本発明の例示的な実施形態における光学フィルタ部材について図面を参照しながら以下に説明する。
まず、本発明の実施形態における光学フィルタ部材3を有する距離画像撮像装置2Aの例について図1を参照しながら説明する。距離画像撮像装置2Aは、素子搭載用部材1と、素子搭載用部材1に搭載された距離画像撮像素子2と、距離画像撮像素子2の上方に設けられた光学フィルタ部材3と、発光素子4とを含んでいる。
本実施形態における距離画像撮像素子2は、図1に示すように、対象物を撮像する撮像画素2aと対象物との距離を測定する距離画素2bとから構成されている。すなわち、カラー画像撮像の撮像画素2aおよび距離画像の距離画素2bは、距離画像撮像素子2の撮像領域内に配置されている。
カラー画像撮像の撮像画素2aは、カラーフィルタを有しており、図1(b)に示すように、それぞれRフィルタ、GフィルタおよびBフィルタが配置されており、距離画像の距離画素2bには、赤外領域のフィルタであるIRフィルタが配置されている。Rフィルタ、Gフィルタ、Bフィルタを通過した光が撮像画素2aに入りカラー画像を形成し、IRフィルタを通過した光が距離画素2bに入り距離画像を形成する。撮像画素2aと距離
画素2bとの配置は、図1(b)に示すように、RフィルタとBフィルタを交互に並べた列と、Gフィルタを一つおきに並べた間にIRフィルタを配置した列とを並べた配置となっている。なお、このようにRGBフィルタとIRフィルタを組み合わせる配置はこれに限定されるものではない。
また、距離画像撮像素子2は、例えば、CCD固体撮像素子やCMOS等によって構成されており、特に限定はされない。また、距離画像撮像素子2に入射した光は、距離画像撮像素子2により光電変換されて、受光した光の強度を示す電気信号に変換される。
また、本実施形態における光学フィルタ部材3は、距離画像撮像素子2に入射される光における特定の波長範囲の波長の透過率の制御を行うものであり、基体31と光学膜32とからなる。
発光素子4は、対象物(被写体)までの距離を測定するために用いられるものであり、対象物に対して赤外光のパルス光を発光するものである。また、発光素子4が発光する赤外光の中心波長は、使用する発光素子4によって変わるが、一例を挙げれば中心波長が850(nm)の赤外光を発光する発光素子4が良く知られている。なお、発光素子4は、特定の波長範囲の赤外光を発光できる発光素子であればよく、例えば、赤外線領域を発光の中心波長とする発光ダイオード(LED)またはレーザー素子等であり、特に限定はされない。発光素子4は、例えば、中心波長が850(nm)あるいは1100〜1600(nm)である。 次に、本実施形態における光学フィルタ部材3の詳細について図2、図3を参照しながら以下に説明する。距離画像撮像装置2Aにおけるその他の構成については後述する。
光学フィルタ部材3は、可視領域の波長の光を透過するとともに赤外領域の光を吸収する赤外線吸収ガラスからなる基体31と、基体31の主面に設けられた光学膜32とからなる。そして、光学膜32が、屈折率の異なる複数の誘電体層(32a、32b)が積層されている誘電体多層膜を含んでおり、光学膜32は、可視領域の波長の光を透過する第1の波長帯域Aと、赤外領域の波長の光を透過する第2の波長帯域Bと、第1の波長帯域Aと第2の波長帯域Bとの間に光を透過しない第3の波長帯域Cとを有している。光学フィルタ部材3は、例えば、赤外光を用いて距離画像を取得する距離画像撮像装置2A等に設けられるものである。
可視領域は、ここでは、400(nm)〜700(nm)の波長範囲である。また、赤外領域は、ここでは、近赤外領域であって、700(nm)よりも大きい波長範囲に含まれるものであり、850(nm)〜1600(nm)の波長範囲である。
