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JP2010516240A - ヒト細胞からの新規の炭水化物、ならびにその分析および修飾のための方法 - Google Patents

ヒト細胞からの新規の炭水化物、ならびにその分析および修飾のための方法 Download PDF

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JP2010516240A
JP2010516240A JP2009545966A JP2009545966A JP2010516240A JP 2010516240 A JP2010516240 A JP 2010516240A JP 2009545966 A JP2009545966 A JP 2009545966A JP 2009545966 A JP2009545966 A JP 2009545966A JP 2010516240 A JP2010516240 A JP 2010516240A
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Abstract

本発明は幹細胞のグリカン構造に対する特異的結合剤のための試薬および方法を記載するものである。さらに本発明は、幹細胞表面の特定のグリカンエピトープに対するさらなる結合試薬のスクリーニングに関する。グリカン構造の好ましい結合剤としては、酵素、レクチン、および抗体等のタンパク質が挙げられる。
【選択図】なし

Description

要約
本発明は、各種ヒト細胞集団の分析に有用である新規な特徴的グリカンを明らかにした。本発明は、この特徴的グリカンの存在に基づく細胞分析の種々の方法に関する。
発明の分野
本発明は幹細胞のグリカン構造に対する特異的結合剤のための試薬および方法を記載するものである。さらに本発明は、幹細胞表面の特定のグリカンエピトープに対するさらなる結合試薬のスクリーニングに関する。グリカン構造の好ましい結合剤としては、酵素、レクチン、および抗体等のタンパク質が挙げられる。
本発明は、血液中の幹細胞、特に臍帯血(CB)由来の幹細胞(最も好ましくは、CD133+細胞)からのグリカン、グライコームの新規組成、特には、特定の単糖組成およびグリカン構造を有するグライコームの新規サブ組成(subcompositions)を記載するものである。本発明は、さらに、グライコームを修飾する方法、ならびにグライコームおよび修飾されたグライコームを分析する方法に関する。さらに、本発明は、その表面に修飾されたグライコームを持つ幹細胞に関する。グライコームは、同時に数多くの別々のグリカンを、再現性良く、定量的に検出することが可能であるプロファイリング法で分析することが好ましい。最も好ましいプロファイルの種類は質量分析プロファイルである。本発明は、新規標的構造を具体的に明らかにしたものであり、特に、その構造を認識する試薬の開発に関する。
発明の背景
幹細胞
幹細胞は一連の成熟した機能細胞を生じうる未分化の細胞である。例えば、造血幹細胞は任意の各種の最終分化した血液細胞を生じうる。胚性幹(ES)細胞は胚に由来し、多能性であり、そのため任意の器官または組織に、または、少なくとも潜在的に、完全な胚へと発生する能力を有する。
幹細胞の存在を示す最初の証拠は、生殖細胞由来の腫瘍である奇形腫の未分化幹細胞、胚性癌腫(EC)細胞の研究によってもたらされた。これらの細胞は多能性であって不死化しているが、限定的な発生能しか有しておらず、異常な核型を示していることが明らかになった(Rossant and Papaioannou, Cell Differ 15,155‐161, 1984)。一方、ES細胞は奇形腫環境による選択圧を受けずに正常な胚細胞に由来したものであるため、より高い発生能を保持していると考えられる。
多能性胚幹細胞は従来、主に2種類の供給源より得られてきた。1つは着床前胚の内部細胞塊の細胞の培養で単離することができ、胚性幹(ES)細胞と呼ばれる(Evans and Kaufman, Nature 292,154‐156, 1981;米国特許第6,200,806号)。多能性幹細胞の第2の種類は、胚の腸間膜または生殖隆起中の始原生殖細胞(PGCS)から単離することができ、胚性生殖細胞(EG)と名付けられた(米国特許第5,453,357号、米国特許第6,245,566号)。ヒトESおよびEG細胞は多能性である。これはin vitroで細胞を分化させることにより、また免疫不全(SCUM)マウスにヒト細胞を注射し、それによって生じた奇形腫を分析することにより(米国特許第6,200,806号)、示された。本明細書で用いられる「幹細胞」という語は、胚幹細胞または胚性幹細胞、およびより組織特異的な幹細胞に分化したその幹細胞;間葉系幹細胞等の成体幹細胞;ならびに骨髄または臍帯血より得られる幹細胞等の血液幹細胞;等を含む幹細胞を意味する。
本発明は、特に胚性および成体幹細胞のためであって、これらの細胞が造血幹細胞ではない場合の、新規マーカーおよび標的構造、ならびにこれらに対する結合剤を提供する。造血CD34+細胞からは、NeuNAcα3Galβ4GlcNAc(Magnani J. US6362010)等の末端シアル化2型N‐アセチルラクトサミン等の特定の末端構造が提案されており、低発現Slex型構造NeuNAcα3Galβ4(Fucα3)GlcNAc(Xia L et al Blood (2004) 104 (10) 3091‐6)が示唆されている。本発明は、特定の特徴的なO‐グリカンおよびN‐グリカンとは別に、NeuNAcα3Galβ4GlcNAc非ポリラクトサミンバリアントにも関する。本発明は、さらに、本発明によるCD133+細胞に対する新規マーカーおよび新規造血幹細胞マーカーを、特にその構造がNeuNAcα3Galβ4(Fucα3)0‐1GlcNAcを含まない場合に、提供する。造血幹細胞構造は、本発明による非シアル化フコシル化構造Galβ1‐3‐構造であることが好ましく、さらにより好ましくは、1型N‐アセチルラクトサミン構造Galβ3GlcNAc、またはこれとは別に好ましいGalβ3GalNAcを主体とする構造である。
ヒトES、EGおよびEC細胞、ならびに霊長類ES細胞は、アルカリホスファターゼ、時期特異的胚抗原SSEA‐3およびSSEA‐4、ならびにTRA‐1‐60およびTRA‐1‐81抗体により認識される表面プロテオグリカンを発現する。典型的にはこれらのマーカーは全てこれらの細胞を染色するが、幹細胞に完全に特異的ではなく、そのため器官または末梢血から幹細胞を単離するのに用いることはできない。
SSEA‐3およびSSEA‐4構造はガラクトシルグロボシドおよびシアリルガラクトシルグロボシドとして知られており、胚幹細胞の数少ない示唆されている構造のうちの一部であるが、これらの構造の性質は不明確ではない。K21と呼ばれる抗体が胚性癌腫細胞上の硫酸化多糖を結合することが示唆された(Badcock G et alCancer Res (1999) 4715‐19)。グリコシル化の細胞型、種、組織および他の特性によると(Furukawa, K., and Kobata, A. (1992) Curr. Opin. Struct. Biol. 3, 554‐559, Gagneux, and Varki, A. (1999) Glycobiology 9, 747‐755;Gawlitzek, M. et al. (1995), J. Biotechnol. 42, 117‐131; Goelz, S., Kumar, R., Potvin, B., Sundaram, S., Brickelmaier, M., and Stanley, P. (1994) J. Biol. Chem. 269, 1033‐1040; Kobata, A (1992) Eur. J. Biochem. 209 (2) 483‐501)。この結果は天然の胚幹細胞上の構造の存在を示すものではない。本発明はヒト幹細胞を対象とする。
当業者は、Venable et alの結果を、抗SSEA‐4抗体にレクチンが結合することによる、非常に都合の良いSSEA‐4とレクチン結合との共存であると考えるであろうと思われる。結合がより稀であれば、それは抗体1分子あたりの末端エピトープのより低い割合に反映し、このことによって標識可能抗体の密度がより低くなると思われる。動物由来物質を用いた非制御(non‐controlled)細胞培養プロセスは、N‐グリコリル‐ノイラミン酸による細胞の汚染を引き起こし、これは、精製および純度分析に用いられる二次抗体として用いられる抗マウス抗体(抗マウスの種類は限定しない)によって識別することができ、これによって都合の良い高い細胞純度が得られるということも認識されている。
この研究は、SSEA‐4標識に関連する「多能性」胚幹細胞のみを対象としたものであり、本発明のようにその分化したバリアントを対象にしたものではない。この結果は、RCA(リシン、Galまたはラクトースによって阻害可能)に対してはGalおよびガラクトサミン、TL(トマトレクチン)に対してはGlcNAc、ConAに対してはManまたはGlc、SNAに対してはシアル酸/シアル酸α6GalNAc、HHLに対してはManα等の、特定の潜在的な単糖エピトープ(ページ6、表10、第2列)に対する結合(恐らくは抗体上)の可能性を示唆したものであり;SSEA‐4と相関しない部分的に結合したレクチン:GalNAc/GalNAcβ4Gal(本文中)WFA、PNAに対してはGal、およびSNAに対してはシアル酸/シアル酸α6GalNAc;ならびに、SSEA‐4細胞と部分的に関連するレクチンは、PHA‐LおよびPHA‐EによりGalと、VVAによってGalNAcと、UEAによってFucと、およびMAA(ラクトースによって阻害される)によってGalと結合することが示唆された。UEAの結合は、内皮細胞マーカーおよびタンパク質のSer(Thr)に直接結合するO‐結合フコースに関連して検討された。この背景は、内皮細胞UEA受容体に対するH2型特異性(H type 2 specificity)を示唆している。このレクチンの特異性は、比較的珍しいものであるが、このレクチンの産物コードまたはイソレクチンの数/名称は示されておらず(PHA‐EおよびPHA‐Lを除く)、植物が特異性を異にする数多くのイソレクチンを有することは知られている。
本発明は、質量分析プロファイリング、NMR分光法、およびグリカン修飾酵素等の結合試薬により特異的構造を明らかにした。レクチンは一般に低特異性の分子である。本発明は、これまでに記載された単糖エピトープよりも大きな結合エピトープを明らかにした。この大きなエピトープにより、少なくとも二糖類に対して典型的な結合特異性を有するより特異的な結合物質を設計することができた。本発明はまた、非制御マーカー(uncontrolled marker)に対する選択および/または異なる種からの1若しくは2種類の抗体によるコーティングを行うことなく天然胚幹細胞の分析を行うのに有用な特定の特異性を有するレクチン試薬も明らかにした。ほとんどの細胞がMAAと結合することは明らかであり、RCA、LTA、およびUEAは明らかにHESC細胞株と結合するが、別の細胞株とは結合しなかったように、細胞株間で違いが存在したため、明らかに、天然胚幹細胞への結合は異なっている。
幹細胞の分離および使用の方法は、当該分野で公知である。
造血幹細胞の分析および単離は、米国特許第5,061,620号に報告されている。造血CD34マーカーは、血液幹細胞を特異的に識別することで知られる最も一般的なマーカーであり、CD34抗体を用いて、移植の目的で、血液から幹細胞が単離される。米国特許第5,677,136号は、CD59幹細胞マーカーに対して特異的な抗体を用いて幹細胞を濃縮することによりヒト造血幹細胞を得る方法を開示している。CD59エピトープは、幹細胞上では非常に接触しやすいが、成熟細胞上では接触しやすさが劣るか、または存在しない。米国特許第6,127,135号は、幹細胞上で発現される独特の細胞マーカー(EM10)に特異的な抗体、および造血細胞サンプル中の造血幹細胞濃度を測定する方法を提供している。
造血幹細胞よりも初期の分化段階の多能性(pluripotent)または多分化能(multipotent)幹細胞を実質的に純粋なまたは純粋な形で診断、置換療法、および遺伝子治療の目的において単離するため、多くの試みが為されてきた。幹細胞は遺伝子治療の重要な標的であり、挿入遺伝子は幹細胞が移植された個体の健康を促進するように意図されている。さらに、幹細胞を単離できればそれがリンパ腫および白血病、ならびに他の癌疾患の治療に役立つ場合があり、この際、幹細胞は骨髄または末梢血中の腫瘍細胞から精製され、骨髄抑制化学療法または骨髄破壊的化学療法後の患者に再注入される。
胎児細胞を母体循環系から回収できる可能性は、胎児異常の診断における、胎児に対し非侵襲的で適切な手段としての興味をもたらした(Simpson and Elias, J. Am. Med. Assoc. 270, 2357−2361, 1993)。出生前診断は世界中の病院において広く行われている。ダウン症等の染色体異常、および嚢胞性線維症等の単一遺伝子欠陥の診断のための、胎児、肝臓または絨毛生検といった従来の方法は非常に侵襲的であり、胎児に対してかなりのリスクがある。例えば羊水穿刺は、子宮に針を挿入して胎児組織または羊水から細胞を回収することを伴う。ダウン症および他の染色体異常を検出し得るこの検査には、1%と見積もられる流産のリスクがある。胎児治療は極めて初期段階であり、広範な障害のための早期検査の可能性は、この領域における研究のペースを間違いなく大幅に速めることになるであろう。そのため、出生前診断の比較的非侵襲的な方法は、非常に侵襲的な従来の方法に対する魅力的な代替手段である。母体血液を基盤とした方法は、より早期かつより容易な診断を妊娠第1期(first trimester)においてより広く利用可能にし、親および産科医の選択肢を増やし、特定の胎児治療の結果的な進歩を可能にするであろう。
本発明は、診断、治療および組織工学のための、胚性幹(ES)細胞の特徴を有する幹細胞を、同定、分析および分離する方法を提供する。特に、本発明は、胚幹細胞または母体血由来の胎児細胞を同定、選択および分離する方法、ならびに出生前診断および組織工学に用いるための試薬を提供する。本発明は組織および器官からの貴重な幹細胞の同定、分離および分析のために用いられ得る特異的マーカー/結合剤(binder)/結合物質(binding agent)を初めて提供し、胚幹細胞を得るための現在利用可能な方法における倫理上およびロジスティック(logistical)な困難を克服する。
本発明は、分化した母体体細胞型(somatic maternal cell types)と反応しない非常に特異的な種類のマーカー/結合剤を開示することにより、胚幹細胞または胎児幹細胞の同定および分離のための公知の結合剤/マーカーの限界を克服する。本発明の他の局面においては、フィーダー細胞上では反応しない(すなわち発現しない)特異的な結合剤/マーカー/結合物質が提供され、それによりフィーダー細胞のポジティブセレクションおよび幹細胞のネガティブセレクションが可能となる。
以下、例示により、式(I)に対する結合剤が、各種細胞系統へと分化する能力を有する血液由来幹細胞を含む多能性造血幹細胞または多分化能造血幹細胞の同定、選択、および単離に対して有用なものとして開示される。
本発明の一局面により、末梢血および他の器官における多能性造血幹細胞または多分化能造血幹細胞を同定するための新規方法が開示される。この局面により、造血幹細胞結合剤/マーカーが、幹細胞におけるその選択的発現、ならびに分化した体細胞および/またはフィーダー/関連細胞におけるその非存在に基づいて選択される。従って、幹細胞に発現するグリカン構造は、本発明により、血液、組織および器官からの多能性または多分化能造血幹細胞の単離のための選択的結合剤/マーカーとして用いられる。好ましくは、前記血液細胞および組織試料は哺乳類起源、より好ましくはヒト起源のものである。
特定の一態様によると、本発明は:
i.幹細胞内/上で特異的発現を示し、フィーダー細胞内/上および/または分化した体細胞では発現を示さないグリカン構造を選択すること;
ii.幹細胞内/上の該グリカン構造に対する結合剤の結合を確認すること;
を含む、式(I)のグリカン構造に対する選択的幹細胞結合剤を同定するための方法:
の工程を含む、選択的造血幹細胞結合剤/マーカーを同定するための方法を提供する。
限定されない実施例により、前記結合剤を用いて選択された成体、間葉系、胚性、または造血幹細胞は、任意の種類の幹細胞が欠損した宿主の造血または他の組織系を再生するのに用いることができる。疾患を有する宿主は、幹細胞の再移植を行う前に、骨髄の除去、幹細胞の単離、および薬剤または放射線照射を用いた治療を行うことにより治療され得る。本発明の新規マーカーは各種幹細胞の同定および単離;幹細胞自己再生に関わる増殖因子の検出および評価;幹細胞系統の発生;および幹細胞の発生と関連した因子のアッセイ;に用いることができる。
プロトンNMR分光分析によって得られた、臍帯血由来白血球中の主要なN‐グリカン構造。A)中性N‐グリカン画分中において、高マンノース型N‐グリカンが最も多い構造であった。B)二分岐複合型N‐グリカンが、シアル化N‐グリカンの最も多い構造である。単糖の符号:N‐アセチルヘキソサミン(N):■、N‐アセチル‐D‐グルコサミン、GlcNAc;ヘキソース(H):○、D‐マンノース、Man;網掛け○印、D‐ガラクトース、Gal;●、D‐グルコース、Glc;およびデオキシヘキソース(F):△、L‐フコース、Fuc。シアル酸(S):◆、N‐アセチルノイラミン酸、Neu5Ac;ならびに硫酸エステルまたはリン酸エステル(P)。グリコシド結合は、単糖を繋ぐ線で示す。 中性N‐グリカンの質量分析プロファイリング分析。A)CD133+中性N‐グリカン画分の陽イオンMALDI‐TOF質量スペクトルであり、ここで、主要なグリカンシグナルは、[M+Na]のナトリウム付加イオンから生ずる。B)CD133+およびCD133−細胞の処理された中性N‐グリカンプロファイルの比較を示す図であり、ここで、各グリカンシグナルの相対的存在量は、総全プロファイルのパーセントとして表され、それにより、細胞型同士の直接比較が可能である。元の質量スペクトルに存在する既知の干渉シグナル、付加イオンシグナル、および同位体パターンのオーバーラップの影響は除去してある(材料および方法の項を参照)。各グリカンシグナルには、検出イオンのm/zに基づき、提案された単糖組成を割り当てた。C)図に示すように、提案された単糖組成中のHおよびN残基の量に対する生合成分類規則(biosynthetic classification rules)に基づいて、プロファイルデータを再構成して分析した図である。各々の提案された生合成分類内において、グリカンシグナルは、CD133+細胞での相対的存在量の順に整列されている。提案されたグリカン構造群の相対的存在量は、全プロファイルのパーセントとして表す。単糖の符号は図1と同様である。略語:F;フコース、H;ヘキソース、およびN;N‐アセチルヘキソアミン。 シアル化N‐グリカンの質量分析プロファイリング分析。A)CD133+酸性N‐グリカン画分の陰イオンMALDI‐TOF質量スペクトルであり、ここで、主要なグリカンシグナルは、[M−H]の脱プロトン化イオンから生ずる。星印は、BおよびCからは除去された既知の混入ポリヘキソース群を示す。B)CD133+およびCD133−細胞のシアル化N‐グリカンプロファイルの比較を示す図である。C)図2と同様に実施された、プロファイルデータを分析して再構成した図である。CD133+またはCD133−細胞のいずれかに関連するさらなる単糖組成の特徴(Hex5HexNAc3およびHex6HexNAc3)は、追加のグリカンシグナル構造群として扱い、その解釈を示す。単糖の符号は図1と同様である。略語:F;フコース、H;ヘキソース、N;N‐アセチルヘキソアミン、およびS;シアル酸。 シアル化CD133+およびCD133−細胞N‐グリカンにおける、α2,3シアリダーゼによるエキソグリコシダーゼ消化。シアル化N‐グリカン試料をα2,3シアリダーゼで処理し、質量スペクトルを処理の前(点線棒グラフ)および後(実線棒グラフ)に記録した。データは、図2および図3と同様に処理し、規準化したグリカンプロファイルとした。明確にするために、ここでは、H5N4コア組成を有する主要なシアル化N‐グリカンシグナルのみを示す。グリカンの相対的存在量の変化を矢印で示す。対応するジシアル化(S2)グリカン種に対するモノシアル化(S1)の合計は、CD133+細胞で増加し、一方、CD133−細胞では、同様のプロファイルの変化は見られなかった。略語:F;フコース、H;ヘキソース、N;N‐アセチルヘキソアミン、およびS;シアル酸。 その生合成要素によるN‐結合グリカン構造の模式図。N‐結合グリカンは、異なる糖転移酵素およびグリコシダーゼファミリーによって合成されるN‐グリカンコア、主鎖、および末端エピトープという別々の領域から成る。本研究で分析されたこれらの酵素をコードする遺伝子ファミリーを括弧内に示す。単糖符号および模式的なN‐グリカン構造は、図1の凡例で表したものと同様である。 CD133+細胞の有利であるN‐グリカン構造の模式図。CD133+細胞の有利であるN‐グリカン構造を暗色地に示す。過剰発現、および過小発現した遺伝子は、上向きおよび下向きの黒色矢印で表示し、CD133−細胞と比較した遺伝子発現の違いを示す。A.CD133+細胞のN‐グリカンコア構造は高マンノース型N‐グリカンおよび二分岐N‐グリカン構造の両方に偏っており、N‐グリカンプロセシング酵素の発現の違いと相関している。B.α2,3‐およびα2,6‐シアル酸転移酵素が同一のN‐グリカン基質に対して競合する。ST3GAL6の過剰発現には、CD133+細胞でのα2,3‐シアル化の上昇が付随する。単糖符号および模式的なN‐グリカン構造は、図1の凡例で表したものと同様である。 連続する広範なシアリダーゼ反応およびα2,3‐シアル酸転移酵素反応の前(淡青色柱(column))および後(暗赤色柱)における、臍帯血単核球シアル化N‐グリカンのプロファイル。m/z値は表7を参照のこと。 連続するα2,3‐シアル酸転移酵素反応およびα1,3‐フコシルトランスフェラーゼ反応の前(淡青色柱)および後(暗赤色柱)における、臍帯血単核球シアル化N‐グリカンのプロファイル。m/z値は表7を参照のこと。 A.臍帯血CD133細胞から、およびB.CD133細胞から単離されたシアル化N‐グリカンのα2,3‐シアリダーゼ分析。柱は、本文中に記載のように、m/z2076におけるモノシアル化グリカンシグナル(SA)および対応するm/z2367におけるジシアル化グリカンシグナル(SA)の相対比率を表す。臍帯血CD133細胞では、SAおよびSAグリカンの相対比率は、α2,3‐シアリダーゼ処理による大きな変化はないが(B)、一方、CD133細胞では、α2,3‐シアリダーゼ耐性SAグリカンの比率が、α2,3‐シアリダーゼ耐性SAグリカンよりも著しく小さい(A)。 骨髄および血液中の好ましい成体幹細胞、およびそれらから誘導することができる細胞の模式図であり、これらは、本明細書において、血液由来幹細胞とも称される。 FITC標識レクチンによる、7種類の臍帯血単核球試料(並列された柱)のFACS分析。パーセントは、レクチンと結合した細胞の割合を示す。FITC標識レクチンの略号については、本文を参照されたい。 単離されたヒト幹細胞中性スフィンゴ糖脂質グリカンのMALDI‐TOF質量分析プロファイル。x軸:表中に記載された[M+Na]イオンのm/z概算値。y軸:プロファイル中の各グリカン成分の相対的モル存在量。hESC、BM MSC、CB MSC、CB MNC:本文中に記載された幹細胞試料。 単離されたヒト幹細胞酸性スフィンゴ糖脂質グリカンのMALDI‐TOF質量分析プロファイル。x軸:表中に記載された[M−H]イオンのm/z概算値。y軸:プロファイル中の各グリカン成分の相対的モル存在量。hESC、BM MSC、CB MSC、CB MNC:本文中に記載された幹細胞試料。 CB‐MNC細胞のレクチン標識。 特異的結合剤によるCB‐MNC細胞FACS分析。 選択され、A)PNAレクチンGF707により、およびB)LTAレクチンGF709によりコーティングされたビーズを用いて増殖させた臍帯血単核球(CB MNC)。 A)臍帯血単核球および磁性ビーズ上の結合剤NPA GF711。B)選択された系統陰性(lineage negative)細胞およびGF710によりコーティングされた磁性ビーズ。
本発明は、特異的結合剤(結合)分子による、幹細胞試料からの広範なグリカン混合物の分析に関する。
本発明は特に、式I:
Hexβz{Rn1HexNAcXyR (I)
[式中、Xは無であるかグリコシド結合した二糖エピトープβ4(Fucα6)GNであり、ここでnは0または1であり;
HexはGalまたはManまたはGlcAであり;
HexNAcはGlcNAcまたはGalNAcであり;
yはアノマー結合構造αおよび/もしくはβ、または誘導体化アノマー炭素からの結合であり、
zは結合位置3または4であり、ただしzが4である場合にはHexNAcはGlcNAcであり、HexはManであるか、またはHexはGalであるか、またはHexはGlcAであり、zが3である場合には、HexはGlcAまたはGalであり、HexNAcはGlcNAcまたはGalNAcであり;
はコア構造に結合した1〜4個の天然型炭化水素置換基を表し;
は還元末端水酸基、化学的還元末端誘導体、あるいは、タンパク質由来のアスパラギン、N‐グリコシドアミノ酸および/もしくはペプチドを含む天然アスパラギン結合N‐グリコシド誘導体、または、タンパク質由来のアスパラギン、N‐グリコシドアミノ酸および/またはペプチドを含む天然セリンまたはスレオニン結合O‐グリコシド誘導体であり;
HexNAcがGalNAcである場合、R3は無であるか、もしくはGlcNAcβ6を示す分岐構造であるか、もしくはそのGalNAcに結合する還元末端にGlcNAcβ6を有するオリゴ糖であり、または、HexがGal、HexNAcがGlcNAc、およびzが3である場合、R3は無もしくはFucα4であり、または、zが4である場合、R3は無もしくはFucα3である]
のグリカンマス成分(glycan mass components)のそれぞれに対する単糖組成を有するグリカン材料を含む、本発明の幹細胞のグライコームに関する。
典型的なグライコームはN‐グリカン、O‐グリカン、糖脂質グリカン、ならびに中性および酸性サブグライコーム(subglycome)等のグリカンの亜群を含む。
本発明は試料中に存在するグリカンの分析に基づく幹細胞試料の臨床状態の診断に関する。本発明は特に、癌および癌の臨床状態の診断、優先的には幹細胞と癌性細胞との区別、ならびに幹細胞株および標本における癌化の検出に関する。
本発明はさらに幹細胞試料中に存在するグリカン混合物の構造的分析にも関する。
発明の説明
関連するデータおよび明細はPCT FI 2006/050336に示された。
本発明は固有の単糖組成を有する新規の幹細胞特異的グリカンを明らかにしたものであり、該間葉系幹細胞特異的グリカンは、幹細胞の分化状態、および/またはいくつかの種類の幹細胞、および/または一種類の幹細胞の分化レベル、および/または幹細胞株間の系統特異的相違と関連している。
幹細胞の分化と関連するN‐グリカン構造および組成
本発明は、
i)血液由来幹細胞、特には臍帯血由来幹細胞、
ii)分化した単核血液細胞、
と関連した特異的グリカン単糖組成および対応する構造を明らかにした。
好ましい血液幹細胞は、造血幹細胞であり、より好ましくは、CD133またはCD34陽性幹細胞であり、最も好ましくは、臍帯血由来CD133またはCD34陽性幹細胞である。分化した単核血液細胞は、好ましくは、CD133またはCD34陰性幹細胞であり、最も好ましくは、臍帯血由来CD133またはCD34陰性幹細胞である。CD34+細胞は、CD133+細胞と類似していると考えられ、本発明は、CD34+細胞のトランスフェラーゼ発現が、CD133+細胞のトランスフェラーゼ発現と類似していることも明らかにした。好ましい一態様において、本発明は、本発明による好ましいmRNAマーカーを、CD34+細胞の分析のために用いることに関する。
明らかになった構造は発生の各種段階にある細胞の分析に有用であると考えられる。本発明は該構造を血液由来幹細胞の分化のマーカーとして用いることに関する。本発明はさらに特異的グリカンを、分化の特定の段階で豊富になる、または増加するマーカーとして、特定の分化段階の細胞の分析に用いることに関する。
N‐グリカン構造および組成は幹細胞株またはバッチ間の個々の特異的相違と関連している
本発明はさらに、固有の種類のグリカン型が特定の分化段階の血液由来幹細胞試料中に各種様式で提示されていることを明らかにした。このような個々に変化するグリカンは個々の幹細胞株/試料およびバッチの分析に有用であると認められる。個々の細胞試料の特異的構造は幹細胞株およびその調製された細胞の比較および標準化に対して有用である。個々の細胞調製物の特異的構造は、個々に異なるグリカンを認識する抗体または細胞性免疫防御を有する場合のある患者における、幹細胞治療のための特定の幹細胞株またはバッチまたは調製物の有用性を分析するために用いられる。
本発明は、特に、実施例3で述べるように、高度および中程度の変化を示すグリカンの分析に関する。本発明は、特に、フコシル化および/もしくはシアル化のレベル、またはマンノシル化のレベルが異なる場合における、個々の特定の違いの分析に関する。
質量分析または特異的結合試薬による分析法
本発明は特に、グリカン構造の特異的結合試薬および/または質量分析プロファイリングによる末端構造の識別に関する。
本発明の好ましい一態様は、前記構造に対応する質量分析シグナルに基づいて構造および/または組成を識別することに関する。
好ましい結合試薬は、Manα分岐を含むまたはManα分岐を含まない単分岐構造等、末端エピトープおよび/または特徴的分岐エピトープ等の前記構造の特徴的エピトープに対するものである。好ましい結合剤は、抗体であり、より好ましくはモノクローナル抗体である。
本発明の好ましい一態様は、本発明の末端エピトープ構造のうち少なくとも1種を特異的に認識するモノクローナル抗体に関する。
N‐グリカン発現に関連するmRNA発現によるグリコシル化の分析
本発明は、特定の糖転移酵素mRNAの発現が、発現されたグリカン構造と関連する、または相関することを明らかにした。本発明は、実施例1に示すように、発現mRNAを、グリコシル化状態の造血幹細胞のmRNAレベルでの分析に用いることに関する。
mRNA分析のための好ましい糖転移酵素
mRNA分析のための好ましい酵素は、本発明による好ましい複合型N‐グリカンの合成に関与する、シアル酸転移酵素、フコシルトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、N‐アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、およびマンノシダーゼが挙げられる。
N‐アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ
mRNAレベルのグリコシル化分析という分析に関連して、分析されるべき好ましいN‐アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼを表1に示す。mRNA分析のための好ましいN‐アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼとしては、MGAT2およびMGAT4が挙げられる。実施例1に示すように、二分岐型構造がCD133+細胞上で増加しており、MGAT2およびMGAT4等の酵素のmRNA発現がこのことと関連していた。
マンノシダーゼ
mRNAレベルのグリコシル化分析という分析に関連して、分析されるべき好ましいマンノシダーゼを表1に示す。ヒト血液由来幹細胞、特に臍帯血細胞の分析のための最も好ましい変化するマンノシダーゼは、Man1C1である。α2‐マンノシダーゼ(I型マンノシダーゼ)のmRNAは、CD133+細胞には存在しなかったが、分化した細胞には存在した。マンノシダーゼの発現は、血液幹細胞中の大型高マンノースN‐グリカンおよび分化した細胞中のよりサイズの小さいグリカンの発現に反映している。
ガラクトシルトランスフェラーゼ
mRNAレベルのグリコシル化分析という分析に関連して、分析されるべき好ましいガラクトシルトランスフェラーゼ、特にβ4‐ガラクトシルトランスフェラーゼ、β4GALT2およびβ4GALT3、を表1に示す。実施例1に示すように、末端Galβ4GlcNAc構造は、CD133+細胞上で突出しており、この酵素のmRNA発現がこれと関連していた。
シアル酸転移酵素
mRNAレベルのグリコシル化分析という分析に関連して、分析されるべき好ましいシアル酸転移酵素、特にα3‐およびα6‐シアル酸転移酵素、ST3GAL5およびST6GAL1、を表1に示す。さらに、本発明は、特に、ST3GAL6の発現の増加の分析に関し、これは、血液幹細胞と関連することが観察された。
フコシルトランスフェラーゼ
mRNAレベルのグリコシル化分析という分析に関連して、分析されるべき好ましいフコシルトランスフェラーゼ、特にα8‐フコシルトランスフェラーゼ、FUT8、を表1に示す。FUT8の存在は、血液由来幹細胞において特に特徴的であった。FUT4の存在およびFUT7の非存在(低発現)は、CD133+およびCD133−細胞の両方に対して特徴的であると考えられた。
本発明は、本発明による、血液幹細胞での分化に関連するグリカン発現を分析する方法に関し、ここで、mRNA発現、またはグリカンの生合成に関連することが示された糖転移酵素もしくはグリコシダーゼであるグリコシル化酵素が測定され、任意に、この分析は、グリカン構造の分析と合わせて実施される。
本発明は、mRNAを分析する方法に関し、ここで、N‐グリカンコアを合成するグリコシル化酵素の発現が測定され、好ましくは、MGATファミリーのマンノシダーゼおよび/またはN‐アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼである。好ましくは、MGAT2、MGAT4、およびMAN1C1の群より選択される少なくとも1種類の酵素の発現が測定される。
本発明は、さらに、mRNAを分析する方法に関し、ここで、N‐グリカンの修飾の合成を行う酵素の発現が用いられ、酵素は、シアル酸転移酵素、好ましくはα3‐および/またはα6‐シアル酸転移酵素;フコシルトランスフェラーゼ、好ましくはα3/4‐および/またはα8‐フコシルトランスフェラーゼ;ならびにガラクトシルトランスフェラーゼ、好ましくはβ4‐ガラクトシルトランスフェラーゼの群より選択される。好ましくは、この方法は、FUT8、FUT4、もしくはFUT7;またはST6GAL1、ST3GAL6、もしくはST3GAL5;またはB4GALT1、B4GALT2、もしくはB4GALT3、より好ましくは、B4GALT2もしくはB4GALT3の群より選択される少なくとも1種類の酵素遺伝子の発現を対象とする。より好ましくは、異なる単糖残基を転移する少なくとも2種類の酵素が測定され、最も好ましくは、シアル酸転移酵素、フコシルトランスフェラーゼ、およびガラクトシルトランスフェラーゼの群から少なくとも2種類の酵素が、最も好ましくは、これらの群すべてから少なくとも1種類の酵素が、さらにより好ましくは、各群から2種類の酵素が分析される。
幹細胞のグリコシル化の調節
本発明は、さらに、幹細胞と分化した細胞とを比較して変化しているグリコシル化の変化により、幹細胞の分化状態またはプロセスを調節することが可能であることを明らかにした。
本発明は、特に、細胞のα3‐および/またはα6‐シアル化の変化に関し、これは、幹細胞に大きな影響を与えることが示された。本発明は、さらに、図9に示すように、α3‐およびα6‐シアル化レベルおよび対応するシアル酸転移酵素のmRNA発現において、分化に関連する変化が存在することを明らかにした。
酵素によるグリコシル化の変化
本願発明者らは、細胞表面上でのグリコシル化を酵素によって変化させることにより、幹細胞の分化に影響を与えることが可能であることを明らかにした。好ましい一態様では、本発明は、好ましくはシアリダーゼまたはシアル酸転移酵素処理による、より好ましくはシアリダーゼによる血液幹細胞のシアル化レベルの変化、およびそれによる細胞の修飾に関する。本発明は、実施例4および5で述べるように、シアル化の変化が、血液幹細胞の分化に対して大きな影響を与えることを明らかにした。本発明は、α3特異的シアリダーゼおよび/またはα6特異的シアリダーゼによるシアル化の変化に関する。
グリコシル化を変化させるその他の方法
mRNAレベルでのグリコシル化の変化による幹細胞の調節
本発明は、さらに、mRNAレベルでのグリコシル化の変化による、好ましくはRNAi法による、幹細胞の調節に関する。mRNA発現を修飾する方法は、幹細胞に関してZheng GD et al (Stem Cells (2005) 23 (8) 1028‐34)に、および例えば、Bjorklund M et al (Nature (2006) 439 (7079) 1009‐13)に記載のように、当該分野で公知である。ヒトトランスフェラーゼおよびマンノシダーゼに対するRNAi試薬は、例えば、InvitrogenのiGeneサービス(www.igene.invitrogen.com/igene)またはOrigene(shRNA,www.origene.com)より、通常のヌクレオチド合成サービスによって入手可能である。
本発明は、さらに、その他のレベルでグリカンの生合成に影響を与える等、グリコシル化を変化させるその他の方法に関する。
本発明は、本発明で述べるように血液幹細胞中での分化に関連するグリカン発現の変化または調節により、幹細胞、好ましくは血液幹細胞の分化状態に対して影響を与える方法に関する。
本発明は、特に、分化に関連するグリカン構造の量が減少または増加する前記の方法に関する。好ましい方法では、グリカンの量は、グリコシル化を変化させることが可能である糖転移酵素またはグリコシダーゼによって変化する。好ましい一態様では、グリカンの量は、グリコシル化を変化させることが可能である糖転移酵素またはグリコシダーゼによって、in vitroにて変化する。より好ましくは、シアル化グリカンの量が変化し、好ましくは、α3‐および またはα6‐シアル化グリカンの量が、細胞表面上の末端Galβ‐エピトープと比較して、より好ましくは、細胞表面上のGalβ4GlcNAcと比較して変化する。さらにより好ましくは、in vitroにて、細胞表面上のシアル化を変化させることが可能であるシアル酸転移酵素またはシアリダーゼによる。
本発明は、さらに、in vivoでの方法に関し、ここで、グリコシル化を変化させることが可能である糖転移酵素またはグリコシダーゼであるグリコシル化酵素の活性をin vivoで変化させることによってグリカンの量が変化する。好ましくは、グリコシル化酵素は、N‐アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ、マンノシダーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ、フコシルトランスフェラーゼ、またはシアル酸転移酵素遺伝子に対応し、好ましくは、FUT8、FUT4、もしくはFUT7;またはST6GAL1、ST3GAL6、もしくはST3GAL5;またはB4GALT1、B4GALT2、もしくはB4GALT3、より好ましくは、B4GALT2もしくはB4GALT3、またはMGAT2、MGAT4、およびMAN1C1である。好ましい一態様では、シアル化を変化させることが可能であるシアル酸転移酵素またはシアリダーゼのin vivoでの活性を変化させることによって、グリカンの量が変化する。好ましくは、この変化は、RNAi法により、細胞への酵素のトランスフェクションにより、および/または酵素の阻害剤による代謝阻害により実施される。
本発明は、特に、実施例4および5に示すように、シアル酸転移酵素またはシアリダーゼにより血液幹細胞の分化に影響を与えることに関する。
好ましいN‐グリカン構造型
本発明は、分化により、および/または個々の特定の相違により変化する、N‐グリカンの共通のコア構造を有するN‐グリカンを明らかにした。
幹細胞のN‐グリカンは、式CGN:
[Manα3]n1(Manα6)n2Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)n3GlcNAcxR
[式中、n1、n2およびn3は0または1の整数であり、独立に残基の存在または非存在を示し;
式中、非還元末端の末端Manα3/Manα6残基は、複合型、特に二分岐構造に、またはマンノース型(高Manおよび/または低Man)に、またはハイブリッド型構造(幹細胞の状態の分析および/または幹細胞の操作のためのもの)に、伸長してよく、式中、xRはタンパク質もしくはペプチドに結合したN‐グリカンの還元末端構造、例えばβAsnもしくはβAsn‐ペプチドもしくはβAsn‐タンパク質、またはN‐グリカンの遊離還元末端もしくは分析のために産生された還元末端の化学的誘導体を示す]
のN‐結合グリカンのコア構造内にManβ4GlcNAc構造を有するコア構造を有する。
マンノース型グリカン
好ましいマンノース型グリカンは式:
式M2:
[Mα2]n1[Mα3]n2{[Mα2]n3[Mα6)]n4}[Mα6]n5{[Mα2]n6[Mα2]n7[Mα3]n8}Mβ4GNβ4[{Fucα6}]GNyR
[式中、n1、n2、n3、n4、n5、n6、n7、n8、およびmは独立に0または1のいずれかであり;ただしn2が0である場合、n1も0であり;n4が0である場合、n3も0であり;n5が0である場合、n1、n2、n3およびn4も0であり;n7が0である場合、n6も0であり;n8が0である場合、n6およびn7も0であり;yはアノマー結合構造αおよび/もしくはβまたは誘導体化アノマー炭素からの結合であり、そして
は還元末端水酸基、化学的還元末端誘導体、または、タンパク質由来のアスパラギンN‐グリコシドアミノ酸および/もしくはペプチドを含むアスパラギンN‐グリコシド等の天然アスパラギンN‐グリコシド誘導体であり;
[]はn1、n2、n3、n4、n5、n6、n7、n8、およびmの値によって存在するかまたは存在しないかのいずれかである決定基を表し;そして
{}は前記構造中の分岐を表し;
MはD‐Manであり、GNはN‐アセチル‐D‐グルコサミンであり、FucはL‐フコースであり、そして前記構造は任意に高マンノース構造であり、これはさらにグルコース残基またはn6で表されるマンノース残基に結合する残基で置換される]
のものである。
低Manグリカン
上記のいくつかの好ましい低マンノース、低Man、グリカンは単一の式:
[Mα3]n2{[Mα6)]n4}[Mα6]n5{[Mα3]n8}Mβ4GNβ4[{Fucα6}]GNyR
[式中、n2、n4、n5、n8、およびmは独立に0または1のいずれかであり;ただしn5が0である場合、n2およびn4も0であり;n2、n4、n5、およびn8の合計は(m+3)以下であり;[]はn2、n4、n5、n8、およびmの値によって存在するかまたは存在しないかのいずれかである決定基を表し;そして
{}は前記構造中の分岐を表し;
yおよびR2は上記に示したとおりである]
で表すことができる。
好ましい非フコシル化低マンノースグリカンは式:
[Mα3]n2([Mα6)]n4)[Mα6]n5{[Mα3]n8}Mβ4GNβ4GNyR
[式中、n2、n4、n5、n8、およびmは独立に0または1のいずれかであり、ただしn5が0である場合、n2およびn4も0であり、好ましくはn2またはn4のいずれかは0であり;
[]はn2、n4、n5、n8の値によって存在するかまたは存在しないかのいずれかである決定基を表し、
{}および()は前記構造中の分岐を表し、
yおよびR2は上記に示したとおりである]
のものである。
非フコシル化低マンノースグリカンの好ましい個々の構造
特別な小型構造
小型非フコシル化低マンノース構造は公知のN‐結合グリカンの中で特に通常と異なるものであり、本発明の細胞の分離にとって有用な特徴的グリカン群である。これらとしては:Mβ4GNβ4GNyR、Mα6Mβ4GNβ4GNyR、Mα3Mβ4GNβ4GNyR、 およびMα6{Mα3}Mβ4GNβ4GNyR等が挙げられる。Mβ4GNβ4GNyR三糖エピトープは、その単マンノース誘導体Mα6Mβ4GNβ4GNyRおよび/またはMα3Mβ4GNβ4GNyRとともに、単独で好ましい共通構造であり、これは、これらが本発明のグライコーム中に共通に存在する特徴的な構造であるためである。本発明は特に1または複数種の小型非フコシル化低マンノース構造を有するグライコームに関する。四糖は、特定の態様において、好ましい末端認識エレメントとして、α結合の、好ましくはα3/6結合の、マンノースに対する特異的認識のために好ましい。
特別な大型構造
本発明はさらに、公知のN‐結合グリカンの中でも通常と異なっており、本発明の好ましい細胞の間で特別で特徴的な発現特性を有する、大型非フコシル化低マンノース構造を明らかにした。好ましい大型構造としては、[Mα3]n2([Mα6]n4)Mα6{Mα3}Mβ4GNβ4GNyR、より好ましくは、Mα6Mα6{Mα3}Mβ4GNβ4GNyR、Mα3Mα6{Mα3}Mβ4GNβ4GNyR、およびMα3(Mα6)Mα6{Mα3}Mβ4GNβ4GNyR等が挙げられる。六糖エピトープは、好ましい細胞型における希で特徴的な構造として、また好ましい末端エピトープを有する構造として、特定の態様において好ましい。七糖も、本発明の細胞の分析にとって有用な、好ましく通常とは異なる末端エピトープMα3(Mα6)Mαを有する構造として好ましい。
好ましいフコシル化低マンノースグリカンは式:
[Mα3]n2{[Mα6]n4}[Mα6]n5{[Mα3]n8}Mβ4GNβ4(Fucα6)GNyR
[式中、n2、n4、n5、n8、およびmは独立に0または1のいずれかであり、n5が0である場合、n2およびn4も0であり、および、好ましくは、n2、n4、またはn8の少なくとも1つが0であり、より好ましくは、n2またはn4であり、
[]はn2、n4、n5、n8、およびmの値によって存在するかまたは存在しないかのいずれかである決定基を表し;
{}および()は前記構造中の分岐を表す]
に由来する。
フコシル化低マンノースグリカンの好ましい個々の構造
小型フコシル化低マンノース構造は公知のN‐結合グリカンの中で特に通常と異なるものであり、本発明の細胞の分離にとって有用な特徴的グリカン群を形成する。これらとしては:Mβ4GNβ4(Fucα6)GNyR、Mα6Mβ4GNβ4(Fucα6)GNyR、Mα3Mβ4GNβ4(Fucα6)GNyR、およびMα6{Mα3}Mβ4GNβ4(Fucα6)GNyR等が挙げられ、ならびにMβ4GNβ4(Fucα6)GNyR四糖エピトープは、その単マンノース誘導体Mα6Mβ4GNβ4(Fucα6)GNyRおよび/またはMα3Mβ4GNβ4(Fucα6)GNyRとともに、単独で好ましい共通構造であり、これは、これらが本発明のグライコーム中に共通に存在する特徴的な構造であるためである。本発明は特に1または複数種の小型フコシル化低マンノース構造を有するグライコームに関する。四糖は、特定の態様において、好ましい末端識別エレメントとして、α‐結合の、好ましくはα3/6‐結合の、マンノースに対する特異的認識のために好ましい。
特別な大型構造
本発明はさらに、公知のN‐結合グリカンの中でも通常と異なっており、本発明の好ましい細胞の間で特別で特徴的な発現特性を有する、大型フコシル化低マンノース構造を明らかにした。好ましい大型構造としては、[Mα3]n2([Mα6]n4)Mα6{Mα3}Mβ4GNβ4(Fucα6)GNyR、より具体的には、Mα6Mα6{Mα3}Mβ4GNβ4(Fucα6)GNyR、Mα3Mα6{Mα3}Mβ4GNβ4(Fucα6)GNyR、およびMα3(Mα6)Mα6{Mα3}Mβ4GNβ4(Fucα6)GNyR
等が挙げられる。七糖エピトープは、好ましい細胞型における希で特徴的な構造として、また好ましい末端エピトープを有する構造として、特定の態様において好ましい。八糖も、本発明の細胞の分析にとって有用な、好ましく通常とは異なる末端エピトープMα3(Mα6)Mαを有する構造として好ましい。
好ましい非還元末端の末端マンノースエピトープ
本願発明者らは、特定の細胞型の細胞表面もしくは細胞由来画分/材料上でマンノース構造を標識することが、および/または、そうでなければ特異的に識別することが、できることを明らかにした。本発明は、細胞表面上の特定のマンノース構造に結合する試薬による、細胞表面上の特定のマンノースエピトープの識別に関する。
本発明の任意の構造の識別のための好ましい試薬としては、特異的抗体および他の炭水化物認識結合分子等が挙げられる。抗体は、各種免疫化および/または抗体の可変領域を提示するファージディスプレイ法等のライブラリー手法によって特異的構造のために産生できることが知られている。抗体ライブラリー手法と同様、アプタマー手法などや、ペプチドに対するファージディスプレイなどが、ペプチド、特に環状ペプチド等のポリアミド分子、またはアプタマー分子等のヌクレオチド型分子などのライブラリー分子の合成のために存在する。
本発明は特に本発明の高マンノースおよび低マンノース構造の特異的認識に関する。本発明は特に、式:
[Mα2]m1[Mαx]m2[Mα6]m3{{[Mα2]m9[Mα2]m8[Mα3]m7m10(Mβ4[GN]m4m5m6yR
[式中、m1、m2、m3、m4、m5、m6、m7、m8、m9およびm10は独立に0または1のいずれかであり;ただしm3が0である場合、m1は0であり;m7が0である場合、m1〜5は0、m8およびm9は1であってMα2Mα2二糖を形成するか、または、m8およびm9は0であるか、のいずれかであり;
yはアノマー結合構造αおよび/もしくはβ、または誘導体化アノマー炭素からの結合であり;そして
は還元末端水酸基または化学的還元末端誘導体であり
xは結合位置3もしくは6であり、または3および6の両者が分岐構造を形成しており、
{}は構造中の分岐を表す]
の非還元末端の末端Manα‐エピトープ、好ましくは少なくとも二糖エピトープ、の識別に関する。
本発明はさらに、少なくとも1個のMα2基、好ましくは、m1と、m8またはm9の少なくとも1つとが1になるような各分岐上のMα2基、を有する末端Mα2含有グリカンに関する。本発明はさらに、m1、m8およびm9が全て1である場合の、末端Mα2基を有しない、末端Mα3および/またはMα6エピトープに関する。
本発明はさらに、好ましい一態様において、Mβ残基に結合する末端エピトープに関するものであり、また、より大きなエピトープを対象とした用途のためのものである。本発明は特にMβ4GN含有還元末端の末端エピトープに関する。
好ましい末端エピトープは典型的には2〜5個の単糖残基を直鎖内に有する。本発明によると、少なくとも2個の単糖残基を有する短いエピトープを適した背景条件の下で認識することができ、本発明は特に2〜4個の単糖ユニット、より好ましくは2〜3個の単糖ユニットを有するエピトープに関するものであり、さらに好ましいエピトープは直鎖二糖ユニットおよび/または分岐鎖三糖非還元残基を、還元末端の天然アノマー結合構造とともに有する。より短いエピトープは、構造の識別を目的とした潜在的結合試薬のためのコントロール分子の効果的な産生などの実用上の理由により、特定の用途において好ましい場合がある。
Mα2M等のより短いエピトープは、本発明のいくつかの共通構造の複数の腕上に存在するため、標的細胞表面上により豊富であることが多い。
好ましい二糖エピトープとしては、
Manα2Man、Manα3Man、Manα6Man、ならびにより好ましいアノマー型 Manα2Manα、Manα3Manβ、Manα6Manβ、Manα3Manα、およびManα6Manα
等が挙げられる。好ましい分岐鎖三糖としては、Manα3(Manα6)Man、Manα3(Manα6)Manβ、およびManα3(Manα6)Manα等が挙げられる。
本発明は特に、特に高マンノース構造との関連において、非還元末端Manα2構造の特異的識別に関する。
本発明は特に、次の直鎖末端マンノースエピトープに関する:
a)次のオリゴ糖配列:
Manα2Man、Manα2Manα、Manα2Manα2Man、Manα2Manα3Man、Manα2Manα6Man、Manα2Manα2Manα、Manα2Manα3Manβ、Manα2Manα6Manα、Manα2Manα2Manα3Man、Manα2Manα3Manα6Man、Manα2Manα6Manα6Man、Manα2Manα2Manα3Manβ、Manα2Manα3Manα6Manβ、Manα2Manα6Manα6Manβ等の好ましい末端Manα2エピトープ;
本発明はさらに、本発明の特に重要な低マンノースグリカンの特徴的な特性である、非還元末端の末端Manα3および/またはManα6含有標的構造の識別およびそれを対象とした方法に関する。好ましい構造群としては、特に標的材料の状態により、b)の直鎖エピトープおよびc3)の分岐鎖エピトープが挙げられる。
b)次のオリゴ糖配列:
Manα3Man、Manα6Man、Manα3Manβ、Manα6Manβ、Manα3Manα、Manα6Manα、Manα3Manα6Man、Manα6Manα6Man、Manα3Manα6Manβ、Manα6Manα6Manβ
等の好ましい末端Manα3‐および/またはManα6‐エピトープ
および次の:
c)分岐鎖末端マンノースエピトープが特に高マンノース構造(c1およびc2)および低マンノース構造(c3)の特徴的構造として好ましく、好ましい分岐鎖エピトープとしては、
c1)分岐鎖末端Manα2‐エピトープ
Manα2Manα3(Manα2Manα6)Man、Manα2Manα3(Manα2Manα6)Manα、
Manα2Manα3(Manα2Manα6)Manα6Man、
Manα2Manα3(Manα2Manα6)Manα6Manβ、
Manα2Manα3(Manα2Manα6)Manα6(Manα2Manα3)Man、
Manα2Manα3(Manα2Manα6)Manα6(Manα2Manα2Manα3)Man、
Manα2Manα3(Manα2Manα6)Manα6(Manα2Manα3)Manβ
Manα2Manα3(Manα2Manα6)Manα6(ManαManα2Manα3)Manβ
c2)式においてm1および/またはm8および/m9が1であり、分子が少なくとも1個の非還元末端の末端Manα3またはManα6エピトープを有する場合の、分岐鎖末端Manα2およびManα3またはManα6エピトープ
c3)分岐鎖末端Manα3またはManα6‐エピトープ
Manα3(Manα6)Man、Manα3(Manα6)Manβ、Manα3(Manα6)Manα、Manα3(Manα6)Manα6Man、Manα3(Manα6)Manα6Manβ、Manα3(Manα6)Manα6(Manα3)Man、Manα3(Manα6)Manα6(Manα3)Manβ
等が挙げられる。
本発明はさらに、末端Manα2およびManα3および/またはManα6含有構造のための識別法を組み合わせることにより、標的グリカンの識別における選択性および感度を増加させることに関する。このような方法は特に、高マンノースおよび低マンノースグリカンの両者を有する本発明の細胞材料に関して有用であると考えられる。
複合型N‐グリカン
本発明によると、複合型構造は優先的には質量分析により、優先的にはHexNAc≧4およびHex≧3である特徴的な単糖組成に基づいて、同定される。本発明のより好ましい一態様においては、4≦HexNAc≦20および3≦Hex≦21、および本発明のさらに好ましい態様においては、4≦HexNAc≦10および3≦Hex≦11である。複合型構造はさらに優先的にはエンドグリコシダーゼ消化に対する感受性、優先的には糖タンパク質からのN‐グリコシダーゼF遊離(N‐glycosidase F detachment)により同定される。複合型構造はさらに優先的には、NMR分光法において、Manα3(Manα6)Manβ4GlcNAcβ4GlcNAc N‐グリカンコア構造ならびにManα3および/またはManα6残基に結合したGlcNAc残基の特徴的な共鳴に基づいて同定される。
マンノース型グリカンに加えて、好ましいN‐結合グライコームとして、GlcNAcβ2分岐のみを有する複合型グリカン;ならびにマンノース型分岐およびGlcNAcβ2分岐の両者を有するハイブリッド型グリカン;等のGlcNAcβ2型グリカンなどが挙げられる。
GlcNAcβ2型グリカン
本発明は本発明のグライコーム中のGlcNAcβ2Man構造を明らかにした。好ましくは、GlcNAcβ2Man構造は1または複数個のGlcNAcβ2Manα構造、より好ましくはGlcNAcβ2Manα3またはGlcNAcβ2Manα6構造を有する。
本発明の複合型グリカンは好ましくは2個のGlcNAcβ2Manα構造を有し、これは好ましくはGlcNAcβ2Manα3およびGlcNAcβ2Manα6である。ハイブリッド型グリカンは好ましくはGlcNAcβ2Manα3構造を有する。
本発明は、複合型グリカンに対する一般式(CO1)に示す共通のコア構造を有する特徴的な複合型グリカンを明らかにしたものであり、この式は、エピトープの存在のため、GNβ2とも呼ばれる。
本発明は、式CO1(式GNβ2とも呼ばれる):
[RGNβ2]n1[Mα3]n2{[Rn3[GNβ2]n4Mα6}n5Mβ4GNXyR
[任意に、Mα6、Mα3、またはMβ4に結合する1または2または3個の式[RGNβz]nxのさらなる分岐を有し、Rxは各分岐で異なっていて良く;
式中、n1、n2、n3、n4、n5およびnxは独立に0または1のいずれかであり、
ただしn2が0である場合、n1は0であり、n3が1および/またはn4が1である場合、n5も1であり、n1またはn4またはnxまたはn3の少なくとも1つが1であり、好ましくは、n1またはn4またはnxの少なくとも1つが1であり;
n4が0であり、かつn3が1である場合、Rはマンノース型置換基または無であり、
式中、Xはグリコシド結合二糖エピトープβ4(Fucα6)GNであり、ここでnは0もしくは1、またはXは無であり、そして
yはアノマー結合構造αおよび/もしくはβ、または誘導体化アノマー炭素からの結合であり、そして
、RおよびRは独立に、1、2または3個のコア構造に結合する天然置換基を表し、
は還元末端水酸基、化学的還元末端誘導体、または、タンパク質由来のアスパラギンN‐グリコシドアミノ酸および/もしくはペプチドを含むアスパラギンN‐グリコシド等の天然アスパラギンN‐グリコシド誘導体であり;[]は直鎖配列中に存在するまたは存在しない基を表し、{}もまた存在しても存在しなくてもよい分岐を表す]
の天然オリゴ糖配列構造;および該N‐グリカンの還元末端から短くなった構造;の少なくとも1つに関する。
複合型/ハイブリッド型構造を形成するGlcNAcβ2型構造の伸長
置換基R、RおよびRは伸長構造を形成してもよい。伸長構造において、RおよびRはGlcNAc(GN)の置換基を表し、RはGlcNAcの置換基であるか、または、n4が0であり、かつn3が1である場合、R3はハイブリッド型構造を形成するManα6分岐に結合するマンノース型置換基である。GNの置換基は単糖Gal、GalNAc、もしくはFuc、および/またはシアル酸もしくは硫酸もしくはリン酸エステル等の酸性残基である。
GlcNAcまたはGNは、GalβGNとも記されるN‐アセチルラクトサミニル、または、ジ‐N‐アセチルラクトースジアミニル(di‐N‐acetyllactosdiaminyl)GalNAcβGlcNAc、好ましくはGalNAcβ4GlcNAcに伸長してもよい。LNβ2Mはさらに1個またはいくつかの他の単糖残基、例えばガラクトース、フコース、SAまたはLN‐ユニットで伸長および/または分岐してもよく、これがさらにSAα構造により置換されてもよく、
ならびに/または、Mα6残基および/もしくはMα3残基はさらに1もしくは2個のβ6および/もしくはβ4結合した前記式のさらなる分岐により置換されてもよく;
ならびに/または、Mα6残基またはMα3残基のいずれかは存在しなくてもよく;
ならびに/または、Mα6残基はさらに他のManαユニットにより置換され、ハイブリッド型構造を形成してもよく;
ならびに/または、Manβ4はさらにGNβ4により置換されてもよく;
ならびに/または、SAはシアル酸の天然置換基を有していてもよく、および/もしくはこれは他のSA残基に、好ましくはα8もしくはα9結合により、置換されてもよい。
SAα基は隣接するGal残基の3もしくは6位、またはGlcNAcの6位、好ましくは隣接するGal残基の3もしくは6位に結合する。別々に好ましい態様において、本発明は3位結合SAのみもしくは6位結合SAのみ、またはその混合を有する構造に関する。
好ましい複合型構造
不完全単分岐N‐グリカン
本発明は、通常とは異なっており、本発明のグライコームの分析に有用な不完全複合単分岐N‐グリカンを明らかにした。不完全単分岐構造のほとんどは潜在的な二分岐N‐グリカン構造の分解を示しており、そのため細胞状態の指標として好ましい。不完全複合型単分岐グリカンは単一のGNβ2構造のみを有する。
本発明は特に、n1のみが1、またはn4のみが1、およびこのような構造の混合物である場合の、上記の式CO1または式GNb2の構造に関する。
好ましい混合物は
A)分解的生合成過程に由来すると思われる単分岐の
GNβ2Mα3β4GNXyR
GNβ2Mα6Mβ4GNXyR および
B)マンノース分岐を有する二分岐の
B1) RGNβ2Mα3{Mα6}n5Mβ4GNXyR
B2) Mα3{RGNβ2Mα6}n5Mβ4GNXyR
のうち少なくとも1つの単分岐複合型グリカンを有する。
構造B2が分解的生合成(degradative biosynthesis)の産物として構造Aよりも好ましく、特にManα3構造の分解の程度がより低いという点で好ましい。構造B1は分解的生合成または生合成過程の遅延の指標として有用である。
二分岐および多分岐構造
本願発明者らは、本発明の細胞からの二分岐および多分岐N‐グリカンの主要な群を明らかにした。好ましい二分岐および多分岐構造は2個のGNβ2構造を有する。これらは本発明のグライコームのさらなる特徴的な群として好ましく、式CO2:
GNβ2Mα3{RGNβ2Mα6}Mβ4GNXyR
[任意に、Mα6、Mα3、またはMβ4に結合する1または2または3個の式[RGNβz]nxのさらなる分岐を有し、Rxは各分岐で異なっていてよく
式中、nxは0または1のいずれかであり、
他の変数は式CO1によるものである]
により表される。
好ましい二分岐構造
2個の末端GNβエピトープを有する二分岐構造が分解的生合成および/または生合成過程の遅延の潜在的な指標として好ましい。より好ましい構造は、RおよびRが無である場合の式CO2によるものである。
伸長構造
本発明は、Galおよび/またはGalNAc構造を有する特定の伸長複合型グリカンならびにその伸長バリアントを明らかにした。このような構造は、末端エピトープが本発明の細胞型を特徴付けるラクトサミン型の情報的に有用な修飾を複数有することから、情報的に有用な構造として特に好ましい。
本発明は式CO3:
[RGal[NAc]O2βz2]o1GNβ2Mα3{[RGal[NAc]o4βz2]o3GNβ2Mα6}Mβ4GNXyR
[任意に、Mα6、Mα3、またはMβ4に結合する1または2または3個の式[RGNβz1]nxのさらなる分岐を有し、Rxは各分岐で異なっていてよく
式中、nx、o1、o2、o3、およびo4は独立に0または1のいずれかであり、
ただし少なくともo1またはo3は1であり、好ましい一態様においては両者が1であり;
z2は3位または4位であるGNへの結合位置であり、好ましい一態様においては4位であり;
z1はさらなる分岐の結合位置であり;
、RおよびRは1または2個のN‐アセチルラクトサミン型伸長群または無を表し、
{}および()は存在しても存在しなくてもよい分岐を表し、
他の変数は式GNb2に示す通りである]
の、天然オリゴ糖配列構造または構造群および該N‐グリカンの還元末端から短くなった対応する構造(群)の少なくとも1つに関する。
ガラクトシル化構造
本願発明者らは特にジガラクトシル化構造
GalβzGNβ2Mα3{GalβzGNβ2Mα6}Mβ4GNXyR
およびモノガラクトシル化構造:
GalβzGNβ2Mα3{GNβ2Mα6}Mβ4GNXyR
GNβ2Mα3{GalβzGNβ2Mα6}Mβ4GNXyR
および/または、グリカン材料の分析に有用な、さらなる特徴的末端構造を有するために好ましいその伸長バリアント
GalβzGNβ2Mα3{RGalβzGNβ2Mα6}Mβ4GNXyR
GalβzGNβ2Mα3{GNβ2Mα6}Mβ4GNXyR、および
GNβ2Mα3{RGalβzGNβ2Mα6}Mβ4GNXyR
に対して有用な構造を分析した。
好ましい伸長材料としてはRがシアル酸、より好ましくはNeuNAcまたはNeuGcである構造等が挙げられる。
LacdiNAc構造含有N‐グリカン
本発明は初めてLacdiNAc、GalNAcβGlcNAc構造を本発明の細胞から明らかにした。好ましいN‐グリカンlacdiNAc構造は、変数o2およびo4のうち少なくとも1つが1である場合に式CO1の構造中に含まれる。
主要な酸性グリカン型
酸性グライコームとは、シアル化グライコームを形成するシアル酸(特にNeuNAcおよびNeuGc)、HexA(特にGlcA、グルクロン酸)、ならびに/またはリン酸および/もしくは硫酸エステル等の酸修飾基(acid modification group)等の酸性単糖残基を少なくとも1つ有するグライコームを意味する。
本発明によると、酸性グリカン構造中の硫酸および/またはリン酸エステル(SP)基の存在は、優先的には1または複数個のSP基を有する特徴的単糖組成により示される。SP基を有する好ましい組成としては1または複数個のSP基をSP基非含有グリカン組成に加えることにより形成されるものが挙げられるが、本発明のSP基を有する最も優先的な組成は、本発明の酸性N‐グリカン分画グリカン群の表中に記載される組成から選択される。酸性グリカン構造中のリン酸および/または硫酸エステル基の存在は、優先的には、フラグメンテーション質量分析(fragmentation mass spectrometry)において観察される1または複数個のSP基の喪失に対応する特徴的なフラグメント、シアリダーゼ消化に対するSP基含有グリカンの非感受性によってさらに示される。酸性グリカン構造中のリン酸および/または硫酸エステル基の存在は、優先的には、本発明の実施例中に記載されるように、陽イオンモード質量分析において、このようなグリカンがナトリウム塩等の塩を形成する傾向によっても示される。硫酸およびリン酸エステル基は、さらに優先的には、それぞれ、特異的なスルファターゼおよびホスファターゼ酵素処理に対するそれらの感受性、および/または質量分析等の分析手法においてそれらが陽イオンプローブと形成する特異的な複合体に基づいて同定される。
シアル化複合N‐グリカングライコーム
本発明は、式:
[{SAα3/6}s1LNβ2]r1Mα3{({SAα3/6}S2LNβ2)r2Mα6}r8
{M[β4GN[β4{Fucα6}r3GN]r4r5r6 (I)
[任意に、1または2または3個の式
{SAα3/6}s3LNβ (IIb)
のさらなる分岐を有し、
式中、r1、r2、r3、r4、r5、r6、r7およびr8は独立に0または1のいずれかであり、
式中、s1、s2およびs3は独立に0または1のいずれかであり、
ただし少なくともr1は1またはr2は1であり、および少なくともs1、s2またはs3のうちの1個は1である。
LNは、GalβGNとも記されるN‐アセチルラクトサミニル、または、ジ‐N‐アセチルラクトースジアミニルGalNAcβGlcNAc、好ましくは、GalNAcβ4GlcNAcであり、GNはGlcNAcであり、Mはマンノシルであり、ただしLNβ2MまたはGNβ2Mは1個またはいくつかの他の単糖残基、例えばガラクトース、フコース、SA、またはさらにSAα構造で置換されてもよいLN‐ユニット、でさらに伸長および/もしくは分岐してよく、
ならびに/または、1個のLNβは短くなってGNβとなってよく
ならびに/または、Mα6残基および/もしくはMα3残基はさらに1もしくは2個のβ6および/もしくはβ4結合した前記式のさらなる分岐により置換されてもよく、
ならびに/または、Mα6残基またはMα3残基のいずれかは存在しなくてもよく;
ならびに/または、Mα6残基はさらに他のManαユニットにより置換され、ハイブリッド型構造を形成してもよく;
ならびに/または、Manβ4はさらにGNβ4により置換されてもよく;
ならびに/または、SAはシアル酸の天然置換基を有していてもよく、および/もしくはこれは他のSA残基に、好ましくはα8もしくはα9結合により、置換されてもよい。
()、{}、[]および[]は直鎖配列中に存在するまたは存在しない基を表す。{}も存在しても存在しなくてもよい分岐を表す。
SAα基は隣接するGal残基の3または6位のいずれかに、またはGlcNAcの6位上に、好ましくは隣接するGal残基の3または6位に結合する。]
の天然オリゴ糖配列構造;および該N‐グリカンの還元末端から短くなった構造;の少なくとも1つに関する。別の好ましい態様において、本発明は3位結合SAのみもしくは6位結合SAのみ、またはその混合を有する構造に関する。好ましい一態様において、本発明は、r6が1であり、かつr5が0であり、還元末端GlcNAc構造を欠いたN‐グリカンに相当するグリカンに関する。
各種置換基を有するLNユニットは、好ましい一般的一態様において、式:
[Gal(NAc)n1α3]n2{Fucα2}n3Gal(NAc)n4β3/4{Fucα4/3}n5GlcNAcβ
[式中、n1、n2、n3、n4およびn5は独立に1または0のいずれかであり、
ただしn2およびn3により定義される置換基は非還元末端の末端構造におけるSAの存在に対して代替的であり;
還元末端GlcNAcユニットはさらにポリ‐N‐アセチルラクトサミン構造を形成する他の類似したLN構造にβ3および/またはβ6結合してもよく、ただしこのLNユニットn2、n3およびn4は0であり、
Gal(NAc)βおよびGlcNAcβユニットは硫酸エステル基に結合したエステルであってもよく;
()および[]は直鎖配列中に存在するまたは存在しない基を表し;{}は存在しても存在しなくてもよい分岐を表す]
により表すことができる。
LNユニットは好ましくはGalβ4GNおよび/またはGalβ3GNである。本願発明者らは幹細胞が両方の型のN‐アセチルラクトサミンを発現し得ることを明らかにし、そのため本発明は特に両構造の混合物に関するが、II型が特に、血液幹細胞中で一般的であった。さらに本発明は、2型N‐アセチルラクトサミン、Galβ4GlcNAc、血液幹細胞の新規分析マーカーに関する。
ハイブリッド型構造
本発明によると、ハイブリッド型または単分岐構造は、優先的には質量分析により、優先的にはHexNAc=3かつHex≧2である特徴的な単糖組成に基づき、同定される。本発明のより好ましい一態様において、2≦Hex≦11であり、本発明のさらに好ましい一態様において2≦Hex≦9である。ハイブリッド型構造はさらに優先的にはエキソグリコシダーゼ消化、優先的にはα‐マンノシダーゼ消化に対する感受性により、構造が非還元末端α‐マンノース残基を有しており、Hex≧3である場合に、さらに好ましくはHex≧4である場合に、同定され、ならびにエンドグリコシダーゼ消化、優先的には糖タンパク質からのN‐グリコシダーゼF遊離に対する感受性により、同定される。ハイブリッド型構造はさらに優先的には、NMR分光法において、Manα3(Manα6)Manβ4GlcNAcβ4GlcNAc N‐グリカンコア構造、該N‐グリカンコア中のManα残基に結合したGlcNAcβ残基の特徴的な共鳴に基づき、および非還元末端αマンノース残基または残基群の特徴的な共鳴の存在に基づき、同定される。
単分岐構造はさらに優先的には、α‐マンノース消化に対する非感受性により、およびエンドグリコシダーゼ消化、優先的には糖タンパク質からのN‐グリコシダーゼF遊離に対する感受性により、同定される。単分岐構造はさらに優先的には、NMR分光法において、Manα3Manβ4GlcNAcβ4GlcNAc N‐グリカンコア構造、該N‐グリカンコア中のManα残基に結合したGlcNAcβ残基の特徴的な共鳴に基づき、および、N‐グリカンコアのManαManβ配列中に存在する末端α‐マンノース残基から生ずる共鳴の他にさらなる非還元末端α‐マンノース残基の特徴的な共鳴が無いことに基づき、同定される。
本発明はさらに、N‐グリカンが式HY1:
GNβ2Mα3{[Rn3Mα6}Mβ4GNXyR
[式中、n3は独立に0または1のいずれかであり、
Xはグリコシド結合した二糖エピトープβ4(Fucα6)GNであり、ここでnは0もしくは1、またはXは無であり、そして
yはアノマー結合構造αおよび/もしくはβまたは誘導体化アノマー炭素からの結合であり、そして
は無またはGlcNAcに結合した置換基もしくは置換基群を表し、
は無またはマンノース残基に結合したマンノース置換基を表し、従ってRおよびRのそれぞれは1、2、または3個、より好ましくは1または2個、最も好ましくは少なくとも1個の、コア構造に結合した天然置換基に対応してよく、
は還元末端水酸基、化学的還元末端誘導体、あるいは、タンパク質由来のアスパラギンN‐グリコシドアミノ酸および/もしくはペプチドを含むアスパラギンN‐グリコシド等の天然アスパラギンN‐グリコシド誘導体であり;[]は直鎖配列内に存在するまたは存在しない基を表し、{}は存在しても存在しなくてもよい分岐を表す]
のハイブリッド型構造を有している場合の前記N‐グリカンに関する。
好ましいハイブリッド型構造
好ましいハイブリッド型構造としては、好ましいコア構造上の1または2個のさらなるマンノース残基等が挙げられる。
式HY2
GNβ2Mα3{[Mα3]m1([Mα6])m2Mα6}Mβ4GNXyR
[式中、m1およびm2は独立に0または1のいずれかであり、
{}および()は存在してもしなくてもよい分岐を表し、
他の変数は式HY1に記載される通りである。]
さらに本発明は、さらなるラクトサミン型構造をGNβ2分岐上に有する構造に関する。好ましいラクトサミン型伸長構造としてはN‐アセチルラクトサミンおよび誘導体、ガラクトース、GalNAc、GlcNAc、シアル酸およびフコース等が挙げられる。
式HY2の好ましい構造としては:
非還元末端の末端GlcNAcをグリカンの特異的な好ましい基として有する構造
GNβ2Mα3{Mα3Mα6}Mβ4GNXyR
GNβ2Mα3{Mα6Mα6}Mβ4GNXyR
GNβ2Mα3{Mα3(Mα6)Mα6}Mβ4GNXyR
および/またはその伸長バリアント
R1GNβ2Mα3{Mα3Mα6}Mβ4GNXyR
R1GNβ2Mα3{Mα6Mα6}Mβ4GNXyR
R1GNβ2Mα3{Mα3(Mα6)Mα6}Mβ4GNXyR
式HY3
[RGal[NAc]o2βz]o1GNβ2Mα3{[Mα3]m1[(Mα6)]m2Mα6}n5Mβ4GNXyR
[式中、n5、m1、m2、o1およびo2は独立に0または1のいずれかであり、
zはGNへの結合位置であって3または4であり、好ましい一態様においては4であり、
は1または2個のN‐アセチルラクトサミン型伸長基または無であり、
{}および()は存在してもしなくてもよい分岐を表し、
他の変数は式HY1において記載される通りである]
等が挙げられる。
式HY3の好ましい構造としては、特に、非還元末端の末端Galβを、好ましくは末端N‐アセチルラクトサミン構造を形成するGalβ3/4を、有する構造が挙げられる。これらはハイブリッド型構造の特別な群として好ましく、複合N‐グリカングライコームおよび高マンノースグライコーム:
GalβzGNβ2Mα3{Mα3Mα6}Mβ4GNXyR
GalβzGNβ2Mα3{Mα6Mα6}Mβ4GNXyR
GalβzGNβ2Mα3{Mα3(Mα6)Mα6}Mβ4GNXyR
および/またはグリカン材料の分析に有用なさらなる特徴的な末端構造を有するために好ましいその伸長バリアント
R1GalβzGNβ2Mα3{Mα3Mα6}Mβ4GNXyR
R1GalβzGNβ2Mα3{Mα6Mα6}Mβ4GNXyR
R1GalβzGNβ2Mα3{Mα3(Mα6)Mα6}Mβ4GNXyR
のバランスの分析における固有の値の群として好ましい。好ましい伸長材料としては、Rがシアル酸、より好ましくはNeuNAcまたはNeuGcである構造等が挙げられる。
血液由来幹細胞に関連する構造
表3および4は、血液由来単核球と比較した、ヒト血液由来幹細胞の分化状態に関連する特定の単糖組成を有する特定の構造群を示す。
血液幹細胞中に存在し、豊富である構造
本発明は、対応する分化した細胞中よりも血液幹細胞中での存在量が多い新規構造を明らかにした。
特定のCD133で選択された血液幹細胞集団における構造
CD133は、造血幹細胞およびその他の幹細胞に対して一般的に用いられるマーカーである。本発明は、CD133−細胞と比較して、CD133+細胞での変異を特に明らかにした。
CD133+およびCD133−細胞中の主要なN‐グリカンは、高マンノースおよび二分岐複合型構造である。CD133+およびCD133−細胞は、単分岐、ハイブリッド、低マンノース、および大型の複合型N‐グリカンも有しており(図2および3)、詳細については実施例1を参照されたいが、高マンノース型N‐グリカン(図2C)、コア組成が5‐ヘキソース4‐N‐アセチルヘキソサミンである二分岐複合型N‐グリカン、およびシアル化単分岐N‐グリカン(図3C)に対して偏りを示した。対照的に、CD133−細胞は、コア組成が6‐ヘキソース5‐N‐アセチルヘキソサミンである大型の複合型N‐グリカン、またはより大型のシアル化ハイブリッド型N‐グリカンおよび低マンノース型N‐グリカンの量が多かった。
CD133+関連N‐グリカン群、CD133+i)〜CD133+iii):
本発明は、CD133+i)〜CD133+iiiと名付けられるグリカン組成およびグリカンの3種類の群を明らかにしたものであり、これらは、CD133陽性細胞に特に特徴的である。これらの群はすべて、式CCNによる共通のN‐グリカンコア構造を共有しており、このグリカン群は、さらに、特定の複合型およびマンノース型構造に分けられる。発現における相違を表3および4に示す。
CD133+細胞に関連する複合型グリカン組成および構造
N‐グリカン群 CD133+i)
H5N4をコアとする二分岐サイズ(biantennary‐size)複合型シアル化N‐グリカン
血液由来幹細胞、特にCD133+細胞の特異的発現の好ましい群は、組成の特徴をH5N4とし、好ましくは、S1H5N4F1、S1H5N4、S2H5N4F1、S1H5N4F2、S2H5N4、およびS1H5N4F3等である、二分岐サイズ複合型シアル化N‐グリカンの特定の群であることが明らかとなった。シアル化構造の好ましい亜群は、低フコシル化(無しまたは1つ)であるモノ‐およびジシアル化‐構造、S1H5N4F1、S1H5N4、S2H5N4F1、S2H5N4、ならびに高フコシル化であるモノシアル化構造、S1H5N4F2およびS1H5N4F3が挙げられる。
好ましい構造は、式:

