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JP2014018184A - 画像解析による多能性幹細胞の評価方法 - Google Patents

画像解析による多能性幹細胞の評価方法 Download PDF

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JP2014018184A JP2012162655A JP2012162655A JP2014018184A JP 2014018184 A JP2014018184 A JP 2014018184A JP 2012162655 A JP2012162655 A JP 2012162655A JP 2012162655 A JP2012162655 A JP 2012162655A JP 2014018184 A JP2014018184 A JP 2014018184A
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味 慎 一 五
Akinori Ozaki
則 尾▲崎▼成
Tomoaki Kurakazu
員 智 瑛 倉
Shin Kawamata
伸 川真田
Naoki Nishishita
下 直 希 西
Chiemi Takenaka
中 ちえみ 竹
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Abstract

【課題】本発明は、熟練した技術者の判断によらず、簡便に多能性幹細胞の分化状態、すなわち、良否を評価する方法を提供することを目的とする。本発明はまた、分化を開始した多能性幹細胞を自動判定する方法を提供することを目的とする。
【解決手段】多能性幹細胞が形成するコロニーの画像に対して微分フィルタを適用し、得られた微分画像に基づいて、多能性幹細胞のコロニーの良否を評価する方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、多能性幹細胞のコロニーの画像を画像処理することにより、多能性幹細胞の良否を評価する方法に関する。本発明はまた、多能性幹細胞のコロニーの画像を画像処理することにより、多能性幹細胞のコロニーの良否を自動判定する方法にも関する。
多能性幹細胞は、あらゆる組織に分化しうるその分化多能性ゆえに、組織分化の研究、薬物試験および再生医療などの様々な分野で幅広く用いられている。特にiPS細胞の樹立以降、この分野における研究の発展は著しく、再生医療実現に向けた様々な取り組みが世界中でなされている。
ところで、多能性幹細胞は、分化しやすく、一度分化してしまうと多能性を失う可能性があるため、多能性幹細胞の培養は、多能性幹細胞の未分化状態の維持しながら行う必要があり、未分化状態の維持は、多能性幹細胞の培養において最も重要な要素の一つであるといえる。
未分化状態を維持するためには、分化を阻害する薬剤の使用や、分化を開始した多能性幹細胞の除去などが行われる。多能性幹細胞の大量調製において、最も大きな障害となりうる問題の一つは、分化を開始した多能性幹細胞の除去である。分化を開始した細胞の除去が不十分な場合には、周囲の細胞の分化を誘導して培養細胞全体に悪影響を及ぼす可能性があるが、多能性幹細胞の分化状態は、熟練した技術者によらなければ判断が難しいからである。このようなことから、多能性幹細胞の大量調製には自ずと限界がある。
そのため、少なくとも熟練した技術者の判断に依らずに多能性幹細胞の分化状態を確認する方法の開発や、分化を開始した多能性幹細胞を自動判定できる方法の開発が望まれていた。この点で、臭気センサを利用した幹細胞の多分化能の喪失の検出法(特許文献1)などが開発されているが複雑で大がかりな装置が必要であり、簡便な方法の開発が依然望まれている。
特開2010−246441号公報
本発明は、熟練した技術者の判断によらず、簡便に多能性幹細胞の分化状態、すなわち、良否を評価する方法を提供することを目的とする。本発明はまた、多能性幹細胞の良否を自動判定(以下、単に「判定」ということがある)する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、接着培養中に多能性幹細胞が形成するコロニーの顕微鏡画像に対して、微分フィルタ処理を行って得た画像に基づいて、未分化の良好な多能性幹細胞が形成するコロニーと分化を開始した不良な多能性細胞が形成するコロニーの判別が可能であることを見出した。本発明は、このような知見に基づくものである。
すなわち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1)多能性幹細胞が形成するコロニーの画像の微分フィルタ処理画像(微分画像)に基づいて、多能性幹細胞のコロニーの良否を評価する方法。
(2)多能性幹細胞の微分画像から得られた画像パターンに基づいてコロニーの良否を評価する、上記(1)に記載の方法。
(3)微分画像から、各画素の階調に従って画素毎に数値化を行い、次いで、コロニー中心部の数値と、場合によってはその周辺部の数値とに基づいてコロニーの良否を評価する、上記(1)に記載の方法。
(4)微分画像から、各画素の階調に従って画素毎に数値化を行い、次いで、得られた数値分布に基づいてコロニーの良否を評価する、上記(1)に記載の方法。
(5)微分画像から、各画素の階調に従って画素毎に数値化を行い、次いで、コロニーの数値分布に対して予め作成した少なくとも1種類のフィット関数を、評価対象のコロニーの数値分布に対してカーブフィットすることによりそのコロニーの良否を評価する、上記(4)に記載の方法。
(6)予め作成したフィット関数が、
凸形状を表すフィット関数(fgood関数)、および/または、
コロニーの中心部で凹形状を表し、かつ、その周辺部で凸形状を表すフィット関数(fbad関数)
を含んでなる少なくとも1種類のフィット関数である(但し、コロニー中心部を通る直線の位置を平面直交座標系の横軸(X軸)とし、数値分布(Y軸)を縦軸としてフィット関数のグラフを作成する)、上記(5)に記載の方法。
(7)予め作成したフィット関数が、fgood関数とfbad関数とを含んでなる少なくとも2種類のフィット関数である、上記(6)に記載の方法。
(8)fbad関数が、
(条件B1)x→−∞およびx→∞の極限において収束する、
(条件B2)コロニー内では任意の実数xに対して0以上となる、および、
(条件B3)コロニー内では1つの極小値と2つの極大値を有する
から選択されるいずれか1つ、2つまたはすべての条件を満たす、上記(6)または(7)に記載の方法。
(9)fbad関数が、


、および、
からなる群から選択される、上記(6)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)前記fbad関数が、
である、上記(9)に記載の方法。
(11)fgood関数が、
(条件G1)x→−∞およびx→∞の極限において収束する、
(条件G2)コロニー内では任意の実数xに対して0以上となる、および
(条件G3)コロニー内では1つの極大値を有する
から選択されるいずれか1つ、2つまたはすべての条件を満たす、上記(6)〜(10)のいずれかに記載の方法。
(12)fgood関数が、

、および、
からなる群から選択される、上記(6)〜(11)のいずれかに記載の方法。
(13)前記fgood関数が、
である、上記(12)に記載の方法。
(14)カーブフィットすることにより得られる少なくとも1種類の近似曲線と、評価対象のコロニーの数値分布とのずれの程度を指標としてコロニーの良否を評価する、上記(6)〜(13)のいずれかに記載の方法。
(15)カーブフィットすることにより得られる少なくとも1種類の近似曲線から抽出したパラメータを指標としてコロニーの良否を評価する、上記(6)〜(14)のいずれかに記載の方法。
(16)パラメータが、コロニー内における、fgood関数の最大値、fbad関数の最大値、fbad関数の極小値、実測値の最大値および実測値の最小値からなる群から選択される1以上のパラメータである、上記(15)に記載の方法。
(17)2つのパラメータの和、差、積または比を指標としてコロニーの良否を評価することを含んでなる、上記(15)または(16)に記載の方法。
(18)2つのパラメータの和、差、積または比の値と、別の2つのパラメータの組み合わせにおける2パラメータの和、差、積または比の値との、和、差、積または比を指標としてコロニーの良否を評価することを含んでなる、上記(17)に記載の方法。
(19)パラメータが、コロニー内における、fgood関数の最大値、fbad関数の最大値およびfbad関数の極小値からなる群から選択される2つのパラメータである、上記(17)または(18)に記載の方法。
(20)近似曲線から、コロニー毎に算出される以下の4つのパラメータ:
パラメータA:fgood関数の中心部の値とfbad関数の極小値の差、
パラメータB:fbad関数の最大値と極小値の差、
パラメータC:実測値の最大値とコロニー中心部での実測値の最小値の差、および
パラメータD:コロニー内のfgood関数と実測値の差の二乗平均
からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータに基づいてコロニーの良否を評価する、上記(18)に記載の方法。
(21)パラメータA〜Dから選択される2以上のパラメータを重み付けして加算して得られる数値に基づいて評価する、上記(20)に記載の方法。
