まず、ZnO系半導体層等の成長に用いられる結晶製造装置について説明する。以下に説明する実験、実施例、及び変形例では、結晶製造方法として分子線エピタキシ(molecular beam epitaxy; MBE)を用いる。ここでZnO系半導体は、少なくともZnとOを含む。
図1は、MBE装置を示す概略的な断面図である。真空チャンバ71内に、Znソースガン72、Oソースガン73、Mgソースガン74、Cuソースガン75、Gaソースガン76、及びNソースガン77が備えられている。
Znソースガン72、Mgソースガン74、Cuソースガン75、及びGaソースガン76は、それぞれZn(7N)、Mg(6N)、Cu(9N)、及びGa(7N)の固体ソースを収容するクヌーセンセルを含み、セルを加熱することにより、Znビーム、Mgビーム、Cuビーム、及びGaビームを出射する。
Oソースガン73及びNソースガン77は、それぞれたとえば13.56MHzのラジオ周波数を用いる無電極放電管を含み、無電極放電管内でO2(6N)ガス、N2(6N)ガスをプラズマ化して、Oラジカルビーム、Nラジカルビームを出射する。放電管材料として、アルミナ、高純度石英、またはPBN(パイロリティック ボロンナイトライド)を使用することができる。
基板ヒータを備えるステージ78が基板79を保持する。ソースガン72〜77は、それぞれセルシャッタを含む。セルシャッタの開閉により、各ビームの基板79上への照射状態を切り替えることができる。基板79上に所望のタイミングで所望のビームを照射し、所望の組成のZnO系化合物半導体層を成長させることが可能である。
ZnOにMgを添加することにより、バンドギャップを広げることができる。しかしZnOはウルツ鉱構造(六方晶)であり、MgOは岩塩構造(立方晶)であることから、Mg組成が高すぎると相分離を起こす。MgZnOのMg組成をxと明示するMgxZn1−xOにおいて、Mg組成xは、ウルツ鉱構造を保つため0.6以下とするのが好ましい。なお、MgxZn1−xOという表記は、x=0の場合としてMgの添加されないZnOを含む。
ZnO系半導体のn型導電性は、不純物のドープを行わなくても得られる。Ga等の不純物をドープし、n型導電性を高めることができる。ZnO系半導体のp型導電性は、p型不純物のドープにより得られる。
真空チャンバ71内に、水晶振動子を用いた膜厚計80が備えられている。膜厚計80で測定される付着速度から、各ビームのフラックス強度が求められる。
真空チャンバ71に、反射高速電子回折(reflection high energy electron diffraction; RHEED)用のガン81、及び、RHEED像を映すスクリーン82が取り付けられている。RHEED像から、基板79上に形成された結晶層の表面平坦性や成長モードを評価することができる。
結晶が2次元成長し表面が平坦なエピタキシャル成長(単結晶成長)である場合、RHEED像はストリークパターンを示し、結晶が3次元成長し表面が平坦でないエピタキシャル成長(単結晶成長)の場合、RHEED像はスポットパターンを示す。多結晶成長の場合は、RHEED像がリングパターンとなる。
次に、MgxZn1−xO(0≦x≦0.6)結晶成長におけるVI/IIフラックス比について説明する。Znビームのフラックス強度をJZn、Mgビームのフラックス強度をJMg、Oラジカルビームのフラックス強度をJOと表す。金属材料であるZnあるいはMgのビームは、原子、または複数個の原子を含むクラスターのZnあるいはMgを含む。原子とクラスターのいずれも結晶成長に有効である。ガス材料であるOのビームは、原子ラジカルや中性分子を含むが、ここでは結晶成長に有効な原子ラジカルのフラックス強度を考える。
結晶へのZnの付着しやすさを示す付着係数をkZn、Mgの付着しやすさを示す付着係数をkMg、Oの付着しやすさを示す付着係数をkOと表す。Znの付着係数kZnとフラックス強度JZnの積kZnJZn、Mgの付着係数kMgとフラックス強度JMgの積kMgJMg、及び、Oの付着係数kOとフラックス強度JOの積kOJOは、それぞれ基板の単位面積に単位時間当たりに付着するZn原子、Mg原子、及びO原子の個数に対応する。
kZnJZnとkMgJMgの和に対するkOJOの比であるkOJO/(kZnJZn+kMgJMg)を、VI/IIフラックス比と定義する。VI/IIフラックス比が1より小さい場合をII族リッチ条件(Mgを含まない場合は単にZnリッチ条件)、VI/IIフラックス比が1に等しい場合をストイキオメトリ条件、VI/IIフラックス比が1より大きい場合をVI族リッチ条件(あるいはOリッチ条件)と呼ぶ。
なお、Zn面(+c面)での結晶成長においては、基板表面温度850℃以下であれば、付着係数kZn、kMg及びkOを1とみなすことができ、VI/IIフラックス比をJO/(JZn+JMg)と表すことが可能である。
VI/IIフラックス比は、たとえばZnOの成長においては、以下の手順で算出することができる。Znフラックスは、膜厚計80により、室温でのZnの蒸着速度FZn(nm/s)として測定される。ZnフラックスはFZn(nm/s)からJZn(atoms/cm2s)に換算される。
一方、Oラジカルフラックスは、以下のように求められる。Oラジカルビーム照射条件一定(たとえばRFパワー300W、O2流量2sccm)のもとで、Znフラックスを変化させてZnOを成長させ、ZnO成長速度のZnフラックス依存性を実験的に求める。その結果を、ZnO成長速度GZnOの近似式:GZnO=[(kZnJZn)−1+(kOJO)−1]−1を用いてフィッティングすることにより、その条件におけるOラジカルフラックスJOが算出される。こうして得られたZnフラックスJZn及びOラジカルフラックスJOから、VI/IIフラックス比を算出することができる。
続いて、本願発明者らが行った第1実験及び第2実験について説明する。本願発明者らは、層上にCuが供給されたGaドープZnO単結晶層(交互積層構造)がアニールによりp型化することを発見した。この点を含め、まず、サンプル1〜サンプル4の4つのサンプルに沿って第1実験の説明を行う。なお説明においては、アニール前の試料をアニール前試料、アニール開始後の試料をアニール後試料と記載する。
サンプル1のアニール前試料の作製方法について説明する。図2Aに、アニール前試料の概略的な断面図を示す。
n型導電性を有するZn面ZnO(0001)基板(以下、本明細書においてZnO基板)51に900℃で30分間のサーマルクリーニングを施した後、基板51温度を300℃まで下げた。その温度(成長温度300℃)で、ZnフラックスFZnを0.17nm/s(JZn=1.1×1015atoms/cm2s)、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O2流量2.0sccm(JO=8.1×1014atoms/cm2s)とし、ZnO基板51上に厚さ30nmのZnOバッファ層52を成長させた。ZnOバッファ層52の結晶性及び表面平坦性の改善のため、900℃で10分間のアニールを行った。
ZnOバッファ層52上に、成長温度を900℃、ZnフラックスFZnを0.17nm/s(JZn=1.1×1015atoms/cm2s)、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O2流量2.0sccm(JO=8.1×1014atoms/cm2s)として、厚さ100nmのアンドープZnO層53を成長させた。アンドープZnO層53はn型ZnO層である。アンドープZnO層53上に、Zn、O及びGaと、Cuとを別々のタイミングで供給し、交互積層構造54を形成した。交互積層構造54の形成温度は300℃とした。
図2Bは、交互積層構造を形成する際のZnセル、Oセル、Gaセル、及びCuセルのシャッタシーケンスを示すタイムチャートである。
交互積層構造54の形成に当たっては、Znセルシャッタ、Oセルシャッタ、及びGaセルシャッタを開き、Cuセルシャッタを閉じるGaドープZnO単結晶層成長工程と、Znセルシャッタ、Oセルシャッタ、及びGaセルシャッタを閉じ、Cuセルシャッタを開くCu付着工程(Cu層形成工程)とを交互に繰り返した。ZnO単結晶層を成長させる際にGaを供給することで、GaはZnO単結晶層においてZnサイトに入り、ドナーとして機能すると期待される。GaドープZnO単結晶層を成長させる工程と、GaドープZnO単結晶層上にCuを付着させる工程とを別々に設け、Oセルシャッタの開期間とCuセルシャッタの開期間とを重複させないため、OラジカルとCuとは同時に供給されない。
GaドープZnO単結晶層成長工程においては、OセルシャッタとGaセルシャッタの開閉は同時に行い、Oセルシャッタ及びGaセルシャッタの開期間の前後に、Znセルシャッタの開期間を延長する。すなわちZnセルシャッタの開期間は、Oセルシャッタ及びGaセルシャッタの開期間を含む。OラジカルとCuを同時に供給しないことに加え、Cu付着工程の前後で、GaドープZnO単結晶層表面をZnで覆うことにより(Oの露出を抑制することにより)、OラジカルとCuの直接の反応を抑制する。活性なOラジカルとCuの反応が生じると、良好な単結晶成長が阻害される場合がある。また、Cuがアクセプタとして機能しない2価の状態でOと結合しやすい。
