以下、図面及び表を参照して発明を実施するための形態について説明する。各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
本明細書において、「主溶媒」とは、前駆体ゾルゲル溶液で使用されている溶媒を指すものとする。
又、本明細書において、「副溶媒」とは、主溶媒と異なり、前駆体ゾルゲル溶液と相溶性がある溶媒を指すものとする。
又、本明細書において、「乾燥速度の対主溶媒比」とは、主溶媒が添加された機能性インクの乾燥速度(100%)に対する主溶媒及び副溶媒が添加された機能性インクの乾燥速度の比率を指すものとする。
〈第1の実施の形態〉
[薄膜]
まず、第1の実施の形態に係る薄膜製造装置及び薄膜製造方法で製造される薄膜の一例として、電気機械変換素子を構成する電気機械変換膜について説明する。なお、第1の実施の形態に係る薄膜製造装置及び薄膜製造方法で製造可能な薄膜が電気機械変換膜に限定されないことは言うまでもない。
電気機械変換素子は、例えば、インクジェット記録装置において使用する液滴吐出ヘッドの構成部品として用いられる。図1は、電気機械変換素子を用いた液滴吐出ヘッドを例示する断面図である。
図1を参照するに、液滴吐出ヘッド1は、ノズル板10と、圧力室基板20と、振動板30と、電気機械変換素子40とを有する。ノズル板10には、インク滴を吐出するノズル11が形成されている。ノズル板10、圧力室基板20、及び振動板30により、ノズル11に連通する圧力室21(インク流路、加圧液室、加圧室、吐出室、液室等と称される場合もある)が形成されている。振動板30は、インク流路の壁面の一部を形成している。
電気機械変換素子40は、密着層41と、下部電極42と、電気機械変換膜43と、上部電極44とを含んで構成され、圧力室21内のインクを加圧する機能を有する。密着層41は、例えばTi、TiO2、TiN、Ta、Ta2O5、Ta3N5等からなる層であり、下部電極42と振動板30との密着性を向上する機能を有する。但し、密着層41は、電気機械変換素子40の必須の構成要素ではない。
電気機械変換素子40において、下部電極42と上部電極44との間に電圧が印加されると、電気機械変換膜43が機械的に変位する。電気機械変換膜43の機械的変位にともなって、振動板30が例えば横方向(d31方向)に変形変位し、圧力室21内のインクを加圧する。これにより、ノズル11からインク滴を吐出させることができる。
なお、図2に示すように、液滴吐出ヘッド1を複数個並設し、液滴吐出ヘッド2を構成することもできる。
電気機械変換膜43の材料としては、例えば、PZTを用いることができる。PZTとはジルコン酸鉛(PbZrO3)とチタン酸鉛(PbTiO3)の固溶体である。例えば、PbZrO3とPbTiO3の比率が53:47の割合で、化学式で示すとPb(Zr0.53、Ti0.47)O3、一般にはPZT(53/47)と示されるPZT等を使用することができる。PbZrO3とPbTiO3の比率によって、PZTの特性が異なる。
電気機械変換膜43としてPZTを使用する場合、出発材料に酢酸鉛三水和物、ジルコニウムアルコキシド化合物、チタンアルコキシド化合物を使用しても良い。これらの出発材料を、共通溶媒(主溶媒)に溶解させることで、PZT前駆体ゾルゲル溶液を作製し、更に、PZT前駆体ゾルゲル溶液に対して、主溶媒及び副溶媒を添加することで、機能性インクを作製する。酢酸鉛三水和物、ジルコニウムアルコキシド化合物、チタンアルコキシド化合物の混合量は、所望のPZTの組成(PbZrO3とPbTiO3の比率)に応じて、当業者が適宜選択できるものである。なお、金属アルコキシド化合物は、大気中の水分により容易に分解する。そのため、PZT前駆体ゾルゲル溶液に、安定剤としてアセチルアセトン、酢酸、ジエタノールアミン等を添加してもよい。
主溶媒の材料としては、2−メトキシエタノール、2−n−ブトキシエタノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール)等が挙げられる。
副溶媒の材料としては、主溶媒の沸点より高い沸点を有する材料であり、アルコール類、グリコール類、エーテル類、アミン系材料等を用いることが好ましい。具体的には、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、n−ドテシルアルコール、n−ノニルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールモノブチルエーテル、等が挙げられる。
主溶媒及び副溶媒の材料、主溶媒と副溶媒の体積比、副溶媒の数、副溶媒間の体積比等を、適宜選択することが好ましい。
電気機械変換膜43の材料として、例えば、チタン酸バリウム等を用いても構わない。この場合は、バリウムアルコキシド化合物、チタンアルコキシド化合物を出発材料にし、共通溶媒に溶解させることでチタン酸バリウム前駆体ゾルゲル溶液を作製することが可能である。又、例えば、チタン酸バリウムとビスマスペロブスカイトの固溶体等を用いても構わない。
これら材料は一般式ABO3で記述され、A=Pb、Ba、Sr、Bi B=Ti、Zr、Sn、Ni、Zn、Mg、Nbを主成分とする複合酸化物が該当する。その具体的な記述として(Pb1−x、Ba)(Zr、Ti)O3、(Pb1−x、Sr)(Zr、Ti)O3、と表され、これはAサイトのPbを一部BaやSrで置換した場合である。このような置換は2価の元素であれば可能であり、その効果は熱処理中の鉛の蒸発による特性劣化を低減させる作用を示す。
