以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。さらに、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。さらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
(第1実施形態)
図1は、本発明による静電気対策素子の一実施形態を概略的に示す模式平面図である。また、図2は、図1のII−II断面図であり、図3は、図1のIII−III断面図である。
本実施形態の静電気対策素子100は、絶縁性基板11と、この絶縁性基板11上に配設された一対の電極21,22と、これら電極21,22の間に配設された機能層31と、この機能層上に配設された複数の中間電極41と、これら中間電極41を覆うように形成された保護層51とを備える。本実施形態の静電気対策素子100において、電極21,22は、端子電極61と電気的に接続されている(図10参照)。
絶縁性基板11は、絶縁性表面11aを有する。絶縁性基板11は、少なくとも電極21,22及び機能層31を支持可能なものであれば、その寸法形状は特に制限されない。ここで、絶縁性表面11aを有する絶縁性基板11とは、絶縁性材料からなる基板の他、基板上の一部に又は全面に絶縁膜が製膜されたものを含む概念である。
絶縁性基板11の具体例としては、例えば、NiZnフェライト、アルミナ、シリカ、マグネシア、窒化アルミ、フォルステライト等の誘電率が50以下、好ましくは20以下の低誘電率材料を用いたセラミック基板や、単結晶基板等が挙げられる。また、セラミック基板や単結晶基板等の表面に、NiZnフェライト、アルミナ、シリカ、マグネシア、窒化アルミ、フォルステライト等の誘電率が50以下、好ましくは20以下の低誘電率材料からなる絶縁膜を形成したものも、好適に用いることができる。なお、絶縁膜の形成方法は、特に限定されず、真空蒸着法、反応性蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVDやPVD等の気相法等の公知の手法を適用できる。また、基板及び絶縁膜の膜厚は、適宜設定可能である。
絶縁性基板11の絶縁性表面11a上には、一対の電極21,22が相互に離間して配設されている。本実施形態では、一対の電極21,22は、絶縁性基板11の平面略中央位置にギャップ距離ΔG1を置いて、対向配置されている。ここで、ギャップ距離ΔG1は、一対の電極21,22間の最短距離を意味する。
電極21,22を構成する素材としては、例えば、Ni、Cr、Al、Pd、Ti、Cu、Ag、Au及びPtなどから選ばれた少なくとも一種類の金属、或いはこれらの合金等が挙げられるが、これらに特に限定されない。なお、本実施形態では、電極21,22は、平面視で矩形状に形成されているが、その形状は特に制限されず、例えば、櫛歯状、或いは、鋸状に形成されていてもよい。
電極21,22間のギャップ距離ΔG1は、所望の放電特性を考慮して適宜設定すればよく、特に限定されないが、通常、0.1〜50μm程度であり、低電圧初期放電を確保するという観点から、より好ましくは0.1〜20μm程度、さらに好ましくは0.1〜10μm程度である。なお、電極21,22の厚さΔT1は、適宜設定することができ、特に限定されないが、通常、0.05〜10μm程度である。
電極21,22の形成方法は、特に限定されず、公知の手法を適宜選択することができる。具体的には、例えば、塗布、転写、電解めっき、無電解めっき蒸着或いはスパッタリング等により、絶縁性基板11上に所望の厚さΔT1を有した電極層を作成する方法が挙げられる。さらに、このように形成された電極層を、例えば、イオンミリング等の公知の手法を用いて加工することにより、所望のギャップ距離ΔG1を有した電極21,22を形成することができる。
上記の電極21,22間には、機能層31が配設されている。本実施形態では、上述した絶縁性基板11の絶縁性表面11a上及び電極21,22上に、機能層31が積層された構成となっている。この機能層31の寸法形状及びその配設位置は、過電圧が印加された際に自身を介して電極21,22間で初期放電が確保されるように設計されている限り、特に限定されない。