[式中、kは、1または2の整数であり、好ましくは、高フコシル化群に対しては1であり、
qは、0〜3の整数であり、好ましくは、低フコシル化群に対しては0または1、高フコシル化群に対しては2または3である]
によるものである。
好ましい低フコシル化の二分岐構造
本発明の好ましい二分岐構造としては、式:
[NeuAcα]0‐1GalβGNβ2Manα3([NeuAcα]0‐1GalβGNβ2Manα6)Manβ4GNβ4(Fucα6)0‐1GN
の構造が挙げられる。
GalβGlcNAc構造は好ましくはGalβ4GlcNAc構造(II型N‐アセチルラクトサミン分岐)である。2型構造の存在は特異的β4結合開裂ガラクトシダーゼ(D. pneumoniae)により明らかになった。
好ましい一態様では、シアル酸は、NeuAcα6‐であり、グリカンは、この分子のManα3‐腕と結合したNeuAcを含む。この帰属は、特異的なシアリダーゼによる消化、およびα6‐シアル酸転移酵素(ST6GalI)の公知の分岐鎖特異性によって明らかとなったα6‐結合シアル酸の存在に基づくものである。
NeuAcα6GalβGNβ2Manα3([NeuAcα]0‐1GalβGNβ2Manα6)Manβ4GNβ4(Fucα6)0‐1GN、より好ましくは、II型構造:NeuAcα6Galβ4GNβ2Manα3([NeuAcα]0‐1Galβ4GNβ2Manα6)Manβ4GNβ4(Fucα6)0‐1GNである。
本発明は、このように、特異的な結合剤分子によって認識される好ましい末端エピトープ、NeuAcα6GalβGN、NeuAcα6GalβGNβ2Man、NeuAcα6GalβGNβ2Manα3を明らかにした。構造が類似しているという状況での用途において好ましいより高い特異性は、より長いエピトープを認識し、それによって、例えば、N‐グリカンとその他のグリカン型を、末端エピトープという点で区別する結合剤を使用することによって得ることができると考えられる。
高フコシル化である好ましい二分岐構造
本発明は、好ましくは、高フコシル化である二分岐構造、好ましくは、フコースが2個(ジフコシル化)またはフコースが3個(トリフコシル化)の構造に関する。
好ましいジフコシル化およびシアル化構造
好ましいジフコシル化シアル化構造として挙げられる構造は、1個のフコースがN‐グリカンのコアに存在し、
a)分子の1個の腕上に1個のフコース、およびシアル酸が他の腕上に存在し(該分子の分岐および該フコースはLewis xまたはH‐構造:
Galβ4(Fucα3)GNβ2Manα3/6(NeuNAcαGalβGNβ2Manα6/3)Manβ4GNβ4(Fucα6)GN、
および/または
Fucα2GalβGNβ2Manα3/6(NeuNAcαGalβGNβ2Manα6/3)Manβ4GNβ4(Fucα6)GN
であり、シアル酸がα6‐結合の場合、好ましい分岐構造は、好ましくは、この分子のα3‐結合した腕上にシアリル‐ラクトサミンを含み、式:
Galβ4(Fucα3)GNβ2Manα6(NeuNAcα6Galβ4GNβ2Manα3)Manβ4GNβ4(Fucα6)GN、
および/または
Fucα2GalβGNβ2Manα6(NeuNAcα6Galβ4GNβ2Manα3)Manβ4GNβ4(Fucα6)GN
による構造となる。シアル酸およびフコースが分子の異なる腕上に存在する構造は、特徴的な特異的エピトープによって認識されうると考えられる。
b)フコースおよびNeuAcは、構造:
NeuNACα3Galβ3/4(Fucα4/3)GNβ2Manα3/6(GalβGNβ2Manα6/3)Manβ4GNβ4(Fucα6)GN
において、同一の腕上に存在し、より好ましくは、シアル化およびフコシル化シアリル‐Lewis x構造が、特徴的で生理活性である構造:
NeuNAcα3Galβ4(Fucα3)GNβ2Manα3/6(Galβ4GNβ2Manα6/3)Manβ4GNβ4(Fucα6)GN
として好ましい。
好ましいシアル化トリフコシル化構造
好ましいシアル化トリフコシル化構造としては、コアフコース、および末端シアリル‐Lewis xもしくはシアリル‐Lewis a、好ましくは、2型ラクトサミンの存在量が比較的多いことからシアリル‐Lewis x、またはLewis yを二分岐N‐グリカンのいずれかの腕上に含み、式:
NeuNAcα3Galβ4(Fucα3)GNβ2Manα3/6([Fucα]GalβGNβ2Manα6/3)Manβ4GNβ4(Fucα6)GN、
および/または
Fucα2Galβ4(Fucα3)GNβ2Manα3/6(NeuNAcα3/6GalβGNβ2Manα6/3)Manβ4GNβ4(Fucα6)GN
による構造が挙げられる。NeuNAcは、公知の生合成の優先度により、フコースと同じ腕上にα‐結合していることが好ましい。構造がNeuNAcα6を含む場合、これは、分子のNeuNAcα6Galβ4GlcNAcβ2Manα3‐腕を形成するように結合することが好ましい。Galβ群は、血液幹細胞に対しては、II型N‐アセチルラクトサミン構造のGalβ4群が好ましい。
N‐グリカン群 CD133+ii)
単分岐サイズシアル化N‐グリカン
本発明は、さらに、単分岐型グリカン組成を有する特徴的で独特のグリカンを明らかにした。
この好ましい群は、CD133+細胞関連構造を含み:
組成の特徴が3≦H≦4である単分岐サイズシアル化N‐グリカンが挙げられ、好ましくは、S1H3N3F1、S1H3N3、S3H4N3F1、S1H4N3F1SP、S2H4N3、ならびに、任意に、さらに、S1H4N3F1および/またはS1H4N3等である。直鎖単分岐グリカン、S1H3N3F1およびS1H3N3、ならびに、好ましくは、複数の電荷を有する分岐鎖単分岐/ハイブリッド型、S3H4N3F1、S1H4N3F1SP、S2H4N3、ならびに、任意に、さらに、S1H4N3F1および/またはS1H4N3等である。
好ましい構造は、式:

[式中、kは、1、2、または3の整数、
mは、3または4の整数、
qは、0または1の整数である]
の単糖組成を有する。
好ましい構造は、式:
(NeuAc)NeuAcα3/6GalβGlcNAcβ2Manα3(Manα6)0‐1Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)0‐1GlcNAc
によるものであり、ここで、nは、1または2であり、および末端シアル酸は、好ましくは、α8‐またはα9‐結合であり、より好ましくは、より優先的にII型N‐アセチルラクトサミン分岐とのα8‐結合であり、ここで、ガラクトース残基はβ1,4‐結合であり、
(NeuAc)NeuAcα3/6Galβ4GlcNAcβ2Manα3(Manα6)0‐1Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)0‐1GlcNAc
である。好ましい分岐鎖構造は、式、
(NeuAc)NeuAcα3/6Galβ4GlcNAcβ2Manα3(Manα6)Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)0‐1GlcNAc
によるものであり、好ましい直鎖構造は、式、
(SP)0‐1(NeuAc)NeuAcα3/6Galβ4GlcNAcβ2Manα3Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)0‐1GlcNAc
によるものであり、任意に、特定の一態様では、SP‐構造(硫酸エステルまたはリン酸エステル構造)を含む。
CD133+細胞に関連するマンノース型グリカン組成および構造
N‐グリカン群 CD133+iii)
高マンノース型中性N‐グリカン
組成の特徴がN=2および5≦H≦9である好ましい高マンノース型中性N‐グリカンは、好ましくは、H5N2、H9N2、およびH8N2を含む。
好ましい構造は、式:
[Mα2]n1Mα3{[Mα2]n3Mα6}Mα6{[Mα2]n6[Mα2]n7Mα3}Mβ4GNβ4GNyR
[式中、n1、n3、n6、およびn7は独立に0または1であり;
yはアノマー結合構造αおよび/もしくはβまたは誘導体化アノマー炭素からの結合であり、Rは還元末端水酸基、化学的還元末端誘導体、または、タンパク質由来のアミノ酸および/もしくはペプチドを含むアスパラギンN‐グリコシド等の天然アスパラギンN‐グリコシド誘導体であり;
[]はn1、n3、n6、n7の値によって存在するかまたは存在しないかのいずれかである決定基を表し;そして
{}は前記構造中の分岐を表し;
MはD‐Manであり、GNはN‐アセチル‐D‐グルコサミンであり、yはアノマー構造または結合型、好ましくはベ‐タからAsnである。
yは、アノマー結合構造αおよび/もしくはβまたは誘導体化アノマー炭素からの結合であり、Rは、還元末端水酸基、化学的還元末端誘導体、または、タンパク質由来のアミノ酸および/もしくはペプチドを含むアスパラギンN‐グリコシド等の天然アスパラギンN‐グリコシド誘導体である。]
によるものである。
好ましくは、本発明は、前記の式による高マンノース型中性グリカンに関するが、ただし、
n1、n3、n6、およびn7のすべてが1であるか(組成はH9N2)、または、
n1、n3、n6、およびn7のすべてが0であるか(組成はH5N2)、または、
n1、n3、n6のうちの1つが0であり、残りが1であり、およびn7が1であり、より好ましくは、n3が0である(組成はH8N5)。
この群の好ましい構造としては:
Manα2Manα6(Manα2Manα3)Manα6(Manα2Manα2Manα3)Manβ4GlcNAcβ4GlcNAc、または
Manα2Manα6(Manα3)Manα6(Manα2Manα2Manα3)Manβ4GlcNAcβ4GlcNAc、
Manα6(Manα3)Manα6(Manα3)Manβ4GlcNAcβ4GlcNAc、が挙げられる。
血液由来の分化した単核球型に関連する構造および組成
本発明は、対応する血液由来の幹細胞中よりも、分化した単核球中での存在量が多い新規構造を明らかにした。
CD133−関連N‐グリカン群、CD133−i)〜CD133−iii):
本発明は、CD133−i)〜CD133−iiiと名付けられる、グリカン組成およびグリカンの3種類の群を明らかにし、これらは、CD133陰性細胞に特に特徴的である。これらの群はすべて、式CCNによる共通のN‐グリカンコア構造を共有しており、このグリカン群は、さらに、特定の複合型およびマンノース型構造に分けられる。発現における相違を表3および4に示す。
CD133−細胞に関連する複合型グリカン組成および構造
N‐グリカン群 CD133−i)
大型複合型シアル化N‐グリカン
この組成は、CD133+細胞中で豊富となった二分岐N‐グリカンと比較して、N‐アセチルラクトサミンユニットが追加されていることを示している。
本発明は、特に、組成の特徴がN≧5およびH≧6である大型複合型シアル化N‐グリカンに関し、好ましくは、S1H6N5F1、S2H6N5F1、S1H7N6F3、S1H7N6F1、S1H6N5、S3H6N5F1、S2H7N6F3、S1H6N5F3、S2H6N5F2、およびS2H7N6F1等である。このグリカンは、さらに、コア組成がH6N5である三分岐グリカンを含むトリ‐LacNAc‐グリカン、およびコア組成がH7N6である四分岐グリカンを任意に含むより大型のテトラ‐LacNAcグリカンの群に分けられる。
好ましい単糖組成は、式

[式中、
kは1〜3の整数であり、
nは6〜7の整数であり、
pは5〜6の整数であり、
qは0〜3の整数であり、
SはNeu5Acであり、GはNeu5Gcであり、HはD‐ManまたはD‐Galの群より選択されるヘキソースであり、NはN‐D‐アセチルヘキソサミンであって、好ましくは、GlcNAcまたはGalNAc、より好ましくは、GlcNAcであり、FはL‐フコースである]
である。本発明は、トリLacNAc‐構造に対する、nが6であり、pが5である組成、およびテトラ‐LacNAc‐構造に対する、nが7であり、pが6である組成に関する。
好ましい三分岐または四分岐構造は、式:
{SAα3/6}s3LNβ (IIb)
による1もしくは2個の追加の分岐を有する、式:
{SAα3/6}s1LNβ2Mα3{{SAα3/6}s2LNβ2Mα6}Mβ4GNβ4{Fucα6}GN (I)
[式中、s1、s2、およびs3は独立に0または1であり、
ただし、s1、s2、またはs3のうちの少なくとも1つは1である。
LNはGalβGNとしても表記されるN‐アセチルラクトサミニルであり、GNはGlcNAcであり、Mはマンノシル‐であるが、ただし、LNβ2Mは、ガラクトース、フコース、SA、またはLN‐ユニット等の1個もしくはいくつかの他の単糖残基によってさらに伸長、および/または分岐されていてもよく、これらは、SAα‐構造でさらに置換されていてもよく、式IIbによる1もしくは2個のβ6‐および/またはβ4‐結合した追加の分岐でさらに置換されており、
{}は直鎖配列で存在する基を表し、{}は分岐を表す]
による。SAα‐基は、隣接するGal残基の3もしくは6位に、またはGlcNAcの6位に、好ましくは、隣接するGal残基の3もしくは6位に結合している。
好ましいトリ‐LacNAcおよび三分岐グリカン
本発明は、特に、S1H6N5F1、S2H6N5F1、S1H6N5、S3H6N5F1、S1H6N5F3、およびS2H6N5F2の組成を有するトリ‐LacNAc、好ましくは、三分岐N‐グリカンに関する。三分岐構造の存在は、特異的なガラクトシダーゼ消化によって明らかにされた。三分岐N‐グリカンの好ましい型としては、MGAT4によって合成されるものが挙げられる。三分岐N‐グリカンは、好ましい一態様では、コアフコース残基を持つ。好ましい末端エピトープとしては、Lewis x、シアリル‐Lewis x、H‐およびLewis y抗原が挙げられる。
好ましい三分岐構造は、式Tri1
{SAα3/6}s1LNβ2Mα3{{SAα3/6}s2LNβ2({SAα3/6}s3LNβ4)Mα6}Mβ4GNβ4{Fucα6}GN
[式中、()は分岐を表し、他の変数は式Iにおいて上記で記載される通りである]
による。
本発明は、特に、CD133陰性細胞に特異的である三分岐構造を明らかにした。
好ましいテトラ‐LacNAcおよび四分岐グリカン
本発明は、特に、トリ‐LacNAc、好ましくは、S1H7N6F3、S1H7N6F1、S2H7N6F3、およびS2H7N6F1の組成を有する三分岐N‐グリカンに関する。
四分岐および/またはポリラクトサミン構造を含む好ましいテトラ‐LacNac
本発明は、さらに、単糖組成、ならびに単糖組成S1H7N6F2およびS1H7N6F3に対応するグリカンに関し、これらは、末端GalβGlcNAcβ3GalβGlcNAcβ‐、より好ましくは、2型構造、Galβ4GlcNAcβ3Galβ4GlcNAcβ‐を有するもの等の、N‐グリカンを含む四分岐および/またはポリ‐N‐アセチルラクトサミンエピトープに対応すると帰属された。
好ましい四分岐構造は、式Tet1
{SAα3/6}s1LNβ2({SAα3/6}s4LNβ4/6)Mα3{{SAα3/6}s2LNβ2({SAα3/6}s3LNβ4)Mα6}Mβ4GNβ4{Fucα6}GN
[式中、()は分岐を表し、s4は0または1であり、他の変数は上記の式Iにおいて記載される通りである]
による。
N‐グリカン群 CD133−ii)
ハイブリッド型シアル化N‐グリカン
本発明は、特に、組成の特徴が5≦H≦6である、ハイブリッド型シアル化N‐グリカンに関し、好ましくは、S1H6N3、S1H5N3、およびS1H6N3F1等である。
好ましい単糖組成は、式

[式中、
nは5または6の整数であり、
qは0または1の整数である]
である。
好ましい構造は、式:
NeuNAcα3/6Gaβ4GNβ2Mα3{[Mα3]m1[(Mα6)]m2Mα6}Mβ4GNXyR
[式中、m1、m2は独立に0または1であり、
zはGNへの結合位置であって、3または4であり、好ましい一態様では4であり、
は1もしくは2個のN‐アセチルラクトサミン型伸長基;NeuAcα3/6または無であり、
{}および()は存在してもしなくてもよい分岐を表し、
他の変数は、式HY1において記載される通りである]
による。
より好ましくは、前記の構造は、
NeuNAcα3/6Gaβ4GNβ2Mα3{Mα3(Mα6)Mα6}Mβ4GNXyR
ならびに、hex5構造、
NeuNAcα3/6Gaβ4GNβ2Mα3{Mα3Mα6}Mβ4GNXyR、および
NeuNACα3/6Gaβ4GNβ2Mα3{Mα6Mα6}Mβ4GNXyRである。
N‐グリカン群 CD133−iv)
表4および図2は、組成がSH5N5およびSH5N5Fである末端HexNAc基の構造が、分化した血液細胞に対して、好ましくは、CD133−細胞に対して特に特異的であることを示す。本発明は、2個のラクトサミン、およびN‐グリカンコアManβ4GlcNAcエピトープのバイセクティング(bisecting)GlcNAc等GlcNAc置換を含む末端GlcNAc構造を有する、対応する二分岐N‐グリカンに関する。
CD133−細胞に関連するマンノース型グリカン組成および構造
N‐グリカン群 CD133−iii)
低マンノース型中性N‐グリカン
本発明は、特に、組成の特徴がN=2および1≦H≦4である低マンノース型中性N‐グリカンに関し、好ましくは、H3N2F1、H3N2、H2N2F1、H2N2、H1N2、およびH4N2等である。
好ましい単糖組成は、式

