以下、本明細書で開示する半導体装置の好ましい実施形態を、図を参照して説明する。但し、本発明の技術範囲はそれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶものである。
図1は、本明細書に開示する半導体装置の一実施形態を示す図である。
本明細書で開示する実施形態(以下、単に本実施形態ともいう)の半導体装置1は、容量素子として強誘電体キャパシタQを有する強誘電体メモリを備えている。強誘電体メモリは、MOSトランジスタと強誘電体キャパシタQとが直列に接続された基本構造を有する。この強誘電体メモリは、図1に示すように、強誘電体キャパシタQの下部電極41aのコンタクト領域CR上に導電性プラグ60bが形成されたプレーナ型の構造を有する。
図1に示すように、半導体装置1は、例えば、MOSトランジスタTR1、TR2が配置されるトランジスタ層と、トランジスタ層の上に形成され、強誘電体キャパシタQが配置されるキャパシタ層と、キャパシタ層の上に形成され、配線が配置される配線層とを有する。
トランジスタ層では、単結晶シリコン基板20上に、素子分離絶縁膜21で画成されたp型のSiウェル22が形成される。そして、nチャネルのMOSトランジスタTR1、TR2が、このSiウェル22領域に間隔を空けて配置される。
MOSトランジスタTR1、TR2は、それぞれのチャネル領域に対応するゲート絶縁膜28を有する。
ゲート絶縁膜28上にはn型にドープされた多結晶シリコンのゲート電極25a、25bが配置される。ゲート電極25a、25bは、強誘電体メモリのワード線の一部を形成する。
ゲート電極25a、25bの両側壁上には、絶縁性のサイドウォール26が配置される。そして、サイドウォール26それぞれの外側には、n型の第1〜第3ソース/ドレイン領域23a,23b,23cが配置される。
また、図1に示すように、MOSトランジスタTR1では、第1ソース/ドレイン領域23aの端部からゲート絶縁膜28に向って、第1ソース/ドレインエクステンション領域24aが延出する。同様に、MOSトランジスタTR2では、第3ソース/ドレイン領域23cの端部からゲート絶縁膜28に向って、第3ソース/ドレインエクステンション領域24cが延出する。また、第2ソース/ドレイン領域23bの両側それぞれには、第2ソース/ドレインエクステンション領域24bが配置される。
図1に示すように、第1〜第3ソース/ドレイン領域23a,23b,23c上それぞれにはシリサイド層27が配置される。また、同様のシリサイド層27が、ゲート電極25a、25b上にも配置される。
第1ソース/ドレイン領域23a上には、第1ソース/ドレイン領域23aと上層とを接続する第1導電性プラグ32aが、シリサイド層27を介して配置される。同様に、第2ソース/ドレイン領域23b上には第2導電性プラグ32bが配置され、第3ソース/ドレイン領域23c上には第3導電性プラグ32cが配置される。
また、図1に示すように、カバー膜29が、2つのMOSトランジスタTR1、TR2を覆うようにシリコン基板20上に配置される。更に、カバー膜29の上には、第1絶縁層30が配置される。
トランジスタ層の上に配置されるキャパシタ層では、強誘電体キャパシタQの結晶性を高めるために使用されるアルミナ膜37が、第1絶縁層30の上に配置される。
図1に示すように、アルミナ膜37の上には、強誘電体キャパシタQが配置される。強誘電体キャパシタQは、下部電極41aと、下部電極41a上に形成された強誘電体膜42aと、強誘電体膜42a上に形成された上部電極43aと、を有する。
誘電体膜42aの形成材料としては、チタン酸ジルコン酸鉛であるPb(Zrx,Ti1-x)O3 (0≦x≦1)、又はこのPb(Zrx,Ti1-x)O3に対してCa、Sr、La、Nb、Ta、Ir及びWからなる群から選択された少なくとも1種の元素が添加された化合物を用いることが好ましい。
このように、誘電体膜42aの形成材料としてチタン酸ジルコン酸鉛を用いた場合、誘電体膜42aは、(001)面を配向させたときに分極値が最大になる。一方、強誘電体キャパシタの生産性の観点からは、(001)面よりも配向させることが容易であり、また、スイッチング方向が反転電界に対して45°の角度をなして比較的大きな分極値が得られる(111)面を配向させることの方が好ましい。
