上記に挙げた特許文献1〜3のものはいずれも金属層をディメタライズド加工することによって、任意のパターンを成形し、新たな視覚効果や光学的効果を生じさせるようにしているが、特許文献1では、微細な点の集合として、ディメタライズド加工を行なう方法として、全面金属蒸着箔に模様を彫刻した刻印を用いる手法や、金属皮膜を化学的エッチングやレーザーエッチングなどの手法などを用いることが可能であると述べられている。特許文献2でも同様に、ディメタライズド加工の方法として化学的エッチングや、オイルアブレーションなどを用いることが述べられている。
これらの手法は金属層にマスクを施し、マスクが無い部分の金属層が除去されるため、マスクを有した部分のみ金属層のパターンが形成される。その結果、金属層の有無によって絵柄などのパターンを表現することが可能となる。よって、表現したい任意のパターン状にマスクを施した後に化学的エッチングなどを行なうことで、マスク部分以外の金属層を除去し、金属層による微細なパターン表現を可能としているが、表現できるパターン線幅などの精度はマスクの作製方法に依存することになる。このため、マスクの作製方法が高精細且つ高精度であるほど、金属層による微細なパターン表現が可能になる。
しかし、通常マスクはスクリーン印刷などの手法で作製されることが多く、線幅数100μmから数10μm程度のパターニングが限界である。さらに、スクリーン印刷の位置精度の限界から、狙いの位置からずれた箇所にマスクを作製してしまうこともあり、その場合、所望の金属層パターン形状が得られないといった課題があった。
また、特許文献3では、マスクとして、アスペクト比の異なる凹凸構造を設けており、これによってマスク作製時の位置精度の問題を改善している。また、凹凸構造を精度よく形成することでナノメートルオーダーの位置精度でマスク作製を行なうことが可能となった。
しかし、この特許文献3では、金属層を除去するための処理としてエッチングを行なっており、エッチングにかかる大規模な設備や製造時間が必要であり、デバイス生産時のコスト高の一因となっている。また、エッチングの際に用いるエッチング液の廃棄処理など、後工程でも様々な問題や煩わしさは依然として残ったままである。
このエッチングにかかる問題は特許文献1や特許文献2で提案されているディメタライズド加工においても同様の問題を孕んでいる。
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであり、本発明においては、凹凸構造が形成された凹凸領域と凹凸構造が形成されていない非凹凸領域からなる透明成形層の上に、光反射層を配した簡易な構成であって、凹凸構造の形状や深さ、ピッチなどに起因して光反射層の膜厚が変化することで透過率が変化し、その透過率は凹凸構造が形成されていない領域よりも高いことを特徴とする光学媒体を提供することを目的とする。
また、本発明における光学媒体では凹凸構造の形状やピッチ、深さなどに起因した光反射層の変化により透過率の向上が見込めるため、これまで述べてきたディメタライズド加工と同様の効果を提供することが可能となる。
請求項1に記載の光学媒体は、透明性基材の少なくとも一方の面に、凹凸構造が形成された凹凸領域と、前記凹凸構造以外の非凹凸領域から成る透明成形層を配し、凹凸構造の凸部の頂点から凹部の最底辺までの寸法を該凹凸構造の深さHとするとき、前記凹凸構造の深さは100nm以上500nm未満であって、且つ前記透明性基材の上に光反射層を配して成り、前記凹凸構造によって前記凹凸領域の透過率が異なり、前記凹凸領域での透過率が、前記非凹凸領域よりも高いことを特徴とする光学媒体である。
請求項2に記載の光学媒体は、請求項1に記載の光学媒体において、前記凹凸構造が、少なくとも一つ以上の凹部、凸部及び斜面を持ち、前記凹凸構造の断面形状が正弦波形状を成す回折格子であって、前記回折格子のピッチが300nm以上800nm以下であることを特徴としたものである。
