以下、本発明の一実施形態に係る車両のサスペンション装置について図面を用いて説明する。図1は、本実施形態に係る車両のサスペンション装置のシステム構成を概略的に示している。
このサスペンション装置は、各車輪WFL,WFR,WRL,WRRと車体Bとの間にそれぞれ設けられる4組のサスペンション本体10FL,10FR,10RL,10RRと、各サスペンション本体10FL,10FR,10RL,10RRの作動を制御するサスペンション制御装置100とを備える。以下、4組のサスペンション本体10FL,10FR,10RL,10RRおよび車輪WFL,WFR,WRL,WRRは、特に前後左右を区別する場合を除き、本明細書において単にサスペンション本体10および車輪Wと総称される。
図2は、サスペンション本体10の部分断面概略図である。図示するように、サスペンション本体10は、エアバネ装置20と、電磁アクチュエータ30と、直列サブアブソーバ40とを備える。エアバネ装置20は、空気の弾性(圧縮性)を利用して路面から受ける衝撃を吸収し乗り心地を高めるとともに車両の重量を弾性支持する。このエアバネ装置20に支えられる側、つまり車体B側の部材がバネ上部材であり、エアバネ装置20を支持する側、つまり車輪W側の部材がバネ下部材である。電磁アクチュエータ30は、エアバネ装置20の上下振動に対して減衰力だけでなく推進力をも発生させるもので、バネ下部材とバネ上部材との間にエアバネ装置20と並列に設けられる。
電磁アクチュエータ30は、電動モータ31とボールネジ機構32とを備える。電動モータ31は、モータケーシング311と、中空状の回転軸312と、永久磁石313と、極体314とを備える。モータケーシング311は電動モータ31の外郭を構成するハウジングであり、図示上下方向に軸を持つ段付円筒形状とされる。回転軸312は、モータケーシング311と同軸的にモータケーシング311内に配設され、軸受331,332によりモータケーシング311に回転可能に支持される。この回転軸312の外周面に永久磁石313が固定される。回転軸312および永久磁石313により電動モータ31のロータが構成される。永久磁石313に対向するように極体314(コアにコイルが巻回されたもの)が、モータケーシング311の内周面に固定される。極体314により電動モータ31のステータが構成される。
ボールネジ機構32は、電動モータ31に連結しており、電動モータ31の回転運動を直線運動に変換する変換機構としての機能を有する。ボールネジ機構32は、ネジ溝321aが形成されたボールネジ軸321と、このボールネジ軸321のネジ溝321aに螺合するボールネジナット322とを備える。ボールネジナット322はモータケーシング311内に配設され、回転軸312の下端部分に接続されるとともに、ボールベアリングを介して回転可能且つ軸方向移動不能にモータケーシング311に支持される。したがって、回転軸312が回転すると、それに伴いボールネジナット322も回転する。
ボールネジ軸321は、モータケーシング311に同軸的に配置されており、モータケーシング311内にてボールネジナット322を螺合するとともに、その上方部分が回転軸312の内周側に挿入される。また、ボールネジ軸321の下方部分はモータケーシング311の下端面を突き抜けてさらに下方に延在する。
ボールネジナット322の図示下方にスプラインナット35が配設される。このスプラインナット35はモータケーシング311の最下方部位に配置固定される。スプラインナット35にはスプラインが形成された貫通孔が設けられており、この貫通孔にボールネジ軸321が挿通される。なお、ボールネジ軸321のネジ溝321aにはスプライン溝も同時に形成されている。したがってボールネジ軸321はスプラインナット35にスプライン嵌合し、回転不能かつ軸方向移動可能にスプラインナット35に支持される。
直列サブアブソーバ40は、電磁アクチュエータ30に直列的に連結するように、電磁アクチュエータ30とバネ下部材との間に配設されている。直列サブアブソーバ40は、液圧式ダンパ40aと、コイルスプリングユニット40bとを並列に設けて構成される。
液圧式ダンパ40aは、内部に作動液(例えば作動油)が封入されたシリンダ41と、シリンダ41の内部に配設されシリンダ41内で相対移動するバルブピストン42とを備える。バルブピストン42によってシリンダ41の内部が上室と下室とに区画される。シリンダ41の下端はブッシュを介してバネ下部材であるロアアームに連結される。
