以下に、本発明に係る衝突検知装置及び乗員保護システムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
[実施例]
本発明に係る衝突検知装置及び乗員保護システムの実施例を図1から図9に基づいて説明する。
図1の符号1は、本実施例の乗員保護システムを示す。この乗員保護システム1は、電子制御装置(ECU)10により動作するものであり、自車が衝突した際又は自車に衝突された際に車室内の乗員を保護する乗員保護装置20を備えている。その乗員保護装置20としては、衝突の際に展開させることで乗員を保護する所謂エアバッグが搭載されている。
ここで、この乗員保護装置20は、衝突が検知されたことを契機にして電子制御装置10の乗員保護制御部が動作させる。従って、この乗員保護システム1には、自車の衝突又は自車への衝突を検知する衝突検知装置が設けられている。この例示では、電子制御装置10に衝突検知装置の演算処理機能を持たせる。以下に、この衝突検知装置について詳述する。
この衝突検知装置は、車両の外装部材の内側に近接して構成される空間の単位時間当りの圧力の変化量(以下、「圧力勾配」と云う。)ΔP(t)と車体の加速度G(横加速度Gy、前後加速度Ga)とに基づいて、乗員保護装置20の動作を要する衝突であるのか否かの判定を行う。
その空間を設ける場所は、車体の側面、前面又は後面の内の少なくとも1箇所である。従って、外装部材とは、車両の外板パネルやカウル、例えばドアパネルや前後のバンパ等のことを云う。また、この空間とは、衝撃等の力が外部から加わったときや外部で急激な気圧変化が起きたときに内部の圧力が変化する空間のことであり、気密性の高い密閉空間だけでなく、外部から力が加わったとき等に瞬間的にでも内部の圧力に変化が表れる程度まで塞がれてはいるが、隙間や開口等を有している空間も含む。そして、ここで云う近接とは、その外装部材の内側の直ぐ近くに空間が存在することを示している。具体的には、少なくとも外装部材よりも車両内側で且つ客室(所謂キャビン)を構成する部材(ドアトリムやダッシュパネル等)よりも車両外側に空間が存在することを示している。故に、その空間とは、ドアを構成する部材(例えばドアアウタとドアインナ等)やバンパを構成する部材(例えばバンパアブソーバとバンパリーンフォース等)等により成る。例えば、その空間は、乗員保護装置20の動作を誘引する衝突箇所であり、その衝突箇所に隣接する部分やその衝突箇所の近傍に設けることが好ましい。
この衝突検知装置は、より具体的に述べると、その圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定と車体の加速度Gに基づく衝突判定とを行い、夫々の衝突判定で衝突が起きたと判定された場合に、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたとの最終判定を行う。一方、2つの衝突判定の内の一方でも衝突が起きたと判定されなかった場合には、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたとは判定させない。その夫々の衝突判定は、その内のどちらを先に実行してもよく、また、同時並行で実行してもよい。
先ず、圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定について説明する。
ここでは、側面衝突(以下、「側突」と云う。)の検知を例に挙げて衝突検知装置を説明する。車両側面のドア100は、インナパネル101が外板となるアウタパネル102に覆われており、このインナパネル101とアウタパネル102によって形成された上記の如き空間Sを備えている。ドア100には、その空間Sの圧力P(t)を検出する圧力センサ(圧力検出部)31が取り付けられている(図1,2)。この例示では圧力センサ31をインナパネル101のアウタパネル102側、つまり空間Sの中に取り付けているが、その圧力センサ31は、検出部が空間Sの中に配置されるのであれば、インナパネル101のドアトリム103側に本体部分を取り付けてもよい。1台の車両においては、その圧力センサ31を左右夫々のドア100に少なくとも1つずつ配設する。また、車両の一方の側面に複数枚のドア100が存在している場合には、夫々のドア100に圧力センサ31を設けてもよい。この圧力センサ31の検出信号は、電子制御装置10に送信される。そして、その電子制御装置10では、その検出信号に基づいて圧力勾配ΔP(t)が演算される。
外力が加わってアウタパネル102が凹んだ場合、空間Sにおいては、容積の減少と共に圧力P(t)が上昇する。また、車両の前方又は後方からの外力によって車輪が押動され、その車輪がタイヤハウスを覆う部材をドア100側に押動した場合にも、空間Sにおいては、容積の減少と共に圧力P(t)が上昇する可能性がある。これが為、その空間Sの圧力P(t)が所定の閾値を超えたときには、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたと推定できる。しかしながら、その圧力P(t)の大きさだけで乗員保護装置20の動作の要否を判断すると、乗員保護装置20の動作を要する様な衝突が起きていない場合(前述した自転車や人がぶつかった場合等)でも、その空間Sの圧力P(t)が所定の閾値を超えたときには、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたと誤判定されてしまう。
