JP2014209090A - 細胞分析方法及び装置 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、下記特許文献1には、被験者から採取した細胞にPI染色等の処理を施して測定試料を調製し、調製した測定試料をフローセルに流し、当該フローセルを流れる測定試料に光を照射することで個々の細胞について蛍光信号や散乱光信号を取得し、各信号の波形を解析することによりDNA量や核の大きさ、細胞の大きさ等を反映した特徴パラメータを抽出し、その特徴パラメータを用いて細胞の癌化・異型化を判別する細胞分析装置が開示されている。
また、下記特許文献2には、細胞が保存された、アルコールを含む保存液を収容する生体容器を細胞分析装置にセットし、当該装置内で生体容器内の保存液を希釈液に置換した後にPI染色処理等を行い、フローセルに流すための測定試料を調製することが記載されている。
すなわち、本発明の第1の観点による細胞分析方法は、細胞が保存されている保存液を、所定の温度に調整する温度調整工程と、前記温度調整工程で温度調整された保存液に保存されていた細胞に光を照射して光学情報を取得する測定工程と、を含んでいる。
本発明の細胞分析方法によれば、保存液を所定の温度に調整する工程を含むことによって、保存液の保存温度に関わらず、測定工程で取得される光学情報のばらつきを好適に抑制することができる。したがって、この光学情報を用いたその後の処理においても保存液の保存温度の影響を排除した正確な結果を得ることが可能となる。
前記光学情報は、散乱光情報を含んでいてもよい。この場合、細胞分析方法は、前記測定工程で得られた光学情報に基づき、細胞情報を取得する情報取得工程をさらに含み、前記情報取得工程は、前記散乱光情報に基づいて、前記細胞情報として細胞の大きさに関する情報を取得する工程を含むものであってもよい。
この場合、細胞分析方法は、光学情報である散乱光情報のばらつきを抑制することができるので、この散乱光情報に基づいて取得される細胞の大きさに関する情報のばらつきも抑制することができる。
また、前記測定試料調製工程は、前記測定試料を所定の温度に調整するものであってもよい。これにより、染色試薬と細胞との反応を促進することができる。
この場合、細胞分析方法は、光学情報である蛍光情報のばらつきを抑制することができるので、この蛍光情報に基づいて取得されるDNA量及び細胞核の大きさに関する情報のばらつきも抑制することができる。
この場合、細胞分析方法は、光学情報のばらつきを抑制することができるので、この光学情報に基づいて取得される細胞の癌化に関する情報のばらつきも抑制することができる。
前記保存液は、アルコールを含んでいてもよい。
この場合、細胞分析装置は、光学情報である散乱光情報のばらつきを抑制することができるので、この散乱光情報に基づいて取得される細胞の大きさに関する情報のばらつきも抑制することができる。
また、前記測定試料調製部は、前記測定試料を所定の温度に調整するものであってもよい。これにより、染色試薬と細胞との反応を促進することができる。
この場合、細胞分析装置は、光学情報である蛍光情報のばらつきを抑制することができるので、この蛍光情報に基づいて取得されるDNA量及び細胞核の大きさに関する情報のばらつきも抑制することができる。
本発明の細胞分析装置は、光学情報のばらつきを抑制することができるので、この光学情報に基づいて取得される細胞の癌化に関する情報のばらつきも抑制することができる。
本実施の形態の細胞分析装置1は、患者(被験者)から採取した細胞(生体試料)を含む測定試料をフローセルに流し、フローセルを流れる測定試料にレーザ光を照射し、測定試料からの光(前方散乱光、側方散乱光、側方蛍光)を検出してその光信号を分析することにより、癌化又はその過程にある細胞(以下、これらをまとめて「癌化細胞」ともいう)が含まれているか否かを判定する。より具体的には、細胞分析装置1は、患者から採取した子宮頸部の上皮細胞を用いて子宮頸癌をスクリーニングするために用いられる。
