JP2010527210A - 比較的高性能なhts応用のためのジグザグアレイ共振器 - Google Patents
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Abstract
狭帯域フィルタは、入力端子と、出力端子と、それら端子間に結合されて、共振周波数を有する単一の共振器を形成する基本共振器構造体のアレイとを備える。共振器アレイは、基本共振器構成体の複数の列に配列するようにしてもよく、その際に、基本共振器構成体の各列が少なくとも2の基本共振器構成体を有するようにしてもよい。各列の基本共振器構成体は、端子間に並列または直列に結合するようにしてもよい。2またはそれ以上の共振器アレイを結合してマルチ共振器フィルタ機能を生じさせるようにしてもよい。
【選択図】図4
【選択図】図4
Description
本発明は、概してマイクロ波フィルタに関し、より具体的には、狭帯域応用向けに設計されたマイクロ波フィルタに関するものである。
電気的フィルタは、電気信号の処理に長く用いられている。特に、かかる電気的フィルタは、所望の信号周波数を通して、その他の望ましくない電気信号周波数を阻止または減衰することにより、入力信号から所望の電気信号周波数を選択するために使用されている。フィルタは幾つかの一般的なカテゴリに分類することができ、それには、低域通過フィルタ、高域通過フィルタ、帯域通過フィルタおよび帯域除去フィルタが含まれ、それぞれが、そのフィルタによって選択的に通される周波数のタイプを示している。さらに、フィルタは、バターワース、チェビシェフ、逆チェビシェフおよびエリプティク(楕円)のような種類によって分類することもでき、それぞれが、理想的な周波数応答に対してフィルタが与えるバンド形状周波数応答(遮断周波数特性)の種類を示している。
使用されるフィルタの種類は、多くの場合、使用目的に依存する。通信利用において、帯域通過フィルタは、1またはそれ以上の予め設定した帯域以外のRF信号を除去または遮断するために、セルラ基地局およびその他の電気通信機器においてこれまで使用されている。例えば、そのようなフィルタは、基地局または電気通信機器の受信器の部品に悪影響を与えるであろうノイズおよび望ましくない信号を除去するために、典型的には受信器のフロントエンドで用いられる。境界が明確な帯域通過フィルタを受信アンテナ入力に直接配置することにより、多くの場合、所望の信号周波数の近傍の周波数における強い干渉信号によりもたらされる様々な悪影響を取り除くことができるであろう。受信アンテナ入力にフィルタを配置するため、雑音指数を低下させないように、挿入損失は非常に低くしなければならない。多くのフィルタ技術において、低挿入損失を実現するには、フィルタの急峻性(steepness)または選択感度において、それに対応する妥協が必要となる。
商用通信利用において、狭帯域フィルタの使用により最小限の通過帯域を除去して、固定周波数スペクトルをできるだけ多くの周波数帯域に分割可能とし、それにより、固定スペクトルに適応することができる実際のユーザ数を増加させることは、多くの場合望ましいといえる。無線通信の激増により、そのようなフィルタリングは、ますます不利な周波数スペクトラムにおいて、高度の選択性(周波数の僅かな違いによって分けられる信号どうしを区別する能力)と高度の感度(弱い信号を受信する能力)とを提供するはずである。とりわけ注目すべきは、約800−2,200MHzの範囲の周波数である。米国においては、800−900MHzの範囲は、アナログセルラ通信用に使用されている。パーソナル通信サービス方式(PCS)は、1,800−2,200MHzの範囲で使用されている。
マイクロ波フィルタは、一般に2つの回路構成要素、すなわち、1つの周波数f0で効率良くエネルギを蓄積する複数の共振器と、それら共振器間の電磁エネルギを結合して複数の段を形成するカップリングとを使用して構築される。例えば、4段フィルタは、4つの共振器を含む。所与のカップリングの強さは、そのリアクタンス(すなわち、インダクタンスおよび/またはキャパシタンス)によって決定される。カップリングの相対的な強さは、フィルタ形状を決定し、カップリングのトポロジーは、フィルタが帯域通過または帯域除去機能のどちらを実行するのかを決定する。共振器周波数f0は、それぞれの共振器のインダクタンスおよびキャパシタンスにより主として決定される。従来のフィルタ設計において、フィルタがアクティブとなる周波数は、フィルタを構成する共振器の共振周波数によって決定される。各共振器は、フィルタの応答を、上述した理由に対して、高選択的でシャープなものとするために、内部抵抗を非常に低くする必要がある。この低い抵抗に対する要件は、所与の技術において、共振器の寸法およびコストを増大させる傾向がある。
歴史的に、フィルタは、常伝導すなわち非超伝導の導体を使用して製造されてきた。それら導体は、固有の損失(lossiness)を有し、その結果、それらから作られた回路は、様々な程度の損失を有する。共振回路にとって、損失は特に重要である。デバイスのQ値(Q:quality factor)は、その電力散逸または損失の程度である。例えば、より高いQを持つ共振器ほど、損失が小さい。マイクロストリップまたはストリップライン構造の常伝導金属(normal metal)から形成される共振回路は、最大で約400のQ値を有している。
1986年における高温超伝導性の発見により、高温超伝導体(HTS)材料から電気デバイスを製造する試みがなされている。HTSのマイクロ波特性は、その発見以来、非常に改善されている。エピタキシャル超伝導体薄膜は、現在、日常的に作成され、市販されている。
現在、なるべく小さいマイクロストリップ狭帯域フィルタが望ましいとされる数多くの応用が存在する。これは、非常に高い共振器Qを持つ小さいサイズのフィルタを得るためにHTS技術が使用される無線応用に対して特に当てはまる。必要なフィルタは、多くの場合、幾つかのクロスカップリングとともにおそらく12またはそれ以上の共振器を有する非常に複雑なものである。その一方で、使用可能な基板の利用可能なサイズは一般に限られている。例えば、HTSフィルタに利用可能なウエハは、通常、たった2または3インチの最大サイズしかない。このため、高品質のパフォーマンスを維持しつつも、可能な限り小さいフィルタを実現する手段が非常に望ましい。狭帯域マイクロストリップ・フィルタ(約2%、特に1%またはそれ未満の帯域幅)の場合においては、サイズ問題が非常に厳しくなる可能性がある。
HTS材料を使用するマイクロ波構造は、それらが極めて低い損失を有する比較的小さいフィルタ構造をもたらすという観点から非常に魅力的であるが、電流密度が一定の限界に一度達すると、HTS材料が飽和状態となって、その低損失特性が失われ始め、非線形性を招くという難点を有する。かかる理由から、HTSフィルタは、多くは、非常に低い電力受信応用のみに限定されていた。しかしながら、HTSをより高出力応用に適用することに関する幾つかの研究が行われている。これは、かなりの量のエネルギを蓄積できるように、エネルギが拡散される特別な構造を使用することを必要とし、その一方で、電流密度を比較的小さく維持するために、導体における境界流も拡散される。勿論、これは、共振器構造体を比較的大きくしなければならないことを意味する。
我々の知識のために、これまでの殆どの高性能HTS共振器構造体は、TM010のような、円形対称モード(circularly symmetric mode)において作動する円形ディスク型共振器を使用する。 幾つかは、HTSを上面および底面に有する円筒状の誘電体パック(dielectric puck)からなる共振器を使用するが(文献「Z−Y Shen,C.Wilker,P.Pang,W.L.Holstein,D.FaceおよびD.J.Kountz,“High Tc Superconductor−Sapphire Microwave Resonator with Extremely High Q−Values up to 90K”,IEEE Trans.Microwave Theory Tech.,Vol.40,pp.2424−2432,1992年12月」を参照)、その他の設計は、誘電体基板上で円形(または楕円形)ディスク型マイクロストリップパターンを単に使用する(文献「K.SetsuneおよびA.Enokihara,“Elliptic− Disc Filters of High−Tc Superconductor Films for Power−Handling Capability Over 100 W”,IEEE Trans. Microwave Theory Tech.,Vol.48,pp.1256−1264,2000年7月」および「K.S.K.Yeo,M.J.Lancaster,J.S.Hong,“5−PoIe High−Temperature Superconducting Bandpass Filter at 12 GHz Using High Power TM010 Mode of Microstrip Circular Patch”,Microwave Conference,2000 Asia−Pacific,pp.596−599,2000年」を参照)。それらアプローチの両方において、望ましい共振は、モードの極めて複雑なスペクトルに組み入れられ、その望ましい共振の上下の周波数において存在できるその他の共振があり、その幾つかは、望ましい共振と非常に近い周波数となる可能性がある。残念ながら、最低周波数のモードは、強い端電流密度を有する傾向があり、それは、パワーハンドリング(power handling)および無負荷Q値を減少させることとなり、それらはまた、非常に放射的なものとなる。これは、それらに共振器ハウジング(通常は、常伝導金属からなる)との相互作用を引き起こし、それは、パワーハンドリングおよび無負荷Q値をさらに減少させることとなる。勿論、フィルタ応答における多数で隣接する共振の存在は、連続した隣接除去帯域が必要となる多くの実用的応用に対して深刻な問題となる。このため、HTS共振器におけるパワーハンドリングは、電流密度飽和によって厳しく制限される。
