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JP2014161308A - 胃癌の検出又は胃癌発症のリスク評価のための指標を得る方法 - Google Patents

胃癌の検出又は胃癌発症のリスク評価のための指標を得る方法 Download PDF

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JP2014161308A JP2013037305A JP2013037305A JP2014161308A JP 2014161308 A JP2014161308 A JP 2014161308A JP 2013037305 A JP2013037305 A JP 2013037305A JP 2013037305 A JP2013037305 A JP 2013037305A JP 2014161308 A JP2014161308 A JP 2014161308A
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嘉行 渡邊
Fumio Ito
文生 伊東
Kunihiro Sudo
邦宏 須藤
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Hitachi Chemical Co Ltd
St Marianna University School of Medicine
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Abstract

【課題】胃癌の検出又は胃癌発症のリスク評価のための指標を得る方法の提供。
【解決手段】BARHL2遺伝子の発現量及びシトシンメチル化頻度の少なくとも一方を胃癌の検出又は胃癌発症のリスク評価の指標とする。好ましくは、それに加えて、SOX17遺伝子及びMINT25遺伝子の少なくとも一方の発現量及びシトシンメチル化頻度の少なくとも一方を胃癌の検出又は胃癌発症のリスク評価の指標とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、胃癌の検出又は胃癌発症のリスク評価のための指標を得る方法に関する。
従来、癌の診断方法として、生検により体細胞を摘出し、細胞表面の癌特異的な抗原を利用した免疫染色を行い、病理医が確定診断を行っている。
癌のリスク要因として、一塩基多型(SNPs)等の遺伝子異常が知られているが、生活習慣等により後天的に影響がでるエピジェネティック異常によっても癌が発症することが知られてきている。エピジェネティック異常は、DNAの5’−CG−3’(CpG配列)のシトシン(C)の5位の炭素のメチル化によるもの、及びヒストンがアセチル化、メチル化及びリン酸化等の修飾を受けることによるクロマチン構造の変化によるものが主としてある。特に、DNAのメチル化は、CpG配列が高密度な遺伝子プロモーター領域において、DNAの塩基配列を変えることなくシトシン(C)がメチル化することにより、遺伝子の発現が抑制され、発がんに寄与すると考えられている(非特許文献1−2)。メチル化は、胃炎、ヘリコバクターピロリ菌及び化学物質等により生じることが知られている(非特許文献3−5)。
今までに癌の検査に用いられてきたものとしては、CEA、CA19−9、PSA、CA125、SCC抗原、AFP、PIVKA−II及びペプシノゲン等の癌マーカーがある。しかし、癌発生後でないとマーカーが顕著に上昇しないために、進行癌では有用であっても、早期の癌発見には繋がらなかった。従来の癌マーカー以外にも、近年では、DNAのメチル化を標的とした、癌の診断方法が提案されてきた(特許文献1)。胃癌においては、DNAメチル化を標的とした、MINT25遺伝子及びSox17遺伝子の胃癌マーカーが提案されている(特許文献2−3)。しかしながら、これらの胃癌マーカーを用いた場合、ピロリ菌感染を伴う胃癌患者では有意差が認められるが、ピロリ菌に感染していない胃癌患者では有意差が認められないという問題点がある。近年、若年層を中心に、ピロリ菌非感染者における胃癌発症が増加しているため、ピロリ菌感染の有無によらない、早期胃癌の検出又は胃癌発症リスクの評価の指標が望まれている。
特開2008−283947号公報 特許第4426549号公報 国際公開第2009/136501号
