JP2013235665A - 高分子電解質膜およびそれを用いた燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】燃料電池に用いられる本発明の高分子電解質膜10は、多孔性の積層膜20と、積層膜20に充填され酸性基を含む高分子電解質とを含む。当該高分子電解質に含まれる酸性基はO−H結合を含む酸性基である。積層膜20は、多孔性の第1の膜11、多孔性の第2の膜12、および、第1の膜と第2の膜との間に配置された多孔性の接着層13を含む。第1および第2の膜11および12はそれぞれ、方向によって伸び率が異なる膜である。第1の膜11の伸び率が最小となる方向と第2の膜12の伸び率が最小となる方向とがなす角度が45°〜90°の範囲にあるように第1の膜11と第2の膜12とが積層されている。
【選択図】図1
Description
本発明の高分子電解質膜(複合膜)は、燃料電池に用いられる電解質膜である。この電解質膜は、多孔性の積層膜と、その積層膜に充填され酸性基を含む高分子電解質とを含む。この高分子電解質を、以下では「高分子電解質(E)」という場合がある。高分子電解質(E)に含まれる酸性基は、O−H結合を含む酸性基である。典型的には、この酸性基は、スルホン酸基、硫酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基およびフェノール性水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
本発明で用いられる第1および第2の膜はそれぞれ、伸び率に異方性がある膜である。なお、伸び率は、たとえば実施例に記載の方法で測定できる。延伸膜の場合、膜の伸び率の方向依存性は、通常、延伸の条件によって決まる。そのため、2軸延伸で形成された延伸膜は、通常、長手方向(縦方向)とそれに直交する幅方向(横方向)のうちの一方が伸び率が最大となる方向であり、他方が伸び率が最小となる方向である。第1および第2の膜はそれぞれ、伸び率が最小となる方向における伸び率Tmin(%)と、伸び率が最大となる方向における伸び率Tmax(%)とが、0.05≦Tmin/Tmax≦0.7(たとえば、0.05≦Tmin/Tmax≦0.5)を満たす膜であってもよい。
接着層は、多孔性であり、第1の膜および第2の膜を接着できる層であればよい。具体的には、第1および第2の膜の材料よりも低い融点を有する材料を含む多孔性の層を接着層として用いることができる。接着層の形態に限定はなく、たとえば、所定の材料からなる不織布、織布、またはネットであってもよい。
積層膜の厚さは、5μm〜200μmの範囲にあることが好ましく、高分子電解質膜の強度やプロトン伝導性を考慮すると、10μm〜100μmの範囲にあることがより好ましい。積層膜が薄いと、得られる高分子電解質膜のプロトン伝導性は高くなるが、薄すぎると、積層膜の強度が低下し、また、燃料である水素が透過しやすくなるという問題が生じる。一方、積層膜が厚いと、得られる高分子電解質膜の強度が高くなるとともに燃料の透過性が低くなるが、厚すぎると、プロトン伝導性が低下する。
上述したように、積層膜に充填される高分子電解質(E)に含まれる酸性基は、スルホン酸基、カルボン酸基、リン酸基、およびフェノール性水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。燃料電池内で使用される際の化学的安定性およびプロトン伝導性を考慮すると、フッ素系高分子電解質が好ましい。電解質の好ましい例には、フッ化炭素鎖とスルホン酸基とを含む高分子が含まれる。そのような高分子の一例は、ナフィオン(登録商標)である。
(高分子電解質膜の特性)
本発明の高分子電解質膜を製造するための方法の一例を以下に説明する。なお、本発明の高分子電解質膜について説明した事項は以下の製造方法に適用できるため、重複する説明を省略する場合がある。
