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JP2011249148A - 燃料電池用セパレータ材料、それを用いた燃料電池用セパレータ及び燃料電池スタック、並びに燃料電池用セパレータ材料の製造方法 - Google Patents

燃料電池用セパレータ材料、それを用いた燃料電池用セパレータ及び燃料電池スタック、並びに燃料電池用セパレータ材料の製造方法 Download PDF

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JP2011249148A
JP2011249148A JP2010121180A JP2010121180A JP2011249148A JP 2011249148 A JP2011249148 A JP 2011249148A JP 2010121180 A JP2010121180 A JP 2010121180A JP 2010121180 A JP2010121180 A JP 2010121180A JP 2011249148 A JP2011249148 A JP 2011249148A
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Yoshitaka Shibuya
義孝 澁谷
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JX Nippon Mining and Metals Corp
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Abstract

【課題】ステンレス鋼基材表面にAuを含む層を強固かつ均一に形成可能で、燃料電池用セパレータに要求される密着性及び耐食性を確保できる燃料電池用セパレータ材料を提供する。
【解決手段】ステンレス鋼基材2の表面にAuとCrとを含む表面層6が形成され、表面層6とステンレス鋼基材2との間に、Crを20原子%以上含み、Oを20原子%以上50原子%未満含む中間層2aが1nm以上存在し、、Crを50原子%以上含む金属層が存在せず、Auの付着量が4000ng/cm以上であり、厚み方向のXPS分析により原子%でAu<Cr、かつFeが20原子%未満の領域において、原子%でO≧Cr×0.75の燃料電池用セパレータ材料である。
【選択図】図2

Description

本発明は、表面にAu又はAu合金(Auを含む層)が形成された燃料電池用セパレータ材料、それを用いた燃料電池用セパレータ、及び燃料電池スタックに関する。
固体高分子型の燃料電池用セパレータは電気伝導性を有し、各単セルを電気的に接続し、各単セルで発生したエネルギー(電気)を集電すると共に、各単セルへ供給する燃料ガス(燃料液体)や空気(酸素)の流路が形成されている。このセパレータは、インターコネクタ、バイポーラプレート、集電体とも称される。
このような燃料電池用セパレータとして、従来はカーボン板にガス流通路を形成したものが使用されていたが、材料コストや加工コストが大きいという問題がある。一方、カーボン板の代わりに金属板を用いる場合、高温で酸化性の雰囲気に曝されるために腐食や溶出が問題となる。このようなことから、ステンレス鋼板の表面にAu,Ru、Rh、Cr、Os、Ir及びPt等から選ばれる貴金属とAuとの合金をスパッタ成膜して導電部分を形成する技術が知られている(特許文献1)。
一方、ステンレス鋼基材の酸化被膜の上に、Ti,Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W等からなる中間層を介してAu膜を形成する燃料電池用セパレータが知られている(特許文献2)。この中間層は、基材酸化膜との密着性、すなわちO(酸素原子)との結合性が良いとともに、金属または半金属のためにAu膜との密着性、結合性が良いとされている。
又、ステンレス鋼板の表面に、下地処理を施さずに酸性浴にて金めっきを施す燃料電池用金属製セパレータが報告されている(特許文献3)。
