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JP2011030430A - 脳性麻痺発症仔の作製方法 - Google Patents

脳性麻痺発症仔の作製方法 Download PDF

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JP2011030430A JP2009176683A JP2009176683A JP2011030430A JP 2011030430 A JP2011030430 A JP 2011030430A JP 2009176683 A JP2009176683 A JP 2009176683A JP 2009176683 A JP2009176683 A JP 2009176683A JP 2011030430 A JP2011030430 A JP 2011030430A
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Yoshitaka Kimura
芳孝 木村
Takuya Ito
拓哉 伊藤
Kenichi Funamoto
健一 船本
Toshiyuki Hayase
敏幸 早瀬
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Tohoku University NUC
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Tohoku University NUC
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Abstract

【課題】脳性麻痺の効果的な予防法の開発には、その発症機序の解明が必須であり、そのためには当該発症機序を模倣したモデル動物が必要である。そこで、脳性麻痺発症モデル動物の効率的かつ安定した作製方法を開発し、それを提供する。
【解決手段】低栄養状態に置いた雌個体の胎仔における循環動態をモニタリングしながら虚血、再灌流による低酸素付加処理を施すことによって脳性麻痺発症仔を高効率で、かつ案適して作製することのできる方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、新生児脳障害発症モデルとしての脳性麻痺発症仔の作製方法に関する。
新生児脳障害は、個体によっては重篤な予後をもたらし得る重大疾患である。当該障害の一つである脳性麻痺は、約0.2%の新生児において発生し、その約半数が主として胎児期の脳出血を原因とすることが知られている(非特許文献1)。しかし、脳性麻痺の発生機序は、未だに十分解明されておらず、それ故、当該障害の効果的な予防法や治療法は確立できていない。例えば、現行では、胎児の心拍数をモニターし、早めに帝王切開をする予防法が行なわれているが、この方法を用いても脳性麻痺の発生率を減少させるには至っていない。
脳性麻痺の効果的な予防法の開発には、その発症機序の解明が不可欠である。そのためには当該発症機序を模倣したモデル動物の開発が必要となる。脳性麻痺の症状を模倣したモデル動物としては、ヒツジ及びウサギの胎仔並びにラットの新生仔を用いた報告がある(非特許文献2、3、4)。これらの方法は、いずれも胎仔又は新生仔に30〜45分程度の連続した虚血、低酸素負荷を施し、脳性小児麻痺様の症状を胎仔又は新生仔に発症させている点において共通している。
ヒツジの胎仔を用いた当該モデルは、そのサイズからヒトと同様の手術が施せるという利点がある。しかし、逆に大型であるが故に、他の実験動物と比べて生育時間が長く、かつ場所の制約が大きいという欠点がある。また、脳性麻痺の特徴である運動障害を評価する方法がヒツジでは確立していないという問題もある。
ウサギの胎仔を用いた当該モデルでは、胎仔を虚血状態にするために母個体の後躯の血流を遮断する方法が採用されている。この方法は、術者が子宮や胎仔に直接触れないという点で優れているが、母体に対する影響が大きいという問題がある。
ラットを用いたモデルは、対象が新生仔であるため妊娠期の評価ができないという問題がある。
周産期医学37(4),2007 特集 超低出生体重児の予後 Kusaka T., et al,. 2002, Pediatr Res. Jan; 51(1):20-4. Yenari M.A., et al., 1997, : J. Cereb. Blood Flow Metab., 17, 401-411. Pimentel V.C., et al.,2009, Int J Dev Neurosci., Jun 25. [Epub ahead of print]
本発明は、高確率で脳性麻痺発症モデル動物を作製する方法の開発と提供及びその方法によって得られる脳性麻痺発症モデル動物の提供を目的とする。
近年、母個体の妊娠中や授乳期における栄養状態が胎児や新生児の心血管系に重大な影響を及ぼすことが明らかとなってきた(De Rooij S.R., et al., 2006, Eur. J. Endcrinol. 155:153-160。特に、胎児の循環系やその調節系の発生は、周産期における母個体の栄養状態に大きく左右されることが判明している。