また、光学膜32が光を透過しない第3の波長帯域Cは、可視領域の波長の光を透過する第1の波長帯域Aと赤外領域の波長の光を透過する第2の波長帯域Bとの間にあり、例えば、使用する発光素子4の発光波長によって変わる。例えば、発光素子4の発光波長の中心波長が850(nm)の赤外光を発光するものであれば、光を透過しない第3の波長帯域Cは、700(nm)〜850(nm)の範囲に含まれる波長帯域となる。なお、光学膜32が光を透過するとは、第3の波長帯域Cの波長の光の透過率が10(%)以上であることをいい、光学膜32が光を透過しないとは、第3の波長帯域Cの波長の光の透過率が10(%)未満であることをいう。
ここで、図4に、基体31、光学膜32および光学フィルタ部材3の波長透過率特性を示す。なお、この波長透過率特性は、発光素子4の発光波長の中心波長が850(nm)の場合のものである。
基体31は、可視光を透過して赤外線を吸収するという特性を有する赤外線吸収ガラスからなる。赤外線吸収ガラスは、図4(a)に示すように、700(nm)よりも大きい波長範囲に含まれる赤外線の透過率が低減されているものであり、例えば青色透明のものである。基体31は、図4(a)に示すように、赤外領域の850(nm)付近で透過率が低くなっている。また、基体31の赤外線吸収ガラスは、400(nm)〜700(nm)の波長範囲に含まれる可視領域の可視光を透過させる。
また、赤外線吸収ガラスは、距離画像撮像装置2Aで使用される発光素子4の出力によって、あるいは、距離画像撮像素子2のカラー撮像画像の撮像画素2aまたは距離画像の距離画素2bの画素感度の比率または容量の比率によって、発光素子4の中心波長に対して透過率を適宜調整すれば良い。赤外線吸収ガラスの透過率は、例えば、ガラス厚み、ガラス組成中の金属イオンの種類またはガラス組成中の金属イオンの濃度等によって調整することができる。 基体31は、例えば、溶融状態の高純度なガラス原料をガラスの溶融温度よりも高い融点を有する金属から成る容器(好ましくは、不純物の溶け込み量が効果的に低減できるように、例えば白金(Pt)から成る容器)内に流し込んだ後、数日に渡って徐々に冷却し、ブロック状に形成する。しかる後、所定の厚みおよび外形寸法に切断する。
その後、アルミナ等から成る研磨材を用いてラップ研磨を行ない、さらに、アルミナまたは酸化セリウム等から成る研磨材を用いて光学研磨して、分割することで基体31とすることができる。このようにして作製することで、距離画像撮像素子に影響を及ぼすα線を発生する不純物が高純度のガラス原料に溶け込む量を低減させることができる。
なお、可視光を透過して赤外線を吸収するという特性を有する赤外線吸収ガラスとして、例えば、酸化銅を含有する燐酸塩ガラスが広く知られている。これは、Cu2+がP2O5成分を主とするガラスネットワークフォーマ中に存在した場合、可視光に吸収のある四配位よりも、800(nm)の波長付近に吸収帯を有する六配位をとりやすくなるためである。P2O5成分とCu2+のこのような関係により、可視領域の光に対する透過性、赤外領域の光に対する吸収性およびシャープなカット性を併せ持つガラスを得ることが可能になる。
基体31は、例えば、P2O5が70(%)〜85(%)、Al2O3が13(%)〜18(%)、B2O3が1(%)〜6(%)、SiO2が0.2(%)〜3(%)、Li2O+Na2O+K2Oの合計が0.3(%)〜3(%)、MgO+BaO+SrO+ZnOの合計が8(%)〜15(%)、CuOが0.1(%)〜1(%)からなる組成を有する赤外線吸収ガラスである。
P2O5は、ガラス網目を構成する主成分であるが、70(%)未満では400(nm)における透過率が低下し、また、85(%)を越えると化学的耐久性が低下する。