サンプル1のアニール前試料の作製においては、Oセルシャッタ及びGaセルシャッタの1回当たりの開期間を16秒とし、Oセルシャッタ及びGaセルシャッタの開期間の前後にZnセルシャッタの開期間を1秒ずつ延長した。Znセルシャッタの1回当たりの開期間は18秒である。Znセルシャッタ、Oセルシャッタ、及びGaセルシャッタがすべて開状態となる16秒間が、1回当たりのGaドープZnO単結晶層成長期間である。Cuセルシャッタの1回当たりの開期間は10秒とした。
GaドープZnO単結晶層成長工程とCu付着工程を交互に140回ずつ繰り返し、厚さ480nmの交互積層構造54を得た。GaドープZnO単結晶層成長工程でのZnフラックスFZnは0.17nm/s(JZn=1.1×1015atoms/cm2s)、Oラジカルビーム照射条件はRFパワー300W、O2流量2.0sccm(JO=8.1×1014atoms/cm2s)、Gaのセル温度TGaは490℃とした。VI/IIフラックス比は0.74(Znリッチ条件)である。Cu付着工程でのCuのセル温度TCuは930℃とし、CuフラックスFCuを0.0015nm/sとした。
図2Cは、交互積層構造54の概略的な断面図である。交互積層構造54は、GaドープZnO単結晶層54aとCu層54bが交互に積層された積層構造を有する。この積層構造は、層上にCuが供給されたGaドープZnO単結晶層54aが140層、厚さ方向に積層されたものと考えることが可能である。
GaドープZnO単結晶層54aの厚さは3.3nm程度、Cu層54bの厚さ(Cuの付着厚さ)は1原子層以下、たとえば約1/20原子層である。この場合、GaドープZnO単結晶層54a表面のCu被覆率は5%程度となる。
図2Dに、GaドープZnO単結晶層54a及びCu層54bの概略的な断面図を示す。たとえば約1/20原子層の厚さをもつCu層54bは、本図に示すように、GaドープZnO単結晶層54a表面の一部に付着するCuで形成される。以後、図面の簡略化のため、このようなCuの付着態様も含め、交互積層構造を図2Cの層構造で表す。
図3は、アニール前試料の交互積層構造について、CV特性と不純物濃度のデプスプロファイルを示すグラフの一覧である。上段にCV特性を示すグラフを記載し、下段にデプスプロファイルを示すグラフを記載した。測定は、電解液をショットキー電極に用いたECV法により行った。グラフは並列モデルで解析した結果を示す。最も左の列がサンプル1に関するグラフである。なお、後述のサンプルについてのグラフも含め、左の列から順にサンプル1〜サンプル4に関する。CV特性を示すグラフの横軸は、電圧を単位「V」で表し、縦軸は、「1/C2」を単位「cm4/F2」で表す。両軸ともリニアスケールを用いている。また、デプスプロファイルを示すグラフの横軸は、試料の深さ(厚さ)方向の位置を単位「nm」で表す。縦軸は、不純物濃度を単位「cm−3」で表す。横軸はリニアスケール、縦軸は対数スケールを用いている。
サンプル1のCV特性を示すグラフを参照する。右上がりの曲線(電圧が増加すると1/C2が増加する関係)が得られている。これは層上にCuが供給されたGaドープZnO単結晶層54a(交互積層構造54)がn型導電性を備えることを示す。GaドープZnO単結晶層54a上に局在するCuは、アクセプタとして機能していないと考えられる。なお、傾きが抵抗値と対応する。
サンプル1のデプスプロファイルを示すグラフを参照する。本図に示されるように、サンプル1のアニール前試料の交互積層構造54の不純物濃度(ドナー濃度)Ndは1.0×1020cm−3である。
次に、サンプル1にアニール処理を施した。大気中で650℃、30分間のアニールを行った後、更にその温度で10分間のアニールを4回実施した。
図4は、アニール後試料のCV特性と不純物濃度のデプスプロファイルを示すグラフの一覧である。交互積層構造54形成位置のCV特性とデプスプロファイルを示した。最も左の列がサンプル1に関するグラフである。図3と同様に、後述のサンプルについてのグラフも含め、左の列から順にサンプル1〜サンプル4のアニール後試料に関する。
サンプル1の列を参照する。上欄に、650℃で30分間のアニール処理を行った後のCV特性を示すグラフを記載した。グラフの両軸の意味するところは、図3に示すCV特性のグラフにおけるそれらと同様である。アニール前試料と比較したとき、交互積層構造54(層上にCuが供給されたGaドープZnO単結晶層54a)形成位置が高抵抗化している。Cuがp型不純物として機能し、n型不純物Gaの機能を相殺していると考えられる。
下欄を参照する。下欄には、650℃、30分間のアニール後、更に10分間のアニールを4回実施し、650℃で合計70分間のアニールを行った試料のCV特性とデプスプロファイルを示すグラフを、それぞれ上段と下段に記載した。グラフの両軸の意味するところは、図3に示すグラフのそれらと同様である。
上段に示すCV特性のグラフにおいて、右下がりの曲線(電圧が増加すると1/C2が減少する関係)が得られている。これは交互積層構造54の形成位置がp型導電性を備えることを表す。交互積層構造54形成位置における単位体積当たりのCu濃度はGa濃度より高く、Cuの拡散が進むと、Gaを補償した後、p型不純物Cuの濃度が増加するものと考えられる。デプスプロファイルを示す、下段のグラフを参照すると、サンプル1のアニール後試料における交互積層構造54形成位置の不純物濃度(アクセプタ濃度)Naが2.0×1017cm−3〜1.0×1019cm−3であることがわかる。
図5は、2次イオン質量分析法(secondary ion mass spectrometry; SIMS)による、アニール終了後のCuの絶対濃度[Cu]及びGaの絶対濃度[Ga]のデプスプロファイルを示すグラフの一覧である。最も左がサンプル1に関するグラフである。図3、図4と同様に、後述のサンプルについてのグラフも含め、左から順にサンプル1〜サンプル4のアニール後試料に関する。グラフの横軸は、アニール後試料の深さ方向の位置をリニアスケールで表し、縦軸は、Cu濃度[Cu]及びGa濃度[Ga]を対数スケールで表す。アニール後試料の深さ方向の位置は、サンプル1〜サンプル3については単位「μm」、サンプル4については単位「nm」で示す。[Cu]及び[Ga]の単位は「cm−3」である。
サンプル1の欄を参照する。深さ0.0μm〜0.48μmの範囲が、交互積層構造54の形成位置に対応するp型層の形成位置である。Cu濃度[Cu]は2.2×1020cm−3、Ga濃度[Ga]は3.4×1019cm−3、ともにp型層の厚さ方向の全体にわたり、ほぼ一定であることがわかる。本明細書及び特許請求の範囲において、濃度に関し「ほぼ一定」とは、濃度の平均値(本図サンプル1の[Cu]の場合、2.2×1020cm−3)の50%〜150%の範囲(本図サンプル1の[Cu]の場合、1.1×1020cm−3〜3.3×1020cm−3)をいう。Cuは均一に拡散している。[Cu]は[Ga]より高く、[Ga]に対する[Cu]の比である[Cu]/[Ga]の値は6.5である。なお、[Cu]及び[Ga]は、たとえば表面吸着物の影響により、p型層表面近傍で正確に測定されない場合がある。たとえばサンプル1の場合、低い値に測定されている。
次に、サンプル2〜サンプル4について説明する。サンプル2〜サンプル4は、たとえば交互積層構造作製時にCuとGaの供給量を調整し、[Cu]/[Ga]を順次小さくしたサンプルである。
サンプル2〜サンプル4のアニール前試料は、ZnO基板51上に、順にZnOバッファ層、アンドープZnO層、及び交互積層構造が形成される点で、図2Aに示したサンプル1の場合と同様であるが、ZnO基板51上に形成される各層の成長条件が相違する。
サンプル2及びサンプル3のアニール前試料の作製においては、ZnOバッファ層の成長温度を300℃、成長時間を5分とした。ZnフラックスFZnを0.16nm/s、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O2流量2.0sccmとして、厚さ40nmのZnOバッファ層を成長させた。その後、900℃で15分間のアニールを行った。
アンドープZnO層の成長温度は900℃、成長時間は15分とした。ZnフラックスFZnを0.16nm/s、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O2流量2.0sccmとして、厚さ120nmのアンドープZnO層を成長させた。
交互積層構造は成長温度300℃で形成した。GaドープZnO単結晶層成長工程におけるZnフラックスFZnは0.16nm/s、Oラジカルビーム照射条件はRFパワー300W、O2流量2.0sccmとした。VI/IIフラックス比は1より小さく、Znリッチ条件である。Gaのセル温度TGaは、サンプル2の作製においては498℃、サンプル3の場合は505℃とした。1回当たりのGaドープZnO単結晶層成長期間は16秒に設定した。Cu付着工程でのCuのセル温度TCuは930℃とし、CuフラックスFCuを0.0015nm/sとした。Cuセルシャッタの1回当たりの開期間は10秒とした。GaドープZnO単結晶層成長工程とCu付着工程を交互に60回ずつ繰り返し、交互積層構造を得た。成長時間は30分である。交互積層構造の厚さは、サンプル2が207nm、サンプル3が199nmであった。こうしてサンプル2及びサンプル3のアニール前試料を作製した。
サンプル4のアニール前試料の作製方法は、サンプル2及びサンプル3のそれと、交互積層構造の成長条件において相違する。