よって、最小限の望ましくなモードアクティビティを有し、且つ非常に高い無負荷Qを実現しながらも、典型的なHTS共振器よりも、パワーハンドリングにおける顕著な増加を示すフィルタ共振器を提供する必要性が残る。
本発明によれば、狭帯域フィルタは、入力端子と、出力端子と、入力端子と出力端子との間に結合されて、共振周波数(例えば、800−2,200MHzの範囲内のように、マイクロ波の範囲内)を有する単一共振器を形成する基本共振器構造体のアレイとを備える。一実施形態においては、フィルタは、入力端子と出力端子との間に並列に結合されて、上記共振周波数を有する別の単一共振器を形成する基本共振器構造体の別のアレイをさらに備えるようにしてもよい。この場合、フィルタは、マルチ共振器フィルタとなるであろう。
基本共振器構造体は、例えば、マイクロストリップ構造のような平面構造としてもよく、高温超伝導体(HTS)材料のような適当な材料から構成するようにしてもよい。基本共振器構造体の各々は、共振周波数において半波長のような適当な公称長さを有するようにしてもよい。基本共振器構造体の各々は、例えば、ジグザグ構造であってもよい。単一の共振器は、少なくとも100,000の無負荷Qのような適当な無負荷Qを有するようにしてもよい。フィルタは、任意には、少なくとも2つの基本共振器構造体の間に結合された少なくとも1つの導電性要素を備えるようにしてもよい。
複数の基本共振器構造体は、フィルタを例えば、帯域除去フィルタまたは帯域通過フィルタとして特徴付けるように、入力端子と出力端子との間に結合されるようにしてもよい。一実施形態において、基本共振器構造体は、入力端子と出力端子との間に並列に結合されている。この場合、複数の基本共振器構造体は、少なくとも3つの基本共振器構造体を含むようにしてもよく、少なくとも2つの基本共振器構造体が入力端子と出力端子との間に直列に結合される。
別の実施形態において、複数の基本共振器構造体は、複数列の基本共振器構造体を備え、その各列は、少なくとも2つの基本共振器構造体を有している。この場合、基本共振器構造体の列は、入力端子と出力端子との間に並列に結合するようにしてもよい。各列における基本共振器構造体は、入力端子と出力端子との間に並列または直列に結合するようにしてもよい。
さらに別の実施形態において、基本共振器アレイは、複数行および複数列に配置され、基本共振器構造体の各々は、列に沿って向けられたエネルギ伝播の方向を有する。この場合、入力および出力端子は、直接隣接する行の第1ペア間の基本共振器アレイと、任意には、直接隣接する行の第2ペア間の基本共振器アレイとに結合するようにしてもよく、あるいは入力および出力端子は、直接隣接する列のペア間の基本共振器アレイとに結合するようにしてもよい。
本発明のその他および更なる態様および特徴は、以下の好ましい実施形態の詳細な説明を読むことにより明らかとなるであろう。それら実施形態は、例示であって、本発明を限定することを意図するものではない。
図面は、本発明の好ましい実施形態の設計および有用性を示しており、それら図面において、類似の構成要素は、共通の符号で引用されている。本発明の上述およびその他の利点および目的がどのように得られるのかをより良く理解するために、簡単に上述した本発明のより詳細な説明が、添付図面に記載されるその具体的な実施形態を参照することによって提供されることとなる。それら図面は、本発明の典型的な実施形態のみを描いており、よってその範囲を限定するものとみなすべきではなく、添付図面の使用を通じて追加的な具体性および詳細について本発明の記載および説明を行うことを理解されたい。
フィルタの以下に記載の実施形態の各々は、互いに接続されて全体の共振器構造体を形成するアレイ“基本共振器”を備え、それにより、共振構造体内に蓄えられたエネルギが基本共振器のアレイ全体に亘って拡散されるとともに、個々の基本共振器における電流密度が何れも非常に大きくならないようになっている。その結果、共振構造体内の最大電流密度が最小化され、それにより、全体の共振構造体は、単独の基本共振器よりも非常に高いパワーハンドリング能力を有している。
本明細書の当面の中心は比較的高性能のHTS利用して、それにより、共振構造体における最大電流密度を最小化する重要性を増加することであるが、本明細書に記載の同じ原理の多くは、目的が共振構造体における最大電場強度を最小化することである場合に、適用されるであろう。何れの場合においても、原理は、全体の共振構造体を通じて蓄積エネルギを拡散することであり、それにより、個々の基本共振器の何れにおける電流密度も電場強度も比較的大きくはならないであろう。
重要なことに、基本共振器間の並列または直列接続の使用によって、使用する基本共振器の数量に比例してパワーハンドリングの増加がもたらされる。基本共振器間の並列または直列接続は、スプリアスモードの導入に関して異なる特性を有するため、共振構造体内で両タイプの接続を使用することが望ましい可能性がある。
その他の形式の基本共振器も魅力的であるが、“ジグザグ”共振器は、比較的コンパクトで、共振器が配置される基板の表面に近接する領域にエネルギを閉じ込めて保持する傾向があるもので、当該共振器は、本明細書に記載および検討された実施形態のすべてにおいて使用される。本明細書に記載の基本ジグザグ共振器構造体は、普通の半波長共振器とよく似た機能を果たす。よって、所与の入射電力に対して、このタイプの基本共振器のアレイにおいて見受けられると予測される最大電流の検討のために、簡素な半波長共振器を使用することができる。
図1aは、並列に接続された半波長・伝送ライン・共振器12(この場合、n=3の共振器)のアレイを有する回路10aを示し、図1bは、直列に接続された半波長・伝送ライン・共振器12(この場合、n=3の共振器)のアレイを有する回路10bを示している。どちらの回路10a,10bも、入力抵抗終端14、出力抵抗終端16および発電機18を備える。単純化のため、抵抗終端14,16のコンダクタンスGは、共振器ライン12の特性アドミタンスY0と比較して非常に小さいと考えることができ、しかし実際には、終端14,16の小さいコンダクタンスGは、一般に、50オームの終端に接続された容量性カップリングによって置き換えることができるであろう。並列回路10aについて精度が必要とされる場合には、所与の共振器12についての特性アドミタンスY0は、すべてに印加される同じ電圧を有するその他の共振器ライン12の存在において見られるように、共振器ライン12の特性アドミタンスとしてみなされるはずであることに留意されたい。しかしながら、単純化のため、この比較的些細な影響は無視することができる。
それら2つの回路10a,10bにおける最大電流は、共振器ライン12が所与の外部Q値および所与の入射電力に対して半波長の長さとなる基本共振周波数f0で比較することができる。どちらの場合においても、nの基本共振器ライン12の全体の組合せは、単一のシャント型(shunt-type)共振器として機能することが分かる。
図1aの並列回路10aにおける共振器サセプタンス・スロープパラメータbは、周波数f0における単一基本共振器ライン12のスロープパラメータの単にn倍、すなわち、
[1] b=n(πY0/2)
となる。
[1] b=n(πY0/2)
となる。
直列回路10bは、本質的には、nの半波長長さの共振器ラインであり、それは、周波数感度の増加のため、周波数f0における方程式[1]で提示されるように同じスロープパラメータbを有する。このため、この周波数において、2つの回路10a,10bは、全く同じように作動し、同じ外部Q(ここで、外部QはQeによって示される)、すなわち、
[2] Qe=b/2G
を有することとなる。
[2] Qe=b/2G
を有することとなる。
このため、所与の外部Qに対して、両回路10a,10bは、同じコンダクタンスGが必要であり、発電機における電流は、基本共振周波数f0において、単純に、I=Vg(G/2)となる。
