以下、添付図面を参照して、本願の開示する剥離装置、剥離システムおよび剥離方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
(第1の実施形態)
<1.剥離システム>
まず、第1の実施形態に係る剥離システムの構成について、図1〜図3を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る剥離システムの構成を示す模式平面図である。また、図2は、ダイシングフレームに保持された重合基板の模式側面図であり、図3は、同重合基板の模式平面図である。
なお、以下においては、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
図1に示す本実施形態に係る剥離システム1は、被処理基板Wと支持基板Sとが接着剤Gで接合された重合基板T(図2参照)を、被処理基板Wと支持基板Sとに剥離する。
以下では、図2に示すように、被処理基板Wの板面のうち、接着剤Gを介して支持基板Sと接合される側の板面を「接合面Wj」といい、接合面Wjとは反対側の板面を「非接合面Wn」という。また、支持基板Sの板面のうち、接着剤Gを介して被処理基板Wと接合される側の板面を「接合面Sj」といい、接合面Sjとは反対側の板面を「非接合面Sn」という。
被処理基板Wは、たとえば、シリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板であり、電子回路が形成される側の板面を接合面Wjとしている。また、被処理基板Wは、たとえば非接合面Wnが研磨処理されることによって薄型化されている。具体的には、被処理基板Wの厚さは、約20〜50μmである。
一方、支持基板Sは、被処理基板Wと略同径の基板であり、被処理基板Wを支持する。支持基板Sの厚みは、約650〜750μmである。かかる支持基板Sとしては、シリコンウェハの他、ガラス基板などを用いることができる。また、これら被処理基板Wおよび支持基板Sを接合する接着剤Gの厚みは、約40〜150μmである。
また、図2に示すように、重合基板Tは、ダイシングフレームFに固定される。ダイシングフレームFは、重合基板Tよりも大径の開口部Faを中央に有する略環状の部材であり、ステンレス鋼等の金属で形成される。ダイシングフレームFの厚みは、たとえば1mm程度である。
重合基板Tは、かかるダイシングフレームFにダイシングテープPを介して固定される。具体的には、ダイシングフレームFの開口部Faに重合基板Tを配置し、開口部Faを裏面から塞ぐように被処理基板Wの非接合面WnおよびダイシングフレームFの裏面にダイシングテープPを貼り付ける。これにより、重合基板Tは、ダイシングフレームFに固定された状態となる。
図1に示すように、剥離システム1は、第1処理ブロック10および第2処理ブロック20の2つの処理ブロックを備える。第1処理ブロック10と第2処理ブロック20とは、隣接して配置される。
第1処理ブロック10では、重合基板Tの搬入、重合基板Tの剥離処理、剥離後の被処理基板Wの洗浄および搬出等が行われる。かかる第1処理ブロック10は、搬入出ステーション11と、第1搬送領域12と、待機ステーション13と、エッジカットステーション14と、剥離ステーション15と、第1洗浄ステーション16とを備える。
搬入出ステーション11、待機ステーション13、エッジカットステーション14、剥離ステーション15および第1洗浄ステーション16は、第1搬送領域12に隣接して配置される。具体的には、搬入出ステーション11と待機ステーション13とは、第1搬送領域12のY軸負方向側に並べて配置され、剥離ステーション15と第1洗浄ステーション16とは、第1搬送領域12のY軸正方向側に並べて配置される。また、エッジカットステーション14は、第1搬送領域12のX軸正方向側に配置される。
搬入出ステーション11には、複数のカセット載置台が設けられており、各カセット載置台には、重合基板Tが収容されるカセットCtまたは剥離後の被処理基板Wが収容されるカセットCwが載置される。
第1搬送領域12には、重合基板Tまたは剥離後の被処理基板Wの搬送を行う第1搬送装置121が配置される。第1搬送装置121は、水平方向への移動、鉛直方向への昇降および鉛直方向を中心とする旋回が可能な搬送アーム部と、この搬送アーム部の先端に取り付けられた基板保持部とを備える。第1搬送領域12では、かかる第1搬送装置121により、重合基板Tを待機ステーション13、エッジカットステーション14および剥離ステーション15へ搬送する処理や、剥離後の被処理基板Wを第1洗浄ステーション16および搬入出ステーション11へ搬送する処理が行われる。
待機ステーション13には、たとえば、ダイシングフレームFのID(Identification)の読み取りを行うID読取装置が配置され、かかるID読取装置によって、処理中の重合基板Tを識別することができる。なお、待機ステーション13では、上記のID読取り処理に加え、処理待ちの重合基板Tを一時的に待機させておく待機処理が必要に応じて行われる。かかる待機ステーション13には、第1搬送装置121によって搬送された重合基板Tが載置される載置台が設けられており、かかる載置台に、ID読取装置と一時待機部とが載置される。
エッジカットステーション14には、エッジカット装置が配置される。エッジカット装置は、接着剤G(図2参照)の周縁部を溶剤により溶解させて除去するエッジカット処理を行う。かかるエッジカット処理により接着剤Gの周縁部を除去することで、後述する剥離処理において被処理基板Wと支持基板Sとを剥離させ易くすることができる。なお、エッジカット装置は、たとえば重合基板Tを接着剤Gの溶剤に浸漬させることにより、接着剤Gの周縁部を溶剤によって溶解させる。
剥離ステーション15には、剥離装置が配置され、かかる剥離装置によって、重合基板Tを被処理基板Wと支持基板Sとに剥離する剥離処理が行われる。剥離装置の具体的な構成および動作については、後述する。
第1洗浄ステーション16では、剥離後の被処理基板Wの洗浄処理が行われる。第1洗浄ステーション16には、剥離後の被処理基板WをダイシングフレームFに保持された状態で洗浄する第1洗浄装置が配置される。第1洗浄装置としては、たとえば特開2013−033925号公報に記載の洗浄装置を用いることができる。
また、第2処理ブロック20では、剥離後の支持基板Sの洗浄および搬出等が行われる。かかる第2処理ブロック20は、受渡ステーション21と、第2洗浄ステーション22と、第2搬送領域23と、搬出ステーション24とを備える。