又、固体高分子型燃料電池において、アノードに供給する燃料ガスとして、取扱いが容易なメタノールを使用するダイレクトメタノール型燃料電池(DMFC(direct methanol fuel cell))も開発されている。DMFCは、メタノールから直接エネルギー(電気)を取り出すことができるため、改質器などが不要で燃料電池の小型化に対応でき、携帯機器の電源としても有望視されている。
DMFCの構造としては、以下の2つが提案されている。まず第1の構造は、単セル(固体高分子型電解質膜を燃料極と酸素極で挟み込んだ膜電極接合体(以下、MEAという)を積層した積層型(アクティブ型)構造である。第2の構造は、単セルを平面方向に複数個配置した平面型(パッシブ型)構造である。これらの構造は、いずれも単セルを複数個直列に繋いだもの(以下、スタックという)であるが、このうち、パッシブ型構造は、燃料ガス(燃料液体)や空気などをセル内に供給するための能動的な燃料移送手段を必要としないため、更なる燃料電池の小型化が有望視されている。
特開2001−297777号公報 特開2004−185998号公報 特開2004−296381号公報
しかしながら、上記した特許文献1記載の技術の場合、密着性の良いAu合金膜を得るためには、基材表面の酸化皮膜を取り除く処理が必要であり、酸化被膜の除去が不充分な場合は貴金属膜の密着性が低下するという問題がある。
又、特許文献2に記載されているように単に中間層を設けるだけでは、十分な密着性、及び燃料電池のセパレータとして必要な耐食性や耐久性が得られない。特に、コスト低減を図るためにAuの厚みを薄くした場合に耐食性が得られないことがある。
一方、特許文献3記載の技術の場合、湿式の金めっきの電着形状が粒状であるため、金めっきの付着量が少ないと基材表面の一部に非めっき部分となる部分が生じる。そのため、基材表面全体を均一に金めっきするためには、Auの付着量を多くする必要がある。
すなわち、本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、ステンレス鋼基材表面にAuを含む高耐食性の導電性膜を高い密着性で成膜することができ、燃料電池作動環境下でも高い耐久性を有する燃料電池用セパレータ材料、それを用いた燃料電池用セパレータ及び燃料電池スタック、並びに燃料電池用セパレータ材料の製造方法の提供を目的とする。
本発明者らは種々検討した結果、ステンレス鋼基材表面にAuとCrを含む表面層を形成させ、ステンレス鋼基材と表面層との間にOとCrを含む中間層を形成させ、さらにAu濃度が比較的高い領域を所定厚み形成させることで、Auを含む層をステンレス鋼上に強固かつ均一に形成可能であり、燃料電池用セパレータに要求される耐食性や耐久性も確保できることを見出した。
上記の目的を達成するために、本発明の燃料電池用セパレータ材料は、ステンレス鋼基材の表面にAuとCrとを含む表面層が形成され、前記表面層と前記ステンレス鋼基材との間に、Crを20原子%以上含み、Oを20原子%以上50原子%未満含む中間層が1nm以上存在し、Crを50原子%以上含む金属層が存在せず、Auの付着量が4000ng/cm以上であり、厚み方向のXPS分析により原子%でAu<Cr、かつFeが20原子%未満の領域において、原子%でO≧Cr×0.75である。
厚み方向のXPS分析によりAuが20原子%以上又はCrが20原子%以上の領域が3nm以上存在することが好ましい。
本発明の燃料電池用セパレータ材料は、固体高分子形燃料電池又はダイレクトメタノール型固体高分子形燃料電池に好適に用いられる。
本発明の燃料電池用セパレータは、前記燃料電池用セパレータ材料を用い、前記ステンレス鋼基材に予めプレス加工による反応ガス流路及び/又は反応液体流路を形成した後、前記表面層を形成して成る。
また、本発明の燃料電池用セパレータは、前記燃料電池用セパレータ材料を用い、前記ステンレス鋼基材に前記表面層を形成した後、プレス加工による反応ガス流路及び/又は反応液体流路を形成して成る。
本発明の燃料電池スタックは、前記燃料電池用セパレータ材料、又は前記燃料電池用セパレータを用いたものである。
本発明の燃料電池用セパレータ材料の製造方法は、前記燃料電池用セパレータ材料の製造方法であって、前記ステンレス鋼基材の表面に、前記Crを乾式成膜した後、Auを乾式成膜する。
(Auの厚み/Crの厚み)を3以上とすることが好ましい。
前記乾式成膜がスパッタリングであることが好ましい。
