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JP2015078150A - 関節リウマチ診断薬 - Google Patents

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JP2015078150A JP2013215885A JP2013215885A JP2015078150A JP 2015078150 A JP2015078150 A JP 2015078150A JP 2013215885 A JP2013215885 A JP 2013215885A JP 2013215885 A JP2013215885 A JP 2013215885A JP 2015078150 A JP2015078150 A JP 2015078150A
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Hidekazu Koseki
英一 小関
功 原
Isao Hara
功 原
正孝 坂根
Masataka Sakane
正孝 坂根
信三 大西
Shinzo Onishi
信三 大西
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Shimadzu Corp
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Abstract

【課題】生体に対する安全性が高く、分子イメージングによって炎症病変の位置を検出することのできる関節リウマチの診断薬を提供する。【解決手段】サルコシン単位を有する親水性ブロックと乳酸単位を有する疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマー、及び標識剤を含むナノ粒子を含有する関節リウマチ診断薬。前記親水性ブロックに含まれるサルコシン単位は2〜300個であり、前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位は5〜400個である。前記標識剤は、好ましくは蛍光色素である。【選択図】図2

Description

本発明は、関節リウマチ診断薬に関する。より詳しくは、本発明は、両親媒性ブロックポリマー及び標識剤を含むナノ粒子を含有する関節リウマチ診断薬に関する。さらに詳しくは、本発明は、両親媒性ブロックポリマー及び標識剤を含むナノ粒子を含有し、前記標識剤に基づいた分子イメージングによって炎症病変の位置を検出することのできる関節リウマチ診断薬に関する。
前記ナノ粒子において、前記標識剤を関節リウマチ治療作用のある薬剤に代えると、関節リウマチ治療薬となる。また、前記ナノ粒子において、前記標識剤が関節リウマチ治療作用を有していると、あるいは前記標識剤及び関節リウマチ治療作用のある薬剤の双方を包含させると、関節リウマチ治療診断薬となる。
関節リウマチ(Rheumatoid arthritis:RA)は、進行にともない全身の関節が破壊される自己免疫疾患であり、日本には約70万人の患者がいるとされる。進行すると痛みや関節変形により、日常生活に著しい制限を受ける場合がある。関節リウマチにおける関節炎は、関節内腔を覆う滑膜の炎症と増殖によるものである。治療においては、一般に消炎鎮痛剤や抗リウマチ薬(メトトレキサート)が使用されるが、症状によっては充分な効果が得られない場合もある。
関節リウマチの診断は、例えば、アメリカリウマチ学会(American College of Rheumatology:ACR)の関節リウマチ分類基準に応じて行われるが、早期の関節リウマチでは、ACR基準の診断感度は50%程度と見られる。
関節リウマチの診断には、臨床所見、血液検査による血清リウマトイド因子(変性IgG に対する自己抗体;RF)、C反応性タンパク質(CRP)、赤血球沈降速度(ESR)、画像検査(単純レントゲン写真、CT、MRI)などが用いられている。
関節リウマチにおける関節炎及び他のリウマチ性疾患を診断することは、多くの症状は様々な疾患の間で類似しているので、しばしば困難である。従って、より的確な診断法が求められる。
関節リウマチ診断の改良については、例えば、特開2003−57242号公報、特開2005−315772号公報、特開2006−304721号公報、特開2013−21932号公報、特開2013−32358号公報等に報告がある。これらは、いずれも免疫化学的な診断手法に関している。
特開2013−515099号公報には、ホスホリルコリンなどの双性イオンと機能性剤(薬剤、検出剤、イメージング剤、標識化剤、診断剤など)とを有するランダム共重合体が開示され、前記ランダム共重合体は、診断及びイメージングの目的に有効であることが開示されている([0024])。同号公報には、前記ランダム共重合体は、ホスホリルコリンなどの双性イオンを含む単量体に連結することができる単量体を用い、ラジカル重合によって製造されること([0025])、前記ランダム共重合体は、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタアクリルアミド、スチレン、ビニル−ピリジン及びビニル−ビロリドンを含む単量体から製造されること([0027])が開示されている。双性イオン成分とは、陽電荷及び陰電荷の双方を有する化合物である([0028])。機能性剤はナノ粒子を含んでいてもよく、ナノ粒子に診断剤及び/又は治療剤を詰めることができることが開示されている([0191])。また、前記ランダム共重合体を近赤外光線やMRIによるイメージングに用いることが開示され([0258]〜[0260])、慢性関節リウマチの治療に言及されている([0255])。上記の各単量体は生体適合性が十分ではない。同号公報には、両親媒性ブロックポリマーからなるナノ粒子は開示されていない。
一方、より生体適合性が高いペプチド性のナノ粒子も知られている。例えば、特開2008−24816号公報及び米国特許出願公開US2008/0019908には、疎水性ブロックとしてポリグルタミン酸メチルエステルを有する両親媒性ブロックポリマーを用いた、ペプチドタイプのナノ粒子が開示されている。この公報には、両親媒性ブロックポリマーの鎖長を変化させることにより、ナノ粒子の粒子径を制御できることが記載されている。また、当該ナノ粒子ががん組織へ集積することを観察したことが示されている。
また、Chemistry Letters, vol.36, no.10, 2007, p.1220-1221には、ポリ乳酸鎖とポリサルコシン鎖から構成される両親媒性ブロックポリマーを合成し、当該両親媒性ブロックポリマーの自己集合によって、DDSにおけるナノキャリアとしての利用可能性を有する粒径20〜200nmの分子集合体を調製したことが示されている。
国際公開第2009/148121号公報(米国特許出願公開US2011/0104056)及びバイオマテリアルズ(Biomaterials)、2009年、第30巻、p.5156−5160に、疎水性ブロックがポリ乳酸鎖、親水性ブロックがポリサルコシン鎖である直鎖型の両親媒性ブロックポリマーが、水溶液中において自己組織化し、高分子ミセル(ラクトソーム)を形成することが開示されている。ラクトソームの粒子径については、国際公開第2009/148121号公報の段落[0127]に10nm〜500nmが開示されているが、実際には、段落[0251]に30nm〜130nmが開示されているのみである。ラクトソームは、高い血中滞留性を有するほか、それまでに既に開発されていた高分子ミセルと比べて肝臓への集積量が著しく減少することが分かっている。このラクトソームは、血中に滞留している粒子径が数十〜数百nmのナノ粒子が癌疾に溜まりやすいという性質[Enhanced Permeation and Retention effect(EPR効果)]を利用することによって、癌疾部位を標的とした分子イメージング又は薬剤搬送用のナノキャリアとして適用可能である。
がん組織は正常組織よりも細胞の増殖が速く、細胞の増殖に必要な酸素やエネルギーを獲得するために、がん組織中に新生血管を誘導する。この新生血管はもろいため、ある程度大きな分子も当該血管外に漏れ出すことが知られている。さらに、がん組織では物質の排泄機構が未発達であるため、当該血管から漏れ出た分子がある程度がん組織中に滞留する。この現象がEPR効果として知られているものである。
国際公開第2012/176885号公報には、サルコシンを含む分岐した親水性ブロックと、ポリ乳酸を有する疎水性ブロックとを有する分岐型の両親媒性ブロックポリマーが、水溶液中において自己組織化し、粒径が10〜50nmの高分子ミセル(ラクトソーム)を形成することが開示されている。
国際公開第2012/026316号公報(米国特許出願公開US2013/0149252)、及び国際公開第2012/118136号公報には、蛍光色素を内包させたラクトソームナノ粒子からなるスイッチング型蛍光ナノ粒子プローブ及びそれを用いた蛍光分子イメージング法が開示されている。
国際公開第2012/128326号公報には、疎水性ブロックがポリ乳酸鎖、親水性ブロックがポリサルコシン鎖である直鎖型の両親媒性ブロックポリマーからなり、レーザー照射により細胞毒性を生じさせる近赤外蛍光色素を含むナノ粒子(ラクトソーム)を光線力学治療に用いることが開示されている。