ここで、乗員保護装置20の動作を必要としない衝撃力がドア100に加わったときの空間Sの圧力P(t)及び圧力勾配ΔP(t)と、乗員保護装置20の動作を必要とする衝撃力がドア100に加わったときの空間Sの圧力P(t)及び圧力勾配ΔP(t)と、を比較する(図3)。
図3において一点鎖線や二点鎖線、破線で示す曲線は、乗員保護装置20の動作を必要としない衝撃力がドア100に加わったとき、つまり衝突でないと判定すべきときの一例である。一点鎖線や二点鎖線で示す曲線は、例えば自転車や人がぶつかったとき、つまり衝撃力の加わる接触面積が大きく(変形が大きく)、且つ、変形速度が小さいので、空間Sの圧力P(t)は大きくなるが、空間Sの圧力勾配ΔP(t)が小さくなるときの形態を示すものである。この曲線は、かかる事例に沿った意地悪評価試験により得る。また、破線で示す曲線は、バットでドア100を叩いたときやボールがドア100に当たったとき、つまり変形が局所的で、且つ、変形速度が大きくなるので、空間Sの圧力勾配ΔP(t)は大きくなるが、空間Sの圧力P(t)が小さくなるときの形態を示すものである。この曲線は、かかる事例に沿った意地悪評価試験により得る。
一方、図3において実線で示す曲線は、空間Sの圧力P(t)に対する空間Sの圧力勾配ΔP(t)が一点鎖線や二点鎖線で示す曲線よりも大きくなっている箇所がある。また、この実線で示す曲線は、空間Sの圧力勾配ΔP(t)に対する空間Sの圧力P(t)が破線で示す曲線よりも大きくなっている箇所がある。この実線で示す曲線とは、乗員保護装置20の動作を必要とする衝撃力がドア100に加わったとき、つまり衝突であると判定すべきときの一例である。この曲線は、図4の台車200を用いた側面衝突試験の試験結果により得られたものである。その側面衝突試験は、法規で定められている側面衝突試験と同等の試験条件(台車200の衝突時の速度等)を利用すればよい。
この衝突検知装置は、上記の意地悪評価試験や側面衝突試験の試験結果に基づき作成された衝突判定マップを用いて、圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定を実行する。その衝突判定マップは、その試験結果に基づいて予め車両に用意しておく。
その衝突判定マップの一例を図5に示す。この図5の衝突判定マップは、判定閾値を境にして、一方の領域を乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたと判定させない領域(以下、「衝突判定不成立領域」と云う。)とし、他方の領域を乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたと判定させる領域(以下、「衝突判定不成立領域」と云う。)としたものである。この衝突判定マップでは、空間Sの圧力勾配ΔP(t)の大きさに拘わらず、空間Sの圧力P(t)が極小となる所定の閾値(判定閾値の圧力要素)P1以下の領域を衝突判定不成立領域としている。そして、この衝突判定マップでは、その圧力P(t)が閾値P1よりも高ければ、所定の圧力勾配の閾値(判定閾値の圧力勾配要素)ΔP1を境にして、その閾値ΔP1以下となる圧力勾配ΔP(t)の領域を衝突判定不成立領域とし、その閾値ΔP1を超えた圧力勾配ΔP(t)の領域を衝突判定成立領域としている。
その圧力勾配の閾値ΔP1は、衝突が起きていないときの衝突との誤判定を回避する為のものであり、例えば、衝突が起きていない場合の上記の試験結果における圧力勾配ΔP(t)の最大値又は補正量分だけ当該最大値よりも大きくした値とする。その補正量とは、例えば、上記の試験結果を得る際の検出誤差や演算誤差、衝突判定を行う際の空間Sの圧力P(t)と圧力勾配ΔP(t)の検出誤差や演算誤差を補う為のものである。
衝突検知装置は、ドア100に衝撃力が加わった場合、そのときに検出及び演算された空間Sの圧力P(t)と圧力勾配ΔP(t)の組からなる曲線が一部でも衝突判定成立領域に入っていれば、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたと判定し、その組からなる曲線が衝突判定成立領域に入っていなければ、乗員保護装置20の動作を要する衝突は起きていないと判定する。つまり、この衝突検知装置は、その圧力P(t)及び圧力勾配ΔP(t)の組と圧力の閾値P1及び圧力勾配の閾値ΔP1の各要素からなる判定閾値とを比較することで、衝撃力が乗員保護装置20の動作を要する衝突であるのか否かを判定する。
