以下、本発明の蒸着マスクの製造方法について、第1実施形態、及び第2実施形態を例に挙げ図面を用いて具体的に説明する。なお、第1実施形態、第2実施形態の製造方法において共通する部分については、本発明の蒸着マスクの製造方法として説明する。
<第1実施形態の蒸着マスクの製造方法>
第1実施形態の蒸着マスクの製造方法(以下、第1実施形態の製造方法と言う。)は、スリットが設けられた金属マスクと、樹脂板とが積層された樹脂板付き金属マスクを準備する工程と、樹脂板付き金属マスクに張力をかけた状態で、金属マスク側からスリットを通して樹脂板にレーザーを照射し、蒸着作製するパターンに対応した開口部を樹脂板に形成する工程と、を有することを特徴とする。
(樹脂板付き金属マスクを準備する工程)
本工程は、図1(a)に示すように、スリット15が設けられた金属マスク20と、樹脂板30とが積層された樹脂板付き金属マスク40を準備する工程である。スリットが設けられた金属マスク10と樹脂板30とが積層された樹脂板付き金属マスク40を準備するにあたり、まず、スリット15が設けられた金属マスク10を準備する。金属マスク10、樹脂板30については、本発明の製造方法で製造された蒸着マスクにおいて詳細に説明する。
金属マスク10は、金属から構成され、縦方向及び/又は横方向に延びるスリット15が配置されている。樹脂板付き金属マスクの樹脂板の、スリット15と重なる位置には、後述する工程において開口部25が形成される。
スリット15が設けられた金属マスク10の形成方法としては、金属板の表面にマスキング部材、例えば、レジスト材を塗工し、所定の箇所を露光し、現像することで、最終的にスリット15が形成される位置を残したレジストパターンを形成する。マスキング部材として用いるレジスト材としては処理性が良く、所望の解像性があるものが好ましい。次いで、このレジストパターンを耐エッチングマスクとして用いてエッチング法によりエッチング加工する。エッチングが終了後、レジストパターンを洗浄除去する。これにより、スリット15が設けられた金属マスク10が得られる。スリット15を形成するためのエッチングは、金属板の片面側から行ってもよく、両面から行ってもよい。また、金属板に樹脂板が設けられた積層体を用いて、金属板にスリット15を形成する場合には、金属板の樹脂板と接しない側の表面にマスキング部材を塗工して、片面側からのエッチングによってスリット15が形成される。なお、樹脂板が、金属板のエッチング材に対し耐エッチング性を有する場合には、樹脂板の表面をマスキングする必要はないが、樹脂板が、金属板のエッチング材に対する耐性を有しない場合には、樹脂板の表面にマスキング部材を塗工しておく必要がある。また、上記では、マスキング部材としてレジスト材を中心に説明を行ったが、レジスト材を塗工する代わりにドライフィルムレジストをラミネートし、同様のパターニングを行ってもよい。なお、樹脂板付き金属マスク40を構成する金属マスク10は、上記で例示した方法によって形成されたものに限定されるものではなく、市販品を用いることもできる。また、エッチングによるスリット15の形成にかえて、レーザー光を照射してスリット15を形成することもできる。
樹脂板付き金属マスクとするための金属マスクと樹脂板との貼り合せ方法や、形成方法についても特に限定されず、例えば、予め金属マスクとなる金属板に対して樹脂層をコーティングにより形成した積層体を準備し、積層体の状態で、金属板にスリット15を形成することで樹脂板付き金属マスクを得ることもできる。本発明において、樹脂板付き金属マスクを構成する樹脂板には、板状の樹脂のみならず、上記のようにコーティングによって形成された樹脂層や樹脂膜も含まれる。つまり、樹脂板は、予め準備されたものであってもよく、従来公知のコーティング法等によって形成されたものであってもよい。また、樹脂板は、樹脂フィルムや樹脂シートを含む概念である。また、樹脂板の硬度についても限定はなく、硬質板であってもよく、軟質板であってもよい。また、金属マスク10と樹脂板とは各種粘着剤を用いて貼り合わせてもよく、自己粘着性を有する樹脂板を用いてもよい。なお、金属マスク10と樹脂板30の大きさは同一であってよい。なお、本発明の製造方法で製造される蒸着マスク100の金属フレームへの固定を考慮して、樹脂板30の大きさを金属板10よりも小さくし、金属マスク10の外周部分が露出された状態としておくと、金属マスク10と金属フレームとの溶接が容易となり好ましい。
<開口部を形成する工程>
本工程は、図1(b)〜(d)に示すように、樹脂板付き金属マスク40に張力をかけた状態(図1(b)参照)で、金属マスク10側からスリット15を通して樹脂板30にレーザーを照射し(図1(c)参照)、蒸着作製するパターンに対応した開口部25を樹脂板付き金属マスク40の樹脂板30に形成する(図1(d)参照)工程である。
本発明の蒸着マスクの製造方法は、樹脂板付き金属マスク40に、張力をかけた状態で開口部25を形成している点を特徴としている。この特徴を有する本発明の製造方法によれば、金属フレームに蒸着マスクを固定する前後において、開口部25の寸法に変動が生ずることを防止できる。具体的には、最終的に金属フレームに蒸着マスクを溶接固定するにあたっては、金属フレームへの蒸着マスクの固定位置を正確にあわせることが重要であり、金属フレームへの蒸着マスクの固定は、張力をかけて位置合わせをした状態で行われる。ここで、本発明の製造方法では、金属フレームへ蒸着マスク100を固定するときにかかる張力を考慮し、張力をかけた状態で開口部25の形成が行われることから、開口部25の形成時における張力と、金属フレームへの蒸着マスク固定時における張力を同程度の張力とすることで、蒸着対象物に蒸着作製される蒸着パターンを、樹脂マスク20に設けられた開口部25の寸法通りのパターンで形成することができる。
本願明細書で言う「張力」とは、樹脂板付き金属マスク40を伸ばす方向にかけられる力を意味し、「樹脂板付き金属マスクに張力をかける」とは、樹脂板付き金属マスク40を伸ばす方向に外力を加えることを意味する。金属フレームへ蒸着マスクを固定する際に蒸着マスクにかけられる張力についても同様である。
樹脂板付き金属マスクに張力をかける方法について特に限定はなく、蒸着マスクの分野で従来公知の各種の方法を用いることができる。例えば、樹脂板付き金属マスクの対向する2辺を保持部により保持し、当該保持部の少なくとも一つを樹脂板付き金属マスクの外方に引っ張ることで、当該樹脂板付き金属マスクに張力をかけることができる。以下、樹脂板付き金属マスクに張力をかけることを、「樹脂板付き金属マスクを架張する」と言う場合がある。ここで言う保持部とは、何らかの手段により蒸着マスクの辺を保持可能な部材を意味する。蒸着マスクを保持する形態について特に限定はなく、例えば、保持部としてクランプを用いた場合には、当該クランプによって蒸着マスクの端部を把持することで蒸着マスクが保持される。また、保持部として金属板や樹脂板等の部材を用いた場合には、当該部材と蒸着マスクの端部とを粘着剤により貼り合わせ、或いは当該部材と蒸着マスクの端部とを溶接により固定することで蒸着マスクが保持される。また、保持部として磁性を有する磁性部材を用いた場合には、当該磁性部材と蒸着マスクの端部近傍に位置する金属マスクとを磁力を用いて引き付けることで蒸着マスクが保持される。これ以外の形態により、蒸着マスクを保持することもできる。なお、保持部による蒸着マスクの保持力が弱い場合には、保持部を蒸着マスク外方に引っ張って蒸着マスクを架張した際に、当初の保持位置から変動してしまう場合があることから、保持部による蒸着マスクの保持力は、蒸着マスクの架張時に保持位置の変動が生じない程度の保持力を有していることが必要である。これら保持力や、蒸着マスクを保持する際の簡易性を考慮すると、保持部としてクランプを用いることが好ましい。なお、各図に示す形態では、保持部80がクランプである場合を例に挙げて説明を行っている。
図1(b)に示す形態では、樹脂板付き金属マスク40の対向する2辺を保持部80としてのクランプで把持させ、各保持部80に連結しているモーターやエアシリンダ等の駆動手段85を作動させて、保持部80を矢印で示すように引っ張ることで、樹脂板付き金属マスクに張力をかけている。換言すれば、樹脂板付き金属マスクを架張している。図示する形態では、対向する2辺を、保持部としてのクランプ80で把持させ、縦方向外方に向かってそれぞれ張力を加えているが、対向する2辺のうちの1辺を固定し、他の1辺のみを縦方向外方に向かって張力を加えてもよい。横方向についても同様である。
