、当該欠陥を適当な補修剤(例えばエポキシ樹脂等)で埋めて補修することで水不透性を確保してもよく、そのような補修剤は必ずしも水酸化物イオン伝導性を有する必要はない。いずれにしても、機能層(典型的にはLDH緻密膜)の表面が20%以下の気孔率を有するのが好ましく、より好ましくは15%以下、さらに好ましくは10%以下、特に好ましくは7%以下である。換言すれば、機能層(典型的にはLDH緻密膜)は80%以上の表面膜密度を有するのが好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは93%以上である。機能層の表面の気孔率が低ければ低いほど、機能層(典型的にはLDH緻密膜)の緻密性が高いことを意味し、好ましいといえる。緻密性の高い機能層は水酸化物イオン伝導体として電池用セパレータ等の機能膜の用途(例えば亜鉛空気電池用の水酸化物イオン伝導性セパレータ)等の用途に有用なものとなる。ここで、機能層の表面の気孔率を採用しているのは、以下に述べる画像処理を用いた気孔率の測定がしやすいことによるものであり、機能層の表面の気孔率は機能層内部の気孔率を概ね表しているといえるからである。すなわち、機能層の表面が緻密であれば機能層の内部もまた同様に緻密であるといえる。本態様において、機能層の表面の気孔率及び表面膜密度は画像処理を用いた手法により以下のようにして測定することができる。すなわち、1)機能層の表面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得し、2)Photoshop(Adobe社製)等の画像解析ソフトを用いてグレースケールのSEM画像を読み込み、3)[イメージ]→[色調補正]→[2階調化]の手順で白黒の2値画像を作成し、4)黒い部分が占めるピクセル数を画像の全ピクセル数で割った値を気孔率(%)とする。なお、この画像処理による気孔率の測定は機能層表面の6μm×6μmの領域について行われるのが好ましく、より客観的な指標とするためには、任意に選択された3箇所の領域について得られた気孔率の平均値を採用するのがより好ましい。また、この膜表面の気孔率を用いて、膜表面から見たときの密度D(以下、表面膜密度という)をD=100%−(膜表面の気孔率)により算出することができる。
層状複水酸化物は複数の板状粒子(すなわちLDH板状粒子)の集合体で構成され、当該複数の板状粒子がそれらの板面が多孔質基材の表面(基材面)と略垂直に又は斜めに交差するような向きに配向してなるのが好ましい。この態様は、図1に示されるように、LDH含有複合材料10が、多孔質基材12上に機能層14がLDH緻密膜として形成される場合に特に好ましく実現可能な態様であるが、図2に示されるLDH複合材料10’のように、多孔質基材12中(典型的には多孔質基材12の表面及びその近傍の孔内)にLDHが緻密に形成され、それにより多孔質基材12の少なくとも一部が機能層14’を構成する場合においても実現可能である。
すなわち、LDH結晶は図3に示されるような層状構造を持った板状粒子の形態を有することが知られているが、上記略垂直又は斜めの配向は、LDH含有機能層(例えばLDH緻密膜)にとって極めて有利な特性である。というのも、配向されたLDH含有機能層
(例えば配向LDH緻密膜)には、LDH板状粒子が配向する方向(即ちLDHの層と平行方向)の水酸化物イオン伝導度が、これと垂直方向の伝導度よりも格段に高いという伝導度異方性があるためである。実際、本発明者らは、LDHの配向バルク体において、配向方向における伝導度(S/cm)が配向方向と垂直な方向の伝導度(S/cm)と比べて1桁高いとの知見を得ている。すなわち、本態様のLDH含有機能層における上記略垂直又は斜めの配向は、LDH配向体が持ちうる伝導度異方性を層厚方向(すなわち機能層又は多孔質基材の表面に対して垂直方向)に最大限または有意に引き出すものであり、その結果、層厚方向への伝導度を最大限又は有意に高めることができる。その上、LDH含有機能層は層形態を有するため、バルク形態のLDHよりも低抵抗を実現することができる。このような配向性を備えたLDH含有機能層は、層厚方向に水酸化物イオンを伝導させやすくなる。その上、緻密化されているため、層厚方向への高い伝導度及び緻密性が望まれる電池用セパレータ等の機能膜の用途(例えば亜鉛空気電池用の水酸化物イオン伝導性セパレータ)に極めて適する。
特に好ましくは、LDH含有機能層(典型的にはLDH緻密膜)においてLDH板状粒子が略垂直方向に高度に配向してなる。この高度な配向は、機能層の表面をX線回折法により測定した場合に、(003)面のピークが実質的に検出されないか又は(012)面のピークよりも小さく検出されることで確認可能なものである(但し、(012)面に起因するピークと同位置に回折ピークが観察される多孔質基材を用いた場合には、LDH板状粒子に起因する(012)面のピークを特定できないことから、この限りでない)。この特徴的なピーク特性は、機能層を構成するLDH板状粒子が機能層に対して略垂直方向(すなわち垂直方向又はそれに類する斜め方向、好ましくは垂直方向)に配向していることを示す。