受渡ステーション21、第2洗浄ステーション22および搬出ステーション24は、第2搬送領域23に隣接して配置される。具体的には、受渡ステーション21と第2洗浄ステーション22とは、第2搬送領域23のY軸正方向側に並べて配置され、搬出ステーション24は、第2搬送領域23のY軸負方向側に並べて配置される。
受渡ステーション21は、第1処理ブロック10の剥離ステーション15に隣接して配置される。かかる受渡ステーション21では、剥離ステーション15から剥離後の支持基板Sを受け取って第2洗浄ステーション22へ渡す受渡処理が行われる。
受渡ステーション21には、第2搬送装置211が配置される。第2搬送装置211は、たとえばベルヌーイチャック等の非接触保持部を有しており、剥離後の支持基板Sは、かかる第2搬送装置211によって非接触で搬送される。
第2洗浄ステーション22では、剥離後の支持基板Sを洗浄する第2洗浄処理が行われる。かかる第2洗浄ステーション22には、剥離後の支持基板Sを洗浄する第2洗浄装置が配置される。第2洗浄装置としては、たとえば特開2013−033925号公報に記載の洗浄装置を用いることができる。
第2搬送領域23には、剥離後の支持基板Sの搬送を行う第3搬送装置231が配置される。第3搬送装置231は、水平方向への移動、鉛直方向への昇降および鉛直方向を中心とする旋回が可能な搬送アーム部と、この搬送アーム部の先端に取り付けられた基板保持部とを備える。第2搬送領域23では、かかる第3搬送装置231により、剥離後の支持基板Sを搬出ステーション24へ搬送する処理が行われる。
搬出ステーション24には、複数のカセット載置台が設けられており、各カセット載置台には、剥離後の支持基板Sが収容されるカセットCsが載置される。
また、剥離システム1は、制御装置30を備える。制御装置30は、剥離システム1の動作を制御する装置である。かかる制御装置30は、たとえばコンピュータであり、図示しない制御部と記憶部とを備える。記憶部には、剥離処理等の各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部は記憶部に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって剥離システム1の動作を制御する。
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体に記録されていたものであって、その記録媒体から制御装置30の記憶部にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記録媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
上記のように構成された剥離システム1では、まず、第1処理ブロック10の第1搬送装置121が、搬入出ステーション11に載置されたカセットCtから重合基板Tを取り出し、取り出した重合基板Tを待機ステーション13へ搬入する。
つづいて、待機ステーション13では、ID読取装置が、ダイシングフレームFのIDを読み取るID読取処理を行う。ID読取装置によって読み取られたIDは、制御装置30へ送信される。その後、重合基板Tは、第1搬送装置121によって待機ステーション13から取り出されて、エッジカットステーション14へ搬入される。
エッジカットステーション14では、エッジカット装置が、重合基板Tに対してエッジカット処理を行う。かかるエッジカット処理によって接着剤Gの周縁部が除去されることにより、後段の剥離処理において被処理基板Wと支持基板Sとが剥離し易くなる。したがって、剥離処理に要する時間を短縮させることができる。
このように、本実施形態にかかる剥離システム1では、エッジカットステーション14が第1処理ブロック10に組み込まれているため、第1処理ブロック10へ搬入された重合基板Tを第1搬送装置121を用いてエッジカットステーション14へ直接搬入することができる。したがって、一連の基板処理のスループットを向上させることができる。また、エッジカット処理から剥離処理までの時間を容易に管理することができ、剥離性能を安定化させることができる。
なお、たとえば装置間の処理時間差等により処理待ちの重合基板Tが生じる場合には、待機ステーション13に設けられた一時待機部を用いて重合基板Tを一時的に待機させておくことができ、一連の工程間でのロス時間を短縮することができる。
つづいて、エッジカット処理後の重合基板Tは、第1搬送装置121によってエッジカットステーション14から取り出されて、剥離ステーション15へ搬入される。そして、剥離ステーション15に配置された剥離装置が、重合基板Tに対して剥離処理を行う。かかる剥離処理により、重合基板Tは、被処理基板Wと支持基板Sとに分離される。
剥離後の被処理基板Wは、第1搬送装置121によって剥離ステーション15から取り出されて、第1洗浄ステーション16へ搬入される。第1洗浄ステーション16では、第1洗浄装置が、剥離後の被処理基板Wに対して第1洗浄処理を行う。かかる第1洗浄処理によって、被処理基板Wの接合面Wjに残存する接着剤Gが除去される。
第1洗浄処理後の被処理基板Wは、第1搬送装置121によって第1洗浄ステーション16から取り出されて、搬入出ステーション11に載置されたカセットCwに収容される。その後、カセットCwは、搬入出ステーション11から取り出され、回収される。こうして、被処理基板Wについての処理が終了する。
一方、第2処理ブロック20では、上述した第1処理ブロック10における処理と並行して、剥離後の支持基板Sに対する処理が行われる。
第2処理ブロック20では、まず、受渡ステーション21に配置された第2搬送装置211が、剥離後の支持基板Sを剥離ステーション15から取り出して、第2洗浄ステーション22へ搬入する。
ここで、剥離後の支持基板Sは、剥離装置によって上面側すなわち非接合面Sn側が保持された状態となっており、第2搬送装置211は、支持基板Sの接合面Sj側を下方から非接触で保持する。その後、第2搬送装置211は、保持した支持基板Sを反転させたうえで、第2洗浄ステーション22の第2洗浄装置へ載置する。これにより、支持基板Sは、接着剤Gが残存する接合面Sjを上方に向けた状態で第2洗浄装置に載置される。そして、第2洗浄装置は、支持基板Sの接合面Sjを洗浄する第2洗浄処理を行う。かかる第2洗浄処理により、支持基板Sの接合面Sjに残存する接着剤Gが除去される。
