図1〜図14を参照して、本発明をウォークイン機構を備えた車両用シート装置に具体化した一実施形態について説明する。なお、以下の記載において、前後方向、幅方向及び上下方向は、車両における各々の該当方向と一致するものとする。
図1に示すように、車両フロア(図示略)上には、前後方向(図1において紙面に直交する方向)に延在する態様で幅方向に並設された一対のロアレール1が固定されるとともに、これら両ロアレール1には、一対のアッパレール2がそれぞれ前後方向に移動可能に支持されている。ロアレール1及びアッパレール2は、シートスライド機構を構成するもので、スライドロック装置(図示略)によってロアレール1に対するアッパレール2の前後方向への移動が選択的に許容されるように構成されている。
両アッパレール2には、シートクッションの骨格を成す略四角枠状のクッションフレーム3が載置されている。クッションフレーム3には、その幅方向両側部を構成する一対のクッションサイドフレーム3a,3bの後端部の外側面において、板材からなる一対のロアプレート4がそれぞれ溶接にて固着されている。そして、両ロアプレート4には、一対のシートリクライニング装置5を介して、シートバックの骨格を成す略四角枠状のシートバックフレーム6が回動(傾動)可能に連結されている。
すなわち、シートバックフレーム6の幅方向両側部を構成する一対のバックサイドフレーム6a,6bは、それらの下端部が両クッションサイドフレーム3a,3bの後端部(ロアプレート4)の各々の幅方向内側に隣接配置されている。そして、両バックサイドフレーム6a,6bの下端部には、幅方向に延びる軸線を有して当該方向に延在する棒状の連結シャフト91が前記両ロアプレート4ともども貫通している。シートバックフレーム6は、両ロアプレート4に対し両シートリクライニング装置5を介して、連結シャフト91の軸線を中心に回動可能に連結されている。これにより、シートクッションに対するシートバックの傾斜角度が調整可能となっている。
なお、クッションサイドフレーム3a,3bの外側面には、連結シャフト91の上側で幅方向外側に延出する固定フランジ7が接合されるとともに、バックサイドフレーム6a,6bの外側面には、ロアプレート4及び固定フランジ7の上側で幅方向外側に延出する可動フランジ8が接合されている。そして、固定フランジ7及び可動フランジ8には、渦巻きばね9の内端部及び外端部がそれぞれ係止されている。渦巻きばね9は、シートクッションに対してシートバックを前倒方向に回動付勢するためのものである。
図2に示すように、シートバック(シートバックフレーム6)は、傾斜角度調整のための着座領域と、該着座領域の前側の前倒れ領域とを傾動領域とし、該傾動領域内で、連結シャフト91の軸線を中心にシートクッション(シートクッションフレーム3)に対し傾動し得るように構成されている。この傾動領域は、シートバックが起立状態にされた「アップライト位置」を基準とする。
着座領域は、「アップライト位置」と、それよりもシートバックが後方へ大きく傾斜させられた「大倒し位置」とによって挟まれた領域である。前述のシートリクライニング装置5は、主としてこの着座領域でシートクッションに対するシートバックの傾斜角度を調整・保持するためのものである。なお、図中、実線で示されるシートバックフレーム6の角度位置は、一般的な乗員が着座したときに最も多く採られるシートバックの角度位置(以下「ニュートラル位置」という)である。
また、前倒れ領域は、「アップライト位置」と、それよりもシートバックが前傾させられた「前倒し位置」とによって挟まれた領域である。特に、着座領域から前倒れ領域の「前倒し位置」まで傾動させられるシートバックの動作は、「前倒し」と呼ばれる。ウォークイン機構は、シートバックの前倒しに連動して、前述のスライドロック装置の解除等を行ってシートクッションを車両フロアに対し前方へスライド移動させるためのものである。
次に、シートリクライニング装置5について説明する。なお、両シートリクライニング装置5は、互いに左右対称になることを除いて互いに同一構造を有しているため、以下では片側のみを代表して説明する。
図3及び図4に示すように、シートリクライニング装置5は、第1部材としての円盤状のロアアーム10と、第2部材としての円盤状のアッパアーム20とを備えている。ロアアーム10は、連結シャフト91の軸線に一致する回転軸O1と同心でロアプレート4の内側面(シートクッション側)に溶接にて固着されるものであり、アッパアーム20は、同じく回転軸O1と同心でバックサイドフレーム6a,6bの下端部の外側面(シートバック側)に溶接にて固着されるものである。
図3に示すように、ロアアーム10は、例えば金属板の半抜き(ハーフブランキング)により成形されたもので、アッパアーム20側に開口する円形の凹部11を有している。凹部11は、連結シャフト91(ロアアーム10及びアッパアーム20)の回転軸O1を中心とする内周面11aを有している。
ロアアーム10の凹部11内には、3つの略扇状の凸部12が円周上に等角度間隔に配置されている。各凸部12は、その周方向両側にガイド壁13,14を形成する。各隣り合う凸部12の周方向で対向するガイド壁13,14同士は、回転軸O1を中心とする径方向に互いに平行に延びており、凹部11の底面と協働して回転軸O1を中心とする径方向に延びる略U字溝状のガイド溝15を円周上に等角度間隔に形成する。これらガイド溝15は、中央部で連通しており、全体として略Y字形状を呈している。
また、ロアアーム10の3つのガイド溝15が連通する中央部には、略円形の貫通孔16が形成されている。この貫通孔16は、所定角度位置で径方向外側に凹設された係止孔16aを有する。
図4に示すように、アッパアーム20は、例えば金属板の半抜きにより成形されたもので、ロアアーム10の内周面11aの内径と同等の外径の外周面20aを有するとともに、ロアアーム10側に開口する円形の凹部21を有している。凹部21の回転軸O1を中心とする内周面21aには、内歯22が全周に亘って形成されている。また、凹部21の内周側には、該凹部21と同心円上に円形の凹部23が形成されている。凹部23の内周面23aには、所定角度位置で回転軸O1に向かって突出する略円弧状の突部24が形成されている。
図6に示すように、アッパアーム20は、その外周面20aで、ロアアーム10の内周面11aと摺接するように嵌合されている。そして、ロアアーム10及びアッパアーム20の外周部には、ロアアーム10の内周面11aとアッパアーム20の外周面20aとが嵌合された状態で、金属板からなるリング状のホルダ29が装着されている。ロアアーム10及びアッパアーム20は、このホルダ29によって相対回動が許容された状態で軸線方向に抜け止めされている。
図3及び図4に示すように、ロアアーム10とアッパアーム20との間には、ロック機構30及びメモリ機構70が配設されている。ロック機構30は、主として、3つのポール31A,31B,31Cと、カム32と、レリーズプレート33と、付勢部材としての渦巻きばね34と、押圧部材35とによって構成されている。
ポール31A〜31Cは、隣り合う2つのガイド壁13,14の間に装着されて、回転軸O1を中心とする周方向に等角度間隔に配置されている。