請求項3に記載の光学媒体は、請求項1に記載の光学媒体において、前記凹凸構造が少なくとも一つ以上の、凹部、凸部、凹部から凸部までの立ち上がりが急峻な面または斜面と、凹部から凸部までの立ち上がりが前記急峻な傾きの面または斜面に比べて緩やかな傾きを持つ斜面を持ち、前記凹凸構造の断面形状が鋸歯形状を成すブレーズド格子であって、前記ブレーズド格子のピッチが300nm以上800nm以下であることを特徴としたものである。
請求項4に記載の光学媒体は、請求光1に記載の光学媒体において、前記凹凸構造は、凹部または凸部を光散乱要素とした、入射光を散乱させる光散乱体であって、前記光学媒体における平面の互いに直交するx,yの各方向において、矩形の各辺の長さが異なる前記光散乱要素を複数配列させ、且つ、前記光散乱体の内部で、前記光散乱要素を形成する密度を変えることにより、それぞれの光散乱性を任意に変化させたことを特徴としたものである。
請求項5に記載の光学媒体は、請求項2に記載の光学媒体において、前記光反射層がアルミニウム薄膜であって、前記光反射層の膜厚が前記非凹凸領域、前記回折格子の前記凹部、前記凸部、前記斜面において各々異なり、前記非凹凸領域での前記膜厚が40nm以上60nm以下であって、前記凹部での前記膜厚が1nm以上30nm以下であって、前記凸部での前記膜厚が20nm以上40nm以下であって、前記斜面での前記膜厚が1nm以上20nm以下であることを特徴とするものである。
請求項6に記載の光学媒体は、請求項3に記載の光学媒体において、前記光反射層がアルミニウム薄膜であって、前記光反射層の膜厚が前記非凹凸領域、前記ブレーズド格子の前記凹部、前記凸部、前記急峻な傾きを有する斜面、前記緩やかな傾きを有する斜面において各々異なり、前記非凹凸領域での前記膜厚が40nm以上60nm以下であって、前記凹部での前記膜厚が1nm以上30nm以下であって、前記凸部での前記膜厚が20nm以上40nm以下であって、前記急峻な傾きを有する斜面での前記膜厚が1nm以上5nm以下であって、前記緩やかな傾きを有する斜面での前記膜厚が20nm以上40nm以下であることを特徴とするものである。
請求項7に記載の光学媒体は、請求項4に記載の光学媒体において、前記光反射層がアルミニウム薄膜であって、前記光反射層の膜厚が前記非凹凸領域、前記光散乱要素の前記凹部、前記凸部において各々異なり、前記非凹凸領域での前記膜厚が40nm以上60nm以下であり、前記凹部での前記膜厚が1nm以上30nm以下であり、前記凸部での前記膜厚が20nm以上40nm以下であることを特徴とする。
請求項8に記載の光学媒体は、請求項1から7何れか1項に記載の光学媒体において、前記光反射層は、真空蒸着法若しくはスパッタリング法いずれかの気相堆積法によって成膜された、アルミニウム薄膜であることを特徴としたものである。
請求項9に記載の光学物品は、請求項1から8何れか1項記載の光学媒体の、前記光反射層の上に接着層を配し、前期光学部材を透明性基材や不透明性基材に貼り付けて成る光学物品である。
本発明は、透明性基材の少なくとも一方の面に、凹凸構造が形成された凹凸領域と、凹凸構造が形成されていない非凹凸領域からなる透明成形層を配しており、さらに透明成形層の上には光反射層を配している。凹凸領域では凹凸構造が形成されていることから、凹凸構造が形成されていない非凹凸領域よりも透明成形層の表面積が大きい。
そのため、光反射層が金属材料を用いた薄膜である場合、非凹凸領域に任意の膜厚で薄膜を成膜しても、凹凸構造を配したことで局所的に表面積が大きくなっている凹凸領域では、光反射層としての金属層の膜厚が、凹凸構造が形成されていない非凹凸領域での膜厚よりも薄くなる。
透明成形層に形成された凹凸構造の形状、ピッチ、深さを選択的に変化させることで、凹凸領域を配した透明成形層の表面積を大きくすることが可能になる。その表面積の変動によって、凹凸領域の上に配される光反射層の膜厚も変化させることが可能になる。