まず、延伸膜から、1cm(長手方向)×5cm(幅方向)のサンプルを切り出した。そして、このサンプルについて、島津製作所製の試験機(オートグラフ)を用いて、引っ張り試験を行った。引っ張り試験は、初期のチャック間距離を2cmとし、引っ張り速度を20cm/分として、25℃で行った。そして、サンプルが破断したときのチャック間距離から、以下の式で伸び率(%)を算出した。
伸び率(%)=100×(破断時のチャック間距離−初期のチャック間距離)/(初期のチャック間距離)
まず、膜を直径2mmの円形に打ち抜いた。そして、その円形の膜を、測定用のアルミセルに約10mgになるように詰めた後、NETZSCH製の測定器(DSC200F3)を用いてDSC測定を行った。測定において、室温から200℃までは昇温速度を20℃/分とし、200℃に達してから5分間200℃を保持し、その後は昇温速度を10℃/分とした。結晶融解熱量は、295℃〜345℃の区間にある吸熱ピークの面積を積分することによって求めた。
まず、面積が25cm2となるように膜を打ち抜いて測定用のサンプルを作製した。そして、そのサンプルの厚さ(cm)および重量(g)を測定した。サンプルの厚さは、尾崎製作所製ダイヤルシックネスゲージG−6C(1/1000mm、測定子直径:5mm)を用いて、室温で65±20%RH(RH:相対湿度)の環境で測定した(以下の膜厚の測定においても同様である)。そして、測定された厚さおよび重量と、膜の比重とを用いて、以下の式によって気孔率(%)を算出した。なお、膜の比重には、焼成されたPTFEの比重(2.18)を用いた。
気孔率(%)=(1−重量/(厚さ×25×2.18))×100
実施例および比較例で作製された高分子電解質膜を、面積が約12cm2となるように切り出して測定用のサンプルを作製した。このサンプルを濃度が3モル/Lの塩化ナトリウム水溶液に浸漬し、浸漬したままの状態で乾燥機中において60℃で72時間以上反応させた。その後、この反応によって置換されたプロトン(H+)の量を電位差自動滴定装置(AT−510:京都電子工業株式会社製)を使用して、0.05Nの水酸化ナトリウム水溶液で滴定することによって測定した。そして、置換されたプロトンの量を酸基の量とした。
電解質膜のプロトン伝導度(電気伝導度)は、通常の膜抵抗測定セルとLCRメーター(HIOKI製、Chemical Impedance meter 3532-80)とを使用して、交流法(新実験化学講座19、高分子化学<II>、p992、丸善)によって測定した。具体的には、まず、幅1cmで長さ2cmに電解質膜を裁断し、それを3時間以上水中に浸漬した。その電解質膜(サンプル)を、膜の両面のそれぞれに1つずつ白金電極が接触するように、且つ、たわみがないようにプロトン伝導度の測定用の治具にセットした。2つの白金電極間の距離は5mmとした。この白金電極に、LCRメーターの測定端子を取り付けた。次に、電解質膜をセットした治具を、予め60℃に設定した恒温水槽で加熱しておいた超純水の入ったビーカーに入れて、LCRメーターによって抵抗を測定した。そして、測定値をプロットし、極小値の実数部分の値を膜抵抗R(Ω)とした。膨潤させたときの膜の厚さをt(cm)、サンプルの幅をh(cm)、電極間距離をL(cm)として、膜厚換算したイオン伝導率σ(S・cm-1)を以下の式から求めた。
σ=L/(R×t×h) [S・cm-1]
電解質膜を30mm(縦方向)×20mm(横方向)のサイズに切り出して測定用のサンプルを作製した。このサンプルを、23℃で55%RHの環境下に1時間以上放置して乾燥状態とした後、縦方向の2辺の長さ(LDRY1およびLDRY2)および横方向の2辺の長さ(WDRY1およびWDRY2)を測定した。その後、このサンプルを23℃の水中に寸法が変化しなくなるまで(1時間以上)浸漬することによって、膨潤状態とした。浸漬後のサンプルについて、縦方向の2辺の長さ(LWET1およびLWET2)および横方向の2辺の長さ(WWET1およびWWET2)を測定した。そして、膨潤による、縦方向および横方向の寸法変化率、ならびに、それらの平均の寸法変化率を以下の式から求めた。