本発明によれば、Auを含む層をステンレス鋼上に強固かつ均一に形成させることができ、燃料電池用セパレータに要求される密着性、耐食性を確保できる。
本発明の実施形態に係る燃料電池用セパレータ材料の構成を示す模式図である。 実施例4の燃料電池用セパレータ材料の断面のXPS分析結果を示す図である。 比較例12の燃料電池用セパレータ材料の断面のXPS分析結果を示す図である。
以下、本発明の実施形態に係る燃料電池用セパレータ材料について説明する。なお、本発明において%とは、特に断らない限り、原子(at)%を示すものとする。
又、本発明において「燃料電池用セパレータ」とは、電気伝導性を有し、各単セルを電気的に接続し、各単セルで発生したエネルギー(電気)を集電すると共に、各単セルへ供給する燃料ガス(燃料液体)や空気(酸素)の流路が形成されたものをいう。セパレータは、インターコネクタ、バイポーラプレート、集電体とも称される。
従って、詳しくは後述するが、燃料電池用セパレータとして、板状の基材表面に凹凸状の流路を設けたセパレータの他、上記したパッシブ型DMFC用セパレータのように板状の基材表面にガスやメタノールの流路孔が開口したセパレータを含む。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る燃料電池用セパレータ材料は、ステンレス鋼基材2の表面に中間層2aが形成され、中間層2aの表面に表面層6が形成されてなる。
<ステンレス鋼基材>
燃料電池用セパレータ材料は耐食性と導電性が要求され、基材には耐食性が求められる。このため基材には耐食性が良好なステンレス鋼を用いる。
ステンレス鋼材2の材質は、ステンレス鋼であれば特に制限されないが、高耐食性のステンレス鋼が望ましく、高耐食性ステンレス鋼の多くは、CrまたはNi濃度が高いものが多い(例:SUS316)。又、ステンレス鋼基材2の形状も特に制限されず、Cr及び金をスパッタできる形状であればよいが、セパレータ形状にプレス成形することを考えると、ステンレス鋼基材の形状は板材であることが好ましく、ステンレス鋼基材全体の厚みが50μm以上の板材であることが好ましい。
中間層2aに含まれるO(酸素)は、ステンレス鋼基材2を空気中に放置したり、スパッタによりステンレス鋼基材2表面に被膜を形成する際に真空中に放置することにより自然に形成されるが、酸化雰囲気で積極的にOをステンレス鋼基材2表面に形成させてもよい。
<表面層>
ステンレス鋼基材2上に、CrとAuとを含む表面層6が形成される。この表面層は、ステンレス鋼基材にAuの特性(耐食性、導電性等)や耐水素脆性を付与するためのものである。
Crは、a)酸素と結合しやすい、b)Auと合金を構成する、c)水素を吸収し難い、という性質を有しており、表面層に上記した機能を付与するとともに、中間層を形成して表面層とステンレス鋼基材との密着性を向上させる。
又、Crが電位-pH図からAuより易酸化性であり、また水素を吸収しにくい特性を利用し、Crを以下の中間層の構成元素として用いる。
表面層は、後述するXPS分析により確認することができ、XPS分析により最表面から下層に向かってAuとCrを含む部分であって、以下の中間層より上層に位置しAu20%以上の部分を表面層とする。表面層と後述する中間層の合計厚みは3〜20nmであることが好ましい。表面層と中間層の合計厚みが3nm未満であると、ステンレス鋼基材上に燃料電池用セパレータに要求される耐食性を確保できなくなる場合がある。表面層と中間層の合計厚みがより好ましくは5nm以上、さらには好ましくは7nm以上である。
表面層の厚みが100nmを超えると省金化が図られずコストアップとなる場合がある。
なお、表面層6の最表面部分にAu単独層が形成されていてもよい。Au単独層は、XPS分析によりAuの濃度がほぼ100%の部分である。
<中間層>
表面層(又はAu単独層)6とステンレス鋼基材2との間に、Crを20原子%以上含み、Oを20原子%以上50原子%未満含む中間層2aが1nm以上存在する。
燃料電池用セパレータ材に導電性を付与するためステンレス鋼基材の上にAuを形成させようとしても、ステンレス鋼基材は表面に酸化層を有しているため、酸化され難いAu(含有)層をステンレス鋼表面に直接形成させるのは難しい。そこで、ステンレス鋼基材の表面酸化膜を適度に除去し、基材表面のクリーニングを目的として逆スパッタ(イオンエッチング)を行うことが考えられるが、特にCr濃度の高いステンレス鋼は表面の酸化層が厚いため、酸化膜の除去に時間を要したり、酸化膜が十分に除去できない場合がある。