また、半導体装置1では、強誘電体キャパシタQには、下部電極41aと強誘電体膜42aとの間にバッファ膜44aが配置される。バッファ膜44aは、強誘電体膜42aが熱処理によりバッファ膜上で結晶化される際に、(111)面配向度を高める働きを有する。このバッファ膜44aの働きについては、後述する半導体装置1の製造方法の説明において詳述する。
更に、強誘電体キャパシタQの上部電極43aの上には、第1保護層10aが配置されている。第1保護膜10aは、半導体装置1の形成中に、水素が上部電極43aを通過して、強誘電体膜42aに移動することを防止する。
また、半導体装置1の製造中に水素等の還元性雰囲気から強誘電体キャパシタQを保護する第2保護層50が、強誘電体キャパシタQを覆うようにアルミナ膜37上に配置される。
上部電極43aの上には、上部電極43aと上層とを接続する第4導電性プラグ60aが配置される。第4導電性プラグ60aは、第1保護層10aと、第2保護層50とを貫通して、上部電極43aと接続する。
また、下部電極41aのコンタクト領域CR上には、下部電極41aと上層の配線とを接続する第5導電性プラグ60bが配置される。第5導電性プラグ60bは、第2保護層50を貫通して、上部電極43aと接続する。
また、図1に示すように、下層の第1導電性プラグ32aと上層の配線とを接続する第6導電性プラグ60cが、第1導電性プラグ32aの上に配置される。第6導電性プラグ60cは、アルミナ膜37を貫通して第1導電性プラグ32aと接続する。同様に、第7導電性プラグ60dが、第2導電性プラグ32bの上に配置され、第8導電性プラグ60eが、第3導電性プラグ32cの上に配置される。
また、図1に示すように、第2絶縁層51が、強誘電体キャパシタQを中に埋め込むように第2保護層50上に配置される。
キャパシタ層の上に配置される配線層では、第4導電性プラグ60a及び第8導電性プラグ60eとを接続する配線62bが配置される。配線62bは、複数のプラグを介して、MOSトランジスタTR2の第3ソース/ドレイン領域23cと誘電体キャパシタQの上部電極43aとを接続する。
同様に、第2絶縁層51の上には、第5導電性プラグ60bと接続する配線62cが配置される。配線62cは、強誘電体メモリのプレーナ線の一部を形成する。
また、第2絶縁層51の上には、第6導電性プラグ60cと接続する配線62aが配置される。
更に、第2絶縁層51の上には、第7導電性プラグ60dと接続する導電性パッド62dが配置される。導電性パッド62d上には、導電性パッド62dと上層とを接続する第9導電性プラグ60fが配置される。
また、図1に示すように、各配線等を埋め込むように第3絶縁層63が第2絶縁層51上に配置される。この第3絶縁層63の上には、必要に応じて、更に別の配線層等を配置しても良い。
次に、図1に示した強誘電体メモリを有する半導体装置1の製造方法の一実施形態を、図2〜図8を参照して以下に説明する。
まず、図2に示すように、シリコン基板20上に、MOSトランジスタTR1、TR2を有するトランジスタ層が形成される。そして、MOSトランジスタTR1、TR2を埋め込む第1絶縁層30上に、アルミナ膜37が形成される。アルミナ膜37の形成方法としては、例えば、RFマグネトロンスパッタ法を用いることができる。
以下、図2中の四角い枠で囲んだ部分において、アルミナ膜37上に、容量素子である強誘電体キャパシタQが形成される各工程を説明する。
図3に示すように、アルミナ膜37上に下部電極層41が形成される。下部電極層41の形成方法としては、例えばスパッタ法が使用される。スパッタ法としては、具体的には、DCマグネトロンスパッタ法を用いることができる。下部電極層41の厚さとしては、強誘電体キャパシタの設計により適宜設定され得るが、例えば50nmとすることができる。下部電極層41の形成材料としては、例えば、プラチナを用いることができる。下部電極層41としてプラチナを用いる場合は、プラチナは自己配向性を有しているが、下部電極層の形成条件を、プラチナの(111)面配向度を促進するように設定することが、後に形成されるバッファ層及び強誘電体層の(111)面配高度を高める観点から好ましい。