第2洗浄処理後の支持基板Sは、第2搬送領域23に配置された第3搬送装置231によって第2洗浄ステーション22から取り出されて、搬出ステーション24に載置されたカセットCsに収容される。その後、カセットCsは、搬出ステーション24から取り出され、回収される。こうして、支持基板Sについての処理も終了する。
このように、本実施形態に係る剥離システム1は、ダイシングフレームFに固定された基板(重合基板Tおよび剥離後の被処理基板W)用のフロントエンド(搬入出ステーション11および第1搬送装置121)と、ダイシングフレームFに保持されない基板(剥離後の支持基板S)用のフロントエンド(搬出ステーション24および第3搬送装置231)とを備える構成とした。これにより、被処理基板Wを搬入出ステーション11へ搬送する処理と、支持基板Sを搬出ステーション24へ搬送する処理とを並列に行うことが可能となるため、一連の基板処理を効率的に行うことができる。
また、本実施形態に係る剥離システム1では、剥離ステーション15と第2洗浄ステーション22とが受渡ステーション21を介して接続される。これにより、第1搬送領域12や第2搬送領域23を経由することなく、剥離後の支持基板Sを剥離ステーション15から第2洗浄ステーション22へ直接搬入することが可能となるため、剥離後の支持基板Sの搬送をスムーズに行うことができる。
なお、第1処理ブロック10は、重合基板TにダイシングフレームFを取り付けるためのマウント装置を備えていてもよい。かかる場合、ダイシングフレームFが取り付けられていない重合基板TをカセットCtから取り出してマウント装置へ搬入し、マウント装置において重合基板TにダイシングフレームFを取り付けた後、ダイシングフレームFに固定された重合基板Tをエッジカットステーション14および剥離ステーション15へ順次搬送することとなる。なお、マウント装置は、たとえば、エッジカットステーション14を第2処理ブロック20へ移動し、エッジカットステーション14が設けられていた場所に配置すればよい。
<2.剥離装置の構成>
次に、剥離ステーション15に設置される剥離装置の構成について図4を参照して説明する。図4は、本実施形態に係る剥離装置の構成を示す模式側面図である。
図4に示すように、剥離装置5は、処理室100を備える。処理室100の側面には、搬入出口(図示せず)が設けられる。搬入出口は、第1搬送領域12側と受渡ステーション21側とにそれぞれ設けられる。
剥離装置5は、第1保持部50と、移動部61と、第1追加移動部62と、第2追加移動部63と、第2保持部70と、フレーム保持部80と、剥離誘引部90とを備え、これらは処理室100の内部に配置される。
剥離装置5は、重合基板Tの支持基板S側を第1保持部50によって上方から吸着保持し、重合基板Tの被処理基板W側を第2保持部70によって下方から吸着保持する。そして、剥離装置5は、移動部61、第1追加移動部62および第2追加移動部63を順次動作させて、支持基板Sを被処理基板Wの板面から離す方向へ移動させる。これにより、第1保持部に保持された支持基板Sが、その一端から他端へ向けて被処理基板Wから連続的に剥離する。以下、各構成要素について具体的に説明する。
第1保持部50は、当接部51と、弾性部材52と、第1吸引部53と、第2吸引部54と、第3吸引部55とを備える。
当接部51は、支持基板Sと略同径の円板形状を有する部材であり、支持基板Sの非接合面Snに当接する。当接部51の支持基板Sとの当接面には、複数の吸引口(ここでは、図示せず)が形成される。
弾性部材52は、当接部51と略同径の円板形状を有する薄板状の部材であり、当接部51の支持基板Sとの当接面とは反対側の面に設けられる。
第1吸引部53、第2吸引部54および第3吸引部55は、弾性部材52を介して当接部51の各吸引口に接続される。また、第1吸引部53、第2吸引部54および第3吸引部55は、吸気管531,541,551を介して真空ポンプなどの吸気装置532,542,552に接続される。
かかる第1保持部50は、吸気装置532,542,552が発生させる吸引力を用い当接部51の各吸引口から支持基板Sの非接合面Sn(図2参照)を吸引することによって、重合基板Tの支持基板S側を吸着保持する。
移動部61、第1追加移動部62および第2追加移動部63は、第1保持部50の第1吸引部53、第2吸引部54および第3吸引部55にそれぞれ接続される。移動部61は第1吸引部53を、第1追加移動部62は第2吸引部54を、第2追加移動部63は第3吸引部55をそれぞれ鉛直上方に移動させる。
なお、移動部61、第1追加移動部62および第2追加移動部63は、上側ベース部103に支持され、第1保持部50は、移動部61、第1追加移動部62および第2追加移動部63を介して上側ベース部103に支持される。また、上側ベース部103は、処理室100の天井部に取り付けられた固定部材101に支柱102を介して支持される。
ここで、上述した第1保持部50、移動部61、第1追加移動部62および第2追加移動部63の具体的な構成について図5および図6を参照して説明する。図5は、第1保持部50、移動部61、第1追加移動部62および第2追加移動部63の構成を示す模式側面図である。また、図6は、当接部51の模式底面図である。
図5に示すように、当接部51は、支持基板Sとの当接面に複数の吸引口511,512,513を備える。
吸引口511,512,513は、剥離の進行方向(ここでは、X軸正方向)に沿って並べて配置される。具体的には、当接部51の外周部のうち剥離の起点となる外周部(後述する剥離開始部位Mが形成される部分)に対応する位置に吸引口511が設けられる。また、吸引口512および吸引口513は、吸引口511よりも剥離の終点側(X軸正方向側)に配置されるとともに、剥離の進行方向に沿って吸引口512および吸引口513の順に並べて配置される。
これら吸引口511,512,513には、第1吸引部53と、第2吸引部54と、第3吸引部55とがそれぞれ接続される。
また、図6に示すように、当接部51が有する吸着領域510は、複数の個別領域514,515,516に区画される。個別領域514〜516は、剥離の進行方向(X軸正方向)に沿って、個別領域514、個別領域515および個別領域516の順に配置される。個別領域514には吸引口511が、個別領域515には吸引口512が、個別領域516には吸引口513が、それぞれ設けられる。
このように、本実施形態に係る第1保持部50は、当接部51の吸着領域510が複数の個別領域514〜516に区画され、第1吸引部53、第2吸引部54および第3吸引部55が、個別領域514〜516に対応して設けられる。