ポール31Aは、鋼材を鍛造加工するなどして作製され、軸線方向に互いに段違い形成された第1ブロック41と第2ブロック42とを備えている。ポール31Aは、第1ブロック41がアッパアーム20の内周面21a側に配置され、第2ブロック42がアッパアーム20の軸心側に配置されている。これら第1ブロック41及び第2ブロック42の両幅端部311,312は一致するとともに、平行な直線となるように形成されている。第1ブロック41の円弧状の外方端(アッパアーム20の内歯22と対向する端面)には、アッパアーム20の内歯22と噛合可能な外歯44が形成され、第1ブロック41の内方端(外方端とは逆向きの端面である背面)には、カム32の外周部に係合する内面カム部45が形成されている。さらに、第2ブロック42には、板厚方向に貫通するポール側溝カム部46が幅方向の略中央部位に透設されている。
そして、ポール31Aは、その両幅端部311,312を両ガイド壁13,14に摺接する態様で回転軸O1を中心とする径方向への移動が案内されている。ポール31Aは、両ガイド壁13,14に沿って径方向に進退することで、その外歯44と内歯22とを噛合又は解除(係脱)する。なお、ポール31Aには、凹部23(内周面23a)に径方向で対向するように、アッパアーム20に向かう軸線方向に円弧状の係合部43が突設されている。
一方、ポール31B,31Cは、板状の鋼板をプレス加工するなどして作製され、ポール31Aの第2ブロック42が切除され、第1ブロック41のみによって構成された形状に近似した段差をもたない平板形状をなしている。すなわち、ポール31B,31Cは、ポール31Aに対して第2ブロック42の分だけ径方向に短く、かつ板厚も第2ブロック42の板厚分だけ薄く形成されている。ポール31B,31Cは、ポール31Aと同様に、両幅端部313,314は平行な直線に形成されている。ポール31B,31Cの円弧状の外方端には、アッパアーム20の内歯22と噛合可能な外歯47が形成され、ポール31B,31Cの内方端には、カム32の外周部に係合する内面カム部48が形成されている。さらに、ポール31B,31Cには、周方向の中央部に円柱状の係合突部49がレリーズプレート33に向けて突設されている。なお、以下の説明では、ポール31B,31Cの各々の係合突部49を便宜的に「49B,49C」としてこれらを区別することもある。
そして、ポール31B,31Cは、各々の両幅端部313,314を両ガイド壁13,14に摺接する態様で回転軸O1を中心とする径方向への移動が案内されている。ポール31B,31Cは、両ガイド壁13,14に沿って径方向に進退することで、各々の外歯47と内歯22とを噛合又は解除(係脱)する。
ここで、ポール31Aの段差部に形成された内面カム部45は、図7(b)に示すように、ポール31Aの周方向の中央部と周方向の両側に、3つのポール側カム面50a,50b,50cを備えている。これらポール側カム面50a〜50cは、カム32の外周部(カム面55)に対向している。ポール側カム面50a〜50cは、カム32の図示反時計回転方向(以下、「ロック回転方向」ともいう)への回動に伴うロック作動時に該カム32の外周部に接近する傾斜面を有するカム面で構成されている。
なお、ポール31Bの内方端に形成された内面カム部48も、ポール31Aの内面カム部45に準じた形状の3つのポール側カム面51a,51b,51cを備えている。一方、ポール31Cの内方端に形成された内面カム部48は、ポール31Bのポール側カム面51cに代わるポール側カム面52を備えている。このポール側カム面52は、周方向で対向するガイド壁13との間で楔状の空間を形成するように成形されている。すなわち、ガイド壁13とポール側カム面52との間隔は、径方向外方へ向かうに従って狭くなるように成形されている。
図6及び図7(b)に示すように、カム32は、アッパアーム20の凹部21内となるポール31A〜31Cの内周側で、回転軸O1上に回転可能に配置されている。すなわち、カム32は、板状の鋼板をプレス加工するなどして作製され、段差をもたない平板形状をなしている。そして、カム32の中央部には、回転軸O1に沿って板厚方向に貫通する略小判形のカム嵌合孔32aが形成されている。一方、前記ロアプレート4等とともにシートリクライニング装置5を回転軸O1に沿って貫通する前記連結シャフト91の先端部には、カム嵌合孔32aに嵌合する略小判柱状の嵌合部92が形成されている。これにより、カム32は、ポール31A〜31Cの内周側で、連結シャフト91と一体で回転軸O1を中心に回動可能となっている。左右のカム32(ロック機構30)が、連結シャフト91を介して互いに同期して動作するように連結されることはいうまでもない。
図7(b)に示すように、カム32は、その外周部に円周上に等角度間隔に3組のカム面55を有している。各カム面55は、その周方向の中央部と周方向の両側に、3つの押圧カム部55a,55b,55cを備えている。これらのうちの2つの押圧カム部55a,55bは、ポール31Aの対向する2つのポール側カム面50a,50b又はポール31B,31Cの対向する2つのポール側カム面51a,51bに当接可能であり、カム32がロック回転方向に回動されたときに該当のポール側カム面50a,50b、51a,51bを押圧する。
一方、これらのうちの残りの1つの押圧カム部55cは、ポール31A,31Bの対向する残りのポール側カム面50c,51cに当接可能であり、カム32がロック回転方向に回動されたときに該当のポール側カム面50c,51cを押圧する。あるいは、押圧カム部55cは、ポール31Cのポール側カム面52及びガイド壁13との間に形成される前述の楔状の空間内に、球体状の押圧部材35を収容する。押圧部材35は、ロアアーム10の凹部11とレリーズプレート33の周縁部とにより軸線方向に挟まれており、ポール側カム面52及びガイド壁13に摺接しつつ径方向に移動できるようになっている。当該押圧カム部55cは、押圧部材35に外接可能であり、カム32がロック回転方向に回動されたときに押圧部材35を押圧する。
つまり、押圧カム部55a〜55cは、カム32がロック回転方向に回動されたときに、ポール31Aのポール側カム面50a〜50c、ポール31Bのポール側カム面51a〜51c、並びにポール31Cのポール側カム面51a,51b及び押圧部材35にそれぞれ当接(圧接)する角度位置に保持されている。
なお、押圧部材35は、カム32により押圧されることでガイド壁13及びポール側カム面52にそれぞれ圧接する。このとき、押圧部材35の押圧力は、ポール31Cの移動方向成分(径方向成分)の分力及び該移動方向に直交する方向であるポールの幅方向成分(周方向成分)の分力に分解される。そして、このポールの幅方向成分の分力での押圧による楔作用によって、ポール31Cの幅端部313とガイド壁13とが互いに離間する周方向の力を発生し、ポール31Cの幅端部314とガイド壁14との隙間が埋まる。これは、シートクッションに対するシートバックのがたつきを抑制するためのものである。