次に、図4に示すように、下部電極層41上にバッファ層44が形成される。バッファ層44の形成方法としては、例えばスパッタ法が使用される。スパッタ法としては、具体的には、DCマグネトロンスパッタ法を用いることができる。スパッタの際に、シリコン基板20が載置されるステージの温度としては、例えば20℃〜150℃、好ましくは60℃とすることができる。また、スパッタに使用する電力としては、強誘電体キャパシタの設計により適宜設定され得るが、例えば30W〜350W、好ましくは310Wとすることができる。また、スパッタの際の雰囲気としては、酸素を含まない雰囲気を使用することが好ましい。この雰囲気としては、アルゴンガスのような不活性ガスを用いることができる。ここで、スパッタの際の雰囲気として、酸素を含む雰囲気を使用した場合、スパッタ速度が低下し、またバッファ層面内の比抵抗の分布の均一性が低下するおそれがある。このようにバッファ層面内の比抵抗の分布が不均一になると、このバッファ層上に形成される強誘電体層の(111)面配向度が減少し、強誘電体キャパシタの分極特性が低下するおそれがある。
バッファ層44の厚さは、強誘電体キャパシタの設計により適宜設定され得るが、例えば1〜2nmとすることができる。バッファ層44の形成材料としては、例えば、ルテニウム酸ストロンチウム(SrRuO3)、又はチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、又はチタン酸鉛(PbTiO3)、又は酸化チタン(TiO2)又は鉛酸バリウム(BaPbO3)を用いることができる。特に、バッファ層44の形成材料は、上に形成される強誘電体層と格子整合性の高い材料を用いることが好ましい。
このように下部電極層41上に形成されたバッファ層44は、通常アモルファス状態にある。
そして、バッファ層44に対して、100体積%の濃度よりも低い酸素濃度の雰囲気下で且つ第1の温度で第1の熱処理が行われる。この第1の熱処理によって、アモルファス状態のバッファ層44の結晶化が進む。この際、バッファ層44は、下部電極層44の露出した表面の結晶面に従って、結晶化が進む。即ち、下部電極層44の露出した表面が(111)面であれば、バッファ層44も、下部電極層44の(111)面にならって同じ結晶面を備えて結晶化が進む。
この第1の温度は、600℃以上であることが、バッファ層44の結晶化を促進する観点から好ましい。第1の温度の上限は、トランジスタ層が形成されたシリコン基板20に欠陥等を生じない範囲の温度とすることが好ましい。第1の温度の上限としては、例えば、1000℃以下、又は900℃以下、又は800℃以下、又は650℃以下とすることができる。
また、第1の熱処理の酸素濃度は、0体積%より高く且つ50体積%以下、特に0体積%より高く且つ10体積%以下であることが、バッファ層44の結晶化を促進する観点から好ましい。
第1の熱処理の酸素濃度を上述した範囲にすることが好ましい理由を、バッファ層44であるルテニウム酸ストロンチウムが下部電極層41であるプラチナ上に形成される場合を例にして、以下に説明する。ルテニウム酸ストロンチウムを形成するルテニウムは、ストロンチウムよりも酸素と結合し易いので、バッファ層44が形成される際の酸素濃度が低い場合には、まず、ルテニウムが酸素と結合し、酸化ルテニウムの結晶核が下部電極層41であるプラチナの(111)面上に形成されると考えられる。そして、プラチナの(111)面上に形成された酸化ルテニウムの結晶核を元にしてルテニウム酸ストロンチウムの(111)面が、プラチナの(111)面上に優先して成長すると考えられる。一方、バッファ層44が形成される際の酸素濃度が高い場合には、ルテニウムの酸化と共に、ストロンチウムが酸化し、更に下部電極層41であるプラチナの表面も酸化されると考えられる。そのため、ルテニウム酸ストロンチウムのプラチナの(111)面に従った成長が阻害されて、ランダムな面方位を有するルテニウム酸ストロンチウムの成長が生じると考えられる。このように、ランダムな面方位を有するルテニウム酸ストロンチウム上に形成される強誘電体膜は、結晶配向度が低くく分極値も低くなる。また、バッファ層44が酸素を含まない雰囲気下で形成される場合、酸素を含まない雰囲気下では、酸化ルテニウムが形成されないので、ルテニウム酸ストロンチウムはプラチナ上にランダムな配向を備えて形成されると考えられる。