[式中、
nは1〜3の整数であり、
qは0または1の整数である]
である。
好ましい構造は、式:
[Mα3]n2{[Mα6)]n4}[Mα6]n5{[Mα3]n8}Mβ4GNβ4[{Fucα6}]GNyR
[式中、n2、n4、n5、n8、およびmは独立に0または1であり;[]はn2、n4、n5、n8、およびmの値によって存在するかまたは存在しないかのいずれかである決定基を表し、{}は前記構造中の分岐を表し;
yおよびR2は式M2において表される通りであり、
ただし、n2、n4、およびn8の少なくとも1つが0である]
による。
好ましい非フコシル化低マンノースN‐グリカンは、式:
Mα6Mβ4GNβ4GNyR
Mα3Mβ4GNβ4GNyR、および
Mα6{Mα3}Mβ4GNβ4GNyR
Mα6Mα6{Mα3}Mβ4GNβ4GNyR
Mα3Mα6{Mα3}Mβ4GNβ4GNyR
による。
フコシル化低マンノースグリカンの好ましい個々の構造
小型フコシル化低マンノース構造は、公知のN‐結合グリカンの中で特に通常と異なるものであり、本発明による方法、特に本発明による細胞の分析および/または分離にとって有用である特徴的なグリカン群を形成する。これらとしては:
Mβ4GNβ4(Fucα6)GNyR
Mα6Mβ4GNβ4(Fucα6)GNyR
Mα3Mβ4GNβ4(Fucα6)GNyR
Mα6Mα6{Mα3}Mβ4GNβ4(Fucα6)GNyR、および
Mα3Mα6{Mα3}Mβ4GNβ4(Fucα6)GNyR
が挙げられる。
特定の一態様では、低マンノースグリカンは、通常とは異なるマンノシダーゼ分解に基づく稀な構造、
Manα2Manα2Manα3Manβ4GNβ4(Fucα6)0‐1GN、および
Manα2Manα3Manβ4GNβ4(Fucα6)0‐1GN
を含む。
幹細胞からの新規末端HexNAc N‐グリカン組成
本願発明者らは、ヒト幹細胞を研究した。データより、末端HexNAcと称する変化するグリカン構造の特定の群が明らかとなった。このデータは、分化という点で好ましいシグナルの変化を明らかにするものである。末端HexNAc構造は、N‐アセチルグルコサミダーゼ酵素を用いた開裂により、末端N‐アセチルグルコサミン構造を含むと帰属された。
末端HexNAcを持つ構造的亜群による好ましいN‐グリカン
本願発明者らは、式:nHexNAc=nHex≧5およびndHex≧1(I群)、または:nHexNAc=nHex≧5およびndHex=0(II群)によって特徴付けられる末端HexNAc含有N‐グリカンに関して、分化段階に特異的な相違点が存在することを見出した。本データにより、これらのグリカンが、1)臍帯血および骨髄造血幹細胞(CBおよびBM HSC)等であり、さらにCB HSCがCD34+、CD133+、およびlin−(系統陰性)細胞等である幹細胞と、これらの細胞型から直接にまたは間接的に分化した細胞との両方から単離された種々のN‐グリカン試料で検出されたこと;および2)対応する幹細胞と比較して、分析された分化した細胞中で過剰発現されたこと、が示された。I群とII群の間では独立した発現が存在し、従って、式nHexNAc=nHex≧5によって決定されるN‐グリカン構造群は、上述のように、独立して発現した2個の亜群IおよびIIに分けられる。
本願発明者らは、上記のII群およびI群それぞれと同じ組成の特徴を有するN‐グリカン、HexHexNAcおよびHexHexNAcdHexに対応するグリカンシグナルの発現の差異をも見出した。具体的には、種々の供給源から単離されたHSCの分析において、HexHexNAcdHexは、CD133+およびlin−細胞中で高い発現を、CD34+およびCD34−細胞等の他のすべてのCB MNC画分では中程度の発現を示し、成体末梢血から単離されたCD34+中では発現が検出されないことが見出された。
N‐グリカンコアα1,6‐結合フコースおよびβ1,4結合バイセクティングGlcNAcを合成する生合成酵素の公知の特異性に基づくと、II群は、好ましくは、バイセクティングGlcNAc型N‐グリカンに対応し、一方、I群は、優先的には、他の末端HexNAc含有N‐グリカンに対応し、優先的には、N‐グリカンコア構造に分岐HexNAcを持ち、より優先的には、N‐グリカンコア構造に分岐GlcNAcを持つ構造を含む。特定の一態様では、この群のグリカン構造は、コアフコシル化バイセクティングGlcNAc含有N‐グリカンを含み、ここで、追加のGlcNAcは、Manβ4GlcNAcエピトープへGlcNAcβ4結合して、エピトープ構造、GlcNAcβ4Manβ4GlcNAcを、好ましくは複合型N‐グリカン分岐の間に形成する。
本発明の好ましい一態様では、そのような構造としては、β1,4‐結合マンノースの2位へ結合したGlcNAcが挙げられる。本発明のさらに好ましい一態様では、そのような構造としては、LEC14構造に対して記載されたように(Raju and Stanley J. Biol Chem (1996) 271, 7484‐93)、β1,4‐結合マンノースの2位へ結合したGlcNAcが挙げられ、これは、遺伝子発現データおよび糖転移酵素特異性の分析によって裏づけられた、特に好ましい態様である。本発明のさらに好ましい一態様では、そのような構造としては、LEC14構造に対して記載されたように(Raju, Ray and Stanley J. Biol Chem (1995) 270, 30294‐302)、N‐グリカンコアのβ1,4‐結合GlcNAcの6位へ結合したGlcNAcが挙げられる。
本発明は、特に、I群による構造を含むI群グリカンの亜型のさらなる分析に関する。本発明は、さらに、N‐グリカンのコアマーカー構造に対する特異的結合試薬の作製、およびこれらを好ましい癌マーカー構造の分析に用いることに関する。本発明は、さらに、その結合がGlcNAcsによって阻害されるレクチンPSA(pisum sativum)またはレンチル(lntil)(Lens culinaris)レクチンまたはコアFuc特異的モノクローナル抗体を用いたネガティブ識別(negative recognition)によるLEC14および/または18構造の分析に関する。
本発明は、特に、N‐グリカンコアマーカー構造に関し、ここで、二糖エピトープは、式CGNによるN‐結合グリカンのコア構造内のManβ4GlcNAc構造である。
本発明は、さらに、式CGNの構造を含むN‐グリカンコアマーカー構造およびマーカーグリカン組成に関し、ここで、Manα3/Manα6‐残基が、複合型、特に、二分岐構造まで伸長され、n3が1であり、および、ここで、Manβ4GlcNAc‐エピトープがGlcNAc置換を含む。
本発明は、さらに、式CGNの構造を含むN‐グリカンコアマーカー構造およびマーカーグリカン組成に関し、ここで、Manα3/Manα6‐残基が、複合型、特に、二分岐構造まで伸長され、n3が1であり、および、ここで、Manβ4GlcNAc‐エピトープが1〜8%の間のGlcNAc置換を含む。
本発明は、さらに、式CGNの構造を含むN‐グリカンコアマーカー構造およびマーカーグリカン組成に関し、ここで、この構造は群:
[GlcNAcβ2Manα3](GlcNAcβ2Manα6)Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)n3GlcNAcxR、
[Galβ4GlcNAcβ2Manα3](Galβ4GlcNAcβ2Manα6)Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)n3GlcNAcxR、および
SAが1もしくは2個のGal残基へα3および またはα6‐結合しており、Manβ4またはGlcNAcβ4がGlcNAcで置換されている場合、それらのシアル化バリアント、
より選択される。
本発明は、さらに、式CGNを含むN‐グリカンコアマーカー構造およびマーカーグリカン組成に関し、ここで、Manβ4GlcNAc‐エピトープが含み、GlcNAc残基がManβ4へβ2‐結合してエピトープGlcNAcβ2Manβ4を形成する。
本発明は、さらに、式CGNを含むN‐グリカンコアマーカー構造およびマーカーグリカン組成に関し、ここで、Manβ4GlcNAc‐エピトープが含み、GlcNAc残基がエピトープのGlcNAcへ6‐結合してエピトープManβ4(GlcNAc6)GlcNAcを形成する。
本発明は、さらに、式CGNを含むN‐グリカンコアマーカー構造およびマーカーグリカン組成に関し、ここで、Manβ4GlcNAc‐エピトープが含み、GlcNAc残基がエピトープのGlcNAcへ4‐結合してエピトープGlcNAcβ4Manβ4GlcNAcを形成する。
グライコーム ‐ 幹細胞からの新規グリカン混合物
本発明は幹細胞から各種サイズの新規グリカンを明らかにした。幹細胞は小さなオリゴ糖から大きな複合構造にまでわたる範囲のグリカンを含んでいる。本分析は多数の成分と構造タイプとを相当量有する組成を明らかにする。これまで、これらの希少材料からの全グライコームは入手できず、幹細胞の遊離可能なグリカンの混合物、すなわちグライコームの性質は未知であった。
本発明は細胞表面のグリカン構造が初期のヒト細胞の各種集団、すなわち本発明の好ましい標的細胞集団、の間で異なることを明らかにした。該細胞集団は特異的に増加した「レポーター構造」を有していることが明らかになった。
細胞表面のグリカン構造は一般に多数の生物学的役割を有することが知られている。そのため、細胞表面からの正確なグリカン混合物についての知識は、細胞の状態に関する知識のために重要である。本発明は、複数の条件が細胞に影響し、そのグライコームに変化をもたらすことを明らかにした。本発明は、ヒト幹細胞から新規グライコーム成分および構造を明らかにした。本発明は特に、特異的結合剤分子によって分析することができる、特異的な末端グリカンエピトープを明らかにした。
グライコーム材料由来の構造の、および細胞表面上の構造の、結合法による識別
本発明は、NMRおよび/または質量分析による物理化学的分析に加え、いくつかの方法が前記構造の分析に有用であることを明らかにした。本発明は特に、方法:
i)結合剤と呼ばれる、グリカンを結合する分子による識別
これらの分子はグリカンを結合し、結合剤に連結した標識等の、結合の観察を可能にする特性を有する。好ましい結合剤としては、
a)抗体、レクチンおよび酵素等のタンパク質
b)タンパク質の結合ドメインおよび部位等のペプチド、ならびにファージディスプレイペプチド等の合成ライブラリー由来類似体
c)ペプチド材料を模倣する他のポリマーまたは有機骨格分子(organic scaffold molecule)
等が挙げられる
に関する。
ペプチドおよびタンパク質は、好ましくは組み替えタンパク質またはそれに由来する対応する炭水化物認識ドメインであり、該タンパク質はモノクローナル抗体、グリコシダーゼ、グリコシル転移酵素、植物レクチン、動物レクチンまたはそれらのペプチド模倣物から選択され、結合剤は検出可能な標識構造を有していてよい。
炭水化物識別における酵素の属(genus)はレクチン(酵素活性を有しない炭水化物結合タンパク質)の属に対して連続的である。
a)天然糖転移酵素(Rauvala et al.(1983) PNAS (USA) 3991‐3995)およびグリコシダーゼ(Rauvala and Hakomori (1981) J. Cell Biol. 88, 149‐159)はレクチン活性を有する。
b)炭水化物結合酵素は触媒アミノ酸残基を変異させることによりレクチンに改変することができる(WO9842864; Aalto J. et al. Glycoconjugate J. (2001),18(10); 751‐8; Mega and Hase (1994) BBA 1200 (3) 331‐3を参照)。
c)グリコシダーゼに構造的に相同な天然レクチンも知られており、酵素属およびレクチン属の連続性を示唆している(Sun, Y‐J. et al. J. Biol. Chem. (2001) 276 (20) 17507‐14)。
酵素活性を有しない炭水化物結合タンパク質としての抗体の属もレクチンの概念に非常に近いが、抗体は通常レクチンとしては分類されない。
ペプチド概念の明白性および炭水化物結合タンパク質概念との連続性
タンパク質はペプチド鎖を有しており、そのためペプチドによる炭水化物の認識は明白であるとさらに考えられる。例えば、炭水化物結合タンパク質の活性部位由来のペプチドは炭水化物を認識し得ることが当業者に公知である(例えばGeng J‐G. et al (1992) J. Biol. Chem. 19846‐53)。
上記の通り、抗体断片は記載に含まれ、結合タンパク質の遺伝子組み替えバリアントである。明白な遺伝子組み替えバリアントは酵素、抗体およびレクチンの、短くなった、または断片のペプチドを含みうる。
細胞または分化および構造の個々の特異的末端バリアントの解明
本発明は、特定の分化段階のマーカーとしてのオン・オフ変化;またはグライコームの定量的比較に基づく量的相違;によって、構造的特徴を明らかにするための、グライコミクスプロファイリング法の使用に関する。個々の特異的バリアントは、糖転移酵素の遺伝的変異、および/または、個々の特異的構造の合成を妨げる、または引き起こすグリコシル化機構の他の要素に基づくものである。
末端構造エピトープ
本願発明者らはこれまでにヒトグライコームのグライコーム組成を明らかにしており、本明細書において本願発明者らは、幹細胞グライコームの、特に特異的結合剤による、分析に有用な構造的末端エピトープを提供する。
変化する特徴的な末端構造の例としては、主要な相同コアGalβエピトープの修飾として生成された競合的(competing)末端エピトープの発現等が挙げられ、該修飾は結合位置Galβ3GlcNAcが異なる同一の単糖のいずれかによるもの;および結合位置Galβ4GlcNAcが異なる同一の単糖のいずれかを有する類似体;または同一の結合であるが4位のエピマー主鎖(epimeric backbone)Galβ3GalNAcによるものである。これらは構造の生物学的認識および機能を修飾する特異的コア構造により提示され得る。他の共通の特徴は、同様なGalβ構造が、タンパク質結合物(O‐およびN‐グリカン)および脂質結合物(糖脂質構造)の両者として発現されることである。α2フコシル化の代わりに、末端GalはNAc基をフコースと同じ2位上に有していてよい。これは相同エピトープGalNAcβ4GlcNAc、およびさらに関連するGalNAcβ3Gal構造を本発明の特徴的な特別な糖脂質上に生ずる。
本発明は、これらが好ましくは間葉系幹細胞である造血幹細胞でない場合の、ヒト幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞または成体幹細胞からの新規の末端二糖および誘導体エピトープに関する。グリコシル化は種、細胞および組織特異的であり、通常、癌細胞からの結果は正常な細胞のものとは顕著に異なっており、そのため、ヒト胚性癌腫から得られた膨大かつ様々なグリコシル化のデータは、ヒト胚幹細胞に実際に関連性のある、または明らかなものではない(ただし偶然の類似を除く)と考えられるべきである。さらに、奇形腫の正確な分化程度は知ることができず、そのため特異的修飾機構下の末端エピトープの比較は知ることができない。グリコシダーゼおよび抗体等の特異的結合分子による末端構造、および該構造の化学的分析。
本発明は、特異的フコシル化/NAc修飾による類似の修飾、および末端二糖エピトープの対応する位置上のシアル化を有する、末端Gal(NAc)β1‐3/4Hex(NAc)構造の群を明らかにする。末端構造は遺伝的に調節されたフコース転移酵素およびシアル酸転移酵素の相同なファミリーにより制御されると考えられる。この制御により、細胞間の伝達のための、および細胞の分析に用いられる他の特異的結合剤による認識のための、特徴的な構造パターンが生成する。主要エピトープを表15に示す。データは各型の細胞の末端エピトープの特徴的パターンを明らかにしており、例えば、hESC‐細胞上の全般的に多いFucα‐構造の発現、例えば1型ラクトサミン(Galβ3GlcNAc)上のFucα2‐構造、同様にβ3結合したコアI Galβ3GlcNAcα、および特定の型の糖脂質上に存在する4型構造等、ならびにα3‐フコシル化構造の発現であり、一方、II型N‐アセチルラクトサミン上のα6‐シアル(α6‐sialic)は、胚様体およびst3胚幹細胞のN‐グリカン上に出現する。例えば末端型ラクトサミンおよびポリラクトサミンは間葉系幹細胞を他の型から区別する。末端Galb‐情報は、好ましくは、情報と組み合わせられる。
本発明は特に、構造の識別のための、モノクローナル抗体等の高特異性結合分子に関する。
該構造は式T1により表すことができる。この式では第1の単糖残基が左側に記され、これはβ‐D‐ガラクトピラノシル構造であって、RがOHの場合はα‐またはβ‐D‐(2‐デオキシ‐2‐アセトアミド)ガラクトピラノシル構造の、RがO‐を有する場合はβ‐D‐(2‐デオキシ‐2‐アセトアミド)グルコピラノシルの、3または4位いずれかに結合する。式T1およびT2において、還元末端の特定されない立体化学はさらに(請求の範囲において)曲線で示される。シアル酸残基はGalの3もしくは6位、またはGlcNAcの6位に結合してよく、フコース残基はGalの2位、またはGlcNAcの3もしくは4位、またはGlcの3位に結合してよい。
本発明は、胚性細胞から明らかになった新規な末端エピトープFucα2Galβ3GalNAcβまたはGalβ3GalNAcβGalα3含有イソグロボ構造として明らかになった末端Fucα2‐を含むガラクトシル‐グロボシド型構造に関する。
式T1:
Figure 2010516240
[式中、
Xは結合位置であり、
、RおよびRはOHまたはグリコシド結合した単糖残基シアル酸、好ましくはNeu5Acα2またはNeu5Gcα2、最も好ましくはNeu5Acα2であり、または
はOHまたはグリコシド結合した単糖残基Fucα1(L‐フコース)またはN‐アセチル(N‐アセトアミド、NCOCH)であり;
はH、OHまたはグリコシド結合した単糖残基Fucα1(L‐フコース)であり、
がHである場合、RはOHであり、RがHでない場合、RはHであり;
R7はN‐アセチルまたはOHであり
Xは細胞由来の天然オリゴ糖主鎖構造、好ましくはN‐グリカン、O‐グリカンもしくは糖脂質構造であり;またはnが0である場合、Xは無であり、
Yはリンカー基(linker group)、好ましくはO‐グリカンおよびO‐結合末端オリゴ糖および糖脂質のための酸素、ならびにN‐グリカンのためのN、またはnが0である場合、無であり;
Zは担体構造、好ましくは細胞により産生された天然担体であり、例えばタンパク質または脂質であって、好ましくは担体上のセラミドもしくは分岐グリカンコア構造、またはHであり;
アーチはガラクトピラノシルからの結合が左側の残基の3位または4位いずれかに対するものであること、およびR4構造が他の4または3位にあることを表し、
nは0または1の整数であり、mは1〜1000、好ましくは1〜100、および最も好ましくは1〜10の整数(担体上のグリカンの数)であり、
ただしR2およびR3のうち1つはOHまたはR3はN‐アセチルであり、
左側の第1の残基が右側の残基の4位に結合する場合、R6はOHであり:
XはGalα4Galβ4Glcではなく、(SSEA‐3または4のコア構造)またはR3はフコシルであり
R7は左側の第1の残基が右側の残基の3位に結合している場合、好ましくはN‐アセチルである。]
好ましい末端β3結合亜群は、左側の第1の残基が主鎖構造Gal(NAc)β3Gal/GlcNAcと3位で結合する場合の状態を示す、式T2により表される。
Figure 2010516240
式T2
[式中、R〜R等の変数はT1に対して記載される通りである]
好ましい末端β4結合亜群は式3により表される。
Figure 2010516240
式T3
[式中、R〜RおよびR7を含む変数はT1に対して記載される通りであり、ただしRはOHまたはグリコシド結合した単糖残基Fucα1(L‐フコース)である]
あるいは、末端構造のエピトープは式T4およびT5で表される
コアGalβエピトープ式T4:
Galβ1‐xHex(NAc)
[xは結合位置3または4であり、
および、HexはGalまたはGlcであり
ただし
pは0または1であり、
xが結合位置3である場合、pは1であり、HexNAcはGlcNAcまたはGalNAcであり、
xが結合位置4である場合、HexはGlcである。
コアGalβ1‐3/4エピトープは、好ましくはGal結合SAα3またはSAα6またはFucα2、およびGlc結合Fucα3またはGlcNAc結合Fucα3/4の群より選択される、1または2個の構造SAαまたはFucαにより、任意に水酸基に置換される。]
式T5
[Mα]Galβ1‐x[Nα]Hex(NAc)
[式中、m、nおよびpは独立に0または1の整数であり、
HexはGalまたはGlcであり、
Xは結合位置であり
MおよびNは、単糖残基であって
独立に無(前記位置の遊離水酸基)
ならびに/または
Galの3位もしくは/およびHexNAcの6位に結合したシアル酸であるSA
ならびに/または
Galの2位;および/もしくは、Galが他の位置(4または3)に結合し、HexNAcがGlcNAcである場合、HexNAcの3もしくは4位;または、Galが他の位置(3)に結合する場合、Glcの3位;に結合したFuc(L‐フコース)残基
であり、
ただし、mおよびnの合計は2であり
好ましくはmおよびnは独立に0または1である。]
正確な構造の詳細は、細胞の分析および/または操作のために設計された特異的結合分子による最適な認識にとって重要である。末端主要Galβエピトープは同一の修飾単糖NeuX(Xはシアル酸の5位修飾AcもしくはGc)またはFucにより、同一の結合型アルファで修飾される(両構造の同一の水酸基位置の修飾。
全てのエピトープの末端Galβ上のNeuXα3、Fucα2、および
Galβ4GlcNAcの末端Galβを修飾するNeuXα6、または結合が6競合である場合はHexNAc
またはGlcNAcに残存する遊離アキシャル位(axial)第1級水酸基を修飾するFucα(GalNAc残基に遊離アキシャル位水酸基が存在しない)。
好ましい構造は、T2と同様に、好ましいGalβ1‐3構造に分類することができ、
式T6:
[Mα]mGalβ1‐3[Nα]HexNAc、
[式中、変数はT5に対して記載される通りである。]
好ましい構造は、T4と同様に、好ましいGalβ1‐4構造に分類することができ、
式T7:
[Mα]Galβ1‐4[Nα]Glc(NAc)
[式中、変数はT5に対して記載される通りである。]
これらは好ましいII型N‐アセチルラクトサミン構造および関連するラクトシル誘導体であり、好ましい一態様において、pは1であり、構造は2型N‐アセチルラクトサミンのみを含む。本発明はこれらが幹細胞、好ましくは間葉系幹細胞、または胚性幹細胞、またはその分化したバリアント(組織型特異的に分化した間葉系幹細胞または胚幹細胞の種々の段階)の特定の亜型の識別に非常に有用であることを明らかにした。各種フコシルおよび またはシアル酸修飾が幹細胞型に特徴的なパターンを生成したことは注目に値する。
好ましいI型およびII型N‐アセチルラクトサミン構造
好ましい構造は、T4と同様に、オリゴ糖コア配列Galβ1‐3/4GlcNAc構造を有する好ましい1(I)型および2(II)型N‐アセチルラクトサミン構造に分類することができ、
式T8:
[Mα]Galβ1‐3/4[Nα]GIcNAc、
[式中、変数はT5に対して記載される通りである。]
好ましい構造は、T8と同様に、好ましいGalβ1‐3構造に分類することができ、
式T9:
[Mα]Galβ1‐3[Nα]GlcNAc
[式中、変数はT5に対して記載される通りである。]
これらは好ましいI型N‐アセチルラクトサミン構造である。本発明は、これらが間葉系細胞、好ましくは幹細胞、または胚性幹細胞、またはその分化したバリアント(組織型特異的に分化した間葉系幹細胞または胚幹細胞の種々の段階)の特定の亜型の識別に非常に有用であることを明らかにした。各種フコシルおよび またはシアル酸修飾が幹細胞型に特徴的なパターンを生成したことは注目に値する。
好ましい構造は、T8と同様に、好ましいGalβ1‐4GlcNAcコア配列含有構造に分類することができ、
式T10:
[Mα]Galβ1‐4[Nα]GlcNAc
[式中、変数はT5に対して記載される通りである。]
これらは好ましいII型N‐アセチルラクトサミン構造である。本発明は、これらが幹細胞、好ましくは間葉系幹細胞、または胚性幹細胞、またはその分化したバリアント(組織型特異的に分化した間葉系幹細胞または胚幹細胞の種々の段階)の特定の亜型の識別に非常に有用であることを明らかにした。
各種フコシルおよび またはシアル酸修飾N‐アセチルラクトサミン構造が幹細胞型に特に特徴的なパターンを生成することは注目に値する。本発明はさらに、少なくとも1個のフコシル化またはシアル化バリアント、およびより好ましくは少なくとも2個のフコシル化バリアントまたは2個のシアル化バリアントを含む、少なくとも2個の異なるI型およびII型アセチルラクトサミンを認識する結合試薬の組み合わせの使用に関する。
末端Fucα2/3/4構造を有する好ましい構造
本発明はさらに、各種幹細胞、特に胚および間葉系幹細胞およびその分化したバリアントの:
a)I型およびII型アセチルラクトサミンおよびそれらのフコシル化バリアント、ならびに好ましい一態様において
b)非シアル化フコシル化、ならびにより好ましくは
c)好ましくはFucα2末端および/またはFucα3/4分岐構造を有する、フコシル化I型およびII型N‐アセチルラクトサミン構造、ならびにさらに好ましくは
d)好ましくはFucα2末端を有する、フコシル化I型およびII型N‐アセチルラクトサミン構造
を認識する、本発明の方法のための結合試薬の組み合わせの使用に関する。
好ましいFucα2構造の亜群としては、モノフコシル化H型およびHII型構造、ならびにジフコシル化Lewis bおよびLewis y構造等が挙げられる。
好ましいFucα3/4構造の亜群としては、モノフコシル化Lewis aおよびLewis x構造、シアル化シアリル‐Lewis aおよびシアリル‐Lewis x構造、ならびにジフコシル化Lewis bおよびLewis y構造等が挙げられる。
Fucα3構造の好ましいII型N‐アセチルラクトサミン亜群としては、モノフコシル化Lewis x構造、ならびにシアリル‐Lewis x構造およびLewis y構造等が挙げられる。
Fucα4構造の好ましいI型N‐アセチルラクトサミン亜群としては、モノフコシル化Lewis a シアリル‐Lewis aおよびジフコシル化Lewis b構造等が挙げられる。
本発明はさらに、好ましくは、モノフコシル化または少なくとも2個のジフコシル化、または少なくとも1個のモノフコシル化および1個のジフコシル化構造の群から選択される、少なくとも2個の異なってフコシル化された1型および または および2型N‐アセチルラクトサミン構造の使用に関する。
本発明はさらに、フコシル化I型およびII型N‐アセチルラクトサミン構造を認識する結合試薬と;Fucα2/3/4含有構造を有する他の末端構造、好ましくはFucα2末端構造であって、好ましくはFucα2Galβ3GalNAc末端、より好ましくはFucα2Galβ3GalNAcα/βを有する構造、を認識する結合剤、および特に好ましい態様において、好ましくはグロボ‐またはイソグロボ型構造の末端構造中のFucα2Galβ3GalNAcβを認識する抗体と;の組み合わせの使用に関する。
好ましいグロボおよびガングリオコア型構造
本発明はさらに、式:
式T11
[M]Galβ1‐x[Nα]Hex(NAc)
[式中、m、nおよびpは独立に0または1の整数であり
HexはGalまたはGlcであり、Xは結合位置であり;
MおよびNは単糖残基であって
独立に無(前記位置の遊離水酸基)
ならびに/または
Galの3位もしくは/およびHexNAcの6位に結合したシアル酸であるSAα
Galの3もしくは4位に結合したGalα、または
Galの4位に結合するGalNAcβ、ならびに/または
Galの2位;および/もしくは、Galが他の位置(4または3)に結合し、HexNAcがGlcNAcである場合、HexNAcの3もしくは4位;または、Galが他の位置(3)に結合する場合、Glcの3位;に結合したFuc(L‐フコース)残基
であり、
ただし、mおよびnの合計は2であり
好ましくはmおよびnは独立に0または1であり、ならびに
MがGalαである場合、Galβ1に結合するシアル酸は存在せず、
ならびに
nは0であり、xは好ましくは4であり、
MがGalNAcβである場合、Galβ1にα6結合するシアル酸は存在せず、nは0であり、xは4である]
の、グロボおよびガングリオ型グリカンコア構造を有する一般式に関する。
本発明はさらに、式
式T12
[M][SAα3]nGalβ1‐4Glc(NAc)
[式中、nおよびpは独立に0または1の整数であり、
MはGalの3もしくは4位に結合したGalα、またはGalの4位に結合したGalNAcβであり、および/またはSAαはGalの3位に結合したシアル酸分岐であり
MがGalαである場合、Galβ1に結合するシアル酸は存在しない(nは0である)]
の、グロボおよびガングリオ型グリカンコア構造を有する一般式に関する。
本発明はさらに、式
式T13
[M][SAα]Galβ1‐4Glc
[式中、nおよびpは独立に0または1の整数であり、
MはGalの3もしくは4位に結合したGalα、または
Galの4位に結合したGalNAcβ
および/または
Galの3位に結合したシアル酸であるSAαであり
MがGalαである場合、Galβ1に結合するシアル酸は存在しない(nは0である)]
の、グロボおよびガングリオ型グリカンコア構造を有する一般式に関する。
本発明はさらに、式
式T14
Galα3/4Galβ1‐4Glc
の、グロボ型グリカンコア構造を有する一般式に関する。
好ましいグロボ型構造としては、Galα3/4Galβ1‐4Glc、GalNAcβ3Galα3/4Galβ4Glc、Galα4Galβ4Glc(グロボトリオース、Gb3)、Galα3Galβ4Glc(イソグロボトリオース)、GalNAcβ3Galα4Galβ4Glc(グロボテトラオース、Gb4(またはGl4))、およびFucα2Galβ3GalNAcβ3Galα3/4Galβ4Glc等が挙げられる。または、前記結合剤が未分化の胚性間葉系幹細胞に関して使用されない、もしくは前記結合剤が本発明の他の好ましい結合剤と一緒に使用される場合、好ましい結合剤標的に対する他のグロボ型結合剤として、好ましくはさらにGalβ3GalNAcβ3Galα4Galβ4Glc(SSEA‐3抗原)および/またはNeuAcα3Galβ3GalNAcβ3Galα4Galβ4Glc(SSEA‐4抗原)またはその末端の非還元末端二もしくは三糖エピトープ等が挙げられる。
好ましいグロボテトラオシルセラミド(globotetraosylceramide)抗体はGalNAcβ3Galα4Galβ4Glcの非還元末端伸長バリアントを認識しない。実施例中の抗体はこのような特異性を有する。
本発明はさらに、好ましくは、糖脂質に結合しない場合のNeuAcα3Galβ3GalNAc、NeuAcα3Galβ3GalNAcβ、NeuAcα3Galβ3GalNAcβ3Galα4Gal;ならびに新規フコシル化標的構造:Fucα2Galβ3GalNAcβ3Galα3/4Gal、Fucα2Galβ3GalNAcβ3Galα、Fucα2Galβ3GalNAcβ3Gal、Fucα2Galβ3GalNAcβ3、およびFucα2Galβ3GaINAc;等の、より長いオリゴ糖配列の特異的エピトープのための結合剤に関する。
本発明はさらに、式
式T15
[GalNAcβ4][SAα]Galβ1‐4Glc
[式中、nおよびpは独立に0または1の整数であり
Galの4位に結合したGalNAcβ、および/またはGalの3位に結合したシアル酸分岐であるSAα]
の、グロボおよびガングリオ型グリカンコア構造を有する一般式に関する。
好ましいガングリオ型構造としては、GalNAcβ4Galβ1‐4Glc、GalNAcβ4[SAα3]Galβ1‐4Glc、およびGalβ3GalNAcβ4[SAα3]Galβ1‐4Glc等が挙げられる。好ましい結合剤標的構造としては、さらに、好ましいオリゴ糖配列の糖脂質および可能な糖タンパク質複合体等が挙げられる。好ましい結合剤は好ましくは少なくとも二および三糖エピトープを特異的に認識する。
GalNAcα構造
本発明はさらに、式T16:
[SAα6]GalNAcα[Ser/Thr]‐[Peptide]
[式中、m、nおよびpは独立に0または1の整数であり、
式中、SAは好ましくはNeuAcであるシアル酸であり、Ser/Thrはセリンまたはスレオニン残基を表す]
のペプチド/タンパク質結合GalNAcα構造の識別に関する。Peptideはmまたはnのいずれかが1である場合の、結合残基に近いペプチド配列の部分を表す。
Ser/Thrおよび/またはPeptideは、任意に、少なくとも部分的に、結合剤による結合のための認識に必要である。Peptideが特異性に含まれる場合、抗体はタンパク質構造の一部を伴う高い特異性を有すると考えられる。シアリル‐Tnの好ましい抗原配列:SAα6GalNAcα、SAα6GalNAcαSer/Thr、およびSAα6GalNAcαSer/Thr‐Peptide、ならびにTn‐抗原:GalNAcαSer/Thr、およびGalNAcαSer/Thr‐Peptide。本発明はさらに、GalNAcα構造の組み合わせ、ならびに少なくとも1個のGalNAcα構造と他の好ましい構造との組み合わせの使用に関する。
好ましい結合基の組み合わせ
本発明は特に、少なくとも、a)フコシル化、好ましくはα2/3/4フコシル化構造、および/またはb)グロボ型構造、および/またはc)GalNAcα型構造の組み合わせにおける使用に関する。異なる生合成を伴い、そのため幹細胞集団に対して特徴的な結合プロファイルを有する構造を認識する結合剤の組み合わせの使用が考えられる。より好ましくは、フコシル化構造およびグロボ構造、またはフコシル化構造およびGalNAcα型構造のための少なくとも1種の結合剤が用いられ、最も好ましくはフコシル化構造およびグロボ構造のためのものが用いられる。
フコシル化および非修飾構造
本発明はさらに、コア二糖エピトープ構造であって該構造がシアル酸により修飾されていないものに関する(式T1〜T3のR基または式T4〜T7のMもしくはNがいずれもシアル酸ではない。
本発明は好ましい一態様において、少なくとも1個の本発明のフコース残基を有する構造に関する。これらの構造は新規特異的フコシル化末端エピトープであり、本発明の幹細胞の分析に有用である。好ましくは天然幹細胞が分析される。
好ましいフコシル化構造としては、(SAα3)0または1Galβ3/4(Fucα4/3)GlcNAc、例えばLewis xおよびそのシアル化バリアント等の、ヒト幹細胞の新規α3/4フコシル化マーカーなどが挙げられる。
末端Fucα1‐2を有する構造の中で、本発明はFucα2Galβ3GalNAcα/βおよびFucα2Galβ3(Fucα4)0または1GlcNAcβを有する特に有用な新規マーカー構造を明らかにし、これらは胚幹細胞の研究に有用であることが見出された。この群の中で特に好ましい抗体/結合剤群はFucα2Galβ3GlcNAcβに特異的な抗体であり、高い幹細胞特異性のために好ましい。他の好ましい構造群としては、特異的構造群を形成することが明らかな糖脂質を有するFucα2Gal等が挙げられ、特に興味深い構造は、初期に推定された幹細胞マーカーに対する興味深い生合成という観点を持つことが好ましい、グロボ‐H型構造および末端Fucα2Galβ3GalNAcβを有する糖脂である。
Fucα2Galβ4GlcNAcβを認識する抗体の中で、結合における実質的な相違は担体構造に基づくものであるらしいことが明らかになった。本発明は特に、この種類の構造を認識し、抗体の特異性がフコースを有する実施例13に示す胚幹細胞に結合するものと類似している抗体に関するものである。本発明は好ましくは、末端エピトープ表15中に共通構造型として示されるN‐グリカン上のFucα2Galβ4GlcNAcβを認識する抗体に関する。別の一態様において、非結合クローンの抗体はフィーダー細胞の認識を対象とする。
好ましい非修飾構造としては、Galβ4Glc、Galβ3GlcNAc、Galβ3GalNAc、Galβ4GlcNAc、Galβ3GlcNAcβ、Galβ3GalNAcβ/α、およびGalβ4GlcNAcβ等が挙げられる。これらは各種幹細胞に特徴的な好ましい新規コアマーカーである。構造Galβ3GlcNAcは、hESC細胞内で観察可能である新規マーカーとして特に好ましい。好ましくは該構造を本発明の糖脂質コア構造が有しており、またはそれはO‐グリカン上に存在する。非修飾マーカーは、細胞状態の分析のための少なくとも1種のフコシル化または/およびシアル化構造との組み合わせにおける使用において好ましい。
さらなる好ましい非修飾構造としては、GalNAcβ構造等が挙げられ、末端LacdiNAc、GalNAcβ4GlcNAc、好ましくはN‐グリカン上、およびグロボ系列糖脂質内にグロボテトラオース構造の末端として存在するGalNAcβ3GalGalNAcβ3Gal等が挙げられる
これらのうち、Gal(NAc)β3含有Galβ3GlcNAc、Galβ3GalNAc、Galβ3GlcNAcβ、Galβ3GalNAcβ/α、およびGalNAcβ3GalGalNAcβ3Galの特徴的亜群、ならびにGal(NAc)β4含有Galβ4Glc、Galβ4GlcNAc、およびGalβ4GlcNAcの特徴的亜群が別々に好ましい。
好ましいシアル化構造
好ましいシアル化構造としては、特徴的SAα3Galβ構造であるSAα3Galβ4Glc、SAα3Galβ3GlcNAc、SAα3Galβ3GalNAc、SAα3Galβ4GlcNAc、SAα3Galβ3GlcNAcβ、SAα3Galβ3GalNAcβ/α、およびSAα3Galβ4GlcNAcβ;ならびに生合成的に部分的に競合するSAα6Galβ構造であるSAα6Galβ4Glc、SAα6Galβ4Glcβ;SAα6Galβ4GlcNAc、およびSAα6Galβ4GlcNAcβ;ならびにジシアロ構造であるSAα3Galβ3(SAα6)GalNAcβ/α等が挙げられる。
本発明は好ましくは、Gal(NAc)β3含有SAα3Galβ3GlcNAc、SAα3Galβ3GalNAc、SAα3Galβ4GlcNAc、SAα3Galβ3GlcNAcβ、SAα3Galβ3GalNAcβ/α、およびSAα3Galβ3(SAα6)GalNAcβ/αの特異的亜群、ならびにGal(NAc)β4含有シアル化構造に関する。SAα3Galβ4Glc、およびSAα3Galβ4GlcNAcβ;およびSAα6Galβ4Glc、SAα6Galβ4Glcβ;SAα6Galβ4GlcNAcおよびSAα6Galβ4GlcNAcβ
これらは各種幹細胞に対して特徴的な好ましい新規調節マーカー(regulated marker)である。
末端ManαManα構造との併用
末端非修飾または修飾エピトープは好ましい態様において少なくとも1種のManαMan構造と併用される。これは、該構造が他のエピトープとは異なるN‐グリカンまたはグリカン亜群中に存在するため好ましい。
造血幹細胞の好ましい構造群
本発明は、特に胚性および成体幹細胞に対する新規マーカーおよび標的構造ならびにこれらへの結合剤を提供し、この場合、これらの細胞は造血幹細胞ではない。造血CD34+細胞から、NeuNAcα3Galβ4GlcNAc(Magnani J. US6362010)等の末端シアル化2型N‐アセチルラクトサミン等の特定の末端構造が提案されており、Slex型構造、NeuNAcα3Galβ4(Fucα3)GlcNAcの低発現が示唆されている(Xia L et al Blood (2004) 104 (10) 3091‐6)。本発明は、特定の特徴的なO‐グリカンおよびN‐グリカンとは別に、NeuNAcα3Galβ4GlcNAc、非ポリラクトサミンバリアントにも関する。本発明は、さらに、特に構造がNeuNAcα3Galβ4(Fucα3)0‐1GlcNAcを含まない場合に、本発明によるCD133+細胞に対する新規マーカー、および新規造血幹細胞マーカーを提供する。好ましくは、造血幹細胞構造は、本発明による非シアル化、フコシル化構造、Galβ1‐3‐構造であり、さらにより好ましくは、1型N‐アセチルラクトサミン構造Galβ3GlcNAc、または、これとは別に好ましいGalβ3GalNAcを主体とする構造である。
末端エピトープのコア構造
前記標的エピトープ構造は、特異的N‐グリカン、O‐グリカン上で、または糖脂質コア構造上で、最も効果的に認識されると考えられる。
伸長エピトープ ‐ エピトープの還元末端上の隣接する単糖/構造
本発明は特に、最適化された結合剤およびその生産に関するものであり、該結合剤の結合エピトープは隣接する結合構造、および、より好ましくは標的エピトープの還元側上に隣接する構造(O‐グリカンについては単糖もしくはアミノ酸、または糖脂質についてはセラミド)の少なくとも一部を含む。本発明は実施例および表15における要約に示すような末端エピトープのためのコア構造を明らかにした。
より長い結合エピトープを有する抗体はより高い特異性を有しており、そのため所望の細胞または細胞由来成分をより効果的に認識すると考えられる。好ましい一態様において、伸長したエピトープに対する前記抗体が胚性幹細胞の効果的な分析のために選択される。
本発明は特に、抗体の選択の方法、および任意に、さらに、本発明の伸長エピトープを用いた、新規抗体または他の結合剤の精製の方法に関する。好ましい選択はグリカン構造(特異的配列を有する、合成、または分離された天然のグリカン)を血清または抗体またはファージディスプレイライブラリー等の抗体ライブラリーに接触させることにより行われる。これらの方法に関するデータは当業者に周知であり、例えばpubmed‐医学文献データベース(www.ncbi.nlm.nih.gov/entrez)、または特許、例えばespacenet(fi.espacenet.com)を検索することによりインターネットから入手できる。特異的抗体は、実施例および表15の要約に示すようなグリカン型特異的末端構造の最適化された認識の使用に対して特に好ましい。
本発明の実施例に示す抗体の一部は、伸長エピトープに対する特異性を有するとさらに考えられる。本願発明者らは、例えばLewis xエピトープはN‐グリカン上において、特定の末端Lewis x特異的抗体により認識され得るが、ポリ‐N‐アセチルラクトサミンまたはネオラクト系列糖脂質上に存在するLewis xβ1‐3Galを認識する抗体によってはそれほど効果的には、あるいは全く、認識されないことを発見した。
N‐グリカン
本発明は特に、二分岐N‐グリカン上の末端N‐グリカンエピトープの識別に関する。N‐グリカンのための好ましい非還元末端単糖エピトープとしてはβ2Manおよびその還元末端がさらに伸長したバリアント、β2Man、β2Manα、β2Manα3、およびβ2Manα6等が挙げられる。
本発明は特に、Ajit Varkiほか Glycobiology (2006) Glycobiology society meeting 2006 Los Angelesの要旨に本発明によるこの種類の抗体と関連しない(放棄される)神経細胞に関与する可能性とともに記載されたN‐グリカンLewis x特異的抗体による、N‐グリカン上のlewis xの識別に関する。
発明はさらに、Ozawa H et al (1997) Arch Biochem Biophys 342, 48‐57に記載される、2型N‐アセチルラクトサミンβ2Manを認識する、二分岐N‐グリカンを対象とする抗体の特異性を有する抗体に関する。
O‐グリカン、還元末端伸長エピトープ
本発明は特に、末端コアIエピトープとしての、ならびにコアIおよびコアII O‐グリカンの伸長バリアントとしての、末端O‐グリカンエピトープの識別に関する。O‐グリカンのための好ましい非還元末端単糖エピトープとしては:
a)αSer/Thr‐[Peptide]0‐1に結合したコアIエピトープ、
[式中、Peptideは存在するまたは存在しないペプチドを表す。]本発明は好ましくは
b)好ましくはコアII型エピトープ
R1β6[R2β3Galβ3]GalNAcαSer/Thr
[式中、nは=または1であって、該構造の有りうる分岐を表し、R1およびR2は末端エピトープの好ましい位置であり、R1がより好ましい]
c)伸長コアIエピトープ
[β3Galおよびその還元末端がさらに伸長したバリアントβ3Galβ3GalNAcα、β3Galβ3GalNAcαSer/Thr]
等が挙げられる。
O‐グリカンコアI特異的およびガングリオ/グロボ型コア還元末端エピトープが(Saito S et al. J Biol Chem (1994) 269、5644‐52)において記載されており、本発明は好ましくは本発明のエピトープの同様な特異的認識に関する。
O‐グリカンコアIIシアリル‐Lewis x特異的抗体がWalcheck B et al. Blood (2002) 99, 4063‐69に記載されている。
O‐グリカンの識別のためのペプチド特異性を有する抗体としては、さらにGalNAcアルファ(Tn)またはGalb3GalNAcアルファ(T/TF)構造を認識するムチン特異的抗体(Hanisch F‐G et al (1995) cancer Res. 55、4036‐40; Karsten U et al. Glycobiology (2004) 14, 681‐92; 等が挙げられる。
糖脂質コア構造
本発明はさらに、脂質構造上の構造の識別に関する。好ましい脂質コア構造としては、
a)Galβ4Glcに対するβCer(セラミド)およびそのフコシルまたはシアリル誘導体
b)ラクトシルCer‐糖脂質上のI型およびII型N‐アセチルラクトサミンに対するβ3/6Galであって、好ましい伸長バリアントとしてβ3/6[Rβ6/3]Galβ、β3/6[Rβ6/3]Galβ4およびβ3/6[Rβ6/3]Galβ4Glcが挙げられ、これはさらに、部分的により大きなエピトープとして認識され得る他のラクトサミン残基により分岐していてよく、nは0または1であって分岐を表し、R1およびR2は末端エピトープの好ましい位置である。好ましい直鎖(非分岐)共通構造としてはβ3Gal、β3Galβ、β3Galβ4およびβ3Galβ4Glc等が挙げられる
c)グロボ系列エピトープに対するα3/4Gal、および伸長バリアントα3/4Galβ、α3/4Galβ4Glcであって、好ましいグロボエピトープは伸長エピトープα4Gal、α4Galβ、α4Galβ4Glcを有し、そして
好ましいイソグロボエピトープは伸長エピトープα3Gal、α3Galβ、α3Galβ4Glcを有する
d)ガングリオ系列エピトープ含有に対するβ4Galであって、好ましい伸長バリアントとしてβ4Galβ、およびβ4Galβ4Glcが挙げられる
等が挙げられる。
O‐グリカンコア特異的およびガングリオ/グロボ型コア還元末端エピトープが(Saito S et al. J Biol Chem (1994) 269、5644‐52)に記載されており、本発明は好ましくは本発明のエピトープの同様な特異的認識に関する。
ポリ‐N‐アセチルラクトサミン
O‐グリカン、N‐グリカン、または糖脂質上のポリ‐N‐アセチルラクトサミン主鎖構造はI型(ラクト系列)およびII型(ネオラクト)糖脂質上のラクトシル(cer)コア構造に類似した特徴的構造を有するが、末端エピトープは他のI型またはII型N‐アセチルラクトサミンに結合しており、これは分岐構造からのものでありうる。好ましい伸長エピトープとしては:
I型およびII型N‐アセチルラクトサミンエピトープに対するβ3/6Gal等が挙げられ、好ましい伸長バリアントとしてR1β3/6[R2β6/3]Galβ、R1β3/6[R2β6/3]Galβ3/4およびR1β3/6[R2β6/3]Galβ3/4GlcNAc等が挙げられ、これはさらに、部分的により大きなエピトープとして認識され得る他のラクトサミン残基により分岐していてよく、nは0または1であって分岐を表し、R1およびR2は末端エピトープの好ましい位置である。好ましい直鎖(非分岐)共通構造としてはβ3Gal、β3Galβ、β3Galβ4およびβ3Galβ4GlcNAc等が挙げられる
数多くの抗体が直鎖(i‐抗原)および分岐ポリ‐N‐アセチルラクトサミン(I‐抗原)に対して知られており、本発明はさらに、I‐抗原の識別のためのレクチンPWAの使用に関する。本願発明者らは、ポリ‐N‐アセチルラクトサミンが特定の型のヒト幹細胞に対して特徴的な構造であることを明らかにした。他の好ましい結合試薬、酵素エンド‐ベータ‐ガラクトシダーゼを用いて幹細胞の糖脂質上および糖タンパク質上のポリ‐N‐アセチルラクトサミンの分析を行った。この酵素はさらに、特定の型の幹細胞上の、本発明のフコシル化および/またはシアル化等の特異的末端修飾を有する直鎖および分岐鎖両者のポリ‐N‐アセチルラクトサミンの特徴的発現を明らかにした。
伸長コアエピトープの組み合わせ
同一の末端エピトープが主要な担体型であるO‐グリカン、N‐グリカンおよび糖脂質の2種または3種上に存在する標的構造に結合する抗体に認識される場合、より強い標識が得られうると考えられる。さらに、このような使用に関して、末端エピトープは、有りうる混入細胞または混入細胞材料上に存在するエピトープと比べて十分に特異的である必要があると考えられる。さらに、高度に末端特異的な(terminally specific)抗体が存在し、これはいくつかの伸長構造上への結合を可能にすると考えられる。
本発明は、幹細胞に関して有用なそれぞれの伸長結合剤型(elongated binder type)を明らかにした。従って本発明は、1または複数種の本発明の伸長構造上の末端構造を認識する結合剤に関する。
単糖伸長構造の好ましい群
本発明は伸長特異性(elongated specificity)を有する結合剤の使用に関するものであり、該結合剤は式E1
AxHex(NAc)
[式中、Aはアノマー構造アルファまたはベータであり、Xは結合位置2、3、4または6であり
ならびに、Hexはヘキソピラノシル残基Gal、またはManであり、nは0または1の整数であり、nが1である場合、AxHexNAcはβ4GalNAcまたはβ6GalNAcであり、HexがManである場合、AxHexはβ2Manであり、および、HexがGalである場合、AxHexはβ3Galまたはβ6Galである]
の少なくとも1種の還元末端伸長単糖エピトープを認識するか、またはそこに結合することができる。
単糖伸長構造以外に、αSer/Thrが還元末端GalNAc含有O‐グリカンのための好ましい還元末端伸長構造であり、βCerがラクトシル含有糖脂質エピトープのために好ましい。式の伸長末端エピトープは、以下に示す式の式T1末端の還元末端にE1を付加することで得られる。
伸長構造の好ましい亜群としては、i)O‐グリカン、ポリラクトサミンおよび糖脂質コア上に存在する類似する構造エピトープ:β3/6Galまたはβ6GalNAc;好ましいさらなる亜群は、ia)β6GalNAc/β6Gal、およびib)β3Gal;ii)N‐グリカン型エピトープβ2Man;ならびにiii)グロボ系列エピトープα3Galまたはα4Gal等が挙げられる。前記の群は、群内の有り得る交差反応における構造的類似性のために好ましく、背景となる材料が伸長構造型を欠くように制御されている場合に標識強度を高めるために用いることができる。
本発明は、ヒト血液関連、好ましくは造血幹細胞調製物の状態を評価する方法に関するものであり、伸長グリカン構造、または、少なくとも2つの、前記調製物中のグリカン構造の群の存在を検出する工程を含み、ここで前記グリカン構造またはグリカン構造の群は、幹細胞の状態の分析および/または幹細胞の操作のための式T1
Figure 2010516240
[式中、Xは結合位置であり
、R、およびRはOHもしくはグリコシド結合した単糖残基シアル酸、好ましくはNeu5Acα2もしくはNeu5Gc α2、最も好ましくはNeu5Acα2であり、または
はOHもしくはグリコシド結合した単糖残基Fucα1(L‐フコース)またはN‐アセチル(N‐アセトアミド、NCOCH)であり;
はH、OHまたはグリコシド結合した単糖残基Fucα1(L‐フコース)であり、
がHである場合、RはOHであり、RがHではない場合、RはHであり;
R7はN‐アセチルまたはOHであり
Xは細胞由来の天然オリゴ糖主鎖構造、好ましくはN‐グリカン、O‐グリカンもしくは糖脂質構造であり;またはnが0である場合、Xは無であり、
Yはリンカー基、好ましくはO‐グリカンおよびO‐結合末端オリゴ糖および糖脂質のための酸素、ならびにN‐グリカンのためのN、またはnが0である場合、無であり;
Zは担体構造、好ましくは細胞により産生された天然担体であり、例えばタンパク質または脂質であって、好ましくは担体上のセラミドもしくは分岐グリカンコア構造、またはHであり;
アーチはガラクトピラノシルからの結合が左側の残基の3位または4位いずれかに対するものであること、およびR4構造が他の4または3位にあることを表し;
nは0または1の整数であり、mは1〜1000、好ましくは1〜100、および最も好ましくは1〜10の整数(担体上のグリカンの数)であり、
R2およびR3がOHまたはR3がN‐アセチルである場合、
左側の第1の残基が右側の残基の4位に結合する場合、R6はOHであり:
XはGalα4Galβ4Glcではなく、(SSEA‐3または4のコア構造)またはR3はフコシルである]
であり、ここで前記細胞調製物は胚性幹細胞調製物である。
ならびに、グリカン構造が伸長構造である場合、ここで、前記結合剤は該構造およびさらに少なくとも1つの還元末端伸長エピトープ、好ましくは式E1:
AxHex(NAc)、[式中、Aはアノマー構造アルファまたはベータであり、Xは結合位置2、3または6であり;およびHexはヘキソピラノシル残基Gal、またはManであり、nは0または1の整数であり、
ただし
nが1である場合、AxHexNAcはβ4GalNAcまたはβ6GalNAcであり、
HexがManである場合、AxHexはβ2Manであり、および、
HexがGalである場合、AxHexはβ3Galまたはβ6Galまたはα3Galまたはα4Galである];
の単糖エピトープ(Xおよび/またはYを置換)に結合し、
または
前記結合剤エピトープはさらに還元末端伸長エピトープ
還元末端GalNAcα含有構造に結合するSer/Thrもしくは
Galβ4Glc含有構造に結合するβCerに結合し、および前記グリカン構造は関連するまたは混入した細胞集団から決定される幹細胞集団である。
本発明は幹細胞の状態の分析のための、および/または幹細胞の操作のための方法に関するものであり、幹細胞の試料から伸長グリカン構造または少なくとも2つのグリカン構造を検出する工程を含み、ここで前記グリカン構造は:末端ラクトサミン構造
(R1)n1Gal(NAc)n3β3/4(Fucα4/3)n2GlcNAcβR[式中、R1はGalβ4GlcNAcに結合するFucα2、またはSAα3、またはSAα6であり、および
RはN‐グリカン、O‐グリカンおよび/または糖脂質の還元末端コア構造である];a、
または、構造
(SAα3)n1Galβ3(SAα6)n2GalNAc;[式中
n1、n2およびn3は0または1であって構造の存在または非存在を表し、
式中、SA
はシアル酸である];または分岐エピトープ
Galβ3(GlcNAcβ6)GalNAcまたは
Galβ4(R)GlcNAcβ6(RGalβ3)GalNAc、
[式中、RおよびRは独立に無またはSAα3であり;およびRは独立に無またはFucα3である];または
N‐結合グリカンのコア構造中のManβ4GlcNAc構造;またはエピトープGalβ4Glc、
または末端マンノース
または末端SAα3構造α3/6Gal[式中、SAはシアル酸であり、ただし
i)幹細胞は癌細胞株の細胞ではなく、そして
ii)細胞は造血CD34細胞ではなく、構造がN‐アセチルラクトサミンを有する場合、それは特異的伸長構造であってフコシル化され、またはSAα3Galβ4GlcNAcβ3Gal構造ではない]
からなる群より選択される。
本発明は、式T8Eベータ
[Mα]Galβ1‐3/4[Nα]GlcNAcβxHex(NAc)
[式中
式中、xは結合位置2、3、または6であり
式中、m、nおよびpは独立に0または1の整数であり
MおよびNは単糖残基であって
i)独立に無(その位置における遊離水酸基)
および/または
ii)Galの3位または/およびGlcNAcの6位に結合するシアル酸であるSA
および/または
iii)Galの2位および/またはGlcNAcの3もしくは4位に結合するFuc(L‐フコース)残基(GalがGlcNAcの他の位置(4または3)に結合する場合)
であり、
GalがGlcNAcの他の位置(4または3)に結合する場合、
ただしm、nおよびpは独立に0または1であり。
Hexはヘキソピラノシル残基GalまたはManであり、
ただしpが1の場合、βxHexNAcはβ6GalNAcであり、
pが0の場合
HexはManであり、かつβxHexはβ2Manであり、またはHexはGalであり、かつβxHexはβ3Galもしくはβ6Galである]
の構造のII型ラクトサミンを基盤とする構造を識別する方法および結合物質に関する。
本発明は式T10E
[Mα]Galβ1‐4[Nα]GlcNAcβxHex(NAc)
[ただしpが1である場合、βxHexNAcはβ6GalNAcであり、
pが0である場合、HexはManであり、かつβxHexはβ2Manであり、または、HexはGalであり、かつβxHexはβ6Galである]
のII型ラクトサミンを基盤とする構造を識別する方法および結合物質に関する。
本発明は式T10EMan:
[Mα]Galβ1‐4[Nα]GlcNAcβ2Man、
[式中、変数は請求項2の式T8Eベータに対して記載されるものと同様である]
のII型ラクトサミンを基盤とする構造を識別する方法および結合物質に関する。
本発明の一態様は、ヒト血液関連、好ましくは造血、幹細胞調製物および/または混入細胞集団の状態を評価する方法に関するものであり、伸長グリカン構造、または、少なくとも2つの、前記調製物中のグリカン構造の群の存在を検出する工程を含み、ここで前記グリカン構造またはグリカンTnおよびシアリル‐Tn構造の群は式MUC
(R)GalNAcα(Ser/Thr)
[式中、nおよびmは独立に0または1であり、RはSAα6またはGalβ3であり、SAはシアル酸、好ましくはNeu5Acであり、RがGalβ3の場合、nは1である]、好ましくはTn抗原:
(SAα6)GalNAcα(Ser/Thr)
[式中、nおよびmは独立に0または1であり、SAはシアル酸、好ましくはNeu5Acである]、
またはTF抗原
Galβ3GalNAcα(Ser/Thr)
によるものである。
有用な結合剤特異性を有するレクチンおよび伸長抗体エピトープは、(Debaray and Montreuil (1991) Adv. Lectin Res 4、51‐96; “The molecular immunology of complex carbohydrates” Adv Exp Med Biol (2001) 491 (ed Albert M Wu) Kluwer Academic/Plenum publishers、New York; “Lectins” second Edition (2003) (eds Sharon、Nathan and Lis、Halina) Kluwer Academic publishers Dordrecht、The Neatherlands等の総説およびモノグラフ、および、pubmed/espacenet等のインターネットデータベース、またはwww.glvco.is.ritsumei.ac.jp/epitope/等のモノクローナル抗体グリカン特異性を列挙した抗体データベース)から入手可能である。
好ましい結合剤分子
本発明は、本発明の細胞、より具体的には本発明の好ましい細胞群および細胞型の分析に有用な各種の型の結合剤分子を明らかにした。好ましい結合剤分子は、細胞表面の炭水化物上の特異的な構造または構造的特徴に関する結合特異性に基づいて分類される。好ましい結合剤は特異的に複数の単糖残基を認識する。
現在の結合剤分子のほとんど、例えば植物レクチンの全てまたはほとんどは、その特異性において最適ではなく、通常、各種結合を有する1種または数種の単糖を大まかに認識すると考えられる。さらに、該レクチンの特異性は、通常、ヒト型の数種のグリカンによって十分に分析されていない。
好ましい高特異性結合剤は、
A)少なくとも1種の単糖残基、およびそれらと他の単糖隣接単糖残基(monosaccharides next monosaccharide residue)との間の特異的結合構造を認識し、MS1B1結合剤と称される、
B)より好ましくは少なくとも第2の単糖残基の一部を認識し、MS2B1結合剤と称される、
C)さらに好ましくは第2の結合構造および または第3の単糖残基の少なくとも一部を認識し、MS3B2結合剤と称され、好ましくはMS3B2は特異的な完全な三糖構造を認識する。
D)最も好ましくは前記結合構造は3個の結合構造を有する四糖を少なくとも部分的に認識し、MS4B3と称され、好ましくは該結合剤は完全な四糖配列を認識する。
好ましい結合剤としては、天然のヒトおよび または動物の、またはグリカンの特異的識別のために開発された他のタンパク質等が挙げられる。好ましい高特異性結合剤タンパク質は特異的抗体、好ましくはモノクローナル抗体;レクチン、好ましくは哺乳動物または動物レクチン;または、特異的糖転移酵素、より好ましくはグリコシダーゼ型酵素、糖転移酵素もしくはトランスグリコシル化酵素である。
結合剤による細胞の調節
本発明は細胞型と関連する特異的結合剤を細胞の調節に用いることができることを明らかにした。好ましい一態様においては、(幹)細胞が炭水化物媒介相互作用に関して調節される。本発明は、グリカンの構造を変え、それにより受容体の構造および該グリカンの機能を変える特異的結合剤を明らかにした。これらは特にグリコシダーゼ、ならびに糖転移酵素および/またはトランスグリコシル化酵素等の糖転移酵素である。非酵素結合剤の結合それ自体が細胞を選択および/または操作するとさらに考えられる。操作は典型的には、グリカン受容体のクラスタリング;またはグリカン受容体の、細胞と関連する生物学的系またはモデルに存在するレクチン等のカウンターレセプター(counter receptor)との相互作用の影響;に依存する。本発明はさらに、細胞培養における結合剤による調節は細胞の増殖速度に関する効果を有することを明らかにした。
好ましい結合剤の組み合わせ
本発明は、細胞の状態の分析のための、特異的末端構造の有用な組み合わせを明らかにした。好ましい一態様において、本発明は、本発明の2種の異なる末端構造の水準を、好ましくは特異的結合分子により、好ましくは少なくとも2種の異なる結合剤により、測定することに関する。好ましい一態様において、該結合分子は、末端受容体グリカン構造の修飾を示す構造を対象とし、好ましくは該構造は連続的な(基質構造およびその修飾、例えば末端Gal構造および対応するシアル化構造)または競合的な生合成段階(例えば、末端Galβ、または末端Galβ3GlcNAcおよびGalβ4GlcNAcの、フコシル化およびシアル化)を示す。他の態様において、前記結合剤は連続的または競合的な段階、例えば末端Gal構造および対応するシアル化構造および対応するシアル化構造、を示す3種の異なる構造を対象とする。
本発明はさらに、本発明の非修飾(非シアル化または非フコシル化)Gal(NAc)β3/4‐コア構造、本発明の好ましいフコシル化構造および好ましいシアル化構造の群から選択される本発明の少なくとも2種の異なる構造の識別に関する。さらに、3種、より好ましくは4種、およびさらに好ましくは5種の、好ましくは、好ましい一構造群内に含まれる、異なる構造を識別することが有用であると考えられる。