一方、図8(b)に示すように、カム32の図示時計回転方向(以下、「アンロック回転方向」ともいう)への回動に伴うアンロック作動時に、押圧カム部55a,55bは、ポール31Aのポール側カム面50a,50b又はポール31B,31Cのポール側カム面51a,51bから離隔される。また、押圧カム部55cは、ポール31A,31Bのポール側カム面50c,51cから離隔され、あるいは押圧部材35から離隔される。
図3に示すように、カム32の側面には、円周上に間隔をおいて複数(3つ)の係合突起57が突設され、これら係合突起57の1つが、ポール31Aのポール側溝カム部46に挿入・係合されている。ポール側溝カム部46及び係合突起57は、カム32のアンロック回転方向への回動によってポール31Aを径方向内方へ移動させるように作用する。すなわち、図7(a)に示すように、ポール側溝カム部46は、カム32のアンロック回転方向(図示時計回転方向)に向かうに従い、基本的に径方向外方に漸進するように成形されている。これにより、カム32のアンロック回転方向への回動に伴い、係合突起57にポール側溝カム部46の押圧されるポール31Aが径方向内方に引き込まれる。
図3に示すように、カム32の内側面には、薄板からなる扇形状のレリーズプレート33が係合突起57に係合されて一体的に取付けられている。このレリーズプレート33は、中心部に嵌合部92(連結シャフト91)との干渉を回避するための円弧形の貫通孔33aを有している。図6に示すように、レリーズプレート33は、軸線方向の範囲においてポール31Aの第2ブロック42内に収まるようにカム32に取付けられており、ポール31B,31Cの端面に摺接可能に対接されている。これによって、ポール31B,31C及びレリーズプレート33がポール31Aの厚みの範囲内に収められている。また、図7(a)に示すように、レリーズプレート33は、アッパアーム20に形成した突部24とは非接触状態になるようにその扇形状の外径が設定されている。つまり、レリーズプレート33は、前記外径を有する略円環形のプレートの一部位に扇型の切欠き33bを形成することでその外形をなしている。そして、この切欠き33bの部位に、ポール31Aが配設されている。これにより、カム32と一体でレリーズプレート33が回動したとしても、該レリーズプレート33がポール31Aに干渉しないようにしている。
レリーズプレート33には、回転軸O1を中心とする周方向に間隔をあけて、板厚方向に貫通する2つのレリーズプレート側溝カム部59が形成されている。これらレリーズプレート側溝カム部59は、ポール31B,31Cの端面にそれぞれ対応するように、係合突起57の円周位置よりも径方向外方に配置されている。レリーズプレート側溝カム部59には、ポール31B,31Cに突設された係合突部49がそれぞれ挿入・係合されている。レリーズプレート側溝カム部59と係合突部49との係合によって、カム32と共にレリーズプレート33がアンロック回転方向に回動されると、ポール31B,31Cを径方向内方へ移動させるようにしている。すなわち、図7(a)に示すように、レリーズプレート側溝カム部59は、カム32のアンロック回転方向(図示時計回転方向)に向かうに従い、基本的に径方向外方に漸進するように成形されている。これにより、カム32と一体でのレリーズプレート33のアンロック回転方向への回動に伴うアンロック作動時に、レリーズプレート側溝カム部59に係合突部49の押圧されるポール31B,31Cが径方向内方に引き込まれる。
図4に示すように、渦巻きばね34は、ポール31A〜31Cをアッパアーム20に係合する径方向に移動させるべくカム32をロック回転方向に回動付勢するもので、ロアアーム10の貫通孔16内に収納されている。渦巻きばね34は、例えば略矩形の扁平な線材を所定の渦巻き形状に曲成することにより形成されており、ロアアーム10とカム32との間に介装されている。すなわち、渦巻きばね34の外端部34aは、係止孔16aに係止され、内端部34bは、カム32の端面に突設された係止部32bに係止されている。
かかる渦巻きばね34の付勢力によって、カム32はロアアーム10に対してロック回転方向(図7(b)の反時計回転方向)に回動付勢され、そのカム面55によってポール31A〜31Cを径方向外方に押圧し、各々の外歯44,47をアッパアーム20の内歯22に噛合させるようになっている。
図3及び図4に示すように、メモリ機構70は、主として、切替部材としてのトリガプレート71と、メモリ部材としてのメモリプレート76とによって構成されている。
図6及び図7(a)に示すように、トリガプレート71は、アッパアーム20の凹部23内で、回転軸O1上に回動可能に配置されている。すなわち、トリガプレート71は、板状の鋼板をプレス加工するなどして作製され、段差をもたない平板形状をなしている。このトリガプレート71は、ポール31Aに対応する角度範囲だけ扇形状に切欠くことにより半円盤状に成形されており、前記嵌合部92(連結シャフト91)との干渉を避けるための円弧状の挿通溝71aを有するとともに、該挿通溝71aの周縁部に一対の結合孔71bを有する。一方、連結シャフト91は、その外径と同等の内径の軸挿通孔96aを有する円筒状のメモリシャフト96に挿入されている。メモリシャフト96は、軸挿通孔96aに連結シャフト91が挿入されることでこれに軸支されており、従って、メモリシャフト96は、回転軸O1に沿って延びる軸線を有している。
そして、図4に示すように、メモリシャフト96には、トリガプレート71に対向する先端面に、軸線方向に沿って、略円弧柱状の取付部97が突設されるとともに、前記両結合孔71bに対向して取付部97に一対のピン状の結合突部98が突設されている。トリガプレート71は、連結シャフト91の挿入されたメモリシャフト96の両結合突部98が両結合孔71bにそれぞれ嵌挿された状態で取付部97に接合されている。これにより、トリガプレート71は、メモリシャフト96と一体で回転軸O1を中心に回動可能となっている。左右のトリガプレート71(メモリ機構70)が、メモリシャフト96を介して互いに同期して動作するように連結されることはいうまでもない。
図7(a)に示すように、トリガプレート71の外周面は、周方向一側(図示時計回転方向に回転する側)の部位に比べて周方向他側(反時計回転方向に回転する側)の部位が縮径されており、当該側の外周面は、回転軸O1において、突部24の内径よりも小さい外径を有する切替カム面としての円弧状の第1切替カム面72を形成する。この第1切替カム面72の周方向一側(図示時計回転方向に回転する側)の先端部は、略U字溝状のカム溝面72aを形成する。このカム溝面72aは、周方向一側(図示時計回転方向に回転する側)に向かうに従い回転軸O1に近付く径方向に向かうように直線状に傾斜している。また、トリガプレート71は、第1切替カム面72よりも内周側となる周方向一側(図示時計回転方向に回転する側)の部位に、回転軸O1を中心とする周方向に延在する切替カム面としての長孔状の第2切替カム面73を形成する。この第2切替カム面73の周方向一側(図示時計回転方向に回転する側)の先端部は、略U字溝状のカム溝面73aを形成する。このカム溝面73aは、図示時計回転方向に回転する側に向かうに従い回転軸O1から離隔する径方向に向かうように直線状に傾斜している。
