以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
〔インクジェット記録装置の全体構成の説明〕
図1は、本実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成を示した構成図である。同図に示すインクジェット記録装置10は、色材を含有するインクと該インクを凝集させる機能を有する凝集処理液を用いて、所定の画像データに基づいて記録媒体14の記録面に画像を形成する2液凝集方式の記録装置である。
インクジェット記録装置10は、主として、給紙部20、処理液塗布部30、描画部40、乾燥処理部50、定着処理部60、及び排出部70を備えて構成される。処理液塗布部30、描画部40、乾燥処理部50、定着処理部60の前段に搬送される記録媒体14の受け渡しを行う手段として渡し胴32,42,52,62が設けられるとともに、処理液塗布部30、描画部40、乾燥処理部50、定着処理部60のそれぞれに記録媒体14を保持しながら搬送する手段として、ドラム形状を有する圧胴34,44,54,64が設けられている。
渡し胴32,42,52,62及び圧胴34,44,54,64は、外周面の所定位置に記録媒体14の先端部(又は後端部)を挟んで保持するグリッパー80A,80Bが設けられている。グリッパー80Aとグリッパー80Bにおける記録媒体14の先端部を挟んで保持する構造、及び他の圧胴又は渡し胴に備えられるグリッパーとの間で記録媒体14の受け渡しを行う構造は同一であり、かつ、グリッパー80Aとグリッパー80Bは、圧胴34の外周面の圧胴34の回転方向について180°移動させた対称位置に配置されている。
グリッパー80A,80Bにより記録媒体14の先端部を狭持した状態で渡し胴32,42,52,62及び圧胴34,44,54,64を所定の方向に回転させると、渡し胴32,42,52,62及び圧胴34,44,54,64の外周面に沿って記録媒体14が回転搬送される。
なお、図1中、圧胴34に備えられるグリッパー80A,80Bのみ符号を付し、他の圧胴及び渡し胴のグリッパーの符号は省略する。
給紙部20に収容されている記録媒体(枚葉紙)14が処理液塗布部30に給紙されると、圧胴34の外周面に保持された記録媒体14の記録面に、凝集処理液(以下、単に「処理液」と記載することがある。)が付与される。なお、「記録媒体14の記録面」とは、圧胴34,44,54,64の保持された状態における外側面であり、圧胴34,44,54,64に保持される面と反対面である。
その後、凝集処理液が付与された記録媒体14は描画部40に送出され、描画部40において記録面の凝集処理液が付与された領域に色インクが付与され、所望の画像が形成される。
さらに、該色インクによる画像が形成された記録媒体14は乾燥処理部50に送られ、乾燥処理部50において乾燥処理が施されるとともに、乾燥処理後に定着処理部60に送られ、定着処理が施される。乾燥処理及び定着処理が施されることで、記録媒体14上に形成された画像が堅牢化される。このようにして、記録媒体14の記録面に所望の画像が形成され、該画像が記録媒体14の記録面に定着した後に、排出部70から装置外部に搬送される。
以下、インクジェット記録装置10の各部(給紙部20、処理液塗布部30、描画部40、乾燥処理部50、定着処理部60、排出部70)について詳細に説明する。
(給紙部)
給紙部20は、給紙トレイ22と不図示の送り出し機構が設けられ、記録媒体14は給紙トレイ22から一枚ずつ送り出されるように構成されている。給紙トレイ22から送り出された記録媒体14は、渡し胴(給紙胴)32のグリッパー(不図示)の位置に先端部が位置するように不図示のガイド部材によって位置決めされて一旦停止する。
(処理液塗布部)
処理液塗布部30は、給紙胴32から受け渡された記録媒体14を外周面に保持して記録媒体14を所定の搬送方向へ搬送する圧胴(処理液ドラム)34と、処理液ドラム34の外周面に保持された記録媒体14の記録面に処理液を付与する処理液塗布装置36と、含んで構成されている。処理液ドラム34を図1における反時計回りに回転させると、記録媒体14は処理液ドラム34の外周面に沿って反時計回り方向に回転搬送される。
図1に示す処理液塗布装置36は、処理液ドラム34の外周面(記録媒体保持面)と対向する位置に設けられている。処理液塗布装置36の構成例として、処理液が貯留される処理液容器と、処理液容器の処理液に一部が浸漬され、処理液容器内の処理液を汲み上げる汲み上げローラと、汲み上げローラにより汲み上げられた処理液を記録媒体14上に移動させる塗布ローラ(ゴムローラ)と、を含んで構成される態様が挙げられる。
なお、該塗布ローラを上下方向(処理液ドラム34の外周面の法線方向)に移動させる塗布ローラ移動機構を備え、該塗布ローラとグリッパー80A,80Bとの衝突を回避可能に構成する態様が好ましい。
処理液塗布部30により記録媒体14に付与される処理液は、描画部40で付与されるインク中の色材(顔料)を凝集させる色材凝集剤を含有し、記録媒体14上で処理液とインクとが接触すると、インク中の色材と溶媒との分離が促進される。
処理液塗布装置36は、記録媒体14に塗布される処理液量を計量しながら塗布することが好ましく、記録媒体14上の処理液の膜厚は、描画部40から打滴されるインク液滴の直径より十分に小さくすることが好ましい。
(描画部)
描画部40は、記録媒体14を保持して搬送する圧胴(描画ドラム)44と、記録媒体14を描画ドラム44に密着させるための用紙抑えローラ46と、記録媒体14にインクを付与するインクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yを備えている。なお、描画ドラム44の基本構造は、先に説明した処理液ドラム34と共通しているので、ここでの説明は省略する。
用紙抑えローラ46は、描画ドラム44の外周面に記録媒体14を密着させるためのガイド部材であり、描画ドラム44の外周面に対向し、渡し胴42と描画ドラム44との記録媒体14の受渡位置よりも記録媒体14の搬送方向下流側であり、且つ、インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yよりも記録媒体14の搬送方向上流側に配置される。
渡し胴42から描画ドラム44に受け渡された記録媒体14は、グリッパー(符号省略)によって先端が保持された状態で回転搬送される際に、用紙抑えローラ46によって押圧され、描画ドラム44の外周面に密着する。このようにして、記録媒体14を描画ドラム44の外周面に密着させた後に、描画ドラム44の外周面から浮き上がりのない状態で、インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yの直下の印字領域に送られる。
インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yはそれぞれ、マゼンダ(M)、黒(K)、シアン(C)、イエロー(Y)の4色のインクに対応しており、描画ドラム44の回転方向(図1における反時計回り方向)に上流側から順に配置されるとともに、インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yのインク吐出面(ノズル面、図5に符号114Aを付して図示する。)が描画ドラム44に保持された記録媒体14の記録面と対向するように配置される。なお、「インク吐出面(ノズル面)」とは、記録媒体14の記録面と対向するインクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yの面であり、後述するインクが吐出されるノズル(図4に符号108を付して図示する。)が形成される面である。
また、図1に示すインクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yは、描画ドラム44の外周面に保持された記録媒体14の記録面とインクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yのノズル面が略平行となるように、水平面に対して傾けられて配置されている。
インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yは、記録媒体14における画像形成領域の最大幅(記録媒体14の搬送方向と直交する方向の長さ)に対応する長さを有するフルライン型のヘッドであり、記録媒体14の搬送方向と直交する方向に延在するように固定設置される。
インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yのノズル面には、記録媒体14の画像形成領域の全幅にわたってインク吐出用のノズルがマトリクス配置されて形成されている。
記録媒体14がインクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yの直下の印字領域に搬送されると、インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yから記録媒体14の凝集処理液が付与された領域に画像データに基づいて各色のインクが吐出(打滴)される。
インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yから、対応する色インクの液滴が、描画ドラム44の外周面に保持された記録媒体14の記録面に向かって吐出されると、記録媒体14上で処理液とインクが接触し、インク中に分散する色材(顔料系色材)又は不溶化する色材(染料系色材)の凝集反応が発現し、色材凝集体が形成される。これにより、記録媒体14上に形成された画像における色材の移動(ドットの位置ズレ、ドットの色ムラ)が防止される。
また、描画部40の描画ドラム44は、処理液塗布部30の処理液ドラム34に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yに処理液が付着することがなく、インクの吐出異常の要因を低減することができる。
なお、本例では、CMYKの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能であり、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
(乾燥処理部)
乾燥処理部50は、画像形成後の記録媒体14を保持して搬送する圧胴(乾燥ドラム)54と、該記録媒体14上の水分(液体成分)を蒸発させる乾燥処理を施す溶媒乾燥装置56を備えている。なお、乾燥ドラム54の基本構造は、先に説明した処理液ドラム34及び描画ドラム44と共通しているので、ここでの説明は省略する。
溶媒乾燥装置56は、乾燥ドラム54の外周面に対向する位置に配置され、記録媒体14に存在する水分を蒸発させる処理部である。描画部40により記録媒体14にインクが付与されると、処理液とインクとの凝集反応により分離したインクの液体成分(溶媒成分)及び処理液の液体成分(溶媒成分)が記録媒体14上に残留してしまうので、かかる液体成分を除去する必要がある。
溶媒乾燥装置56は、ヒータによる加熱、ファンによる送風、又はこれらを併用して記録媒体14上に存在する液体成分を蒸発させる乾燥処理を施し、記録媒体14上の液体成分を除去するための処理部である。記録媒体14に付与される加熱量及び送風量は、記録媒体14上に残留する水分量、記録媒体14の種類、及び記録媒体14の搬送速度(干渉処理時間)等のパラメータに応じて適宜設定される。
溶媒乾燥装置56による乾燥処理が行われる際に、乾燥処理部50の乾燥ドラム54は、描画部40の描画ドラム44に対して構造上分離しているので、インクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yにおいて、熱又は送風によるヘッドメニスカス部の乾燥によるインクの吐出異常の要因を低減することができる。
記録媒体14のコックリングの矯正効果を発揮させるために、乾燥ドラム54の曲率を0.002(1/mm)以上とするとよい。また、乾燥処理後の記録媒体の湾曲(カール)を防止するために、乾燥ドラム54の曲率を0.0033(1/mm)以下とするとよい。
また、乾燥ドラム54の表面温度を調整する手段(例えば、内蔵ヒータ)を備え、該表面温度を50℃以上に調整するとよい。記録媒体14の裏面から加熱処理を施すことによって乾燥が促進され、次段の定着処理時における画像破壊が防止される。かかる態様において、乾燥ドラム54の外周面に記録媒体14を密着させる手段を具備するとさらに効果的である。記録媒体14を密着させる手段の一例として、真空吸着、静電吸着などが挙げられる。
なお、乾燥ドラム54の表面温度の上限については、特に限定されるものではないが、乾燥ドラム54の表面に付着したインクをクリーニングするなどのメンテナンス作業の安全性(高温による火傷防止)の観点から75℃以下(より好ましくは60℃以下)に設定されることが好ましい。
このように構成された乾燥ドラム54の外周面に、記録媒体14の記録面が外側を向くように(すなわち、記録媒体14の記録面が凸側となるように湾曲させた状態で)保持し、回転搬送しながら乾燥処理を施すことで、記録媒体14のシワや浮きに起因する乾燥ムラが確実に防止される。
(定着処理部)
定着処理部60は、記録媒体14を保持して搬送する圧胴(定着ドラム)64と、画像形成がされ、さらに、液体が除去された記録媒体14に加熱処理を施すヒータ66と、該記録媒体14を記録面側から押圧する定着ローラ68と、を備えて構成される。なお、定着ドラム64の基本構造は処理液ドラム34、描画ドラム44、及び乾燥ドラム54と共通しているので、ここでの説明は省略する。ヒータ66及び定着ローラ68は、定着ドラム64の外周面に対向する位置に配置され、定着ドラム64の回転方向(図1において反時計回り方向)の上流側から順に配置される。
定着処理部60では、記録媒体14の記録面に対してヒータ66による予備加熱処理が施されるとともに、定着ローラ68による定着処理が施される。ヒータ66の加熱温度は記録媒体の種類、インクの種類(インクに含有するポリマー微粒子の種類)などに応じて適宜設定される。例えば、インクに含有するポリマー微粒子のガラス転移点温度や最低造膜温度とする態様が考えられる。
定着ローラ68は、乾燥させたインクを加熱加圧することによってインク中の自己分散性ポリマー微粒子を溶着し、インクを被膜化させるためのローラ部材であり、記録媒体14を加熱加圧するように構成される。具体的には、定着ローラ68は、定着ドラム64に対して圧接するように配置されており、定着ドラム64との間でニップローラを構成するようになっている。これにより、記録媒体14は、定着ローラ68と定着ドラム64との間に挟まれ、所定のニップ圧でニップされ、定着処理が行われる。
定着ローラ68の構成例として、熱伝導性の良いアルミなどの金属パイプ内にハロゲンランプを組み込んだ加熱ローラによって構成する態様が挙げられる。かかる加熱ローラで記録媒体14を加熱することによって、インクに含まれるポリマー微粒子のガラス転移点温度以上の熱エネルギーが付与されると、該ポリマー微粒子が溶融して画像の表面に透明の被膜が形成される。
この状態で記録媒体14の記録面に加圧を施すと、記録媒体14の凹凸に溶融したポリマー微粒子が押し込み定着されるとともに、画像表面の凹凸がレベリングされ、好ましい光沢性を得ることができる。なお、画像層の厚みやポリマー微粒子のガラス転移点温度特性に応じて、定着ローラ68を複数段設けた構成も好ましい。
また、定着ローラ68の表面硬度は71°以下であることが好ましい。定着ローラ68の表面をより軟質化することで、コックリングにより生じた記録媒体14の凹凸に対して追随効果を期待でき、記録媒体14の凹凸に起因する定着ムラがより効果的に防止される。
図1に示すインクジェット記録装置10は、定着処理部60の処理領域の後段(記録媒体搬送方向の下流側)には、インラインセンサ82が設けられている。インラインセンサ82は、記録媒体14に形成された画像(又は記録媒体14の余白領域に形成されたチェックパターン)を読み取るためのセンサであり、CCDラインセンサが好適に用いられる。
本例に示すインクジェット記録装置10は、インラインセンサ82の読取結果に基づいてインクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yの吐出異常の有無が判断される。また、インラインセンサ82は、水分量、表面温度、光沢度などを計測するための計測手段を含む態様も可能である。かかる態様において、水分量、表面温度、光沢度の読取結果に基づいて、乾燥処理部50の処理温度や定着処理部60の加熱温度及び加圧圧力などのパラメータを適宜調整し、装置内部の温度変化や各部の温度変化に対応して、上記制御パラメータが適宜調整される。
(排出部)
図1に示すように、定着処理部60に続いて排出部70が設けられている。排出部70は、張架ローラ72A,72Bに巻きかけられた無端状の搬送ベルト74と、画像形成後の記録媒体14が収容される排出トレイ76と、を備えて構成されている。
定着処理部60から送り出された定着処理後の記録媒体14は、搬送ベルト74によって搬送され、排出トレイ76に排出される。
〔インクジェットヘッドの構造の説明〕
図2は、本発明に適用されるインクジェットヘッドの概略構成図であり、同図はインクジェットヘッドから記録媒体の記録面を見た図(ヘッドの平面透視図)となっている。なお、図1に図示したインクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yは同一構造を有しているので、以下の説明ではインクジェットヘッド48M,48K,48C,48Yを区別する必要がない場合は、これらを総称して「インクジェットヘッド100」、又は単に「ヘッド100」と記載する。
同図に示すヘッド100は、n個のサブヘッド102‐i(iは1からnの整数)を一列につなぎ合わせてマルチヘッドを構成している。また、各サブヘッド102‐iは、ヘッド100の短手方向の両側からヘッドカバー104,106によって支持されている。なお、サブヘッド102を千鳥状に配置してマルチヘッドを構成することも可能である。
複数のサブヘッドにより構成されるマルチヘッドの適用例として、記録媒体の全幅に対応したフルライン型ヘッドが挙げられる。フルライン型ヘッドは、記録媒体の移動方向(副走査方向)と直交する方向(主走査方向)に沿って、記録媒体の主走査方向における長さ(幅)に対応して、複数のノズル(図4に符号108を付して図示する。)が並べられた構造を有している。かかる構造を有するヘッド100と記録媒体とを相対的に一回だけ走査させて画像記録を行う、いわゆるシングルパス画像記録方式により、記録媒体の全面にわたって画像を形成し得る。