サンプル4の交互積層構造は、成長温度300℃で形成した。GaドープZnO単結晶層成長工程におけるZnフラックスFZnは0.15nm/s、Oラジカルビーム照射条件はRFパワー300W、O2流量2.0sccmとした。VI/IIフラックス比は1より小さく、Znリッチ条件である。Gaのセル温度TGaは525℃とした。1回当たりのGaドープZnO単結晶層成長期間は16秒に設定した。Cu付着工程でのCuのセル温度TCuは930℃とし、CuフラックスFCuを0.0015nm/sとした。Cuセルシャッタの1回当たりの開期間は50秒とした。GaドープZnO単結晶層成長工程とCu付着工程を交互に30回ずつ繰り返して、厚さ90nmの交互積層構造を形成し、サンプル4のアニール前試料を作製した。
図3のサンプル2〜サンプル4の列を参照する。上段のCV特性を示すグラフによると、サンプル2〜サンプル4についても、サンプル1と同様に、交互積層構造において、電圧が増加すると1/C2が増加する関係が得られている。すなわちサンプル2〜サンプル4のアニール前試料において、交互積層構造(層上にCuが供給されたGaドープZnO単結晶層)がn型導電性を備えることがわかる。
デプスプロファイルを示す、下段のグラフを参照する。サンプル2、サンプル3、サンプル4の交互積層構造のドナー濃度Ndは、それぞれ1.0×1020cm−3、1.0×1020cm−3、7.0×1020cm−3である。
続いて、サンプル2〜サンプル4にアニール処理を施した。
図4のサンプル2の列を参照する。サンプル2は2分割し、2分割した一方には、大気中で650℃、10分間のアニール処理、他方には、大気中で650℃、30分間のアニール処理を行った。上欄は、650℃で10分間のアニール処理を行ったサンプル2のCV特性を示すグラフである。交互積層構造(層上にCuが供給されたGaドープZnO単結晶層)形成位置が、アニール前より高抵抗化している。
下欄は、650℃で30分間のアニールを実施したサンプル2のCV特性と不純物濃度のデプスプロファイルを示す。
CV特性を示す、上段のグラフにおいては、電圧が増加すると1/C2が減少する関係が得られている。これにより、交互積層構造の形成位置がp型化したことがわかる。デプスプロファイルを示す、下段のグラフを参照すると、650℃で30分間のアニールを行ったサンプル2における交互積層構造形成位置のアクセプタ濃度Naは1.0×1017cm−3〜7.0×1018cm−3であることがわかる。
図5のサンプル2の欄には、650℃で30分間のアニールを行った試料のSIMSによるCu濃度[Cu]及びGa濃度[Ga]のデプスプロファイルを示した。交互積層構造の形成位置に対応する範囲(p型層の形成位置)におけるCu濃度[Cu]は1.7×1020cm−3、Ga濃度[Ga]は3.7×1019cm−3であり、ともにp型層の厚さ方向の全体にわたり、ほぼ一定であることがわかる。[Cu]/[Ga]の値は4.6である。
サンプル3に対しても大気中でアニールを施した。550℃で10分間のアニール処理を7回行った後、570℃で10分間のアニール処理を4回、及び、580℃で10分間のアニール処理を3回と5分間の処理を1回行い、更に、590℃で12分間のアニール処理を実施した。アニールの合計時間は157分である。
図4のサンプル3の列を参照する。上欄は、550℃で10分間のアニール処理を3回(合計30分)行った後のCV特性を示すグラフである。交互積層構造形成位置が、アニール前より高抵抗化している。
下欄は、590℃で12分間のアニール(合計157分のアニール)を実施した試料のCV特性と不純物濃度のデプスプロファイルを示す。
CV特性を示す、上段のグラフにおいては、電圧が増加すると1/C2が減少する関係が得られており、交互積層構造の形成位置がp型化したことがわかる。デプスプロファイルを示す、下段のグラフを参照すると、サンプル3のアニール後試料における交互積層構造形成位置のアクセプタ濃度Naは6.0×1017cm−3〜1.0×1019cm−3であることがわかる。
図5のサンプル3の欄を参照する。交互積層構造の形成位置に対応する範囲(p型層の形成位置)におけるCu濃度[Cu]は1.2×1020cm−3、Ga濃度[Ga]は6.0×1019cm−3であり、ともにp型層の厚さ方向の全体にわたり、ほぼ一定であることがわかる。[Cu]/[Ga]の値は2.0である。
サンプル4には大気中において、500℃で10分間、525℃で10分間、550℃で10分間のアニール処理を行った後、更に、600℃で10分間のアニール処理を5回実施した。アニールの合計時間は80分である。
図4のサンプル4の列を参照する。上欄は、550℃で10分間のアニール処理を行った後のCV特性を示すグラフである。交互積層構造形成位置が、アニール前より高抵抗化している。
下欄は、600℃で50分間(10分を5回)のアニール処理(合計80分のアニール処理)を実施した試料のCV特性と不純物濃度のデプスプロファイルを示す。
CV特性を示す、上段のグラフにおいては、電圧が増加すると1/C2が減少する関係が得られており、交互積層構造の形成位置がp型化したことがわかる。デプスプロファイルを示す、下段のグラフを参照すると、サンプル4のアニール後試料における交互積層構造形成位置のアクセプタ濃度Naは8.0×1017cm−3〜1.0×1019cm−3であることがわかる。
図5のサンプル4の欄を参照する。交互積層構造の形成位置に対応する範囲(p型層の形成位置)におけるCu濃度[Cu]は3.5×1020cm−3、Ga濃度[Ga]は2.0×1020cm−3であり、ともにp型層の厚さ方向の全体にわたり、ほぼ一定であることがわかる。[Cu]/[Ga]の値は1.8である。
第1実験より、サンプル1〜サンプル4の交互積層構造(GaドープZnO単結晶層)は、アズグロウンでn型であり(図3参照)、アニールにより、高抵抗化(図4の上欄参照)を経てp型化する(図4の下欄参照)ことが理解される。アニール処理を行うことでCu層のCuがGaドープZnO単結晶層内に均一に拡散する。Cuの拡散(アクセプタとして機能するCu+の発生)に伴って交互積層構造(GaドープZnO単結晶層)は高抵抗化(ドナー濃度Ndが減少)し、更に、CuとGaが共ドープされたp型ZnO単結晶層となる(p型化する)と考えられる。
サンプル1〜サンプル4の比較から、p型化のためのアニール条件(温度、時間、雰囲気等)は、交互積層構造やGaドープZnO単結晶層の厚さ、交互積層構造におけるCu濃度[Cu]、Ga濃度[Ga]、[Ga]に対する[Cu]の比[Cu]/[Ga]等によって異なるであろう。
また、Cu濃度[Cu]とGa濃度[Ga]がともに狭い数値範囲内にあるサンプル1〜サンプル3において、[Cu]/[Ga]の値に着目すると、サンプル1>サンプル2>サンプル3の関係にあり、[Cu]/[Ga]の値が小さいほど、p型化に必要なアニール温度が低くなる、または処理時間が短くなる傾向が認められる。たとえば高温アニールによる酸素空孔等ドナー性点欠陥の形成、p型層からの外部拡散に伴うp型層中のCu濃度やGa濃度の低下、CuやGaの下地層(n型層)への拡散に伴うpn接合における濃度変化の急峻性の悪化、p型領域及びn型領域の形状の変化等の不具合発生の可能性を考慮すると、[Cu]/[Ga]の値は、たとえば100未満であることが望ましく、50以下であることが一層望ましいであろう。
更に、交互積層構造(GaドープZnO単結晶層とその上に供給されたCuからなる構造)において、CuとGaが1:1で補償されると考えるなら、[Cu]/[Ga]>1のときp型化が可能であろう。また、たとえば[Cu]/[Ga]≧2のとき、アニールによって実用的なp型導電性を得やすいと思われる。
したがって、たとえば1<[Cu]/[Ga]<100であれば、比較的低温のアニールで交互積層構造をp型化することができ、2≦[Cu]/[Ga]≦50であれば、一層低温のアニールで、実用的なp型導電性が得られるということが可能であろう。
また第1実験においては、たとえば図5に示すように、層の厚さ方向の全体にわたり、Cu濃度[Cu]及びGa濃度[Ga]がほぼ一定のp型層が得られた。p型層におけるCu濃度[Cu]は、1.2×1020cm−3(サンプル3の場合)〜3.5×1020cm−3(サンプル4の場合)であった。
この結果から、たとえば層上にCuが供給されたGaドープn型ZnO単結晶層をアニールする方法によって、Cuを、高濃度といえる1.0×1019cm−3以上の濃度に、サンプル1〜サンプル4においては1020cm−3のオーダーの濃度に、少なくとも1.0×1021cm−3未満の濃度までは、厚さ方向に均一にドープすることができると考えられる。
本願発明者らは鋭意研究により、ZnO系半導体層において、Cuの不純物濃度(アクセプタ濃度)は、Cuの絶対濃度[Cu]より約2桁小さいという知見を得ている。この知見を加味すると、層上にCuが供給されたGaドープn型ZnO単結晶層をアニールする方法によって、アクセプタ濃度が1.0×1017cm−3以上、少なくとも1.0×1019cm−3未満のp型層が得られるということができる。事実、図4の下欄のデプスプロファイルには、サンプル1〜サンプル4のアクセプタ濃度Naが、1.0×1017cm−3(サンプル2の場合)〜1.0×1019cm−3(サンプル1、サンプル3、及びサンプル4の場合)であることが示されている。
p型層は、アクセプタ濃度が1.0×1017cm−3以上であれば実用的ということが可能である。したがって第1実験で得られたp型層は、実用的なp型導電性を有するp型ZnO系半導体単結晶層である。
