ところで、特許文献1に示すようなインナーロータ式のインホールモータにおいては、主軸とケースとは異なる材料で形成されていることが多い。その理由は、主軸は動力を伝えるために高い強度が必要であり、一方、ケースは軽量化が必要であるからである。例えば、主軸を炭素鋼とし、ケースをアルミニウム合金とした組み合わせが一般的である。
このように、主軸とケースとを異なる材料で形成した場合では、以下の問題が生じる。電動モータは、銅損や鉄損、または減速装置におけるギヤの摩擦損失などにより、運転状況に応じて温度が変化する。このとき、主軸とケースとが異なる材料で形成されており、特に線膨張係数が相互間で大きく異なるような場合、熱膨張による寸法変化が相互に異なる。この結果、主軸とケースとの間に設けられた一対の軸受間に付与された予圧の荷重が規定の値から変化してしまうことになる。
予圧は、電動モータが回転した際の振動や騒音を抑えるためのものである。この予圧の荷重が規定の値よりも小さくなりすぎると、軸系の固有振動数が低下して振動が大きくなる。特に、固有振動数が電動モータの回転の角周波数に近くになると、共振してしまい過大な振動が生じる。また、予圧の荷重が規定の値よりも小さくなりすぎると、軸受における転動体と内外輪との間に隙間が生じて振動や騒音が非常に大きくなるおそれがある。一方、予圧の荷重が規定の値よりも大きくなりすぎると、軸受の摩擦が大きくなり、電動モータの回転効率が低下することになる。インホイールモータを採用する狙いの一つとしては、車輪への回転効率の向上効果であることから、軸受の摩擦が大きくなることは好ましくない。また、予圧の荷重が規定の値よりも大きくなりすぎると、摩擦により軸受の耐久性が低下するおそれがある。
ここで、インホイールモータにおいて、主軸の材料に使われることの多い炭素鋼の線膨張係数は、おおよそ11×10−6から13×10−6[K−1]の範囲にあり、ケースの材料に使われることの多いアルミニウム合金の線膨張係数は、おおよそ21×10−6から24×10−6[K−1]の範囲にある。従って、炭素鋼とアルミニウム合金の組み合わせであると、温度によって主軸とケースとの寸法が相対的に変化する。また、インホイールモータは室外環境に置かれるため、例えば、寒冷地で−20℃以下の外気温の場合、電動モータが発熱した高温時の温度は120℃程度となり、少なくともインホイールモータの使用される想定温度の幅は100℃を超えることになる。そして、インナーロータ式のインホイールモータの寸法については、車両の駆動に十分な出力を得るため、主軸の長さで少なく見積もっても50mm程度は必要である。このことから、主軸とケースとの間では、少なくとも50μm程度の寸法変化が生じることになり、温度変化による軸受の予圧変化を無視することはできない。
また、特許文献2に示すインホイールモータは、一対の軸受のうち一方の軸受は、外ケースまたは内ケースに対し、回転における軸心の延在方向に摺動可能に嵌合されており、インホイールモータの運転中の温度上昇によってケースが膨張した場合に、これを吸収しようとするものである。しかしながら、特許文献2に示すインホイールモータは、一対の軸受のうち一方の軸受が、外ケースまたは内ケースに対し、回転における軸心の延在方向に摺動可能に設けられていることから、予圧を付与できる構成ではなく、温度変化による軸受の予圧変化を抑えることに適用できない。
本発明は、インナーロータ式のインホイールモータの主軸の軸受に予圧を付与すると共に、電動モータの発熱による主軸やケースの熱膨張に伴う予圧荷重の変化を抑えることを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のインホイールモータの軸受構造では、ロータが固定される主軸と、前記ロータの外周にてステータが固定されると共に、前記ステータ、前記ロータおよび前記主軸を内装するケースと、前記ケース内にて軸方向に沿って対向して設けられ前記主軸を前記ケースに対して回転可能に支持する一対の軸受と、を備えるインホイールモータの軸受構造であって、前記ケースを、一方の前記軸受の外側面に当接する一方のケースと他方の前記軸受の外側面に当接する他方のケースとに分割して形成すると共に、一方の前記ケースと他方の前記ケースとを相互間で軸方向へ移動可能かつ径方向へ移動不能に嵌合し、前記一対の軸受を軸方向に接近させつつ一方の前記ケースと他方の前記ケースとを締め付け固定する固定部と、前記固定部により前記一対の軸受を軸方向に接近させた状態で、一方の前記ケースと他方の前記ケースとの相互間を軸方向で離隔する隙間と、を備えたことを特徴とする。