また、張力をかける方向について特に限定はなく、縦方向外方に向かって張力をかけてもよく、横方向外方に向かって、或いは縦方向外方、及び横方向外方に向かって張力をかけてもよい。一般的には、縦方向外方、又は横方向外方の一方の方向に向かって張力がかけられる。また、張力をかける際には、ねじれや歪みなく蒸着マスクに張力をかけることが望ましい。本願明細書で言う「ねじれ」とは、架張時に蒸着マスクに生ずる波状のシワや、歪等を含む概念である。図2は、樹脂板付き金属マスクに張力がかけられた状態を示す平面図である。図1(b)では、横方向外方に向かって張力がかけられ、図2、図14(b)では縦方向外方に向かって張力がかけられている。張力をかける方向について限定はなく、図14(a)に示すように縦方向外方、及び横方向外方に向かって同時に張力をかけてもよい。また、図2に示す形態では、複数の駆動手段85は、1つの保持部80(クランプ)と連結されているが、各駆動手段85に対応するように独立した保持部80(クランプ)が設けられていてもよい(図示しない)。
また、樹脂板付き金属マスクの対向する2辺を保持する保持部の少なくとも一つは、樹脂板付き金属マスクの面と直交する第1の回転軸を軸として回転可能な第1回転機構(以下、単に、第1回転機構と言う場合がある。)、樹脂板付き金属マスクの面と平行する第2の回転軸を軸として回転可能な第2回転機構(以下、単に、第2回転機構と言う場合がある。)、及び樹脂板付き金属マスクが架張されている方向に直交する方向に移動可能な移動機構(以下、単に、移動機構と言う場合がある。)、のうち少なくとも一つの機構を備えていることが好ましい。これらの機構を備える保持部を引っ張って樹脂板付き金属マスクを架張することで、樹脂板付き金属マスクに張力をかけた際に生じ得る「ねじれ」を抑制した状態で、樹脂板付き金属マスクの架張が可能となる。これにより、より開口部の寸法変動が抑制された蒸着マスクを得ることができる。以下、上記第1回転機構、第2回転機構、移動機構を総称して、「本発明における機構」と言う場合がある。
図16は、第1回転機構を備える保持部80により、保持部80を回転させた状態を示す斜視図である。図示する形態では、樹脂板付き金属マスク40の面と直交する第1の回転軸(L1)を軸とすることにより、保持部80が矢印の方向に回転する構成をとる。図17は、第2回転機構を備える保持部80により、保持部80を回転させた状態を示す斜視図である。図示する形態では、樹脂板付き金属マスク40の面と平行する第2の回転軸(L2)を軸とすることにより、保持部80は矢印の方向に回転する構成をとる。図18は、移動機構を備える保持部80により、保持部80を移動させた状態を示す斜視図である。図示する形態では、樹脂板付き金属マスク40が架張されている方向に直交する方向(L3方向)に移動可能な構成をとる。図16〜図18では、樹脂板付き金属マスク40におけるスリット15を省略して記載している。
上記好ましい実施形態は、樹脂板付き金属マスク40の対向する2辺を保持する保持部80のうちの少なくとも一つの保持部80が、上記「本発明における機構」のうちの少なくとも一つの機構を備えているものであるが、より好ましい形態としては、(i)樹脂板付き金属マスク40の対向する2辺のうちの一辺を保持する保持部80が、第1回転機構、第2回転機構の何れか一方、又は双方を備え、他の一辺を保持する保持部80が移動機構を備える形態、(ii)樹脂板付き金属マスク40の対向する2辺のうちの一辺を保持する保持部80が、第1回転機構、第2回転機構の何れか一方、又は双方と、移動機構を備える形態等を挙げることができる。(ii)に示す形態では、樹脂板付き金属マスク40の他の一辺を保持する保持部80は、上記「本発明における機構」を備えていることを必ずしも要しない。(i)、(ii)に示す形態は、架張工程において樹脂板付き金属マスク40に生じ得る「ねじれ」を万能に抑制することができる点で好ましい形態である。また、「ねじれ」は、第1回転機構を備える保持部により抑制することができる場合が多く、したがって、回転機構としては、第1回転機構を備える保持部とすることが好ましい。以下、架張工程において生じ得る「ねじれ」の抑制について、上記「本発明における機構」を備える保持部の一例を挙げて説明する。
図19(a)、図20(a)では、架張により樹脂板付き金属マスク40に「ねじれ」が生じているものの、図19で示される保持部80aに移動機構を付与し、保持部80bに第1回転機構を付与し、保持部80aを矢印の方向に移動させ、保持部80bを矢印の方向に回転させることで、また、図20で示される保持部80aに移動機構を付与し、保持部80aを矢印の方向に移動させることで、図19(b)、図20(b)に示すように「ねじれ」を抑制した状態で樹脂板付き金属マスク40を架張することができる。図19、図20は、樹脂板付き金属マスクに張力をかけた状態の一例を示す上面図であり、(a)は樹脂板付き金属マスクに「ねじれ」が生じている状態を示す上面図であり、(b)は、樹脂板付き金属マスクの「ねじれ」が抑制された状態を示す上面図である。
樹脂板付き金属マスクを架張することで生じ得る「ねじれ」の抑制は、樹脂板付き金属マスク40を架張するとともに行ってもよく、樹脂板付き金属マスク40を架張した後に行ってもよい。以下、「ねじれ」を抑制することができる具体的な実施形態について説明する。
図21は、樹脂板付き金属マスク40を架張した状態を示す上面図である。図示する形態では、「本発明における機構」を備える保持部80は、保持部支持用フレーム90上に設けられている。「本発明における機構」を備える保持部80は、保持部支持用フレーム90に対して回転及び/又は移動可能となっている。
樹脂板付き金属マスク40を架張しつつ「ねじれ」を抑制することができる形態としては、保持部80に、ベアリング(玉軸受)等の回転対偶、直進対偶、すべり対偶等を設置し、架張工程において樹脂板付き金属マスク40が受けた力(張力)に倣って受動的に保持部80を回転させる形態を挙げることができる。これらの形態によれば、受動的に保持部80が、移動、回転等し、その結果、「ねじれ」を抑制しつつ樹脂板付き金属マスク40の架張を行うことができる。
図22(a)は、回転対偶が設けられた保持部80によって、樹脂板付き金属マスク40を架張しつつ、「ねじれ」を抑制した状態を示す部分拡大上面図であり、図22(b)は、図22(a)の正面図である。図22に示す形態では、回転対偶が設けられた保持部80によって、当該保持部80は、樹脂板付き金属マスク40の面と直交する第1の回転軸を軸として(図示する形態では、回転対偶が設けられた保持部80と直交する回転軸を軸として)回転可能となっている。図22(a)における破線で閉じられた領域は、それぞれ「ねじれ」の抑制がされていないとしたときの樹脂板付き金属マスク40、及び回転前の保持部である。また、直進対偶を用いることで、保持部80を移動可能とすることができる。
樹脂板付き金属マスク40を架張した後に「ねじれ」を抑制する実施形態としては、架張によって生じた「ねじれ」を機械的に制御する形態を挙げることができる。例えば、トルクセンサ等(図示しない)を介して、保持部80とモーター等の制御手段を接続し、樹脂板付き金属マスク40を架張したときの「ねじれ」によって生じる保持部80のトルクをトルクセンサ等で検出し、トルクが0となるように保持部80の移動量(距離)や回転角度をモーター等の制御手段で制御することで、架張時に生じた「ねじれ」を抑制することができる。換言すれば、架張によって生じた「ねじれ」を能動的に制御し、その結果、「ねじれ」を抑制することができる。この形態では、モーター等の制御手段が設けられた保持部80と直交する回転軸を軸として当該制御手段が設けられた保持部80が回転する。
また、樹脂板付き金属マスク40を架張しつつ「ねじれ」を抑制する形態と、樹脂板付き金属マスク40を架張した後に「ねじれ」を抑制する形態を組合せることもできる。また、図23に示すように、保持部支持用フレーム90上に、各種の機構(図示する形態では、移動機構、第2回転機構、第1回転機構)を積み重ね、当該機構を保持部と固定することで、任意の機構の組合せとすることもできる。例えば、第1回転機構として、上記回転対偶を用い、第2回転機構、及び移動機構として、モーター等の制御手段を用いることで、樹脂板付き金属マスク40を架張したときに生じる「ねじれ」を、第1回転機構により受動的に抑制しつつ、第2回転機構、及び移動機構により能動的に抑制することができる。また、図23に示す形態において、第1回転機構と保持部80との間に、上記で説明したトルクセンサ等を設けてもよい。
図24に示す形態は、保持部80がゴニオステージと固定されており、保持部支持用フレーム90に固定されているウォームギアの軸を回転させることで、当該ゴニオステージを備えない保持部80と直交する回転軸を軸として、ゴニオステージを揺動(移動)させ、保持部80に保持されている樹脂板付き金属マスク40の「ねじれ」を抑制している。具体的には、トルクセンサ等を用いて、樹脂板付き金属マスク40を架張したときの「ねじれ」によって生じる保持部80のトルクをトルクセンサ等で検出し、トルクが0となるようにウォームギアの軸を回転させてゴニオステージの揺動(移動)を制御することで、樹脂板付き金属マスク40の「ねじれ」を抑制することができる。
保持部80を駆動させるための駆動手段について特に限定はなく、例えば、モーターや、エアシリンダ等を挙げることができる。保持部80が「本発明における機構」を備える場合には、駆動手段は「本発明における機構」による機構を干渉しない位置において保持部80と接続されており、当該駆動手段を駆動させることで、保持部80を駆動し、樹脂板付き金属マスク40の架張が行われる。