すなわち、(003)面のピークは無配向のLDH粉末をX線回折した場合に観察される最も強いピークとして知られているが、配向LDH含有機能層にあっては、LDH板状粒子が機能層に対して略垂直方向に配向していることで(003)面のピークが実質的に検出されないか又は(012)面のピークよりも小さく検出される。これは、(003)面が属するc軸方向(00l)面(lは3及び6である)がLDH板状粒子の層状構造と平行な面であるため、このLDH板状粒子が機能層に対して略垂直方向に配向しているとLDH層状構造も略垂直方向を向くこととなる結果、機能層表面をX線回折法により測定した場合に(00l)面(lは3及び6である)のピークが現れないか又は現れにくくなるからである。特に(003)面のピークは、それが存在する場合、(006)面のピークよりも強く出る傾向があるから、(006)面のピークよりも略垂直方向の配向の有無を評価しやすいといえる。したがって、配向LDH含有機能層は、(003)面のピークが実質的に検出されないか又は(012)面のピークよりも小さく検出されるのが、垂直方向への高度な配向を示唆することから好ましいといえる。この点、特許文献1及び2並びに非特許文献1にも開示されるLDH配向膜は(003)面のピークが強く検出されるものであり、略垂直方向への配向性に劣るものと考えられ、その上、高い緻密性も有してないものと見受けられる。
機能層は100μm以下の厚さを有するのが好ましく、より好ましくは75μm以下、さらに好ましくは50μm以下、特に好ましくは25μm以下、最も好ましくは5μm以下である。このように薄いことで機能層の低抵抗化を実現できる。機能層が多孔質基材上にLDH緻密膜として形成されるのが好ましく、この場合、機能層の厚さはLDH緻密膜の厚さに相当する。また、機能層が多孔質基材中に形成される場合には、機能層の厚さは多孔質基材の少なくとも一部及びLDHからなる複合層の厚さに相当し、機能層が多孔質基材上及び中にまたがって形成される場合にはLDH緻密膜と上記複合層の合計厚さに相当する。いずれにしても、上記のような厚さであると、電池用途等への実用化に適した所望の低抵抗を実現することができる。LDH配向膜の厚さの下限値は用途に応じて異なるため特に限定されないが、セパレータ等の機能膜として望まれるある程度の堅さを確保するためには厚さ1μm以上であるのが好ましく、より好ましくは2μm以上である。
本発明を以下の例によってさらに具体的に説明する。
例A1〜A5
以下、基材上に層状複水酸化物配向膜の作製を試みた例を示す。なお、以下の例で基材又は膜試料の評価方法は以下のとおりとした。
評価1:ゼータ電位測定
基材のゼータ電位はゼータ電位測定システム(大塚電子社製 ELS−Z)を用いて室温にて測定した。具体的には、基材(15mm×15mm×35mm)を平板試料用セルにセットし、大塚電子社製の標準モニター粒子を数滴分散させた10mMのNaCl水溶液を用いて、電気泳動法により測定した。pHを3から11まで1ずつpHタイトレータによって変化させた時の値を測定した。
評価2:膜試料の同定
X線回折装置(リガク社製 RINT TTR III)にて、電圧:50kV、電流値:300mA、測定範囲:10〜70°の測定条件で、膜試料の結晶相を測定してXRDプロファイルを得る。得られたXRDプロファイルについて、JCPDSカードNO.35−0964に記載される層状複水酸化物(ハイドロタルサイト類化合物)の回折ピークを用いて同定を行った。
評価3:微構造の観察
膜試料の表面微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10kVの加速電圧で観察した。
評価4:気孔率及び膜密度の測定
膜試料について、画像処理を用いた手法により、膜の表面の気孔率を測定した。この気孔率の測定は、1)評価2に示される手順に従い膜の表面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得し、2)Photoshop(Adobe社製)等の画像解析ソフトを用いてグレースケールのSEM画像を読み込み、3)[イメージ]→[色調補正]→[2階調化]の手順で白黒の2値画像を作成し、4)黒い部分が占めるピクセル数を画像の全ピクセル数で割った値を気孔率(%)とすることにより行った。この気孔率の測定は膜試料表面の6μm×6μmの領域について行われた。また、この膜表面の気孔率を用いて、膜表面から見たときの密度D(以下、表面膜密度という)をD=100%−(膜表面の気孔率)により算出した。測定された表面の膜密度に基づいて膜の緻密性を以下の2段階で評価した。
<緻密性の評価基準>
A:表面膜密度が80%以上
B:表面膜密度が80%未満
例A1及びA2:ポリスチレン基材を用いた例
(1)基材の用意
基材としてポリスチレン板(26.5mm×30mm×1.845mm)を用意し、エタノールで拭き洗浄を行った。例A1においては、この洗浄された基材のゼータ電位を前述の評価1に記載の手法により測定したところ、図5に示される結果が得られた。
(2)スルホン化処理(例A2のみ実施)