これにより、第1保持部50は、支持基板Sを個別領域514〜516ごとに吸着保持することができる。したがって、たとえば個別領域514〜516のうち何れかにおいて吸着漏れが生じた場合であっても、他の個別領域514〜516で支持基板Sを保持しておくことができる。
当接部51が有する吸着領域510は、剥離の進行方向(X軸正方向)に膨らむ円弧a1,a2によって個別領域514〜516に区画される。
支持基板Sの被処理基板Wからの剥離は、平面視において円弧状に進行する。したがって、吸着領域510を剥離の進行方向(X軸正方向)に膨らむ円弧a1,a2で区画することで、剥離途中の支持基板Sをより適切に吸着保持しておくことができ、剥離途中で支持基板Sが第1保持部50から外れてしまうことを防止することができる。
支持基板Sと被処理基板Wとの剥離の境界線は、剥離の初期段階においては上述のように円弧状であるが、剥離が進行するに従って、剥離の進行方向に対して直交する方向(Y軸方向)に延びる直線状に徐々に変化していく。
このため、吸着領域510を区画する円弧a1,a2は、剥離の終点側に近付くにつれて曲率を小さくする(すなわち、直線に近づける)ことが好ましい。本例の場合には、剥離の終点側の円弧a2の曲率を、剥離の起点側の円弧a1の曲率よりも小さくすることが好ましい。
また、個別領域515および個別領域516には、それぞれ吸引口512および吸引口513からの吸引力を行き渡らせるための溝が形成される。ここで、個別領域515および個別領域516に形成される溝の形状について図7Aおよび図7Bを参照して説明する。図7Aは、個別領域515に形成される溝の形状を示す模式底面図であり、図7Bは、個別領域516に形成される溝の形状を示す模式底面図である。
図7Aに示すように、個別領域516よりも剥離の起点側に配置される個別領域515には、剥離の進行方向に膨らんだ円弧状の溝517が複数形成される。これに対し、図7Bに示すように、個別領域515よりも剥離の終点側に配置される個別領域516には、剥離の進行方向と直交する方向(Y軸方向)に延びる直線状の溝518が複数形成される。
上述したように、支持基板Sと被処理基板Wとの剥離の境界線は、剥離が進行するに従って円弧状から直線状に変化していく。したがって、剥離の進行段階に応じて変化する剥離の境界線の形状に合わせて、個別領域515および個別領域516の溝を形成することで、剥離途中の支持基板Sをより適切に吸着保持しておくことができ、剥離処理の途中で支持基板Sが第1保持部50から外れてしまうことを防止することができる。
なお、個別領域514は、吸着領域が比較的狭いため、溝を形成しないこととしているが、個別領域514にも溝を形成する場合には、個別領域515と同様に、剥離の進行方向に膨らむ円弧状の溝を形成すればよい。
また、ここでは、個別領域515に円弧状の溝を形成し、個別領域516に直線状の溝を形成することとしたが、個別領域515および個別領域516に、あるいは吸着領域510全体に、剥離の進行方向に膨らむ円弧状の溝を形成しても構わない。
また、当接部51は、後述する移動部61、第1追加移動部62および第2追加移動部63によって引っ張られた際に、その形状を柔軟に変化させることができるように、柔軟性を有する部材で形成される。具体的には、当接部51は、ゴム等の樹脂で形成される。
すなわち、第1保持部50は、柔軟性を有する当接部51を支持基板Sの略全面に当接させることにより、支持基板Sの略全面を吸着保持する。このため、後述する剥離処理において、被処理基板Wに対して大きな負荷をかけることなく、支持基板Sを被処理基板Wから剥離させることができる。
図5に戻り、弾性部材52について説明する。弾性部材52は、たとえば板バネ等で形成される。かかる弾性部材52を柔軟性を有する当接部51に設けることで、剥離の進行方向を強制することができ、被処理基板Wと支持基板Sとをより適切に剥離させることができる。
図5に示すように、弾性部材52は、当接部51の個別領域514〜516に対応して、複数(ここでは、3個)の弾性部材片521,522,523に分割される。
図8は、弾性部材52の模式平面図である。図8に示すように、弾性部材52は、剥離の進行方向(X軸方向)に直交する方向(Y軸方向)に延びる直線によって、3つの弾性部材片521,522,523に分割される。これら弾性部材片521,522,523は、剥離の進行方向に沿って、弾性部材片521、弾性部材片522および弾性部材片523の順に並べて配置される。
移動部61は、水平部材611と、支柱部材612と、移動機構613と、ロードセル614とを備える。
水平部材611は、剥離の進行方向(X軸方向)に沿って延在する板状の部材であり、第1吸引部53の上部にX軸正方向側の一端部が固定される。
支柱部材612は、鉛直方向(Z軸方向)に延在する部材であり、水平部材611の他端部に一端部が接続され、上側ベース部103を介して移動機構613に他端部が接続される。
移動機構613は、上側ベース部103の上部に固定され、下部に接続される支柱部材612を鉛直方向に移動させる。
かかる移動部61は、移動機構613によって支柱部材612および水平部材611を鉛直上方に移動させることにより、第1保持部50の外周部の一部、具体的には、当接部51の個別領域514(図6参照)を弾性部材片521および第1吸引部53を介して引っ張り上げる。
図5に示すように、引き上げの力点となる支柱部材612は、引き上げの支点となる第1吸引部53よりも剥離の進行方向の反対側に配置される。このため、引き上げの作用点となる重合基板Tの外縁部(剥離の開始位置であり、後述する「剥離開始部位M」に相当)には、図5において時計回りの回転力(モーメント)が発生する。これにより、移動部61は、支持基板Sをその外縁部からめくり上げるようにして引っ張ることができるため、支持基板Sを被処理基板Wから効率的に剥離させることができる。
また、移動部61は、支柱部材612にかかる負荷をロードセル614によって検出することができる。したがって、移動部61は、ロードセル614による検出結果に基づき、支持基板Sにかかる力を制御しながら、当接部51の個別領域514を引っ張ることができる。
