以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら説明する。本発明を適用した波長変換装置を備えたレーザ装置の代表例として、レクチルのパターンを基板に転写する露光装置の光源装置として用いられる、第1の実施形態に係るレーザ装置1の概略構成を図1に示すとともに、このレーザ装置1におけるレーザヘッド2の概要構成を図2に示しており、まず始めに、これらの図面を参照しながらレーザ装置1について概要説明する。
レーザ装置1は、この装置を光源装置として利用するレーザシステムへの適用上の便宜から、紫外光を出力する出力機能を有しレーザシステムへの組み込みを容易化した小型箱状のレーザヘッド2と、レーザヘッド2の制御機能を備えレーザヘッド2と別置される筐体状の制御ラック3とからなり、レーザヘッド2と制御ラック3とが、種々の電気ケーブルや、励起光伝送用の光ファイバ、パージガス供給用ガスチューブ、冷却水配管等のインターフェース4により相互接続されて構成される。
レーザヘッド2は、赤外〜可視領域の基本波レーザ光を出射するレーザ光発生部10と、レーザ光発生部10から出射された基本波レーザ光を紫外光に波長変換する波長変換部20とを備え、その出力端から紫外光が出力されるように構成される。
レーザ光発生部10は、種光となるレーザ光(シード光)Lsを発生するレーザ光源11と、レーザ光源11により発生されたシード光Lsを増幅する光増幅器12,13とを備えて構成される。レーザ光源11及び光増幅器12,13は、このレーザ装置1を用いるレーザシステムの用途及び機能に応じ、適宜な発振波長、増幅率のものが用いられる。このようなレーザ光源11として、波長λ=1.547[μm]の単一波長のレーザ光を発生する分布帰還半導体レーザ(DFB半導体レーザ)を用い、第1段目の光増幅器12として半導体レーザ励起のエルビウム(Er)・ドープ・ファイバー光増幅器(EDFA)、第2段目の光増幅器13として、ラマン・レーザ励起のEDFAを用いた構成が例示される。
波長変換部20は、レーザ光発生部10から出射されたレーザ光(光増幅器12,13により増幅された基本波レーザ光)Lrを、所定波長の紫外光に波長変換する。レーザ装置1においては、レーザ光発生部10から出射された波長λ=1.547[μm]の基本波レーザ光を、複数の波長変換光学素子によって順次波長変換し、最終的に基本波の8倍波(第8次高調波)でArFエキシマレーザと同一波長である波長λ=193[nm]の紫外光を出力する。
このように、赤外領域(あるいは可視領域)の基本波レーザ光を紫外光に波長変換する波長変換部の構成(波長変換光学素子の種別や組み合わせ)には、種々の公知の形態がある。本発明はヒータにより所定温度に加熱された昇温状態で使用される潮解性を持つ波長変換光学素子を含むものであればいずれの形態の波長変換部にも適用可能である。本実施形態では、波長変換部の一例として、レーザ光発生部10において、1つのレーザ光源11から出射された基本波レーザ光を3つに分岐して各々2段の光増幅器12,13により増幅し、増幅された3つの基本波レーザ光Lr(Lr1,Lr2,Lr3)を波長変換部20に入射させて、基本波、2倍波(λ=774[nm])及び5倍波(λ=309[nm])を生成し、これらの和周波発生により7倍波(λ=221[nm])、8倍波(λ=193[nm])を発生させる構成例を図3に示しており、この7倍波生成用の波長変換光学素子、および8倍波生成用の波長変換光学素子に、潮解性を有するCLBO(CsLiB6O10)結晶を用いた波長変換部の構成について説明する。
まず、P偏光で入射される第1の基本波レーザ光Lr1は、レンズ31により波長変換光学素子21に集光入射され、第2高調波発生(SHG)により周波数が基本波(ω)の2倍(2ω)、波長λが半分の2倍波を発生させる。波長変換光学素子21により発生されたP偏光の2倍波、及び波長変換光学素子21を透過したP偏光の基本波は、レンズ32により波長変換光学素子22に集光入射され、和周波発生(ω+2ω)により周波数が基本波の3倍(3ω)の倍波を発生させる。これらの波長変換光学素子21,22は、例えば、2倍波発生用の波長変換光学素子21としてPPLN結晶、3倍波発生用の波長変換光学素子22としてLBO結晶が用いられる。なお、波長変換光学素子21として、PPKTP結晶、PPSLT結晶、LBO結晶等を用いることもできる。
