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JP2011228014A - 固体高分子型燃料電池用膜電極接合体 - Google Patents

固体高分子型燃料電池用膜電極接合体 Download PDF

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JP2011228014A JP2010094095A JP2010094095A JP2011228014A JP 2011228014 A JP2011228014 A JP 2011228014A JP 2010094095 A JP2010094095 A JP 2010094095A JP 2010094095 A JP2010094095 A JP 2010094095A JP 2011228014 A JP2011228014 A JP 2011228014A
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光 岡本
Yoji Koike
洋史 小池
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Abstract

【課題】触媒の凝集を抑制させるのに有利な固体高分子型燃料電池用膜電極接合体を提供する。
【解決手段】膜電極接合体は、燃料用拡散層と、燃料用触媒層と、プロトン伝導性をもつ電解質膜と、酸化剤用触媒層と、酸化剤用拡散層とがこの順に積層された構造をもつ。燃料用触媒層および酸化剤用触媒層のうちの少なくとも一方は、触媒が触媒担体に担持された触媒粉末と、プロトン伝導性をもつ高分子電解質材料と、ピリジン環を官能基として有する高分子鎖を架橋した高分子材料で形成された添加剤とを含む。
【選択図】図6

Description

本発明は白金等の触媒金属を触媒担体に担持させた固体高分子型燃料電池用膜電極接合体に関する。
特許文献1は、触媒担体に白金または白金合金から成る触媒金属の微粒子を担持した電極触媒を含む燃料電池触媒層に、水との反応性が高い添加剤を混合する技術を開示する。この添加剤としては、燃料電池発電時において触媒層中で固体であり、添加剤と水との反応による生成物が、プロトンと電子と添加剤の酸化物を含み、添加剤の酸化物が、燃料電池発電時において触媒層中で固体であるものが好ましいとされている。
特許文献2は、炭化水素系固体高分子電解質膜に、酸化物触媒、環状金属錯体触媒、遷移金属合金触媒の少なくとも一つの触媒を添加する技術を開示する。このものによれば、添加剤により、固体高分子膜中に侵入してきた過酸化水素を分解することができ、固体高分子膜が過酸化水素により分解することを防止することができる効果を有する。特許文献3は、過酸化水素と錯体を形成しうる錯体形成性化合物が膜−電極接合体内に分散添加されている燃料電池を開示する。錯体形成性化合物としてはTi(SO が好ましいとされている。
特許文献4は、白金担持カーボンと高分子電解質とから構成される燃料電池用電極触媒を開示する。このものによれば、白金担持カーボンのカーボン表面にのみ酸化防止剤又は酸化防止基を含む層が被覆され、白金担持カーボンの白金サイトには酸化防止剤又は酸化防止基を含む層が被覆されていない。このものによれば、フッ素系高分子電解質に添加された酸化防止剤や、導入された燐を含む官能基が系内に発生した過酸化水素ラジカルをクエンチするのみならず、フッ素系高分子電解質の分解過程で生じる分解ラジカルをクエンチして、フッ素系高分子電解質の耐酸化安定性を飛躍的に向上させる。特許文献5は、炭化水素骨格部に電解質基が導入された化学構造の高分子電解質材料中にキレート性官能基を導入することにより、電池反応により発生する過酸化水素のような過酸化物をラジカル化する金属イオン(燃料の配管系などより混入)をキレート性官能基により捕捉し、過酸化物ラジカルの生成を抑制する技術を開示する。特許文献6は、導電性触媒担体、導電性触媒担体に担持される白金を含有する触媒活物質、およびプロトン伝導性高分子を含む固体高分子型燃料電池用電極触媒層を開示する。このものによれば、白金イオンを捕捉しうる白金イオン捕捉剤をさらに含有させる。特許文献7は、膜の膨潤収縮に伴う機械的劣化を抑制すべく、柔軟性に富む高分子電解質組成物を開示している。このものは、陽イオン交換樹脂と、カチオン系の窒素原子を含む複素環基を有する陰イオン交換樹脂とを含む高分子電解質材料を開示している。非特許文献1は、触媒層にアセチルアセトンやクエン酸のキレート剤を添加することにより、触媒金属である白金の溶解・析出を防止する技術を開示する。
ところで、固体高分子形燃料電池(PEFC)の技術課題として、耐久性の問題がある。その耐久劣化の要因として、(i)触媒金属の劣化、(ii)電解質(電解質膜、触媒層に含まれる電解質材料)の劣化、(iii)セパレータの劣化等の要因が考えられる。(i)に示す劣化の場合、耐久評価後のMEA(膜電極接合体)を解体して分析すると、触媒金属(主に白金が用いられる)に関して、触媒金属の粒子の凝集や粒成長が発生し、触媒表面積の低下が確認される。更には、触媒金属の電解質(膜や高分子電解質材料)への移動(所謂、白金バンド)が観測される。また、触媒担体であるカーボン材料(主として、カーボンブラック:CB)は、運転中に酸化され、CO2の発生が確認され、触媒担体の消失による耐久評価後の触媒層の厚さが減少することも確認される。