(22)上記(1)〜(20)のいずれかに記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
(23)上記(22)に記載のプログラムを記録したコンピュータに読み取り可能な記録媒体。
(24)上記(22)に記載のプログラムを内部記憶装置に記録したコンピュータ。
(25)上記(24)に記載のコンピュータを備えた、多能性幹細胞のコロニーの良否の自動判定システム。
本発明は、染色などの細胞への操作が必要とされず、多能性幹細胞のコロニーの画像のみに基づいて評価することができる点で有利である。本発明は、画像処理および画像解析は全自動化が可能である点でさらに有利である。
図1は、iPS細胞が形成するコロニーの画像に対して各種の微分フィルタを適用した結果を示す図である。図1Aは、熟練した技術者により未分化である(良好)と判断されるiPS細胞コロニーのSobelフィルタ処理画像を示し、図1Bは、熟練した技術者により分化を開始している(不良)と判断されるiPS細胞コロニーのSobelフィルタ処理画像を示す。図1C〜Jは、不良と判断されるiPS細胞コロニーのSobel二次微分フィルタ処理画像(図1C)、5×5Sobelフィルタ処理画像(図1D)、Prewittフィルタ処理画像(図1E)、グラージェントフィルタ処理画像(図1F)、Max−Minフィルタ処理画像(図1G)、Robertsフィルタ処理画像(図1H)、Robinsonオペレータ処理画像(図1I)、Kirschフィルタ処理画像(図1J)、Scharrオペレータ処理画像(図1K)、ラプラスフィルタ処理画像(図1L)、および改変したラプラスフィルタ処理画像(図1M)を示す。図1はすべて、微分フィルタ処理の後に20×20ピクセルの平均化処理、バックグラウンド除去処理およびコントラスト調整を行った後に、40×40画素の画像とした。 図2は、熟練した技術者により未分化(良好)と判断されたiPS細胞コロニーの画像処理の過程を示す図である。図2Aは、位相差顕微鏡画像を示し、図2Bは、Sobelフィルタ処理後、20×20ピクセルの平均化処理、バックグラウンド除去処理およびコントラスト調整を行って得た画像を示し、図2Cは、図2Bから得たマスクの画像を示し、図2Dは、図2Bをマスク処理した画像を示し、図2Eは、胚様体状部分の抽出画像を示し、図2Fは、図2Dと図2Eの合成画像の解像度を40×40画素にした画像を示し、図2Gは、図2Fを数値化して得た40×40の行列を示す。 図3は、熟練した技術者により分化を開始した(不良)と判断されたiPS細胞コロニーの画像処理の過程を示す図である。図3Aは、位相差顕微鏡画像を示し、図3Bは、Sobelフィルタ処理後、20×20ピクセルの平均化処理、バックグラウンド除去処理およびコントラスト調整を行って得た画像を示し、図3Cは、図3Bから得たマスクの画像を示し、図3Dは、図3Bをマスク処理した画像を示し、図3Eは、胚様体状部分の抽出画像を示し、図3Fは、図3Dと図3Eの合成画像の解像度を40×40画素にした画像を示し、図3Gは、図3Fを数値化して得た40×40の行列を示す。 図4は、胚様体状部分を含むコロニーの画像処理の過程を示す図である。図4Aは、位相差顕微鏡画像を示し、図4Bは、Sobelフィルタ処理後、20×20ピクセルの平均化処理、バックグラウンド除去処理およびコントラスト調整を行って得た画像を示し、図4Cは、図4Bから得たマスクの画像を示し、図4Dは、図4Bをマスク処理した画像を示し、図4Eは、胚様体状部分の抽出画像を示し、図4Fは、図4Dと図4Eの合成画像の解像度を40×40画素にした画像を示し、図4Gは、図4Fを数値化して得た40×40の行列を示す。 図5は、良好と判断されたiPS細胞コロニーの微分画像に見られる典型的な階調の数値分布(図5A)および不良と判断されたiPS細胞コロニーに見られる典型的な階調の数値分布(図5B)を示す図である。図5AおよびBでは、それぞれの数値分布に対してカーブフィットしたfgood(x)およびfbad(x)が示されている。 図6は、パラメータA〜Dを説明するための図である。 図7は、パラメータA〜EとiPS細胞コロニーの分化状態とを対比させた図である。 図8は、パラメータA〜Eのそれぞれを用いた場合の、良好なiPS細胞コロニーの回収率と不良なiPS細胞コロニーの混入率の関係を示した図である。すなわち、図8A〜Eは、良好なiPS細胞コロニーの回収率を横軸とし、不良なiPS細胞コロニーの混入率を縦軸として示している。
発明の具体的な説明
本発明において多能性幹細胞の評価は、コロニー毎に行うことができる。すなわち、本発明によれば、多能性幹細胞の評価は、コロニー毎に多能性幹細胞の分化状態を評価することにより(すなわち、コロニー毎にコロニーの良否を評価することにより)行うことができる。ここで、良好なコロニーは、分化を開始した細胞を含まない(未分化の細胞から構成される)と評価されるコロニーであり、不良なコロニーは、分化を開始した細胞を含むと評価されるコロニーである。
本発明の方法は、多能性幹細胞が形成するコロニーの画像の微分フィルタ処理画像(微分画像)に基づいて、多能性幹細胞のコロニーの良否を評価する方法である。本発明によれば、多能性幹細胞のコロニーの良否の評価は、(A)多能性幹細胞のコロニーの画像を取得すること(画像の取得)、(B)工程(A)で得られた画像を微分フィルタ処理して微分画像を得ること(画像の処理)、および(C)工程(B)で得られた微分画像に基づいて多能性幹細胞のコロニーの良否を評価すること(画像解析)により行うことができる。以下、工程(A)、工程(B)および工程(C)に分けて本発明の評価方法を具体的に説明する。
(A)多能性幹細胞のコロニーの画像の取得
本発明によれば、接着培養中の多能性幹細胞が形成するコロニーの画像は、例えば、光学顕微鏡を用いて顕微鏡画像として取得することができる。光学顕微鏡としては、透過観察型顕微鏡を用いることができ、好ましくは、明視野顕微鏡、暗視野顕微鏡、位相差顕微鏡および微分干渉顕微鏡などを用いることができる。多能性幹細胞(特にiPS細胞)の観察の観点では、特に位相差顕微鏡が好ましく用いられる。コロニーの画像は、CCDカメラやCMOSカメラなどのカメラを用いてコンピュータ等に取り込み、その後、電子的に処理することができる。コロニーの画像は、3.2μm/ピクセル以下、好ましくは、1.6μm/ピクセル以下の解像度であることが好ましく、上記解像度を有する限り、必ずしも顕微鏡を用いて取得する必要はない。
本発明で用いられる「多能性幹細胞」は、三胚葉のいずれの由来の細胞にも分化する能力を有する細胞を意味し、接着培養によりコロニーを形成する多能性幹細胞であれば、特に制限無く用いることができる。本発明で用いられる多能性幹細胞は、特に限定されないが、好ましくは、霊長類細胞や齧歯類細胞などの哺乳類の多能性幹細胞とすることができ、より好ましくは、ヒト、サル、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシまたはヤギの多能性幹細胞とすることができ、さらに好ましくは、ヒトの多能性幹細胞とすることができる。本発明で用いられる多能性幹細胞としては、胚性幹細胞(ES細胞)、誘導性多能性幹細胞(iPS細胞または人工多能性幹細胞)、Muse細胞(Multilineage-differentiating Stress Enduring Cell)、胚性腫瘍細胞(EC細胞)または、胚性生殖幹細胞(EG細胞)などの多能性幹細胞が挙げられ、好ましくは、ES細胞またはiPS細胞である。従って、本発明で用いられる多能性幹細胞は、好ましくは、哺乳類のES細胞若しくはiPS細胞であり、より好ましくは、霊長類若しくは齧歯類などのES細胞またはiPS細胞であり、さらに好ましくは、ヒト、サル、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ネコ、イヌ、ヒツジ、ブタ、ウシ若しくはヤギのES細胞またはiPS細胞であり、最も好ましくは、ヒトES細胞またはヒトiPS細胞である。本発明によれば、フィーダー細胞は用いても用いなくてもよい。
(B)多能性幹細胞のコロニーの画像の処理
本発明によれば、多能性幹細胞のコロニーの画像の処理は、
(B1)コロニーの画像を微分フィルタ処理して微分処理画像を得、得られた微分処理画像を、画像解析の精度を向上させるために、必要に応じて、下記工程(B1−a)、(B1−b)および/または(B1−c)
(B1−a)バックグラウンドを除去処理すること、
(B1−b)ピクセルの平均化処理を行うこと、
(B1−c)コントラスト調整を行うこと、
の処理に付することにより行うことができる。(得られた画像を画像1とする。)
工程(B1)により得られた画像1は、解析精度および解析速度の向上の観点から、必要に応じて、下記工程(B2)、(B3)および/または(B4)の処理に付することができる:
(B2)コロニーの画像からマスク(画像2)を作成し、作成したマスクを用いて、画像1をマスキングすること(得られたマスキング後の画像を画像3とする)、
(B3)画像1または3に対してコロニー中に存在する胚様体部分を除去する画像処理を行うこと(得られた除去後の画像を画像5とする)、
(B4)必要に応じて、画像1、3または5の解像度を低減させること(解像度を低減させた画像を画像6とする)。
工程(B)により得られた画像は、本明細書では、微分画像と呼ぶ。