波長変換光学素子22により発生されたS偏光の3倍波と、波長変換光学素子22を透過したP偏光の基本波及び2倍波は、2波長波長板41を透過させて2倍波だけをS偏光に変換する。2波長波長板41として、例えば、結晶の光学軸と平行にカットした一軸性の結晶の平板からなる波長板が用いられる。この波長板41は、一方の波長の光(2倍波)に対して偏光を回転させ、他方の波長の光に対しては、偏光が回転しないように、波長板(結晶)の厚さを一方の波長の光に対してλ/2の整数倍で、他方の波長の光に対しては、λの整数倍になるようにカットすることにより構成される。
ともにS偏光になった2倍波及び3倍波は、レンズ33により波長変換光学素子23に集光入射され、和周波発生(2ω+3ω)により5倍波(5ω)を発生させる。波長変換光学素子23からは、この波長変換光学素子23により発生されたP偏光の5倍波と、波長変換光学素子23を透過したS偏光の2倍波及び3倍波、並びにP偏光の基本波が出射される。なお、5倍波を発生させる波長変換光学素子23として、例えばLBO結晶が用いられるが、BBO結晶、CBO結晶を用いることも可能である。ここで、波長変換光学素子23から出射される5倍波は、ウォークオフのため断面が楕円形になっている。そこで、2枚のシリンドリカルレンズ34v,34hにより、楕円形の断面形状を円形に整形し、ダイクロイックミラー44に入射させる。
一方、P偏光で入射される第2の基本波レーザ光Lr2は、レンズ35により波長変換光学素子24に集光入射され、第2高調波発生により2倍波を発生させる。波長変換光学素子24からは、この波長変換光学素子24により発生されたP偏光の2倍波と基本波が出射され、レンズ36,37を介してダイクロイックミラー45に入射される。なお、波長変換光学素子24として、PPLN結晶を用いることができるほか、PPKTP結晶、PPSLT結晶、LBO結晶等を用いてもよい。
また、S偏光で入射される第3の基本波レーザ光Lr3は、レンズ38を介してダイクロイックミラー45に入射させる。ダイクロイックミラー45は、基本波の波長帯域の光を透過し、2倍波の波長帯域の光を反射するように構成されており、このダイクロイックミラー45に入射するS偏光の基本波と、波長変換光学素子24により発生されたP偏光の2倍波とが同軸上に合成される。
合成したS偏光の基本波及びP偏光の2倍波は、ダイクロイックミラー44に入射させる。ダイクロイックミラー44は、基本波及び2倍波の波長帯域の光を透過し、5倍波の波長帯域の光を反射するように構成されており、このダイクロイックミラー44に入射したS偏光の基本波及びP偏光の2倍波と、波長変換光学素子23により発生されたP偏光の5倍波とが同軸上に合成される。
このように同軸上に合成したS偏光の基本波、P偏光の2倍波、P偏光の5倍波を、波長変換光学素子25に入射させる。ここで、基本波、2倍波、5倍波の各光路には各々レンズ(34v,34h,36,37,38)が設けられており、同軸上に合成された各波長の光が波長変換光学素子25に集光入射するようになっている。波長変換光学素子25では、P偏光の2倍波とP偏光の5倍波による和周波発生(2ω+5ω)が行われ7倍波(7ω)が発生される。波長変換光学素子25からは、この波長変換光学素子25により発生されたS偏光の7倍波とともに、波長変換光学素子23を透過した上記各波長の光が出射される。7倍波を発生させる波長変換光学素子25として、CLBO結晶が用いられる。
これらの光は、波長変換光学素子26に入射し、ここでS偏光の基本波とS偏光の7倍波が和周波発生(ω+7ω)により合成され、P偏光の8倍波(8ω)が発生される。8倍波を発生させる波長変換光学素子26として、CLBO結晶が用いられる。なお、波長変換光学素子26からは、この波長変換光学素子26により発生された8倍波以外に、波長変換光学素子26を透過した基本波、2倍波等の他の波長成分の光が出射されるが、波長変換部20(レーザ装置1)から8倍波のみを出力させる場合には、ダイクロイックミラーや偏光ビームスプリッタ、プリズムを使用することにより、これらを分離すればよい。