図2、図14(a)に示す形態では、樹脂板付き金属マスクの対向する2辺のうちの一辺を、1つの保持部80で保持しているが、図26に示すように、樹脂板付き金属マスクの対向する2辺のうちの一辺を複数の保持部80で保持してもよい(図示する形態では、対向する2辺の双方の辺を複数の保持部で保持している)。この構成とすることで、左右、中央それぞれの場所において「ねじれ」を解消することができ、樹脂板付き金属マスク全体の「ねじれ」をより効果的に抑制することができる。樹脂板付き金属マスクの対向する2辺のうちの一辺を複数の保持部80で保持する場合には、当該一辺を保持している全ての保持部が、上記「本発明における機構」を備えていることが好ましい。特には、樹脂板付き金属マスクの対向する2辺のうちの一辺を保持している全ての保持部のそれぞれが、第1回転機構、第2回転機構、移動機構の全ての機構を備える、或いは、一辺を保持している全ての保持部のそれぞれが、第1回転機構と、移動機構を備えていることが好ましい。また、図示するように、樹脂板付き金属マスクの対向する2辺の双方の辺を複数の保持部で保持してもよい。
樹脂板付き金属マスクの対向する2辺のうちの一辺を複数の保持部で保持する場合には、(A)図26に示すように、当該複数の保持部ごとに駆動手段を連結させ、各保持部に連結されている駆動手段を、それぞれ駆動させて樹脂板付き金属マスクを架張してもよく、(B)複数の保持部を一つの駆動手段と連結させ(図示しない)、当該一つの駆動手段を駆動させて、樹脂板付き金属マスクを架張してもよい。
上記(A)の形態をとる場合には、樹脂板付き金属マスクを架張する際の引張量を保持部ごとに制御することができ、「ねじれ」の抑制をより効果的に行うことができる。なお、図26に示す形態では、保持部のそれぞれは、対応する駆動手段によって個別に制御されることから、複数の保持部のうちの一つの保持部によって、他の保持部の動きが規制されることはない。従って、上記(A)の形態をとる場合には、複数の保持部のそれぞれが備える機構は、同一の機構であってもよく、異なる機構であってもよい。例えば、図26に示す形態においては、複数の保持部のうちの一つの保持部が「移動機構」を備え、他の保持部が「第1回転機構」及び「第2回転機構」の何れか一方、又は双方を備えるものであってもよい。なお、このことは、保持部のそれぞれが異なる機構を備えていることを必須の条件とするものではなく、上記(A)の形態において、樹脂板付き金属マスクの一辺を保持する全ての保持部が、同一の機構を有していてもよい。例えば、全ての保持部が、第1回転機構、第2回転機構、移動機構の全ての機構を備える、或いは、全ての保持部のそれぞれが、第1回転機構と、移動機構を備えていてもよい。また、樹脂板付き金属マスクの対向する2辺のうちの一辺を保持する保持部80が上記(A)の形態をとる場合において、樹脂板付き金属マスクの対向する2辺のうちの他の一辺を保持する保持部80は、「本発明における機構」を備えていなくともよいが、図26に示すように、上記(A)の形態を有していることが好ましい。
一方、上記(B)の形態をとる場合には、複数の保持部は一つの駆動手段によって同時に駆動することとなる。したがって、複数の保持部のそれぞれが異なる機構を備える場合には、複数の保持部のうちの一つの保持部が、他の保持部の動きを妨げてしまう虞が生じ得る。この点を考慮すると、上記(B)の形態をとる場合には、複数の保持部のすべてが、同じ機構を備えていることが好ましい。例えば、樹脂板付き金属マスクの対向する2辺のうちの一辺を保持する全ての保持部が、第1回転機構、第2回転機構、移動機構の全ての機構を備える、或いは、全ての保持部のそれぞれが、第1回転機構と、移動機構を備えていることが好ましい。また、樹脂板付き金属マスクの対向する2辺のうちの一辺を保持する保持部80が上記(B)の形態をとる場合において、樹脂板付き金属マスクの対向する2辺のうちの他の一辺を保持する保持部80は、「本発明における機構」を備えていなくともよいが、樹脂板付き金属マスクの対向する2辺のうちの一辺を保持する保持部80と、他の一辺を保持する保持部80は、それぞれ、同一の機構を備えていることが好ましい。
金属フレームへ蒸着マスクを固定する際に蒸着マスクにかけられる張力は、開口部25の形成時に樹脂板付き金属マスク40にかけられた張力情報に基づいて適宜設定することができる。張力情報は、ロードセルを用いた張力値、基準マーク等を用いた引張距離で管理することができる。なお、上述した方法では、開口部25を形成する際の張力情報を、金属フレームに蒸着マスク100を溶接固定する際の基準としているが、蒸着マスクを金属フレームに溶接固定する際に蒸着マスクにかけられる張力情報が予め既知である場合には、当該溶接固定する際の張力情報に基づいて、開口部を形成する際に樹脂板付き金属マスク40にかけられる張力を決定することもできる。したがって、開口部25の形成時に、樹脂板付き金属マスク40にかけられる張力について特に限定はない。
最終的に金属フレームに蒸着マスクを溶接固定する際に、蒸着マスクにかけられる張力値が既知である場合には、蒸着マスクにかけられる張力値と略同等の張力値で、樹脂板付き金属マスクに張力をかけて開口部25を形成すればよい。また、張力による蒸着マスクの引張距離が既知である場合には、当該引張距離と略同等の引張距離となるように、樹脂板付き金属マスクに張力をかければよい。より具体的には、開口部を形成する際に樹脂板付き金属マスクにかけられる張力値は、金属フレームへ蒸着マスクを溶接固定するときにかけられる張力値の−50%〜50%の範囲内とすることが好ましい。また、開口部を形成する際における樹脂板付き金属マスクの引張距離は、金属フレームへ蒸着マスクを溶接固定するときの蒸着マスクの引張距離の−0.1%〜0.1%、好ましくは−0.05%〜0.05%の範囲内とすることが好ましい。これにより、開口部25の形成時に樹脂板付き金属マスク40にかけられる張力と、金属フレームへの固定時に蒸着マスク100にかけられる張力を同程度とすることができ、開口部25の寸法変動を防止することができる。
本願明細書で言う「樹脂板付き金属マスクにかけられる張力値」とは、張力をかける前の樹脂板付き金属マスク40の断面積に対してかかる張力の値を意味する。また、「蒸着マスクにかけられる張力値」とは、張力をかける前の蒸着マスクの断面積に対してかかる張力の値を意味する。樹脂板付き金属マスクや、蒸着マスクにかけられる張力値は、例えば、(株)エー・アンド・デイ製のシングルポイント型ロードセル(LC−4101−K006)等を用いて測定することができる。
「樹脂板付き金属マスクの引張距離」とは、張力をかけた後の樹脂板付き金属マスクの長さから、張力をかける前の樹脂板付き金属マスクの長さを引いた値を意味する。「蒸着マスクの引張距離」についても同様である。樹脂板付き金属マスクや、蒸着マスクの引張距離は、例えば、SOKIA製寸法測定機(AMIC−701)を用い、樹脂板付き金属マスクについては、張力をかける前後の樹脂板付き金属マスクの寸法を測定することで算出することができる。蒸着マスクの引張距離については、張力をかける前後の蒸着マスクの寸法を測定することで算出することができる。
また、本発明の製造方法で製造される蒸着マスク100において、金属マスク10のスリット非形成領域や、樹脂マスク20の開口部非形成領域に、開口部25の形成時に樹脂板付き金属マスク40にかけられた張力情報を記録してもよい。この場合には、本発明の製造方法で製造された蒸着マスク100を入手したユーザーは、当該張力情報と同程度の張力を蒸着マスクにかけた状態で、金属フレームへの固定を行うことで、開口部25の形成時に樹脂板付き金属マスク40にかけられる張力と、金属フレームへの固定時に蒸着マスク100にかけられる張力を同程度とすることができ、開口部25の寸法変動を防止することができる。
次いで、図1(c)に示すように、樹脂板付き金属マスク40に張力をかけた状態で樹脂板付き金属マスク40の、金属マスク10側からレーザー光を照射して、金属マスク10のスリット15と重なる位置に、蒸着作製するパターンに対応した開口部25が形成される。開口部25を形成した後に、保持部80(クランプ)を取り外すことで、図1(d)に示すように、スリット15が形成された金属マスク10と、開口部25が形成された樹脂マスク20とが積層されてなる蒸着マスク100が製造される。
本工程で用いられるレーザー装置については特に限定されることはなく、従来公知のレーザー装置を用いればよい。
<第2実施形態の蒸着マスクの製造方法>
第2実施形態の蒸着マスクの製造方法(以下、第2実施形態の製造方法と言う。)は、スリットが設けられた金属マスクと、樹脂板とが積層された樹脂板付き金属マスクを準備する工程と、金属フレームに、樹脂板付き金属マスクを仮固定する工程と、金属フレームに仮固定された樹脂板付き金属マスクに張力をかけた状態で、金属マスク側からスリットを通して樹脂板にレーザーを照射し、蒸着作製するパターンに対応した開口部を樹脂板に形成する工程と、樹脂板付き金属マスクから金属フレームを取り除く工程と、を有することを特徴とする。