以下、工程(B)の各工程を具体的に説明する。なお、以下で説明する画像処理はすべて、例えば、米国国立衛生学研究所(National Institute of Health;NIH)が無償提供する画像処理ソフトImageJ(http://rsbweb.nih.gov/ij/)などの画像処理ソフトを使用してコンピュータに実行させるができる。
(B1)画像の微分フィルタ処理
得られた画像は、微分フィルタを用いて画像処理を行うことができる。微分フィルタ処理は、カラー画像に対して行うこともできるが、解析を容易にするために、グレースケール画像に変換した後に行うことが好ましい。グレースケール画像は、特に限定されないが、1〜16ビットとすることができ、好ましくは、8〜16ビットであり、より好ましくは、8ビットである。微分フィルタとしては、一次微分フィルタおよび二次微分フィルタのいずれを用いてもよい。微分フィルタは、n×nの行列(nは2以上の自然数である)とすることができるが、好ましくは、nが、2、3、4または5の行列フィルタを用いることができ、より好ましくは3×3の行列のフィルタを用いることができる。このような微分フィルタは、当業者であれば適宜設計することができるが、例えば、微分フィルタとしては、特に限定されないが、
3×3のSobelフィルタ:
、5×5のsorbelフィルタ:
、Prewittフィルタ:
、グラージェントフィルタ:
、Robertsフィルタ:
、Robinsonオペレータ:
、Kirschフィルタ:
、対象ピクセルの周囲3×3ピクセル内における最大値と最小値の差をそのピクセルの値とするMax−Minフィルタ、
Scharrオペレータ、
、Sobel二次微分フィルタ:
並びに、ラプラシアンフィルタ:
などを挙げることができる。
また、当業者であれば、これらのフィルタを改変して作成した微分フィルタを用いてフィルタ処理を行うこともできる。例えば、ラプラシアンフィルタを適宜改変して、下記のような改変ラプラシアンフィルタ:
を作成し、微分フィルタとして用いてもよい。
微分フィルタ処理の方法は、当業者に周知であるが、例えば、縦方向および横方向の一次微分フィルタを用いる場合は、各ピクセルの値は、一般的には、一次微分フィルタで得られたそれぞれの値の二乗和の平方根として求められる。
微分フィルタ処理後は、画像解析の精度を向上させる目的で、適宜、(B1−a)バックグラウンド除去処理、(B1−b)ピクセルの平均化処理および/または(B1−c)コントラスト調整を行うことができる。ピクセルの平均化処理、バックグラウンド除去処理およびコントラスト調整は、その順番を問わず適宜行うことができる。得られた画像は、解析画像(画像1)として保存する。
(B1−a)バックグラウンド除去処理
バックグラウンド除去は、任意の工程であるが、その後の解析の精度を上げるために行うことが好ましく、特に限定されないが、例えば、Rolling Ballアルゴリズム(Stanley Sternberg, Biomedical Image Processing, IEEE Computer, 1893, January)を用いて行うことができる。
(B1−b)ピクセルの平均化処理
ピクセルの平均化は、任意の工程であり、その後の解析の精度を上げるために行うことが好ましく、特に限定されないが、例えば、画像に対して、周辺のn×n画素の平均値でそのピクセルの値を置き換えることにより平均化処理を行うことができ、nは、当業者であれば適宜設定することができ、例えば、nは20である。
(B1−c)コントラスト調整
コントラスト調整は、完全に任意の工程であり、行っても行わなくてもよいが、行う場合には、微分フィルタ処理、(1a)および(1b)の処理のいずれかの1以上の処理の後に続けて行うことができる。コントラスト調整の方法は、当業者に周知の方法を用いることができる。例えば、8ビットグレースケール画像の場合は、全ピクセルの階調の最大値を255に変換し、最小値を0に変換して、階調全域を有効に使えるようにコントラスト調整を行うことができる。
本発明では、例えば、微分画像処理の後に、(B1−c)コントラスト調整を行い、次いで(B1−b)ピクセルの平均化処理を行ってさらに(B1−c)コントラスト調整を行い、最後に(B1−a)バックグラウンド除去処理を行ってさらに(B1−c)コントラスト調整を行うことができる。
本発明では、工程(B1)により得られた画像1は、必要に応じて、下記工程(B2)〜(B4)の処理に付することができる。これらは、後の解析の精度または速度を向上させる観点で行うものであり、いずれも任意の工程である。これらの工程の順序は、特に限定されないが、好ましくは、工程(B2)、工程(B3)、工程(B4)の順に行うことができる。
(B2)マスキング処理
マスキング処理は、必須の工程ではないが、バックグラウンドを低減するために行うことができる。あるいは、解析画像に2つ以上のコロニーが含まれる場合には、一つ一つのコロニーを分けて解析するために行うことができる。
バックグラウンドを低減するためのマスキング処理は以下のように行うことができる。画像1を、さらにコントラスト調整により二値化して、フィーダー領域と多能性幹細胞領域とを分ける。この際、例えば、フィーダー領域を黒(または白)、多能性幹細胞コロニー領域を白(または黒)とすることができる。その後、多能性幹細胞コロニー内に生じ得る空隙を白(または黒)で埋める画像処理を行うことができる。得られた画像を用いて、画像1をマスキングして解析画像(画像3)を得てもよいが、複数の多能性幹細胞コロニーが近接して存在する場合には、さらにそれぞれのコロニーに対するマスクを作成してからマスキング処理を行うことができる。
一つ一つのコロニーを分けて解析するためマスキング処理は、以下のように行うことができる。例えば、ウォータシェッド細分化(Watershed)を行うと、つながっている2つ以上のコロニーを分離することができる。具体的には、画像のユークリッド距離地図(EDM)を計算し、最終的な浸食点(UEP)を見つけ、その縁を可能な限り拡大し、粒子の縁が到達するまで、若しくは他のUEPの領域の縁に到達するまで拡張して、つながっている2つ以上のコロニーを分離することができる。2つ以上の隣接するコロニーを分離した後は、それぞれのコロニーについてコロニー毎のマスク画像(画像2)を得ることができる。コロニー毎に作成したマスク(画像2)を用いて、画像1をコロニー毎にマスキングして、評価する多能性幹細胞コロニーのみを抽出し、解析画像(画像3)とすることができる。
(B3)胚様体状部分の画像処理
工程(B3)は、必ずしも工程(B2)マスキング処理の後に行う必要はないが、胚様体状部分を正確に抽出する観点で、工程(B2)の後に行うことが好ましい。多能性幹細胞は、播種後2日程度は、完全に展開できていない部分のあるコロニーを形成することがある。完全に展開できていない部分を本明細書では胚様体状部分と呼ぶが、胚様体状部分は、解析に悪影響を及ぼす可能性(例えば、良好なコロニーを不良なコロニーであると判定する可能性)があるため、画像処理により除去することができる。これにより、本発明では、胚様体部分を有するコロニーの解析精度が向上する。本発明による胚様体状部分の画像処理は、胚様体状部分を含むコロニーに対してのみ行ってもよいが、胚様体状部分を含むコロニーに限定して行う必要はなく、胚様体状部分を含まないコロニーに対して一括して行ってもよい。
胚様体状部分の画像処理は、以下のように行うことができる。まず、画像1または3において見られる空隙部分を画像の二値化により抽出することができる(画像4;図4E)。胚様体状部分は、急激かつ明確なコントラストの低下を伴うので、二値化の閾値は、当業者であれば容易に設定することができる。その後、抽出した画像4を画像3と合成することにより、胚様体状部分に由来する空隙を除去した画像(画像5)を得ることができる。画像4は、好ましくは、画像3における胚様体状部分の周辺の階調の平均値と一致させてから画像3と合成して解析画像(画像5)とすることができる。
(B4)解像度の低減処理
本発明によれば、コンピュータ等を用いた自動処理による解析速度を速めたいときには、得られた画像(画像1、3または5、好ましくは画像3または5)の解像度を低下させることができる(得られた画像を画像6とする)。この目的で、例えば、解析画像の画素をn×m画素にすることができる。nおよびmは、解析速度の観点からは画素数は小さい方が好ましいが、解析精度の観点からは画素数は大きい方がよく、所望の解析速度および解析精度に応じて適宜設定することができる。例えば、nおよびmは、同じでも異なっていてもよく、10〜200とすることができ、好ましくは、20〜100とすることができ、より好ましくは、30〜50とすることができる。解像度は、当業者に周知の方法を用いて低下させることができるが、周辺の画素の階調を平均化して画素を統合させることにより行う方法が用いられ得る。
(C)画像解析
本発明によれば、工程(B)により得られた微分画像に基づいて、多能性幹細胞のコロニーの良否を評価することができる。具体的には、本発明によれば、多能性幹細胞のコロニーの良否の評価は、以下:
(C1)得られた微分画像(画像1、3、5または6)の画像パターンに基づいて多能性幹細胞のコロニーの良否を評価すること、または
(C2)得られた微分画像(画像1、3、5または6)から、各画素の階調に従って、画素毎に数値化を行い、各画素の数値または数値分布を算出し、次いで、
(C2−1)コロニー中心部の数値と、場合によっては、その周辺部の数値とに基づいてコロニーの良否を評価すること、