本発明者らは、上記課題を解決するために、これらの知見に基づいて鋭意研究を重ねた結果、低栄養状態に置いた雌個体の胎仔に対して、その胎仔の循環動態をモニタリングしながら虚血及び再灌流による低酸素負荷処理を施すことによって脳性麻痺発症仔を約90%の効率で作製できる方法を開発した。本発明は、当該新たに開発された方法に基づくものであって、以下を提供する。
(1)脳性麻痺発症仔の作製方法であって、(a)雌個体に栄養制限を行い、該個体を低栄養状態にするステップ、(b)雌個体を妊娠させるステップ、(c)妊娠後期の雌個体に麻酔処理を行った後に開腹し、胎仔の循環動態をモニタリングしながら雌個体の子宮動脈及び卵巣動脈の圧迫及び解放によって胎仔に虚血及び再灌流処理を行うステップ、及び(d)雌個体から胎仔を回収するステップを含む前記作製方法。
(2)栄養制限は食餌中の含有タンパク質量の制限である、(1)に記載の作製方法。
(3)虚血及び再灌流処理を2回以上繰り返す、(1)又は(2)に記載の作製方法。
(4)モニタリングは心電図計測及び/又は心拍数計測である、(1)〜(3)のいずれかに記載の作製方法。
(5)モニタリングにおいて子宮動脈及び卵巣動脈の圧迫時における胎仔心拍数の減少により胎仔の虚血を、及び解放時における胎仔心拍数の回復により胎仔の再灌流を、判断する、(4)に記載の作製方法。
(6)胎仔心拍数が正常時胎仔心拍数の半分以下となったときに虚血を、その後、胎仔心拍数が正常時胎仔心拍数に戻ったときに再灌流を判断する、(5)に記載の作製方法。
(7)ステップ(c)において麻酔後の雌個体の循環動態を心電図計測によりモニタリングすることをさらに含む、(1)〜(6)のいずれかに記載の作製方法。
(8)ステップ(d)の後に回収した新生仔を回復させるステップ(e)をさらに含む、(1)〜(6)のいずれかに記載の作製方法。
(9)雌個体が、マウス又はラットである、(1)〜(8)のいずれかに記載の作製方法。
(10)妊娠後期が妊娠14日目〜20日目である、(9)に記載の作製方法。
本発明の作製方法によれば、脳性麻痺発症モデルとしての脳出血仔を高い効率で作製することができる。
開腹した雌個体の子宮角外部から子宮内の胎仔(a)に心電図電極(b)を装着し、かつ血管クレンメ(c)で子宮動脈及び卵巣動脈を閉塞させている図。本図では2匹の胎仔に対して前記処理を行っている。 雌(母)個体の子宮動脈及び卵巣動脈の圧迫及び解放した時の、その雌(母)個体(a及びc)及びその胎仔(b及びd)の心電図(ECG:electrocardiogram)。胎仔心電図における矢印は、R波を示す。 雌(母)個体の子宮動脈及び卵巣動脈の圧迫及び解放した時の雌(母)個体及び胎仔の心拍数(HR:Heart Rate)。 虚血再灌流処理を行った胎仔の脳内超音波画像。 超音波診断装置を用いた仔マウスの脳障害。
1.脳性麻痺発症仔の作製方法
本発明の一の態様は、脳性麻痺発症仔の作製方法である。
本明細書で「脳性麻痺発症仔」とは、脳性麻痺の主たる発症要因となる脳障害、具体的には脳出血を人為的処理によって発生させた胎仔、新生仔又は幼仔をいう。
「脳性麻痺」とは、当該分野で定義されるように、妊娠から生後所定期間内(ヒトの場合には4週以内)までの間に生じた脳の非進行性病変に基づく、永続的、かつ変化し得る運動及び姿勢の異常をいう。本明細書では、特に、妊娠後期に施した人為的処理によって誘発される脳出血に基づく、永続的、かつ変化し得る運動及び姿勢の異常を意味する。
「脳出血」とは、頭蓋内における出血をいう。脳内出血及び脳周囲における出血に大別されるが、本発明においては特に限定しない。
本明細書で「仔」とは、ヒト以外の哺乳動物の仔を意味し、胎仔、新生仔及び幼仔を包含する。
本実施形態は、(1)栄養制限ステップ、(2)妊娠ステップ、(3)虚血再灌流ステップ及び(4)胎仔回収ステップを含む。このうち(1)栄養制限ステップと(2)妊娠ステップは、相互に交換可能であり、いずれを先に行っても構わないが、栄養制限ステップが先に行われることが好ましい。さらに、必要に応じて、胎仔回収ステップ後に(5)新生仔回復ステップを包含することもできる。以下、それぞれのステップについて、例を挙げて、具体的に説明をする。
1−1.栄養制限ステップ
「栄養制限ステップ」とは、雌個体に栄養制限を行い、該個体を低栄養状態にするステップである。
本ステップは、少なくとも妊娠期間を通して雌個体を低栄養状態にすることにより、後述の(3)虚血再灌流ステップ以降の処理で胎仔における脳出血の発生率を飛躍的に高めることを目的とする。
本明細書において「雌個体」とは、ヒト以外の哺乳動物における繁殖可能な成熟雌性個体をいう。哺乳動物の種類は、特に限定はしないが、マウス又はラットが好ましい。いずれも飼育技術が確立しており、飼育に必要なスペースも少なく、発情周期が短い上に、全ゲノム配列をはじめとする多数の遺伝学的情報が集積され、それらの情報検索も可能だからである。マウスは、飼育や操作性の容易性から特に好ましい。