例A2においては、上記洗浄されたポリスチレン板にさらにスルホン化処理を行った。具体的には、そのポリスチレン板を密閉容器内で市販の濃硫酸(関東化学株式会社製、含有量95.0%以上)に室温中で浸漬させた。12日間の浸漬後、濃硫酸中からポリスチレン板を取り出し、イオン交換水で洗浄し、40℃で6時間乾燥させた。こうして用意された例A2の基材のゼータ電位を前述の評価1に記載の手法により測定したところ、図5に示される結果が得られた。
(3)原料水溶液の作製
原料として、硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO・6HO、関東化学株式会社製)、硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO・9HO、関東化学株式会社製)、及び尿素((NH2)2CO、シグマアルドリッチ製)を用意した。カチオン比(Mg2+/Al3+)が2となり且つ全金属イオンモル濃度(Mg2++Al3+)が0.280mol/Lとなるように、硝酸マグネシウム六水和物と硝酸アルミニウム九水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を75mlとした。得られた溶液を攪拌した後、溶液中に尿素/NO3−=4の割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得た。
(4)水熱処理による成膜
テフロン(登録商標)製密閉容器(内容量100ml、外側がステンレス製ジャケット)に上記(3)で作製した原料水溶液と、上記(1)で洗浄した基材(例A1)又は上記(2)でスルホン化された基材(例A2)とを封入した。このとき、基材は溶液中に自然に浮かしている状態である。その後、水熱温度70℃で168時間(7日間)水熱処理を施すことにより基材表面に層状複水酸化物配向膜(機能層)の形成を行った。168時間経過後、基材を密閉容器から取り出し、イオン交換水で洗浄して、層状複水酸化物の膜を基材上に得た。得られた膜試料の厚さは約2.0μmであった。
(5)評価結果
得られたLDH試料に対して評価2〜4を行った。それらの結果を評価1の結果とともに以下に示す。
‐評価1:図5に示されるように、スルホン化していない例A1のポリスチレン基材と比較して、スルホン化した例A2のポリスチレン基材は、表面のスルホン酸基により負に帯電し、ゼータ電位が全体的に下がっていることが分かった。具体的には、pH3〜8の略全域におけるゼータ電位が、例A1の基材では大部分で正である一方、例A2の基材では負であった。スルホン化していない例A1のポリスチレン基材はほとんどのpH領域において正に帯電しており、LDHが付きにくいことが示唆された。
‐評価2:XRDプロファイルから、膜試料はLDH(ハイドロタルサイト類化合物)であることが同定された。
‐評価3:膜試料の表面微構造のSEM画像は図4に示されるとおりであった。スルホン化処理していない例A1のポリスチレン基材上にはほとんどLDHは生成しなかったが、スルホン化処理を施しゼータ電位が強く負に帯電した例A2のポリスチレン基材上では緻密なLDH膜が得られた。
‐評価4:膜試料の表面の表面膜密度に基づく緻密性の評価は、例A1が評価B、例A2が評価Aであった。
例A3及びA4:ジルコニア(3YSZ)基材を用いた例
(1)基材の用意
2cm角のジルコニア基材(3YSZ、Y:3mol%)を用意した。得られた基材(2cm角)をビーカーに入れ、アセトン25ml中で5分間超音波洗浄し、エタノール25ml中で2分間超音波洗浄、その後、イオン交換水25ml中で1分間超音波洗浄した。
(2)界面活性剤の作製(例A4のみ実施)
例A4においては、市販の陰イオン性界面活性剤溶液(ナフタレンスルホン酸Naホルマリン縮合物、デモールSS−L、花王株式会社製)をイオン交換水と、(界面活性剤溶液):(イオン交換水)の重量比が2:100となるように混合して、基材の界面活性剤処理に用いるための希釈された界面活性剤溶液を作製した。
(3)界面活性剤での処理(例A4のみ実施)
例A4においては、上記希釈された界面活性剤溶液25mlを含むビーカーに、上記(1)で洗浄した基材を回転子と共に互いに接触しないように入れ、ホットスターラー上にて500rpmの回転数で攪拌しながら温度40℃で1日浸漬させた。
(4)原料水溶液の作製
原料として、硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO・6HO、関東化学株式会社製)、硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO・9HO、関東化学株式会社製)、及び尿素((NHCO、シグマアルドリッチ製)を用意した。カチオン比(Mg2+/Al3+)が2となり且つ全金属イオンモル濃度(Mg2++Al3+)が0.320mol/Lとなるように、硝酸マグネシウム六水和物と硝酸アルミニウム九水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を75mlとした。得られた溶液を攪拌した後、溶液中に尿素/NO =4の割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得た。