本実施形態において液圧式ダンパ40aは、ツインチューブ式のショックアブソーバであり、シリンダ41が同軸配置された外筒411および内筒412を有する。外筒411と内筒412の間の空間によりリザーバ室が形成される。バルブピストン42は、内筒412内に配設される。バルブピストン42が内筒412内を軸方向に移動するときに上室と下室との間を作動液が流通することにより、上記移動に対し、作動液の粘性に依存した抵抗力(減衰力)が発生する。また、内筒412の下方端には、ベースバルブ413が取り付けられ、このベースバルブ413を介して下室とリザーバ室が連通する。バルブピストン42の移動に伴って作動液が下室とリザーバ室との間を流通することにより、上記移動に対し、作動液の粘性に依存した抵抗力(減衰力)が発生する。つまり、液圧式ダンパ40aは、作動液の粘性に基づいて減衰力を発生する。
また、内筒412内には、ピストンロッド43が挿入される。ピストンロッド43は、その下端にてバルブピストン42に連結される。ピストンロッド43は、その上端にてボールネジ軸321の下端に連結され、その連結部分から図において下方に伸び、液圧式ダンパ40aのシリンダ41の上面側から内筒412内に挿入される。よって、バルブピストン42は、ピストンロッド43を介して電磁アクチュエータ30のボールネジ軸321に連結される。このようにして、液圧式ダンパ40aが電磁アクチュエータ30に直列的に接続される。
コイルスプリングユニット40bは、液圧式ダンパ40aの外周に液圧式ダンパ40aと同軸状に設けられる。コイルスプリングユニット40bは、第1圧縮コイルスプリング49a、第2圧縮コイルスプリング49b、下部リテーナ44a、上部リテーナ44b、中央リテーナ44cを備えている。
下部リテーナ44aは、液圧式ダンパ40aの外筒411の外周部分に環状に設けられる。下部リテーナ44aの外周には、第1筒部21が連結される。第1筒部21は、下部リテーナ44aに連結された部分から液圧式ダンパ40aのシリンダ41を覆うように図において上方に伸びている。第1筒部21の上端部には、径内方に屈曲したフランジ部211が形成される。フランジ部211の下面側には、環状の上部リテーナ44bが設けられる。
また、ボールネジ軸321とピストンロッド43との連結部分には、中央リテーナ44cが取り付けられる。中央リテーナ44cは、ボールネジ軸321とピストンロッド43との連結部分から水平方向に放射状に伸びた円板状の部分44c1と、円板状の部分44c1の外周から下方に伸びた円筒状の部分44c2と、円筒状の部分44c2から径外方に伸びた環状の鍔部分44c3とを備える。このような形状の中央リテーナ44cの鍔部分44c3と下部リテーナ44aとの間に第1圧縮コイルスプリング49aが、鍔部分44c3と上部リテーナ44bとの間に第2圧縮コイルスプリング49bが配設される。このようにして、コイルスプリングユニット40bは、電磁アクチュエータ30とバネ下部材との間に、液圧式ダンパ40aと並列に設けられる。
また、ピストンロッド43の外周には、内筒412内において、径方向に伸びたリング状の弾性材からなるロッド側下ストッパ45が固定して設けられている。また、内筒412の上端には、弾性材からなるシリンダ側下ストッパ46がロッド側下ストッパ45に向かい合うように固定して設けられている。従って、ピストンロッド43に対してシリンダ41が下方向に相対移動したときに、ロッド側下ストッパ45とシリンダ側下ストッパ46とが当接して、それ以上の相対移動を規制する。
また、シリンダ側下ストッパ46の上方には、シリンダ41の上端に固定されたリング板状のシリンダ側上ストッパ47が固定して設けられている。また、中央リテーナ44cの内側には、弾性材からなるロッド側上ストッパ48がシリンダ側上ストッパ47と向かい合うように固定して設けられている。従って、ピストンロッド43に対してシリンダ41が上方向に相対移動したときに、ロッド側上ストッパ48とシリンダ側上ストッパ47とが当接して、それ以上の相対移動を規制する。これにより、液圧式ダンパ40aは、上下方向のストローク移動が規制されている。