光反射層の膜厚が薄ければその部分での透過率が高くなり、凹凸領域よりも光反射層の膜厚が厚い、非凹凸領域と透過率の差を生じさせることが可能になる。
光反射層としてアルミニウム薄膜を用いた場合、薄膜の膜厚が薄いほど透過率は高くなるので(後に膜厚と透過率の関係性を示す。)、ディメタライズド加工によって金属層を除去し透過率を向上させるのと、同様な効果を生じさせることが可能となる。
凹凸構造の形状、ピッチ、深さに起因して、凹凸形状の凸部、凹部、斜面それぞれで光反射層の膜厚が変化するので、例えば、ブレーズド格子の様な断面形状が非対称な凹凸構造では、片側の斜面のみ光反射層の膜厚を増加させることも可能であり、その結果光反射層の膜厚が厚い側から光学媒体を観察するとその反射光が観察でき、光反射層の膜厚が薄い側から光学媒体を観察すると、光が透過するので奥にあるものが観察できる。つまり、観察方向によって異なるイメージを観察できるような効果を持った、光学媒体の作製も可能になる。
本発明の方法を用いれば、従来のディメタライズド加工の際に必要であった、マスク作製が不要なマスクレスプロセスであることから、マスク作製時の位置精度の問題も解決することができる。また、エッチング工程も不要となることからそれにかかる設備も不要であり、煩雑な工程を行なうことなくディメタライズド加工によって金属層除去したのと同様な、高透過率な領域を得ることが可能となる。
本発明の方法を用いれば、従来のディメタライズ加工よりも更に高精細・高精度な光反射層のパターンを、マスク作製工程無し、エッチング工程無しで簡便に形成することが可能となる。
以下に、本発明の好適な実施形態を説明する。以下に述べる実施形態は、本発明の好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において、特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られない。
図1は、本発明の光学媒体の一例を示す平面図である。図2は、図1に示した光学媒体の斜視図である。
ここでの光学媒体10の表面は、凹凸構造4が形成された凹凸領域5と、凹凸構造4が形成されていない非凹凸領域6から成る。図1、2では、凹凸構造4を配した凹凸領域5により、一例として「TIT」の形を表示するようにしている。凹凸領域5以外の領域は、凹凸構造4が形成されていない、非凹凸領域6で占められている。
図3は、図1に示したX−X’線に沿う光学媒体10の断面図である。光学媒体10は、透明性基材1の一方の面に透明成形層2を配している。透明性基材1の材料としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)などの光透過性を有する樹脂からなるフィルム又はシートなどが好適である。また、透明性基材1の材料としては、ガラスなどの無機材料を使用するようにしてもよい。透明性基材1は、反射防止処理、低反射防止処理、ハードコート処理、帯電防止処理及び防汚処理などの処理を施したものでもよい。
透明成形層2の材料としては、例えば、光透過性を有する樹脂を使用することができる。また、アクリル、ポリカーボネート、エポキシ、ポリエチレン、ポリプロピレンなどの可視光透過性を有する樹脂を使用できる。この中でも、例えば、熱可塑性樹脂又は光硬化性樹脂を使用すると、後に説明する凹凸構造4が形成された原版を用いた転写により、少なくとも一方の面上に凹凸構造4を備える透明成形層2を容易に作製することが可能である。
透明成形層2には、凹凸構造4が形成された凹凸領域5と、凹凸構造4が形成されていない非凹凸領域6から構成され、さらに透明成形層2の上に光反射層3が配されている。