電気機械変換膜43を形成する際に、上述のいずれの材料を用いる場合であっても、機能性インクにおける乾燥速度の対主溶媒比が、75%以下であることが好ましく、50%以上75%以下であることがより好ましい。50%以上75%以下であることで、タクトタイムを速め、生産効率を向上させることができる。
詳細は後述するが、乾燥速度の対主溶媒比が、75%以下である機能性インクを利用することで、インクジェットヘッドの吐出信頼性を高めることができる。その結果、良質な電気機械変換膜を得易くなる。
下部電極42の材料としては、高い耐熱性を有し、下記に示すアルカンチオールとの反応により、SAM膜を形成する金属等を用いることができる。具体的には、低い反応性を有するルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)、プラチナ(Pt)等の白金族金属や、これら白金族金属を含む合金材料等を用いることができる。
又、これらの金属層を作製した後に、導電性酸化物層を積層して使用することも可能である。導電性酸化物としては、具体的には、化学式ABO3で記述され、A=Sr、Ba、Ca、La、 B=Ru、Co、Ni、を主成分とする複合酸化物があり、SrRuO3やCaRuO3、これらの固溶体である(Sr1−x Cax)O3のほか、LaNiO3やSrCoO3、更にはこれらの固溶体である(La, Sr)(Ni1−y Coy)O3 (y=1でも良い)が挙げられる。それ以外の酸化物材料として、IrO2、RuO2も挙げられる。
下部電極42は、例えば、スパッタ法や真空蒸着等の真空成膜法等の方法により作製することができる。下部電極42は、電気機械変換素子40に信号入力する際の共通電極として電気的接続をするので、その下部にある振動板30は絶縁体又は表面が絶縁処理された導体を用いることができる。
振動板30の具体的な材料としては、例えば、シリコンを用いることができる。又、振動板30(後述する基板31)の表面を絶縁処理する具体的な材料としては、例えば、厚さ約数百nm〜数μm程度のシリコン酸化膜、窒化シリコン膜、酸化窒化シリコン膜又はこれらの膜を積層した膜等を用いることができる。又、熱膨張差を考慮し、酸化アルミニウム膜、ジルコニア膜等のセラミック膜を用いてもよい。振動板30の表面を絶縁処理するシリコン系絶縁膜は、CVD法やシリコンの熱酸化処理等により形成できる。又、振動板30の表面を絶縁処理する酸化アルミニウム膜等の金属酸化膜は、スパッタリング法等により形成できる。
[薄膜製造装置]
次に、第1の実施の形態に係る薄膜製造装置の構造について説明する。図3は、第1の実施の形態に係る薄膜製造装置を例示する斜視図である。図3を参照するに、薄膜製造装置3において、架台60上には、Y軸駆動手段61が設置されている。Y軸駆動手段61上には、基板63を搭載するステージ62が、Y軸方向に駆動できるように設置されている。
なお、ステージ62には通常、真空又は静電気等を利用した図示しない吸着手段が付随されており、これにより基板63を固定することができる。
又、架台60上には、X軸駆動手段66を支持するためのX軸支持部材65が設置されている。X軸駆動手段66には、ヘッドベース68が取り付けられており、X軸方向に駆動できるように設置されている。ヘッドベース68の上には、機能性インクを吐出させるインクジェットヘッド69が搭載されている。インクジェットヘッド69には図示しない各インクタンクから機能性インク材料供給用パイプ67を介して機能性インクが供給される。
なお、図3は、ステージ62がY方向の1軸の自由度を有し、インクジェットヘッド69がX方向の1軸の自由度を有する構成を示しているが、この形態には限定されない。例えば、ステージ62がX及びY方向の2軸の自由度を有し、インクジェットヘッド69を固定する構成であっても良い。又、ステージ62がY方向の1軸の自由度を有し、インクジェットヘッド69をY軸方向に一列に並べる構成であっても良い。
又、基板63を固定し、インクジェットヘッド69がX及びY方向の2軸の自由度を有する構成であっても良い。又、X軸及びY軸は、X軸及びY軸ベクトルにより、1平面を表現できれば直交する必要はなく、例えば、X軸ベクトルとY軸ベクトルは30度、45度、60度の角度を有しても良い。
薄膜製造装置3は、図示しない装置制御部を有し、インクジェットヘッド69の機能性インクの吐出条件を制御することができる。又、装置制御部は図示しない記録部を有し、機能性インクの結晶状態等を記録部に記録することができる。
[薄膜製造方法]
次に、第1の実施の形態に係る薄膜製造方法について説明する。ここでは、薄膜として図1に示す電気機械変換膜43を作製する例を示す。
まず、図4(A)に示す工程では、基板31の表面に、密着層41、下部電極層46、フォトレジスト層45を、順次積層する。下部電極層46は、2層で形成され、例えば、下層に白金(Pt)を、上層にランタン酸ニッケル(LaNiO3)を用いることができる。
次に、図4(B)に示す工程では、公知のフォトリソグラフィ法により、フォトレジスト層45をパターニングし、レジストパターンを形成する。該レジストパターンと重ならない下部電極層46の上層48を、ドライエッチング等により除去することで、下部電極層46の下層47表面の一部を露出させる。なお、レジストパターンは、図1に示す圧力室21のレイアウトに合わせて形成される。
次に、図4(C)に示す工程では、残存するレジストパターンを除去する。これにより、下層電極47表面に所定パターンを有する上層電極48を備える下部電極42が形成される。