第1追加移動部62および第2追加移動部63も移動部61とほぼ同様の構成を有する。具体的には、第1追加移動部62は、水平部材621と、支柱部材622と、移動機構623と、ロードセル624とを備える。かかる第1追加移動部62は、移動機構623によって支柱部材622および水平部材621を鉛直上方に移動させることにより、当接部51の個別領域515(図6参照)を弾性部材片522および第2吸引部54を介して引っ張り上げる。
また、第2追加移動部63は、水平部材631と、支柱部材632と、移動機構633と、ロードセル634とを備える。かかる第2追加移動部63は、移動機構633によって支柱部材632および水平部材631を鉛直上方に移動させることにより、当接部51の個別領域516(図6参照)を弾性部材片523および第3吸引部55を介して引っ張り上げる。
これら第1追加移動部62および第2追加移動部63も、移動部61と同様に、引き上げの力点となる支柱部材622,632が、引き上げの支点となる第2吸引部54,第3吸引部55よりも剥離の起点側に配置されている。したがって、第1追加移動部62および第2追加移動部63は、それぞれ第2吸引部54および第3吸引部55をめくり上げるようにして引っ張ることができるため、支持基板Sを被処理基板Wから効率的に剥離させることができる。
なお、支持基板Sを被処理基板Wから剥離する場合、剥離の最も起点側の領域、すなわち、後述する剥離開始部位Mに対応する支持基板Sの外周部を剥離するのに最も大きな力を要する。したがって、水平部材611,621,631は、起点側に配置される水平部材611を最も長く形成することが好ましい。
図4に戻り、剥離装置5のその他の構成について説明する。第2保持部70は、第1保持部50の下方に配置される。
第2保持部70は、重合基板Tの被処理基板W側をダイシングテープPを介して吸着保持する。かかる第2保持部70は、円板形状の本体部71と、本体部71を支持する支柱部材72とを備える。
本体部71は、たとえばアルミニウムなどの金属部材で形成される。かかる本体部71の上面には、吸着面73が設けられる。吸着面73は、多孔質体であり、たとえばPCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)等の樹脂部材で形成される。
本体部71の内部には、吸着面73を介して外部と連通する吸引空間74が形成される。吸引空間74は、吸気管711を介して真空ポンプなどの吸気装置712と接続される。かかる第2保持部70は、吸気装置712の吸気によって発生する負圧を利用し、被処理基板Wの非接合面WnをダイシングテープPを介して吸着面73に吸着させることによって、重合基板Tを吸着保持する。
本体部71の吸着面73は、被処理基板Wよりも僅かに径が大きく形成される。これにより、被処理基板Wの周縁部での吸引漏れを防止することができるため、重合基板Tをより確実に吸着保持することができる。
また、被処理基板Wとの吸着面に溝などの非吸着部が形成されていると、かかる非吸着部において被処理基板Wにクラックが発生するおそれがある。そこで、本体部71の吸着面73は、溝などの非吸着部を有しない平坦面とした。これにより、被処理基板Wにクラックが発生することを防止することができる。さらに、吸着面73をPCTFE等の樹脂部材で形成することとしたため、被処理基板Wへのダメージを更に抑えることができる。
第2保持部70の外方には、ダイシングフレームFを下方から保持するフレーム保持部80が配置される。フレーム保持部80は、ダイシングフレームFを吸着保持する複数の吸着パッド81と、吸着パッド81を支持する支持部材82と、支持部材82を鉛直方向に移動させる移動機構83とを備える。
吸着パッド81は、ゴムなどの弾性部材によって形成され、たとえば図3に示すダイシングフレームFの4隅に対応する位置にそれぞれ設けられる。この吸着パッド81には、吸引口(図示せず)が形成され、真空ポンプなどの吸気装置822が支持部材82および吸気管821を介して上記の吸引口に接続される。
フレーム保持部80は、吸気装置822の吸気によって発生する負圧を利用し、ダイシングフレームFを吸着することによってダイシングフレームFを保持する。また、フレーム保持部80は、移動機構83によって支持部材82および吸着パッド81を鉛直方向に移動させることにより、吸着パッド81に吸着保持されたダイシングフレームFを鉛直方向に移動させる。
第2保持部70およびフレーム保持部80は、下側ベース部104によって下方から支持される。また、下側ベース部104は、処理室100の床面に固定された回転昇降機構105によって支持される。
回転昇降機構105は、下側ベース部104を鉛直軸回りに回転させることにより、下側ベース部104に支持された第2保持部70およびフレーム保持部80を一体的に回転させる。また、回転昇降機構105は、下側ベース部104を鉛直方向に移動させることにより、下側ベース部104に支持された第2保持部70およびフレーム保持部80を一体的に昇降させる。
第2保持部70の外方には、剥離誘引部90が配置される。かかる剥離誘引部90は、支持基板Sが被処理基板Wから剥がれるきっかけとなる部位を重合基板Tの側面に形成する。
剥離誘引部90は、鋭利部材91と、移動機構92と、昇降機構93とを備える。鋭利部材91は、たとえば平刃であり、刃先が重合基板Tへ向けて突出するように移動機構92に支持される。
移動機構92は、X軸方向に延在するレールに沿って鋭利部材91を移動させる。昇降機構93は、たとえば上側ベース部103に固定され、移動機構92を鉛直方向に移動させる。これにより、鋭利部材91の高さ位置、すなわち、重合基板Tの側面への当接位置が調節される。
かかる剥離誘引部90は、昇降機構93を用いて鋭利部材91の高さ位置を調節した後、移動機構92を用いて鋭利部材91を水平方向(ここでは、X軸正方向)へ移動させることにより、鋭利部材91を支持基板Sにおける接着剤G寄りの側面に当接させる。これにより、重合基板Tに、支持基板Sが被処理基板Wから剥がれるきっかけとなる部位(以下、「剥離開始部位」と記載する)が形成される。
<3.剥離装置の動作>
次に、剥離装置5の具体的な動作について図9および図10A〜図10Gを参照して説明する。図9は、剥離処理の処理手順を示すフローチャートである。また、図10A〜図10Gは、剥離動作の説明図である。なお、剥離装置5は、制御装置30の制御に基づき、図9に示す各処理手順を実行する。
ダイシングフレームFに固定された重合基板Tが処理室100内へ搬入されると、剥離装置5は、まず、重合基板Tの被処理基板W側とダイシングフレームFとをそれぞれ第2保持部70およびフレーム保持部80を用いて下方から吸着保持する(ステップS101)。このとき、図10Aに示すように、被処理基板WおよびダイシングフレームFは、ダイシングテープPが水平に張られた状態で、第2保持部70およびフレーム保持部80に保持される。