また、(ii)に示す電解質の劣化の場合、燃料電池の運転中に生じるラジカルにより電解質の分解が進行し、電解質膜の薄化や穴あきが確認される。この場合、電解質内に移動した触媒金属は、電解質の分解を加速させることが指摘されている。更に、(iii)に示すセパレータの劣化の場合、電解質の分解によって、遊離の酸が生成され、更には、Nafion等のフッ素系の電解質膜を使用した場合、フッ素イオンが遊離することにより、セパレータに金属を用いた場合のセパレータや金属配管類の腐食を加速することが知られている。
これら燃料電池の劣化の問題に対し、特に(i)に示す触媒金属の劣化に着目して、これまで種々の解析や検討が行われ、それに対する対策技術の開発が行なわれてきている。その対策技術の例として、(a)カーボンブラックを高温で黒鉛化処理したものや結晶性の高いカーボンナノチューブを触媒担体することで、触媒担体の耐酸化性を高め、耐久性を向上させた例がある。しかしながら、この場合、触媒担体の表面積が通常のカーボンブラックと比較して大幅に低下するため、微細な触媒金属を高分散で触媒担体に担持することが困難となり、触媒金属表面積の低下を招き、結果として、燃料電池の初期性能を大きく低下させると言う問題点がある。(b)触媒金属である白金を遷移金属等と合金化し、初期性能や耐久性を向上させたこと例も見られるが、通常、合金化した金属は、白金よりも溶出し易く、脱合金化により性能低下し易く、また、溶出した金属が電解質の劣化を加速することも指摘されている。これらの触媒金属自体の構造や組成を変更して、燃料電池の耐久性を向上させる取り組みの他にも、何らかの添加剤を添加して、燃料電池の触媒金属や電解質の耐久性を向上させようとする従来技術も知られている。しかしながら、触媒層における触媒金属の微粒子の成長を抑制させるには、必ずしも充分に貢献できるものではない。また上記した特許文献1〜7は、触媒層における触媒金属の微粒子の成長を抑制させることを意図するものではなく、触媒金属の微粒子の成長には必ずしも充分に貢献できるものではない。
特開2008-027848号公報 特開2000-106203号公報 特開2007-012375号公報 特開2004-327141号公報 特開2001-223015号公報 特開2006-147345号公報 特開2009-256654号公報
従来技術 7: 鵜川 ら, "Ptの溶解に対する添加剤の効果"第48回 電池討論会 要旨集, 444-445(2007)
本発明は上記した実情に鑑みてなされたものであり、固体高分子型燃料電池の発電運転が長くなったとしても、触媒層に含有されている白金等の触媒金属の凝集を抑制させ、燃料電池の出力の低下を抑制させるのに有利な固体高分子型燃料電池用膜電極接合体を提供することを課題とする。
本発明者は、固体高分子型燃料電池用膜電極接合体において触媒金属の凝集を抑制させる技術の開発を進めている。そして、触媒層について、白金等の触媒金属がカーボンブラック等の触媒担体に担持された触媒粉末と、プロトン伝導性をもつ高分子電解質材料と、ピリジン環を官能基として有する高分子鎖を架橋した高分子材料で形成された添加剤とを含む構成とすれば、燃料電池の発電運転において触媒層に含まれている高分子電解質材料の熱運動が抑制され、触媒金属の凝集が抑制されることを本発明者は知見し、試験で確認し、本発明を完成させた。
燃料電池の発電運転において、触媒層に含まれている高分子電解質材料が熱運動するため、触媒粉末の触媒担体に担持されている触媒金属が次第に凝集するものと考えられる。そこで、ピリジン環を官能基として有する高分子鎖を架橋した架橋剤を含む高分子材料で形成された添加剤を、触媒粉末および高分子電解質材料と共に触媒層に添加すれば、発電運転により固体高分子型燃料電池が昇温されるときであっても、触媒層に含まれる高分子電解質材料の熱運動が抑制され、触媒粉末の触媒担体に担持されている触媒金属の凝集が抑制されるものと考えられる。
すなわち、本発明に係る固体高分子型燃料電池用膜電極接合体は、燃料用拡散層と、燃料用触媒層と、プロトン伝導性をもつ電解質膜と、酸化剤用触媒層と、酸化剤用拡散層とが厚み方向においてこの順に積層された構造をもつ固体高分子型燃料電池用膜電極接合体であって、燃料用触媒層および酸化剤用触媒層のうちの少なくとも一方は、触媒金属が触媒担体に担持された触媒粉末と、プロトン伝導性をもつ高分子電解質材料と、ピリジン環を官能基として有する高分子鎖を架橋した高分子材料で形成された添加剤とを含む。
固体高分子型燃料電池が長期にわたり発電運転するとしても、触媒層において触媒金属の凝集が抑制される。このため燃料電池の発電性能および出力が長期にわたり良好に維持される。そのメカニズムについては必ずしも明確ではないものの、触媒層に含まれている高分子電解質材料の熱による運動を添加剤によりできるだけ抑制させ、触媒層における触媒金属の微粒子の移動を抑制できるためと推察される。
本発明によれば、固体高分子型燃料電池が長期にわたり発電運転するとしても、触媒層において触媒金属の凝集が抑制される。このため燃料電池の発電性能および出力が長期にわたり良好に維持される。