図3は、ヘッド100の一部拡大図である。同図に示すように、サブヘッド102は、略平行四辺形の平面形状を有し、隣接するサブヘッド間にオーバーラップ部が設けられている。オーバーラップ部とは、サブヘッドのつなぎ部分であり、サブヘッド102‐iの並び方向(図2における左右方向、図3に図示する主走査方向X)に隣接するドットが異なるサブヘッドに属するノズルによって形成される。
図4は、サブヘッド102‐iのノズル配列を示す平面図である。同図に示すように、各サブヘッド102‐iは、ノズル108が二次元状に並べられた構造を有し、かかるサブヘッド102‐iを備えたヘッドは、いわゆるマトリクスヘッドと呼ばれるものである。
図4に示したサブヘッド102‐iは、副走査方向Yに対して角度αをなす列方向W、及び主走査方向Xに対して角度βをなす行方向Vに沿って多数のノズル108が並べられた構造を有し、主走査方向Xの実質的なノズル配置密度が高密度化されている。図4では、行方向Vに沿って並べられたノズル群(ノズル行)は符号110を付して図示され、列方向Wに沿って並べられたノズル群(ノズル列)は符号112を付して図示されている。
図5は、記録素子単位となる1チャンネル分の液滴吐出素子(1つのノズル108に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図である。同図に示すように、本例のヘッド100は、ノズル108が形成されたノズルプレート114と、圧力室116や共通流路118等の流路が形成された流路板120等を積層接合した構造から成る。ノズルプレート114は、ヘッド100のノズル面114Aを構成し、各圧力室116にそれぞれ連通する複数のノズル108が2次元的に形成されている。
流路板120は、圧力室116の側壁部を構成するとともに、共通流路118から圧力室116にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口122を形成する流路形成部材である。なお、説明の便宜上、図5では簡略的に図示しているが、流路板120は一枚又は複数の基板を積層した構造である。
ノズルプレート114及び流路板120は、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
共通流路118はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路118を介して各圧力室116に供給される。
圧力室116の一部の面(図5において天面)を構成する振動板124には、個別電極126及び下部電極128を備え、個別電極126と下部電極128との間に圧電体130がはさまれた構造を有するピエゾアクチュエータ132が接合されている。振動板124を金属薄膜や金属酸化膜により構成すると、ピエゾアクチュエータ132の下部電極128に相当する共通電極として機能する。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様では、振動板部材の表面に金属などの導電材料による下部電極層が形成される。
個別電極126に駆動電圧を印加することによってピエゾアクチュエータ132が変形して圧力室116の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル108からインクが吐出される。インク吐出後、ピエゾアクチュエータ132が元の状態に戻る際、共通流路118から供給口122を通って新しいインクが圧力室116に再充填される。
かかる構造を有するインク室ユニットを図4に示す如く、主走査方向Xと角度βをなす行方向V及び副走査方向Yに対して角度αをなす列方向Wに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。かかるマトリクス配列において、副走査方向の隣接ノズル間隔をLsとするとき、主走査方向については実質的に各ノズル108が一定のピッチP=Ls/tanθで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。
なお、本発明に適用可能なノズル配列は、図4に図示したノズル配列に限定されず、例えば、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して斜めの列方向に沿って複数のノズルがマトリクス配列された態様にも適用可能である。
〔制御系の説明〕
図6は、インクジェット記録装置10のシステム構成を示すブロック図である。図6に示すように、インクジェット記録装置10は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、画像メモリ174、ROM175、モータドライバ176、ヒータドライバ178、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184等を備えている。
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信するインターフェース部(画像入力手段)である。通信インターフェース170にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦画像メモリ174に記憶される。画像メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、画像メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、画像メモリ174及びROM175の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する制御信号を生成する。
また、システムコントローラ172は、インライン検出部144から読み込んだテストチャートや、後述するノズルチェック用パターンの読取データから吐出異常ノズルの有無を判断し、吐出異常ノズルの位置を特定する吐出異常ノズル判定部172Aを含んで構成される。吐出異常ノズル判定部172Aの処理機能はASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。
吐出異常ノズル判定部172Aにおいて求められた吐出異常ノズルの情報(データ)は、吐出異常ノズル情報記憶部190に記憶される。
ROM175には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ(テストチャートを打滴するためのデータ、異常ノズル検知用の波形データ、描画記録用の波形データ、異常ノズル情報などを含む)が格納されている。ROM175は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。また、このROM175の記憶領域を活用することで、ROM175を吐出異常ノズル情報記憶部190として兼用する構成も可能である。
画像メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示に従って搬送系のモータ188を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示に従って後乾燥部142等のヒータ189を駆動するドライバである。
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、画像メモリ174内の画像データ(多値の入力画像のデータ) から打滴制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データをヘッドドライバ184に供給してヘッド100の吐出駆動を制御する駆動制御手段として機能する。
すなわち、プリント制御部180は、濃度データ生成部180Aと、補正処理部180Bと、インク吐出データ生成部180Cと、駆動波形生成部180Dとを含んで構成される。これら各機能ブロック(180A〜180D)は、ASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。
濃度データ生成部180Aは、入力画像のデータからインク色別の初期の濃度データを生成する信号処理手段であり、濃度変換処理(UCR処理や色変換を含む)及び必要な場合には画素数変換処理を行う。
補正処理部180Bは、吐出異常ノズル情報記憶部190に格納されている吐出異常ノズルの情報に基づいて、補正の演算を行う処理手段である。補正処理部180Bの処理例として、吐出異常ノズルに対応する画素のデータ値をゼロとする不吐化処理(マスク処理)が挙げられる。
インク吐出データ生成部180Cは、補正処理部180Bで生成された補正後の画像データ(濃度データ)から2値又は多値のドットデータに変換するハーフトーニング処理手段を含む信号処理手段であり、2値(多値)化処理を行う。ハーフトーン処理の手段としては、誤差拡散法、ディザ法、閾値マトリクス法、濃度パターン法など、各種公知の手段を適用できる。ハーフトーン処理は、一般に、M値(M≧3)の階調画像データをN値(N<M)の階調画像データに変換する。最も単純な例では、2値(ドットのオン/オフ)のドット画像データに変換するが、ハーフトーン処理において、ドットサイズの種類(例えば、大ドット、中ドット、小ドットなどの3種類)に対応した多値の量子化を行うことも可能である。
インク吐出データ生成部180Cで生成されたインク吐出データはヘッドドライバ184に与えられ、ヘッド100のインク吐出動作が制御される。