この例示の衝突判定マップは、圧力センサ31で検出され難い極小の圧力P(t)の領域(P1以下の領域)を衝突判定不成立領域としている。これが為、この例示の衝突検知装置には、ドア100に衝撃力が加わった場合、検出された圧力P(t)に応じた圧力勾配の閾値ΔP1と演算された圧力勾配ΔP(t)とを比較させることで、その衝撃力が乗員保護装置20の動作を要する衝突であるのか否かを判定させればよい。この衝突検知装置には、圧力勾配ΔP(t)が閾値ΔP1よりも大きければ、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたと判定させ、圧力勾配ΔP(t)が閾値ΔP1以下であれば、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きていないと判定させる。
次に、車体の加速度Gに基づく衝突判定について説明する。
加速度センサ(加速度検出部)32は、衝突によって変形し難い箇所、例えば、フロアパネルやフロアトンネル、電子制御装置10の筐体等に配設する。その変形し難い箇所とは、衝撃(後述するボールが当たった場合等)や衝突等の外部からの力が車体に加わった際に、多少の変形が部品に生じるとしても変形に伴う加速度成分を発生させない当該部品上の箇所(つまり変形に伴う加速度成分を加速度センサ32から出力させない箇所)のことであり、その際に変形しない箇所も含む。より細かく云えば、この変形し難い箇所とは、衝突による加速度変化が生じる箇所ではあるが、衝撃による加速度変化が生じない又は衝撃による加速度変化を生じさせ難い箇所である。故に、ここに配設した加速度センサ32からは、衝突が起きたときの方が、衝撃が加わったときよりも大きな加速度変化が検出される。この加速度センサ32は、側突を判断するものであるので、車体の横加速度Gyを検出する。尚、車両の挙動安定化制御等に用いる横加速度検出用の加速度センサが既に存在している場合には、その加速度センサが側突によって変形し難い箇所に配置されているのならば、この加速度センサの検出信号を利用してもよい。
この加速度センサ32の検出信号も電子制御装置10に送信される。その電子制御装置10では、その検出信号に基づく横加速度Gyと所定の閾値Gy0とを比較し、横加速度Gyが閾値Gy0よりも大きいときに、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたとの判定を行う(図6)。その閾値Gy0は、例えば、衝突が起きていない場合の前述した試験結果における横加速度Gyの最大値又は補正量分だけ当該最大値よりも大きくした値とする。その補正量とは、例えば、その試験結果を得る際の検出誤差や演算誤差、衝突判定を行う際の横加速度Gyの検出誤差や演算誤差を補う為のものである。
この衝突検知装置は、その様な圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定と車体の加速度Gに基づく衝突判定とを夫々に実行することで、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたのか否かの最終判定を行う。しかしながら、その圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定においては、空間Sの容積を減少させる(つまり空間Sの圧力P(t)を変化させる)だけの凹みがアウタパネル102に生じ、その結果、空間Sの圧力勾配ΔP(t)が閾値ΔP1を超えるまで大きくならなければ、乗員保護装置20の動作を要する衝突との判定を行えない。これが為、実際に乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたとしても、その衝突箇所が車体の高剛性部位の場合には、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたと判定されない可能性がある。その高剛性部位とは、外力が加えられたとしても空間Sの圧力P(t)を殆ど変化させない又は検出された圧力P(t)が極小となる車体の所定の部位であり、例えば、ドア100における車両前後方向の夫々の端部やドア100における車両下側の端部等である。つまり、そのドア100における高剛性部位は、アウタパネル102の中央部分と比べて、同じ外力であれば凹みが少なく且つピラー等の車体構造物に近いので、強度が高く、外力が加えられたとしても空間Sの容積の減少率が小さい。この為、この衝突検知装置は、喩え衝突が起きたとしても、その衝突箇所が車体の高剛性部位の場合、外力の大きさ如何で圧力勾配ΔP(t)が閾値ΔP1を超えないので、乗員保護装置20の動作を要する衝突であると判定しない可能性がある。
この不都合を解消するには、閾値ΔP1を小さくすればよい。しかし、この様な閾値ΔP1の変更は、その高剛性部位が衝突箇所のときの圧力勾配ΔP(t)だけでなく、ボールがぶつかった等の衝突ではないときの圧力勾配ΔP(t)をも閾値ΔP1を超えさせてしまう虞があるので、衝突ではないときに衝突が起きたと判定してしまう可能性がある。そして、このままでは、その衝突ではないときの加速度Gも閾値G0を超えてしまうと、衝突ではないときに衝突が起きたと最終判定してしまうので好ましくない。