本発明において「栄養制限」とは、対象とする個体に対して、食餌中の特定の栄養素の供給を制限することをいう。例えば、対象とする雌個体が1日あたりに必要とする特定の栄養素の摂取量(1日の必要摂取量)を減少させた給餌することが挙げられる。ここでいう「栄養素」とは、いわゆる五大栄養素と呼ばれるタンパク質、糖質、脂質、ビタミン及びミネラルである。本発明において供給を制限すべき特定の栄養素は、タンパク質であることが好ましい。胎仔の心血管系の発生及び機能に直接資する栄養素であり、胎仔脳出血の発生効率にも関与していると考えられるからである。また、本発明で制限される栄養素は、単独栄養素(例えば、タンパク質)のみならず、二以上の栄養素の組み合わせ(例えば、タンパク質とミネラル)であってもよい。
栄養素の制限量は、制限すべき栄養素の種類や組み合わせ、対象とする雌個体の種類、個体サイズ及び年齢等の諸条件によって異なるため、対象個体に応じて適宜定めればよい。栄養素の制限の一具体例としては、ある栄養素に関して、対象とする雌個体の1日の必要摂取量の70%〜30%、好ましくは65%、60%、55%、50%、45%、40%又は35%に制限すればよい。より具体的には、例えば、対象とする雌個体がマウスであり、制限すべき栄養素がタンパク質の場合には、マウスの1日のタンパク質必要摂取量は、その雌個体に給餌する1日あたりのタンパク質量における通常摂取量の15〜20%、例えば18%であればよい。すなわち、約0.5〜0.75gとなる。
栄養制限した食餌の総カロリー数は、対象とする雌個体が1日に必要とする総カロリー数を保持していることが好ましい。つまり、特定の栄養素の供給量を減じる一方で、それによって不足することとなったカロリーを他の栄養素(脂質又は糖質)で補填することが好ましい。摂取カロリーの低減による雌個体の体力の減退及び衰弱化を防ぐためである。
栄養制限された食餌の調製方法は、特に限定しない。対象動物の種類に応じて当該分野で公知の方法で調製すればよい。例えば、ペースト状の餌を調製する際には、タンパク質を含有する組成物の量を通常の半分量程度に減じる一方、その減じたタンパク質のカロリー相当量をデンプン等で補うように調節し、あとは通常と同じ方法で調製すればよい。また、市販のペレット状の餌のように一部の栄養素の成分調節が困難な場合には、制限すべき栄養素(例えば、タンパク質)を所定量含有する分だけペレットで与え、不足分の(例えば、タンパク質以外の)栄養素は、他の形態で給餌すればよい。
栄養制限のための給餌方法も、特に限定はしない。栄養制限した食餌を与えること以外は、通常の給餌方法と同じでよい。あるいは、通常の食餌と栄養制限した食餌とを組み合わせて給餌してもよい。この場合、制限すべき特定の栄養素が目標制限値(例えば、1日の必要摂取量の50%)を達成できるように、1日の食餌中におけるその栄養素の総摂取量を調節して給餌するようにする。
本明細書で「低栄養状態」とは、特定の栄養素が通常必要とされる量に達していない状態をいう。「通常必要とされる量」は、対象動物の種類、個体サイズ、年齢等の諸条件によって異なるが、雌個体が実験動物(例えば、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、ウサギ、ビーグル犬のようなイヌ又はアカゲザルのようなサル)又は家畜(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ又はヤギ)であれば、一般に前記条件における各栄養素の必要量は公知であることから、それらを利用すればよい。例えば、「National Research Council,Nutrient requirements of laboratory animals: National Academies Press (1995)」に記載の量を参考にすることができる。
「栄養制限を行い、該個体を低栄養状態にする」とは、雌個体に対して前記本発明の栄養制限を行うことによって、その個体を人為的に低栄養状態にすることをいう。栄養制限を開始する時期は、妊娠中期、好ましくは妊娠初期、より好ましくは妊娠前である。雌個体における低栄養状態の期間が長いほど脳出血発症仔を効率的に発生させることができるからである。したがって、栄養制限は、低栄養状態を早期に確立し、またその状態を維持させるため、栄養制限開始後、後述の麻酔処理工程前までの期間を通して、連続的を行うことが好ましい。さらに、栄養制限開始前から又は開始と同時に、雌個体の体重と摂食量を毎日定時に測定し、その健康状態及び制限栄養素(例えば、タンパク質)の摂取量を確認することが好ましい。
本ステップは、本実施形態において次の妊娠ステップと相互に交換が可能である。しかし、前述のように妊娠前から雌個体を低栄養条件に置くことによって脳出血発症仔をより効果的に発生させることができるため、本ステップを先に行うことが好ましい。
1−2.妊娠ステップ
「妊娠ステップ」とは、前記雌個体を妊娠させるステップである。本ステップは、脳出血発症仔を得るために受精卵を何らかの方法によって雌個体の子宮内に着床させることを目的とする。
妊娠方法は、雌個体が結果的に受胎すれば、いかなる方法を用いてもよく、特に限定はしない。例えば、発情期の雌個体と雄個体を自然交配させてもよく、若しくは人為的に膣内に精液を注入してもよく、又は体外受精させた卵等を子宮内に移植してもよい。
前述のように本ステップは、本実施形態において前記栄養制限ステップと相互に交換可能である。本ステップを先に行う場合には、少なくとも妊娠中期には前記栄養制限ステップを開始する。好ましくは妊娠初期、より好ましくは妊娠直後から前記栄養制限ステップを開始することである。
1−3.虚血再灌流ステップ