(5)水熱処理による成膜
テフロン(登録商標)製密閉容器(内容量100ml、外側がステンレス製ジャケット)に上記(4)で作製した原料水溶液と、上記(1)で洗浄した基材(例A3)又は上記(3)で界面活性剤処理した基材(例A4)とを封入した。このとき、基材はテフロン(登録商標)製密閉容器の底から浮かせて固定し、基材両面に溶液が接するように水平に設置した。その後、水熱温度70℃で168時間(7日間)水熱処理を施すことにより基材表面に層状複水酸化物配向膜(機能層)の形成を行った。168時間経過後、基材を密閉容器から取り出し、イオン交換水で洗浄して、層状複水酸化物の膜を基材上に得た。
(6)評価結果
得られたLDH膜試料に対して評価2〜4を行った。それらの結果を評価1の結果とともに以下に示す。
‐評価1:図6に示されるように、pH5〜8の略全域におけるゼータ電位は例A3及びA4のいずれの基材も負であったが、界面活性剤処理されていない例A3の基材と、界面活性剤処理された例A4の基材との比較から、緻密3YSZ基材をアニオン性界面活性剤処理することにより、ゼータ電位が下がっている様子がみられた。界面活性剤処理されていない例A3の基材と比較して、界面活性剤処理された例A4の基材はLDHが付きやすくなっていることが示唆された。
‐評価2:XRDプロファイルから、例A3及びA4のいずれの膜試料もLDH(ハイドロタルサイト類化合物)であることが同定された。
‐評価3:膜試料の表面微構造のSEM画像は図4に示されるとおりであった。例A4では緻密3YSZ基材を界面活性剤処理することにより、全面的にLDH膜が生成した。例A3の前処理なしの3YSZ基材でも負に帯電しているため、ある程度はLDHが生成した(緻密性もある程度は高い)が、例A4よりは緻密性が低いものであった。緻密3YSZ基材を界面活性剤処理することにより、より強く負に帯電したため、LDHが付き易くなったと考えられた。
‐評価4:膜試料の表面の表面膜密度に基づく緻密性の評価は、例A3及びA4のいずれも評価Aであった。
例A5:チタニア多孔質基材を用いた例
(1)多孔質基材の作製
チタニア(石原産業株式会社製、CR−EL)、メチルセルロース、及びイオン交換水を、(チタニア):(メチルセルロース):(イオン交換水)の質量比が10:1:5となるように秤量した後、混練した。得られた混練物を、ハンドプレスを用いた押出成形に付し、2.5cm×10cm×厚さ0.5cmの大きさに成形した。得られた成形体を80℃で12時間乾燥した後、900℃で3時間焼成し、その後、2cm×2cm×0.3cmに加工してチタニア製多孔質基材を得た。
得られた多孔質基材について、画像処理を用いた手法により、多孔質基材表面の気孔率を測定したところ、46%であった。この気孔率の測定は、1)表面微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察して多孔質基材表面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得し、2)Photoshop(Adobe社製)等の画像解析ソフトを用いてグレースケールのSEM画像を読み込み、3)[イメージ]→[色調補正]→[2階調化]の手順で白黒の2値画像を作成し、4)黒い部分が占めるピクセル数を画像の全ピクセル数で割った値を気孔率(%)とすることにより行った。この気孔率の測定は多孔質基材表面の6μm×6μmの領域について行われた。
また、多孔質基材の平均気孔径を測定したところ0.5μmであった。本発明において、平均気孔径の測定は多孔質基材の表面の電子顕微鏡(SEM)画像をもとに気孔の最長距離を測長することにより行った。この測定に用いた電子顕微鏡(SEM)画像の倍率は20000倍であり、得られた全ての気孔径をサイズ順に並べて、その平均値から上位15点及び下位15点、合わせて1視野あたり30点で2視野分の平均値を算出して、平均気孔径を得た。測長には、SEMのソフトウェアの測長機能を用いた。
得られた多孔質基材をビーカーに入れ、アセトン25ml中で5分間超音波洗浄し、エタノール25ml中で2分間超音波洗浄、その後、イオン交換水25ml中で1分間超音波洗浄した。
(2)原料水溶液の作製
原料として、硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO・6HO、関東化学株式会社製)、硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO・9HO、関東化学株式会社製)、及び尿素((NHCO、シグマアルドリッチ製)を用意した。カチオン比(Mg2+/Al3+)が2となり且つ全金属イオンモル濃度(Mg2++Al3+)が0.320mol/Lとなるように、硝酸マグネシウム六水和物と硝酸アルミニウム九水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を75mlとした。得られた溶液を攪拌した後、溶液中に尿素/NO =4の割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得た。