図2は、細胞分析装置における測定装置の内部の構成を模式的に示す説明図である。
図2に示されるように、検体セット部2aは、試料容器4が複数セットされたラック4aを、検体ピペット部11による試料の吸引位置まで順次搬送する。
検体ピペット部11は、試料容器4内の試料を温度調整部10に移送する。また、検体ピペット部11は、温度調整部10内の試料を第1分散部12に移送する。さらに、検体ピペット部11は、第1分散部12内の試料を、副検出部13と弁別・置換部14とに移送する。また、検体ピペット部11は、弁別・置換部14において濃縮された濃縮液を測定試料容器5に供給する。検体ピペット部11は、温度調整部10と、第1分散部12の試料収容部12aと、副検出部13の試料取込部13aと、弁別・置換部14と、試料受渡部11bに位置付けられた測定試料容器5との上方位置へ移動可能に構成されている。
温度調整部10は、検体セット部2aの試料容器4から移送された保存液を所定の温度に調整する。具体的に、温度調整部10は、温度調整用の試料容器がセットされる試料セット部10aを備え、この試料セット部10a内の試料容器を加温することによってその内部の保存液の温度を調整するように構成されている。
13は、後述する主検出部22とほぼ同じ構成のフローサイトメータ40(図3(a)参照)を採用している。
弁別・置換部14は、第1分散部12による第1分散処理後の試料を受け入れ、試料に含まれるメタノールを主成分とする保存液を希釈液で置換(希釈)する。具体的には、液体は通すが細胞は通さないフィルタによって試料に含まれるメタノールを主成分とする保存液を所定の程度除去し、緩衝液を添加する。これにより保存液中のメタノールによる、後述するDNAの染色への影響が小さくなるため、良好に測定対象細胞のDNAを染色することができる。さらに、弁別・置換部14は、試料に含まれる測定対象細胞(被験者から採取された子宮頸部の上皮細胞)と、それ以外の細胞(赤血球、白血球、細菌など)及び夾雑物とを弁別する。さらに、弁別・置換部14は、主検出部22による測定に必要な細胞測定数を得るために、試料に含有される測定対象細胞の濃縮を行う。弁別・置換部14は、処理の効率化のために2つ設けられている。
レンズ系42は、図3(b)に示されるように、半導体レーザ41側(図3(a)、(b)の左側)から順に配置される、コリメータレンズ42aと、シリンダレンズ系(平凸シリンダレンズ42b+両凹シリンダレンズ42c)と、コンデンサレンズ系(コンデンサレンズ42d+コンデンサレンズ42e)とから構成されている。
また、副検出部13は、主検出部22とほぼ同じ構成のフローサイトメータ40を採用しているので、構成については説明を省略する。副検出部13は、主検出部22による本測定の前に試料の濃度測定を行う。本実施の形態では、副検出部13は、前方散乱光信号(FSC)を取得するよう構成されており、前方散乱光信号に基づいて上皮細胞に該当する大きさの細胞の数を計数するための信号を出力する。副検出部13から出力された前方散乱信号FSCは、制御部24に入力され、処理される。
図1に示されるように、データ処理装置3は、例えばノートPCやデスクトップPC等のパーソナルコンピュータからなり、入力部31と、表示部32と、制御部33とを含んでいる。制御部33は、CPU、ROM,RAM及びハードディスク等からなる記憶部、CD−ROMドライブ等の読出装置、及び各種入出力インタフェース等を備えている。制御部33の記憶部には、オペレーティングシステム及びアプリケーションプログラム等の各種プログラムの他、図2に示される測定装置2の制御部24への動作命令の送信、測定装置2で行った測定結果の受信及び分析処理、並びに、処理した分析結果の表示等を行う操作プログラムがインストールされている。また、データ処理装置3は、測定装置2の制御部24に通信可能に接続され、測定装置2とデータ処理装置3との間でデータの送受信を行うことが可能である。