Cell,128:683−692,2007、 J Natl Cancer Inst.,85(15):1235−1240,1993 Clin Cancer Res,12(3):989−995,2006 Cancer Epidemiol Biomarkers Prev.,17(10):2555−2564,2008 Cancer Res.,70(4):1430−440,2010
本発明の目的は、早期胃癌の検出又は胃癌発症のリスク評価のための指標を得る方法を提供することにある。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、BARHL2遺伝子の発現量及びシトシンメチル化頻度の少なくとも一方を胃癌マーカーとして利用可能であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち本発明は、胃癌の検出又は胃癌発症のリスク評価のための指標を得る方法であって、被験者から採取した検体における、BARHL2遺伝子の発現量及びシトシンメチル化頻度の少なくとも一方を測定する工程を含み、BARHL2遺伝子の発現量及びシトシンメチル化頻度の少なくとも一方を胃癌の検出又は胃癌発症のリスク評価の指標とする方法、を提供する。
上記方法において、被験者から採取した検体における、SOX17遺伝子及びMINT25遺伝子の少なくとも一方の発現量及びシトシンメチル化頻度の少なくとも一方を測定する工程を含み、BARHL2遺伝子の発現量及びシトシンメチル化頻度の少なくとも一方と、SOX17遺伝子及びMINT25遺伝子の少なくとも一方の発現量及びシトシンメチル化頻度の少なくとも一方とを、胃癌の検出又は胃癌発症のリスク評価の指標とすることが好ましい。既に胃癌マーカーとして利用されているSOX17遺伝子及びMINT25遺伝子の少なくとも一方を指標に加えることで、より精度の高い診断を行うことが可能である。
上記方法において、検体は、胃粘膜洗浄液、生検、胃液、血液又は糞便を用いることができ、特に、胃粘膜洗浄液であることが好ましい。胃粘膜洗浄液には、胃全体の情報が得られるという利点及び検体中のDNA鎖の切断が少ないという利点がある。
本発明は、また、BARHL2遺伝子のシトシンメチル化頻度を測定するキットであって、配列番号1の核酸配列を含み、40塩基以下の長さを有するオリゴヌクレオチド及び配列番号2の核酸配列を含み、40塩基以下の長さを有するオリゴヌクレオチドからなるプライマーセットと、配列番号3の核酸配列を含み、30塩基以下の長さを有するオリゴヌクレオチドからなるプローブとを含むキット、を提供する。かかるキットを利用して上記方法を実施することが可能である。
上記キットにおいて、プライマーセットが、配列番号4の核酸配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号5の核酸配列からなるオリゴヌクレオチドからなり、プローブが、配列番号6の核酸配列からなるオリゴヌクレオチドからなることが好ましい。
本発明に係る方法によれば、早期胃癌の検出又は胃癌発症のリスク評価が可能となる。さらに、本発明に係る方法によれば、ピロリ菌の感染の有無に関わらず、早期胃癌の検出又は胃癌発症のリスク評価が可能となる。
BARHL2遺伝子のCpGアイランドを示す模式図である。バーはCpGが存在する位置を表す。 ESD前後におけるメチル化頻度の変化を示す図である。(a)はアレイ上の全遺伝子を表し、(b)はESD後にメチル頻度が低下した遺伝子を表す。1〜6の数字は、患者を表す。 胃癌細胞におけるBARHL2遺伝子のmRNA発現量及びメチル化頻度を表す図である。 脱メチル化剤が胃癌細胞のBARHL2遺伝子のmRNA発現量に及ぼす影響を表す図である。 胃炎及び胃腺腫の胃粘膜組織断片の染色結果を表す図である。 胃癌の胃粘膜組織断片の染色結果を表す図である。 ESD前後におけるメチル化頻度の変化を示す図である。(a)MINT25遺伝子、(b)BARHL2遺伝子、(c)SOX17遺伝子。
(遺伝子及びCpGアイランド)
BARHL2遺伝子(Gene Map Locus:1p22.2、Sequence:NC_000001.10(91177579..91182794))は、5216塩基対からなり、BarH−like homeobox 2タンパク質を発現する遺伝子であり、神経系の発生時に発現する神経軸索系の遺伝子である。BARHL2遺伝子のDNA配列を配列番号13に示す。
SOX17遺伝子(Gene Map Locus:8q11.23、Sequence:NC_000008.10(55370495..55373456))は、2962塩基対からなり、SRY(sex determining region Y)−box 17遺伝子である。SOX17遺伝子のDNA配列を配列番号14に示す。