特異的結合剤の標的構造、および結合分子の例
末端構造の、特異的グリカンコア構造との組み合わせ
構造要素の一部は特異的に特定のグリカンコア構造と関連していると考えられる。特定のコア構造に結合する末端構造の識別は特に好ましく、このような高特異性試薬は本発明の物理化学的分析の水準にまでほとんど完全な個々のグリカンを識別する能力を有する。例えば本発明の多くの特異的マンノース構造は一般に本発明のN‐グリカングライコームに極めて特徴的である。本発明は特に末端エピトープの識別に関する。
いくつかのグリカンコア構造上の共通末端構造
本発明は、いくつかのグリカン型上に特定の共通構造の特徴が存在すること、および、前記試薬の特異性が末端構造に限定され、コア構造に対する特異性を有していない場合、異なるグリカン構造上の特定の共通エピトープを特異的試薬により識別することが可能であることを明らかにした。本発明は特に、本発明の特定の細胞型の特徴的末端特性を明らかにした。本発明において、共通エピトープが識別の効果を高めることが認められた。この共通末端構造は、該共通末端構造を実質的な量を含んでいない、有り得る他の細胞型または材料との関連において、識別に特に有用である。
本発明はN‐グリカン、O‐グリカンおよび/または糖脂質等の特定のコア構造上の末端構造の存在を明らかにした。本発明は好ましくは特定のグリカンコア型の識別を含む、前記構造のための特異的結合剤の選択に関する。
本発明はさらに、N‐グリカンおよびO‐グリカン等のタンパク質結合グライコームならびに糖脂質のグライコーム組成に関するものであり、各組成は特異的な量のグリカン亜群を含む。本発明はさらに、特定の量の所定の末端構造を有する場合の前記組成に関する。
特異的な好ましい構造群
本発明は、任意にさらに特異的コア構造を含んだ、特異的末端単糖型を有するオリゴ糖配列の識別に関する。好ましいオリゴ糖配列は、好ましい一態様において、末端単糖構造に基づき分類される。
本発明はさらに、末端(非還元末端の末端)二糖エピトープのファミリーを、β結合ガラクトピラノシル構造に基づき明らかにしたものであり、これはさらに、末端Gal残基をGalNAcに変える、フコースおよび/もしくはシアル酸残基により、またはN‐アセチル基により修飾されていてよい。このような構造はN‐グリカン、O‐グリカンおよび糖脂質サブグライコーム(subglycome)中に存在する。さらに、本発明は末端ManαManを有するN‐グリカンの末端二糖エピトープに関する。
前記構造は質量分析および任意にNMR分析により、および本発明の高特異性結合剤により得られ、糖脂質構造の分析に対してはパーメチル化(permethylation)およびフラグメンテーション質量分析を用いた。N‐グリカン、O‐グリカンおよび糖脂質への公知の生合成経路を含む生合成分析を、グリカン組成の分析および追加の支持のためにさらに用いたが、ただしそれは、Skottman, H. et al. (2005) Stem cellsの遺伝子発現プロファイリングデータ、および臍帯血細胞に対するmRNAプロファイリングから得られた類似のデータから得られ、Jaatinen T et al. Stem Cells (2006) 24 (3) 631‐41のデータを用いた生合成分析の支持に用いたことから、mRNA後の種々の制御レベルのために直接的な証拠ではない。
末端マンノース単糖を有する構造
好ましいマンノース型標的構造が本発明により特異的に分類された。これらは本発明の各種の高および低マンノース構造ならびにハイブリッド型構造を含む。
好ましい末端Manα‐標的構造エピトープ
本発明は低マンノースN‐グリカンおよび高マンノースN‐グリカン上のManαの存在を明らかにした。生合成の知識に基づき、ならびに生合成酵素のmRNAの分析による、およびNMR分析による、この見解の支持に基づき、
前記構造および末端エピトープは:
Manα2Man、Manα3Man、Manα6ManおよびManα3(Manα6)Man
[式中、還元末端Manは好ましくはαまたはβ結合グリコシド、およびManα2Manの場合はα結合グリコシドである:]
であると明らかにすることができた。
末端Manα構造の一般構造は
Manαx(Manαy)Manα/β
[式中、xは結合位置2、3または6であり、yは結合位置3または6であり、
zは0または1の整数であり、分岐の存在または非存在を表し、
ただしxおよびyは同一の位置ではなく、および
xが2の場合、zは0であり、還元末端Manは好ましくはα結合する]
である;
低マンノース構造は好ましくは他のマンノース残基に結合するα3および/またはα6マンノースを有する構造
Manαx(Manαy)Manα/β
[式中、xおよびyは3または6の結合位置であり、
zは0または1の整数であって分岐の存在または非存在を表す]
を有する非還元末端の末端エピトープを含む、
高マンノース構造は末端α2結合マンノース:Manα2Man(α)、ならびに任意に上記のα3および/またはα6マンノース構造のonまたはいくつかを含む。
末端Manα構造の存在は幹細胞において制御されており、末端Manα2構造を有する高Man構造の、Manα3/6を有する低Man構造に対する、
および/またはGal主鎖エピトープを有する複合型N‐グリカンに対する割合は、細胞型特異的に相違する。
データは、特異的末端Manα2Manおよび/またはManα3/6Manを明らかにする結合剤が幹細胞の分析において非常に有用であることを示した。これまでの科学ではエピトープは細胞型または状態の特異的シグナルとして分析されなかった。本発明は特に、好ましくは2つの構造型、Manα2Man構造およびManα3/6Man構造を同一試料から定量することにより、低Manおよび高Man構造両者の量を測定することに関する。
本発明は特に、本発明の好ましい幹細胞からの末端Manα構造の識別のための酵素またはモノクローナル抗体等の高特異性結合剤に関し、より好ましくは分化した胚性細胞から、より好ましくは段階3の分化した細胞等胚様体を過ぎた分化した細胞からであり、最も好ましくは該構造は段階3の分化した細胞から識別される。本発明は特に、好ましくは、成体幹細胞、より好ましくは間葉系幹細胞からの、特に間葉系幹細胞の表面からの、および別の態様においては血液由来幹細胞、また別の好ましい群として臍帯血および骨髄幹細胞からの、構造の検出に関する。好ましい一態様において、前記臍帯血および/または末梢血幹細胞は造血幹細胞ではない。
低特異性または未分析の特異性の結合剤
末端マンノース構造の識別に好ましいものとしてマンノース単糖結合植物レクチン等が挙げられる。本発明は好ましい態様において、胚性幹細胞等の幹細胞の、レクチンPSA等のManα認識レクチンによる識別に関する。好ましい一態様において、前記識別は透過性細胞中の細胞内グリカンを対象とする。他の一態様において、Manα結合レクチンは、対応する実施例に示すように、線維芽細胞型細胞またはフィーダー細胞等の混入細胞集団から末端Manαを識別するために、無傷の非透過性細胞に対して用いられる。
好ましい高度に特異的な高特異性結合剤
i)特異的マンノース残基遊離酵素(releasing enzyme)、例えば結合特異的マンノシダーゼ、より好ましくはα‐マンノシダーゼまたはβ‐マンノシダーゼ。
好ましいα‐マンノシダーゼとしては、好ましくは非還元末端の末端を開裂するα‐マンノシダーゼ等の結合特異的α‐マンノシダーゼなどが挙げられ、好ましいマンノシダーゼの一例はタチナタマメα‐マンノシダーゼ(Canavalia ensiformis; Sigma, USA)および相同なαマンノシダーゼ
特異的にもしくは他の結合よりも効果的にα2結合マンノース残基を、より好ましくは特異的にManα2構造を開裂するもの;または
特異的にもしくは他の結合よりも効果的にα3結合マンノース残基を、より好ましくは特異的にManα3構造を開裂するもの;または
特異的にもしくは他の結合よりも効果的にα6結合マンノース残基を、より好ましくは特異的にManα6構造を開裂するもの;
である。
好ましいβ‐マンノシダーゼとしては、β4結合マンノースをN‐グリカンコアManβ4GlcNAc構造の非還元末端の末端から開裂することができ、グライコーム中の他のβ結合した単糖を開裂しないβ‐マンノシダーゼ等が挙げられる。
ii)本発明の好ましいマンノース構造を認識する特異的結合タンパク質。好ましい試薬として抗体および抗体の結合ドメイン(Fabフラグメント等)、ならびに他の改変された炭水化物結合タンパク質等が挙げられる。本発明はMS2B1およびより好ましくはMS3B2構造を認識する抗体に関する。
中性N‐グリカンのマンノシダーゼ分析
実施例におけるα‐マンノシダーゼ結合剤によるマンノシル化の検出、ならびに臍帯血および末梢血間葉系細胞のグリカンの質量分析プロファイリングの例;実施例14の臍帯血細胞に対しては、本発明によって記載されるMan1‐4GlcNAcβ4(Fucα6)0‐1GlcNAc含有低マンノースグリカンのManβ4、Manα3/6末端構造の全ての種類の存在を示す。
レクチン結合
α結合マンノースは実施例においてヒト間葉系細胞に対してレクチンHippeastrum hybrid(HHA)およびPisum sativum(PSA)レクチンにより示され、このことは、これらがN‐グリカン等のその表面複合糖質上にマンノース、より具体的にはα結合マンノース残基を発現していることを示唆している。有り得るα‐マンノース結合としてはα1→2、α1→3、およびα1→6等が挙げられる。Galanthus nivalis(GNA)レクチンの低結合は、細胞表面上の一部のα‐マンノース結合が他と比べて優勢であることを示唆している。末端Manα認識低親和性試薬の組み合わせは有用であり、マンノシダーゼスクリーニングにより得られた結果;NMRおよび質量分析の結果に対応すると思われる。臍帯血のレクチン結合は、実施例8に示す。PSAはコアFuca6‐エピトープを有する複合型N‐グリカンに対して特異性を持つ。
マンノース結合レクチン標識
実施例における間葉系細胞の標識は、蛍光標識に結合したヒト血清マンノース結合レクチン(MBL)でも検出された。これは、この先天性免疫系成分のためのリガンドがin vitro培養されたBM MSC細胞表面上で発現され得ることを示唆している。
本発明は特に、細胞表面上の末端Manαの分析に関するものであり、それは該構造がMBLおよび先天性免疫の他のレクチンに対するリガンドであるためである。さらに、末端Manα構造は、血液循環中で細胞を肝臓のKupfer細胞等のマンノース受容体含有組織に導くと考えられる。本発明は特に、末端Manα構造を認識する結合剤の結合による、前記構造の量の制御に関する。
好ましい一態様において、本発明は、幹細胞へのレクチン(精製または好ましくは組み替え型のレクチン、好ましくは標識された形態)の結合の試験により、ヒトに存在するレクチン、例えば先天性免疫のレクチンおよび/または組織もしくは白血球のレクチンの、幹細胞上のリガンドの存在を試験することに関する。このようなレクチンとして、特に本発明のManαおよびGalβ/GalNAcβ構造(末端の非還元末端またはα6シアル化型も 等に結合するレクチンが挙げられると理解される。
マンノース結合抗体
高マンノース結合抗体は例えばWang LX et al (2004) 11 (1) 127‐34に記載されている。トリマンノシルコア構造等の短いマンノシル化構造に対する特異的抗体も公開されている。
末端Gal単糖を有する構造
好ましいガラクトース型標的構造が特に本発明により分類された。これらは本発明の各種のN‐アセチルラクトサミン構造を含む。
末端Galのための、低特異性または未分析の特異性の結合剤
末端ガラクトース構造の識別に好ましいものとして、リシンレクチン(トウゴマ(ricinus communis)凝集素RCA)、ピーナッツレクチン(/凝集素PNA)等の植物レクチンなどが挙げられる。低分解能結合剤(low resolution binder)は様々な広範な特異性を有する。
好ましい高度に特異的な高特異性結合剤としては
i)特異的ガラクトース残基遊離酵素、例えば結合特異的ガラクトシダーゼ、より好ましくはα‐ガラクトシダーゼまたはβ‐ガラクトシダーゼ。
好ましいα‐ガラクトシダーゼとしては、特定の細胞調製物から明らかになったGalα3Gal構造を開裂し得る結合ガラクトシダーゼ(linkage galactosidase)等が挙げられる。
好ましいβ‐ガラクトシダーゼとしては、
β4結合ガラクトースを非還元末端の末端Galβ4GlcNAc構造から開裂することができ、グライコーム中の他のβ結合単糖は開裂しない、および
β3結合ガラクトースを非還元末端の末端Galβ3GlcNAc構造から開裂することができ、グライコーム中の他のβ結合単糖は開裂しない
β‐ガラクトシダーゼなどが挙げられる。
ii)本発明の好ましいガラクトース構造を認識する特異的結合タンパク質。好ましい試薬としては抗体および抗体の結合ドメイン(Fabフラグメント等)、ならびに他の改変された炭水化物結合タンパク質およびガレクチン等の動物レクチンなどが挙げられる。
特異的結合剤実験およびGalβ構造に対する実施例
前記構造の特異的エキソグリコシダーゼおよび糖転移酵素分析が、胚幹細胞および分化した細胞に対して実施例に含まれ;臍帯血細胞に対しては、細胞表面上および糖転移酵素を含めて実施例14および実施例4であり、ならびに糖脂質に対しては実施例10である。末端Galβおよびシアル酸発現に関連するシアル化度分析が実施例9に含まれる。
本発明のGalβエピトープの結合のために好ましい酵素結合剤としては、β1,4‐ガラクトシダーゼ、例えばS.pneumoniaeからのもの(大腸菌における組み換え体、Calbiochem、USA)、β1,3‐ガラクトシダーゼ(大腸菌における組み換え体、Calbiochem、等);糖転移酵素:α2,3‐(N)‐シアル酸転移酵素(ラット、S. frugiperdaにおける組み換え体、Calbiochem)、特異的N‐アセチルラクトサミンエピトープFuc‐TVI、特にGalβ4GlcNAcを認識することが知られるα1,3‐フコシルトランスフェラーゼVI(ヒト、S. frugiperdaにおける組み換え体、Calbiochem)等が挙げられる。
植物低特異性レクチン、例えばRCA、PNA、ECA、STA、および
PWA、データはhESCに対しては実施例に、MSCに対しては実施例に、臍帯血に対しては実施例8に、細胞増殖のためのレクチン結合剤の効果は実施例に、臍帯血細胞選択は実施例11に示す。臍帯血および胚細胞からの各種ガレクチン発現によるヒトレクチン分析は実施例12である。実施例13に、特にフコシル化およびガラクトシル化された構造の抗体標識を示す。
ポリ‐N‐アセチルラクトサミン配列
アメリカヤマゴボウ(pokeweed)(PWA)レクチンによる細胞の標識およびSolanum tuberosum(STA)レクチンによる強度のより低い標識は、細胞が、N‐および/またはO‐グリカンおよび/または糖脂質等のそれらの表面複合糖質上に、ポリ‐N‐アセチルラクトサミン配列を発現することを示唆している。結果はさらに、細胞表面ポリ‐N‐アセチルラクトサミン鎖が直鎖および分岐鎖配列の両者を有することを示唆する。
末端GalNAc‐単糖を有する構造
好ましいGalNAc型標的構造が特に本発明により明らかにされた。これらは特に、本発明のLacdiNAc、GalNAcβGlcNAc型構造を含む。
末端GalNAcのための、低特異性または未分析の特異性の結合剤
いくつかの植物レクチンが末端GalNAcの認識に関して報告されている。一部のGalNAc認識レクチンは好ましいLacdiNAc構造の低特異性認識のために選択されてよいと理解される。
β‐結合N‐アセチルガラクトサミン
Wisteria floribundaレクチン(WFA)によりhESCが大量に標識されることは、hESCが、N‐および/またはO‐グリカン等のそれらの表面複合糖質上に、β‐結合非還元末端N‐アセチルガラクトサミン残基を発現することを示唆している。WFAのmEFへの特異的な結合が存在しないことから、mEF中のレクチンリガンドエピトープの量はより少ないことが示唆される。
Wisteria floribunda凝集素およびLotus tetragonolobus凝集素等の低特異性結合剤植物レクチンは、オリゴ糖配列に結合する Srivatsan J. et al. Glycobiology (1992) 2 (5) 445‐52: Do、KY et al. Glycobiology (1997) 7 (2) 183‐94; Yan、L., et al (1997) Glycoconjugate J. 14 (1) 45‐55。論文は、前記レクチンが、細胞が該レクチンに認識される他の構造を有していないと確認される場合に、構造の識別に有用であることも示している。
好ましい一態様において、低特異性レアクチン(leactin)試薬が、結合を確認する他の試薬と組み合わせて用いられる。
好ましい高度に特異的な高特異性結合剤として
i)本発明は、β結合GalNAcが、β‐N‐アセチルヘキソサミニダーゼ酵素と組み合わせた特異的β‐N‐アセチルヘキソサミニダーゼ酵素によって認識され得ることを明らかにした。
この組み合わせは、末端単糖および少なくとも結合構造の一部を示す。
好ましいβ‐N‐アセチルヘキソサミニダーゼとしては、非還元末端の末端GalNAcβ4/3構造からβ結合GalNAcを開裂することができるがグライコーム中のα結合したHexNAcは開裂しない酵素等が挙げられる;好ましいN‐アセチルグルコサミニダーゼとしては、β結合したGlcNAcは開裂し得るがGalNAcは開裂しない酵素等が挙げられる。
本発明の好ましいGalNAcβ4、より好ましくはGalNAcβ4GlcNAc、構造を認識する特異的結合タンパク質。好ましい試薬としては抗体および抗体の結合ドメイン(Fabフラグメント等)、ならびに他の改変された炭水化物結合タンパク質等が挙げられる。
LacdiNAc構造を認識する抗体の例として、Nyame A.K. et al. (1999) Glycobiology 9 (10) 1029‐35; van Remoortere A. et al (2000) Glycobiology 10 (6) 601‐609;および、van Remoortere A. et al (2001) Infect. Immun. 69 (4) 2396‐2401の文献が挙げられる。前記抗体はマウスおよびヒトの寄生虫(Shistosoma)との関連で分析されたが、本発明によると、これらの抗体は幹細胞のスクリーニングにおいても用いることができる。本発明は特に、本発明のN‐グライコーム中に存在するサブグライコームおよびグリカン構造に特異的なLacdiNac認識抗体の特異的クローンの選択に関する。
前記論文は、本発明と類似した抗体結合特異性およびこのような抗体を生産する方法を開示しており、そのため、前記抗体結合剤は当業者にとって明白である。特定のLacdiNAc構造の免疫原性はヒトおよびマウスにおいて示される。
グリコシダーゼを前記構造の識別に用いることは本発明におけると同様に従来技術において公知であり、例えばSrivatsan J. et al. (1992) 2 (5) 445‐52が挙げられる。
末端GlcNAc単糖を有する構造
好ましいGlcNAc型標的構造が本発明により具体的に明らかになった。これらは特に本発明のGlcNAcβ‐型構造を含む。
末端GlcNAcに対する低特異性または未分析の特異性の結合剤
いくつかの植物レクチンでは末端GlcNAcの認識が報告されている。一部のGlcNAc認識レクチンは好ましいGlcNAc構造の低特異性認識のために選択され得ると考えられる。
好ましい高度に特異的な高特異性結合剤として
i)本発明は、β結合GlcNAcが特異的β‐N‐アセチルグルコサミニダーゼ酵素により認識され得ることを明らかにした。
好ましいβ‐N‐アセチルグルコサミニダーゼとしては、非還元末端の末端GlcNAcβ2/3/6構造からβ結合GlcNAcを開裂することができるが、グライコーム中のβ結合GalNAcまたはα結合HexNAcは開裂しない酵素等が挙げられる;
ii)本発明の構造である、好ましいGlcNAcβ2/3/6、より好ましくはGlcNAcβ2Manαを認識する特異的結合タンパク質。好ましい試薬としては抗体および抗体の結合ドメイン(Fabフラグメント等)、ならびに他の改変された炭水化物結合タンパク質等が挙げられる。
特異的結合剤実験および末端HexNAc(GalNAc/GlcNAcおよびGlcNAc構造に対する実施例
前記構造のための特異的エキソグリコシダーゼ分析が臍帯血細胞に対しては実施例14に、および糖脂質に対しては実施例10に含まれる。
WFAおよびGNAII等の植物性低特異性レクチン、およびデータを、hESCに対しては実施例に、MSCに対しては実施例に、臍帯血に対しては実施例8に示し、該レクチン結合剤の細胞増殖に対する効果を実施例に示し、臍帯血細胞選択を実施例11に示す。
前記構造の識別のために好ましい酵素としては、一般的なヘキソサミニダーゼであるタチナタマメからのβ‐ヘキソサミニダーゼ(C. ensiformis、Sigma、USA)、およびS.pneumoniaeからのβ‐グルコサミニダーゼ(大腸菌における組み換え体、Calbiochem、USA)等の特異的N‐アセチルグルコサミニダーゼまたはN‐アセチルガラクトサミニダーゼ等が挙げられる。これらの組み合わせによりLacdiNAcの決定が可能となる。
本発明はさらに、Holmes and Greene (1991) 288 (1) 87‐96に記載されるような末端GlcNAcβ構造を認識し、いくつかの末端GlcNAc構造に対する特異性を有する特異的モノクローナル抗体による、前記構造の分析に関する。本発明は特に、前記構造に対する抗体の選択および生産のための、本発明の末端構造の使用に関する。
標的構造の確認は、糖脂質構造のための質量分析およびパーメチル化/フラグメンテーション分析を含む。
末端フコース‐単糖を有する構造
好ましいフコース型標的構造が本発明により特異的に分類された。これらは本発明の各種のN‐アセチルラクトサミン構造を含む。本発明はさらに、N‐グリカンコア、GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcのラクトサミン類似α6‐フコシル化エピトープに対する識別および他の方法に関する。本発明は、レクチンPSA(Kornfeld (1981) J Biol Chem 256、6633‐6640; Cummings and Kornfeld (1982) J Biol Chem 257、11235‐40)によって認識され得るこのような構造が例えば胚幹細胞および間葉系幹細胞中に存在することを明らかにした。
末端Fucのための、低特異性または未分析の特異性の結合剤
末端フコース構造の識別に好ましいものとして、フコース単糖結合植物レクチンが挙げられる。Ulex europeausおよびLotus tetragonolobusのレクチンは、例えば末端フコースを認識し、それぞれα2結合構造および分岐α3フコースに対するある程度の特異性結合(specificity binding)を有することが報告されている。データを臍帯血に対する実施例8に、細胞増殖に対するレクチン結合剤の効果を、臍帯血細胞選択に対しては実施例11に示す。
好ましい高度に特異的な高特異性結合剤として
i)特異的フコース残基遊離酵素、例えば結合フコシダーゼ(linkage fucosidase)、より好ましくはα‐フコシダーゼ。
好ましいα‐フコシダーゼとしては、特定の細胞調製物から明らかになったFucα2GalおよびGalβ4/3(Fucα3/4)GlcNAc構造を開裂することができる結合フコシダーゼ等が挙げられる。
特異的エキソグリコシダーゼおよび前記構造に対しては、臍帯血細胞については実施例14および実施例4に、細胞表面上の糖脂質に対しては実施例10に示す。好ましいフコシダーゼとしてはα1,3/4‐フコシダーゼ、例えばXanthomonas sp.由来のα1,3/4‐フコシダーゼ(Calbiochem、USA)、およびα1,2‐フコシダーゼ、例えばX. manihotis由来のα1,2‐フコシダーゼ(Glyko)等が挙げられる,
ii)本発明の好ましいフコース構造を認識する特異的結合タンパク質。好ましい試薬としては抗体および抗体の結合ドメイン(Fabフラグメント等)、ならびに他の改変された炭水化物結合タンパク質、ならびに、Lewis xであるGalβ4(Fucα3)GlcNAc、およびシアリルLewis xであるSAα3Galβ4(Fucα3)GlcNAc等のLewis型構造を特に認識する、セレクチン等の動物レクチンなどが挙げられる。
好ましい抗体としては、特異的にLewis x、およびシアリル‐Lewis x等のLewis型構造を認識する抗体が挙げられる。より好ましくは前記Lewis x抗体は典型的なSSEA‐1抗体ではないが、該抗体は、N‐グリカンコアに結合したGalβ4(Fucα3)GlcNAcβ2Manα等の特異的タンパク質結合Lewis x構造を認識する。
iii)本発明はさらに、N‐グリカンコア、GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAcのα6フコシル化エピトープの識別に関する。本発明はレクチンPSAまたはレンズ豆(lentil)レクチン(Kornfeld (1981) J Biol Chem 256、6633‐6640)による構造による、または特異的モノクローナル抗体(例えばSrikrishna G. et al (1997) J Biol Chem272、25743‐52)による、このような構造の識別に関する。本発明はさらに、グリカンエピトープを含む細胞グリカン成分の単離、および、さらなる分析のための対照画分としての、レクチンに結合していない幹細胞N‐グリカンの単離の方法に関する。
末端シアル酸‐単糖を有する構造
好ましいシアル酸型標的構造が本発明により特異的に分類された。
末端シアル酸のための、低特異性または未分析の特異性の結合剤
末端シアル酸構造の識別に好ましいものとして、シアル酸単糖結合植物レクチンが挙げられる。
好ましい高度に特異的な高特異性結合剤として
i)特異的シアル酸残基遊離酵素、例えば結合シアリダーゼ、より好ましくはα‐シアリダーゼ。
好ましいα‐シアリダーゼとしては、本発明の特定の細胞調製物から明らかになった、SAα3GalおよびSAα6Gal構造を開裂し得る結合シアリダーゼ等が挙げられる。
結合特異性を有する好ましい低特異性レクチンとしては、SAα3Gal構造に特異的なレクチン、好ましくはMaackia amurensisレクチン、および/またはSAα6Gal構造に特異的なレクチン、好ましくはSambucus nigra凝集素等が挙げられる。
ii)本発明の好ましいシアル酸オリゴ糖配列構造を認識する特異的結合タンパク質。好ましい試薬として抗体および抗体の結合ドメイン(Fabフラグメント等)、ならびに他の改変された炭水化物結合タンパク質、ならびに、シアリルLewis xであるSAα3Galβ4(Fucα3)GlcNAc等のLewis型構造を特に認識するセレクチンまたはシアル酸を認識するシグレック(Siglec)タンパク質などの動物レクチン等が挙げられる。好ましい抗体としては特異的にシアリル‐N‐アセチルラクトサミンおよびシアリル‐Lewis xを認識する抗体などが挙げられる。
NeuGc構造のための好ましい抗体としては、構造NeuGcα3Galβ4Glc(NAc)0または1および/またはGalNAcβ4[NeuGcα3]Galβ4Glc(NAc)0または1を認識する抗体等が挙げられ、式中、[]は構造中の分岐を表し、()0または1は存在するまたは存在しない構造を表す。好ましい一態様において、本発明は抗体による、好ましくはモノクローナル抗体またはヒト/ヒト化モノクローナル抗体による、N‐グリコリル‐ノイラミン酸構造の識別に関する。好ましい抗体はP3抗体の可変領域を含む。
特異的結合剤実験およびα3/6シアル化構造に対する実施例
前記構造に対する特異的エキソグリコシダーゼ分析が、臍帯血細胞に対しては、細胞表面上および糖転移酵素を含めて実施例14および実施例4に含まれ、ならびに糖脂質に対しては実施例10に含まれる。末端Galβおよびシアル酸発現と関連したシアル化水準の分析を実施例9に示す。
本発明のシアル酸エピトープの結合のために好ましい酵素結合剤としては:A. ureafaciens由来の一般的シアリダーゼα2,3/6/8/9シアリダーゼ(Glyko)、S. pneumoniae由来のα2,3‐シアリダーゼ等のα2,3‐シアリダーゼ(Calbiochem、USA)などの、シアリダーゼなどが挙げられる。他の有用なシアリダーゼは大腸菌およびコレラ菌から知られている。
特異的N‐アセチルラクトサミンエピトープ、特にSAα3Galβ4GlcNAcを有するFuc‐TVIを認識することが知られるα1,3‐フコシルトランスフェラーゼVI(ヒト、S. frugiperdaにおける組み換え体、Calbiochem)。
MAAおよびSNA等の植物低特異性レクチン、およびデータは、hESCに対しては実施例に、MSCに対しては実施例に、臍帯血に対しては実施例8に、細胞増殖に対するレクチン結合剤の効果は実施例8、臍帯血細胞選択は実施例11に示す。実施例13においては、シアリル構造の抗体標識を示す。
幹細胞型特異的ガレクチンおよび/またはガレクチンリガンドのための好ましい使用
実施例に記載されるように、本願発明者らは各種幹細胞が異なったガレクチン発現プロファイルおよび異なったガレクチン(グリカン)リガンド発現プロファイルを有することも見出した。本発明はさらに、ガラクトース結合試薬、優先的にはガラクトース結合レクチン、より優先的には特異的ガレクチンを幹細胞型特異的な様式で用い、記載の使用に対して本発明に記載されるように特定の幹細胞を調節する、またはそれに結合させることに関する。さらに好ましい一態様において、本発明は、ガレクチンリガンド構造、その誘導体、またはリガンド模倣試薬を、本発明に記載される使用に対して幹細胞型特異的な様式で用いることに関する。好ましいガレクチンを実施例12に列挙する。
本発明は好ましい一態様において、Galβ4GlcNAcおよびGalβ3GlcNAc構造の識別のための、上記のガレクチンによる、細胞からの末端N‐アセチルラクトサミンの識別に関する:この結果は、CB CD34+/CD133+幹細胞集団およびhESCの両方が、興味深く独特のガレクチン発現プロファイルを有することを示唆しており、このことによって、ガレクチンリガンド親和性プロファイルが異なったものとなる(Hirabayashi et al., 2002)。この結果はさらに、これらの幹細胞における豊富なガレクチンリガンドの発現、特に非還元末端β‐GalおよびII型LacNAc、ポリLacNAc、β1,6‐分岐ポリLacNAcならびに複合型N‐グリカンの発現、を示すグリカン分析の結果と相関している。
幹細胞グライコーム分析の特定の技術的局面
グリカンおよびグリカン画分の単離
本発明のグリカンは当該分野で公知の方法により単離することができる。好ましいグリカン調製法は次の工程からなる:
1° グリカン含有画分を試料から単離し、
2° ...任意に前記画分をグライコーム分析に有用な純度に精製する。
好ましい単離法は分析されるべき所望のグリカン画分に応じて選ばれる。単離法は次の方法:
1° 水または他の親水性溶媒による抽出であって、水溶性グリカンまたは遊離オリゴ糖もしくは糖ペプチド等の複合糖質を生成するもの
2° 疎水性溶媒による抽出であって、糖脂質等の疎水性複合糖質を生ずるもの
3° N‐グリコシダーゼ処理、特にFlavobacterium meningosepticum N‐グリコシダーゼF処理であって、N‐グリカンを生ずるもの
4° ホウ化水素等の還元剤を用いた、または用いない、アルカリ処理、例えば弱い(0.1M等)水酸化ナトリウムまたは濃アンモニア処理であって、前者の場合、炭酸塩等の保護剤の存在下で処理が行われ、O‐グリカン等のβ脱離産物(β‐elimination product)および/もしくはN‐グリカン等の他の脱離産物を生ずるもの
5° エンドグリコシダーゼ処理、例えばエンド‐β‐ガラクトシダーゼ処理、特にEscherichia freundiiエンド‐β‐ガラクトシダーゼ処理であって、ポリ‐N‐アセチルラクトサミングリカン鎖もしくは酵素特異性に応じて類似の産物からの断片を生ずるもの、ならびに/または
6° プロテアーゼ処理、例えば広範囲のまたは特異的なプロテアーゼ処理、特にトリプシン処理であって、糖ペプチド等のタンパク質分解断片を生ずるもの
の1つまたは組み合わせ、またはもとの試料の画分を生ずる他の分画法であってよい。
遊離したグリカンは任意にシアル化および非シアル化亜画分(subfraction)に分けられ、別々に分析される。本発明によると、これは中性グリカン成分の改善された検出のために、特にそれらが分析対象の試料中で希な場合に、および/または試料の量が少ないもしくは質が低い場合に、好ましい。好ましくは、このグリカン分画はグラファイトクロマトグラフィー(graphite chromatography)により達成される。
本発明によると、シアル化グリカンは任意に、上記の非シアル化グリカン特異的単離手順において非シアル化グリカン画分とともに単離されるような様式で修飾され、非シアル化およびシアル化グリカン成分の両者に対して同時に改善された検出がもたらされる。好ましくは、この修飾は非シアル化グリカン特異的単離手順の前に行われる。好ましい修飾方法としてはノイラミニダーゼ処理およびシアル酸カルボキシル基の誘導体化等が挙げられ、好ましい誘導体化法として該カルボキシル基のアミド化およびエステル化等が挙げられる。
グリカン遊離法
好ましいグリカン遊離法としては次の方法:
遊離グリカン ‐ 遊離グリカンの、例えば水または適した水‐溶媒混合物による抽出。
O‐およびN‐結合グリカン等のタンパク質結合グリカン ‐ タンパク質結合グリカンのアルカリ脱離(alkaline elimination)、次いで任意に遊離したグリカンの還元を行う。
ムチン型および他のSer/Thr O‐結合グリカン ‐ グリカンのアルカリβ脱離(alkaline β‐elimination)、次いで任意に遊離したグリカンの還元を行う。
N‐グリカン ‐ 酵素的遊離(enzymatic liberation)、任意に、例えばC. meningosepticum由来のN‐グリコシダーゼF、Streptomyces由来のエンドグリコシダーゼH、またはアーモンド由来のN‐グリコシダーゼA等のN‐グリコシダーゼ酵素を用いる。
スフィンゴ糖脂質等の脂質結合グリカン ‐ エンドグリコセラミダーゼ酵素を用いた酵素的遊離;化学的遊離;オゾン分解遊離。
グリコサミノグリカン ‐ グリコサミノグリカンを開裂するエンドグリコシダーゼ、例えばコンドロイナーゼ(chondroinase)、コンドロイチンリアーゼ、ヒアルロンダーゼ(hyalurondase)、ヘパラナーゼ、ヘパラチナーゼ、もしくはケラタナーゼ/エンド‐ベータ‐ガラクトシダーゼを用いた処理;またはO‐グリコシドグリコサミノグリカンに対するO‐グリカン遊離法の使用;またはN‐グリコシドグリコサミノグリカンに対するN‐グリカン遊離法もしくは特異的グリコサミノグリカンコア構造を開裂する酵素の使用;または特異的化学的亜硝酸開裂法、特にアミン/N‐硫酸エステル含有グリコサミノグリカンに対するもの
グリカン断片 ‐ 特異的エキソまたはエンドグリコシダーゼ酵素、例えばケラタナーゼ、エンド‐β‐ガラクトシダーゼ、ヒアルロニダーゼ、シアリダーゼ、または他のエキソおよびエンドグリコシダーゼ酵素;化学的開裂法;物理的方法
等が挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の分析のための好ましい標的細胞集団および型
初期ヒト細胞集団
ヒト幹細胞および多分化能細胞
最も広い態様において、本発明は全ての型のヒト幹細胞に関するものであり、これは新鮮な、かつ培養されたヒト幹細胞を意味する。本発明の幹細胞は、天然の細胞に似た分化を示し得るが典型的には染色体の変化またはウイルス感染による非天然の発生を示す、従来の癌細胞株は含まない。幹細胞には、他の細胞型に分化することができる全ての型の良性多分化能細胞が含まれる。幹細胞は細胞分裂後に幹細胞のまま存在できる特別な能力、自己複製能を有する。
ヒト幹細胞に対する最も広い態様において、本発明は、新規の特別なグリカンプロファイル、および該グリカンプロファイルを対象とした新規の分析論、試薬および他の方法を記載する。本発明は、ヒト幹細胞の新規グリカンプロファイルに関して、細胞集団における特有の相違を示す。
本発明はさらに、本発明の好ましい細胞集団に関する新規構造および関連した発明に関する。本発明はさらに、特定の好ましい細胞集団に関連する特異的グリカン構造、特に末端エピトープに関するものであり、該細胞集団に対して該構造は新しいものである。
初期ヒト細胞の好ましい型
本発明は細胞の組織起源(tissue origin)および/またはその分化状態に基づく、初期ヒト細胞の特異的な型に関する。
本発明は特に、ドナー個体の年齢、ならびに細胞が由来する組織の種類、例えば年上の個体または成人からの好ましい臍帯血および骨髄、などの細胞の由来に基づく、初期ヒト細胞集団、すなわち多分化能細胞およびそれに由来する細胞集団に関する。
分化状態を基盤とした好ましい分類は、好ましくは「固形組織前駆」細胞、より好ましくは「間葉系幹細胞」、または固形組織に分化する細胞、もしくは外胚葉、中胚葉、もしくは内胚葉、より優先的には間葉系幹細胞に分化し得る細胞を含む。
本発明はさらに、細胞培養に関連する状態に基づく初期ヒト細胞の分類および2つの主要な種類の細胞材料に関する。本発明は好ましくは、新鮮な、冷凍の、および培養の細胞を含む初期ヒト細胞の2つの主要な細胞材料型に関する。
臍帯血細胞、胚性細胞および骨髄細胞
本発明は特に、ドナー個体の年齢および細胞が由来する組織の種類などの細胞の由来に基づく、初期ヒト細胞集団、すなわち多分化能細胞およびそれに由来する細胞集団に関する。
a)1)ヒト新生児、好ましくは臍帯血および関連する材料に関するもの、および2)胚細胞型材料、などの若齢(early age cell)細胞から
b)年上の個体(非新生児、好ましくは成人)由来の幹および前駆細胞から、好ましくはヒト「血液関連組織」由来の、好ましくは骨髄細胞を含むものから。
固形組織、好ましくは間葉系幹細胞に分化する細胞
本発明は特に、好ましい一態様の下で、「固形組織前駆細胞」と称する非造血組織に分化することができる細胞、すなわち血液細胞以外の細胞に分化する細胞に関する。より好ましくは、固形組織に分化するために産生される前記細胞集団は「間葉系細胞」であり、これは中胚葉起源の細胞、より好ましくは間葉系幹細胞に効果的に分化し得る多分化能細胞である。
従来技術のほとんどは本発明の間葉系細胞および間葉系幹細胞と極めて異なる特徴を有する造血細胞に関するものである。
本発明の好ましい固形組織前駆細胞としては、臍帯血の選択された多分化能細胞集団、臍帯血から培養された間葉系幹細胞、骨髄から培養された/得られた間葉系幹細胞、および胚性細胞等が挙げられる。より具体的な一態様において、好ましい固形組織前駆細胞は間葉系幹細胞、より好ましくは「血液関連間葉系細胞」、さらに好ましくは骨髄または臍帯血に由来する間葉系幹細胞である。
具体的一態様の下で、臍帯血のさらなる造血幹細胞型としてのCD34+細胞またはCD34+細胞一般は、前記固形組織前駆細胞から除外される。
初期血液細胞(early blood cell)集団および対応する間葉系幹細胞
臍帯血
前記初期血液細胞集団は多分化能細胞に富んだ血液細胞材料を含む。好ましい初期血液細胞集団としては、多分化能細胞に富む末梢血細胞、骨髄血細胞および臍帯血細胞等が挙げられる。好ましい一態様において、本発明は初期血液または初期血液由来細胞集団に由来する間葉系幹細胞、好ましくは該細胞集団の分析に関する。
骨髄
初期血液細胞の他の別に好ましい群は骨髄血細胞である。これらの細胞も多分化能細胞を含む。好ましい一態様において、本発明は骨髄細胞集団に由来する間葉系幹細胞、好ましくは該細胞集団の分析に関する。
初期ヒト血液細胞の好ましい亜集団
本発明は特に、初期ヒト細胞の亜集団に関する。好ましい一態様において、該亜集団は抗体による選択によって産生され、他の態様においては特定の細胞型に有利な細胞培養により産生される。好ましい一態様において、前記細胞は抗体選択法により、好ましくは初期血液細胞から産生される。好ましくは、前記初期ヒト血液細胞は臍帯血細胞である。
CD34陽性細胞集団は比較的大きく、異質(heterogenous)である。特定の細胞産物を産生させることを目的としたいくつかの用途に対しては最適とは言えない。本発明は、好ましくは、特異的に選択された非CD34集団に関し、すなわちCD34マーカーと結合しないという点で選択された細胞であり、均質な細胞集団と呼ばれる。均質な細胞集団は、サイズのより小さい単核球集団であってよく、例えば、CD133+細胞集団に対応し、特異的に選択されたCD34+細胞集団よりも小さいサイズである。さらに、初期ヒト細胞の好ましい均質な亜集団は、CD34+細胞集団より大きくてもよいと考えられる。
均質な細胞集団は、CD34+細胞集団の亜集団であってよく、好ましい態様では、具体的には、CD133+細胞集団またはCD133型細胞集団である。本発明による「CD133型細胞集団」は、CD133+細胞集団と類似しているが、CD133ではない別のマーカーに関して選択されたものであることが好ましい。このマーカーは、好ましくは、CD133共発現マーカーである。好ましい一態様では、本発明は、CD133型細胞集団としてのCD133+細胞集団またはCD133+亜集団に関する。好ましい均質な細胞集団は、特別のCD133型細胞として定めることができるもの以外のその他の細胞集団をさらに含むと考えられる。
好ましくは、均質な細胞集団は該細胞集団の細胞表面マーカーに対する特異的結合剤の結合により選択される。好ましい一態様において、前記の均質な細胞は、CD34マーカーと低い相関を有し、細胞表面上のCD133と高い相関を有する細胞表面マーカーにより選択される。好ましい細胞表面マーカーとしては、CD133型細胞中で豊富となった本発明によるα3‐シアル化構造が挙げられる。純粋な、好ましくは完全なCD133+細胞集団が、本発明による分析にとって好ましい。
本発明は、極めて重要なmRNA発現マーカーに関し、これにより純粋な臍帯血由来材料からの細胞集団の分析または識別が可能となるであろう。本発明は、特に、初期ヒト臍帯血細胞上で特異的に発現されたマーカーに関する。
本発明は、好ましい一態様において、天然細胞、すなわち遺伝的に改変されていない細胞に関する。遺伝的改変は細胞および改変された細胞からの背景を変えることが知られている。本発明はさらに、好ましい一態様において、新鮮な非培養細胞に関する。
本発明は、特別な分化能の細胞、好ましくはヒト血液細胞、またはより好ましくはヒト臍帯血細胞である細胞の分析のためのマーカーの使用に関する。
ヒト臍帯血由来の再現可能に高度に精製された単核完全細胞(mononuclear complete cell)集団の好ましい純度
本発明は特に、ヒト臍帯血由来の精製された細胞集団の産生に関する。上記の通り、ヒト臍帯血由来の高度に精製された完全細胞(complete cell)調製物の産生は当該分野において問題であった。最も広い態様において、本発明は本発明のヒト臍帯血の生物学的等価物に関するものであり、これらは同様なマーカーを有し、本発明のCD133+細胞集団および等価物と同様に分離された際に同様な細胞集団を生ずるか、または臍帯血と等価な細胞が、さらに他の細胞型も含む試料に含まれる。臍帯血と同様の特性は少なくとも部分的にヒトの出生前に存在し得ると考えられる。本願発明者らは、高度に精製された細胞集団を、シアル化グリカンおよび関連するマーカーの正確な分析に有用な純度で初期ヒト細胞から生成することが可能であることを見出した。
好ましい骨髄細胞
本発明は多分化能細胞集団またはヒト骨髄由来の初期ヒト血液細胞に関する。もっとも好ましいのは骨髄由来間葉系幹細胞である。好ましい一態様において、本発明は、骨および/または軟骨等の、構造的な支持機能を有する細胞に分化する間葉系幹細胞に関する。
これまでに言及されている各種因子が幹細胞の生き残り、複製、および分化の能力に影響する。例えば、栄養に関しては、アミノ酸タウリンは特定の条件下で齧歯類骨髄細胞が破骨細胞を形成するのを優先的に阻害し(Koide、et al.、1999、Arch Oral Biol 44:711‐719)、アミノ酸L‐アルギニンは赤血球の分化および赤血球前駆細胞の増殖を刺激し(Shima, et al., 2006、Blood 107: 1352‐1356)、P2Y受容体を介して作用する細胞外ATPは造血および非造血幹細胞の両者に対して多種多様な変化を媒介し(Lee、et al., 2003, Genes Dev 17:1592‐1604)、多孔質高分子足場(porous polymer scaffold)に付着したアルギニン‐グリシン‐アスパラギン酸は骨芽細胞前駆体の分化および生き残りを促進する(Hu、et al., 2003, J Biomed Mater Res A 64:583‐590):これらはそれぞれ、その全体が参照により本明細書に組み入れられたものとする。従って、各種栄養を特定の型の幹細胞および/またはその子孫の分化の誘導または生存能力の維持のために用いることは当業者にとって公知であろう。
胚性細胞集団
本発明は特に、胚性細胞集団を対象とする方法に関するものであり、その場合、使用はヒト胚の商業的または産業的使用も、ヒト胚の破壊も伴わないことが好ましい。本発明は特定の一態様の下で、法律上許容される任意の時と場合における、胚細胞、および胚幹細胞等の胚由来材料の使用に関する。法律は国や地域によって異なることが理解される。
本発明はさらに、胚関連の、廃棄された、または自然に損傷を受けた材料であって、ヒト胚として生存能力が無く、ヒト胚とは見なされ得ない材料の使用に関する。さらに他の態様において、本発明は、偶然損傷を受けた胚材料であってヒト胚として生存能力が無く、ヒト胚とは見なされ得ない材料の使用に関する。
さらに、出生および正常分娩過程の臍帯の除去後のヒト臍帯または胎盤に由来する初期ヒト血液は倫理的に議論の対象とならない廃棄物であり、ヒトの部分を形成しないと理解される。
本発明はさらに、本発明の細胞材料と等価な細胞材料に関する。さらに、機能的におよび生物学的にも類似した細胞がクローニング技術等の人為的な方法により得ることができると理解される。
間葉系多分化能細胞
本発明はさらに、本発明の好ましい細胞集団としての間葉系幹細胞または多分化能細胞に関する。好ましい間葉系幹細胞としては初期ヒト細胞、好ましくはヒト臍帯血またはヒト骨髄から得られた細胞等が挙げられる。好ましい一態様において、本発明は、骨および/もしくは軟骨等の構造的な支持機能を有する細胞または脂肪組織等の軟組織を形成する細胞に分化する間葉系幹細胞に関する。
細胞状態の制御およびグリコシル化分析による潜在的混入
細胞状態の制御
原料細胞集団の制御
本発明は治療において用いるための細胞集団のグリコシル化の制御に関する。
本発明は特に、細胞材料のグリコシル化の制御に関するものであり、好ましくはここで、
1)細胞材料の由来と移植材料の潜在的レシピエントとの間に相違がある。好ましい一態様においては、潜在的な個体間の特異性の相違が細胞材料のドナーと該細胞材料のレシピエントとの間に存在する。好ましい一態様においては、本発明は動物またはヒト、より好ましくはヒトに特異的、個体特異的なグリコシル化の相違に関する。個体特異的な相違は好ましくは初期ヒト細胞、初期ヒト血液細胞および胚性細胞の単核球集団中に存在する。本発明は好ましくは公知の個体特異的相違、例えば赤血球上の血液型抗原の変化の観察に関するものではない。
2)材料中の疾患特異的変異による変異の可能性がある。本発明は特に、感染性疾患、炎症性疾患または悪性疾患と関連する本発明の初期細胞集団中のグリコシル化の相違の探索に関する。本願発明者らの一部は多数の癌および腫瘍を分析し、初期細胞中の特定のグリコシル化型と類似した型のグリコシル化を観察した。
3)細胞が得られた動物、好ましくはヒトにおける特異的な個体間の生物学的相違の可能性があり、例えば細胞材料における、種、系統、集団、隔離集団、または品種特異的相違である。
4)特定の細胞集団が細胞治療用途に用いられ得ることが証明された場合、グリカン分析は、該細胞集団を臨床の場において有用であることが知られている細胞集団と同一の特徴を有するように制御するために用いることができる。
細胞培養中の時間依存的変化
さらに、細胞の長期培養において、自然突然変異が培養細胞材料中に生ずる場合がある。培養細胞株中の突然変異はグリコシル化度に対して有害な欠陥を生じさせることが多いことに留意されたい。
さらに留意すべきは、細胞の培養はグリコシル化の変化を引き起こす場合があるということである。各種の生物学的、有機および無機分子の質や濃度;温度、細胞密度または撹拌の度合い等の任意の物理的条件;などの細胞培養の任意のパラメータにおけるわずかな変化が、細胞材料およびグリコシル化における相違を引き起こす場合がある。本発明は、細胞に影響を与える任意の細胞培養パラメータによって引き起こされる細胞状態の変化を観察するために、本発明のグリコシル化変化をモニタリングすることに関する。
本発明は好ましい一態様において、細胞の密度が変化した場合のグリコシル化変化の分析に関する。本願発明者らは、これが細胞培養においてグリコシル化の大きな影響を有することに気付いた。
細胞の遺伝的または分化安定性に制限がある場合、これらはグリカン構造の変化の可能性を高めることがさらに理解される。分化の初期段階の細胞集団は異なった細胞集団を産生する能力を有している。本願発明者らは、初期ヒト細胞集団におけるグリコシル化変化を発見することができた。
細胞株の分化
本発明は特に、細胞株の分化が観察される場合に本発明のグリコシル化変化を観察することに関する。好ましい一態様において、本発明は、本発明の初期ヒト細胞または他の好ましい細胞型から、中胚葉性の幹細胞への分化の観察のための方法に関する。
細胞材料に不均一性が存在する場合、グリコシル化において観察し得る変化または有害な効果が引き起こされる場合がある。
さらに、糖鎖構造における変化は、それが有害でなくとも、または機能的に未知であっても、細胞の正確な遺伝的状態に関する情報を得るのに用いることができる。
本発明は特に、細胞培養中の細胞状態の変化を観察するための、グリコシル化の変化、好ましくはグリカンプロファイル、個々のグリカンシグナル、および/または本発明による個々のグリカンもしくはグリカン群の相対存在量における変化の分析に関する。
支持/フィーダー細胞株の分析
本発明は特に、幹細胞および初期ヒト細胞または他の好ましい細胞型の培養において用いられる支持/フィーダー細胞上の本発明のグリコシル化の相違を観察することに関する。一部の細胞は他の細胞よりも支持/フィーダー細胞として作用する優れた活性を有することが当該分野において知られている。好ましい一態様において、本発明はこれらの支持/フィーダー細胞上のグリコシル化の相違の観察のための方法に関する。この情報は幹細胞および初期ヒト細胞または他の好ましい細胞型の増殖を補助するための新規試薬の設計において用いることができる。
作業条件による混入または細胞の変化
細胞操作中に細胞に対して有害なグリコシル化または有害なグリコシル化関連作用を誘発する条件および試薬
本願発明者らはさらに、混入グリカンと同一の関連する問題を伴う、有害なグリカンが細胞により発現されるように誘導する条件および試薬を明らかにした。本願発明者らは、通常の細胞精製過程において用いられるいくつかの試薬が初期ヒト細胞材料において変化を引き起こすことを見出した。
細胞の操作中の前記物質は細胞材料のグリコシル化に影響する場合があると考えられる。これは作業下の細胞における前記構造の付着、吸収、または代謝的蓄積に基づくものであり得る。
好ましい一態様において、前記細胞操作試薬は、抗原性の、または有害な構造であるグリカン成分、例えば細胞表面NeuGc、Neu‐O‐Acまたはマンノース構造の存在に関して試験される。この試験は特にヒト初期細胞集団およびその好ましい亜集団に対して好ましい。
本願発明者らは、糖鎖構造の吸収または代謝的移送(metabolic transfer)が行われなかった場合の、細胞により発現されているグリカンに対する細胞培養中の各種エフェクター分子の効果に注目する。エフェクターは典型的には、例えば細胞表面受容体の結合により、細胞へシグナルを媒介する。
前記エフェクター分子としては各種サイトカイン、増殖因子、ならびにそれらのシグナリング分子およびコレセプター等が挙げられる。エフェクター分子は炭水化物またはレクチン等の炭水化物結合タンパク質であってもよい。
有害なグリカンの混入またはグライコームレベルでの他の改変を回避するための制御された細胞単離/精製および培養条件
細胞の操作により引き起こされるストレス
単離/精製等の細胞の操作ならびに細胞貯蔵および細胞培養過程と関連する操作は細胞にとって自然な条件ではなく、物理的および化学的ストレスを細胞に対して引き起こすと考えられる。本発明は該ストレスによって引き起こされる潜在的な変化の制御を可能にする。この制御は常法と組み合わせられてよく、他の手法による、細胞の生存能力または細胞構造が無傷であることの通常の確認と組み合わせられてもよい。
細胞操作工程における物理的および/または化学的ストレスの例
細胞の洗浄および遠心分離は物理的ストレスを引き起こし、細胞膜構造を破壊または損傷する場合がある。非生理的流れ(non‐physiological flow)条件下での細胞の精製および分離または分析も、細胞を特定の非生理的なストレスに曝露する。低温での細胞貯蔵過程および細胞保存および操作は膜構造に影響を与える。培地または他の溶液、特に細胞周囲の洗浄溶液、の組成の変化を伴う全ての操作工程は、例えば変化した水と塩とのバランスにより、または細胞の生化学的および生理学的調節に影響する他の分子の濃度を変えることにより、細胞に影響を与える。
細胞操作工程におけるストレスによるグライコーム変化の観察および制御
本願発明者らは、本発明の方法が、本発明により観察されるグライコームの少なくとも一部を通常効果的に改変する、細胞膜における変化を観察するのに有用であることを明らかにした。これは正確な構成および無傷構造細胞膜ならびに該構成の一部の特異的グリカン構造に関連すると理解される。
本発明は特に、全グライコームおよび/または細胞表面グライコームの観察に関するものであり、これらの方法はさらに、特に細胞に対してストレスが大きい条件との関連において、特に細胞が物理的および/または化学的ストレスに曝露される場合に、細胞が無傷であるか分析するのに用いられることを目的とする。それぞれの新しい細胞操作工程および/または細胞操作工程のための新しい条件は、本発明の方法により制御されることに対して有用であると理解される。さらに、グライコームの分析は、特に炭水化物結合タンパク質(炭水化物結合活性を有する、レクチン、抗体、酵素および改変タンパク質)等の特異的炭水化物結合物質による結合などの他の方法による分析のための、もっとも効果的に変わるグリカン構造の探索のために有用であると考えられる。
試薬に関して制御された細胞調製(単離または精製)
本願発明者らは一般的な細胞調製法の処理工程を分析した。動物材料による潜在的混入の複数の発生源が発見された。
本発明は特に、細胞調製過程の制御のための炭水化物分析法に関する。本発明は特に、該過程の各種工程における、動物性グリカン、好ましくはN‐グリコリルノイラミン酸による潜在的な混入を制御する方法に関する。
本発明はさらに、細胞の単離において用いる特異的グリカン管理試薬(glycan controlled reagent)に関する。
前記グリカン管理試薬は3つのレベル:
1.観察可能な量の有害なグリカン構造、好ましくはN‐グリコリルノイラミン酸またはそれに関連した構造を含まないように管理された試薬
2.観察可能な量の、細胞調製に用いられるものと類似したグリカン構造を含まないように管理された試薬
3.観察可能な量の任意のグリカン構造を含まないように管理された試薬
において制御されてよい。
管理レベル2および3は特に細胞状態がグリカン分析および/またはプロファイリング法により制御される場合に有用である。細胞調製における試薬が示されたグリカン構造を含んでいる場合、この制御がより困難になるか、または妨げられるであろう。さらに、前記グリカン構造は細胞状態を変える生物学的活性を示す場合があることに留意されたい。
グリカン管理試薬を含む細胞調製法
本発明はさらに、グリカン管理試薬を含む特異的細胞精製法に関する。
好ましい制御された細胞精製過程
結合剤が細胞の精製または他の方法のために用いられ、その後該結合剤のグリカンが生物学的作用を有し得る方法において細胞が用いられる場合、該結合剤は好ましくはグリカン管理またはグリカン中和(glycan neutralized)タンパク質である。
本発明は特に、1または複数の以下の工程を含む、ヒト初期細胞の制御された産生に関する。次の方法における通常の試薬を用いた各工程においては、外来グリカン材料による混入のリスクがあると考えられた。該方法は本発明の制御された試薬および材料の、該方法の工程内における使用に関する。
細胞の好ましい精製は、少なくとも1つの、管理された試薬の使用を含む工程を含み、より好ましくは少なくとも2つの工程が含まれ、より好ましくは少なくとも3つの工程、および最も好ましくは少なくとも工程1、2、3、4、および6が含まれる。
1.細胞材料を管理された試薬で洗浄する。
2.抗体を基盤とした方法が用いられる場合、細胞材料は、好ましい一態様において、管理されたFc受容体ブロッキング試薬によりブロックされる。さらに、グリコシル化の一部が抗体の調製において必要とされる場合があり、より好ましい一態様においては末端除去(terminally depleted)グリカンが用いられると理解される。
3.細胞を、管理されたブロッキング材料と管理された細胞結合剤材料とを有する固定化された細胞結合剤材料に接触させる。より好ましい一態様において、該細胞結合剤材料は本発明の磁性ビーズと管理されたゼラチン材料とを有する。好ましい一態様において、細胞結合剤材料は管理されており、好ましくは細胞結合剤抗体材料は管理されている。さもなくば、特に該抗体がN‐グリコリルノイラミン酸を産生して産物を汚染する細胞株により産生される場合に、該細胞結合剤抗体はN‐グリコリルノイラミン酸を含む場合もある。
4.固定化された細胞を管理されたタンパク質製剤または非タンパク質製剤で洗浄する。好ましい方法において磁性ビーズは管理されたタンパク質製剤、より好ましくは管理されたアルブミン製剤で洗浄される。
5.固定化からの細胞の任意の解放。
6.精製された細胞の、管理されたタンパク質製剤または非タンパク質製剤による洗浄。
好ましい一態様において、好ましい方法は、初期ヒト細胞の精製、好ましくは臍帯血細胞の精製のための、免疫磁性ビーズを用いる方法である。
本発明はさらに、細胞精製キット、好ましくは少なくとも1つの管理された試薬、より好ましくは少なくとも2個の管理された試薬、さらに好ましくは3つの管理された試薬、さらになお好ましくは4つの試薬を含む免疫磁性細胞精製キットに関するものであり、最も好ましくは好ましい管理された試薬は:アルブミン、ゼラチン、細胞精製のための抗体、および抗体であってもよいFc受容体ブロッキング試薬の群から選択される。
抗原性動物性グリカン等の有害なグリカンの混入
いくつかのグリカン構造混入細胞産物は産物の生物学的活性を弱める場合がある。
有害なグリカンは細胞の操作中の生存能力、または細胞の治療的使用における生存能力および/または所望の生物活性および/または安全性に影響する場合がある。
有害なグリカン構造はin vitroまたはin vivoにおける細胞の生存能力を、有害なレクチンまたは抗体の細胞への結合を引き起こしたり増加させたりすることによって低下させる場合がある。このようなタンパク質材料は、例えば細胞操作材料において用いられるタンパク質製剤中に含まれる場合がある。炭水化物標的レクチンはヒト組織および細胞上、特に血液中および内皮表面にも存在する。ヒト血中の炭水化物結合抗体は補体を活性化し、他の免疫反応をin vivoで引き起こす場合がある。さらに、血中の免疫防御レクチンまたは白血球は通常と異なるグリカン構造に対する免疫防御を引き起こす場合がある。
さらに有害なグリカンはin vivoまたはin vitroで細胞の有害な凝集を引き起こす場合がある。該グリカンは凝集および/または細胞表面レクチンに媒介される生物学的制御の変化によって細胞の発生状態における望ましくない変化を引き起こす場合がある。
さらなる問題としては、有害なグリカンのアレルゲン性、および内皮/細胞の炭水化物受容体によるin vivoでの細胞の誤ったターゲッティング等が挙げられる。
全グライコームの共通構造の特徴および好ましい共通の準特徴(subfeature)
本発明は幹細胞のための有用なグリカンマーカーおよびその組み合わせ、ならびに特異的な量の主要グリカン構造を有するグライコーム組成を明らかにする。本発明はさらに、特異的末端およびコア構造ならびにその組み合わせに関する。
本発明の細胞由来の好ましいグライコームグリカン構造および/またはグライコームは、
式C0:
Hexβz{Rn1Hex(NAc)n2XyR
[式中、Xはグリコシド結合した二糖エピトープβ4(Fucα6)GNであり、ここでnは0または1であり、またはXは無であり、そして
HexはGalまたはManまたはGlcAであり、
HexNAcはGlcNAcまたはGalNAcであり、
yはアノマー結合構造αおよび/またはβまたは誘導体化アノマー炭素からの結合であり、
zは結合位置3または4であり、ただしzが4の場合、HexNAcはGlcNAcであり、およびその場合HexはManであるか、または
HexはGalであるか、またはHexはGlcAであり、ならびに
zが3である場合、HexはGlcAまたはGalであり、HexNAcはGlcNAcまたはGalNAcであり;
n1は0または1であってR3の存在または非存在を表し;
n2は0または1であってNAcの存在または非存在を表し、ただしn2はHexβzがGalβ4である場合にのみ0であってよく、およびn2は好ましくは0であり、n2構造は好ましくは糖脂質に由来するものであり;
はコア結合に結合する1‐4、好ましくは1‐3、天然型炭水化物置換基、または無であり;
は還元末端水酸基、化学的還元末端誘導体、またはタンパク質由来のアスパラギンN‐グリコシドアミノ酸および/もしくはペプチドを含むアスパラギンN‐グリコシド等の天然アスパラギンN‐グリコシド誘導体、またはタンパク質由来のアスパラギンN‐グリコシドアミノ酸および/もしくはペプチドを含むセリンもしくはスレオニン結合O‐グリコシド等の天然セリンもしくはスレオニン結合O‐グリコシド誘導体であり、または、n2が1である場合、R2は無もしくはセラミド構造もしくはセラミド構造の誘導体、例えばリゾ脂質およびそのアミド誘導体であり;
R3は無であるか、または、GlcNAcβ6、もしくはGalNAc(HexNAcがGalNAcである場合)に結合するその還元末端にGlcNAcβ6を有するオリゴ糖、を示す分岐構造であり;またはHexがGalであり、HexNAcがGlcNAcである場合、およびzが3である場合、R3はFucα4もしくは無であり、およびzが4である場合、R3はFucα3または無である]
の構造を有する。
本発明のグリカン構造およびグライコームにおいて好ましい二糖エピトープとしては構造Galβ4GlcNAc、Manβ4GlcNAc、GlcAβ4GlcNAc、Galβ3GlcNAc、Galβ3GalNAc、GlcAβ3GlcNAc、GlcAβ3GalNAc、およびGalβ4Glc等が挙げられ、これはさらに還元末端炭素原子および非還元単糖残基から誘導体化されてよく、別の一態様においては還元末端残基から分岐してもよい。好ましい分岐エピトープとしてはGalβ4(Fucα3)GlcNAc、Galβ3(Fucα4)GlcNAc、およびGalβ3(GlcNAcβ6)GalNAc等が挙げられ、これはさらに還元末端炭素原子および非還元単糖残基から誘導体化されてよい。
本発明の方法のための好ましいエピトープ