DSC測定による触媒粉末単体の熱凝集挙動を示すグラフである。 高分子電解質材料存在下における触媒金属の熱凝集挙動を示すグラフである。 高分子電解質材料存在下における触媒金属の熱凝集メカニズムを示す図である。 添加剤の化学構造を示す図である。 架橋剤を示す図である。 添加剤添加による効果のメカニズムを示す図である。 DSC測定による添加剤添加効果を示すグラフである。 膜電極接合体に配流板を組付けて燃料電池を形成する状態を示す図である。 燃料電池運転評価の結果を示すグラフである。 白金溶出移動を示すEPMAの分析結果を示す写真図である。 燃料電池運転評価後のTEM観察結果を示す写真図である。 燃料電池から取り出した水のイオン溶出量を示すグラフである。
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1について説明する。図8に例示するように、膜電極接合体10は、固体高分子型燃料電池(以下、PEFCともいう)に使用されるものであり、燃料用ガス拡散層11と、燃料用触媒層12と、プロトン伝導性をもつ電解質膜13と、酸化剤用触媒層14と、酸化剤用ガス拡散層15とが厚み方向においてこの順に積層されて形成されている。燃料用触媒層12および酸化剤用触媒層14の双方は、白金等の触媒金属がカーボンブラック等の触媒担体の表面に担持された触媒粉末と、プロトン伝導性をもつ高分子電解質材料と、ピリジン環を官能基として有する高分子鎖を架橋した高分子材料で形成された添加剤とを含む。高分子電解質材料は、高分子疎水性の主鎖に少量の親水性をもつ電解質基が導入されたプロトン導電性を有する高分子材料をいい、アイオノマーともいう。電解質基としてはスルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基、リン酸基が例示される。この高分子電解質材料の主鎖は、CF2基またはCF基をもつ炭化フッ素系ポリマーでも良いし、CH基またはCH基をもつ炭化水素系ポリマーでも良いし、両者の共重合体でも良い。従って、高分子電解質材料は、陰イオン性の官能基(スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等の電解質基)を有することが好ましい。炭化フッ素系の高分子電解質材料は、例えば、プロトン伝導性を有するパーフルオロスルホン酸ポリマー等の炭化フッ素系ポリマーを母材として形成できる。この場合、高分子電解質材料は、パーフルオロアルキレン基を主鎖骨格とし、一部にパーフルオロビニルエーテルの側鎖に、官能基としてスルホン酸基を有することが好ましい。
触媒粉末は、触媒金属を触媒担体に担持させた触媒担持カーボンで形成されている。触媒金属としては、Pt,Rh,Pd,Au,Ru,Os,Ir,Ni等のうちの少なくとも1種(触媒金属;貴金属触媒)が例示される。触媒担体としてはカーボンブラック(アセチレンブラック、ファーネスブラック、ランプブラック等を含む)、カーボンナノチューブ等の炭素微小体が例示される。
上記した事情を考慮し、添加剤は陽イオン性の官能基を有することが好ましい。この場合、高分子電解質材料に含まれる陰イオン性の官能基(スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等の電解質基)と、添加剤に含まれる陽イオン性の官能基とのイオン会合が期待でき、ひいては高分子電解質材料の熱による運動が抑制され、結果として、触媒担体に担持された触媒金属(白金)の微粒子の移動および凝集が低下するためであると考えられる。
添加剤としては、陽イオン性の官能基が高分子の主鎖に付与される高分子材料(陰イオン交換樹脂)で形成されていることが好ましい。このような主鎖同士がXで架橋されていることが好ましい。この場合、添加剤に含まれている陽イオン性の官能基が、高分子電解質材料に含まれている陰イオン性の官能基(スルホン酸基、カルボン酸基、ホスホン酸基等の電解質基)に対してイオン会合することが期待される。この場合、高分子電解質材料の熱運動を抑制させ、ひいては熱運動に起因する触媒金属の粒子の凝集が抑制される。このような添加剤に含まれている陽イオン性の官能基としては、ピリジン環が例示される。例えば、図4に示すように、陽イオン性の官能基として芳香環であるピリジン環を側鎖として有する高分子の主鎖同士をXで架橋するポリビニルピリジン構造を有する高分子材料(陰イオン交換樹脂)で形成された添加剤が例示される。ピリジン環に結合する基としては、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基が例示される。主鎖構造としては、ビニル系重合体、環状オレフィンのメタセシス重合体、ポリイソイアネートなどが例示される。ビニル系重合体としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリジエン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリスチレン等が例示される。