「虚血再灌流ステップ」とは、妊娠後期の前記雌個体に麻酔処理を行った後に開腹し、胎仔の循環動態をモニタリングしながら雌個体の子宮動脈及び卵巣動脈の圧迫及び解放によって胎仔に虚血及び再灌流処理を行うステップをいう。本ステップは、雌個体の胎仔に脳出血を誘発させるステップであり、本発明における中核的なステップである。
本ステップは、さらなる工程に細分可能であり、麻酔処理工程、開腹工程及び動脈圧迫解放工程を含む。必要に応じて、動脈圧迫解放工程後に閉腹工程を追加することもできる。以下、それぞれの工程について具体的に説明をする。
1−3−1.麻酔処理工程
「麻酔処理工程」は、妊娠後期の雌個体に麻酔処理を行う工程である。
本明細書でいう「妊娠後期」とは、胎仔の発生及び成長がほぼ完了している時期をいう。この時期の胎仔は、通常、開腹術により子宮外に取り出されても自力生存が可能な状態又は自力生存が可能な状態の直前にまで成長している。妊娠期間は動物種によって異なるため、妊娠後期に該当する時期もその動物ごとに異なる。例えば、動物種がマウス又はラットの場合、本発明における妊娠後期は、通常、妊娠14日目〜20日目、好ましくは妊娠16〜18日目、より好ましくは妊娠17日目である。また、ウサギの場合には、妊娠25〜35日目である。ここで、妊娠第1日目は、通常、精子注入日(交尾日を含む)又は受精が同定できる場合には受精日とする。例えば、自然交配によって受精させた場合には交尾日を、受胎可能な雌個体の子宮内に人為的に精子を注入した場合にはその注入日を、また体外受精させて受精卵を子宮内に移植した場合には体外受精日を、それぞれ妊娠第1日目とする。
「麻酔処理」は、当該分野で公知の麻酔薬を対象とする動物種に対して公知の量で、公知の方法によって行えばよい。麻酔薬としては、例えば、ケタミン、プロボフォール、ベントバルビタール、プロカイン、ブピバカイン、セボフルラン、イソフルラン等が挙げられる。麻酔薬と併用して麻酔前投与剤を投与してもよい。麻酔前投与剤としては、例えば、キシラジン、メデトミジン、ジアゼパム、ドキサプラム、アセプロマジン、ブトルファノール等が挙げられる。麻酔薬及び麻酔前投与薬の投与量は、投与する動物種、個体の大きさ、年齢、健康状態(妊娠中であることを考慮する)、必要な麻酔時間、麻酔方法、併用適合性、モニタリングの結果等を考慮して当該分野で公知の投与量に基づいて適宜定めるようにする。麻酔時間は、本ステップの開始から完了までに必要な時間以上であることが好ましい。例えば、対象とする動物種にもよるが、通常は45分〜2時間あればよい。また、麻酔方法は、原則として、使用する麻酔薬に適した方法を用いる。全身麻酔又は局所麻酔のいずれでもよいが、全身麻酔が好ましい。投与方法は、注射(皮下、筋肉内、静脈内、腹腔内、脊髄内を含む)、吸引等、使用する麻酔薬に適した方法を使用する。注射の場合、胎仔の影響を考慮して、より影響の少ない皮下注射が好ましい。吸引方法の場合には、麻酔器のような適当な装置を使用することも可能である。また、必要に応じていくつかの麻酔を組み合わせて使用することもできる。例えば、ケタミンを注射して全身麻酔を行った後、麻酔状態を継続させるためイソフルランを吸引させてもよい。麻酔処理の一具体例として、成熟雌マウスに全身麻酔で約1時間麻酔をする場合には50mg/mlのケタミン0.2mlと20mg/mlのキシラジン0.05mlを生理食塩水にて1mlに希釈した混合液を0.15ml〜0.3mlで皮下投与し、イソフルラン0.5%吸入で維持すればよい。麻酔処理により雌個体が沈静化した後、次の開腹工程を開始する。
1−3−2.開腹工程
「開腹工程」は、麻酔処理した雌個体を開腹し、子宮内の胎仔に対して次の圧迫解放工程を行うための準備をする工程である。
まず、開腹前に雌個体の腹部及び/又は腰部の体毛を、例えば、脱毛クリーム等を用いて、除去することが好ましい。手術を円滑に行うためと、細菌感染を防止するためである。以降の処理は術中の雌個体の体温低下を防止するため、適当な温度に加温した環境下(例えば、室内を30℃及び手術台を30〜36℃程度に加温)で行うことが好ましい。
次に、必要に応じて、麻酔後の雌個体に心電図電極を装着する。手術中の雌個体における循環動態をモニタリングすると共に、次の胎仔虚血再灌流工程において胎仔の循環動態と対比するためである。心電図電極の装着方法は、公知の方法を用いればよい。例えば、「動物の心電図・心エコー・血圧・病理学検査:アドスリー」に記載されている方法に従えばよい。本明細書において「循環動態」とは、血流の増減、拍動数(心拍数)、心電等の循環器及び/又は血液状態の変動をいう。
続いて、剪刀を用いて雌個体の皮膚及び腹壁を正中切開する。開口部の大きさは、子宮を露出できる程度でよい。雌個体の体力を消耗させないため必要以上大きく開腹しないことが好ましい。開腹後、子宮内の胎仔を目視にて確認し、子宮を露出させる。この時、例えば、マウスやラットのように子宮角で妊娠する動物種の場合には、左右の子宮角のそれぞれを確認した後、胎仔の存在する少なくとも一方の子宮角を腹腔内から露出させればよい。なお、開腹術の詳細については、当該分野の公知方法に基づいて行えばよい。例えば、「図解・実験動物技術集I:アドスリー」に記載の方法に従って実行することができる。