特開2003−57242号公報 特開2005−315772号公報 特開2006−304721号公報 特開2013−21932号公報 特開2013−32358号公報 特開2013−515099号公報 特開2008−24816号公報 米国特許出願公開US2008/0019908 WO2009/148121号公報 米国特許出願公開US2011/0104056 WO2012/176885号公報 WO2012/026316号公報 米国特許出願公開US2013/0149252 WO2012/118136号公報 WO2012/128326号公報
ケミストリ・レターズ (Chemistry Letters)、2007年、第36巻、第10号、p.1220−1221 バイオマテリアルズ(Biomaterials)、2009年、第30巻、p.5156−5160
上述したように、関節リウマチの診断法は未だ確立されていないのが現状である。特に、早期の関節リウマチを診断することはさらに困難である。そのため、関節リウマチの的確な診断法が求められる。特に、早期の関節リウマチをも検出し得る的確な診断法が求められる。
本発明の目的は、生体に対する安全性が高く、分子イメージングによって炎症病変の位置を検出することのできる関節リウマチの診断薬を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、標識剤を内包させたラクトソームナノ粒子は、関節リウマチの炎症部位に集積し、分子イメージングによって関節リウマチの炎症病変の位置を検出することのできる関節リウマチ診断試薬として用い得ることを見出した。
本発明は、以下の発明を含む。
(1) サルコシン単位を有する親水性ブロックと乳酸単位を有する疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーA1、及び標識剤を含むナノ粒子を含有する関節リウマチ診断薬。
前記「ナノ粒子」は、基本的に、両親媒性ブロックポリマー分子の凝集により、或いは自己集合的な配向会合により成り立つ「分子集合体」である。乳酸単位を基本単位として有する疎水性ブロック鎖を含む両親媒性ブロックポリマーA1を含んで構成される分子集合体を、「ラクトソーム(lactosome)」と記載することがある。「サルコシン」とは、N−メチルグリシンである。
前記ナノ粒子は、分子集合体(ラクトソーム;lactosome)をキャリア剤とし、且つ標識剤を有するものである。キャリア剤を有する態様として、下記(5)及び(8)がある。本明細書においては、便宜上、下記(5)及び(8)の態様のいずれについても、分子集合体に標識剤が「内包される」と表現する場合がある。
両親媒性ブロックポリマーA1の親水性ブロック鎖が有する「親水性」とは、当該親水性ブロック鎖が、乳酸単位を有する疎水性ブロック鎖に対して、相対的に親水性が強い性質をいう。疎水性ブロック鎖が有する「疎水性」とは、当該疎水性ブロック鎖が、サルコシン単位を有する親水性ブロック鎖に対して、相対的に疎水性が強い性質をいう。
標識剤は、検出によりイメージングを可能にする特性を有するものである。例えば、標識剤として、蛍光基を有する物質(蛍光色素)、放射性元素含有基を有する物質、磁性基を有する物質などが挙げられる。
(2) 前記親水性ブロックに含まれるサルコシン単位は2〜300個である、上記(1)に記載の関節リウマチ診断薬。本明細書において、構成単位の数すなわち重合度は平均重合度である。
(3) 前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位は5〜400個である、上記(1)又は(2)に記載の関節リウマチ診断薬。
(4) 前記標識剤は、蛍光色素Bである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の関節リウマチ診断薬。
(5) 前記蛍光色素Bは、5個以上の乳酸単位と、蛍光基とを少なくとも有する蛍光標識ポリマーB1であり、且つ、前記両親媒性ブロックポリマーA1とともに自己集合することによりナノ粒子を形成している、上記(4)に記載の関節リウマチ診断薬。
(6) 前記蛍光標識ポリマーB1における蛍光基が、下記式(I):
(式中、Rは、置換されていてもよい炭化水素基であり、Rは、置換されていてもよい2価の炭化水素基であり;R及びR’は、水素であるか、又はそれらが互いに連結して環状構造を形成するものであり;Xは水素又はハロゲンであり;Aは陰イオンであり、mは0又は1であり;環B及び環Dは、それぞれ同一又は異なっていてもよい含窒素縮合芳香族複素環である。)で示されるものである、上記(5)に記載の関節リウマチ診断薬。
(7) 前記蛍光標識ポリマーB1における蛍光基は、インドシアニングリーンに由来する基である、上記(5)又は(6)に記載の関節リウマチ診断薬。
(8) 前記蛍光色素Bは、前記両親媒性ブロックポリマーA1の自己集合により形成されたナノ粒子に内包された蛍光分子B2である、上記(4)に記載の関節リウマチ診断薬。
(9) 前記近赤外蛍光分子B2が、下記式(I’):
(式中、R及びR’は、それぞれ、同一又は異なっていてもよく、置換されていてもよい炭化水素基であり;R及びR’は、水素であるか、又はそれらが互いに連結して環状構造を形成するものであり;Xはハロゲンであり;Aは陰イオンであり、mは0又は1であり;環B及び環Dは、同一又は異なっていてもよい含窒素縮合芳香族複素環である。)で示されるシアニン化合物である、上記(8)に記載の関節リウマチ診断薬。
(10) 前記蛍光分子B2は、インドシアニングリーン分子である、上記(8)又は(9)に記載の関節リウマチ診断薬。
(11) 前記ナノ粒子は、10個以上の乳酸単位を少なくとも有する疎水性ポリマーA2をさらに含むものである、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の関節リウマチ診断薬。
(12) 前記ナノ粒子は、10〜200nmの粒子径を有する、上記(1)〜(11)のいずれかに記載の関節リウマチ診断薬。「粒子径」とは、粒子分布で最も出現頻度の高い粒子径、すなわち中心粒子径を意味する。
・ サルコシン単位を有する親水性ブロックと乳酸単位を有する疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーA1、及び標識剤を含むナノ粒子を含有する関節リウマチの炎症性滑膜の診断薬。
・ サルコシン単位を有する親水性ブロックと乳酸単位を有する疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーA1、及び標識剤を含むナノ粒子を含有する関節リウマチの炎症性滑膜の範囲の診断薬。
・ サルコシン単位を有する親水性ブロックと乳酸単位を有する疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーA1、及び標識剤を含むナノ粒子を含有する関節リウマチの炎症性滑膜の切除範囲の診断薬。
本発明によると、内包された標識剤に基づいた分子イメージングによって炎症病変の位置を検出することのできる関節リウマチ診断薬が提供される。すなわち、本発明において、上記ナノ粒子は、関節リウマチの炎症部位にEPR効果により特異的に集積するので、集積したナノ粒子を分子メージング装置によって検出することにより、関節リウマチの正確な診断、特に滑膜炎症部位の範囲の正確な診断を行うことができる。これは、免疫化学的な診断手法に対して大きな利点である。
実験例2において、ラクトソーム投与直後、3、6時間での蛍光検出画像である。関節炎群は上段、コントロール群は下段に示されている。 実験例2において、ラクトソーム投与12、24、48時間での蛍光検出画像である。関節炎群は上段、コントロール群は下段に示されている。 実験例2において、関節炎群及びコントロール群の両群について、ラクトソーム投与24時間経過後での実写真と蛍光イメージングの同時撮影の結果を示す。図3(a)は実写真であり、下段の写真は足関節部分の拡大である。図3(b)は蛍光イメージングの画像である。 実験例2において、関節炎群及びコントロール群の各群について、ラクトソーム投与からの経過時間に対する蛍光強度比を示す。 実験例2において、関節炎群について、ラクトソーム投与からの経過時間に対する蛍光強度比を示す。 実験例2において、各組織における蛍光強度を示す。図6(a)は足関節の皮膚を切除した実写真であり、図6(b)は(a)に対応する蛍光イメージングの画像である。図6(c)は皮膚切除した後、足関節の筋を切除した実写真であり、図6(d)は(c)に対応する蛍光イメージングの画像である。 実験例2において、各組織における蛍光強度を示す。図7(a)は筋切除した後、足関節の関節包・滑膜を切除した実写真であり、図7(b)は(a)の部分拡大であり、図7(c)は(a)に対応する蛍光イメージングの画像である。