次に、図4(D)に示す工程では、下部電極42が形成された基板の表面全体に表面処理が施され、下層電極47表面に、SAM(Self Assembled Monolayer)膜50が形成される。
具体的には、下部電極42が形成された基板をアルカンチオール等からなるSAM材料で浸漬処理する。下層電極47表面に、SAM材料が反応しSAM膜50が付着することで、下層電極47表面を撥水化することができる。アルカンチオールは、分子鎖長により反応性や疎水(撥水)性が異なるが、通常、炭素数6〜18の分子を、アルコール、アセトン又はトルエン等の有機溶媒に溶解させて作製する。通常、アルカンチオールの濃度は数ミリモル/リットル程度である。所定時間後に、基板を取り出し、余剰な分子を溶媒で置換洗浄し、乾燥する。
SAM膜50が形成されている領域は、疎水性領域となる。一方、上層電極48表面が露出している領域は、親水性領域となる。この表面エネルギーのコントラストを利用して、下記で詳述する機能性インク51の塗り分けが可能となる。
次に、図5(A)に示す工程では、薄膜製造装置3のステージ62上に、表面処理が施された基板(図4(D)の基板に相当)を載置する。そして、周知のアライメント装置(CCDカメラやCMOSカメラ等)等を用いて、該基板の位置や傾き等をアライメントする。
そして、インクジェットヘッド69をX軸に駆動させ、基板が載置されたステージ62をY軸に駆動させて、ステージ62上にインクジェットヘッド69を配置する。そして、インクジェットヘッド69から、親水性領域に機能性インク51を吐出させる。なお、機能性インク51において、乾燥速度の対主溶媒比は、75%以下であることが好ましく、50%以上75%以下であることがより好ましい。
次に、図5(B)に示す工程では、親水性領域に、機能性インク膜52が形成される。機能性インク51は、表面エネルギーのコントラストにより、親水性領域のみに濡れ広がる。
次に、図5(C)に示す工程では、機能性インク膜52に対して、加熱処理が施され、加熱処理された機能性インク膜53が形成される。第1の加熱処理により、機能性インク膜52の溶媒を蒸発させ、第2の加熱処理により、機能性インク膜52に含まれる有機物を熱分解させる。なお、この加熱処理により、SAM膜50は、消失する。
次に、図6(A)に示す工程では、SAM膜50が消失した基板を、イソプロピルアルコールにて洗浄する。そして、図4(D)に示す工程と同様に、再び、下層電極47表面に、SAM膜50が形成される。
次に、図6(B)に示す工程では、図5(A)に示す工程と同様に、インクジェットヘッド69から加熱処理された機能性インク膜53表面(親水性領域)に、再び、機能性インク51を吐出させる。
次に、図6(C)に示す工程では、図5(B)に示す工程と同様に、加熱処理された機能性インク膜53表面(親水性領域)に、再び、機能性インク膜52が形成される。機能性インク51は、表面エネルギーのコントラストにより、親水性領域のみに濡れ広がる。
次に、図6(D)に示す工程では、図5(C)に示す工程と同様に、機能性インク膜52に対して、加熱処理が施される。第1の加熱処理により、機能性インク膜52の溶媒を蒸発させ、第2の加熱処理により、機能性インク膜52に含まれる有機物を熱分解させる。
更に、第3の加熱処理により、加熱処理された機能性インク膜を結晶化させる。
図6(D)に示す工程で形成される、結晶化した機能性インク膜54の膜厚は、数10nm程度である。この膜厚では、電気機械変換膜として、不十分であるため、図6(D)に示す工程の後、更に、図4(D)から図6(D)までの工程を必要回数繰り返す。これにより、結晶化した機能性インク膜54が積層され、下部電極42上に、所定のパターンと厚さ(100μm以下であることが好ましい。)を有する結晶化した機能性インク膜、すなわち電気機械変換膜43が作製される。
上述の薄膜製造方法により作製される電気機械変換膜43は、良好な品質を有する。
〈第2の実施の形態〉
第2の実施の形態では、薄膜製造装置3で製造した液滴吐出ヘッド1(図1参照)を搭載したインクジェット記録装置の例を示す。図7は、インクジェット記録装置を例示する斜視図である。図8は、インクジェット記録装置の機構部を例示する側面図である。
図7及び図8を参照するに、インクジェット記録装置4は、記録装置本体81の内部に主走査方向に移動可能なキャリッジ93、キャリッジ93に搭載した液滴吐出ヘッド1の一実施形態であるインクジェット記録ヘッド94、インクジェット記録ヘッド94へインクを供給するインクカートリッジ95等で構成される印字機構部82等を収納する。
記録装置本体81の下方部には、多数枚の用紙83を積載可能な給紙カセット84(或いは給紙トレイでもよい)を抜き差し自在に装着することができる。又、用紙83を手差しで給紙するための手差しトレイ85を開倒することができる。給紙カセット84或いは手差しトレイ85から給送される用紙83を取り込み、印字機構部82によって所要の画像を記録した後、後面側に装着された排紙トレイ86に排紙する。
印字機構部82は、図示しない左右の側板に横架したガイド部材である主ガイドロッド91と従ガイドロッド92とでキャリッジ93を主走査方向に摺動自在に保持する。キャリッジ93にはイエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色のインク滴を吐出するインクジェット記録ヘッド94を、複数のインク吐出口(ノズル)を主走査方向と交差する方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。又、キャリッジ93は、インクジェット記録ヘッド94に各色のインクを供給するための各インクカートリッジ95を交換可能に装着している。