N‐アセチルラクトサミンGalβ3/4GlcNAc末端エピトープ
2つのN‐アセチルラクトサミンエピトープGalβ4GlcNAcおよび/またはGalβ3GlcNAcは、好ましい末端エピトープであって、幹細胞上またはこの好ましい末端エピトープの主鎖構造上に存在するものを表し、例えばさらに本発明のシアル酸またはフコース誘導体化を有する。好ましい一態様において、本発明はフコシル化および/または非置換グリカン非還元末端型の末端エピトープ、より好ましくはフコシル化および非置換型に関する。本発明は特に、ヒト幹細胞グライコームからの非還元末端の末端(非置換)天然Galβ4GlcNAcおよび/またはGalβ3GlcNAc構造に関する。本発明は特定の態様においてヒト幹細胞グライコームからの非還元末端の末端フコシル化天然Galβ4GlcNAcおよび/またはGalβ3GlcNAc構造に関する。
好ましいフコシル化N‐アセチルラクトサミン
好ましいフコシル化エピトープは式TF:
(Fucα2)n1Galβ3/4(Fucα4/3)n2GlcNAcβ‐R
[式中、
n1は0または1であってFucα2の存在または非存在を表し;
n2は0または1であってFucα4/3(分岐)の存在または非存在を表し、および
RはN‐グリカン、O‐グリカンおよび/または糖脂質の還元末端コア構造である]
のものである。
好ましい構造としては、従って、1型ラクトサミン(Galβ3GlcNAc基盤):
Galβ3(Fucα4)GlcNAc(Lewis a)、Fucα2Galβ3GlcNAc H‐1型、構造、および、
Fucα2Galβ3(Fucα4)GlcNAc (Lewis b)および
2型ラクトサミン(Galβ4GlcNAc基盤):
Galβ4(Fucα3)GlcNAc(Lewis x)、Fucα2Galβ4GlcNAc H‐2型、構造、および、
Fucα2Galβ4(Fucα3)GlcNAc (Lewis y)
等が挙げられる。
2型ラクトサミン(フコシル化および/または末端非置換)は、成体幹細胞およびこれらに直接由来する分化した細胞に関して特に好ましい群を形成する。1型ラクトサミン(Galβ3GlcNAc構造)は、胚性幹細胞に関して特に好ましい。
ラクトサミンGalβ3/4GlcNAc、およびラクトース構造(Galβ4Glc)を有する糖脂質構造
ラクトサミンはラクトース基盤の糖脂質とともに好ましい構造群を形成する。これらの構造はβ3/4Gal転移酵素の産物としての類似した特徴を共有する。β3/4ガラクトース基盤の構造はタンパク質結合および糖脂質グライコームの特徴的な特性を生ずることが観察された。
本発明はさらに、Galβ3/4GlcNAc構造が、各種幹細胞型の糖脂質上の、分化と関連する構造の主要な特徴であることを明らかにした。このような糖脂質は2つの本発明の好ましい構造エピトープを有する。最も好ましい糖脂質型としては、従って、ラクトシルセラミド基盤のスフィンゴ糖脂質および特にラクト‐(Galβ3GlcNAc)、例えばラクトテトラオシルセラミドGalβ3GlcNAcβ3Galβ4GlcβCerが挙げられ、好ましい構造はさらに:Galβ3(Fucα4)GlcNAc(Lewis a)、Fucα2Galβ3GlcNAc(H‐1型)、構造、およびFucα2Galβ3(Fucα4)GlcNAc(Lewis b)またはシアル化構造SAα3Galβ3GlcNAcもしくはSAα3Galβ3(Fucα4)GlcNAc[式中、SAはシアル酸、好ましくはNeu5Acであって好ましくはラクトテトラオシルセラミドのGalβ3GlcNAcを置換する]の群から選択される非還元末端構造を有し
ならびに好ましくは式:
(Sacα3)n5(Fucα2)n1Galβ3(Fucα4)n3GlcNAcβ3[Galβ3/4(Fucα4/3)n2GlcNAcβ3]n4Galβ4GlcβCer
[式中、
n1は0または1であってFucα2の存在または非存在を表し;
n2は0または1であってFucα4/3(分岐)の存在または非存在を表し、
n3は0または1であってFucα4(分岐)の存在または非存在を表し
n4は0または1であって(フコシル化)N‐アセチルラクトサミン伸長の存在または非存在を表し;
n5は0または1であってSacα3伸長の存在または非存在を表し;
Sacは末端構造、好ましくはα3結合を有するシアル酸であって、ただしSacが存在する場合、n5は1であり、その場合n1は0である]
などのそのフコシル化および/または伸長バリアント
ならびに
ネオラクト(Galβ4GlcNAc)含有糖脂質、例えばネオラクトテトラオシルセラミドGalβ4GlcNAcβ3Galβ4GlcβCerであって、好ましい構造はさらにその非還元末端のGalβ4(Fucα3)GlcNAc (Lewis x)、Fucα2Galβ4GlcNAc H‐2型、構造、および、Fucα2Galβ4(Fucα3)GlcNAc(Lewis y)を有するもの
ならびに
好ましくは
(Sacα3/6)n5(Fucα2)n1Galβ4(Fucα3)n3GlcNAcβ3[Galβ4(Fucα3)n2GlcNAcβ3]n4Galβ4GlcβCer
[n1は0または1であってFucα2の存在または非存在を表し;
n2は0または1であってFucα3(分岐)の存在または非存在を表し、
n3は0または1であってFucα3(分岐)の存在または非存在を表し
n4は0または1であって(フコシル化)N‐アセチルラクトサミン伸長の存在または非存在を表し;
n5は0または1であってSacα3/6伸長の存在または非存在を表し;
Sacは末端構造、好ましくはα3結合を有するシアル酸(SA)、またはα6結合を有するシアル酸であって、ただしSacが存在する場合、n5は1であり、その場合n1は0であり、およびシアル酸がα6結合により結合する場合、好ましくはn3も0である]
などのそのフコシル化および/または伸長バリアント
等が挙げられる。
好ましい幹細胞スフィンゴ糖脂質グリカンプロファイル、組成、およびマーカー構造
本願発明者らは幹細胞糖脂質グライコームを、遊離させた遊離グリカンの質量分析プロファイリングにより記載し、約80個のグリカンシグナルを各種幹細胞型から明らかにすることができた。中性グリカンの提案された単糖組成は2‐7Hex、0‐5HexNAc、および0‐4dHexからなっていた。酸性グリカンシグナルの提案された単糖組成は0‐2NeuAc、2‐9Hex、0‐6HexNAc、0‐3dHex、および/または0‐1硫酸もしくはリン酸エステルからなっていた。本発明は特に、このような幹細胞グリカンプロファイルならびに/または本発明において幹細胞に関して記載される使用のための構造の、分析およびターゲッティングに関する。
本発明はさらに、特に、実施例に記載されるような幹細胞型に特異的なスフィンゴ糖脂質グリカンシグナルに関する。好ましい一態様において、優先的には876および892等のhESCに典型的であるグリカンシグナルがそれらの分析に用いられ、より優先的にはFucHexHexNAcLacであり、ここではα1,2‐Fucがα1,3/4‐Fucに対して優先的であり、およびHexHexNAcLac、および、より優先的には、Galβ3[HexHexNAc]Lacである。好ましい他の一態様において、MSC、特にCB MSCに典型的なグリカンシグナル、優先的には1460および1298等、ならびに大型中性糖脂質、特にHex2‐3HexNAcLac、より優先的にはポリ‐N‐アセチルラクトサミン鎖、さらに優先的にはβ1,6‐分岐、および優先的には上記のII型LacNAcエピトープを末端とするものが、本発明に記載される使用のMSCとの関連で使用される。
本実験で幹細胞スフィンゴ糖脂質グリカンにおいて示された末端グリカンエピトープは、幹細胞の識別またはグリカンを介した幹細胞に対する特異的結合、および本発明の他の使用において有用であり:Gal、Galβ4Glc(Lac)、Galβ4GlcNAc(LacNAc 2型)、Galβ3、非還元末端HexNAc、Fuc、α1,2‐Fuc、α1,3‐Fuc、Fucα2Gal、Fucα2Galβ4GlcNAc(H 2型)、Fucα2Galβ4Glc(2’‐フコシルラクトース)、Fucα3GlcNAc、Galβ4(Fucα3)GlcNAc(Lex)、Fucα3Glc、
Galβ4(Fucα3)Glc(3‐フコシルラクトース)、Neu5Ac、Neu5Acα2,3、およびNeu5Acα2,6の末端エピトープ等が挙げられる。本発明はさらに、全幹細胞スフィンゴ糖脂質グライコームおよび/またはグライコーム内の全末端エピトーププロファイルに関する。
本願発明者らはさらに、hESCにおいて、SSEA‐3およびSSEA‐4発生関連抗原に対応するグリカンシグナル、および幹細胞グライコーム中におけるそのモル比を分析することができた。本発明はさらに、全グライコームまたはサブグライコーム中のこのような幹細胞エピトープの定量的分析に関するものであり、これは表面抗原のみを認識する抗体のより効果的な代替として有用である。さらなる一態様において、本発明は、マウスES細胞におけるSSEA‐1発現と対比した、hESCにおけるα1,2‐フコシル化抗原の発現に関する実施例において示されるように、全グリカンプロファイルの研究によって全グライコームプロファイル中の隠れた発生および/または幹細胞抗原の発現を発見および分析することに関する。
本発明は、本発明の各種細胞材料中の両者の構造型の特徴的変異(同様な対照細胞または混入細胞等と比較して上昇または低下した発現)を明らかにした。該構造は3つの異なるグライコーム型:N‐グリカン、O‐グリカン、および糖脂質、内の特徴的かつ相違する発現により明らかにされた。本発明は、グリカン構造が幹細胞の特徴的な特性であり、本発明の各種分析に有用であることを明らかにした。これらの量ならびにエピトープおよび/または誘導体の相対量は、細胞株間で、または増殖中、貯蔵中、もしくはサイトカインおよび/もしくはホルモン等のエフェクター分子による誘導中に異なった条件に曝露された細胞間において、相違する。
特には胚幹細胞の分析のための好ましいエピトープおよび抗体結合剤
胚幹細胞による抗体標識実験の表から、特異的な1型N‐アセチルラクトサミン抗原認識抗体が、非修飾二糖Galβ3GlcNAc(Le c、Lewis c)ならびにフコシル化誘導体H型およびLewis bを認識することが明らかになった。この抗体は、幹細胞の培養に用いたマウスフィーダー細胞mEFと比べてhESC細胞集団の識別に効果的であった。
特異的な異なるH2型を認識する抗体は、胚幹細胞の異なる亜集団を認識し、それによりこの細胞の亜集団の決定に有用であることが明らかになった。本発明は、さらに、胚幹細胞上の特定のLewis xおよびシアリル‐Lewis x構造を明らかにした。
他の好ましい結合剤および/または抗体は、GF287(H1型)と同じエピトープと結合する結合剤を含む。好ましい一態様では、抗体は、Fucα2Galβ3GlcNAcエピトープと結合する。より好ましい抗体は、Abcamによるクローン17‐206(ab3355)の抗体を含む。このエピトープは適切であり、幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞の検出、単離、ならびに分化段階および/または多能性の評価に用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体を用いて、フィーダー細胞と幹細胞とを含む細胞混合物から、幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞をポジティブに単離および/または分離および/または濃縮することができる。
他の好ましい結合剤および/または抗体は、GF279(Lewis c、Galβ3GlcNAc)と同じエピトープと結合する結合剤を含む。好ましい一態様では、抗体は、複合糖質の、より好ましくは糖タンパク質およびラクトテトラオシルセラミド等の糖脂質のGalβ3GlcNAcエピトープと結合する。より好ましい抗体は、AbcamによるクローンK21(ab3352)の抗体を含む。このエピトープは、幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞の分化段階および/または多能性の検出、単離、および評価に適しており、これらに用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体を用いて、幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞を、フィーダー細胞と幹細胞とを含む細胞混合物からポジティブに単離および/または分離および/または濃縮することができる。
他の好ましい結合剤および/または抗体は、GF288(グロボ H)と同じエピトープと結合する結合剤を含む。好ましい一態様では、抗体は、Fucα2Galβ3GalNAcβエピトープと、より好ましくはFucα2Galβ3GalNAcβ3GalαLacCerエピトープと結合する。より好ましい抗体は、GlycotopeによるクローンA69‐A/E8(MAB‐S206)の抗体を含む。このエピトープは、幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞の分化段階および/または多能性の検出、単離、および評価に適しており、これらに用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体を用いて、幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞を、フィーダー細胞と幹細胞とを含む細胞混合物からポジティブに単離および/または分離および/または濃縮することができる。
他の好ましい結合剤および/または抗体は、GF284(H2型)と同じエピトープと結合する結合剤を含む。好ましい一態様では、抗体は、Fucα2Galβ4GlcNAcエピトープと結合する。より好ましい抗体は、AcrisによるクローンB393(DM3015)の抗体を含む。このエピトープは、幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞の分化段階および/または多能性の検出、単離、および評価に適しており、これらに用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体を用いて、幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞を、フィーダー細胞と幹細胞とを含む細胞混合物からポジティブに単離および/または分離および/または濃縮することができる。
他の好ましい結合剤および/または抗体は、GF283(Lewis b)と同じエピトープと結合する結合剤を含む。好ましい一態様では、抗体は、Fucα2Galβ3(Fucα4)GlcNAcエピトープと結合する。より好ましい抗体は、Acrisによるクローン2‐25LE(DM3122)の抗体を含む。このエピトープは、幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞の分化段階および/または多能性の検出、単離、および評価に適しており、これらに用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体を用いて、幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞を、フィーダー細胞と幹細胞とを含む細胞混合物からポジティブに単離および/または分離および/または濃縮することができる。
他の好ましい結合剤および/または抗体は、GF286(H2型)と同じエピトープと結合する結合剤を含む。好ましい一態様では、抗体は、Fucα2Galβ4GlcNAcエピトープと結合する。より好ましい抗体は、AcrisによるクローンB393(BM258P)の抗体を含む。このエピトープは、幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞の分化段階および/または多能性の検出、単離、および評価に適しており、これらに用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体を用いて、幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞を、フィーダー細胞と幹細胞とを含む細胞混合物からポジティブに単離および/または分離および/または濃縮することができる。
他の好ましい結合剤および/または抗体は、GF290(H2型)と同じエピトープと結合する結合剤を含む。好ましい一態様では、抗体は、Fucα2Galβ4GlcNAcエピトープと結合する。より好ましい抗体は、GlycotopeによるクローンA51‐B/A6(MAB‐S204)の抗体を含む。このエピトープは、幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞の分化段階および/または多能性の検出、単離、および評価に適しており、これらに用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体を用いて、幹細胞、好ましくはヒト胚幹細胞を、フィーダー細胞と幹細胞とを含む細胞混合物からポジティブに単離および/または分離および/または濃縮することができる。
フィーダー細胞、好ましくはマウスフィーダー細胞と結合する他の結合剤は、GF285(H2型)と同じエピトープと結合する結合剤を含む。好ましい一態様では、抗体は、Fucα2Galβ4GlcNAc、Fucα2Galβ3(Fucα4)GlcNAc、Fucα2Galβ4(Fucα3)GlcNAcエピトープと結合する。より好ましい抗体は、AcrisによるクローンB389(DM3014)の抗体を含む。このエピトープは、フィーダー細胞、好ましくはヒト胚幹細胞との培養物中のマウスフィーダー細胞の検出、単離、および評価に適しており、これらに用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体を用いて、フィーダー細胞、好ましくはマウス胚性フィーダー細胞を、フィーダー細胞と幹細胞とを含む細胞混合物からポジティブに単離および/または分離および/または濃縮(ネガティブに幹細胞を選択)することができる。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞と結合する他の結合剤は、GF289(Lewis y)と同じエピトープと結合する結合剤を含む。好ましい一態様では、抗体は、Fucα2Galβ4(Fucα3)GlcNAcエピトープと結合する。より好ましい抗体は、GlycotopeによるクローンA70‐C/C8(MAB‐S201)の抗体を含む。このエピトープは、幹細胞、好ましくはフィーダー細胞との培養物中のヒト幹細胞の検出、単離、および評価に適しており、これらに用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体を用いて、幹細胞、好ましくはヒト幹細胞を、フィーダー細胞と幹細胞とを含む細胞混合物からポジティブに単離および/または分離および/または濃縮(ネガティブにフィーダー細胞を選択)することができる。
染色された幹細胞、すなわち幹細胞上の本発明のグリカン構造の、染色強度および細胞数は、単離および分化マーカーのための結合剤の適合性および有用性を表す。例えば、グリカン構造発現細胞の数が比較的少ないことは系統特異性、およびそのコロニーから選択/単離され、培養される場合のサブセットの選択に対する有用性を表す場合がある。少ない発現数とは、5%未満、10%未満、15%未満、20%未満、30%未満、または40%未満である。さらに、発現量が1〜10%、10%〜20%、15〜25%、20〜40%、25〜35%、または35〜50%である場合には少ない発現数と考えられる。典型的には、FACS分析を行って、グリカン構造を発現する細胞のサブセットを濃縮、単離および/または選択することができる。
グリカン発現細胞の数が多いことは、多能性/多分化能マーカーにおける有用性、および結合剤が哺乳動物細胞の集団内の多能性または多分化能幹細胞を同定、分析、選択または単離するのに有用であることを表す場合がある。多い発現数とは50%超、より好ましくは60%超、さらに好ましくは70%超、および最も好ましくは80%、90または95%超である。さらに、発現量が50〜60、55%〜65%、60〜70%、70〜80、80〜90%、90〜100、または95〜100%である場合には多い発現数と考えられる。典型的には、FACS分析を行って、グリカン構造を発現する細胞のサブセットを濃縮、単離および/または選択することができる。
結合剤GF279、GF287、およびGF289によって認識されるエピトープならびにこれらの結合剤は、培養物中の幹細胞の多能性および多分化能の分析に特に有用である。結合剤GF283、GF284、GF286、GF288、およびGF290によって認識されるエピトープならびにこれらの結合剤は、幹細胞のサブセットの選択または単離に特に有用である。このようなサブセットまたは亜集団は、さらに増殖させ、その分化する能力について、および特定の分化経路に関与する分化した細胞群または細胞についてin vitroで研究することができる。
本明細書で用いられるパーセントは、分析または実験にかけられた全細胞に対してどれだけ多くの細胞がグリカン構造を発現しているかの平均割合を意味する。例えば、幹細胞コロニー内でグリカン構造を発現する20%の幹細胞は、視覚的に評価された際に、結合剤、例えば抗体染色が約20%の細胞において観察され得ることを意味する。
コロニーでは、グリカン構造を有する細胞は、特定の領域内に分布される場合があり、または小パッチ状のコロニーに分散される場合がある。パッチ状に観察される幹細胞は、細胞系統に特異的な研究、単離および分離に有用である。パッチ状の特徴は、GF283、GF284、GF286、GF288、およびGF290で観察された。
フィーダー細胞、好ましくはマウスフィーダー細胞、最も好ましくは胚性線維芽細胞のポジティブセレクションに対しては、GF285が有用である。この抗体は特異性が低く、例えばLewis yと結合する場合があり、これは、mEF細胞中でも観察されている。これはほとんどすべてのフィーダー細胞を染色するが、幹細胞の染色はあったとしてもほとんどない。しかしこの抗体は、最適化された条件下では、胚性体(embryonal bodies)の薄い表面と結合することが明らかになり、このことは、Lewis y抗体が胚様体のコアと結合することと補完的であった。発現のすべてのパーセントについては表を参照されたい。
間葉系幹細胞およびそれに由来する分化した組織型幹細胞
間葉系幹細胞の分化状態の評価のために有用な抗体。
実施例13に、間葉系幹細胞および分化した間葉系幹細胞の標識を示す。
本発明は、抗体GF303、好ましくはFucα2Galβ3GlcNAc、およびGF276により認識される構造が、間葉系幹細胞が骨原性に分化した幹細胞へと分化する際に現れることを明らかにした。さらに、Tn抗原に対応するGalNAcα基構造GF278、およびGF277、シアリル‐Tnが同時に増加することも明らかにした。
本発明はさらに、間葉系幹細胞(特に骨髄由来)および骨原性に分化した間葉系幹細胞の両者に特徴的ないくつかの標的構造に対する結合剤のための本発明による好ましい使用に関する。好ましい標的構造は抗体GF275により認識され得る1つのGalNAcα基構造を含み、該抗体の抗原は好ましくは該抗体に対して公知のシアル化O‐グリカン糖ペプチドエピトープである。間葉系および骨原性に分化した幹細胞の両者に発現するエピトープはさらに2つの特徴的グロボ型抗原構造:結合がグロボトリオース(Gb3)型抗原に対応するGF298の抗原、およびグロボテトラオース(Gb4)型抗原に対応するGF297の抗原、を含む。本発明はさらに、末端2型ラクトサミンエピトープが特に両型の間葉系幹細胞に発現していることを明らかにしたものであり、これは、実施例13において、両細胞をHII型抗原を認識する抗体で染色することにより例示された。
本発明はさらに、間葉系幹細胞(特に骨髄由来)がより分化した、好ましくは骨原性に分化した間葉系幹細胞に分化する際に、実質的に減少する、または事実上観察できない程度にまで低下/減少するいくつかの標的構造に対する結合剤のための、本発明の好ましい使用に関する。これらの標的構造は2つのグロボ系列構造を含み、これらは好ましくは、抗原SSEA‐3として認識されるガラクトシル‐グロボシド型構造、抗原SSEA‐4として認識されるシアリル‐ガラクトシルグロボシド型構造である。好ましい減少する標的構造はさらに、2つの2型N‐アセチルラクトサミン標的構造、Lewis xおよびシアリル‐Lewis xを含む。グロボシド型スフィンゴ糖脂質構造が、本願発明者らにより、MSCにおいて、直接的な構造分析、より具体的にはSSEA‐3およびSSEA‐4グリカン抗原単糖組成に対応するグリカンシグナルによって、hESCと比較して少量、しかし有意な量検出された。これらの抗原はMSCにおいてモノクローナル抗体によっても検出された。本発明は従って、特に、本発明に記載の使用における、MSCおよびそれらから得られた細胞と関連したこれらのグロボシド構造に関する。
本発明の好ましい一態様において、GF275、GF277、GF278、GF297、GF298、GF302、GF305、GF307、GF353、またはGF354と同一のエピトープに結合する抗体または結合剤は、好ましくは骨髄由来の、間葉系幹細胞の検出/識別に有用である(該抗体に認識される対応するエピトープを実施例13に列挙する)。これらのエピトープは、培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の(間葉系)幹細胞の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。これらの抗体は、他の骨髄由来細胞を含んだ細胞の混合物から、好ましくは間葉系および/または骨髄由来の幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF275(MUC‐1糖タンパク質のシアル化炭水化物エピトープ)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。より好ましい抗体はAcrisによるクローンBM3359の抗体を含む。このエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の(間葉系)幹細胞の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。これらの抗体または結合剤は、他の骨髄由来細胞を含んだ細胞の混合物から、好ましくは間葉系および/または骨髄由来の、または骨原性方向に分化した幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF305(Lewis x)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。より好ましい抗体はChemiconによるクローンCBL144の抗体を含む。このエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の(間葉系)幹細胞の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体または結合剤は、細胞の混合物から、好ましくは間葉系および/または骨髄由来の幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF307(シアリルLewis x)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。より好ましい抗体はChemiconによるクローンMAB2096の抗体を含む。このエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の(間葉系)幹細胞の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体または結合剤は、細胞の混合物から、好ましくは間葉系および/または骨髄由来の幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。
好ましい一態様において、GF305、GF307、GF353またはGF354と同一のエピトープに結合する抗体または結合剤は間葉系幹細胞のポジティブセレクションおよび/または濃縮に有用である(該抗体により認識される対応するエピトープを実施例13に列挙する)。
本発明の他の好ましい態様において、GF275、GF276、GF277、GF278、GF297、GF298、GF302、GF303、GF307またはGF353と同一のエピトープに結合する抗体または結合剤は、分化した、好ましくは骨髄由来の、および/または骨原性方向に分化した、間葉系幹細胞を検出/識別するのに有用である(該抗体により認識される対応するエピトープを実施例13に列挙する)。これらのエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の(間葉系)幹細胞の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。これらの抗体は、他の骨髄由来細胞を含んだ細胞の混合物から、好ましくは間葉系および/または骨髄由来の幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF297(グロボシドGL4)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。より好ましい抗体はAbcamによるクローンab23949の抗体を含む。このエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の未分化(間葉系)幹細胞、および好ましくは骨原性方向に分化したものの検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体または結合剤は、細胞の混合物から、細胞、好ましくは骨原性方向の間葉系幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF298(ヒトCD77;GB3)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。より好ましい抗体はAcrisによるクローンSM1160の抗体を含む。このエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の未分化(間葉系)幹細胞、および好ましくは骨原性方向に分化したものの検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体または結合剤は、細胞の混合物から、細胞、好ましくは骨原性方向の間葉系幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF302(H2型血液抗原)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。好ましい一態様において、抗体はFucα2Galβ4GlcNAcエピトープに結合する。より好ましい抗体はAcrisによるクローンDM3015の抗体を含む。このエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の未分化(間葉系)幹細胞、および好ましくは骨原性方向に分化したものの検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体または結合剤は、細胞の混合物から、細胞、好ましくは骨原性方向の間葉系幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。
本発明の好ましい一態様において、GF276、GF277、GF278、GF303、GF305、GF307、GF353、またはGF354と同一のエピトープに結合する抗体または結合剤は、好ましくは骨髄由来の、および骨原性方向に分化した、間葉系幹細胞を検出/識別するのに有用である(該抗体により認識される対応するエピトープを実施例13に列挙する)。これらのエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の(間葉系)幹細胞の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。これらの抗体は、他の骨髄由来細胞を含んだ細胞の混合物から、好ましくは間葉系および/もしくは骨髄由来の、または骨原性方向に分化した、幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。
さらに、GF276もしくはGF303と同一のエピトープに結合する結合剤、または抗体GF276および/もしくはGF303は、培養における、またはin vivoにおける、骨原性に分化した幹細胞の検出、単離および評価に特に有用である(該抗体により認識される対応するエピトープを実施例13に列挙する)。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF276(癌胎児性抗原)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。より好ましい抗体はAcrisによるクローンDM288の抗体を含む。このエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の、および骨原性方向の、分化した(間葉系)幹細胞の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体または結合剤は、細胞の混合物から、細胞、好ましくは骨原性方向の間葉系幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF277(ヒトシアロシル‐Tn抗原;STn、sCD175)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。より好ましい抗体はAcrisによるクローンDM3197の抗体を含む。このエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の、および骨原性方向の、分化した(間葉系)幹細胞の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体または結合剤は、細胞の混合物から、細胞、好ましくは骨原性方向の間葉系幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF278(ヒトシアロシル‐Tn抗原;STn、sCD175 B1.1)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。より好ましい抗体はAcrisによるクローンDM3218の抗体を含む。このエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の、および骨原性方向の、分化した(間葉系)幹細胞の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体または結合剤は、細胞の混合物から、細胞、好ましくは骨原性方向の間葉系幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。
幹細胞、好ましくはヒト幹細胞に結合する他の結合剤は、GF303(血液型H1抗原、BG4)と同一のエピトープに結合する結合剤を含む。好ましい一態様において、抗体はFucα2Galβ3GlcNAcエピトープに結合する。より好ましい抗体はAbcamによるクローンab3355の抗体を含む。このエピトープは培養における、またはin vivoにおける、好ましくは骨髄由来の、および骨原性方向の、分化した(間葉系)幹細胞の検出、単離および評価に適しており、用いることができる。検出はin vitroで、FACS用途のため、および/または細胞系統特異的な用途のため、行われ得る。この抗体または結合剤は、細胞の混合物から、細胞、好ましくは骨原性方向の間葉系幹細胞を、ポジティブに単離および/または分離および/または濃縮するために用いることができる。
さらに、前記抗体または結合剤は骨原性系統(osteogenic lineage)のための幹細胞を単離および濃縮するのに有用である。これは、例えば抗体GF276、GF277、GF278、およびGF303を用いた、ポジティブセレクションにより行うことができる(該抗体に認識される対応するエピトープを実施例13に列挙する)。ネガティブディプリーション(negative depletion)については、好ましいエピトープは抗体GF296、GF300、GF304、GF305、GF307、GF353、またはGF354で認識されるものと同じである。ネガティブディプリーションについては、好ましいエピトープは抗体GF354(SSEA‐4)またはGF307(シアリルLewis x)で認識されるものと同じである。
各種幹細胞型間の比較
本データは、1型および2型N‐アセチルラクトサミンの群の比較が、間葉系幹細胞および胚幹細胞等の幹細胞の分析のために、および または線維芽細胞様フィーダー細胞等の混入細胞集団からの細胞の分離のために、有用な方法であることを明らかにした。未分化間葉系細胞はhESC細胞から明らかになったI型N‐アセチルラクトサミン抗原を欠いていたが、両細胞型および潜在的混入線維芽細胞はII型N‐アセチルラクトサミン認識抗体による一様でない標識を有している。
「主に」という語は好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、および最も好ましくは少なくとも90%を表す。幹細胞との関連において、「主に」という語は、グリカン構造を発現し、哺乳動物細胞の集団中の多能性または多分化能幹細胞を同定、分析、選択または単離するのに有用な、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも75%、および最も好ましくは少なくとも90%の細胞を表す。
細胞成分およびその混合物の単離のための結合剤の使用
本発明は、新規結合試薬が好ましい一態様において新規標的/マーカー構造を有する幹細胞からの細胞成分の単離に用いられることを明らかにした。単離された細胞は好ましくは遊離グリカン、またはタンパク質もしくは脂質もしくはその断片に結合したグリカンである。
本発明は特に、構造が1つまたはいくつかの型のグリカン材料sele
a)幹細胞材料から遊離した遊離グリカンならびに/または
b)グリカン複合体材料、例えば
b1)糖アミノ酸材料、例えば
b1a)糖タンパク質
b1b)糖オリゴペプチドおよび糖ポリペプチド等の糖ペプチド
および/もしくは
b2)本発明により明らかになった好ましい炭水化物構造を有する脂質結合材料
を含む場合の、前記構造を含む細胞成分の単離に関する。
標的構造を有する細胞成分の単離のための一般的方法
本発明の細胞成分の単離とは、特異的結合剤によって結合されるグリカン構造である対応する標的構造に本発明の結合剤分子を結合させる工程を含む方法において、本発明の標的構造を有する増加した(または濃縮された)量のグリカンを含んだ分子画分を産生することを意味する。
前記画分の単離の過程は、本発明の結合剤分子を幹細胞由来の対応する標的構造と接触させることと、濃縮された標的構造組成物を単離することとを伴う。
細胞成分を単離するための好ましい方法は次の工程
1)幹細胞試料を提供すること。
2)本発明の結合剤分子を対応する標的構造と接触させること。
3)前記結合剤と標的構造との複合体を少なくとも細胞材料の一部から単離すること。
を含む。
前記成分は一般に細胞構造の特定の画分、例えば原形質膜を含む細胞膜画分;およびオルガネラ画分;および可溶性タンパク質、脂質または遊離グリカン画分等の可溶性グリカン含有画分;において豊富に存在すると理解される。前記結合剤は全細胞画分に対して用いることができると理解される。
好ましい一態様において、標的構造は、プロテアーゼにより遊離する細胞表面タンパク質または界面活性剤可溶性膜タンパク質等の、細胞タンパク質の画分内に豊富に存在する。
好ましい標的構造組成物は、幹細胞において、または幹細胞に特徴的な割合で、特異的に発現する、結合剤構造に対応するグリカン構造を有する糖タンパク質または糖ペプチド、およびペプチドまたはタンパク質エピトープを含む。
より好ましくは、本発明は、前記単離工程における標的構造画分の精製に関する。精製は本発明の好ましい一態様において、少なくとも部分的精製である。好ましくは、標的グリカン含有材料は、好ましくはそれが発現される細胞画分の成分の中で、少なくとも2倍に精製される。より好ましい精製水準としては5倍および10倍精製、より好ましくは100、さらに好ましくは1000倍精製等が挙げられる。好ましくは、精製された画分は少なくとも10%の標的グリカン含有分子を含み、より好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらになお好ましくは少なくとも70%の純粋、および最も好ましくは少なくとも90%の純粋を含む。好ましくは前記%値は他の標的グリカン非含有複合糖質分子に対するモルパーセントであり、より好ましくは前記材料は本質的に他の主要な有機混入分子を含まない。
好ましい精製標的グリカン組成物および標的グリカン‐結合剤複合体
本発明は単離または精製された標的グリカン‐結合剤複合体および単離された標的グリカン分子組成物に関するものであり、ここで該標的グリカンは本発明の特異的標的構造に富む。
好ましくは、精製された標的グリカン‐結合剤複合体組成物は少なくとも10%の、結合剤と複合した標的グリカン含有分子、より好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらになお好ましくは少なくとも70%の純粋な、および最も好ましくは少なくとも90%の純粋な、結合剤と複合した標的グリカン含有分子を含む。
好ましくは、精製された標的グリカン組成物は少なくとも10%の標的グリカン含有分子、より好ましくは少なくとも30%、さらに好ましくは少なくとも50%、さらになお好ましくは少なくとも70%の純粋な、および最も好ましくは少なくとも90%の純粋な、標的グリカン含有分子を含む。
本発明はさらに、本発明の結合剤分子を幹細胞由来の対応する標的構造に接触させて濃縮された標的構造を単離する工程を伴う画分の単離の方法によって産生された、濃縮された標的グリカン組成物に関する。
標的グリカンの精製のための結合剤技術
細胞の糖タンパク質、糖ペプチド、遊離オリゴ糖および他のグリカン複合体の親和性精製のための方法は、当該分野において周知である。好ましい方法としては、アフィニティークロマトグラフィー等の固相を用いる結合剤技術、免疫沈降等の沈降、免疫磁性ビーズ法等の結合剤‐磁性法などが挙げられる。アフィニティークロマトグラフィーは、レクチン(Wang Y et al (2006) Glycobiology 16 (6) 514‐23)を用いた、もしくは抗体による、糖ペプチドの精製に対して、または、抗体(例えばPrat M et al cancer Res (1989) 49, 1415‐21; Kim YD et al et al Cancer Res (1989) 49、2379)および/もしくはレクチン(例えばCumming and Kornfeld (1982) J Biol Chem 257、11235‐40; Yae E et al. (1991) 1078 (3) 369‐76; Shibuya N et al (1988) 267 (2) 676‐80; Gonchoroff DG et al. 1989、35、29‐32; Hentges and Bause (1997) Biol Chem 378 (9) 1031‐8)を用いた糖タンパク質/ペプチドの精製に対して、記載されている。遊離オリゴ糖の識別も対象とする弱く結合する抗体のための具体的な方法が例えば(Ohlson S et al. J Chromatogr A (1997) 758 (2) 199‐208), Ohlson S et al.Anal Biochem (1988) 169 (1) 204‐8)に記載のように開発されている。該方法は例えば(Cummings and Kornfeld (1982) J Biol Chem 257、11235‐40)に示されるように異なった特異性の結合剤による複数の工程を伴っている場合がある。オリゴ糖混合物のための抗体またはタンパク質(レクチン)結合剤アフィニティークロマトグラフィーも、例えば(Kitagawa H et al. (1991) J Biochem 110 (49 598‐604; Kitagawa H et al. (1989) Biochemistry 28 (22) 8891‐7; Dakour J et al Arch Biochem Biophys (1988) 264, 203‐ 13)、糖脂質のためのものが、例えば(Bouhours D et al (1990) Arch Biochem Biophys 282 (1) 141‐6)に記載されている。グリカンを対象とするアフィニティークロマトグラフィーおよび/または有用なレクチンおよび抗体特異性のさらなる情報は、(Debaray and Montreuil (1991) Adv. Lectin Res 4、51‐96; "The molecular immunology of complex carbohydrates" Adv Exp Med Biol (2001) 491 (ed Albert M Wu) Kluwer Academic/Plenum publishers, New York; "Lectins" second Edition (2003) (eds Sharon、Nathan and Lis、Halina) Kluwer Academic publishers Dordrecht, The Neatherlands)等の総説およびモノグラフから入手可能である。
前記方法は常圧またはHPLCクロマトグラフィーを用い、従来のクロマトグラフィー法または他のタンパク質およびペプチド精製法を用いるさらなる工程を含んでいてよいく、好ましいさらなる単離法は、特に低Mwグリカンおよび複合体、好ましくは糖ペプチドの単離のためのゲル濾過(サイズ排除)クロマトグラフィーである。
さらに、単離されたタンパク質およびペプチドは質量分析法、例えば(Wang Y et al (2006) Glycobiology 16 (6) 514‐23)により識別され得ることが知られている。本発明は特に、質量分析、ペプチドシーケンシング、化学的分析、アレイ分析等の方法または他の当該分野に公知の方法によるグリカンおよび/またはその複合体の精製、および単離された成分の識別、のための、本発明の結合剤の使用に関する。
トリプシン感受性型グリカン標的の存在の解明
本発明は実施例において本グリカン結合剤、特にモノクローナル抗体、の標的構造の一部が、トリプシン感受性であることを明らかにした。細胞がトリプシンにより処理(培養から解放)されると、細胞表面抗原のFACS分析において、抗原構造は本質的に観察されないか、またはこれらは少ない量で観察されるが、Versene処理(PBS中の0.02%EDTA)後には観察可能である。これは例えば、SSEA‐4抗原に結合することが示されている抗体GF354による間葉系幹細胞の標識において観察された。この標的抗原構造は従来、シアリル‐ガラクトシルグロボシド糖脂質と考えられてきたが、明らかに抗体はグリカン配列の非還元末端のエピトープのみを認識する。本発明はそこで特に、SSEA‐4抗体によって結合・濃縮される、間葉系幹細胞糖ペプチド結合グリカン構造の単離および分析の方法、および対応する糖ペプチドおよび糖タンパク質の分析に関する。本発明はさらに、幹細胞、特に間葉系幹細胞および胚幹細胞由来のトリプシン非感受性グリカン材料の分析に関する。
本発明はまた、ab GF275のシアリルムチン型標的の大部分はトリプシン感受性であり、少数は非トリプシン感受性であることも明らかにした。本発明は、トリプシン感受性およびトリプシン非感受性の両者のグリカン画分、好ましくは糖タンパク質および糖ペプチドの、本発明の方法による単離に関する。本発明はさらに、好ましくは材料が間葉系幹細胞から単離された場合の、抗体GF302によって結合されるタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)感受性様糖ペプチドおよび糖タンパク質の単離および分析に関する。
本明細書において、「結合剤」、「結合物質」および「マーカー」は互換的に用いられる。
抗体
本発明の有用なレクチンおよび有用な抗体特異性、および還元末端伸長抗体エピトープに関する情報は、(Debaray and Montreuil (1991) Adv. Lectin Res 4, 51‐96; “The molecular immunology of complex carbohydrates” Adv Exp Med Biol (2001) 491 (ed Albert M Wu) Kluwer Academic/Plenum publishers, New York; “Lectins” second Edition (2003) (eds Sharon, Nathan and Lis, Halina) Kluwer Academic publishers Dordrecht、The Neatherlands等の総説およびモノグラフならびにpubmed/espacenet等のインターネットデータベース、またはモノクローナル抗体特異性を列挙するwww.glyco.is.ritsumei.ac.jp/epitope/等の抗体データベース)から入手可能である。
当該分野で公知の各種方法を用いて、ペプチドモチーフおよびその領域または断片に対するポリクローナル抗体を産生することができる。抗体の産生においては、任意の適した宿主動物(ウサギ、マウス、ラット、またはハムスター等であるが限定されない)がペプチド(免疫原性断片)の注射により免疫される。宿主動物種により、各種アジュバントを用いて免疫反応を高めることができ、例えばフロイントの(完全および不完全)アジュバント、水酸化アルミニウム等のミネラルゲル(mineral gel)、リゾレシチン等の界面活性物質、プルロニック(pluronic)ポリオール、ポリアニオン、油乳剤、キーホールリンペットヘモシアニン、ジニトロフェノール、および、BCG{Bacille Calmette‐Guerin)およびCorγnebacterium parvum等の潜在的に有用なヒトアジュバント等が挙げられるがこれらに限定されない。
ペプチドモチーフに対するモノクローナル抗体は、培養における連続細胞系による抗体分子の産生のために提供される任意の手法を用いて調製してよい。これらとしては、Kδhler et al, (Nature、256: 495‐497, 1975)により最初に記載されたハイブリドーマ技術、およびより最近のヒトB細胞ハイブリドーマ技術(Kosbor et al., Immunology Today, 4: 72、1983)およびEBVハイブリドーマ技術(Cole et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R Liss, Inc., pp. 77‐96、1985)等が挙げられるがこれらに限定されない。これらは全て参照により具体的に本明細書に組み込まれる。抗体はクローン化された免疫グロブリンcDNAから細菌内で産生することもできる。組み換えファージ抗体系の使用により、細菌培養物中の抗体を速やかに産生および選択することができ、また遺伝的にその構造を操作することができる場合がある。
ハイブリドーマ技術が用いられる場合、ミエローマ細胞株を用いてよい。このようなハイブリドーマ産生融合法において用いるために適した細胞株は、好ましくは抗体非産生性であり、高い融合効率を有し、また、所望の融合細胞(ハイブリドーマ)のみの増殖を補助する特定の選択的培地においてそれらを増殖できなくする酵素欠損を示す。例えば、免疫した動物がマウスである場合、P3‐X63/Ag8、P3‐X63‐Ag8.653、NS1/1.Ag 4 1、Sp210‐Agl4、FO、NSO/U、MPC‐I1、MPC11‐X45‐GTG 1.7およびS194/5XX0 BuIを使用してよく;ラットである場合、R210.RCY3、Y3‐Ag 1.2.3、IR983Fおよび4B210を使用してよく;ならびにU‐266、GM1500‐GRG2、LICR‐LON‐HMy2およびUC729‐6は全て細胞融合において有用である。
モノクローナル抗体の産生に加え、「キメラ抗体」の産生のために開発された技術、すなわちマウス抗体遺伝子をヒト抗体遺伝子につないで適当な抗原特異性および生物活性を有する分子を得る技術、を用いることができる(Morrison et al, Proc Natl Acad Sd 81: 6851‐6855, 1984; Neuberger et al, Nature 312: 604‐608, 1984; Takeda et al, Nature 314: 452‐454; 1985)。あるいは、一本鎖抗体の産生のために記載された技術(米国特許第4,946,778号)を適合させ、インフルエンザ特異的一本鎖抗体を産生することができる。
前記分子のイディオタイプを有する抗体断片は、公知の手法により生成することができる。例えば、このような断片として、抗体分子のペプシン消化により生成し得るF(ab’)2フラグメント;F(ab’)2フラグメントのジスルフィド架橋を還元することにより生成し得るFab’フラグメント、ならびに抗体分子をパパインおよび還元剤で処理することにより生成し得る2つのFabフラグメント等が挙げられるが、これらに限定されない。
非ヒト抗体は当該分野で公知の任意の手法を用いてヒト化することができる。好ましい「ヒト化抗体」は、ヒト定常領域を有するが、該抗体の可変領域、または少なくとも相補性決定領域(CDR)は非ヒト動物由来である。ヒト軽鎖定常領域はκまたはλ軽鎖のいずれからのものであってもよく、一方ヒト重鎖定常領域はIgM、IgG(IgGl、IgG2、IgG3、もしくはIgG4)、IgD、IgA、またはIgE免疫グロブリンのいずれからのものであってもよい。
非ヒト抗体のヒト化のための方法は、当該分野で周知である(米国特許第5,585,089号、および5,693,762号を参照)。一般に、ヒト化抗体は、そのフレームワーク領域に導入された、非ヒト供給源からの1または複数個のアミノ酸残基を有する。ヒト化は、例えば、Jones et al. {Nature 321: 522‐525, 1986)、Riechmann et al, {Nature, 332: 323‐327, 1988)およびVerhoeyen et al. Science 239: 1534‐1536, 1988)に記載される方法を用い、齧歯類相補性決定領域(CDR)の少なくとも一部をヒト抗体の対応する領域に対して置換することにより行うことができる。改変抗体の調製のための数多くの手法が、例えばOwens and Young, J. Immunol. Meth., 168: 149‐165, 1994において、記載されている。そして、さらなる変化を抗体フレームワークに導入し、親和性または免疫原性を調節することができる。
同様に、CDRを単離するための当該分野に公知の手法を用いて、CDRを含んだ組成物が生成される。相補性決定領域は6個のポリペプチドループ、重鎖または軽鎖の可変領域のそれぞれに対する3個のループを特徴とする。CDRおよびフレームワーク領域におけるアミノ酸部位はKabat et al.、“Sequences of Proteins of Immunological Interest,” U.S. Department of Health and Human Services、(1983)に記述されており、これは参照により本明細書に組み込まれたものとする。例えば、ヒト抗体の超可変領域はおおまかには重鎖および軽鎖可変領域の残基28〜35、残基49〜59、および残基92〜103にあると定義される(Janeway and Travers, Immunobiology, 2nd Edition, Garland Publishing, New York、1996)。任意の所定の抗体におけるCDR領域は、上述のこれらのおおよその残基のうちのいくつかのアミノ酸の内部に存在し得る。免疫グロブリン可変領域もCDRを囲む「フレームワーク」領域を有する。異なる軽鎖または重鎖のフレームワーク領域配列は種内で高度に保存されており、ヒトおよびマウスの配列間でも保存されている。
モノクローナル抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域の1、2、および/または3個のCDRを有する組成物が生成される。ハイブリドーマから分泌されるモノクローナル抗体の1、2、3、4、5および/または6個の相補性決定領域を含むポリペプチド組成物も考えられる。CDRを囲む保存されたフレームワーク配列を用いて、これらのコンセンサス配列に相補的なPCRプライマーが生成され、プライマー領域間に位置するCDR配列が増幅される。ヌクレオチドおよびポリペプチド配列のクローニングおよび発現のための手法は当該分野において確立されている[例えばSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual、2nd Edition, Cold Spring Harbor, New York (1989)を参照]。増幅されたCDR配列は適当なプラスミドに連結される。1、2、3、4、5および/または6個のクローニングされたCDRを有するプラスミドは任意に、該CDRに連結されたさらなるポリペプチドコード領域を有する。
好ましくは、前記抗体は式(I)のグリカン構造またはその断片に対して特異的な任意の抗体である。本発明で用いられる該抗体は、幹細胞の指標である、式(I)のグリカン構造に特異的に結合するのに十分な特異性を保持した、天然または組み換えの、合成または天然由来の、モノクローナルまたはポリクローナルの、任意の抗体またはその断片を含む。本明細書で用いられる「抗体(antibody)」または「抗体群(antibodies)」という用語は、抗体全体、およびその機能的部分を含んだ抗体断片を包含する。「抗体」という用語は、抗体全体が結合特異性を有するエピトープに結合を達成するのに十分な軽鎖可変領域および/または重鎖可変領域の部分を有する、任意の単一特異性または二重特異性化合物を包含する。前記断片は少なくとも1個の重鎖または軽鎖免疫グロブリンポリペプチドの可変領域を含むことができ、ならびにFabフラグメント、F(ab’).sub.2フラグメント、およびFvフラグメントを含むことができるがこれらに限定されない。
前記抗体は、酵素、磁性ビーズ、コロイド磁性ビーズ(colloidal magnetic beads)、ハプテン、蛍光色素、金属化合物、放射性化合物、クロマトグラフィー樹脂、固相または薬物等ではあるが限定されない他の適した分子および化合物に結合させることができる。前記抗体に結合させることができる前記酵素としてはアルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ウレアーゼおよびベータ‐ガラクトシダーゼ等が挙げられるがこれらに限定されない。前記抗体に結合させることができる前記蛍光色素としてはフルオレッセインイソチオシアネート、イソチオシアン酸テトラメチルローダミン、フィコエリトリン、アロフィコシアニンおよびテキサスレッド等が挙げられるがこれらに限定されない。抗体に結合させることができるさらなる蛍光色素についてはHaugland、R. P. Molecular Probes: Handbook of Fluorescent Probes and Research Chemicals (1992‐1994)を参照のこと。前記抗体に結合させることができる前記金属化合物としてはフェリチン、金コロイド、および特に、コロイド超磁性ビーズ(colloidal superparamagnetic beads)等が挙げられるがこれらに限定されない。前記抗体に結合させることができる前記ハプテンとしては、ビオチン、ジゴキシゲニン、オキサザロン、およびニトロフェノール等が挙げられるがこれらに限定されない。前記抗体に結合させるまたは組み込むことができる前記放射性化合物は当該分野において公知であり、テクネチウム99m、.sup.125 I、ならびに、.sup.14 C、.sup.3 H、および.sup.35 S等の限定されない任意の放射性核種を有するアミノ酸などが挙げられるが、これらに限定されない。
式(I)のグリカン構造に対する抗体は任意の供給源から入手してよい。これらは市販されている場合がある。事実上、幹細胞上のグリカン構造の存在を検出する任意の手段が本発明に含まれる。このような抗体の一例はAbcamからのH1型(クローン17‐206;GF287)抗体である。
HSC
本明細書で概説する方法は、HSCまたはその子孫の細胞集団からの同定に特に有用である。しかし、さらなるマーカーを用いて、全HSCまたは幹細胞集団内の亜集団をさらに区別することもできる。
HSCs
幹細胞上の式(I)のグリカン構造に対する結合剤のレベルによって、各種亜集団を区別することができる。これは、幹細胞表面上(またはフィーダー細胞特異的結合剤を用いる場合はフィーダー細胞上)に出現する場合があり、これを本明細書で概説する方法によって検出することができる。しかし、本発明を用いて、CD34.sup.+、CD38.sup.−、CD90.sup.+(thy1)、およびLin.sup.−細胞等であるがこれらに限定されない幹細胞またはHSC集団の各種表現型間で区別することができる。好ましくは、同定される細胞は、これらに限定されないが、CD34.sup.+、CD38.sup.−、CD90.sup.+(thy1)、またはLin.sup.−を含む群から選択される。
本発明は、従って、幹細胞および/もしくはHSCまたはその子孫に対して集団を濃縮する方法を包含する。この方法は、HSCまたはその子孫の混合物を、幹細胞上の式(I)によるグリカン構造を認識してこれと結合する抗体またはマーカーまたは結合タンパク質/結合物質または結合剤と、この抗体またはマーカーまたは結合剤の幹細胞上の式(I)によるグリカン構造への結合を可能とする条件下にて組み合わせること、ならびにその抗体またはマーカーによって認識された細胞を分離して幹細胞またはその子孫に対して著しく濃縮された集団を得ることを含む。この方法は、試料中のHSCまたはその子孫の数に対する診断アッセイとして用いることができる。細胞と抗体またはマーカーとは、続いて定量される幹細胞上の式(I)によるグリカン構造に対するこの抗体またはマーカーの特異的結合を可能とするのに十分な条件下にて組み合わされる。HSCもしくは幹細胞もしくはその子孫を単離することができ、またはさらに精製することができる。
上記で考察したように、細胞集団は、上記で考察した試料等の幹細胞またはHSCまたはその子孫の任意の供給源から得ることができる。
幹細胞上の式(I)のグリカン構造の存在の検出は、幹細胞上の式(I)のグリカン構造を同定するための任意の方法により行われてよい。好ましくは、この検出は幹細胞上の式(I)のグリカン構造に対するマーカーまたは結合タンパク質の使用によるものである。幹細胞上の式(I)のグリカン構造のための該結合剤/マーカーは上記で議論されるマーカーのいずれのものであってもよい。しかし、幹細胞上の式(I)のグリカン構造に対する抗体または結合タンパク質が特に幹細胞上の式(I)のグリカン構造に対するマーカーとして有用である。