機能層31を構成する素材は、過電圧が印加された際に自身を介して電極21,22間で初期放電が確保されるように設計されている限り、特に限定されない。低電圧放電タイプの静電気保護材料として、例えば、Al2O3、TiO2及びSiO2、フォルステライト等の金属酸化物や金属窒化物等の絶縁性無機材料の他、絶縁性有機材料及び/又は絶縁性無機材料のマトリックス中に導電性無機材料が不連続に含まれる(一様に又はランダムに分散した)コンポジット等が知られている。低静電容量化を図る観点から、絶縁性無機材料のマトリックス中に導電性無機材料が分散したコンポジットであることが好ましい。絶縁性無機材料のマトリックス中に導電性無機材料が分散したコンポジットは、従来の機能層に比して薄膜化が容易であり、しかも、有機材料を用いた場合に比して耐久性及び耐熱性に優れ、その上さらに、温度や湿度等の外部環境への耐候性にも優れる傾向にある。
図4は、機能層31を説明するための模式平面図である。本実施形態では、機能層31として、絶縁性無機材料32のマトリックス中に導電性無機材料33が不連続に分散したコンポジットが採用されている。
機能層31は、絶縁性無機材料32のマトリックス中に島状の導電性無機材料33の集合体が不連続に点在した海島構造を有する。本実施形態では、機能層31は、逐次スパッタリングを行うことにより形成されている。より具体的には、絶縁性基板11の絶縁性表面11a上及び/又は電極21,22上に、導電性無機材料33をスパッタリングして部分的に(不完全に)成膜した後、引き続き絶縁性無機材料32をスパッタリングすることにより、謂わば、島状に点在した導電性無機材料33の層とこれを覆う絶縁性無機材料32の層との積層構造のコンポジットが形成されている。
マトリックスを構成する絶縁性無機材料32の具体例としては、例えば、金属酸化物、金属窒化物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。絶縁性やコスト面を考慮すると、Al2O3、TiO2、SiO2、ZnO、NiO、CoO、V2O5、CuO、MgO、ZrO2、Mg2SiO4、AlN、BN及びSiCが好ましい。これらは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、絶縁性マトリックスに高度の絶縁性を付与する観点からは、Al2O3、SiO2、フォルステライト、フェライト、ムライト、ケイ酸ガラス(ケイ酸塩ガラス)等を用いることがより好ましい。一方、絶縁性マトリックスに半導体性を付与する観点からは、TiO2やZnOを用いることがより好ましい。絶縁性マトリックスに半導体性を付与することで、放電開始電圧及びクランプ電圧に優れる静電気対策素子を得ることができる。絶縁性マトリックスに半導体性を付与する方法は、特に限定されないが、例えば、これらTiO2やZnOを単独で用いたり、これらを他の絶縁性無機材料32と併用すればよい。特に、TiO2は、アルゴン雰囲気中でスパッタリングする際に酸素が欠損し易く、電気伝導度が高くなる傾向にあるので、絶縁性マトリックスに半導体性を付与するにはTiO2を用いることが特に好ましい。
導電性無機材料33の具体例としては、例えば、金属、或いはこれらの合金、SnO2、TiO2、ZnO等の金属酸化物、TiN等の金属窒化物、SiC等の金属炭化物、TiB2等の金属ホウ化物等が挙げられるが、これらに特に限定されない。導電性を考慮すると、C、Ni、Cu、Au、Ti、Cr、Ag、Pd及びPt、或いは、これらの合金が好ましい。
機能層31の層の厚さ(本明細書においては、後述するギャップ距離ΔG2に相当する厚さとする。)は、特に限定されるものではなく、適宜設定することができるが、繰り返し使用の耐久性を確保する観点から、少なくとも電極21,22間のギャップ距離ΔG1より大きな値になるように設定されることが好ましい。具体的には、10nm〜60μmであることが好ましく、100nm〜25μmであることがより好ましい。