Xを形成する架橋剤としては、多官能ビニル化合物の共重合体が挙げられる。図5に示すように、架橋剤としては、[化1]および[化2]のうちの少なくとも1種が例示される。[化1]はジビニルベンゼンを示す。ビニルピリジンと[化1]および[化2]を共重合反応させる事で、架橋体構造を有した高分子材料が得られ、[化1]は、ジビニルベンゼンの末端のビニル基(CH2=CH−)を除いた部分がXに相当する。[化2]はエチレングリコールジメタクリレートを示す。これの末端のCH2基を除いた部分がXに相当する。
温度が作用する環境においても、高分子材料で形成されている添加剤の熱運動が架橋により抑制され、ひいてはイオン会合する高分子電解質材料(Nafion等)の熱運動が抑制され、結果として、高分子電解質材料の近傍に位置する触媒金属の微粒子の移動が抑制されるものと考えられる。このため電子顕微鏡で観察するとき、添加剤付近に存在する触媒金属の微粒子の凝集が抑制されていることが確認される。
上記した添加剤は触媒金属の微粒子の凝集を抑制させる機能を果たすが、高分子電解質材料に比較して、プロトン伝導性および導電性に乏しいため、触媒層において添加剤が過剰に添加されると、高分子電解質材料および触媒粉末の量が相対的に減少し、プロトン伝導性、導電性およびガス透過性が低下する傾向がある。しかし触媒層において添加剤が過剰に少ないと、高分子電解質材料および触媒粉末の量が確保されるものの、触媒金属の微粒子の凝集抑制効果が低下する。
そこで本実施形態においては、燃料用触媒層12および酸化剤用触媒層14のうちの双方について、高分子電解質材料の添加量としては、質量比で、触媒中の触媒担体:高分子電解質材料=1:0.1 〜 2.5の範囲、(燃料用触媒層12については、好ましくは、1:0.2 〜 1.5、の範囲、酸化剤用触媒層14については、好ましくは、1:0.5 〜 2.0)の範囲にできる。さらに、上記した添加剤の添加量としては、質量比で、触媒(触媒=触媒金属+触媒担体):添加剤=1:0.05 〜 3.0の範囲、好ましくは、0.2 〜 2.0の範囲が例示される。
プロトン伝導性の向上を考慮すると、触媒層において、質量比で、高分子電解質材料の添加量>添加剤の添加量でも良い。触媒金属の凝集抑制性を高めることを考慮すると、触媒層において、高分子電解質材料の添加量<添加剤の添加量でも良い。高分子電解質材料の添加量=(≒)添加剤の添加量でも良い。但し、高分子電解質材料の添加量は、基本的には、触媒の体積(≒触媒担体体積 ∝ 触媒担体重量)に応じて決めると考えられる。これに対して、最適な添加剤の量は、触媒金属量と高分子電解質材料の量に応じて決まると考えられる。なお、触媒粉末については、質量比で、触媒金属:触媒担体=1:(0.2 〜 10の範囲)が例示される、好ましくは、(0.3 〜 4の範囲)が例示される。
(触媒の劣化のメカニズム解明の試験例)
まず、固体高分子型燃料電池(PEFC)における触媒の劣化のメカニズムについて解明を試みた。この場合、本発明者らは、加熱時における触媒金属の熱凝集性に着目し、その影響について調べた。この場合、ケッチェンブラックからなる微小な触媒担体の表面に触媒金属(白金)を担持させた触媒粉末について、Ar等の活性ガス中でDSC測定(示差走査熱量測定)を行なった。この場合、図1に示すように、260℃付近に発熱ピークP1を示す発熱反応が観察された。この発熱ピークP1は、白金微粒子が凝集して結晶化が進行する際の反応熱に相当し、発熱ピークP1の温度の高低で触媒金属の凝集のし易さが評価可能である。まず、高温処理し高結晶化したカーボンブラックからなる触媒担体に触媒金属(白金)を担持させた触媒粉末を加熱させた。この場合には、発熱ピークP2が330℃付近に上昇し、固体高分子型燃料電池の運転温度では、触媒金属(白金)の凝集が抑制されていることが理解できる。これに対して、高分子電解質材料および触媒粉末の双方が共存する環境では、図2に示すように、触媒粉末単体で観測された260℃付近の発熱ピークP1は消失し、140℃付近に新たな発熱ピークP3が観測された。これは、高分子電解質材料が存在する環境では、固体高分子型燃料電池(PEFC)の運転温度において触媒金属(白金)の凝集が非常に起こりやすくなっていることを意味する。このようにDSCの測定では、アイオノマーの共存下での触媒金属の凝集による発熱ピークP3は、140℃付近にある。
ここで、PEFCの通常の運転温度に相当する80℃において大気中で1000時間保持する試験を行った。この場合には、表1に示すように、触媒粉末単体のみで保持した場合には、初期および1000時間経過後において、触媒金属(白金)の粒径は殆ど変わらなかった。これに対して、触媒粉末および高分子電解質材料を共存させた場合には、表1に示すように、触媒金属の微粒子の粒径は初期では4.34ナノメートルであったが、1000時間保持したときには、6.53ナノメートル(6.53/4.34≒1.5,50%増加)となり、触媒金属の微粒子が凝集成長していることが確認された。このことから、触媒粉末および高分子電解質材料の双方の共存下においては、熱による触媒金属の凝集は、PEFCの通常運転の環境下においても充分に発生する可能性があることが判明した。そのため、本発明者らは、まず、触媒粉末および高分子電解質材料を共存させた環境において熱に起因する触媒金属の凝集を抑制させる技術が必要であると考えた。