最初に特化した系統(dedicated lineage)の細胞を取り出すことによって細胞を分離または濃縮するために、各種手法を用いることができる。モノクローナル抗体、結合タンパク質およびレクチンが、細胞系統および/または分化の段階を同定するために特に有用である。抗体を固相に結合し、粗分離を可能にすることができる。用いる分離手法は回収される画分の生存能力の保持を最大限にするものであるべきである。効果の異なる各種手法を用いて「比較的粗精製の」分離物を得ることができる。用いられる個々の手法は分離の効率、関連する細胞毒性、簡便性および実施スピード、ならびに高度な器具および/または技術的手腕の必要性によって異なる。
分離および濃縮の手順としては、抗体被覆磁性ビーズを用いた磁気分離;アフィニティークロマトグラフィー;モノクローナル抗体に結合した、またはモノクローナル抗体と併せて用いられる、細胞毒性薬、例えば補体および細胞毒等が挙げられるが限定されないもの;ならびに、プレート等の固体マトリクスに結合した抗体による「パンニング」;エルトリエーション(elutriation);または任意の他の好都合な手法;などが挙げられるがこれらに限定されない。
分離または濃縮手法の使用としては、物理的な(密度勾配遠心および対流遠心エルトリエーション(counter‐flow centrifugal elutriation))、細胞表面の(レクチンおよび抗体親和性)、および生体染色特性の(ミトコンドリア結合色素rho123およびDNA結合色素Hoescht 33342)相違に基づくもの等が挙げられるがこれらに限定されない。
正確な分離を提供する手法としては、複数のカラーチャネル、低角度および鈍角の光散乱検出チャネル、インピーデンスチャネル等、様々な程度の精巧さを有し得るFACSなどが挙げられるが、これらに限定されない。これらの細胞を幹細胞上の式(I)のグリカン構造の発現量によって単離および識別できる任意の方法を用いることができる。
最初の分離においては、典型的には約1.times.10.sup.10、好ましくは約5.times.10.sup.8‐9細胞で開始し、幹細胞上の式(I)のグリカン構造に対する抗体または結合タンパク質またはレクチンは少なくとも1種の蛍光色素で標識することができ、一方、各種の特化した系統に対する抗体または結合タンパク質は少なくとも1種の異なる蛍光色素に結合することができる。それぞれの系統は別々の工程で分離することができるが、望ましくはこれらの系統は、幹細胞マーカー上の式(I)のグリカン構造に対するポジティブセレクションを行っている際に同時に分離される。死細胞と関連する色素(ヨウ化プロピジウム(PI)等が挙げられるがこれに限定されない)を用いることにより、前記細胞から死細胞を選択的に除くことができる。
さらに任意の細胞集団を濃縮するため、それらの細胞集団に対する特異的マーカーを用いることができる。例えば、リンパ、骨髄、または赤血球系統等の特異的細胞系統に対する特異的マーカーを用いて、これらの細胞を濃縮し、または減らすことができる。これらのマーカーは、間葉系またはケラチノサイト幹細胞を除去または選び出すことによってHSCまたはその子孫を濃縮するために用いることができる。
上記方法はさらに、他の幹細胞特異的マーカーに対するポジティブセレクションにより細胞をさらに濃縮する工程を含むことができる。適した他のポジティブな幹細胞マーカーとしては、SSEA‐3、SSEA‐4、Tra 1‐60、CD34.sup.+、Thy‐1.sup.+、およびc‐kit.sup.+等が挙げられるがこれらに限定されない。個々の要素による適当な選択、HSCまたはその子孫の自己再生を可能にするバイオアッセイの開発、およびHSCまたはその子孫のそのマーカーに関するスクリーニングにより、生存能力のあるHSCまたはその子孫を多く含む組成物を各種目的のために生成することができる。
幹細胞またはHSCまたはその子孫の集団が単離されると、さらなる単離技術を用いて該HSCまたはその子孫内部の亜集団を単離することができる。細胞系統に対するFACS等の細胞選択システムなどの特異的マーカーを用いて、各種細胞系統を同定および単離することができる。
本発明のさらに他の局面において、幹細胞またはHSCまたはその子孫の含有量を測定する方法が提供され、該方法は:
幹細胞またはその子孫を含んだ細胞集団を得ること;
前記細胞集団を、その幹細胞上の式(I)のグリカン構造に対する結合タンパク質または結合剤と結合させること;
その幹細胞上の式(I)のグリカン構造に対する前記結合タンパク質または結合剤により同定されるそれらの細胞を選択すること;および
選択された細胞の量を、結合タンパク質による選択前の細胞集団内の細胞の量との比較において定量すること;
を含む。
結合剤‐標識複合体
本発明は特に、前記結合剤が「標識構造」と結合させられる場合の、本発明の構造の結合に関する。この標識構造とは、アッセイにおいて観察可能な分子、例えば蛍光分子、放射性分子、西洋わさびペルオキシダーゼ等の検出可能な酵素またはビオチン/ストレプトアビジン/アビジンを意味する。標識された結合分子を本発明の細胞に接触させると、細胞を細胞表面上の標識の存在に基づいてモニタリング、観察および/または選別することができる。モニタリングおよび観察は標識を観察するための常法、例えば蛍光測定装置、顕微鏡、シンチレーションカウンターおよび他の放射能を測定するための装置により行うことができる。
細胞選別のための、結合剤および標識結合剤複合体の使用
本発明は特に、他の細胞型を含んだ細胞材料等の生体材料または試料からのヒト幹細胞の選別または選択のための、結合剤およびその標識された複合体の使用に関する。好ましい細胞型としては、臍帯血、末梢血、および胚幹細胞、ならびに関連した細胞などが挙げられる。標識は本発明の細胞型を他の類似した細胞から選別するために用いることができる。他の態様において、前記細胞は、血液細胞、または培養細胞については好ましくはフィーダー細胞、例えば胚幹細胞についてはヒトまたはマウスフィーダー細胞等の対応するフィーダー細胞等の各種細胞型から選別される。好ましい細胞選別法はFACS選別である。他の選別法では固定化した結合剤構造が用いられ、結合および未結合細胞の分離のために未結合細胞が除去される。
固定化した結合剤構造の使用
好ましい一態様において、前記結合剤構造は固相に結合される。細胞が固相と接触させられ、材料の一部が表面に結合する。この方法は細胞の分離および細胞表面構造の分析、または固定化による細胞の細胞生物学的変化の研究に用いることができる。分析を伴う方法において、細胞は好ましくは試薬によってタグをつけられ、または標識され、固相上の結合剤構造を介して固相に結合した細胞が検出される。この方法は好ましくはさらに1または複数個の、未結合細胞除去のための洗浄の工程を含むことができる。
好ましい固相としては、細胞を接触させるのに用いる、細胞に適したプラスチック材料、例えば細胞培養瓶、シャーレおよびマイクロタイターウェル;発酵槽表面材料等が挙げられる。
好ましい幹細胞と混入細胞との間の特異的識別
本発明はさらに、幹細胞を、フィーダー細胞等の分化した細胞、好ましくは動物フィーダー細胞およびより好ましくはマウスフィーダー細胞から識別する方法に関する。さらに、本試薬は特異的結合試薬を用いた任意の分別法による幹細胞の精製のために用いることができると理解される。
好ましい分別法としては、蛍光活性化細胞選別法(FACS)、アフィニティークロマトグラフィー法、および磁性ビーズ法等のビーズ法などが挙げられる。
好ましい細胞、好ましくは胚性細胞と、フィーダー細胞等の混入細胞、最も好ましくはマウスフィーダー細胞との間の識別のための好ましい試薬としては、表の試薬が挙げられ、より好ましくはレクチンPSA、MAA、およびPNAと類似の特異性を持つタンパク質である。
本発明はさらに、幹細胞集団への特異的結合を示すが混入細胞集団には示さない、ポジティブセレクション法に関する。本発明はさらに、混入細胞集団への特異的結合を示すが幹細胞集団には示さない、ネガティブセレクション法に関する。幹細胞の識別のさらに他の態様においては、幹細胞集団はフィーダー細胞集団等の均質な細胞集団とともに識別され、好ましくはこれは他の材料の分離が必要な場合に行われる。ポジティブセレクションのための試薬は、本発明における幹細胞に結合し、混入細胞集団には結合しないように選択することができ、ネガティブセレクションのための試薬は、反対の特異性を示すように選択することができると理解される。本発明の細胞の1つの集団が本発明で研究されていない新規細胞集団から選択される必要がある場合、本発明の結合分子は、該新規細胞集団に対して適した特異性(結合または非結合)を有すると確認されれば用いることができる。本発明は特に、本発明の新規結合または選択法の開発のための、このような結合特異性の分析に関する。
結合剤による細胞の操作
本発明は特に、特異的結合タンパク質による細胞の操作に関する。記載されたグリカンは細胞間の相互作用において重要な役割を担っており、従って結合剤または結合分子を細胞の特定の生物学的操作のために用いることができると考えられる。この操作は遊離または固定化結合剤により行われ得る。好ましい一態様において、細胞は、該細胞の増殖速度に影響する細胞培養条件下で細胞の操作のために用いられる。
幹細胞の命名
本発明は全ての幹細胞型、好ましくはヒト幹細胞の分析に関する。幹細胞の一般的な命名を図10に記す。本発明の別の命名基準は、図10に示すように、好ましい一態様において成体幹細胞(臍帯血型材料等)の同等物である、初期ヒト細胞を記載する。骨髄および血液中の成体幹細胞は「血液関連組織」由来の幹細胞に対する同等物である。
特に細胞培養条件下での幹細胞の操作のためのレクチン
本発明は特に、幹細胞の状態の分析のための、および/または幹細胞の操作のための、特異的結合タンパク質としてのレクチンの使用に関する。
本発明は特に、レクチンの存在下で幹細胞を増殖させる細胞培養条件下での幹細胞の操作に関する。操作は好ましくは細胞培養槽の表面上の固定化されたレクチンにより行われる。本発明は特に、表に示すようなレクチンの存在下で細胞を増殖させることによる幹細胞の増殖速度の操作に関する。
本発明は、好ましい一態様において、細胞表面からの本発明の特異的グリカンマーカー構造を認識する特異的レクチンによる、幹細胞の操作に関する。本発明は、好ましい一態様において、ECAレクチン等のGal認識レクチン;または細胞表面から同定されるガレクチンリガンドグリカンの識別のためのガレクチン等の類似のヒトレクチン;の使用に関する。さらに、幹細胞中のゲノムレベルでのガレクチン発現の特異的変異が、特にガレクチン‐1、‐3および‐8について、存在すると考えられた。本発明は、特に、胚性幹細胞の増殖率の操作について、ならびに、骨髄および血液中の成体幹細胞ならびにその分化する誘導体について、これらのレクチンを試験する方法に関する。
レクチン等の特異的結合剤による幹細胞の選別
本発明は、特にFACS法による、幹細胞の選別のための、本発明の細胞表面グリカンエピトープを認識する特異的レクチン型の使用を明らかにし、選別される最も好ましい細胞型としては、血液および骨髄中の成体幹細胞、特に臍帯血細胞が挙げられる。臍帯血細胞の選別のための好ましいレクチンとしては、実施例11に示すようにGNA、STA、GS‐II、PWA、HHA、PSA、RCA、およびその他のものが挙げられる。特定の幹細胞集団を単離するためのこれらレクチンの妥当性は、実施例11で述べるように、公知の幹細胞マーカーによる二重標識によって示された。
幹細胞のO‐グリカングライコームの好ましい構造
本発明は特に、幹細胞の次のO‐グリカンマーカー構造に関する:
マーカー組成NeuAcHexHexNAcに従うコア1型O‐グリカン構造、好ましくは構造SAα3Galβ3GaINAcおよび/またはSAα3Galβ3(Saα6)GalNAcを含む;
ならびに、マーカー組成NeuAc0‐2HexHexNAcdHex0‐1に従うコア2型O‐グリカン構造、より優先的にはさらにグリカン系列NeuAc0‐2Hex2+nHexNAc2+ndHex0‐1[式中、nは1、2または3であり、より優先的にはnは1または2であり、さらに優先的にはnは1である]を含む;
より具体的に好ましくはRGalβ4(R)GlcNAcβ6(RGalβ3)GalNAc
[式中、RおよびRは独立に無またはシアル酸残基、好ましくはα2,3‐結合シアル酸残基、またはHexHexNAcによる伸長であって、ここでnは独立に少なくとも1、好ましくは1〜3、最も好ましくは1〜2、最も好ましくは1、の整数であり、前記伸長はシアル酸残基、好ましくはα2,3‐結合シアル酸残基で終結してよく;そして
は独立に無またはフコース残基、好ましくはα1,3‐結合フコース残基である]を含む。
これらの構造はコア2構造を合成するβ6GlcNAc転移酵素の発現と相関していると考えられる。
好ましい分岐N‐アセチルラクトサミン型スフィンゴ糖脂質
本発明はさらに、分岐した、I型の、2個の末端Galβ4残基を有するポリ‐N‐アセチルラクトサミンを、ヒト幹細胞の糖脂質から明らかにした。この構造は、ポリ‐N‐アセチルラクトサミンを分岐させることができるβ6GlcNAc転移酵素の発現と、またさらに分岐ポリ‐N‐アセチルラクトサミンに特異的なレクチンの結合と、相関している。さらに、PWAレクチンは幹細胞の操作、特にその増殖速度における作用を有していることが注目された。
幹細胞の好ましい定性的および定量的完全N‐グライコーム
幹細胞選別および単離のための好ましい結合剤
実施例に記載されるように、本願発明者らは、特にマンノース特異的および特にα1,3‐結合マンノース結合レクチンGNAが、CB MNCからのCD34+幹細胞のネガティブセレクションによる濃縮に適していることを見出した。さらに、ポリ‐LacNAc特異的レクチンSTAならびにフコース特異的および特にα1,2‐結合フコース特異的レクチンUEAが、CB MNCからのCD34+幹細胞のポジティブセレクションによる濃縮に適していた。
本発明は特に、幹細胞結合試薬、優先的にはタンパク質、優先的にはマンノース結合またはα1,3‐結合マンノース結合、ポリ‐LacNAc結合、LacNAc結合、および/またはフコースもしくは優先的にはα1,2‐結合フコース結合のもの;好ましい一態様においては幹細胞結合もしくは非結合のレクチン、より優先的にはGNA、STA、および/またはUEA;ならびに、さらに好ましい一態様においてはそれらの組み合わせ;に関するものであり、また、選択的に幹細胞に結合するまたは結合しないグリカン結合試薬を利用した本発明に記載される使用に関するものである。
幹細胞型特異的ガレクチンおよび/またはガレクチンリガンドのための好ましい使用
実施例に記載されるように、本願発明者らは、異なる幹細胞が異なったガレクチン発現プロファイル、および異なったガレクチン(グリカン)リガンド発現プロファイルを有していることも見出した。本発明はさらに、ガラクトース結合試薬、優先的にはガラクトース結合レクチン、より優先的には特異的ガレクチンを;幹細胞型特異的様式で、記載の前記使用に対して本発明に記載される特定の幹細胞を調節するために、またはそれに結合するために、使用することに関する。
各種グリカン型と関連したポリ‐N‐アセチルラクトサミン配列および非還元末端エピトープの分析および利用
本発明は、本発明の細胞型と関連したポリ‐N‐アセチルラクトサミン配列(ポリ‐LacNAc)に関する。本願発明者らは、本発明の実施例に記載のように、異なる種類のポリ‐LacNAcが異なる細胞型に特徴的であることを見出した。具体的には、CB MNCは直鎖2型ポリ‐LacNAcにより特徴付けられ;MSC、特にCB MSCは、分岐2型ポリ‐LacNAcにより特徴付けられ;およびhESCは1型末端ポリ‐LacNAcで特徴付けられる。本発明は特に、本発明のこれらグリカン特性の分析および使用に関する。本発明はさらに、本発明の本実施例に示す特異的細胞型関連グリカン配列の分析および使用に関する。
本発明は、N‐およびO‐グリカン、スフィンゴ糖脂質グリカン、ならびにポリ‐LacNAc等の異なるグリカンクラスの非還元末端エピトープに関する。本願発明者らは、特にβ1,4‐結合Gal、β1,3‐結合Gal、α1,2‐結合Fuc、α1,3/4‐結合Fuc、α‐結合シアル酸、およびα2,3‐結合シアル酸の相対量が、調査した細胞型間で特徴的に異なることを見出した;また、本発明は特に、本発明のこれらグリカン特性の分析および使用に関する。
本発明はさらに、実施例に記載のようにm/z 771および917の中性O‐グリカンシグナル等の指標となるグリカンシグナルを比較することにより、O‐グリカンにおけるフコシル化度を分析することに関する。本願発明者らは、本発明で分析された他の細胞型と比較して、hESCは、m/z 917における中性O‐グリカンシグナルの相対存在量が771と比べて低く、このことは、m/z 771におけるシグナルに対応する、末端β1,4‐結合Galを有するO‐グリカン配列の低いフコシル化度を示していることを見出した。もう1つの違いとしては、hESCにおける、α1,2‐フコシル化コア1 O‐グリカン配列を含むHexHexNAcdHexに対応するm/z 552における豊富なシグナルの発生であった。対照的に、CB MNCにおいては、m/z 917のグリカンシグナルが比較的豊富であり、m/z771のシグナルに対応する、末端β1,4‐結合Galを有するO‐グリカン配列の高いフコシル化度を表す。本発明において分析される他の細胞型も、これら2種類の細胞型の間の特徴的なフコシル化度を有していた。
特に、本発明は幹細胞のポリ‐LacNAcと関連する末端エピトープの分析に関するものであり、より好ましくはこれらのエピトープがポリ‐LacNAc鎖と関連して、最も好ましくはO‐グリカンまたはスフィンゴ糖脂質において、提示されている場合におけるものである。本発明はさらに、グリカンの構造的分析および特異的グリコシル化型の同定ならびに本発明の他の使用における、このような特徴的ポリ‐LacNAc、末端エピトープ、およびフコシル化プロファイルの本発明の方法による分析に関するものであり;特にこの分析はエンド‐β‐ガラクトシダーゼ消化に基づいて、非還元末端断片およびそのプロファイルの分析により、ならびに/または還元末端断片およびそのプロファイルの分析により、本発明の実施例に記載されるように行われる。本願発明者らは、細胞型特異的グリコシル化特性が効果的にエンド‐β‐ガラクトシダーゼ反応産物およびそのプロファイルに反映されることを見出した。本発明はさらに、本発明によるこのような反応産物プロファイルおよびその分析に関する。
本願発明者らはさらに、最も詳しく分析された3つの細胞グリカンクラス、N‐グリカン、O‐グリカン、およびスフィンゴ糖脂質グリカンの全てが、互いの比較において、特に本発明の実施例および表に記載される非還元末端グリカンエピトープおよびポリ‐LacNAc配列に関して、異なった制御を受けていることを見出した。従って、複数のグリカンクラスからの定量的グリカンプロファイル分析データを組み合わせれば、有意により多くの情報が生成されるであろう。本発明は特に、本発明の方法により得られる、N‐グリカン、O‐グリカン、およびスフィンゴ糖脂質グリカンから選択される複数のグリカンクラスからのグリカンデータを組み合わせることに関する;より好ましくは3種全てのクラスが分析される;ならびに、本発明によるこの情報の使用に関する。好ましい一態様において、N‐グリカンデータがO‐グリカンデータと組み合わせられる;およびさらに好ましい一態様において、N‐グリカンデータがスフィンゴ糖脂質グリカンデータと組み合わせられる。
一般事項
従来のCD34+集団と全く同様に、HSCの1つの集団全体だけに完全に特異的であると分析される特異的グリカンエピトープは1つも存在しないと思われるが、例えば抗SLex抗体による等の標識は非常に類似している。その代わり、幹細胞および分化した細胞には特定のグリカンエピトープの増加が認められる。
場合により、抗体は、特定の細胞型内の高度に、もしくは数倍多い;または細胞集団の一部において現在のFACSの検出限界を超えて存在するが、他の対応する細胞集団においてはそうではない;エピトープを認識する。このような抗体は特に、特定の細胞集団の特異的識別に有用であると考えられる。さらに、特定の細胞型の独立した集団を認識するいくつかの抗体の組み合わせは、ポジティブまたはネガティブな様式において、より大きな細胞集団の識別に有用である。
本発明は造血細胞集団全般に共通の、または造血細胞の特定の分化段階のための試薬を提供する。さらに本発明は、臍帯血または骨髄等の特定の組織型に由来する造血幹細胞のための特異的マーカー構造を明らかにする。
本発明はさらに、さらなる結合剤、好ましくは末端グリカン構造を認識する特異的抗体またはレクチン、のスクリーニングのための標的構造および特異的グリカン標的構造の使用、ならびに本発明のスクリーニングにより産生された結合剤の使用、に関する。前記スクリーニングのための好ましいツールの一つは、1種または数種の本発明の造血幹細胞グリカンエピトープおよび追加の対照グリカンを含んだグリカンアレイである。本発明は、高特異性抗体を見出すための、公知の抗体のスクリーニング、またはそれらの公開されている特異性の情報の探索に関する。さらに本発明は、ファージディスプレイライブラリーからの構造の探索に関する。
さらに、大部分の細胞で認められる個々のマーカーは、対象となる細胞がその特異的グリカンエピトープを発現しない場合に、細胞の識別および/または単離のために用いることができる。これらのマーカーは例えば、該マーカーの発現が対象細胞に少ないかまたは存在しない場合に、組織または細胞培養物等の生体材料からの細胞集団の単離に用いることができる。
幹細胞を含む組織は通常これらを原始幹細胞の段階で含むと考えられ、そのため、高度に発現するマーカーを細胞の単離のために最適化または選択することができる。好ましい一態様において、本発明は、本発明の結合剤、好ましくはSTA等のポリ‐ラクトサミン認識結合剤または好ましくは本発明のグリカンエピトープ(表23)を認識するモノクローナル抗体等のシアリル‐Lewis x認識タンパク質等により、CD34−型細胞から臍帯血からの造血幹細胞を選択することに関する。別の一態様において、本発明は、前記認識に対して最適化されたセレクチンまたはセレクチン相同タンパク質の使用に関する。
特定の分化状態を保つための細胞培養条件を選択することが可能であり、大部分または事実上全ての細胞集団を認識する本発明の抗体はこれらの点で細胞の分析または単離に有用である。
FACS分析等の方法では細胞上の構造の定量的な測定が可能であり、従って細胞集団の一部を認識する抗体も細胞集団に対して特徴的である。
組み合わせ
細胞集団のための、造血または関連する集団の特異的分析のためのいくつかの抗体の組み合わせは、該細胞集団を特徴付けるであろう。好ましい一態様において、細胞集団の大部分(35%超)またはほとんど(50%)を認識する(好ましくは30%超;40%超、50%超、60%超、70%超、80%超の順で後者ほど好ましい;最も好ましくは90%超)少なくとも1種の「効果的に結合する抗体」が、好ましくは前記細胞集団のわずかな部分(好ましくは方法の検出限界から低レベルの認識までであって、好ましい順に細胞の10%未満、7%未満、5%未満、2%未満、または1%未満、例えば細胞の0.2〜10%、より好ましくは細胞の0.2〜5%、さらに好ましくは0.5〜2%、または最も好ましくは0.5%〜1.0%)を認識する、または該集団を何も認識しない(検出限界またはそれ未満、例えば好ましい順に5%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、および0.2%未満)、およびより好ましくは本発明の細胞集団を事実上全く認識しない、少なくとも1種の「非結合抗体」との組み合わせによる分析法のために、選択される。さらに他の態様において、前記組み合わせ法は「中程度に結合する抗体」の使用を含み、該抗体は細胞の実質的な部分、好ましくは5〜50%、より好ましくは7%〜40%、および最も好ましくは10〜35%を認識する。
本発明は、末端エピトープを認識するいくつかの試薬の同時使用に関するものであり、好ましくは少なくとも2種の試薬、より好ましくは少なくとも3種のエピトープ、さらに好ましくは少なくとも4種、さらになお好ましくは少なくとも5種、さらになお好ましくは少なくとも6種、さらになお好ましくは少なくとも7種、および最も好ましくは少なくとも8種を、十分なポジティブおよびネガティブ標的の識別のために使用することに関する。伸長エピトープを選択的および特異的に認識する高特異性結合剤を用いれば、必要な結合剤は少数であってよく、例えばこれらは好ましくは少なくとも2種の試薬、より好ましくは少なくとも3種のエピトープ、さらに好ましくは少なくとも4種、さらになお好ましくは少なくとも5種、最も好ましくは少なくとも6種の抗体の組み合わせとして用いられる。伸長エピトープを選択的および特異的に認識する高特異性結合剤は、少なくとも5、10、20、50、または100倍の順で後者ほど好ましい親和性の、伸長エピトープの1つと結合する。抗体結合親和性の測定のための方法は当該分野において周知である。本発明は、1種の伸長エピトープ;および、さらなる、少なくとも1種、好ましくは1種、の同一の末端構造を有する伸長エピトープ;の効果的な識別が可能な、より低特異性の抗体の使用にも関する
前記試薬は好ましくは細胞標識実験において示す5種、10種、20種、40種もしくは70種または全ての試薬の順で後者ほど好ましい試薬を含むアレイ内で用いられる。
本発明はさらに、フコシル化および/またはシアル化構造の、これらの修飾を有していない構造との組み合わせに関する。1型N‐アセチルラクトサミンの2型構造との、1型(Galβ3GlcNAc)構造との、ならびに/またはムチン型および/もしくは糖脂質構造との、組み合わせ。好ましいある組み合わせにおいては、少なくとも1種の結合抗体が、異なる構造型を認識する非結合抗体と組み合わせられる
前記抗体は、本発明の標的構造として明らかになった特定のグリカンエピトープを認識する。該抗体の特異性および親和性はクローン毎に異なると考えられる。特定のグリカン構造を認識することが知られる特定のクローンは同一細胞集団を必ずしも認識しないと理解された。
特異的標的
細胞培養に関連する使用に対する結合剤の選択のための好ましい結合剤構造
本発明は、タンパク質結合N‐グリカンおよびO‐グリカンおよび糖脂質と結合したN‐アセチルラクトサミン構造等のいくつかの血液由来幹細胞関連構造を明らかにした。
好ましい末端エピトープは本発明による式で表され、実施例の広範な構造データから誘導されたものを具体的に表23に列挙する。本発明は、好ましくは結合剤によって認識される、好ましくは他の担体構造上の同一の末端構造は実質的に認識しない高特異性結合剤によって認識される新規の伸長結合剤標的エピトープを明らかにした。本発明は特に、血液由来CD34+またはCD133+(またはLIN−)細胞等の造血幹細胞の濃縮および/または培養のための特異的結合剤の使用に関し、このための好ましい構造は、表23の構造の後の左側の列で示し、より濃縮された構造および血液由来単核CD34−、CD133−(またはLIN+細胞)等の非造血関連細胞による濃縮は、造血幹細胞を濃縮および/または培養するためのネガティブセレクションとして表23の右側の列で示す。本発明は、さらに、末端エピトープの識別に関し、ここで末端N‐グリカンエピトープはマンノースとβ2‐結合しており、O‐グリカンのN‐アセチルラクトサミンを主体とするエピトープはGalNAcとβ6‐結合しており、糖脂質のN‐アセチルラクトサミンを主体とするエピトープはGalとβ3‐結合している。
造血幹細胞、特にCD34+等の臍帯血造血細胞の培養という点で、細胞の結合およびポジティブセレクションにとって好ましい構造として、特定の構造が挙げられる。
フコシル化構造
i)α3‐フコシル化構造
好ましいα3‐フコシル化構造としては、特にLewis xおよびシアリル‐Lewis xが挙げられる。好ましい一態様では、本発明は、細胞表面上のα3‐フコシル化構造への特異的結合試薬による結合によって濃縮された血液由来幹細胞集団に関する。
本発明はさらに、特に細胞培養用途のためのα3‐フコース特異的結合試薬および血液由来幹細胞の複合体に関する。
特異的なシアリル‐Lewis x構造は、実質的に臍帯血CD34+細胞に特異的であり、この細胞の結合および操作に有用であることが明らかにされた。
sLexに対する好ましい結合試薬としては、GF526およびGF307が挙げられ、特に臍帯血からの大部分のまたは実質的にすべてのCD34+細胞を認識し、ならびにこの細胞の約40%である大きな亜集団を認識するGF516が挙げられる。
好ましい一態様では、シアリル Lewis x特異的試薬は、抗体GF526のように特にコアII sLex[SAα3Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ6(R1Galβ3)GalNAcαSer/Thr、式中、R1はシアル酸(SAα3)または無である]と結合する。本発明は特に、臍帯血または骨髄、最も好ましくは臍帯血等の血液由来幹細胞を含む材料からの、特に幹細胞の培養のための、特異的結合試薬によるsLexおよびコアII sLEx陽性細胞の選択に関する。好ましい一態様では、細胞選別システムはFACSまたは結合剤を含む固相である。
臍帯血造血細胞(特にCD34+細胞)には、特にLewis x発現に個々の特異的な変異が存在し、Lewis x抗体結合剤の一部は、非造血CD34−細胞も認識するが(例:抗体GF515およびGF525(CD15抗体))、特にGF305およびGF517およびGF518が、CD34+細胞調製物中の特定の個体上のLewis xを効果的に認識すると考えられる。
本発明は特に、特定のLewis xおよびその好ましい亜型にポジティブな細胞を、臍帯血または骨髄等の血液、最も好ましくは臍帯血由来の幹細胞を含む材料から、特に幹細胞の培養のために、特異的な結合試薬によって選択することに関する。好ましい一態様では、細胞選別システムはFACSまたはこの結合剤を含む固相である。
Lotus tetragonolobus凝集素LTAは、二価またはオリゴバレント(oligovalent)であるLewis xと強く結合する低特異性の試薬の例であり、このため、より複雑度の高いα3‐フコシル化を有する細胞の選択に有用である。
LTAレクチンでコーティングされた磁性ビーズでヒト臍帯血単核球を処理することにより、幹細胞マーカーCD34が高濃縮された新規細胞集団が作製された。
ii)α2‐フコシル化構造
好ましいα2‐フコシル化構造としては、多くの臍帯血CD34+細胞集団を認識する抗体、GF288およびGF394によって認識可能なH型構造が特に挙げられる(グロボH)。本発明は、好ましい一態様では、特異的な結合試薬によって細胞表面のα2‐フコシル化構造と結合することによって濃縮された血液由来幹細胞集団に関する。本発明はさらに、特に細胞培養用途のための、α2‐フコース特異的結合試薬および血液由来幹細胞の複合体に関する。
本発明はさらに、血液由来幹細胞のH‐エピトープを効果的に認識する特定の低特異性試薬に関し、好ましい試薬はレクチンUEAであり、好ましい一態様では、このレクチンは、細胞培養および血液由来幹細胞の選択または操作という点でのレクチンの使用を目的とする。
iii)非フコシル化シアリル‐ラクトサミン
本発明は、幹細胞の単離、特にヒト臍帯血からのネガティブ単離のための有用な試薬として、レクチンMAA(Maackia amuriensis凝集素)を認識するシアル化N‐アセチルラクトサミン構造(SAα3Galβ4GlcNAcβ)を明らかにした。このレクチンはほとんどの臍帯血細胞と結合するが、CD34+細胞に対する結合はそれほど効果的ではない。
Gal/GalNAc/GalNAcα含有構造
iv)Galβ3GalNAc構造
本発明は、血液由来幹細胞、特にCD34+が、TF(Thomssen‐Friedenreich)Galβ3GalNAcα、より好ましくは特にO‐グリカンとしてムチン型構造上に発現されるGalβ3GalNAcαSer/Thrを高いレベルで発現することを明らかにした。本発明はさらに、アシアロ‐GM1を認識しGalβ3GalNAcβを含むアシアロGM1抗体が、血液由来幹細胞を効果的に認識するわけではないことを明らかにした。
本発明は、好ましい一態様では、特異的な結合試薬が細胞表面のGalβ3GalNAcα構造と結合することによって濃縮された、特に細胞培養の用途のための、血液由来幹細胞集団に関する。
本発明はさらに、特に細胞培養の用途のための、Galβ3GalNAcα特異的結合試薬および血液由来幹細胞の複合体に関する。
この構造に対する好ましい結合試薬としては、GF280、GF281、およびGF365が挙げられ、これらはモノクローナル抗体であり、臍帯血CD34+細胞の約40%の認識に対しては特にGF280が好ましい。好ましい別の一態様では、低特異性Galβ3GalNAcα特異的結合試薬はPNA(ピーナッツ凝集素)である。
Galβ3GalNAcα特異的結合試薬は、臍帯血からの亜集団の分離に対して特に好ましい。
v)GalNAcα構造
本発明は、血液由来幹細胞、特にCD34+が、TN GalNAcα、より好ましくは特にO‐グリカンとしてムチン型構造上に発現されるGalNAcαSer/Thrを高いレベルで発現することを明らかにした。
本発明は、好ましい一態様では、特異的な結合試薬が細胞表面のGalNAcα構造と結合することによって濃縮された、特に細胞培養の用途のための、血液由来幹細胞集団に関する。
本発明はさらに、特に細胞培養の用途のための、GalNAcα特異的結合試薬および血液由来幹細胞の複合体に関する。
この構造に対する好ましい結合試薬としては、GF278およびVPU006が挙げられ、これらはモノクローナル抗体であり、臍帯血CD34+細胞の約40%の認識に対して好ましい。好ましい別の一態様では、低特異性GalNAcα特異的結合試薬は、GalNAc特異的レクチン、例えばDBA(Dolichos biflorus凝集素)であり、特にTn構造を認識することが既知であるものが好ましい。
GalNAcα特異的結合試薬は、臍帯血からの幹細胞亜集団の分離および濃縮に対して特に好ましい。
vi)ポリ‐N‐アセチルラクトサミン構造
本発明は、特にヒト臍帯血からの幹細胞の単離および濃縮のための有用な試薬として、ポリ‐N‐アセチルラクトサミン構造(Galβ4GlcNAcβ3)を認識するレクチンSTA(Solanum tuberosum凝集素、ジャガイモレクチン)を明らかにした
vii)特異的マンノース構造
本発明は、特にヒト臍帯血からの幹細胞の単離および濃縮のための有用な試薬として、マンノース構造(Manα)を認識するレクチンNPAを明らかにした。
炭水化物阻害による細胞からの結合剤または結合剤複合体の遊離
本発明は、好ましい一態様において、結合剤からのグリカンの遊離に関する。これは:
a)結合剤を伴う方法による細胞の濃縮または単離後の、可溶性結合剤からの細胞の遊離
b)細胞の濃縮もしくは単離後の、または細胞培養中の、例えば細胞の継代のための、固相に結合した結合剤からの遊離
等のいくつかの方法のために好ましい
阻害炭水化物はレクチンの結合エピトープまたはその一部に対応するように選択される。好ましい炭水化物としてはオリゴ糖、単糖およびその複合体等が挙げられる。炭水化物の好ましい濃度としては、1mM〜500mM、より好ましくは10mM〜250mM、およびさらに好ましくは10〜100mMの細胞が耐性を有する濃度が挙げられ、より高い濃度が単糖、および固相に結合した結合剤を用いる方法にとって好ましい。オリゴ糖および還元末端複合体を含む好ましいオリゴ糖配列は、Galβ4Glc、Galβ4GlcNAc、Galβ3GlcNAc、Galβ3GalNAc、ならびに表および本発明の式中に記載されるこれらのシアル化およびフコシル化バリアント等が挙げられる、
複合体中の好ましい還元末端構造は
AR[式中、Aはアノマー構造であって好ましくはGalβ4Glc、Galβ4GlcNAc、Galβ3GlcNAcに対するベータ、およびGalβ3GalNAcに対するアルファであり、Rは糖にグリコシド結合する有機残基であり、好ましくは方法、エチルもしくはプロピル等のアルキル、またはシクロヘキシルもしくは芳香環構造等の環構造であって、任意にさらなる官能基により修飾される]
である。
好ましい単糖としては、Fuc、Gal、GalNAc、GlcNAc、Man等の結合エピトープの末端のまたは2個もしくは3個の末端の単糖などが挙げられ、好ましくはアノマー複合体:例えばFucαR、GalβR、GalNAcβR、GalNAcαR GlcNAcβR、ManαRとしてのものである。例えばPNAレクチンは好ましくはGalβ3GalNAcまたはラクトースまたはGalにより阻害され、STAはGalβ4Glc、Galβ4GlcNAまたはその由来するオリゴマーもしくはポリ‐LacNAcエピトープにより阻害され、およびLTAはフコシララクトースGalβ4(Fucα3)Glc、Galβ4(Fucα3)GlcNAcまたはFucもしくはFucαRにより阻害される。一価の阻害条件の例はVenable A. et al. (2005) BMC Developmental biologyに示されており、細胞が多価で固相に結合する場合の阻害については、より大きなエピトープおよび/または濃度またはマルチ/ポリバレント複合体が好ましい。
本発明はさらに、CD34+磁性ビーズからの細胞の遊離に対して知られるものと同様な、プロテアーゼ消化による結合剤の遊離の方法に関する。
固定化結合剤、好ましくは結合剤タンパク質タンパク質
本発明は、幹細胞の培養のための、またはそれに関連する、特異的結合剤の使用に関するものであり、ここで該結合剤は固定化される。
前記固定化には、非共有結合的固定化、および共有結合を伴う固定化法、ならびにさらに部位特異的固定化および非特異的固定化が含まれる。
好ましい非共有結合的固定化法は受動的吸着法を含む。好ましい一つの方法においては、細胞培養皿またはウェルのプラスチック表面等の表面に結合剤を受動的に吸収させる。好ましい方法としては溶媒中または湿潤状態の結合剤タンパク質の前記表面への吸収、好ましくは該表面への均一な吸収、などが挙げられる。好ましい均一な分布は、好ましくは形成10分間〜3日間、より好ましくは1時間〜1日間、および最も好ましくは約8〜20時間の一晩の吸収時間の間、弱い振とうを用いて生成される。固定化の洗浄工程は、レクチンの脱落を回避するために、好ましくは低速の液体の流れを用いて穏やかに行われる。
特異的固定化
特異的固定化は、結合剤の結合部位がそのリガンドグリカンド、例えば本発明の幹細胞の特異的細胞表面グリカン、に結合するのを妨げないタンパク質領域からの固定化を目的とする。
好ましい特異的固定化法としては、結合剤タンパク質/ペプチドの表面からの特異的アミノ酸残基からの化学的結合などが挙げられる。好ましい一つの方法においては、システイン等の特定のアミノ酸残基が固定化の部位にクローン化され、システインから結合が行われる。他の好ましい方法においては、N‐末端システインが過ヨウ素酸により酸化され、アミノ‐オキシ‐メチルヒドロキシルアミンまたはヒドラジン構造等のアルデヒド反応性試薬に結合される。さらに好ましい化学としてはInvitrogenにより販売される「click」化学ならびにPierceおよびMolecular probesにより販売されるアミノ酸特異的カップリング試薬などが挙げられる。
好ましくはグリカンが結合部位に近接していない、またはより長いspecarが用いられる場合に、好ましい特異的固定化は結合剤のO‐またはN‐グリカン等のタンパク質結合炭水化物から起こる。
グリカン固定化結合剤タンパク質
好ましいグリカン固定化はグリカンの反応性化学選択的連結基(reactive chemoselective ligation group)R1を介して起こり、ここで該化学基は第二の化学選択的連結基R2に特異的に、結合剤のタンパク質部分に大きなまたは結合破壊性の変化をもたらすことなく、結合され得る。アルデヒドおよびケトンと反応する化学選択的基としてはアミノ‐オキシ‐メチルヒドロキシルアミンまたはヒドラジン構造等が挙げられる。好ましいR1基の一つはタンパク質の表面上に化学的に合成されたアルデヒドまたはケトン等のカルボニルである。他の好ましい化学選択的基としては、マレイミドおよびチオール;ならびにアジドおよびそれに対する反応性基を含んだ「Click」試薬等が挙げられる。。
好ましい合成工程は
a)炭水化物選択的酸化化学による、好ましくは過ヨウ素酸による、化学酸化、または
b)ガラクトース酸化酵素等の、非還元末端の末端単糖酸化酵素による、または、修飾単糖残基のグリカンの末端単糖への転移による、酵素的酸化
を含む。
酸化酵素または過ヨウ素酸の使用は当該分野に公知であり、Kabi‐Frensenius(WO2005EP02637、WO2004EP08821、WO2004EP08820、WO2003EP08829、WO2003EP08858、WO2005092391、WO2005014024;参照により全体が組み込まれたものとする)およびドイツの研究機関によるHES‐多糖の組み替えタンパク質への結合に関する特許出願に記載されている。
末端単糖残基の転移のための好ましい方法としては、本願発明者らの一部による特許出願US2005014718(参照により全体が組み込まれたものとする)もしくはQasbaおよびRamakrishmanほかによるUS2007258986(参照により全体が組み込まれたものとする)に記載されるような、またはNeoseの糖ペグ化(glycopegylation)特許(US2004132640;参照により全体が組み込まれたものとする)に記される方法を用いることによる、変異ガラクトシルトランスフェラーゼの使用などが挙げられる。
高特異性化学タグを含む複合体
好ましい一態様において、結合剤はリガンドLによって特異的に認識され得るタグ(Tと呼ぶ)に特異的にまたは非特異的に結合する。タグの例としてはビオチン結合リガンド(ストレプト)アビジン、または他のフルオロカルボニルに結合するフルオロカルボニル、またはペプチド/抗原および該ペプチド/抗原に対する特異的抗体等が挙げられる。
好ましい複合体構造
好ましい複合体構造は
式CONJ
B‐(G‐)R1‐R2‐(S1‐)T‐、
[式中、Bは結合剤であり、Gはグリカン(前記結合剤がグリカン複合体である場合)であり、R1およびR2は化学選択的連結基であり、Tはタグ、好ましくはビオチンであり、Lは前記タグに特異的に結合するリガンドであり;S1は任意のスペーサー基、好ましくは炭素数1〜10のアルキルであり、mおよびnは独立に0または1のいずれかの整数である]
によるものである。
結合剤の複合体
本発明はさらに、固相、またはポリマー等を含むマトリクスなどの表面への結合を伴う結合剤の複合体に関する。グリカンからの結合剤を結合することは、結合剤の交差連結(cross binding)または結合剤の細胞への影響を回避するために特に有用であると考えられる。
式COMP
B‐(G‐)R1‐R2‐(S1‐)(T‐)(L‐)r‐(S2)‐SOL、
[式中、Bは結合剤であり、SOLは固相またはマトリクスまたは表面または標識(リガンド結合標識であってもよい)であり、Gはグリカンであり(結合剤がグリカンに結合する場合)、R1およびR2は化学選択的連結基であり、Tはタグ、好ましくはビオチンであり、Lは該タグに特異的に結合するリガンドであり;S1およびS2は任意のスペーサー基、好ましくは炭素数1〜10のアルキルであり、m、n、p、rおよびsは独立に0または1の整数である]
の構造を有する複合体。
好ましい伸長エピトープ
伸長グリカンエピトープは本発明の胚性幹細胞の識別のために有用であると考えられる。本発明は、全ての細胞型を分析するために前記構造の一部を用いることに関するが、特定の構造モチーフは特定の分化段階においてより一般的である。
さらに、前記末端構造の一部は特に高度に発現されており、そのため1または複数の型の細胞の識別のために特に有用であると考えられる。
末端エピトープおよびロンゲスグリカン型(longesglycan types)を、グリカン型の構造分析に基づき表23に列挙する。以下の好ましい伸長構造エピトープは、胚性幹細胞のためのおよび本発明の使用のための新規マーカーとして好ましい。
好ましい末端Galβ3/4構造
II型N‐アセチルラクトサミンを基盤とした構造
末端II型N‐アセチルラクトサミン構造
本発明は、特異的O‐グリカン、N‐アグリカン(N‐aglycan)および糖脂質エピトープ等の、好ましいII型N‐アセチルラクトサミンを明らかにした。本発明は、好ましい一態様において、特に、豊富なO‐グリカンおよびN‐グリカンエピトープに関する。本発明はさらに、特徴的糖脂質II型LacNAc末端の識別に関する。本発明は特に、未分化の胚性幹細胞(段階I)および類似の細胞の識別のための、または分化段階の分析のための、II型LacNAcの使用に関する。しかし、該構造の実質的な量はより分化した細胞に存在すると考えられる。
伸長II型LacNAc構造は特にN‐グリカン上に発現している。好ましいII型LacNAc構造は二分岐N‐グリカンコア構造、Galβ4GlcNAcβ2Manα3/6Manβ4にβ2結合する。
本発明はさらに、胚性細胞に効果的に発現する、末端II型N‐アセチルラクトサミン構造を有する新規O‐グリカンエピトープを明らかにした。O‐グリカン構造の分析は、特に前記末端構造を有するコアII N‐アセチルラクトサミンを明らかにした。好ましい伸長II型N‐アセチルラクトサミンは、従って、Galβ4GlcNAcβ6GalNAc、Galβ4GlcNAcβ6GalNAcα、Galβ4GlcNAcβ6(Galβ3)GalNAc、およびGalβ4GlcNAcβ6(Galβ3)GalNAcαを含む。
本発明はさらに、II型LacNAcの糖脂質上における存在を明らかにした。本発明は初めて末端型N‐アセチルラクトサミンを糖脂質上に明らかにする。ネオラクト糖脂質ファミリーは、特定の組織上に特徴的に発現し、他では発現しない重要な糖脂質ファミリーである。
好ましい糖脂質構造としては、エピトープ、好ましくは直鎖ネオラクトテラオシルセラミドの非還元末端の末端エピトープおよびその伸長バリアントGalβ4GlcNAcβ3Gal、Galβ4GlcNAcβ3Galβ4、Galβ4GlcNAcβ3Galβ4Glc(NAc)、Galβ4GlcNAcβ3Galβ4Glc、およびGalβ4GlcNAcβ3Galβ4GlcNAc等が挙げられる。さらに、直鎖ポリラクトサミンを認識する特異的試薬を前記構造の識別のために訴えることができると考えられ、この場合これらはタンパク質結合グリカンに結合する。好ましい一態様において、本発明はN‐グリカンに結合したポリ‐N‐アセチルラクトサミン、好ましくはN‐グリカン上のGalβ4GlcNAcβ3Galβ4GlcNAcβ2Man等のβ2結合構造に関する。本発明はさらに、好ましい細胞のポリ‐N‐アセチルラクトサミン構造;ならびにSAα3、SAα6、Fucα2による非還元末端Galに対する、およびFucα3によるGlcNAc残基に対する、それらの修飾;の分析に関する。
本発明は好ましくは四糖、六糖、および八糖の識別に関する。本発明はさらに、末端II型lacNAcエピトープを含む分岐糖脂質ポリラクトサミンを明らかにしたものであり、好ましくはこれらとしてGalβ4GlcNAcβ6Gal、Galβ4GlcNAcβ6Galβ、Galβ4GlcNAcβ6(Galβ4GlcNAcβ3)Gal、およびGalβ4GlcNAcβ6(Galβ4GlcNAcβ3)Galβ3、Galβ4GlcNAcβ6(Galβ4GlcNAcβ3)Galβ4Glc(NAc)、Galβ4GlcNAcβ6(Galβ4GlcNAcβ3)Galβ4Glc、およびGalβ4GlcNAcβ6(Galβ4GlcNAcβ3)Galβ4GlcNAcなどが挙げられる。
直鎖分岐(linear branched)ポリ‐N‐アセチルラクトサミンに特異的に結合する抗体は当該分野において周知であると理解される。本発明はさらに、分岐ポリLacNAcおよび類似したβ6Gal(NAc)エピトープを有するコアII O‐グリカンの両者を認識する試薬に関する。
Lewis x構造
伸長Lewis x構造は特にN‐グリカン上に発現する。好ましいLewis x構造は二分岐N‐グリカンコア構造、Gal(Fucα3)β4GlcNAcβ2Manα3/6Manβ4にβ2結合する
本発明はさらに、糖脂質上のLewis xの存在を明らかにした。好ましい糖脂質構造としてはGal(Fucα3)β4GlcNAcβ3Gal、Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ3Gal、Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ3Galβ4、Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ3Galβ4Glc(NAc)、Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ3Galβ4Glc、およびGalβ4(Fucα3)GlcNAcβ3Galβ4GlcNAc等が挙げられる。
本発明はさらに、O‐グリカン上のLewis xの存在を明らかにした。好ましい糖脂質構造としては好ましくはコアII構造Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ6GAlNAc、Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ6GalNAcα、Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ6(Galβ3)GalNAc、およびGalβ4(Fucα3)GlcNAcβ6(Galβ3)GalNAcα等が挙げられる。
HII型構造
特異的伸長HII型エピトープは特にN‐グリカン上に発現する。好ましいHII型構造は二分岐N‐グリカンコア構造、Fucα2Galβ4GlcNAcβ2Manα3/6Manβ4にβ2結合する
本発明はさらに、糖脂質上のHII型の存在を明らかにした。好ましい糖脂質構造としては、Fucα2Galβ4GlcNAcβ3Gal、Fucα2Galβ4GlcNAcβ3Gal、Fucα2Galβ4GlcNAcβ3Galβ4、Fucα2Galβ4GlcNAcβ3Galβ4Glc(NAc)、Fucα2Galβ4GlcNAcβ3Galβ4Glc、およびFucα2Galβ4GlcNAcβ3Galβ4GlcNAc等が挙げられる。
本発明はさらに、O‐グリカン上のHII型の存在を明らかにした。好ましい糖脂質構造としては、好ましくはコアII構造Fucα2Galβ4GlcNAcβ6GAlNAc、Fucα2Galβ4GlcNAcβ6GalNAcα、Fucα2Galβ4GlcNAcβ6(Galβ3)GalNAc、およびFucα2Galβ4GlcNAcβ6(Galβ3)GalNAcα等が挙げられる。
シアル化II型N‐アセチルラクトサミン構造
本発明は、特異的O‐グリカン、およびN‐アグリカン(N‐aglycan)および糖脂質エピトープ等の、好ましいシアル化II型N‐アセチルラクトサミンを明らかにした。本発明は、好ましい一態様において、特に、豊富なO‐グリカンおよびN‐グリカンエピトープに関する。SAは本明細書においてシアル酸、好ましくはNeu5AcまたはNeu5Gc、より好ましくはNeu5Acのことを指す。該シアル酸残基はSAα3GalまたはSAα6Galであり、これらの構造は特異的伸長エピトープとして提示された場合、特徴的末端構造をグリカン上に形成すると考えられる。
シアル化II型LacNAc構造エピトープは、特にN‐グリカン上に発現する。好ましいII型LacNAc構造は二分岐N‐グリカンコア構造にβ2結合し、SAα3/6Galβ4GlcNAcβ2Man、SAα3/6Galβ4GlcNAcβ2Manα、およびSAα3/6Galβ4GlcNAcβ2Manα3/6Manβ4等の好ましい末端エピトープが挙げられる。本発明はN‐グリカン上の、SAα3構造(SAα3Galβ4GlcNAcβ2Man、SAα3Galβ4GlcNAcβ2Manα、およびSAα3Galβ4GlcNAcβ2Manα3/6Manβ4)ならびにSAα6エピトープ(SAα6Galβ4GlcNAcβ2Man、SAα6Galβ4GlcNAcβ2Manα、およびSAα6Galβ4GlcNAcβ2Manα3/6Manβ4)の両者に関する。
未分化段階Iの胚性細胞の分析にはSAα3‐N‐グリカンエピトープが好ましい。段階IIおよび段階III胚性細胞等の分化したまたは分化中の胚性細胞の分析にはSAα6‐N‐グリカンエピトープが好ましい。両型のN‐グリカンを組み合わせての分析が胚性幹細胞の分析に有用であると考えられる。
本発明はさらに、胚性細胞に効果的に発現する、末端シアル化II型N‐アセチルラクトサミン構造を有する新規O‐グリカンエピトープを明らかにした。O‐グリカン構造の分析は、特に前記末端構造を有するコアII N‐アセチルラクトサミンを明らかにした。好ましい伸長II型シアル化N‐アセチルラクトサミンは、従って、SAα3/6Galβ4GlcNAcβ6GalNAc、SAα3/6Galβ4GlcNAcβ6GalNAcα、SAα3/6Galβ4GlcNAcβ6(Galβ3)GalNAc、およびSAα3/6Galβ4GlcNAcβ6(Galβ3)GalNAcαを含む。SAα3構造は、SAα3Galβ4GlcNAcβ6GalNAc、SAα3Galβ4GlcNAcβ6GalNAcα、SAα3Galβ4GlcNAcβ6(Galβ3)GalNAc、およびSAα3Galβ4GlcNAcβ6(Galβ3)GalNAcα等のO‐グリカンとの関連で好ましい構造であることが明らかになった。
特異的な好ましい四糖II型ラクトサミンエピトープ
好ましい一態様において、高度に効果的な試薬は三糖より大きいエピトープを認識し得ると考えられる。従って本発明はさらに、好ましい伸長または大型グリカン構造エピトープとしての分岐末端II型ラクトサミン誘導体Lewis y Fucα2Galβ4(Fucα3)GlcNAcおよびシアリル‐Lewis x SAα3Galβ4(Fucα3)GlcNAcに関する。前記構造は好ましい末端三糖シアリル‐ラクトサミン、H‐II型およびLewis xエピトープの組み合わせであると考えた。該エピトープの分析は、他の末端II型エピトープの分析に関連するさらに有用な方法として好ましい。本発明は特に、各種の型のグリカン上にLewis y型およびシアリル‐Lewis xエピトープを有するコア構造をさらに定義すること、および、好ましいグリカンコア構造の識別を含めることによる該構造の識別の最適化に関する。
II型ラクトサミンと類似する構造
本発明はさらに、特にN‐グリカンおよびラクトシルセラミド(Galβ4GlcβCer)糖脂質構造上のLacdiNAc等のII型N‐アセチルラクトサミンに類似の伸長エピトープの識別に関する。これらはLacNAcと類似性を共有しており、唯一の相違は単糖残基の位置上のNAc残基の数である。
LacdiNAc構造
LacdiNacが比較的稀で特徴的なグリカン構造であり、このことが胚性細胞の分析にとって特に好ましいと考えられる。本発明は少なくともβ2結合によるN‐グリカン上のLacdiNAcの存在を明らかにした。該構造は特異的グリコシダーゼ開裂により分析された。該LacdiNAc構造は、構造表13における2つの末端存在GlcNAc含有構造を有する構造と同一の質量を有し、特異的質量数に対する一つだけの異性体構造を示している。好ましい伸長LacdiNAcエピトープとしては従って、GalNAcβ4GlcNAcβ2Man、GalNAcβ4GlcNAcβ2Manα、およびGalNAcβ4GlcNAcβ2Manα3/6Manβ4等が挙げられる。本発明はさらに、フコシル化LacdiNAc含有グリカン構造を明らかにしたものであり、好ましいエピトープとしては従って、さらにGalNAcβ4(Fucα3)GlcNAcβ2Man、GalNAcβ4(Fucα3)GlcNAcβ2Manα、GalNAcβ4(Fucα3)GlcNAcβ2Manα3/6Manβ4 Gal(Fucα3)β4GlcNAcβ2Manα3/6Manβ4等が挙げられる。質量数2263の構造のLacNacのa6結合シアル酸の存在が考えられ、α6シアル化およびα3フコシル化の競合的な性質に基づくと、表13はフコースの少なくとも一部が前記分子のLacdiNAc腕上に存在することを示している。
I型N‐アセチルラクトサミンを基盤とする構造
末端I型N‐アセチルラクトサミン構造
本発明は、好ましいI型N‐アセチルラクトサミンを有する特異的O‐グリカン、N‐グリカンおよび糖脂質エピトープを明らかにした。本発明は好ましい一態様において、特に豊富な糖脂質エピトープに関する。本発明はさらに、特徴的O‐グリカンI型LacNAc末端の識別に関する。
本発明は特に、未分化胚性幹細胞(段階I)および類似の細胞の識別のための、または分化段階の分析のためのI型LacNAcの使用に関する。しかし、該構造の実質的な量はより分化した細胞に存在すると考えられる。
本発明はさらに、胚性細胞に効果的に発現する、末端I型N‐アセチルラクトサミン構造を有する新規O‐グリカンエピトープを明らかにした。O‐グリカン構造の分析は、特にII型ラクトサミン上に前記末端構造を有するコアII N‐アセチルラクトサミンを明らかにした。好ましい伸長I型N‐アセチルラクトサミンとしては、従って、Galβ3GlcNAcβ3Galβ4GlcNAcβ6GalNAc、Galβ3GlcNAcβ3Galβ4GlcNAcβ6GalNAcα、Galβ3GlcNAcβ3GalGlcNAcβ6(Galβ3)GalNAc、およびGalβ3GlcNAcβ3Galβ4GlcNAcβ6(Galβ3)GalNAcαが挙げられる。
本発明はさらに、糖脂質上のI型LacNAcの存在を明らかにした。本発明は初めて糖脂質上の末端I型N‐アセチルラクトサミンを明らかにする。ラクト糖脂質ファミリーは、特定の組織上に特徴的に発現し、他では発現しない重要な糖脂質ファミリーである。
好ましい糖脂質構造としては、エピトープ、好ましくは直鎖ネオラクトテラオシルセラミドの非還元末端の末端エピトープおよびその伸長バリアントGalβ3GlcNAcβ3Gal、Galβ3GlcNAcβ3Galβ4、Galβ3GlcNAcβ3Galβ4Glc(NAc)、Galβ3GlcNAcβ3Galβ4Glc、およびGalβ3GlcNAcβ3Galβ4GlcNAc等が挙げられる。さらに、直鎖ポリラクトサミンを認識する特異的試薬を前記構造の識別のために用いることができると考えられ、この場合これらはタンパク質結合グリカンに結合する。特に、好ましいO‐グリカンおよび糖脂質上の末端三およびテラ糖エピトープは本質的に同一であると考えられる。本発明は好ましい一態様において、モノクローナル抗体等の同一の結合剤による両構造の識別に関する。
本発明はさらに、好ましい細胞の末端I型ポリ‐N‐アセチルラクトサミン構造;ならびにSAα3、Fucα2による非還元末端Galに対する、およびSAα6またはFucα3によるGlcNAc残基に対する、それらの修飾;ならびに誘導体化I型N‐アセチルラクトサミンの他のコアグリカン構造の分析に関する。
好ましい伸長I型LacNAc構造はN‐グリカン上に発現する。好ましいI型LacNAc構造は、好ましいエピトープGalβ3GlcNAcβ2Man、Galβ3GlcNAcβ2ManαおよびGalβ3GlcNAcβ2Manα3/6Manβ4を有する二分岐N‐グリカンコア構造にβ2結合する。
効果的なポジティブおよび/またはネガティブ結合剤ならびにその組み合わせを選択するためのHSC結合剤標的の表
表23は、HSCおよび分化した細胞に特異的なグリコシル化(本発明の実施例で質量分析プロファイリング、NMR、グリコシダーゼ、およびグリカンフラグメンテーション実験について記載)に対する本願発明者らによる構造の帰属、生合成経路およびグリコシル化遺伝子発現に関する知見を含む生合成情報、ならびに本発明で述べる結合剤特異性(本発明の実施例で特定の細胞型および分子クラスと結合するレクチン、抗体、および他の結合剤分子について記載)の結果を組み合わせて記載するものである。
表23は、特定の細胞型における適切な結合剤標的を、q、+/−、+、および++の記号で示し、特に好ましくは+および++の記号によるものであり;ならびに有用な非存在または低発現を−、q、および+/−の記号で示し、特に好ましくは−および+/−の記号によるものである。本願発明者らは、そのようなデータを用いて特異的に選択された細胞型を識別することができると考えた。本発明は、本発明の特定の態様としての各種の異なる原理によるそのような使用に関し:特定の細胞型に関連する標的を認識する結合剤を用いたポジティブセレクション、特定の細胞上での存在量が少ない標的を用いたネガティブセレクション、ならびにポジティブセレクションとネガティブセレクションとの組み合わせ、または、本発明による特異性および/もしくは効率を高めるための2種類以上のポジティブおよび/もしくはネガティブ標的を組み合わせたさらなる使用である。
以下に本発明の結合剤の特に好ましい標的を記載する。
1)HSC(CD34+および/またはCD133+細胞等)結合剤構造:
本発明は、表23に示した末端グリカンエピトープに基づいたHSCの識別に関し、好ましくは:
Lex、より優先的にはO‐グリカン構造Lexβ6(R‐Galβ3)GalNAc中、
sLex、より優先的にはO‐グリカン構造sLexβ6(R‐Galβ3)GalNAc中、
SAα3Galβ4GlcNAc、より優先的にはN‐グリカン構造s3LNβ2Manα3/6中、より優先的にはN‐グリカン構造s3LNβ2Manα3(s3LNβ2Manα6)Man中、
Galβ3GalNAcα、
Fucα2Galβ3GalNAcβ、より優先的には本発明による糖脂質主鎖中、
GalNAcα、より優先的にはTn抗原中、
大型高マンノース型N‐グリカン、より具体的には、Manα2Man末端エピトープ含有、
グルコシル化N‐グリカン、より具体的にはGlcα、好ましくは末端Glcα3Manα含有、
コア‐フコシル化N‐グリカン、ならびに/または
好ましくは、N‐グリカン構造中、より好ましくはGnβ2Manα3(Gnβ2Manα6)Man N‐グリカン構造中の、Gnβ2Manα3/6および/もしくはGnβ4Manα3としての、非還元末端GlcNAcβ;
から選択され、
特に好ましい結合剤構造は、sLex、より具体的にはO‐グリカン構造sLexβ6(R‐Galβ3)GalNAcであり、任意に1もしくは2種類以上の上記のリストからの他のエピトープと共存していてもよい。
2)HSC(CD34−および/またはCD133−細胞等)から分化した細胞を対象とする結合剤構造
本発明は、表23に示した末端グリカンエピトープに基づくHSCから分化した細胞の特異的な識別に関し、好ましくは:
LNβ4Manα3/6、より好ましくは分岐鎖N‐グリカン構造LNβ2(LNβ4)Manα3(LNβ2Manα6)Man中、
s3LNβ4Manα3、
Galβ3GalNAcβ、より好ましくはアシアロ‐GM1および/もしくはGb5(SSEA‐3)中、
SAα3Galβ3GalNAcβ3Galα4Galβ4Glc(SSEA‐5)、
GalNAcβ、より好ましくはアシアロ‐GM2および/もしくはGb4、
Galβ4Glc、Gb3、
GalNAcα3GalNAcβ、
SAα6GalNAcα、より好ましくはシアリル‐Tnエピトープ中、ならびに/または
低マンノース、小型高マンノース、もしくはハイブリッド型N‐グリカン、好ましくは末端Manα3Manおよび/もしくはManα6Man含有、
から選択され、
ここで、特に好ましい結合剤構造は、アシアロ‐GM1、アシアロ‐GM2、および/もしくはシアリル‐Tnの1種類以上であり;
任意に1種類以上の上記の全リストからの他のエピトープと共存していてもよい。
好ましいLex/sLex抗体結合剤
本願発明者らは、特定の細胞型が本発明の異なるグリカン主鎖上にLex/sLexエピトープを有していることを見出した。有用なこのような試薬が本発明において記載され、さらに有用な試薬が次に列挙される。本発明は特に、異なる細胞型内および異なるグリカン主鎖上のLex/sLexエピトープの構造特異的識別のための、1または複数種の列挙された抗体の使用に関する。このリストは好ましいグリカン主鎖特異性に従って整列されている。各主鎖上のLexおよび/またはsLexに対する適した結合剤は本発明により各種細胞型に対して選択することができる。