本実施形態の如く、謂わば、不連続に点在した島状の導電性無機材料33の層と絶縁性無機材料32のマトリックスの層とを形成する場合、導電性無機材料33の層の厚さは、1〜10nmであることが好ましく、絶縁性無機材料32の層の厚さは、10nm〜30μmであることが好ましい。
機能層31の形成方法は、上述したスパッタリング法に限定されない。絶縁性基板11の絶縁性表面11a上及び/又は電極21,22上に、真空蒸着法、反応性蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVDやPVD等の気相法等の公知の薄膜形成方法を適用して、上述した絶縁性無機材料32及び導電性無機材料33を付与することにより、所望の厚さを有した機能層31を形成することができる。
上記の機能層31上には、複数の中間電極41が配設されている。本実施形態では、板状(棒状)の3つの中間電極41が、平面視における電極21,22の幅方向(図1において、紙面の上下方向)に相互に離間して配置されている。各々の中間電極41は、電極21,22の上面からギャップ距離ΔG2(すなわち、機能層31の厚さ)を置いて、電極21,22間の上に並列配置されている。なお、本実施形態では、3本の中間電極41が、平面視で並列配置されているが、その設置個数及び配置間隔は特に制限されない。例えば、中間電極41の設置数は、通常2〜100の範囲内で適宜設定すればよい。ギャップ距離ΔG2の初期値をbとした場合に、電極21,22の破壊が生じて2b<2ΔG2になった際であっても、中間電極41の設置数が多くなると、電極21,22の面内において、ギャップ距離ΔG2と略同等の距離(又は、ギャップ距離ΔG2より僅かに長い距離)に位置する中間電極41の存在確率が増加する傾向にあるため、かかる観点から、中間電極41の設置数は、3〜50が好ましく、より好ましくは4〜40である。なお、図2では、ギャップ距離ΔG2について、電極21,22面から垂直方向のみ図示したが、放電箇所はこれに限られない。中間電極41の配置間は、特に限定されないが、幅方向の均一化を図る観点から、略均等であることが好ましい。
なお、本実施形態では、複数の中間電極41は、平面視で電極21,22の実装領域より内方に配置されているが、その配置は特に制限されず、例えば、複数の中間電極41のうち数本を平面視で電極21,22の実装領域より外方に配置してもよい。
中間電極41を構成する素材としては、例えば、Ni、Cr、Al、Pd、Ti、Cu、Ag、Au、Ta、W、Mo及びPtなどから選ばれた少なくとも一種類の金属、或いはこれらの合金等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
中間電極41の厚さΔT2は、適宜設定することができ、特に限定されない。放電最大電圧(ピーク電圧)の上昇を長期に亘って抑制し、静電気対策素子100の繰り返し使用の耐久性を高める観点から、厚いことが好ましい。具体的には、中間電極41の厚さΔT2は、電極21,22の厚さΔT1より厚いことが好ましく、0.1〜60μm程度であることが好ましい。
平面視における中間電極41の外径サイズ、すなわち中間電極41の実装領域を構成する中間電極41の長さΔL2(図1において、紙面の左右方向)及び幅ΔW2(図1において、紙面の上下方向)は、放電経路の担保と低静電容量化のバランスを考慮して適宜設定することができ、特に限定されない。本実施形態の如く、中間電極41が電極21,22の幅に対して略均等な間隔で幅方向に配置され、中間電極41の幅方向の両端部が平面視における電極21,22の幅方向の端部上又は端部周辺に配置されていると、中間電極41と電極21,22との間の放電経路及び放電箇所を幅広く確保しやすい傾向にある。また、本実施形態の如く、中間電極41の長さが比較的に短く設定され、中間電極41の長さ方向の両端部が電極21,22の長さ方向の端部より内方に配置されている(平面視で電極21,22間のギャップΔG1周辺のみが中間電極41によって覆われている、又は、平面視で長さ方向において一部の電極21,22が中間電極41によって覆われていない)と、低静電容量化を確保しやすい傾向にある。これらの傾向から、中間電極41の長さΔL2及び幅ΔW2は、所望する性能に応じて適宜設定される。具体的には、中間電極41の長さΔL2は、電極21,22の長さにもよるが、50〜200μm程度であることが好ましく、中間電極41の幅ΔW2は、0.2〜60μm程度であることが好ましい。