Al2O3は、ガラスの化学的耐久性を向上させ転移温度・軟化温度を上昇させる効果があるが、13(%)未満ではその効果が得にくく、また、18(%)を越えると400(nm)付近の透過率が低下するとともにガラスの溶融性が著しく低下する。
B2O3は、化学的耐久性を向上させ熱膨張係数を小さくする効果があるが、1(%)未満ではその効果が得にくく、6(%)を越えると可視域での透過率が低下する。
SiO2は、化学的耐久性を向上させるとともに熱膨張係数を小さくし、転移温度・軟化温度を上昇させる効果があるが、0.2(%)未満ではその効果が得にくく、3(%)を越えると熱膨張係数が大きくなり、転移温度・軟化温度が低下する。
Li2O、Na2OおよびK2Oは、ガラスの安定化に寄与し、溶融性を向上させるが、これらの合計量が0.3(%)未満ではその効果が得にくく、3(%)を越えると熱膨張係数が大きくなり、転移温度・軟化温度が低下する。
MgO、BaO、SrOおよびZnOは、ガラスの成形性および溶融性を向上させるが、その合計量が8(%)未満では近赤外領域での透過率が急激に低下しすぎてしまい、15(%)を越えると近赤外領域での透過率が十分に低下せず、また、400(nm)付近の透過率が低下する。
CuOは、着色剤として作用し、近赤外領域の透過率を低下させる特性を得るための必須成分であるが、0.1(%)未満ではその効果が得にくく、1(%)を越えると近赤外領域の透過率が低下しすぎる。
赤外線吸収ガラスは、上記組成を有することにより、本発明の基体31に要求される分光特性を得ることができる。
基体31は、例えば0.03(mm)〜0.5(mm)の範囲に含まれる厚みを有することが好ましい。0.03(mm)以上であることによって、基体41による赤外線吸収の効果を十分得ることができる。また、基体41の強度も十分に得ることができる。基体31の厚みが0.05(mm)以下であることによって、薄型化を図ることができ、距離画像撮像装置2Aの低背化を実現できる。
なお、基体31の反射率は、200(nm)から1200(nm)の波長範囲にわたって数パーセント程度である。 光学膜32は、図2および図3に示すように、基体31の主面(上面)に高屈折率誘電体層32aと低屈折率誘電体層32bとが積層されている誘電体多層膜である。高屈折率誘電体層32aは、複数の高屈折率誘電体層で構成されていてもよい。また、低屈折率誘電体層32bは、複数の低屈折率誘電体層で構成されていてもよい。光学膜32は、高屈折率誘電体層32aと低屈折率誘電体層32bとが交互に積層された多層構造となる。なお、光学膜32は、基体31の下面(距離画像撮像素子2との対向面)に設けてもよい。
光学膜32は、図4(b)に示すように、可視領域の波長の光を透過する第1の波長帯域Aと、中心波長を含む波長領域の波長の光を透過する第2の波長帯域Bと、第1の波長帯域Aと第2の波長帯域Bとの間に光を透過しない第3の波長帯域Cとを有している。すなわち、光学膜32は、可視領域の波長の光と発光素子4の発光波長の中心波長を含む波長領域の波長の光は透過する、そして、可視領域より大きく発光素子4の発光波長の中心波長を含む波長領域の波長より小さい波長領域の波長の光は透過しない。
このような光学膜32のフィルタ特性を得るために、光学膜32は、屈折率が1.7以上の誘電体材料からなる高屈折率誘電体層32aおよび屈折率が1.6以下の誘電体材料からなる低屈折率誘電体層32bを、蒸着法またはスパッタリング法等を用いて、40〜100層にわたって順次交互に複数層積層することにより形成される。なお、後述するように、光学膜32は、イオンビームアシスト蒸着法を用いて形成されることが好ましい。