凹凸構造4としては、図4に示すように該凹凸構造4を縦断する断面形状が正弦波状を成す回折格子や、図5に示すようにその断面形状が鋸歯形状を成すブレーズド格子、図7に示すように凹部または凸部を光散乱要素とした光散乱構造などの形態のものを用いることができる。ここで、凹凸構造4の形状や、ピッチ、深さなどのパラメータによって凹凸領域の表面積は大きくなり、光反射層3の膜厚を変化させることが可能となる。これらパラメータの変化による効果は後に述べる。
また、光反射層3は、凹凸構造4が設けられた透明成形層2の界面の反射率を高める役割を果たす。光反射層3の材料としては、例えば、アルミニウム、銀、及びそれらの合金など反射率の高い金属材料を使用することができる。金属材料を用いて光反射層4を作製する方法としては、例えば、真空蒸着法及びスパッタリング法などの気相堆積法により形成することが可能になる。本発明において光反射層2はアルミニウム薄膜であることが好適である。アルミニウム薄膜は金や銀などに比べて安価に入手できる利点がある。さらに、アルミニウムは真空蒸着法、スパッタリング法どちらでも、精度良く容易に成膜できることが知られており、光学媒体作製の際のハンドリングの良さもその利点として挙げることができる。
ここで、上記凹凸構造4に関して更に詳しく説明を述べる。図4に本発明における凹凸構造のひとつである、少なくとも一つ以上の凹部、凸部、斜面を持ち、前記凹凸構造4の断面が正弦波形状を成す回折格子の断面図の一例を示している。
図4において示すように凹凸構造4の凸部の頂点から凹部の最底辺までを凹凸構造4の深さHとする。また、凸部から凸部もしくは凹部から凹部の間隔を凹凸構造4のピッチPとする。
本発明においては、凹凸領域5は、凹凸構造4が形成されていることから、凹凸構造4が形成されていない非凹凸領域6よりも表面積が大きくなるため、透明成形層2の上に配された光反射層3の膜厚に分布が生じる。具体的には、凹凸領域5は表面積が大きいことから、光反射層3の膜厚ALは、非凹凸領域6の上に配される光反射層3よりも薄くなる。
ここで、光反射層3の材料がアルミニウム薄膜である場合を考える。図8は、屈折率1.5の材料の上に、アルミニウム薄膜が配された場合の、波長442nm,532nm,633nmにおける、透過率の膜厚依存性を示すグラフである。
図8で示すデータを見ると、膜厚が2nm程度の場合、透過は85%程度、5nm程度の場合は70%程度、7nm程度の場合は60%程度、10nm程度の場合40%程度であるといったように、膜厚が厚くなるほど透過率は減少(逆に反射率は増加)していくことがわかる。また、膜厚が比較的薄い範囲では透過率が急激に減少するが、その後に透過率は緩やかに減少する。
たとえば、凹凸領域5の上に配された光反射層3を構成するアルミニウム薄膜の膜厚が2nm、非凹凸領域6に上に配された光反射層3を構成するアルミニウム薄膜の膜厚が40nmであった場合、凹凸領域5での透過率は85%程度(反射率は15%程度)、非凹凸領域6での透過率は10%程度(反射率率は90%)程度となる。このため、凹凸領域5と非凹凸領域6の透過率に大きな差を生じさせることができる。仮に蛍光灯のような光源を透かしてみた場合、透過率85%程度の凹凸領域5では、蛍光灯の光とその外観形状までもはっきりと確認することができるが、透過率10%程度の非凹凸領域6ではほとんど蛍光灯の光を確認することはできず、蛍光灯の外観形状を確認することは困難である。
凹凸構造4として、図4に示したような回折格子を用いた場合、ピッチPが細かく、深さHが深いほど凹凸領域5の表面積が大きくなることから、その上に配される光反射層3の膜厚ALはそれに応じて薄くなり、非凹凸領域6との膜厚の差が生じるので、凹凸領域5と非凹凸領域6の透過率に大きな差異を生じさせることが可能になる。したがって、本発明においては、ピッチPが300nm以上800nm以下であり、深さHが100nm以上500nm未満であることが好適である。
また、凹凸構造4をナノオーダーの微細なピッチPと深さHにすることで、表面積が増大し、凹凸領域5の上に配される光反射層3の膜厚ALが薄くなるので、凹凸領域5の透過率は増加する。