Figure 2010516240

Figure 2010516240
実施例
実施例1
ヒト臍帯血由来幹細胞のN‐グリコシル化
要約
細胞表面グリカンは細胞の接着能に寄与しており、細胞シグナル伝達に不可欠である。しかし、CD133+細胞等の造血幹細胞のグリコシル化はあまり研究されていない。本研究において、本願発明者らはCD133+およびCD133−細胞のN‐グリカン構造を質量分析プロファイリングおよびエキソグリコシダーゼ消化により;細胞表面グリカンエピトープをレクチン結合アッセイにより;ならびにN‐グリカン生合成関連遺伝子の発現をマイクロアレイにより分析した。CD133+およびCD133−細胞のN‐グリカンプロファイルにおいて、10%を超える違いが示された。二分岐複合型N‐グリカンは、CD133+細胞中で豊富となった。これらの構造の合成を制御する遺伝子の中で、CD133+細胞は、MGAT2を過剰発現し、MGAT4を過小発現した。さらに、高マンノース型N‐グリカンおよび末端α2,3‐シアル化の量がCD133+細胞中で増加した。α2,3‐シアル化の増加は、ST3GAL6の過剰発現によって支持された。造血幹細胞特異的N‐グリコシル化の新規な知見により、その同定が向上し、幹細胞のホーミングおよび動員、または特定の組織に対する標的化を促進するツールが提供される。
序論
半分を超えるヒトタンパク質がグリコシル化されていると推定される。すなわち、グリコシル化はリン酸化よりも一般的な翻訳後修飾である(1)。グリカンは多糖外被として細胞表面全体を覆っており、構造の構成成分およびシグナルトランスデューサーとして機能する。グリカンは、細胞の酸化ストレスに対する反応、自然免疫に対する耐性、および細胞間または細胞‐マトリックス間情報交換等(2、3)多くの生物学的プロセスにとって不可欠である。CD133+等の造血幹細胞では、細胞型特異的グリコシル化が維持、分化、ホーミング、および動員に寄与する場合がある。
臍帯血は、幹細胞源として都合が良く;採取が容易であり、他の供給源からの幹細胞移植片よりも組織適合性のミスマッチに対する許容度が優れている。臍帯血移植は、完全なHLA適合ドナーが見つからない場合に用いられることが多い。1ユニットの臍帯血中の利用可能な細胞の数は小児科の患者に対してのみ十分であると考えられる場合が多く、幹細胞をin vitroで増殖させるために数多くの方法が試みられてきた。治療に不可欠である造血幹細胞は、多くの場合細胞表面の糖タンパク質CD34およびCD133の発現に基づいて特徴づけられる。CD133+細胞のほとんどすべて(99.8%)がCD34陽性でもある(4)。分化の間に、CD133分子はCD34よりも早い段階で細胞表面から失われる。
造血幹細胞の糖鎖生物学を理解することにより、幹細胞のより良好な生着、ex vivoまたはin vivoでの増殖、および特定の組織に対する標的化のための新規技術が提供される(5〜7)。CD133+細胞N‐グライコームの分析も、造血幹細胞の同定を改善するであろう。しかし、N‐グリコシル化は複雑な事象であり、今までのところヒト幹細胞グライコームの分析には、限られた数の細胞を含む試料を分析するための適切な技術が欠けている。N‐グリカン生合成は、同一のグリカン基質に対して競合する糖転移酵素およびグリコシダーゼ酵素、ならびにイソ酵素の発現によって制御される。さらに、グリカン分子の形成、その前駆体の生合成、輸送、および局在化のメカニズムは、他の生合成経路と絡み合っている(8、9)。単一のグリカン生合成酵素の活性の変化が、細胞の外観および機能に大きな影響を与え得る。しかし、特定のグリコシル化プロセスに関与する特定の遺伝子の同定には、グリコシル化関連遺伝子の発現レベルとグリカン構造との比較が必要である。最近、活性化マウスT細胞中におけるわずかに数個の遺伝子の発現差異に伴う劇的なN‐グライコームの変化が報告された(10〜12)。シアル酸転移酵素をコードする遺伝子の発現差異は、免疫シグナル伝達に対するBリンパ球の反応に異なった形で寄与することが示された(13)。
本研究では、本願発明者らは、N‐グリカン構造分析、ならびに糖転移酵素およびグリコシダーゼをコードする遺伝子の発現プロファイリングからのデータを組み合わせることにより、CD133+細胞に典型的であるN‐グリコシル化事象の分析を行った。CD133+細胞の結果を成熟白血球(CD133−)と比較し、CD133+細胞に特異的なN‐グリコシル化を識別した。本願発明者らの研究は、幹細胞の特性に関する新規情報を提供する。結果は、治療用途でのその使用の開発の手助けとなり得る。細胞のグリコシル化の操作を用いれば、幹細胞のホーミングおよび動員の向上、または特定の組織を標的とする細胞産物の設計が可能となるであろう。
材料および方法
細胞
臍帯血はHelsinki University Central Hospital, Department of Obstetrics and Gynaecology、およびHelsinki Maternity Hospitalより入手した。ドナーすべてからインフォームドコンセントを得ており、この研究はHelsinki University Central Hospitalおよびフィンランド赤十字血液サービス(Finnish Red Cross Blood Service)の倫理審査委員会からの承認を受けた。新鮮な臍帯血の採取および処理は過去の報告(14)に従って実施した。Ficoll‐Hypaque密度勾配(Amersham Biosciences, New Jersey, USA, www1.amerschambiosciences.com)を用いて単核球である白血球を単離した。白血球は、NMR分析に十分な量で入手することができる。さらに、白血球をレクチン標識アッセイに用いた。抗CD133マイクロビーズを磁気親和性細胞選別法(Miltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germany, www.miltenyibiotec.com)に用いることで、幹細胞画分を白血球画分から選別した(15)。成熟白血球(CD133−細胞)をコントロールの目的で回収した。すべて合わせて11ユニットの臍帯血を用いた。質量分析用の試料調製では、オリゴ糖の混入を避けるために超高純度ウシ血清アルブミン(少なくとも99%の純度、Sigma‐Aldrich Chemie GmbH, Steinheim,Germany, www.sigmaaldrich.com)を用いた。
N‐グリカンの単離
N‐グリカンを、基本的に記載(Nyman et al., 1998)の通りに、F. meningosepticum N‐グリコシダーゼF消化(Calbiochem, USA)によって細胞糖タンパク質から遊離させた。混入細胞の除去は、80〜90%(v/v)のアセトン水溶液による−20℃でのグリカンの沈殿および60%(v/v)氷冷メタノールによるその抽出によって実施した(Verostek et al., 2000)。次に、グリカンを水中でC18シリカ樹脂(BondElut, Varian, USA)に通し、多孔性グラファイトカーボン(Carbograph, Alltech, USA)に吸着させた。このカーボンカラムを水で洗浄し、次いで中性グリカンを水中の25%(v/v)アセトニトリルで溶出し、シアル化グリカンを水中の25%アセトニトリル(v/v)中の0.05%(v/v)トリフルオロ酢酸で溶出した。両グリカン画分をさらに水中で強陽イオン交換樹脂(Bio‐Rad, USA)およびC18シリカ樹脂(ZipTip, Millipore, USA)に通した。シアル化グリカンをさらに、それらをn‐ブタノール:エタノール:水(10:1:2、v/v)中で微結晶性セルロースに吸着させ、同一の溶媒で洗浄し、50%エタノール:水(v/v)で溶出することにより、精製した。上記の全ての工程は小型クロマトグラフィーカラム上で行い、少ない溶出および処理容量を用いた。
質量分析
MALDI‐TOF質量分析を、Bruker Ultraflex TOF/TOF装置(Bruker, Germany)により実施し、その分析のための試料は実質的に文献(22)に記載のようにして調製した。中性N‐グリカンは、陽イオン反射モード(positive ion reflector mode)にて[M+Na]+イオンとして検出し、シアル化N‐グリカンは、陽イオン反射モードまたは線形モード(linear mode)にて[M−H]−イオンとして検出した。中性およびシアル化グリカン成分の相対モル存在量は、中性およびシアル化N‐グリカン画分として別に分析を行った場合は、質量スペクトルの相対シグナル強度に基づいて帰属した(Saarinen, 1999. Harvey, 1993, Naven, 1996, Papac, 1996)。質量分析の粗データを、同位体パターン重複、複数のアルカリ金属付加物のシグナル、還元オリゴ糖から水が失われることによる生成物、および試料中のグリカン成分から生じたものではないその他の干渉する質量分析シグナルの影響を除去することによって本グリカンプロファイルへと変換した。提供するグリカンプロファイル中の得られたグリカンシグナルは100%に対して標準化し、試料間の比較を可能とした。2つのグリカンプロファイルの量的な相違(%)は、数式1:
Figure 2010516240
[数式中、pはプロファイルaまたはb中のグリカンシグナルiの存在量(%)であり、nはグリカンシグナルの総数である]
によって算出した。
2つのグリカンプロファイル間のあるグリカンの特徴の相対的な相違は、数式2:
Figure 2010516240
[数式中、Pはプロファイルaまたはb中のそのグリカンの特徴を有するグリカンシグナルの存在量(%)の合計であり、xはa≧bの場合は1であり、xはa<bの場合は−1である]
によって算出した。
NMR分光法
単離されたグリカンは、水または50mMの炭酸水素アンモニウムを用いたゲル濾過高圧液体クロマトグラフィーによってそれぞれ中性およびシアル化グリカン画分に分離することにより、NMR分光法のためにさらに精製を行なった。NMR分析は、感度を高めるためにクライオプローブ(cryo‐probe)を用い、800MHzのVariant Unity NMR分光器により過去に報告されたようにして実施した(Weikkolainen et al. Glycoconj.J. 2007 in press)。プロトンNMR分析の前に精製したグリカンを99.996%の重水中に溶解し、乾燥させて水を除去し、試料のプロトン交換を行った。
エキソグリコシダーゼ分析
N‐グリカン画分中に存在する非還元グリカンエピトープの分析を、特異的エキソグリコシダーゼ酵素を用いた消化によって実施した。異性体構造に対する酵素の特異性は、以下に詳述するように、明らかにされているオリゴ糖との平行反応で制御した。用いたエキソグリコシダーゼ酵素は:ラクト‐N‐ヘキサオースのβ1,4‐結合ガラクトースを消化するS. pneumoniae(大腸菌における組み換え体、Calbiochem)からのβ1,4‐ガラクトシダーゼ、ラクト‐N‐ヘキサオースのβ1,3‐結合ガラクトースを消化するX. manihotis(大腸菌における組み換え体、Calbiochem)からのβ1,3‐ガラクトシダーゼ、α2,3‐は消化するがα2,6‐シアリルN‐アセチルラクトサミンは消化しないS. pneumoniae(大腸菌における組み換え体、Calbiochem)からのα2,3‐シアリダーゼ、α2,3‐およびα2,6‐シアリルN‐アセチルラクトサミンの両方を消化するA. ureafaciens(大腸菌における組み換え体、Calbiochem)からの広範な(broad‐range)シアリダーゼ、ならびにヒト細胞から単離されたオリゴ糖混合物中に存在するMan5‐Man9高マンノース型N‐グリカンを消化するタチナタマメ(C. ensiformis;Sigma‐Aldrich)からのα‐マンノシダーゼであった。反応は、50mM酢酸ナトリウムバッファー中、pH5.5、+37℃にて一晩消化させることで実施した。消化されたグリカン画分は、黒鉛化炭素を用いた固相抽出によって分析用に精製し、上述のようにしてMALDI‐TOF質量分析を行った。
マイクロアレイ
CD133+およびCD133−細胞より精製されたRNAをAffymetrix Human Genome U133 Plus 2.0アレイ上でハイブリダイズし、データは、過去に報告されたように(14)、Affymetrix GeneChip Operating Softwareを用いて分析した。適用可能な場合は、米国機能糖鎖コンソーシアム(Consortium for Functional Glycomics)の遺伝子マイクロアレイコア(Gene Microarray Core)によって提供されるAffymetrix グリコーゲンチップ上に提示される同一のプローブを分析に選択した。転写物は、発現の少なくとも1.5倍の増加または減少が示された場合に、差異発現されたと見なした。
フローサイトメトリーによるレクチン結合分析
フローサイトメトリー分析を妨害するであろうレクチンによる赤血球前駆体の溶血または血球凝集を防ぐために、MNCは、Glycophorin A MicroBeads(Miltenyi Biotec)を用いたGlyAの除去を行った。この細胞をフィコエリトリン(PE)結合CD34モノクローナル抗体(Miltenyi Biotec)で標識して幹細胞集団を提示し、ならびにフルオレセインイソチオシアネート(FITC)結合レクチン、α‐マンノースおよびグルコースに対してはPisum sativumからのPSA;内部および末端α1,3‐またはα1,6‐結合マンノースに対してはHippeastrum hybridからのHHA、およびα1,3‐マンノース残基に対してはGalanthus nivalisからのGNA;大型複合型N‐グリカンに対してはPhaseolus vulgarisからのPHA‐L;β‐ガラクトースに対してはRicinus communisからのRCA‐I;α2,6‐およびα2,3‐結合シアル酸に対してはSambucus nigraからのSNAならびにMaackia amurensisからのMAA、α‐フコースに対してはLotus tetragonolobusからのLTAおよびUlex europaeusからのUEA‐I、のうちの1種類で標識した;EY Laboratories, Inc. San Mateo, CA, USA, www.eylabs.com; Vector Laboratories, Burlingame, CA, USA, www.vectorlabs.com)。フローサイトメトリーはBecton Dickinson FACSCalibur(商標)上で実施し、蛍光は530/30nmおよび575/25nmのバンドパスフィルターを用いて測定した。MNCの標識の結果は、特定のグリコシル化事象の全体としての頻度を示す。二重標識細胞画分は幹細胞の細胞表面上のグリカンを特定する。
結果
構造分析
構造分析については、全白血球からの中性およびシアル化N‐グリカン画分をNMRに掛けた。このNMR分析により、白血球中(非分離単核球)に存在する最も多いN‐グリカン構造についての詳細なデータが得られた(追加の図面、NMR、ならびに追加の表、NMR1およびNMR2)。中性N‐グリカン画分では高マンノース型N‐グリカンが検出されたが、一方、α2,6‐およびα2,3‐シアル化二分岐複合型N‐グリカンのN‐グリカン主鎖が、シアル化N‐グリカン画分では主要な構造であった。さらに、スペクトルの定量的な分析により、α2,3‐シアル化よりもα2,6‐シアル化の存在量が多く、N‐グリカン分岐では2型N‐アセチルラクトサミン(Galβ4GlcNAc、100%) が1型N‐アセチルラクトサミン (Galβ3GlcNAc、検出されず)に対して支配的であることが示された。β1,4‐分岐鎖三分岐N‐グリカンおよびα1,6‐フコシル化N‐グリカンコアも検出された。
幹細胞および成熟白血球上のN‐グリカンの性質ならびに存在量を比較するために、CD133+およびCD133−細胞をMALDI‐TOF質量分析で別々に分析した。NMRからのデータを用いて質量分析で示された構造を確認した。両方の細胞型にて、いくつかの複数の異性体構造を含む80を超えるシグナルが検出された(図2Aおよび3A)。CD133+およびCD133−細胞の間の相違は、シアル化N‐グリカンのプロファイルの方が(図1B、17%相違)中性N‐グリカンプロファイル(図1A、9%相違)よりもが大きかった。CD133+およびCD133−細胞内の主要なN‐グリカンは、高マンノースおよび二分岐複合型構造であった(図)。CD133+およびCD133−細胞は、単分岐、ハイブリッド、低マンノース、および大型複合型N‐グリカンも有していた(図2および3)。CD133+およびCD133−細胞の間の相違を分析するために、各検出されたグリカンシグナルに帰属された提案された単糖組成(図2および3;AおよびB)を、主要なN‐グリカンの種類に分類し(図2Cおよび3C)、CD133+およびCD133−細胞の間での異なる主要なN‐グリカンの種類の割合を比較することによって定量的に分析した。CD133+細胞のN‐グライコームは、高マンノース型N‐グリカン(図2C)、コア組成が5‐ヘキソース4‐N‐アセチルヘキソサミンである二分岐複合型N‐グリカン、およびシアル化単分岐N‐グリカン(図3C)に対する偏りを示した。対照的に、CD133−細胞では、コア組成が6‐ヘキソース5‐N‐アセチルヘキソサミンである大型複合型N‐グリカン、またはより大型であるシアル化ハイブリッド型N‐グリカンおよび低マンノース型N‐グリカンの量が多かった。
CD133−細胞集団は、複数の細胞型の表現型の平均を示す。独立して単離された分化した細胞集団での結果を比較するために、CD8+およびCD8−細胞を分析した。CD8+細胞は、CD133−細胞と類似のN‐グリコシル化表現型を示した。特に大型複合型N‐グリカンの割合がこれらの細胞では高かった(データは示さず)。このことは、CD133+細胞内の示されたN‐グライコームがこの細胞型に典型的なものであることを示唆している。
CD133+およびCD133−細胞上の末端エピトーププロファイルを分析するために、特異的なエキソグリコシダーゼ消化を質量分析と組み合わせて実施した。α‐マンノース、β1,4‐ガラクトース、およびβ‐N‐アセチルグルコサミン残基が両方の細胞型に多く存在することが分かり、一方β1,3‐結合ガラクトース残基の検出量は多くなかった。α2,3‐シアリダーゼ処理で示されたように、CD133+およびCD133−の両細胞の大部分はα2,6‐結合シアル酸を有していた。中性、すなわち完全に脱シアル化したグリカン成分は、CD133+細胞由来のすべてのシアル化N‐グリカン種から産生されたが、一方CD133−細胞には、α2,3‐シアリダーゼ処理に対して完全な耐性を有する少量成分が含まれていた。さらに、CD133+細胞における特異的なシアリダーゼ処理の間の酸性グリカンプロファイルの変化は、CD133−細胞に比べて定量的に大きかった(図4)。まとめると、CD133+およびCD133−細胞中でα2,3‐シアリダーゼに対して影響を受けるN‐グリカンシグナルの割合は異なり、CD133+細胞中でα2,3‐シアル化N‐グリカンが豊富であることを示している(図4)。
N‐グリコシル化の生合成経路
グリカンプロファイリングの後、N‐グリカン構造を修飾する酵素をコードする遺伝子の発現についての研究を行った。N‐グリカンの生合成は、N‐グリカン鎖の異なる領域;N‐グリカンコア、主鎖、および末端領域、で作用するいくつかの糖転移酵素およびグリコシダーゼ酵素ファミリーによって制御される(図5)。O‐グリカン等の他の重要な種類のグリカンおよび糖脂質の生合成は、部分的にN‐グリカンの生合成と重なる部分はあるが、酵素ファミリーの異なるメンバーは、多くの場合、特定のグリカン型の合成に特化している。遺伝子産物に対する標的グリカンの種類およびN‐グリカン構造関連遺伝子の発現の結果を表1に示す。
N‐グリカンコア配列
N‐グリカンコア構造は、特化したマンノシダーゼ(MAN)およびN‐アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(GlcNAcT)酵素によって形成される(16)(図4)。MANは、高マンノースおよび低マンノース型N‐グリカン構造を形成し、他のN‐グリカン型に対してはその出発点を形成する(8)。MAN1酵素は、高マンノース型からハイブリッド型および単分岐N‐グリカンへの変換を制御し、MAN2酵素は、複合型構造へのさらなる変換を制御する。GlcNAcTは、ハイブリッド、単分岐、および複合型N‐グリカンの分岐鎖モードを決定する(17)。
高マンノース型N‐グリカンは支配的な中性N‐グリカン群であった。中性α‐マンノシル化N‐グリカンの相対量はCD133+およびCD133−細胞中で同等であった(図4)。しかし、末端α‐マンノースはCD133+細胞中の高マンノース型グリカンで豊富であり、一方CD133−細胞中では、末端α‐マンノースは低マンノース、ハイブリッド、および単分岐型N‐グリカンに広く存在していた。細胞表面上のα‐マンノースの存在は、レクチン標識によってさらに示された(表2)。α‐マンノースおよびN‐グリカンコア配列結合レクチンPSAならびにHHAは、96〜99%の成熟白血球および幹細胞集団を標識した。GNAは成熟白血球の73%を標識したが、幹細胞の標識は僅かであった。GNAは、末端α1,3‐マンノース残基を持つ低マンノース型N‐グリカンに対して最も高い親和性を有する。レクチン標識の結果は、構造分析での結果と同様に、幹細胞に対する差異的なα‐マンノシル化を示唆している。
高マンノース型N‐グリカンは、グリコシダーゼファミリーのMAN1およびMAN2によって他のN‐グリカン型へプロセッシングされる(8、16)(表1)。MAN1ファミリー遺伝子の既知の4種類のうちの3種類、MAN1A1、MAN1A2、およびMAN1B1、ならびにMAN2ファミリー遺伝子の既知の5種類すべて、MAN2A1、MAN2A2、MAN2B1、MAN2B2、およびMAN2C1は、CD133+およびCD133−細胞中で同様に発現された。MAN1遺伝子ファミリーの4番目のメンバー、MAN1C1は、CD133−細胞中でのみ発現された。そのMAN1ファミリー内での特定の役割は分かっていない。しかし、MAN1C1でコードされた酵素は、in vitroでは、GlcNAcTをブロックするα1,3分岐鎖中のマンノース残基の除去を優先的に行う(21)。
二分岐複合型N‐グリカンより大型のN‐グリカン構造の量は、構造分析によると、CD133+細胞内で少なかった。分岐鎖複合型N‐グリカンと結合するPHA‐Lは、98%の白血球およびほとんどの幹細胞を標識した(表2)。この標識の結果は、成熟白血球および幹細胞の間で大型複合型N‐グリカンの量が異なるにも関わらず、これらの構造は両細胞型に典型的なものであることを示している。
ハイブリッド型および複合型N‐グリカンの生合成は、MGAT遺伝子によってコードされるN‐グリカンコアGlcNAcTのファミリーによって制御される(表1)。MGAT1、MGAT2、およびMGAT4A/MGAT4Bは、それぞれ、GlcNAcT1、GlcNAcT2、およびGlcNAcT4をコードする。これらの遺伝子は、CD133+およびCD133−細胞で発現されたが、その発現レベルの相違が示された。CD133+細胞では、MGAT2が1.9倍過剰発現され、MGAT4Aは2.8倍過小発現された。
まとめると、CD133+細胞内でのMAN1C1およびMGAT2の両方の発現パターンは、高マンノース型および複合型N‐グリカンの生合成が多くハイブリッド型および単分岐N‐グリカンの生合成が少ないことを示している。さらに、MGAT4Aの過小発現は、幹細胞中の三分岐および大型N‐グリカンが減少する結果となり得る。
N‐グリカン主鎖
グリカン主鎖構造は、ガラクトシルトランスフェラーゼ(GalT;分岐およびポリ‐LacNAc)およびGlcNAcT(ポリ‐LacNAc)の協調した作用によって形成される短分岐および伸長ポリ‐N‐アセチルラクトサミン(ポリ‐LacNAc)鎖を含む(図5)。白血球では短分岐型構造がポリ‐LacNAcに対して支配的であることから、本研究はGalTに注目した。末端ガラクトース残基はβ1,4‐結合であることが示され、一方β1,3‐結合ガラクトースは検出されなかった。2型LacNAcに特異的であるレクチンRCA‐Iは、白血球の91%ならびに幹細胞を標識した。
2型LacNAcエピトープを合成するβ1,4‐GalTをコードする遺伝子、B4GALT1、B4GALT3、およびB4GATL4等は、CD133+およびCD133−細胞の両方で発現された(表1)。しかし、B4GALT3の発現は、CD133+細胞では2.3倍少なかった。さらに、B4GALT2の発現は、CD133+細胞内でしか見られなかった。B3GALT2およびB3GALT5によってコードされる1型LacNAc合成β1,3‐GalTは、潜在的なグリカン産物と同様に、CD133+およびCD133−細胞内に存在しなかった。
N‐グリカン末端エピトープ
末端エピトープは、合成の最終段階でN‐グリカン構造に付加される(図5)。N‐グリカンの末端修飾で一般的なグリカンの部分としては、シアル酸およびフコース残基が挙げられる。シアル酸転移酵素ファミリー、α2,3SATおよびα2,6SATは、シアル酸を末端ガラクトース残基へ転移する。そのようなエピトープはCD133+およびCD133−細胞で見られた。さらに、すべての既知のヒトフコシルトランスフェラーゼ合成経路を分析した。
α2,3‐シアリダーゼプロファイリングにより、α2,3‐シアル化N‐グリカンはCD133−細胞よりもCD133+細胞でより一般的であり(図4)、一方α2,6‐シアリル‐LacNAcは両細胞型で一般的であることが明らかになった。レクチンSNAを用いてα2,6‐シアル化、細胞表面上でのST6GAL1の産物を検出した。SNAリガンドは幹細胞を含め、白血球の98%で検出された。MAAを用いた標識により、α2,3‐シアリル‐LacNAc構造が白血球の62%にしか存在せず、幹細胞でも同様であることが示された。このことは、CD133+細胞の豊富なα2,3‐シアル化がN‐グリカンのみと関連している可能性があることを示唆している。α2,6‐SATをコードするST6GAL1およびα2,3‐SATをコードするST3GAL6は、CD133+およびCD133−細胞で発現された(表1)。ST3GAL6の3.9倍の過剰発現がCD133+細胞で検出された。
CD133+およびCD133−細胞のN‐グリカンコア構造は、質量分析によって示されるように、α1,6‐フコシル化されているものが多かった。さらに、CD133+およびCD133−細胞にて、各N‐グリカン鎖上に2若しくは3個以上のフコース残基の存在が観察された(図2および3)。1型LacNAcはCD133+およびCD133−細胞のいずれでも支配的ではなかったため、フコシル化エピトープはα1,3‐またはα1,2‐結合フコース残基を有すると考えられた。レクチンLTAは、α1,3‐結合フコース、すなわちLex抗原の一部に対する特異性を有する。これは、白血球のわずかに6%しか標識しなかった。幹細胞集団の標識はまったく見られなかった。α1,2‐結合フコース特異性を有するレクチンUEA‐Iは、白血球および幹細胞の53%を認識した。
骨髄型α1,3‐FucT4(18、19)をコードするFUT4の発現は、CD133+およびCD133−細胞の両方で見られた。FucT4は、2型LacNAcまたはα3‐シアリルLacNAcのフコシル化により、それぞれLex(CD15)またはsLex抗原を合成する。α1,2‐FucTをコードするFUT1はCD133+およびCD133−細胞のいずれでも発現されなかった。さらに、CD133+およびCD133−細胞の構造分析において多く検出されたグリコシル化であるN‐グリカンコアα1,6‐FucTをコードするFUT8は、CD133+細胞だけが検出可能なレベルで発現した。FUT8は、α1,6‐フコシル化を促進する糖転移酵素をコードする唯一の既知の遺伝子であるが、過去の報告では、α1,6‐フコシル化の増加はα1,6‐FucTの上方制御のみでは説明することができないことが示されている(20)。
考察
本研究は、CD133+細胞の分析に新規な手法を用いるものである。CD133+細胞特異的N‐グリコシル化およびグリコシル化の事象の転写制御を互いに繋ぎ合わせることで、幹細胞と成熟白血球との間で異なる重要なN‐グリカン要素を産生する発現遺伝子を集めた。さらに、レクチン結合アッセイにより、幹細胞と成熟白血球との間の細胞表面グリコシル化の相違を明らかにした。
稀であるN‐グリカン構造はMALDI‐TOFおよびNMR分析によって検出されない場合があるが、この方法は異なる細胞型の間のグリカン組成の定量分析を可能とする。豊富な高マンノース型グリカンは、幹細胞に象徴的であり、レクチン標識で示されるように細胞表面でも同様であった。成熟白血球はより多くの大型複合型N‐グリカンを含有しており、一方複合N‐グリカンはCD133+細胞中では二分岐であるものが多かった。遺伝子発現が、この細胞型に典型的なコアグリコシル化を支援していると思われる。MAN1C1が存在しないことに対して推定される役割は、高マンノース型からハイブリッド型および単分岐グリカンへの変換を遅くするものであることが示唆される。
高マンノースおよび複合型N‐グリカン等のCD133+細胞内に存在する構造はCD164エピトープ上に見られる(24)。CD164分子の機能は確かにN‐グリカンに依存しており、臍帯血由来CD133+細胞のCXCL12媒介遊走を調節する(24、25)。これはさらに、幹細胞増殖をネガティブに制御する(26、27)。複合N‐グリカン決定因子は、CD44分子のCD34+細胞特異的グリコフォーム等の造血幹細胞に共通する他の接着分子の一部でもある。
CD133+およびCD133−細胞のβ1,4‐ガラクトシル化には、異なるβ1,4‐ガラクトシル化関連遺伝子が関与していた。これらのグリカンプロファイルの変化は検出されなかった。しかし、これらの遺伝子は単一の糖タンパク質のN‐グリカン主鎖をガラクトシル化し得る。
CD133+細胞内でのみ発現されるB4GALT2は、胎児脳、成人心臓、筋肉、および膵臓に限定される発現パターンを有するが(28)、一方B4GALT3はほとんどの組織で広く発現される(28)。B4GALT2およびB4GALT3が発現した酵素はほとんど同一の基質特異性を有し、これらは互いに交換可能である(29)。B4GALT2およびおB4GALT3の両方は二分岐および大型複合型N‐グリカンをガラクトシル化する。CD133+細胞中でのB4GALT2の発現は、B4GALT3の過小発現で相殺され得る。しかし、存在量がより低い糖タンパク質の変化は本方法では検出されない場合があり、そのため単一の糖タンパク質上でグリコシル化の差異が存在する可能性がある。B4GALTはセレクチンリガンドのグリカン主鎖を合成するが、セレクチンの接着は末端グリコシル化によって制御される。ガラクトシル化はマウスの上皮細胞の増殖および分化において重要な役割を有する(30)。CD133+およびCD133−細胞の生合成経路の差異が特定の糖タンパク質のβ1,4‐ガラクトシル化に影響を与えるとすれば、β1,4‐ガラクトシル化構造の有意性は、CD133+細胞の増殖および分化の制御に関与することが考えられる。この興味深い仮説には、より詳細な検討が必要である。
α2,6‐シアル化は、臍帯血由来CD133+およびCD133−細胞と同様に、ヒト骨髄および末梢血由来CD34+およびCD34−細胞の細胞表面グリカンに対して支配的である(31)。さらに、顆粒球コロニー刺激因子によって動員された末梢血のCD34+細胞および骨髄由来CD34+細胞は、非誘発末梢血由来CD34+細胞よりも細胞表面の高いα2,6‐シアル化を伴うST6GAL1の発現が高く、このことはCD34+細胞のα2,6‐シアル化がその環境内での顆粒球コロニー刺激因子に依存することを示唆している(12)。CD34+細胞のα2,6‐シアル化はその細胞接着の制御に関与している可能性がある。ST6GAL1の産物であるα2,6‐結合シアル酸は、CD22+B細胞のホーミングプロセスにとって不可欠である(32)。ST6GAL1の発現は細胞へのガレクチン‐1の結合を低下させる(33)。ガレクチン‐1は幹細胞増殖を刺激する(34)。ガレクチン‐1は間葉系幹細胞によって大量に分泌されるが(35)、その発現はCD133+細胞内では検出されない(遺伝子発現プロファイルは(14)に)。造血幹細胞は、間葉系幹細胞と共培養すると増殖し、その長期的な再構築能をより長く維持する(36)。間葉系および造血幹細胞の共培養における相互作用はガレクチン‐1の結合によって促進され得る。
シアル化グリカンの生合成では、α2,3‐およびα2,6‐SATが同一のN‐グリカン基質に対して競合し得る。本研究では、本願発明者らはST3GAL6の過剰発現に付随するCD133+細胞内の豊富なα2,3‐シアル化を示す。マウスT細胞活性化において、N‐グリカンの低いα2,6‐シアル化とともにα2,6‐SAT1の割合が低いことが過去に示された(11)。この著者らは、このことがα2,6‐SAT1と同一の基質を競合するα1,3‐GalTの発現によるものである可能性があると提案した。しかし、α1,3‐GalTはヒトの中には存在せず、従って類似の基質の競合は該当しない。本結果により、ヒトCD133+細胞中においてα2,6‐シアル化の相対存在量が低い原因は、そうではなく、高いα2,3‐シアル化であることを示す。遺伝子発現のデータは、ST3GAL6の過剰発現がこれらの細胞内での高いα2,3‐シアル化の原因であることを強く示唆している。ST3GAL6は、制限された基質特異性を有し、このことからシアリル‐Lewis X決定因子の前駆体構造であるシアリル‐パラグロボシドの合成に関与していることが示唆される(37)。しかし、ST3GAL6の発現はシアリル‐Lewis Xの発現と相関を示さなかった。
CD34+細胞(CD133+細胞も)は、成熟白血球とは異なり、N‐グリカンシアル化に決定的に依存しているCD44抗原のグリコフォーム、造血細胞LおよびE‐セレクチンリガンドを提示する(38‐40)。セレクチンリガンドの相互作用は、幹細胞のホーミングを促進し、その増殖を制御する場合もある。CD34+細胞上に存在するL‐セレクチンは、幹細胞移植の後の早い造血回復と関連付けられている(38)。N‐グリカンのα2,3‐シアル化は、CD44分子が細胞外基質と結合する能力をネガティブに制御する(41)。CD44の主要な役割はヒアルロン酸との結合であるが(42)、骨髄中においてCD44エピトープを有するCD34+細胞は少量がヒアルロン酸と結合するのみである(43)。従って、α2,3‐シアル化は恐らく幹細胞のホーミングおよび増殖の両方を促進するために少なくとも必要である。
N‐グリカンコアα1,6‐フコシル化に加えて、少量のα1,2‐またはα1,3‐結合フコース残基が存在した。FUT遺伝子の発現は、骨髄型α1,3‐結合フコースの合成を示唆するものである。しかし、α1,3‐フコシル化の存在の検出は、幹細胞を含む臍帯血由来白血球上で非常に低かった。一方、α1,2‐結合フコースは、α1,2‐フコシル化をプロセッシングするFUT1の発現が存在しない場合でも細胞表面で検出された。FUT7産物はセレクチンと結合するsLexの合成を担う重要な酵素である(44)。さらに、FUT1の発現はsLexの発現を阻害することが示された(45)。臍帯血由来幹細胞は、α1,3‐フコシルトランスフェラーゼの発現の減少によってα1,3‐フコシル化を低下させることが示され、このことは低いセレクチン結合に寄与し、移植における臍帯血由来細胞の生着を遅延させ得る(5、7)。胚形成の間はFUT4およびFUT9のみが発現される。FUT4の発現は、FUT7発現が欠損している成体中でのFUT7の低発現または無発現、およびセレクチンの結合に必要であるsLex等の産生を補償することが示された(46)。幹細胞のフコシル化を強化する試みが少なくとも2つ実施され(5、7)、いずれの場合もフコシル化は成功し、そのうちの1つは非肥満糖尿病マウス/重症複合免疫不全マウスの骨髄へのホーミングの改善を示し得るものであった(7)。臍帯血由来細胞中でのFUT7発現の欠損がヒト骨髄への幹細胞の生着の遅れを引き起こす場合は、細胞工学技術を用いて幹細胞のフコシル化を促進することが可能であろう。
まとめると、CD133+細胞の特徴的なN‐グリコシル化に関連する重要な遺伝子は、MGAT2およびST3GAL6の過剰発現、MGAT4Aの過小発現、ならびにMAN1C1の無発現であった。さらに、β1,4‐ガラクトシル化は、CD133+およびCD133−細胞の間で、さらなる研究の対象である未知の機能により分子レベルで異なって制御された。CD34+およびCD133+細胞は非常に類似したゲノム全体の遺伝子発現プロファイルを有する(47)。CD133+細胞中のN‐グリコシル化に関連する遺伝子が幹細胞N‐グライコームに対して中心的なものである場合、この遺伝子はCD34+細胞内でも同様に発現されるはずであると考えられた。CD34+細胞内のN‐グリコシル化関連遺伝子の発現はCD133+細胞と類似していることが示された(遺伝子発現の結果は公開されたCD34+発現プロファイルより収集(47))。さらに、CD34+およびCD34−細胞の間での発現パターンの変化がCD133+およびCD133−細胞の間と同一であることが分かり、このことは臍帯血由来CD34+細胞のN‐グライコームがCD133+細胞のN‐グライコームと非常に類似しており成熟白血球とは異なっていることを示唆している。
CD133+細胞内の分析されたN‐グリカンの特徴は、CD164、造血幹細胞および前駆体に特異的なCD44グリコフォーム等の既知の糖タンパク質において、ならびに細胞遊走、増殖、細胞認識、およびBMへのホーミングに必要であるE‐セレクチン、P‐セレクチン、およびガレクチンリガンドの結合において重要な役割を有する。CD133+細胞のN‐グライコームは多くの依然として未知である機能にも関与している可能性がある。CD133+およびCD133−細胞の間での遺伝子発現ならびにグリカン構造の違いからの情報を組み合わせることで、CD133+細胞に特異的であるN‐グリカン生合成を制御する新規遺伝子の同定が可能となった。造血幹細胞に特異的であるN‐グリコシル化についての新規な知識は、新規な治療用途の設計または現存のプロトコルの改善の手助けとなる。グリコシル化のin vitroまたはin vivoでの変化を用いて、幹細胞の自然の性質の改良、または幹細胞が特定の組織を標的化するようなN‐グライコームの修飾が可能となる。
実施例1および表1の参考文献
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実施例2
臍帯血CD133+およびCD133−細胞関連N‐グリカンの評価
N‐グリカンプロファイルデータは、実施例1で述べたようにヒト臍帯血造血CD133+およびCD133−細胞から分析した。表3および4の説明文に記載のように、データは各細胞型に対する各グリカンシグナルの相対的な関係に従って評価し、それに応じてCD133+およびCD133−に関連するグリカンシグナルに分類し、中性およびシアル化N‐グリカンシグナルについてそれぞれ表3および表4に示した。この計算では、各細胞型に対して:2倍を超える相違(著しい関連性)、1.5倍から2倍の間の相違(実質的な関連性)、および1.5倍未満の相違(小さいが検出された関連性)、という3種類のグリカンシグナルの群が得られた。このデータにより、実施例1で識別されたグリカンシグナル群に加えて、他のグリカンシグナルもCD133+またはCD133−細胞と関連していることが示された。
実施例3
臍帯血CD133+およびCD133−細胞N‐グリカンにおける個体差の評価
N‐グリカンプロファイルデータは、実施例1で述べたようにヒト臍帯血造血CD133+およびCD133−細胞から分析し、表5および6に示すデータは、表5および6の説明文に記載のように、各グリカンシグナルに対して個体差を評価するためにいくつかの臍帯血ユニットから収集し、それに応じてグリカンシグナル群に分類した。この計算では:100%を超える平均偏差(大きな個体差)、50から100%の間の平均偏差(実質的な個体差)、および0から50%の間の平均偏差(小さい個体差)、という3種類のグリカンシグナル群が得られた。このデータにより、グリカンシグナルの個体差において、グリカンシグナルに関連する、およびグリカンシグナル群に関連する違いの両方が存在することが示された。
実施例4
細胞表面グリカン構造の酵素修飾
実験手順
酵素修飾
シアル酸転移酵素反応:ヒト臍帯血単核球(3x10細胞)を、60mU α2,3‐(N)‐シアル酸転移酵素(ラット、S.frugiperdaにおける組み換え体、Calbiochem)、50mM 3‐モルホリノプロパンスルホン酸ナトリウム(MOPS)バッファー pH7.4中の1.6μmol CMP‐Neu5Ac、150mM NaClにより、総容量100μlにて最大12時間修飾した。フコシルトランスフェラーゼ反応:ヒト臍帯血単核球(3x10細胞)を、4mU α1,3‐フコシルトランスフェラーゼVI(ヒト、S. frugiperdaにおける組み換え体、Calbiochem)、50mM MOPSバッファー pH7.2中の1μmol GDP‐Fuc、150mM NaClにより、総容量100μlにて最大3時間修飾した。広範なシアリダーゼ反応:ヒト臍帯血単核球(3x10細胞)を、50mM 酢酸ナトリウムバッファー pH5.5中の5mU シアリダーゼ(A. ureafaciens, Glyko, UK)、150mM NaClにより、総容量100μlにて最大12時間修飾した。α2,3‐特異的シアリダーゼ反応:細胞を、50mM 酢酸ナトリウムバッファー pH5.5中のα2,3‐シアリダーゼ(S. pneumoniae、大腸菌における組み換え体)、150mM NaClにより、総容量100μlにて修飾した。逐次酵素修飾:逐次的に実施する反応の間、細胞を遠心分離によってペレット化して上清を廃棄し、その後、適切なバッファー中の次の修飾酵素および基質溶液を上述のように細胞に適用した。洗浄手順:修飾後、細胞はリン酸バッファー食塩水で洗浄した。
グリカン分析
細胞の洗浄後、すべての細胞糖タンパク質をN‐グリコシダーゼ消化に掛け、シアル化および中性N‐グリカンを単離し、上述のようにして質量分析を行った。O‐グリカンの分析については、糖タンパク質を、実質的に過去の報告に従って(Nyman et al, 1998)還元的アルカリβ脱離に掛け、その後シアル化および中性グリカンのアルジトール画分を単離し、上述のようにして質量分析を行った。
糖転移酵素/グリコシル転移によって再構築されたグリカン
本発明はさらに、以下の工程を含むプロセスで作製された特定のグリカンを制御された試薬に関する。
1)本発明に記載のように、任意にグリカン構造を部分的に除去する工程であって、部分的に除去されたグリカン構造がグリカンを除去された試薬の2群に対して記載のように非動物構造であってもよく、または原核生物からのグリコシル化タンパク質であってもよい。
2)許容されるまたは無害のグリカンを試薬のグリカンへと転移する工程。このようなプロセスは、特定の治療用タンパク質に対する糖タンパク質再構築として知られる。本願発明者らは、細胞培養プロセス中に存在する特定の試薬のための再構築プロセスに対する要求が存在することを明らかにした。
さらに、本願発明者らは、転移反応を阻害する可能性のある数多くの因子を含む全血清に対してさえも、大量のタンパク質混合物のグリカン除去および/または再構築を示すことができた。
結果
シアリダーゼ消化
生存臍帯血単核球の広範なシアリダーゼ触媒脱シアル化により、対応する中性N‐グリカン構造、例えばHexHexNAc、HexHexNAcdHex0‐2、およびHexHexNAcdHex0‐1の単糖組成の相対量の増加によって示されるように、シアル化N‐グリカン構造ならびにO‐グリカン構造(データ示さず)が脱シアル化された(表9)。全体としてグリコシル化プロファイルのシアル酸残基の少ないグリカン構造へのシフトが、広範なシアリダーゼ処理に際してのシアル化N‐グリカン分析で観察された。反応に際しての細胞のグリカンプロファイルのこのシフトは、反応の結果を分析する効果的な手段として機能した。得られた修飾細胞は、反応後の細胞表面においてシアル酸残基の含有量が減少し末端ガラクトース残基の含有量が増加したと結論付けられる。
α2,3‐特異的シアリダーゼ消化
同様にして、生存単核球のα2,3‐特異的シアリダーゼ触媒脱シアル化により、対応する中性N‐グリカン構造の相対量の増加によって示されるように、シアル化N‐グリカン構造が脱シアル化された(データ示さず)。全体としてグリコシル化プロファイルのシアル酸残基の少ないグリカン構造へのシフトが、α2,3‐特異的シアリダーゼ処理に際してのシアル化N‐グリカン分析で観察された。反応に際しての細胞のグリカンプロファイルのこのシフトは、反応の結果を分析する効果的な手段として機能した。得られた修飾細胞は、反応後の細胞表面においてα2,3‐結合シアル酸残基の含有量が減少し末端ガラクトース残基の含有量が増加したと結論付けられる。
シアル酸転移酵素反応
生存臍帯血単核球のα2,3‐シアル酸転移酵素触媒シアル化により、中性N‐グリカン構造(表9のHexHexNAcdHex0‐3およびHexHexNAcdHex0‐2の単糖組成)の相対量の減少および対応するシアル化構造(例えば表8のNeuAcHexHexNAcdHexグリカン)の増加によって示されるように、多くの中性(表9)およびシアル化N‐グリカン(表8)構造ならびにO‐グリカン構造(データ示さず)がシアル化された。全体としてグリコシル化プロファイルのシアル酸残基の多いグリカン構造へのシフトが、N‐グリカンおよびO‐グリカン分析の両方で観察された。得られた修飾細胞は、反応後の細胞表面においてα2,3‐結合シアル酸残基の含有量が増加し末端ガラクトース残基の含有量が減少したと結論付けられる。
フコシルトランスフェラーゼ反応
生存臍帯血単核球のα1,3‐フコシルトランスフェラーゼ触媒フコシル化により、非フコシル化グリカン構造(提案された単糖組成中のdHexのない形)の相対量の減少および対応するフコシル化構造(提案された単糖組成中のndHex>0である形)の増加によって示されるように、多くの中性(表9)およびシアル化N‐グリカン構造ならびにO‐グリカン構造(下記参照)がフコシル化された。例えば、フコシル化の前は、HexHexNAcアルジトールの[M+Na]イオンに対応するO‐グリカンアルジトールシグナルがm/z 773に、およびHexHexNAcdHexアルジトールの[M+Na]イオンに対応するm/z 919に、およその相対比率それぞれ9:1で観察された(データ示さず)。フコシル化の後は、これらのシグナルのおよその相対比率は3:1であり、中性O‐グリカンの相当量のフコシル化が発生したことを示している。元の細胞では観察されていなかったいくつかのフコシル化N‐グリカン構造、例えば提案された構造がHexHexNAcdHexおよびHexHexNAcdHexである中性N‐グリカンさえも反応の後には観察され(表9)、α1,3‐フコシルトランスフェラーゼ反応において、生存細胞の細胞表面が、量の増加したまたは異常な構造型のフコシル化グリカン、特にタンパク質結合N‐グリカンならびにO‐グリカンの末端Lewis xエピトープによって修飾され得ることを示している。
シアリダーゼ消化およびそれに続くシアル酸転移酵素反応
臍帯血単核球を広範なシアリダーゼ反応に掛け、その後、実験手順の項で説明したように、α2,3‐シアル酸転移酵素およびCMP‐Neu5Acを同じ反応物へ添加した。細胞のN‐グリカンプロファイルに対するこの一連の反応の影響を図7に示す。シアル化N‐グリカンプロファイルを反応工程間についても分析し、その結果より、シアル酸がまずシアル化N‐グリカンから除去され(例えば中性N‐グリカンの量の増加が見られることによって示される)、次にα2,3‐結合シアル酸残基によって置換された(例えば新規に形成された中性N‐グリカンの消滅によって示される;データは示さず)ことが明らかに示された。得られた修飾細胞は、反応後により多くのα2,3‐結合シアル酸残基を含有していたと結論付けられる。
シアル酸転移酵素反応およびそれに続くフコシルトランスフェラーゼ反応
臍帯血単核球をα2,3‐シアル酸転移酵素反応に掛け、その後、実験手順の項で説明したように、α1,3‐フコシルトランスフェラーゼおよびGDP‐フコースを同じ反応物へ添加した。細胞のシアル化N‐グリカンプロファイルに対するこの一連の反応の影響を図8に示す。この結果より、グリカンシグナルの大部分で(詳細を表7に示す)その相対強度が変化したことが分かり、このことは細胞内に存在するシアル化N‐グリカンの大部分がこの酵素の基質であったことを示している。この酵素反応工程の組み合わせから、この反応工程のいずれか一方の単独によるものとは異なった結果が得られたことも明らかであった。
上述のα1,3‐フコシルトランスフェラーゼ反応とは異なり、フコシル化の前のシアル化は、臍帯血単核球表面上に存在する中性フコシルトランスフェラーゼ受容体グリカン構造をシアル化したことは明らかであり、このことにより、単独のα1,3‐フコシルトランスフェラーゼ反応の後には発生した中性フコシル化N‐グリカン構造の検出可能な形成は無かった(上記で検討;表9)。
α‐マンノシダーゼ反応
全細胞のα‐マンノシダーゼ反応では、他の実施例でα‐マンノース残基を含むことが示されたものを含むグリカンシグナルが少し低下した。本発明はさらに、本発明による酵素修飾条件下において細胞が生存可能であることも明らかにした、表18。
本発明は特に、細胞が酵素反応により、好ましくは、グリカンを、好ましくは造血細胞の細胞表面グリカンを修飾する能力を有する本発明によるシアル酸転移酵素、フコシルトランスフェラーゼ、ガラクトシルトランスフェラーゼ(例:β4‐GalT)、またはグリコシダーゼ、好ましくは末端GlcNAc残基を修飾するシアリダーゼまたはマンノシダーゼにより修飾される場合に、および好ましくは細胞が、破壊された細胞との細胞間反応を避けるために細胞が生細胞である条件下で細胞表面の修飾を受ける場合に、造血細胞の分析を行うための本発明による方法に関する。抗体またはレクチン等の好ましい結合試薬は、Galβ4GlcNAc、シアリルα3/6Galβ3/4GlcNAc、より好ましくはシアリルα3/6Galβ4GlcNAcまたはシアリル‐Lewis x等の酵素によって合成された細胞表面エピトープを認識するものが選択され、あるいは、グリカンは質量分析プロファイリングによって分析される。
糖転移酵素由来グリカン構造
本願発明者らは、グリコシル化糖転移酵素酵素が修飾反応において細胞を汚染し得ることを検出した。例えば、S. frugiperda細胞内で産生された組み換えフコシルトランスフェラーゼまたはシアル酸転移酵素酵素とともに細胞をインキュベートしたところ、N‐グリコシダーゼならびに細胞性および/または細胞関連糖タンパク質の質量分析は、HexHexNAcdHexグリカン成分の[M+Na]イオン(計算値 m/z 1079.38)に対応する中性N‐グリカンの大きなシグナルをm/z 1079に検出する結果となった。典型的には、組み換え糖転移酵素で処理した細胞では、このグリカンシグナルは細胞自体のグリカンシグナルよりも大きいかまたは少なくともこれと同等であり、このことは、昆虫由来複合糖質が昆虫細胞内で産生された組み換えグリカン修飾酵素に付随する非常に強い汚染物質であることを示している。さらに、このグリカン汚染は細胞の洗浄後も残存し、このことは、糖転移酵素酵素に対応するまたは付随する昆虫型複合糖質が、細胞に対する親和性を有するかまたは細胞からの洗浄に対する耐性を有する傾向にあることを示唆している。このグリカンシグナルの起源を確認するために、本願発明者らは市販の組み換えフコシルトランスフェラーゼおよびシアル酸転移酵素酵素調製物の含有グリカンを分析し、m/z 1079のグリカンシグナルがこれらの酵素に付随する主要なN‐グリカンシグナルであることが分かった。S. frugiperda細胞内で産生された糖タンパク質由来の、例えばManα3(Manα6)Manβ4GlcNAc(Fucα3/6)GlcNAc(β‐N‐Asn)といった対応するN‐グリカン構造が、過去に報告されている(Staudacher et al., 1992; Kretzchmar et al., 1994; Kubelka et al., 1994; Altmann et al., 1999)。文献に記載のように、これらのグリカン構造、ならびに組み換えまたは精製酵素、特に昆虫由来産物で処理された細胞を潜在的に汚染する他のグリカン構造は、ヒトの中では潜在的に免疫原性であり、および/または、そうでなければこの修飾細胞の使用に対して有害である。グリカン修飾酵素は、ヒト細胞の修飾、特に臨床用途の場合には、免疫原性グリカンエピトープ、非ヒトグリカン構造、および/または望ましくない生物学的影響を潜在的に有する他のグリカン構造が含まれないように注意深く選択する必要があると結論付けられる。
実施例5
グリコシダーゼまたは糖転移酵素修飾細胞の安定性および培養特性の分析
前述の実施例からのノイラミニダーゼおよび糖転移酵素(シアル酸転移酵素およびフコシルトランスフェラーゼ)修飾細胞の安定性および培養特性を、(Kekarainen et al BMC Cell Biol (2006) 7, 30)の記載に従ってCFU細胞培養アッセイおよび生存率アッセイによって分析した。
本発明は、定量的にシアル酸レベルが低下された修飾臍帯血単核球がCFU細胞培養アッセイにおいて高いコロニー数を示すことを明らかにした。本発明は特に、血液細胞集団の培養における、特に造血細胞の培養における脱シアル化造血細胞の使用に関する(表18)。
実施例6
幹細胞および分化細胞中の末端HexNAcを有するN‐グリカン組成群の分析
方法
式:nHexNAc=nHex≧5およびndHex≧1(I群)で特徴付けられる末端HexNAc含有N‐グリカンの存在の分析のために、ならびにこの存在を式:nHexNAc=nHex≧5およびndHex=0(II群)で特徴付けられる末端HexNAc含有N‐グリカンと比較するために、N‐グリカンを単離し、精製し、前述の実施例で述べたようにしてMALDI‐TOF質量分析によって分析した。これらには単糖組成が帰属され、得られたグリカンプロファイル内の相対的な比率は、上述のようにして定量的プロファイル分析で決定した。以下のグリカンシグナルを特定のグリカン群の指標として用いた(モノアイソトピック質量)。
Ia,HexHexNAcdHex:[M+Na]イオンに対するm/z 2012.7
Ib,NeuAcHexHexNAcdHex:[M−H]イオンに対するm/z 2279.8
Ic,NeuAcHexHexNAcdHex:[M−H]イオンに対するm/z 2570.9
Id,NeuAcHexHexNAcdHex:[M−H]イオンに対するm/z 2425.9
IIa,NeuAcHexHexNAc:[M−H]イオンに対するm/z 2133.8
さらに、グリカンシグナルHexHexNAc:[M+Na]イオンに対するm/z 1542.6およびHexHexNAcdHex:[M+Na]イオンに対するm/z 1688.6の相対発現についても分析を行った。
結果
I群グリカンの指標として、Ibが、CB MSC、BM MSC、およびCD34+CB HSC等の幹細胞試料から単離された各種N‐グリカン試料中、ならびに、EBおよびst.3分化細胞、分化脂肪細胞(CB MSC由来)、分化骨芽細胞(BM MSC由来)、ならびにCD34−CB MNC等の分化細胞試料中で検出された。
CB HSC:IbおよびIcは、CD34+細胞と比較してCB CD34−細胞中で過剰発現され、一方Idは、CD34+細胞中で過剰発現された。IIaは、CD34+およびCD34−細胞の両方で発現された。IaおよびIcは発現されなかった。HexHexNAcdHexはCB CD34+およびCB CD34−細胞の両方で観察されたが、成体末梢血CD34+細胞中では観察されなかった。HexHexNAcdHexは、それぞれCD133−およびlin+細胞と比較してCD133+およびlin−細胞中で過剰発現された。
CBおよびBM MSC:Ia〜dおよびIIaの中で、IbのみがCB MSC中で発現され、一方Ia、Ib、およびIdは分化骨芽細胞中で過剰発現された。Ia〜dおよびIIaの中で、IaおよびIbのみがBM MSC中で発現され、一方Ia、Ib、およびIdは分化脂肪細胞中で過剰発現された。HexHexNAcdHexはMSC中で発現された。
実施例7
細胞試料生成の例
臍帯血由来間葉系幹細胞株
臍帯血の採取
ヒト出産臍帯血(UCB)ユニットを母親のインフォームドコンセントを得て出産後に採取し、該UCBを採取後24時間以内に処理した。該UCBをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に1:1で希釈し、Ficoll‐Paque Plus(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)密度勾配遠心(400g/40分間)を行って、単核球(MNC)を各UCBユニットから単離した。単核球フラグメントをグラジエントから回収し、PBSで2回洗浄した。
臍帯血細胞の単離および培養
CD45/グリコホリンA(GlyA)陰性細胞選択を、免疫標識磁性ビーズ(Miltenyi Biotec)を用いて行った。MNCをCD45およびGlyA磁性マイクロビーズの両者と同時に30分間インキュベートし、LDカラムを用いて製品の使用説明書に従って(Miltenyi Biotec)ネガティブに選択した。CD45/GlyA陰性溶出画分および陽性画分の両者を回収し、培地中に懸濁して計数した。CD45/GlyA陽性細胞はフィブロネクチン(FN)被覆6ウェルプレート上に1x10/cmの密度でプレーティングした。CD45/GlyA陰性細胞はFN被覆96ウェルプレート(Nunc)上に約1x10細胞/ウェルでプレーティングした。翌日培地を交換したため、非接着細胞のほとんどが除去された。残った非接着細胞はそれに続く週2回の培地交換で除去した。
細胞は最初に56%DMEM低グルコース(DMEM‐LG、Gibco、http://www.invitrogen.com)40% MCDB‐201(Sigma‐Aldrich)2%ウシ胎児血清(FCS)、1xペニシリン‐ストレプトマイシン(両型ともGibco)、1xITS液体培地サプリメント(インシュリン‐トランスフェリン‐セレン)、1xリノール酸‐BSA、5x10‐8M デキサメタゾン、0.1mM L‐アスコルビン酸‐2‐リン酸(3者とも全てSigma‐Aldrich)、10nM PDGF(R&D systems、http://www.RnDSystems.com)および10nM EGF(Sigma‐Aldrich)からなる培地中で培養した。後の継代(継代7の後)において、細胞はFCS濃度を10%に増やした以外は同一の増殖培地中でも培養した。
プレートをコロニーに対してスクリーニングし、コロニー中の細胞が80‐90%コンフルエントである場合に細胞を継代培養した。最初の継代において、細胞数がまだ少ない場合は、細胞を最小量のトリプシン/EDTA(0.25%/1mM、Gibco)を用いて室温で剥がし、トリプシンをFCSで抑制した。細胞を無血清培地で洗い、血清濃度を2%に調整した通常の培地中に懸濁した。細胞を約2000〜3000/cmでプレーティングした。後の継代において、細胞をトリプシン/EDTAを用いて、特定の領域で、特定の時点で剥がし、血球計数器を用いてカウントし、2000〜3000細胞/cmの密度で再プレーティングした。
骨髄由来間葉系幹細胞株
骨髄由来幹細胞の単離および培養
骨髄(BM)由来MSCを、Leskela et al.(2003)による記載のように得た。簡単に述べると、整形外科手術中に得られた骨髄を、20mM HEPES、10% FCS、1xペニシリン‐ストレプトマイシンおよび2mM L‐グルタミン(全てGibcoから)を添加した最小必須アルファ培地(α‐MEM)中で培養した。2日間の細胞接着期の後、細胞をCa2+およびMg2+不含PBS(Gibco)で洗浄し、さらに同一培地中に2000〜3000細胞/cm2の密度でプレーティングし、週2回、半分の培地を除去し、新鮮な培地に置き換えることにより、ほぼコンフルエントになるまで継代培養した。
実験手順
間葉系幹細胞表現型のフローサイトメトリー分析
UBCおよびBMの両者に由来する間葉系幹細胞をフローサイトメトリー(FACSCalibur, Becton Dickinson)によって表現型分析した。CD13、CD14、CD29、CD34、CD44、CD45、CD49e、CD73およびHLA‐ABC(全てBD Biosciences、San Jose, CA, http://www.bdbiosciences.comから)、CD105(Abcam Ltd., Cambridge, UK, http://www.abcam.com)ならびにCD133(Miltenyi Biotec)に対するフルオレセインイソチシアネート(FITC)またはフィコエリトリン(PE)結合抗体を用いて直接標識を行った。適当なFITCおよびPE結合アイソタイプコントロール(BD Biosciences)を用いた。CD90およびHLA‐DR(両者ともBD Biosciencesから)に対する非結合抗体を用いて間接標識を行った。間接標識のため、FITC結合ヤギ抗マウスIgG抗体(Sigma‐aldrich)を二次抗体として用いた。
UBC由来細胞は造血マーカーCD34、CD45、CD14およびCD133に対して陰性であった。該細胞はCD13(アミノペプチダーゼN)、CD29(β1‐インテグリン)、CD44(ヒアルロン酸受容体)、CD73(SH3)、CD90(Thy1)、CD105(SH2/エンドグリン)およびCD49eに対して陽性に染色された。細胞はHLA‐ABCに対しても陽性に染色されたが、HLA‐DRに対しては陰性であった。BM由来細胞は類似の表現型を有することが示された。これらはCD14、CD34、CD45およびHLA‐DRに対して陰性であり、CD13、CD29、CD44、CD90、CD105およびHLA‐ABCに対して陽性であった。
脂質生成の相違
UCB由来MSCの脂質生成能力を評価するために、細胞を3x10/cmの密度で24ウェルプレート(Nunc)中に3ウェルずつの重複で播種した。UCB由来MSCを、試料がグライコーム分析のために調製される前に、5週間、DMEM低グルコース、2% FCS(両者ともGibcoから)、10μg/ml インシュリン、0.1mM インドメタシン、0.1μM デキサメタゾン(Sigma‐Aldrich)およびペニシリン‐ストレプトマイシン(Gibco)からなる脂質生成誘導培地中で培養した。培地は週に2回、分化培養中に交換した。
骨原性分化
BM由来MSCの骨原性分化を誘導するため、細胞をそれらの通常の増殖培地に3x10/cmの密度で24ウェルプレート(Nunc)上に播種した。翌日、培地を、10% FBS(Gibco)、0.1μM デキサメタゾン、10mM β‐グリセロリン酸、0.05mM L‐アスコルビン酸‐2‐リン酸(Sigma‐Aldrich)およびペニシリンーストレプトマイシン(Gibco)を添加したα‐MEM(Gibco)からなる骨原性誘導培地に交換した。BM由来MSCを、グライコーム分析のための試料を調製する前に、3週間、週2回の培地交換を行いながら培養した。
グライコーム分析のための細胞収穫
1mlの細胞培養液をグライコーム分析のために確保し、残りの培地を吸引により除去した。細胞培養プレートをPBS緩衝液pH7.2で洗浄した。PBSを吸引し、細胞を掻き取り、5mlのPBSで回収した(2回反復した)。この時点で少量の細胞画分(10μl)を細胞計数のために採取し、残りの試料を5分間400gで遠心分離した。上清を吸引し、ペレットをPBS中でさらに2回洗浄した。
細胞を1.5mlのPBSで回収し、50mlチューブから1.5ml回収チューブ内に移し、7分間5400rpmで遠心分離した。上清を吸引し、もう1回洗浄を繰り返した。細胞ペレットを‐70℃で貯蔵し、グライコーム分析のために用いた。
実施例8
ヒト臍帯血細胞集団のレクチンおよび抗体プロファイリング
臍帯血の採取
ヒト出産臍帯血(UCB)ユニットを母親のインフォームドコンセントを得て出産後に採取し、該UCBを採取後24時間以内に処理した。該UCBをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に1:1で希釈し、Ficoll‐Paque Plus(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)密度勾配遠心(400g/40分間)を行って、単核球(MNC)を各UCBユニットから単離した。単核球フラグメントをグラジエントから回収し、PBSで2回洗浄した。
臍帯血細胞の単離
CD45/グリコホリンA(GlyA)陰性細胞選択を、免疫標識磁性ビーズ(Miltenyi Biotec)を用いて行った。MNCをCD45およびGlyA磁性マイクロビーズの両者と同時に30分間インキュベートし、LDカラムを用いて製品の使用説明書に従って(Miltenyi Biotec)ネガティブに選択した。CD45/GlyA陰性溶出画分および陽性画分の両者を回収し、培地中に懸濁して計数した。CD45/GlyA陽性細胞はフィブロネクチン(FN)被覆6ウェルプレート上に1x10/cmの密度でプレーティングした。CD45/GlyA陰性細胞はFN被覆96ウェルプレート(Nunc)上に約1x10細胞/ウェルでプレーティングした。翌日培地を交換したため、非接着細胞のほとんどが除去された。残った非接着細胞はそれに続く週2回の培地交換で除去した。CD34+およびCD133+細胞は、実質的にJaatinen T and Laine J. in Current Protocols in Stem cell Biology 2A.2.1‐2A.2.9の記載に従って濃縮した。
結果および考察
図11に、7つの個々の臍帯血単核球(CB MNC)調製物に結合するFITC標識レクチンのFACS分析の結果を示す(実験は上記の通り行った)。GNA、HHA、PSA、MAA、STA、およびUEA FITC標識されたレクチンによる強い結合が全ての試料で観察され、それらの特異的リガンド構造のCB MNC細胞表面上における存在が示唆される。中程度(mediocre)の結合(PWA)、CB試料間で異なる結合(PNA)、および弱い結合(LTA)も観察され、これらレクチンに対するリガンドはCB MNC細胞表面上において上記レクチンのように様々であるかまたはより希であることが示唆される。
実施例9
ヒト幹細胞および細胞集団の全N‐グライコームの分析
実験手順
細胞およびグリカン試料を前述の実施例に記載のように調製した。
MALDI‐TOF質量分析グリカンプロファイリングは、例えばPCT/FI2007 050336に記載のように実施した。
前述の実施例に記載のように、A. ureafaciensシアリダーゼを用いて、単離された酸性グリカン画分を脱シアル化し、次いで脱シアル化グリカンを同一試料から単離された中性グリカンと組み合わせることにより、中性および酸性N‐グリカン画分の相対的な割合を分析した。次に、組み合わせられたグリカン画分を陽イオンモードMALDI‐TOFF質量分析により、前述の実施例に記載されるように分析した。組み合わせられたN‐グリカンのシアル化N‐グリカンの割合は、組み合わせられたN‐グリカン画分の中性N‐グリカンの、本来の中性N‐グリカン画分との比較における、相対強度のパーセント減少の算出により、式:
Figure 2010516240
[式中、IneutralおよびIcombinedは、中性および併せられたN‐グリカン画分それぞれにおける、m/z 1257、1419、1581、1743および1905における5つの高マンノース型N‐グリカンの[M+Na]イオンシグナルの相対強度の合計に相当する]
に従って計算された。
結果および考察
分析された幹細胞型における酸性N‐グリカン画分の相対的割合は次の通りであった:ヒト胚幹細胞(hESC)においては約35%(シアル化および中性N‐グリカンの割合は約1:2)、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞(BM MSC)においては約19%(シアル化および中性N‐グリカンの割合は約1:4)、骨芽細胞に分化したBM MSCにおいては約28%(シアル化および中性N‐グリカンの割合は約1:3)、およびヒト臍帯血(CB)CD133+細胞においては約38%(シアル化および中性N‐グリカンの割合は約2:3)。
結論として、BM MSCは、それらが中性N‐グリカンと比べ有意に少ない量のシアル化N‐グリカンを有するという点において、hESCおよびCB CD133+細胞とは異なる。しかし、BM MSCの骨芽細胞分化後、シアル化N−グリカンの割合は増加する。
実施例10
ヒト幹細胞のスフィンゴ糖脂質グリカン
実験手順
結果および考察
ヒト臍帯血単核球(CB MNC)
CB MNC中性脂質グリカン
CB MNCスフィンゴ糖脂質中性グリカン画分の分析された質量分析プロファイルを図12に示す。5つの主要なグリカンシグナルが全グリカンシグナル強度の合わせて91%超を含んでおり、単糖組成HexHexNAc(730)、HexHexNAc(568)、HexHexNAcdHex(876)、HexHexNAc(1095)、およびHexHexNAcdHex(1241)に対応した。
β1,4‐ガラクトシダーゼ消化においては、730および1095の相対シグナル強度がそれぞれ約50%および90%減少した。これは、該シグナルが、好ましくは構造Galβ4GlcNAcβLacおよびGalβ4GlcNAcβ[HexHexNAc]Lac等の非還元末端β1,4‐Galエピトープを有する主要成分を有していたことを示唆する。さらに、グリカンシグナルHexHexNAc(1460)は消化されてHexHexNAc(1298)およびHexHexNAc(1136)になり、本来のシグナルが1または2個のβ1,4‐Galを有するグリカン構造を含んでいたことが示唆された。
主要CB MSCスフィンゴ糖脂質中性グリカンシグナルの実験に基づく構造はこのように決定された(‘>’はhESCの脂質グリカン構造の中で好ましい順を表し;‘[]’は括弧内のオリゴ糖配列が分岐または非分岐のいずれであってもよいことを表し;‘()’は構造内の分岐を表す):
730 HexHexNAc > HexHexNAcLac > Galβ4GlcNAcLac
568 HexHexNAc > HecNAcLac
876 HexHexNAcdHex > [HexHecNAcdHex]Lac > Fuc[HexHecNAc]Lac
1095 HexHexNAc > [HexHecNAc]Lac > Galβ4GlcNAc [HexHecNAc]Lac
1241 HexHexNAcdHex > [HexHecNAcdHex]Lac > Fuc[HexHecNAc]Lac
1460 HexHexNAc > [HexHecNAc]Lac > Galβ4GlcNAc[HexHecNAc]Lac > Galβ4GlcNAc(Galβ4GlcNAc)[HexHecNAc]Lac
シアル化脂質グリカン
CB MNCスフィンゴ糖脂質シアル化グリカン画分の分析された質量分析プロファイルを図13に示す。CB MNCの3個の主要なグリカンシグナルが合わせて全グリカンシグナル強度の96%超を構成しており、単糖組成NeuAcHexHexNAc(997)、NeuAcHexHexNAc(1362)、およびNeuAcHexHexNAc(1727)に対応した。
ヒト幹細胞のスフィンゴ糖脂質グリカンプロファイルの概要
全ての本試料型の中性グリカン画分は合わせて45個のグリカンシグナルを含んでいた。シグナルの提案された単糖組成は2‐7Hex、0‐5HexNAc、および0‐4dHexからなっていた。グリカンシグナルは511〜2263の間のモノアイソトピックm/z値で検出された([M+Na]イオンに対して)。
全試料型に共通の主要な中性グリカンシグナルは730、568、1095、および933であり、グリカン構造群Hex0‐1HexNAcLac(568または730)およびHex1‐2HexNAcLac(933または1095)に対応し、前者のグリカンはより多く、後者はより少なかった。これらの共通のグリカンの一般式はHexHexNAcLacであり、式中、mはnまたはn‐1のいずれかであり、nは1または2のいずれかである。
ヒト幹細胞型の中性糖脂質プロファイル
CB MNCに典型的なグリカンシグナルは優先的には組成dHex0‐1[HexHexNAc]1‐2Lac、より優先的には他のシグナルと比較して高い相対量の730;およびフコシル化構造;および他の幹細胞型よりもばらつきおよび/または複雑さの程度が低いグリカンプロファイルを有していた。
本試料型全ての酸性グリカン画分は全体で38個のグリカンシグナルを含んでいた。該シグナルの提案された単糖組成は0‐2NeuAc、2‐9Hex、0‐6HexNAc、0‐3dHex、および/または0‐1硫酸またはリン酸エステルからなっていた。グリカンシグナルは786〜2781の間のモノアイソトピックm/z値で検出された([M−H]イオンに対して)。
CB MNCの酸性スフィンゴ糖脂質グリカンは主にNeuAcHexn+2HexNAcからなっており、式中、1≦n≦3であり、その構造がNeuAc[HexHexNAc]1‐3Lacであることが示唆された。
幹細胞スフィンゴ糖脂質グリカンにおける本実験において示された末端グリカンエピトープとしては:
Gal
Galβ4Glc(Lac)
Galβ4GlcNAc(LacNAc2型)
Galβ3
非還元末端HexNAc
Fuc
α1,2‐Fuc
α1,3‐Fuc
Fucα2Gal
Fucα2Galβ4GlcNAc(H2型)
Fucα2Galβ4Glc(2’‐フコシルラクトース)
Fucα3GlcNAc
Galβ4(Fucα3)GlcNAc(Lex)
Fucα3Glc
Galβ4(Fucα3)Glc(3‐フコシルラクトース)
Neu5Ac
Neu5Acα2,3
Neu5Acα2,6
等が挙げられる。
実施例11
CB MNC細胞集団のレクチンに基づく選択
フルオレセイン標識レクチンおよびCB MNCを用いたFACS実験を、実施例の記載と実質的に類似のようにして実施した。相補的な蛍光染料を有するCD34特異的モノクローナル抗体(Jaatinen et al., 2006)による二重染色を実施した。抗グリコホリンA(GlyA)モノクローナル抗体ネガティブセレクションによってCD MNC画分からの赤芽球の除去を実施した。
結果および考察
CB MNC画分と比較して、GlyA除去CB MNCは以下のレクチンによるFACSにおいて染色の低下を示し(減少率を括弧内の%で示す):PWA(48%)、LTA(59%)、UEA(34%)、STA、MAA、およびPNA(最後の3つはすべて23%未満);このことは、GlyAの除去が細胞選別におけるレクチンの分解能を上昇させたことを示す。
フルオレセイン標識レクチンおよび抗CD34抗体の両方によるFACSの二重染色において、以下のレクチンがCD34+細胞と共存した:STA(3/3試料)、HHA(3/3試料)、PSA(3/3試料)、RCA(3/3試料)、およびさらに部分的にNPA(2/3試料)。対照的に、以下のレクチンはCD34+細胞と共存しなかった:GNA(3/3試料)およびPWA(3/3試料)、ならびにさらに部分的にLTA(2/3試料)、WFA(2/3試料)、およびGS‐II(2/3試料)。
実施例8の結果と合わせて考えると、本結果は、レクチンがネガティブおよびポジティブセレクションの両方によってCB MNCからCD34+細胞を濃縮可能であることを示しており、例えば:
1)GNAはCB MNCの約70%と結合するがCD34+細胞とは結合せず、これによりCD34+細胞の単離におけるCB MNCのネガティブセレクションにて約3Xの濃縮が可能となる。
2)STAはCB MNCの約50%と結合しCD34+細胞とも結合し、これによりCD34+細胞の単離におけるCB MNCのポジティブセレクションにて約2Xの濃縮が可能となる。
3)UEAはCB MNCの約50%と結合しCD34+細胞とも結合し、これによりCD34+細胞の単離におけるCB MNCのポジティブセレクションにて約2Xの濃縮が可能となる。
実施例12
幹細胞のガレクチン遺伝子発現プロファイル
実験手順
CB CD133+細胞の遺伝子発現分析は報告されており(Jaatinen et al., 2006)、本分析は実施的にそれに類似して実施した。その遺伝子発現プロファイルを分析したガレクチンは(括弧内は対応するAffymetrixコード):ガレクチン‐1(201105_at)、ガレクチン‐2(208450_at)、ガレクチン‐3(208949_s_at)、ガレクチン‐4(204272_at)、ガレクチン‐6(200923_at)、ガレクチン‐7(206400_at)、ガレクチン‐8(208933_s_at)、ガレクチン‐9(203236_s_at)、ガレクチン‐10(206207_at)、ガレクチン‐13(220158_at)等であった。
結果および考察
CB CD133+対CD133−、ならびにCD34+対CD34−CB MNC細胞において、ガレクチン遺伝子発現プロファイルは以下の通りであった:全体として、ガレクチン1、2、3、6、8、9、および10が、CD34+/CD133+細胞の両方で遺伝子発現を示した。ガレクチン1、2、および3は、CD34−/CD133−細胞に対してCD34+/CD133+細胞の両方で下方制御され、さらにガレクチン10はCD133−細胞に対してCD133+細胞で下方制御された。対照的にガレクチン8は、CD34−/CD133−細胞に対してCD34+/CD133+細胞の両方で上方制御された。
hESC対EB試料において、ガレクチン遺伝子発現プロファイルは以下の通りであった:全体として、ガレクチン1、3、6、8、および13がhESCで遺伝子発現を示した。ガレクチン3はEBに対して明らかに下方制御され、さらにガレクチン13は4種類のhESC細胞株のうち2種類で下方制御された。対照的に、ガレクチン1はすべてのhESC細胞株で明らかに上方制御された。
この結果は、CB CD34+/CD133+幹細胞集団およびhESCがいずれも興味深く独特のガレクチン発現プロファイルを有し、そのためガレクチンリガンド親和性プロファイルが異なることを示している(Hirabayashi et al., 2002)。この結果はさらに、これらの幹細胞中での豊富なガレクチンリガンドの発現、特に非還元末端β‐GalおよびII型LacNAc、ポリ‐LacNAc、β1,6‐分岐ポリ‐LacNAc、ならびに複合型N‐グリカンの発現を示すグリカン分析の結果と相関している。
実施例13
幹細胞の免疫組織化学的染色
PBSでの洗浄の後、幹細胞培養物/セクションをPBS中の3%高純度BSA中にて室温で30分間インキュベートして非特異的結合部位をブロックした。一次抗体(GF279、288、287、284、285、283、286、290、および289)を1%BSA‐PBS含有PBS中に希釈し(1:10)、室温で1時間インキュベートした。PBSで3回洗浄した後、セクションをビオチン化ラビット抗マウス二次抗体(Zymed Laboratories, San Francisco, CA, USA)とともにPBS中、室温で30分間インキュベートし、PBS中で洗浄し、PBS中に希釈したペルオキシダーゼ結合ストレプトアビジン(Zymed Laboratories)とともにインキュベートした。このセクションは最終的にはAEC基質(3‐アミノ‐9‐エチルカルバゾール;Lab Vision Corporation, Fremont, CA, USA)で発色される。水での洗浄の後、マイヤーヘマトキシリン溶液で対比染色を実施する。