このインホイールモータの軸受構造によれば、ロータとステータからなる電動モータの運転状況に応じて変化する温度により、主軸とケースとの熱膨張による寸法変化が相互に異なって、ケースの方が大きく変形しても、隙間によりケースの変形分を吸収するので、一対の軸受に付与された予圧荷重の変化を抑えることができる。
また、本発明のインホイールモータの軸受構造では、前記固定部は、軸方向で一方の前記ケースおよび他方の前記ケースに貫通するボルト、および前記ボルトのネジ部に取り付けられて前記ボルトと共に一方の前記ケースと他方の前記ケースとを前記一対の軸受が接近する軸方向に締め付け固定するナットからなることを特徴とする。
このインホイールモータの軸受構造によれば、ボルトおよびナットの締め付け調整により各軸受に付与する予圧を調整することができる。
また、本発明のインホイールモータの軸受構造では、一方の前記軸受の前記外側面に当接する一方の前記ケースの突当面から、前記ボルトの頭部が当接する一方の前記ケースの座面までの間の軸方向寸法a−bと、他方の前記軸受の前記外側面に当接する他方の前記ケースの突当面から、前記ナットが当接する他方の前記ケースの座面までの間の軸方向寸法c−dとが、等しく設定されていることを特徴とする。
このインホイールモータの軸受構造によれば、電動モータの運転状況に応じて温度が変化した場合、a−b間の熱変位Δabと、c−d間の熱変位Δcdとが等しく、かつ向きが逆になる。このため、温度が変化しても、熱変位Δabと熱変位Δcdとが互いに相殺されるので、各軸受に付与した予圧の変化を抑えることが可能になる。
また、本発明のインホイールモータの軸受構造では、前記主軸と前記固定部とが、等しい線膨張係数の材料で形成されていることを特徴とする。
このインホイールモータの軸受構造によれば、固定部により一方のケースと他方のケースとを締め付け固定する間の熱変位が、主軸の熱変位と等しくなるので、各軸受に付与した予圧が変化する事態を防ぐことが可能になる。
また、本発明のインホイールモータの軸受構造では、各前記軸受は、アンギュラ玉軸受からなり、正面組み合わせで配置されていることを特徴とする。
このインホイールモータの軸受構造によれば、径方向と軸方向との荷重を負荷することができ、適した予圧荷重を付与することができる。
また、本発明のインホイールモータの軸受構造では、一方の前記ケースと他方の前記ケースとの径方向へ移動不能に嵌合された間にシール部材が介在されていることを特徴とする。
このインホイールモータの軸受構造によれば、一方のケースと他方のケースとが径方向へ移動不能に嵌合された間をシール部材で密封しているため、熱膨張によりケースが変形しても密封状態を維持することができる。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のインホイールモータでは、ロータが固定される主軸と、前記ロータの外周にてステータが固定されると共に、前記ステータ、前記ロータおよび前記主軸を内装するケースと、前記ケース内にて軸方向に沿って対向して設けられ前記主軸を前記ケースに対して回転可能に支持する一対の軸受と、を備え、車両が備える車輪のホイールの内側に配置されるインホイールモータであって、上記のいずれか一つに記載のインホイールモータの軸受構造が適用されることを特徴とする。