一方、光学媒体10の平面視の表面積は、非凹凸領域6には凹凸構造4が形成されていないために、非凹凸領域6の表面積(実面積)は凹凸領域5の表面積(実面積)よりも小さく、したがって、非凹凸領域6の上に配される光反射層3の膜厚ALは、凹凸領域5の上に配された光反射層3の膜厚ALよりも厚くなる。その結果、光反射層3としてアルミニウム薄膜を用いた場合、凹凸領域5と非凹凸領域6の膜厚ALの差は透過率の差異となって現れる。
そして、アルミニウム薄膜の膜厚ALが薄いほど透過率は高くなり(図8のグラフ参照)、膜厚が薄く透過率の高い凹凸領域5は、ディメタライズド加工によって金属層が除去された高透過率領域と同様な効果を生じる。さらに、ピッチを300nm以上800nm以下とすることで、凹凸領域5を急峻な角度の向きから観察した際には回折光を観察することも可能であり、透過観察によるディメタライズドのような効果と、虹色に光る回折光の効果を複合的に生じさせることが可能となる。
本発明における光反射層は、真空蒸着法またはスパッタリング法のどちらかで成膜された、アルミニウム薄膜であることが好適である。真空蒸着法またはスパッタリング法は、精度良く容易に成膜できることが知られているが、どちらの手法でも平坦面に成膜される膜厚を管理することで、膜厚の制御を行っている。たとえば、真空蒸着法では水晶振動子に成膜を行い、水晶振動子の共振周波数の変動から膜厚の管理を行っている。つまり、平坦面に成膜される膜厚制御は行われるが、回折格子などの凹凸構造に成膜される膜厚の制御は通常行われない。
そのため、本発明における非凹凸領域6(平坦面)に対して任意の膜厚で成膜した場合、凹凸構造4が形成された凹凸領域5の上に配される光反射層の膜厚は、凹凸構造による表面積の増加に起因して上記非凹凸領域6(平坦面)の膜厚よりも薄くなる。
実際には回折格子などに成膜を行なうと、凹凸構造の部分である、凸部、凹部、斜面で膜厚が異なっており、一般に成膜機構上、構造の斜面は膜厚が薄くなりやすい。また、本発明の場合のように、凹凸構造のピッチP、深さHともにナノオーダーのレンジであれば、凹凸構造の凸部に比べて凹部の膜厚が薄くなる傾向がある。これは、ナノオーダーの微細な構造であるがゆえに凹部には蒸着材料が進入しにくいことなどに起因するものである。
本発明において規定したピッチPが300nm以上800nm以下であり、深さHが100nm以上500nm未満の回折格子を凹凸構造4として用いた場合を考える。そして、非凹凸領域6上に40nm以上60nm以下の膜厚でアルミニウム薄膜を成膜したとき、回折格子からなる凹凸構造4の上に成膜されるアルミニウム薄膜は、凹部で1nm以上30nm以下、凸部で20nm以上40nm以下、斜面で1nm以上20nm以下となる。
また、凹凸構造の凹部、凸部、斜面それぞれに異なる膜厚が成膜された場合の透過率は、各膜厚の平均値として考えることができる。また、凹部、凸部、斜面に成膜された膜厚値によって、図8に示したような透過率の変化が起きる。図8に示した結果から、膜厚が薄いほど透過率は高くなり、ディメタライズド加工の様に金属などの光反射層を除去しパターニングするのと同程度の透過率が得られる。
次に、本発明において、凹凸構造4にブレーズド格子を用いた場合に関して説明する。図5に、少なくとも一つ以上の凹部、凸部、凹部から凸部までの立ち上がりが急峻な傾きを持つ面または斜面、凹部から凸部までの立ち上がりが前記急峻な傾きに比べて緩やかな傾きを持つ斜面を持つ、前記凹凸構造の断面が鋸歯形状を成すブレーズド格子断面図の一例を示した。この図5において凹凸構造4の凸部の頂点から凹部の最底辺までを凹凸構造4の深さHとする。また、凸部から凸部もしくは凹部から凹部の間隔を凹凸構造4のピッチPとする。凹凸構造4に回折格子を用いた場合と同様に、凹凸構造4にブレーズド格子が形成されている凹凸領域5は、凹凸構造が形成されていない非凹凸領域6よりも表面積が大きいため、非凹凸領域6の上に任意の膜厚で光反射層3を設けると、非凹凸領域6に隣接する凹凸領域5の上に配される光反射層3の膜厚ALは、非凹凸領域6の上に配される光反射層3の膜厚よりも薄くなる。