つづいて、剥離装置5は、フレーム保持部80の移動機構83(図4参照)を用いてフレーム保持部80を降下させて、フレーム保持部80に保持されたダイシングフレームFを降下させる(ステップS102)。これにより、剥離誘引部90の鋭利部材91を重合基板Tへ向けて進出させるためのスペースが確保される(図10B参照)。
つづいて、剥離装置5は、剥離誘引部90を用いて剥離誘引処理を行う(ステップS103)。剥離誘引処理は、支持基板Sが被処理基板Wから剥離するきっかけとなる部位(剥離開始部位)を重合基板Tに形成する(図10C参照)。
ここで、剥離誘引処理の内容について図11A〜図11Cを参照して具体的に説明する。図11A〜図11Cは、剥離誘引処理の動作説明図である。
なお、この剥離誘引処理は、重合基板Tのうちの被処理基板Wが第2保持部70によって保持され、ダイシングフレームFがフレーム保持部80によって保持された後、かつ、重合基板Tのうちの支持基板Sが第1保持部50によって保持される前に行われる。すなわち、剥離誘引処理は、支持基板Sがフリーな状態で行われる。
剥離装置5は、昇降機構93(図4参照)を用いて鋭利部材91の高さ位置を調整した後、移動機構92を用いて鋭利部材91を重合基板Tの側面へ向けて移動させる。具体的には、図11Aに示すように、重合基板Tの側面のうち、支持基板Sの接着剤G寄りの側面に向けて鋭利部材91を略水平に移動させる。
ここで、「支持基板Sの接着剤G寄りの側面」とは、支持基板Sの側面のうち、支持基板Sの厚みの半分の位置hよりも接合面Sj寄りの側面のことである。具体的には、支持基板Sの側面は断面視において略円弧状に形成されており、「支持基板Sの接着剤G寄りの側面」は、鋭利部材91の刃先の傾斜面91aとのなす角度θが0度以上90度未満の側面である。
鋭利部材91は、片平刃であり、傾斜面91aを上方に向けた状態で移動機構92に支持される。このように、傾斜面91aを支持基板S側に向けた片平刃を鋭利部材91として用いることで、両平刃を用いた場合と比べて、鋭利部材91を重合基板T内に進入させた際に被処理基板Wが受ける負荷を抑えることができる。
剥離装置5は、まず、鋭利部材91を予め決められた位置まで前進させる(予備前進)。その後、剥離装置5は、鋭利部材91をさらに前進させて鋭利部材91を支持基板Sの接着剤G寄りの側面に当接させる。なお、剥離誘引部90には、たとえばロードセル(図示せず)が設けられており、剥離装置5は、このロードセルを用いて鋭利部材91にかかる負荷を検出することによって、鋭利部材91が支持基板Sに当接したことを検出する。
上述したように支持基板Sの側面は断面視において略円弧状に形成されている。したがって、鋭利部材91が支持基板Sの接着剤G寄りの側面に当接することにより、支持基板Sには、上方向きの力が加わることとなる。
つづいて、図11Bに示すように、剥離装置5は、鋭利部材91をさらに前進させる。これにより、支持基板Sは、側面の湾曲に沿って上方へ押し上げられる。この結果、支持基板Sの一部が接着剤Gから剥離して剥離開始部位Mが形成される。
なお、支持基板Sは第1保持部50には未だ保持されておらずフリーな状態であるため、支持基板Sの上方への移動が阻害されることがない。図11Bに示す処理において、鋭利部材91を前進させる距離d1は、たとえば2mm程度である。
剥離装置5は、剥離開始部位Mが形成されたことを確認する確認装置を備えていてもよい。たとえば、支持基板Sの上方に設置されるIR(Infrared)カメラを確認装置として用いることができる。
赤外線は、支持基板Sにおいて被処理基板Wから剥離した部位と剥離していない部位とでその反射率が変化する。そこで、先ずIRカメラで支持基板Sを撮像することで、支持基板Sにおける赤外線の反射率の違い等が示された画像データが得られる。かかる画像データは制御装置30へ送信され、制御装置30では、この画像データに基づき、支持基板Sにおいて被処理基板Wから剥離した部位、すなわち剥離開始部位Mを検出することができる。
剥離開始部位Mが検出された場合、剥離装置5は、後述する次の処理へ移行する。一方、制御装置30において剥離開始部位Mが検出されない場合、剥離装置5は、たとえば鋭利部材91をさらに前進させる、または鋭利部材91を一旦後退させて支持基板Sから離し、その後、図11A,図11Bに示す動作を再度実行するなどして、剥離開始部位Mを形成するようにする。このように、支持基板Sの剥離状態を確認する確認装置を設け、剥離状態に応じて剥離装置5を動作させることで、剥離開始部位Mを確実に形成することができる。
剥離開始部位Mが形成されると、剥離装置5は、図11Cに示すように、回転昇降機構105(図4参照)を用いて第2保持部70およびフレーム保持部80を降下させつつ、鋭利部材91をさらに前進させる。これにより、被処理基板Wおよび接着剤Gには下方向きの力が加わり、鋭利部材91によって支持された支持基板Sには上方向きの力が加わる。これにより、剥離開始部位Mが拡大する。
なお、図11Cに示す処理において、鋭利部材91を前進させる距離d2は、たとえば1mm程度である。
このように、剥離装置5は、支持基板Sの接着剤G寄りの側面に鋭利部材91を突き当てることにより、支持基板Sが被処理基板Wから剥がれるきっかけとなる剥離開始部位Mを重合基板Tの側面に形成することができる。
支持基板Sは、接着剤Gの約5〜15倍程度の厚みを有する。したがって、鋭利部材91を接着剤Gに当接させて剥離開始部位を形成する場合と比較して、鋭利部材91の鉛直方向の位置制御が容易である。
また、支持基板Sの接着剤G寄りの側面に鋭利部材91を当接させることによって、支持基板Sを被処理基板Wから引き剥がす方向の力(すなわち、上向きの力)を支持基板Sに加えることができる。しかも、支持基板Sの最外縁部に近い部位を持ち上げるため、支持基板Sを被処理基板Wから引き剥がす方向の力を支持基板Sに対して効率的に加えることができる。
また、鋭利部材91を接着剤Gに突き当てる場合と比較して、鋭利部材91が被処理基板Wに接触する可能性を低下させることができる。したがって、鋭利部材91による被処理基板Wの損傷を防止することができる。
なお、「支持基板Sの接着剤G寄りの側面」は、より好ましくは、支持基板Sの接合面Sjから支持基板Sの厚みの1/4の位置までの側面、すなわち、鋭利部材91とのなす角度θが0度以上45度以下の側面であるのが好ましい。鋭利部材91とのなす角度θが小さいほど、支持基板Sを持ち上げる力を大きくすることができるためである。