また、上述した第1の熱処理は、急速加熱アニール処理であることが好ましい。この理由を、バッファ層44であるルテニウム酸ストロンチウムが下部電極層41であるプラチナ上に形成される場合を例にして、以下に説明する。バッファ層44であるルテニウム酸ストロンチウムが、第1の温度である600℃以上の温度で急速加熱されると、ルテニウム酸ストロンチウムでは、(111)面が優先して成長し、他の結晶面の成長は抑制される。一方、バッファ層44であるルテニウム酸ストロンチウムが、もっと遅い昇温速度で加熱される場合には、(111)面以外の結晶面の成長が増加し、(111)面の成長が減少する。従って、第1の熱処理は、昇温速度が速い急速加熱アニール処理であることが好ましい。第1の熱処理の急速加熱アニール処理の昇温速度は、例えば125℃/秒とすることができる。
上述した第1の熱処理によって、アモルファスの状態であったバッファ層44には、少なくとも下部電極層41の面方位に従った多数の結晶核が形成されると考えられる。そして、第1の熱処理により形成された多数の結晶核は、次に説明する第2の熱処理によって、離散している結晶核それぞれが成長しながら結合して、バッファ層44全体が、下部電極層41の面方位に従った結晶状態になると考えられる。
そして、バッファ層44に対して、第1の熱処理に続いて、第1の温度よりも高い第2の温度で第2の熱処理が行われる。第2の温度は、700℃以上であることが、バッファ層44全体を結晶配向度を高める上で好ましい。第2の温度の上限は、トランジスタ層等が形成されたシリコン基板20に欠陥等を生じない範囲の温度とすることが好ましい。第2の温度の上限としては、例えば、1000℃以下、又は900℃以下、又は800℃以下、又は750℃以下とすることができる。
また、第2の熱処理が、酸素を含む雰囲気下で行われることが、第1の熱処理において説明したのと同様の観点から好ましい。具体的には、第2の熱処理の酸素濃度は、2.5体積%以上、特に100体積%であることが好ましい。
そして、上述した第1の熱処理と同様の理由から、第2の熱処理も、急速加熱アニール処理であることが好ましい。第2の熱処理の急速加熱アニール処理の昇温速度は、例えば125℃/秒とすることができる。
次に、図5に示すように、バッファ層44上に第1誘電体層42bが形成される。第1強誘電体層42bの形成法としては、例えばスパッタ法が使用される。具体的には、スパッタ法として、RFマグネトロンスパッタ法を用いることができる。スパッタの際に、シリコン基板20が載置されるステージの温度としては、例えば20℃〜150℃、好ましくは50℃とすることができる。また、スパッタに使用する電力は、強誘電体キャパシタの設計により適宜設定され得るが、例えば1.0kWとすることができる。また、スパッタの際の雰囲気としては、例えば、アルゴンガスを用いることができる。具体的には、アルゴンガスを20×1.667×10-8m3/秒(20sccm)の流量で流して、圧力を1Paとしても良い。第1強誘電体層42bの厚さは、強誘電体キャパシタの設計により適宜設定され得るが、例えば55nmとすることができる。ターゲットの形成材料としては、例えば、組成がPb:1.13/Zr:0.45/Ti:0.55/O:3/La:0.02/Sr:0.025/Ca:0.05であるチタン酸ジルコン酸鉛を用いることができる。
そして、バッファ層44上に第1強誘電体層42bが積層された構造が、酸素含有雰囲気中で急速加熱アニール処理されて、第1強誘電体層42bが結晶化される。第1強誘電体層42bは、特定の面配向度を有するバッファ層44上で、このバッファ層44の面配向に従って結晶化される。この急速加熱アニール処理の条件として、例えば、基板温度が582℃、酸素濃度が1.25体積%、処理時間90秒、昇温速度125℃/秒を用いることができる。
次に、図6に示すように、バッファ層44上に第2誘電体層42cが形成される。第2誘電体層42cは、上述した第1誘電体層42bと同様に形成することができる。例えば、RFマグネトロンスパッタ法を用いて、チタン酸ジルコン酸鉛を用いて第2誘電体層42cが形成される。第2誘電体層42cの厚さは、強誘電体キャパシタの設計により適宜設定され得るが、例えば15nmとすることができる。