(3)水熱処理による成膜
テフロン(登録商標)製密閉容器(内容量100ml、外側がステンレス製ジャケット)に上記(2)で作製した原料水溶液と、上記(1)で洗浄したチタニア製多孔質基材とを封入した。このとき、基材はテフロン(登録商標)製密閉容器の底から浮かせて固定し、基材両面に溶液が接するように水平に設置した。その後、水熱温度70℃で168時間(7日間)水熱処理を施すことにより基材表面に層状複水酸化物配向膜(機能層)の形成を行った。168時間経過後、基材を密閉容器から取り出し、イオン交換水で洗浄して、層状複水酸化物の膜を基材上に得た。
(4)評価結果
得られたLDH膜試料に対して評価2〜4を行った。それらの結果を評価1の結果とともに以下に示す。
‐評価1:図6に示されるように、多孔チタニア基材は例A1のポリスチレン基材同様、ほとんどのpH領域で正に帯電しており、LDHが付きにくいと考えられた。
‐評価2:XRDプロファイルから、試料はLDH(ハイドロタルサイト類化合物)であることが同定された。
‐評価3:膜試料の表面微構造のSEM画像は図4に示されるとおりであった。前処理なしのセラミックス基材を用いた例A3と例A5で比較してみると、ゼータ電位がより負側に帯電している例A3の緻密3YSZ基材の方が例A5の多孔チタニア基材よりもLDHは付きやすくなっている(基材の露出が少ない)ことが分かった。このことから、基材表面の電荷がLDHの成膜性に影響を及ぼすことが示唆された。特に、成膜過程(例えばpH5〜8程度、場合によっては3〜8程度まで変化)において負に帯電していることが、LDHの成膜性に効果があると考えられる。
‐評価4:膜試料の表面の表面膜密度に基づく緻密性の評価は、評価Bであった。
例A1〜A5の結果をまとめて表1に示す。
例B1〜B4(参考)
以下、無孔質基材上に層状複水酸化物配向膜を作製した例を示す。これらの例は基材のゼータ電位を測定していない点で参考例として位置づけられるものである。
例B1(参考):層状複水酸化物配向膜の作製
(1)基材のスルホン化処理
表面をスルホン化可能な芳香族系高分子基材として、26.5mm×30.0mm×1.85mmの寸法のポリスチレン板を用意した。このポリスチレン板の表面をエタノールで拭いて洗浄した。このポリスチレン板を密閉容器内で市販の濃硫酸(関東化学株式会社製、濃度:95.0質量%以上)に室温中で浸漬させた。表2に示される浸漬時間の経過後、濃硫酸中からポリスチレン板を取り出し、イオン交換水で洗浄した。洗浄したポリスチレン板を40℃で6時間乾燥させて、表面がスルホン化されたポリスチレン板を、試料1〜17を作製するための基材として得た。また、上記スルホン化処理を行わないポリスチレン板も、比較例態様の試料18を作製するため基材として用意した。
上記スルホン化処理の前後において、ポリスチレン板の透過スペクトルをフーリエ変換型赤外分光(FT−IR)のATR法(Attenuated Total Reflection(全反射測定法))により測定し、スルホン酸基由来のピークの検出を行った。この測定は、FT−IR装置において水平ATR装置を用いて、試料とバックグラウンドに対してそれぞれ積算回数64回、測定範囲4000〜400cm−1の条件で透過スペクトルを得ることにより行った。各濃硫酸浸漬時間でスルホン化処理したポリスチレン板の透過スペクトルを図7に示す。図7に示されるように、スルホン化処理を行ったポリスチレン板では、スルホン化処理を行わなかった板では現れない波数1127cm−1にスルホン酸基由来のピークが確認され、濃硫酸浸漬時間が長くなるほどそのピークの大きさが増大していることが分かる。各測定における測定面積が同じことを踏まえると、濃硫酸浸漬時間が長いほどスルホン酸基の量(密度)が増大しているものと考えられる。ATR法で得た透過スペクトルより、スルホン化処理前後で変化しない、フェニル基CC伸縮
(ベンゼン環骨格)振動由来の1601cm−1での透過率ピークの値(T1601)の、スルホン酸基に由来する1127cm−1での透過率ピークの値(T1127)に対する比(T1601/T1127)を算出した。その結果は表2に示されるとおりであり、濃硫酸浸漬時間が長いほど、スルホン酸基の割合が増大していることが示唆された。
(2)原料水溶液の作製
原料として、硝酸マグネシウム六水和物(Mg(NO・6HO、関東化学株式会社製)、硝酸アルミニウム九水和物(Al(NO・9HO、関東化学株式会社製)、及び尿素((NHCO、シグマアルドリッチ製)を用意した。表3に示されるカチオン比(Mg2+/Al3+)及び全金属イオンモル濃度(Mg2++Al3+)となるように、硝酸マグネシウム六水和物と硝酸アルミニウム九水和物を秤量してビーカーに入れ、そこにイオン交換水を加えて全量を75mlとした。得られた溶液を攪拌した後、溶液中に表3に示される割合で秤量した尿素を加え、更に攪拌して原料水溶液を得た。
(3)水熱処理による成膜