また、波長変換部20において、波長変換光学素子26から出射される8倍波は、ビームスプリッタ46によってその一部が反射され、レーザ装置1による紫外レーザ光(193[nm])の出力強度をモニタリングするための光検出器47に導かれる。光検出器47は、受光した8倍波の出力強度を検出し、その検出信号を制御ラック3に出力する。
このように構成される波長変換部20にあって、7倍波発生用の波長変換光学素子25、および8倍波発生用の波長変換光学素子26は、いずれもCLBO結晶であり潮解性を有している。そのため、これらの波長変換光学素子25,26については、窒素ガス等の不活性気体で満たされたケース内において、ヒータで予め設定された所定温度範囲(例えば、150±10℃の温度範囲を例示する)に加熱した昇温状態に保持する必要がある。また、これら波長変換光学素子25,26は長時間の使用によってダメージを受けやすく(特にCLBO結晶は傷みやすく)、波長変換効率を低下させるおそれがあるため、使用限界となる所定時間の経過に伴って定期的に波長変換光学素子25,26におけるレーザ光の受光位置を変更して(シフトさせて)、これら結晶内での光の通過経路を変更させる必要がある。そのため、波長変換部20では、このような所定温度範囲内での昇温状態を安定的に保持するとともに、定期的にレーザ光の受光位置を変えるため、波長変換光学素子25,26を昇温且つ移動自在に保持する結晶ユニット50が形成されている。
それでは、結晶ユニット50の構成について図4を追加参照しながら説明する。なお、以降の図4に関する説明では、紙面の上下左右方向をそのまま上下左右方向と称し、紙面に対して垂直な方向を前後方向と称する。光は前後方向に進行し、光軸は前後方向に延びるように設定されている。よって、この図4は、結晶ユニット50をその光軸に対して直交する面内で切断した場合の断面図を示している。
結晶ユニット50は、波長変換光学素子25,26(以降、これらを総称して波長変換光学素子27と称する)を保持する結晶ホルダ51と、結晶ホルダ51を光軸と直交する二軸方向(上下および左右方向)に移動させるシフト機構60と、これらを収容する矩形箱状のユニットケース70とを備えて構成されており、波長変換光学素子27が波長変換部20の光軸上において入射角が位相整合角(位相整合条件を満足する入射角)となるように位置決めされた状態で配設されるようになっている。
結晶ホルダ51は、金属材料を用いて略直方体状に形成されており、波長変換光学素子27におけるレーザ光の入射面及び出射面を除く外周全体を埋設した状態で、この波長変換光学素子27を装着している。この結晶ホルダ51には、波長変換光学素子27を加熱するヒータ52、及び波長変換光学素子27の温度を検出する温度センサ53が設けられており、制御ラック3内に設けられた後述の制御ユニット80により、波長変換光学素子27が予め設定された150℃程度の上記所定温度範囲内に保持されるようになっている。
シフト機構60は、水平な基台61と、この基台61上に水平方向(X方向)に延びて設けられたレール(図示せず)上をX方向に移動自在に設けられた第1ステージ62と、この第1ステージ62から垂直方向(Z方向)に延びるように設けられた垂直フレーム63と、この垂直フレーム63に沿ってZ方向に移動自在に設けられた第2ステージ64と、第2ステージ64に固定された正面視L字状の支持フレーム65とを有して構成される。
第1ステージ62内には第1電動モータM1が設けられており、これを制御ユニット80から入力される駆動信号に基づき回転駆動することにより、第1ステージ62を上記レールに沿ってX方向に移動させることができる。また、第2ステージ64内には第2電動モータM2が設けられており、これを制御ユニット80から入力される駆動信号に基づき回転駆動することにより、第2ステージ64を垂直フレームに沿ってZ方向に移動させることができる。このため、上記電動モータM1,M2の回転動作を組み合わせることにより、支持フレーム65を介してシフト機構60に取り付けられた結晶ホルダ51を光軸に直交する2軸方向(上下及び左右方向)において任意の位置に移動させることが可能である。