このインホイールモータによれば、ロータとステータからなる電動モータの運転状況に応じて変化する温度により、主軸とケースとの熱膨張による寸法変化が相互に異なって、ケースの方が大きく変形しても、隙間によりケースの変形分を吸収するので、一対の軸受に付与された予圧荷重の変化を抑えることができ、電動モータの回転を車輪に対して円滑に伝達できる。
本発明は、インナーロータ式のインホイールモータにおいて、主軸の軸受に予圧を付与すると共に、電動モータの発熱による主軸やケースの熱膨張に伴う予圧荷重の変化を抑えることができる。
以下、本発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態で開示する構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
本実施形態に係るインホイールモータは、電気自動車、ハイブリッド自動車などの車両の車輪を構成するホイールの内部に配置されて、前記車輪を駆動する。この場合、車両の各前輪、車両の各後輪、または車両の全ての車輪など、少なくとも2個の車輪におけるホイールの内側にインホイールモータを取り付ける。
図1に示すように、インホイールモータ10は、ケース20を外殻としている。ケース20は、筒状(本実施形態では円筒形状)の第一筐体21と、第一筐体21の両端の開口部に取り付けられる円形皿状の第二筐体22および第三筐体23と、ハブ取付部を有する第四筐体24とで構成されている。これら各筐体21,22,23,24は、軽量化のため、アルミニウム合金製であり、第一筐体21、第二筐体22および第三筐体23はダイカスト成型され、第四筐体24はブロックから切削成型されている。
第一筐体21と第二筐体22とは、図1に示すように、凹凸の嵌合であるインロー構造25によって、インホイールモータ10における回転軸Zrの延在方向である軸方向に相対移動可能に組み合わされ、かつ軸方向に直交する回転軸Zrの放射方向である径方向には相対移動不能に組み合わされている。このインロー構造25において径方向に相対移動不能とされた径方向で対向する各嵌合面の間には、シール部材としてのOリング26が設けられ、第一筐体21と第二筐体22との嵌合が密封されている。そして、第一筐体21と第二筐体22とは、図2に示すように、円周方向に複数配置されたボルト27aによって一体に締め付け固定されている。また、第二筐体22と第四筐体24とは、図1に示すように、相互間にシール部材としてのOリング26が介在され、円周方向に複数配置されたボルト27bによって一体に締め付け固定されている。これら、第一筐体21、第二筐体22および第四筐体24は、一体とされることで、ケース20が分割して形成された一方のケース20Aを構成する。
また、第三筐体23は、ケース20が分割して形成された他方のケース20Bを構成する。この第三筐体23は、図1に示すように、第一筐体21と凹凸の嵌合であるインロー構造25によって、インホイールモータ10における回転軸Zrの延在方向である軸方向に相対移動可能に組み合わされ、かつ軸方向に直交する回転軸Zrの放射方向である径方向には相対移動不能に組み合わされている。このインロー構造25において径方向に相対移動不能とされた径方向で対向する各嵌合面の間には、シール部材としてのOリング26が設けられ、第一筐体21と第三筐体23との嵌合が密封されている。そして、第一筐体21(一方のケース20A)と第三筐体23(他方のケース20B)とは、図1および図2に示すように、円周方向に複数配置された固定部30によって一体に締め付け固定されている。
第一筐体21の内部には、電動モータ40が配置されている。電動モータ40は、ステータ41と、ロータ42とで構成されている。ステータ41は、鉄芯に電線が巻き付けられて構成される複数のコイル41aを有する。コイル41aは、第一筐体21の周方向に沿って配列されている。このステータ41は、本実施形態において、第一筐体21に設けられたピン(図示せず)により回転不能で第一筐体21に対して一体に固定されている。ロータ42は、筒状(円筒状)の部材であって、ステータ41の内周面に対して所定の間隔(例えば、0.5mm以上1mm以下)をもって配置されている。ロータ42は、ステータ41のコイル41aが作り出す回転磁界によって、回転軸Zrを中心として回転する。すなわち、本実施形態のインホイールモータ10は、インナーロータ式として構成されている。