エアバネ装置20は、上述の第1筒部21と、第1筒部21の外周側に配置された第2筒部22と、第2筒部22の上端部分にその下端部分が接続され、その上端部分にてブラケット25を介してモータケーシング311に接続された第3筒部23と、袋状に形成されて内周部分が第1筒部21の外周に連結され外周部分が第2筒部22の内周に連結されたダイヤフラム24とを備える。第1筒部21と、第2筒部22と、第3筒部23と、ダイヤフラム24とにより、空気室26が区画形成される。空気室26には、流体としての圧縮空気が封入されている。この圧縮空気の圧力によりバネ上部材が支持される。
また、第3筒部23には、空気室26内に空気を供給したり空気室26内から空気を排出したりする給排口としてのノズル88が設けられる。このノズル88には、図1に示すように給排装置80からの高圧空気流路となる給排気管81が接続され、ノズル88からの給排気により空気室26内の空気圧が調整されるようになっている。
第1筒部21の上端外周には、上方に伸びた第4筒部27が連結される。第4筒部27の上端は、径外方に拡がった鍔状の中央ストッパ28が設けられている。また、第2筒部22の上端は、内側に曲げられてリング板状に形成されており、そのリング板面に弾性材からなるリバウンドストッパ29aが中央ストッパ28の板面(下面)と向かい合うように固定して設けられている。また、ブラケット25の下面には、弾性材からなるバウンドストッパ29bが中央ストッパ28の板面(上面)と向かい合うように固定して設けられている。
従って、バネ上部材とバネ下部材との相対移動は、中央ストッパ28とリバウンドストッパ29aとの当接、および、中央ストッパ28とバウンドストッパ29bとの当接により規制される。この場合、バネ上部材とバネ下部材との離間距離は、中央ストッパ28とリバウンドストッパ29aとが当接する位置において最大となり、中央ストッパ28とバウンドストッパ29bとが当接する位置において最小となる。以下、バネ上部材とバネ下部材との相対移動により、中央ストッパ28がリバウンドストッパ29aに当接すること、および、中央ストッパ28がバウンドストッパ29bに当接することをストッパ当たりと呼ぶ。
サスペンション本体10は、車体Bに形成される孔部から電動モータ31のモータケーシング311の上方部分が上部に突出するように配置され、且つそのような配置状態を保つように、アッパーサポート12を介して車体Bに取り付けられている。アッパーサポート12は樹脂部材12aとブラケット12bとからなり、弾性的にサスペンション本体10を車体Bに連結する。
以上のように構成されたサスペンション本体10においては、車載バッテリ(図示略)からの電力供給により電磁アクチュエータ30の電動モータ31が回転すると、電動モータ31の回転軸312に連結したボールネジナット322が回転する。このボールネジナット322の回転によってボールネジ軸321が軸方向移動する。ボールネジ軸321の軸方向移動に伴い、ボールネジ軸321に連結されたピストンロッド43および、ピストンロッド43に連結されたバルブピストン42も軸方向移動する。このとき、シリンダ41もバルブピストン42との間の相対移動をほとんど生じることなく軸方向移動する。これによりバネ上部材とバネ下部材との間の相対距離が変化する。このようにして、電動モータ31は、バネ上部材とバネ下部材との間の相対移動に対する推進力を発生する。この推進力は、例えば乗り心地が向上するように制御される。
また、例えば、比較的低周波の外力(路面入力など)がサスペンション本体10に加えられた場合、この外力がシリンダ41に働いて、シリンダ41の運動がバルブピストン42,ピストンロッド43を介して電磁アクチュエータ30のボールネジ軸321に伝達される。これにより、ボールネジ軸321が軸方向に移動し、ボールネジナット322が回転する。このボールネジナット322の回転により電動モータ31が回される。このとき電動モータ31は発電機として作用するので、電動モータ31は、バネ上部材とバネ下部材との間の相対移動に対する抵抗力(減衰力)を発生する。これによりバネ上部材とバネ下部材との間の相対振動が抑制される。尚、液圧式ダンパ40aのバルブピストン42とシリンダ41は低周波の外力によっては相対移動しない。