具体的には、例えば、中間電極41の長さΔL2は、ギャップ距離ΔG1の初期値をaとし、ギャップ距離ΔG2の初期値をbとし、中間電極41の実装領域を構成する最大長さをcとし、a<2b<cとした場合に、a〜0.8cの範囲内であることが好ましく、3a〜0.5cであることがより好ましい。電極21,22の破壊が生じて2b<2ΔG2になった際であっても、中間電極41の長さ方向における長さを上記範囲内に設定すると、電極21,22の面内において、ギャップ距離ΔG2と略同等の距離(又は、ギャップ距離ΔG2より僅かに長い距離)に位置する中間電極41の存在確率が増加する傾向にあるため、放電最大電圧(ピーク電圧)の急激な上昇が抑制される。なお、図2では、ギャップ距離ΔG2について、電極21,22面から垂直方向のみ図示したが、ギャップ距離ΔG2はこれに限られない。
また、電極21と中間電極41との間の放電経路、及び、電極22と中間電極41との間の放電経路の双方を最短距離で構成する観点から、各中間電極41の実装領域は、平面視における電極21,22間を覆うように(電極21,22間に跨るように)設定することが好ましい。
低静電容量化を図るためには、上記のように配置される複数の中間電極41と電極21,22とが平面視において重なる面積、すなわち重なり面積を小さくすることが重要である。例えば、0.01〜0.5pF程度の静電容量を実現するためには、機能層31の種類などによっても異なるが、重なり面積が20μm2〜1mm2程度であることが好ましく、より好ましくは100μm2〜0.1mm2程度である。
中間電極41の形成方法は、特に限定されず、公知の手法を適宜選択することができる。具体的には、例えば、塗布、転写、電解めっき、無電解めっき蒸着或いはスパッタリング等により、機能層31上に所望の厚さΔT2、所望の長さΔL2、所望の幅ΔW2を有した中間電極41を作成することができる。
保護層51は、上記の中間電極41を覆うように、機能層31上及び中間電極41上に配設されている。保護層51を構成する素材は、絶縁性を有するものであれば、特に限定されない。その具体例としては、例えば、絶縁性無機材料32で説明した絶縁性無機材料の他、ポリイミド、エポキシ、シアネート、フェノール、ポリオレフィン等の絶縁性樹脂や絶縁性エラストマー等の絶縁性有機材料等が挙げられる。
保護層51の形成方法は、特に限定されない。上述した方法で形成された機能層31の表面31a上及び/又は中間電極41上に、公知の薄膜形成方法を適用して、絶縁性無機材料又は絶縁性有機材料を付与することにより、所望の厚さを有した保護層51を形成することができる。また、別途予め形成した保護層51を、機能層31の表面31a上及び/又は中間電極41上に積層させてもよい。
図5は、本実施形態の静電気対策素子100繰り返し使用時の放電特性を示すモデル図である。ここでは、電極21,22のギャップ距離ΔG1の初期値がa、ギャップ距離ΔG2の初期値がbであって、試験前の初期値a及び初期値bの関係がa<2bを満たす静電気対策素子100について対比説明する。
なお、図5において、放電特性(L1)は、本実施形態の静電気対策素子100において中間電極41を省略した、静電気対策素子を使用したグラフである。また、放電特性(L2)は、本実施形態の静電気対策素子100において中間電極41に代えて新たな中間電極(この新たな中間電極は、3つの中間電極41の幅を積算した幅を有するもの(すなわち、中間電極41の3倍の幅を有するもの)であり、中央に配置された中間電極41と同様に中央に設置している。)を1つだけ設けた、静電気対策素子を使用したグラフである。さらに、放電特性(L3)は、本実施形態の静電気対策素子100を使用したグラフである。
また、図5において、縦軸はピーク電圧を示し、横軸はESD(electro-static discharge)の繰り返し回数(n,n+1,n+2,・・・,n+m;m,nは整数)を示す。なお、ピーク電圧とは、静電気抑制効果の評価指標の一つであり、印加する過大電圧に対し、静電対策素子で抑制した後の放電電圧の最大値のことをいい、ピーク電圧(放電最大電圧)が低いほど静電気抑制の効果が高いことを示す。