図6及び図7(a)に示すように、メモリプレート76は、アッパアーム20の凹部21内で、軸線方向においてレリーズプレート33及びトリガプレート71間に挟まれてそれらの端面に摺接可能に対接されている。すなわち、メモリプレート76は、軸線方向において、ポール31Aの第1ブロック41(外歯44)及びポール31B,31C(外歯47)の位置とは異なる位置に配置されている。
メモリプレート76は、板状の鋼板をプレス加工するなどして作製され、段差をもたない平板形状をなしている。そして、メモリプレート76は、レリーズプレート33及びトリガプレート71の各々の外周縁部に沿って延在する弓形に成形されており、図示反時計回転方向に回転する側に向かうに従い径方向に徐々に拡幅されている。また、メモリプレート76の周方向他側(図示反時計回転方向に回転する側)の先端部には、トリガプレート71の第1切替カム面72に摺接するピン状の第1切替カム突部77が突設されるとともに、周方向一側(図示時計回転方向に回転する側)の先端部には、第2切替カム面73に嵌入するピン状の第2切替カム突部78が突設されている。つまり、メモリプレート76は、第1及び第2切替カム面72,73を摺接する第1及び第2切替カム突部77,78を介してトリガプレート71に連結されている。これら第1及び第2切替カム突部77,78間の距離は、両カム溝面72a,73a間の距離と同等に設定されている。また、メモリプレート76の周方向他側(図示反時計回転方向に回転する側)の先端部には、その外周面に沿ってアッパアーム20の内歯22と噛合可能な外歯79が形成されている。なお、メモリプレート76の内周面は、外向きに凸となる円弧状のメモリカム面76aを形成する。
そして、図7(a)及び図8(a)に示すように、第1切替カム突部77が第1切替カム面72のカム溝面72aに嵌入するとともに第2切替カム突部78が第2切替カム面73のカム溝面73aに嵌入する状態では、メモリプレート76は、その外周面が内歯22の内周側に間隔をあけて周方向に延在する。そして、メモリプレート76の外歯79は、内歯22(アッパアーム20)から解放されている。このとき、ポール31B,31Cの外歯47と内歯22との係脱に関わらず、それらポール31B,31Cの両係合突部49B,49C間にメモリプレート76が回転軸O1を中心とする周方向で挟まれている。つまり、この状態では、メモリプレート76は、その周方向両側面に両係合突部49B,49Cがそれぞれ当接することで周方向への移動が規制されている。
ここで、メモリシャフト96の回動に連動して、図10に示すように、トリガプレート71の図示時計回転方向(以下、「メモリ作動回転方向」ともいう)への回動に伴うメモリ作動時、第1及び第2切替カム面72,73に案内されるメモリプレート76の第1及び第2切替カム突部77,78がカム溝面72a,73aからそれぞれ外れると、メモリプレート76は、第1切替カム突部77側の先端部が径方向外側に押し出されるとともに、第2切替カム突部78側の先端部が径方向内側に引き込まれる。そして、メモリプレート76は、その外歯79が内歯22に噛合することで、該内歯22(アッパアーム20)に係止・固定される。このとき、メモリプレート76のメモリカム面76aは、回転軸O1を中心とする円弧に沿って延びるように設定されている。トリガプレート71のメモリ作動時におけるメモリプレート76の動作は、回転軸O1に対しシートリクライニング装置5よりも外側に平行にずれた軸線を中心とする回動となっている。これは、トリガプレート71の回動量が僅少であってもメモリプレート76の回動量を比例的に増加させることで、メモリプレート76をより確実にアッパアーム20に固定するためである。
なお、この際、ポール31B,31Cの外歯47と内歯22とが未だ噛合状態にあれば、メモリプレート76は、依然としてその周方向両側面に両係合突部49B,49Cがそれぞれ当接することで周方向への移動が規制されたままである。一方、図10に示すように、カム32及びレリーズプレート33の回動に伴いポール31B,31Cの外歯47と内歯22との噛合が解除されると、メモリプレート76は、ポール31Cの係合突部49Cが当該側の側面から外れることで、アッパアーム20と一体での図示反時計回転方向への回転が許容される。つまり、メモリプレート76は、メモリカム面76aにおいてポール31Cの係合突部49Cの周方向の移動軌跡を開放する。従って、この状態でアッパアーム20が図示反時計回転方向に回転すると、メモリプレート76は、第1及び第2切替カム突部77,78を第1及び第2切替カム面72,73に摺動させつつアッパアーム20と一体回転する。
この際、ポール31Cは、メモリプレート76のメモリカム面76aを摺動する係合突部49Cにおいて径方向外側への移動が係止されることで、その外歯47と内歯22との噛合が解除されたままとなる。ポール31Cの移動係止に伴うレリーズプレート33及びカム32の回動係止により、他のポール31A,31Bも、その外歯44,47と内歯22との噛合が解除されたままとなる。一方、メモリプレート76は、係合突部49Cの摺動するメモリカム面76aにおいて径方向内側への移動が係止されることで、その外歯79と内歯22とが噛合されたままとなり、これに伴ってトリガプレート71もメモリ作動の状態で回動係止されたままとなる。
この状態で、図11に示すように、第1及び第2切替カム面72,73を摺動する第1及び第2切替カム突部77,78がそれらの終端に達すると、今度はアッパアーム20の突部24にポール31Aの係合部43が乗り上げる。これにより、ポール31Aは、径方向外側への移動が係止されて、その外歯44と内歯22との噛合が解除されたままとなる。なお、突部24にポール31Aの係合部43が乗り上げるときのアッパアーム20の回転範囲に相当するシートバック(シートバックフレーム6)の傾動領域は、前述の前倒れ領域に一致する。
次に、連結シャフト91及びメモリシャフト96の係合構造について説明する。図3及び図6に示すように、連結シャフト91には、アッパアーム20よりも幅方向内側となる嵌合部92の軸線方向中間部で径方向外側に突出する円柱状の被伝達部93が設けられている。一方、メモリシャフト96には、周方向に延在する長孔状の伝達部99が形成されている。この伝達部99には、連結シャフト91の被伝達部93が移動可能に遊挿されている。
既述のように、渦巻きばね34に回動付勢されるカム32は、通常はポール31Aの外歯44がアッパアーム20の内歯22に噛合する所定の回動位置に保持されることで、カム32に一体回動するように連結される連結シャフト91も所定の回動位置に保持されている。一方、図13に示すように、メモリシャフト96の外周面には、伝達部99の幅方向内側でケーブルリンク100が一体回動するように固着されている。このケーブルリンク100には、伝達部99及びケーブルリンク100間でメモリシャフト96周りに巻回されたコイルばね101の一端が係止されている。コイルばね101は、その他端がクッションフレーム3側に係止されており、メモリシャフト96と一体のトリガプレート71がメモリ作動を解除する回転方向(図5において反時計回転方向)へとメモリシャフト96を回動付勢する。メモリシャフト96は、通常はコイルばね101によりトリガプレート71がメモリ作動を解除する位置に対応する所定の回動位置に付勢保持されている。