また、20Hz程度の高周波の路面入力がサスペンション本体10に加えられた場合、第1圧縮コイルスプリング49aと第2圧縮コイルスプリング49bが伸縮してシリンダ41がバルブピストン42に対して相対移動する。これにより、バネ下部材の高周波振動は、シリンダ41に伝達されるだけで、ほとんどボールネジ機構32側に伝達されない。従って、直列サブアブソーバ40は、高周波振動のフィルタとして機能する。
次に、サスペンション本体10の作動を制御する構成について説明する。サスペンション装置は、図1に示すように、サスペンション電子制御ユニット(以下、サスペンションECUと呼ぶ)100と、サスペンションECU100からの指令により作動するモータドライブ制御装置(以下、モータEDUと呼ぶ)50および給排装置80を備えている。サスペンションECU100は、マイクロコンピュータを主要部として備え、その機能に着目すると、車両の上下振動を抑制するための4輪分の電磁アクチュエータ30の制御量を演算するアクチュエータ制御部110と、給排装置80の制御により4輪分のエアバネ装置20に供給される空気量を調整するエアバネ制御部150とに大別される。
サスペンションECU100には、各サスペンション本体10が取り付けられている位置(各輪位置)にそれぞれ設けられたバネ上加速度センサ61、バネ下加速度センサ62、車高センサ63が接続されている。バネ上加速度センサ61は、バネ上部材に設けられており、バネ上部材の各輪位置における上下方向に沿った加速度(バネ上上下加速度)を検出し、バネ上上下加速度G2を表す検出信号を出力する。バネ下加速度センサ62は、ロアアームなどのバネ下部材に設けられており、そのバネ下部材の上下方向に沿った加速度(バネ下上下加速度)を検出し、バネ下上下加速度G1を表す検出信号を出力する。車高センサ63は、バネ上部材とバネ下部材との上下方向の離間距離を車高に対応する値として検出し、車高hを表す検出信号を出力する。
また、サスペンションECU100には、前後加速度センサ64、横加速度センサ65、車高変更スイッチ66が接続されている。前後加速度センサ64は、車体に発生する前後加速度を検出し、前後加速度Gfrを表す検出信号を出力する。横加速度センサ65は、車体に発生する横加速度を検出し、横加速度Gyを表す検出信号を出力する。車高変更スイッチ66は、運転者の操作によって設定された目標車高h*を表す設定信号を出力する。
給排装置80は、図1に示すように、ポンプ85と、ポンプ85を駆動するポンプモータ86と、給気と排気とを切り換える電磁式の切替弁87とを備えている。切替弁87は、2位置切替弁であって、第1位置においては、ポンプ85の高圧側(吐出側)と主給排気管82とを連通するとともにポンプ85の低圧側(吸入側)と低圧配管83とを連通し、第2位置においては、ポンプ85の高圧側と低圧配管83とを連通するとともにポンプ85の低圧側と主給排気管82とを連通する。主給排気管82は、途中で4本に分岐し、この分岐した給排気管81が各エアバネ装置20のノズル88に接続されている。また、給排気管81にはそれぞれ電磁式の開閉弁84(常閉弁)が設けられている。低圧配管83の先端側は、フィルタ(図示略)を介して大気開放されている。
この給排装置80は、サスペンションECU100のエアバネ制御部150により制御される。エアバネ制御部150は、給排装置80を駆動するための駆動回路(図示略)を備えており、車高センサ63により検出した車高h(以下、実車高hと呼ぶ)と、車高変更スイッチ66により設定された目標車高h*とを比較し、実車高hが目標車高h*よりも低い場合には、切替弁87を第1位置にした状態でポンプモータ86を駆動するとともに各開閉弁84を開弁する。これにより、圧縮エアがエアバネ装置20の空気室26に供給され車高が上がっていく。エアバネ制御部150は、4輪ごとに車高センサ63により実車高hを検出し、実車高hが目標車高h*と等しくなると、その車輪Wに対応する開閉弁84を閉弁する。そして、4輪の実車高hが全て目標車高h*に達するとポンプモータ86の作動を停止する。
また、実車高hが目標車高h*よりも高い場合には、切替弁87を第2位置にした状態でポンプモータ86を駆動するとともに各開閉弁84を開弁する。これにより、エアバネ装置20の空気室26内の空気がポンプ85により吸引されて排出され車高が下がっていく。エアバネ制御部150は、4輪ごとに車高センサ63により実車高hを検出し、実車高hが目標車高h*と等しくなると、その車輪Wに対応する開閉弁84を閉弁する。そして、4輪の実車高hが全て目標車高h*に達するとポンプモータ86の作動を停止する。