また、シフト機構60には、結晶ホルダ51(波長変換光学素子27)の座標を検出しその座標値を表す信号を制御ユニット80に出力する位置検出部66(図5を参照)が設けられている。位置検出部66は、結晶ホルダ51(波長変換光学素子27)のX軸及びZ軸方向の位置をそれぞれ検出するX軸用エンコーダ、及びZ軸用エンコーダなどから構成される。
ユニットケース70には、その前面側に結晶ユニット50の内部へレーザ光(同軸上に合成された基本波、2倍波、5倍波)を導入するための入射口71(図3を参照)、後面側に波長変換光学素子27により波長変換された紫外レーザ光Lvを導出するための出射口72(図3を参照)が設けられている。
ユニットケース70の上部には、波長変換光学素子27を加熱するヒータ52や結晶温度を検出する温度センサ53、電動モータM1,M2等に制御信号を入出力するための電気コネクタ73が設けられるとともに、大気との接触を遮断して波長変換光学素子27を常に乾燥状態に維持するためのガスコネクタ74が設けられている。レーザヘッド2には、電気コネクタ73と嵌脱自在なコネクタを有する電気ケーブル75、およびガスコネクタ74と嵌脱自在なコネクタを有するガスチューブ76が設けられ、インターフェース4を通る電気ケーブル75及びガスチューブ76を介して上記制御信号等、及びN2ガスが制御ラック3側から供給されるようになっている。
制御ラック3には、レーザ装置1を構成する各部の作動を統括的に制御してレーザヘッド2による紫外レーザ光Lvの出射を制御する制御ユニット80、ガスコネクタ74により接続される上記結晶ユニット50の他、レーザ装置1の各部にN2ガスを供給するガス供給部90、光増幅器12,13を励起する励起光源部(不図示)などが設けられる(図1を参照)。
このような構成において、波長変換光学素子27は上述したように入射角が位相整合角となるように波長変換部20の光軸上に設置されるが、ヒータ52による加熱によって結晶内に温度分布が生じていると、屈折率の温度依存性のために、レーザ光の受光位置の変更(シフト)に伴ってそれまで維持されていた位相整合条件がくずれて(位相整合角がずれて)、この波長変換光学素子27におけるレーザ光の波長変換効率が低下するという問題がある。このとき、受光位置をシフトするたびに波長変換光学素子27の角度(レーザ光軸と結晶の光学軸とのなす角度)を調節して角度位相整合をとる構成では、角度調節用のアクチュエータが必要になりレーザ装置全体が大型化するとともに、潮解性を考慮したケース内に角度調節用のアクチュエータを設ける場合には、角度変換用の機構自体及びその制御が複雑になるという問題がある。
そこで、レーザ装置1の制御ユニット80では、波長変換光学素子27の受光位置をシフトしたときに、波長変換光学素子27内の温度分布による屈折率変化に伴って位相整合条件が崩れてしまう場合でも、角度調整用のアクチュエータを用いて角度位相整合を行うのではなく、波長変換光学素子27の温度を、潮解による劣化防止等の観点より設定された所定温度範囲を逸脱しない温度範囲内において、その波長変換効率が最大となる位相整合条件に合致させるための最適温度に設定する温度制御機能を有している。
この制御ユニット80の概要構成を示すブロック図を図5に示している。制御ユニット80は、例えば、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リード・オン・メモリ)、RAM(ランダム・アクセス・メモリ)等からなる所謂マイクロコンピュータを有して構成されており、シフト機構60(各ステージ62,64の電動モータM1,M2)の駆動を制御して波長変換光学素子27におけるレーザ光の受光位置をシフトさせる駆動制御部81と、波長変換光学素子27が位相整合条件を満足する所定の最適温度となるようにヒータ52の駆動を制御する温度制御部82とを備えている。