テフロン(登録商標)製密閉容器(内容量100ml、外側がステンレス製ジャケット)に上記(2)で作製した原料水溶液と上記(1)で用意したスルホン化された基材を共に封入した。このとき、基材は溶液中に自然に水平に浮かしている状態とした。その後、表3に示される水熱温度、水熱時間及び昇温速度の条件で水熱処理を施すことにより基材表面に層状複水酸化物配向膜の形成を行った。所定時間の経過後、基材を密閉容器から取り出し、イオン交換水で洗浄し、70℃で10時間乾燥させて、試料1〜18として層状複水酸化物(以下、LDHという)を基材上に得た。試料1〜17は膜形態を有しており、その厚さはいずれも約2μmであった。一方、試料18は成膜できなかった。
例B2(参考):配向性の評価
X線回折装置(D8 ADVANCE、Bulker AXS社製)にて、電圧:40kV、電流値:40mA、測定範囲:5〜70°の測定条件で、試料1〜18の結晶相を測定した。得られたXRDプロファイルについて、JCPDSカードNO.35−0964に記載される層状複水酸化物(ハイドロタルサイト類化合物)の回折ピークを用いて同定した。その結果、試料1〜17はいずれも層状複水酸化物(ハイドロタルサイト類化合物)であることが確認された。
次に、上記得られたXRDプロファイルに基づいて、LDH膜における結晶配向の程度を評価した。説明の便宜のため、最も高い膜密度が得られた試料9の結晶相に対して得られたXRDプロファイルを図8に示す。図8の一番上に示されるプロファイルがポリスチレン基材の結晶相に対応し、真ん中に示されるプロファイルがLDH膜付きポリスチレン基材の結晶相に対応し、一番下に示されるプロファイルがLDH粉末の結晶相に対応する。LDH粉末では(003)面のピークが最強線であるが、LDH配向膜では、(00l)面(lは3及び6である)のピークが減少し、(012)面や(110)面といったピークが観測された。このことから、(00l)面のピークが検出できなくなることで、板状粒子が基材に対して略垂直方向(すなわち垂直方向又はそれに類する斜め方向)に配向しているということが示唆された。
試料9と同様にして結晶配向性の評価を他の試料1〜8及び10〜18についても行い、以下の3段階で評価した。結果は表3に示されるとおりであった。
<結晶配向性の評価基準>
A:(003)面のピークが検出されない又は(003)面のピークが(012)面のピークの大きさの1/2倍未満
B:(003)面のピークが(012)面のピークの大きさの1/2倍以上1倍以下
C:(003)面のピークが(012)面のピークの大きさよりも大きい
例B3(参考):微構造の観察
試料1〜6及び9〜16及び18の表面微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察した。得られた試料1〜6及び9〜16及び18の表面微構造のSEM画像(二次電子像)を図9〜11に示す。これらの図に示される画像から、最も隙間が小さい(すなわち最も密度が高い)試料は試料9であった。また、比較試料18については膜の形態を有していなかった。
試料9の断面微構造を以下のようにして観察した。まず、試料9の破断した断面(以下、破断断面という)の微構造を走査型電子顕微鏡(SEM、JSM−6610LV、JEOL社製)を用いて10〜20kVの加速電圧で観察した。こうして得られた試料9の破断断面微構造のSEM画像を図12に示す。
次に、試料9の破断断面をFIB研磨やクライオミリングによって研磨して研磨断面を形成し、この研磨断面の微構造を電界放出型走査型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて1.5kV〜3kVの加速電圧で観察した。こうして得られた試料9の研磨断面微構造のSEM画像を図13に示す。また、試料2についても上記同様にして研磨断面の微構造を観察したところ、図14に示されるSEM画像が得られた。
例B4(参考):気孔率及び膜密度の測定
試料1〜6及び9〜16及び18について、画像処理を用いた手法により、膜の表面の気孔率を測定した。この気孔率の測定は、1)例B3に示される手順に従い膜の表面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得し、2)Photoshop(Adobe社製)等の画像解析ソフトを用いてグレースケールのSEM画像を読み込み、3)[イメージ]→[色調補正]→[2階調化]の手順でヒストグラムのしきい値を調整して白黒の2値画像を作成し、4)黒い部分が占めるピクセル数を画像の全ピクセル数で割った値を気孔率(%)とすることにより行った。この気孔率の測定は配向膜表面の6μm×6μmの領域について行われた。
また、上記得られた膜表面の気孔率を用いて、膜表面から見たときの密度D(以下、表面膜密度という)をD=100%−(膜表面の気孔率)により算出したところ、表3に示される結果が得られた。また、測定された表面の膜密度に基づいて膜の緻密性を以下の4段階で評価したところ、表3に示されるとおりであった。
<緻密性の評価基準>
A:表面膜密度が90%以上
B:表面膜密度が80%以上90%未満
C:表面膜密度が50%以上80%未満
D:表面膜密度が50%未満