尚、エアバネ制御部150による車高維持制御は、直進走行時において行われる。また、エアバネ制御部150は、目標車高h*を中心とした所定幅の車高適正範囲を設定し、実車高hが車高適正範囲から外れたときに、実車高hが目標車高h*から外れたと判断して、給排装置80の作動を開始して車高を調整する。
モータEDU50は、各サスペンション本体10FL,10FR,10RL,10RRの近傍に設けられ、サスペンションECU100とワイヤハーネスにて接続されており、サスペンションECU100から出力された制御信号を入力し、その制御信号に従って目標モータ力が発生するように電動モータ31を駆動制御する。モータEDU50は、図3に示すように、モータ駆動回路である3相インバータ51と、PWM制御信号出力回路52とを備えている。PWM制御信号出力回路52は、サスペンションECU100から出力された制御信号に基づいてPWM制御信号を生成し、そのPWM制御信号を3相インバータ51のスイッチング素子に出力する。
3相インバータ51には、車載バッテリ(図示略)から電源が供給されている。従って、3相インバータ51のスイッチング素子のデューティ比が制御されることにより、目標モータ力に応じた電流が車載バッテリから電動モータ31に流れて、電動モータ31が目標モータ力を発生する。また、3相インバータ51は、電動モータ31で発生した誘導起電力を車載バッテリに回生可能に構成されており、電動モータ31から車載バッテリに流れる回生電流も、3相インバータ51のスイッチング素子のデューティ比制御により調整可能となっている。
次に、サスペンションECU100におけるアクチュエータ制御部110の行う処理について説明する。図3は、アクチュエータ制御部110におけるマイクロコンピュータが行う制御処理を表す機能ブロック図である。各機能部は、マイクロコンピュータのROMに記憶された制御プログラムを所定の演算周期で繰り返し実行することにより実現されるものである。アクチュエータ制御部110は、振動減衰制御力演算部111と、ロール抑制制御力演算部112と、ピッチ抑制制御力演算部113と、必要作用力演算部114と、慣性力演算部115と、目標モータ力演算部116と、車高ずれ補償部120とを備えている。
振動減衰制御力演算部111は、バネ上加速度センサ61の出力する検出信号を入力し、バネ上上下加速度G2を時間で積分することにより、バネ上部材の上下方向に沿った速度であるバネ上上下速度x2’を演算し、このバネ上上下速度x2’に予め設定されたバネ上ゲインC2(減衰係数に相当する)を乗算することにより、バネ上部材の振動を減衰するように働くバネ上減衰制御力(C2・x2’)を演算する。また、バネ下加速度センサ62の出力する検出信号を入力し、バネ下上下加速度G1を時間で積分することにより、バネ下部材の上下方向に沿った速度であるバネ下上下速度x1’を演算し、このバネ下上下速度x1’に予め設定されたバネ下ゲインC1(減衰係数に相当する)を乗算することにより、バネ下部材の振動を減衰するように働くバネ下減衰制御力(C1・x1’)を演算する。振動減衰制御力演算部111は、次式に示すように、バネ下減衰制御力(C1・x1’)からバネ上減衰制御力(C2・x2’)を減算して振動減衰制御力fvを演算する。
fv=C1・x1’−C2・x2’
この振動減衰制御力fvは、スカイフックダンパ理論に基づく制御と、擬似的なグランドフック理論に基づく制御とにより、バネ上部材およびバネ下部材の振動を減衰させるために必要とされる力を計算したものである。振動減衰制御力演算部111は、算出した振動減衰制御力fvを必要作用力演算部114に出力する。この場合、振動減衰制御力fvは、電磁アクチュエータ30を伸長させる方向に働く力を正の値で、電磁アクチュエータ30を収縮させる方向に働く力を負の値で表される。尚、上記演算に当たっては、バネ上加速度センサ61およびバネ下加速度センサ62の出力する検出信号に対してローパスフィルタ処理を行って高周波成分を除去するようにするとよい。