そこで、この衝突検知装置は、その様な高剛性部位への衝突も含めて高精度に衝突が起きたと判定するべく構成する。具体的には、先ず、その閾値ΔP1を小さくする変更を行った圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定を実行して、高剛性部位への衝突も乗員保護装置20の動作を要する衝突であると判定させる。そして、その際には、乗員保護装置20の動作が必要な衝突ではない場合も衝突と判定される虞が生じるので、この場合を衝突との判定から除外するべく、外力に応じた車体の速度変化量ΔVに基づいた衝突判定を実行する。
先ず、このときの圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定においては、図7の衝突判定マップに示す様に、閾値ΔP1に替えて閾値ΔP2(<ΔP1)を用いる。つまり、この衝突判定は、閾値ΔP1を用いた衝突判定よりも圧力勾配ΔP(t)が小さいときに、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたと判定させるものである。その閾値ΔP2は、例えば、高剛性部位への衝突が起きていない場合の前述した試験結果における圧力勾配ΔP(t)の最大値又は補正量分だけ当該最大値よりも大きくした値とする。その補正量とは、例えば、その試験結果を得る際の検出誤差や演算誤差、衝突判定を行う際の空間Sの圧力P(t)と圧力勾配ΔP(t)の検出誤差や演算誤差を補う為のものである。但し、図7に一点鎖線と二点鎖線で夫々示す様に、高剛性部位への衝突(例えばドア100の端部へのポールの衝突)が起きたときと軽微な衝突が起きたときとで、その衝突に関わる圧力勾配ΔP(t)が大差ないことも有り得る。この為、この衝突判定マップを使ったときには、軽微な衝突のときまで乗員保護装置20の動作を要する衝突であると判定されることもある。しかし、その軽微な衝突については、下記の図8の衝突判定マップによって乗員保護装置20の動作を要する衝突ではないと判定されるので問題ない。
衝突検知装置は、ドア100に衝撃力(外力)が加わった場合、そのときに検出及び演算された空間Sにおける圧力P(t)及び圧力勾配ΔP(t)の組と圧力の閾値P1及び圧力勾配の閾値ΔP2の各要素からなる判定閾値とを比較することで、衝撃力が乗員保護装置20の動作を要する衝突であるのか否かを判定する。この例示では、前述した判定と同じ様に、検出された圧力P(t)に応じた圧力勾配の閾値ΔP2と演算された圧力勾配ΔP(t)とを比較させることで、衝撃力が乗員保護装置20の動作を要する衝突であるのか否かを判定させる。衝突検知装置は、その圧力勾配ΔP(t)が閾値ΔP2を超えていれば、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたと判定し、その圧力勾配ΔP(t)が閾値ΔP2以下であれば、乗員保護装置20の動作を要する衝突ではないと判定する。
次に、車体の速度変化量ΔVに基づく衝突判定について説明する。
例えば、高剛性部位への衝突は、アウタパネル102の中央部分への衝突等の様な圧力勾配ΔP(t)が閾値ΔP1を超える衝突と比較して、圧力P(t)や圧力勾配ΔP(t)は小さいが、車体に対して外力が直接的に伝わり易いので、車体の速度変化量ΔVが大きくなる傾向にある(図8)。一方、乗員保護装置20の動作を要する衝突でない場合には、これらの衝突が起きた場合と比較して、車体の速度変化量ΔVが小さい。そこで、衝突検知装置には、ドア100に衝撃力(外力)が加わった場合、そのときの車体の速度変化量ΔVと所定の閾値ΔV0とを比較させることで、衝撃力が乗員保護装置20の動作を要する衝突であるのか否かを判定させる。
その車体の速度変化量ΔVは、速度変化量検出部を用いて取得する。その速度変化量検出部としては、例えば、車速の検出又は推定を可能にする車速センサ(車速検出部)や車輪速センサ(車輪速検出部)を用いることができる。但し、この例示では、加速度センサ32が設けられており、車体の加速度Gの情報を得ることができる。従って、本実施例では、加速度センサ32を速度変化量検出部としても利用し、これで検出された車体の加速度Gを時間で積分することで車体の速度変化量ΔVを求めることにする。この例示では、検出された車体の横加速度Gyを積分することで、車体の横方向の速度変化量ΔVyが演算される。また、閾値ΔV0は、例えば、衝突が起きていない場合の前述した試験結果における速度変化量ΔVの最大値又は補正量分だけ当該最大値よりも大きくした値とする。その補正量とは、例えば、その試験結果を得る際の加速度Gの検出誤差や速度変化量ΔVの演算誤差、衝突判定を行う際の加速度Gの検出誤差や速度変化量ΔVの演算誤差を補う為のものである。