また、第一筐体21の内部には、主軸50が配置されている。主軸50は、中空な筒状(本実施形態では円筒形状)に形成され、その外周に電動モータ40のロータ42が取り付けられ、収縮締結(例えば、冷やしばめ、または焼きばめ)で固定されている。この主軸50は、所定の強度を得るため、クロムモリブデン鋼(SCM415)で形成されている。
主軸50の両端部には、一対の軸受61,62が配置されている。各軸受61,62は、主軸50と、一方のケース20Aをなす第二筐体22および他方のケース20Bをなす第三筐体23との間に取り付けられている。このような構成により、主軸50は、一対の軸受61,62を介してケース20に回転可能に支持される。従って、主軸50に固定されたロータ42は、ケース20に回転可能に支持される。また、各軸受61,62は、アンギュラ玉軸受により構成されている。そして、アンギュラ玉軸受からなる各軸受61,62は、正面組み合わせにて組み合わされている。
ここで、ロータ42および主軸50の回転軸は、共にZrであり、これはインホイールモータ10の回転軸である。ロータ42は、主軸50と共に回転するので、ロータ42の回転力は、主軸50を介して出力される。
主軸50の内部には、減速装置70が配置されている。このように、主軸50を中空とし、その内部に減速装置70を配置すると、インホイールモータ10における回転軸Zrの延在方向である軸方向寸法を小さくできる。減速装置70は、遊星歯車装置を利用した減速装置である。減速装置70は、サンギヤ71と、遊星歯車72と、リングギヤ73と、キャリア74との4要素を回転要素として構成されている。
サンギヤ71は、サンギヤシャフト71aの一端部に設けられている。サンギヤシャフト71aは、回転軸を主軸50と共通のZrとして主軸50に取り付けられている。具体的に、主軸50は、筒状(円筒形状)の側部51と、側部51の内側に一体に設けられた円板部52とで構成されている。円板部52は、その板面を回転軸Zrと直交する径方向に沿って設けられ、側部51の内部を、回転軸Zrの延在方向である軸方向で仕切る。サンギヤシャフト71aは、その他端部が円板部52に固定されて主軸50に取り付けられている。遊星歯車72は、サンギヤ71の周囲に複数配置され、サンギヤ71と噛み合って設けられている。リングギヤ73は、複数の遊星歯車72の外側に配置されて、各遊星歯車72と噛み合って設けられている。また、キャリア74は、各遊星歯車72をそれぞれ回転可能に支持する。
また、減速装置70のリングギヤ73は、ボルト75によって第四筐体24に取り付けられ、固定されている。キャリア74は、インホイールモータ10のドライブシャフト80と連結されている。
ドライブシャフト80は、ハブベアリング81の内輪81aに取り付けられている。内輪81aは、外輪81bに、転動体81cを介して回転可能に支持されている。外輪81bは、第四筐体24にボルト82により固定されている。これにより、ドライブシャフト80は、リングギヤ73および自身の回転軸を主軸50と共通のZrとして回転する。また、内輪81aは、第四筐体24の外側に延出された端部に、円板状のフランジ83が一体に形成されている。フランジ83には、回転軸Zrを中心に周方向に複数(本実施形態では4本)のハブボルト84が取り付けられている。車輪のホイール(図示せず)は、ハブボルト84を介してハブベアリング81の内輪81aに取り付けられる。なお、フランジ83には、通孔83aが設けられており、この通孔83aを通してボルト82が挿入され、外輪81bを第四筐体24に締め付け固定できる。また、図2に示すように、外輪81bのボルト82が挿通される周囲には、切欠82aが設けられている。この切欠82aは、ハブボルト84が破損した場合、ハブボルト84を交換するためのスペースとなる。