駆動波形生成部180Dは、ヘッド100の各ノズル108に対応したアクチュエータ(図4に符号132を付して図示する。)を駆動するための駆動波形又は、複数の駆動波形が含まれる駆動波形群を生成するとともに、ノズルごとのオンオフを切り換える駆動信号を生成する手段であり、該駆動波形生成部180Dで生成された信号(駆動波形及び駆動信号)は、ヘッドドライバ184に供給される。なお、駆動波形生成部180Dから出力される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
なお、以下の説明における「記録用波形」及び「異常ノズル検知用波形」という用語は、単一の波形だけでなく複数の波形要素を含む波形群を包括した概念を表すこととする。つまり、「記録用波形」には、単一の記録用波形を表すだけでなく、複数の記録用波形が連続する記録用波形群を表すことがある。
また、駆動波形生成部180Dは、記録用波形と、異常ノズル検知用波形とを生成する。各種波形データは予めROM175に格納され、必要に応じて使用する波形データが選択的に出力される。
ヘッドドライバ184は、ヘッドモジュールごとに同一(共通)の駆動波形を供給するとともに、ヘッドモジュールごとに各ノズルのオンオフを切り換える駆動信号を供給する。すなわち、1つのヘッドモジュールに属する各ノズルに対応するピエゾアクチュエータ132には、該同一の駆動波形とノズルごとの駆動信号が供給される。また、記録用波形と異常ノズル検知用波形との切り換えはヘッドモジュールごとに行われる。
なお、ヘッドドライバ184は、ヘッドごとに設けられていてもよいし、ヘッドを構成するヘッドモジュールごとに設けられていてもよい。
プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。なお、図6において画像バッファメモリ182はプリント制御部180に付随する態様で示されているが、画像メモリ174と兼用することも可能である。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース170を介して外部から入力され、画像メモリ174に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の画像データが画像メモリ174に記憶される。
インクジェット記録装置10では、インク(色材)による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ174に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ172を介してプリント制御部180に送られ、該プリント制御部180の濃度データ生成部180A、補正処理部180B、インク吐出データ生成部180Cを経てインク色ごとのドットデータに変換される。
すなわち、プリント制御部180は、入力されたRGB画像データをM,K,C,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部180で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ182に蓄えられる。この色別ドットデータは、ヘッド100のノズルからインクを吐出するためのMKCY打滴データに変換され、印字されるインク吐出データが確定する。
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられるインク吐出データ及び駆動波形に基づき、印字内容に応じてヘッド100の各ノズル108に対応するピエゾアクチュエータ132を駆動するための駆動波形を出力する。ヘッドドライバ184にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
こうして、ヘッドドライバ184から出力された駆動波形がヘッド100に加えられることによって、該当するノズル108からインクが吐出される。記録媒体14の搬送速度に同期してヘッド100からのインク吐出を制御することにより、記録媒体14上に画像が形成される。
上記のように、プリント制御部180における所要の信号処理を経て生成されたインク吐出データ及び駆動波形に基づき、ヘッドドライバ184を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
インライン検出部144は、図1で説明したように、イメージセンサを含むブロックであり、記録媒体14に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつき、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部180及びシステムコントローラ172に提供する。
プリント制御部180は、必要に応じてインライン検出部144から得られる情報に基づいてヘッド100に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
図中のメンテナンス機構194は、インク受け、吸引キャップ、吸引ポンプ、ワイパーブレードなど、ヘッドメンテナンスに必要な部材を含んだものである。
また、ユーザインターフェースとしての操作部196は、オペレータ(ユーザ)が各種入力を行うための入力装置197と表示部(ディスプレイ)198を含んで構成される。入力装置197には、キーボード、マウス、タッチパネル、ボタンなど各種形態を採用し得る。オペレータは、入力装置197を操作することにより、印刷条件の入力、画質モードの選択、付属情報の入力・編集、情報の検索などを行うことができ、入力内容や検索結果など等の各種情報は表示部198の表示を通じて確認することができる。この表示部198はエラメッセージなどの警告を表示する手段としても機能する。
本実施形態のインクジェット記録装置10は、複数の画質モードを有しており、ユーザの選択操作により、または、プログラムによる自動選択により、画質モードが設定される。この設定された画質モードで要求される出力画質レベルに応じて、異常ノズルを判断する基準が変更される。要求品質が高いほど、判定基準は厳しい方向に設定される。
各画質モードの印刷条件並びに異常ノズル判定基準に関する情報はROM175に格納されている。
図6で説明した吐出異常ノズル判定部172A、濃度データ生成部180A、補正処理部180Bが担う処理機能の全て又は一部をホストコンピュータ186側に搭載する態様も可能である。
〔吐出異常の原因について〕
次に、吐出異常の原因について説明する。図7は吐出異常の原因を模式的に示したノズル部の拡大図である。図7において符号108はノズル、200はノズル108内に充填されたインク、202はメニスカス(気液界面)を表している。同図(a)はノズル108内のインク200中に気泡204が混入している様子を示している。ノズル108は図示せぬ圧力室(図5に符号116を付して図示する。)と連通しており、圧力室には圧力発生手段としての圧電素子(ピエゾアクチュエータ、図5に符号132を付して図示する)が設けられている。圧電素子を駆動して圧力室の容積を変化させることにより、ノズル108から液滴が吐出される。このとき、ノズル108内に気泡204が存在すると、気泡204によって圧力が吸収されたり、液の流れが妨げられたりするため、吐出異常となる。
図7(b)はノズル108の内壁面に異物206が付着している様子を示している。ノズル内部に異物206が付着している場合、この異物206によって液の流れが妨げられ、飛翔曲がりなどの吐出異常の原因となる。
図7(c)はノズル108の外部においてノズル穴近傍に異物208が付着している場合を示している。ノズル外部のノズル近傍に異物208が付着している場合、この異物208に液が接触することでメニスカスの軸対称性が崩れ、飛翔曲がりなどの吐出異常の原因となる。
異物208の付着に代えて、ノズル面114Aにおけるノズル近傍の部分的な撥液性の低下(例えば、撥液膜の剥がれ)などの場合も、この図7(c)と同様である。なお、異物206,208としては、例えば、インク成分の凝集物、乾燥物、紙粉、ホコリ、インクミスト、ヘッド製造プロセスで意図せず残留した残渣などがある。
〔異常ノズルの検出方法〕
図7で示したように吐出異常の原因は、(a)、(b)で説明したノズル内部要因と、(c)で説明したノズル外部要因とに大別される。ノズル内に気泡204や異物206が存在する場合(ノズル内部要因の異常ノズル)は、吐出力を低下させると、当該ノズル内部要因による吐出異常が助長される。すなわち、圧電素子の変位量を小さくしたり、ヘッド共振周波数からずれた周波数で圧力変動を与えたりするなどの方法で、吐出速度を低下させる駆動を行うことにより、気泡204や異物206の影響が吐出結果に一層顕著に反映される。その結果、不吐が助長され、或いは、飛翔曲がりの曲がり量が増幅されたりする。
その一方、ノズル外部に異物208や撥液性不良などがあるときは、ノズル108の穴からインクを溢れさせ(インクを盛り上げて)、ノズル外部の異物208や撥液性不良部分にインクを接触させることによって、当該ノズル外部要因による吐出異常が助長される。
本実施形態では、吐出異常を検知する際には、描画記録用の駆動波形とは別に、吐出異常を助長する波形を用いてノズルチェック用パターン(テストチャート、テストパターンともいう。)の描画を行い、その印字結果を測定する。つまり、通常の描画時における吐出用の駆動波形を用いて圧電素子を駆動した場合には、吐出異常として発現しない(検知できない)レベルの気泡204や異物206,208等の状況であったとしても、吐出異常を助長・増幅させる検知用波形を用いることで、検知可能な不良として発現させることができる。これにより、描画記録用の駆動波形では未だ吐出異常として認識できない初期段階レベルの吐出異常を早期に検知することができる。