MINT25(Methylation in tumor 25)遺伝子は、CABIN1遺伝子(Gene Map Locus:22p11.23、Sequence:NC_000022.10(24407765..24574596)の遺伝子断片である。MINT25遺伝子のDNA配列を配列番号15に示す。
CpGアイランドとは、グアニン(G)及びシトシン(C)の割合であるGC含量が50%以上であり、CpG(CGの配列)の割合がGC含量から期待される量の60%以上となる領域である。このCpGアイランドのメチル化は、シトシンのピリミジン環の5位の炭素原子へのメチル基の付加反応である。このメチル化が起こることにより、遺伝子の発現が抑制されることになる。メチル化の頻度が高くなると、必要な遺伝子発現が得られなくなり、癌が発生する原因の一つとなることが知られている。
(胃癌の検出又は胃癌発症のリスク評価のための指標を得る方法)
本発明の一実施形態において、BARHL2遺伝子の発現量及びシトシンメチル化頻度の少なくとも一方を胃癌の検出又は胃癌発症のリスク評価の指標とする。そのため、被験者から採取した検体における、BARHL2遺伝子の発現量及びシトシンメチル化頻度の少なくとも一方を測定する。
本発明の別の実施形態において、BARHL2遺伝子の発現量及びシトシンメチル化頻度の少なくとも一方と、SOX17遺伝子及びMINT25遺伝子の少なくとも一方の発現量及びシトシンメチル化頻度の少なくとも一方とを、胃癌の検出又は胃癌発症のリスク評価の指標とする。そのため、被験者から採取した検体における、BARHL2遺伝子の発現量及びシトシンメチル化頻度の少なくとも一方を測定し、被験者から採取した検体における、SOX17遺伝子及びMINT25遺伝子の少なくとも一方の発現量及びシトシンメチル化頻度の少なくとも一方を測定する。
被験者は、StageI〜IVの全ての胃癌患者に加えて、StageIとは診断されない、悪性又は良性の判断がつかない腺腫等の患者も含む。さらに、健常者を被験者として、胃癌発症リスクを評価することが可能である。特に、早期胃癌検出としては、StageIが好ましい。
検体とは、胃粘膜洗浄液、生検及び胃液等の胃由来の検体に限定されず、口腔拭い液、血液、血漿、血清、リンパ液、唾液、腹水、尿及び糞便等も含む。検体は、取り扱いのし易さの観点等から、胃粘膜洗浄液、生検、胃液、血液又は糞便であることが好ましい。中でも、胃全体からの情報が含まれる点及び検体中のDNA鎖の切断が少ない点から、検体として胃粘膜洗浄液がより好ましい。
得られた検体から細胞成分を単離する方法として、胃粘膜洗浄液、胃液等の液体内混入成分の場合には遠心分離単離を行い、生検等の組織片の場合にはそのまま用いる。単離した細胞は必要に応じてDNA、RNA及びタンパク質を抽出する。いずれも当業者にとって周知の方法で行うことができ、市販されている各種キットを利用することができる。DNAの抽出方法としては、例えば、フェノール・クロロホルム抽出法が利用できる。RNAの抽出方法としては、例えば、AGPC法が利用できる。タンパク質の抽出方法としては、例えば、RIPAバッファー等を用いた方法が利用できる。
遺伝子の発現量とは、転写産物すなわちmRNAの量でもよく、翻訳産物すなわちタンパク質の量でもよい。得られたRNAは逆転写酵素によりcDNAの合成し、遺伝子発現量測定に用いる。遺伝子の発現量は、GAPDH及びβ−アクチン等のハウスキーピング遺伝子の量で補正してもよい。mRNAの定量方法として、例えば、リアルタイムRT−PCR法を利用することができる。得られたタンパク質は、GAPDH及びβ−アクチン等のハウスキーピング遺伝子の蛋白量で補正してもよい。タンパク質の定量方法として、例えば、ELISA法を利用することができる。
遺伝子のシトシンメチル化頻度を測定する方法としては、制限酵素を用いたサザンブロットによる方法、制限酵素を用いたPCRによる方法、バイサルファイト反応とシークエンス解析による方法、バイサルファイトPCRを用いたRestriction Mappinngによる方法及びリアルタイムPCRを用いた方法等が挙げられる。シークエンス解析法は、リアルタイムPCRやパイロシークエンス法等が用いられる。
BARHL2遺伝子、SOX17遺伝子及びMINT25遺伝子のCpGアイランドのメチル化頻度を測定する場合の代表的な例として、重亜硫酸塩(バイサルファイト)処理した後に、パイロシークエンス法で塩基配列を測定する方法を説明する。