次に、図7に示すように、第2強誘電体層42cの上に上部電極層43が形成される。上部電極層43の形成方法としては、例えばスパッタ法が使用される。スパッタ法としては、具体的には、DCマグネトロンスパッタ法を用いることができる。上部電極層43の厚さとしては、強誘電体キャパシタの設計により適宜設定され得るが、例えば50nmとすることができる。上部電極層43の形成材料としては、例えば、プラチナ等の貴金属、又は、酸化イリジウム若しくは酸化ルテニウム等の導電性酸化物を用いることができる。
次に、図8に示すように、第1強誘電体層42b及び第2強誘電体層42cと共に、上部電極層43が熱処理により結晶化されて、第1強誘電体層42b及び第2強誘電体層42cが結晶化されて一体となった強誘電体層42が形成される。この熱処理では、第1強誘電体層42b上の第2強誘電体層42cが、第1強誘電体層42bが有する面方位に従って結晶化される。この熱処理の条件として、例えば、温度が717℃、酸素濃度が1体積%、処理時間が120秒の急速加熱アニール処理を用いることができる。
次に、図9に示すように、上部電極層42の上に第1保護層10が形成される。第1保護層の形成材料としては、酸化イリジウム、プラチナ、酸化ルテニウム又は窒化チタンアルミニウムを用いることができる。また、第1保護層10は、図9に示すように、2つの層10b、10cにより形成しても良い。
そして、リソグラフィー等の技術を用いて、下部電極層41から下部電極41aが、バッファ層44からバッファ膜44aが、強誘電体層42から強誘電体膜42aが、上部電極層43から上部電極43aが、第1保護層10から第1保護膜10aが形成される。このようにして、図1に示す強誘電体キャパシタQが得られる。そして、更に、強誘電体キャパシタQが形成されたシリコン基板20上に、各層、各導電性プラグ、配線が形成されて、図1に示す半導体装置1が得られる。
上述した半導体装置の製造方法によれば、強誘電体キャパシタにおける強誘電体膜の結晶配向度が向上する。具体的には、下部電強層41の面の配向を、バッファ層44を介して、第1強誘電体層42a及び第2強誘電体層42bに精確に伝えてを結晶化することができる。例えば、下部電極層41が(111)面を有していれば、第1強誘電体層42a及び第2強誘電体層42bも(111)面配向度の高い結晶に形成することができる。従って、強誘電体膜の分極値を向上できるので、強誘電体膜の分極値を低下させることなく、強誘電体膜の厚さを薄くすることができる。
次に、上述した半導体装置の製造工程におけるバッファ層の第1の熱処理又は第2の熱処理後の強誘電体層のX線回折(XRD)ピーク強度を測定することにより、熱処理の各条件と強誘電体層の面配向度との関係を以下に説明する。
図10は、XRDピーク強度と第1の熱処理の第1の温度との関係を示す図である。
図10には、4つのサンプルについて、XRDピーク強度と第1の熱処理の第1の温度との関係が示されている。4つのサンプルそれぞれは、第1の熱処理の第1の温度が異なっている。具体的には、第1の温度は、550℃、600℃、642℃及び717℃であった。4つのサンプルの下部電極の形成材料はプラチナ、バッファ層はルテニウム酸ストロンチウム、強誘電体層はチタン酸ジルコニア酸鉛であった。ここで、4つのサンプルそれぞれは、第1の熱処理では、酸素濃度が2.5体積%、処理時間が1分で、急速加熱アニール処理が行われた。4つのサンプルは、第2の熱処理は行われておらず、上部電極層43が形成され、強誘電体層42が結晶化された後の状態について、XRDピーク強度の測定を行ったものである。XRDピーク強度の測定は、チタン酸ジルコニア酸鉛の(111)面及び(101)面について行われた。なお、チタン酸ジルコニア酸鉛の(101)面は、主にランダムな配向状態を意味する。
図10に示すように、第1の温度が高い程、強誘電体層の(111)面配向度が高くなっている。何れの温度においても、強誘電体層の(111)面配向度は、(101)面配向度と比べて高い値を示している。また、第1の温度が低い程、強誘電体層の(101)面配向度が増加している。ここで、強誘電体層の(111)面配向度は、下のバッファ層の(111)面配向度の高さに対応すると考えられる。