光反射層3にアルミニウム薄膜などの金属層を用いた場合、膜厚が薄いほど透過率が高くなる関係(図8に示した関係)があるため、ディメタライズド加工の様に金属などの反射層を除去した場合と、同程度の高透過率を得ることが可能になる。
凹凸構造4にブレーズド格子を用いた場合も、回折格子を用いた場合と同様にピッチPが細かく、深さHが深いほど、表面積が増加するため、その上に配される光反射層3の膜厚ALは薄くなる。本発明においては、ピッチPが300nm以上800nm以下であり、深さHが100nm以上500nm未満であることが好適である。
また、凹凸構造4が形成されていない非凹凸領域6は、凹凸構造4が形成された凹凸領域5よりも表面積が小さい。そのため、非凹凸領域6の上に配される光反射層3の膜厚ALは、凹凸領域5の上に配された光反射層3の膜厚ALよりも厚くなる。
一方、非凹凸領域6に隣接する凹凸領域5は、凹凸構造4をナノオーダーの微細なピッチPと深さHにすることで表面積が増加しているため、凹凸領域5の上に配される光反射層3の膜厚ALが薄くなり、凹凸領域5の透過率は増加する。その結果、光反射層3としてアルミニウム薄膜を用いた場合、凹凸領域5と非凹凸領域6での膜厚ALの差は透過率の差異となって現れる。
アルミニウム薄膜の膜厚ALが薄いほど透過率は高くなるので(図8のグラフ参照)、膜厚が薄く透過率の高い部分は、ディメタライズド加工の様に金属などの光反射層を除去しパターニングするのと同程度の高透過率が得られる。
また、回折格子の場合とは異なり、ブレーズド格子は、ある一方向に光を強く回折させる機能を持つ。このため、ある一方向から観察した場合のみ、反射光として虹色の回折光を射出させ、且つ、高透過率部分の透過観察も可能である、複合的な効果を発揮させることもできる。
凹凸構造4にブレーズド格子を用いた場合にあっても、光反射層3として、真空蒸着法またはスパッタリング法のどちらかで成膜された、アルミニウム薄膜であることが好適である。また、アルミニウム薄膜の膜厚と透過率は図8に示したような関係になる。ブレーズド格子に成膜を行うと成膜機構上、構造の凸部、凹部、急な傾きを有する斜面と緩やかな傾きを有する斜面で膜厚が異なる。
本発明のように、凹凸構造のピッチP、深さHともにナノオーダーのレンジであれば、構造の凸部に比べて凹部の膜厚が薄くなる傾向がある。これは、ナノオーダーの微細な構造であるがゆえに凹部には蒸着材料が進入しにくいことなどに起因している。また、急な傾きを有する斜面は、光反射層の膜厚が薄くなる傾向がある。
また、異方性蒸着(スパッタリング)や斜方蒸着(スパッタリング)などを行なえば、ブレーズド格子の片側の斜面にのみアルミニウム薄膜が形成されるような、特殊な光学媒体を作製することも可能である。
本発明において規定したピッチPが300nm以上800nm以下であり、深さHが100nm以上500nm未満のブレーズド格子を凹凸構造4として用いた場合を考える。非凹凸領域6上に40nm以上60nm以下の膜厚でアルミニウム薄膜を成膜した時、ブレーズド格子からなる凹凸構造4の上に成膜されるアルミニウム薄膜の膜厚ALは各々、凹部で1nm以上30nm以下、急峻な傾きを有する斜面での膜厚が1nm以上5nm以下、急峻な傾きを有する斜面とは反対側の緩やかな傾きを有する斜面での前記膜厚が40nm以上60nm以下となる。
上記のように、ブレーズド格子の片側の斜面にのみ極端に厚い膜厚となっても、透過率は、凹凸構造の凹部、急峻な傾きを有する斜面、緩やかな傾きを有する斜面の各膜厚の平均値として考えることができる。その場合、膜厚の値によって透過率が変化し、具体的には図8に示したような透過率の変化が起きる。図8の結果から、膜厚が薄いほど透過率は高くなるので、ディメタライズド加工の様に金属などの光反射層を除去し、パターニングするのと同程度の高透過率が得られる。