縦方向の寸法変化率(%)={(LWET1+LWET2)/(LDRY1+LDRY2)−1}×100
横方向の寸法変化率(%)={(WWET1+WWET2)/(WDRY1+WDRY2)−1}×100
平均寸法変化率(%)={(縦方向の寸法変化率)+(横方向の寸法変化率)}/2
測定する膜について、カトーテック(株)製の圧縮試験機「KES−G5」を使用して針突刺し試験を行った。そして、測定によって得られた荷重変位曲線から最大荷重を読み取り、その値を突刺し強度の値とした。測定には、直径1.0mm、先端曲率半径0.5mmの針を用い、突刺し速度は2mm/sとした。
PTFE粉末(ダイキン工業株式会社製のF104)に、イソパラフィン系溶剤(エクソンモービル社製のアイソパーM)を20wt%となるように配合して、50℃の温度で、絞り比率を1/50にして平板状のシート(厚さ1mm×幅10cm)を押出した。これを、幅を変えずにロール2本でギャップを調整して厚さが0.2mmになるまで圧延した後、150℃で乾燥して延伸前のシートを作製した。次に、このシートを、長手方向に300℃で10倍延伸し、次いで、幅方向に300℃で10倍延伸した。さらに、シートの四隅を固定した状態で、380℃で60秒間シートを放置した。このようにして、PTFE多孔膜を作製した。
比較例1では、上記のPTFE膜単体を支持体として電解質膜を作製した。具体的には、まず、ナフィオンの20wt%分散液(DE530、デュポン株式会社製)を第1のガラス板上に塗布した。次に、第2のガラス板上に、上記のPTFE多孔膜を固定し、このPTFE多孔膜上にナフィオンの20wt%分散液を塗布した。このPTFE多孔膜を第2のガラス板から剥がし、ナフィオン分散液が塗布されていない面を、第1のガラス板上に塗布されたナフィオン分散液に貼り合わせた。そして、PTFE多孔膜上のナフィオン分散液が半乾きの状態で、ナフィオンの20wt%分散液をPTFE多孔膜上にさらに塗布する作業を2回行った。次に、PTFE多孔膜にナフィオン5wt%分散液をさらに塗布し、60℃の乾燥機に1時間置いて乾燥させた。このようにして、高分子電解質膜を得た。得られた高分子電解質膜について、上述した方法で評価を行った。
上記のPTFE多孔膜を2枚準備し、それらを接着層を用いることなく直接積層して接着し、積層膜を作製した。このとき、2枚のPTFE多孔膜は、一方の膜の伸び率が最小となる方向と他方の膜の伸び率が最小となる方向とがなす角度が90°となるように積層した。接着は、340℃の温度、0.27MPaの圧力で30秒間加熱・加圧することによって行った。得られた積層膜を支持体とすることを除いて、比較例1と同様の方法で支持体(積層膜)に電解質を充填して高分子電解質膜を作製した。得られた高分子電解質膜について、上述した方法で評価を行った。
上述したPTFE多孔膜を2枚準備し、それらを接着層で接着して積層膜を作製した。このとき、2枚のPTFE多孔膜は、一方の膜の伸び率が最小となる方向と他方の膜の伸び率が最小となる方向とがなす角度が90°となるように積層した。また、接着層には、芯部分がポリエチレンテレフタレートで鞘部分がポリエチレンである芯/鞘構造を有する繊維からなる不織布(商品名「エルベス」、ユニチカ株式会社、目付量15g/m2)を用いた。接着は、140℃の温度、0.27MPaの圧力で30秒間加熱・加圧することによって行った。
2枚のPTFE多孔膜がなす角度を変えたことを除いて、実施例1と同様の方法で電解質膜を作製した。実施例2では、2枚のPTFE多孔膜を、一方の膜の伸び率が最小となる方向と他方の膜の伸び率が最小となる方向とがなす角度が45°となるように積層した。得られた高分子電解質膜について、上述した方法で評価を行った。