これによって、電動モータ40の回転力、すなわち、ロータ42の回転力は、主軸50からサンギヤシャフト71aを介してサンギヤ71、遊星歯車72、リングギヤ73の順で減速装置70を介して増大され、ドライブシャフト80へ出力される。なお、インホイールモータ10が搭載される車輪が制動力を発生する場合、前記制動力は、ドライブシャフト80から減速装置70を介して主軸50へ伝達される。
また、図1に示すように、ドライブシャフト80と軸方向の相反する側において、主軸50には、主軸50の回転角を検出するレゾルバ90が設けられている。さらに、ケース20の下部に相当する部位には、オイルを一定量保持して車体側に設けられたオイル循環用ポンプに向かう戻り流路への空気の混入を防ぐため、オイルパン100が設けられている。オイルパン100には、ドレンプラグ101が取り付けられており、メンテナンスを要する場合、オイルを抜き取ることができる。
このように構成されたインホイールモータ10における軸受構造について図3を参照して説明する。図3に示すように、主軸50の側部51における一端部側の外周には、一方の軸受としての軸受61の内輪61aを取り付けるための段部51aが設けられている。また、側部51における他端部側の外周には、他方の軸受としての軸受62の内輪62aを取り付けるための段部51bが設けられている。各段部51a,51bは、軸方向の外側に向けて開放して構成してある。すなわち、段部51aに配置された軸受61は、内輪61aにおける軸方向内側の内側面61aaが段部51aの突当面51aaに当接することで軸方向内側への移動を規制される。また、段部51bに配置された軸受62は、内輪62aにおける軸方向内側の内側面62aaが段部51bの突当面51baに当接することで軸方向内側への移動を規制される。
さらに、一方のケース20Aをなす第二筐体22には、一方の軸受としての軸受61の外輪61bを取り付けるための段部22aが設けられている。また、他方のケース20Bをなす第三筐体23には、他方の軸受としての軸受62の外輪62bを取り付けるための段部23aが設けられている。各段部22a,23aは、軸方向の内側に向けて開放して構成してある。すなわち、段部22aに配置された軸受61は、外輪61bにおける軸方向外側の外側面61baが段部22aの突当面22aaに当接することで軸方向外側への移動を規制される。また、段部23aに配置された軸受62は、外輪62bにおける軸方向外側の外側面62baが段部23aの突当面23aaに当接することで軸方向外側への移動を規制される。
このため、各軸受61,62は、主軸50の各段部51a,51bにより、相互に軸方向で接近する移動を規制され、かつ第二筐体22の段部22aおよび第三筐体23の段部23aにより、相互に軸方向で離隔する移動を規制される。すなわち、各軸受61,62は、主軸50の各段部51a,51bと、第二筐体22の段部22aおよび第三筐体23の段部23aとにより、軸方向の移動を規制される。
また、主軸50の各段部51a,51bと、第二筐体22の段部22aおよび第三筐体23の段部23aとにより、各軸受61,62の軸方向の移動を規制した状態にて、一方のケース20Aをなす第一筐体21と、他方のケース20Bをなす第三筐体23との間には、相互間を軸方向で離隔する隙間110が形成されている。この隙間110は、第一筐体21と第三筐体23とを嵌合するインロー構造25の凹凸部分に形成されている。具体的に、隙間110は、隙間110aと隙間110bとを含む。隙間110aは、インロー構造25にて、ケース20の外側に現れる部分であって、第一筐体21の軸方向に向く端面と、第三筐体23の軸方向に向く面とが相互に対向する間に設けられている。この隙間110aが設けられた部分には、後述する固定部30におけるボルト31が挿通されている。隙間110bは、インロー構造25にて、ケース20の内側に隠れる部分であって、第一筐体21の内壁に形成された段部により軸方向に向く面と、第一筐体21の内部に挿入された第三筐体23の軸方向に向く端面とが相互に対向する間に設けられている。また、各隙間110a,110bの間には、シール部材としてのOリング26により密封されている。