光学フィルタ部材3のフィルタ特性は、基体31のフィルタ特性と光学膜32のフィルタ特性とを組み合わせたものであり、光学フィルタ部材3は、図4(c)に示すようなフィルタ特性を有している。光学フィルタ部材3のフィルタ特性は、図4(c)にしめすように、可視領域の波長の光が透過し、発光素子4の発光波長の中心波長を含む波長領域の波長の光が可視領域の透過率よりも低い値の透過率でもって透過するとともに、可視領域
より大きく発光素子4の発光波長の中心波長より小さい波長領域の光を透過しない領域を有している。
光学フィルタ部材3は、可視領域の波長領域が光学膜32の波長帯域Aに対応しており、また、発光波長の中心波長を含む波長領域が光学膜32の波長帯域Bに対応している。光学フィルタ部材3は、可視領域の透過率が光学膜32の波長帯域Aの透過率と基体31の可視領域の透過率とで決定され、また、発光波長の中心波長を含む波長領域の透過率が光学膜32の波長帯域Bの透過率と基体31の波長帯域Bに対応する赤外領域の波長の透過率とで決定される。また、光学フィルタ部材3は、図4(c)に示すように、可視領域より大きく発光波長の中心波長より小さい波長領域の光を透過しない領域を有しているが、この領域は、光学膜32の波長帯域Cの透過率と波長帯域Cに対応する基体31の透過率とで決定される。
光学フィルタ部材3は、基体31の850(nm)付近の波長領域の透過率が低く、光学膜32の第2の波長帯域Bが基体31の850(nm)付近の波長領域に対応しており、光学膜32の第2の波長帯域Bの波長の透過率が基体31の透過率で制御されて、図4(c)に示すようなフィルタ特性となる。すなわち、光学フィルタ部材3は、赤外領域において、光学膜32の第2の波長帯域Bの波長の透過率が基体31の850(nm)付近の波長領域の透過率で調整されることになる。
このように、光学フィルタ部材3の各波長における透過率は、各波長において基体31の透過率と光学膜32の透過率との積となる。すなわち、光学フィルタ部材3は、基体31のフィルタ特性と光学膜32のフィルタ特性とを組み合わせたフィルタ特性を備えることになる。また、光学フィルタ部材3は、発光波長の中心波長850(nm)付近の波長領域の幅が光学膜32よって調整される。
図4(c)に示すように、光学フィルム部材3は、可視領域の波長550(nm)の透過率Xと発光波長の中心波長850(nm)の透過率Yとの比(X/Y)が、X/Y>1であると、発光波長の中心波長850(nm)の透過率Yが可視領域の波長550(nm)の透過率Xよりも低くなり、発光波長の中心波長850(nm)付近の波長領域の波長の透過率が調整されることになる。すなわち、発光波長の中心波長850(nm)の透過率Yは基体31の赤外線吸収ガラスの赤外領域の850(nm)付近の透過率によって決定されることになる。
また、光学フィルタ部材3は、可視領域の波長550(nm)の透過率Xと発光波長の中心波長850(nm)の透過率Yとの比(X/Y)が、1.5〜3の範囲にあることが好ましい。850(nm)の波長の光に対する距離画像2bのシリコン素子の感度は、一般的に、550(nm)の光に対する撮像画素2aのシリコン素子の感度の2倍程度であるので、このような範囲にすることによって、撮像画素2aと距離画素2bとの波長に対する光の感度の差を制御して、撮像画素2aおよび距離画像2bの各画素の本来の階調でもって撮像画像および距離画像を得ることができる。また、発光素子4の発光波長の中心波長が変わっても、可視領域の波長550(nm)の透過率Xと発光波長の中心波長との透過率Yの比(X/Y)は、上記の範囲にあることが好ましい。
距離画像撮像素子2は、光学フィルタ部材3を通して、可視領域の波長の光が撮像画素2aに入射され、また、光学フィルタ部材3を通して、発光素子4の中心波長を含む波長領域の波長の光が距離画素2bに入射される。したがって、距離画像撮像素子2Aは、光学フィルタ部材3によって、カラー画像に使用される波長帯域の光の透過率に比べて距離画像に使用される波長帯域の光の透過率を小さくすることができる。