発電機18における電流はn本の基本共振器ライン12間で分割されるため、最初は、並列回路10aはより小さい最大電流を有するはずと思われるかもしれない。しかしながら、それは、2つの回路10a,10bにおける相対的な定常波比を無視している。直列回路10bにおいて、基本共振周波数f0における定常波比は、
[3] Sb=Y0/G
によって与えられ、一方、並列回路10aにおいて、終端14,16のコンダクタンスGは、n本の共振器ライン12の間で分割されることとなり、その結果、共振器ライン12上の定常波比は、
[4] Sa=nY0/G
によって与えられる。
[3] Sb=Y0/G
によって与えられ、一方、並列回路10aにおいて、終端14,16のコンダクタンスGは、n本の共振器ライン12の間で分割されることとなり、その結果、共振器ライン12上の定常波比は、
[4] Sa=nY0/G
によって与えられる。
このため、並列回路10aにおける電流分割の利点は、共振器ライン12上の定常波比の増加によって丁度相殺されることが分かる。ここで、どちらの場合も、構造が対称となっているため、発電機18では、基本共振周波数f0において整合負荷が見られ、共振器電流が、Ig=VgG/2となる。これは、直列回路10bにおける第1共振器ラインに対する入力電流と同じとなり、並列回路10aにおいては、個々の共振器ラインへの入力電流がIg/nとなる。
よって、終端のコンダクタンスGは、基本共振周波数f0における共振器ライン12のアドミタンスY0よりも遙かに小さくなるため、共振器ライン12が発電機18に接続されることとなる地点は、個々の共振器ライン12上の電流最小点となる。並列回路10aにおいて、電流最小点はImin(a)=Ig/nとなり、一方、直列回路10bにおいて、電流最小点はImin(b)=Igとなる。したがって、回路10a,10bのそれぞれについての方程式[3]および[4]を使用すると、電流最大値は、
[5] Imax(a or b)=Imin(a or b)S(a or b)=VgY0/2
であることが分かる。
[5] Imax(a or b)=Imin(a or b)S(a or b)=VgY0/2
であることが分かる。
この式から、更なる検討は、所与のQeで作動されるnの基本半波長共振器のアレイ内で許容される最大電流Imaxが既知である場合に、処理可能な最大入射電力が、
[6] Pmax=|Imax|2nπ/(4Y0Qe)
となることを示している。この方程式において、Imaxは、基本共振周波数f0における共振器アレイ内の最大電流の実効値であると取られる。より大きな外部Q値は共振器12上でより大きな定常波比を必要とするため、パワーハンドリングは、使用される基本共振器12の数量nに比例し、外部Qに反比例することが分かる。
[6] Pmax=|Imax|2nπ/(4Y0Qe)
となることを示している。この方程式において、Imaxは、基本共振周波数f0における共振器アレイ内の最大電流の実効値であると取られる。より大きな外部Q値は共振器12上でより大きな定常波比を必要とするため、パワーハンドリングは、使用される基本共振器12の数量nに比例し、外部Qに反比例することが分かる。
以上のことから、パワーハンドリングに関しては、並列接続と直列接続との間に相対的優位は無いことが分かる。しかしながら、並列回路10aは、f0とその倍数のみで共振を有し、直列回路10bは、f0/nとその倍数で共振を有する。このため、望ましくない共振を最小化するという観点からは、並列接続が非常に魅力的である。しかしながら、実際の状況においては、基板の空間を最大限に利用するとともに、“ブロードストラクチャモード(broad-structure modes)”と呼ばれるものが対象周波数帯域に入り込むのを防止するために、両方の接続タイプを使用することが望ましい可能性がある。以下に詳述するように、それら後者のモードは、並列に接続される基本共振器の数量が増えるに連れて、より大きな干渉が生じる。その結果、並列に接続可能な基本共振器の数量も、スプリアス応答の考慮によって限定される。
図1aおよび1bに示される回路10a,10bは、帯域通過接続を有しているが、共振器アレイは、帯域除去接続に使用されるときに、同じパワーハンドリングを有するものであってもよい。例えば、図2aは、帯域除去接続における直列型の集中定数共振器20を示しており、この共振器においては、基本共振周波数f0において伝送がショートしており、それにより除去帯域中心を与えるようになっている。図2aの直列共振ブランチは、図2bに示すように、Jインバータ(通常は、直列容量性カップリングからなる)を介して図1aおよび1bの回路10a,10bにおけるアレイ共振器12の何れかを接続することによって近似でき、これにおいて、得られた共振器リアクタンス・スロープパラメータは、
[7] x=nπY0/(2j2)
となる。
[7] x=nπY0/(2j2)
となる。
方程式[7]における結果を使用して図2aの構造を分析すると、方程式[6]と同じ方程式を与えることができ、その場合、外部Qは、除去帯域中心周波数f0を除去帯域の3dBの帯域幅で割ったものとして定義される。この結果は、エネルギの観点から問題を見ると、予測し易いものである。
均一な伝送ライン共振器に基づく図1および2に示す回路の分析は、すべての詳細を、ジグザグ共振器構造体を使用するアレイに適用するものではないが、そのような分析は、関連する原理を正確に明らかにする。図3は、本明細書に記載の実施形態における基本共振器として使用できる、半波長長さのジグザグ共振器構造体24を示している。ジグザグ共振器構造体24は、共振周波数における公称二分の一波長の共振器ライン26を備える。共振器ライン26は、ジグザグ構造に折り曲げられ、互いに間隔28を空けて配された複数の平行線27を有し、隣接する線27の各ペアが、折返し29を介して互いに接続されている。本明細書で使用できるジグザグ共振器構造体の様々な設計は、その他の形式の共振器とともに、発明の名称を“Micro−Miniature Monolithic Electromagnetic Resonators”とする米国特許第6,026,311号および米国仮特許出願第61/070,634号に記載されている。
ジグザグ共振器構造体24は、ジグザグ・ヘアピン共振器の幾つかの有用な特性(全てではないが)を有する(「G.L.Matthaei,“Narrow−Band,Fixed−Tuned,and Tunable Bandpass Filters With Zig−Zag Hairpin−Comb Resonators”,IEEE Trans Microwave Theory Tech.,vol.51,pp.1214−1219,2003年4月」を参照)。特性の1つは、それらタイプの共振器が比較的小さいということである。別の特性は、それら共振器が同じタイプの隣接共振器に対する比較的小さいカップリングを有し、その結果、それらが狭帯域フィルタに特に有用であることである。本目的のための非常に重要な特性は、ジグザグ共振器構造体において、磁場が共振器上で消失する傾向があり、その結果、磁場が共振器構造体表面に相対的に近い領域に閉じ込められることである。これは、全体の共振器アレイがハウジング上の蓋の高さと比べて非常に大きくとも、HTS共振器上の磁場が常伝導の金属ハウジングと相互に作用するのを防止する。比較により、大きいマイクロストリップディスク共振器は、ハウジングとの相互作用により低下した無負荷Qを有する傾向が強くなっている(あるモードの場合、共振器はマイクロストリップ・パッチアンテナのように動作できる)。酸化マグネシウム(MgO)基板上のイットリウムバリウム酸化物YBCO超伝導体材料を使用して、850MHz付近で77°Kで行う、これまで実行されてきたジグザグアレイ共振器の試験において、100,000を十分に越える無負荷Qおよび低温度における非常に高いQが観察された。
ジグザグ共振器構造体24の予備実験は、平行線27の間により大きな間隔28がある場合に、かなり上昇したパワーハンドリングを持つ可能性があることを示している。しかしながら、これは、共振器構造体24のサイズを幾分増大させるとともに、場をさらに拡大させて、共振器構造体24が、それをハウジング壁と相互作用させ、それが、共振器構造体24の無負荷Qを減少させる可能性がある。
本明細書で述べる実験および分析を実行する目的のために、ジグザグ共振器構造体24は、0.508mmの厚さのMgO(εI=9.7)の基板を有し、共振器ライン幅および間隔がともに0.201mmとなるように加工または仮定された。ジグザグ共振器構造体24の全体寸法は、4.42mm×10.25mm(0.174インチ×0.404インチ)であった。加工および仮定された共振器構造体24の基本共振周波数f0は、約0.85GHzであった。しかしながら、本明細書で述べた様々な接続によって、この公称値から幾分変わる可能性がある。
特に、以下の実施形態の説明では、行と列の形で配列された基本共振器構造体のアレイに言及する。その明確化の目的のために、基本共振器構造体の列は、共振器内のエネルギ伝播の方向と平行な線に沿って延びる複数の共振器構造体として定義し、基本共振器構造体の行は、共振器内のエネルギ伝播の方向と垂直な線に沿って延びる複数の共振器構造体として定義する。以下の実施形態の記載では、共振器アレイの上端、下端、左端および右端についても言及する。それらの場合において、共振器アレイの上端および下端は、基本共振器構造体内のエネルギ伝播の方向と垂直な方向に沿って向けられ、一方、共振器アレイの左端および右端は、基本共振器構造体内のエネルギ伝播の方向と平行な方向に沿って向けられる。