まず、繰り返し放電直後において、各静電気対策素子の初期ピーク電圧は、同一であった。このことから、繰り返し放電直後においては、各静電気対策素子の電極21,22のギャップ距離ΔG1は、初期値aが維持されていることが理解される(図5のΔG1=aの領域を参照)。
その後、放電を繰り返し、電極21,22の破壊が生じて電極21,22のギャップ距離ΔG1が初期値aより大きくなるにつれ、各静電気対策素子のピーク電圧は、徐々に上昇していく(図5のa<ΔG1<2bの領域を参照)。
さらに放電を繰り返し、電極21,22のギャップ距離ΔG1がギャップ距離2bの等倍値以上になるにつれ、中間電極を有する静電気対策素子のピーク電圧は、対向する電極と中間電極との間で放電が行われるため、その上昇が止まり、一定値となる(図5のL2及びL3、2ΔG2=2b<ΔG1の領域を参照)。これに対し、中間電極を省略した静電気対策素子のピーク電圧は、電極21,22のギャップ距離ΔG1が大きくなるにつれ、さらに上昇し続ける(図5のL1、2ΔG2=2b<ΔG1の領域及びを参照)。
そして、引き続き放電を繰り返し、電極21,22のギャップ距離2ΔG2がギャップ距離2bの等倍より大きな値になるにつれ、中間電極を有する各静電気対策素子のピーク電圧は再び上昇し始めるが、本実施形態の静電気対策素子100の上昇幅は、中間電極が分割せずに配置された静電気対策素子に比して、小さな上昇幅となる(図5のL2及びL3、ΔG1≧2ΔG2>2bの領域を参照)。一方、中間電極を省略した静電気対策素子のピーク電圧は、電極21,22のギャップ距離ΔG1が大きくなるにつれ、さらに上昇し続ける(図5のL1、ΔG1≧2ΔG2>2bの領域を参照)。
このように、本実施形態の静電気対策素子100(図5のL3参照)においては、機能層31上に複数の中間電極41を配設されているので、放電箇所が複数形成され、放電が幅広く行われるとともに、放電時における電極の負荷が分散されるので、繰り返し放電にともなうピーク電圧の上昇が長期に亘り抑制される。したがって、本実施形態の静電気対策素子100は、静電容量が小さいにも関わらず、繰り返し使用の耐久性が高められたものとなる。
一方、本実施形態の静電気対策素子100の中間電極を省略した静電気対策素子(図5のL1参照)では、放電が繰り返される度に電極間のギャップ距離が広がり続けるため、繰り返し放電にともなうピーク電圧の上昇を長期に亘り抑制することができない。
他方、中間電極を1つだけ設けた静電気対策素子(図5のL2参照)は、対向する電極の破壊が生じても対向する電極と中間電極との間で放電が行われるので、この間は、ピーク電圧は一定値をたどる。したがって、中間電極を1つだけ設けた静電気対策素子(図5のL2参照)は、上記中間電極を省略した従来の構成に比して、繰り返し使用の耐久性がある程度高められていると言える。
しかしながら、さらに引き続き放電を繰り返し行うと、徐々にピーク電圧が再び上昇し始め、ΔG1≧2ΔG2>2bの領域における上昇幅は、本実施形態の静電気対策素子100に比して、大きくなる(図5のL2及びL3、ΔG1≧2ΔG2>2bの領域を参照)。いずれにせよ、中間電極を1つだけ設けた静電気対策素子(図5のL2参照)では、特にΔG1≧2ΔG2>2bの領域で、ピーク電圧の上昇幅が比較的に大きく、そのため、繰り返し放電にともなうピーク電圧の上昇を長期に亘り抑制することができない。
以上、詳述したように、本実施形態の静電気対策素子100においては、中間電極41を複数配置する構成とした。しかも、複数の中間電極41を、電極21,22の幅方向に沿って略等間隔に並列配置し、且つ、電極21,22の実装面積の内方に配置している。そのため、低静電容量でありながらも、繰り返し放電にともなう放電最大電圧(ピーク電圧)の上昇を長期に亘り抑制することができる。