図1に示すように、触媒粉末の単体の場合には、触媒金属の粒径は比較的高温まで安定である。しかし、フッ素系の高分子電解質材料のうち代表的なNafionのガラス転移温度Tgは100℃付近(103℃,文献:Yeo, S. C., and A. Eisenberg. J. Appl. Polym. Sci. 21(4) 875(1977))であると報告されている。これを考慮すると、触媒粉末が高分子電解質材料と共存する場合には、100℃を超えた温度領域では、高分子電解質材料の熱運動が活発になることが考えられる。そのため、燃料電池(PEFC)の発電運転が長期にわたると、熱に起因する高分子電解質材料の分子運動に起因して触媒金属(白金)の微粒子が移動させられ、次第に凝集すると推定される。
本発明者らは、以上のような触媒の劣化のメカニズムを推定し、鋭意努力をもって検討を積み重ね、上記した添加剤を高分子電解質材料および触媒粉末と共に触媒層に添加することにより、熱に起因する触媒金属の微粒子の凝集を阻害できることを見出した。その例として、本発明者らは、図4に示したような陽イオン性の官能基として機能するピリジン環を架橋した架橋ポリビニルピリジン系の陰イオン交換樹脂(CR-2,住友ケムテックス社製)を添加剤として用いた。この場合、架橋剤としてはジビニルベンゼンが用いられ、Xはベンゼン環とされている。そして、触媒粉末と高分子電解質材料との混合物に上記した添加剤を添加することにより、触媒金属の微粒子の熱凝集を低下させることに成功した。そのメカニズムとして、上記した添加剤を添加することにより、図6に示すように、高分子電解質材料に含まれる陰イオン性の官能基(スルホン基,SO3 -)の一部が、添加剤に含まれる陽イオン性の官能基(ピリジン環)とイオン会合し、拘束され、高分子電解質材料を構成する分子の熱運動性が低下し、結果として、担体に担持された触媒金属(白金)の微粒子の移動および凝集が低下するためであると考えられる。
図7は、触媒粉末および高分子電解質材料が共存している混合物に、陰イオン交換樹脂の添加剤を添加させて触媒層を作製し、熱に起因する凝集性をDSCにより評価した試験結果を示す。この場合、質量比で、触媒粉末を1と相対表示したとき、添加剤の添加量を0〜1.5の範囲内で変更させた。この場合、触媒粉末中の触媒担体であるカーボンを1と相対表示したとき、質量比で、高分子電解質材料(Nafion,登録商標)については、1.2とした。
図7に示すように、触媒粉末および高分子電解質材料の共存によって、発熱ピークPa(触媒金属の凝集に相当)の温度はいったん140℃付近に低下する(○印)。しかし図7に示すように、上記した添加剤の添加量が増加するに伴って、触媒粉末および高分子電解質材料の共存によって一旦低下した発熱ピーク(触媒金属の凝集に相当)の温度は、Pb,Pc,Pd等のように次第に高温側に移動することが判った。すなわち、触媒粉末を1と相対表示した場合、添加剤の添加量を0.2〜1.5にしたときには、発熱ピークPb,Pc,Pdは150℃を超えて160℃〜190℃付近となる。このことは、触媒粉末および高分子電解質材料との共存下において、添加剤の添加によって触媒金属の微粒子の凝集性が低下したことを意味している。なお、図7において、添加剤の添加により260℃付近に吸熱ピークPk,Pm,Pnが新たに現れた。吸熱ピークPk,Pm,Pnは、添加剤の熱分解ピークに相当する。吸熱ピークPk,Pm,Pnについては、添加剤の熱分解の開始温度が220℃付近であることから、通常のPEFC環境での使用は問題がないと考えられる。
DSC評価後に触媒金属(白金)の微粒子の粒径の変化を測定した。測定結果を表2に示す。表2に示すように、触媒粉末および高分子電解質材料(アイオノマーともいう)が共存されている場合には、触媒金属(白金)の粒径は初期では3.98ナノメートルであったが、250℃加熱した後には6.28ナノメートル(6.28/3.98≒1.58,58%増加)となり、粒径が凝集成長していた。これに対して、触媒粉末、高分子電解質材料および添加剤が共存されている場合には、表2に示すように、触媒金属(白金)の微粒子の粒径は初期では3.82ナノメートルであったが、250℃に加熱した後においても4.82ナノメートル(4.82/3.82≒1.26,26%増加)であり、触媒金属の微粒子の凝集成長が添加剤により抑制されていることが確認された。このことから、触媒粉末および高分子電解質材料の共存下において上記した添加剤を添加することは、熱による触媒金属の微粒子の凝集成長を抑制させるのに有効であることが判明した。なお、表2に示す場合、触媒粉末については、質量比で、触媒金属:触媒担体=1:0.43とされていた。高分子電解質材料については、質量比で、触媒担体:高分子電解質材料(ナフィオン)の固形分=1:1.2とされていた。添加剤については、質量比で、触媒粉末:添加剤=1:1とされていた。
更に、添加剤を触媒層に添加することにより、触媒金属の微粒子の移動および凝集を抑制できる効果の他に、添加剤は遊離の酸やフッ素イオンを補足する性質も有しているため、触媒層における電解質材料や電解質膜が仮に劣化したとしても、遊離の酸やフッ素イオンがMEAの外部に出ることが抑制され、外部の金属配管等の金属部分を腐食させない効果が期待できる。このように機能する陰イオン交換樹脂として、4級アンモニウム型、3級、2級アミン型等のイオン交換樹脂のも考えられるが、これらの材料は、通常、耐熱温度が低いため、燃料電池(PTFC)の運転環境温度には適さない。