本発明の関節リウマチ診断薬は、サルコシン単位を有する親水性ブロックと乳酸単位を有する疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーA1、及び標識剤を含むナノ粒子を含有するものである。前記ナノ粒子は、両親媒性ブロックポリマー分子の凝集により、或いは自己集合的な配向会合により成り立つ分子集合体(ラクトソーム)であり、分子集合体に前記標識剤が内包されている。以下に説明する。
[1.両親媒性ブロックポリマーA1]
両親媒性ブロックポリマーA1は、サルコシン単位を有する親水性ブロックと、乳酸単位を有する疎水性ブロックとを有する。
[1−1.親水性ブロック]
本発明において、親水性ブロック鎖が有する「親水性」という物性の具体的な程度としては、特に限定されるものではないが、少なくとも、親水性ブロック鎖の全体が、後述の乳酸単位を有する疎水性ブロック鎖に対して相対的に親水性が強い性質をいう。或いは、親水性ブロック鎖が疎水性ブロック鎖とコポリマーを形成することによって、コポリマー分子全体として両親媒性を実現することが可能となる程度の親水性をいう。さらに或いは、両親媒性ブロックポリマーが溶媒中で自己組織化して、自己集合体、特に粒子状の自己集合体を形成することが可能となる程度の親水性をいう。
本発明において、両親媒性ブロックポリマーは、親水性ブロックにおいて直鎖構造を有していてもよいし、分岐した構造を有していてもよい。分岐構造の場合には、親水性ブロックの分岐それぞれにサルコシンが含まれる。
親水性ブロックにおいて、構成単位の種類及び比率は、ブロック全体が上述したような親水性となるように、当業者によって適宜決定されるものである。例えば、前記親水性ブロックに含まれるサルコシン単位の合計は2〜300個である。具体的には、直鎖型の場合、サルコシン単位の合計は、例えば、10〜300、20〜200、又は20〜100程度でありうる。構成単位数が上記範囲を超えると、分子集合体を形成した場合に、形成された分子集合体の安定性を欠く傾向にある。上記範囲を下回ると、両親媒性ブロックポリマーとしての体をなさないか、又は、分子集合体の形成自体が困難となる傾向にある。
分岐型の場合、分岐全てに含まれるサルコシン単位の合計は、例えば、2〜200、2〜100、又は2〜10個でありうる。あるいは、複数の親水性ブロック全てに含まれるサルコシン単位の合計は、例えば、30〜200、又は50〜100個でありうる。1つの分岐当たりのサルコシン単位数の平均は、例えば、1〜60、1〜30、1〜10、又は1〜6でありうる。すなわち、親水性ブロックそれぞれは、サルコシン又はポリサルコシン鎖を含んで構成されることができる。構成単位数が上記範囲を超えると、分子集合体を形成した場合に、形成された分子集合体の安定性を欠く傾向にある。上記範囲を下回ると、両親媒性ブロックポリマーとしての体をなさないか、又は、分子集合体の形成自体が困難となる傾向にある。
分岐型の場合、親水性ブロックにおける分岐は2以上であればよいが、分子集合体を形成する際に粒子形状のミセルを効率的に得る観点から、好ましくは3以上である。親水性ブロックにおける分岐の数の上限は特に限定されるものではないが、例えば27である。特に、本発明においては、分岐型の場合、親水性ブロックの分岐の数が3であることが好ましい。分岐構造は、当業者が適宜設計できる。
サルコシン(すなわちN−メチルグリシン)は水溶性が高く、また、サルコシンのポリマーはN置換アミドを有することから通常のアミド基に比べてシス−トランス異性化が可能であり、さらに、Cα炭素まわりの立体障害が少ないことから、高い柔軟性を有するものである。このような構造を構成ブロックとして用いることは、当該ブロックに高い親水性の基本特性、又は、高い親水性と高い柔軟性とを併せ持つ基本特性が備わる点で非常に有用である。
さらに、親水性ブロックは、末端(すなわちリンカー部と反対側の末端)に親水性基(例えば水酸基に代表される)を有していることが好ましい。
なお、ポリサルコシン鎖においては、全てのサルコシン単位が連続していてもよいし、非連続であってもかまわないが、当該ポリペプチド鎖全体として上述の基本特性を損なわないように分子設計されたものであることが好ましい。
親水性ブロック鎖がサルコシン単位以外の他の構成単位を有する場合、そのような構成単位としては特に限定されないが、アミノ酸(親水性アミノ酸及びその他のアミノ酸を含む)とすることができる。なお、本明細書において「アミノ酸」は、天然アミノ酸、非天然アミノ酸、及びそれらの修飾及び/又は化学的変更による誘導体を含む概念で用いる。さらに、本明細書において、アミノ酸は、α−、β−、γ−アミノ酸を含む。好ましくは、αアミノ酸である。例えば、セリン、スレオニン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸などが挙げられる。
また、両親媒性ブロックポリマーA1は糖鎖やポリエーテルなどのさらなる基を有してよい。この場合は、両親媒性ブロックポリマーA1の親水性ブロックが糖鎖やポリエーテルなどを有するように分子設計されることが好ましい。
[1−2.疎水性ブロック]
本発明において、疎水性ブロックが有する「疎水性」という物性の具体的な程度としては、特に限定されるものではないが、少なくとも、疎水性ブロックが、上記の親水性ブロックの全体に対して相対的に疎水性が強い領域であり、当該親水性ブロックとコポリマーを形成することによって、コポリマー分子全体として両親媒性を実現することが可能となる程度の疎水性を有していれば良い。或いは、当該両親媒性ブロックポリマーが溶媒中で自己組織化して、自己集合体、好ましくは粒子状の自己集合体を形成することが可能となる程度の疎水性を有していれば良い。
1本の両親媒性ブロックポリマー中に存在する疎水性ブロックは分岐していなくともよいし、分岐していてもよい。しかしながら、疎水性ブロックは分岐していない方が、疎水性コア部に対して、親水性分岐型シェル部の稠密度が増すので、より小さい粒径の安定したコア/シェル型分子集合体を形成し易いと考えられる。
本発明において、疎水性ブロックは乳酸単位を含むものである。疎水性ブロックにおいて構成単位の種類及び比率は、ブロック全体が上述したような疎水性となるように、当業者によって適宜決定されるものである。例えば、前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位の数は5〜400個である。具体的には、例えば疎水性ブロックが分岐していない場合、乳酸単位の数は、例えば5〜100、15〜60個、又は25〜45個でありうる。疎水性ブロックが分岐している場合は、分岐全てに含まれる乳酸単位の数の合計が、例えば10〜400、好ましくは20〜200個でありうる。この場合、1つの分岐当たりの乳酸単位数の平均は、例えば、5〜100、好ましくは10〜100個である。
構成単位数が上記範囲を上回ると、分子集合体を形成した場合に、当該形成された分子集合体の安定性を欠く傾向にある。構成単位数が上記範囲を下回ると、分子集合体の形成自体が困難となる傾向にある。
疎水性ブロックが分岐する場合、分岐の数は特に限定されないが、分子集合体を形成する際に粒子形状のミセルを効率的に得る観点から、例えば、親水性ブロックにおける分岐数以下とすることができる。
ポリ乳酸は、以下の基本特性を有する。
ポリ乳酸は、優れた生体適合性及び安定性を有するものである。このため、このようなポリ乳酸を構成ブロックとした両親媒性物質から得られる分子集合体は、生体、特に人体への応用性という点で非常に有用である。
また、ポリ乳酸は、優れた生分解性を有することから代謝が早く、生体内においてがん組織以外への組織への集積性が低い。このため、このようなポリ乳酸を構成ブロックとした両親媒性物質から得られる分子集合体は、がん組織への特異的な集積性という点で非常に有用である。
そして、ポリ乳酸は、低沸点溶媒への溶解性に優れるものであることから、このようなポリ乳酸を構成ブロックとした両親媒性物質から分子集合体を得る際に、有害な高沸点溶媒の使用を回避することが可能である。このため、このような分子集合体は、生体への安全性という点で非常に有用である。
なお、疎水性ブロックを構成するポリ乳酸鎖(PLA)においては、全ての乳酸単位が連続していてもよいし、非連続であってもかまわないが、疎水性ブロック全体として上述の基本特性を損なわないように分子設計されたものであることが好ましい。
疎水性ブロックを構成するポリ乳酸鎖(PLA)は、L−乳酸単位から構成されているポリL−乳酸鎖(PLLA)か、又は、D−乳酸単位から構成されているポリD−乳酸鎖(PDLA)のいずれであってもよい。また、L−乳酸単位とD−乳酸単位との両者から構成されていてもよい。この場合において、L−乳酸単位とD−乳酸単位とは、交互配列、ブロック配列、又はランダム配列のいずれであってもよい。
疎水性ブロック鎖が乳酸単位以外の他の構成単位を有する場合、そのような構成単位の種類・比率は、ブロック鎖全体が上述したような疎水性であることを満たせば特に限定されるものではないが、所望の諸特性を有するように分子設計されたものであることが好ましい。