とりわけ、本実施形態の静電気対策素子100においては、絶縁性無機材料32のマトリックス中に不連続に点在した島状の導電性無機材料33を含む機能層31が、低電圧放電タイプの静電気保護材料として機能する。そして、かかる構成を採用することにより、静電容量が小さく、ピーク電圧が低く、且つ、放電耐性に優れる、高性能な静電気対策素子100が容易に実現される。しかも、機能層31として、少なくとも絶縁性無機材料32と導電性無機材料33とから構成されるコンポジットが採用されているため、従来の有機−無機複合膜に比して、耐熱性が高められ、また、温度や湿度等の外部環境により特性が変動し難いので、信頼性が高められる。その上さらに、スパッタリング法により機能層31が形成可能であり、これにより、生産性及び経済性がより一層高められる。
(変形例)
なお、上述したとおり、本発明は、上記第1実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更を加えることが可能である。例えば、図6に示す静電気対策素子200の如く、長手方向における電極21,22の端部210,220と中間電極41の端部410とが平面視において重なるように配置した構成にしても、上記第1実施形態と同様の作用効果が奏される。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図7に示すように、まず、絶縁性基板11(NiZnフェライト基板、誘電率:13、TDK株式会社製)の一方の絶縁性表面11aに、スパッタリング法により、厚さ0.7μmのCuの金属薄膜を略全面に形成し、形成されたCu薄膜をフォトリソ法によりエッチングすることにより、相互に離間して対向配置された一対の帯状の電極21,22を形成した。このとき電極21,22の電極長さは0.8mm、電極幅は0.5mm、電極21,22間のギャップ距離ΔGは、3μmとした。
次いで、図8に示すように、上記の絶縁性基板11上及び電極21,22上に、以下の手順で、スパッタリング法により、機能層31を形成した。
まず、絶縁性基板11の電極21,22が形成された面側に、スパッタリング法によりAuを部分的に成膜することにより、厚さ3nmの島状のAuの薄膜が不連続に点在した導電性無機材料33の層を形成した。このスパッタリングは、マルチターゲットスパッタ装置(商品名:ES350SU、株式会社エイコー・エンジニアリング製)を使用し、アルゴン圧力が10mTorr、投入電力が20W、スパッタ時間が40秒の条件下で実施した。
次に、島状のAu薄膜の層及び電極21,22を厚さ方向に完全に覆うように、絶縁性基板11の電極21,22が形成された面側に、スパッタリング法によりアルミナを略全面に成膜することにより、厚さ3μmの絶縁性無機材料32の層を形成した。このスパッタリングは、マルチターゲットスパッタ装置(商品名:ESU350、株式会社エイコー・エンジニアリング製)を使用し、アルゴン圧力が10mTorr、投入電力が400W、スパッタ時間が600分の条件下で実施した。
そして、機能層31が形成された面側に、スパッタリング法により、厚さ5nmのCuの金属薄膜を略全面に形成し、形成されたCu薄膜をフォトリソ法によりパターン状にエッチングすることにより、相互に離間して配置された幅20nm、長さ100nm、厚さ50nmの3つの金属薄膜片を形成した。その後、マスクを用いた電解めっき法により、この3つの金属薄膜片上でCuをめっき成長させ、これにより、図9に示すように、幅20nm、長さ100nm、厚さ5μmのCuからなる中間電極41を3つ形成した。
その後、3本の中間電極41を厚さ方向に完全に覆うように、露出した機能層31及び中間電極41の機能層31と接触していない面側に、スパッタリング法によりアルミナを略全面に成膜することにより、厚さ10μmの保護層51を形成した。このスパッタリングは、マルチターゲットスパッタ装置(商品名:ESU350、株式会社エイコー・エンジニアリング製)を使用し、アルゴン圧力が10mTorr、投入電力が400W、スパッタ時間が600分の条件下で実施した。
その後、図10に示すように、電極21,22の外周端部に接続するように、Cuを主成分とする端子電極61を形成することにより、図1及び図2と略同等の構造を有する、実施例1の静電気対策素子100を得た。