(燃料電池(PTFC)の耐久性評価)
次に、実際の燃料電池の運転環境においても、耐久性向上の効果が確認されることを以下の実施例および比較例により示す。
[1]燃料電池(PTFC)の運転環境における耐久性評価について以下述べる。
(1)触媒層の試験片の作製
[比較例の試験片]
(i)ケッチェンブラックの触媒担体に白金が担持された触媒粉末(田中貴金属製:TEC 10E70TPM)と、5mass%の高分子電解質溶解溶液(旭化成製:Aciplex)と、イソプロピルアルコール(iPA)と、水とを、質量比で、1:7:1:1で混合して混合物を形成した。混合物をディスパーを用いて分散させて触媒ペーストを形成させた。なお、質量比で、触媒担体:高分子電解質=1:約1.2とされていた。
(ii)ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムの表面に上記触媒ペーストをアプリケータを用いてキャステイングし、室温で一昼夜乾燥させた。これにより比較例に係る触媒層シートを作製した。
[実施例の試験片]
(i)比較例で示した(i)の手順と同様に、触媒粉末(田中貴金属製:TEC 10E70TPM)と高分子電解質溶解溶液(旭化成製:Aciplex)を混合して分散させた触媒ペーストを作製した。すなわち、触媒粉末と、高分子電解質溶解溶液(5mass%)と、イソプロピルアルコール(iPA)と、水と、質量比で、1:7:1:1で混合して混合物を形成した。混合物をディスパーを用いて分散させて実施例に係る触媒ペーストを形成させた。
(ii)陰イオン交換樹脂で形成された添加剤、即ち、ジビニルベンゼンを架橋剤として含むポリ-4-ビニルピリジン(住友ケムテックス製:CR-2)粉末で形成された添加剤をメノウ乳鉢で粉砕させて粉砕物(平均粒径 = 88μm)を形成させた。上記触媒粉末1部に対して、質量部で粉砕物を1部秤量した。秤量した粉砕物(添加物)を上記触媒ペーストに添加し、再度、混合、分散し、添加剤添加触媒ペーストを形成させた。この場合、質量比で、触媒金属:触媒担体=1:0.43であり、触媒担体:高分子電解質材料の固形分=1:1.2であり、触媒粉末:添加剤=1:1であった。
(iii)添加剤添加触媒ペーストをPTFEフィルムの表面にアプリケータを用いてキャステイングして塗り、室温で一昼夜乾燥させた。これにより実施例に係る添加剤添加触媒層シートを作製した
(2)ガス拡散層の作製
(i)カーボンブラック(CB)(キャボット社製:Valcan XC-72R)と、PTFEディスパージョン(ダイキン製:D1E)とを混合して撥水化CBペーストを作製した。この場合、カーボンブラックとPTFEとの質量比率を1:1とした。
(ii) その撥水化CBペーストを市販のカーボンペーパー(東レ製:TGP-H60)に、デッピング法により浸漬した。これによりカーボンペーパー内に撥水化CBペーストを含浸させた。
(iii)撥水化CBペーストを含浸させたカーボンペーパーを、室温で乾燥させた後、大気中、380℃で1時間熱処理した。これにより撥水化CBペーストをカーボンペーパーに定着させ、ガス拡散層(GDL)を形成させた。
(3)MEA(膜電極接合体)の作製手順
(i)上記したように作製した実施例に係る触媒層シートを直径36mm(S =10 cm2)に切り抜き、切抜片を形成した。同様に、比較例に係る添加剤添加触媒層シートを同様に切り抜き、切抜片を形成した。
(ii)転写法(デカール法)を用いて、高分子電解質膜13(DuPont製:Nafion 112,厚み:50マイクロメートル)の両面に、実施例に係る触媒層シートの切抜片(添加剤添加)をホットプレスを用いて転写した。これにより燃料用触媒層12および酸化剤用触媒層14を形成させた。これにより実施例に係る触媒コート電解質膜16(CCM,図8参照)を作製した。
同様に、転写法(デカール法)を用いて、高分子電解質膜(DuPont製:Nafion 112)の両面に、比較例に係る触媒層シートの切抜片(添加剤の添加無し)をアノード触媒層(燃料用触媒層)およびカソード触媒層(酸化剤用触媒層)として、ホットプレスを用いて転写した。これにより比較例に係る触媒コート電解質膜(CCM)を作製した。
(iii)ガス拡散層を直径36mm(S=10 cm2)に切り抜いた。切り抜いたガス拡散層11,15を触媒コート電解質膜16(CCM)の両面に、ホットプレス法により接合した。これにより実施例に係る膜電極接合体10(MEA)を形成した。比較例についても同様に実施し、比較例に係る膜電極接合体(MEA)を形成した。
図8に示すように、膜電極接合体(MEA)10は、燃料用拡散層11と、燃料用触媒層12と、プロトン伝導性をもつ電解質膜13と、酸化剤用触媒層14と、酸化剤用拡散層15とがこの順に積層されて形成されている。燃料用触媒層12および酸化剤用触媒層14は、カーボンブラック等の触媒担体に触媒が担持された触媒粉末と、プロトン伝導性をもつ高分子電解質材料(ナフィオン)と、ピリジン環を架橋剤で架橋して形成された上記した陰イオン交換樹脂で形成された添加剤とを含む。この場合、質量比で、触媒金属:触媒担体=1:0.43とされており、触媒担体:高分子電解質材料(ナフィオン)の固形分=1:1.2とされており、触媒粉末:添加剤=1:1とされていた。