層上にCuが供給されたGaドープZnO単結晶層をアニールする方法によれば、Cuが高濃度に、かつ、層の厚さ方向の全体にわたって均一にドープされ、実用的なp型導電性を有するCu、Ga共ドープZnO単結晶層を製造することができる。また、低い温度のアニールで製造可能である。
n型導電性を示す交互積層構造(層上にCuが供給されたGaドープZnO単結晶層)は、アニールにより、高抵抗化を経てp型化される。第1実験においては、たとえばサンプル1の場合、650℃で30分間のアニール処理を行って高抵抗化した試料を作製した(図4上欄のグラフ参照)後、すなわち顕在的な高抵抗化を経た後、更に40分間のアニール処理を実施してp型化を行った(図4下欄のグラフ参照)が、アニール前試料に650℃で70分間のアニールを連続して行った場合でも、交互積層構造はp型化する。このとき交互積層構造は、潜在的な高抵抗化を経てp型化されるということができる。同様に、サンプル2のアニール前試料には650℃で30分間、サンプル3のアニール前試料には590℃で12分間、サンプル4のアニール前試料には600℃で50分間のアニール処理をそれぞれ大気中で実施することで、各サンプルの交互積層構造を潜在的に高抵抗化した後、p型化することが可能である。サンプル3及びサンプル4については、異なる複数の温度でアニールを行っているが、最高温度で所定時間のアニール処理を実施すればよいと考えられる。
なお、交互積層構造は、潜在的または顕在的な高抵抗化の後、更に絶縁化を経てp型化されると考えることもできる。アニール条件の設定により、絶縁化を顕在化させることも可能であろう。したがって交互積層構造は、潜在的または顕在的な高抵抗化の後、更に潜在的または顕在的な絶縁化を経てp型化されるということができるであろう。
本願発明者らは、p型化した交互積層構造を更にアニールすると、再びn型導電性をもちうることを発見した。一例としてサンプル2のアニール前試料に、大気中で650℃、120分間のアニール処理を実施したところ、交互積層構造形成位置はn型化した。したがってアニール処理は、たとえば交互積層構造が高抵抗化を経てp型化した後、再びn型層となる前に終了すればよい。
次に、図6及び図7を参照し、第2実験について説明する。本願発明者らは、たとえば図6A及び図6Bに示すデータより、交互積層構造(層上にCuが供給されたGaドープZnO単結晶層)のアニール時に、Cu及びGaが、交互積層構造の形成位置以外にも拡散することを見出した。
図6A及び図6Bは、それぞれSIMSによるサンプル2のCu濃度[Cu]、Ga濃度[Ga]のデプスプロファイルを示すグラフである。グラフの横軸は、試料の深さ方向の位置を単位「μm」で表し、縦軸は、それぞれCu濃度[Cu]、Ga濃度[Ga]を、単位「cm−3」で表す。横軸はリニアスケール、縦軸は対数スケールを用いている。曲線aはアニール前試料、曲線bは、650℃で30分間のアニール処理を行い、交互積層構造をp型化した試料、曲線cは、650℃で120分間のアニール処理を行い、p型化した交互積層構造形成位置をn型層とした試料のCu濃度[Cu]、Ga濃度[Ga]を示す。曲線bが示すCu濃度[Cu]、Ga濃度[Ga]は、図5のサンプル2の欄に示すグラフのそれらに等しい。
図6Aを参照する。曲線aと曲線b、cとを比較すると、アニールを経ることにより、Cuが下地層(アンドープZnO層)側に拡散しているのがわかる。曲線b、曲線cで示す濃度プロファイルにおいて、Cu濃度[Cu]が著しい勾配で減少をはじめる深さをCuの拡散範囲の指標として採用すると、650℃、30分間のアニール(曲線b)では、交互積層構造形成位置から下地層側に約25nmの範囲がCuの拡散範囲となる。また、650℃、120分間のアニール(曲線c)によるCuの拡散範囲は、下地層側に約49nmの範囲となる。なお、Cuに関しては、曲線b、曲線cの双方において、拡散範囲内のCu濃度[Cu]は、交互積層構造形成位置のCu濃度[Cu]と同程度である。
図6Bを参照する。曲線aと曲線b、cとを比較すると、Gaについても、アニールを経ることにより、下地層側に拡散することがわかる。Ga濃度[Ga]に関しては、曲線bの場合も曲線cの場合も、交互積層構造形成位置の下地層側端部近傍から緩やかに減少を開始した後、著しい勾配で減少しはじめる。Ga濃度[Ga]が著しい勾配で減少をはじめる深さをGaの拡散範囲の指標として採用すると、650℃、30分間のアニール(曲線b)では、交互積層構造形成位置から下地層側に約21nmの範囲がGaの拡散範囲となる。また、650℃、120分間のアニール(曲線c)によるGaの拡散範囲は、下地層側に約43nmの範囲となる。なお、曲線bにおいては、拡散範囲内のGa濃度[Ga]は、交互積層構造形成位置のGa濃度[Ga]の40%弱以上である。また、曲線cにおいては、拡散範囲内のGa濃度[Ga]は、交互積層構造形成位置のGa濃度[Ga]の30%弱以上である。
このように、Cu及びGaは、アニールにより交互積層構造形成位置の外部に拡散する。CuはGaより拡散しやすい。
図6A及び図6Bからわかるように、サンプル2のp型化条件(大気中で650℃、30分間のアニール)においては、外部拡散に伴うp型層(交互積層構造形成位置)中のCu濃度[Cu]やGa濃度[Ga]の低下は非常に小さい。単にp型層を得るという観点においては、CuやGaの下地層側への拡散に伴うpn接合における濃度変化の急峻性の悪化や、p型領域及びn型領域の形状の変化も特には問題とならない程度であろう。しかしながらpn接合を用いたデバイスという観点で見た場合、その特性に影響を及ぼす可能性がある。また、前述したように、p型化のためのアニール条件は、交互積層構造やGaドープZnO単結晶層の厚さ、交互積層構造における[Cu]、[Ga]、[Cu]/[Ga]等によって異なると考えられるため、CuやGaの外部拡散の程度も、それらにより、更に問題が生じるほど大きくなる可能性がある。
そこで本願発明者らは、Cu及びGaの拡散の防止を意図し、サンプル5を作製した。
なお、本願発明者らは、たとえば特許文献6において、N(窒素)ドープn型MgZnO層が、n型ドーパントの拡散を抑制する機能を有することを開示している。
図7Aは、サンプル5のアニール前試料の概略的な断面図である。図2Aに示すサンプル1と比較したとき、アンドープZnO層と交互積層構造との間にN(窒素)ドープp型MgZnO層64が形成されている。
ZnO基板61に900℃で30分間のサーマルクリーニングを施した後、基板61温度を300℃に下げ、ZnフラックスFZnを0.16nm/s、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O2流量2.0sccmとし、ZnO基板61上に厚さ約30nmのZnOバッファ層62を成長させた。成長時間は4分である。ZnOバッファ層62の結晶性及び表面平坦性の改善のため、900℃で30分間のアニールを行った。
ZnOバッファ層62上に、成長温度を900℃、ZnフラックスFZnを0.16nm/s、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O2流量2.0sccmとして、厚さ約90nmのアンドープZnO層63を成長させた。成長時間は13分である。
アンドープZnO層63上に、成長温度を700℃、ZnフラックスFZnを0.11nm/s、MgフラックスFMgを0.04nm/s、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O2流量2.0sccm、Nラジカルビーム照射条件をRFパワー100W、N2流量0.5sccmとして、厚さ約10nmのNドープp型MgZnO層64を成長させた。成長時間は105秒、VI/IIフラックス比は1.22である。なお、Nソースガンのシャッタを閉の位置にして(シャッタクローズド)、N2流量を0.5sccmに調整した。
Nドープp型MgZnO層64上に、Zn、O及びGaと、Cuとを別々のタイミングで供給し、成長温度300℃で交互積層構造65を形成した。
サンプル5の交互積層構造65の作製においては、1回当たりのGaドープZnO単結晶層成長期間を16秒、Cuセルシャッタの1回当たりの開期間を10秒とした。GaドープZnO単結晶層成長工程とCu付着工程を交互に30回ずつ繰り返し、厚さ約90nmの交互積層構造65を得た。GaドープZnO単結晶層成長工程でのZnフラックスFZnは0.16nm/s、Oラジカルビーム照射条件はRFパワー300W、O2流量2.0sccm、Gaのセル温度TGaは505℃とした。VI/IIフラックス比は1より小さく、Znリッチ条件である。Cu付着工程でのCuのセル温度TCuは930℃とし、CuフラックスFCuを0.0015nm/sとした。
こうして作製した試料に、大気中で610℃、35分間のアニール処理を施し、交互積層構造65をp型化した。
図7Bは、SIMSによるサンプル5のCu濃度[Cu]、Ga濃度[Ga]、及びN濃度[N]のデプスプロファイルを示すグラフである。グラフの横軸は、アニール後試料の深さ方向の位置を単位「nm」で表し、縦軸は濃度を単位「cm−3」で表す。横軸はリニアスケール、縦軸は対数スケールを用いている。曲線dは[Cu]、曲線eは[Ga]、曲線fは[N]を示す。