また、一方のケース20Aをなす第一筐体21および第二筐体22と、他方のケース20Bをなす第三筐体23とは、固定部30により軸方向に相互に接近するように締め付け固定されている。固定部30は、図4に示すように、軸方向に長手状に形成され、一方のケース20Aをなす第一筐体21および第二筐体22と、他方のケース20Bをなす第三筐体23とに貫通するボルト31を有している。すなわち、第一筐体21には、ボルト31のシャフト部32を挿通する挿通孔21hが形成され、第二筐体22には、ボルト31のシャフト部32を挿通する挿通孔22hが形成され、第三筐体23には、ボルト31のシャフト部32を挿通する挿通孔23hが形成されている。シャフト部32の一端部には、頭部33が設けられている。頭部33は、その外周の一部が平坦に形成された平坦部33aを有し、この平坦部33aが、一方のケース20Aをなす第二筐体22に当接することでシャフト部32の回転を規制する。また、シャフト部32の他端部には、ネジ部34が設けられている。ネジ部34には、ナット35がねじ込まれる。本実施の形態では、ナット35が、第一ナット35aおよび第二ナット35bの二重ナットを構成しており、第二ナット35bにより第一ナット35aの緩みが防止される。なお、ナット35は、ワッシャ36を介してネジ部34にねじ込まれる。この固定部30は、所定の強度を得るため、クロムモリブデン鋼(SCM435)で形成されている。
このため、一方のケース20Aをなす第一筐体21および第二筐体22と、他方のケース20Bをなす第三筐体23とは、固定部30のボルト31により頭部33とナット35に軸方向で接近する方向に挟まれて固定される。すなわち、一方のケース20Aと他方のケース20Bとが、軸方向で接近する方向に挟まれて固定されることにより、主軸50の各段部51a,51bと、第二筐体22の段部22aおよび第三筐体23の段部23aとにより、軸方向の移動を規制された各軸受61,62は、軸方向で相互に接近する方向に押圧され予圧が付与されることになる。
また、固定部30により、一方のケース20Aをなす第一筐体21および第二筐体22と、他方のケース20Bをなす第三筐体23とが軸方向で接近する方向に挟まれて固定され、各軸受61,62に予圧が付与された状態において、上述した隙間110(110a,110b)は維持されている。各軸受61,62に適した予圧が付与された状態で、本実施形態では、隙間110aが0.5mm、隙間110bが1mmとされている。
以上、本実施形態では、ロータ42が固定される主軸50と、ロータ42の外周にてステータ41が固定されると共に、ステータ41、ロータ42および主軸50を内装するケース20と、ケース20内にて軸方向に沿って対向して設けられ主軸50をケース20に対して回転可能に支持する一対の軸受61,62と、を備えるインナーロータ式のインホイールモータ10の軸受構造であって、ケース20を、一方の軸受61の外側面61baに当接する一方のケース20A(第一筐体21、第二筐体22および第四筐体24)と他方の軸受62の外側面62baに当接する他方のケース20B(第三筐体23)とに分割して形成すると共に、一方のケース20Aと他方のケース20Bとが相互間で軸方向へ移動可能かつ径方向へ移動不能に嵌合し、一対の軸受61,62を軸方向に接近させつつ一方のケース20Aと他方のケース20Bとを締め付け固定する固定部30と、固定部30により一対の軸受61,62が軸方向に接近させた状態で、一方のケース20Aと他方のケース20Bとの相互間を軸方向で離隔する隙間110(110a,110b)とを備えている。
このインホイールモータ10の軸受構造によれば、主軸50を高い強度を得る材料で形成し、ケース20を軽量化し得る材料で形成した場合、電動モータ40の運転状況に応じて変化する温度により、主軸50とケース20との熱膨張による寸法変化が相互に異なって、ケース20の方が大きく変形するが、隙間110(110a,110b)によりケース20の変形分を吸収するので、各軸受61,62に付与された予圧荷重の変化を抑えることが可能になる。