又、上記特許文献2に記載されているように、中間層として単にTi,Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W等を形成しても、燃料電池のセパレータとして十分な密着性、導電性、及び耐食性が得られない。
ここで、中間層がCrを含む場合、耐食性が低下することがある。つまり、Auの厚みに対してCrの厚みが必要以上に厚い場合、表面層の表面にCrが露出し,塩素含有腐食液での耐食性試験において試験後の接触抵抗が増加し,Crの溶出も比較的多くなる。一方、Auの厚みを厚くすれば表面層の表面へのCrの露出を抑制できるが、Auは高価な金属であるため、Auを厚くする方法は現実的でない。又、Crの厚みを極端に薄くすると、密着性の良い表面層が得られないという問題がある。
このようなことから、本発明では、Crを20原子%以上含み、Oを20原子%以上50原子%未満含む中間層2aを形成させる。Crは、a)酸素と結合しやすい、b)Auと合金を構成する、c)水素を吸収し難い、という性質を有しており、中間層の構成元素として好適である。又、CrはAuに比べて酸化され易く、ステンレス鋼基材の表面でO原子と酸化物を形成し、ステンレス鋼基材表面に強固に結合するものと考えられる。そして、中間層のCr及びOの濃度を規定することにより、導電性と耐久性が良好なセパレータ材を提供できる。
中間層2aのCrが20原子%未満であると、上記したCrの性質が発揮されない。中間層2aのOが20原子%未満であると耐食性が劣り、中間層2aからCrが溶出して接触抵抗も増加する。一方、中間層2aのOが50原子%を超えるとAuの密着性が低下し、導電性が劣化する。
又、中間層2aが1nm以上の厚みで存在することが必要である。中間層が1nm未満の場合には,Crが薄く,ステンレス鋼基材とAuが接する部分が多くなるため、表面層の密着性が劣化する。
中間層のCrを20原子%以上とし、Oを20質量%以上50質量%未満に制御する方法としては、Crを含むターゲットを用いた乾式めっき(スパッタ)を行い、ステンレス鋼表面に存在するOの濃度に合わせてCrのスパッタ量(付着量)やスパッタ条件を調整することが挙げられる。たとえば、スパッタは、スパッタ粒子のエネルギーが大きく、ステンレス鋼表面の酸化皮膜を取り除かなくても、Oと結合する金属であれば密着性の良い成膜が行える。そしてもともと基材表面にあるOや、真空引き後にスパッタ成膜室内に存在するOが、スパッタで成膜したCrと結合することで、表面層の密着性、導電性及び耐食性が良好になる。
なお、Crが50原子%以上となる厚み部分(この部分を適宜、「金属層」と称する)が存在すると、後述の条件2での耐食性試験後のCrの溶出量が多くなり、被膜の耐食性が劣る。従って、Crが50原子%以上となる金属層(厚み部分)が存在しないことが好ましい。金属層の厚みはXPS(X線光電子分光)分析により測定できる。又、Crを50原子%以上含む金属層を形成させない方法としては、ステンレス鋼基材上に形成するAuの割合をCrより多くすることが挙げられる。
ここで、XPS(X線光電子分光)分析による深さ(Depth)プロファイルを測定し、Au,O,Cr,Fe,Niの濃度分析を行ってスパッタ層の層構造を決定することができる。なお、XPSによる濃度検出は、指定元素(Au,O,Cr,Fe,Ni)の合計を100%として、各元素の濃度を分析する。又、XPS分析で厚み方向に1nmの距離とは、XPS分析によるチャートの横軸の距離(SiO換算での距離)である。
本発明の燃料電池用セパレータ材料において、Auの付着量が4000ng/cm以上である必要がある。Auの付着量が4000ng/cm未満であると、燃料電池用セパレータに要求される導電性、耐食性を確保できなくなり、接触抵抗が高くなる。なお、省金化の点からAuの付着量が40000ng/cm以下、更に好ましくは20000ng/cm以下にすることが好ましい。