検体から抽出したDNAを、重亜硫酸ナトリウムを用いたバイサルファイト処理を行い、その後脱スルホン酸処理を行う。それにより、非メチル化Cはウラシル(U)に変換されるが、メチル化Cは変換されずにCのままである。そのため、DNA中の同じ場所でのUとCの割合を調べることで、メチル化頻度が測定できる。CpGアイランド内の任意の位置のCpGのメチル化頻度を測定して構わないが、遺伝子転写開始点の上流もしくは下流2Kbの範囲にあるCpGのメチル化頻度を測定することが好ましい。このままのDNAをシークエンス解析することもできる。
通常、特定部位のみを増幅できるプライマーを用いて、PCR等で特定部位を増幅することでシークエンス解析が容易になる。DNAの増幅方法としては、PCR法(Polymerase Chain Reaction)、LCR法(Ligase Chain Reaction)、SDA法(Strand Displacement Amplificaton)及びICAN法(Isothermal and Chimeric Primer−initiated Amplification of Nucleic Acids)等を使用することができる。広く用いられていることから、PCR法が好ましい。
図1にBARHL2遺伝子を例に挙げて、具体的に説明する。フォワードプライマー及びリバースプライマーを使用して遺伝子を増幅し、プローブを使用して増幅産物の検出が可能である。
BARHL2遺伝子のシトシンメチル化の頻度を測定するためのプライマーセットとして、(i)フォワードプライマーとして配列番号1の核酸配列を含み、40塩基以下の長さを有するオリゴヌクレオチド及び(ii)リバースプライマーとして配列番号2の核酸配列を含み、40塩基以下の長さを有するオリゴヌクレオチドの組み合わせが挙げられる。かかるオリゴヌクレオチドの長さは、35塩基以下であることが好ましく、30塩基以下であることがより好ましく、25塩基以下であることがさらに好ましい。フォワードプライマーの具体例として、配列番号4の核酸配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。リバースプライマーの具体例として、配列番号5の核酸配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。
上記プライマーセットにより増幅された増幅産物を検出するためのプローブとして、配列番号3の核酸配列を含み、30塩基以下の長さを有するオリゴヌクレオチドが挙げられる。かかるオリゴヌクレオチドの長さは、25塩基以下であることが好ましく、20塩基以下であることがより好ましい。プローブの具体例として、配列番号6の核酸配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。
SOX17遺伝子のシトシンメチル化の頻度を測定するためのプライマーセットとして、配列番号7の核酸配列からなるオリゴヌクレオチド(フォワードプライマー)及び配列番号8の核酸配列からなるオリゴヌクレオチド(リバースプライマー)の組み合わせが挙げられ、プローブとして、配列番号9の核酸配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。
MINT25遺伝子のシトシンメチル化の頻度を測定するためのプライマーセットとして、配列番号10の核酸配列からなるオリゴヌクレオチド(フォワードプライマー)及び配列番号11の核酸配列からなるオリゴヌクレオチド(リバースプライマー)の組み合わせが挙げられ、プローブとして、配列番号12の核酸配列からなるオリゴヌクレオチドが挙げられる。
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。ただし、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
(実施例1)
オリンパス製内視鏡装置(EVIS LUCERAシリーズ)を用いて、早期胃癌の罹患者に対して内視鏡的粘膜切除術(EMR:endoscopic mucosal resection)及び内視鏡的粘膜剥離術(ESD:endoscopic submucosal dissection)を施し、早期胃癌を内視鏡的に治療した。治療の前後において、患者の胃粘膜洗浄液を回収して試料とした。