また、本実施形態のインホイールモータ10の軸受構造では、固定部30は、軸方向で一方のケース20Aおよび他方のケース20Bに貫通するボルト31、およびボルト31のネジ部34に取り付けられてボルト31と共に一方のケース20Aと他方のケース20Bとを各軸受61,62が接近する方向に締め付け固定するナット35からなる。
このインホイールモータ10の軸受構造によれば、固定部30をボルト31およびナット35で構成したことで、その締め付け調整により各軸受61,62に付与する予圧を調整することが可能になる。
また、本実施形態のインホイールモータ10の軸受構造では、一方の軸受61における外輪61bの外側面61baに当接する一方のケース20Aにおける第二筐体22の突当面22aaから、ボルト31の頭部33側が当接する一方のケース20Aにおける第二筐体22の座面22bまでの間の軸方向寸法a−bと、他方の軸受62における外輪62bの外側面62baに当接する他方のケース20Bにおける第三筐体23の突当面23aaから、ナット35側(ワッシャ36)が当接する他方のケース20Bにおける第三筐体23の座面23bまでの間の軸方向寸法c−dとが、等しく設定されている。
このインホイールモータ10の軸受構造によれば、電動モータ40の運転状況に応じて温度が変化した場合、a−b間の熱変位Δabと、c−d間の熱変位Δcdとが等しく、かつ向きが逆になる。このため、温度が変化しても、熱変位Δabと熱変位Δcdとが互いに相殺されるので、各軸受61,62に付与した予圧の変化を抑えることが可能になる。
また、本実施形態のインホイールモータ10の軸受構造では、主軸50と固定部30とが、等しい線膨張係数の材料で形成されている。
このインホイールモータ10の軸受構造によれば、ボルト31の頭部33側が当接する一方のケース20Aの座面22b(b)から、ナット35側(ワッシャ36)が当接する他方のケース20Bの座面23b(d)までの間の熱変位が、主軸50の熱変位と等しくなるので、各軸受61,62に付与した予圧が変化する事態を防ぐことが可能になる。
また、本実施形態のインホイールモータ10の軸受構造では、各軸受61,62は、アンギュラ玉軸受からなり、正面組み合わせで配置されている。
このインホイールモータ10の軸受構造によれば、径方向と軸方向との荷重を負荷することができ、適した予圧荷重を付与することが可能になる。
また、本実施形態のインホイールモータ10の軸受構造では、一方のケース20Aと他方のケース20Bとの径方向へ移動不能に嵌合された間にシール部材(Oリング)26が介在されている。
このインホイールモータ10の軸受構造によれば、一方のケース20Aと他方のケース20Bとの径方向へ移動不能に嵌合された間をシール部材(Oリング)26で密封しているため、熱膨張によりケース20が変形しても密封状態を維持することが可能である。このため、ケース20内への塵埃や雨水の浸入防止効果を維持できる。
本実施形態のインホイールモータ10では、ロータ42が固定される主軸50と、ロータ42の外周にてステータ41が固定されると共に、ステータ41、ロータ42および主軸50を内装するケース20と、ケース20内にて軸方向に沿って対向して設けられ主軸50をケース20に対して回転可能に支持する一対の軸受61,62と、を備え、車両が備える車輪のホイールの内側に配置されるインナーロータ式のインホイールモータ10であって、上記のいずれか一つに記載のインホイールモータの軸受構造が適用されている。
このインホイールモータによれば、主軸50を高い強度を得る材料で形成し、ケース20を軽量化し得る材料で形成した場合、電動モータ40の運転状況に応じて変化する温度により、主軸50とケース20との熱膨張による寸法変化が相互に異なって、ケース20の方が大きく変形するが、隙間110(110a,110b)によりケース20の変形分を吸収するので、各軸受61,62に付与された予圧荷重の変化を抑えることが可能になる。この結果、電動モータ40の回転を車輪に対して円滑に伝達することが可能になる。