また、支持基板Sと接着剤Gとの接着力が比較的弱い場合には、図11Aに示すように、鋭利部材91を支持基板Sの接着剤G寄りの側面に当接させるだけで剥離開始部位Mを形成することが可能である。この場合、図11Bおよび図11Cに示す動作を省略することができる。
また、支持基板Sと接着剤Gとの接着力が比較的強い場合には、剥離装置5は、たとえば図11Cに示す状態からさらに回転昇降機構105を用いて重合基板Tを鉛直軸周りに回転させてもよい。これにより、剥離開始部位Mが重合基板Tの周方向に拡大するため、支持基板Sを被処理基板Wから剥がし易くすることができる。
ここで、鋭利部材91の刃先の形状について図12A〜図12Cを参照して説明する。図12A〜図12Cは、鋭利部材91の刃先の形状例を示す模式平面図である。
図12Aに示すように、鋭利部材91の刃先911は、平面視において直線状に形成されていてもよい。しかし、図12Aに示すように、支持基板S(重合基板T)の周縁部は円弧状である。このため、鋭利部材91の刃先が平面視において直線状に形成されていると、平面視において支持基板Sと交わる刃先の2点(図12AのP1,P2)に対して負荷が集中し易く、刃こぼれ等が生じるおそれがある。
そこで、たとえば図12Bに示すように、鋭利部材91の刃先911は、支持基板Sの外周部の形状に沿って円弧状に窪んだ形状としてもよい。これにより、刃先911全体が均等に支持基板Sに接触するため、刃先911の特定箇所に負荷が集中することを防止することができる。
また、図12Cに示すように、鋭利部材91の刃先911は、その中心部が支持基板Sに向けて円弧状に突出した形状としてもよい。これにより、刃先911を直線状に形成した場合と比較して、刃先911のより多くの部分を重合基板T内に進入させることができるため、支持基板Sに上方向きの力を加えた際に鋭利部材91にかかる負荷をより広い面積で受けることができ、負荷の集中を防止することができる。
なお、刃先911の形状を図12Bに示す形状とした場合、支持基板Sは、鋭利部材91から均等な向きの力を受ける。一方、刃先911の形状を図12Cに示す形状とした場合には、支持基板Sは、鋭利部材91の刃先911の中心部を始点として拡散する向きの力を受けることとなる。
ステップS103の剥離誘引処理を終えると、剥離装置5は、回転昇降機構105(図4参照)を用いて第2保持部70およびフレーム保持部80を上昇させて、重合基板Tの支持基板S側を第1保持部50の当接部51に当接させる(図10D参照)。そして、剥離装置5は、吸気装置532,542,552による吸気動作を開始させて、支持基板Sを第1保持部50で吸着保持する(ステップS104)。
つづいて、剥離装置5は、移動部61(図4参照)を動作させて(ステップS105)、剥離開始部位Mに対応する第1保持部50の外周部の一部、すなわち、個別領域514(図6参照)を第2保持部70から離す方向に移動させる。これにより、支持基板Sの外周部の一部が被処理基板Wから剥離する(図10E参照)。
このとき、第1追加移動部62および第2追加移動部63はまだ動作していないため、支持基板Sは、第1追加移動部62および第2追加移動部63によって上方から押さえ付けられた状態で、移動部61によって外周部の一部が引っ張られることとなる。したがって、支持基板Sの外周部の一部を被処理基板Wから効率良く剥離させることができる。
また、弾性部材52は、弾性部材片521〜523に分割されているため、移動部61によって弾性部材片521が引っ張られた場合でも、弾性部材片522や弾性部材片523には上向きの力がかかり難い。したがって、第1追加移動部62および第2追加移動部63によって支持基板Sが押さえ付けられた状態を維持し易いため、支持基板Sの外周部の一部を被処理基板Wからより効率良く剥離させることができる。
また、第1保持部50の当接部51は、柔軟性を有する樹脂部材で形成されるため、移動部61が第1保持部50を引っ張った際に、かかる引っ張りに伴って柔軟に変形する。このため、被処理基板Wに対して大きな負荷をかけることなく、支持基板Sを被処理基板Wから剥離させることができる。しかも、当接部51が柔軟性を有することで、支持基板Sを被処理基板Wから剥離させる力に「粘り」を加えることができるため、支持基板Sを被処理基板Wから効率良く剥離させることができる。
つづいて、剥離装置5は、第1追加移動部62(図4参照)を動作させて(ステップS106)、第1保持部50の個別領域515(図6参照)を第2保持部70から離す方向に移動させる。これにより、移動部61によって被処理基板Wから剥離された支持基板Sの外周部に引き続き、支持基板Sにおける個別領域515に吸着保持された部分が被処理基板Wから剥離する(図10F参照)。
このとき、第2追加移動部63はまだ動作していないため、支持基板Sは、第2追加移動部63によって上方から押さえ付けられた状態で、第1追加移動部62によって引っ張られることとなる。したがって、支持基板Sにおける個別領域515に吸着保持された部分を被処理基板Wから効率良く剥離させることができる。
また、上述したように、弾性部材52は、弾性部材片521〜523に分割されているため、第1追加移動部62によって弾性部材片522が引っ張られた場合でも、弾性部材片523には上向きの力がかかり難い。したがって、第2追加移動部63によって支持基板Sが押さえ付けられた状態を維持し易いため、支持基板Sにおける個別領域515に吸着保持された部分を被処理基板Wからより効率良く剥離させることができる。
つづいて、剥離装置5は、第2追加移動部63(図4参照)を動作させて(ステップS107)、第1保持部50の個別領域516(図6参照)を第2保持部70から離す方向に移動させる。これにより、第1追加移動部62によって被処理基板Wから剥離された支持基板Sの部分に引き続き、支持基板Sにおける個別領域516に吸着保持された部分が被処理基板Wから剥離する。
このように、剥離装置5は、移動部61を動作させた後、第1追加移動部62および第2追加移動部63を剥離の起点側に近い第1追加移動部62から順に段階的に動作させる。これにより、支持基板Sをその一端から他端へ向けて被処理基板Wから連続的に剥離させることができる。
その後、剥離装置5は、第1追加移動部62および第2追加移動部63を用いて第1保持部50の個別領域515,516を上昇させ、あるいは、移動部61および第1追加移動部62を用いて個別領域514,515を降下させるなどして支持基板Sを水平にした上で、剥離処理を終了する(図10G参照)。