露出させた子宮内の胎仔の循環動態を次の胎仔虚血再灌流工程でモニタリングするために、脳内出血を誘発させる胎仔に対してモニタリング手段を施す。モニタリング手段は、胎仔の循環動態が確認できる方法であれば特に限定はしない。例えば、心電図装置を用いた心電図及び/又は心拍数又は超音波血流計若しくは超音波画像装置を用いた超音波照射法が挙げられる。複数のモニタリング手段を組み合わせて使用してもよい。例えば、心電図装置と超音波画像装置を組み合わせて、心電図装置で胎仔の心拍数を、超音波画像装置で胎仔脳血流をモニタリングすることもできる。モニタリングのための胎仔の処理は、それぞれの方法及び/又は装置に応じて公知の方法で行えばよい。例えば、胎仔の心電図及び/又は心拍数をモニタリングするのであれば、子宮壁上から個々の胎仔の胸部を心電図電極(皿電極)で挟み込むようにして装着すればよい。モニタリングする胎仔の数は、特に限定しない。必要とする脳性麻痺発症仔の数、モニタリング装置の許容性等を考慮して適宜定めればよい。子宮内の全胎仔にモニタリングをする場合を除き、モニタリングをした胎仔の子宮内における位置等を記録しておく。後述する胎仔回収ステップにおいて、モニタリング処理を行った胎仔を選択的に取り出すためである。
胎仔にモニタリング手段を施した後は、乾燥を防止するため、露出させた子宮を速やかにガーゼ等で覆い、温生理食塩水で子宮をはじめとする開腹部を加湿することが好ましい。
1−3−3.動脈圧迫解放工程
「動脈圧迫解放工程」は、前記露出させた子宮内の胎仔に対して虚血及び再灌流を負荷するために、雌個体の子宮動脈及び卵巣動脈を圧迫及び解放して、胎仔の脳出血を誘発させる工程である。
「虚血」とは、血管、主として動脈の器質的障害(例えば、狭窄、中断)によって血液の供給が欠乏又は途絶すること及びその状態をいう。本明細書における虚血とは、局所的なものに限られず、全身的な虚血を包含する。特に、本発明では、胎仔における全身性の乏血状態を示す。
本発明の虚血は、雌個体の子宮動脈及び卵巣動脈の圧迫によって人為的に引き起こされる。子宮動脈及び卵巣動脈は、通常、それぞれ2本存在するが、胎仔に対して確実に虚血を負荷するためにはそれぞれ両方を圧迫することが好ましい。子宮動脈及び卵巣動脈に加えて、生殖器、主に胎盤に血液を供給し得る他の動脈を圧迫してもよい。本操作によって、子宮内の胎仔を虚血にすることができる。本明細書で「圧迫」とは、前記血管内の血流を減少又は遮断することであり、例えば、血管外壁を径方向に一方向から押さえつけること又は対向する2方向から挟み込むこと、血管を血管外周に沿って絞り込むこと、及びそれらの組み合わせ等が挙げられる。径方向に対して血管外壁を対向する2方向から挟み込む方法は、血管に対する影響が少なく、血流を十分に遮断できるため好ましい。圧迫方法は、前記血管内の血流を減少又は遮断することができれば特に限定はしない。一般的には、血管把持器、例えば、血管クレンメ、血管把持鉗子等を使用することが好ましい。
「再灌流」とは、前記圧迫した血管内の血流を再開させること及び再開させた状態をいう。前記虚血に対応する状態であって、本発明では、特に胎仔の全身の血流を再開させることをいう。
本発明の再灌流は、子宮動脈及び卵巣動脈の解放、すなわち、前記虚血操作において雌個体に行った子宮動脈及び卵巣動脈の圧迫を解除することによって達成される。具体的には、把持器を用いて子宮動脈及び卵巣動脈を圧迫していた場合であれば、その把持器による圧迫を弱める又は完全解放すればよい。それによって減少していた又は遮断されていた子宮動脈及び卵巣動脈内の血流が再開し、胎仔に血液が再供給されることで、胎児は虚血を脱する。
虚血条件、すなわち、動脈の圧迫強度又は圧迫時間は、対象とする生物の種類、胎齢、雌個体の心拍数若しくは健康条件等の諸条件によって異なる。一例を挙げると、胎齢17日目のマウス胎仔に対して、雌個体の子宮動脈及び卵巣動脈の全てを圧迫し、血流を完全遮断することで虚血を負荷する場合には、1回の連続した圧迫時間は、通常、2分〜7分、好ましくは3分〜6分、より好ましくは5分である。動脈への圧迫を弱めて若干の血流を許容するのであれば、圧迫時間は、これよりも長くすることができる。
再灌流条件、すなわち、動脈の解放の程度又は解放時間(後述する虚血及び再灌流を複数回繰り返す場合のみ)は、直前の虚血条件、対象とする生物の種類、胎齢、雌個体の心拍数若しくは健康条件等の諸条件によって異なるため、諸条件により適宜勘案する。一例を挙げると、胎齢17日目のマウス胎仔に対して、直前の虚血条件が雌個体の子宮動脈及び卵巣動脈の全てを圧迫し、その血流を完全遮断していた場合には、前記全ての動脈の圧迫を完全解放し、2分〜7分、好ましくは3分〜6分、より好ましくは少なくとも5分、血流を再開させて胎仔を虚血から脱するようにする。
前述のように、本ステップでは胎仔に対して全身性の虚血及び再灌流を負荷する。しかしながら、上記虚血及び再灌流条件は、結局のところ術者の主観的及び/又は経験的要素によるところが大きく、一定の虚血及び再灌流負荷を安定的に再現良く行うことは、通常困難である。例えば、虚血及び再灌流の操作において、虚血の負荷が弱い場合には胎仔に脳出血を誘発させることはできず、逆に虚血の負荷が大き過ぎる場合又は再灌流における回復した血流が不十分な場合には胎仔が死亡することになる。前述したように、従来の脳性麻痺発症モデルでも同様の虚血及び低酸素負荷処理を行っていたにもかかわらず、脳性麻痺様症状の発症率が非常に低かった原因の一つとしてこの点が挙げられる。