(C2−2)数値分布に基づいてコロニーの良否を評価すること、若しくは
(C2−3)任意のコロニーに対して予め作成した少なくとも1種類のフィット関数を、評価対象のコロニーの数値分布に対してカーブフィットして、コロニーの良否を評価すること
により行うことができる。本発明の工程(C)は、統計分析ソフトなどを用いてコンピュータに実行させることができる。以下、工程(C1)と工程(C2)に分けて説明する。
(C1)微分画像の画像パターンに基づく多能性幹細胞のコロニーの良否評価
画像処理後は、得られた微分画像(画像1、3、5または6、好ましくは、画像3、5または6、より好ましくは、画像6)を対比させて、画像パターンに基づいて多能性幹細胞のコロニーの良否を評価することができる。具体的には、例えば、得られた画像のパターンに基づいて、全体的に均一であるか、中心部で濃い画像パターンを示すコロニーを良好なコロニーであると評価し、リング状に中心部が薄く抜けたパターンを示すコロニーを不良なコロニーであると評価することにより、多能性幹細胞のコロニーの良否の評価を行うことができる。多能性幹細胞のコロニーの良否の評価は、目視により行うこともできるが、自動化の観点では、コンピュータを用いて行うことが好ましい。コンピュータ等を用いて多能性幹細胞のコロニーの良否の評価を行う場合には、既知のパターン認識アルゴリズムを用いて容易に判定を行うことができる。
(C2)微分画像の数値化による多能性幹細胞のコロニーの良否評価
工程(C2)ではまず、工程(B)で得られた微分画像から、各画素の階調に従って、画素毎に数値化を行い、各画素の数値または数値分布を算出する。具体的には、得られた微分画像(画像1、3、5または6、好ましくは、画像3、5または6、より好ましくは、画像6)は、コロニーの一部の画素を抽出して数値化してもよいし、コロニー全体の画素をすべて数値化してもよい。コロニーの一部の画素を抽出する方法としては、特に限定されないが、コロニーの中心部の画素を抽出する方法、並びに、コロニーの中心部および周辺部の画素を抽出する方法などを挙げることができる。数値化は、各画素の階調に基づき行うことができ、nビットのグレースケール画像であれば、2階調で行うことができる。例えば、8ビットのグレースケール画像であれば、数値化は256階調で行うことができる。なお、コンピュータ等を用いた自動処理による解析速度を速めたいときには、この工程においても、工程(B)(4)の画像解像度の低減処理と同様の平均化処理を行うことにより、データ数を低減させることができる。
このように得られた各画素の数値および数値分布は工程(C2−1)、工程(C2−2)または工程(C2−3)に付されて、コロニーの良否の評価が行われる。以下、工程(C2−1)、工程(C2−2)および工程(C2−3)に分けて具体的に説明する。
(C2−1)各画素の数値に基づく多能性幹細胞のコロニーの良否評価
工程(C2−1)では、微分画像から得られた各画素の数値に基づいて多能性幹細胞のコロニーの良否を評価することができる。具体的には、コロニー中心部の数値と、場合によっては、その周辺部の数値とに基づいて、コロニーの良否を評価することができる。
コロニー中心部の数値に基づくコロニーの良否の評価は以下のように行うことができる。すなわち、コロニーの中心部の1領域における数値を測定し、コロニー間でその大小を比較することにより、コロニーの良否を評価することができる。具体的には、中心部の数値が高いコロニーを良好なコロニーであると評価し、中心部の数値が低いコロニーを不良なコロニーであると評価することができる。評価の際には、閾値を定めて、中心部の数値が閾値を超えるコロニーを良好なコロニーであると判定し、閾値以下であるコロニーを不良なコロニーであると判定することもできる。本発明によれば、閾値を高く設定すると、不良なコロニーの混入率は低減するが、良好なコロニーの回収率も低減する傾向がみられる。また、閾値を低く設定すると、良好なコロニーの回収率は増加するが、不良なコロニーの混入率も増加する傾向が見られる。従って、当業者であれば、良好なコロニーの回収率と不良なコロニーの混入率に応じて、適宜閾値を設定することができる。
また、コロニー中心部の数値とその周辺部の数値に基づくコロニーの良否の評価は以下のように行うことができる。すなわち、コロニー中心部の少なくとも1領域とその周辺部の少なくとも1領域の数値から、コロニーの良否を評価することもできる。具体的には、中心部の数値が低く、その周辺部の数値が高いコロニーを不良なコロニーであると評価することができ、中心部の数値が、その周辺部の数値よりも高いコロニーや周辺部の数値と同等のコロニーを良好なコロニーであると評価することができる。このように、本発明によれば、工程(C2)の冒頭で得られた数値に基づいて多能性幹細胞のコロニーの良否を評価することができる。評価の際には、閾値を定めて、中心部の数値が閾値を超えるコロニーを良好なコロニーであると判定し、閾値以下であるコロニーを不良なコロニーであると判定することもできる。
本明細書においてコロニーの「中心部」は、例えば、コロニーを円に見立てたときに、半径がコロニーの半径の3/4、好ましくは、2/3、より好ましくは、1/2、さらに好ましくは、1/3、最も好ましくは、1/4の半径の同心円の内部の領域とすることができる。また、「その周辺部」とは、コロニーの中心部の周辺部のことを意味し、コロニーの内部である。例えば、「その周辺部」は、コロニーを円に見立てたときに、コロニー中心部の外側 で、半径がコロニーの半径の1/4、1/3、1/2、2/3、または、3/4の半径の同心円の外側であり、かつ、コロニーの内側の領域とすることができる。「その周辺部」はリング状の領域であってもよく、例えば、半径がコロニーの半径の1/4〜3/4、1/3〜2/3、または1/2〜2/3の半径の同心円に挟まれるリング状の領域とすることができる。円の式は、最小二乗法によりコロニーの輪郭に対してカーブフィットすることにより求めることができる。本発明によれば、コロニーの「中心部」(または「中心部の1領域」)は、好ましくはコロニーの中心部の1点である。コロニーの中心部の1点は、ある一定のルールに基づいて求められる1点であれば良く、特に限定されないが、コロニーの中心は、例えば、上記円の中心として求めることができる。なお、コロニーの中心は、例えば、工程(B)(2)のウォータシェッド細分化におけるUEPとして求めることもできる。
(C2−2)数値分布のパターンに基づく多能性幹細胞のコロニーの良否評価
工程(C2−2)では、微分画像から得られた数値分布に基づいて多能性幹細胞のコロニーの良否を評価することができる。微分画像から得られた数値分布に基づく多能性幹細胞のコロニーの良否の評価は、以下のように行うことができる。すなわち、細胞の数値分布をコロニーの中心部を通る直線に沿って算出し、その数値分布をコロニー間で比較することによってコロニーの良否を評価することができる。数値分布の比較は、例えば、数値分布をグラフ化して行うことができる。数値分布のグラフ化は、特に限定されないが、例えば、平面直交座標系において数値を縦軸とし、コロニー中心部を通る直線を横軸として、その分布を、例えば、棒グラフや点グラフとして表すことにより行うことができる。このようにして得られた数値分布は、良好な多能性幹細胞コロニーでは、凸形状を示し、不良なコロニーではコロニーの中心部で凹形状を示すので、得られた数値分布のパターンに基づいて多能性幹細胞のコロニーの良否を評価することができる。多能性幹細胞のコロニーの良否の評価は、目視により行うこともできるが、自動化の観点では、コンピュータを用いて行うことが好ましい。コンピュータ等を用いて多能性幹細胞のコロニーの良否の評価を行う場合には、既知のパターン認識アルゴリズムを用いて容易に判定を行うこともできる。
(C2−3)数値分布に対する近似式に基づく多能性幹細胞のコロニーの良否評価
工程(C2−3)では、任意のコロニーの中心部を通る直線に沿って得られる数値分布に対して予め作成した少なくとも1種類のフィット関数を、評価対象のコロニーの数値分布に対してカーブフィットして、多能性幹細胞のコロニーの良否を評価することにより行うことができる。具体的には、熟練した技術者により良好と判断されたコロニーおよび/または不良と判断されたコロニーの数値分布に対して予めフィット関数を作成し、得られた少なくとも1種類のフィット関数を用いて評価対象のコロニーの数値分布に対してカーブフィットすることにより、コロニーの良否の評価を行うことができる。例えば、予め作成したフィット関数は、カーブフィットするためのパラメータを含み、 熟練した技術者により良好と判断されたコロニーおよび/または不良と判断されたコロニーの細胞密度分布を表すように作成することができる。このようなフィット関数や近似曲線は、当業者であれば細胞密度分布の形状を参考にして適宜作成することができる。フィット関数中のパラメータ数は、特に限定されないが、例えば、2〜10個程度とすることができる。カーブフィットは、例えば、最小二乗法を用いて行うことができる。