インクカートリッジ95は、上方に大気と連通する図示しない大気口、下方にはインクジェット記録ヘッド94へインクを供給する図示しない供給口を、内部にはインクが充填された図示しない多孔質体を有している。多孔質体の毛管力によりインクジェット記録ヘッド94へ供給されるインクをわずかな負圧に維持している。又、インクジェット記録ヘッド94としてここでは各色のヘッドを用いているが、各色のインク滴を吐出するノズルを有する1個のヘッドを用いてもよい。
キャリッジ93は、用紙搬送方向下流側を主ガイドロッド91に摺動自在に嵌装し、用紙搬送方向上流側を従ガイドロッド92に摺動自在に載置している。そして、このキャリッジ93を主走査方向に移動走査するため、主走査モータ97で回転駆動される駆動プーリ98と従動プーリ99との間にタイミングベルト100を張装し、主走査モータ97の正逆回転によりキャリッジ93が往復駆動される。タイミングベルト100は、キャリッジ93に固定されている。
又、インクジェット記録装置4は、給紙カセット84から用紙83を分離給装する給紙ローラ101、フリクションパッド102、用紙83を案内するガイド部材103、給紙された用紙83を反転させて搬送する搬送ローラ104、この搬送ローラ104の周面に押し付けられる搬送コロ105、搬送ローラ104からの用紙83の送り出し角度を規定する先端コロ106、を設けている。これにより、給紙カセット84にセットした用紙83を、インクジェット記録ヘッド94の下方側に搬送される。搬送ローラ104は副走査モータ107によってギヤ列を介して回転駆動される。
用紙ガイド部材である印写受け部材109は、キャリッジ93の主走査方向の移動範囲に対応して搬送ローラ104から送り出された用紙83をインクジェット記録ヘッド94の下方側で案内する。この印写受け部材109の用紙搬送方向下流側には、用紙83を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ111、拍車112を設けている。更に、用紙83を排紙トレイ86に送り出す排紙ローラ113及び拍車114と、排紙経路を形成するガイド部材115、116とを配設している。
画像記録時には、キャリッジ93を移動させながら画像信号に応じてインクジェット記録ヘッド94を駆動することにより、停止している用紙83にインクを吐出して1行分を記録し、用紙83を所定量搬送後次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙83の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了させ用紙83を排紙する。
キャリッジ93の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、インクジェット記録ヘッド94の吐出不良を回復するための回復装置117を有する。回復装置117はキャップ手段と吸引手段とクリーニング手段を有する。キャリッジ93は、印字待機中に回復装置117側に移動されてキャッピング手段でインクジェット記録ヘッド94をキャッピングされ、吐出口部を湿潤状態に保つことによりインク乾燥による吐出不良を防止する。又、記録途中等に、記録と関係しないインクを吐出することにより、全ての吐出口のインク粘度を一定にし、安定した吐出性能を維持する。
吐出不良が発生した場合等には、キャッピング手段でインクジェット記録ヘッド94の吐出口を密封し、チューブを通して吸引手段で吐出口からインクとともに気泡等を吸い出す。又、吐出口面に付着したインクやゴミ等はクリーニング手段により除去され吐出不良が回復される。更に、吸引されたインクは、本体下部に設置された図示しない廃インク溜に排出され、廃インク溜内部のインク吸収体に吸収保持される。
このように、インクジェット記録装置4においては、薄膜製造装置3で製造した液滴吐出ヘッド1の一実施形態であるインクジェット記録ヘッド94を搭載しているので、振動板駆動不良によるインク滴吐出不良がなく、安定したインク滴吐出特性が得られるため、画像品質を向上できる。
〈第3の実施の形態〉
第3の実施の形態では、第1の実施の形態に係る電気機械変換膜を備える偏光ミラーの例を示す。図9は、圧電式MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーを例示する斜視図である。
圧電式MEMSミラー600は、固定ベース606と、反射面を有するミラー部601と、ミラー部601を支持する弾性支持部材604と、弾性支持部材604の一部を、両側から支持する梁状部材603と、梁状部材603に固着する電気機械変換素子605を含む。電圧が印加されることにより駆動部607が歪むことで、ミラー部601が振動する。このような圧電式MEMSミラー600に第1の実施の形態に係る電気機械変換膜を適用することで、圧電式MEMSミラー600の性能を高められる。
〈第4の実施の形態〉
第4の実施の形態では、第1の実施の形態に係る電気機械変換膜を備える加速度センサの例を示す。図10は、加速度センサを例示する断面図である。