(樹脂板付き金属マスクを準備する工程)
本工程は、図3(a)に示すように、スリット15が設けられた金属マスク20と、樹脂板30とが積層された樹脂板付き金属マスク40を準備する工程である。本工程は、第1実施形態の製造方法で説明した工程と同じであり、ここでの詳細な説明は省略する。
(樹脂板付き金属マスクを金属フレームに仮固定する工程)
本工程は、図3(b)、図4に示すように、金属フレーム50に、樹脂板付き金属マスク40を仮固定する工程である。
具体的には、本工程では、金属フレーム50の貫通孔非形成領域と、金属マスク10のスリット非形成領域とが直接的、又は間接的に接する箇所の一部において、金属フレーム50に蒸着マスク100が仮固定される。樹脂板付き金属マスクを金属フレーム50に仮固定する工程を有する第2実施形態の製造方法によれば、樹脂板付き金属マスク100を伸ばした状態で、金属フレーム50に樹脂板付き金属マスク40を密着保持させることができ、蒸着マスク100に張力をかけたときに生じ得るシワの発生を防止できる。なお、仮固定する工程を有しない場合には、開口部25の形成時に樹脂板付き金属マスク40に張力をかけることで、蒸着マスクが変形してしまい、当該蒸着マスクに波状のシワが発生しやすくなる。
蒸着マスクにおける波状のシワの発生要因の1つとしては、蒸着マスク自体が潜在的に持つ、或いは外的要因により生ずる蒸着マスクの歪みやねじれなどが挙げられる。これら、蒸着マスクのねじれや歪み以外にも、装置の構成や、装置の精度などによる張力の不均一によっても、蒸着マスクに波状のシワが発生しやすくなる。この波状のシワの発生は、開口部25の形成不良や、開口部25の寸法変動等を引き起こし、高精細な蒸着パターンを形成する際の妨げとなる。
第2実施形態の製造方法では、金属フレーム50に樹脂板付き金属マスク40を仮固定した状態で張力がかけられることから、第1実施形態の製造方法と比較して、張力をかけたときに生じ得る波状のシワの発生を防止することができる点で、好ましい実施形態であるといえる。本願明細書で言う「仮固定」とは、金属フレームの貫通孔非形成領域と、金属マスクのスリット非形成領域とが直接的、又は間接的に接する箇所の一部において、微小移動が可能な状態で、金属フレーム50に樹脂板付き金属マスク40を保持する固定態様を意味する。
金属フレーム50と樹脂板付き金属マスク40との仮固定は、金属フレーム50の貫通孔非形成領域と、金属マスク10のスリット非形成領域とが直接的、又は間接的に接する箇所の一部において行われる。なお、金属フレーム50の貫通孔非形成領域とは、金属フレーム50において貫通孔55が形成されていない箇所、換言すれば、金属フレーム50の金属部分を意味する。また、金属マスク10のスリット非形成領域とは、金属マスク10においてスリット15が形成されていない箇所、換言すれば、金属マスク10の金属部分を意味する。なお、金属フレーム50のフレーム部分、及び図5で示される支持体60は、金属フレーム50の貫通孔非形成領域を構成する。
「金属フレーム」
仮固定に用いられる金属フレーム50は、略矩形形状の枠部材であり、図5に示すようにフレーム部と、支持体60とによって、複数の貫通孔55に分割されている。支持体60は、金属フレーム50と、樹脂板付き金属マスク40とを仮固定するために設けられ、金属フレーム50と金属マスク10とが対向するように、金属フレーム50と、樹脂板付き金属マスク40とを重ね合わせたときに、最終的に樹脂板10に形成される開口部25や、金属マスク10に形成されたスリット15と重ならない位置に設けられている。なお、このことは、樹脂マスク20に形成されている開口部25の全てが貫通孔55から露出していることを意味するものではなく、貫通孔非形成領域、例えば支持体60と重なる位置に、蒸着作製するパターンに寄与しないダミー開口部が形成されていてもよい。なお、ダミー開口部とは、蒸着作製するパターンに対応しない開口部である。図5は、金属フレーム50の一例を示す正面図であり、(a)は、金属フレームの貫通孔55をまたぐようにして横方向に複数の支持体60が設けられている。支持体60は、図5(b)に示すように縦方向に複数の支持体60が設けられていてもよく、図5(c)に示すように、縦方向、及び横方向に複数の支持体60が設けられていてもよい。
金属フレーム50は樹脂板付き金属マスク40を仮固定するために用いられ、最終的には、蒸着マスク100から取り除かれる。したがって、金属フレーム40の厚みなどについていかなる限定もされることはない。
金属フレーム50の材料について特に限定はないが、剛性が大きい金属材料、例えば、SUSや、インバー材などが一般的である。一例としては、金属フレームの厚みは3mm〜100mm程度であり、フレーム部の幅は10mm〜100mm程度である。
金属フレーム50の材料について特に限定はないが、以下で例示する方法を挙げることができる。以下、仮固定の一例について説明する。
(磁力を利用して仮固定を行う方法)
金属フレームと、蒸着マスク100とを仮固定する一態様として、磁力を用いて仮固定を行う方法を挙げることができる。具体的には、図3(b)に示すように、金属フレーム50と金属マスク10とが対向するように、金属フレーム50の一方面側に、樹脂板付き金属マスク40を重ね合わせ、金属フレーム100の他方面側に、支持体60と接するようにして所定形状の磁石70を配置し、支持体60を介して、磁石70と、樹脂板付き金属マスク40とを引き付けることで、金属フレーム50と、樹脂板付き金属マスク40とを仮固定することができる。つまり、磁石70と、支持体60と、金属マスク10のスリット非形成領域とが重なる位置において、金属フレーム50に樹脂板付き金属マスク40が仮固定される。なお、図3(b)は、金属フレーム50に樹脂板付き金属マスク40が仮固定された状態を示す概略断面図であり、図4は、金属フレーム50に仮固定された樹脂板付き金属マスク40に張力をかけた状態を、金属マスク側から見た平面図である。図4では、横方向外方に向かってのみ張力がかけられているが、張力をかける方向は図示する形態に限定されるものではなく、縦方向外方に向かってのみ張力をかけてもよく、縦方向外方、及び横方向外方に向かって同時に張力をかけてもよい。また、横方向外方に向かって張力をかけた後に、縦方向外方に向かって張力をかけてもよく、縦方向外方に向かって張力をかけた後に、横方向外方に向かって張力をかけてもよい。なお、図4に示すように、磁石70が縦方向に延びる形状である場合には、磁石70の長手方向である縦方向に直交する方向、すなわち横方向外方に向かって張力をかけることが好ましい。また、支持体60と金属マスク10とを磁力を利用して仮固定する場合には、金属マスク10として、磁石70により吸着可能な磁性体が用いられる。
図示する形態では、支持体60よりもやや幅広な磁石70が支持体60に沿って設けられているが、この形態に限定されることはなく、例えば、図6(a)、(b)に示すように、1つの支持体60と接する位置に、複数の磁石70が設けられていてもよい。また、図6(c)に示すように、支持体60より幅狭な磁石70が設けられていてもよい。磁石70は、全ての支持体60と接する1つの大型の磁石70を用いてもよいが、後述する開口部25を形成する工程では、スリット15を通してレーザー光が照射されることから、スリット15と重なる位置には、磁石70が設けられていないことが好ましい。スリット15と重なる位置に磁石70が設けられている場合であっても、レーザー光によって、磁石70を通して、樹脂板30に開口部25を形成することもできるが、この場合には、磁石70がダメージを受け、繰り返し磁石を使用することができなくなり、コストの面で好ましくない。また、磁石70の存在によって、形成される開口部25の寸法精度が低下する場合もある。
また、上記では、所定形状の磁石70を用いて、支持体60を介して、磁石70と、樹脂板付き金属マスク40とを引き付けて仮固定を行う例を説明しているが、磁石70を用いることなく、支持体60自体に磁力を付与することで、金属フレーム50と、樹脂板付き金属マスク40とを直接的に仮固定することもできる。
(吸着層を利用して仮固定を行う方法)
金属フレーム50と、樹脂板付き金属マスク40とを仮固定する別の態様として、図7に示すように支持体60と、樹脂板付き金属マスク40の金属マスク10との間に、吸着層65を設け、吸着層65を利用して、金属フレーム50と樹脂板付き金属マスク40とを仮固定することもできる。図7は、金属フレーム50と樹脂板付き金属マスク40とが仮固定されている箇所の部分拡大断面図である。吸着層65を利用した仮固定としては、吸着層65として、(1)粘着性を有する材料を用い、吸着層65の粘着性を利用して仮固定を行う方法や、(2)液体材料を用い、金属フレーム50と蒸着マスク100とを仮固定する方法を挙げることができる。
(吸着を利用して仮固定を行う方法)