次に、凹凸構造4に光散乱構造を用いた場合に関して述べる。図6にその凹凸構造4に光散乱構造を用いた際の、光学媒体10の斜視図の一例を示した。
図6において示す凹凸構造4が凹部または凸部を光散乱要素とした、入射光を散乱させる光散乱体であって、光学媒体10の平面上の直交するx,y方向の各方向において、矩形の各辺の長さが異なる前記光散乱要素を複数配列させ、且つ、前記光散乱体の内部で、前記光散乱要素を形成する密度を変えることにより、それぞれの光散乱性を任意に変化させるようにしている。図6のX−X'線での断面を図7に示す。本発明において、図7に示したような矩形の断面を持つ凹凸構造4として光反射層3を形成する。
光反射層3における凹部または凸部から成る光散乱要素により散乱される光の広がりは、光散乱要素を開口として回折現象を扱うことによって得られる回折光の分布と等しいとみなせる。従って、光散乱要素の大きさが大きければ散乱光は拡がらず、大きさが小さければ散乱光は大きく広がることになる。また、大きさが異なる(矩形の各辺の長さが異なる)光散乱要素を、密度を変えてランダムに配置することにより、それぞれの大きさの光散乱要素に対する光強度分布を積分した結果が、実際の光強度分布となる。よって、広い範囲にわたって連続的な分布を持った散乱光が得られ、観察位置による明暗の変化の少ない表示が可能になる。
もし、単一の大きさの光散乱要素を用いた場合、光の強度分布が振動成分を持ち、光の波長毎に射出方向に対しての光の強度変化が異なる。そのため、観察位置によって急激な明暗の変化や、光散乱体が虹色に輝く色付きなどが発生する。
光散乱体による散乱光の強度は、光散乱体内にある光散乱要素の密度、もしくは光散乱体の深さにより変化させることができる。特に本発明においては、光散乱要素の密度が、50%程度であることが好適である。50%程度の密度のとき、最大の散乱光強度を得ることができ、密度が、この値を離れるほど散乱光強度が弱くなる。従って、密度により凹凸領域5の階調表現が可能となるので、白色を呈した表現の明暗を生じさせることができる。
図7に図6のX−X'線での断面図を示すが、この場合において、図7に示したような矩形の断面を持つ凹凸構造4の上に配する光反射層3は、アルミニウム薄膜であることが好適である。また、薄膜は真空蒸着法またはスパッタリング法のどちらかで成膜されることが好適である。
図7に示したような矩形の断面構造を有する凹凸構造4に、本発明において規定した、凹凸構造4が深さH100nm以上500nm未満の光散乱構造を用いた場合、構造の深さHがナノオーダーの微細な構造であるがゆえに、凹凸構造の凹部には蒸着材料が進入しにくいことなどに起因して、凹凸構造の凸部に比べて凹部の膜厚が薄くなる傾向がある。
本発明において規定した構造の深さHが100nm以上500nm未満の光散乱構造を凹凸構造4として用いた場合を考える。非凹凸領域6上に40nm以上60nm以下の膜厚でアルミニウム薄膜を成膜した時、光散乱構造からなる凹凸構造4の上に成膜されるアルミニウム薄膜は、凹部で1nm以上30nm以下、凸部で40nm以上60nm以下となる。
凹凸構造の凹部、凸部にそれぞれに異なる膜厚が成膜された場合の透過率は、各膜厚の平均値として考えることができる。凹部、凸部に成膜された膜厚値によって、図8に示したような反射率の変化が起きる。ゆえに、透過率も変化することなる。図8の結果から、膜厚が薄いほど透過率は高くなるので、ディメタライズド加工の様に金属などの光反射層を除去しパターニングするのと同程度の高透過率が得られる。
また、凹凸構造に光散乱構造を用いれば、光学媒体を傾けて観察した際でも回折光の影響で凹凸領域が七色にキラキラ光ることが無く、広い観察範囲で高透過率な透明領域として視認することが可能となる。