熟練した技術者により良好と判断されたコロニーから得られる数値分布に対するフィット関数としては、例えば、コロニー中心部を通る直線の位置を平面直交座標系の横軸(X軸)とし、数値を縦軸(Y軸)としてフィット関数(y=f(x))のグラフを作成した場合に、凸形状を表すフィット関数(fgood関数)が挙げられる。本明細書では、「凸形状」とは、曲線のグラフが、良好なコロニーの数値分布(例えば、図5A)により表される凸形状を意味する。凸形状の関数の一例としては、特に限定されないが、例えば、xがxより小さいときには単調増加し、ある実数xにおいて極大値をとり、xがxより大きいときには単調減少する関数が挙げられる。極大値は、xの近傍のxにおいてf(x)≧f(x)を満たすf(x)の値のことを意味する(xは任意の実数である)。したがって、本発明のある態様では、fgood関数は、x=xの1点において極大値をとる関数だけでなく、fgood関数はxが一定の範囲で一定値を示し、その一定値が極大値となっている関数、例えば、上底に対応する部分全体で極大値をとる台形型の関数であってもよい。より具体的には、fgood関数としては、例えば、直径1mmのコロニーにおいて、x=300μm〜700μmの範囲において一定値を示し、かつその一定値が極大値であり、かつ、x<300μmおよびx>700μmの範囲では極大値をとらない関数を挙げることができる。fgood関数は、評価したいコロニーにカーブフィットすると、好ましくは、良好なコロニーに対しては良好なフィッティングを示すが、不良なコロニーに対しては良好なフィッティングを示さない。
熟練した技術者により不良と判断されたコロニーの数値分布に対するフィット関数は、コロニーの中心部で凹形状を示し、かつ、その周辺部で凸形状を示すフィット関数(fbad関数)とすることができる。すなわち、fbad関数のグラフは、1つの凹形状が2つの凸形状の間に挟まれた形状を示す。本明細書では、「凹形状」とは、コロニー中心部の数値分布(例えば、図5B)により表される凹形状を意味する。凹形状の関数の一例としては、特に限定されないが、例えば、xがxより小さいときには単調減少し、ある実数xにおいて極小値をとり、xがxより大きいときには単調増加する関数、すなわち、コロニーの中心部でまたはxの全域で1つのみ極小値をとる関数が挙げられる(xは任意の実数である)。極小値は、xの近傍の任意のxにおいてf(x)≦f(x)を満たすf(x)の値のことを意味する。従って、fbad関数は、xが一定の範囲で一定値を示し、その一定値が1つの極大値または極小値をとってもよい。従って、「コロニー中心部で凹形状であり、かつその周辺部で凸形状である関数」は、一例では、xが増加すると共に、単調増加し、あるxで1つ目の極大値をとり、その後単調減少して、あるxで1つの極小値をとり、その後さらに単調増加し、あるxで2つ目の極大値をとり、その後単調減少する関数が挙げられる。また、本発明のある態様では、fbad関数は、xが一定の範囲で一定値を示し、その一定値が極大値または極小値となっている関数を表すように作成される。fbad関数は、評価したいコロニーにカーブフィットすると、好ましくは、不良なコロニーに対しては良好なフィッティングを示すが、良好なコロニーに対しては良好なフィッティングを示さない。
従って、本発明によれば、コロニーの数値分布に対するフィット関数を用いることにより、多能性幹細胞のコロニーの良否を評価することができる。
一般的に、カーブフィッティングの良好さは、カーブフィットにより得られた少なくとも1種類の近似曲線と、評価対象のコロニーの数値分布とのずれの程度を指標として評価することができる。従って、本発明では、カーブフィットにより得られた少なくとも1種類の近似曲線と、評価対象のコロニーの数値分布とのずれの程度を指標としてコロニーの良否を評価する方法が提供される。カーブフィットにより得られた近似曲線と評価対象のコロニーの数値分布とのずれ(近似曲線のフィッティングの良好さ)の程度は、当業者に周知の方法を用いて評価することができ、目視によって評価してもよいが、数学的手法を用いて評価してもよい。数学的手法を用いる場合には、特に限定されないが、近似曲線と評価対象のコロニーの数値分布とのずれの程度の指標として、例えば、χ/NDF(自由度=フィットしたデータ数−近似式のパラメータ数)を用い、その大小を比較することで多能性幹細胞の良否を判断することができる。あるいは、近似曲線と評価対象のコロニーの数値分布とのずれの程度の指標として、実測値と近似曲線との差の二乗和の平均を用い、その大小を比較することで多能性幹細胞のコロニーの良否を評価してもよい。χ/NDFおよび実測値と近似曲線との差の二乗和の平均は、カーブフィットのずれが少ないほど小さくなる傾向がある。従って、カーブフィットにより得られた少なくとも1種類の近似曲線と、評価対象のコロニーの数値分布とのずれの程度を指標として、χ/NDFまたは実測値と近似曲線との差の二乗和の平均の大小を用いて、多能性幹細胞のコロニーの良否を評価することができる。ここで例えば、χ/NDFや実測値または近似曲線との差の二乗和の平均に対して閾値を設定すると、閾値を小さくすればするほど良好と評価される不良なコロニーの割合が減少し、大きくすればするほど良好と評価される不良なコロニーの割合は増加する。従って、当業者であれば、良好なコロニーの回収率と不良なコロニーの混入率に応じて、適宜閾値を設定し、閾値を超えるか否かにより多能性幹細胞のコロニーの良否を判定することができる(下記、パラメータDに基づく評価方法も参照)。
このように、本発明によれば、予め作成したフィット関数が、凸形状を示すフィット関数(fgood関数)、および/または、コロニーの中心部で凹形状を示し、かつ、その周辺部で凸形状を示すフィット関数(fbad関数)を含んでなる、少なくとも1種類のフィット関数である(ただし、コロニー中心部を通る直線の位置を平面直交座標系の横軸とし、数値を縦軸としてフィット関数のグラフを作成する)、多能性幹細胞のコロニーの良否を評価する方法が提供される。評価に用いるフィット関数は、1種類であってもよいが、好ましくは、2種類以上であり、より好ましくは、熟練した技術者により良好と判断されたコロニーについて1種類以上と熟練した技術者により不良と判断されたコロニーについて1種類以上の計2種類以上とすることができる。従って、本発明によれば、予め作成したフィット関数が、凸形状を示すフィット関数(fgood関数)、および、コロニーの中心部で凹形状を示し、かつ、その周辺部で凸形状を示すフィット関数(fbad関数)を含んでなる少なくとも2種類のフィット関数である(ただし、コロニー中心部を通る直線の位置を平面直交座標系の横軸(X軸)とし、数値を縦軸(Y軸)としてフィット関数のグラフを作成する)、多能性幹細胞のコロニーの良否を評価する方法が提供される。
本発明によれば、数値分布は、コロニー外の細胞については考慮する必要が無い。従って、フィット関数は、少なくともコロニー内で良好な近似を示すものであれば十分である。fgood関数およびfbad関数は、コロニー外の領域では、一定値に収束する関数でも、発散する関数でも、振動する関数でもよいが、関数のコロニー外の領域での挙動により解析に影響が出る場合には、コロニー外の領域を排除してから解析を行うことが好ましく、この場合、例えば、数値分布の実測値が10以下、5以下または3以下の値、または0となる領域をコロニー外の領域と判断して排除することができる。また、近似対象がコロニーの画像から得られた数値分布であることを考慮すれば、本発明のfgood関数またはfbad関数は、好ましくは、コロニー内では常に0以上であり、かつコロニー外では0あるいは0に近い値をとる数値分布を表すように作成することができる。上記いずれの方法によっても、コロニー外の領域による解析の悪影響を低減することができる。
従って、本発明によれば、fgood関数は、好ましくは、凸形状を表す関数であり、かつ、下記条件:
(条件G1)x→−∞およびx→∞の極限において収束する、
(条件G2)コロニー内では任意の実数xに対して0以上となる、および
(条件G3)コロニー内では1つの極大値を有する
から選択されるいずれか1つ、2つまたはすべての条件を満たすように作成することができ、より好ましくは、すべての条件を満たすように作成することができる。本明細書では、「収束する関数」は、一定値、好ましくは、解析に悪影響を与えない程度に十分小さい値(例えば、以下、15以下、10以下、5以下、1以下の値、または0)に収束する関数である。上記条件G1〜G3のすべてを満たし、かつ凸形状を表すfgood関数としては、例えば、下記式のfgood関数:
(式中、A、A、bおよびcは、パラメータであり、xは変数である。)、
(式中、A、A、wおよびxは、パラメータであり、xは変数である。)、
(式中、A、A、a、a、xおよびxはパラメータであり、xは変数である。)
からなる群から選択される少なくとも1つの関数である。上記条件G1〜G3のすべてを満たし、凸形状を表すfgood関数としては、コロニーの中心部において関数値が一定であり、かつ極大値を示すように作成された関数(例えば、台形型の関数)も好適に用いられ得る。これらのfgood関数は、特にiPS細胞コロニーの良否の判断に好ましく用いられ得る。
本発明によれば、fbad関数は、コロニーの中心部で凹形状を表し、かつ、その周辺部で凸形状を表す関数(すなわち、2つの凸形状の領域に1つの凹形状の領域が挟まれている関数、あるいは、2つの極大値を示すxに1つの極小値を示すxが挟まれている関数)であり、好ましくは、下記条件:
(条件B1)x→−∞およびx→∞の極限において収束する、
(条件B2)コロニー内では任意の実数xに対して0以上となる、および、
(条件B3)コロニー内では1つの極小値と2つの極大値を有する
から選択されるいずれか1つ、2つまたはすべての条件を満たすように作成することができ、より好ましくは、すべての条件を満たすように作成することができる。例えば、コロニーの中心部で凹形状を表し、かつ、その周辺部で凸形状を表し、かつ、上記条件B1〜B3のいずれか1つ以上を満たすfbad関数は、例えば、下記式の関数fbad(x):