衝突検知装置は、ドア100に衝撃力(外力)が加わった場合、そのときに検出された車体の横加速度Gyに基づいて車体の横方向の速度変化量ΔVyを演算し、この速度変化量ΔVyと車体の横方向における所定の閾値ΔVy0とを比較することで、衝撃力が乗員保護装置20の動作を要する衝突であるのか否かを判定する。この衝突検知装置は、その速度変化量ΔVyが閾値ΔVy0を超えていれば、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたと判定し、その速度変化量ΔVyが閾値ΔVy0以下であれば、乗員保護装置20の動作を要する衝突ではないと判定する。
この衝突検知装置は、その様な閾値ΔP2を用いた圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定と車体の速度変化量ΔVに基づく衝突判定とを夫々に実行する。そして、夫々の衝突判定で衝突が起きたと判定された場合には、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたとの最終判定を行う。一方、2つの衝突判定の内の一方でも衝突が起きたと判定されなかった場合には、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたとは判定させない。その夫々の衝突判定は、その内のどちらを先に実行してもよく、また、同時並行で実行してもよい。
これにより、この衝突検知装置は、乗員保護装置20の動作を要する衝突(高剛性部位への衝突も含む)が起きた場合に、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたとの最終的な判定を行うことができる一方、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きていない場合に、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きていないとの最終的な判定を行うことができる。
ところで、この様な最終的な衝突判定は、前述した閾値ΔP1を用いた圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定と車体の加速度Gに基づく衝突判定とによる最終的な衝突判定と比べて、高剛性部位への衝突についても判定できる一方、速度変化量ΔVの演算の為に或る程度の時間を要するので、最終判定が為されるまでに時間がかかる。
そこで、本実施例の衝突検知装置には、閾値ΔP1を用いた圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定と車体の加速度Gに基づく衝突判定とによる最終的な衝突判定(以下、「第1経路衝突判定」と云う。)と、閾値ΔP2を用いた圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定と車体の速度変化量ΔVに基づく衝突判定とによる最終的な衝突判定(以下、「第2経路衝突判定」と云う。)と、を実行させる。つまり、第1経路衝突判定と第2経路衝突判定とを夫々に実行することで、圧力勾配ΔP(t)が閾値ΔP1を超える様な早急な乗員保護装置20の動作が求められる衝突の場合には、第1経路衝突判定によって、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたのか否かが応答性良く最終判定される。これが為、その様な衝突が起きたときには、応答性良く乗員保護装置20を動作させることができる。一方、その様な衝突よりも緊急性の低い衝突(即ち圧力勾配ΔP(t)が閾値ΔP1以下で且つ閾値ΔP2を超える様な衝突)の場合には、第2経路衝突判定によって、この衝突が乗員保護装置20の動作を必要とするものであるのか否かが最終判定される。この第2経路衝突判定は、第1経路衝突判定よりも応答性に劣るが、乗員保護装置20を動作させる上で緊急性が相対的に低い衝突のときに利用されるので、実用上、乗員保護の観点において十分に早いタイミングで乗員保護装置20を動作させることができる。この衝突検知装置においては、第1衝突判定部が第1経路衝突判定を実行し、第2衝突判定部が第2経路衝突判定を実行する。
この衝突検知装置は、第1経路衝突判定を先に実行した後で第2経路衝突判定を実行するものでもよいが、第2経路衝突判定の応答性を上げるべく、図9のフローチャートに示す様に、第1経路衝突判定と第2経路衝突判定とを同時並行で実行することが望ましい。
電子制御装置10は、第1経路衝突判定と第2経路衝突判定とを実行する為に必要な情報を取得する(ステップST1)。その必要情報とは、少なくとも圧力センサ31の検出した空間Sの圧力P(t)の情報、この圧力P(t)の情報に基づいて演算された空間Sの圧力勾配ΔP(t)の情報、加速度センサ32の検出した車体の横加速度Gyの情報、及びその横加速度Gyの情報に基づいて演算された車体の横方向の速度変化量ΔVyのことである。ここで、電子制御装置10は、圧力P(t)の検出信号からノイズを除去し、このノイズ除去後の圧力P(t)に基づいて圧力勾配ΔP(t)を演算してもよい。