疎水性ブロック鎖において、乳酸単位以外の構成単位を有する場合、そのような構成単位は、乳酸以外のヒドロキシ酸及びアミノ酸(疎水性アミノ酸及びその他のアミノ酸を含む)からなる群から選択することができる。ヒドロキシ酸としては、特に限定されないが、グリコール酸、ヒドロキシイソ酪酸などが挙げられる。疎水性アミノ酸は、その多くが、脂肪族側鎖、芳香族側鎖などを有する。天然アミノ酸では、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、メチオニン、チロシン、及びトリプトファンなどが挙げられる。非天然アミノ酸では、特に限定されないが、グルタミン酸メチルエステル、グルタミン酸ベンジルエステル、アスパラギン酸メチルエステル、アスパラギン酸エチルエステル、アスパラギン酸ベンジルエステルなどのアミノ酸誘導体が挙げられる。
[1−3.両親媒性ブロックポリマーA1の合成]
本発明において、両親媒性ブロックポリマーA1の合成法としては、特に限定されるものではなく、公知のペプチド合成法、ポリエステル合成法、及び/又はデプシペプチド合成法を用いることができる。
ペプチド合成は、例えば、アミンなどの塩基を開始剤として、N−カルボキシアミノ酸無水物(アミノ酸NCA)を開環重合することなどによって行うことができる。
ポリエステル合成は、例えば、アミンなどの塩基や金属錯体などを開始剤として、ラクチドを開環重合することなどによって行うことができる。ラクチドとしては、ブロック鎖の所望の光学純度を考慮して、当業者が適宜決定することができる。例えば、L−ラクチド、D−ラクチド、DL−ラクチド及びメソラクチドから適宜選択し、ブロック鎖の所望の光学純度に応じて当業者が適宜使用量を決定することができる。
デプシペプチド合成は、例えば、疎水性ブロックとしてポリ乳酸を先に合成し、その後、親水性ブロックとなるポリペプチド鎖を伸張する方法と、親水性ブロックとなるポリペプチド鎖を先に合成し、その後、疎水性ブロックとなるポリ乳酸を伸張する方法とが挙げられる。
分子集合体において、ポリ乳酸の鎖長を調整することができる。両親媒性ブロックポリマーA1の合成の際には、ポリ乳酸の鎖長をより自由に制御するという観点から、疎水性ブロックであるポリ乳酸を先に合成し、その後、親水性ブロック鎖となるポリペプチド鎖を伸張する方法を行う方が好ましい。また、両親媒性ブロックポリマーA1における疎水性ブロック鎖としてのポリ乳酸は、親水性ブロック鎖としてのポリサルコシンに比べ重合度の制御をより容易に且つ正確に行うことができる。
両親媒性ブロックポリマーA1の構造及び合成については、WO2009/148121号公報(直鎖型)、及びWO2012/176885号公報(分岐型)を参照することができる。
[2.標識剤]
標識剤は、検出によりイメージングを可能にする特性を有するものであればよい。例えば、標識剤として、蛍光基を有する物質(蛍光色素)、放射性元素含有基を有する物質、磁性基を有する物質などが挙げられる。これら標識剤を検出する手段は、当業者によって適宜選択されるものである。標識剤は、キャリア剤としてのラクトソームナノ粒子に内包される。
[2−1.標識基]
蛍光基としては、特に限定されないが、フルオレセイン系色素、インドシアニン色素などのシアニン系色素、ローダミン系色素、量子ドットなどに由来する基が挙げられる。本発明においては、近赤外蛍光基(例えばシアニン系色素、量子ドットなどに由来する基)を用いてもよい。
近赤外領域(700〜1300nm)では、水素結合を有する各置換基の吸収が存在するものの、その吸収は比較的小さい。このため、近赤外光は生体組織を透過しやすい特性を有する。このような近赤外光の特性を利用すれば、身体に無用の負荷を与えることなくラクトソームナノ粒子が集積した部位の情報を正確に得ることができる。
近赤外蛍光基のより具体的な例としては、ICG(インドシアニングリーン)などのインドシアニン系色素、Cy7、DY776、DY750、Alexa790、Alexa750などに由来する基が挙げられる。
放射性元素含有基としては、特に限定されないが、18Fなどの放射性同位体でラベルした、糖、アミノ酸、核酸などに由来する基が挙げられる。放射性元素含有基の導入方法の具体例の一つとしては、モノFmoc (9-fluorenylmethyloxycarbonyl) エチレンジアミンを用いてラクチドの重合を行う工程、末端OHをシリル保護基で保護する工程、ピペリジン処理でFmocを脱離する工程、サルコシン−N−カルボキシ無水物(SarNCA)の重合を行い、重合物末端をターミネーションする工程、シリル保護基を外し、スルホン酸エステル(例えば、トリフルオロメタンスルホン酸エステル、パラトルエンスルホン酸エステルなど)に変換する工程、及び放射性元素含有基を導入する工程により行う方法が挙げられる。さらに、当該具体例は当業者によって適宜変更されて良い。
磁性基としては、特に限定されないが、フェリクロームなどの磁性体を有するものや、フェライトナノ粒子、ナノ磁性粒子などに見られるものが挙げられる。
[2−2.蛍光色素B]
本発明において、前記標識剤は蛍光色素であることが好ましい。蛍光色素Bについて、さらに説明する。
蛍光色素Bは、キャリア剤に内包される要素である。具体的には、ポリマーに近赤外蛍光基が結合した態様を有するもの(近赤外蛍光標識ポリマーB1)及び近赤外蛍光分子そのもの(近赤外蛍光分子B2)から選ばれる。
[2−2−1.近赤外蛍光標識ポリマーB1]
近赤外蛍光標識ポリマーB1は、以下の標識基及びポリマー部を少なくとも有する。近赤外蛍光標識ポリマーB1は、上記両親媒性ブロックポリマーA1とともに自己集合により分子集合体を形成することができる要素である。近赤外蛍光標識ポリマーB1は、下記の1種又は複数種を組み合わせて使用することができる。
[2−2−1−1.標識基]
標識基は、近赤外蛍光色素Bに上述の特性を付与する部分であり、具体的には、近赤外蛍光分子に由来する基(近赤外蛍光基)である。例えば、シアニン系蛍光分子や量子ドットなどに由来する基が用いられる。シアニン系色素に由来する基の一例は、以下の一般式(I)で表される。
上記式(I)中、Rは、置換されていてもよい炭化水素基であり、Rは、置換されていてもよい2価の炭化水素基である。
における炭化水素基は、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜5のアルキル基でありうる。
における炭化水素基は、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜5のアルキレン基でありうる。
及びRにおける置換基は、アニオン性であってもよい置換基であり、カルボキシル基、カルボキシレート基、金属カルボキシレート基、スルホニル基、スルホネート基、金属スルホネート基、又は水酸基でありうる。前記金属は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属でありうる。
及びR’は、水素であるか、又はそれらが互いに連結して環状構造を形成するものである。R及びR’は互いに連結して環状構造をとることにより、蛍光色素の分子構造をリジッド化しうる。
Xは水素又はハロゲンである。ハロゲンは、Cl、Br、又はIでありうる。Aは陰イオンであり、mは0又は1である。mが0の場合、R及びRのいずれか一方がアニオン性基であり、分子全体としてベタイン構造をとる。mが1の場合、Aは、Cl、Br、I等のハロゲンイオン、CIO 、BF 、PF 、SbF 、SCN等でありうる。
環B及び環Dは、同一又は異なっていてもよい含窒素縮合芳香族複素環である。たとえば、含窒素二環式や三環式芳香族複素環でありうる。好ましくは、環B及び環Dは、同一である。
環Bの好ましい態様としては、以下に示す構造が挙げられる。
環Dの好ましい態様としては、以下に示す構造が挙げられる。
上記式において、R及びRは、いずれも水素でありうる。又は、R及びRは、それらが互いに連結してアリール環を形成しうる。前記アリール環は、置換されてよいベンゼン環でありうる。
本発明において好ましい蛍光基は、下記構造式(II)で示される、インドシアニン化合物由来の基である。
本発明における蛍光基の具体例として、環B及び環Dがいずれも含窒素三環式芳香族複素環であるICG基(III)、IC7−1基(IV)及びIR820基(V)、環B及び環Dがいずれも含窒素二環式芳香族複素環であるIR783基(VI)及びIR806基(VII)、及び、環Bが含窒素三環式芳香族複素環、環Cが含窒素二環式芳香族複素環であるIC7−2基(VIII)が挙げられる。これら基の構造式を以下に示す。
上記式(III)で表されるICG基は、810nm付近の近赤外光レーザーの照射を受けると励起され、定常状態に戻る際に活性酸素やフリーラジカルを放出し、さらに細胞毒性を有する分解物を生じる。
[2−2−1−2.ポリマー部]
ポリマー部は、5個以上の乳酸単位を有する。例えば、乳酸単位を主たる構成成分とするもの(すなわちポリ乳酸基)であってもよいし、乳酸単位を疎水性ブロックとし、さらにそれに対する親水性ブロックを有するもの(すなわち両親媒性ブロックポリマー基)であってもよい。本発明における分子集合体は、生体適合性、安定性及び生分解性に優れ、構成ポリマーが低沸点溶媒への溶解性に優れるという諸特性を有するものであることが好ましい。従って、ポリマー部の構成は、これらの優れた諸特性を有するように分子設計されることが好ましい。