この結果から、バッファ層の(111)面配向度は、第1の熱処理の第1の温度が高い程高くなると考えられる。
図11は、XRDピーク強度と第1の熱処理の酸素濃度との関係を示す図である。
図11には、5つのサンプルについて、XRDピーク強度と第1の熱処理の酸素濃度との関係が示されている。5つのサンプルそれぞれは、第1の熱処理の酸素濃度が異なっている。具体的には、酸素濃度は、2.5体積%、5体積%、10体積%、50体積%及び100体積%であった。ここで、5つのサンプルそれぞれは、第1の熱処理では、第1の温度が600℃、処理時間が1分で、急速加熱アニール処理が行われた。その他の製造条件については、5つのサンプルは、図10に示すサンプルと同様に処理された。
図11に示すように、酸素濃度が、2.5体積%〜10体積%の範囲において、高い強誘電体層の(111)面配向度が得られた。特に、酸素濃度が5体積%において、最も高い(111)面配向度が得られた。何れの酸素濃度においても、強誘電体層の(111)面配向度は、(101)面配向度と比べて高い値を示している。強誘電体層の(101)面配向度については、酸素濃度が2.5体積%〜10体積%の範囲よりも、50体積%以上の範囲において若干高い傾向が見られる。
この結果から、バッファ層の(111)面配向度は、酸素濃度が2.5体積%〜10体積%の範囲において、高いと考えられる。
図12は、XRDピーク強度と第1の熱処理の処理時間との関係を示す図である。
図12には、2つのサンプルについて、XRDピーク強度と第1の熱処理の処理時間との関係が示されている。具体的には、第1の熱処理の処理時間は、1分及び2分であった。ここで、2つのサンプルそれぞれは、第1の熱処理では、第1の温度が600℃、酸素濃度が2.5体積%で、急速加熱アニール処理が行われた。その他の製造条件については、2つのサンプルは、図10に示すサンプルと同様に処理された。
図12に示すように、処理時間が1分と2分とでは、ほぼ同じ強誘電体層の(111)面配向度及び(101)面配向度が得られた。何れの処理時間においても、強誘電体層の(111)面配向度は、(101)面配向度と比べて高い値を示している。
この結果から、バッファ層の(111)面配向度は、処理時間が1分と2分との間では、変化が少ないと考えられる。
図13は、XRDピーク強度と第2の熱処理温度との関係を示す図である。
図13には、2つのサンプルについて、XRDピーク強度と第2の熱処理の第2の温度との関係が示されている。具体的には、第2の温度は、717℃及び732℃であった。ここで、2つのサンプルそれぞれは、第1の熱処理では、第1の温度が600℃、酸素濃度が2.5体積%、処理時間が1分で、急速加熱アニール処理が行われた。その後、2つのサンプルそれぞれは、第2の熱処理では、酸素濃度が100体積%、処理時間が2分で急速加熱アニール処理が行われた。その他の製造条件については、2つのサンプルは、図10に示すサンプルと同様に処理された。
図13に示すように、第2の温度が717℃及び732℃とでは、ほぼ同じ強誘電体層の(111)面配向度が得られた。何れの温度においても、強誘電体層の(111)面配向度は、(101)面配向度と比べて高い値を示している。
この結果から、バッファ層の(111)面配向度は、第2の熱処理の第2の温度が717℃〜732℃の範囲では、変化が少ないと考えられる。
図14は、XRDピーク強度と第2の熱処理の酸素濃度との関係を示す図である。
図14には、2つのサンプルについて、XRDピーク強度と第2の熱処理の酸素濃度との関係が示されている。具体的には、酸素濃度は、2.5体積%及び100体積%であった。ここで、2つのサンプルそれぞれは、第1の熱処理では、第1の温度が600℃、酸素濃度が2.5体積%、処理時間が1分で、急速加熱アニール処理が行われた後、第2の熱処理では、第2の温度が717℃、処理時間が2分で急速加熱アニール処理が行われた。その他の製造条件については、2つのサンプルは、図10に示すサンプルと同様に処理された。
図14に示すように、第2の熱処理の酸素濃度が2.5体積%及び100体積%では、ほぼ同じ強誘電体層の(111)面配向度が得られた。何れの温度においても、強誘電体層の(111)面配向度は、(101)面配向度と比べて高い値を示している。第2の熱処理の酸素濃度が2.5体積%では、強誘電体層の(101)面配向度は測定下限以下の値であった。