ここで、図7に示すように、ポール31A〜31Cの外歯44,47がアッパアーム20の内歯22との噛合状態にあり、且つ、メモリプレート76の外歯79がアッパアーム20の内歯22から解放されている状態(以下、「ロック状態」ともいう)にあるとき、図14(a)に示すように、連結シャフト91の被伝達部93は、伝達部99の長手方向である周方向中間部に配置されている。この状態で、カム32等を介してポール31A〜31Cの外歯44,47をアッパアーム20の内歯22から解除すべく、連結シャフト91を図示時計回転方向に回動させたとする。このとき、被伝達部93は、伝達部99内を空走するように設定されており、これによって連結シャフト91からメモリシャフト96へと回転伝達されることはない。
一方、ロック状態において、トリガプレート71を介してメモリプレート76の外歯79をアッパアーム20の内歯22に噛合すべく、図14(b)(c)に示すように、メモリシャフト96を図示時計回転方向に回動させたとする。このとき、図14(b)に示すように、伝達部99が被伝達部93に当接するまでは、メモリシャフト96から連結シャフト91へと回転伝達されることはない。本実施形態では、この間のメモリシャフト96の回動を利用して、トリガプレート71を介したメモリプレート76の外歯79とアッパアーム20の内歯22との噛合を完了するように設定されている。そして、図14(b)に示すように、メモリシャフト96を図示時計回転方向に更に回動させると、伝達部99に被伝達部93が押圧されることで連結シャフト91が一体で回動する。これにより、カム32等を介してポール31A〜31Cの外歯44,47がアッパアーム20の内歯22から解除される。つまり、メモリプレート76の外歯79をアッパアーム20の内歯22に噛合させた後で、ポール31A〜31Cの外歯44,47をアッパアーム20の内歯22から解除する構成となっている。このような機能を実現する構造をロストモーション機構ともいう。
図12(a)(b)に示すように、バックサイドフレーム6b側となる片側のロアプレート4から軸線方向に突出する連結シャフト91の先端部(嵌合部92)には、板材からなる略弓形状の第1操作レバー61が回動可能に支持されている。この第1操作レバー61は、連結シャフト91周りであって、周方向に互いに離間した箇所から径方向外側へ突出する一対の可動ストッパ61a,61bを備えている。これら可動ストッパ61a,61bの連結シャフト91を中心とする回動軌跡上に前記固定フランジ7が配置されている。従って、第1操作レバー61の回動操作範囲αは、可動ストッパ61aが前記固定フランジ7に当接するロック位置(図12(a)参照)と、可動ストッパ61bが固定フランジ7に当接する解除位置(図12(b)参照)との間に制限される。このような機能を実現する構造を操作範囲制限機構ともいう。
なお、第1操作レバー61は、ロアプレート4との間に張設された復帰ばね69によって、常にロック位置側へ回動付勢されている(引っ張られている)。
一方、図1に示すように、シートバックフレーム6の上部には、幅方向に延在して当該方向に橋渡しされる架設部材6cが設けられている。そして、この架設部材6cには、幅方向において第1操作レバー61側に、板材からなるアーム状の第2操作レバー62が、軸63により上下方向に回動可能に支持されている。第2操作レバー62は、復帰ばね64により常に下方へ回動付勢されている。また、架設部材6cにおいて、第2操作レバー62の上側及び下側には、ストッパ67a,67bが設けられており、第2操作レバー62の操作範囲がこれらストッパ67a,67bによって規定されている。
第2操作レバー62は、ケーブル68を介して前記ケーブルリンク100の先端部に駆動連結されており、第2操作レバー62の操作に応じた該第2操作レバー62の動きがケーブル68及びケーブルリンク100を介してメモリシャフト96に伝達されるように構成されている。すなわち、図13に示すように、ケーブルリンク100の先端部には、メモリシャフト96の軸線を中心とする円弧状の係止孔100aが形成されている。一方、ケーブル68の端末には、係止孔100aの長手方向に摺動自在に挿通される円柱状の係止ピン68aが固着されている。なお、図1及び図13では、ケーブル68の中間部分の図示が省略されている。
ケーブルリンク100は、第2操作レバー62の操作に伴いケーブル68を介して先端部(係止孔100a)が引き上げられると、コイルばね101の付勢力に抗して先端部が上動するようにメモリシャフト96と一体でその軸線回りに回動する。このとき、メモリシャフト96に連結されたトリガプレート71の前述のメモリ作動等が行われる。
また、ケーブルリンク100は、第2操作レバー62の操作力が解放されると、コイルばね101に付勢されて元位置に復帰しようとする。従って、前述のトリガプレート71のメモリ作動に伴う該トリガプレート71と一体でのメモリシャフト96の回動係止がなければ、ケーブルリンク100は、コイルばね101に付勢されて元位置に復帰する。同時に、第2操作レバー62も、復帰ばね64に付勢されて元位置に復帰する。あるいは、トリガプレート71のメモリ作動に伴う該トリガプレート71と一体でのメモリシャフト96の回動係止があると、ケーブルリンク100は、コイルばね101に付勢されても元位置へと復帰することはない。しかしながら、第2操作レバー62は、ケーブル68の係止ピン68aを係止孔100aとの間の遊びの範囲で摺動させつつ、復帰ばね64に付勢されて元位置に復帰する。
図12(a)(b)に示すように、第1操作レバー61側となる片側のロアプレート4から軸線方向に突出する連結シャフト91の先端部(嵌合部92)には、固定フランジ7の下側となる第1操作レバー61の外側に隣接して、板材からなるリンク部材80が一体回転するように連結されている。すなわち、リンク部材80は、その先端部に回転軸O1に沿って貫通する略小判形の嵌合孔80aを有する。リンク部材80は、嵌合孔80aに嵌合部92が嵌合されることで連結シャフト91に一体回転するように連結される。このリンク部材80の先端部には、連結シャフト91を中心とする円弧状の長孔81が形成されている。一方、第1操作レバー61には、長孔81に摺動自在に挿通されるピン82が固定されている。
既述のように、第1操作レバー61は、連結シャフト91の先端部(嵌合部92)に対し回動可能に支持されており、復帰ばね69によって常にロック位置側へ回動付勢されている。一方、リンク部材80は、連結シャフト91と一体のカム32が渦巻きばね34によりロック作動する側の回転方向(図12において時計回転方向)に常に回動付勢されていることで、通常はロック位置にある第1操作レバー61のピン82に長孔81の一方の端部(前端部)が係止される位置に配置されている。