細胞分析装置1による分析に際して、生体試料(細胞)と、メタノールを主成分とする保存液とが収容された試料容器4が操作者により検体セット部2a(図2参照)にセットされ、細胞分析装置1による分析が開始される。以下、図4を参照して細胞分析装置1による分析の手順を説明する。
ると、第1試薬添加部19により試薬(RNaseを含む。以下、当該試薬をRNA除去剤ともいう)が添加され、反応部18により加温されて、測定試料容器5内の測定対象細胞のRNA除去処理が行われる(ステップS7)。RNA除去処理の後、第2試薬添加部20により試薬(染色液)が添加され、反応部18により加温されて、測定試料容器5内の測定対象細胞のDNA染色処理が行われる(ステップS8)。本実施の形態では、プレ測定により、本測定で必要となる有意細胞数がある程度一定に保たれているため、細胞を染色する際の染色の程度は、測定ごとにばらつきにくくなっている。また、本実施の形態では、温度調整工程(ステップS1)において保存液の温度が略一定に調整されることによって、保存液中の細胞に含まれるクロマチンの変性が促進されることによって細胞が安定化し、染色の程度がばらつきにくくなっている。
次に、本実施の形態における癌化情報の取得手順について説明する。
図5(a)は、本測定(図4のステップS9)において得られる前方散乱光信号(FSC)と側方蛍光信号(SFL)を説明する図である。図5(a)には、細胞核を含む細胞の模式図と、当該細胞から得られる前方散乱光信号の波形及び側方蛍光信号の波形とが示されている。縦軸は光の強度を表している。前方散乱光強度の波形の幅は、細胞の幅を示す数値(細胞の大きさC)を表しており、側方蛍光強度の波形の幅は、細胞核の幅を示す数値(細胞核の大きさN)を表している。斜線で示すように、側方蛍光強度の波形と所定のベースラインとにより決められる領域の面積は、細胞のDNA量を表している。
具体的には、N/C比の大きい細胞を抽出する。続いて、このように抽出された細胞群のうち、DNA量が多い細胞とDNA量が少ない細胞とを抽出することにより、癌化細胞である可能性が高い細胞(第1細胞)と癌化細胞である可能性が低い細胞(第2細胞)とを効果的に抽出する。一般に、組織の癌化が進むと、第1細胞の数が増加し、第2細胞の数が減少する。このため、両細胞数の比は、組織が正常である場合と癌化した場合とで大きく異なる。癌化の判定は、この比に基づいて行われる。このように、互いに増減傾向が逆の2つの細胞数の比が用いられると、測定試料に含まれる測定対象細胞が比較的少なくても、信頼性の高い判定結果を得ることができる。
次に、データ処理装置3の制御部33は、図8のヒストグラムにおいて、DNA量が正常細胞のS期以上である細胞数N1(bよりも大きくc以下の範囲にあるDNA量を有する細胞数)、すなわち、図6(a)にも示されるように、細胞周期がG0期又はG1期にある正常細胞のDNA量を超えるDNA量を有する細胞の数を取得する。さらに、制御部33は、DNA量が正常細胞の2Cである細胞の数N2(a以上b以下の範囲にあるDNA量を有する細胞数)、すなわち、細胞周期がG0期又はG1期にある正常細胞のDNA量を有する細胞の数を取得する。
上述したように、測定装置2の温度調整部10は、生体試料が主検出部22又は副検出部13に送られる前に、保存液の温度を所定の温度に調整するものである。主検出部22及び副検出部13において取得される光学信号は、保存液の温度の違いによってばらつきが生じ、その結果、光学信号を用いた癌化の判定が正確に行えなくなる可能性がある。例えば、側方蛍光信号や前方散乱光信号にばらつきが生じると、細胞核の大きさNや細胞の大きさCにもばらつきが生じ、図7に示されるスキャッタグラムの作成に悪影響を及ぼす可能性がある。また、側方蛍光信号にばらつきが生じると、細胞のDNA量にもばらつきが生じ、図8に示されるヒストグラムを正確に作成できず、癌化の判定に悪影響を及ぼす可能性がある。特に、側方蛍光信号の強度は、DNAの染色の程度によって変わるため、保存液の温度の違いはDNAの染色の程度に影響を与えると考えられる。