この結果から、バッファ層の(111)面配向度は、第2の熱処理の酸素濃度が2.5体積%〜100体積%の範囲では、変化が少ないと考えられる。
図15は、XRDピーク強度と第2の熱処理との関係を示す図である。
図15には、第1の熱処理のみが行われた場合と、第1の熱処理及び第2の熱処理が行われた場合について、XRDピーク強度が比較して示されている。ここで、各サンプルは、第1の熱処理では、第1の温度が600度、酸素濃度が2.5体積%、処理時間が1分で、急速加熱アニール処理が行われた。また、第2の熱処理では、酸素濃度が2.5体積%、処理時間が2分で急速加熱アニール処理が行われた。その他の製造条件については、各サンプルは、図10に示すサンプルと同様に処理された。
図15に示すように、第2の熱処理を行うことにより、強誘電体層の(111)面配向度が大幅に向上することが分かる。一方、強誘電体層の(101)面配向度は、第2の熱処理を行うことにより減少する。
この結果から、バッファ層の(111)面配向度は、バッファ層に対して、第1の温度で第1の熱処理を行った後に第1の温度よりも高い第2の温度で第2の熱処理が行われることにより、大幅に向上すると考えられる。
図16は、XRDピーク強度と第1の熱処理の第1の温度との関係を示す図である。
図16は、550℃、600℃及び717℃の第1の温度で第1の熱処理を行った後、第2の熱処理を行ったサンプルについて、XRDピーク強度の測定結果が示されている。ここで、各サンプルは、第1の熱処理では、酸素濃度が2.5体積%、処理時間が1分で、急速加熱アニール処理が行われた。また、第2の熱処理では、第2の温度が717℃、酸素濃度が100体積%、処理時間が2分で急速加熱アニール処理が行われた。その他の製造条件については、各サンプルは、図10に示すサンプルと同様に処理された。
図16に示すように、第1の温度が高い程、強誘電体層の(111)面配向度が高くなるが、第1の温度が600℃以上であれば、強誘電体層の(111)面配向度はほぼ一定となっている。
この結果から、バッファ層の(111)面配向度は、第1の温度が600℃以上であれば、ほぼ一定になると考えられる。
また、高い強誘電体層の(111)面配向度を確保しつつ、高い温度の熱処理の時間を減らす観点からは、第1の熱処理の温度を600℃程度にすることが好ましいと考えられる。
次に、バッファ層の膜厚と、強誘電体層の(111)面配向度との関係を以下に説明する。
図17は、強誘電体層のXRDピーク強度とバッファ層の厚さとの関係を示す図である。ここで、バッファ層はルテニウム酸ストロンチウム、強誘電体層はチタン酸ジルコニア酸鉛であった。
図17に示すように、バッファ層の膜厚が厚いと、薄い場合と比べて、強誘電体層の(111)面配向度が低くなる。一方、強誘電体層の(101)面配向度は、バッファ層の膜厚が厚い方が、薄い場合よりも若干高くなっている。
そこで、バッファ層の膜厚が厚い場合でも、強誘電体層の(111)面配向度を向上できる方法の検討を行った。
具体的には、下部電極層上に薄いバッファ層(例えば、膜厚が1nm)が形成され、このバッファ層に対して、100体積%の濃度よりも低い酸素濃度の雰囲気下で且つ第1の温度で第1の熱処理を行う。その後、更に、薄いバッファ層(例えば、膜厚が1nm)の形成及び第1の熱処理が繰り返されて、下部電極層上に厚いバッファ層が形成される。そして、この厚いバッファ層に対して、第2の熱処理が行われる。
図18は、強誘電体層のXRDピーク強度とバッファ層の膜厚との関係を示す図である。図18には、薄いバッファ層(例えば、膜厚が1nm)の形成及び第1の熱処理が繰り返されて形成された厚いバッファ層上に形成された強誘電体層の(111)面配向度と、バッファ層の膜厚との関係が示されている。ここで、バッファ層はルテニウム酸ストロンチウム、強誘電体層はチタン酸ジルコニア酸鉛であった。
図18に示すように、厚いバッファ層が、薄いバッファ層の形成及び第1の熱処理が繰り返されて形成された場合には、図17に示すバッファ層が薄い場合と同程度又はそれ以上の強誘電体層の(111)面配向度が得られている。この理由としては、薄いバッファ層の形成及び第1の熱処理により、各薄いバッファ層が十分に結晶化されるので、この薄いバッファ層が積層されて形成された厚いバッファ層の結晶度が高くなるためと考えられる。