以下、具体的な波形例を説明する。
(描画記録時の駆動波形について)
図8は、通常の描画記録時における吐出用の駆動波形(以下「記録用波形」という。)の例である。ここでは、説明を簡単にするために、いわゆる引き−押し(pull-push)型の駆動波形を例示する。ただし、本発明の実施に際しては、駆動波形の形態は特に限定されず、引き押し引き(pull-push-pull)波形その他の各種の駆動波形を用いることができる。
図8に示した記録用波形210は、圧力室の容積を定常状態に維持する基準電位を出力する第1信号要素210aと、この定常状態から圧力室を広げる方向に圧電素子を駆動する第2信号要素(引き波形部)210bと、圧力室を広げた状態で維持する第3信号要素210cと、圧力室を押し縮める方向に圧電素子を駆動する第4信号要素(押し波形部)210dと、を有している。
すなわち、第1信号要素210aは基準電位を維持する波形部であり、第2信号要素210bは、基準電位から電位を下げる立ち下がり波形部である。第3信号要素210cは第2信号要素210bで下降した電位を維持する波形部、第4信号要素210dは第3信号要素210cの電位を基準電位まで上昇させる立ち上がり波形部である。
この引き押し波形のパルス間隔は、ヘッド共振周期(ヘルムホルツ固有振動周期)Tと一致させることが好ましく、パルス幅Tpは、ヘッド共振周期(ヘルムホルツ固有振動周期)Tcの自然数分の1とすることが望ましい。ヘッド共振周期とは、インク流路系、インク(音響要素)、圧電素子の寸法、材料、物性値等から定まる振動系全体の固有周期をいう。
(ノズル内部要因の不良検知に好適な異常ノズル検知用波形の例)
異常ノズルを検知する際には、図8で説明した記録用波形とは異なる特別な波形(「異常ノズル検知用波形」という。)を用い、吐出異常を助長・増幅させて、検出感度、精度を向上させる。
ノズル内部要因の異常ノズルを検知するのに好適な異常ノズル検知用波形の例を図9〜図12に示す。
図9は、図8の記録用波形と比較して電位差Vpp(電圧波形の最大値と最小値の差)が小さくなっている。記録用波形の電位差よりも10%以上減少させることが好ましく、15%〜25%の範囲で減少させることがより好ましい。
図10は、図8の記録用波形と比較してパルス幅Tpが変更されている。記録用波形のパルス幅に対し、10%以上増加又は減少させることが好ましく、20%〜50%の範囲で増減させることがより好ましい。
インクジェットヘッドは、その流路構造や使用する液体の物性などから、安定して吐出させることができるパルス幅がある。記録用波形のパルス幅はこの安定吐出可能なパルス幅に定められている。一方、異常ノズル検知用波形では、吐出力を弱めるため、パルス幅を変更したものを使用する。
図11は、図8の記録用波形と比較して、パルス波形の傾き(第4信号要素210dの立ち上がりの傾き)が変更されている。記録用波形の傾きに対し、20%以上傾きを増加又は減少させることが好ましく、50%〜200%の範囲で増減させることがより好ましい。
図12は、吐出パルス212の前に、その吐出力を弱める波形の信号(プレパルス)を印加する例である。ヘッド共振周波数を1/Tcとしたとき、吐出パルス212の前(Tc/2)×nに、電位差の小さいパルス(このパルスの印加だけではノズルから吐出させることができない程度の弱いパルス)を印加する(ただし、nは自然数)。
このプレパルス214は、基準電位から電位を下げる波形部(第5信号要素214a)と、当該第5信号要素214aで下降した電位を維持する第6信号要素214bと、当該第6信号要素214bの電位を基準電位まで上昇させる第7信号要素と、を有している。プレパルス214の印加によって発生する振動波によって、これに続く吐出パルス212の引き込み(第1信号要素210aによる引き込み動作)が阻害され、当該吐出パルス212による吐出力が低減される。すなわち、プレパルス214の印加により、ノズル内のメニスカスは一旦ノズル内に引き込まれ、次に、ノズル外に盛り上がるように押し出される。この振動が残ってさらにもう一度メニスカスが引き込まれ、押し出されるタイミングで、次の吐出パルス212の引き込み信号要素(210a)が加わる。このため、プレパルス214の残存振動の盛り上がり動作に重なる引き込み信号要素(210a)の引き動作が阻害され、吐出力が弱まる。なお、図9〜図12で説明した構成を適宜組み合わせることもできる。
(ノズル外部要因の不良検知に好適な異常ノズル検知用波形の例)
次に、ノズル外部要因の異常ノズルを検知するのに好適な異常ノズル検知用波形の例を図13〜図16に示す。
図13は、図8の記録用波形と比較して電位差Vpp(電圧波形の最大値と最小値の差)が大きくなっている。記録用波形の電位差よりも10%以上増加させることが好ましい。
図14は、吐出パルス220の引き込み信号要素(符号210b)前に、圧力室を収縮させ、ノズルからインクを盛り上げる(インクを膨出させる)ための信号要素(符号210e)とその電位を維持する信号要素210fを加えた例である。
この信号要素210e,210fによって、吐出前にインクがノズルから盛り上がり、ノズル外の異物208等にインクが接触し得る。
図15は、図14の波形に加えて、更に、時間間隔n×Tcで吐出パルス220を印加するものである。図15の構成によれば、1つ前の吐出パルス220の印加によって発生する残存振動で、次の吐出前の圧力室収縮用信号要素(210e)によってノズルからインクを更に盛り上げることができる。振動周期Tcの整数倍のタイミングで押し出し動作を追加することにより、振動を増幅させることができる。
図16は、吐出パルス220の前に、電位差の小さいプレパルス222を印加するものである。このプレパルス222は、吐出パルス220の手前「n×Tc」のタイミングで印加される。プレパルス222は、基準電位から電位を上げて圧力室を収縮させる押し込み信号要素(第8信号要素)222aと、当該第8信号要素222aで上昇させた電位を維持する第9信号要素222bと、当該第9信号要素222bの電位を基準電位まで戻す第10信号要素222cと、を有している。プレパルス222単独の印加のみでは、ノズルからインクを吐出させることができない。
このようなプレパルス222の印加によって発生する振動波によって、これに続く吐出パルス220による振動と共振させることにより、ノズルからの盛り上がりを増幅させることができる。
図9〜図16で説明したように、描画記録用の駆動波形とは異なる特別の波形(異常ノズル検知用波形)を用いてノズルチェック用パターンを打滴し、このノズルチェック用パターンの印字結果から異常ノズルの有無を検知する。
この異常ノズル検知用波形は、記録用波形に比べて、ノズルにおける異常の具合を増幅することができる。したがって、記録用波形を用いた描画記録時に記録不良が発生する前の段階で早期に異常検出が可能である。また、低解像度検出器での検出が可能であるとともに、高速検出、高感度検出が可能である。
また、ノズル内部要因とノズル外部要因の両方の故障原因に対応して、複数種類の異常ノズル検知波形を用い、異常ノズルを検知することにより、それぞれの故障原因による吐出異常を高感度で検出することが可能である。
更に、目的の画像を描画記録中に、記録媒体の非画像部(余白部分)に異常ノズル検知用波形を用いてノズルチェック用パターンを形成し、このノズルチェック用パターンの印字結果から異常ノズル検知を行うことができる。そして、異常ノズルが検知されたときには、当該異常ノズルの使用を止めて残りの正常ノズルのみで良好な画像出力ができるように画像データを修正し、当該修正後の画像データに基づき、目的の画像の印刷を継続することができる。こうして、記録用波形を用いた画像部の描画記録で不具合が発生するまでの間に、早めに異常ノズルを発見してこれに対処し、連続記録(連続印刷)を可能とする。すなわち、画像部の描画について実際に不具合が発生する前に、吐出異常となりそうな異常ノズルを早期に検知して、これを不吐化処理し、その不吐化による影響を残りのノズルで補うように画像データを補正する。このため、連続記録中に発生する不具合に対して、損紙の発生やスループット低下を回避して、印刷を継続することができる。
〔ノズルチェック用パターンの説明〕
次に、上述した異常ノズル検知用波形を用いて形成されるノズルチェック用パターンの形成方法について説明する。
図17は、ノズルチェックパターンとノズル配置との関係を示す図である、同図には、ヘッド(図2に符号100を付して図示する。)を構成するサブヘッド102の一部を拡大して図示するとともに、ノズルチェック用パターンを構成する1段分の縦線群230の一部を図示する。
同図に示すように、縦線群230を構成する縦線232(232A,232B)は、マトリクス配列されたノズルに対応するパターンを有している。すなわち、縦線群230は、図中最下段のノズル行110Aに属するすべてのノズル108Aにより形成された縦線232Aと、図中下から5行目のノズル行110Bに属するすべてのノズル108Bにより形成された縦線232Bと、を含んでいる。換言すると、ノズルチェック用パターンを構成する1段分の縦線群は、1つのノズル行に属するすべてのノズル、又は2つ以上のノズル行に属するすべてのノズルによって形成されている。