又、本発明の燃料電池用セパレータ材料において、厚み方向のXPS分析により原子%でAu<Cr、かつFeが20原子%未満の領域(以下、この領域を適宜「領域R」と証する)において、原子%でO≧Cr×0.75である必要がある。ここで、Au<Cr、かつFeが20原子%未満の領域は、Auに比べてCrが多いので表面層の最表面側より深い領域を示している。又、Feが20原子%未満の領域は,Fe20%以上の深さ部分をステンレス基材部分近傍とみなすと、ステンレス基材より表面側の中間層または表面層を示す。つまり、Au<Cr、かつFeが20原子%未満の領域Rは、表面層と中間層の界面を含みステンレス基材上の表面処理領域を想定しており,この領域R(厚み部分)のOとCr組成が耐食性に重要になってくる。一方、Au≧Crとなる厚み部分ではAuが十分に存在するため,導電性と耐食性は良好であり、OとCrの組成があまり重要とならない。
そして、当該領域RのOとCrの濃度(原子%)がO<Cr×0.75の場合、Clを含有した腐食液中での耐食性試験において、O<Cr×0.75となる部分(Crの含有量が多い部分)でCrが溶出し、表面層が剥がれて接触抵抗が増加する。なお、Clは大気から燃料電池セルの電解液に浸入する。上記領域でO≧Cr×0.75の関係を満たすように,表面層に必要に応じ酸化性雰囲気での熱処理を行っても良い。
本発明の燃料電池用セパレータ材料において、厚み方向のXPS分析によりAuが20原子%以上又はCrが20原子%以上の領域が3nm以上存在することが好ましい。当該領域の厚みが3nm未満の場合,表面処理被膜の厚みが薄いために燃料電池用セパレータに要求される導電性が確保できなくなり、接触抵抗が高くなる場合がある。
<燃料電池用セパレータ材料の製造>
燃料電池用セパレータ材料の中間層の形成方法としては、ステンレス鋼基材の表面酸化膜を除去せずに、この基材にCrをターゲットとしてスパッタ成膜することにより、表面酸化膜中のOにCrが結合し、中間層を形成することができる。又、ステンレス鋼基材2の表面酸化膜を除去後、Crの酸化物をターゲットとしてスパッタ成膜することや、ステンレス鋼基材2の表面酸化膜を除去後、Crをターゲットとし酸化雰囲気でスパッタ成膜することによっても中間層を形成することができる。
なお、スパッタの際、ステンレス鋼基材の表面酸化膜を適度に除去し、基材表面のクリーニングを目的として逆スパッタ(イオンエッチング)を行ってもよい。逆スパッタは、例えばRF100W程度の出力で、アルゴン圧力0.2Pa程度としてアルゴンガスを基材に照射して行うことができる。
中間層のAuは、以下の表面層を形成するためのAuスパッタにより、Au原子が中間層に入り込むことによって中間層内に含まれるようになる。又、CrとAuを含む合金ターゲットを用いてステンレス鋼基材表面にスパッタ成膜してもよい。
表面層の形成方法としては、例えば上記したスパッタによりステンレス鋼基材上にCrを成膜した後、Cr膜の上にAuをスパッタ成膜することができる。この場合、スパッタ粒子は高エネルギーを持つため、Cr膜のみがステンレス鋼基材表面に成膜されていても、そこにAuをスパッタすることにより、Cr膜にAuが入り込み、表面層となる。なお、表面層を形成させる際には、(Auの厚み/Crの厚み)が3以上となるように成膜条件を調整することが好ましい。このようにすると、耐食性の良い皮膜をCrの厚みに対してAuの厚みを成膜できる。
ステンレス鋼基材表面に最初にCrとAuのうちAu濃度が低い合金ターゲットを用いてスパッタ成膜し、その後、CrとAuのうちAu濃度が高い合金ターゲットを用いてスパッタ成膜してもよい。
本発明の実施形態に係る燃料電池用セパレータ材料によれば、Auを含む層をステンレス鋼基材上に強固かつ均一に形成させることができ、この層が導電性、耐食性及び耐久性を有することから、燃料電池用セパレータ材料として好適である。又、本発明の実施形態によれば、Auを含む層をスパッタ成膜すればこの層が均一な層となるので、湿式の金めっきに比べて表面が平滑となり、Auを無駄に使用しなくて済むという利点がある。
本発明の燃料電池用セパレータにおいて、プレス加工による反応ガス流路及び/又は反応液体流路が予め前記基材に形成されていると好ましい。このようにすると、後工程で反応ガス流路(反応液体流路)を形成する必要がなく、中間層や表面層等を形成する前の基材をプレス加工することで、容易に反応ガス流路(反応液体流路)を形成できるので、生産性が向上する。