ポリ乳酸基は、例えば5〜50、10〜50、好ましくは15〜35の乳酸単位を主たる構成成分とする。乳酸単位のすべてが連続していてもよいし、非連続であってもかまわない。上記範囲内で、標識ポリマーB1全体の長さが上述の両親媒性ブロックポリマーA1の長さを超えないように分子設計される。好ましくは、両親媒性ブロックポリマーA1における疎水性ブロックの2倍の長さを超えないように分子設計される。
その他、標識ポリマーB1のポリマー部の構成単位や鎖長に関しては、基本的に、上述の両親媒性ブロックポリマーA1における疎水性ブロック鎖の分子設計における場合と同様の観点で決定することができる。このようにすることによって、分子集合体において、標識ポリマーB1と、両親媒性ブロックポリマーA1の疎水性ブロック鎖との親和性に優れるという効果も得られる。
標識ポリマーB1において、近赤外蛍光基は、ポリマー部の末端構成単位に結合しうる。また、標識ポリマーB1は、分子設計上化学的又は生化学的に許容される近赤外蛍光基及びポリマー基以外の構成要素のいかなるものも有しうる。この場合、他の構成要素は、標識ポリマーB1が全体として上記定義された「疎水性」の範疇を越える影響を与えない程度で含まれる。
以下に、この態様における標識ポリマーB1の具体例を示す。下記式において、nは、5〜50の整数である。下記の化合物は、近赤外蛍光基としてICG基を有するものである。
標識ポリマーB1が標識両親媒性ブロックポリマーである場合、「疎水性」及び「親水性」の物性の具体的な程度は、上述の両親媒性ブロックポリマーA1の分子設計における場合と同様である。また、この場合における標識ポリマーB1のポリマー部(すなわち両親媒性ブロックポリマー部)の構成単位や鎖長に関しても、基本的に、上述の両親媒性ブロックポリマーA1の分子設計における場合と同様の観点で決定することができる。このようにすることによって、分子集合体において、標識ポリマーB1と、両親媒性ブロックポリマーA1の疎水性ブロック鎖との親和性に優れるという効果も得られる。
[2−2−2.近赤外蛍光分子B2]
近赤外蛍光分子B2は、上記両親媒性ブロックポリマーA1を基礎的要素とする分子集合体に内包されることができる要素である。近赤外蛍光分子B2は、下記の1種又は複数種を組み合わせて使用することができる。
近赤外蛍光分子B2は、例えば、シアニン系蛍光分子や量子ドットなどが用いられる。シアニン系蛍光分子の一例は、以下の一般式(I’)で表される。
上記式(I’)に示す構造は、上記式(I)に示す構造における2価のRが1価のR’に置き換わったことを除き、上記式(I)と同様である。
上記式(I’)中、R及びR’は、それぞれ、同一又は異なっていてもよく、置換されていてもよい炭化水素基である。
及びR’における炭化水素基は、炭素数1〜20、好ましくは炭素数2〜5のアルキル基でありうる。R及びR’における置換基は、アニオン性であってもよい置換基であり、カルボキシル基、カルボキシレート基、金属カルボキシレート基、スルホニル基、スルホネート基、金属スルホネート基、又は水酸基でありうる。前記金属は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属でありうる。
及びR’は、水素であるか、又はそれらが互いに連結して環状構造を形成するものである。R及びR’は互いに連結して環状構造をとることにより、蛍光色素の分子構造をリジッド化しうる。
Xは水素又はハロゲンである。ハロゲンは、Cl、Br、又はIでありうる。Aは陰イオンであり、mは0又は1である。mが0の場合、R及びRのいずれか一方がアニオン性基であり、分子全体としてベタイン構造をとる。mが1の場合、Aは、Cl、Br、I等のハロゲンイオン、CIO 、BF 、PF 、SbF 、SCN等でありうる。
環B及び環Dは、同一又は異なっていてもよい含窒素縮合芳香族複素環である。たとえば、含窒素二環式や三環式芳香族複素環でありうる。好ましくは、環B及び環Dは、同一である。
環Bの好ましい態様としては、以下に示す構造が挙げられる。
環Dの好ましい態様としては、以下に示す構造が挙げられる。
上記式において、R及びRは、いずれも水素でありうる。又は、R及びRは、それらが互いに連結してアリール環を形成しうる。前記アリール環は、置換されてよいベンゼン環でありうる。
本発明においてより好ましい蛍光色素は、下記構造式(II’)で示されるインドシアニン化合物である。
本発明における蛍光色素の具体例として、環B及び環Dがいずれも含窒素三環式芳香族複素環であるICG(III’)、IC7−1(IV’)及びIR820(V’)、環B及び環Dがいずれも含窒素二環式芳香族複素環であるIR783(VI’)及びIR806(VII’)、及び、環Bが含窒素三環式芳香族複素環、環Cが含窒素二環式芳香族複素環であるIC7−2(VIII’)の構造式を以下に示す。
上記式(III’)で表されるICG(インドシアニングリーン)分子は、810nm付近の近赤外光レーザーの照射を受けると励起され、定常状態に戻る際に活性酸素やフリーラジカルを放出し、さらに細胞毒性を有する分解物を生じる。
[2−2−3.近赤外蛍光色素Bの濃度]
近赤外蛍光色素Bの濃度は、ナノ粒子を構成するポリマー及び前記近赤外蛍光色素Bの合計に対し、例えば、0.1〜50mol%、又は0.5〜20mol%でありうる。また、上記範囲の下限は、1mol%、5mol%又は10mol%であってもよい。上記範囲の上限は、下限値よりも大きいことを条件として、10mol%、5mol%又は1mol%であってもよい。また、他の標識剤の濃度も適宜選択するとよい。
[3.疎水性ポリマーA2]
本発明において、ナノ粒子はさらに有する疎水性ポリマーA2を含むことができる。疎水性ポリマーA2は、10個以上の乳酸単位を少なくとも有する疎水性ポリマーであり、好ましくは、15個以上の乳酸単位を少なくとも有する。ここで、疎水性ポリマーA2が有する「疎水性」という物性の具体的な程度としては特に限定されるものではないが、少なくとも、上記の両親媒性ポリマーA1の親水性ブロックに対して、相対的に疎水性が強い。
疎水性ポリマーA2においては、10個以上の乳酸単位が主たる構成成分であることが好ましい。しかしながら一方で、乳酸単位以外の他の構成単位を有することも許容する。当該乳酸単位はそのすべてが連続していてもよいし、非連続であってもよい。
疎水性ポリマーA2の構成単位や鎖長は、基本的に、上述の両親媒性ブロックポリマーA1における疎水性ブロック鎖や、近赤外蛍光標識ポリマーB1におけるポリマー部の分子設計における場合と同様の観点で決定することができる。このようにすることによって、分子集合体において、疎水性ポリマーA2と、両親媒性ブロックポリマーA1の疎水性ブロック鎖及び/又は近赤外蛍光標識ポリマーB1におけるポリマー部との親和性に優れるという効果も得られる。
疎水性ポリマーA2の構成単位数の上限としては、上述の両親媒性ブロックポリマーA1の長さを超えないものであれば特に限定されないが、好ましくは、両親媒性ブロックポリマーA1における疎水性ブロックの2倍の長さを超えないものとする。従って、疎水性ポリマーA2の構成単位数の上限としては、例えば疎水性ブロックが分岐していない場合、200程度とすることができる。本発明においては、しばしば、10〜160、好ましくは20〜100程度の構成単位数を有する疎水性ポリマーA2が合成されうる。構成単位数が200程度を超えると、分子集合体を形成した場合に、形成された分子集合体の安定性を欠く傾向にある。構成単位数が10を下回ると、疎水性ポリマーA2を混合することによる後述の効果(疎水コア体積増大効果及び粒子径制御効果)が小さくなる。
疎水性ポリマーA2の配合量は、例えば、両親媒性ブロックポリマーA1と疎水性ポリマーA2との使用割合が、モル基準で10:1〜1:10となる量でありうる。上記範囲よりも疎水性ポリマーA2の割合が上回ると、分子集合体自体がその形状を保ちにくくなる傾向にある。また、上記範囲よりも疎水性ポリマーA2の割合が下回ると、疎水性ポリマーA2を混合することによる後述の効果(疎水コア体積増大効果及び粒子径制御効果)が得られにくくなる傾向にある。
[4.ナノ粒子の大きさ]
本発明において、ナノ粒子の大きさは、例えば粒子径10〜500nm、又は10〜200nm、好ましくは20〜200nmである。ここで「粒子径」とは、粒子分布で最も出現頻度の高い粒径、すなわち中心粒径をいう。粒子径が10nmより小さいものは作成が難しく、500nmより大きいものは、特に生体内へ注射により投与する場合に、注射剤として好ましくない場合がある。また、本発明において、関節リウマチの炎症部位において血管透過性が亢進し、EPR効果により、血管外間質腔にナノ粒子が漏出・滞留するために、ナノ粒子の大きさは、例えば粒子径は20〜200nmであり、より好ましくは20〜100nm、20〜50nmである。このような粒子径にすると、関節リウマチの滑膜炎症部位にナノ粒子が集積しやすく、分子イメージングによって関節リウマチの炎症病変の位置を検出することができる。
本発明において、ナノ粒子の大きさを測定するための方法は特に限定されるものではなく、当業者によって適宜選択されるものである。例えば、透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope;TEM)による観察法や、動的光散乱(Dynamic Light Scattering;DLS)法などが挙げられる。DLS法においては、溶液中でブラウン運動している粒子の移動拡散係数を測定する。