図17に示す2つのノズル行110A,110Bに属するノズル108A,108Bが用いられて縦線群230が形成される場合には、ノズル行110Aに属するノズル108Aにより形成される縦線232Aと、ノズル行110Bに属するノズル108Bにより形成される縦線232Bとは交互に配置される。また、図17に示す縦線群230を構成する縦線232A,232Bは、図中右側から、14ピクセル、16ピクセル、15ピクセル、16ピクセル、…、のように、ノズル配置に対応して不等間隔ピッチで配置される。
すなわち、ノズル行110Aに属するノズル108Aは、主走査方向について不等間隔に配置されている。例えば、図中右端のノズル108A(1)と左隣のノズル108A(2)とは、30ノズル(ピクセル)間隔であり、さらにノズル108A(2)と左隣のノズル108A(3)とは31ノズル間隔となっている。つまり、主走査方向に沿うノズル行は、当該ノズル行に属する複数のノズルが不等間隔に配置されている。同様に、ノズル行110Bに属するノズル108Bも不等間隔に配置されている。
すなわち、主走査方向についてより高い記録解像度を実現すべく、主走査方向における実質的なノズル配置間隔をより小さくすることを意図して、ノズル列間をできる限り詰めた結果、主走査方向のノズル配置間隔が不等間隔となっている。
ノズルチェック用パターンを構成する他の縦線群(不図示)は、縦線群230と同様に、当該縦線群を形成する際に使用されるノズルが属するノズル行のすべてのノズルを用いて形成される。このようにして、使用されるノズル行を順次切り換えながら、副走査方向の位置をずらして配置された複数段分の縦線群を含むノズルチェック用パターンが形成される。
ノズル行の数をq、1段分の縦線群を形成するノズル行の数をrとすると、ノズルチェック用パターンはq/r段分の縦線群により構成される。なお、rがqの約数でない場合には、1段分の縦線群を形成するノズル行の数がrよりも小さいものが含まれてもよい。
なお、図1に示すインクジェット記録装置10は、4色に対応して4つのヘッド48M,48K、48C,48Yを有しているので、4ヘッド分のノズルチェック用パターンが形成される。4ヘッド分のノズルチェック用パターンを1枚の用紙の余白領域内に収めることが可能であれば、4ヘッド分のノズルチェック用パターンが1枚の用紙の余白領域内に形成されるが、4ヘッド分のノズルチェック用パターンを1枚の用紙の余白領域内に収めることができない場合は、1枚の用紙の余白領域内に少なくとも1ヘッド分のノズルチェック用パターンが形成されることが好ましいが、1枚の用紙に収めることができないときは複数の用紙に分割してもよい。
図18(a)〜(e)は、1ヘッド分のノズルチェック用パターンが形成される様子を時系列順に図示した説明図である。図18(a)〜(e)は、固定された用紙240(図1の記録媒体14と等価なもの)に対して図中上から下方向へヘッド(サブヘッド102)を移動させて画像記録を行うものとして図示されている。すなわち、図18(a)は最も書き始めに近い状態であり、図18(e)は最も書き終わりに近い状態である。
換言すると、用紙240を基準として、「ヘッドの相対移動方向下流側(書き終り側)」は図中下側となり、ヘッドの移動方向についての最下流側のノズル行」とは、図中最下段のノズル行(図18(c)のノズル108Eを含むノズル行110E)であり、用紙240における所定の記録位置に最初に到達するノズル行である。また、「ヘッドの相対移動方向上流側(書き始め側)」は図中上側となり、「ヘッドの相対移動方向についての最上流側のノズル行」とは、図中最上段のノズル行(図18(b)のノズル108Dを含むノズル行110D)であり、用紙240における所定の記録位置に最後に到達するノズル行である。
なお、図18(a)〜(e)では、サブヘッド102の一部のノズル、及び縦線群の一部の縦線の図示は省略されている。
図18(a)は、ノズルチェック用パターン形成エリア244の開始位置246(例えば、用紙240の先端242から副走査方向に3mm離れた位置)に、ノズル行110Cに属するすべてのノズル108Cにより縦線232C(書き始めの縦線群)が形成される状態を図示している。
ノズル行110Cのノズル108Cが図中左端から右へ順に駆動され、縦線232Cの一群が形成される。なお、縦線232Cは副走査方向Yについて数ドット分の長さを有しているので、ノズル108Cは縦線232Cの副走査方向Yの長さに対応して数回にわたり連続して駆動される。
なお、図18(a)に示す状態において、ノズル行110Cと同じ駆動タイミングで駆動されるノズル行によって、他の位置にも縦線群が形成されるが、これらの他の縦線群の図示は省略されている。
図18(b)は、縦線232Cと同じ縦線群を構成する縦線232Dが形成される状態が図示される。このようにして、ノズル行110Cに属するすべてのノズル108C、及びノズル行110Dに属するすべてノズル108Dを順次駆動させてノズルチェック用パターン形成エリア244の開始位置246に、縦線232C及び縦線232Dを含む1段分の縦線群230Cが形成される。
図18(c)は、ノズルチェック用パターンの最終段(図中最下段のユーザレイアウトエリア264に最も近い段)の縦線群(図18(e)に符号230Fを付して図示する。)を構成する縦線232Eが形成される状態が図示されている。縦線232Eは、ヘッドの移動方向最下流側の(図中下端のヘッドと用紙240とを相対的に移動させたときに最初に用紙240と対向する位置に到達する)ノズル行110Eに属するすべてのノズル108Eを用いて形成される。
図18(d)は、縦線232Eと同じ縦線群を構成する縦線232Fが形成される状態が図示される。縦線232Fを形成するノズル行110Fの図中右端のノズル108Fにおける駆動が終了すると、ノズルチェック用パターンが完成する。ノズルチェック用パターンの形成が終了すると、駆動波形が異常ノズル検知用波形から記録用波形へ切り換えられて、ユーザレイアウトエリア264への画像記録が開始される。
図18(e)は、ユーザレイアウトエリア264への画像記録が開始される状態を示す。この状態では、図中最下段のノズル行110Eの左端のノズル108E(図18(c)参照)は、ユーザレイアウトエリア264に位置している。
ここで、図18(d)に示す駆動波形の切り換えが行われるときにおける、ノズル行110Eの図中左端のノズル108Eと、ノズル行110Fの右端のノズル108Fとの副走査方向の距離は、ノズル行110Eからノズル行110Fまでの行数分の距離にノズル行の傾斜分の距離を加えて求められる。このようにして求められる距離が無効領域の副走査方向の距離であり、例えば、ノズル行110Eからノズル行110Fまでの行数をp、ノズル行1行分の副走査方向の距離をΔY、ノズル行の傾斜分の副走査方向の距離をYaとすると、無効領域の副走査方向の距離は、p×ΔY+Yaとなる。
すなわち、主走査方向における縦線232の配置間隔をノズル108のマトリクス配列に対応して適宜選択することで、ノズルチェック用パターンの1段分の縦線群を形成するノズル行の行数差を小さくすることができ、該行数差に起因するノズルチェック用パターンの形成終了位置から画像記録開始位置までの用紙移動方向における距離を最短とすることができ、駆動波形の切り換えに起因して生じる無効領域を低減させることができる。
例えば、1インチあたり1200個のノズル密度で、2048個のノズルを32行64列に配置した場合を考えると、従来技術に係る手順により形成されたノズルチェック用パターンの無効領域は、行ロス分が約9.2mm(31段分)、ノズル傾斜分のロスが約1.3mmとなり、合わせて約10.5mmの無効領域が生じるが、本発明に係る手順により形成されたノズルチェック用パターンの無効領域は、行ロス分を約1.2mm(4段分)以下とすることができ、ノズル傾斜分のロス約1.3mmを合わせても約2.5mm以下とすることができる。したがって、従来よりも無効領域の大幅な低減化が実現される。
上述した実施形態では、用紙240の先端側の余白領域にノズルチェック用パターンが形成される場合について説明したが、用紙240の後端側の余白領域にノズルチェック用パターンが形成される場合にも、本発明を適用することができる。
用紙240の後端側の余白領域にノズルチェック用パターンが形成される場合は、図18(a)〜(e)の上下を反転させ、図18(e),図18(d),図18(c),図18(b),図18(a)の順にノズルチェック用パターンを形成すればよい。かかる態様では、ユーザレイアウトエリア264に最も近い1段目のパターン230Fは、ヘッドと用紙240とを相対的に移動させたときに最後に用紙240と対向する位置に到達するノズル行110Eに属するすべてのノズル108Eを用いて形成される。
〔インライン検出部の構成例〕
図19は、インライン検出部144の構成図である。インライン検出部144は、ラインCCD270と、そのラインCCD270の受光面に画像を結像させるレンズ272、光路を折り曲げるミラー273とを一体とした読取センサ部274が、並列に配置され、記録媒体上の画像を夫々読み取る。ラインCCD270はRGB3色のカラーフィルタを備えた色別のフォトセル(画素)アレイを有し、RGBの色分解によりカラー画像の読み取りが可能である。例えば、RGB3ライン夫々のフォトセルアレイの隣には、1ライン中の偶数画素と奇数画素の電荷とを夫々、別々に転送するCCDアナログシフトレジスタを備える。
具体的には、画素ピッチ9.325μm、7600画素×RGB、素子長(フォトセルの配列方向のセンサ幅)70.87mmのNECエレクトロニクス株式会社のラインCCD「μPD8827A」(商品名)を用いることができる。