交互積層構造65の形成位置に対応する範囲(p型層の形成位置)におけるCu濃度[Cu]は7.5×1019cm−3、Ga濃度[Ga]は4.1×1019cm−3であり、ともにp型層の厚さ方向の全体にわたり、ほぼ一定であることがわかる。[Cu]/[Ga]の値は1.8である。また、Nドープp型MgZnO層64におけるN濃度[N]は、2.7×1020cm−3である。
[Cu]及び[Ga]は、Nドープp型MgZnO層64内で2桁以上も低下しており、pn接合における濃度変化は急峻である。Cu及びGaの下地層(アンドープZnO層63)側への拡散はほとんど見られない。Nドープp型MgZnO層64が、交互積層構造65形成位置からアンドープZnO層63側への、Cu及びGaの拡散を抑制している(Nドープp型MgZnO層64がCu及びGaをとどめている)ことがわかる。
一方、Nドープp型MgZnO層64のNは、p型層(交互積層構造65の形成位置に対応する範囲)側にも、n型層(アンドープZnO層63)側にも若干拡散している。拡散の程度はp型層側が大きい。
図7Cは、交互積層構造の[11−20]方向から見たRHEED像である。RHEED像はストリークパターンを示している。表面が平坦で良好な結晶性を有する単結晶層が形成されていることがわかる。またアニールによって形成されたp型層の表面平坦性及び結晶性は、更に向上するものと考えられる。
第2実験より、交互積層構造65(層上にCuが供給されたGaドープn型ZnO単結晶層)とアンドープZnO層63の間にNドープp型MgZnO層64を形成してアニールを行うことにより、アンドープZnO層63側へのCu及びGaの拡散を抑制しつつ、交互積層構造65をp型化可能であることがわかった。アニールによって形成されたp型層は、表面平坦性と良好な結晶性を有する。
第2実験においては、Nドープp型MgZnO層64におけるN濃度(平均値)を、2.7×1020cm−3としたが、少なくとも1.0×1019cm−3以上ドープされていれば、アンドープZnO層63側へのCu及びGaの拡散を抑制する効果は得られるであろう。望ましくは1.0×1020cm−3以上ドープされ、交互積層構造のGa濃度よりN濃度を高くすることにより、より効果的にGaの拡散抑制が可能である。
本願発明者らが行った実験により、層上にCuが供給されたGaドープZnO単結晶層(GaドープZnO単結晶層成長工程とCu付着工程を交互に繰り返し形成した交互積層構造)にアニール処理を施すことで、高抵抗化の後、CuとGaが共ドープされたp型ZnO層が得られることがわかった。その際、Nがドープされたp型MgZnO層を配置することで、Cu及びGaの拡散を抑制可能であることも判明した。
次に、図8A及び図8Bを参照し、Cu、Ga共ドープZnO層をp型半導体層に用い、NドープMgZnO層を拡散防止層として備える、第1実施例によるZnO系半導体発光素子について説明する。第1実施例はホモ構造のZnO系半導体発光素子である。なお、実施例においては半導体発光素子について述べるが、本発明は、発光素子に限らず広く半導体素子について適用することができる。
まず、第1実施例によるZnO系半導体発光素子の製造方法を説明する。
図8Aに示すように、ZnO基板1上方に、成長温度300℃で、ZnフラックスFZnを0.15nm/s(JZn=9.9×1014atoms/cm2s)とし、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O2流量2.0sccm(JO=8.1×1014atoms/cm2s)として、厚さ30nmのZnOバッファ層2を成長させた。ZnOバッファ層2の結晶性及び表面平坦性の改善のため、900℃で10分間のアニールを行った。
ZnOバッファ層2上方に、成長温度900℃で、Zn、O及びGaを同時に供給し、厚さ150nmのn型ZnO層3を成長させた。ZnフラックスFZnは0.15nm/s(JZn=9.9×1014atoms/cm2s)、Oラジカルビーム照射条件はRFパワー250W、O2流量1.0sccm(JO=4.0×1014atoms/cm2s)、Gaのセル温度は460℃とした。n型ZnO層3のGa濃度は、たとえば1.5×1018cm−3である。
n型ZnO層3上方に、成長温度900℃、ZnフラックスFZnを0.03nm/s(JZn=2.0×1014atoms/cm2s)、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O2流量2.0sccm(JO=8.1×1014atoms/cm2s)として、厚さ15nmのアンドープZnO活性層4を成長させた。
アンドープZnO活性層4上方に、成長温度700℃、ZnフラックスFZnを0.11nm/s、MgフラックスFMgを0.04nm/s、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O2流量2.0sccm(JO=8.1×1014atoms/cm2s)、Nラジカルビーム照射条件をRFパワー100W、N2流量0.5sccm(シャッタクローズド)として、Nドープp型MgZnOで構成される、厚さ10nmの拡散防止層5pを成長させた。VI/IIフラックス比は1.22である。また、拡散防止層5p(Nドープp型MgZnO層)のMg組成は、たとえば0.32である。
拡散防止層5p上方に、Cu、Ga共ドープp型ZnO層6を形成した。
まず、基板温度を300℃とし、サンプル1のアニール前試料作製時と等しいシャッタシーケンス(図2B参照)で、Zn、O及びGaと、Cuとを別々のタイミングで供給し、膜上にCuが供給されたGaドープn型ZnO単結晶膜を形成した。具体的には、Zn、O及びGaを供給してGaドープZnO単結晶膜を成長させる工程と、GaドープZnO単結晶膜上にCuを供給する工程を交互に140回ずつ繰り返し、厚さ480nmの交互積層構造を形成した。交互積層構造は、膜上にCuが供給されたGaドープn型ZnO単結晶膜が140層、厚さ方向に積層されたものと考えることができる。
1回当たりのGaドープZnO単結晶膜成長期間は16秒、1回当たりのCu供給期間は10秒とした。GaドープZnO単結晶膜成長工程でのZnフラックスFZnは0.17nm/s(JZn=1.1×1015atoms/cm2s)、Oラジカルビーム照射条件はRFパワー300W、O2流量2.0sccm(JO=8.1×1014atoms/cm2s)とし、Gaのセル温度TGaは490℃とした。VI/IIフラックス比は0.74である。また、Cu供給工程でのCuのセル温度TCuは930℃とし、CuフラックスFCuを0.0015nm/sとした。
図8Bは、交互積層構造6Aの概略的な断面図である。交互積層構造6Aは、GaドープZnO単結晶膜6aとCu層6bが交互に積層された構造(膜上にCuが供給されたGaドープZnO単結晶膜6aが厚さ方向に積層された構造)を有する。GaドープZnO単結晶膜6aの厚さは3.3nm程度、Cu層6bの厚さは1原子層以下、たとえば約1/20原子層(GaドープZnO単結晶膜6a表面のCu被覆率が5%程度)である。交互積層構造6A(膜上にCuが供給されたGaドープZnO単結晶膜6a)はn型導電性を示し、ドナー濃度Ndは、たとえば約1.0×1020cm−3である。
次に、膜上にCuが供給されたGaドープZnO単結晶膜6a(交互積層構造6A)をアニールして、Cuがドープされたp型膜(Cu、Ga共ドープp型ZnO層6)とした。たとえば大気中で650℃、70分間のアニールを実施することにより、Cu層6bのCuをGaドープZnO単結晶膜6a内に拡散させ、n型導電性を示す交互積層構造6Aをp型化することができる。このアニール条件においては、GaドープZnO単結晶膜6aは、潜在的な高抵抗化を経てp型化される。
なお、たとえば大気中で650℃、30分間のアニールを実施し、GaドープZnO単結晶膜6aを顕在的に高抵抗化した後、更に、大気中で650℃、40分間のアニールを行うことにより、GaドープZnO単結晶膜6aをp型化してもよい。
その後、ZnO基板1の裏面にn側電極7nを形成した。Cu、Ga共ドープp型ZnO層6上にはp側電極7pを形成し、p側電極7p上にボンディング電極8を形成した。n側電極7nは、厚さ10nmのTi層上に厚さ500nmのAu層を積層して形成することができる。p側電極7pは、サイズ300μm□で厚さ1nmのNi層上に、厚さ10nmのAu層を積層して形成し、ボンディング電極8は、サイズ100μm□で厚さ500nmのAu層で形成した。こうして第1実施例によるZnO系半導体発光素子が作製された。
図8Aは、第1実施例によるZnO系半導体発光素子の概略的な断面図である。第1実施例によるZnO系半導体発光素子は、n型ZnO系半導体層(n型ZnO層3)、n型ZnO系半導体層上方に形成されたZnO系半導体活性層(アンドープZnO活性層4)、ZnO系半導体活性層上方に形成された第1のp型ZnO系半導体層(拡散防止層5p)、第1のp型ZnO系半導体層上方に形成された第2のp型ZnO系半導体層(Cu、Ga共ドープp型ZnO層6)、n型ZnO系半導体層に電気的に接続されたn側電極(n側電極7n)、及び、第2のp型ZnO系半導体層に電気的に接続されたp側電極(p側電極7p)を含む。