上述してきたように、本実施形態に係る剥離装置5は、第1保持部50と、第2保持部70と、移動部61とを備える。第1保持部50は、支持基板S(第1基板の一例に相当)と被処理基板W(第2基板の一例に相当)とが接合された重合基板Tのうち支持基板Sを保持する。第2保持部70は、重合基板Tのうち被処理基板Wを保持する。移動部61は、第1保持部50の外周部の一部を第2保持部70から離す方向へ移動させる。また、第1保持部50は、柔軟性を有し、支持基板Sの略全面に当接する当接部51と、当接部51に設けられ、支持基板Sにおける当接部51との当接面を吸引する第1吸引部53(吸引部の一例に相当)とを備える。したがって、本実施形態に係る剥離装置5によれば、剥離処理の効率化を図ることができる。
<4.その他の実施形態>
ところで、上述してきた実施形態では、弾性部材52を分割することで、第1追加移動部62や第2追加移動部63によって支持基板Sが押さえ付けられた状態を維持し易くすることとしたが、さらに、当接部51自体を分割してもよい。図13は、第1の変形例に係る当接部の構成を示す模式底面図である。なお、以下の説明では、既に説明した部分と同様の部分については、既に説明した部分と同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図13に示すように、第1の変形例に係る当接部51Aは、個別領域514に対応する部位が他の部位と分割されている。
ここで、上述したように、支持基板Sを被処理基板Wから剥離する場合、剥離の最も起点側の領域を剥離するのに最も大きな力を要する。したがって、剥離の最も起点側に設けられる個別領域514に対応する当接部51Aの部位を分割することで、移動部61を用いて個別領域514を引っ張った際に、第1追加移動部62および第2追加移動部63によって個別領域515,516が押さえ付けられた状態をより確実に維持することができ、支持基板Sの外周部の一部を被処理基板Wからより確実に剥離させることができる。
なお、当接部51Aは、さらに、個別領域515に対応する部位が個別領域516に対応する部位から分割されていてもよい。すなわち、当接部51Aは、個別領域514〜516ごとに分割されていてもよい。
また、上述してきた実施形態では、当接部51の各個別領域514〜516に吸引口511〜513がそれぞれ1つずつ設けられる場合の例について説明したが、1つの個別領域514〜516に複数の吸引口が形成されてもよい。図14は、第2の変形例に係る当接部の構成を示す模式底面図である。
たとえば、図14に示すように、第2の変形例に係る当接部51Bは、剥離の進行方向に沿って配置された3つの吸引口511〜513に加え、個別領域515に対してさらに2つの吸引口512A,512Bを備える。吸引口512および吸引口512A,512Bは、個別領域515に対して円弧状に並べて配置される。また、吸引口512および吸引口512A,512Bは、1つの吸気装置542(図4参照)に接続されてもよいし、それぞれ個別の吸気装置に接続されてもよい。
このように、1つの個別領域515に対して複数の吸引口512,512A,512Bを設けることにより、支持基板Sをより強力に保持しておくことができる。
なお、ここでは、個別領域515に対して合計3個の吸引口512,512A,512Bを設ける場合の例を示したが、個別領域515に対して4個以上の吸引口を設けてもよい。同様に、個別領域514や個別領域516にも複数の吸引口を設けてもよい。
また、上述してきた実施形態では、剥離対象となる重合基板が、被処理基板Wと支持基板Sとが接着剤Gによって接合された重合基板Tである場合の例について説明した。しかし、剥離装置の剥離対象となる重合基板は、この重合基板Tに限定されない。たとえば、剥離装置5では、SOI基板を生成するために、絶縁膜が形成されたドナー基板と被処理基板とが張り合わされた重合基板を剥離対象とすることも可能である。
ここで、SOI基板の製造方法について図15Aおよび図15Bを参照して説明する。図15Aおよび図15Bは、SOI基板の製造工程を示す模式図である。図15Aに示すように、SOI基板を形成するための重合基板Taは、ドナー基板Kとハンドル基板Hとを接合することによって形成される。
ドナー基板Kは、表面に絶縁膜6が形成されるとともに、ハンドル基板Hと接合する方の表面近傍の所定深さに水素イオン注入層7が形成された基板である。また、ハンドル基板Hとしては、たとえばシリコンウェハ、ガラス基板、サファイア基板等を用いることができる。
剥離装置5では、たとえば、第1保持部50でドナー基板Kを保持し、第2保持部70でハンドル基板Hを保持した状態で、移動部61を用いて重合基板Taの外周部の一部を引っ張ることで、ドナー基板Kに形成された水素イオン注入層7に対して機械的衝撃を与える。これにより、図15Bに示すように、水素イオン注入層7内のシリコン−シリコン結合が切断され、ドナー基板Kからシリコン層8が剥離する。その結果、ハンドル基板Hの上面に絶縁膜6とシリコン層8とが転写され、SOI基板Waが形成される。なお、第1保持部50でハンドル基板Hを保持し、第2保持部70でドナー基板Kを保持してもよい。
また、上述してきた実施形態では、被処理基板Wと支持基板Sとを接着剤Gを用いて接合する場合の例について説明したが、接合面Wj,Sjを複数の領域に分け、領域ごとに異なる接着力の接着剤を塗布してもよい。
また、上述した実施形態では、重合基板Tが、ダイシングフレームFに保持される場合の例について説明したが、重合基板Tは、必ずしもダイシングフレームFに保持されることを要しない。
また、上述した実施形態では、剥離誘引部90が備える鋭利部材91が平刃である場合の例について説明したが、鋭利部材91は、たとえばカミソリ刃やローラ刃あるいは超音波カッター等を用いてもよい。
また、上述した実施形態では、第1追加移動部62が当接部51の個別領域515に対応する部位に設けられ、第2追加移動部63が当接部51の個別領域516に対応する部位に設けられる場合について説明したが、追加移動部は、個別領域515に対応する部位または個別領域516に対応する部位のいずれか一方にのみ設けられてもよい。また、剥離装置5は、必ずしも追加移動部を備えることを要しない。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。