(式中、A、A、w、w、xおよびxは、パラメータであり、xは変数である。)、
(式中、A、A、w、w、w、xおよびxは、パラメータであり、xは変数である。)、
(式中、A、A、A、a、a、b、b、xおよびxは、パラメータであり、xは変数である。)、または、
(式中、A、A、A、A、A、xはパラメータであり、xは変数である。)
である。これらのfbad関数は、特にiPS細胞コロニーの良否の判断に好ましく用いられ得る。
本発明によればさらに、解析精度を向上させるために、コロニー全体の画素に基づいて、多能性幹細胞のコロニーの良否の評価を行うことができる。まず、解析の便宜上、数値化した各画素の数値は、例えば、数値行列としてひとまとまりに扱うことができる(例えば、図2G、図3Gおよび図4G)。得られた数値行列から、各行または各列の数値の一次配列を抽出し、それぞれの一次配列に対して、フィット関数をカーブフィットすることができる。カーブフィットは、一部の一次配列を抽出して行ってもよく、例えば、各コロニーについて、コロニーの中心部を通る直線に沿った一次配列を抽出して、その一次配列に対してのみを行ってもよいし、すべての一次配列に対して行ってもよい。
(C2−4)パラメータの設定とパラメータに基づく多能性幹細胞のコロニーの良否評価
本発明では、工程(C2−3)の後に、必要に応じて、さらに工程(C2−4)を行ってから、多能性幹細胞のコロニーの良否を評価することができる。すなわち、本発明によれば、コロニーの中心部を通る直線に沿って得られる数値分布に対してfgood関数およびfbad関数の両方をカーブフィットして、多能性幹細胞のコロニーの良否を評価することができるが、評価の際には、必要に応じて、さらにこれらの関数から1つ以上のパラメータを設定し、設定したパラメータを指標として評価してもよい。例えば、多能性幹細胞を評価するための指標となるパラメータとしては、コロニー内における、fgood関数の最大値、fbad関数の最大値、fbad関数の極小値、実測値の最大値および実測値の最小値などを挙げることができる。多能性幹細胞は、これらのパラメータのいずれか1つを指標として評価しても良いし、これらのパラメータのうちの2以上を組合せて指標として評価しても良い。パラメータを設定する際、または、組み合わせる際には、例えば、良好なコロニーと不良なコロニーの近似曲線のグラフの形状の違いを抽出できるようにパラメータを設定し、組み合わせることができる。特に、不良なコロニーの数値分布の近似曲線は、コロニー中心部において特徴的な凹形状を示す。従って、評価の際には、不良なコロニーの数値分布に特徴的な凹形状を対比できるようにパラメータを設定することが好ましく、例えば、特徴的な凹形状を反映するコロニー中心部の数値の実測値またはfbad関数による近似値は、コロニー良否の評価指標の有用なパラメータとして設定し得る。パラメータの組み合わせとしては、例えば、コロニー内におけるfgood関数の最大値、fbad関数の最大値および実測値の最大値のいずれか1以上と、コロニー内におけるfbad関数の極小値または実測値の最小値のいずれか1以上との組み合わせを挙げることができる。または、他のパラメータの組み合わせとしては、コロニー内におけるfgood関数の最大値、fbad関数の最大値およびfbad関数の極小値からなる群から選択される2以上のパラメータの組み合わせを挙げることができる。パラメータを組み合わせた後は、良好なコロニーと不良なコロニーの差異をより強調するように2以上のパラメータの和、差、積または比をとることができる。2以上のパラメータの和、差、積または比から新たなパラメータを作成し、他のパラメータと組み合わせて評価に用いることもできる。具体的には、多能性幹細胞のコロニーの良否を評価するための指標となるパラメータは、例えば、以下のように設定することができる。パラメータの和や差をとる場合には、重み付けを行うこともできるし、重み付けをせずに行うこともできる。
パラメータの組み合わせ方のより具体的な例としては、特に限定されないが、
パラメータA:コロニー中心部におけるfgood関数の値とfbad関数の値との差(好ましくは、fbad関数が極小値を取る箇所におけるfgood関数の値とfbad関数の値との差)、
パラメータB:コロニー内におけるfbad関数の最大値と極小値の差、
パラメータC:実測値の最大値とコロニー中心部での実測値の最小値との差、
パラメータD:コロニー内のfgood関数と実測値との差の二乗平均、
パラメータE:パラメータA+パラメータB+パラメータC+0.2×パラメータD
などを用いることができる。
上記パラメータA〜Eはすべて、未分化状態の良好な多能性幹細胞のコロニーでは小さく、分化を開始した不良な多能性幹細胞では大きくなるように適宜設定したものである。パラメータEは、パラメータA〜Dに重み付けをして加算したパラメータであるが、このような重み付けも当業者であれば適宜なし得るであろう。本発明では、パラメータは、良好なコロニーと不良なコロニーとの間で差が生じるようなパラメータである限り、上記パラメータA〜Eに関わらず、当業者であれば自在にパラメータを設定し、用いることができる。
本発明により、コロニー全体の画素に基づいて多能性幹細胞のコロニーの良否の評価を行う場合には、例えば、工程(C2−3)により得られた数値行列は、行毎および/または列毎に分解して、数値の一次配列にし、それぞれの一次配列に対して近似曲線をカーブフィットすることができる。カーブフィット後に、例えば、それぞれの一次配列からパラメータ(例えば、パラメータA〜E)を抽出すると、n行m列の数値行列の場合、各コロニーに対して、パラメータ毎にn+m個のパラメータが得られる。得られたn+m個のパラメータはそのまま評価に用いてもよいが、その場合には、例えば、パラメータの最大値(すなわち、コロニー全体の画像に基づくパラメータの最大値)をコロニー毎のパラメータ値とすることができる。あるいは、突発的な外れ値による解析への影響を少なくして評価の精度を向上させるために、さらに、以下のような平均化処理および/または平滑化処理を行ってから各パラメータの最大値を取得してもよい。すなわち、(x、y)成分の値が、x=xにおけるパラメータの値とy=yにおけるパラメータの値の相乗平均または相加平均となるように平均化処理をしてn行m列の数値行列を作成する。さらに突発的な外れ値による解析への影響を少なくするために、得られたn行m列の数値行列を平滑化することができる。平滑化は、例えば、特に限定されないが、
を用いてフィルタリングすることにより行うことができる。本発明では、特に斜めの成分との平均化が有効であり、本発明に用いられる平滑化のためのフィルタは当業者であれば適宜設定することができる。平均化処理および/または平滑化処理を行った後に、若しくは行わずに、数値行列の成分の最大値をパラメータ毎に算出し、これをもって、コロニー毎のパラメータ値とすることができる。これらのパラメータは、重み付けをして、またはせずに、さらに組み合わせて新たなパラメータの算出に用いても良い。また、パラメータEは平均化処理および/または平滑化処理を行った後に得られたパラメータA〜Dに基づき算出してもよい。
本発明によれば、得られたパラメータ(例えば、パラメータA〜E)について、そのうちの少なくとも1つの大小を評価することにより、多能性幹細胞が形成するコロニーの良否を評価することができる。ここで例えば、パラメータA〜Eに対してそれぞれ閾値を設定すると、閾値を小さくすればするほど良好と評価される不良なコロニーの割合が減少し、大きくすればするほど良好と評価される不良なコロニーの割合は増加する。従って、当業者であれば、良好なコロニーの回収率と不良なコロニーの混入率に応じて、適宜閾値を設定し、閾値を超えるか否かにより多能性幹細胞のコロニーの良否を判定することができる。従って、本発明によれば、上記パラメータ(例えば、パラメータA〜E)を用いて、多能性幹細胞のコロニーの良否を評価することができる。
本発明によれば、(B)得られた画像を画像処理すること、および、(C)得られた画像に基づいて多能性幹細胞のコロニーの良否を評価することは、コンピュータ等により全行程を自動化することができる。従って、本発明の方法をコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。具体的には、本発明によれば、多能性幹細胞のコロニーの画像に基づいて微分画像を得る工程(B)と、画像を解析して多能性幹細胞のコロニーの良否を自動判定する工程(C)とをコンピュータに実行させるためのプログラムが提供される。本発明によればまた、本発明のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体が提供される。本発明によればさらに、本発明のプログラムをその内部記録装置に記録したコンピュータまたは本発明のコンピュータを備えた多能性幹細胞のコロニーの良否のための自動判定システムが提供される。
本発明のプログラムは、フレキシブルディスクやCD−ROM等の記録媒体に記録し、コンピュータに読み込ませて実行させてもよい。記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。また、本発明のプログラムを、インターネット等の通信回線(無線通信も含む)を介して頒布してもよい。さらに、同プログラムを暗号化したり、変調をかけたり、圧縮した状態で、インターネット等の有線回線や無線回線を介して、あるいは記録媒体に収納して頒布してもよい。