また、試料2及び9については、研磨断面の気孔率についても測定した。この研磨断面の気孔率についても測定は、例B3に示される手順に従い膜の厚み方向における断面研磨面の電子顕微鏡(SEM)画像(倍率10000倍以上)を取得したこと以外は、上述の膜表面の気孔率と同様にして行った。この気孔率の測定は配向膜断面の2μm×4μmの領域について行われた。こうして試料9の断面研磨面から算出した気孔率は平均で4.8%(2箇所の断面研磨面の平均値)であり、高密度な膜が形成されていることが確認された。また、試料9よりも密度の低い試料2についても研磨断面の気孔率を算出したところ平均で22.9%(2箇所の断面研磨面の平均値)であった。表3に示される結果のとおり、表面気孔率と断面気孔率は概ね対応している。このことから、表面気孔率に基づき算出された上述の表面膜密度、さらにはそれに基づいてなされた膜の緻密性の評価は膜表面のみならず膜の厚さ方向を含む膜全体の特性を概ね反映していることが分かる。
表3に示されるように、試料1〜17の全てにおいて所望の結晶配向性を有する概ね緻密な膜が得られた。特に、スルホン化処理条件で濃硫酸浸漬時間を長くしてスルホン基の量(密度)を多くした試料5〜10においては高い結晶配向性のみならず緻密性にも優れた膜が得られた。一方、スルホン化していないポリスチレン基材を用いた試料18はLDHの核が生成されず、LDH膜は形成されなかった。
10,10’ LDH含有複合材料
12 多孔質基材
14,14’ 機能層

Claims (14)

  1. 基材の表面に層状複水酸化物緻密膜を形成する方法であって、前記層状複水酸化物緻密膜が、一般式:M2+ 1−x3+ (OH)n− x/n・mHO(式中、M2+は2価の陽イオン、M3+は3価の陽イオンであり、An−はn価の陰イオン、nは1以上の整数、xは0.1〜0.4である)で表される層状複水酸化物からなり、
    (a)pH5〜8の略全域において負のゼータ電位を呈する基材を用意する工程と、
    (b)前記層状複水酸化物の構成元素を含む原料水溶液中で、前記基材に水熱処理を施して、前記層状複水酸化物緻密膜を前記基材の表面に形成させる工程と、
    を含む、方法。
  2. 前記工程(a)において、前記基材が固有の性質として前記負のゼータ電位を呈する、請求項1に記載の方法。
  3. 前記工程(a)が、(a1)pH5〜8の少なくとも一部のpH域において正のゼータ電位を呈する基材を用意する工程と、(a2)前記基材の表面に、該表面がpH5〜8の略全域において負のゼータ電位を呈するように表面処理を行う工程とを含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記工程(a2)における表面処理が、前記基材の表面をスルホン化すること、前記基材の表面を界面活性剤で処理すること、前記基材の表面をプラズマ処理すること、及び前記基材の表面を酸又はアルカリで処理することからなる群から選択される少なくとも1つにより行われる、請求項3に記載の方法。
  5. 前記工程(b)における水熱処理が、密閉容器中、60〜150℃で行われる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
  6. 前記一般式において、M2+がMg2+を含み、M3+がAl3+を含み、An−がOH及び/又はCO 2−を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
  7. 前記工程(b)で用いられる前記原料水溶液が、マグネシウムイオン(Mg2+)及びアルミニウムイオン(Al3+)を0.20〜0.40mol/Lの合計濃度で含み、かつ、尿素を含んでなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
  8. 前記工程(b)で用いられる前記原料水溶液に硝酸マグネシウム及び硝酸アルミニウムが溶解されており、それにより該原料水溶液がマグネシウムイオン及びアルミニウムイオンに加えて硝酸イオンを含む、請求項7に記載の方法。
  9. 前記工程(b)で用いられる前記原料水溶液における、前記尿素の前記硝酸イオン(NO )に対するモル比が、4〜5である、請求項8に記載の方法。
  10. 前記基材が、セラミックス材料、金属材料、及び高分子材料からなる群から選択される少なくとも1種で構成される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
  11. 前記基材が、セラミックス材料であり、該セラミックス材料が、アルミナ、ジルコニア、チタニア、マグネシア、スピネル、カルシア、コージライト、ゼオライト、ムライト、フェライト、酸化亜鉛、炭化ケイ素、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項10に記載の方法。
  12. 前記基材が多孔質基材である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. 前記層状複水酸化物緻密膜を構成する前記層状複水酸化物が複数の板状粒子の集合体で構成され、該複数の板状粒子がそれらの板面が前記基材の表面と略垂直に又は斜めに交差するような向きに配向してなる、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