内視鏡観察前に、粘液溶解除去剤(プロナーゼ(登録商標)MS 2万単位、重曹1g及びガスコン(登録商標)ドロップ4mL(ジメチコン80mg含有)に対し、常水100mL以上)を投与した。内視鏡観察により、粘液溶解除去剤に溶けた粘液を内視鏡により吸引除去した。その後、生理食塩水(大塚製薬)により、胃粘膜を洗浄することで得られる胃粘膜洗浄液(国際公開第2007/132844号に記載)を内視鏡ボトル(フォルテグロウメディカル(株)製、医療機器届出番号09B1X00004000138)により採取した。この胃粘膜洗浄液を50mL遠沈管に取り分け、遠心機により1500G、10分間遠心し、上清を除去後、胃粘膜洗浄液に含まれる胃粘膜細胞を得た。
この細胞を4.5mLのSDS・EDTA・Tris溶液中に再懸濁した。これに、10%SDSを0.5mL及び20mg/mLのプロテナーゼK(タカラバイオ株式会社、Code No.9033)を50mL加え、55℃で1時間インキュベートした。フェノール(UltraPure Buffer−Saturated Phenol、Invitrogen Life Technologies)を5mL加え、転倒混和後、2700rpm、4℃で15分遠心分離し、上清を新しいチューブへ移した。この操作をさらに1〜2回繰り返し、溶媒を同量のクロロホルム(和光純薬工業株式会社)に変えてさらに1〜2回繰り返した。グリコーゲン5mL(Ambion、Cat#9510)及び100%エタノール9mLを加え、転倒混和後、4℃にて12時間インキュベートした。その後、検体を2700rpmで、4℃で15分遠心分離して上清を捨て、ペレットを70%エタノール10mLに懸濁後、2700rpm、4℃で15分遠心分離し、上清を捨て、精製水200mLに溶解し、DNA分析試料を得た。
テストセット6症例を用い、同様に処理したDNA分析試料について、MCAM(Methylated CpG Island Amplification Microarray)法により、早期胃がん診断に有効な候補遺伝子を選出した。その後、検証セット64症例を用いて、候補遺伝子メチル化異常をESD前後で比較した。
MCAM法は、メチル化シトシン感受性制限酵素による処理を行うことにより選択的にメチル化DNA断片を遺伝子網羅的にサンプルDNAから採取することが可能となる。その増幅したDNAにマイクロアレイ技術を応用することにより、網羅的なメチル化を可能にしたものである(Genome Res. 2007 Oct;17(10):1529−36. Epub 2007 Sep 4、CSH Protoc. 2008 Mar 1;2008:pdb.prot4974. doi: 10.1101/pdb.prot4974.)。
その結果を図2に示す。図2は、ESD前のメチル化の頻度をESD後のメチル化の頻度で割った値を示している。赤色はESD手術前にメチル化の頻度が高いことを示し、ESD手術による胃癌切除後にメチル化の頻度が低下している遺伝子である。(a)はアレイ上の全遺伝子の結果を示し、(b)はESD後にメチル化の頻度が低下した遺伝子を選びだした結果を示している。BARHL2、SOX17、PTPRN2、SLC2A9、PACAP、IFNGR2、CYP26C1、LRPC4、SOX9、has−mir−365−1及びhas−nir−193bの部分で高い値を示していることから、ESD手術により胃癌を除去することで、これらの遺伝子のメチル化の頻度が低下したことを示している。これらの遺伝子の中でも、BARHL2遺伝子は、ピロリ菌感染者及びピロリ菌非感染者の区別無く、メチル化の頻度が低下することが分かった。
(実施例2)
サンプルDNAに対してバイサルファイト処理を行った後、BARHL2遺伝子プロモーター領域に存在するCpG配列の部分をターゲットしたビオチン化プライマーによりPCRを行った。得られたPCR産物を、アガロースゲルを用いた電気泳動にて確認した後、パイロシークエンサーを用いてメチル化頻度解析を行った。様々な種類の胃癌細胞におけるBARHL2遺伝子のメチル化頻度の測定を行い、またBARHL2遺伝子のmRNAを用いて逆転写酵素によるcDNAを合成した後、RNA量を測定し、GAPDH遺伝子のmRNA発現量で規格化した。胃癌細胞として、MKN1、MKN7、MKN45、MKN74、NUGC3及びKatoIIIを用いた。結果を図3に示す。メチル化頻度が高い細胞(MKN7及びMKN45)では、BARHL2遺伝子のmRNA発現量が低いことが分かった。