駆動制御部81には、制御部内のメモリに波長変換光学素子27における各受光位置の推奨シフト時間などが予め設定されるとともに、現在使用中の受光位置において波長変換に用いられた使用時間がレーザ装置1の稼動に伴って順次積算されて記憶されている。駆動制御部81は、受光位置の使用時間が推奨シフト時間に達しようとしている場合に、シフト機構60の各ステージ62,64を駆動制御して、結晶ホルダ51を予め設定されたシフト量だけ移動させ、レーザ光の受光位置をシフトさせる。また、駆動制御部81は、各ステージ62,64内の位置検出部(リニアエンコーダ)66からの検出信号に基づき、波長変換光学素子27の位置(レーザ光の受光位置)を検出する。
温度制御部82は、所定時間の経過に伴って波長変換光学素子27におけるレーザ光の受光位置がシフトされるたびに、ヒータ駆動により波長変換光学素子27の温度(温度センサ53による検出温度)を所定の温度範囲内において変化させつつ光検出器47によりレーザ光の出力強度をモニタリングし、光検出器47の出力値が最大を示す検出温度(最適温度)を見つけ出して、波長変換光学素子27が当該最適温度に維持されるようにヒータ52への通電を制御(フィードバック制御)する。
このように温度制御部82は、波長変換光学素子27におけるレーザ光の受光位置が変更されるたびに、波長変換光学素子27の温度分布に起因する屈折率変化に伴って位相整合条件が満足されなくなる場合であっても、当該受光位置において位相整合条件を復元するため、受光位置によらずレーザ光の出力強度が常に最大となるように波長変換光学素子27の温度制御を行う。
なお、レーザ装置1が備える波長変換装置とは、波長変換部20および制御ユニット80等からなる装置を意味する。
次に、このように構成される波長変換装置、及びこれを備えたレーザ装置1における波長変換方法について、図6に示すフローチャートを追加参照して説明する。
ステップS101において、制御ユニット80の駆動制御部81は、波長変換光学素子27における現在使用中の受光位置について波長変換に用いられた実使用時間が予め定められた推奨シフト時間(例えば10時間)に達すると、シフト機構60のステージ62,64を駆動させることにより、波長変換光学素子27を所定シフト量だけ移動させ、この波長変換光学素子27におけるレーザ光の受光位置を変更する。ここで、所定シフト量としては、例えば、ビーム直径と同じ値の100[μm]が例示される。
ステップS102では、温度制御部82は、SSR(ソリッド・ステート・リレー)等を介してヒータ52を駆動制御して、温度センサ53による波長変換光学素子27の検出温度を所定温度範囲内で変化させてモニタリングするとともに、光検出器47により各検出温度に対応したレーザ光の出力強度をモニタリングし、当該受光位置における波長変換光学素子27の結晶温度とレーザ光の出力強度との関係を取得する。なお、上述においても例示したように、所定温度範囲としては、潮解による劣化防止等の観点から結晶表面に吸着する水分を放出可能な温度範囲(例えば、設定温度150℃に対して±10℃となる140℃〜160℃)が例示され、これにより、波長変換光学素子27を安定的に保持できる低除湿環境下において位相整合を調節することができる。
ステップS103において、温度制御部82は、上記所定温度範囲内において光検出器47によって検出されるレーザ光の出力強度が最大(極大)となる最適温度を求める。ここで、前のステップS102で取得される、波長変換光学素子27の結晶温度(相対値)とレーザ光の出力強度(相対値)との関係を図7に示しており、このステップS103では、レーザ光の出力強度がピーク(極大)となって現れるときの最適温度を求めることができる。なお、この最適温度は、波長変換光学素子27に生じる温度分布によって、隣接する受光位置において同一の温度として求められるときと、異なる温度として求められるときとがある。