ロール抑制制御力演算部112は、横加速度センサ65の出力する検出信号を入力し、次式に示すように、横加速度Gyに予め設定されたロールゲインKroを乗算することによりロール抑制制御力froを算出し、算出したロール抑制制御力froを必要作用力演算部114に出力する。
fro=Kro・Gy
車両の旋回時においては、ロールモーメントによって旋回内輪側のバネ上部材とバネ下部材との相対距離が拡がり、旋回外輪側のバネ上部材とバネ下部材との相対距離が縮まる。そこで、ロール抑制制御力演算部112は、旋回内輪側のバネ上部材とバネ下部材との相対距離の拡がりを抑制し、旋回外輪側のバネ上部材とバネ下部材との相対距離の縮まりを抑制するように電磁アクチュエータ30に発生させる力を上記式のように演算する。従って、旋回内輪側の電磁アクチュエータ30で発生させるロール抑制制御力froと、旋回外輪側の電磁アクチュエータ30で発生させるロール抑制制御力froとは、その方向(正負)が逆となる。尚、車体に発生する横加速度は、操舵角と車速とに基づいて推定するようにしてもよい。
ピッチ抑制制御力演算部113は、前後加速度センサ64の出力する検出信号を入力し、次式に示すように、前後加速度Gfrに予め設定されたピッチゲインKpiを乗算することによりピッチ抑制制御力fpiを算出し、算出したピッチ抑制制御力fpiを必要作用力演算部114に出力する。
fpi=Kpi・Gfr
車体の制動によりノーズダイブを生じる場合には、前輪側のバネ上部材とバネ下部材との相対距離が縮まり、後輪側のバネ上部材とバネ下部材との相対距離が拡がる。また、車体の加速によりスクワットを生じる場合には、前輪側のバネ上部材とバネ下部材との相対距離が拡がり、後輪側のバネ上部材とバネ下部材との相対距離が縮まる。そこで、ピッチ抑制制御力演算部113は、ノーズダイブ時あるいはスクワット時におけるバネ上部材とバネ下部材との相対距離の変化を抑制するように電磁アクチュエータ30に発生させる力を上記式のように演算する。従って、前輪側の電磁アクチュエータ30で発生させるピッチ抑制制御力fpiと、後輪側の電磁アクチュエータ30で発生させるピッチ抑制制御力fpiとは、その方向(正負)が逆となる。
必要作用力演算部114は、振動減衰制御力演算部111から出力された振動減衰制御力fvと、ロール抑制制御力演算部112から出力されたロール抑制制御力froと、ピッチ抑制制御力演算部113から出力されたピッチ抑制制御力fpiを、次式に示すように加算することで、バネ上部材とバネ下部材とのあいだに作用させるべき必要作用力である必要作用力foutを算出する。
fout=fv+fro+fpi
必要作用力演算部114は、算出した必要作用力foutを目標モータ力演算部116に出力する。尚、ロール抑制制御力froとピッチ抑制制御力fpiは、良好な操縦安定性を確保するために加えられる操縦安定制御用の制御量に相当する。
慣性力演算部115は、バネ下上下加速度G1(ここではx1”と表す)に中間部材の質量m3(等価慣性質量)を乗じた値を慣性力(m3・x1”)として演算する。ここで、中間部材とは、バネ上部材とバネ下部材との間に設けられバネ上部材にもバネ下部材にも固定されていない部材を表す。例えば、電動モータ31のロータ(回転軸312,永久磁石313)、ボールネジ機構32、液圧式ダンパ40aにおけるバルブピストン42,ピストンロッド43などが中間部材に相当する。
中間部材には、バネ下部材の上下方向の変位に対して回転する部材(例えば、電動モータ31のロータ、ボールネジ機構32のボールネジナット322)が存在するため、その回転部材に関する質量は、回転部材の慣性モーメントを慣性質量に換算した値とする。
慣性力演算部115は、演算した慣性力(m3・x1”)を目標モータ力演算部116に出力する。
目標モータ力演算部116は、必要作用力演算部114から出力された必要作用力foutと、慣性力演算部115から出力された慣性力(m3・x1”)とを入力し、それらに基づいて目標モータ力fmotor*を演算する。
本実施形態において、目標モータ力fmotor*は、必要作用力foutと、必要作用力foutが直列サブアブソーバ40および中間部材を介してバネ下部材に伝達される場合における力の伝達特性を表す伝達関数である直列伝達補償用伝達関数と、中間部材の慣性力(m3・x1”)とに基づいて演算される。