以下、実験1におけるプロトコルを示す。
1.材料
(生体試料) 生体試料としての培養細胞に、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション社(ATCC社)より入手したHela細胞を用いた。
(染色液) シグマ社のPI(ヨウ化プロピジウム)をエチレングリコールで希釈したものを用いた。
(RNA除去剤) シグマ社のRNaseAを、Tris塩酸水溶液(pH7.5 10mM)で希釈したものを用いた。
(保存液)実験内容により、以下の4つのパターンの保存液を使用した。
保存液1:メタノール40vol%、酢酸0.8vol%の水溶液
保存液2:エタノール40vol%、酢酸0.8vol%の水溶液
保存液3:メタノール25〜80vol%、酢酸0.8vol%の水溶液
保存液4:エタノール25〜80vol%、酢酸0.8vol%の水溶液
(希釈液)Tris塩酸水溶液(pH7.5 10mM)を使用した。
(保存条件)培養細胞を保存した保存液を4℃又は30℃で24時間静置した。臨床現場において細胞を含む保存液は検査まで保存されるが、保存温度は一般的に4℃〜30℃が想定される。本実験における保存液の静置は、一般的に想定される保存温度の下限(4℃)又は上限(30℃)の温度のもとで行われた。
(温度調整条件)上記の通り静置した後、以下の3つのパターンのいずれかで保存液の温度を調整した。
・パターン1:30℃〜50℃の範囲で選択された複数の調整温度のうち、いずれかの温度で10分間加温
・パターン2:調整温度37℃で10分間加温
・パターン3:調整温度37℃で、3〜20分の範囲で選択された複数の時間のうち、いずれかの時間加温
保存液中で24時間保存した培養細胞をマイクロチューブ内で上記調整温度に加温したのち、遠心分離(10000rpm,1分間)を行い、アスピレータにて上清を除去した。その後、残存液(30μL)に1mlの希釈液を加え、再度、遠心分離(10000rpm,1分間)を行い、アスピレータにて上清を除去した。その後、残存液(30μL)に、染色液、RNA除去剤、及び希釈液を加えて測定試料を調製し、上記の温度調整条件(パターン1〜3のいずれか)で静置した。その後、測定試料をフローサイトメータに流して光学信号(側方蛍光信号、前方散乱光信号)を取得した。そして、4℃保存の保存液を用いて取得された光学信号と、30℃保存の保存液を用いて取得された光学信号とを比較し、そのばらつきを求めた。
(実験1−1)
本実験では、細胞が保存された保存液1(メタノールベース)を30℃〜50℃の範囲で温度調整した場合と、温度調整を行わなかった場合(加温なし、すなわち4℃又は30℃の状態)とで、蛍光量のばらつきを求めた。なお、蛍光量は、側方蛍光信号波形の面積である。この蛍光量は細胞のDNA量に相関しており、DNA量が多いほど蛍光量は多くなる。本実験及び以下に説明する他の実験においては、図8における2Cがピークを示すときの蛍光量(値X)のばらつきを求めた。
その結果、図9に示されるように、加温なしの場合、4℃保存の保存液を用いて取得された蛍光量と、30℃保存の保存液を用いて取得された蛍光量との比率(蛍光量が大きい方を小さい方で割って求めた比率(百分率))は、約105%となった。この比率が大きいほど、蛍光量のばらつきが大きいと言える。
本実験では、細胞が保存された保存液2(エタノールベース)を、37℃で10分間温度調整した場合と、温度調整しなかった場合とで、蛍光量のばらつきを調べた。
その結果、図10に示されるように、4℃保存の保存液を用いて取得された蛍光量と、30℃保存の保存液を用いて取得された蛍光量との比率は約102%となり、加温なしの場合の比率(108%〜109%)よりも小さくなった。したがって、保存温度の違いによる蛍光量のばらつきを温度調整によって抑制できることが分かった。そして、本実験により、保存液のベースとなるアルコールの種類に関わらず、温度調整の効果を得ることができると考えられる。