本発明では、前記開腹ステップで胎仔に施したモニタリング手段を用いて、胎仔の循環動態をモニタリングすることによって、胎仔の虚血再灌流を的確に評価し、再現的に脳出血を誘導する上で必要十分な、かつ胎仔を死亡させない虚血再灌流負荷を胎仔に与えることができる。
胎仔の循環動態のモニタリングによる胎仔の虚血再灌流評価としては、例えば、心電図装置をモニタリング手段に用いた場合であれば、そのモニタリングの結果に基づいて、子宮動脈及び卵巣動脈の圧迫時における胎仔心拍数の減少により虚血と、及び該動脈の解放時における胎仔心拍数の回復により再灌流と、それぞれ評価する方法が挙げられる。具体的には、例えば、胎仔正常心拍数が約半分に低下した状態(例えば、マウスの場合であれば、胎仔正常心拍数200〜250bpmが100bpm程度に低下した状態)を虚血とし、正常心拍数程度以上(例えばマウスの場合であれば200bpm以上)に回復すれば再灌流と判断すればよい。超音波による血流観察では画像の暗化と拍動の消失により虚血を、また明化と拍動の再開により再灌流を判断することができる。
また、雌個体の循環動態をモニタリング可能なように処置した場合であれば、雌個体のモニタリング結果と対比しながら胎仔に虚血及び再灌流を負荷することがより好ましい。具体的には、例えば、雌個体の循環動態(例えば、心電図や心拍数)にほとんど変化がなく、胎仔の循環動態のみに圧迫解放に対応した変化が認められる場合には、胎仔に対する虚血及び再灌流が適切に行われていることを意味する。一方、本工程において雌個体の循環動態が変動している場合には、胎仔の循環動態が変動していても、この胎仔の変動は母体の循環動態の影響であって、胎仔に対する虚血及び再灌流が実際には適切に行われていない可能性があると評価できる。
なお、前記虚血及び再灌流処理は、少なくとも2回繰り返すことが好ましい。より好ましくは少なくとも3回である。胎仔に虚血及び再灌流を繰り返し負荷することにより、より効率的に脳出血を誘発することができるからである。この場合、各回の虚血及び再灌流処理の虚血期間と再灌流期間は、必ずしも同一にする必要はなく、モニタリングの結果に基づく胎仔の状態に応じて適宜調節することができる。通常は、同一期間で行えばよい。
1−3−4.閉腹工程
「閉腹工程」とは、動脈圧迫解放工程を行った後、子宮を元の状態に戻して閉腹する工程をいう。前記「動脈圧迫解放工程」終了後に直ちに行うことが好ましい。雌個体への負担減、早期回復のためである。
本工程は、妊娠期間から又は目視により胎仔が子宮外に取り出されても自力生存ができない状態にあると判断された場合には必須の工程である。したがって、自力生存が可能な状態にまで成長していると判断された場合には、本工程は必ずしも行わなくともよい。しかしながら、前記「麻酔処理工程」で雌個体に麻酔処置を行っているため、胎仔にも麻酔が移行している可能性がある。したがって、代謝により麻酔薬が胎仔から除去される時間を勘案した場合、自力生存が可能な状態にまで成長している場合であっても、本工程を行うことが好ましい。
閉腹は、切開した部位を当該分野で公知に方法により縫合する。具体的には、例えば、筋層と皮膚をそれぞれ連続縫合にて閉腹すればよい。
雌個体に心電図電極を装着している場合には、電極は閉腹前後のいずれで外しても構わない。雌個体の心電図を観察しながら閉腹処理を行うのであれば、処理後に外せばよい。また、雌個体に吸引麻酔を処置していた場合には、閉腹後に麻酔器を外し、雌マウスの覚醒を待つ。
なお、閉腹後に子宮収縮による分娩が誘発されないように、所定の時間ごとに子宮収縮抑制剤を適量投与することが好ましい。子宮収縮抑制剤には、公知の薬剤を使用すればよい。例えば、塩酸イソクスプリン、塩酸ピペリドレート、塩酸リトドリン等が利用できる。これらは、当該分野で公知の処方に従って使用することができる。
1−4.胎仔回収ステップ
「胎仔回収ステップ」とは、上記ステップを経た雌個体から胎仔を回収するステップである。
本ステップは、前記虚血再灌流ステップの6時間〜24時間後、好ましくは8時間〜15時間後、より好ましくは8〜12時間後に行う。
胎仔の回収方法は、子宮切開による人為的な胎仔の取り出し、いわゆる帝王切開が好ましい。虚血再灌流処置を施した胎仔を選択的に、かつ確実に回収できるからである。なお、自然分娩でもよいが、雌個体に開腹処理を行っていることから通常は困難である。
帝王切開により胎仔を回収する場合、例えば、マウスやラットのような小型動物であれば、母個体を胎仔の回収直前に安楽殺することが好ましい。安楽殺の方法は、その雌個体の種類で公知の方法によって行えばよい。ただし、胎仔に影響を及ぼす可能性があることから薬剤投与(ガスを含む)、感電及び放血による方法は好ましくない。具体的には、例えば、頚椎脱臼、断頭又は頭部打撃が好ましい。また、イヌやヒツジ等のような中大型動物の場合であれば、胎仔の回収前に雌個体に麻酔処理を施すことが好ましい。麻酔方法については、前記「1−3−1.麻酔処理工程」に記載の方法等に準じて行えばよい。このとき雌個体から胎児に移行し得る麻酔の影響を極力回避したいのであれば、「牛の外科マニュアル:チクサン出版」の記載などを参考にキシラジン等の局所麻酔を行えばよい。必要であれば、胎仔回収後に閉腹を行い、雌個体を生存させることも可能である。