電子制御装置10は、その空間Sの圧力P(t)の情報に基づいて、第1経路衝突判定における圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定を実行すると共に(ステップST2)、第2経路衝突判定における圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定を実行する(ステップST3)。ステップST2では、その圧力勾配ΔP(t)が閾値ΔP1を超えているのか否かが判定される。また、ステップST3では、その圧力勾配ΔP(t)が閾値ΔP2を超えているのか否かが判定される。
ここで、そのステップST2,ST3の衝突判定では、同じ圧力勾配ΔP(t)の情報を使っている。そして、このステップST2,ST3の違いは、衝突判定マップの圧力勾配の閾値ΔP1,ΔP2の大きさだけである。これが為、電子制御装置10は、ステップST2,ST3の夫々の衝突判定を同時並行で実行することが望ましい。その際、電子制御装置10は、例えば、その圧力勾配ΔP(t)の情報が得られたときに、直ぐに夫々の衝突判定を開始することが望ましい。これにより、この衝突検知装置では、その夫々の判定結果を略同時期に得ることができるので、夫々の衝突判定の応答性が向上することになる。
その夫々の衝突判定においては、どちらか一方の判定結果の方が早く出ることもある。この様な場合には、最終判定の応答性を上げるべく、判定を終えたものから先に次の演算処理に進ませることが望ましい。例えば、この衝突検知装置においては、閾値ΔP1よりも閾値ΔP2の方が小さいので、ステップST3の判定結果の方がステップST2の判定結果よりも早く出る場合もある。この場合、電子制御装置10は、ステップST2の判定結果が出ていなくても、ステップST3の次の衝突判定(ステップST5の衝突判定)を開始する。
電子制御装置10は、ステップST2で圧力勾配ΔP(t)が閾値ΔP1を超えていないと判定した場合、ステップST7に進んで、乗員保護装置20の動作を要する衝突ではないと判定する。
また、電子制御装置10は、ステップST3で圧力勾配ΔP(t)が閾値ΔP2を超えていないと判定した場合にも、ステップST8に進んで、乗員保護装置20の動作を要する衝突ではないと判定する。尚、図7においては、この判定結果に相当するものは含まれていない。
一方、電子制御装置10は、ステップST2で圧力勾配ΔP(t)が閾値ΔP1を超えていると判定した場合、乗員保護装置20の動作を要する衝突の可能性があると判定し、車体の横加速度Gyに基づく衝突判定を実行する(ステップST4)。このステップST4では、その横加速度Gyが閾値Gy0を超えているのか否かが判定される。
また、この電子制御装置10は、ステップST3で圧力勾配ΔP(t)が閾値ΔP2を超えていると判定した場合、乗員保護装置20の動作を要する衝突の可能性があると判定し、第2経路衝突判定における車体の横方向の速度変化量ΔVyに基づく衝突判定を実行する(ステップST5)。このステップST5では、その速度変化量ΔVyが閾値ΔVy0を超えているのか否かが判定される。
ここで、ステップST4の衝突判定では、検出された横加速度Gyの情報がそのまま使われる。一方、ステップST5の衝突判定では、その横加速度Gyの情報に基づいて更に演算が行われる。これが為、ステップST5の衝突判定は、ステップST2,ST3の衝突判定が同時期に終わったならば、ステップST4の衝突判定と比べて遅れて開始される。しかし、第1経路衝突判定と第2経路衝突判定の夫々の応答性を向上させる為には、ステップST4,ST5の夫々の衝突判定をできる限り同時並行で実行することが望ましい。尚、横加速度Gyの情報を用いずに速度変化量ΔVyを取得した場合、ステップST4,ST5の夫々の衝突判定は、同時並行で実行することが望ましい。
電子制御装置10は、ステップST4で横加速度Gyが閾値Gy0を超えていないと判定した場合、ステップST7に進んで、乗員保護装置20の動作を要する衝突ではないと判定する。
また、電子制御装置10は、ステップST5で速度変化量ΔVyが閾値ΔVy0を超えていないと判定した場合にも、ステップST8に進んで、乗員保護装置20の動作を要する衝突ではないと判定する。
一方、電子制御装置10は、ステップST4で横加速度Gyが閾値Gy0を超えていると判定した場合、乗員保護装置20の動作を要する衝突の可能性があると判定する。この例示では、第1経路衝突判定の圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定において既に衝突の可能性があると判定されているので、電子制御装置10は、ステップST4で横加速度Gyが閾値Gy0を超えていると判定した場合、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたとの最終判定を行う(ステップST6)。