従って、第1操作レバー61が操作されるときには、リンク部材80は、ピン82により長孔81の一方の端部(前端部)が押圧されることで、第1操作レバー61と一体となって図示反時計回転方向に回動する。そして、リンク部材80の回動に伴い、連結シャフト91が一体となって同方向へ回動する。ところで、第1操作レバー61の回動操作範囲αは、前述の操作範囲制限機構によりロック位置と解除位置との間に制限されている。この第1操作レバー61の回動操作範囲αは、リンク部材80を介した連結シャフト91の回動時に、被伝達部93が伝達部99内を空走する範囲に相当している(図14(a)参照)。これにより、第1操作レバー61の操作に伴いリンク部材80を介して連結シャフト91が回動する際には、連結シャフト91からメモリシャフト96へと回転伝達されることはない。このため、ケーブルリンク100が回動したりケーブル68が撓んだりすることもなく、当然ながらこのときの回動が第2操作レバー62へと伝達されることもない。これにより、第1操作レバー61の操作時に、第2操作レバー62を停止させたままにできる。
一方、第2操作レバー62が操作されるときには、ケーブル68を介してケーブルリンク100が引き上げられることで、メモリシャフト96が回動する。この際、前述の若干のタイミング遅れを経てメモリシャフト96と一体で連結シャフト91が図示反時計回転方向に回動すると、リンク部材80が一体となって同方向へ回動する。この場合、長孔81内でのピン82の移動が許容されていることで、リンク部材80の回動が第1操作レバー61へと伝達されることはない。これにより、第2操作レバー62の操作時に、第1操作レバー61を停止させたままにできる。
つまり、第1操作レバー61及び第2操作レバー62は、各々の操作によって共通の連結シャフト91を回動させるものの、互いの動作が独立するように構成されている。これにより、例えば角度位置を記憶することなくシートバックの傾動を許容するべく、第1操作レバー61を操作した際に、第2操作レバー62が揺動するといった不自然な動作が解消される。同様に、角度位置を記憶した上でシートバックの傾動を許容するべく、第2操作レバー62を操作した際に、第1操作レバー61が揺動するといった不自然な動作も解消される。
次に、本実施形態の動作について説明する。
まず、図5及び図7(a)(b)に示すように、ポール31A〜31Cの外歯44,47がアッパアーム20の内歯22との噛合状態にあり、且つ、メモリプレート76の外歯79がアッパアーム20の内歯22から解放されているロック状態にあるものとする。このとき、ロアアーム10に対するアッパアーム20の回動が規制されて、シートクッションに対するシートバックの回動が規制(ロック)されている。
この状態で、第1操作レバー61を操作してロック位置から解除位置へと回動させると、該回動がリンク部材80及び連結シャフト91を介してカム32に伝達される。これにより、図8(a)(b)に示すように、カム32及びレリーズプレート33が渦巻きばね34の付勢力に抗してアンロック回転方向(図示時計回転方向)に一体的に回動し、カム32のカム面55(押圧カム部55a〜55c)と、ポール31Aのポール側カム面50a〜50c、ポール31Bのポール側カム面51a〜51c、並びにポール31Cのポール側カム面51a,51b及び押圧部材35との当接がそれぞれ外れる。そして、ポール31Aのポール側溝カム部46とカム32の係合突起57との係合作用によって、ポール31Aがガイド壁13,14に沿って回転軸O1側に引き寄せられ、ポール31Aの外歯44と内歯22との噛合状態を解除する。同時に、ポール31B,31Cの係合突部49とレリーズプレート側溝カム部59との係合作用によって、ポール31B,31Cがガイド壁13,14に沿って回転軸O1側に引き寄せられ、ポール31B,31Cの外歯47と内歯22との噛合状態を解除する。これにより、ロアアーム10及びアッパアーム20の相対回転の係止が解除されて、シートクッションに対するシートバックの回動が許容(アンロック)される。
なお、前述の操作範囲制限機構により制限される第1操作レバー61の回動操作範囲αでは、ポール31Aが回転軸O1側に引き寄せられた状態にあってもその係合部43がアッパアーム20の突部24の回動軌跡を遮るように設定されている。従って、アッパアーム20を図示反時計回転方向に回転させた場合には、図9に示すように、突部24が係合部43に当接することでその回転が係止される。このときのアッパアーム20の回転方向はシートバックを前側に傾動させる方向に一致しており、突部24が係合部43に当接するときの回転位置はシートバックのアップライト位置に相当する。つまり、第1操作レバー61の操作時には、シートバック(シートバックフレーム6)の着座領域においてのみその回動が許容されている。これは、第1操作レバー61の操作時にシートバック(シートバックフレーム6)が前倒れ領域に進入して、第1操作レバー61の操作力を解放してもシートバックがロック不能に陥ることを回避するためである。
その後、第1操作レバー61の操作力を解放すると、渦巻きばね34によりカム32がロック回転方向(図示反時計回転方向)に回動付勢されることで、該カム32のカム面55(押圧カム部55a〜55c)と、ポール31Aのポール側カム面50a〜50c、ポール31Bのポール側カム面51a〜51c、並びにポール31Cのポール側カム面51a,51b及び押圧部材35がそれぞれ当接する。そして、ポール31A〜31Cが径方向外方へ押圧される。これにより、ポール31A〜31Cの外歯44,47とアッパアーム20の内歯22とが噛合い、ロアアーム10に対するアッパアーム20の回動が規制されて、シートクッションに対するシートバックの回動が規制(ロック)される。同時に、第1操作レバー61は、復帰ばね69に付勢されて解除位置からロック位置へと回動する。
以上により、シートバック(シートバックフレーム6)の着座領域において、シートバックを乗員着座等に好適な所要の傾斜角度に調整・保持することができる。
なお、これらの際、前述のロストモーション機構により、連結シャフト91の回動がメモリシャフト96へと伝達されることがないため、該メモリシャフト96に固定されたトリガプレート71が回動することはなく、該トリガプレート71に連結されたメモリプレート76の外歯79は、アッパアーム20の内歯22から解放されたままである。従って、ロアアーム10及びアッパアーム20の相対回転時には、メモリプレート76は、アッパアーム20に固定されることなくトリガプレート71に連結されたままであることで、ロアアーム10及びアッパアーム20の相対回転に関わらずロアアーム10に対する変位はない。また、第1操作レバー61を操作した際に、第2操作レバー62が揺動するといった不自然な動作もない。
また、ロック状態で、第2操作レバー62を操作してケーブル68及びケーブルリンク100を介してメモリシャフト96を回動させると、図10に示すように、トリガプレート71のメモリ作動回転方向(図示時計回転方向)への回動に伴うメモリ作動により、第1及び第2切替カム面72,73に案内されるメモリプレート76の第1及び第2切替カム突部77,78がカム溝面72a,73aからそれぞれ外れる。そして、メモリプレート76は、第1切替カム突部77側の先端部が径方向外側に押し出されるとともに、第2切替カム突部78側の先端部が径方向内側に引き込まれる。これにより、メモリプレート76は、その外歯79が内歯22に噛合することで、該内歯22(アッパアーム20)に係止される。このとき、メモリプレート76のメモリカム面76aは、回転軸O1を中心とする円弧に沿って延びるように設定されている。