接着層が異なることを除いて、実施例1と同様の方法で積層膜を作製した。具体的には、上述したPTFE多孔膜を2枚準備し、それらを接着層で接着して積層膜を作製した。このとき、2枚のPTFE多孔膜は、一方の膜の伸び率が最小となる方向と他方の膜の伸び率が最小となる方向とがなす角度が90°となるように積層した。実施例2では、接着層として、ポリエチレン製のネット(Delstar Technologies社製)の「デルネット(DELNET:登録商標)」、目付量9.1〜13.6g/m2)を用いた。接着は、実施例1と同じ条件で行った。
2枚のPTFE多孔膜がなす角度を変えたことを除いて、実施例3と同様の方法で電解質膜を作製した。実施例4では、2枚のPTFE多孔膜を、一方の膜の伸び率が最小となる方向と他方の膜の伸び率が最小となる方向とがなす角度が45°となるように積層した。得られた高分子電解質膜について、上述した方法で評価を行った。
11 第1の膜
12 第2の膜
13 接着層
20 積層膜
Claims (10)
- 燃料電池に用いられる高分子電解質膜であって、
多孔性の積層膜と、前記積層膜に充填され酸性基を含む高分子電解質とを含み、
前記高分子電解質に含まれる前記酸性基は、O−H結合を含む酸性基であり、
前記積層膜は、多孔性の第1の膜、多孔性の第2の膜、および、前記第1の膜と前記第2の膜との間に配置された多孔性の接着層を含み、
前記第1および第2の膜はそれぞれ、方向によって伸び率が異なる膜であり、
前記第1の膜の伸び率が最小となる方向と前記第2の膜の伸び率が最小となる方向とがなす角度が45°〜90°の範囲にあるように前記第1の膜と前記第2の膜とが積層されている、高分子電解質膜。 - 前記酸性基が、スルホン酸基、硫酸基、カルボン酸基、リン酸基、ホスホン酸基およびフェノール性水酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の高分子電解質膜。
- 前記第1および第2の膜はそれぞれ、多孔性のポリテトラフルオロエチレン膜である、請求項1または2に記載の高分子電解質膜。
- 前記ポリテトラフルオロエチレン膜は、示差走査熱量測定において吸熱のピークが322〜332℃の範囲にあり且つ結晶融解熱量が40J/g以下であるポリテトラフルオロエチレンからなる、請求項3に記載の高分子電解質膜。
- 前記第1および第2の膜はそれぞれ、伸び率が最小となる方向における伸び率Tmin(%)と、伸び率が最大となる方向における伸び率Tmax(%)とが、0.05≦Tmin/Tmax≦0.7を満たす、請求項1〜4のいずれか1項に記載の高分子電解質膜。
- 前記接着層は、融点が100〜140℃の範囲にある熱可塑性樹脂を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の高分子電解質膜。
- 前記接着層は、前記熱可塑性樹脂からなる鞘部分と、前記熱可塑性樹脂よりも融点が高い樹脂からなる芯部分とを含む繊維によって構成されている、請求項6に記載の高分子電解質膜。
- 前記積層膜は、気孔率が50%以上であり、且つ、厚さが5μm以上である、請求項1〜7に記載の高分子電解質膜。
- 乾燥状態から膨潤状態に変化させたときの縦方向における寸法変化率L(%)および横方向における寸法変化率T(%)が共に5%以下である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の高分子電解質膜。
- 膜−電極接合体を含む燃料電池であって、
前記膜−電極接合体が請求項1〜9のいずれか1項に記載の高分子電解質膜を含む、燃料電池。
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