ステップS104では、温度制御部82は、波長変換光学素子27の結晶温度を上記ステップS103において求めた(レーザ光の出力強度が最大となる)最適温度に調節する。具体的には、温度制御部82は、ステップS103で求めた最適温度と、温度センサ53からの検出温度(実温度)とに基づいて温度偏差(温度偏差=最適温度−検出温度)を計算し、この温度偏差に応じた駆動信号を出力して、波長変換光学素子27が最適温度になるように(最適温度で維持されるように)、ヒータ52への通電をオン/オフ切り換えてフィードバック制御を行う。これにより、波長変換光学素子27がレーザ光の出力強度最大となる最適温度に維持される。
ステップS105において、駆動制御部81は、推奨シフト時間から、現在使用中の波長変換光学素子27における受光位置の実使用時間を減算して残余の使用可能時間を求め、使用可能時間が0となり実使用時間が推奨シフト時間(使用可能時間)に到達した時点で、シフト機構60のステージ62,64を駆動させて、波長変換光学素子27の受光位置を次の受光位置へシフトさせ、先のステップS102〜S104で述べた、温度制御による位相整合を再び実行する。
一方、ステップS106において、実使用時間の満了に伴い、波長変換光学素子27における全ての受光位置の使用が完了した場合(所定回数の受光位置のシフトが完了した場合)には、波長変換光学素子27を新品に交換する。
以上、このように構成される波長変換装置、及びレーザ装置1によれば、潮解性を有する波長変換光学素子27において設定時間ごとにレーザ光の受光位置を順次シフトしていく場合に、波長変換光学素子27を、その受光位置において出力強度が最大となる最適温度に維持されるように温度制御することにより、潮解性を有する結晶表面への水分の吸着を防止しながら常に位相整合条件が満足された高出力の紫外光を安定して供給することが可能になる。また、この構成において、潮解による劣化防止等の観点から設けられた温度制御のためのヒータ及び温度センサを位相整合の調節に利用するため、角度チューニング用の高価なアクチュエータや複雑な制御を必要としない簡便な構成で位相整合の調節を実現することができ、コストの低下とともに装置全体を小型化することができる。
次に、第2の実施形態に係る波長変換装置を備えたレーザ装置について説明する。第2の実施形態のレーザ装置101の概要構成図を図8に示すとともに、このレーザ装置101における制御ユニット180の概要ブロック図を図9に示している。なお、この実施形態においては、第1の実施形態と同一の構成要素は同一の符号を付してその詳細な説明を省略し、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
レーザ装置101は、紫外光を出力する出力機能を有しレーザシステムへの組み込みを容易化した小型箱状のレーザヘッド2と、レーザヘッド2の制御機能を備えレーザヘッド2と別置される筐体状の制御ラック103とからなり、レーザヘッド2と制御ラック103とが、インターフェース4により相互接続されて構成される。
制御ラック103には、レーザ装置101を構成する各部の作動を統括的に制御してレーザヘッド2による紫外レーザ光Lvの出射を制御する制御ユニット180、ガスコネクタ74により接続される結晶ユニット50の他、レーザ装置101の各部にN2ガスを供給するガス供給部90などが設けられる。
制御ユニット180は、シフト機構60(各ステージ62,64の電動モータM1,M2)の駆動を制御して波長変換光学素子27におけるレーザ光の受光位置をシフトさせる駆動制御部81と、波長変換光学素子27におけるレーザ光の受光位置ごとの最適温度を記憶するデータ記憶部183と、波長変換光学素子27が位相整合条件を満足する所定の最適温度となるようにヒータ52の駆動を制御する温度制御部182とを備えている。
データ記憶部183には、波長変換光学素子27におけるレーザ光の受光位置ごとに最適温度(レーザ光の出力強度が最大となるときの温度センサ53の検出温度)を事前に測定して得られた測定結果に基づいて、各受光位置に対応する最適温度をマッピングして生成されたマッピングデータが格納されている。