そして、ポール31B,31Cの外歯47と内歯22とが未だ噛合状態にあれば、メモリプレート76は、依然としてその周方向両側面に両係合突部49B,49Cがそれぞれ当接することで周方向への移動が規制されたままである。一方、メモリシャフト96から連結シャフト91への回転伝達が開始されて、図10に示すように、カム32及びレリーズプレート33のアンロック回転方向(図示時計回転方向)への回動が加わると、ポール31A〜31Cの外歯44,47と内歯22との噛合が解除される。この際、メモリプレート76は、ポール31Cの係合突部49Cが当該側の側面から外れるとともにメモリカム面76aにおいてポール31Cの係合突部49Cの周方向の移動軌跡を開放することで、アッパアーム20と一体での図示反時計回転方向への回転が許容される。このときのアッパアーム20の回転方向は、シートバックを前側に傾動させる方向に一致する。
従って、この状態でアッパアーム20が図示反時計回転方向に回転すると、メモリプレート76は、第1及び第2切替カム突部77,78を第1及び第2切替カム面72,73に摺動させつつ該アッパアーム20と一体回転する。この際、ポール31Cは、メモリプレート76のメモリカム面76aを摺動する係合突部49Cにおいて径方向外側への移動が係止されることで、その外歯47と内歯22との噛合が解除されたままとなる。ポール31Cの移動係止に伴うレリーズプレート33及びカム32の回動係止により、他のポール31A,31Bも、その外歯44,47と内歯22との噛合が解除されたままとなる。一方、メモリプレート76は、係合突部49Cの摺動するメモリカム面76aにおいて径方向内側への移動が係止されることで、その外歯79と内歯22とが噛合されたままとなり、これに伴ってトリガプレート71もメモリ作動の状態で回動係止されたままとなる。従って、第2操作レバー62の操作力(及びカム32等へのアンロック作動の操作力)を解放したとしても、ポール31A〜31Cの全ての外歯44,47がアッパアーム20の内歯22に噛合することはなく、シートバック(シートバックフレーム6)は常に傾動可能な状態に維持される。
なお、第2操作レバー62の操作時、メモリシャフト96等を介してポール31Aを回転軸O1側に引き寄せた場合には、その係合部43がアッパアーム20の突部24の回動軌跡を開放するように設定されている。そして、アッパアーム20と一体でのメモリプレート76の図示反時計回転方向への回転に伴い、図11に示すように、第1及び第2切替カム面72,73を摺動する第1及び第2切替カム突部77,78がそれらの終端近傍に達すると、アッパアーム20の突部24にポール31Aの係合部43が乗り上げる。これにより、ポール31Aは、径方向外側への移動が係止されて、その外歯44と内歯22との噛合が解除されたままとなる。このときのアッパアーム20の回転範囲に相当するシートバック(シートバックフレーム6)の傾動領域が前倒れ領域に一致することは既述のとおりである。
シートバック(シートバックフレーム6)の傾動領域が前倒れ領域に到達する前倒し時には、前述のウォークイン機構により前記スライドロック装置の解除等が行われる。従って、シートバック(シートバックフレーム6)の前倒しに連動して、車両フロアに対しシートクッションが前方にスライド移動する。
その後、シートバック(シートバックフレーム6)を起立させて、アッパアーム20の突部24にポール31Aの係合部43が乗り上げる状態から、アッパアーム20を図示時計回転方向に回転させると、メモリプレート76は、第1及び第2切替カム突部77,78を第1及び第2切替カム面72,73に摺動させつつ該アッパアーム20と一体回転する。このときのアッパアーム20の回転方向が、シートバックを後側に傾動させる方向に一致することはいうまでもない。この際にも、ポール31Cは、前述の態様で径方向外側への移動が係止されることで、その外歯47と内歯22との噛合が解除されたままとなる。そして、他のポール31A,31Bも、その外歯44,47と内歯22との噛合が解除されたままとなる。また、メモリプレート76は、その外歯79と内歯22とが噛合されたままとなり、これに伴ってトリガプレート71もメモリ作動の状態で回動係止されたままとなる。
つまり、アッパアーム20は、メモリ作動直前の回転位置からシートバックの前倒れ領域に相当する回転範囲にあれば、第2操作レバー62の操作力が解放されたとしても、メモリプレート76と一体での正逆方向の回転が許容されている。
そして、アッパアーム20がメモリ作動直前の元の回転位置に達すると、図10に示すように、ポール31Cの係合突部49Cがメモリプレート76のメモリカム面76aから外れることで、他のポール31A,31Bとともに径方向外側への移動係止が解除される。従って、渦巻きばね34にロック回転方向(図示反時計回転方向)回動付勢されるカム32及びレリーズプレート33によって外向きに押圧されるポール31A〜31Cの外歯44,47が内歯22に噛合してアッパアーム20の回転が再び係止される。つまり、シートバック(シートバックフレーム6)は、メモリ作動直前の元の角度位置でその回動が再び規制(ロック)される。このとき、メモリプレート76の第1及び第2切替カム突部77,78は、カム溝面72a,73aの近傍に配置される。
続いて、コイルばね101に回動付勢されるケーブルリンク100及びメモリシャフト96と共に、トリガプレート71が図示反時計回転方向に回動すると、第1及び第2切替カム面72,73に案内されるメモリプレート76の第1及び第2切替カム突部77,78がカム溝面72a,73a内に進入する。そして、メモリプレート76は、第1切替カム突部77側の先端部が径方向内側に引き込まれるとともに、第2切替カム突部78側の先端部が径方向外側に押し出される。このときのメモリプレート76の動作が、回転軸O1に対しシートリクライニング装置5よりも外側に平行にずれた前述の軸線を中心とする回動となることはいうまでもない。これにより、図7(a)に示すように、メモリプレート76は、その外歯79が内歯22との噛合を解除することで、アッパアーム20から解放される。そして、メモリ作動直前のロック状態に復帰する。
ところで、トリガプレート71のメモリ作動時、該メモリ作動の状態で回動係止されたトリガプレート71と共にメモリシャフト96も回動係止されることになるが、第2操作レバー62は、その操作力が解放されれば、ケーブル68を撓ませつつ、復帰ばね64に回動付勢されて元の位置に復帰する。また、トリガプレート71のメモリ作動時、これに伴って連結シャフト91が回動するものの、前述の態様で第1操作レバー61が揺動するといった不自然な動作もない。