Cu、Ga共ドープp型ZnO層6は、CuとGaが共ドープされたp型ZnO系単結晶層である。Cu、Ga共ドープp型ZnO層6内において、Cu濃度[Cu]とGa濃度[Ga]とは、1<[Cu]/[Ga]<100の関係を満たし、より望ましくは、2≦[Cu]/[Ga]≦50の関係を満たす。具体的には、Cu濃度[Cu]は1.0×1019cm−3以上、1.0×1021cm−3未満、たとえば2.2×1020cm−3であり、層の厚さ方向にほぼ一定である。Ga濃度[Ga]は、たとえば3.4×1019cm−3であり、層の厚さ方向にほぼ一定である。[Cu]/[Ga]は6.5である。第1実施例による半導体発光素子のCu、Ga共ドープp型ZnO層6は、Cuが高濃度に、かつ、厚さ方向の全体にわたって均一にドープされたp型ZnO層であり、実用的なp型導電性を有する。n型導電性を示すGaドープZnO単結晶膜6aを、低い温度でアニールすることによりp型化し、形成することができる。また、表面平坦性と良好な結晶性を有する。
拡散防止層5pは、NがドープされたMgZnOで構成されるp型層である。拡散防止層5pにおけるN濃度[N]は、1.0×1019cm−3以上、たとえば2.7×1020cm−3である。拡散防止層5pは、第1実施例によるZnO系半導体発光素子の製造時、たとえば交互積層構造6Aをアニールし、Cu、Ga共ドープp型ZnO層6を形成する際、交互積層構造6AからアンドープZnO活性層4側に、Cu及びGaが拡散するのを防止する。Cu及びGaの拡散が防止されるため、アンドープZnO活性層4の厚さが保たれるとともに、結晶品質を低下させない。また、アンドープZnO活性層4において、非発光中心となる欠陥の生成が抑制され、高い発光効率の半導体発光素子とすることができる。[Cu]及び[Ga]は、拡散防止層5p内で、たとえば2桁以上低下する。([Cu]及び[Ga]は、それぞれ拡散防止層5p内のCu、Ga共ドープp型ZnO層6側とアンドープZnO活性層4側とで、2桁以上の差がある。)このため、第1実施例によるZnO系半導体発光素子のpn接合における濃度変化は急峻である。
このように、第1実施例によるZnO系半導体発光素子は、高品質の半導体発光素子である。
図8Cは、第1実施例の変形例によるZnO系半導体発光素子の概略的な断面図である。第1実施例の変形例は、Gaがドープされたn型ZnO層3とアンドープZnO活性層4の間に拡散防止層5nを含む点で、実施例と異なる。拡散防止層5nは、たとえばNがドープされたZnOで構成され、半導体発光素子の製造時に、n型ZnO層3のGa(n型ドーパント)がアンドープZnO活性層4側に拡散するのを防止し、アンドープZnO活性層4の厚さを保つとともに、結晶品質の低下を抑制する。拡散防止層5nは、たとえば成長温度800℃以上1000℃以下、VI/IIフラックスを1以下として形成することができる。
一例として、拡散防止層5nを、n型ZnO層3上方に、成長温度900℃、ZnフラックスFZnを0.3nm/s(JZn=2.0×1015atoms/cm2s)、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー250W、O2流量1.0sccm(JO=4.0×1014atoms/cm2s)、Nラジカルビーム照射条件をRFパワー140W、N2流量1.0sccmとして、厚さ50nmに成長させることができる。VI/IIフラックス比は、0.22である。アンドープZnO活性層4は、拡散防止層5n上方に形成する。拡散防止層5n以外の層等の形成条件は実施例と同様である。
拡散防止層5nはn型導電性を示す。N元素はZnOのOサイトを置換した場合、アクセプタとして機能するが、成長条件によってはN2分子などの形で取り込まれる。ZnO中のN2分子はダブルドナーとして振舞うため、拡散防止層5nはn型層となる。VI/IIフラックス比や成長温度などの成長条件を適宜設定し、アクセプタまたはドナーとしてのNの振舞いを規定することが可能である。
拡散防止層5nをNドープn型MgZnOで構成することもできる。たとえば成長温度950℃、ZnフラックスFZnを0.3nm/s、MgフラックスFMgを0.01nm/s、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー250W、O2流量1.0sccm、Nラジカルビーム照射条件をRFパワー140W、N2流量1.0sccmとして、厚さ50nmに形成可能である。VI/IIフラックス比は、0.32となる。また、Nドープn型MgZnO層のMg組成は、たとえば0.2である。
変形例においては、拡散防止層5nは、n型ZnO層3及びアンドープZnO活性層4に隣接するが、両者の間に配置されていればよく、隣接する必要はない。
なお、第1実施例においては、Gaがドープされたn型ZnO層3を形成したが、たとえば特開2011−134787号公報に記載されているように、ZnO層3のn型ドーパントとしてNを用いてもよい。拡散防止層5nを形成しない場合でも、n型ドーパントとしてGaを用いた場合に見られるような拡散を抑制することができる。
実験、第1実施例、及び第1実施例の変形例では、Cu、Ga共ドープp型ZnO層を形成した(MgxZn1−xO表記においてx=0)が、膜上にCuが供給されたGaドープn型MgxZn1−xO(0<x≦0.6)単結晶膜をアニールすることにより、Cuがドープされたp型膜(Cu、Ga共ドープp型MgxZn1−xO(0<x≦0.6)単結晶膜)を得ることができる(MgxZn1−xO表記においてx≠0)。
膜上にCuが供給されたGaドープn型MgxZn1−xO(0<x≦0.6)単結晶膜を形成する例として、Gaドープn型MgxZn1−xO(0<x≦0.6)単結晶膜とCu層が交互に積層された交互積層構造を形成する場合を説明する。
図9は、交互積層構造を形成する際のZnセル、Mgセル、Oセル、Gaセル、及びCuセルのシャッタシーケンスの一例を示すタイムチャートである。
交互積層構造の形成においては、Znセルシャッタ、Mgセルシャッタ、Oセルシャッタ、及びGaセルシャッタを開き、Cuセルシャッタを閉じるGaドープMgxZn1−xO(0<x≦0.6)単結晶膜成長工程と、Znセルシャッタ、Mgセルシャッタ、Oセルシャッタ、及びGaセルシャッタを閉じ、Cuセルシャッタを開くCu付着工程とを交互に繰り返す。
本図に示す例では、GaドープMgxZn1−xO単結晶膜成長工程におけるZnセルシャッタの開期間が、Mgセルシャッタ、Oセルシャッタ、及びGaセルシャッタの開期間を含むように設定されている。具体的には、Mgセルシャッタ、Oセルシャッタ、及びGaセルシャッタの開閉は同時に行われ、Mgセルシャッタ、Oセルシャッタ、及びGaセルシャッタの開期間の前後に、Znセルシャッタの開期間が延長される。
たとえば、Mgセルシャッタ、Oセルシャッタ、及びGaセルシャッタの1回当たりの開期間は16秒である。Mgセルシャッタ、Oセルシャッタ、及びGaセルシャッタの開期間の前後にZnセルシャッタの開期間を1秒ずつ延長し、Znセルシャッタの1回当たりの開期間を18秒とする。Znセルシャッタ、Mgセルシャッタ、Oセルシャッタ、及びGaセルシャッタがすべて開状態となる16秒間が、1回当たりのGaドープMgxZn1−xO単結晶膜成長期間である。Cuセルシャッタの1回当たりの開期間は10秒とした。
OラジカルとCuを同時に供給しないことに加え、Cu付着工程の前後で、GaドープMgxZn1−xO単結晶膜表面をZnで覆うことにより、OラジカルとCuの直接の反応が抑制される。
なお、ZnとともにMgを供給する場合、OラジカルとCuの反応を抑制するという観点からは、Znセルシャッタの開期間とMgセルシャッタの開期間の少なくとも一方が、Oセルシャッタの開期間を含むようにすればよいであろう。GaドープMgxZn1−xO単結晶膜のMg組成の制御性を高める観点からは、Znセルシャッタの開期間が、Mgセルシャッタ及びOセルシャッタの開期間を含むようにすればよいと考えられる。
膜上にCuが供給されたGaドープn型MgxZn1−xO(0<x≦0.6)単結晶膜(交互積層構造)をアニールすることにより、高抵抗化を経て、Cu、Ga共ドープp型MgxZn1−xO(0<x≦0.6)単結晶膜が作製される。
次に、Cu、Ga共ドープp型MgxZn1−xO(0<x≦0.6)単結晶層を備え、Nドープp型MgZnO層を拡散防止層として有するダブルへテロ構造のZnO系半導体発光素子に係る第2実施例及び第3実施例について述べる。
図10A〜図10Cを参照し、第2実施例によるZnO系半導体発光素子の製造方法を説明する。
図10Aに示すように、ZnO基板11上方に、Zn及びOを同時に供給し、たとえば厚さ30nmのZnOバッファ層12を成長させた。一例として、成長温度を300℃、ZnフラックスFZnを0.15nm/s、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O2流量2.0sccmとすることができる。ZnOバッファ層12の結晶性及び表面平坦性の改善のため、900℃で10分間のアニールを行った。
ZnOバッファ層12上方に、Zn、O及びGaを同時に供給し、たとえば成長温度900℃で、厚さ150nmのn型ZnO層13を成長させた。ZnフラックスFZnを0.15nm/s、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー250W、O2流量1.0sccm、Gaセル温度を460℃とした。n型ZnO層13のGa濃度は、たとえば1.5×1018cm−3となる。