図4は、本実施形態におけるサスペンション本体10のモデル図である。図において、fmotorは時間tをパラメータとするモータ力、frは時間tをパラメータとしたバネ下部材に実際に作用する力(バネ下実作用力)、Ksはコイルスプリングユニット40bの第1圧縮コイルスプリング49aと第2圧縮コイルスプリング49bを一つのバネと仮定した場合のバネ定数、Csは液圧式ダンパ40aの減衰係数、x1は時間tをパラメータとしたバネ下部材の基準位置からの上下変位量である。また、m3は、中間部材の質量(等価慣性質量)を表す。x3は時間tをパラメータとした中間部材の基準位置からの上下変位量を表す。
中間部材の運動方程式は、下記の(1)式により表される。
(1)式をラプラス変換することにより(2)式が得られる。
(2)式において、X
3(s),X
1(s),Fmotor(s)は、それぞれx
3,x
1,fmotorをラプラス変換した関数である。またsはラプラス演算子である。
また、バネ下部材の運動方程式は、下記の(3)式により表される。
(3)式をラプラス変換することにより(4)式が得られる。
(4)式において、F
r(s)はf
rをラプラス変換した関数である。
(4)式を変形すると(5)式が得られ、さらに(5)式から、(6)式および(7)式が導かれる。
(6)式および(7)式を(2)式に代入することにより、(8)式が得られる。
目標モータ力fmotor
*は、バネ下実作用力f
rが必要作用力foutになるように決定されるモータ力である。したがって、目標モータ力fmotor
*は、(8)式のF
r(s)にFout (s)を代入した(9)式に基づいて求めることができる。
(9)式において、Fmotor(s)*は目標モータ力fmotor
*をラプラス変換した関数、Fout(s)は必要作用力foutをラプラス変換した関数である。(9)式の右辺第1項は、モータ力が中間部材および直列サブアブソーバ40を介してバネ下部材に伝達される場合における力の伝達率を考慮した項(直列伝達補償項)であり、必要作用力Fout(s)に係る伝達関数は、モータ力が中間部材および直列サブアブソーバ40を介してバネ下部材に伝達される場合における力の伝達特性を表す伝達関数(直列伝達補償用伝達関数)である。また、(9)式の右辺第2項は、中間部材の慣性力を考慮した項(慣性補償項)である。
目標モータ力演算部は、(9)式に基づいて演算した目標モータ力fmotor*を車高ずれ補償部120に出力する。
このように演算された目標モータ力fmotor*を使って電磁アクチュエータ30を駆動制御した場合には、バネ上部材とバネ下部材との間の相対運動がアクティブに行われるため、それに伴ってバネ上部材とバネ下部材との離間距離に相当する車高も変化する。このため、エアバネ制御部150が、実車高hが目標車高h*になるようにエアバネ装置20における気体の流入・流出を制御しても、実車高hが目標車高h*から外れてしまう。これは、給排装置80による気体の流入・流出による車高調整は、電磁アクチュエータ30によるバネ上部材とバネ下部材との間の相対運動に比べてはるかに遅いからである。これにより、中央ストッパ28がリバウンドストッパ29aあるいはバウンドストッパ29bに当接しやすくなり、ストッパ当たりの衝撃により良好な乗り心地性能を維持することが困難となるおそれがある。また、実車高hが目標車高h*から外れやすいため、給排装置80による車高調整の頻度がいたずらに増加してしまう。
こうした課題を解決するために、本実施形態においては、車高ずれ補償部120を備えている。車高ずれ補償部120は、車高偏差演算部121と、ローパスフィルタ処理部122と、モータ力補正量演算部123と、目標モータ力補正演算部124とから構成されている。車高ずれ補償部120は、操縦安定制御(良好な操縦安定性を確保する制御)が行われているか否かを判断し、操縦安定制御が行われてない場合に作動し、操縦安定制御が行われている場合には作動しない。例えば、車高ずれ補償部120は、ロール抑制制御力演算部112で算出されたロール抑制制御力froと、ピッチ抑制制御力演算部113で算出されたピッチ抑制制御力fpiとを入力し、ロール抑制制御力froが基準値以下となり、かつ、ピッチ抑制制御力fpiが基準値以下となる場合において、操縦安定制御が行われてないと判定して作動する。