図4は、単一共振器・帯域除去フィルタ30を示し、当該フィルタは、単一容量性カップリング38を介して入力端子34と出力端子36との間に並列に接続された2(n=2)の基本ジグザグ共振器構造体24を含む共振器アレイ32を備える。図5は、単一共振器・帯域除去フィルタ40を示し、当該フィルタは、12(n=12)の基本ジグザグ共振器構造体24を含む共振器アレイ42を備え、それら基本共振器構造体24は、単一容量性カップリング48を介して入力端子44と出力端子46との間に並列に接続された6列として配列され、各列が単一容量性カップリング48を介して入力端子44と出力端子46との間に直列に結合された2つの基本共振器構造体24を含む。特に、入力および出力端子44,46は、基本共振器構造体24の最内列の間の下端において共振器アレイ42に接続されている。フィルタ30は、単一基本共振器構造体を有するフィルタの2倍(3dB)のパワーハンドリングの増加をもたらし、一方、フィルタ40は、単一基本共振器構造体を有するフィルタの12倍(10.7dB)のパワーハンドリングの増加をもたらすはずである。
入力および出力端子44,46が共振器アレイ42に接続されることとなるノード(この場合、6列の間の共振器アレイ42の下端におけるノードであり、本明細書に記載されるその他の場合には、端子が結合されるアレイの上端、下端、および/または中央にけるノード)は、有限の線分によってそれぞれ分離されている(すなわち、あるノードから次の隣接ノードに至るために、電気エネルギは、ジグザグ構造の単一ジグを横切る必要がある)が、それら線分の長さが(各ジグザグ構造の全線の長さと比べると)共振周波数における波長よりもずっと小さいため、すべての実際の目的において、それらノードは本質的に互いに短絡されていることに留意されたい。
フィルタ30,40は、各共振器構造体24の上端、下端および中間点における隣接共振器構造体24間の接続部39,49によって、共振器構造体24間の1ライン幅の分離点(separation)をそれぞれ使用することに留意されたい。フィルタ40に関して、直列に接続された共振器構造体24は、互いに直接突き合わされた、隣接する上端および下端を有する。最近の研究によれば、直列の共振器構造体24の側部を互いに直接突き合わせることによっても大変うまくいき、それにより、それら共振器構造体24間に全く隙間が生じなくなることが示されている。
Sonnetソフトウェアを使用して帯域除去フィルタ30,40のフィールドソルバ(Field-solver)研究が行われた。特に、中間点における接続部39,49が無ければ、フィルタ30,40が隣接共振器構造体24間に生じる共振による、追加的な望ましくないモードを持つことが分かった。しかしながら、隣接共振器構造体24の中間点に追加された接続部39,49は、そのような望ましくないモードを除去し、f0およびその倍数と等しい共振をもたらした。
それら技術の原理を実験的に検証するために、約1000(0.1%の3dB除去帯域幅)の外部Qを与えるカップリングを有するn=1,2,4および12の基本ジグザグ共振器構造体24をそれぞれ具備する4つの単一共振器試験フィルタが設計および加工された。所与の外部Qに対して様々なフィルタのパワーハンドリングの高感度測定を得るために、帯域除去モードにおいてフィルタが操作された。そのため、フィルタは、フィルタ30,40のケースと同様に、1つのみカップリングを使用した。既述したように、試験フィルタは、0.508mmの厚さのMgO基板(εI=9.7)上でYBCO超伝導体材料を使用した。
図6は、77°Kで測定された4フィルタの連続波(CW)のパワーハンドリング特性の測定値、特に、圧縮特性を示している。すべての場合における3dBの帯域幅は0.1%であった(外部Qは1000と等しい)。そして、ゼロdBレベルは、フィルタのピーク除去帯域減衰を基準としている。比較測定は、入力電力が増加したときの(約40dBの)フィルタの最大減衰からの乖離を示している。無負荷Qが外部Qよりも非常に大きい場合(試験フィルタの場合のように)、所与の無負荷Q(Quとして表される)および外部Q(Qeとして表される)についてのピーク減衰は、
[8] |S12|dB=20log10(Qu/(2Qe))
によって与えられる。
[8] |S12|dB=20log10(Qu/(2Qe))
によって与えられる。
特に、電流密度が飽和し始めると、無負荷Qおよびピーク減衰は減少することとなる。減衰における1dBの減少(無負荷Qにおけるおおよそ12%の減少)は、“飽和”(すなわち、非線形性の兆候)のためのマーカとして任意に選択された。測定された入力電力値は、1000の所望外部Qからの測定外部Qの任意の乖離を補償するために僅かに調整された。飽和点は、nが2倍に増加する都度(n=1,n=2,n=4の場合の間のように)、3dB高いパワーレベルで、また、nが3倍に増加する都度(n=4,n=12の場合の間のように)、約4.8dB高いパワーレベルで生じることが予想される。測定データから分かるように、結果はまさに予測した通りである。
参照により本明細書に先に援用した米国特許第6,026,311に記載されているように、ジグザグ発振器構造24の設計を最適化することによって、このパワーハンドリングをさらに改善できると考えられる。図6のデータは特にQe=1000の場合に対してのものであることに留意されたい。例えば、同じ共振器構造体24が3dBの帯域幅で1%の比帯域を有する単一共振器帯域通過フィルタとして操作された場合に、パワーハンドリングが図6に示すそれの10倍大きくなるであろう。
n=1,2,4および12の試験フィルタについて77°Kで測定された無負荷Qは、それぞれ151,000、120,000、130,000および135,000であった。60°Kで測定された対応する無負荷Qは、それぞれ220,000、155,000、170,000および240,000であった。それらの高いQは、試験フィルタが常伝導金属ハウジングと顕著には相互作用しないことを裏付けている。測定結果は、無負荷Qが要素nの数の強い関数ではないこと、並びに、観測された変数が、フィルタ設計からよりも材料品質における変数から多く生じることも裏付けている。
特に、先に引用したSetsune et al.文献は、100Wを越えるパワーハンドリングを有する2発振器・HTSフィルタについて報告している。このパワーハンドリングの非常に優れたレベルが、試験フィルタで実験したそれよりも桁違いに大きいが、この大きな違いについて可能性のある理由を少なくとも定性的に検討するのは有用である。図6の試験フィルタにおける応答データは、約0.1%の3dB帯域幅を仮定して生成されたが、Setsune et al.文献における応答データは、約1.4%の3dB帯域幅を仮定している。Setsune et al.文献におけるフィルタが共振器を1つのみ有していた場合、その1.4%の帯域幅は、0.1%帯域幅の14倍のパワーハンドリングの増加をもたらすこととなる。Setsune et al.文献のフィルタは、実際に2つの発振器を有していたが、帯域幅によるそれらの利点は、おそらく類似したものである。
別の相違点は、測定目標の定義にある。図6で使用される飽和の定義とは、帯域除去フィルタの除去帯域ピーク減衰における1dBの圧縮点のことをいい、それは、Setsune et al.文献に示唆された定義よりも、無負荷Qの低下に対する感度が高い。Setsune et al.文献は、帯域通過フィルタの通過帯域挿入損失における著しい増加を見出した。例えば、単一帯域通過共振器について、中間帯域挿入損失は、
[9] |S12|dB=−20log10(1−Qe/(Qu))
によって示すことができる。
[9] |S12|dB=−20log10(1−Qe/(Qu))
によって示すことができる。
上述したように、非線形性の兆候の定義として、帯域除去フィルタのピーク減衰の1dBの圧縮を使用する定義は、非線形性による無負荷Qの約12%の低下に対応する。図6の試験ケースにおいて、無負荷Qは、外部Qよりも100倍以上大きかったため、フィルタが帯域通過接続において使用された場合には、方程式[9]における対応する第2項が0.01よりも小さくなるであろう。よって、帯域通過挿入損失測定によって、この非常に小さい項における12%の変化を検出しようと試みることが非現実的であることが容易に分かる。しかしながら、方程式[8]に見られるように、そのような測定は、中間除去帯域・帯域除去測定を使用すれば、非常に容易である。Setsune et al.文献において、非線形性の兆候は、帯域通過フィルタの損失においてかなりの増加が存在するときの証拠であると推定される。方程式[9]は、Setsune et al.文献における2共振器の場合と完全に適用されるものではないが、類似の原理をおそらく適用する。無負荷Qに対する外部Qの比率が小さい場合、低損失フィルタにおいて要求されるように、挿入損失における著しい変化を得るためには、無負荷Qが、数値において大きく(12%を遙かに越えて)低下する必要があるであろう。Setsune et al.文献において非線形性の兆候として示唆された定義は、図6のデータを得るために使用されるものよりも要求がそれほど厳しくない。実際の目的に適した定義は、勿論、用途に依存することとなる。