本実験では、細胞が保存された保存液1を、37℃で10分間温度調整した場合と、温度調整しなかった場合とで、前方散乱光信号から求められる細胞径(細胞の大きさC、図5(a)参照)のばらつきを調べた。
その結果、図11に示されるように、4℃保存の保存液を用いて取得された細胞径と、30℃保存の保存液を用いて取得された細胞径との比率は約102%となり、加温なしの場合の比率(105%〜106%)よりも小さくなり、保存温度の違いによる細胞径のばらつきを温度調整によって抑制できることが分かった。
本実験では、細胞が保存された保存液1を、37℃で10分間温度調整した場合と、温度調整しなかった場合とで、側方蛍光信号から求められる細胞核径(細胞核の大きさN、図5(a)参照)のばらつきを調べた。
その結果、図12に示されるように、4℃保存の保存液を用いて取得された細胞核径と、30℃保存の保存液を用いて取得された細胞核径との比率は100.0%〜100.4%となり、加温なしの場合の比率(101.6%〜102.0%)よりも小さくなった。したがって、保存温度の違いによる細胞核径のばらつきを温度調整によって抑制できることが分かった。
また、実験1−3と実験1−4の結果から、保存液の温度調整によって、N/C比のばらつきを抑制できることが分かった。
本実験は、メタノール濃度を変えた複数の保存液3を用いて、37℃で10分間温度調整した場合と、温度調整しなかった場合とで、蛍光量のばらつきを調べた。
その結果、図13に示されるように、いずれのメタノール濃度でも、4℃保存の保存液を用いて取得された蛍光量と、30℃保存の保存液を用いて取得された蛍光量との比率が、加温なしの場合よりも小さくなった。本実験の結果により、メタノール濃度に関わらず、温度調整の効果を得ることができると考えられる。
本実験は、エタノール濃度を変えた複数の保存液4を用いて、37℃で10分間温度調整した場合と、温度調整しなかった場合とで、蛍光量のばらつきを調べた。
その結果、図14に示されるように、いずれのエタノール濃度でも、4℃保存の保存液を用いて取得された蛍光量と、30℃保存の保存液を用いて取得された蛍光量の比率が、加温なしの場合よりも小さくなった。本実験により、エタノール濃度に関わらず、温度調整の効果を得ることができると考えられる。
本実験では、細胞が保存された保存液1を、37℃で時間を変化(3〜20分)させて温度調整した場合と、温度調整しなかった場合(温度調整時間0分)とで、蛍光量のばらつきを調べた。
その結果、図15(a)に示されるように、いずれの温度調整時間においても4℃保存の保存液を用いて取得された蛍光量と、30℃保存の保存液を用いて取得された蛍光量との比率が、加温なしの場合よりも小さくなった。したがって、保存温度の違いによる蛍光量のばらつきを温度調整によって抑制できることが分かった。また、図15(b)には、温度調整時間に対する保存液の温度の変化を示しており、これによれば、温度調整時間が3分経過すると、ほぼ調整温度である37℃にまで保存液が昇温しており、蛍光量のばらつきも抑制されていることがわかる。また、本実験より、温度調整時間が10分のときに、蛍光量のばらつきが最も小さくなっていることがわかる。したがって、上記の実施の形態における温度調整部10においては保存液の温度調整時間を10分間とした。
以下、実験2におけるプロトコルを示す。
1.材料
(生体試料) 生体試料として、3人の子宮頸癌患者の子宮頸部から上皮細胞を含む臨床検体を採取し、それぞれを臨床検体1〜3とした。
(染色液) 実験1と同じ
(RNA除去剤) 実験1と同じ
(保存液) 実験1の保存液1と同じ
(希釈液) 実験1と同じ
(保存条件)臨床検体を保存した保存液を4℃又は30℃で7日間静置した。
(温度調整条件)上記の通り静置した後、各保存液を調整温度37℃で、10分間加温した。
保存液中で保存した臨床検体を用いて実験1と同様の手順で試料を調製し、上記の温度調整条件で静置した。その後、測定試料をフローサイトメータに流して光学信号(側方蛍光信号、前方散乱光信号)を取得した。そして、4℃保存の保存液を用いて取得された光学信号と、30℃保存の保存液を用いて取得された光学信号とを比較し、そのばらつきを求めた。