実施例1:iPS細胞が形成するコロニーの画像処理
本実施例では、iPS細胞の良否を評価するための画像解析方法について検討した。
(位相差顕微鏡法によるiPS細胞コロニーの画像の取得)
本実施例では、細胞は、ヒトiPS細胞(公益財団法人 先端医療振興財団 細胞評価グループ 川真田研究室による樹立株)を用いた。培養は、フィーダーを用いるオンフィーダー条件およびフィーダーレス条件の2条件で行った。フィーダー細胞は、SNL細胞(DSファーマバイオメディカル社製、製品番号:EC07032801)を使用した。培地は、オンフィーダー条件では、ヒトES細胞培養用培地(ダルベッコ改変イーグル培地/栄養混合物F−12ハム(シグマアルドリッチ社製、製品番号:D6421)500mL、ノックアウト血清代替物(インビトロジェン社製、製品番号:10828−028)125mL、非必須アミノ酸溶液(シグマアルドリッチ社製、製品番号:M7145)5mL、200mM L−グルタミン(インビトロジェン社製、製品番号:25030−081)6.25mL、0.1M 2−メルカプトエタノールを添加したPBS(インビトロジェン社製、製品番号:21985)500μL、bFGF(和光純薬工業社製、製品番号:064−04541)最終濃度5ng/mLを用い、フィーダーレス条件では、ReproFF2培地(ReproCell社製、製品番号:RCHEMD006)にbFGF(和光純薬工業社製、製品番号:064−04541)最終濃度5ng/mLを添加した培地を用いた。細胞を通常の培養皿に播種し、継代前にiPS細胞を4倍の対物レンズおよび10倍の接眼レンズを備えた倒立型位相差顕微鏡IX81(オリンパス社製)で観察した。画像は、解像度を1.6μm/ピクセルに設定し、顕微鏡用デジタルカメラ(オリンパス社製、製品番号:DP72)を用いてPCに取込んで画像解析に用いた。本実施例では、最も良好とされるiPS細胞コロニー30例、良好とされるiPS細胞コロニー50例、不良とされるiPS細胞コロニー100例の計180例について画像を取得した。
(画像解析)
画像解析は、米国国立衛生学研究所(NIH)が無償提供する画像処理ソフトImageJ(http://rsbweb.nih.gov/ij/)を使用して行った。画像解析のために、位相差顕微鏡法により得られた画像をまず8ビット(256階調)のグレースケール画像に変換した。
次に得られた画像に対しSobelフィルタによる画像処理を行った。具体的には、ImageJを用いて3×3のSobelフィルタによる微分フィルタ処理を行った後に、コントラスト調整を行い、その後、20ピクセル毎の平均化処理を行い、さらにコントラスト調整を行った後に、rolling ballアルゴリズムを用いてバックグラウンド画像を抽出し、さらにコントラスト調整を行って、最後に40×40ピクセルの画像に変換して微分フィルタ処理画像を得た。
その結果、良好とされるiPS細胞コロニー(良好なコロニー)と良好でないとされるiPS細胞コロニー(不良なコロニー)との画像のパターンに明確な差を生じさせることができた(図1AおよびB)。具体的には、良好なiPS細胞コロニーからは、階調の均一な画像が得られるが(図1A)、不良なiPS細胞コロニーからは、中心部の階調が淡いリング状の画像が得られた(図1B)。また、画像処理したすべてのコロニーは、微分フィルタ処理画像に基づいて、良好か不良かを評価することができた。この結果から、微分フィルタを用いた画像処理は、多能性幹細胞のコロニーの良否評価に有効であることが示唆された。
本発明者らは、さらに他の様々な微分フィルタを用いて、不良なiPS細胞コロニーの微分フィルタ処理を試みた。その結果、いずれの微分フィルタを用いた場合でもフィルタ処理は有効であることが明らかとなった(図1C〜L)。また、上記のような既知の微分フィルタに限らず、例えば、ラプラシアンフィルタを適宜改良して作成した下記の改良ラプラシアンフィルタ:
を用いて、微分フィルタ処理を行った場合でも微分フィルタ処理は有効であった(図1M)。
このことから、iPS細胞コロニーの位相差顕微鏡写真の微分フィルタ処理は、微分フィルタの種類を問わず、多能性幹細胞のコロニーの良否評価に有効であることが明らかとなった。微分フィルタ処理は、画像の微分に基づく画像変換であれば広く様々なフィルタを利用でき、また、改良して得た微分フィルタやその他自由に作成した微分フィルタも広く用いることができると考えられる。
実施例2:画像解析のための画像の前処理
本実施例では、コロニー毎の画像を抽出するためのマスキング処理を行った。
まず、マスキング用のマスクを作成するために、実施例1の3×3のSobelフィルタによる画像処理により得られた画像(図2B、3Bおよび4B)を元に画像の二値化を行って、フィーダー領域(黒)とコロニー領域(白)とを分離した。その後、コロニー領域に生じることがある空隙(黒)を白で埋めた(図2C、3Cおよび4C)。
次に、コロニーが隣接してつながって存在する場合に、2つまたはそれ以上のコロニーを分離してコロニー毎のマスクを作成するために、ウォータシェッド細分化(Watershed)を行い、つながっている2つ以上のコロニーを分離した。具体的には、画像のユークリッド距離地図(EDM)を計算し、最終的な浸食点(UEP)を見つけ、その縁を可能な限り拡大し、粒子の縁が到達するまで、若しくは他のUEPの領域の縁に到達するまで拡張して、つながっている2つ以上のコロニーを分離した。得られた画像を、バックグラウンドや他のコロニーを排除するためのマスクとした。その後、得られたマスクを用いて実施例1の画像のフィーダー領域や他のコロニー領域をマスキングした(図2D、3Dおよび4D)。
実施例3:細胞播種直後の胚様体(EB)状の部分の画像処理
播種直後は、顕微鏡化で黒色に抜けて移るEB状の部位が存在することがある。このようなEB状の部位が存在するコロニーは、解析上、分化したと見なされる可能性があるので、EB状部分は画像処理により排除する必要がある。本実施例では、胚様体(EB)状の部分を除去するための画像処理を行った。
実施例1および2に記載の方法により、iPS細胞のコロニーの位相差顕微鏡像を得て、すべての位相差顕微鏡像を、微分フィルタを用いて画像処理した(図2B、3Bおよび4B)。次いで、得られた画像を二値化することにより、EB状の部位のみを抽出した(図4E)。このとき、EB状の部位が存在しないコロニーでは、上記のEB状の部位の抽出処理によっては何も抽出されなかった(図2Eおよび3E)。
実施例2で得られたマスキング画像(図2D、3Dおよび4D)と、実施例3のEB状の部位の抽出処理によって得られたEB状の部位(図2E、3Eおよび4E)を合成した(図2F、3Fおよび4F)。実施例3の処理は解析するすべてのiPS細胞コロニーについて行った。
実施例4:画像解析
本実施例では、実施例で得られた微分画像の解析を行った。
得られたマスキング画像のコロニーの全体が枠内に収まる2mm×2mm各の正方形の枠を設定した。次に、演算を高速化する目的で、画素の平均化して画素数を減らして正方形内の画素数を40ピクセル×40ピクセルにした。1ピクセルは、50μm×50μmの正方形に相当する。得られたグレースケール画像(40ピクセル×40ピクセル)は、その階調に応じて0〜255に数値化して40×40の行列として記録した(図2G、3Gおよび4G)。その後、得られた行列から1〜40行目に対応する1行40列の行列を40個作成した。同様に、得られた行列から1〜40列目に対応する40行1列の行列を40個作成した。
得られた1行40列の行列および40行1列の行列は、縦軸を行列成分の大きさとして、グラフ化した。良好なiPS細胞コロニーおよび不良なiPS細胞コロニーにおいて見られる特徴的な数値分布のグラフはそれぞれ、図5Aおよび図5Bの通りであった。
さらに得られた行列を解析するために、良好なiPS細胞コロニーおよび不良なiPS細胞コロニーが示す特徴的な数値分布に対して近似式を作成し、得られた行列80個それぞれに対してカーブフィットした。近似式は、鋭意検討の結果、以下のfgood(x):
(式中、A、A、a、a、xおよびxはパラメータであり、xは変数である。)、および、fbad(x):
(式中、A、A、A、A、A、xはパラメータであり、xは変数である。)
を用いた。
また、カーブフィットした近似式から以下の4つのパラメータを抽出した(図6A〜D)。
パラメータA:コロニー中心部におけるfgood(x)の値とfbad(x)の極小値の差
パラメータB:コロニー内におけるfbad(x)の最大値と極小値の差
パラメータC:実測値の最大値とコロニー中心部での実測値の最小値の差
パラメータD:コロニー内のfgood(x)の値と実測値の差の二乗平均
具体的には、パラメータAは、fgood関数を用いて数値分布のカーブフィットを行い、iPS細胞コロニーの範囲を規定した後に、コロニーの中心部におけるfgood関数の値(ここでは、fbad関数が極小値を取る部分での値とした)とfbad関数の極小値を取得し、その差をパラメータAとした。パラメータBは、コロニーの範囲として規定された範囲内におけるfbad関数の最大値と極小値の差とした。パラメータCは、コロニーの範囲として規定された範囲内における実測値の最大値とコロニー中心部での実測値の最小値の差とし、コロニー中心部は、規定された範囲の中心とした。パラメータDは、fgood関数を用いて数値分布のカーブフィットを行い、コロニーの範囲として規定された範囲内における各実測値と近似式との差の二乗平均とした。