n型ZnO層13上方に、Zn、Mg及びOを同時に供給し、たとえば厚さ30nmのn型MgZnO層14を成長させた。成長温度を900℃、ZnフラックスFZnを0.1nm/s、MgフラックスFMgを0.025nm/s、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O2流量2sccmとすることができる。n型MgZnO層14のMg組成は、たとえば0.3である。
n型MgZnO層14上方に、Zn及びOを同時に供給し、たとえば成長温度900℃で、厚さ10nmのZnO活性層15を成長させた。ZnフラックスFZnを0.1nm/s、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O2流量2.0sccmとした。
なお、図10Bに示すように、活性層15として、単層のZnO層ではなく、MgZnO障壁層15bとZnO井戸層15wが交互に積層された量子井戸構造を採用することができる。
活性層15上方に、Zn、Mg、O及びNを同時に供給し、たとえば厚さ10nmのNドープp型MgZnOで構成される拡散防止層16pを成長させた。成長温度を700℃、ZnフラックスFZnを0.11nm/s、MgフラックスFMgを0.04nm/s、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O2流量2.0sccm、Nラジカルビーム照射条件をRFパワー100W、N2流量0.5sccm(シャッタクローズド)とすることができる。VI/IIフラックス比は1.22である。また、拡散防止層16p(Nドープp型MgZnO層)のMg組成は、たとえば0.32である。
基板温度をたとえば300℃まで下げ、GaドープMgZnO単結晶膜成長工程とCu付着工程とを交互に繰り返し、拡散防止層16p上方に交互積層構造を形成した。交互積層構造形成に当たってのZnセル、Mgセル、Oセル、Gaセル、及びCuセルのシャッタシーケンスは、たとえば図9に示すそれと同様である。
たとえば、1回当たりのGaドープMgZnO単結晶膜成長工程での成長期間を16秒とし、1回当たりのCu付着工程におけるCu供給期間を10秒とした。GaドープMgZnO単結晶膜成長工程でのZnフラックスFZnは0.15nm/s、MgフラックスFMgは0.03nm/s、Oラジカルビーム照射条件は、RFパワー300W、O2流量2.0sccm、Gaのセル温度TGaは498℃である。VI/IIフラックス比は0.72となる。Cu供給工程でのCuのセル温度TCuは930℃とし、CuフラックスFCuを0.0015nm/sとした。GaドープMgZnO単結晶膜成長工程とCu付着工程を交互に60回ずつ繰り返し、厚さ200nmの交互積層構造を得た。交互積層構造は、膜上にCuが供給されたGaドープn型MgZnO単結晶膜が60層、厚さ方向に積層されたものと考えることができる。
図10Cは、交互積層構造17Aの概略的な断面図である。交互積層構造17Aは、GaドープMgZnO単結晶膜17aとCu層17bが交互に積層された積層構造(膜上にCuが供給されたGaドープMgZnO単結晶膜17aが、厚さ方向に積層された構造)を有する。GaドープMgZnO単結晶膜17aの厚さは3.3nm程度、Cu層17bの厚さは1原子層以下、たとえば約1/20原子層(GaドープMgZnO単結晶膜17a表面のCu被覆率が5%程度)である。交互積層構造17A(膜上にCuが供給されたGaドープMgZnO単結晶膜17a)はn型導電性を示し、ドナー濃度Ndは、たとえば約7.5×1019cm−3である。
次に、膜上にCuが供給されたGaドープMgZnO単結晶膜17a(交互積層構造17A)をアニールし、拡散防止層16p上方に、Cuがドープされたp型膜(Cu、Ga共ドープp型MgZnO層17)を形成した。たとえば大気中で650℃、20分間のアニールを実施することにより、Cu層17bのCuをGaドープMgZnO単結晶膜17a内に拡散させ、n型導電性を示す交互積層構造17Aをp型化することができる。このアニール条件においては、GaドープMgZnO単結晶膜17aは、潜在的な高抵抗化を経てp型化される。
なお、たとえば大気中で650℃、10分間のアニールを実施し、GaドープMgZnO単結晶膜17aを顕在的に高抵抗化した後、更に、大気中で650℃、10分間のアニールを行うことにより、GaドープMgZnO単結晶膜17aをp型化してもよい。
Cu、Ga共ドープp型MgZnO層17のMg組成は、たとえば0.3である。
ZnO基板11の裏面にn側電極18nを形成し、Cu、Ga共ドープp型MgZnO層17上にp側電極18pを形成する。また、p側電極18p上にボンディング電極19を形成する。たとえばn側電極18nは、厚さ10nmのTi層上に厚さ500nmのAu層を積層して形成し、p側電極18pは、大きさ300μm□で厚さ1nmのNi層上に、厚さ10nmのAu層を積層して形成することができる。ボンディング電極19は、大きさ100μm□で厚さ500nmのAu層で形成する。こうして第2実施例によるZnO系半導体発光素子が作製される。
第2実施例においてはZnO基板11を用いたが、MgZnO基板、GaN基板、SiC基板、Ga2O3基板等の導電性基板を使用することが可能である。
図10Aは、第2実施例によるZnO系半導体発光素子の概略的な断面図である。第2実施例によるZnO系半導体発光素子は、n型ZnO系半導体層(たとえばn型ZnO層13)、n型ZnO系半導体層上方に形成されたZnO系半導体活性層(活性層15)、ZnO系半導体活性層上方に形成された第1のp型ZnO系半導体層(拡散防止層16p)、第1のp型ZnO系半導体層上方に形成された第2のp型ZnO系半導体層(Cu、Ga共ドープp型MgZnO層17)、n型ZnO系半導体層に電気的に接続されたn側電極(n側電極18n)、及び、第2のp型ZnO系半導体層に電気的に接続されたp側電極(p側電極18p)を含む。
Cu、Ga共ドープp型MgZnO層17は、CuとGaが共ドープされたp型ZnO系単結晶層である。Cu、Ga共ドープp型MgZnO層17内において、Cu濃度[Cu]とGa濃度[Ga]とは、1<[Cu]/[Ga]<100の関係を満たし、より望ましくは、2≦[Cu]/[Ga]≦50の関係を満たす。具体的には、Cu濃度[Cu]は1.0×1019cm−3以上、1.0×1021cm−3未満、たとえば2.0×1020cm−3であり、層の厚さ方向にほぼ一定である。Ga濃度[Ga]は、たとえば3.6×1019cm−3であり、層の厚さ方向にほぼ一定である。[Cu]/[Ga]は5.6である。第2実施例による半導体発光素子のCu、Ga共ドープp型MgZnO層17は、Cuが高濃度に、かつ、厚さ方向の全体にわたって均一にドープされたp型MgZnO層であり、実用的なp型導電性を有する。n型導電性を示すGaドープMgZnO単結晶膜17aを、低い温度でアニールすることによりp型化し、形成することができる。また、表面平坦性と良好な結晶性を有する。
拡散防止層16pは、NがドープされたMgZnOで構成されるp型層である。拡散防止層16pにおけるN濃度[N]は、1.0×1019cm−3以上、たとえば2.7×1020cm−3である。拡散防止層16pは、第2実施例によるZnO系半導体発光素子の製造時、たとえば交互積層構造17Aをアニールし、Cu、Ga共ドープp型MgZnO層17を形成する際、交互積層構造17Aから活性層15側に、Cu及びGaが拡散するのを防止する。Cu及びGaの拡散が防止されるため、活性層15の厚さが保たれるとともに、結晶品質を低下させない。また、活性層15において、非発光中心となる欠陥の生成が抑制され、高い発光効率の半導体発光素子とすることができる。[Cu]及び[Ga]は、拡散防止層16p内で、たとえば2桁以上低下する。([Cu]及び[Ga]は、それぞれ拡散防止層16p内のCu、Ga共ドープp型MgZnO層17側と活性層15側とで、2桁以上の差がある。)このため、第2実施例によるZnO系半導体発光素子のpn接合における濃度変化は急峻である。
このように、第2実施例によるZnO系半導体発光素子は、高品質の半導体発光素子である。
図10Dは、第2実施例の変形例によるZnO系半導体発光素子の概略的な断面図である。第2実施例の変形例は、n型ZnO層13と活性層15の間、たとえばn型ZnO層13とn型MgZnO層14の間に拡散防止層16nを含む点で、実施例と異なる。
拡散防止層16nは、たとえばNがドープされたZnO、またはNがドープされたMgZnOで構成されるn型層であり、半導体発光素子の製造時に、n型ZnO層13のGa(n型ドーパント)が活性層15側に拡散するのを防止し、活性層15の厚さを保つとともに、結晶品質の低下を抑制する。拡散防止層16nは、第1実施例の変形例における拡散防止層5nと同様に形成可能である。
なお、n型ZnO層13のn型ドーパントとして、GaではなくNを用いた場合、拡散防止層16nを形成しなくても、n型ドーパントとしてGaを用いた場合に見られるような拡散を抑制することができる。
図11Aを参照し、第3実施例によるZnO系半導体発光素子の製造方法を説明する。第1、第2実施例及びその変形例においては導電性基板上方に半導体層を形成したが、第3実施例では絶縁性基板上方に半導体層を形成する。
絶縁性基板であるc面サファイア基板21上方に、Mg及びOを同時に供給し、たとえば厚さ10nmのMgOバッファ層22を成長させる。一例として、成長温度を650℃、MgフラックスFMgを0.05nm/s、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O2流量2sccmとすることができる。MgOバッファ層22は、その上のZnO系半導体層がZn面を表面として成長するように制御する極性制御層として機能する。