加速度センサ700は、片面に異方性エッチングが施され、肉厚部X及び肉薄部Yを有するシリコン基板701と、シリコン基板701を挟むガラス基板706A、706Bと、肉薄部Y上に形成され、上部電極702、電気機械変換膜704、下部電極703を備える電気機械変換素子705を含む。加速度が加わると、肉厚部Xと共に、電気機械変換素子705が変形する。加速度センサ700は、電気機械変換素子705の変位量を電圧変換することで加速度を検出する。このような加速度センサ700に第1の実施の形態に係る電気機械変換膜を適用することで、加速度センサ700の性能を高められる。
〈第5の実施の形態〉
第5の実施の形態では、第1の実施の形態に係る電気機械変換膜を備えるHDD(Hard Disk Drive)ヘッド用微調整装置の例を示す。図11は、HDDヘッド用微調整装置800を例示する斜視図である。
HDDヘッド用微調整装置800は、移動可能なアクセスアーム805と、中心部材803を介して支持ばね802の先端に取り付けられたヘッド801と、中心部材803に取り付けられた電気機械変換素子804A、804Bを含む。HDDヘッド用微調整装置800は、電気機械変換素子804A、804Bを、交互に伸縮させることにより、ヘッド801を、HDD上の所定位置に移動させ、微調整を行う。このようなHDDヘッド用微調整装置800に第1の実施の形態に係る電気機械変換膜を適用することで、HDDヘッド用微調整装置800の性能を高められる。
〈第6の実施の形態〉
第6の実施の形態では、第1の実施の形態に係る電気機械変換膜を備える強誘電体メモリ素子の例を示す。図12は、強誘電体メモリ850を例示する断面図である。
強誘電体メモリ850は、ビットライン858及びワードライン857が形成された基板851と、基板851上に形成された層間絶縁膜855と、層間絶縁膜855上に形成され、上部電極852、電気機械変換膜853、下部電極854を備える電気機械変換素子856と、電気機械変換素子856上に形成された層間絶縁膜860と、コンタクトホールを介して上部電極852と電気的に接続する配線861を含む。強誘電体メモリ850は、上部電極852及び下部電極854に電圧が印加されることにより生じる電気機械変換膜853の残留分極の反転を利用してメモリとして機能する。このような強誘電体メモリ850に第1の実施の形態に係る電気機械変換膜を適用することで、強誘電体メモリ850の性能を高められる。
〈第7の実施の形態〉
第7の実施の形態では、第1の実施の形態に係る電気機械変換膜を備える角速度センサの例を示す。図13は、振動ジャイロ型の角速度センサ900を例示する斜視図である。
振動ジャイロ型の角速度センサ900は、熱膨張の少ない材料で形成されている音叉901と、音叉901に取り付けられている発振駆動用の電気機械変換素子902a及び検出用の電気機械変換素子902bと、電気機械変換素子902aに対応するパッド903aと、電気機械変換素子902bに対応するパッド903bを含む。電気機械変換素子902aと電気機械変換素子902bとは、それぞれ、垂直な面に形成されている。振動ジャイロ型の角速度センサ900は、パッド903を介して、電気機械変換素子902の振動を検知し、周波数の差に基づき角速度を検出する。このような振動ジャイロ型の角速度センサ900に第1の実施の形態に係る電気機械変換膜を適用することで、角速度センサ900の性能を高められる。
〈第8の実施の形態〉
第8の実施の形態では、第1の実施の形態に係る電気機械変換膜を備えるマイクロポンプの例を示す。図14は、マイクロポンプ950を例示する斜視図である。
マイクロポンプ950は、流路951が形成された基板952と、振動板953及び振動板953に密着して形成されている電気機械変換素子954を備える圧電アクチュエータ955と、圧電アクチュエータ955が複数配設された流路形成基板956と、蓋基板957と、保護基板958を含む。マイクロポンプ950は、振動板953を順次図中の矢印方向へ駆動させることにより、流体の吸い込み又は吐出を繰り返し、流路951内の流体の輸送を行う。液体流入孔及び流出孔の形状を工夫する、或いは流路951に弁を設けることで、輸送効率を上げることができる。このようなマイクロポンプ950に第1の実施の形態に係る電気機械変換膜を適用することで、マイクロポンプ950の性能を高められる。
〈第9の実施の形態〉
第9の実施の形態では、第1の実施の形態に係る電気機械変換膜を備えるマイクロバルブの例を示す。図15は、マイクロバルブ960を例示する断面図である。
マイクロバルブ960は、中央部に吐出口966を有する円板状の基板965と、中央部に弁となる突起部962を有するダイアフラム963と、基板965及びダイアフラム963を固定する固定部964と、ダイアフラム963上に形成されている電気機械変換素子961と、流体が流れ込む導入口967を含む。マイクロバルブ960は、電気機械変換素子961の歪みにより生じる突起部962の振動を利用して、吐出口966を開閉することにより、流体の流れを制御する。このようなマイクロバルブ960に第1の実施の形態に係る電気機械変換膜を適用することで、マイクロバルブ960の性能を高められる。
〈実施例〉
本実施例では、第1の実施の形態に係る前駆体ゾルゲル溶液、機能性インク、電気機械変換膜、及び電気機械変換素子を実際に作製した。13個の機能性インクを作製し(表2参照)、各機能性インクを、サンプル1〜サンプル13とした。実施例のサンプルとして、サンプル1〜サンプル9を用いた。比較例のサンプルとして、サンプル10〜サンプル13を用いた。
更に、作製した機能性インクの乾燥時間及び乾燥速度の対主溶媒比を測定した。又、作製した機能性インクを用いてインクジェットヘッドの吐出信頼性を調べた。又、作製した電気機械変換膜の膜厚を調べた。又、作製した電気機械変換素子の電気的特性及び電気機械変換能を評価した。なお、電気機械変換膜の主成分は、ジルコン酸チタン酸鉛とした。