  14. 前記層状複水酸化物緻密膜が80%以上の表面膜密度を有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
JP2014219760A 2014-10-28 2014-10-28 層状複水酸化物緻密膜の形成方法 Pending JP2016084264A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014219760A JP2016084264A (ja) 2014-10-28 2014-10-28 層状複水酸化物緻密膜の形成方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014219760A JP2016084264A (ja) 2014-10-28 2014-10-28 層状複水酸化物緻密膜の形成方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2016084264A true JP2016084264A (ja) 2016-05-19

Family

ID=55971876

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014219760A Pending JP2016084264A (ja) 2014-10-28 2014-10-28 層状複水酸化物緻密膜の形成方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2016084264A (ja)

Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017221988A1 (ja) * 2016-06-24 2017-12-28 日本碍子株式会社 層状複水酸化物を含む機能層及び複合材料
JPWO2017221988A1 (ja) * 2016-06-24 2019-01-17 日本碍子株式会社 層状複水酸化物を含む機能層及び複合材料
JP2020110784A (ja) * 2019-01-17 2020-07-27 国立大学法人 名古屋工業大学 セラミック焼結体を用いたスケール防止剤及びその製造方法
JP2022513892A (ja) * 2018-12-12 2022-02-09 ニラムバウ インコーポレイテッド セラミック表面改質材料およびその使用方法

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017221988A1 (ja) * 2016-06-24 2017-12-28 日本碍子株式会社 層状複水酸化物を含む機能層及び複合材料
JPWO2017221988A1 (ja) * 2016-06-24 2019-01-17 日本碍子株式会社 層状複水酸化物を含む機能層及び複合材料
CN109314214A (zh) * 2016-06-24 2019-02-05 日本碍子株式会社 包含层状双氢氧化物的功能层及复合材料
US10940668B2 (en) 2016-06-24 2021-03-09 Ngk Insulators, Ltd. Functional layer including layered double hydroxide, and composite material
CN109314214B (zh) * 2016-06-24 2021-09-10 日本碍子株式会社 包含层状双氢氧化物的功能层及复合材料
JP2022513892A (ja) * 2018-12-12 2022-02-09 ニラムバウ インコーポレイテッド セラミック表面改質材料およびその使用方法
JP2020110784A (ja) * 2019-01-17 2020-07-27 国立大学法人 名古屋工業大学 セラミック焼結体を用いたスケール防止剤及びその製造方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6002304B2 (ja) 層状複水酸化物含有複合材料及びその製造方法
JP6615111B2 (ja) 層状複水酸化物緻密膜の形成方法
JP5951164B1 (ja) 層状複水酸化物膜及び層状複水酸化物含有複合材料
JP5866071B2 (ja) 層状複水酸化物配向膜及びその製造方法
JP6613302B2 (ja) 層状複水酸化物、層状複水酸化物緻密膜及び複合材料
JP2016084263A (ja) 層状複水酸化物緻密膜の形成方法
US10199624B2 (en) Layered double hydroxide-containing composite material
JP2016084264A (ja) 層状複水酸化物緻密膜の形成方法
JP6038410B1 (ja) 水酸化物イオン伝導緻密膜及び複合材料
JP6454555B2 (ja) 水酸化物イオン伝導緻密膜の評価方法
JP6441693B2 (ja) 水酸化物イオン伝導緻密膜の評価方法
JP2017024949A (ja) 層状複水酸化物含有複合材料