MgOバッファ層22上方に、たとえば成長温度300℃、ZnフラックスFZnを0.15nm/s、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O2流量2.0sccmとして、Zn及びOを同時に供給し、厚さ30nmのZnOバッファ層23を成長させる。ZnOバッファ層23はZn面で成長する。ZnOバッファ層23の結晶性及び表面平坦性の改善のため、900℃で30分間のアニールを行う。
ZnOバッファ層23上方に、Zn、O及びGaを同時に供給し、たとえば厚さ1.5μmのn型ZnO層24を成長させる。一例として成長温度を900℃、ZnフラックスFZnを0.05nm/s、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O2流量2sccm、Gaのセル温度を480℃とする。
n型ZnO層24上方に、Zn、Mg及びOを同時に供給し、たとえば厚さ30nmのn型MgZnO層25を成長させる。成長温度を900℃、ZnフラックスFZnを0.1nm/s、MgフラックスFMgを0.025nm/s、Oラジカルビーム照射条件をRFパワー300W、O2流量2sccmとすることができる。n型MgZnO層25のMg組成は、たとえば0.3である。
n型MgZnO層25上方に、たとえば厚さ10nmのZnO活性層26を成長させる。成長条件は、第2実施例における活性層15の場合と等しくすることができる。単層のZnO層のかわりに、量子井戸構造を採用してもよい。
活性層26上方に、たとえばNドープp型MgZnOで構成される拡散防止層27pを成長させる。成長条件は、たとえば第1、第2実施例における拡散防止層5p、16pのそれと等しい。
拡散防止層27p上方に、Cu、Ga共ドープp型MgZnO層28を形成する。形成方法は、たとえば第2実施例におけるCu、Ga共ドープp型MgZnO層17のそれと等しい。
第3実施例のc面サファイア基板21は絶縁性基板であるため、基板21裏面側にn側電極を取ることができない。そこでCu、Ga共ドープp型MgZnO層28の上面から、n型ZnO層24が露出するまでエッチングを行い、露出したn型ZnO層24上にn側電極29nを形成する。また、Cu、Ga共ドープp型MgZnO層28上にp側電極29pを形成し、p側電極29p上にボンディング電極30を形成する。
n側電極29nは、厚さ10nmのTi層上に厚さ500nmのAu層を積層して形成し、p側電極29pは、厚さ0.5nmのNi層上に厚さ10nmのAu層を積層して形成することができる。ボンディング電極30は、厚さ500nmのAu層で形成する。こうして第3実施例によるZnO系半導体発光素子が作製される。
図11Aは、第3実施例によるZnO系半導体発光素子の概略的な断面図である。第3実施例によるZnO系半導体発光素子も、第1及び第2実施例と同様に、n型ZnO系半導体層(たとえばn型ZnO層24)、n型ZnO系半導体層上方に形成されたZnO系半導体活性層(活性層26)、ZnO系半導体活性層上方に形成された第1のp型ZnO系半導体層(拡散防止層27p)、第1のp型ZnO系半導体層上方に形成された第2のp型ZnO系半導体層(Cu、Ga共ドープp型MgZnO層28)、n型ZnO系半導体層に電気的に接続されたn側電極(n側電極29n)、及び、第2のp型ZnO系半導体層に電気的に接続されたp側電極(p側電極29p)を含む。
第3実施例のCu、Ga共ドープp型MgZnO層28は、第2実施例のCu、Ga共ドープp型MgZnO層17と同様の性質を有する。また、第3実施例の拡散防止層27pは、第1、第2実施例の拡散防止層5p、16pと同様の性質及び機能を有する。
第3実施例によるZnO系半導体発光素子も、高品質の半導体発光素子である。
図11Bは、第3実施例の変形例によるZnO系半導体発光素子の概略的な断面図である。第3実施例の変形例は、n型ZnO層24と活性層26の間、たとえばn型ZnO層24とn型MgZnO層25の間に拡散防止層27nを含む点で、実施例と異なる。
拡散防止層27nは、たとえばNがドープされたZnO、またはNがドープされたMgZnOで構成されるn型層である。第2実施例の変形例における拡散防止層16nと同様に形成可能であり、同様の機能を有する。
なお、n型ZnO層24のn型ドーパントとして、GaではなくNを用いた場合、拡散防止層27nを形成しなくても、n型ドーパントとしてGaを用いた場合に見られるような拡散を抑制することができる。
以上、実験、実施例、及び変形例に沿って本発明を説明したが、本発明はこれらに制限されない。
たとえば実施例及び変形例によるZnO系半導体発光素子を製造するに当たり、酸素源としてOラジカルを用いたが、オゾンやH2O、アルコールなどの極性酸化剤等、酸化力の強い他のガスを使用することができる。また、窒素源としてプラズマ化したN2ガスを用いたが、たとえば特開2011−96884号公報に記載されているように、N2ガスにO2ガスを添加した混合ガスをプラズマ化して使用することができる。更に、MBE法を用い、膜上にCuが供給されたGaドープn型MgxZn1−xO(0≦x≦0.6)単結晶膜を形成したが、たとえば真空蒸着やスパッタにより形成してもよい。また、アニールを大気中で行ったが、酸素雰囲気中等で行ってもよい。
更に、実験、実施例、及び変形例では、膜上にCuが供給されたGaドープn型MgxZn1−xO(0≦x≦0.6)単結晶膜をアニールし、Cuがドープされたp型層(Cu、Ga共ドープp型MgxZn1−xO(0≦x≦0.6)単結晶層)とした。Cu(IB族元素)が付着したGa(IIIB族元素)ドープn型MgxZn1−xO単結晶膜がアニールされることで、CuがVIB族元素であるOと1価(Cu+)の状態で結合しやすくなり、アクセプタとして機能する1価のCu+が2価のCu2+より生じやすくなる結果、Gaドープn型MgxZn1−xO単結晶膜がp型化すると考えられる。したがって、Cuにかえて、またはCuとともに、Cuと同様に複数の価数を形成しうるIB族元素であるAgを用いることができる。また、Gaに限らず、Gaと同じくIIIB族元素であるB、Al及びInを使用することができる。使用されるIIIB族元素は、B、Ga、Al及びInからなる群より選択される一以上のIIIB族元素であればよい。
また、実施例及び変形例においては、Gaドープn型MgxZn1−xO(0≦x≦0.6)単結晶膜を厚さ約3.3nmに形成したが、10nm以下の厚さに形成することで、平坦性が高く、良好な結晶性を有するCu、Ga共ドープp型MgxZn1−xO(0≦x≦0.6)単結晶層を得ることができる。
更に、実施例及び変形例においては、Gaドープn型MgxZn1−xO(0≦x≦0.6)単結晶膜成長工程におけるVI/IIフラックス比を0.72〜0.74としたが、VI/IIフラックス比を1以下、より好ましくは0.5以上1未満とすることで、Cu、Ga共ドープp型MgxZn1−xO(0≦x≦0.6)単結晶層における、高い平坦性と良好な結晶性を実現可能である。
また、実施例及び変形例においては、Gaドープn型MgxZn1−xO(0≦x≦0.6)単結晶膜成長工程における成長温度を300℃としたが、200℃程度以上350℃以下で成長させることにより、平坦性が高く、良好な結晶性を有するCu、Ga共ドープp型MgxZn1−xO(0≦x≦0.6)単結晶層とすることができる。
更に、実験、実施例、及び変形例では、Nドープp型MgZnO層(拡散防止層)の成長温度を700℃としたが、300℃以上800℃未満の成長温度で成長させることができる。N元素はZnサイトを置換した場合アクセプタとなるが、N2分子の形で置換されるとダブルドナーとして振舞う。成長温度が800℃以上の高温になると、その熱エネルギによりZnO中でN2分子が生成されやすくなるためである。
また、実験、実施例、及び変形例においては、Nドープp型MgZnO層形成時におけるVI/IIフラックス比を1.22としたが、極端なOリッチ条件ではN原子が膜中に取り込まれなかったり、またZnリッチ条件(II族リッチ条件)においては、過剰にNが取り込まれN2分子が形成されたり、O空孔や格子間Znなどドナー性の欠陥が増加してアクセプタを補償してしまい、p型導電性を悪化させてしまったりするため、VI/IIフラックス比は1より大きく2以下とすることができる。
更に、MgZnO層にNをドープしてp型の拡散防止層としたが、N、P、As、及びSbからなる群(VB族元素)より選択される一以上の元素をp型ドーパントとして用いることが可能である。これらの元素は、たとえばアニールによって交互積層構造をp型化する際、ドーパント(実験、実施例及び変形例においてはCu及びGa)の拡散を低減する機能を有する。
また、実施例及び変形例においては、p型の拡散防止層をNがドープされたMgxZn1−xO(0<x≦0.6)層で形成したが、ZnO層(MgxZn1−xO表記においてx=0の場合)はもとより、CdaZn1−aO層、BeaZn1−aO層、CaaZn1−aO層(ともに0<a<1)や、ZnO1−bSb層、ZnO1−bSeb層、ZnO1−bTeb層(ともに0<b<1)といった種々のZnO系半導体層で形成することができる。
その他、種々の変更、改良、組み合わせ等が可能なことは当業者に自明であろう。