また、金属フレームと、樹脂板付き金属マスク40とを仮固定する別の態様として、磁石70や、吸着層65を用いずに、各種の吸着方法を用いて、金属フレーム50と樹脂板付き金属マスク40とを仮固定することもできる。吸着方法の一例としては、エアー吸着法を挙げることができる。エアー吸着を利用した一例としては、支持体60の一部にエアー吸着用の吸着孔を設け、当該吸着孔からの吸引によって、金属フレーム50と樹脂板付き金属マスク40とを仮固定する方法を挙げることができる。これ以外にも、静電チャックを用い、金属フレーム50と樹脂板付き金属マスク40とを静電吸着により仮固定を行う方法、帯電ガンを使用し、金属フレームや、樹脂板付き金属マスク40を一時的に帯電させて仮固定を行う方法を挙げることができる。
上記で説明した各種の仮固定において、金属フレーム50と樹脂板付き金属マスク40との仮固定は、金属フレーム50の貫通孔非形成領域と、金属マスク10のスリット非形成領域とが直接的、又は間接的に接する全ての箇所で行われていてもよく、金属フレーム50の貫通孔非形成領域と、金属マスク10のスリット非形成領域とが直接的又は間接的に接する箇所の一部で行われていてもよい。また、上記では支持体60が磁性体である場合を例に挙げて説明を行ったが、磁力を利用して仮固定する以外の方法によって金属フレームと樹脂板付き金属マスクとを仮固定する場合には、支持体60は、必ずしも磁性体である必要はなく、樹脂材料などを使用することもできる。また、支持体60と金属フレーム50は同一の材料によって一体をなすものであってもよい。また、支持体60と金属フレーム50とが異なる材料である場合には、金属フレーム50上に支持体60を、各種の溶接方法や、接着方法を用いて固定することもできる。
<開口部を形成する工程>
本工程は、図3(c)〜(e)に示すように、金属フレーム50に仮固定された樹脂板付き金属マスク40に張力をかけた状態で、金属マスク10側からスリット15を通して樹脂板にレーザーを照射し(図3(d)参照)、蒸着作製するパターンに対応した開口部25を樹脂板に形成する(図3(e)参照)工程である。図4は、金属フレーム50に仮固定された樹脂板付き金属マスク40に張力をかけた状態を示す平面図である。
樹脂板付き金属マスク40に張力をかける方法は、上記第1実施形態の製造方法で説明した方法と同じであり、例えば、樹脂板付き金属マスク40の架張は、上記第1実施形態の製造方法で説明したように、樹脂板付き金属マスクの対向する2辺を保持部で保持し、当該保持部を引っ張ることで行ってもよい。また、第2実施形態の製造方法においても、樹脂板付き金属マスクを架張した際に生じ得る「ねじれ」を抑制すべく、保持部の少なくとも一つが、「本発明における機構」を備えていてもよい。「本発明における機構」は、上記第1実施形態の製造方法で説明した通りであり、ここでの詳細な説明は省略する。なお、図3(c)に示す形態では、樹脂板付き金属マスク40の端部は、金属フレーム50の端部から外方に突出しており、当該突出した部分が、保持部80(クランプ)によって把持されている。なお、張力をかける方法は、図示する形態に限定されるものではなく、金属フレーム50の端部から樹脂板付き金属マスク40の端部を突出させることなく張力をかけることもできる。図25は、樹脂板付き金属マスク40を架張して金属フレームに仮固定を行うときの状態を示す上面図である。
次いで、図3(d)に示すように、樹脂板付き金属マスク40に張力をかけた状態で樹脂板付き金属マスク40の、金属マスク10側からレーザー光を照射して、金属マスク10のスリット15と重なる位置に、蒸着作製するパターンに対応した開口部25が形成される。開口部25を形成した後に、保持部80(クランプ)、金属フレーム50、磁石70を取り外すことで、図3(e)に示すように、スリット15が形成された金属マスク10と、開口部25が形成された樹脂マスク20とが積層されてなる蒸着マスク100が製造される。
上記で説明した蒸着マスクの製造方法では、1つの樹脂板付き金属マスク40に張力をかけた状態で開口部を形成する例、及び、金属フレーム50に1つの樹脂板付き金属マスク40を仮固定した状態で張力をかけ、当該張力を保持した状態で開口部25を形成する例を挙げて説明したが、図15(a)に示すように、複数の樹脂板付き金属マスク40に同時に張力をかけた状態で、複数の樹脂板付き金属マスク40のそれぞれに開口部25を形成し、複数の蒸着マスクを同時に形成することもできる。また、図15(b)に示すように、金属フレーム50に、複数の樹脂板付き金属マスク40を仮固定した状態で、当該複数の樹脂板付き金属マスク40に同時に張力をかけ、当該張力を保持した状態で複数の樹脂板付き金属マスク40のそれぞれに開口部25を形成し、次いで、樹脂板付き金属マスク40から金属フレームを取り除くことで、複数の蒸着マスクを同時に形成することもできる。
<本発明の製造方法で製造された蒸着マスク>
次に、本発明の製造方法で製造された蒸着マスクを例に挙げ、本発明の製造方法について更に詳細に説明する。
(蒸着マスク)
図1(d)や、図3(e)に示すように、蒸着マスク100は、スリット15が形成された金属マスク10と、金属マスク10の表面に位置し、蒸着作製するパターンに対応した開口部25が形成された樹脂マスク20が積層された構成をとる。
本発明の製造方法で製造された蒸着マスク100は、図8に示すように、1画面に対応する蒸着パターンの形成に用いられるものであってもよく、図9(a)に示すように、2以上の複数画面に対応する蒸着パターンの同時形成に用いられるものであってもよい。なお、図8に示す樹脂マスク20には、1画面を構成する複数の開口部25が形成され、当該1画面を構成する開口部25は、複数のスリット15(8つのスリット)によって分割されている。図9(a)に示す樹脂マスク20には、複数画面(12画面)を構成する開口部25が形成されている。ここで言う「1画面」とは、1つの製品に対応する開口部25の集合体を意味し、当該1つの製品が有機ELディスプレイである場合には、1つの有機ELディスプレイを形成するのに必要な有機層の集合体、つまり、有機層となる開口部25の集合体が「1画面」となる。
樹脂マスク20に複数画面を構成する開口部25を形成する場合には、図9(a)に示すように、画面単位毎に所定の間隔をあけて開口部25が形成されていることが好ましい。なお、図8、図9では、破線で閉じられた領域を「1画面」としている。図9(a)では、6個の開口部25によって1画面が構成されているが、この形態に限定されるものではなく、例えば、1つの開口部25を1画素としたときに、数百万個の開口部25によって1画面を構成することもできる。画面間のピッチの一例としては、縦方向のピッチ、横方向のピッチともに1mm〜100mm程度である。なお、画面間のピッチとは、図9(a)のW1、W2に示すように1の画面と、当該1の画面と隣接する他の画面とにおいて、隣接している開口部間のピッチを意味する。図9(a)に示す形態では、1つのスリット15は、1画面を構成する開口部25全体と重なる位置に形成されているが、図9(b)に示すように、1つのスリット15が、複数画面を構成する開口部25全体と重なる位置(図9(b)に示す場合にあっては、2画面を構成する開口部25と重なる位置)に形成されていてもよい。したがって、樹脂板付き金属マスク40を構成する金属マスク10の選定、樹脂板30への開口部25の形成は、これらの点を考慮して適宜設定することができる。
本発明の製造方法で製造された蒸着マスク100によれば、蒸着マスクの軽量化を図ることができる。具体的には、本発明の製造方法で製造された蒸着マスク100の質量と、従来公知の金属のみから構成される蒸着マスクの質量とを、蒸着マスク全体の厚みが同一であると仮定して比較すると、従来公知の蒸着マスクの金属材料の一部を樹脂材料に置き換えた分だけ、本発明の製造方法で製造された蒸着マスク100の質量は軽くなる。また、金属のみから構成される蒸着マスクを用いて、軽量化を図るためには、当該蒸着マスクの厚みを薄くする必要などがあるが、蒸着マスクの厚みを薄くした場合には、蒸着マスクを大型化した際に、蒸着マスクに歪みが発生する場合や、耐久性が低下する場合が起こる。一方、本発明の製造方法で製造された蒸着マスクによれば、大型化したときの歪みや、耐久性を満足させるべく、蒸着マスク全体の厚みを厚くしていった場合であっても、樹脂マスク20の存在によって、金属のみから形成される蒸着マスクよりも軽量化を図ることができる。
(樹脂マスク)
本発明の製造方法で製造された蒸着マスクを構成する樹脂マスク20は、樹脂から構成され、図1(d)に示すように、スリット15と重なる位置に蒸着作製するパターンに対応した開口部25が設けられている。なお、本願明細書において蒸着作製するパターンとは、当該蒸着マスクを用いて作製しようとするパターンを意味し、例えば、当該蒸着マスクを有機EL素子の有機層の形成に用いる場合には、当該有機層の形状である。また、本発明では、開口部が縦横に複数列配置された例を挙げて説明をしているが、開口部25は、スリットと重なる位置に形成されていればよく、スリット15が、縦方向、或いは横方向に1列のみ配置されている場合には、当該1列のスリット15と重なる位置に開口部25が形成されていればよい。