開腹方法は、前述の「1−3−2.開腹工程」に記載の方法に準じて行えばよい。また、子宮の切開方法及び胎仔の取り出しは、公知の技術である。例えば、「図解・実験動物技術集I:アドスリー」に記載の方法に準じて実行すればよい。
なお、回収した新生仔(本明細書では回収後の胎仔を「新生仔」と呼ぶ)の体温低下を防止し、蘇生を円滑に行うために、手術台や手術室は30〜37℃程度で加温しておくことが好ましい。また、胎仔又は新生仔の乾燥を防ぐため、手術室内を適当に加湿しておくことが好ましい。
以上の一連のステップにより、脳性麻痺発症仔を作製することができる。
本発明の脳性麻痺発症仔の作製方法によれば、これまで人為的誘発が困難であった脳出血を有する仔を高い効率で作製することができる。後述する実施例2で示すようにこのような脳出血仔は、高頻度で脳性麻痺を発症することから、本発明の脳性麻痺発症仔の作製方法によれば、脳性麻痺発症モデルを人為的に、かつ効率的に提供することが可能となる。それ故、本発明の方法で得られる脳性麻痺発症仔は、詳細な脳性麻痺発症機序の解明、さらにその結果に基づく効果的な予防法や治療法の開発のためのモデルとなり得る。
1−5.新生仔回復ステップ
一実施形態として、本発明の脳性麻痺発症仔を作製方法は、前記胎仔回収ステップ後に、必要に応じて、さらに新生仔開腹ステップを含むことができる。
「新生仔回復」ステップとは、前記胎仔回収ステップ後、回収した新生仔に対して蘇生処理を施し、新生仔の自力活動の開始を促すステップである。
新生仔の「蘇生処理」とは、子宮から回収した新生仔が自発呼吸を開始できるように人為的処理を施すことをいう。本方法は、当該分野では公知の方法で行えばよい。例えば、「図解・実験動物技術集I:アドスリー」に記載の方法に準じて実行することができる。
新生仔を一定期間飼育する必要がある場合には、前記ステップで回収した新生仔又は本ステップで蘇生処理を行った新生仔を、授乳のために必要に応じて里親に預けてもよい。里親は新生仔と同種の授乳可能な他の雌個体であることが好ましい。必要であれば、里親の尿等を水で希釈する等して、新生仔に適当量塗布してもよい。里親に実仔と思わせるためである。また、新生仔への授乳は人為的に、例えば、ヒトが哺乳ビンを用いて直接又は哺乳器を用いて自動的に行ってもよい。
[実施例1]
<マウスを用いた脳性麻痺発症仔の作製>
1.栄養制限処理(栄養制限ステップ)
49日齢の雌マウス(C57BL/6N)に対して、1日あたりの必要タンパク質量を通常の50%(0.25g)に制限した給餌を開始した。この食餌は、タンパク質量の制限により低下したカロリーを粗繊維や可溶性無窒素物などで補填し、総カロリーを1日あたり10〜15kcalに調整したものを使用した。以降、麻酔処理するまでの間、このタンパク質制限食を、妊娠全期間を通して給餌した。その間、毎日定時(10時)に体重と前記栄養制限食の摂食量を測定し、雌マウスの健康状態の把握に努めた。
2.妊娠マウスの作製(妊娠ステップ)
栄養制限処理開始後、7日目に84日齢の雄マウス(C57BL/6N)と交配させた。雄マウスは、通常の食餌を給餌した個体を使用した。交配後、雌雄マウスを隔離し、雌マウス(以降、母マウスとする)については引き続き栄養制限食を給餌した。
3.虚血・再灌流処置(動脈圧迫解放工程)
(麻酔工程)
妊娠17日目に前処置及び麻酔処置を行った。0.2mlのケタミン(ケタラール筋注用500mg:第一三共プロファーマ社製)及び0.05mlのキシラジン(セラクタール2%注射液:バイエル社製)の混合液を生理食塩水で1mlに希釈し、これを栄養制限処理した前記母マウスの皮下に体重10gあたり0.15mlを投与した。約5分間観察し、母マウスが沈静化した後に、腹部及び腰部を脱毛クリーム(除毛クリーム:Kanebo)で除毛した。以降の処置は、全て室温30℃、手術台30〜36℃に加温した環境下で行った。
前記腹部及び腰部の体毛除去した雌マウスに心電図電極(ポリメイト:TEAC)を装着し、母マウスの循環動態のモニタリングを開始した。同時に小動物用麻酔機(400 ANAESTHASIA UNIT:Univentor社製)を用いて0.5〜1.5%のイソフルラン(フォーレン:アボットジャパン社製)をair 400ml/minで吸引麻酔処理し麻酔状態を維持した。
(開腹工程)
ケタミン及びキシラジン混合液の投与から15分経過を目処に、母マウスの皮膚及び腹壁を正中切開した。左右の子宮角内の胎仔の存在を確認し、一方の子宮角を露出し、子宮角外部から一胎仔に胎仔心電図用電極(TOG207-119:ユニークメディカル)を装着した(胎仔胸骨柄部および腰部)。露出した子宮角は、速やかにガーゼで覆い、温生理食塩水で加湿した。また、さらに子宮外部から電極を装着した胎仔の頭部に超音波診断装置(Vevo770:VisualSonics)の観測プローブを装着した。
(虚血再灌流負荷工程)