又、本発明の燃料電池用セパレータにおいて、基材表面に表面層又はAu単独層を形成した燃料電池用セパレータ材料に対し、後からプレス加工によって反応ガス流路及び/又は反応液体流路を形成してもよい。本発明の燃料電池用セパレータ材料は表面層やAu単独層が基材表面に強固に密着しているので、被膜形成後にプレス加工しても被膜が剥がれずに反応ガス流路(反応液体流路)を形成でき、生産性が向上する。
なお、反応ガス流路(反応液体流路)形成のためのプレス加工をするためには、燃料電池用セパレータ材料として、基材の厚みを10μm以上とすることが好ましい。基材の厚みの上限は限定されないが、コストの点から200μm以下とすることが望ましい。
<燃料電池用スタック>
本発明の燃料電池用スタックは、本発明の燃料電池用セパレータ材料、又は本発明の燃料電池用セパレータを用いてなる。
燃料電池用スタックは、1対の電極で電解質を挟み込んだセルを複数個直列に接続したものであり、各セルの間に燃料電池用セパレータが介装されて燃料ガスや空気を遮断する。燃料ガス(H2)が接触する電極が燃料極(アノード)であり、空気(O2) が接触する電極が空気極(カソード)である。
<試料の作製>
ステンレス鋼基材として、厚み100μmのステンレス鋼材(SUS316)を用いた。
次に、ステンレス鋼基材の表面に、スパッタ法を用いて所定の目標厚みとなるように、Crを成膜した。ターゲットには純Crを用いた。次に、スパッタ法を用いて所定の目標厚みとなるようにAuを成膜した。ターゲットには純Auを用いた。
目標厚みは以下のように定めた。まず、予めステンレス鋼基材にスパッタで対象物(Cr、Au)を成膜し、蛍光X線膜厚計(Seiko Instruments製 SEA5100、コリメータ0.1mmΦ)で実際の厚みを測定し、このスパッタ条件におけるスパッタレート(nm/min)を把握した。そして、スパッタレートに基づき、厚み1nmとなるスパッタ時間を計算し、この条件でスパッタを行った。
Cr及びAuのスパッタは、株式会社アルバック製のスパッタ装置を用い、出力DC50W アルゴン圧力0.2Paの条件で行った。
<層構造の測定>
得られた試料について、XPS(X線光電子分光)分析による深さ(Depth)プロファイルを測定し、Au,Cr,O,Ni,Feの濃度分析を行ってスパッタ層の層構造を決定した。XPS装置としては、アルバック・ファイ株式会社製5600MCを用い、到達真空度:6.5×10−8Pa、励起源:単色化AlK、出力:300W、検出面積:800μmΦ、入射角:45度、取り出し角:45度、中和銃なしとし、以下のスパッタ条件で、測定した。
イオン種:Ar+
加速電圧:3kV
掃引領域:3mm×3mm
レート:2nm/min.(SiO換算)
なお、XPSによる濃度検出は、指定元素(Au,Cr,O,Ni,Fe)の合計を100%として、各元素の濃度(at%)を分析した。又、XPS分析で最表面からの厚み方向の距離とは、XPS分析によるチャートの横軸の距離(SiO換算での距離)である。
図2は、実施例4の試料の断面の実際のXPS像を示す。
ステンレス鋼基材2の表面に、CrとAuを含む表面層6が形成されている。さらにステンレス鋼基材2と表面層6との間に、Crを20原子%以上含み、Oを20原子%以上50原子%未満含む中間層2aが1nm以上存在することがわかる。又、Au<Cr、かつFeが20原子%未満の領域(図2のR)のどの部分においても、原子%でO≧Cr×0.75である。
なお、本発明においては、中間層を定義するためCr、O等の濃度を規定している。従って、中間層の境界は便宜上Cr、O濃度によって決められるため、中間層とその上下の層(例えばステンレス鋼基材2)との間に、中間層ともステンレス鋼基材とも異なる層が介在する場合もある。
<各試料の作製>
上記ステンレス鋼基材に対し、スパッタ時のCr膜及びAu膜の目標厚みを種々変更して実施例1〜6の試料を作製した。なお、実施例6の試料の場合、スパッタ前にステンレス鋼基材に350℃×5分間の大気加熱を行った。
比較例7として、Au膜とCr膜のスパッタ厚みを同一(10nm)にして試料を作製した。
比較例8として、Au膜のスパッタ厚みを2nmに低減して試料を作製した。