ナノ粒子の大きさを制御する手段の例として、両親媒性ブロックポリマーA1の鎖長を制御することが挙げられる。好ましくは、両親媒性ブロックポリマーA1における疎水性ブロックの重合度を調整することができる。
他の例においては、近赤外蛍光色素Bとしての近赤外蛍光標識ポリマーB1のポリマー部や、疎水性ポリマーA2の重合度を調整することができる。
さらなる他の例においては、疎水性ポリマーA2の配合量を制御することができる。疎水性ポリマーA2は、分子集合体の疎水性コアを増大させる効果がある。しかも、その配合量を調整することにより、分子集合体の大きさの連続的制御を可能にする。従って、この手段は、ラクトソームの微妙な大きさの調整ができる点で好ましい。
[5.ナノ粒子の形成]
ナノ粒子(ラクトソーム)の作成法は特に限定されず、所望するナノ粒子の大きさ、特性、担持させる標識物質(蛍光色素Bなど)の種類、性質、含有量などに応じて、当業者が適宜選択することができる。必要に応じ、下記のようにナノ粒子を形成した後に、得られたナノ粒子に対して、公知の方法によって表面修飾を行っても良い。なお、粒子が形成されたことの確認は、電子顕微鏡観察によって行うと良い。
[5−1.フィルム法]
本発明における両親媒性ブロックポリマーA1及び疎水性ポリマーA2は低沸点溶媒への溶解性を有するため、この方法を用いたナノ粒子の調製が可能である。
フィルム法は、次の工程を含む。すなわち、容器(例えばガラス容器)中に、両親媒性ブロックポリマーA1、疎水性ポリマーA2等分子集合体を構成するポリマーと標識物質(蛍光色素Bなど)とを有機溶媒中に含む溶液を用意する工程;前記溶液から前記有機溶媒を除去し、前記容器の内壁にポリマーと標識物質とを含むフィルムを得る工程;及び、前記容器中に水又は水溶液を加え、必要に応じて超音波処理を行い、前記フィルム状物質を、標識物質を内包する粒子状の分子集合体に変換してナノ粒子の分散液を得る工程、を含む。さらに、フィルム法は、前記のナノ粒子の分散液を凍結乾燥処理に供する工程を含んでも良い。
分子集合体を構成するポリマーと標識物質(蛍光色素Bなど)とを有機溶媒中に含む溶液は、分子集合体を構成するポリマーをあらかじめフィルムの状態でストックしておき、ナノ粒子調製時に、標識物質(蛍光色素Bなど)を含む溶液を加えてフィルムを溶解することによって調製してもよい。
フィルム法に用いる有機溶媒としては、低沸点溶媒を用いることが好ましい。本発明における低沸点溶媒とは、1気圧における沸点が100℃以下、好ましくは90℃以下のものをいう。具体的には、クロロホルム、ジエチルエーテル、アセトニトリル、2−プロパノール、エタノール、アセトン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン、ヘキサンなどが挙げられる。
分子集合体を構成するポリマー及び近赤外蛍光色素Bの溶解にこのような低沸点溶媒を使用することによって、溶媒の除去が非常に簡単になる。溶媒の除去の方法としては特に限定されることなく、使用する有機溶媒の沸点などに応じ、当業者が適宜決定すればよい。例えば、減圧下における溶媒除去を行ってもよいし、自然乾燥による溶媒除去を行ってもよい。
有機溶媒が除去された後は、容器内壁に分子集合体を構成するポリマーと標識物質(蛍光色素Bなど)とを含むフィルムが形成される。このフィルムが張り付いた容器中に、水又は水溶液を加える。水又は水溶液としては特に限定されることなく、生化学的、薬学的に許容することができるものを当業者が適宜選択すればよい。例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液などが挙げられる。
水又は水溶液が加えられた後、加温処理を行う。加温によりフィルムが容器内壁から剥がれる過程で分子集合体を形成する。加温処理は、例えば20〜100℃、又は70〜90℃、1〜60分、又は5〜60分の条件下で行うことができる。加温処理終了時には、標識物質(蛍光色素Bなど)が内包された分子集合体(ナノ粒子)が前記の水又は水溶液中に分散された分散液が容器中に調製される。
得られた分散液は、直接生体に投与されることが可能である。すなわち、無溶媒のナノ粒子そのものの状態で保存されなくてもよい。
一方、得られた分散液を凍結乾燥処理しても良い。凍結乾燥処理の方法としては公知の方法を特に限定されることなく用いることができる。たとえば、上記のようにして得られたナノ粒子の分散液を液体窒素などによって凍結させ、減圧下で昇華させることによって行うことができる。これにより、ナノ粒子の凍結乾燥処理物が得られる。すなわち、ナノ粒子を凍結乾燥処理物として保存することが可能になる。必要に応じ、この凍結乾燥物に水又は水溶液を加えて、ナノ粒子の分散液を得ることによって、ナノ粒子を使用に供することができる。水又は水溶液としては特に限定されることなく、生化学的、薬学的に許容することができるものを当業者が適宜選択すればよい。例えば、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液などが挙げられる。
ここで、凍結乾燥処理前の分散液中には、分子集合体を構成するポリマーと標識物質(蛍光色素Bなど)とから形成されたナノ粒子以外にも、そのようなナノ粒子の形成に寄与しなかったポリマー及び/又は標識物質(蛍光色素Bなど)が各々それ自体として残存しうる。このような分散液を凍結乾燥処理に供すると、溶媒が濃縮される過程で、ナノ粒子を形成せず残存していたポリマーと標識物質(蛍光色素Bなど)とから、さらにナノ粒子を形成することが可能になる。従って、ナノ粒子の調製を効率的に行うことが可能になる。
[5−2.インジェクション法]
インジェクション法は、次の工程を含む。すなわち、容器(例えば試験管など)中に、両親媒性ブロックポリマーA1、疎水性ポリマーA2等分子集合体を構成するポリマーと標識物質(蛍光色素Bなど)とを有機溶媒中に含む溶液を用意する工程;前記の溶液を水又は水溶液に分散させる工程;及び有機溶媒を除去する工程を含む。さらに、インジェクション法においては、有機溶媒を除去する工程の前に、適宜精製処理工程を行ってもよい。
インジェクション法に用いる有機溶媒としては、例えばトリフルオロエタノール、エタノール、2−プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが用いられる。
水又は水溶液としては、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液などが用いられる。
精製処理としては、例えばゲルろ過クロマトグラフィー、フィルタリング、超遠心などの処理を行うことができる。
このようにして得られた分子集合体を生体内へ投与する場合であって、有機溶媒に生体に有害なものを用いた場合は、この有機溶媒の除去を厳密に行う必要がある。
分子集合体をベシクルとして調製する場合において、内包型のものを調製する場合は、注射用蒸留水、生理食塩水、緩衝液などの水系溶媒に、内包すべき物質を溶解又は懸濁させ、このようにして得られた水溶液又は懸濁液に、両親媒性ブロックポリマーA1と疎水性ポリマーA2及び/又は必要に応じて機能性物質とを上記有機溶媒に溶解させて得られた溶液を分散させるとよい。
[6.ナノ粒子の投与]
以上のようにして、両親媒性ブロックポリマーA1及び標識剤を含むナノ粒子が製造される。ナノ粒子を関節リウマチ診断薬として用いる。
ナノ粒子を投与される生体としては特に限定されず、ヒト及び非ヒト動物でありうる。非ヒト動物としては特に限定されないが、ヒト以外の哺乳類、より具体的には、霊長類、齧歯類(マウス、ラットなど)、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、及びウマなどが挙げられる。
生体内への投与の方法としては特に限定されず、当業者が適宜決定することができる。従って、投与の方法としては、全身投与及び局所投与とを問わない。すなわち、分子プローブの投与は、注射(針有型、針無型)、内服、外用のいずれの方法によっても行うことができる。投与液中におけるナノ粒子の濃度は、例えば内包物がICG-PLLA30でありキャリアがPSar70-PLLA30の分子集合体であるラクトソームの場合の量に換算して0.5〜100mg/ml、好ましくは0.8〜50mg/ml、より好ましくは1〜20mg/mlでありうる。
関節リウマチの炎症部位において血管透過性が亢進している。EPR (enhanced permeability and retention) 効果により、血管外間質腔に上記ナノ粒子が漏出・滞留する。関節リウマチの滑膜炎症部位にナノ粒子が集積する。内包された標識剤(蛍光色素など)をイメージングによって検出する。これにより、関節リウマチの炎症病変の位置を検出することができる。
ナノ粒子投与から検出開始までの時間は、投与されるナノ粒子が有する近赤外蛍光色素Bなどの標識剤の種類、及び投与ターゲットの種類に応じて、当業者が適宜決定することができる。例えば、投与後3〜48時間、或いは1〜24時間とすることができる。上記範囲を下回ると、シグナルが強すぎ、投与ターゲットと他の部位(バックグラウンド)とを明確に分けることができない場合がある。また、上記範囲を上回ると、蛍光プローブが投与ターゲットから排泄されてしまう場合がある。