[PZT前駆体ゾルゲル溶液の合成]
まず、PZT前駆体ゾルゲル溶液の合成について、図16を用いて説明する。
最初に、出発材料を準備した。出発材料としては、酢酸鉛三水和物(Pb(CH3COO)23H2O)、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシドZr(OCH2CH2CH3)4、チタニウムテトライソプロポキシドTi(OCH(CH3)2)4を用いた。
次に、これらの出発材料を、Pb(Zr0.53、Ti0.47)O3の化学両論組成に対し、鉛量が20mol%過剰になる組成、即ち、Pb1.20(Zr0.53、Ti0.47)O3となるように秤量した。
次に、酢酸鉛三水和物を、沸点の異なる3種類の主溶媒に溶解し、溶液を作製した(表2参照)。具体的には、サンプル1、2、3、4、5、6、10、11では、主溶媒として、2−メトキシエタノール(沸点125.0℃)を用いて、酢酸鉛の2−メトキシエタノール溶液を作製した。又、サンプル7、8、12では、主溶媒として、2−n−ブトキシエタノール(沸点170.0℃)を用いて、酢酸鉛の2−n−ブトキシエタノール溶液を作製した。又、サンプル9、13では、主溶媒として、2−プロパノール(沸点82.4℃)を用いて、酢酸鉛の2−プロパノール溶液を作製した。
次に、各溶液を、各主溶媒の沸点にて加熱、還流し、酢酸鉛三水和物の脱水処理を行った。次に、各溶液に対して、ジルコニウムテトラノルマルプロポキシド及びチタニウムテトライソプロポキシドを投入し、再び、各主溶媒の沸点にて加熱、還流し、酢酸鉛のアルコール交換反応、及びエステル化反応を進行させた。
次に、各溶液に対して、安定剤として微量の酢酸を添加した。酢酸を添加することで、アルコール交換反応により生成したアルコキシド化合物(例えば、鉛アルコキシド)が、水分等により分解するのを防ぐことができる。なお、安定剤として、アセチルアセトン、ジエタノールアミン等を添加してもよい。
次に、各溶液に対して、各主溶媒を、更に混合し、重合体から為る固形分の濃度が、0.5モル/リットルとなるように、濃度調整を行った。
このようにして、PZT前駆体ゾルゲル溶液を合成し、13個のPZT前駆体ゾルゲル溶液を作製した。
[PZT前駆体ゾルゲル溶液のインク化調整]
続いて、13個のPZT前駆体ゾルゲル溶液に対して、インク化調整を行い、機能性インクを作製した。該機能性インクに分散する固形分の濃度が、0.3モル/リットルとなるように濃度調整を行った。
具体的には、サンプル1では、PZT前駆体ゾルゲル溶液に対して、主溶媒として、2−メトキシエタノールを、副溶媒として、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(沸点194℃)及びn−ドテシルアルコール(沸点259℃)を添加し、撹拌を行った。主溶媒と副溶媒の体積比を、2:1とした。又、副溶媒間の体積比を、2:1とした。
サンプル2では、PZT前駆体ゾルゲル溶液に対して、主溶媒として、2−メトキシエタノールを、副溶媒として、n−ドテシルアルコールを添加し、撹拌を行った。主溶媒と副溶媒の体積比を、2:1とした。
サンプル3では、PZT前駆体ゾルゲル溶液に対して、主溶媒として、2−メトキシエタノールを、副溶媒として、n−ドテシルアルコールを添加し、撹拌を行った。主溶媒と副溶媒の体積比を、1:1とした。
サンプル4では、PZT前駆体ゾルゲル溶液に対して、主溶媒として、2−メトキシエタノールを、副溶媒として、n−ノニルアルコール(沸点214℃)を添加し、撹拌を行った。主溶媒と副溶媒の体積比を、2:1とした。
サンプル5では、PZT前駆体ゾルゲル溶液に対して、主溶媒として、2−メトキシエタノールを、副溶媒として、n−ノニルアルコールを添加し、撹拌を行った。主溶媒と副溶媒の体積比を、1:1とした。
サンプル6では、PZT前駆体ゾルゲル溶液に対して、主溶媒として、2−メトキシエタノールを、副溶媒として、エチレングリコール(沸点198℃)を添加し、撹拌を行った。主溶媒と副溶媒の体積比を、2:1とした。
サンプル7では、PZT前駆体ゾルゲル溶液に対して、主溶媒として、2−n−ブトキシエタノールを、副溶媒として、プロピレングリコールモノブチルエーテル(沸点170℃)を添加し、撹拌を行った。主溶媒と副溶媒の体積比を、1:1とした。
サンプル8では、PZT前駆体ゾルゲル溶液に対して、主溶媒として、2−n−ブトキシエタノールを、副溶媒として、n−ノニルアルコールを添加し、撹拌を行った。主溶媒と副溶媒の体積比を、1:1とした。
サンプル9では、PZT前駆体ゾルゲル溶液に対して、主溶媒として、2−プロパノールを、副溶媒として、n−ノニルアルコールを添加し、撹拌を行った。主溶媒と副溶媒の体積比を、2:1とした。
サンプル10では、PZT前駆体ゾルゲル溶液に対して、主溶媒として、2−メトキシエタノールを、副溶媒として、プロピレングリコールモノブチルエーテルを添加し、撹拌を行った。主溶媒と副溶媒の体積比を、1:2とした。
サンプル11では、PZT前駆体ゾルゲル溶液に対して、主溶媒として、2−メトキシエタノールを添加し、撹拌を行った。
サンプル12では、PZT前駆体ゾルゲル溶液に対して、主溶媒として、2−n−ブトキシエタノールを添加し、撹拌を行った。
サンプル13では、PZT前駆体ゾルゲル溶液に対して、主溶媒として、2−プロパノールを添加し、撹拌を行った。