別の追加要因は、Setsune et al.文献における測定データがパルスパワーを使用して得られたものであるが、図6の測定データがCWパワーを使用して得られたものであることである。さらに別の追加要因は、Setsune et al.文献における測定データが20°Kで得られたものであるが、図6の測定データが77°Kで得られたものであることである。図6のパワー飽和の定義を使用して行われた最近の試験は、フィルタの操作温度が77°Kから60°Kに低下したときに、7.3dBのパワーハンドリングの増加を示している。20°Kでの試験は試験ケースでは行われていないが、その温度への低下は、おそらくパワーハンドリングをさらに増加させるであろう。特に、実験が図6の実験に使用される周波数の約2倍であったという事実によって、Setsune et al.文献における実験が不利とされることを指摘しておく必要がある。しかしながら、上記検討から、Setsune et al.文献で検討されたフィルタが図6と関連するフィルタ(例えば、図4および5に示されるフィルタ30,40)よりもおそらく高いパワーハンドリング能力を有すると考えられるが、何れの差異も最初に思われたよりも遙かに少ないと考えられると、結論付けることができる。
ジグザグアレイフィルタの潜在的可能性をさらに理解するために、様々な可能性のあるアレイ設計の多くの大規模なコンピュータ検討を行った。それら検討には、アレイフィルタのスプリアス応答アクティビティを評価するために、通常多くのオクターブに亘る、周波数応答のコンピュータ演算も含まれていた。電流分布が非常に不均一であることが判明するかもしれず(各基本共振器がアレイフィルタに均一に電流を与えることが望ましい)、それが本明細書に開示の技術の有効性を実質的に低下させるかもしれないという懸念のため、基本共振周波数f0でフィルタにおける電流分布に関する幅広いデータも得られた。意外なことに、アレイフィルタ全体に亘るジグザグ共振器構造体の対応領域における電流が非常に均一であることが分かったため、この懸念は、全く根拠の無いことが判明した。例えば、検討された最も大きい(n=64の基本共振器を備えた)アレイフィルタにおいて、基本ジグザグ共振器構造体について演算されたピーク電流密度の変動は、アレイフィルタの全域で3%未満変動し、その変動の多くが、アレイフィルタの各サイドの最も外側のジグザグ共振器構造体におけるものであった。これは、実施形態のすべてに当てはまるものであり、それは、アレイフィルタの端部におけるジグザグ共振器構造体が隣接ジグザグ共振器構造体からの相互磁束から恩恵をそれほど得ておらず、その結果、磁束および逆電圧(back voltage)を変える必要時間を生じさせるために少し大きい電流を有する必要がある、という事実に起因するものと考えられる。
異なるアレイフィルタの広域応答および電流密度は、伝送ラインの幅およびそれらの間隔に相当するセルサイズを有する全波平面プログラムSonnetを使用して計算された。多くの場合、コンピュータメモリ制限と、解析されるアレイフィルタの幾つかの非常に大きなサイズとの理由から、大きいサイズのセルが必要であった。
しかしながら、それら大きなセルを使用することは、アレイフィルタの様々な領域における相対的な電流密度を演算および表示する場合に、別の利点があった。これは、マイクロストリップライン内の電流密度がラインの端と中央との間で大きく変動するためであり、非常に詳細な電流密度データが得られる場合は、アレイフィルタの異なる領域において大きく変動する電流密度を比較するのが難しくなる。しかしながら、セルがラインにまたがると、得られる電流密度の値が、ラインの幅を通じたほぼ平均値となる。
これは、特にアレイフィルタの様々な領域における電流密度の強さが異なる色彩によって表されるプロットにおいて、アレイフィルタの異なる領域における電流密度の比較を容易にする。Sonnetは、最も強い電流密度に赤を使用し、電流が弱くなるに連れて、色彩が虹の色の順序で変化して行き、最も弱い電流密度で青となる。グレイスケールにおいて見られるように、対応する電流密度は、最も強い電流密度を表す非常に暗い灰色から、中間の電流密度を表す非常に明るい灰色または白色へと変動し、非常に低い電流密度を表す黒に近い色となる。以下に検討するアレイフィルタのすべてにおいては、アレイフィルタ全体に亘って、基本共振周波数f0における相対的な電流密度を示すためにグレイスケールによりプロットを示すこととする。
特に、より小さいセルのサイズと比べて大きなセルのサイズを使用することは、広帯域演算応答の形状に対して実際に全く影響が無いように思われたが、周波数規模に少しの影響があった。大きいセルを使用することにより、おそらく2.5%、基本共振周波数f0が減少した。大きいセルを使用することは、演算した帯域幅にも少しの影響があったが、それは、実験の目的に対して無視できるように思われた。
以下に述べるアレイフィルタにおける基本共振器の数nは大きく変動するが、それらアレイフィルタのすべてについての最大電流密度の値は約30A/mであることに留意されたい。なぜそうなるのかを検討することは有益である。アレイフィルタは、1000(またはその値の数パーセントの範囲内)の外部Qを与える終端で常に操作されたが、発電機電圧は常に1ボルトに設定された。単一基本共振器用の共振器サセプタンス・スロープパラメータがbである場合、nの基本共振器のアレイを使用すると、全体スロープパラメータbnはn倍に増加することとなる。そして、Gが終端のコンダクタンスであるとすると、Qe=bn/(2G)となるので、同じ外部Qを維持するためには、Gをn倍増加させる必要があるであろう。ここで、発電機の利用可能な電力は、Pavail=|Vg|2G/4で与えられ、Vgは定数となるため、入射電力もn倍に増加することとなる。基本共振器の間で電力が常に均等に分割されると仮定できる場合、各基本共振器によって見られる電力は、nの値に関係無く常に同じとなり、基本共振器の電流は常に同じとなる。それは、かなりの程度、以下のフィルタアレイについて演算された結果が示すものである。
図7aは、単一共振器・帯域通過フィルタ50を示し、当該フィルタは、12(n=12)の基本ジグザグ共振器構造体24を有する共振器アレイ52を備え、それら基本共振器構造体24は並列に結合された6列として配列され、各列が入力端子54と出力端子56との間に直列に結合された2つの基本共振器構造体24を含む。見て分かるように、フィルタ50は、入力および出力端子54,56(この場合、それぞれが8,427オームの抵抗を有する)が共振器アレイ52の互いに反対の位置に結合されてフィルタ50に帯域通過特性を与えるとともに、特に、共振器構造体24の最内の行の間の共振器アレイ52の上端および下端にある以外は、図5に示されたフィルタ40と類似している。フィルタ40とフィルタ50との間の別の差異は、隣接する基本共振器構造体24が、各共振器構造体24の上端、下端および中間点のみではなくそれ以上で連結されていることである。特に、フィルタ50においては、各隣接共振器構造体24をその隣に直接突き合わせることにより、可能な全ての箇所で接続が行われ、それにより、望ましくないモードがより確実に除去されるようにしている。フィルタ40と同様に、フィルタ50は、単一基本共振器構造体を有するフィルタの12倍(10.7dB)、パワーハンドリングの増加をもたらすはずである。
入力および出力端子54,56が共振器アレイ52の上端および下端に結合されていることから、各列の2つの共振器構造体24は直列に結合されている。その結果、フィルタ50は、f0/2およびその倍数と等しい共振を有する。フィルタ50の計算周波数応答が図7bに示されている。
帯域通過フィルタ50の電流密度パターンは、基本共振周波数f0で且つ1ボルトの駆動電圧および1000の外部Qにより計算された。図7aに示すように、強い電流密度の領域は、2つの中間暗灰色帯域58によって表される一方、低い電流密度の領域は、3つの黒色帯域60によって表されている。フィルタ50の電流密度をサンプリングすると、共振器アレイ52の縦の中央線に隣接する上部ジグザグ共振器構造体24における最大電流密度が32.0A/mであり、フィルタ50の最外側の左右のジグザグ共振器構造体24における最大電流密度が32.7A/mであることが示された。既述したように、最外側のジグザグ共振器構造体24におけるピーク密度における増加は、フィルタのすべてにおいて観察された。また、典型的であることが分かったように、外端から1列内側の左右のジグザグ共振器構造体24は、縦の中央線62の隣のジグザグ共振器構造体24が有するのと同じ(またはほぼ同じ)最大電流密度を備える。