このようにして、各行および各列に対してパラメータA〜Dを1つずつ抽出した後に、得られたパラメータA〜Dに対してそれぞれ40×40の行列を作成した。40×40の行列の(x、y)成分の値は、x=xにおけるパラメータの値と、y=yにおけるパラメータの値の二乗平均とした。パラメータ毎に得られた40×40の行列に対して下記の行列を用いてフィルタリングを行い、数値を平滑化した。
また、コロニーの範囲外のパラメータはすべて0とした。
このようにして得られた行列の最大値をパラメータ毎に抽出して、各パラメータの値としてさらなる解析に用いた。
さらに、パラメータEを、パラメータA+パラメータB+パラメータC+0.2×パラメータDと定義し、コロニー毎にパラメータEを求めた。なお、本実施例では、数値計算ソフトウェアとしてROOT(CERN、http://root.cern.ch/drupal/)を用いた。
その結果、図7に示されるように、パラメータA〜Eは、いずれのパラメータも良好なiPS細胞コロニーで数値が低く、不良なiPS細胞コロニーほど数値が高いことが確認できた。良好なiPS細胞コロニーと不良なiPS細胞コロニーの各一例についてパラメータA〜Eの値を表1に示した。
表1に示されるように、良好なiPS細胞コロニーと不良なiPS細胞コロニーとでは、パラメータA〜Eの値はいずれも、不良なiPS細胞コロニーで大きかった。
さらに、パラメータ毎に閾値を設けて閾値以下の細胞を良好と判定する場合の判定の精度を調べた結果は、図8に示す通りであった。図8では、各パラメータの閾値を横軸とし、良好と判定された良好なiPS細胞コロニーの回収率(%)および不良なiPS細胞コロニーの混入率(%)を縦軸とした。すなわち、パラメータA〜Eのそれぞれについて閾値を設定し、閾値以下の細胞を良好と判定し、閾値を超える細胞を不良と判定した場合に、良好な細胞の回収率と不良な細胞の混入率との関係がどのようになるかを示した図である。良好な細胞の回収率および不良な細胞の混入率は、それぞれ、良好な細胞全体に対して良好と判定された細胞の割合および不良な細胞全体に対して良好と判定された細胞の割合とした。表2は、図8の結果を表にまとめたものである。
図8および表2に示されるように、良好なiPS細胞コロニーの回収率を高めるほど、不良なiPS細胞コロニーが混入してくることが理解できる。パラメータA〜Dのいずれを用いた場合でも、iPS細胞コロニーの良否の評価は可能であったが、パラメータの中で最も判定精度の高いパラメータEを用いて評価すると、良好なiPS細胞コロニーの回収率を90%とすると、不良なiPS細胞コロニーの6%が混入し、回収率を80%とすると、不良なiPS細胞コロニーの3%が混入し、回収率を70%とすると、不良なiPS細胞コロニーの3%が混入し、回収率を60%とすると、不良なiPS細胞コロニーが混入しなくなることが分かった。特に、近似式による近似を行うことなく、評価した場合であっても(パラメータC)、精度の高い評価が可能であり、例えば、良好なiPS細胞コロニーの回収率を90%とすると、不良なiPS細胞コロニーの9%が混入し、回収率を80%とすると、不良なiPS細胞コロニーの4%が混入し、回収率を70%とすると、不良なiPS細胞コロニーの3%が混入し、回収率を60%とすると、不良なiPS細胞コロニーが1%混入し、回収率を30%とすると、不良なiPS細胞コロニーが混入しなくなることが分かった。
このように、iPS細胞コロニーの位相差画像に対して微分フィルタ処理を施すことにより、近似式を用いて(パラメータA、B、DおよびE)、または用いずに(パラメータC)、iPS細胞コロニーの良否判定が可能であった。また、パラメータを組み合わせることにより(パラメータE)、iPS細胞コロニーのさらに高精度な良否判定が可能であった。

Claims (25)

  1. 多能性幹細胞が形成するコロニーの画像の微分フィルタ処理画像(微分画像)に基づいて、多能性幹細胞のコロニーの良否を評価する方法。
  2. 多能性幹細胞の微分画像から得られた画像パターンに基づいてコロニーの良否を評価する、請求項1に記載の方法。
  3. 微分画像から、各画素の階調に従って画素毎に数値化を行い、次いで、コロニー中心部の数値と、場合によってはその周辺部の数値とに基づいてコロニーの良否を評価する、請求項1に記載の方法。
  4. 微分画像から、各画素の階調に従って画素毎に数値化を行い、次いで、得られた数値分布に基づいてコロニーの良否を評価する、請求項1に記載の方法。
  5. 微分画像から、各画素の階調に従って画素毎に数値化を行い、次いで、コロニーの数値分布に対して予め作成した少なくとも1種類のフィット関数を、評価対象のコロニーの数値分布に対してカーブフィットすることによりそのコロニーの良否を評価する、請求項4に記載の方法。
  6. 予め作成したフィット関数が、
    凸形状を表すフィット関数(fgood関数)、および/または、
    コロニーの中心部で凹形状を表し、かつ、その周辺部で凸形状を表すフィット関数(fbad関数)
    を含んでなる少なくとも1種類のフィット関数である(但し、コロニー中心部を通る直線の位置を平面直交座標系の横軸(X軸)とし、数値分布(Y軸)を縦軸としてフィット関数のグラフを作成する)、請求項5に記載の方法。
  7. 予め作成したフィット関数が、fgood関数とfbad関数とを含んでなる少なくとも2種類のフィット関数である、請求項6に記載の方法。
  8. bad関数が、
    (条件B1)x→−∞およびx→∞の極限において収束する、
    (条件B2)コロニー内では任意の実数xに対して0以上となる、および、
    (条件B3)コロニー内では1つの極小値と2つの極大値を有する
    から選択されるいずれか1つ、2つまたはすべての条件を満たす、請求項6または7に記載の方法。
  9. bad関数が、


    、および、
    からなる群から選択される、請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
  10. 前記fbad関数が、
    である、請求項9に記載の方法。
  11. good関数が、
    (条件G1)x→−∞およびx→∞の極限において収束する、
    (条件G2)コロニー内では任意の実数xに対して0以上となる、および
    (条件G3)コロニー内では1つの極大値を有する
    から選択されるいずれか1つ、2つまたはすべての条件を満たす、請求項6〜10のいずれか一項に記載の方法。
  12. good関数が、

    、および、
    からなる群から選択される、請求項6〜11のいずれか一項に記載の方法。
  13. good関数が、
    である、請求項12に記載の方法。
  14. カーブフィットすることにより得られる少なくとも1種類の近似曲線と、評価対象のコロニーの数値分布とのずれの程度を指標としてコロニーの良否を評価する、請求項6〜13のいずれか一項に記載の方法。
  15. カーブフィットすることにより得られる少なくとも1種類の近似曲線から抽出したパラメータを指標としてコロニーの良否を評価する、請求項6〜14のいずれか一項に記載の方法。
  16. パラメータが、コロニー内における、fgood関数の最大値、fbad関数の最大値、fbad関数の極小値、実測値の最大値および実測値の最小値からなる群から選択される1以上のパラメータである、請求項15に記載の方法。
  17. 2つのパラメータの和、差、積または比を指標としてコロニーの良否を評価することを含んでなる、請求項15または16に記載の方法。
  18. 2つのパラメータの和、差、積または比の値と、別の2つのパラメータの組み合わせにおける2パラメータの和、差、積または比の値との、和、差、積または比を指標としてコロニーの良否を評価することを含んでなる、請求項17に記載の方法。
  19. パラメータが、コロニー内における、fgood関数の最大値、fbad関数の最大値およびfbad関数の極小値からなる群から選択される2つのパラメータである、請求項17または18に記載の方法。
  20. 近似曲線から、コロニー毎に算出される以下の4つのパラメータ:
    パラメータA:fgood関数の中心部の値とfbad関数の極小値の差、
    パラメータB:fbad関数の最大値と極小値の差、
    パラメータC:実測値の最大値とコロニー中心部での実測値の最小値の差、および
    パラメータD:コロニー内のfgood関数と実測値の差の二乗平均
    からなる群から選択される少なくとも1つのパラメータに基づいてコロニーの良否を評価する、請求項18に記載の方法。
  21. パラメータA〜Dから選択される2以上のパラメータを重み付けして加算して得られる数値に基づいて評価する、請求項20に記載の方法。
  22. 請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
  23. 請求項22に記載のプログラムを記録したコンピュータに読み取り可能な記録媒体。
  24. 請求項22に記載のプログラムを内部記憶装置に記録したコンピュータ。
  25. 請求項24に記載のコンピュータを備えた、多能性幹細胞のコロニーの良否の自動判定システム。
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