また、電子制御装置10は、ステップST5で速度変化量ΔVyが閾値ΔVy0を超えていると判定した場合にも、乗員保護装置20の動作を要する衝突の可能性があると判定する。この例示では、第2経路衝突判定の圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定において既に衝突の可能性があると判定されているので、電子制御装置10は、ステップST5で速度変化量ΔVyが閾値ΔVy0を超えていると判定した場合、ステップST6に進み、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたとの最終判定を行う。
ところで、横加速度Gyの検出や速度変化量ΔVyの演算は、圧力P(t)の検出や圧力勾配ΔP(t)の演算とは別々に実行される。従って、ステップST4の衝突判定は、ステップST1で横加速度Gyが検出されたときに直ぐに開始することが望ましい。つまり、第1経路衝突判定においては、圧力勾配ΔP(t)の情報の取得と共に圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定を開始させ、且つ、横加速度Gyの情報の取得と共に横加速度Gyに基づく衝突判定を開始させることで、この夫々の衝突判定ができる限り同時並行で実行されるようにすることが望ましい。これにより、この第1経路衝突判定において最終判定に至るまでの応答性が向上するからである。また、これと同じ様に、ステップST5の衝突判定は、ステップST1で速度変化量ΔVyが演算されたときに直ぐに開始することが望ましい。つまり、第2経路衝突判定においては、圧力勾配ΔP(t)の情報の取得と共に圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定を開始させ、且つ、速度変化量ΔVyの情報の取得と共に速度変化量ΔVyに基づく衝突判定を開始させることで、この夫々の衝突判定ができる限り同時並行で実行されるようにすることが望ましい。これにより、この第2経路衝突判定においても最終判定に至るまでの応答性が向上するからである。
電子制御装置10は、ステップST6の最終判定が得られた場合、乗員保護装置20を動作させる(ステップST9)。ここでは側突を例に挙げているので、電子制御装置10は、サイドエアバッグやカーテンシールドエアバッグ等の側突の際に動作させる乗員保護装置20を起動させる。
具体的に、第1経路衝突判定においては、圧力勾配ΔP(t)が閾値ΔP1を超える様な素早い乗員保護装置20の起動が求められる衝突があった場合(図5,6の実線)、ステップST2の圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定とステップST4の車体の加速度Gに基づく衝突判定とで、各々乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたと判定されるので、その様な衝突が起きたとの最終判定が行われる。一方、第2経路衝突判定においては、この様な衝突があった場合(図7,8の実線)、ステップST3の圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定とステップST5の車体の速度変化量ΔVに基づく衝突判定とで、各々乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたと判定されるので、その様な衝突が起きたとの最終判定が行われる。この様に、圧力勾配ΔP(t)が閾値ΔP1を超える様な衝突があった場合には、第1経路衝突判定と第2経路衝突判定の双方で乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたと最終判定されるので、その何れの経路を経たとしても乗員保護装置20を動作させることができる。但し、この衝突検知装置においては、前述した様に、速度変化量ΔVの演算遅れによって第1経路衝突判定の方が第2経路衝突判定よりも応答性良く判定結果を得られる。従って、この素早い乗員保護装置20の起動が求められる衝突の場合には、第1経路衝突判定の判定結果に基づいて乗員保護装置20を応答性良く動作させることができる。
次に、高剛性部位で衝突(例えばドア100の端部へのポールの衝突)が起きた場合(図5,6の一点鎖線)、第1経路衝突判定においては、ステップST2の圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定によって、乗員保護装置20の動作を要する衝突ではないとの判定が為され、且つ、ステップST4の車体の加速度Gに基づく衝突判定によって、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたとの判定が為される。これが為、この様な衝突の場合には、第1経路衝突判定において、乗員保護装置20の動作を要する衝突ではないとの最終判定が出される。しかし、この様な衝突の場合には、第2経路衝突判定において、ステップST3の圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定とステップST5の車体の速度変化量ΔVに基づく衝突判定とで、各々乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたと判定されるので(図7,8の一点鎖線)、その様な衝突が起きたとの最終判定が行われる。従って、この乗員保護システム1においては、その様な高剛性部位で衝突が起きたときにも、乗員保護装置20を動作させることができる。