図8aは、単一共振器・帯域通過フィルタ70を示し、当該フィルタは、12(n=12)の基本ジグザグ共振器構造体24を有する共振器アレイ72を備え、それら基本共振器構造体24は6列の共振器構造体24として配列され、各列が入力端子74と出力端子76との間に結合された2つの基本共振器構造体24を含む。見て分かるように、フィルタ70は、入力および出力端子74,76(この場合、それぞれが7,600オームの抵抗を有する)が共振器アレイ72の互いに反対の端部に結合されてフィルタ70に帯域通過特性を与えるという点において、図7aに示されたフィルタ50と類似している。しかしながら、フィルタ70は、上端および下端に結合されるのではなく、入力および出力端子74,76が共振器アレイ72の左端および右端に行間で結合されているという点において、フィルタ50と相違する。すなわち、各列における2つの共振器構造体24が並列に接続され、よって、12の共振器構造体24すべてが並列に接続されている。フィルタ50と同様に、フィルタ70は、単一基本共振器構造体を有するフィルタの12倍(10.7dB)のパワーハンドリングの増加をもたらすはずである。
フィルタ70の計算周波数応答が図8bに示されている。フィルタ70は、各列の2つの共振器構造体24の組がf0/2およびその倍数と等しい共振をもたらす点において、フィルタ70が有するのと同じモードのすべてを備える。しかしながら、共振器アレイ72の左端および右端の中央点は、偶然にも、f0/2のモードにおいて、電圧のゼロポイントとなっている。その結果、それらポイントでフィルタ70を駆動した場合、そのモードは励起されないこととなる(若しくは、各列の共振器構造体24が直列に結合された場合には、励起される)。図7bに示されるフィルタ50の周波数応答と比較して、より低いオーダのモードは周波数応答で発生しないため、基本共振周波数f0およびその倍数の通過帯域のみが、図8bに示すように、周波数応答において存在することとなる。
帯域通過フィルタ70の電流密度パターンは、基本共振周波数f0で且つ1ボルトの駆動電圧および1000の外部Qにより計算された。図8aに示すように、強い電流密度の領域は、2つの中間暗灰色帯域78によって表される一方、低い電流密度の領域は、3つの黒色帯域80によって表されている。この場合、内側ジグザグ共振器構造体24における最大電流密度が31.6A/mであり、共振器アレイ72の外端のジグザグ共振器構造体24における最大電流密度が32.7A/mであった。
図9aは、単一共振器・帯域通過フィルタ90を示し、当該フィルタは、32(n=32)の基本ジグザグ共振器構造体24を有する共振器アレイ92を備え、それら基本共振器構造体24は8列の共振器構造体24として配列され、各列が入力端子94と出力端子96との間に結合された4つの基本共振器構造体24を含む。見て分かるように、フィルタ90は、入力および出力端子94,96(この場合、それぞれが4,117オームの抵抗を有する)が共振器アレイ92の右端および左端に結合されてフィルタ90に帯域通過特性を与えるという点において、図8aに示されたフィルタ70と類似している。しかしながら、フィルタ90は、共振器アレイ92が共振器構造体24を2行多く含み、入力および出力端子94,96の各々が二重対称タップ98を介して共振器アレイ92の各側部に結合され、その一方が、共振器構造体24の第1および第2行の間のアレイ92に結合され、他方が、共振器構造体24の第3および第4行の間のアレイ92に結合されるという点において、フィルタ70と相違する。すなわち、各列における4つの共振器構造体24が並列に接続され、よって、32の共振器構造体24すべてが並列に接続されている。フィルタ90は、単一基本共振器構造体を有するフィルタの32倍(15dB)のパワーハンドリングの増加をもたらすはずである。
フィルタ90の計算周波数応答が図9bに示されている。各列における4つの共振器構造体24の組は、f0/4およびその倍数と等しい共振をもたらす。f0/4のモードにおいて、垂直方向の電圧パターンは、共振器アレイ92の上端で正の最大値を持ち、共振器アレイ92の下端で負の最大値を持つ半分の余弦波のようになる。この電圧パターンが奇対称(odd symmetric)であり、タップ98における電圧駆動が偶対称(even symmetric)であるので、このモードの励起は発生しない。f0/2共振においては、タップ地点はゼロ電圧ポイントであり、そのためこのモードは結合しないこととなり、一方、3f0/4モードにおいては、モード電圧が再び奇対称となり、そのため偶対称を有するタップは結合しないこととなる。このように、3つの最下位のモードおよびイメージ周波数の対応モードは、周波数応答から除去される。よって、3つの下位モードは周波数応答で発生しないため、共振周波数f0およびその倍数の通過帯域のみが、図9bに示すように、周波数応答において存在することとなる。
図9bにさらに示すように、2f0共振はスプリット(split)であり、1.365GHzにおいて追加された共振が存在する。その影響は、“ブロードストラクチャモード”と呼ばれるものに起因すると考えられ、それは、並列に接続される共振器の列が多くなるに連れて(すなわち、フィルタの幅が増加するに連れて)、周波数を引き下げる。そのようなモードは、上述したもっと小さいフィルタにおいても生じるものであるが、しかしそれは、対象範囲外の高い周波数においてである。さらに多くの共振器構造体24の列を図9aに示すフィルタ90に加えた場合、1.365GHzにおける共振は、周波数が引き下げられることとなる。よって、ブロードストラクチャモードの存在は、何列の共振器をフィルタ内で並列に接続できるかについての制限的な検討事項となる。しかしながら、次の実施形態から分かると思うが、共振器アレイの上端および下端中央におけるカップリングおよび両サイドのカップリングの利点を断念することにより(すなわち、共振器構造体24のすべてを並列に接続しないことにより)、ブロードストラクチャモードの制限は大幅に緩和することができる。
帯域通過フィルタ90の電流密度パターンは、基本共振周波数f0で且つ1ボルトの駆動電圧および1000の外部Qeにより計算された。図9aに示すように、強い電流密度の領域は、4つの中間暗灰色帯域100によって表される一方、低い電流密度の領域は、5つの黒色帯域102によって表されている。この場合、共振器アレイ92の上端および下端行において縦の中心線と隣接する内側ジグザグ共振器構造体24における最大電流密度がそれぞれ27.0A/mおよび27.3A/mであり、共振器アレイ92の外端のジグザグ共振器構造体24における最大電流密度がそれぞれ27.8A/mおよび28.2A/mであった。それら電流密度の値は、上述したフィルタの最大電流密度の値よりも幾分か小さい。これは、フィルタの入力および出力で使用されるカップリングラインの非ゼロの長さによるものに違いないと考えられる。
図10aは、単一共振器・帯域通過フィルタ110を示し、当該フィルタは、40(n=40)の基本ジグザグ共振器構造体24を有する共振器アレイ112を備え、それら基本共振器構造体24は、12列の共振器構造体24として配列され、各列の共振器構造体24が入力端子114と出力端子116との間に並列に結合されている。見て分かるように、フィルタ110は、入力および出力端子114,116が共振器アレイ112の上端および下端に共振器構造体24の最内の列の間で結合されてフィルタ110に帯域通過特性を与えるという点において、図7aに示されたフィルタ50と類似している。しかしながら、フィルタ110は、入力および出力端子114,116の間において並列に結合された8の内側列を含み、その各列が、入力および出力端子114,116の間に直列に結合された4の共振器構造体24を含むのに加えて、入力および出力端子114,116の間に並列に結合された4の外側列を含み、その各々が入力および出力端子114,116の間に直列に結合された2の共振器構造体24を含むという点において、フィルタ50と相違する。すなわち、フィルタ110は、入力および出力端子114,116の間に並列に結合された12列を含み、2の共振器構造体24が共振器アレイ112の各角部から取り除かれていることを除いては、4の共振器構造体24が入力および出力端子114,116の間に直列に接続されている。このようにすると、フィルタ110は、円形基板により容易に取り付けられ、この場合には、56.9mm(2.24インチ)の直径の円の範囲内である。フィルタ110は、単一基本共振器構造体を有するフィルタの40倍(16dB)のパワーハンドリングの増加をもたらすはずである。