温度制御部182は、所定時間の経過にあたって波長変換光学素子27におけるレーザ光の受光位置がシフトされるたびに、データ記憶部183内のマッピングデータを読み込み、波長変換光学素子27がマッピングデータに予め設定された当該受光位置に応じた最適温度になるようにヒータ52への通電を制御する。なお、温度制御部182は、位置検出部66からの検出情報に基づいて、波長変換光学素子27における現在の受光位置の座標値を認識し、マッピングデータからこの座標値に応じた最適温度を読み込むことで、当該受光位置での最適温度の値を取得している。
なお、レーザ装置101が備える波長変換装置とは、波長変換部20および制御ユニット180等からなる装置を意味する。
このような第2の実施形態に係る波長変換装置、およびレーザ装置101によれば、潮解による劣化防止等の観点から設けられた温度制御のためのヒータ及び温度センサを位相整合の調節に利用した簡便な構成により、潮解性を持つ結晶表面への水分の吸着を防止しながら常に位相整合条件が満足された高出力の紫外光を安定して供給することが可能になる。また、予め生成されたマッピングデータに基づいて波長変換光学素子27の温度を調節する構成であるため、受光位置をシフトさせてから、波長変換光学素子27を次の受光位置での最適温度に調節するまでに要する時間が短縮され、レーザ装置101の稼働率を向上させることが可能になる。
続いて、第3の実施形態に係る波長変換装置を備えたレーザ装置について説明する。第3の実施形態のレーザ装置201の概要構成図を図10に示すとともに、このレーザ装置201における制御ユニット280の概要ブロック図を図11に示している。なお、この実施形態においては、第1の実施形態と同一の構成要素は同一の符号を付してその詳細な説明を省略し、第1の実施形態との相違点を中心に説明する。
レーザ装置201は、紫外光を出力する出力機能を有しレーザシステムへの組み込みを容易化した小型箱状のレーザヘッド2と、レーザヘッド2の制御機能を備えレーザヘッド2と別置される筐体状の制御ラック203とからなり、レーザヘッド2と制御ラック203とが、インターフェース4により相互接続されて構成される。
制御ラック203には、レーザ装置201を構成する各部の作動を統括的に制御してレーザヘッド2による紫外レーザ光Lvの出射を制御する制御ユニット280、ガスコネクタ74により接続される結晶ユニット50の他、レーザ装置201の各部にN2ガスを供給するガス供給部90などが設けられる。
制御ユニット280は、シフト機構60(各ステージ62,64の電動モータM1,M2)の駆動を制御して波長変換光学素子27におけるレーザ光の受光位置をシフトさせる駆動制御部81と、所定温度範囲内における波長変換光学素子27の結晶温度とレーザ光の出力強度との関係を記憶するデータ記憶部283と、データ記憶部283に記憶された結晶温度と出力強度との関係に基づいて、波長変換光学素子27が位相整合条件を満足する所定の最適温度となるようにヒータ52の駆動を制御する温度制御部282とを備えている。
データ記憶部283には、予め測定された実験結果に基づいて、波長変換光学素子27における各々の受光位置での、波長変換光学素子27の結晶温度(温度センサ53による検出温度)とレーザ光の出力強度との関係を示すデータテーブル(図7に対応したテーブル)が記憶されている。
温度制御部282は、所定時間の経過にあたって波長変換光学素子27におけるレーザ光の受光位置がシフトされたときに、光検出器47によりレーザ光の出力強度が低下していることが検出された場合、出力強度の低下分(出力強度の最大値−現在の出力強度)を算出し、データテーブルからその出力強度の低下分を補う温度補正値を読み取ることで、現在の温度をその温度補正値だけ昇温または降温させて、波長変換光学素子27が最適温度になるようにヒータへの通電を制御する。ここで、このときの波長変換光学素子27の温度制御の方向(昇温または降温する方向)については、受光位置のシフト前後における温度変化によって予め温度勾配が分かっているので、その勾配に応じた方向に上記温度補正値だけ温度を変化させればよい。また、予め波長変換光学素子27の温度を昇温側および降温側のいずれかの方向に微小温度だけ変化させて、光検出器47により検出されるレーザ光の出力強度が増大する方向に温度を変化させてもよい。なお、温度制御部282は、位置検出部66からの検出情報に基づいて、波長変換光学素子27における現在の受光位置の座標値を認識し、データテーブルからこの座標値に応じた結晶温度と出力強度の関係を読み込んで、出力強度の低下分を補うための温度補正値を算出している。