車高偏差演算部121は、車高変更スイッチ66により設定されている目標車高h*と、車高センサ63により検出される実車高hとを入力し、次式のように、目標車高h*から実車高hを減算することで車高偏差Δhoを演算して、演算結果をローパスフィルタ処理部122に出力する。
Δho=(h*−h)
ローパスフィルタ処理部122は、車高偏差Δhoを入力し、ローパスフィルタを用いて車高偏差Δhoに含まれる高周波ノイズ成分を除去して、ノイズ成分の除去された車高偏差Δhをモータ力補正量演算部123に出力する。ローパスフィルタ処理部122におけるカットオフ周波数は、振動減衰制御における制御周波数帯よりも十分に低い周波数に設定される(例えば、0.01Hz)。
モータ力補正量演算部123は、次式のように、車高偏差Δhに予め設定された車高補償ゲインKhを乗じることによりモータ力補正量Δfhを算出し、算出したモータ力補正量Δfhを目標モータ力補正演算部124に出力する。この場合、車高補償ゲインKhは、バネ定数に相当するものとなる。モータ力補正量Δfhの大きさ(絶対値)は、車高偏差Δhの大きさ(絶対値)が大きいほど大きく設定される。
Δfh=Kh・Δh
目標モータ力補正演算部124は、目標モータ力演算部116から出力された目標モータ力fmotor*と、モータ力補正量演算部123から出力されたモータ力補正量Δfhとを入力し、次式に示すように、目標モータ力fmotor*にモータ力補正量Δfhを加算した値を、新たな目標モータ力fmotor*に置き換える。つまり、目標モータ力fmotor*をモータ力補正量Δfhだけ加算補正した値を、最終的な目標モータ力fmotor*として設定する。
fmotor*=fmotor*+Δfh
この場合、モータ力補正量Δfhは、車高偏差Δhが正の値をとる場合(実車高hが目標車高h*に対して低い)には、電磁アクチュエータ30を伸長させる方向に働く力となり、車高偏差Δhが負の値をとる場合(実車高hが目標車高h*に対して高い)には、電磁アクチュエータ30を収縮させる方向に働く力となる。
目標モータ力補正演算部124は、最終的な目標モータ力fmotor*を算出すると、算出した目標モータ力fmotor*に対応する制御信号をモータEDU50に出力する。これにより、モータEDU50においては、3相インバータ51のスイッチング素子のデューティ比が制御されることにより、目標モータ力fmotor*に応じた電流が車載バッテリから電動モータ31に流れて、電動モータ31が目標モータ力fmotor*を発生する。
尚、操縦安定制御が行われている場合においては、目標モータ力補正演算部124は、目標モータ力演算部116から出力された目標モータ力fmotor*を補正することなく、そのまま最終的な目標モータ力fmotor*として設定する。
以上説明した本実施形態のサスペンション装置によれば、車高偏差Δhに基づいて、実車高hが目標車高h*に近づく方向に働くモータ力補正量Δfhを演算し、このモータ力補正量Δfhで目標モータ力fmotor*を補正する。従って、電磁アクチュエータ30がアクティブに振動減衰制御を行っても、それによる車高ずれを抑制することができる。この結果、サスペンション本体10のストッパ当たりによる衝撃が低減されて乗り心地が向上する。また、実車高hが目標車高h*から外れにくいため、給排装置80による車高調整の頻度を低減することができる。更に、操縦安定制御時においては、車高ずれ補償部120を作動させないため、操縦安定制御を邪魔することが無く安全性を維持することができる。
以上、本実施形態のサスペンション装置について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
例えば、本実施形態においては、直列サブアブソーバ40を電磁アクチュエータ30と直列に設けているが、必ずしも、直列サブアブソーバ40を設ける必要はない。また、目標モータ力fmotor*の演算方法に関しても、少なくともバネ上部材の振動を抑制するものであれば良く、バネ下減衰制御力、ロール抑制制御力、ピッチ抑制制御力等を加味しないものであってもよい。
また、本実施形態では、電動モータ31の回転運動をボールネジ機構32によりボールネジ軸321の軸方向運動に変換させる構成を採用しているが、リニアソレノイドタイプの直動型モータを用いた電磁アクチュエータを採用することもできる。