フィルタ110の計算周波数応答が図10bに示されている。共振器アレイ112がその左端および右端で励起されている場合、12列幅のブロードストラクチャモードは、基本共振周波数f0に非常に近い共振を有することとなるが、当該ブロードストラクチャモードは、効率的に励起されることとなる。しかしながら、共振器アレイ112は、その代わりに、その下端および上端の中央で励起されて、それにより共振器アレイ112を並列に結合された半分に効率的に2分割し、その各々が並列な最大で6列のみを有することとなるため、ブロードストラクチャモードは、対象となる周波数範囲からうまく外れることとなる。図10bに示すように、ブロードストラクチャモードが存在しないのは、フィルタ110の周波数応答にはっきりと表れていることに留意されたい。しかしながら、共振器アレイ112は、直列に結合された4つもの共振器構造体24を有する列を含み、それは、図10bに示すように、周波数応答においてf0/4の倍数の共振をもたらすこととなる。基本共振周波数f0に近い共振が所与の用途で容認できる場合には、フィルタ110は容認できる選択とすることができる。
図11aは、単一共振器・帯域通過フィルタ130を示し、当該フィルタは、64(n=64)の基本ジグザグ共振器構造体24を有する共振器アレイ132を備え、それら基本共振器構造体24は、並列に結合された16列の共振器構造体24として配列され、各列が入力端子134と出力端子136との間に直列に結合された4の共振器構造体24を含んでいる。共振器アレイ132は、70.8mm×41.0mm(2.79インチ×1.61インチ)である。
見て分かるように、フィルタ130は、入力および出力端子134,136(この場合、それぞれが1,673オームの抵抗を有する)が共振器アレイ132の上端および下端に共振器構造体24の最内の列の間で結合されてフィルタ130に帯域通過特性を与えるという点において、図7aに示されたフィルタ50と類似している。しかしながら、フィルタ130は、共振器構造体24のより多くの列および行を含み、各行が、特に16の共振器構造体24を含むという点において、フィルタ50と相違する。フィルタ130は、単一基本共振器構造体を有するフィルタの64倍(18dB)のパワーハンドリングの増加をもたらすはずである。
フィルタ130の計算周波数応答が図11bに示されている。共振器アレイ132は、その下端および上端の中央で励起されて、それにより共振器アレイ132を並列に結合された半分に効率的に2分割し、その各々が並列な最大で8列のみを有することとなるため、ブロードストラクチャモードは、対象となる周波数範囲からうまく外れることとなる。図11bに示すように、ブロードストラクチャモードが存在しないのは、フィルタ130の周波数応答にはっきり表れていることに留意されたい。しかしながら、共振器アレイ132は、直列に結合された4つの共振器構造体24を有する列を含み、それは、図11bに示すように、周波数応答においてf0/4の倍数の共振をもたらすこととなる。同様に、基本共振周波数f0に近い共振が所与の用途で容認できる場合には、フィルタ130は容認できる選択とすることができる。ブロードストラクチャモードに5f0/4(図11bにおける周波数応答の右サイドの共振くらい)という低い周波数を持たせることなく、2列以上もの共振器構造体24を共振器アレイ132の各側部に加えることが可能である。この場合、フィルタ130のパワーハンドリングは、単一基本共振器構造体を有するフィルタの80倍(19dB)に高められることとなる。
帯域通過フィルタ130の電流密度パターンは、基本共振周波数f0で且つ1ボルトの駆動電圧および1000の外部Qにより計算された。図11aに示すように、強い電流密度の領域は、4つの中間暗灰色帯域140によって表される一方、低い電流密度の領域は、5つの黒色帯域142によって表されている。この場合、共振器アレイ92の上端および下端行において縦の中心線98と隣接する内側ジグザグ共振器構造体24における最大電流密度はどちらの行も31.0A/mであり、共振器アレイ92の外側の左端および右端のジグザグ共振器構造体24における最大電流密度がそれぞれ31.7A/mおよび31.9A/mであった。
先行する実施形態の幾つかにあるように、大きな共振器アレイを使用するマルチ共振器フィルタが別個の基板上に配置された共振器アレイを有する必要があるのは明らかである。本発明者等は、低周波数HTSフィルタについての同様のアプローチを実証しており、それは、文献「Mossman et al.“A narrow−band HTS bandpass filter at 18.5 MHz”,Proc.IEEE Microwave Theories and Techniques Symposium,653−656ページ,2000年」に記載されている。例えば、図12は、フィルタ150を示しており、当該フィルタは、支持材および放熱板として機能する上部および下部の相対的に厚い平行な金属プレート154,156のペアを有する従来のハウジング152と、スタック構造の4つの共振器158−164とを備え、共振器158,160が上部金属プレート154の上面および下面のそれぞれに配置されるとともに、共振器162,164が下部金属プレート156の上面および下面のそれぞれに配置されている。共振器158の各々は、上述した共振器の何れかと同じ形式を取るようにしてもよい。容量性カップリング(図示省略)は、基板上で実現されるか、チップキャパシタを使用して提供されるようにしてもよい。
フィルタ150は、さらに、2つの共振器158,160の間に結合された導電性カップリング166と、2つの共振器160,162の間に結合された導電性カップリング168と、2つの共振器162,164の間に結合された導電性カップリング170とを備え、その結果、共振器158−164のすべてが直列に接続されている。フィルタ150は、さらに、ハウジング152に取り付けられ、共振器158と接続された入力コネクタ172と、ハウジング152に取り付けられ、共振器164と接続された出力コネクタ174とを備える。
フィルタ150は、任意には、共振器158間の分離のために比較的薄いプレート(図示省略)を備えるようにしてもよく、しかしながら、これは、共振器158に使用される基本共振器構造体が、基板の比較的近傍に場を維持する傾向があるジグザグ構造である場合には必要ではないかもしれない。
興味深いことに、典型的な複数共振器・帯域通過フィルタ設計においては、最大の電圧および電流が内側の共振器で発生し、電流および電圧が外側の共振器で非常に小さくなる可能性がある。そのため、フィルタの端部で異なるスプリアス応答特性を有するより小さい共振器アレイを使用して、幾らかのスプリアス応答を抑制することが実行可能であると考えられる。これに関しては、外側の2つの共振器が同等のカップリングの不連続性として働くが、πまたはその倍数の伝送位相長さを持つ内側共振器における共振が存在する場合に、スプリアス帯域通過の可能性を回避するために、外側の共振器が異なる特性を備えるようにすることは、最適であると思われる。
幾つかの場合においては、パワーハンドリングにおける適度な増加のみが必要とされる可能性があり、そのため、共振器は非常に大きいものである必要はない。その結果、単一の基板上にフィルタ全体を載せることが実行可能であると考えられる。例えば、図13aは、フィルタ180を示しており、当該フィルタは、4つの共振器182−188を備え、その各々が2列に配列されて並列に結合された4つの基本ジグザグ共振器構造体24を備え、その各列が直列に連結された2つの共振器構造体24を備えている。これは、各共振器について、単一基本共振器構造体の4倍(6dB)のパワーハンドリングの増加をもたらすはずである。フィルタ180の全体寸法は、36.6mm×20.7mm(1.44インチ×0.81インチ)である。
フィルタ180は、1600オームの抵抗を有する終端を備える。フィルタ180は、第1共振器182の下端と第4共振器188の中央との間に連結された結合コンデンサC14を備える。第1および第4共振器182,188を適切な同調に至らせるためにフィルタ180は、第1共振器182の上端とグランドとの間に連結されたコンデンサC1と、第4共振器188の上端とグランドとの間に連結されたコンデンサC4とをさらに備える。結合コンデンサC14の各々は0.10pfの値を有し、コンデンサC1,C4の各々は、0.046の値(共振器を調整することにより実現される)を有する。興味深いことに、第1および第4共振器182,188の間の静電結合のサインを、単に、第4共振器188の中央の代わりにその下端に連結することによって、覆すことができる。分かるように、共振器182−188間の結合は、それらを互いに接近させるだけで実現される。フィルタ180の計算周波数応答が図13bに示されている。通過帯域の等リップル比帯域幅は、約0.81%である。
上記からも分かるように、より小さい伝送ライン共振器のアレイから伝送ライン共振器を作成することによって伝送ライン共振器のパワーハンドリングを増加させる原理は、調査され、計算および実験によって首尾良く確認された。その結果は、特に、非常に大きいアレイにおいて基本共振周波数で計算された電流密度が非常に均一で周期的のようであるという点において非常に心強いものである。パワーハンドリングに関する限りは、ある接続を他方の代わりに使用すること(すなわち、並列対直列)の特別な利点は無いことが分かった。使用される接続に関係なく、パワーハンドリングは、使用される基本共振器構造体の数量と等しい倍率で増加する。