樹脂マスク20は、従来公知の樹脂材料を適宜選択して用いることができ、その材料について特に限定されないが、レーザー加工等によって高精細な開口部25の形成が可能であり、熱や経時での寸法変化率や吸湿率が小さく、軽量な材料を用いることが好ましい。このような材料としては、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、エチレン−メタクリル酸共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、セロファン、アイオノマー樹脂等を挙げることができる。上記に例示した材料の中でも、その熱膨張係数が16ppm/℃以下である樹脂材料が好ましく、吸湿率が1.0%以下である樹脂材料が好ましく、この双方の条件を備える樹脂材料が特に好ましい。本発明では、樹脂マスク20が上述したように金属材料と比較して、高精細な開口部25の形成が可能な樹脂材料から構成される。したがって、高精細な開口部25を有する蒸着マスク100とすることができる。したがって、樹脂板付き金属マスク40を構成する樹脂板30の材料としては、これらのものを適宜選択して用いることが好ましい。
樹脂マスク20の厚みについても特に限定はないが、本発明の製造方法で製造された蒸着マスク100を用いて蒸着を行ったときに、蒸着作成するパターンに不充分な蒸着部分、つまり目的とする蒸着膜厚よりも薄い膜厚となる蒸着部分、所謂シャドウが生じることを防止するためには、樹脂マスク20は可能な限り薄いことが好ましい。しかしながら、樹脂マスク20の厚みが3μm未満である場合には、ピンホール等の欠陥が生じやすく、また変形等のリスクが高まる。一方で、25μmを超えるとシャドウの発生が生じ得る。この点を考慮すると樹脂マスク20の厚みは3μm以上25μm以下であることが好ましい。樹脂マスク20の厚みをこの範囲内とすることで、ピンホール等の欠陥や変形等のリスクを低減でき、かつシャドウの発生を効果的に防止することができる。特に、樹脂マスク20の厚みを、3μm以上10μm以下、より好ましくは4μm以上8μm以下とすることで、400ppiを超える高精細パターンを形成する際のシャドウの影響をより効果的に防止することができる。なお、本発明の製造方法で製造された蒸着マスク100において、金属マスク10と樹脂マスク20とは、直接的に接合されていてもよく、粘着剤層を介して接合されていてもよいが、粘着剤層を介して金属マスク10と樹脂マスク20とが接合される場合には、上記シャドウの点を考慮して、樹脂マスク20と粘着剤層との合計の厚みが3μm以上25μm以下、好ましくは3μm以上10μm、特に好ましくは、4μm以上8μm以下の範囲内となるように設定することが好ましい。したがって、樹脂板付き金属マスク40を準備する工程においては、樹脂マスク20の厚みが上記好ましい範囲となるように、樹脂板30の厚みを設定することが好ましい。
開口部25の形状、大きさについて特に限定はなく、蒸着作製するパターンに対応する形状、大きさであればよい。また、図8に示すように、隣接する開口部25の縦方向のピッチP1や、横方向のピッチP2についても蒸着作製するパターンに応じて適宜設定することができる。
開口部25を形成する位置や、開口部25の数についても特に限定はなく、スリット15と重なる位置に1つ形成されていてもよく、縦方向、或いは横方向に複数形成されていてもよい。図8に示す各形態では、各スリット15は、縦方向、及び横方向に複数形成されている開口部25と重なる位置に形成されている。
開口部25の断面形状についても特に限定はなく、開口部25を形成する樹脂マスクの向かいあう端面同士が略平行であってもよいが、図1(d)、図3(e)に示すように、開口部25はその断面形状が、蒸着源に向かって広がりをもつような形状であることが好ましい。換言すれば、金属マスク10側に向かって広がりをもつテーパー面を有していることが好ましい。開口部25の断面形状を当該構成とすることにより、本発明の製造方法で製造された蒸着マスク100を用いて蒸着を行ったときに、蒸着作成するパターンにシャドウが生じることを防止することができる。テーパー角については、樹脂マスク20の厚み等を考慮して適宜設定することができるが、樹脂マスクの開口部における下底先端と、同じく樹脂マスクの開口部における上底先端を結んだ角度が5°〜85°の範囲内であることが好ましく、15°〜75°の範囲内であることがより好ましく、25°〜65°の範囲内であることがさらに好ましい。特には、この範囲内の中でも、使用する蒸着機の蒸着角度よりも小さい角度であることが好ましい。さらに、図1(d)、図3(e)にあっては、開口部25を形成する端面は直線形状を呈しているが、これに限定されることはなく、外に凸の湾曲形状となっている、つまり開口部25の全体の形状がお椀形状となっていてもよい。このような断面形状を有する開口部25は、例えば、開口部25を形成する工程において、レーザーの照射位置や、レーザーの照射エネルギーを適宜調整する、或いは照射位置を段階的に変化させる多段階のレーザー照射を行うことで形成可能である。
また、本発明の製造方法で製造された蒸着マスク100を用いて蒸着を行ったときに、樹脂マスク20の開口部25には非常に高い熱が加わり、樹脂マスク20の開口部25を形成する端面から、ガスが発生し、蒸着装置内の真空度を低下させる等のおそれが生じ得る。したがって、この点を考慮すると、図10に示すように、樹脂マスク20の開口部25を形成する端面には、バリア層26が設けられていることが好ましい。バリア層26を形成することで、樹脂マスク20の開口部25を形成する端面からガスが発生することを防止できる。
バリア層26は、無機酸化物や無機窒化物、金属の薄膜層または蒸着層を用いることができる。無機酸化物としては、アルミニウムやケイ素、インジウム、スズ、マグネシウムの酸化物を用いることができ、金属としてはアルミニウム等を用いることができる。バリア層26の厚みは、0.05μm〜1μm程度であることが好ましい。
さらに、バリア層は、樹脂マスク20の蒸着源側表面を覆っていることが好ましい。樹脂マスク20の蒸着源側表面をバリア層26で覆うことによりバリア性が更に向上する。バリア層は、無機酸化物、および無機窒化物の場合は各種PVD法、CVD法によって形成することが好ましい。金属の場合は、真空蒸着法によって形成することが好ましい。なお、ここでいうところの樹脂マスク20の蒸着源側表面とは、樹脂マスク20の蒸着源側の表面の全体であってもよく、樹脂マスク20の蒸着源側の表面において金属マスクから露出している部分のみであってもよい。バリア層を形成する工程は、本発明の製造方法における任意の工程であり、開口部25を形成する工程の後に行われる工程である。
図11は、樹脂マスク20の一例を示す平面図である。図11に示すように、樹脂マスク20上には、樹脂マスク20の縦方向、或いは横方向(図11の場合は縦方向)にのびる溝28が形成されていることが好ましい。蒸着時に熱が加わった場合、樹脂マスク20が熱膨張し、これにより開口部25の寸法や位置に変化が生じる可能性があるが、当該溝28を形成することで樹脂マスクの膨張を吸収することができ、樹脂マスクの各所で生じる熱膨張が累積することにより樹脂マスク20が全体として所定の方向に膨張して開口部25の寸法や位置が変化することを防止することができる。第2実施形態の製造方法では、溝28は、仮固定される箇所に対応する位置に設けられていてもよく、仮固定される箇所に対応する位置とは異なる位置に設けられていてもよい。溝を形成する工程は、本発明の製造方法における任意の工程である。
なお、図11では、開口部25の間に縦方向に延びる溝28が形成されているが、これに限定されることはなく、開口部25の間に横方向に延びる溝を形成してもよい。さらには、開口部25の間に限定されることはなく、開口部25と重なる位置に溝を形成してもよい。さらには、これらを組み合わせた態様で溝を形成することも可能である。
溝28の深さやその幅については特に限定はないが、溝28の深さが深すぎる場合や、幅が広すぎる場合には、樹脂マスク20の剛性が低下する傾向にあることから、この点を考慮して設定することが必要である。また、溝の断面形状についても特に限定されることはなくU字形状やV字形状など、加工方法などを考慮して任意に選択すればよい。
(金属マスク)
本発明の製造方法で製造された蒸着マスクを構成する金属マスク10は、金属から構成され、樹脂マスク20の開口部25と重なる位置に、縦方向及び/又は横方向に延びるスリット15が配置されている。スリット15は開口と同義である。
金属マスク10に設けられているスリット15の断面形状についても特に限定されることはないが、図1(d)や、図3(e)に示すように、蒸着源に向かって広がりをもつような形状であることが好ましい。
また、図示する形態では、スリット15の開口形状は、矩形状を呈しているが、開口形状について特に限定はなく、スリット15の開口形状は、台形状、円形状等いかなる形状であってもよい。