なお、レーザ装置201が備える波長変換装置とは、波長変換部20および制御ユニット280等からなる装置を意味する。
このような第3の実施形態に係る波長変換装置、およびレーザ装置201によれば、潮解による劣化防止等の観点から設けられた温度制御のためのヒータ及び温度センサを位相整合の調節に利用する簡便な構成により、潮解性を持つ結晶表面への水分の吸着を防止しながら常に位相整合条件が満足された高出力の紫外光を安定して供給することが可能になる。また、出力強度の低下分に応じた温度補正値に基づいてヒータの駆動を制御する構成であるため、受光位置をシフトさせてから、波長変換光学素子27を次の受光位置での最適温度に調節するまでに要する時間が短縮され、レーザ装置201の稼働率を向上させることが可能になる。
以上、上述した第1から第3の実施形態によれば、潮解による劣化防止等の観点から設けられた温度制御のためのヒータ及び温度センサを位相整合の調節に利用する簡便な構成により、潮解性を有する波長変換光学素子27による波長変換を常に高い効率で安定して行うことが可能になる。したがって、レーザ光の出力強度の経時変化を抑えて長時間に亘って安定的に使用可能な波長変換装置、およびこれを備えたレーザ装置1を提供することができる。
これまで本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。例えば、上述した実施形態では、潮解性を有する波長変換光学素子として、7倍波および8倍波生成用のCLBO結晶からなる波長変換光学素子27(25,26)を例示して説明したが、これに限定されるものではなく、CLBO結晶以外の潮解性を有する光学結晶として、3倍波生成用のLBO結晶からなる波長変換光学素子22や、5倍波生成用のLBO結晶からなる波長変換光学素子23、その他BBO結晶、CBO結晶などに本発明を適用してもよい。また、7倍波および8倍波を生成する光学結晶として、CLBO結晶以外の他の光学結晶を用いてもよい。
また、上述の実施形態では、波長変換光学素子25,26(図3において二点鎖線で囲み符号50で示す部分)を一つの単位として結晶ユニットを構成する形態を例示したが、これに限定されるものではなく、各波長変換光学素子25,26を各々一つの単位として結晶ユニットを構成し、あるいは波長変換光学素子25,26を含む波長変換部20全体を一つの単位として結晶ユニットを構成してもよい。また、上述の実施形態では、レーザ光の受光位置をシフトさせる毎に波長変換光学素子25,26の温度測定を行なったが、複数回のシフト毎に温度測定を行なってもよい。
また、上述の実施形態では、レーザ光発生部10において、レーザ光源11により発生されたレーザ光(シード光)Lsを、直列接続した2段の光増幅器12,13によって増幅し、増幅されたレーザ光Lrを波長変換部20に入射させる構成を例示したが、レーザ光源11の出力や増幅率に応じて光増幅器を1段もしくは3段以上とし、または光増幅器を設けることなく波長変換部20に直接入射させるように構成してもよく、波長変換部20の構成に応じて、レーザ光源11から出射されるレーザ光を複数に分割し並列に設けた複数の光増幅器で増幅することなく、単列の光増幅器で構成してもよい。また、説明簡略化のため記載を省略したが、レーザ光源11と光増幅器12との間、光増幅器12と波長変換部20との間に、光パルスを切り出すEOM等の光変調器や、単色光を高める狭帯域フィルタ等が適宜設けられる。
また、光源装置1からの紫外光Lvの波長は193nmに限定されるものではなく、KrFエキシマレーザやF2レーザ等と同様の波長帯域であってもよい。さらに、本発明による光源装置の適用例としては露光装置に限らず、各種の光学式検査装置や、レーザ治療装置など、他の種々の装置においても用いることができる。