(実施例2)
アルミナのスパッタリング成膜に代えて、ポリイミド樹脂の塗布乾燥により厚み10μmの保護層51を形成すること以外は、実施例1と同様に操作して、実施例2の静電対策素子を得た。
(実施例3)
アルミナのスパッタリング成膜に代えて、エポキシ樹脂の塗布乾燥により厚み10μmの保護層51を形成すること以外は、実施例1と同様に操作して、実施例3の静電対策素子を得た。
(実施例4)
アルミナのスパッタリング成膜に代えて、シアネート樹脂の塗布乾燥により厚み10μmの保護層51を形成すること以外は、実施例1と同様に操作して、実施例4の静電対策素子を得た。
(実施例5)
アルミナのスパッタリング成膜に代えて、フェノール樹脂の塗布乾燥により厚み10μmの保護層51を形成すること以外は、実施例1と同様に操作して、実施例5の静電対策素子を得た。
(比較例1)
3つの中間電極41に代えて、以下の手順で中間電極を1つ形成すること以外は、実施例1と同様に操作して、比較例1の静電対策素子を得た。
ここでは、機能層31が形成された面側に、スパッタリング法により、厚さ50nmのCuの金属薄膜を略全面に形成し、形成されたCu薄膜をフォトリソ法によりエッチングすることにより、機能層31の略中央に幅60nm、長さ100nm、厚さ50nmの金属薄膜片を1つ形成し、その後、マスクを用いた電解めっき法により、この金属薄膜片上でCuをめっき成長させ、これにより、幅60nm、長さ100nm、厚さ5μmのCuからなる中間電極を1つ形成した。
(比較例2)
3つの中間電極41を形成しないこと以外は、実施例1と同様に操作して、比較例2の静電対策素子を得た。
<静電気放電試験>
次に、上記のようにして得られた実施例1乃至5、及び、比較例1乃至3の静電気対策素子について、図11に示す静電気試験回路を用いて、静電気放電試験を実施した。
この静電気放電試験は、国際規格IEC61000−4−2の静電気放電イミュニティ試験及びノイズ試験に基づき、人体モデルに準拠(放電抵抗330Ω、放電容量150pF、印加電圧8kV、接触放電)して行った。具体的には、図11の静電気試験回路に示すように、評価対象の静電気対策素子の一方の端子電極をグランドに接地するとともに、他方の端子電極に静電気パルス印加部を接続した後、静電気パルス印加部に放電ガンを接触させて静電気パルスを印加した。ここで印加する静電気パルスは、放電開始電圧以上の電圧を印加した。
なお、放電開始電圧は、静電気試験を0.4kVから0.2kV間隔で増加させながら行なった際に観測される静電気吸収波形において、静電気吸収効果が現れた電圧とする。また、ピーク電圧は、IEC61000−4−2に基づく静電気試験を充電電圧8kVの接触放電で行なった際における、静電気パルスの最大電圧値とする。さらに、クランプ電圧は、IEC61000−4−2に基づく静電気試験を充電電圧8kVの接触放電で行なった際における、静電気パルスの波頭値から30ns後の電圧値とする。
なお、静電容量は、1MHzにおける静電容量(pF)を測定した。また、放電後のピーク電圧は、静電気放電試験を100回繰り返した後のピーク電圧を測定したものである。表1に評価結果を示す。
さらに、放電後のピーク電圧は、静電気放電試験を1000回繰り返した後のピーク電圧も測定した。表2に評価結果を示す。
表1に示す結果より、実施例1の静電気対策素子は、放電開始電圧が2kV以下で静電容量が0.1pF程度と小さく、高速伝送系において適用可能な性能を有することが確認された。しかも、実施例1の静電気対策素子は、比較例1及び比較例2の静電気対策素子に比して、繰り返し放電後のピーク電圧も初期ピーク電圧が有意に低く、放電耐性においても比較的良好な性能を有することが確認された。
表2に示す結果より、実施例2乃至5の静電気対策素子は、実施例1の静電気対策素子と同様に、放電開始電圧が2kV以下で静電容量が0.1pF程度と小さく、高速伝送系において適用可能な性能を有することが確認された。しかも、実施例2乃至5の静電気対策素子は、実施例1の静電気対策素子に比して、繰り返し放電後のピーク電圧の急激な上昇が長期に亘って抑制され続けており、放電耐性が格段に高められていることが確認された。