尚、この例示における軽微な衝突が起きた場合には(図5,6の二点鎖線)、第1経路衝突判定において、ステップST2の圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定によって、乗員保護装置20の動作を要する衝突ではないとの判定が為され、且つ、ステップST4の車体の加速度Gに基づく衝突判定によって、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたとの判定が為される。これが為、この様な衝突の場合には、第1経路衝突判定において、乗員保護装置20の動作を要する衝突ではないとの最終判定が出される。一方、第2経路衝突判定においては、ステップST3の圧力勾配ΔP(t)に基づく衝突判定によって、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたとの判定が為され、且つ、ステップST5の車体の速度変化量ΔVに基づく衝突判定によって、乗員保護装置20の動作を要する衝突ではないとの判定が為される(図7,8の二点鎖線)。これが為、第2経路衝突判定においても、この様な衝突の場合には、乗員保護装置20の動作を要する衝突ではないとの最終判定が出される。従って、この乗員保護システム1においては、その様な軽微な衝突が起きたときに、どちらの経路を経ようとも、乗員保護装置20の起動を禁止することができる。
この様に、この衝突検知装置は、第1経路衝突判定と第2経路衝突判定の内の少なくとも一方で衝突が起きたと最終判定された場合に、乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたと確定する。
以上示した様に、この衝突検知装置は、素早く乗員保護装置20の起動させたい衝突の場合、乗員保護装置20の動作を要する衝突であると応答性良く最終判定することができる。従って、この乗員保護システム1は、素早く乗員保護装置20を起動させることができるので、乗員の保護機能を高めることができる。また、この衝突検知装置及び乗員保護システム1は、高剛性部位で衝突が起きた場合にも、乗員保護装置20の動作を要する衝突であると最終判定することができるので、乗員保護装置20を起動させることができる。また、この衝突検知装置及び乗員保護システム1は、乗員が乗員保護装置20の動作の必要性が低く衝突と判定しなくてもよいと感じる様な場合(例えば乗員保護装置20の動作を望まぬ軽微な衝突の場合)、衝突ではないとの最終判定を行うことができるので、乗員保護装置20の起動を禁止することができる。これが為、この乗員保護システム1は、無駄な乗員保護装置20の起動を抑制できるので、例えばその軽微な衝突に続いて乗員保護装置20の動作を要する衝突が起きたとしても、肝心なときに乗員保護装置20を起動させることができる。更に、この衝突検知装置及び乗員保護システム1は、動作の必要性が低いと感じているにも拘わらず乗員保護装置20が動作してしまう、と云う乗員の違和感を抑えることもできる。
この様に、この衝突検知装置及び乗員保護システム1は、衝突判定の判定精度を向上させることができる。従って、その乗員保護システム1は、誤判定による乗員保護装置20の動作を抑制できるので、その乗員保護装置20の補修、つまり展開したエアバッグの交換や火薬の補充等に要する手間や費用を抑えることができる。
また、上記の例示では側突時について説明したのでドア100の空間Sを挙げたが、そのような空間Sがフロントバンパーやリアバンパー又はこれらを取り付けている車体部分に存在していれば、この乗員保護システム1は、前面衝突や後方からの追突のときに適用してもよい。但し、前後加速度Gaを検出する加速度センサについては、前面衝突や後方からの追突によって変形し難い箇所に配設することが望ましい。この場合の乗員保護装置20は、ステアリングホイールに内蔵されたエアバッグ等である。また、この場合の高剛性部位とは、例えば、フロントバンパーやリアバンパーの角、フロントバンパーやリアバンパーにおける車体側との取り付け部分等である。
また、上記の例示ではその空間Sとして車両の外側の部材と当該車両の内側の部材とから構成されたものを挙げたが、その空間Sは、1つの部材により構成されたものであってもよい。
また、この乗員保護システム1は、衝突の際にシートベルトを瞬時に巻き取って乗員の拘束効果を高めるプリテンショナー機構付きシートベルト(乗員保護装置)の動作の要否判定に適用してもよい。