金属マスク10の材料について特に限定はなく、蒸着マスクの分野で従来公知のものを適宜選択して用いることができ、例えば、ステンレス鋼、鉄ニッケル合金、アルミニウム合金などの金属材料を挙げることができる。中でも、鉄ニッケル合金であるインバー材は熱による変形が少ないので好適に用いることができる。
また、本発明の製造方法で製造された蒸着マスク100を用いて、蒸着対象物上へ蒸着を行うにあたり、蒸着対象物後方に磁石等を配置して蒸着対象物前方の蒸着マスク100を磁力によって引きつけることが必要な場合や、第2実施形態の製造方法で説明したように金属フレーム50と樹脂板付き金属マスク40とを磁力を利用して仮固定する場合には、金属マスク10を磁性体で形成することが好ましい。磁性体の金属マスク10としては、純鉄、炭素鋼、W鋼、Cr鋼、Co鋼、KS鋼、MK鋼、NKS鋼、Cunico鋼、Al−Fe合金等を挙げることができる。また、金属マスク10を形成する材料そのものが磁性体でない場合には、当該材料に上記磁性体の粉末を分散させることにより金属マスク10に磁性を付与してもよい。
金属マスク10の厚みについても特に限定はないが、5μm〜100μm程度であることが好ましい。蒸着時におけるシャドウの防止を考慮した場合、金属マスク10の厚さは薄い方が好ましいが、5μmより薄くした場合、破断や変形のリスクが高まるとともにハンドリングが困難となる可能性がある。ただし、本発明の製造方法で製造される蒸着マスク100では、金属マスク10は樹脂マスク20と一体化されていることから、金属マスク10の厚さが5μmと非常に薄い場合であっても、破断や変形のリスクを低減させることができ、5μm以上であれば使用可能である。なお、100μmより厚くした場合には、シャドウの発生が生じ得るため好ましくない。本願明細書でいうシャドウとは、本発明の蒸着マスクを用いて蒸着対象物に蒸着パターンの形成を行ったときに、蒸着対象物上に蒸着形成されるパターンに不十分な蒸着部分、つまり目的とする蒸着膜厚よりも薄い膜厚となる蒸着部分が生ずる現象のことを言う。
以下、図12(a)〜図12(c)を用いてシャドウの発生と、金属マスク10の厚みとの関係について具体的に説明する。図12(a)に示すように、金属マスク10の厚みが薄い場合には、蒸着源から蒸着対象物に向かって放出される蒸着材は、金属マスク10のスリット15の内壁面や、金属マスク10の樹脂マスク20が形成されていない側の表面に衝突することなく金属マスク10のスリット15、及び樹脂マスク20の開口部25を通過して蒸着対象物へ到達する。これにより、蒸着対象物上へ、均一な膜厚での蒸着パターンの形成が可能となる。つまりシャドウの発生を防止することができる。一方、図12(b)に示すように、金属マスク10の厚みが厚い場合、例えば、金属マスク10の厚みが100μmを超える厚みである場合には、蒸着源から放出された蒸着材の一部は、金属マスク10のスリット15の内壁面や、金属マスク10の樹脂マスク20が形成されていない側の表面に衝突し、蒸着対象物へ到達することができない。蒸着対象物へ到達することができない蒸着材が多くなるほど、蒸着対象物に目的とする蒸着膜厚よりも薄い膜厚となる未蒸着部分が生ずる、シャドウが発生することとなる。
シャドウ発生を十分に防止するには、図12(c)に示すように、スリット15の断面形状を、蒸着源に向かって広がりをもつような形状とすることが好ましい。このような断面形状とすることで、蒸着マスク100に生じうる歪みの防止、或いは耐久性の向上を目的として、蒸着マスク全体の厚みを厚くしていった場合であっても、蒸着源から放出された蒸着材が、スリット15の当該表面や、スリット15の内壁面に衝突等することなく、蒸着材を蒸着対象物へ到達させることができる。より具体的には、金属マスク10のスリット15における下底先端と、同じく金属マスク10のスリット15における上底先端を結んだ直線と金属マスク10の底面とのなす角度が5°〜85°の範囲内であることが好ましく、15°〜75°の範囲内であることがより好ましく、25°〜65°の範囲内であることがさらに好ましい。特には、この範囲内の中でも、使用する蒸着機の蒸着角度よりも小さい角度であることが好ましい。このような断面形状とすることで、蒸着マスク100に生じうる歪みの防止、或いは耐久性の向上を目的として金属マスク10の厚みを比較的厚くした場合であっても、蒸着源から放出された蒸着材が、スリット15の内壁面に衝突等することなく、蒸着材を蒸着対象物へ到達させることができる。これにより、シャドウ発生をより効果的に防止することができる。なお、図12は、シャドウの発生と金属マスク10のスリット15との関係を説明するための部分概略断面図である。なお、図12(c)では、金属マスク10のスリット15が蒸着源側に向かって広がりを持つ断面形状となっており、樹脂マスク20の開口部25の向かいあう端面は略平行となっているが、シャドウの発生をより効果的に防止するためには、金属マスク10のスリット、及び樹脂マスク20の開口部25は、ともにその断面形状が、蒸着源側に向かって広がりを持つ形状となっていることが好ましい。したがって、樹脂板付き金属マスク40を準備する工程においては、これらの点が考慮された金属マスク10を使用することが好ましい。
図13に示すように、蒸着マスク100の金属マスク10側から見た正面図において、金属マスクのスリット15から見える樹脂マスク20に形成された開口部25を横方向に互い違いに配置してもよい。つまり、横方向に隣り合う開口部25を縦方向にずらして配置してもよい。このように配置することにより、樹脂マスク20が熱膨張した場合にあっても、各所において生じる膨張を開口部25によって吸収することができ、膨張が累積して大きな変形が生じることを防止することができる。
また、樹脂マスク20に形成する開口部25は、1画素に対応させる必要はなく、例えば2画素〜10画素をまとめて一つの開口部25としてもよい。
<第1実施形態の金属フレーム付き蒸着マスクの製造方法>
第1実施形態の金属フレーム付き蒸着マスクの製造方法は、スリットが設けられた金属マスクと、樹脂板とが積層された樹脂板付き金属マスクを準備する工程と、樹脂板付き金属マスクに張力をかけた状態で、金属マスク側からスリットを通して樹脂板にレーザーを照射し、蒸着作製するパターンに対応した開口部が樹脂板に形成された蒸着マスクを得る工程と、蒸着マスクに張力をかけた状態で、当該蒸着マスクを金属フレームに固定する工程と、を有することを特徴とする。
第1実施形態の金属フレーム付き蒸着マスクの製造方法は、上記第1実施形態の蒸着マスクの製造方法、或いは上記第2実施形態の蒸着マスクの製造方法によって得られた蒸着マスクを用い、金属フレームに、当該得られた蒸着マスクに張力をかけた状態で固定する工程をさらに有する。したがって、金属フレームに蒸着マスクを固定する以外の工程、すなわち蒸着マスクを製造する工程は、第1実施形態の蒸着マスクの製造方法、第2実施形態の蒸着マスクの製造方法をそのまま用いることができ、ここでの詳細な説明は省略する。以下、蒸着マスクを金属フレーム固定する工程について説明する。
(蒸着マスクを金属フレームに固定する工程)
本工程では、製造された蒸着マスクの金属マスクと、金属フレームとが対向するように重ね合わせ、金属フレームの貫通孔非形成領域と、金属マスクのスリット非形成領域とが直接的、又は間接的に接する箇所の一部において固定することで、金属フレームに蒸着マスクが固定されてなる金属フレーム付き蒸着マスクが得られる。また、第1実施形態の金属フレーム付き蒸着マスクの製造方法では、蒸着マスクに張力をかけた状態で、金属フレームへの固定が行われる。図27、図28は、金属フレームに蒸着マスクが固定された状態を示す上面図である。
金属フレームは、上記第2実施形態の蒸着マスクの製造方法で説明したものをそのまま用いることができ、ここでの詳細な説明は省略する。
蒸着マスクにかけられる張力値について特に限定はないが、上記蒸着作製するパターンに対応した開口部を樹脂板に形成する工程において、樹脂板付き金属マスクにかけられる張力値の−50%〜50%の範囲内の張力値で行うことがより好ましい。また、固定時における蒸着マスクの引張距離は、上記蒸着作製するパターンに対応した開口部を樹脂板に形成する工程において、樹脂板付き金属マスクを引っ張る時の引張距離の−0.1%〜0.1%、好ましくは−0.05%〜0.05%の範囲内とすることが好ましい。
蒸着マスクに張力をかける方法について特に限定はないが、例えば、蒸着マスクの対向する2辺を保持部により保持し、当該保持部の少なくとも一つを蒸着マスクの外方に引っ張ることで、蒸着マスクに張力をかけることができる。第1実施形態の金属フレーム付き蒸着マスクの製造方法は、予め樹脂板付き金属フレームに張力をかけた状態で、当該樹脂板付き金属マスクの樹脂板に開口部が形成されていることから、蒸着マスクに張力をかけた状態で金属フレームへの固定を行う際に、蒸着マスクの開口部に寸法変動が生ずることを抑制することができる。