このように、光学フィルタ部材3は、入射される光において特定の波長範囲の波長の光の透過率を制御することによって、距離画素と撮像画素との波長に対する光の感度の差を制御することができる。したがって、撮像画像および撮像画像は、共に各画素の本来の諧調を生かした画像を得ることができる。すなわち、距離画素撮像素子2は、光学フィルタ部材3によって、カラー画像を撮影するとともに距離画像も取得することができるとともに、撮像画像および距離画像の画質を両立させることができる。
また、距離画像撮像装置2Aでは、感度の高い赤外線領域を利用する距離画像素子の画素に加わる光の量を抑制することによって距離画像撮像素子2の距離画像とカラー撮像画像との両方の画像のダイナミックレンジを共に最適化することができる。また、距離測定用の赤外線照射光の強度を高め測定距離を延長する場合にも、距離画像とカラー撮像画像に対する入射光量のバランスを取るために、可視領域の波長550(nm)の透過率Xと発光波長の中心波長850(nm)の透過率Yの比(X/Y)は、赤外線吸収ガラスからなる基体31のガラス厚み、ガラス組成中の金属イオンの種類またはガラス組成中の金属イオンの濃度で容易に調整することができるので、距離画像撮像装置2Aは汎用性が高められる。
光学膜32は、好適な屈折率が1.7以上の高屈折率誘電体材料32aとしては、例えば、五酸化タンタル(屈折率:2.16)、酸化チタン(屈折率:2.52)、五酸化チタン(屈折率:2.31)、五酸化ニオブ(屈折率:2.33)、酸化ランタン(屈折率:1.88)または酸化ジルコニウム(屈折率:2.40)等があり、好適な屈折率が1.6以下の低屈折率誘電体材料32bとしては、例えば、酸化珪素(屈折率:1.46)、フッ化ランタン(屈折率:1.59)またはフッ化マグネシウム(屈折率:1.38)等がある。
光学膜32は、可視領域より大きく発光素子4の中心波長を含む波長領域の波長より小さい波長領域の波長の光は透過しないというフィルタ特性を備えており、このようなフィルタ特性を光学膜32に付与するために、屈折率等の光学的特性としては、高屈折率誘電体層32aは、酸化ジルコニウム、五酸化チタン、五酸化タンタルおよびこれらを組み合わせて用いることが好ましく、低屈折率誘電体層32bは、酸化珪素を用いることが好ましい。図4(b)の光学特性を有する光学膜32の構成の一例を表1に示す。
表1に示すように、この場合には、高屈折率誘電体層32aは、酸化ジルコニウム層、五酸化チタン層、五酸化タンタル層、酸化ジルコニウム層と五酸化チタン層と酸化ジルコニウム層とからなる3層、五酸化タンタル層と酸化ジルコニウム層と五酸化タンタル層とのからなる3層および酸化ジルコニウム層と五酸化タンタル層とからなる2層が用いられている。また、低屈折率誘電体層32bは、酸化珪素層が用いられている。
光学膜32は、表1に示すように、層番号1のSiO2から層番号79のZrO2の合計79層の誘電体層で構成されている。この場合には、光学膜32は、高屈折率誘電体層32aと低屈折率誘電体層32bとを、順次交互に積層して合計79層の誘電体層で構成されている。表1の層番号1のSiO2が光の入射側(最外層)に形成され、層番号79が基体31側に形成される。なお、表中のλ0は、設計波長を示している。
また、高屈折率誘電体層32aおよび低屈折率誘電体層32bを構成する誘電体層は、表1に示すような光学膜厚となるようにそれぞれ形成される。例えば、層番号69のSiO2の光学膜厚は、0.241×620nm(設計波長)=149.42(nm)となる。この光学膜厚は、物理膜厚/屈折率を示している。このような光学膜32の構成によって、光学膜32は、図4(b)に示すように、可視領域より大きく発光素子4の中心波長を含む波長領域の波長より小さい波長領域の波長の光は透過しないというフィルタ特性を備えることができる。