通常は、望ましくないモードの影響を最小化するために両タイプの接続を使用することは有利であろう。望ましくないモードの基本ソースは、基本共振器構造体の高調波応答と、基本共振器構造体を直列に接続するときに生じる追加的な高調波応答と、相当の数の基本共振器構造体を並列に接続されるときに対象の周波数範囲内に降下する可能性があり、その結果、ブロードストラクチャ定常波がアレイの幅全体に亘って発生し得るブロードストラクチャモードとである。並列に接続された基本共振器構造体が多いほど、ブロードストラクチャモードの第1共振が低くなるであろう。
研究で使用されるジグザグ共振器構造体を用いるときに、スプリアスモード要件がそれ程厳しくない場合には、9(または、ことによると10)もの基本共振器構造体を並列に使用することが可能であると考えられる。しかしこれは、アレイの上端および下端の中央におけるタップにより並列に駆動される2組の9または10の基本共振器構造体を使用することによって、18または20倍に増加させることができる。所与のスプリアス応答要件に有用な最大のアレイが使用される場合、アレイの各列において直列に接続される基本共振器構造体の最大許容数量と、並列に接続される列の最大許容数量とを決定するために、高調波およびブロードストラクチャモードを分析すべきである。
基本共振周波数f0に調和的に関連する様々なモードに対する共振において、電圧変動は(図示のように)縦方向に周期的であり、それは、正および負の最大振幅を交互に生じ、その間はゼロ値であり、アレイの上端および下端で正または負の最大値をとることが容易に分かる。さらに、モードが順に増加するに連れて、それらの電圧パターンが奇偶対称性を交互に生じることが分かる。各列において直列に接続された4つの基本ジグザグ共振器構造体を有する図9aおよび9bのフィルタ90において、f0/2モードのゼロ電圧地点に位置するアレイの各側部のタップのペアを使用することにより、それら特性を活用することが可能であることが実証された。このモードは、ゼロ電圧地点で駆動されるために結合されず、また、f0/4および3f0/4モードは、必要なモード電圧が奇対称であるのに電圧励起が偶対称であるために、結合しない。その結果、3つの最下位の共振およびそれらの高調波を除去する一手段であることが分かる。残念なことに、高調波モードの数を低減するためのこの技術が使用される場合には、並列に接続された共振器アレイの左半分および右半分を駆動してブロードストラクチャモードの周波数を上昇させる技術が使用できない。これは、前者が共振器アレイをその側部で駆動することを必要とするのに対して、後者が構造体をその上端および下端で駆動することを必要とするからである。
基本共振器としてジグザグ構造体を使用することは、フィルタにおいて高い無負荷Qを確保するための重要な特徴であることが分かる。これは、全体構造体の程度が非常に大きくなった場合でも、ジグザグ共振器構造体がファイルを基板の比較的近くに閉じ込めるという事実によるものである。そのため、ある場合において共振器アレイが非常に大きかったとしても、ハウジングの寸法によって強く影響されるモードの励起の兆候はなかった。また、77°Kで操作したときに試験フィルタの測定無負荷Qが151,000の高さを有し、60°Kで操作したときに240,000の高さを有していたという事実は、場がハウジングの常伝導金属壁に大きな影響を与えず、それがさもなければ無負荷Qを劇的に減少させるということを示している。
当然のことながら、本明細書に記載した技術は、非常に大きなディスク状の共振器の使用に頼らされることなく、適度に増加したパワーハンドリングを有するコンパクトなフィルタを得るための手段も提供できるはずである。ジグザグ共振器構造体の非常に高いQと、スプリアス応答の適度に良い制御は、非常にシャープなカットオフを有する比較的高性能のフィルタをもたらすことができ、それは幾つかの非常に厳しい要件を満足することができる。
本発明の特定の実施形態を示し、述べてきたが、当然のことながら、上述した説明は本発明をそれら実施形態に限定することを意図したものではない。本発明の精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更および修正ができることは、当業者にとって明らかであろう。例えば、本発明は、単一入力および出力を有するフィルタよりもはるかに優れた応用を有し、特に本発明の特定の実施形態は、低損失選択回路が使用され得る、デュプレクサ、マルチプレクサ、チャネライザおよびリアクティブ回路などを形成するために使用することができる。すなわち、本発明は、特許請求の範囲によって規定されるように本発明の精神および範囲内に含まれる、代替物、変更物および均等物を保護することを意図している。
Claims (23)
- 狭帯域フィルタであって、
入力端子と、
出力端子と、
前記入力端子と前記出力端子との間に結合されて、共振周波数を有する単一の共振器を形成する基本共振器構造体のアレイとを備えることを特徴とするフィルタ。 - 請求項1に記載のフィルタにおいて、
前記基本共振器構造体が平面構造であることを特徴とするフィルタ。 - 請求項1に記載のフィルタにおいて、
前記基本共振器構造体がマイクロストリップ構造であることを特徴とするフィルタ。 - 請求項1に記載のフィルタにおいて、
前記基本共振器構造体が高温超伝導体(HTS)材料からなることを特徴とするフィルタ。 - 請求項1に記載のフィルタにおいて、
前記基本共振器構造体の各々が、前記共振周波数において、半波長の公称線形電気的長さ(nominal linear electrical length)を有することを特徴とするフィルタ。 - 請求項1に記載のフィルタにおいて、
前記共振周波数がマイクロ波の範囲内にあることを特徴とするフィルタ。 - 請求項6に記載のフィルタにおいて、
前記共振周波数が800乃至2,200MHzの範囲内にあることを特徴とするフィルタ。 - 請求項1に記載のフィルタにおいて、
前記単一の共振器が少なくとも100,000の無負荷Qを有することを特徴とするフィルタ。 - 請求項1に記載のフィルタにおいて、
前記基本共振器構造体の各々がジグザグ構造であることを特徴とするフィルタ。 - 請求項1に記載のフィルタにおいて、
少なくとも2の前記基本共振器構造体の間に結合された導電性要素をさらに備えることを特徴とするフィルタ。 - 請求項1に記載のフィルタにおいて、
当該フィルタを帯域除去フィルタとして特徴付けるように、複数の基本共振器構造体が前記入力端子と前記出力端子との間に結合されていることを特徴とするフィルタ。 - 請求項1に記載のフィルタにおいて、
当該フィルタを帯域通過フィルタとして特徴付けるように、複数の基本共振器構造体が前記入力端子と前記出力端子との間に結合されていることを特徴とするフィルタ。 - 請求項1に記載のフィルタにおいて、
複数の基本共振器構造体が前記入力端子と前記出力端子との間に並列に結合されていることを特徴とするフィルタ。 - 請求項13に記載のフィルタにおいて、
複数の基本共振器構造体が少なくとも3の基本共振器構造体を含むとともに、少なくとも2の基本共振器構造体が前記入力端子と前記出力端子との間に直列に結合されていることを特徴とするフィルタ。 - 請求項1に記載のフィルタにおいて、
複数の基本共振器構造体が基本共振器構造体の列を複数含み、基本共振器構造体の各列が少なくとも2の基本共振器構造体を含むことを特徴とするフィルタ。 - 請求項15に記載のフィルタにおいて、
基本共振器構造体の列が前記入力端子と前記出力端子との間に並列に結合されていることを特徴とするフィルタ。 - 請求項16に記載のフィルタにおいて、
基本共振器構造体の各列における少なくとも2の基本共振器構造体が前記入力端子と前記出力端子との間に並列に結合されていることを特徴とするフィルタ。 - 請求項16に記載のフィルタにおいて、
基本共振器構造体の各列における少なくとも2の基本共振器構造体が前記入力端子と前記出力端子との間に直列に結合されていることを特徴とするフィルタ。 - 請求項1に記載のフィルタにおいて、
前記基本共振器アレイが複数列および複数行に配列され、前記基本共振器構造体の各々が前記列に沿って向けられたエネルギ伝播の方向を有することを特徴とするフィルタ。 - 請求項19に記載のフィルタにおいて、
前記入力および出力端子が、直接隣接する行の第1ペア間の前記基本共振器アレイに結合されていることを特徴とするフィルタ。 - 請求項20に記載のフィルタにおいて、
前記入力および出力端子が、直接隣接する行の第2ペア間の前記基本共振器アレイに結合されていることを特徴とするフィルタ。 - 請求項19に記載のフィルタにおいて、
前記入力および出力端子が、直接隣接する列のペア間の前記基本共振器アレイに結合されていることを特徴とするフィルタ。 - 請求項1に記載のフィルタにおいて、
前記入力端子と前記出力端子との間に並列に結合されて、前記共振周波数を有する別の単一の共振器を形成する基本共振器構造体の別のアレイをさらに備えることを特徴とするフィルタ。
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