比較例9として、比較例8の試料のスパッタ後に大気加熱処理(160℃×30分間)を施して試料を作製した。
比較例10として、Cr膜のスパッタ厚みを0.25nmに低減して試料を作製した。
比較例11として、Cr膜のスパッタ厚みを2nmに厚くして試料を作製した
比較例12として,実施例3のCr膜のスパッタ厚みを3nmに厚くして試料を作製した
参考例20として、比較例10の試料のスパッタ後に大気加熱処理(160℃×24時間)を行って試料を作製した。
<評価>
各試料について以下の評価を行った。
A.被膜の密着性
各試料の最表面(表面層)に1mm間隔で碁盤の目を罫書いた後、粘着性テープ(住友スリーエム株式会社製、Scotchメンディングテープ)をはり付け、さらに各試験片を180°曲げて元の状態に戻し、曲げ部のテープを急速にかつ強く引き剥がす剥離試験を行った。
剥離が全くない場合を○とし、一部でも剥離があると目視で認められた場合を×とした。
B.接触抵抗
接触抵抗の測定は、試料全面に荷重を加える方法で行った。まず、40×50mmの板状の試料の表裏にそれぞれカーボンペーパーを積層し、さらに表裏のカーボンペーパーの外側にそれぞれCu/Ni/Au板を積層した。Cu/Ni/Au板は厚み10mmの銅板に1.0μm厚のNi下地めっきをし、Ni層の上に0.5μmのAuめっきした材料であり、Cu/Ni/Au板のAuめっき面がカーボンペーパーに接するように配置した。
さらに、Cu/Ni/Au板の外側にそれぞれテフロン(登録商標)板を配置し、各テフロン(登録商標)板の外側からロードセルで圧縮方向に10kg/cmの荷重を加えた。この状態で、2枚のCu/Ni/Au板の間に電流密度100mA/cmの定電流を流した時、Cu/Ni/Au板間の電気抵抗を4端子法で測定した。
又、接触抵抗は、以下の2つの条件により試料を試験した前後でそれぞれ測定した。
条件1:硫酸水溶液への試料の浸漬試験(浴温90℃、硫酸濃度0.5g/L、浸漬時間240時間、液量1000cc)
条件2:硫酸(0.5g/L)+塩化ナトリウム(Cl:10ppm)水溶液への試料の浸漬試験(浴温90℃、浸漬時間240時間、液量1000cc)
C.金属溶出量
金属溶出量は上記条件1〜2で試験後の試験液中の全ての金属濃度(mg/L)をICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析することで評価した。
又、燃料電池用セパレータに求められる代表的な特性は、低接触抵抗(10mΩ・cm以下)、使用環境での耐食性(耐食試験後も低接触抵抗で、有害なイオンの溶出がない)の2つである。
D.付着量
付着量は,酸分解/ICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析することで評価した。具体的には、50mm×50mmの試料1枚をフッ硝酸溶液に全量溶解して,Auの付着量を分析した。なお、1条件当たりの試料数を5個とし、5回の測定結果の平均値をそれぞれ表1に記載した。
得られた結果を表1、表2に示す。
Figure 2011249148
Figure 2011249148
表1、表2から明らかなように、表面層と中間層が存在し、Auの付着量が4000ng/cm以上であり、Au<Cr、かつFeが20原子%未満の領域Rにおいて、原子%でO≧Cr×0.75である各実施例の場合、耐食試験前後で試料の接触抵抗が変化せず、被膜の密着性及び耐食性が優れたものとなった。
比較例7の場合、AuとCrのスパッタ厚みを同一としたために金属層(Crが50原子%以上の厚み領域)が形成された。この場合、条件2の耐食性試験において試験後の接触抵抗が増加し,条件2でのCrの溶出量も多く、被膜の耐食性が劣った。又、領域RにおいてもCrの割合が多くなってO<Cr×0.75となった。
Au付着量が4000ng/cm未満である比較例8の場合、Auの付着量が少ないために相対的にCrの量が多くなり、領域RでもCrの割合が多くなってO<Cr×0.75となった。そのため、条件2の耐食性試験において試験後の接触抵抗が増加し,条件2でのCrの溶出量も多く、被膜の耐食性が劣った。
比較例8の試料のスパッタ後に大気加熱処理を行った比較例9の場合、大気加熱処理によってCrが拡散し、領域RにおいてO≧Cr×0.75となったものの、Au付着量が4000ng/cm未満であるため、耐食試験前であっても接触抵抗が増加した。これは、加熱処理によって表面層のAuが拡散してAu濃度が下がったためと考えられる。