光学膜32は、イオンビームアシスト蒸着法を用いて形成されることが好ましい。イオンビームアシスト蒸着法は、成膜プロセスである真空蒸着法に陽イオンの照射を併用する真空蒸着法である。イオンビームアシスト法で使用する陽イオンは、例えばアルゴンからなる不活性ガスと酸素ガスからなる活性ガスとの両方を装置のイオン源に導入してプラズマとしたものから生成されたものが用いられる。
イオンビームアシスト蒸着法では、例えば、基体31を真空蒸着装置内に設置した蒸着用ドーム内に配置し、光学的に良質な光学膜32を得るために、酸素欠乏を起こさないように十分に酸素を供給し、そして真空蒸着装置内を1×10-3(Pa)程度の真空度に
設定された状態で陽イオンの照射を併用しながら真空蒸着が行なわれる。真空蒸着装置内にて光学膜が形成される際の基体31の表面温度は、熱電対により基体31付近の温度を計測することにより管理され、電熱線ヒーター等を用いて温度範囲30(℃)〜350(℃)程度に保持される。
しかる後、基体31の主面の全面あるいはマスキングをして距離画像撮像素子に対向する所望の領域に、誘電体多層膜32を形成するために高屈折率誘電体層32aと低屈折率誘電体層32bとを、陽イオンの照射を併用しながら順次交互に合計40〜100層程度の誘電体層を被着することにより、光学フィルタ部材3が得られる。また、高屈折率誘電体層32aが複数の高屈折率誘電体層で構成されている場合には、複数の高屈折率誘電体層をそれぞれ積層した後に低屈折率誘電体層32bが積層される。低屈折率誘電体層32bが複数の低屈折率誘電体層で構成されている場合には、複数の低屈折率誘電体層をそれぞれ積層した後に高屈折率誘電体層32aが積層される。
また、生産性を高めるために、光学フィルタ部材3の集合体となるように、複数の光学フィルタ部材3を一体的に形成可能な大きさを有する光学フィルタ部材の基体を光学膜32の蒸着時に用いて、この光学膜32が蒸着された基体を切断することで個々の光学フィルタ部材3にしても良い。
陽イオンが真空中を飛来する蒸着物質の気体分子に衝突することによって、蒸着物質の気体分子が励起されて大きな運動エネルギーを得る。そして、この大きな運動エネルギーを得た蒸着物質の気体分子が被着材である基体31の表面に到達すると、被着材の表面の広い領域を移動するとともに、広い領域の移動に伴って被着材表面のより低いエネルギー状態にある場所を見つけ出す確率が大幅に増大するため、蒸着物質の分子同士が凝集することなく被着材の表面に均一に被着し、周辺に存在する蒸着原子同士が凝集して核を形成することなく緻密に充填した光学膜32を形成することができる。
なお、基体31の表面に直接形成される誘電体層は、ガラスとの密着性の高いSi膜であると、基体31と光学膜32との密着性が向上するため好ましい。 また、光学膜32の最外層については、アモルファス化されやすく耐候性の良いSi膜を形成しておくと、外部から光学膜内部への水分の侵入を受けにくくなるので、光学膜32の光学特性が経時変化し難くなるのでより好ましい。
なお、イオンビームアシスト蒸着法を用いて光学膜32を形成することによって、アモルファス化されやすいSi膜だけでなく、その他の元素を用いた膜においてもアモルファス化しやすくなる。それによって、光学膜32としての水分透過性がより低下するので、光学膜32が水分に対してバリア層として働くようになる。これによって、光学フィルタ部材3は、一般的に耐水性の弱い赤外線吸収ガラスからなる基体31の表面が水分と反応して生じる光の透過性の低下を抑制することが可能ものとなり、耐水信頼性に関して向上する。