なお、インク化調整は、各サンプルの粘度、表面張力、沸点等の物性を考慮して行うことも可能である。この場合、粘度は、3〜10cP、表面張力は、25〜35mN/mであることが好ましい。
[機能性インクの乾燥時間、及び乾燥速度の対主溶媒比の測定]
続いて、作製した機能性インク(サンプル1〜サンプル13)の乾燥時間、及び乾燥速度の対主溶媒比を測定した。
表2に、サンプル1〜サンプル13における測定結果を示す。
サンプル1において、乾燥時間は、7.7minであった。サンプル2において、乾燥時間は、9.5minであった。サンプル3において、乾燥時間は、10.3minであった。サンプル4において、乾燥時間は、6.7minであった。サンプル5において、乾燥時間は、7.4minであった。サンプル6において、乾燥時間は、6.9minであった。サンプル7において、乾燥時間は、6.8minであった。サンプル8において、乾燥時間は、13.8minであった。サンプル9において、乾燥時間は、7.1minであった。サンプル10において、乾燥時間は、6.6minであった。サンプル11において、乾燥時間は、5.0minであった。サンプル12において、乾燥時間は、6.8minであった。サンプル13において、乾燥時間は、3.0minであった。
又、サンプル1において、乾燥速度の対主溶媒比は、64.9%であった。サンプル2において、乾燥速度の対主溶媒比は、52.6%であった。サンプル3において、乾燥速度の対主溶媒比は、48.5%であった。サンプル4において、乾燥速度の対主溶媒比は、74.6%であった。サンプル5において、乾燥速度の対主溶媒比は、67.6%であった。サンプル6において、乾燥速度の対主溶媒比は、72.5%であった。サンプル7において、乾燥速度の対主溶媒比は、73.5%であった。サンプル8において、乾燥速度の対主溶媒比は、36.2%であった。サンプル9において、乾燥速度の対主溶媒比は、70.4%であった。サンプル10において、乾燥速度の対主溶媒比は、75.8%であった。なお、サンプル11、12、13には、副溶媒は、添加されていないため、乾燥速度の対主溶媒比は、100.0%である。
サンプル1〜サンプル9において、乾燥速度の対主溶媒比は、50%以上75%以下を満たしていたが、サンプル10〜サンプル13において、乾燥速度の対主溶媒比は、75%より大きかった。
即ち、機能性インクの乾燥速度は、主溶媒及び副溶媒の材料、主溶媒と副溶媒の体積比等に依存することがわかった。主溶媒及び副溶媒を適宜選択することで、良質な電気機械変換膜を形成するために必要な機能性インクを作製できることが示唆される。
[機能性インクの塗布]
続いて、インクジェット方式により、作製した機能性インクを、親水性領域に塗布した。下部電極に対して表面処理を施し、下部電極の表面を親水性領域と疎水性領域に分けることで、機能性インクの塗り分けを行った。
まず、シリコンウェハに、密着層として二酸化チタン膜(膜厚50nm)をスパッタ成膜した。次に、下部電極層として、白金膜(膜厚50nm)及びランタン酸ニッケル膜(膜厚60nm)の積層膜をスパッタ成膜した。
次に、下部電極層上に、フォトレジスト層をスピンコートし、フォトリソグラフィにより、フォトレジスト層をパターニングすることで、レジストパターンを形成した。次に、レジストパターンと重ならないランタン酸ニッケル膜を、ドライエッチングにより除去した。次に、レジストパターンを剥離し、白金膜上に所定パターンのランタン酸ニッケル膜を有する、下部電極が形成された。
なお、レジストパターンは、短手方向の長さが45μm、長手方向の長さが1000μmである矩形を複数含む形状を有する。隣り合う矩形同士の間隔は、45μmであり、ラインとスペースの比は、1:1である。
次に、下部電極が形成されたシリコンウェハを、アルカンチオール希釈液に、10秒間浸漬させ、SAM処理を行った。SAM処理を行ったシリコンウェハを、エタノール溶液に浸し、5分間の超音波洗浄を施し、白金膜表面にSAM膜が形成された。アルカンチオール希釈液は、ドデカンチオールCH3(CH2)11−SHを使用し、濃度0.1ミリモル/リットル(溶媒:エタノール)の希釈液とした。
SAM処理後、SAM膜が形成された領域において、対純粋接触角を測定したところ、100°以上となり、疎水性領域となることがわかった。一方、ランタン酸ニッケル膜が形成された領域において、対純粋接触角を測定したところ、40°以下となり、親水性領域となることがわかった。この結果から、SAM処理が適切になされ、下部電極の表面は、疎水性領域と親水性領域に分けられ、高い接触角コントラストを有することがわかった。
次に、機能性インク(サンプル1〜サンプル13)を、インクジェット方式により、インクジェットヘッドから、親水性領域(ランタン酸ニッケル膜が形成された領域)に吐出させた。機能性インクは、親水性領域に濡れ広がり、機能性インク膜が形成された。
次に、機能性インク膜に対して、加熱処理を行った。シリコンウェハを、ホットプレートに載せ、シリコンウェハ下面より第1の加熱処理を行った。昇温速度を、30℃/minとして、室温から120℃まで温度上昇させた。ホットプレートの温度が、120℃に到達した後も、機能性インク膜が乾燥するまで、加熱処理を行った。次に、乾燥させた機能性インク膜に対して、第2の加熱処理を行った。500℃での加熱処理を行うことで、乾燥させた機能性インク膜に含まれる有機物の熱分解処理を行った。この加熱処理により、SAM膜は、消失し、加熱処理された機能性インク膜(中央部の膜厚が80nm)が形成された。