(4)燃料電池の耐久性評価について
(i)作製したMEAを燃料電池の評価用のセルに組み込んだ。図8に示すように、セルは、膜電極接合体10をこれの厚み方向において燃料ガス用の配流板31および酸化剤ガス(空気)用の配流板32で挟むことにより形成される。セルの内部に窒素ガスを供給して窒素ガスでパージし、残留空気を除去させた。
(ii)セル温度を80℃に昇温保持させた。その後、アノード(燃料極)に、0.1MPaの加湿(露点温度 70℃)純水素(300 CCM)を流した。同様にカソード(酸化剤極)に、0.1MPaの加湿(露点温度 70℃)空気(1.2 LM)流した。
(iii)セルの開回路電圧(OCV)が1Vを超えたことを確認した後、安定した電池出力を得るために、セル温度、アノード及びカソードのガス流量、加湿量を保持したまま、定電位電源(ポテンショスタット)を用いて、0.2Vの定電圧で、一昼夜保持することで、慣らし運転を行った。
(iv)ガス流量についてアノードガス(燃料ガス)30 CCM(利用率:70%)、カソード ガス(空気)125 CCM(利用率:40%)に低下させ、負荷電源装置を用いて、0.3 A/cm2の電流密度の定電流運転を770〜860時間行い、セル電圧の経時変化を記録した。また、発電運転中においてセルのアノードから排出されたアノードオフガスと、セルのカソードから排出されたカソードオフガスとをそれぞれ、コンデンサーにて冷却(5℃)し、加湿水と発電による生成水とを採取した。
更に、上記したように燃料電池の運転耐久評価後(運転時間:770〜860時間)に、触媒金属(白金)の微粒子の粒径の変化を測定した。測定結果を表3に示す。表3に示すように、触媒粉末および高分子電解質材料で保持した場合には、初期では、触媒金属(白金)の粒径は3.98ナノメートルであったが、燃料電池耐久評価後には5.22ナノメートルとなり、粒径が凝集成長していた。これに対して、触媒粉末、高分子電解質材料および添加剤を共存させた場合には、表3に示すように、触媒金属(白金)の粒径は初期では3.82ナノメートルであったが、燃料電池耐久評価後には4.72ナノメートルであり、触媒金属の微粒子の凝集成長が添加剤により抑制されていることが確認された。このことから、触媒粉末および高分子電解質材料の共存下において上記した添加剤を添加することは、熱による触媒金属の凝集成長を抑制させるのに有効であることが判明した。
上記したDSC(示差走査熱量測定)は次のように実施した。
(1)DSC用試験片の作製方法
・触媒粉末単体を保持するものの高分子電解質材料および添加剤を保持しない試験片(表1参照)については、ケッチェンブラック上に白金が担持された触媒粉末(田中貴金属製:TEC10 E70TPM)を用いた。更に、高温熱処理により高結晶化したカーボンブラック(CB)上に担持された触媒粉末(田中貴金属製:TEC10 EA70TPM)を用いた。
・触媒粉末および高分子電解質材料が共存した試験片(表2参照)については、上記したように作製した比較例に係る触媒層シートをミクロスパーテルを用いて、触媒層を掻き取り、それを粉末状にしてDSC用試験片として用いた。
・触媒粉末、高分子電解質材料の他に、陰イオン交換樹脂(CR-2粉末)で形成された添加剤が添加された試験片(表3参照)については、上記した実施例に係る触媒層シートをミクロスパーテルを用いて、触媒層を掻き取り、それを粉末状にしてDSC用試験片として用いた。
(2)DECの評価手順について
(i)DSC測定用のアルミパン中に、上記のDEC用試験片を約6mg入れ、正確に秤量した。
(ii)DEC用試験片をいれたアルミパンをDSC(DSC 8230:リガク製)の試験片室内に設置した。アルゴンガスを加熱容器内にフローしながら、試験片を室温から80℃まで、素早く加熱させた。DEC用試験片を80℃で5分間保持し、10℃/minの昇温速度で400℃まで昇温させ、熱流変化を記録した。
(3)効果の確認
(3−1)耐久性評価試験の結果(セル電圧の変化)
図9は、耐久評価における燃料電池の出力電圧の経時変化を示す。■で示すように、比較例に係る燃料電池(添加剤無し)では、最初出力が高いものの、出力電圧が次第に大きく低下した。これは、触媒や電解質の分解または劣化が発生していることを示すものと考えられる。一方、○で示すように、実施例(添加剤を含有)の場合には、出力電圧の低下は非常に小さいことが判る。
(3−2)白金溶出・移動の観察
比較例(添加剤無し)及び実施例(添加剤添加)について、燃料電池の耐久評価後にMEAを厚み方向に沿って切断した。その切断片についてEPMAを用いて、MEAの中央部断面の白金元素のマッピング分析を行った。その結果、図10に示すように、比較例(添加剤無し)のMEAについては、アノード触媒層(燃料用触媒層)およびカソード触媒層(酸化剤用触媒層)から電解質膜内に、触媒金属(白金)が移動していることが確認された。これに対して実施例(添加剤添加)のMEAについては、電解質膜への移動はほとんど確認できなかった。
(3−3)白金成長の観察
図11は、比較例(添加剤無し)及び実施例(添加剤添加)の触媒層についてTEM観察した結果を示す。図11に示すように、比較例では白金が粗大化している箇所が多く見られた。しかし実施例では、白金の粗大化が抑制されていることが確認された。特に実施例では、電子顕微鏡で観察するとき、添加剤付近に存在する触媒金属(白金)の微粒子の凝集が抑制されていることが確認された。