ラインCCD270は、フォトセルの配列方向と記録媒体が搬送されるドラムの軸が平行になる配置形態で、固定される。
レンズ272は搬送ドラム(図1の圧胴64)上に巻かれた記録媒体上の画像を所定の縮小率で結像させる縮小光学系のレンズである。例えば、0.19倍に画像を縮小するレンズを採用した場合、記録媒体上の373mm幅がラインCCD270上に結像される。このとき、記録媒体上の読み取り解像度は518dpiとなる。
図19のようにラインCCD270と、レンズ272、ミラー273とを一体とした読取センサ部274を搬送ドラムの軸と平行に移動調整可能とし、2つの読取センサ部274の位置を調整して、夫々の読取センサ部274が読み取る画像が僅かに重なる配置とする。また、図19には示されていないが、検出のための照明手段として、例えば、キセノン蛍光ランプがブラケット75の裏面、記録媒体側に配置され、定期的に白色基準板が画像と照明の間に挿入され、白基準を測定する。その状態でランプを消灯して、黒基準レベルを測定する。
ラインCCD270の読み取り幅(一度に検査できる範囲)は、記録媒体における画像記録領域の幅との関係で多様な設計が可能である。レンズ性能と解像度の観点から、例えば、ラインCCD270の読み取り幅は、画像記録領域の幅(検査対象となり得る最大の幅)の1/2程度としている。
ラインCCD270によって得られた画像データは、A/Dコンバータ等によってデジタルデータに変換され一時的なメモリへ格納された後、システムコントローラ172を介して処理され、画像メモリ174へ格納される。
〔吐出異常補正シーケンスのフローチャート〕
図20は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置における吐出異常補正のシーケンスを示すフローチャートである。本例の吐出異常補正は、印刷ジョブによる連続印刷の開始前に、オフラインでテストチャートを測定して補正データを取得する事前補正(オフライン補正)の工程(ステップS12〜S16)と、連続印刷中に装置内のセンサ(インライン検出部144)でノズルチェック用パターンを測定することで、連続印刷を実施しながら(印刷を中断することなく)、適応的に補正を行うインライン補正の工程(ステップS20〜S36)とを組み合わせたものとなっている。
まず、オフライン測定用のテストチャートを出力し(ステップS12)、その印刷結果をオフラインスキャナ(不図示)によって詳細に測定する(ステップS14)。ここでいうテストチャートには、吐出異常ノズルの有無や吐出異常ノズルの位置を特定するのに適したラインパターンが含まれる。もちろん、濃度ムラなどの測定に適した濃度パターンなど、他の目的を達成するためのものが含まれてもよい。オフライン測定の場合は、記録媒体14の記録面全体(画像形成領域及び非画像領域)にテストパターンを形成することができる。
1枚の記録媒体にこれらテストパターンを組み合わせて印字してもよいし、各テストパターンの要素を複数枚の記録媒体に分けて印字してもよい。こうして出力されたテストチャートの印字結果をフラットベットスキャナなどの画像読取装置を利用して読み取り、吐出異常ノズルの位置を特定した吐出異常ノズルデータなど、画像補正等の処理に必要な各種データを生成する。なお、オフラインスキャナは、装置内のインライン検出部144よりも高解像度(高分解能)のものを使用することが望ましい。
こうして得られた各種データは、通信インターフェースや外部記憶媒体(リムーバブルメディア)等を介して、インクジェット記録装置10に入力される。
このオフライン測定結果を利用して、補正データが作成される(ステップS16)。この補正データは、システムのパラメータとして所定の記憶部に記憶される。ステップS16において補正データが作成されると、適宜のタイミングで多数枚の連続印刷を行う印刷JOBが開始される(ステップS20)。印刷開始後は、インライン補正が行われる。
すなわち、印刷が開始されると、用紙先端部の非画像部に、異常ノズル検知用波形でインラインノズルチェック用パターンを形成し(ステップS22)、画像部については通常の描画用の駆動波形(記録用波形)によって目的の画像が描画記録される(ステップS24)。
なお、ステップS22において形成されるノズルチェック用パターンは、用紙後端部の非画像部に形成してもよい。かかるノズルチェック用パターンは、図17,18に図示した1オンNオフパターンが適用され、該ノズルチェック用パターンの形成方法は、図18(a)〜(e)を用いて説明した方法が適用される。
ノズルチェック用パターン及び画像部の描画記録が完了した記録媒体14は、搬送手段によって搬送され、インライン検出部144によってノズルチェック用パターンの印字結果が読み取られる(ステップS26)。この読み取り情報を基に、吐出異常ノズルの有無が判定される(ステップS28)。
吐出異常ノズルの判断基準に関する情報は、予めROM175等に記憶されており、画質モードに応じた判定基準値が設定される。例えば、飛翔曲がりによる着弾誤差の許容値や、ライン幅の許容値(吐出量の許容値)、濃度値など、1つ又は複数の評価項目に関する基準値が規定される。この基準値に従い異常ノズルの有無が判断され、異常ノズルが特定される。
ステップS28において、吐出異常(不吐出や飛翔曲がり)のノズルが存在しなければ、ステップS34に進む。
その一方、ステップS28において、吐出異常のノズルが存在しているときは、当該吐出異常ノズルの位置を特定し、この吐出異常ノズルを画像部の描画時に使用しない不吐出ノズルとして取り扱うべく、不吐出ノズルを示す不吐出ノズルデータを更新する(ステップS30)。
そして、この測定結果を基に画像データが補正され、補正後の画像データが生成される(ステップS32)。ここでいう「画像データ」とは、量子化処理前の画像データ(多値の画素値を持つ画像データ)である。すなわち、補正後の画像データに対して量子化処理が施され、ドットデータが生成される。一方、量子化処理後のドットデータに対して、吐出異常ノズルにより本来形成されるべきドットの近傍に、吐出異常ノズルの隣接ノズルによる代用ドットを追加するようにドットデータを変更することも可能である。
ステップS34では、描画枚数がカウントされ、描画枚数が指定された枚数に達したか否かが判断される。描画枚数が指定枚数に達していない場合(No判定)は、印刷ジョブが継続されるとともに、ステップS22〜ステップS32の各工程が繰り返し実行される。一方、ステップS34において、描画枚数が指定枚数に達した場合には(Yes判定)、ステップS36に進み、印刷JOBが終了される。
(吐出異常ノズルが多く検出された場合の対処)
図20のステップS28〜S30で説明した工程において、吐出異常ノズルとして検知されたノズル数が所定の規定値を超えた場合には、使用者(ユーザ)に対して警告を行うことが好ましい。例えば、表示部198に警告メッセージを表示し、ヘッドメンテナンスの必要性等についてユーザに注意を喚起する。
或いは、上記の警告に代えて、又はこれと併せて、自動的にヘッドメンテナンスを実行する制御を行う態様も好ましい。この場合は、ヘッドをメンテナンス位置に移動する必要があるため、印刷を中断し、メンテナンス部において、加圧パージ、インク吸引、空吐出、ノズル面のワイピングなどのメンテナンス動作が実施される。
(吐出異常ノズルの補正の他の方法)
吐出異常ノズルの補正として、ノズル駆動の変更による補正(代用打滴)も可能である。例えば、吐出異常ノズルの近隣に位置するノズルを使用して代用打滴を行なうことが挙げられる。すなわち、吐出異常ノズルの駆動信号を常にオフとし、吐出異常ノズルの周辺に位置するノズルのうち非駆動ノズルを吐出異常ノズルが駆動されるタイミングで駆動する。かかる吐出異常ノズルの代用打滴により、当該吐出異常ノズルによって本来形成されるドットの近隣に代用ドットが形成され、吐出異常ノズルに起因するドット抜けの視認性を低下させることができる。
上記の如く構成されたノズルチェック用パターンの形成方法によれば、吐出異常を検出するために用紙の非画像部に形成される1オンNオフパターンを有するノズルチェック用パターンを形成する際に、主走査方向と角度βをなす行方向Vに沿って配列された少なくとも1つのノズル行に属するすべてのノズルを使用して、該ノズルチェック用パターンの一段分の縦線群(ドット群)を形成するので、ノズルチェック用パターンを形成する際に適用されるノズル検知用波形と用紙の画像部へ描画を行なうための描画記録用の波形との切り換え時に生じる無効領域が低減化され、ノズルチェック用パターンを形成するための非画像部を有効に使用することができる。
〔他の装置への応用例〕
上記の実施形態では、グラフィック印刷用のインクジェット記録装置への適用を例に説明したが、本発明の適用範囲はこの例に限定されない。例えば、電子回路の配線パターンを描画する配線描画装置、各種デバイスの製造装置、吐出用の機能性液体として樹脂液を用いるレジスト印刷装置、カラーフィルタ製造装置、マテリアルデポジション用の材料を用いて微細構造物を形成する微細構造物形成装置など、液状機能性材料を用いて様々な形状やパターンを得るインクジェットシステムにも広く適用できる。
〔付記〕
上記に詳述した実施形態についての記載から把握されるとおり、本明細書では以下に示す発明を含む多様な技術思想の開示を含んでいる。