次に、加熱処理された機能性インク膜が形成されたシリコンウェハを、イソプロピルアルコールにて洗浄し、アルカンチオール希釈液に、10秒間浸漬させ、SAM処理を行った。SAM処理を行ったシリコンウェハを、エタノール溶液に浸し、5分間の超音波洗浄を施し、白金膜表面にSAM膜が形成された。SAM処理後、加熱処理された機能性インク膜が形成された領域において、対純粋接触角を測定したところ、25°以下となり、親水性領域となることがわかった。
次に、再び、機能性インクを、インクジェット方式により、インクジェットヘッドから親水性領域(加熱処理された機能性インク膜が形成された領域)に吐出させた。機能性インクは、親水性領域に濡れ広がり、再び、機能性インク膜が形成された。
次に、再び、機能性インク膜に対して、加熱処理を行った。シリコンウェハを、ホットプレートに載せ、シリコンウェハ下面より第1の加熱処理を行った。昇温速度を、30℃/minとして、室温から120℃まで温度上昇させた。次に、乾燥させた機能性インク膜に対して、第2の加熱処理を行った。500℃での加熱処理を行うことで、乾燥させた機能性インク膜に含まれる有機物の熱分解処理を行った。更に、第3の加熱処理(結晶化処理)を行った。高速熱処理装置を用いて、750℃の急速加熱処理を行うことで、加熱処理された機能性インク膜(重ね塗りされている)を結晶化させた。
その後、引き続き、SAM処理、機能性インクの塗布、加熱処理、SAM処理、機能性インクの塗布、加熱処理、結晶化処理という一連のサイクルを、全く同様の条件で、15サイクル繰り返した。即ち、機能性インクの塗布を30回繰り返し行った。これより、所定の膜厚を有する電気機械変換膜(PZT膜)が形成された。
[インクジェットヘッドの吐出信頼性]
続いて、電気機械変換膜(PZT膜)の着弾パターンから、インクジェットヘッドの吐出信頼性を調べた。
図17は、PZT膜の着弾パターンの様子を撮像した写真である。図17(a)は、サンプル1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12を使用して形成されたPZT膜の着弾パターンの様子である。図17(b)は、サンプル11、13を使用して形成されたPZT膜の着弾パターンの様子である。
図17(a)より、インクジェットヘッドから吐出した液滴(機能性インク)は、所定のパターン上に的確に着弾していることがわかった。一方、図17(b)では、所定のパターン外に微小な円形状のパターンが見られた。従って、サンプル11、13は、インクジェットヘッドの吐出信頼性を低下させることがわかった。
即ち、副溶媒を含む機能性インクは、インクジェットヘッドの吐出信頼性を高められることが示唆される。
[PZT膜の膜厚の測定]
続いて、機能性インク(サンプル1〜サンプル13)を用いて形成されたPZT膜の膜厚を調べた。PZT膜の膜厚は、接触式段差計を用いて測定した。
図18(A)に、サンプル1〜サンプル9を用いて形成されたPZT膜の1つのパターンにおける端部からの距離と膜厚との関係を示し、図18(B)に、端部から中央部までの3次元形状を示す。又、図19(A)に、サンプル10、12を用いて形成されたPZT膜の1つのパターンにおける端部からの距離と膜厚との関係を示し、図19(B)に、端部から中央部までの3次元形状を示す。
図18に示す様に、サンプル1〜サンプル9を用いて形成されたPZT膜は、膜厚2.4μm、パターン内において、端部と中央部との間の膜厚バラツキが±0.5%未満であった。なお、パターン間において、膜厚バラツキは、2.5%以内であった。一方、図19に示す様に、サンプル10、12を用いて形成されたPZT膜は、パターン内において、端部と中央部との間の膜厚バラツキが20%以上であった。
即ち、サンプル1〜サンプル9を用いて形成されたPZT膜の膜厚は、ほぼ一定であるのに対して、サンプル10、12を用いて形成されたPZT膜の膜厚は、端部が中央部に比べて厚くなっていることがわかった。従って、サンプル1〜サンプル9を用いることで、PZT膜のコーヒーステイン現象を抑制できることがわかった。
乾燥速度の対主溶媒比が、75%以下である機能性インクを使用することで、良質な電気機械変換膜を形成できることが示唆される。
[電気的特性及び電気機械変換能の評価]
続いて、良質なPZT膜に上部電極(白金)を成膜し、電気機械変換素子を作製し、電気的特性、電気機械変換能(圧電定数)の評価を行った。
比誘電率は2020〜2280、誘電損失は0.04〜0.08、耐圧は60〜68Vであった。従って、電気機械変換素子は、優れた電気的特性を示すことがわかった。
図20に、P−Eヒステリシス曲線を示す。残留分極は19.2[μC/cm2]、抗電界は36.1[kV/cm]であり、通常のセラミック焼結体と同等の特性を持つことがわかった。又、電気機械変換能は、電界印加による変形量をレーザードップラー振動計で計測し、シミュレーションによる合わせ込みから算出した。圧電定数d31は、141pm/Vとなった。従って、圧電定数も通常のセラミック焼結体と同等の値であることがわかった。この値は、液滴吐出ヘッドに用いられる電気機械変換素子として十分設計できうる特性値である。
従って、良質な電気機械変換膜を使用して形成された電気機械変換素子は、良好な素子特性を有することがわかった。
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の実施形態の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。