本実験では、臨床検体1〜3が保存された保存液を、それぞれ37℃で10分間温度調整した場合と、温度調整しなかった場合とで、蛍光量のばらつきを調べた。
その結果、図16に示されるように、4℃保存の保存液を用いて取得された蛍光量と、30℃保存の保存液を用いて取得された蛍光量との比率は、臨床検体1で104.0%、臨床検体2で102.1%、臨床検体3で104.4%となり、それぞれ加温なしの場合の比率(同108.2%、106.5%、106.7%)よりも小さくなった。したがって、いずれの子宮頸癌患者から採取した臨床検体であっても、保存温度の違いによる蛍光量のばらつきを温度調整によって抑制できることが分かった。
以下、口腔細胞に関する実験3のプロトコルを示す。
1.材料
(生体試料)口腔内の細胞を以下の手順で採取した。
綿棒に唾液を十分に含ませ、その綿棒を口腔内に押し当てて10秒間擦過した(右頬、左頬でそれぞれ一本ずつ、計2本の綿棒を用いた)。擦過後、速やかに、5.0mL容量の容器内に収容した保存液2.2mL中に綿棒を入れ、回転させることによって細胞を洗い落とした。そして、440μLずつ1.5mL容量のマイクロチューブに分注した。
(染色液) 実験1と同じ
(RNA除去剤) 実験1と同じ
(保存液)メタノール40vol%、酢酸0.8vol%の水溶液
(保存条件)口腔細胞を保存した保存液を4℃又は30℃で24時間静置した。
(温度調整条件)上記の通り静置した後、調整温度37℃で10分間加温した。
実験1と同様の手順で測定試料を調整し、その測定試料をフローサイトメータに流し、測定試料をフローサイトメータに流して光学信号(側方蛍光信号、前方散乱光信号)を取得した。そして、4℃保存の保存液を用いて取得された光学信号と、30℃保存の保存液を用いて取得された光学信号とを比較し、そのばらつきを求めた。
(実験3−1)
本実験では、口腔細胞が保存された保存液を、37℃で10分間温度調整した場合と、温度調整しなかった場合とで、蛍光量のばらつきを調べた。
その結果、図17に示されるように、4℃保存の保存液を用いて取得された蛍光量と、30℃保存の保存液を用いて取得された蛍光量との比率が103%〜104%となり、加温なしの場合の比率(105%〜106%)よりも小さくなった。したがって、保存温度の違いによる蛍光量のばらつきを温度調整によって抑制できることが分かった。
本実験では、口腔細胞が保存された保存液を、37℃で10分間温度調整した場合と、温度調整しなかった場合とで、前方散乱光信号から求められる細胞径(細胞の大きさC、図5(a)参照)のばらつきを調べた。
その結果、図18に示されるように、4℃保存の保存液を用いて取得された細胞径と、30℃保存の保存液を用いて取得された細胞径との比率は約102%となり、加温なしの場合の比率(105%〜106%)よりも小さくなった。したがって、保存温度の違いによる細胞径のばらつきを温度調整によって抑制できることが分かった。
本実験では、口腔細胞が保存された保存液を、37℃で10分間温度調整した場合と、温度調整しなかった場合とで、側方蛍光信号から求められる細胞核径(細胞核の大きさN、図5(a)参照)のばらつきを調べた。
その結果、図19に示されるように、4℃保存の保存液を用いて取得された細胞核径と、30℃保存の保存液を用いて取得された細胞核径との比率は100.0%〜100.5%となり、加温なしの場合の比率(101.0%〜101.5%)よりも小さくなった。したがって、保存温度の違いによる細胞核径のばらつきを温度調整によって抑制できることが分かった。
例えば、上記実施の形態の細胞分析装置は、子宮頸部の上皮細胞が分析対象とされていたが、上記実験3によって検証されたとおり、口腔粘膜の上皮細胞が分析対象とされていてもよい。また、膀胱、咽頭などの他の上皮細胞、さらには臓器の上皮細胞が分析対象とされていてもよい。