本発明の光学媒体は、光反射層の上に接着層を配し、透明性基材や不透明性基材に貼り付けて光学物品として用いることもできる。接着層としては、熱硬化型や紫外線硬化型の透明接着剤を用いることができる。また、透明性基材としてはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)などの光透過性を有する樹脂からなるフィルム又はシートなどが好適である。また、ガラスなどの無機材料を使用してもよい。
不透明性基材としては商品券や紙幣などの紙に貼り付けてもよく、不透明性基材に印刷などが施されていれば、本発明の光学媒体の凹凸領域、つまり、ディメタライズド加工の様に金属などの光反射層を除去し、パターニングしたのと同程度の透過率が得られている部分と組み合わせて、絵柄などのパターンを表現することも可能である。
図9に本発明における光学媒体を用いた、光学物品の平面図の一例を示す。また、図10に図9に示した光学物品のY−Y'線での断面図の一例を示す。
光学物品は凹凸領域と非凹凸領域の配置によって、文字「TOP」、数字「1000」、星の形状をした記号を表現している。文字「TOP」、数字「1000」、星の記号は凹凸領域によって形成されており、それ以外の範囲は非凹凸領域から形成されている。
光学媒体は粘着層により、カラーインキを用いて印刷が施された不透明基材と一体化している。また、光学媒体は、透明性基材の上に透明成形層を配している。
透明基材にはポリエチレンテレフタレート(PET)を用いた。一般的にPETは高い透明性を持ち、安価な材料として多くの用途で用いられている。
透明成形層には紫外線硬化型樹脂を用いた。紫外線硬化型樹脂は金型などのパターンに流し込み、易接着処理などが施された透明基材と密着させ、紫外線を照射して硬化させた後に、金型から剥離することで金型などのパターンを容易に複製することが可能である。
本実施例では、透明成形層に凹凸構造として回折格子を形成し、凹凸領域を作製した。回折格子の形成には、前述したように金型に作製された回折格子を、紫外線硬化型樹脂により複製する手法を用いた。回折格子のピッチは300nm、構造の深さHは400nm程度であった。さらに、透明成形層の上には光反射層が配されている。
本実施例では、光反射層としてアルミニウム薄膜を真空蒸着法によりした。アルミニウム薄膜の成膜においては、非凹凸領域上のアルミニウム薄膜の膜厚が50nm程度と成るような条件で成膜を行なった。
本実施例において、成膜した光反射層の膜厚は、非凹凸領域で50nm程度、凹凸構造の凸部で20nm程度、凹部で10nm程度、斜面で5nm程度であった。
非凹凸領域でのアルミニウム薄膜が50nm程度の膜厚であることから、図8に示したグラフより10%程度の透過率であることがわかる。
一方、凹凸領域でのアルミニウム薄膜は、凹凸構造の凹部、凸部、斜面でそれぞれ異なっているが、透過率は各膜厚での平均値と考えることができるので、50%程度であることが分かる。その結果、凹凸領域では透過率が高いため、凹凸領域を通して、不透明基材に印刷されたカラーインキのパターンを観察することが可能になる。一方、非凹凸領域では透過率が低いため、非凹凸領域を通して、不透明基材を観察することは困難である。
不透明基材に配されるパターンは、カラーインキに限らず、蛍光インキ、磁性インキ、ホログラムなどを用いて形成されていてもよい。たとえば、蛍光インキでパターンが形成されている場合、本発明の光学物品にブラックライトを照射したときのみ、凹凸領域を通して蛍光発色が確認されるような効果を生じさせることも可能である。
また、本発明における光学媒体は透明性基材と組み合わされてもよい。その場合は凹凸領域を透過観察して、非凹凸領域とのコントラストのパターンを確認するような使用方法も考えられる。
以上のように、本発明における光学媒体と別の基材を組み合わせることで、様々な効果を期待することができる。