(3−4)フッ素溶出量の測定結果
燃料電池の耐久評価中に、燃料電池のアノード(燃料極)及びカソード(酸化剤極)からセル外に排出される水を採取した。水は加湿水と発電による生成水とが混合したものである。そして水に含まれるフッ素イオン濃度の経時変化をイオンクロマトグラフィーを用いて、フッ素溶出量を測定した。その結果、図12に示すように、比較例(添加剤無し)よりも、実施例(添加剤添加)では、アノード(燃料極)およびカソード(酸化剤極)共に水におけるフッ素イオン濃度が低下していることが判る。このことは、実施例(添加剤添加)の場合には、パーフルオロ系高分子電解質(膜及び高分子電解質材料)の分解が低下したこと、または、分解生成物であるフッ素イオンが陰イオン交換樹脂による補足されたことを示すと考えられる。
(他の実施形態)
他の実施形態について説明する。本実施形態は前記した実施形態と基本的には同様の構成、同様の作用効果を有するため、図8を準用する。本実施形態においても、燃料用触媒層12は、触媒粉末、高分子電解質材料および添加剤を含む燃料用組成物を基材として形成されている。酸化剤用触媒層14は、触媒粉末、高分子電解質材料および添加剤を含む酸化剤用組成物を基材として形成されている。質量比で、燃料用組成物における添加剤の添加量をMa%とし、酸化剤用組成物における添加剤の添加量をMc%とする。本実施形態では、Mc%はMa%よりも多くされている(Mc%>Ma%)ことが好ましい。Mc/Maとしては、1.01〜2.0の範囲、1.05〜1.5の範囲、1.1〜1.3の範囲が例示される。単位体積あたり、質量比で、燃料用組成物における添加剤の添加量(mg)よりも、酸化剤用組成物における添加剤の添加量(mg)は大きくすることが好ましい。但しこれらに限定されるものではない。ここで、発電運転において、カソードである酸化剤極の電位は、アノードである燃料極の電位よりも高い。このため、酸化剤用触媒層14に含まれる白金等の触媒が溶出し、粒径が増加し易いと考えられるためである。
場合によっては、燃料用触媒層12を形成する燃料用組成物における添加剤の添加量を無しとすることもできる。この場合、酸化剤用触媒層14を形成する酸化剤用組成物についてのみ添加剤を添加する。この場合、燃料用触媒層12における高分子電解質材料および/または触媒粉末の割合が相対的に増加できるため、燃料用触媒層12におけるプロトン伝導性および/または触媒活性が期待できる。
(その他)本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。本明細書の記載から次の技術的思想が把握される。
[付記項1]燃料用拡散層と、燃料用触媒層と、プロトン伝導性をもつ電解質膜と、酸化剤用触媒層と、酸化剤用拡散層とが厚み方向においてこの順に積層された構造をもつ固体高分子型燃料電池用膜電極接合体であって、燃料用触媒層および酸化剤用触媒層のうちの少なくとも一方は、触媒金属が触媒担体に担持された触媒粉末と、プロトン伝導性をもつ高分子電解質材料と、触媒金属の粒子の凝集を抑制させる添加剤とを含む固体高分子型燃料電池用膜電極接合体。触媒の粒子の凝集が抑制される。
10は膜電極接合体、11は燃料用拡散層、12は燃料用触媒層、13は電解質膜、14は酸化剤用触媒層、15は酸化剤用拡散層を示す。

Claims (4)

  1. 燃料用拡散層と、燃料用触媒層と、プロトン伝導性をもつ電解質膜と、酸化剤用触媒層と、酸化剤用拡散層とが厚み方向においてこの順に積層された構造をもつ固体高分子型燃料電池用膜電極接合体であって、
    前記燃料用触媒層および前記酸化剤用触媒層のうちの少なくとも一方は、触媒が触媒担体に担持された触媒担持カーボンで形成された触媒粉末と、プロトン伝導性をもつ高分子電解質材料と、ピリジン環を官能基として有する高分子鎖を架橋した高分子材料で形成された添加剤とを含む固体高分子型燃料電池用膜電極接合体。
  2. 請求項1において、前記燃料用触媒層および前記酸化剤用触媒層のうちの少なくとも一方について、前記一方の触媒層を構成する組成物において、前記触媒が前記触媒担体に担持された触媒担持カーボンで形成された前記触媒粉末を1と相対表示するとき、前記添加剤の添加量は質量比で0.05〜3.0の範囲である固体高分子型燃料電池用膜電極接合体。
  3. 請求項1または2において、前記燃料用触媒層および前記酸化剤用触媒層のうちの少なくとも一方について、前記一方の前記触媒層を構成する組成物において、前記触媒が前記触媒担体に担持された前記触媒粉末を1と相対表示するとき、前記高分子電解質材料の添加量は質量比で0.1〜2.5の範囲である固体高分子型燃料電池用膜電極接合体。
  4. 請求項1〜3のうちの一項において、前記高分子電解質材料は陰イオン性の官能基を有しており、前記添加剤は陽イオン性の官能基としてピリジン環を有しており、前記添加剤は、前記高分子電解質材料とイオン会合することにより前記高分子電解質材料の熱運動を抑制させる固体高分子型燃料電池用膜電極接合体。
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