2 :測定装置
2a :検体セット部
3 :データ処理装置(情報処理部)
10 :温度調整部
13 :副検出部(測定部)
14 :弁別・置換部
19 :第1試薬添加部(測定試料調製部)
20 :第2試薬添加部(測定試料調製部)
22 :主検出部(測定部)
23 :容器洗浄部
Claims (20)
- 細胞が保存されている保存液を、所定の温度に調整する温度調整工程と、
前記温度調整工程で温度調整された保存液に保存されていた細胞に光を照射して光学情報を取得する測定工程と、
を含む細胞分析方法。 - 前記温度調整工程により温度調整された保存液を希釈液に置換することで、測定試料を調製する測定試料調製工程をさらに含む、請求項1に記載の細胞分析方法。
- 前記光学情報は、散乱光情報を含む、請求項1又は2に記載の細胞分析方法。
- 前記測定工程で得られた光学情報に基づき、細胞情報を取得する情報取得工程をさらに含み、
前記情報取得工程は、前記散乱光情報に基づいて、前記細胞情報として細胞の大きさに関する情報を取得する工程を含む、請求項3に記載の細胞分析方法。 - 前記測定試料調製工程は、さらに染色試薬を用いて、前記測定試料を調製する、請求項2に記載の細胞分析方法。
- 前記染色試薬は、核酸染色色素を含む、請求項5に記載の細胞分析方法。
- 前記測定試料調製工程は、前記測定試料を所定の温度に調整する、請求項5又は6に記載の細胞分析方法。
- 前記光学情報は、蛍光情報を含む、請求項5〜7のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
- 前記測定工程で得られた光学情報に基づき、細胞情報を取得する情報取得工程をさらに含み、
前記情報取得工程は、前記蛍光情報に基づいて、前記細胞情報としてDNA量及び細胞核の大きさの少なくとも一方に関する情報を取得する工程を含む、請求項8に記載の細胞分析方法。 - 前記測定工程で得られた光学情報に基づき、細胞情報を取得する情報取得工程をさらに含み、
前記情報取得工程は、前記細胞情報として細胞の癌化に関する情報を取得する工程を含む、請求項1に記載の細胞分析方法。 - 前記保存液は、アルコールを含む、請求項1〜10のいずれか1項に記載の細胞分析方法。
- 細胞が保存されている保存液を、所定の温度に調整する温度調整部と、
前記温度調整部により温度調整された保存液を希釈液に置換することで、測定試料を調製する測定試料調製部と、
前記測定試料調製部により調製された測定試料に含まれる細胞に光を照射して光学情報を取得する測定部と、
を備えている細胞分析装置。 - 前記光学情報は、散乱光情報を含む、請求項12に記載の細胞分析装置。
- 前記測定部で取得された光学情報に基づき、細胞情報を取得する情報処理部をさらに備え、
前記情報処理部は、前記散乱光情報に基づいて、前記細胞情報として細胞の大きさに関する情報を取得する、請求項13に記載の細胞分析装置。 - 前記測定試料調製部は、さらに染色試薬を用いて、前記測定試料を調製する、請求項12〜14のいずれか1項に記載の細胞分析装置。
- 前記染色試薬は、核酸染色色素を含む、請求項15に記載の細胞分析装置。
- 前記測定試料調製部は、前記測定試料を所定の温度に調整する、請求項15又は16に記載の細胞分析装置。
- 前記光学情報は、蛍光情報を含む、請求項15〜17のいずれか1項に記載の細胞分析装置。
- 前記測定部で取得された光学情報に基づき、細胞情報を取得する情報処理部をさらに備え、
前記情報処理部は、前記蛍光情報に基づいて、前記細胞情報としてDNA量及び細胞核の大きさの少なくとも一方に関する情報を取得する、請求項18に記載の細胞分析装置。 - 前記測定部で取得された光学情報に基づき、細胞情報を取得する情報処理部をさらに備え、
前記情報処理部は、前記細胞情報として細胞の癌化に関する情報を取得する、請求項12に記載の細胞分析装置。
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