また、このインホイールモータによれば、固定部30をボルト31およびナット35で構成したことで、その締め付け調整により各軸受61,62に付与する予圧を調整することが可能になる。この結果、電動モータ40の回転を車輪に対して円滑に伝達することが可能になる。
また、このインホイールモータによれば、電動モータ40の運転状況に応じて温度が変化した場合、一方の軸受61における外輪61bの外側面61baに当接する一方のケース20Aにおける第二筐体22の突当面22aaから、ボルト31の頭部33側が当接する一方のケース20Aにおける第二筐体22の座面22bまでの間の軸方向寸法a−b間の熱変位Δabと、他方の軸受62における外輪62bの外側面62baに当接する他方のケース20Bにおける第三筐体23の突当面23aaから、ナット35側(ワッシャ36)が当接する他方のケース20Bにおける第三筐体23の座面23bまでの間の軸方向寸法c−d間の熱変位Δcdとが等しく、かつ向きが逆になるため、温度が変化しても、熱変位Δabと熱変位Δcdとが互いに相殺されるので、各軸受61,62に付与した予圧の変化を抑えることが可能になる。この結果、電動モータ40の回転を車輪に対して円滑に伝達することが可能になる。
また、このインホイールモータによれば、主軸50と固定部30とが、等しい線膨張係数の材料で形成されているため、ボルト31の頭部33側が当接する一方のケース20Aの座面22b(b)から、ナット35側(ワッシャ36)が当接する他方のケース20Bの座面23b(d)までの間の熱変位が、主軸50の熱変位と等しくなるので、各軸受61,62に付与した予圧が変化する事態を防ぐことが可能になる。この結果、電動モータ40の回転を車輪に対して円滑に伝達することが可能になる。
また、このインホイールモータによれば、各軸受61,62は、アンギュラ玉軸受からなり、正面組み合わせで配置されているため、径方向と軸方向との荷重を負荷することができ、適した予圧荷重を付与することが可能になる。この結果、電動モータ40の回転を車輪に対して円滑に伝達することが可能になる。
また、このインホイールモータによれば、一方のケース20Aと他方のケース20Bとの径方向へ移動不能に嵌合された間にシール部材(Oリング)26が介在されているため、一方のケース20Aと他方のケース20Bとの径方向へ移動不能に嵌合された間をシール部材(Oリング)26で密封でき、熱膨張によりケース20が変形しても密封状態を維持することが可能である。このため、ケース20内への塵埃や雨水の浸入防止効果を維持できる。この結果、電動モータ40の回転を車輪に対して円滑に伝達することが可能になる。
なお、上述した実施形態では、ケース20の第一筐体21、第二筐体22および第四筐体24を一体として一方のケース20Aとし、ケース20の第三筐体23を他方のケース20Bとして、固定部30により一方のケース20Aと他方のケース20Bとを固定した際に、一方のケース20Aで一方の軸受61を軸方向内側に押圧し、かつ他方のケース20Bで他方の軸受62を軸方向内側に押圧して一対の軸受61,62に予圧を付与しつつ、この一方のケース20Aと他方のケース20Bとのインロー構造25に隙間110(110a,110b)を設けているが、この限りではない。例えば、ケース20の第一筐体21および第三筐体23を一体として一方のケース20Aとし、第二筐体22および第四筐体24を一体として他方のケース20Bとして、固定部30により一方のケース20Aと他方のケース20Bとを固定した際に、一方のケース20Aで一方の軸受62を軸方向内側に押圧し、かつ他方のケース20Bで他方の軸受61を軸方向内側に押圧して一対の軸受61,62に予圧を付与しつつ、この一方のケース20Aと他方のケース20Bとのインロー構造25に隙間110(110a,110b)を設けてもよい。