この場合において、蒸着マスクの対向する2辺を保持する保持部の少なくとも一つが、蒸着マスクの面と直交する第1の回転軸を軸として回転可能な第1回転機構、蒸着マスクの面と平行する第2の回転軸を軸として回転可能な第2回転機構、及び蒸着マスクが架張されている方向に直交する方向に移動可能な移動機構のうち少なくとも一つの機構を備える保持部であることが好ましい。すなわち、上記蒸着マスクの製造方法で説明した保持部と同様に、蒸着マスクに張力をかける際に用いられる保持部も、「本発明における機構」を有していることが好ましい。「本発明における機構」を備える保持部を用いて蒸着マスクに張力をかけた状態で金属フレームへの固定を行うことで、金属フレームへの固定時に蒸着マスクに生じ得る「ねじれ」を抑制することができ、より開口部の寸法変動が抑制された金属フレーム付き蒸着マスクを得ることができる。
「本発明における機構」を備える保持部については、上記第1実施形態の蒸着マスクの製造方法で説明したものをそのまま用いることができ、「樹脂板付き金属マスク」とある記載を、「蒸着マスク」と読み替えればよい。
蒸着マスクを金属フレームに固定する方法について特に限定はなく、レーザー溶接、アーク溶接、電気抵抗溶接、電子ビーム溶接法などの従来公知の各種溶接法を用いることができる。
<第2実施形態の金属フレーム付き蒸着マスクの製造方法>
第2実施形態の金属フレーム付き蒸着マスクの製造方法は、スリットが設けられた金属マスクと、樹脂板とが積層された樹脂板付き金属マスクを準備する工程と、樹脂板付き金属マスクに張力をかけた状態で、金属フレームに当該樹脂板付き金属マスクを固定する工程と、金属フレームに固定された樹脂板付き金属マスクに対し、金属マスク側からスリットを通して樹脂板にレーザーを照射し、蒸着作製するパターンに対応した開口部を樹脂板に形成する工程と、を有することを特徴とする。
上記第1実施形態の金属フレーム付き蒸着マスクの製造方法では、樹脂板付き金属マスクの樹脂板に開口部を形成して蒸着マスクを得る工程において、当該樹脂板付き金属マスクに張力をかけるとともに、得られた蒸着マスクを金属フレームに固定する工程において、当該得られた蒸着マスクに張力をかけているのに対し、第2実施形態の金属フレーム付き蒸着マスクの製造方法は、樹脂板付き金属マスクに張力をかけた状態で、当該樹脂板付き金属マスクを金属フレームに固定し、その後、当該樹脂板付き金属マスクの樹脂板に開口部を形成している点で、第1実施形態の金属フレーム付き蒸着マスクの製造方法と、第2実施形態の金属フレーム付き蒸着マスクの製造方法は相違する。
第2実施形態の金属フレーム付き蒸着マスクの製造方法は、上記第1実施形態の金属フレーム付き蒸着マスクの製造方法と上記の点で相違するものの、樹脂板付き金属マスクに張力がかけられた状態で樹脂板に開口部が形成され、また、樹脂板付き金属マスクを架張した状態で金属フレームへの固定が行われていることから、開口部の寸法精度に優れる金属フレーム付き蒸着マスクを得ることができる。また、蒸着マスクを金属フレームに固定する際に生じ得る開口部の寸法変動を抑制することができる。
樹脂板付き金属マスクを準備する工程は、上記第1実施形態、第2実施形態の蒸着マスクの製造方法で説明したものをそのまま用いることができ、ここでの詳細な説明は省略する。
樹脂板付き金属マスクに張力をかける方法について特に限定はなく、例えば、上記第1実施形態の蒸着マスクの製造方法において「樹脂板付き金属マスクに張力をかける方法」として説明した方法を適宜選択して用いることができる。
樹脂板付き金属マスクに張力をかける好ましい方法としては、樹脂板付き金属マスクの対向する2辺を保持部により保持し、当該保持部の少なくとも一つを樹脂板付き金属マスクの外方に引っ張ることで、樹脂板付き金属マスクに張力をかけ、樹脂板付き金属マスクの対向する2辺を保持する保持部の少なくとも一つが、樹脂板付き金属マスクの面と直交する第1の回転軸を軸として回転可能な第1回転機構、樹脂板付き金属マスクの面と平行する第2の回転軸を軸として回転可能な第2回転機構、及び樹脂板付き金属マスクが架張されている方向に直交する方向に移動可能な移動機構のうち少なくとも一つの機構を備える保持部であることが好ましい。すなわち、上記第1実施形態、及び第2実施形態の蒸着マスクの製造方法で説明した保持部と同様に、本工程において樹脂板付き金属マスクに張力をかける際に用いられる保持部も、上記「本発明における機構」を有していることが好ましい。「本発明における機構」を備える保持部を用いて樹脂板付き金属マスクに張力をかけた状態で金属フレームに固定を行うことで、金属フレームへの固定時に樹脂板付き金属マスクに生じ得る「ねじれ」を抑制することができ、より開口部の寸法変動に優れる金属フレーム付き蒸着マスクを得ることができる。
樹脂板付き金属マスクを金属フレームに固定する方法について特に限定はなく、レーザー溶接、アーク溶接、電気抵抗溶接、電子ビーム溶接法などの従来公知の各種溶接法を用いることができる。また、金属フレームは、上記第2実施形態の蒸着マスクの製造方法で説明したものをそのまま用いることができ、ここでの詳細な説明は省略する。
開口部を樹脂板に形成する工程についても特に限定はなく、上記第1実施形態、第2実施形態の蒸着マスクの製造方法で説明した開口部の形成方法を適宜選択して用いることができ、ここでの詳細な説明は省略する。
(有機半導体素子の製造方法)
次に、本発明の有機半導体素子の製造方法について説明する。本発明の有機半導体素子の製造方法は、金属フレーム付き蒸着マスクを用いた蒸着法により蒸着パターンを形成する工程を有し、当該有機半導体素子を形成する工程において以下の金属フレーム付き蒸着マスクが用いられる点に特徴を有する。
金属フレーム付き蒸着マスクを用いた蒸着法により蒸着パターンを形成する工程を有する一実施形態の有機半導体素子の製造方法は、基板上に電極を形成する電極形成工程、有機層形成工程、対向電極形成工程、封止層形成工程等を有し、各任意の工程において金属フレーム付き蒸着マスクを用いた蒸着法により基板上に蒸着パターンが形成される。例えば、有機層形成工程に、金属フレーム付き蒸着マスクを用いた蒸着法を適用する場合には、基板上に有機層の蒸着パターンが形成される。なお、本発明の有機半導体素子の製造方法は、これらの工程に限定されるものではなく、蒸着法を用いる従来公知の有機半導体素子の任意の工程に適用可能である。
上記有機半導体素子の製造方法に用いられる一実施形態の金属フレーム付き蒸着マスクは、貫通孔が形成された金属フレームに、蒸着マスクに張力がかけられた状態で溶接固定されてなる金属フレーム付き蒸着マスクであって、金属フレームに溶接固定される蒸着マスクは、スリットが設けられた金属マスクと、樹脂板とが積層された樹脂板付き金属マスクを準備し、次いで、樹脂板付き金属マスクに張力をかけた状態で、金属マスク側からスリットを通して樹脂板にレーザーを照射することで、蒸着作製するパターンに対応した開口部が樹脂板に形成されており、樹脂板に開口部を形成する際に樹脂板付き金属マスクにかけられる張力値が、金属フレームに蒸着マスクを溶接固定する際に蒸着マスクにかけられる張力値の−50%〜50%の範囲内であることを特徴とする。
また、上記有機半導体素子の製造方法に用いられる他の実施形態の金属フレーム付き蒸着マスクは、貫通孔が形成された金属フレームに、蒸着マスクに張力がかけられた状態で溶接固定されてなる金属フレーム付き蒸着マスクであって、金属フレームに溶接固定される蒸着マスクは、スリットが設けられた金属マスクと、樹脂板とが積層された樹脂板付き金属マスクを準備し、次いで、樹脂板付き金属マスクに張力をかけた状態で、金属マスク側からスリットを通して樹脂板にレーザーを照射することで、蒸着作製するパターンに対応した開口部が樹脂板に形成されており、樹脂板に開口部を形成する際の樹脂板付き金属マスクの引張距離が、金属フレームに蒸着マスクを溶接固定する際の蒸着マスクの引張距離の−0.1%〜0.1%の範囲内であることを特徴とする。
金属フレーム付き蒸着マスクを構成する蒸着マスクについては、上記で説明した本発明の製造方法で製造された蒸着マスク100をそのまま用いることができ、ここでの詳細な説明は省略する。上記で説明した本発明の製造方法で製造される蒸着マスクによれば、金属フレームに溶接固定する際に、蒸着マスクにかかる張力が、蒸着マスクを得る際に樹脂板付き金属マスクにかかる張力と略同等であることから、金属フレームに蒸着マスクを溶接固定して使用する際に開口部に寸法変動が生じない、或いは殆ど寸法変動のない高精細な金属フレーム付き蒸着マスクとすることができる。したがって、当該金属フレーム付き蒸着マスクを用いて、高精細なパターンを有する有機半導体素子を形成することができる。本発明の製造方法で製造される有機半導体素子としては、例えば、有機EL素子の有機層、発光層や、カソード電極等を挙げることができる。特に、本発明の有機半導体素子の製造方法は、高精細なパターン精度が要求される有機EL素子のR、G、B発光層の製造に好適に用いることができる。
また、上記本発明の金属フレーム付き蒸着マスクの製造方法で製造された金属フレーム付き蒸着マスクをそのまま用いることもできる。