母マウスの子宮動脈及び卵巣動脈を確認後、それぞれを血管クレンメ(動脈クレンメ直型30mm:夏目製作所)で挟み(クリップ)、血流を閉鎖した(図1)。母マウス及び胎仔のそれぞれの心電装置で母マウスの心拍数の維持及び胎仔の心拍数の抑制を確認しながら虚血状態を確認した。ここで、クリップ開始後約1分で徐脈が生じた場合には虚血状態に達したと判断し、逆に2分経過しても徐脈が生じなければ虚血がうまくいっていないと判断してクリップをやり直した。5分後に各血管クレンメを開放して再灌流を行い、胎仔の心拍数の回復を確認した(図2及び3)。このとき、クリップ解放後およそ1分を経ても心拍数の回復が見られない場合には、再灌流の失敗と判断して実験を中止した。この血管クレンメを用いた子宮動脈及び卵巣動脈の圧迫及び解放を同一条件で3回繰り返し、胎仔に虚血再灌流負荷を与えた。
超音波画像から2回目の圧迫後、すなわち2回目の再灌流時に胎仔脳内の出血巣が確認された(図4)。これにより本発明の作製方法により、胎仔に脳出血を効率的に誘発することができることが立証された。
(閉腹工程)
胎仔に装着した心電図電極を外し、子宮角を腹腔に戻した後、縫合による母マウスの閉腹処置を行った。閉腹方法は、定法に従い、筋層および皮膚をそれぞれ連続縫合した。閉腹後、直ちにイソフルランの吸入を停止し、母マウスに0.01%の塩酸イソクスプリン注射液(ズファジラン:第一三共社製)を約6時間毎に0.03ml/10g b.w.で皮下に投与した。
4.子宮切開及び胎仔の回収(胎仔回収工程及び新生仔回復工程)
虚血再灌流負荷工程を行った翌朝(約8〜10時間後)、すなわち妊娠18日目に、胎仔を回収するため子宮切開を行った。新生仔の蘇生に備えて、室温を36℃、手術台を36-38℃に加温し、また室内を加湿器によって加湿した。
続いて、覚醒している母マウスを頚椎脱臼にて安楽殺した。直ちに開腹を行い、子宮を切開して胎仔を取り出した。臍帯は胎盤より1/3程度に位置をピンセットにて挫滅による止血後、切断した。
回収した新生仔に蘇生処理を行った。新生仔は素早く綿棒等で体表の粘液を拭う。特に口および鼻の周辺を念入りに行い自発呼吸の開始を促す。全ての処置は36〜38℃に加温された台上で行う。新生仔が自発呼吸を十分に行っていることを確認した後、授乳のため里親マウスに預け、同時に里親マウスの実仔を間引き新生仔の総数が10匹程度となるようにする。この時、実仔の群れの間に預けてから実仔を間引くことで里親の臭いをつける。
上述のように本発明の方法により作製した仔マウスは、子宮からの回収時点で既に前記虚血再灌流負荷工程で誘発された脳出血を有しており、生後高確率で脳性麻痺を発症する。脳性麻痺の発症の有無については次の実施例で検証した。
[実施例2]
<脳性麻痺の確認>
実施例1で作製した脳性麻痺発症仔マウスが脳性麻痺を発症するか否かを検証した。
対象仔マウスは、里親マウスに預けて14日間飼育した。この間に、5、7及び14日目に、仔マウスの体重及び運動能力を調べた。運動能力は、起き上がり運動で評価した。対照の仔マウスには、通常の交配、妊娠によって誕生した生後14日目のマウスを用いた。
その結果、本発明の脳性麻痺発症仔作製方法で作製した仔マウスの約89%(28個対中25個体)で脳出血が確認された。また、出血部位は、約75%が側脳室であった(図5)。これはヒトに於ける好発部位と一致している。
以上の結果から、本発明の脳性麻痺発症仔作製方法によれば、脳出血に基づく脳性麻痺仔を人為的に、かつ効率的に作製することができることが明らかとなった。

Claims (10)

  1. 脳性麻痺発症仔の作製方法であって、
    (1)雌個体に栄養制限を行い、該個体を低栄養状態にするステップ、
    (2)雌個体を妊娠させるステップ、
    (3)妊娠後期の雌個体に麻酔処理を行った後に開腹し、胎仔の循環動態をモニタリングしながら雌個体の子宮動脈及び卵巣動脈の圧迫及び解放によって胎仔に虚血及び再灌流処理を行うステップ、及び
    (4)雌個体から胎仔を回収するステップ
    を含む前記作製方法。
  2. 栄養制限は食餌中の含有タンパク質量の制限である、請求項1に記載の作製方法。
  3. 虚血及び再灌流処理を2回以上繰り返す、請求項1又は2に記載の作製方法。
  4. モニタリングは心電図計測及び/又は心拍数計測である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の作製方法。
  5. モニタリングにおいて子宮動脈及び卵巣動脈の圧迫時における胎仔心拍数の減少により胎仔の虚血を、及び解放時における胎仔心拍数の回復により胎仔の再灌流を判断する、請求項4に記載の作製方法。
  6. 胎仔心拍数が正常時胎仔心拍数の半分以下となったときに虚血を、その後、胎仔心拍数が正常時胎仔心拍数に戻ったときに再灌流を判断する、請求項5に記載の作製方法。
  7. ステップ(3)において麻酔後の雌個体の循環動態を心電図計測によりモニタリングすることをさらに含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の作製方法。
  8. ステップ(4)の後に回収した新生仔を回復させるステップ(5)をさらに含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の作製方法。
  9. 雌個体が、マウス又はラットである、請求項1〜8のいずれか1項に記載の作製方法。
  10. 妊娠後期が妊娠14日目〜20日目である、請求項9に記載の作製方法。
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