メチル化頻度が高い細胞を、COインキュベーター内で培養し、DNA脱メチル化剤である5−Aza−dC(5−aza―2’−deoxycytidine;1mM又は5mM)を24時間後、48時間後及び72時間後に添加し、96時間後に細胞を回収しRNAを抽出した。cDNAを合成した後、添加の有無によるBARHL2遺伝子のmRNA発現量を調べた。結果を図4に示す。脱メチル化剤の添加により、BARHL2遺伝子のmRNA発現量が増加することが分かった。このことから、メチル化によってBARHL2遺伝子の発現が抑制されていることが分かった。
(実施例3)
胃炎、胃腺腫及び胃癌の胃粘膜組織断片を用いて、核染色及びBARHL2抗体染色を行い比較した。DAPI染色(Boehringer Mannheim GmbH(ベーリンガーマンハイム Cat. No.236−276)(青)、BARHL2抗体(SIGMA−ALDRICH Anti−BARHL2 AV31981)染色(緑)、両者を重ね合わせた像(Merge)を図5及び図6示す。図5は胃炎及び胃腺腫の結果を、図6は胃癌の結果を示す。なお、図6では、ヘマトキシリン・エオシン染色(HE)の結果もあわせて示した。図5から明らかなように、胃炎及び胃腺腫の胃粘膜組織断片では、BARHL2タンパク質が存在している。しかしながら、図6から明らかなように、胃癌の胃粘膜組織断片では、BARHL2タンパク質が少ないことが分かる。このことから、胃癌細胞では、BARHL2のメチル化の頻度が高くなり、それによってBARHL2遺伝子の発現(転写及び翻訳)が抑制されていることが分かった。
(実施例4)
早期胃癌患者について、ESD治療の前後における各遺伝子のメチル化頻度を測定した。DNA分析試料をバイサルファイト処理し、MINT25遺伝子、BRAHL2遺伝子又はSOX17遺伝子のプロモーター領域に特異的なプライマーを用いPCR(ビオチン化)を行い、増幅ビオチン化断片をメチル化解析に用いた。パイロシークエンス法により、CG配列の部分に特異的な解析プログラムを組み、メチル化の頻度を測定した(キアゲン社、PyroMark Q24)。結果を図7に示す。(a)はMINT遺伝子、(b)はBARHL2遺伝子、(c)はSOX17遺伝子の結果を示す。すべての遺伝子について、胃癌切除後であるESD手術後のメチル化の頻度が顕著に低下した。このことから、BARHL2遺伝子のメチル化の頻度を測定することで、胃癌のリスク検査が可能となると考えられる。さらに、BARHL2遺伝子のメチル化の頻度に加えて、SOX17遺伝子及び遺伝子MINT25遺伝子の少なくとも一方のメチル化の頻度を考慮することで、より精度の高い早期胃癌の検出及び胃癌発症のリスク評価に繋がると考えられる。

Claims (6)

  1. 胃癌の検出又は胃癌発症のリスク評価のための指標を得る方法であって、
    被験者から採取した検体における、BARHL2遺伝子の発現量及びシトシンメチル化頻度の少なくとも一方を測定する工程を含み、
    BARHL2遺伝子の発現量及びシトシンメチル化頻度の少なくとも一方を胃癌の検出又は胃癌発症のリスク評価の指標とする、
    方法。
  2. 被験者から採取した検体における、SOX17遺伝子及びMINT25遺伝子の少なくとも一方の発現量及びシトシンメチル化頻度の少なくとも一方を測定する工程を含み、
    BARHL2遺伝子の発現量及びシトシンメチル化頻度の少なくとも一方と、SOX17遺伝子及びMINT25遺伝子の少なくとも一方の発現量及びシトシンメチル化頻度の少なくとも一方とを、胃癌の検出又は胃癌発症のリスク評価の指標とする、
    請求項1に記載の方法。
  3. 検体が、胃粘膜洗浄液、生検、胃液、血液又は糞便である、請求項1又は2に記載の方法。
  4. 検体が、胃粘膜洗浄液である、請求項3に記載の方法。
  5. BARHL2遺伝子のシトシンメチル化頻度を測定するキットであって、
    配列番号1の核酸配列を含み、40塩基以下の長さを有するオリゴヌクレオチド及び配列番号2の核酸配列を含み、40塩基以下の長さを有するオリゴヌクレオチドからなるプライマーセットと、
    配列番号3の核酸配列を含み、30塩基以下の長さを有するオリゴヌクレオチドからなるプローブと、を含む、キット。
  6. プライマーセットが、配列番号4の核酸配列からなるオリゴヌクレオチド及び配列番号5の核酸配列からなるオリゴヌクレオチドからなり、
    プローブが、配列番号6の核酸配列からなるオリゴヌクレオチドからなる、
    請求項5記載のキット。
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