(発明1):記録媒体へ液滴を吐出する複数のノズルが二次元配列された構造を有するインクジェットヘッドと、前記インクジェットヘッドと記録媒体とを所定の移動方向に沿って相対的に移動させる移動手段と、同一の駆動タイミングで駆動されるノズルを同一の駆動波形又は同一の駆動波形群を用いて駆動するように駆動制御を行う駆動制御手段と、記録媒体の画像形成領域へ画像記録を行う際に用いられる記録用波形と、前記画像形成領域の外側に隣接する先端側又は後端側の余白領域へノズルチェック用パターンを形成する際に用いられる異常ノズル検知用波形との切り換えを行う駆動波形切換手段と、を備え、前記インクジェットヘッドは、前記移動方向と直交する主走査方向又は前記主走査方向と所定の角度をなす斜め方向の行方向と、前記移動方向と平行の副走査方向又は前記副走査方向と所定の角度をなす斜め方向の列方向と、に沿って複数のノズルが並べられた構造を有し、前記駆動制御手段は、副走査方向に伸びる縦線が主走査方向に所定の間隔をおいて並べられた1段分の縦線群を有し、かつ、主走査方向の位相をずらした複数段分の縦線群が副走査方向に沿って並べられるように形成されるノズルチェック用パターンを前記インクジェットヘッドの画像記録に使用されるすべてのノズルを用いて形成し、1段分の縦線群を形成する際に1行のノズル行に属するすべてのノズルを用いるか、又は隣接しない複数のノズル行に属するすべてのノズル用いるように、各ノズルの駆動を制御することを特徴とするインクジェット記録装置。
本発明によれば、画像記録領域へ画像記録を行う際に用いられる記録用波形と、余白領域にノズルチェック用パターンを形成する際に用いられる異常ノズル検知用波形との切り換え時における無効領域が低減化され、ノズルチェック用パターンが形成されるための領域が確保される。したがって、1枚の記録媒体の中に十分なノズルチェック用パターンを形成することができるので、不安定ノズルの検出頻度が向上し、検出精度の向上につながる。
また、ノズルチェック用パターンを形成するための領域をより小さくすることができるので、記録媒体の全体サイズが一定であれば、画像形成領域をより大きくすることができ、一方、画像形成領域のサイズが一定であれば、記録媒体の全体サイズを小さくすることができる。
インクジェットヘッドは、複数のノズルに対応して設けられる複数の液室と、複数の液室に対応して設けられる複数の吐出素子と、を備え、ノズルの配列に対応させて液室及び吐出素子を配設して構成される態様がある。
インクジェットヘッドは、ノズルからカラーインクを吐出する形態以外にも、ノズルからレジスト液、樹脂液などの液体を吐出して所望のパターンを形成する形態がある。
異常ノズル検知用波形は、吐出異常に起因する現象が起こりやすくなることを意図して生成された駆動波形が好ましい。
1段分の縦線群を構成する縦線の主走査方向の配置間隔は、該ノズルチェック用パターンを読み取る読取手段の読取解像度に応じて決められる。すなわち、複数のノズル行に属するすべてのノズルを用いてノズルチェック用パターンを形成する際は、同一の縦線群を形成するノズル行の間の行数は、(ヘッドの記録解像度)/(読取手段の読取解像度)の値以上となる。
(発明2):発明1に記載のインクジェット記録装置において、前記駆動制御手段は、前記縦線の主走査方向における間隔が前記ノズル配列に対応した不等間隔となるノズルチェック用パターンを形成するように各ノズルの駆動制御を行うことを特徴とする。
すなわち、主走査方向の高記録密度化を目的として、ノズル列間の配置ピッチをより小さくし、行方向のノズル配置間隔を不等間隔としたヘッドを用いて、1つのノズル行に属するすべてのノズルを使用してノズルチェック用パターンの1段分を形成すると、該1段分の縦線列の縦線間隔は不等間隔となる。
(発明3):発明1又は2に記載のインクジェット記録装置において、前前記駆動制御手段は、前記画像形成領域の先端側の余白領域へ前記ノズルチェック用パターンの前記画像形成領域に最も近い段を形成する際に、前記記録ヘッドと前記記録媒体とを相対的に移動させるときに記録媒体と対向する位置に最初に到達するノズル行に属するすべてのノズルが用いられるように各ノズルの駆動制御を行うことを特徴とする。
かかる態様によれば、前記記録ヘッドと前記記録媒体とを相対的に移動させたときに記録媒体と対向する位置に最初に到達するノズル行が無効領域を通過した後に、直ちに画像記録領域への画像記録を開始することができる。
(発明4):発明1又は2に記載のインクジェット記録装置において、前記画像形成領域の後端側の余白領域へ前記ノズルチェック用パターンの前記画像形成領域に最も近い段を形成する際に、前記ヘッドと前記記録媒体とを相対的に移動させるときに記録媒体と対向する位置に最後に到達するノズル行に属するすべてのノズルが用いられるように各ノズルの駆動制御を行うことを特徴とする。
かかる態様によれば、前記記録ヘッドと前記記録媒体とを相対的に移動させたときに記録媒体と対向する位置に最後に到達するノズル行が画像形成領域を通過した後に、直ちに画像形成領域の書き終り側の余白領域へノズルチェック用パターンの形成を開始することができる。
(発明5):発明1乃至4のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドは、複数のノズルが二次元配列された構造を有するサブヘッドをつなぎ合わせた構造を有し、前記駆動制御手段は、前記サブヘッドごとに所定の駆動波形又は駆動波形群を用いて当該サブヘッドに設けられる各ノズルの駆動を制御することを特徴とする。
かかる態様において、サブヘッドごとに駆動制御が行われることで、ヘッド全体を一括して制御する態様に比べて、駆動制御手段の制御負荷を分散化させることができる。
(発明6):発明5に記載のインクジェット記録装置において、前記インクジェットヘッドは、複数のサブヘッドが主走査方向に沿って一列に並べられた構造を有することを特徴とする。
かかる態様において、各サブヘッドの平面形状を略平行四辺形とし、サブヘッド間のつなぎ目においてオーバーラップ部を設ける態様が好ましい。
(発明7):発明1乃至6のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記記録用波形及び前記異常ノズル検知用波形を生成する波形生成手段と、前記波形生成手段により生成された波形を有する駆動波形又は駆動波形群を生成する駆動波形生成手段と、画像データに基づいて各ノズルを選択的にオンオフさせる駆動信号を生成する駆動信号生成手段と、を備えたことを特徴とする。
かかる態様において、記録用波形を生成する手段と、異常ノズル検知用波形を生成する手段とを別々に備える態様も可能である。
(発明8):発明1乃至7のいずれかに記載のインクジェット記録装置において、前記ノズルチェック用パターンを読み取る読取装置から得られる読取情報に基づいて吐出異常となっている異常ノズルを判定する異常ノズル判定手段と、異常ノズルと判定されたノズルに対して所定の処理を行なう処理手段と、を備えたことを特徴とする。
かかる態様における処理手段の形態として、異常ノズルと判定されたノズルのデータ値を最小値(又は最大値)として再演算を行う補正処理や、異常ノズルと判定されたノズルの隣接ノズルを用いて代用打滴を行なう処理が可能である。すなわち、発明8に係る処理手段は画像データの補正を行うなどの補正処理を行う補正手段として機能させる態様が可能である。
(発明9):発明8に記載のインクジェット記録装置において、前記処理手段は、異常ノズルと判定されたノズルを使用しないように前記異常ノズルに対応した処理を行うことを特徴とする。
かかる態様において、画像データを補正する場合には、当該異常ノズルに対応する画素値をゼロとし、かかる補正後の画素値に基づき量子化処理を行なうことが考えられる。また、異常ノズルの駆動を変更して補正する場合には、該異常ノズルの駆動を停止させる(駆動信号を非印加とする)ことが考えられる。
かかる態様における補正処理の一例として、マスク化処理(不吐化処理)が挙げられる。
(発明10):発明8又は9に記載のインクジェット記録装置において、前記読取装置は、当該インクジェット記録装置に具備されるインラインセンサであることを特徴とする。
かかる態様によれば、インライン検査により、逐次吐出異常ノズルの補正が可能である。
(発明11):記録媒体へ液滴を吐出する複数のノズルが二次元配列された構造を有するインクジェットヘッドと記録媒体とを所定の移動方向に沿って相対的に移動させる移動工程と、同一の駆動タイミングで駆動されるノズルを同一の駆動波形又は同一の駆動波形群を用いて駆動するように駆動制御を行う駆動制御工程と、記録媒体の画像形成領域へ画像記録を行う際に用いられる記録用波形と、前記画像形成領域の外側に隣接する先端側又は後端側の余白領域へノズルチェック用パターンを形成する際に用いられる異常ノズル検知用波形との切り換えを行う駆動波形切換工程と、前記ノズルチェック用パターン形成を用いて吐出異常のノズルを検出する検出工程と、を含み、前記インクジェットヘッドは、前記移動方向と直交する主走査方向又は前記主走査方向と所定の角度をなす斜め方向の行方向と、前記移動方向と平行の副走査方向又は前記副走査方向と所定の角度をなす斜め方向の列方向と、に沿って複数のノズルが並べられた構造を有し、前記駆動制御工程において、副走査方向に伸びる縦線が主走査方向に所定の間隔をおいて並べられた1段分の縦線群を有し、かつ、主走査方向の位相をずらした複数段分の縦線群が副走査方向に沿って並べられるように形成されるノズルチェック用パターンを前記インクジェットヘッドの画像記録に使用されるすべてのノズルを用いて形成し、1段分の縦線群を形成する際に1行のノズル行に属するすべてのノズルを用いるか、又は隣接しない複数のノズル行に属するすべてのノズル用いるように、各ノズルの駆動が制御されることを特徴とする吐出検出方法。