ナノ粒子の検出には、標識剤が蛍光色素の場合には、蛍光イメージング装置を用いる。蛍光イメージング装置は、滑膜炎症部位の位置を示す画像データを取得するための装置である。蛍光イメージング装置は、人体などの被写体に投与されたナノ粒子に含まれる近赤外蛍光色素に由来する近赤外光を検出し、ナノ粒子が存在する組織の位置や大きさを観測することができるものであればよい。従って、当業者であれば、ナノ粒子に含まれる近赤外蛍光色素に由来する近赤外光を可視化することができる装置を適宜選択することができる。
好ましい態様において、滑膜炎症部位の位置を示す画像データを取得するための装置は、被写体に投与されたナノ粒子に含まれる近赤外蛍光色素に由来する近赤外蛍光を検出し、その可視化像と周辺組織可視光像とを同時に抽出するものである。これにより、本発明のナノ粒子を蛍光造影剤として投与した人体などの被写体において、ナノ粒子が集積した滑膜炎症部位における可視光像と、集積したナノ粒子からの赤外光像との合成画像を取得することができる。具体的には、以下のように光源、光学フィルタ、固体撮像素子、及び信号処理回路を含む撮像装置が用いられうる。このような手段を有する蛍光イメージング装置の具体例として、HyperEye Medical System(瑞穂医科工業株式会社製)が挙げられる。
光源は、被写体に対し、可視光と、近赤外蛍光色素の励起光とを照射するものである。具体的には、可視光を発する可視光発光部と、励起光を発する励起光発光部とを有しうる。可視光発光部としては、例えばキセノンランプや白色LEDであり、励起光発光部としては、ナノ粒子に包含される近赤外蛍光色素Bの励起波長(具体的にはICGの場合は780nmにピーク波長)を有する、LED等の半導体発光デバイスでありうる。被写体からの光は、レンズ等の光学系を介して撮像装置内に取り込まれ、光学フィルタを介して固体撮影素子に入射する。
光学フィルタは、被写体からの可視光成分と赤外蛍光成分とを分離することなく固体撮像素子に入射させるものである。光学フィルタは、可視光、励起光、及び近赤外光の透過性を独立して制御する。具体的には、被写体からの光のうち、可視光及び赤外蛍光を透過し、励起光の透過を阻止する。さらに、光学フィルタは、可視光発光部及び励起光発光部それぞれの発光強度を個別に制御可能でありうる。このような光学フィルタにおいては、可視光に対する透過率は蛍光に対する透過率より低く設定されることにより、微弱な蛍光による赤外光像を可視光像上にて明瞭に表示することができる。光学フィルタとしては、例えば真空蒸着法により金属や誘電体を積層して成膜された薄膜が用いられる。
固体撮像素子は、上記光学フィルタの透過光に基づいて可視光像と近赤外光像とを撮影するものである。これにより、可視光と近赤外光との同時撮影が可能になる。具体的には、半導体基板上に、受光画素を構成するモザイク状のカラーフィルタが配置されて構成される。カラーフィルタは、着色した有機材料で構成されている。各カラーフィルタの透過特性に応じて、各受光画素が感度を有する光成分が定まる。各受光画素には、入射光のうち各画素に配置されたカラーフィルタの色に対応する可視光成分に応じた信号電荷と、赤外光成分に応じた信号電荷とが合成されて蓄積される。蓄積された信号電荷は、信号処理回路に出力される。
信号処理回路は、固体撮像素子から出力された信号を処理するものである。具体的には、上記撮像素子の各受光画素から読み出された信号から、可視光像と近赤外光像とに基づく合成画像を表す画像信号を生成する。生成された合成信号は、表示デバイスに入力及び表示される。具体的には、手術部位の可視光像と、ナノ粒子が集積された位置が、内包される蛍光色素の濃度に応じた色調で構成された赤外光像とが合成された合成画像がモニターに表示される。
本発明において、上記ナノ粒子は、関節リウマチの炎症部位にEPR効果により特異的に集積するので、上述の蛍光メージング装置によって検出することにより、関節リウマチの正確な診断、特に滑膜炎症部位の範囲の正確な診断を行うことができる。
蛍光色素以外の他の標識剤に対しては、ポジトロン放出断層撮影装置(Positron Emission Tomography;PET)、単一光子放射断層装置(Single Photon Emission Computed Tomography;SPECT)、核磁気共鳴イメージング装置(MRI)などを用いることができる。
以下に本発明をより詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
[実験例1:ICGラクトソームの調製]
以下のように、ポリサルコシン−ポリ乳酸両親媒性ブロックポリマー(PSar70-PLLA30)とポリ乳酸結合蛍光化合物(ICG-PLLA30)とから構成される蛍光色素内包ナノ粒子(ICGラクトソームと記載する)を調製した。
(アミノ化ポリL-乳酸の合成)
まず、L−ラクチドとN−カルボベンゾキシ−1,2−ジアミノエタン塩酸塩とを用いて、アミノ化ポリL-乳酸(a-PLA)(平均重合度30)を合成した(スキーム1)。
重合開始剤であるN−カルボベンゾキシ−1,2−ジアミノエタン塩酸塩(310 mg, 1.60 mmol)に、オクタン酸スズ(6.91 mg)をトルエン(1.0 mL)に拡散させたものを加えた。トルエンを減圧留去した後、L−ラクチド(3.45 g, 24mmol)を加え、Ar雰囲気下、120 ℃にて重合反応を行った。12時間後、反応容器を室温に空冷した。得られた黄白色固体を少量のクロロホルム(10 mL程度)に溶解させた。クロロホルムを冷メタノール(100 mL)に滴下することにより白色沈殿を得た。得られた白色沈殿は遠心分離により回収し、減圧乾燥した。
得られた白色沈殿(500 mg)のジクロロメタン(1 ml)溶液に25v/v%臭化水素/酢酸(2.0 mL)を加え、遮光、乾燥空気下にて2時間攪拌した。反応終了後、反応溶液を冷メタノール(100 mL)に滴下し、析出してきた沈殿を遠心分離にて回収した。得られた白色沈殿はクロロホルムに溶解させた後、飽和NaHCO3水溶液にて洗浄し、無水MgSO4にて脱水操作を行った。セライト(R)濾過によりMgSO4を除去した後、真空乾燥することにより、白色のアモルファス状粉末のa-PLA(440 mg)を得た。
(ポリ乳酸結合蛍光化合物(ICG-PLLA30)の合成)
次に、アミノ化ポリL-乳酸(a-PLA)にICG標識を行い、ポリ乳酸結合蛍光化合物(ICG-PLLA30)を得た(スキーム2)。
a-PLAを1.9 mg (1.0 eq)含むDMF溶液に、インドシアニングリーン誘導体(ICG-sulfo-OSu)1mg (1.3 eq)を溶かしたDMF溶液を加え、室温で約20時間攪拌した。その後、溶媒を減圧留去し、LH20カラムにて精製を行い、化合物ICG-PLLA30を得た。
(ポリサルコシン−ポリ乳酸両親媒性ブロックポリマー(PSar70-PLLA30)の合成)
サルコシン−NCA(Sar-NCA)とアミノ化ポリL-乳酸(a-PLA)とから、ポリサルコシン−ポリ乳酸両親媒性ブロックポリマー(PSar70-PLLA30)を合成した(スキーム3)。
a-PLA(383 mg, 0.17 mmol)とサルコシン−NCA (Sar-NCA) (3.21 g, 27.9 mmol) に、Ar雰囲気下、ジメチルホルムアミド(DMF)(140 mL)を加え、室温にて12時間攪拌した。反応溶液を0 ℃に冷却した後、グリコール酸(72 mg, 0.95 mmol)、O−(ベンゾトリアゾル−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸塩(HATU)(357 mg, 0.94 mmol)、及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)(245 μL, 1.4 mmol)を加え、室温にて18時間反応させた。
ロータリーエバポレーターによりDMFを減圧溜去した後、LH20カラムにて精製を行った。UV270 nmにてピークが検出されたフラクションを回収・濃縮した。得られた濃縮溶液を0 ℃にてジエチルエーテル中に滴下し、再沈澱することにより、目的物であるPSar70-PLLA30(1.7 g)を得た。
(蛍光色素内包ナノ粒子の作成)
キャリア剤であるポリ乳酸−ポリサルコシン両親媒性ブロックポリマー(PSar70-PLLA30 ・26H2O, MW=7767)及び蛍光色素ICG-PLLA30それぞれのクロロホルム溶液(0.2 mM)を調製した。蛍光色素ICG-PLLA30については、蛍光色素のモル濃度が20 mol%となるように、ガラス容器内で両溶液の混合液を調製した。その後、フィルム法に従ってラクトソームを作製した。なお、フィルム法は以下の通り行った。混合液から溶媒を減圧留去しガラス容器の壁面にキャリア剤及び蛍光色素を含むフィルムを形成させた。さらに、フィルムを形成したガラス容器内に、水または緩衝液を加え、温度82℃で20分間湯せんした後、室温で30分間放置し、0.2mmのフィルターでろ過し凍結乾燥した。このようにして、インドシアニングリーン内包ナノ粒子(ICGラクトソーム)を調製した。動的光散乱測定装置(Malvern Instruments 社製、Zetasizer Nano)を用いて、粒子径を測定したところ、約30nmであった。