以下、上述の距離画像撮像装置2Aの素子搭載用部材1および撮像素子2についてさらに詳細に説明する。素子搭載用部材1は、基板11と、リード端子13を挟むように基板11に接合された枠体12とを含んでいる。
基板11は、例えば、酸化アルミニウム質焼結体(アルミナセラミックス)、ムライト質焼結体、ステアタイト焼結体または窒化アルミニウム質焼結体等のセラミックスからなるものである。
基板11は、以下のようにして作製することができる。例えば、基板11が酸化アルミ
ニウム質焼結体から成る場合であれば、まず、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等の原料粉末に適当な有機バインダ、溶剤および可塑剤、分散剤を添加混合して泥漿物を作り、この泥漿物を従来周知のスプレードライ法を用いて顆粒にする。
次いで、この顆粒を所定の形状のプレス金型によりプレス成型して生成型体を作製し、生成型体を約1500(℃)の高温で焼成することにより基板11となる。なお、上記原料粉末を用いてグリーンシートを作製して、グリーンシートを金型等により打ち抜くなどして適当な大きさにすることで生成形体が得られる。複数のグリーンシートを積層して所定の厚みにしてもよい。
この基板11の表面は、ラップ研磨加工等により平坦にして、20(μm)以下の平坦度にしておくと、撮像素子3を搭載した際に傾きやゆがみが発生しにくくなるので好ましい。搭載部の外周部の、枠体が対向する部分も平坦にしておくと、枠体が傾くことなく接合され、その上に接着される光学フィルタ部材3も距離画像撮像素子2に対して傾くことがないので好ましい。
リード端子13は、例えば、Fe−Ni−Co合金やFe−Ni合金,銅(Cu)または銅合金等の金属からなるものである。気密信頼性の観点からは、リード端子23は、基板11の熱膨張係数との差が小さい熱膨張係数を有するものが好ましく、基板11が酸化アルミニウム質焼結体からなる場合であれば、例えば、Fe−42%Ni合金が好ましい。リード端子13の表面には、腐食防止や導電性の向上のために、ニッケルめっき層および金めっき層を順次被着させておくとよい。
リード端子13は、上記金属からなる板材を、金型を用いた打ち抜き加工により、枠の内周から内側に延出するように複数のリード端子13が展開された形状のリードフレームを形成し、リードフレームを搭載基板に接続した後に枠を切り離すことにより複数のリード端子13となる。リードフレームは、エッチング加工により作製することもできる。金属板の上にリードフレーム形状のレジスト膜を形成して、例えば、リード端子13が銅からなる場合であれば、塩化第二鉄によりエッチングした後にレジスト膜を剥離することにより作製することができる。
枠体12は、基板11と同様に酸化アルミニウム質焼結体(アルミナセラミックス),ムライト質焼結体、ステアタイト焼結体または窒化アルミニウム質焼結体等のセラミックスからなるものであり、搭載基板と同様の方法で作製することができる。枠体12と基板11とを同じ材料にすると、熱膨張係数が同じになるのでこれらの間に発生する熱応力が、その間の接合材14またはリード端子13に加わりにくくなるので好ましい。
枠体12の表面も、ラップ研磨加工等により平坦にして、20(μm)以下の平坦度にしておくと、枠体12が搭載基板11に対して、また、光学フィルタ部材3が枠体12に対して傾くことなく接合され、結果として光学フィルタ部材3が距離画像撮像素子2に対して傾かないように接着されるので好ましい。
リード端子13を間に挟んで基板11と枠体12を接合する接合材14は、ガラスまたは樹脂を用いることができる。ガラスとしては、PbO系ガラス、PbO−SiO系ガラス、BiO−SiO系ガラス、PO−SiO系ガラスまたはBO−SiO系ガラス等の低融点ガラスがある。樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂またはポリエーテルイミド樹脂等がある。いずれの場合も、熱膨張係数を基板11や枠体12と近いものとするために、例えば、シリカのような無機粉末等のフィラーを含有するものであってもよい。