Cr膜のスパッタ厚みを0.25nmに低減した比較例10の場合、中間層の厚みが1nm未満となり、スパッタ膜の密着性が劣化し、耐食性の評価を行うことができなかった。
Cr膜のスパッタ厚みを2nmに厚くした比較例11の場合、相対的にCrの量が多くなり、領域RでもCrの割合が多くなってO<Cr×0.75となった。そのため、条件2の耐食性試験において試験後の接触抵抗が増加し,条件2でのCrの溶出量も多く、被膜の耐食性が劣った。
実施例3のCr膜のスパッタ厚みを3nmに厚くして試料を作製した比較例12の場合,相対的にCrの量が多くなり、領域RでもCrの割合が多くなってO<Cr×0.75となった。そのため、条件2の耐食性試験において試験後の接触抵抗が増加し,条件2でのCrの溶出量も多く、被膜の耐食性が劣った。
なお、図3は、比較例11の試料の断面の実際のXPS像を示す。
ステンレス鋼基材2の表面に、CrとAuを含む表面層6が形成されている。さらにステンレス鋼基材2と表面層6との間に、Crを20原子%以上含み、Oを20原子%以上50原子%未満含む中間層2aが1nm以上存在することがわかる。一方、Au<Cr、かつFeが20原子%未満の領域(図3のR)において、原子%でO<Cr×0.75となる。
比較例10の試料のスパッタ後に大気加熱処理を行った参考例20の場合、大気加熱処理によってCrが拡散し、領域RにおいてO≧Cr×0.75となったものの、過剰な熱処理によりAu又はCr20%以上の領域の厚みが3nm未満に減少し、耐食性試験後の接触抵抗が高くなった。
2 ステンレス鋼基材
2a 中間層
6 表面層

Claims (10)

  1. ステンレス鋼基材の表面にAuとCrとを含む表面層が形成され、
    前記表面層と前記ステンレス鋼基材との間に、Crを20原子%以上含み、Oを20原子%以上50原子%未満含む中間層が1nm以上存在し、Crを50原子%以上含む金属層が存在せず、
    Auの付着量が4000ng/cm以上であり、
    厚み方向のXPS分析により原子%でAu<Cr、かつFeが20原子%未満の領域において、原子%でO≧Cr×0.75である燃料電池用セパレータ材料。
  2. 厚み方向のXPS分析によりAuが20原子%以上又はCrが20原子%以上の領域が3nm以上存在する請求項1に記載の燃料電池用セパレータ材料。
  3. 固体高分子形燃料電池に用いられる請求項1又は2に記載の燃料電池用セパレータ材料。
  4. ダイレクトメタノール型固体高分子形燃料電池に用いられる請求項1〜3のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ材料。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ材料を用いた燃料電池用セパレータであって、前記ステンレス鋼基材に予めプレス加工による反応ガス流路及び/又は反応液体流路を形成した後、前記表面層を形成して成る燃料電池用セパレータ。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ材料を用いた燃料電池用セパレータであって、前記ステンレス鋼基材に前記表面層を形成した後、プレス加工による反応ガス流路及び/又は反応液体流路を形成して成る燃料電池用セパレータ。
  7. 請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ材料、又は請求項5若しくは6記載の燃料電池用セパレータを用いた燃料電池スタック。
  8. 請求項1〜4のいずれかに記載の燃料電池用セパレータ材料の製造方法であって、
    前記ステンレス鋼基材の表面に、前記Crを乾式成膜した後、Auを乾式成膜する燃料電池用セパレータ材料の製造方法。
  9. (Auの厚み/Crの厚み)を3以上とする請求項8記載の燃料電池用セパレータ材料の製造方法。
  10. 前記乾式成膜がスパッタリングである請求項9記載の燃料電池用セパレータ材料の製造方法。
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