特に、メモリプレート76は、軸線方向においてポール31Aの外歯44(第1ブロック41)及びポール31B,31Cの外歯47の位置とは異なる位置に配置されているため、メモリプレート76によって複数のポールの設置可能な個数が制限されることを回避できる。さらに、トリガプレート71のメモリ作動時、ポール31Cの係合突部49Cは、当該ポール31Cの径方向外側への移動を係止する際にメモリプレート76に連続面として形成されたメモリカム面76aを摺動することになるため、ロアアーム10及びアッパアーム20の相対回転時に係合突部49Cの摺動が阻害されることを抑制できる。
なお、トリガプレート71の一部(図示時計回転方向に回転する側の部位)は、突部24の回転軌跡を遮るように突出しているものの、シートバック(シートバックフレーム6)の傾動領域(着座領域及び前倒れ領域)内では、第1切替カム面72の範囲で径方向で対向可能であることで、突部24との干渉を回避し得るようになっている。同様に、アッパアーム20と一体回転するメモリプレート76の回転軌跡は、ポール31Aの係合部43に遮られるものの、シートバック(シートバックフレーム6)の傾動領域(着座領域及び前倒れ領域)内では、係合部43との干渉を回避し得るようにメモリプレート76の周方向の長さ等が設定されている。
以上詳述したように、本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)本実施形態では、メモリプレート76は、軸線方向において複数のポール31A〜31Cの外歯44,47の位置とは異なる位置に配置されているため、メモリプレート76によって複数のポールの設置可能な個数が制限されることを回避できる。これにより、装置全体として大型化することなく、十分なロック強度を確保し得る個数のポールを配設することができる。このように、シートバックの傾斜角度のメモリ機能を付加しながらも、十分なロック強度を確保することができる。
さらに、トリガプレート71のメモリ作動に伴うロアアーム10及びアッパアーム20の相対回転時、ポール31Cの係合突部49Cは、当該ポール31Cの径方向外側への移動を係止する際にメモリプレート76に連続面として形成されたメモリカム面76aを摺動することになる。このため、メモリ作動に伴うロアアーム10及びアッパアーム20の相対回転時、即ちシートバックの傾動時にポール31Cの係合突部49Cの摺動が阻害されることを抑制できる。
(2)本実施形態では、トリガプレート71のメモリ作動時、メモリプレート76は、一対の第1及び第2切替カム面72,73による一対の第1及び第2切替カム突部77,78の案内でより安定した状態で、アッパアーム20に固定されるとともに該固定の状態のままロアアーム10及びアッパアーム20の相対回転を許容する。従って、このときのメモリプレート76の姿勢をより安定化させることができる。
(3)本実施形態では、トリガプレート71のメモリ作動時、メモリプレート76は、トリガプレート71の軸線(回転軸O1)に対しシートリクライニング装置5の外側に平行にずれた軸線を中心に回動してアッパアーム20に固定される。従って、メモリプレート76は、トリガプレート71の回動量に比例する関係でその回動量(移動量)を設定できる。これにより、トリガプレート71の回動量が僅少であってもメモリプレート76の回動量を比例的に増加させることで、メモリプレート76をより確実にアッパアーム20に固定することができる。これにより、例えばトリガプレート71のメモリ作動時、メモリプレート76がアッパアーム20に固定された後で、カム32等をアンロック作動させて複数のポール31A〜31Cの外歯44,47と内歯22との噛合を解除することができる。
また、従来例(特許文献2)とは異なり、トリガプレート71のメモリ作動時にメモリプレート76が径方向に移動することがないため、その外歯79を内歯22に円滑に噛合させることができる。
(4)本実施形態では、トリガプレート71のメモリ作動時、メモリプレート76は、ポール31Cの係合突部49C及びポール31Bの係合突部49Bによりトリガプレート71の軸線(回転軸O1)を中心とする周方向に挟まれた状態で移動してアッパアーム20に固定される。従って、メモリプレート76がアッパアーム20に固定されるまでの間にメモリプレート76がトリガプレート71の軸線(回転軸O1)を中心とする周方向に位置ずれすることを抑制できる。
(5)本実施形態では、トリガプレート71のメモリ作動に伴うロアアーム10及びアッパアーム20の相対回転時にポール31Cの径方向外側への移動を係止する係合突部49Cは、アンロック作動時にレリーズプレート33と係合する係合突部49として兼用されている。従って、ポール31Cにこれらの機能を有する係合突部を個別に配設する必要がないため、当該ポールの構造をより簡素化することができる。
(6)本実施形態では、トリガプレート71のメモリ作動時、アッパアーム20に固定されるメモリプレート76のメモリカム面76aは、回転軸O1を中心とする円弧に沿って延びるように設定されている。従って、ロアアーム10及びアッパアーム20の相対回転時における係合突部49Cの摺動をより円滑にすることができる。
(7)本実施形態では、連結シャフト91及びメモリシャフト96間に設置されたロストモーション機構により、トリガプレート71のメモリ作動時、メモリプレート76の外歯79をアッパアーム20の内歯22に噛合させた後で、ポール31A〜31Cの外歯44,47をアッパアーム20の内歯22から解除することができる。
(8)本実施形態では、固定フランジ7及び第1操作レバー61間に設置された操作範囲制限機構により、第1操作レバー61の操作時にシートバック(シートバックフレーム6)が前倒れ領域に進入することを回避できる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・前記実施形態において、トリガプレート71のメモリ作動時、メモリプレート76は、その外歯79においてアッパアーム20に別設した内歯22以外の係合部に噛合させてアッパアーム20に固定するようにしてもよい。この場合、メモリプレート76(外歯79)等は、アッパアーム20内であれば凹部21以外(例えば凹部23)に収容されていてもよい。また、メモリプレート76は、噛合以外の係合構造(例えばフックによる引っ掛け)でアッパアーム20に固定してもよい。
・前記実施形態において、トリガプレート71及びメモリプレート76と、第1及び第2切替カム面72,73並びに第1及び第2切替カム突部77,78との配置関係は互いに逆であってもよい。
・前記実施形態において、トリガプレート71及びメモリプレート76のいずれか一方に設けられる切替カム面と、トリガプレート71及びメモリプレート76のいずれか他方に設けられる切替カム突部とは、それぞれ1つずつであってもよいし、3つ以上ずつであってもよい。また、切替カム突部を案内する切替カム面は、板厚方向(回転軸O1の軸線方向)の段差であれば、必ずしも孔状や凹部状に成形する必要はない。
・前記実施形態において、ポールの個数は、複数であれば任意であり、要求されるロック強度に応じて適宜の個数を採用すればよい。また、複数のポールは、全てが互いに同一形状を有していてもよい。
・本発明は、ウォークイン機構を備えない車両用シート装置に具体化してもよい。