本発明では、上述した実施形態の半導体装置及びその製造方法は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、容量素子が、強誘電体膜を有する強誘電体キャパシタであったが、容量素子は、強誘電体ではない誘電体を有する誘電体キャパシタであっても良い。
また、上述した実施形態では、半導体装置が強誘電体キャパシタを有する強誘電体メモリを備えていたが、半導体装置は、上述した構造を有する容量素子を備えていれば、強誘電体メモリでなくても良い。
また、上述した実施形態では、強誘電体キャパシタは、プレーナ型であったが、強誘電体キャパシタはスタック型であっても良い。
また、上述した実施形態では、nチャネルのMOSトランジスタを有していたが、pチャネルのMOSトランジスタ又は他のスイッチング素子を有していてもよい。
ここで述べられた全ての例及び条件付きの言葉は、読者が、発明者によって寄与された発明及び概念を技術を深めて理解することを助けるための教育的な目的を意図する。ここで述べられた全ての例及び条件付きの言葉は、そのような具体的に述べられた例及び条件に限定されることなく解釈されるべきである。また、明細書のそのような例示の機構は、本発明の優越性及び劣等性を示すこととは関係しない。本発明の実施形態は詳細に説明されているが、その様々な変更、置き換え又は修正が本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り行われ得ることが理解されるべきである。
以上の上述した実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
(付記1)
下部電極層上にバッファ層を形成する工程と、
前記バッファ層に対して、100体積%の濃度よりも低い酸素濃度の雰囲気下で且つ第1の温度で第1の熱処理を行った後、前記第1の温度よりも高い第2の温度で第2の熱処理を行う工程と、
前記バッファ層上に誘電体層を形成する工程と、
前記誘電体層上に上部電極層を形成する工程と、
前記誘電体層を熱処理して結晶化する工程と、
を備える半導体装置の製造方法。
(付記2)
前記第1の温度は、600℃以上である付記1に記載の半導体装置の製造方法。
(付記3)
前記第2の温度は、700℃以上である付記2に記載の半導体装置の製造方法。
(付記4)
前記第1の熱処理の酸素濃度は、0体積%より高く且つ10体積%以下である付記1〜3の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
(付記5)
前記第2の熱処理を、酸素を含む雰囲気下で行う付記1〜4の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
(付記6)
前記第2の熱処理の酸素濃度は、2.5体積%以上である付記5に記載の半導体装置の製造方法。
(付記7)
前記第1の熱処理又は前記第2の熱処理は急速加熱アニール処理である付記1〜6の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
(付記8)
前記バッファ層の形成材料は、ルテニウム酸ストロンチウム、又はチタン酸ストロンチウム、又はチタン酸鉛、又は酸化チタン又は鉛酸バリウムである付記1〜7の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
(付記9)
前記誘電体層の形成材料は、Pb(Zrx,Ti1-x)O3 (0≦x≦1)、又はこのPb(Zrx,Ti1-x)O3に対してCa、Sr、La、Nb、Ta、Ir及びWからなる群から選択された少なくとも1種の元素が添加された化合物である付記1〜8の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。
(付記10)
前記バッファ層を形成する工程では、スパッタ法を用いて、酸素を含まない雰囲気下で前記下部電極層上に前記バッファ層を形成する付記1〜9の何れか一項に記載の半導体装置の製造方法。