接合材14が低融点ガラスである場合は、例えば、酸化鉛56(質量%)〜66(質量%)、酸化硼素4(質量%)〜14(質量%)、酸化珪素1(質量%)〜6(質量%)および酸化亜鉛1(質量%)〜11(質量%)を含むガラス成分に、フィラーとして酸化ジルコニウムシリカ系化合物の粉末を4(質量%)〜15質量%添加した粉末に適当な有機溶剤、溶媒を添加混合して得たガラスペーストを、スクリーン印刷法等の印刷法を用いて枠体12の下面に所定厚みに印刷塗布し、これを約430(℃)の温度で焼成することによって枠体12に低融点ガラスを被着させる。
この枠体12を、基板12の上に低融点ガラスを下にして載置し、トンネル式の雰囲気炉またはオーブン等の加熱装置で約470(℃)に加熱することで接合材14を再溶融させて基板11の上面と枠体12の外周縁部に挟まれた各リード端子13の周囲を接合材14で覆い、冷却して低融点ガラスを固化させることにより枠体12およびリード端子13を基板11に強固に接合して撮像素子収納用パッケージを作製する。
接合材14が樹脂である場合は、例えば、ビスフェノールA型の液状エポキシ樹脂からなる主剤に対し、硬化剤としてテトラヒドロメチル無水フタル酸を外添加で10〜300
質量%添加し、フィラーとしてシリカ粉末を外添加で30〜80質量%添加し、カーボンブラック等の着色剤、2−メトキシエタノール等の有機溶剤を添加混合して得られたエポキシ樹脂ペーストを、スクリーン印刷法等の印刷法を用いて枠体12の下面に所定厚みに印刷塗布し、これを約60(℃)〜80(℃)の温度で溶剤を乾燥させ枠体に樹脂層を被着させる。
この枠体12を、基板11の上に接合材14を下にして載置し、トンネル式の雰囲気炉またはオーブン等の加熱装置で加熱してピーク温度約150(℃)で1時間保持することにより、樹脂層を溶融させて基板11の上面と枠体12の外周縁部に挟まれた各リード端子13の周囲を樹脂で覆った後に硬化させ、枠体12およびリード端子13が基板11に強固に接合されて素子搭載用部材1となる。
以上のようにして作製された素子搭載用部材1と光学フィルタ部材3との接合は、一般的に紫外線硬化型エポキシ樹脂もしくは熱硬化型エポキシ樹脂等から成る接着剤6を介して行なわれる。例えば、接着剤6として熱硬化型エポキシ樹脂を用いる場合、従来周知のスクリーン印刷法またはディスペンス法等を用いて接着剤6を素子搭載用部材2または光学フィルタ部材4に塗布し、互いに重ねあわせた後、90(℃)〜150(℃)の温度で60(分間)〜90(分間)加重し加熱することによって行われる。
例えば、銀粉末を含有するエポキシ樹脂からなる導電性接着剤によって距離画像撮像素子2を素子搭載用部材1の上面に接着して固定し、距離画像撮像素子2の電極と素子搭載用部材1の端子とを金などからなるボンディングワイヤ5で接続し、素子搭載用部材1の開口部を塞ぐように光学フィルタ部材3を接着剤6で素子搭載用部材1に接着することで距離画像撮像装置となる。
本発明の他の態様による距離画像撮像装置2Aは、本発明の光学フィルタ部材3と光学フィルタ部材3の下方に設けられた距離画像撮像素子2とを備えていることによって、距離画像とカラー画像の両方の画像のダイナミックレンジを共に最適化しやすくなり、カラー画像を撮影するとともに距離画像も取得することができるとともに、撮像画像および距離画像の画質を両立させることができる。
本発明は、上述した実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変更および改良が可能である。