[実験例2:関節リウマチモデルマウスにおけるICGラクトソームを用いた蛍光イメージング]
次のようにして、関節リウマチモデルマウスにおける上記インドシアニングリーン内包ナノ粒子(ICGラクトソーム)を用いた近赤外蛍光イメージングを行った。
(実験方法)
ヒト関節リウマチと免疫病理学的に酷似した自己免疫性関節炎を自然発症するSKG/Jclマウス(日本クレア株式会社)を用いた。関節炎(A)群(n=4)とコントロール(C)群(n=4)に分けた。SKG/JclマウスはSPF環境下において関節炎を自然発症しにくいため、関節炎群では、8週齢でマンナン20mg(シグマアルドリッチ社M−7504)を腹腔内投与して6週間飼育(14週齢)し、関節炎を発症させた。14週齢の時点で関節炎群及びコントロール群の両群に、ICGラクトソーム2.0mg/匹を尾静脈から投与した。
(関節炎スコア評価)
14週齢の時点(ICGラクトソーム投与前)で関節炎群及びコントロール群の両群について、外観観察により、関節炎スコアの評価を行った。関節炎スコアの評価は、手指、手関節、足趾、足関節の腫脹について行い、それら各部位の合計スコアを求めた。関節炎スコアは、関節炎群の平均4.73及びコントロール群の平均0であった。
(病理学的評価)
関節炎群及びコントロール群の両群について、病理学的評価(サフラニンO、トルイジンブルー、HE染色)の評価を行った。関節炎群では、コントロール群と比較し、10週齢の時点より、関節軟骨の破壊(軟骨プロテオグリカン減少、軟骨細胞減少)、滑膜の増生(滑膜細胞の増加)を認めた。
このように、関節炎スコア評価及び病理学的評価により、関節炎群では自己免疫性関節炎を発症していることを確認した。
(蛍光イメージング)
関節炎群及びコントロール群の両群について、蛍光in vivoイメージング装置(IVIS Spectrum Xenogen社:励起波長:745nm,蛍光波長:840nm)を用いて、ICGラクトソーム投与直後、3、6、12、24、48時間での画像評価を行った。図1に直後、3、6時間での画像、図2に12、24、48時間での画像を示す。図1、2いずれにおいても、関節炎群は上段、コントロール群は下段に示されている。関節炎群では、コントロール群と比較し、手関節、足関節での蛍光強度の増加が認められた。
さらに、関節炎群及びコントロール群の両群について、ラクトソーム投与24時間経過後において、実写真と蛍光イメージングの同時撮影を行った。図3(a)は実写真であり、下段の写真は足関節部分の拡大である。図3(b)は蛍光イメージングの画像である。実写真(a)から、関節炎群では、コントロール群と比較し、手関節、足関節の腫脹が認められ、それに対応して、図3(b)において、関節炎群では、コントロール群と比較し、手関節、足関節での蛍光強度の増加が認められた。
(蛍光強度比)
上記画像評価の結果から、次のようにして、関心領域ROI(Region of Interest)の蛍光強度比を求めた。
コントロール群の足関節の(画像における)最大幅は3.5mm程度であった。直径φ:3.5mmの円で蛍光前と蛍光後の各ROI値[(p/sec)/ (μW/cm2 )]を求め、
蛍光強度比=蛍光後ROI値/蛍光前ROI値
とした。
図4に、関節炎群及びコントロール群の各群について、ラクトソーム投与からの経過時間に対する蛍光強度比を示す。横軸:ラクトソーム投与からの経過時間(時間)、縦軸:蛍光強度比。各時間において、関節炎(A)群は右側の棒で、コントロール(C)群は左側の棒でそれぞれ示されている。関節炎群とコントロール群とは、Mann-Whitney’s testにより有意差があった。図4より、コントロール群では、ラクトソーム投与からの経過時間によらず蛍光強度比はいずれも小さいものであった。これに対して、関節炎群では、ラクトソーム投与からの経過時間に従い蛍光強度比が増加し、24時間で最も大きくなった。
図5に、関節炎群について、ラクトソーム投与からの経過時間に対する蛍光強度比を示す。横軸:ラクトソーム投与からの経過時間(時間)、縦軸:蛍光強度比。図4に示したものと同じ蛍光強度比が示されている。ラクトソーム投与からの経過時間24時間と、その他の経過時間とは、Wilcoxon符号付順位和検定により有意差があった。
(各組織における蛍光強度)
関節炎群のICGラクトソーム投与24時間のものについて、足関節の皮膚、筋、関節包・滑膜を順次切除し、それらについて蛍光強度を観察した。
まず、足関節の皮膚を切除して(図6(a))、蛍光強度を観察すると(図6(b))、切除していない場合と同等であった。すなわち、ICGラクトソームは、皮膚には集積していないことを確認した。
次に、皮膚切除した後、足関節の筋を切除して(図6(c))、蛍光強度を観察すると(図6(d))、何も切除していない場合と同等であった。すなわち、ICGラクトソームは、皮膚にも筋肉にも集積していないことを確認した。
次に、筋切除した後、足関節の関節包・滑膜を切除して(図7(a))、蛍光強度を観察すると(図7(c))、蛍光はほとんど観察されなかった。すなわち、ICGラクトソームは、関節包・滑膜に集積していたことを確認した。
図6、図7に上記の観察結果を示す。すなわち、図6(a)は足関節の皮膚を切除した実写真であり、図6(b)は(a)に対応する蛍光イメージングの画像である。
図6(c)は皮膚切除した後、足関節の筋を切除した実写真であり、図6(d)は(c)に対応する蛍光イメージングの画像である。
図7(a)は筋切除した後、足関節の関節包・滑膜を切除した実写真であり、図7(b)は(a)の部分拡大であり、図7(c)は(a)に対応する蛍光イメージングの画像である。
以上の結果から、ICGラクトソームは、関節リウマチの滑膜炎症部位に特異的に集積し、蛍光イメージングによって検出することができる。これにより、関節リウマチの正確な診断を行うことができる。正確な診断により投薬治療する際の副作用を軽減できる。特に滑膜炎症部位の範囲の正確な診断を行うことができるので、滑膜切除の範囲の特定に非常に有効となる。

Claims (12)

  1. サルコシン単位を有する親水性ブロックと乳酸単位を有する疎水性ブロックとを有する両親媒性ブロックポリマーA1、及び標識剤を含むナノ粒子を含有する関節リウマチ診断薬。
  2. 前記親水性ブロックに含まれるサルコシン単位は2〜300個である、請求項1に記載の関節リウマチ診断薬。
  3. 前記疎水性ブロックに含まれる乳酸単位は5〜400個である、請求項1又は2に記載の関節リウマチ診断薬。
  4. 前記標識剤は、蛍光色素Bである、請求項1〜3のいずれかに記載の関節リウマチ診断薬。
  5. 前記蛍光色素Bは、5個以上の乳酸単位と、蛍光基とを少なくとも有する蛍光標識ポリマーB1であり、且つ、前記両親媒性ブロックポリマーA1とともに自己集合することによりナノ粒子を形成している、請求項4に記載の関節リウマチ診断薬。
  6. 前記蛍光標識ポリマーB1における蛍光基が、下記式(I):
    (式中、Rは、置換されていてもよい炭化水素基であり、Rは、置換されていてもよい2価の炭化水素基であり;R及びR’は、水素であるか、又はそれらが互いに連結して環状構造を形成するものであり;Xは水素又はハロゲンであり;Aは陰イオンであり、mは0又は1であり;環B及び環Dは、それぞれ同一又は異なっていてもよい含窒素縮合芳香族複素環である。)で示されるものである、請求項5に記載の関節リウマチ診断薬。
  7. 前記蛍光標識ポリマーB1における蛍光基は、インドシアニングリーンに由来する基である、請求項5又は6に記載の関節リウマチ診断薬。
  8. 前記蛍光色素Bは、前記両親媒性ブロックポリマーA1の自己集合により形成されたナノ粒子に内包された蛍光分子B2である、請求項4に記載の関節リウマチ診断薬。
  9. 前記近赤外蛍光分子B2が、下記式(I’):
    (式中、R及びR’は、それぞれ、同一又は異なっていてもよく、置換されていてもよい炭化水素基であり;R及びR’は、水素であるか、又はそれらが互いに連結して環状構造を形成するものであり;Xはハロゲンであり;Aは陰イオンであり、mは0又は1であり;環B及び環Dは、同一又は異なっていてもよい含窒素縮合芳香族複素環である。)で示されるシアニン化合物である、請求項8に記載の関節リウマチ診断薬。
  10. 前記蛍光分子B2は、インドシアニングリーン分子である、請求項8又は9に記載の関節リウマチ診断薬。
  11. 前記ナノ粒子は、10個以上の乳酸単位を少なくとも有する疎水性ポリマーA2をさらに含むものである、請求項1〜10のいずれかに記載の関節リウマチ診断薬。
  12. 前記ナノ粒子は、10〜200nmの粒子径を有する、請求項1〜11のいずれかに記載の関節リウマチ診断薬。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JOURNAL OF CONTROLLED RELEASE, vol. 163, JPN6017022928, 2012, pages 178 - 186, ISSN: 0003704601 *

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