Figure 2010516240
特異的抗体による幹細胞試料における細胞表面上の炭水化物構造の検出
材料および方法
抗体
免疫染色
通常の造血細胞を5回PBS(10mM リン酸ナトリウム、pH7.2、140mM NaCl)で洗浄し、4% PBS緩衝パラホルムアルデヒドpH7.2で室温(RT)において10〜15分間固定し、次いでPBSで3回5分間洗浄する。非特異的結合部位を3% HSA‐PBS(FRC Blood Service、Finland)で30分間、RTでブロックする。一次抗体を1% HSA‐PBS(1:10〜1:200)中で希釈し、60分間RTでインキュベートし、次いでPBSで3回10分間洗浄する。1% HSA‐PBS中の二次抗体、Alexa Fluor 488ヤギ抗マウスIgG(H+L;1:1000)(Invitrogen)、Alexa Fluor 488ヤギ抗ウサギIgG(H+L;1:1000)(Invitrogen)、またはFITC‐結合ウサギ抗ラットIgG(1:320)(Sigma)を60分間RTで暗所においてインキュベートする。さらに、細胞をPBSで3回10分間洗浄し、DAPI染色剤を含有するVectashield封入剤(Vector Laboratories、UK)に封入する。免疫染色を、Zeiss Axioskop 2 plus蛍光顕微鏡(Carl Zeiss Vision GmbH、ドイツ)を用いて、FITCおよびDAPIフィルターとともに観察した。像をZeiss AxioCam MRcカメラを用いて、AxioVision Software 3.1/4.0(Carl Zeiss)を使用し、400Xの倍率で撮影した。
蛍光活性化細胞選別(FACS)分析
継代12における増殖中SCを、0.02% Versene溶液(pH7.4)、45分間、37℃により、培養プレートから遊離させる。抗体標識の前に、細胞を2回、0.3% HSA‐PBS溶液で洗浄する。一次抗体を30分間RTでインキュベート(4μl/100μl 細胞懸濁液/50000細胞)し、1回0.3% HSA‐PBSによる洗浄の後、Alexa Fluor 488ヤギ抗マウス(1:500)による二次抗体検出を30分間RTで暗所中において行う。ネガティブコントロールとして、細胞を一次抗体無しでインキュベートした以外は標識細胞と同様に処理する。細胞をBD FACSAria(Becton Dickinson)により、波長488のFITC検出器を用いて分析する。結果をBD FACSDivaソフトウェア バージョン5.0.1(Becton Dickinson)により分析する。

Figure 2010516240
実施例14
臍帯血単核球N‐グリカンのグリコシダーゼプロファイリング
実験手順
エキソグリコシダーゼ消化
中性N‐グリカン画分を臍帯血単核球集団から上述のようにして単離した。エキソグリコシダーゼ反応は、実質的に製造元の説明書および(Saarinen et al., 1999)の記載に従って実施した。各種反応物は;α‐Man:タチナタマメ(C. ensiformis;Sigma, USA)からのα‐マンノシダーゼ;β1,4‐Gal:S. pneumoniae(大腸菌における組み換え体;Calbiochem, USA)からのβ1,4‐ガラクトシダーゼ;β1,3‐Gal:組み換えβ1,3‐ガラクトシダーゼ(Calbiochem, USA);β‐GlcNAc:S. pneumoniae(Calbiochem, USA)からのβ‐グルコサミニダーゼ;α2,3‐SA:S. pneumoniae(Calbiochem, USA)からのα2,3‐シアリダーゼであった。分析反応は合成オリゴ糖を平行コントロール反応に用いて特異性を注意深く制御し、MALDI‐TOF質量分析により分析した。α2,3‐SAのシアル酸結合特異性は、合成オリゴ糖を平行コントロール反応に用いて制御し、この反応条件では酵素はα2,3‐結合シアル酸は加水分解するがα2,6‐結合シアル酸は加水分解しないことが確認された。分析は前述の実施例に記載のようにMALDI‐TOF質量分析によって実施した。消化の結果は、反応前後のグリカンプロファイルを比較することによって分析した。
結果
中性N‐グリカンのグリコシダーゼプロファイリング
臍帯血単核球由来のアフィニティ精製されたCD34+、CD34−、CD133+、CD133−、Lin+、およびLin−細胞試料からの中性N‐グリカン画分を上述のようにして単離した。このグリカン試料を実験手順の項で述べた平行グリコシダーゼ消化に掛けた。プロファイリングの結果を表11(CD34+およびCD34−細胞)、表12(CD133+およびCD133−細胞)、および表13(Lin−およびLin+細胞)にまとめる。本結果は、いくつかの中性N‐グリカンシグナルがすべてのエキソグリコシダーゼに対して個々に感受性を有することを示しており、このことは、すべての細胞型においていくつかの中性N‐グリカンがその非還元末端に特異的な基質グリカン構造を含むことを示唆している。この結果はさらに、上記に挙げた表に詳細に示すように、各酵素に対する個々のグリカンシグナルの感受性およびプロファイル全体の両方が細胞型間で明らかに相違していることも示している。
シアル化N‐グリカンのグリコシダーゼプロファイリング
臍帯血単核球由来のアフィニティ精製されたCD133+およびCD133−細胞試料からのシアル化N‐グリカン画分を上述のようにして単離した。このグリカン試料を実験手順の項で述べた平行グリコシダーゼ消化に掛けた。a2,3‐シアリダーゼによるプロファイリングの結果を表14に示す。結果は、反応の結果得られたシアル化および中性グリカン画分において、分析した細胞型のグリカンプロファイルの間で著しい相違が存在することを示している。本結果は、相違が複数のシグナルでプロファイル全体にわたって見られることを示している。さらに、以下で考察するように、個々のシグナルは細胞型間で異なっている。
臍帯血CD133およびCD133細胞N‐グリカンが差異的にα2,3‐シアル化される。実験手順の項で述べたように、臍帯血CD133およびCD133細胞からのシアル化N‐グリカンをα2,3‐シアリダーゼで処理し、その後得られたグリカンをシアル化および非シアル化画分に分離した。α2,3‐シアリダーゼ耐性および感受性シアル化N‐グリカンの両方が観察され、すなわち、シアリダーゼ処理の後、シアル化グリカンがシアル化N‐グリカン画分中に、脱シアル化グリカンが中性N‐グリカン画分中に観察された。この結果は、臍帯血CD133およびCD133細胞が差異的にα2,3‐シアル化されることを示している。例えば、α2,3‐シアリダーゼ処理の後、NeuAcHexHexNAcdHexの[M−H]イオンに対応するm/z 2076におけるモノシアル化(SA)グリカンシグナルおよびNeuAcHexHexNAcdHexの[M−H]イオンに対応するm/z 2367におけるジシアル化(SA)グリカンシグナルの相対比率は、α2,3‐シアリダーゼ耐性モノシアル化N‐グリカンと比較した場合、α2,3‐シアリダーゼ耐性ジシアル化N‐グリカンがCD133よりもCD133細胞中で相対的に豊富であることを示している。特にα2,6‐シアル化等の他のシアル酸結合に対してN‐グリカンα2,3‐シアル化は、臍帯血CD133細胞よりもCD133細胞中に豊富であると結論付けられる。
臍帯血CD133細胞中において、α2,3‐シアリダーゼ処理に対して耐性を示すいくつかのシアル化N‐グリカンが観察され、すなわち、元のシアル化グリカンの脱シアル化された形態に対応する中性グリカンは観察されなかった。臍帯血CD133およびCD133細胞の間で個々のN‐グリカン構造が差異的にα2,3‐シアル化されることを明らかにした結果を表14に示す。本結果は、他のシアル酸結合に対してN‐グリカンα2,3‐シアル化は、臍帯血CD133細胞よりもCD133細胞中に豊富であることを示している。
シアリダーゼ分析
臍帯血単核球集団(CB MNC)から単離されたシアル化N‐グリカン画分を前述の実施例に記載のように広範なシアリダーゼで消化した。反応後、MALDI‐TOF質量分析により、シアル化N‐グリカンの大部分が脱シアル化され、対応する中性N‐グリカンに変換されたことが観察され、それらが、提案された単糖組成により示唆されるように、シアル酸残基(NeuAcおよび/またはNeuGc)を有していたことが示された。CB MNC集団の中性および脱シアル化(元シアル化)N‐グリカン画分のグリカンプロファイルを組み合わせたものを作製した。このプロファイルは、(脱シアル化型の)細胞試料から単離された全N‐グリカンプロファイルに対応する。およそ25%のN‐グリカンシグナルが高マンノース型N‐グリカン単糖組成に、28%が低マンノース型N‐グリカンに、34%が複合型N‐グリカンに、および13%がハイブリッド型または単分岐N‐グリカン単糖組成に対応すると算出される。
結論
本結果により、1)グリコシダーゼプロファイリング法を用いて個々のグリカンシグナルの構造的特徴ならびに細胞型間の個々のグリカンの相違を分析することができること、2)異なる細胞型は、個々のグリカンシグナルおよびグリカンプロファイルの両方のグリコシダーゼに対する感受性に関して互いに異なること、ならびに、3)グリコシダーゼプロファイリングを異なる細胞型を区別するさらなる方法として用いることができ、その場合の比較のためのパラメータは個々のシグナルおよびプロファイル全体の相違の両方であること、が示される。
実施例15
式(I)のグリカン構造を発現する幹細胞の濃縮
FACS分析を実質的にVenable et al. (2005)に記載のようにして実施するが、代わりに生存細胞を用い、FASCAria(商標)セルソーター(BD)を用いる。
ヒトHSCを、コラゲナーゼ、および細胞剥離液(cell dissociation solution)(Sigma)または細胞の機械的な遊離またはVerseneを用いて採取し、単細胞懸濁液とする。次に細胞を10細胞ずつに小分けにして滅菌チューブに入れ、1:100溶液中のGF抗体の1つで染色する。細胞をPBSで3回洗浄し、次に二次抗体(抗ヤギマウスIgGまたはIgM FITC結合)で染色する。未染色HSCをコントロールとして用いる。FITC陽性細胞を細胞培地へ回収する(+4℃にて)(BDの説明書に従う)。
次に、細胞をCFUアッセイまたは他の細胞培地上へ配置し、クローンまたは細胞系列のモニタリングを行う。未分化段階の確認のため、ソートした細胞の遺伝子発現をリアルタイムPCRで分析する。
あるいは、FACSで濃縮した細胞をゼラチン上で自然発生的に分化させる。免疫組織化学的分析を各種組織特異的抗体を用いてMikkola et al. (2006)に記載のようにして実施するか、またはPCRで分析する。
実施例16
特異的結合剤標的構造を有するプロテアーゼ遊離糖ペプチドの単離および分析
糖ペプチドをトリプシン等のプロテアーゼによる幹細胞の処理によって遊離させる。糖ペプチドをクロマトグラフ的に単離し、好ましい方法はSuperdex(Amersham Pharmacia(GE))カラム(Superdex peptideまたはsuperdex 75)におけるゲル濾過クロマトグラフィーを使用し、ペプチドは、該ペプチドを特異的標識でタギングすることにより、または該ペプチド(またはグリカン)の紫外吸光度により、クロマトグラフィー内で観察することができる。前記方法のための好ましい試料としては比較的多量(数百万細胞)の造血幹細胞等が挙げられ、本実施例で用いられる好ましい抗体としては、本発明によるものであり前記の細胞と結合する抗体またはレクチン等の他の結合剤が挙げられる。
次に、単離された糖ペプチドを固定化抗体(例えばAmersham Pharmaciaのシアンプロミド(cyanogens promide)活性化カラムに固定化した抗体(GE healthcare divisionまたはPierceカタログに記載のように固定化された抗体)のカラムに通す。結合する、および/または、弱く結合し、クロマトグラフ的に遅延する画分を、標的ペプチド画分として回収する。高親和性結合の場合、グリカンを、抗体の標的エピトープに対応する100〜1000mMの単糖または単糖群を用いて、または単糖もしくはオリゴ糖の混合物により、および/または500〜1000mM NaCl等の高塩濃度を用いて、溶出する。糖ペプチドをグライコプロテオミクス法により、分子量を得るために質量分析を用いて、ならびに好ましくは糖ペプチドのペプチドおよび/またはグリカンをシーケンシングするためにフラグメンテーション質量分析も用いて、分析する。
別の方法においては、糖ペプチドを結合剤アフィニティークロマトグラフィーによる単一のアフィニティークロマトグラフィー工程により単離し、質量分析により分析する。これはWang Y et al (2006) Glycobiology 16 (6) 514‐23等の記載と本質的に同様に行うが、しかし、レクチンアフィニティークロマトグラフィーは、固定化抗体、例えばこの実施例における上記の好ましい抗体または結合剤によるアフィニティークロマトグラフィーで置き換えられる。
実施例17
細胞グリカン型の糖脂質およびO‐グリカン分析
スフィンゴ糖脂質グリカンおよび還元O‐グリカン試料を調査する細胞型から単離し、質量分析により分析し、さらに、本発明および先の実施例に記載されるように質量分析と組み合わせたエキスポグリコシダーゼ(expoglycosidase)消化により分析した。非還元末端エピトープをS. pneumoniae β1,4‐ガラクトシダーゼ(Calbiochem)、ウシ精巣β‐ガラクトシダーゼ(Sigma)、A. ureafaciens シアリダーゼ(Calbiochem)、S. pneumoniae α2,3‐シアリダーゼ(Calbiochem)、S. pneumoniae β‐N‐ アセチルグルコサミニダーゼ(Calbiochem)、X. manihotis α1,3/4‐フコシダーゼ(Calbiochem)、およびα1,2‐フコシダーゼ(Calbiochem)によるグリカン試料の消化により分析した。結果は本発明に記載されるように定量的質量分析プロファイリングデータ分析により分析した。スフィンゴ糖脂質グリカンによる結果を表17にまとめる。該表は、表の脚注に記載されるように、提案された単糖組成に基づいて決定されたコア構造の分類も含む。中性O‐グリカン画分の分析は、次の末端エピトープグリコシル化における量的な相違を明らかにした:非還元末端1型LacNAc(β1,3‐結合Gal)はhESCのみにおいて5%超の割合を有しており、非還元末端2型LacNAc(β1,4‐結合Gal)は95%超の割合をCB MNC、CB MSC、およびBM MSCにおいて有していた。m/z 771(HexHexNAc)および917(HexHexNAcdHex)における2型LacNAc含有O‐グリカンシグナルのフコシル化度はCB MNCにおいて64%、CB MSCにおいて47%、およびhESCにおいて28%であった。
結論として、O‐グリカンおよびスフィンゴ糖脂質グリカンからのこれらの結果は、有意な細胞型特異的相違を明らかにするものであり、また本発明で分析した各細胞型内のN‐グリカン末端エピトープからも有意に異なっていた。
実施例18
細胞グリカン型のエンド‐β‐ガラクトシダーゼ分析
エンド‐β‐ガラクトシダーゼの反応条件
基質グリカンを0.5ml反応チューブ内で乾燥した。エンド‐β‐ガラクトシダーゼ(E. freundii、Seikagaku Corporation、cat no 100455、2.5 mU/反応)反応を50mM Na‐酢酸バッファー、pH5.5内において37℃で20時間行った。インキュベーション後、反応混合液を3分間煮沸し、反応を停止した。基質グリカンを本発明のクロマトグラフィー法を用いて精製し、先の実施例に記載のようにMALDI‐TOF質量分析で分析した。
2nmolの各所定のオリゴ糖対照を用いた類似の反応条件において、反応はm/z 568(HexHexNAc)のシグナルをラクト‐N‐ネオテトラオースおよびパラ‐ラクト‐N‐ネオヘキサオースからの主要な反応産物として生成したが、内部GlcNAc残基の3位でモノフコシル化されたラクト‐N‐ネオヘキサオースまたはパラ‐ラクト‐N‐ネオヘキサオースからは生成せず;ならびに、α3’‐シアリル‐ラクト‐N‐ネオテトラオースからのNeuAcHexHexNAcに対応するシアル化シグナルを生成した。これらの結果は、用いた反応条件において前記酵素に対して報告された特異性を裏付けるものであった。
細胞グリカン型による結果
CB MNC スフィンゴ糖脂質グリカン
CB MNC中性スフィンゴ糖脂質グリカンにおける主要な消化産物はm/z 568(HexHexNAc)のシグナルであり、非フコシル化ポリ‐LacNAc配列の存在が示唆された。さらに、714(HexHexNAcdHex)および1225(HexHexNAcdHex)におけるシグナルはフコシル化ポリ‐LacNAc配列の存在を示した。
主要な感受性シグナルは1095(HexHexNAc)、1241(HexHexNAcdHex)、876(HexHexNAcdHex)、1606(HexHexNAcdHex)、1460(HexHexNAc)、および933(HexHexNAc)を含み、直鎖非フコシル化および多フコシル化ポリ‐LacNAcの両者の存在が示唆された。消化後の感受性シグナル内に残る残存シグナルは、分岐ポリ‐LacNAc配列も、より少量存在することを示唆した。
CB MSCスフィンゴ糖脂質グリカン
CB MSC中性スフィンゴ糖脂質グリカンにおける主要な消化産物はm/z 568(HexHexNAc)であり、非フコシル化ポリ‐LacNAc配列の存在が示唆された。主要な感受性シグナルはm/z 1095(H4N2)、933(HexHexNAc)、および1460(HexHexNAc)のシグナルであった。CB MNCの結果と比べると、CB MSCは、グリカンプロファイルはCB MNCと同一の本来のシグナルを含んでいたものの、より非感受性の構造を有しており、CB MSCにおいてはCB MNCにおけるよりもスフィンゴ糖脂質グリカンのポリ‐N‐アセチルラクトサミン配列が分岐していたことが示唆された。
hESCスフィンゴ糖脂質グリカン
hESC中性スフィンゴ糖脂質グリカンの主要な消化産物はm/z 568(HexHexNAc)および714(HexHexNAcdHex)のシグナルであり、非フコシル化およびフコシル化ポリ‐LacNAc配列の存在を示している。さらに、m/z 1428(HexHexNAcdHex)および1282(HexHexNAcdHex)のシグナルが産物であり、上述の細胞型とは異なる非還元末端HexNAcを有するグリカン末端配列の存在を示している。主要な感受性シグナルは、m/z 730、876、933、1095、および1241のシグナルであり、上記のCB MNCと類似に解釈される。
結論として、エンド‐β‐ガラクトシダーゼ反応産物は、先の実施例において記載された細胞型特異的グリコシル化特性を効果的に反映するものであり、それらは細胞グリカン型の分析のための代替的および補完的な方法の代表である。さらに、本結果は直鎖、分岐、およびフコシル化ポリ‐LacNAcの存在を全ての調査した細胞型ならびにN‐およびO‐グリカンおよびスフィンゴ糖脂質グリカン等の各種グリカン型において明らかにし;また、さらに各細胞型における、各細胞型に特徴的な、これらの定量的および細胞型特異的割合を明らかにした。
実施例19
固定化結合剤による臍帯血単核球の選択および結合剤と合わせてのその細胞の培養
材料および方法
レクチンをコーティングしたダイナビーズ(Dynabeads)の作製
レクチンをコーティングした微粒子が造血幹細胞(HSC)と結合する能力を研究するために、本願発明者らはダイナビーズ(登録商標)M‐280ストレプトアビジンダイナビーズ(Invitrogen, Dynal)を用い、これをビオチン化レクチン分子でコーティングした。ビーズを製造元の説明書に従ってPBS‐0.1%BSAで洗浄した。ビオチン化レクチン10μgを1mgのダイナビーズ粒子とともに室温にて30分間ゆっくり回転させながらインキュベートした。コーティングしたビーズを次に0.1%BSA‐PBSで3回洗浄し、細胞結合アッセイに用いた。
Eppendorf型マイクロチューブ用Dynal MPC‐E磁気粒子濃縮機(Magnetic Particle Concentrator)(Dynal AS, Norway)を用いて回収した。
MNCのLin−集団の分離
StemSepヒト前駆細胞濃縮カクテル(Human Progenitor Enrichment coctail)(StemCell Technologies)を用いてLin陰性細胞集団をCB単核球から分離した。75000000細胞/mlを0.5%BSA‐PBSで懸濁させた。Linヒト前駆細胞濃縮カクテルをこの懸濁液に添加し、室温で15分間インキュベートした。インキュベーションの後、磁性ビーズを細胞懸濁液と混合し、室温でさらに15分間インキュベートした。
Miltenyi LD磁気カラム(Miltenyi Biotec)を用い、製造元の説明書に従ってLin−細胞を分離した。
培養用にLin−細胞を10000細胞/10μgダイナビーズの希釈率でレクチンコーティング粒子により懸濁させた。
臍帯血由来単核球のレクチンコーティングダイナビーズへの結合
Ficoll‐Hypaque液を用いた密度勾配遠心分離によって過去に単離された凍結臍帯血(CB)単核球(MNC)画分を用いてレクチンコーティング微粒子の結合能を調べた。解凍したCB MNC細胞を0.1%BSA‐PBS‐2mM EDTAで希釈し、レクチンコーティングビーズ(ダイナビーズ(登録商標)M‐280ストレプトアビジンダイナビーズ(Invitrogen)、ビオチン化レクチンでコーティング、EY laboratories, Inc. San Mateo, CA, USA,www.eylabs.com)により、6.3x10単核球/100μgレクチンコーティングビーズの希釈率で懸濁させた。未コーティングビーズをコントロールとして用いた。細胞を磁性ビーズとともに+6℃でゆっくり回転しながら1時間インキュベートした。インキュベーションの後、未結合細胞を上清として回収し、ダイナビーズを0.1%BSA‐PBSで2回洗浄した。細胞が結合したダイナビーズをDynal MPC‐E磁気粒子濃縮機を用いて回収した。未結合およびダイナビーズ結合細胞の両方の数をBurker Chamberにて算出した。

Figure 2010516240
フローサイトメトリー分析
レクチンコーティングビーズまたはコントロールビーズに結合したMNC細胞をPBSで洗浄し、室温にて5分間600xgで遠心分離に掛けた。細胞のペレットを0.3%BSA‐PBSで2回洗浄し、600xgで遠心分離に掛け、0.3%BSA‐PBS中に再懸濁させた。細胞を、コニカルチューブ中に100000細胞ずつに小分けにして入れた。小分けした細胞を抗体(下記表)とともに、2μl/10細胞の希釈率にて+4℃で30分間暗所でインキュベートした。インキュベーションの後、細胞を0.3%BSA‐PBSで洗浄し、遠心分離に掛け、0.3%BSA‐PBS中に再懸濁させた。
非標識細胞、レクチンコーティングビーズに結合しなかった細胞、およびビーズなしの細胞も分析した。抗体の結合はフローサイトメトリー(FACSAria,Becton Dickinson)で検出した。データ分析はFACSDiva(商標)フローサイトメトリーソフトウェア バージョン5.02によって行った。

Figure 2010516240

Figure 2010516240
結果
種々の量のMN細胞がレクチンコーティングビーズに結合し、GF710には細胞の90%、GF711には約11%が結合し、他の分子には実質的な量が結合したが細胞の5%未満であった、表19。レクチンコーティングのないダイナビーズは単核球とは結合しなかった。
レクチンコーティングダイナビーズと結合したMNCは、CD34、CD90、CD133、CD3、およびCD14に対する抗体で染色し、FACSAriaで分析した。これらの結果に基づいて、本願発明者らはレクチンコーティング粒子が特定の均質な細胞集団を濃縮するとは言えないが、レクチンコーティング粒子と結合した細胞集団はコントロール集団(天然細胞およびビーズと結合しなかった細胞)よりもCD34およびCD133に対してよりポジティブであると思われる。
GF711でコーティングされたビーズとともにMNCを図17のパネルAに示す。他の実施例のように標準的な方法によってCB MNCから選択された系列陰性細胞は、レクチンコーティングビーズ、例えばGF710、と結合した、図17B。実施例で述べるように標準的な方法によってCB MNC細胞から作製されたLin陰性細胞。
実施例20
実験手順
臍帯血からの単核球(MNC)の抽出
ヒト出産臍帯血(CB)ユニットを母親のインフォームドコンセントを得て出産後に採取し、該CBを採取後24時間以内に処理した。該CBをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に1:1で希釈し、Ficoll‐Paque Plus(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)密度勾配遠心(400xg/40分間)を行って、単核球(MNC)を各CBユニットから単離した。単核球フラグメントをグラジエントから回収し、PBSで2回洗浄した。
抗グリコホリンA(抗CD235a)結合磁性マイクロビーズによる赤血球前駆体の除去
MNC(10)を80μlの0.5%超高純度BSA、2mM EDTA‐PBSバッファー中に懸濁させた。抗CD235a(グリコホリンa,Miltenyi Biotec)結合磁性マイクロビーズを用い、10細胞あたり20μlの磁性マイクロビーズ懸濁液を添加して4℃で15分間インキュベートすることにより、赤血球前駆体を除去した。細胞懸濁液を10細胞あたり1〜2mlのバッファーで洗浄し、続いて300xgで10分間遠心分離に掛けた。細胞を1.25x10細胞/500μlのバッファーで再懸濁させた。MACS LDカラム(Miltenyi Biotec)を磁場に配置し、2mlのバッファーで洗浄した。細胞懸濁液をカラムに適用し、通過した細胞を回収した。カラムを1mlのバッファーで2回洗浄し、すべての流出液を回収した。細胞を300xgで10分間遠心分離に掛け、10mlのバッファーに再懸濁させた。合計で8ユニットのCBを次の抗体染色に用いた。
抗グリカン抗体による染色
MNCをFACSチューブへ小容量、すなわち0.5x10細胞/500μl 0.3%超高純度BSA(Sigma)、2mM EDTA‐PBSバッファーで分注した。10マイクロリットルの一次抗体(一次抗体のリストを表22に示す)を細胞懸濁液に添加し、ボルテックスし、細胞を30分間室温でインキュベートした。細胞を2mlのバッファーで洗浄し、5分間500xgで遠心分離した。AlexaFluor 488結合抗マウス(1:500、Invitrogen)および抗ウサギ(1:500、Molecular Probes)、ならびにFITC結合抗‐ラット(1:320、Sigma)二次抗体を、適当な一次抗体に対して用いた。二次抗体を0,3%超高純度BSA、2mM EDTA‐PBSバッファー中に希釈し、200μlの希釈物を細胞懸濁液に加えた。試料を30分間室温で暗所にてインキュベートした。細胞を2mlのバッファーで洗浄し、5分間500xgで遠心分離した。ネガティブコントロールとして、細胞を一次抗体無しでインキュベートした以外は標識細胞と同様に処理した。
PE‐結合抗CD34抗体による二重染色
抗グリカン抗体での染色の後、PE‐結合抗CD34抗体(BD Biosciences)による二重染色を実施した。細胞を500μlのバッファー中に懸濁させ、10μlの抗CD34抗体を添加し、暗所にて+4℃で30分間インキュベートした。インキュベーションの後、細胞を2mlのバッファーで洗浄し、500xgにて5分間遠心分離した。上清を除去して細胞を300μlのバッファーに懸濁させ、暗所にて4℃で一晩保存した。
フローサイトメトリー分析
翌日、細胞をフローサイトメーターBD FACSAria(BD Biosciences)により、FITCおよびPE検出器を用いて分析した。各抗グリカン抗体に対しておよそ250000〜300000個の細胞が計数された。データをBD FACSDivaソフトウェア バージョン5.0.2(BD Biosciences)により分析した。
結果および考察
CB‐HSCのFACS分析の結果を図15および表21に示し、抗体を表22に示す。いくつかのグリカン構造、例えばTn、TF、Lewis x、およびシアリルLewis xは、成熟赤血球(CD34−)と比較してHSC(CD34+)の方が豊富である。このことは同一のエピトープに対するいくつかの抗グリカン抗体で見られ、異なるCBユニット間でも見られた。別々のCBユニット間での抗Lex抗体での変動が最も大きかった。成熟赤血球(CD34−)で豊富であったグリカン構造はアシアロGM1、アシアロGM2、グロボシドGL4、およびLewis aであった。
実施例21
実験手順
臍帯血からの単核球(MNC)の抽出
ヒト出産臍帯血(CB)ユニットを母親のインフォームドコンセントを得て出産後に採取し、該CBを採取後24時間以内に処理した。該CBをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に1:1で希釈し、Ficoll‐Paque Plus(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden)密度勾配遠心(400xg/40分間)を行って、単核球(MNC)を各CBユニットから単離した。単核球フラグメントをグラジエントから回収し、PBSで2回洗浄した。
フルオレセリン(FITC)‐結合レクチンによる染色
MNCをFACSチューブへ小容量、すなわち0.5x10細胞/500μl 0.3%超高純度BSA(Sigma)、2mM EDTA‐PBSバッファーで分注した。10マイクロリットルのFITC‐結合レクチン(表20)を細胞懸濁液に添加し、ボルテックスし、細胞を30分間室温でインキュベートした。細胞を2mlのバッファーで洗浄し、5分間500xgで遠心分離した。ネガティブコントロールとして、細胞を一次抗体無しでインキュベートした以外は標識細胞と同様に処理した。
PE‐結合抗CD34抗体による二重染色
FITC‐結合レクチンでの染色の後、PE‐結合抗CD34抗体(BD Biosciences)による二重染色を実施した。細胞を500μlのバッファー中に懸濁させ、10μlの抗CD34抗体を添加し、暗所にて+4℃で30分間インキュベートした。インキュベーションの後、細胞を2mlのバッファーで洗浄し、500xgにて5分間遠心分離した。上清を除去して細胞を300μlのバッファーに懸濁させ、暗所にて4℃で一晩保存した。
フローサイトメトリー分析
翌日、細胞をフローサイトメーターBD FACSAria(BD Biosciences)により、FITCおよびPE検出器を用いて分析した。各抗グリカン抗体に対しておよそ250000〜300000個の細胞が計数された。データをBD FACSDivaソフトウェア バージョン5.0.2(BD Biosciences)により分析した。
結果および考察
CB‐HSC(CD34+/−)レクチン染色の結果を表20および図14に示す。このデータより、一部の結合剤が造血CD34+幹細胞の濃縮または単離に特に有用であることが明らかになった。
実施例22
パーメチル化グリカン構造のフラグメンテーション分析
臍帯血CD133+およびCD133−細胞を回収し、その細胞N‐グリカンを本質的に先の実施例に記載されるように単離およびパーメチル化し、MS/MS分析(フラグメンテーション質量分析)により分析した。以下の結果リストにおいて、フラグメントは特に断りの無い限り主にNa+付加イオンであり、[]は未定義の単糖配列を表す。
臍帯血CD133+細胞酸性N‐グリカンを分析すると、以下のグリカンは構造を示唆するシグナルを生成した(命名はDomon and Costello, 1988, Glycoconjugate J.の記載の通りである)。
m/z 1532.78(NeuAcHex3HexNAc2)から得られたフラグメントは:B(H付加イオンによるm/z 375.69)、B/YまたはB/Y(Na付加イオンによるm/z 471.79)、Y(m/z 503.88)、Y(m/z 707.99)、B(m/z 847.00)、およびY(m/z 1157.51)であり、直鎖構造Neuac‐[Hex‐HexNAc]‐Hex‐[Hex‐HexNAc]に対応し、直鎖構造Neuac‐Hex‐HexNAc‐Hex‐Hex‐HexNAcに相当する可能性があり、より優先的にはN‐グリカン構造NeuAcα2‐3/6Galβ1‐3/4GlcNAcβ1‐2Manα1‐3/6Manβ1‐4GlcNAcに対応し、ここで、下線部の結合は優先的にはα1‐3である。
m/z 2156.03(NeuAcHex4HexNAc3dHex)から得られたフラグメントは:B1α(H付加イオンによるm/z 375.86)、B3α/Y6α(Na付加イオンによるm/z 471.90)、B3α(m/z 846.90)、Y4α(m/z 1331.71)、およびY6α(m/z 1781.62)であり、構造NeuAcα2‐3/6Galβ1‐3/4GlcNAcβ1‐2Manα1‐3/6(Manα1‐6/3)Manβ1‐4GlcNAcβ1‐4(Fucα1‐6)GlcNAcと同一の単糖配列を有する構造に相当し、ここで、下線部の結合は優先的にはα1‐3である。
m/z 2431.14(NeuAcHex5HexNAc4)から得られたフラグメントは:B3α/Y6α(Na付加イオンによるm/z 471.87)、B3α(m/z 846.65)、Y4α/Y3β(m/z 939.09)、Y6α/Y4β(m/z 1591.61)、およびY4α/Y6β(m/z 1606)であり、構造NeuAcα2‐3/6Galβ1‐3/4GlcNAcβ1‐2Manα1‐3/6(Galβ1‐3/4GlcNAcβ1‐2Manα1‐3/6)Manβ1‐4GlcNAcβ1‐4GlcNAcに相当する可能性がある。
m/z 2605.22(NeuAcHex5HexNAc4dHex)から得られたフラグメントは:B3α(Na付加イオンによるm/z 847.42)およびY4α/Y6β(m/z 1782.06)であり、構造NeuAcα2‐3/6Galβ1‐3/4GlcNAcβ1‐2Manα1‐3/6(Galβ1‐3/4GlcNAcβ1‐2Manα1‐3/6)Manβ1‐4GlcNAcβ 1‐4(Fucα1‐6)GlcNAcと同一の単糖配列を有する構造に相当する。
m/z 2779.3(NeuAcHex5HexNAc4dHex2)から得られたフラグメントは:B3α(Na付加イオンによるm/z 847.79)およびB6α/Y6α(m/z 1970.21)であり、構造NeuAcα2‐3/6Galβ1‐3/4GlcNAcβ1‐2Manα1‐3/6([Fucα1‐2’/3/4][Galβ1‐3/4GlcNAcβ1‐2]Manα1‐3/6)Manβ1‐4GlcNAcβ1‐4(Fucα1‐6)GlcNAcと同一の単糖配列を有する構造に相当する。
まとめると、本結果は特に、CD133+細胞N‐グリカンの次の特異的構造:N‐グリカン単分岐コア構造、N‐グリカン二分岐コア構造、ハイブリッド型N‐グリカンコア構造、およびシアル化二分岐N‐グリカンの非シアル化分岐上の非還元末端Lex、に対する直接的な証拠が得られ、本発明による構造的割り当てがさらに確認された。
臍帯血CD133+細胞酸性N‐グリカンを分析すると、以下のグリカンは構造を示唆するシグナルを生成した。
m/z 1532.77(NeuAcHex3HexNAc2)から得られたフラグメントは:B(H付加イオンによるm/z 375.95)、B/YまたはB/Y(Na付加イオンによるm/z 471.91)、Y(m/z 503.89)、Y(m/z 708.13)、B(m/z 847.15)、およびY(m/z 1157.52)であり、構造NeuAcα2‐3/6Galβ1‐3/4GlcNAcβ1‐2Manα1‐3/6Manβ1‐4GlcNAcと同一の単糖配列を有する構造に相当する。
m/z 2156.01(NeuAcHex4HexNAc3dHex)から得られたフラグメントは:B3α(Na付加イオンによるm/z 846.97)、Y4α(m/z 1331.29)、およびY6α(m/z 1781.92)であり、構造NeuAcα2‐3/6Galβ1‐3/4GlcNAcβ1‐2Manα1‐3/6(Manα1‐3/6)Manβ1‐4GlcNAcβ1‐4(Fucα1‐6)GlcNAcと同一の単糖配列を有する構造に相当する。
m/z 2605.30(NeuAcHex5HexNAc4dHex)から得られたフラグメントは:B3α/Y6α(Na付加イオンによるm/z 472.23)およびY4α/Y6β(m/z 1780.60)であり、構造NeuAcα2‐3/6Galβ1‐3/4GlcNAcβ1‐2Manα1‐3/6(Galβ1‐3/4GlcNAcβ1‐2Manα1‐3/6)Manβ1‐4GlcNAcβ1‐4(Fucα1‐6)GlcNAcと同一の単糖配列を有する構造に相当する。
m/z 3054.52(NeuAcHex6HexNAc5dHex)から得られたフラグメントは:B1α(H付加イオンによるm/z 375.82)、B3α/Y6α(Na付加イオンによるm/z 471.99)、B3α(m/z 846.58)であり、構造NeuAcα2‐3/6{Galβ1‐3/4GlcNAcβ1‐2Manα1‐3/6[Galβ1‐3/4GlcNAcβ1‐2(Galβ1‐3/4GlcNAcβ1‐4)Manα1‐3/6]Manβ1‐4GlcNAcβ1‐4(Fucα1‐6)GlcNAc}と同一の単糖配列を有する構造に相当する。
まとめると、本結果から特に、臍帯血細胞N‐グリカンの次の特異的構造:N‐グリカン単分岐コア構造、N‐グリカン二分岐コア構造、ハイブリッド型N‐グリカンコア構造、およびシアル化三分岐N‐グリカンの非シアル化分岐上の非還元末端LacNAc、に対する直接的な証拠が得られ、本発明による構造的割り当てがさらに確認された。

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参考文献
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Claims (82)

  1. ヒト血液関連、好ましくは造血幹細胞調製物の状態を評価する方法であって、前記調製物中の伸長グリカン構造、または、少なくとも2つの、グリカン構造の群の存在を検出する工程を含み、前記グリカン構造またはグリカン構造の群は、幹細胞の状態の分析および/または幹細胞の操作のための式T1
    Figure 2010516240
    [式中、Xは結合位置であり
    、R、およびRはOHもしくはグリコシド結合した単糖残基シアル酸、好ましくはNeu5Acα2もしくはNeu5Gc α2、最も好ましくはNeu5Acα2であり、または
    、はOHまたはグリコシド結合した単糖残基Fucα1(L‐フコース)またはN‐アセチル(N‐アセトアミド、NCOCH)であり;
    、はH、OHまたはグリコシド結合した単糖残基Fucα1(L‐フコース)であり、
    がHである場合、RはOHであり、RがHではない場合、RはHであり;
    R7はN‐アセチルまたはOHであり
    Xは前記細胞由来の天然オリゴ糖主鎖構造、好ましくはN‐グリカン、O‐グリカンもしくは糖脂質構造であり;またはnが0である場合、Xは無であり、
    Yはリンカー基、好ましくはO‐グリカンおよびO‐結合末端オリゴ糖および糖脂質のための酸素、ならびにN‐グリカンのためのN、またはnが0である場合、無であり;
    Zは担体構造、好ましくは細胞により産生された天然担体であり、例えばタンパク質または脂質であって、好ましくは担体上のセラミドもしくは分岐グリカンコア構造、またはHであり;
    アーチはガラクトピラノシルからの結合が左側の残基の3位または4位いずれかに対するものであること、およびR4構造が他の4または3位にあることを表し;
    nは0または1の整数であり、mは1〜1000、好ましくは1〜100、および最も好ましくは1〜10の整数(担体上のグリカンの数)であり、
    ただしR2およびR3のうち1つはOHまたはR3はN‐アセチルであり、
    左側の第1の残基が右側の残基の4位に結合する場合、R6はOHであり:
    XはGalα4Galβ4Glcではなく、(SSEA‐3または4のコア構造)またはR3はフコシルである]
    であり、ここで前記細胞調製物は胚性幹細胞調製物であり。
    ならびに、前記グリカン構造が伸長構造である場合、ここで、前記結合剤は前記構造およびさらに少なくとも1つの還元末端伸長エピトープ、好ましくは式E1:
    AxHex(NAc)、[式中、Aはアノマー構造アルファまたはベータであり、Xは結合位置2、3または6であり;およびHexはヘキソピラノシル残基Gal、またはManであり、nは0または1の整数であり、
    ただし
    nが1である場合、AxHexNAcはβ4GalNAcまたはβ6GalNAcであり、
    HexがManである場合、AxHexはβ2Manであり、および、
    HexがGalである場合、AxHexはβ3Galまたはβ6Galまたはα3Galまたはα4Galである];
    の単糖エピトープ(Xおよび/またはYを置換)に結合し、
    または
    前記結合剤エピトープはさらに還元末端伸長エピトープ
    還元末端GalNAcα含有構造に結合するSer/Thrもしくは
    Galβ4Glc含有構造に結合するβCerに結合し、および前記グリカン構造は関連するまたは混入した細胞集団から決定される幹細胞集団である方法。
  2. 幹細胞の状態の分析のための、および/または幹細胞の操作のための方法であって、幹細胞の試料から伸長グリカン構造または少なくとも2つのグリカン構造を検出する工程を含み、ここで前記グリカン構造は:末端ラクトサミン構造
    (R1)n1Gal(NAc)n3β3/4(Fucα4/3)n2GlcNAcβR[式中、R1はGalβ4GlcNAcに結合するFucα2、またはSAα3、またはSAα6であり、および
    RはN‐グリカン、O‐グリカンおよび/または糖脂質の還元末端コア構造である];a、
    または、構造
    (SAα3)n1Galβ3(SAα6)n2GalNAc;[式中
    n1、n2およびn3は0または1であって構造の存在または非存在を表し、
    式中、SAはシアル酸である];または分岐エピトープ
    Galβ3(GlcNAcβ6)GalNAcまたは
    Galβ4(R)GlcNAcβ6(RGalβ3)GalNAc、
    [式中、RおよびRは独立に無またはSAα3であり;およびRは独立に無またはFucα3である];または
    N‐結合グリカンのコア構造中のManβ4GlcNAc構造;またはエピトープGalβ4Glc、
    または末端マンノース
    または末端SAα3/6Gal[式中、SAはシアル酸であり、ただし
    i)幹細胞は癌細胞株の細胞ではなく、そして
    ii)細胞は造血CD34細胞ではなく、該構造は、N‐アセチルラクトサミンを含む場合は、フコシル化された特異的な伸長構造であるか、またはSAα3Galβ4GlcNAcβ3Gal構造ではない]
    からなる群より選択される方法。
  3. 請求項1記載の方法であって、前記結合物質が式T8Eベータ
    [Mα]Galβ1‐3/4[Nα]GlcNAcβxHex(NAc)
    [式中
    式中、xは結合位置2、3、または6であり
    式中、m、nおよびpは独立に0または1の整数であり
    MおよびNは単糖残基であって
    i)独立に無(その位置における遊離水酸基)
    および/または
    ii)Galの3位または/およびGlcNAcの6位に結合するシアル酸であるSA
    および/または
    iii)Galの2位および/またはGlcNAcの3もしくは4位に結合するFuc(L‐フコース)残基(GalがGlcNAcの他の位置(4または3)に結合する場合)
    であり、
    ただしm、nおよびpは独立に0または1であり。
    Hexはヘキソピラノシル残基GalまたはManであり、
    ただしpが1の場合、βxHexNAcはβ6GalNAcであり、
    pが0の場合
    HexはManであり、かつβxHexはβ2Manであり、またはHexはGalであり、かつβxHexはβ3Galもしくはβ6Galである]
    の構造を認識する方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の方法であって、前記結合物質が
    式T10E
    [Mα]Galβ1‐4[Nα]GlcNAcβxHex(NAc)
    [ただしpが1である場合、βxHexNAcはβ6GalNAcであり、
    pが0である場合、HexはManであり、かつβxHexはβ2Manであり、または、HexはGalであり、かつβxHexはβ6Galである]
    のII型ラクトサミンを基盤とする構造を認識する方法。
  5. 請求項4記載の方法であって、前記結合物質が式T10EMan:
    [Mα]Galβ1‐4[Nα]GlcNAcβ2Man、
    [式中、変数は請求項2の式T8Eベータに対して記載されるものと同様である]
    のII型ラクトサミンを基盤とする構造を認識する方法。
  6. 前記構造がGalβ4GlcNAcβ2Man、Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ2Man、Fucα2Galβ4GlcNAcβ2Man、SAα6Galβ4GlcNAcβ2Man、SAα3Galβ4GlcNAcβ2Manからなる群より選択される、請求項5記載の方法
  7. 前記構造がHII型構造Fucα2Galβ4GlcNAcβ2Manである、請求項5記載の方法。
  8. 前記構造がLewis x構造Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ2Manである、請求項5記載の方法。
  9. 請求項4記載の方法であって、前記結合物質が
    式T10EGal(NAc):
    [Mα]Galβ1‐4[Nα]GlcNAcβ6Gal(NAc)
    [式中、変数は請求項2の式T8Eベータに対して記載される通りである]
    のII型ラクトサミンを認識する方法。
  10. 請求項9記載の方法であって、前記構造が
    Galβ4GlcNAcβ6Gal、Galβ4GlcNAcβ6GalNAc、Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ6GalNAc、Fucα2Galβ4GlcNAcβ6GalNAc、SAα3/6Galβ4GlcNAcβ6GalNAc、およびSAα3Galβ4GlcNAcβ6GalNAc、SAα3Galβ4(Fucα3)GlcNAcβ6GalNAc、SAα3Galβ4(Fuca3)GlcNAcβ6(RGalβ3)GalNAc[式中、RはSAα3または無である]
    からなる群より選択される方法。
  11. 請求項1〜3のいずれかに記載の方法であって、前記結合物質が式T9E
    [Mα]Galβ1‐3[Nα]GlcNAcβ3Gal
    のI型ラクトサミンを基盤とする構造を認識する方法。
  12. 請求項11記載の方法であって、前記構造が
    Galβ3GlcNAcβ3Gal、Galβ3(Fucα4)βGlcNAcβ3Gal、およびFucα2Galβ3GlcNAcβ3Gal、およびFucα2Galβ3(Fucα4)GlcNAcβ3Gal
    からなる群より選択される方法。
  13. 前記構造がHI型構造Fucα2Galβ3GlcNAcβ3GalまたはI型LAcNAc‐構造Galβ3GlcNAcβ3Galである、請求項11記載の方法。
  14. 前記検出が、前記調製物における少なくとも1種のグリカン構造の量または存在を特異的結合物質または管理された結合剤により分析することによって行われる、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記構造が少なくとも1個のFucα残基を有する、請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
  16. 前記の伸長オリゴ糖構造が(SAα3)0または1Galβ3/4(Fucα4/3)GlcNAc、Fucα2Galβ3GalNAcα/βおよびFucα2Galβ3(Fucα4)0または1GlcNAcβからなる群より選択される、請求項2記載の方法。
  17. 請求項2のいずれかに記載の方法であって、前記の伸長オリゴ糖が、Galβ4Glc、Galβ3GlcNAc、Galβ3GalNAc、Galβ4GlcNAc、Galβ3GlcNAcβ、Galβ3GalNAcβ/α、Galβ4GlcNAcβ、GalNAcβ4GlcNAc、SAα3Galβ4Glc、SAα3Galβ3GlcNAc、SAα3Galβ3GalNAc、SAα3Galβ4GlcNAc、SAα3Galβ3GlcNAcβ、SAα3Galβ3GalNAcβ/α、SAα3Galβ4GlcNAcβ、SAα6Galβ4Glc、SAα6Galβ4Glcβ、SAα6Galβ4GlcNAc、SAα6Galβ4GlcNAcβ、Galβ3(Fucα4)GlcNAc (Lewis a)、SAα3Galβ3(Fucα4)GlcNAc (シアリル‐Lewis a)、Fucα2Galβ3GlcNAc (H‐1型)、Fucα2Galβ3(Fucα4)GlcNAc (Lewis b)、Galβ4GlcNAc (2型ラクトサミン基盤)、Galβ4(Fucα3)GlcNAc (Lewis x)、SAα3Galβ3(Fucα4)GlcNAc (シアリル‐Lewis x)、Fucα2Galβ4GlcNAc (H‐2型)およびFucα2Galβ4(Fucα3)GlcNAc (Lewis y)からなる群より選択される方法。
  18. 前記構造が少なくとも1つの末端ManαMan‐構造とともに用いられる場合の、請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
  19. 前記検出がモノクローナル抗体、グリコシダーゼ、グリコシル転移酵素、植物レクチン、動物レクチンおよびそれらのペプチド模倣物からなる群より選択される組み替えタンパク質である結合剤により行われる、請求項1〜18のいずれかに記載の方法。
  20. 前記結合物質がGF287、GF279、GF288、GF284、GF283、GF286、GF290、GF289、GF275、GF276、GF277、GF278、GF297、GF298、GF302、GF303、GF305、GF296、GF300、GF304、GF307、GF353、およびGF354からなる群より選択される抗体と同一のエピトープに結合する、請求項19記載の方法。
  21. 前記結合物質がGF287、GF279、GF288、GF284、GF283、GF286、GF290、およびGF289、GF275、GF276、GF277、GF278、GF297、GF298、GF302、GF303、GF305、GF296、GF300、GF304、GF307、GF353、GF354、およびGF367からなる群より選択される、請求項19記載の方法。
  22. 前記組み替えタンパク質が少なくとも部分的に2つの単糖構造および前記単糖残基間の結合構造を認識する高特異性結合剤である、請求項19記載の方法。
  23. 前記結合剤が、生体材料または他の細胞型を含む細胞材料等の試料からヒト幹細胞を選別または選択するために用いられる、請求項19記載の方法。
  24. 前記結合剤が、異なるヒト幹細胞型間の選別または選択のために用いられる、請求項19記載の方法。
  25. 選別または選択がFACSまたは細胞集団を濃縮するための任意の他の手段により行われる、請求項19記載の方法。
  26. 請求項25記載の方法により得られた細胞集団。
  27. 前記細胞調製物が血液関連細胞集団からなる群より選択される、請求項24記載の方法。
  28. 分析されるべき細胞の量が10および10細胞の間である、請求項1記載の方法。
  29. 前記グリカン構造がN‐グリカンコア構造を有するN‐グリカンを含むN‐グリカンサブグライコーム中に存在し、前記N‐グリカンがN‐グリコシダーゼにより細胞から遊離され得る、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  30. 前記N‐グリカンコア構造がManβ4GlcNAcβ4(Fucα6)GlcNAc[式中、nは0または1である]である、請求項29記載の方法。
  31. 請求項1〜3のいずれかに記載の方法であって、前記グリカン構造が、O‐グリカンコア構造を有するO‐グリカンを含むO‐グリカンサブグライコーム中に存在し、または前記グリカン構造が、糖脂質コア構造を有する糖脂質を含む糖脂質サブグライコーム中に存在し、前記グリカンがグリコシルセラミダーゼにより遊離され得る方法。
  32. 前記グリカン構造の群が本明細書の表および図に示される特異的な量のオリゴ糖を含む、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
  33. 前記細胞調製物の細胞表面グライコームの存在または非存在が検出される、請求項1〜32のいずれかに記載の方法。
  34. 前記細胞調製物が、前記細胞調製物の細胞集団内の混入する構造、時間依存的変化または細胞集団の状態の変化に関して、前記細胞調製物内のグリカンの質量分析を用いたグリコシル化分析により、評価/検出される、請求項1〜33のいずれかに記載の方法。
  35. 前記細胞状態が、細胞培養中または細胞精製中に、低温における貯蔵もしくは操作と関連して、または細胞の凍結保存と関連して、制御される、請求項34記載の方法。
  36. 細胞状態の時間依存的変化が、細胞の栄養状態、細胞培養の密集度(confluency)、細胞の密度、細胞の遺伝的安定性の変化、細胞構造の完全性もしくは細胞齢、または細胞に影響する化学的、物理的、もしくは生化学的要素に依存する、請求項34記載の方法。
  37. 哺乳動物細胞の集団内の幹細胞を同定、分析、選択または単離するための方法であって、結合剤または結合物質の使用を含み、前記結合剤/結合物質は請求項1〜18のいずれかのグリカン構造またはグリカン構造群に結合し、前記構造は
    (i)幹細胞上/内における発現、およびフィーダー細胞または分化した細胞における発現の非存在または低発現を示す;
    (ii)幹細胞における発現の非存在または低発現、およびフィーダー細胞または分化した細胞における発現または高発現または主な発現を示す;
    (iii)幹細胞の亜集団における発現を示す;または(iv)分化した幹細胞の亜集団における発現を示す;
    方法。
  38. 前記幹細胞が全能性、多能性または多分化能である、請求項37記載の方法。
  39. 前記胚幹細胞結合剤が多能性または多分化能幹細胞の同定のために用いられ、前記方法がさらに同定された多能性または多分化能幹細胞を回収のために選択することを含む、請求項38記載の方法。
  40. 前記の選択された多能性または多分化能幹細胞を哺乳動物細胞の集団から分離することをさらに含む、請求項39記載の方法。
  41. 前記の分離された多能性または多分化能幹細胞を単離することをさらに含む、請求項40記載の方法。
  42. 前記細胞集団が臍帯血、胚体液(embryonal body fluids)、胚組織試料、胚組織培養物、細胞株および非造血成体起源の細胞培養物より選択される、請求項40記載の方法。
  43. 前記幹細胞が成体幹細胞、胚幹細胞または胎児起源の幹細胞、好ましくは母親細胞集団内のヒト胎児起源のものである、請求項40記載の方法。
  44. 前記幹細胞が脱分化した体細胞である、請求項40記載の方法。
  45. 前記抗体がポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、および抗体フラグメントからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
  46. 前記結合剤が管理された結合剤である、請求項1のいずれかに記載の方法。
  47. 前記結合剤が、請求項1〜18のいずれかに記載のグリカン構造の少なくとも1つのエピトープに特異的な、抗体、レクチン、またはグリコシダーゼの、少なくともグリカン構造結合部位を含み、前記グリカン構造が幹細胞および/または分化した細胞に付着する、請求項1のいずれかに記載の方法。
  48. 哺乳動物の体液または組織からの胚幹細胞の同定、選択または分析のための方法であって、請求項1〜18のいずれかに記載のグリカン構造の少なくとも1つのエピトープに特異的な抗体、レクチン、またはグリコシダーゼを得ること、および、前記抗体、レクチンまたはグリコシダーゼを幹細胞と接触させてこのような細胞を同定、選択、単離および/または分析することを含む方法。
  49. 請求項48記載の方法により単離される哺乳動物幹細胞。
  50. 請求項1〜18のいずれかのいずれかのグリカン構造に対する選択的幹細胞結合剤を同定するための方法であって:
    幹細胞内/上の特異的発現ならびにフィーダー細胞および/または分化した体細胞内/上の発現の非存在を示すグリカン構造を選択し;そして幹細胞内/上のグリカン構造への前記結合剤の結合を確認すること
    を含む方法。
  51. 請求項1〜18のいずれかに記載のグリカン構造を検出するための結合剤を含む少なくとも1つの試薬;および前記試薬を用いて幹細胞の濃縮を行うための説明書を含み、任意に幹細胞の濃縮を行うための手段を含む、試料内の幹細胞の濃縮および検出のためのキット。
  52. 前記試薬が検出可能なトレーサーで標識される、請求項51記載のキット。
  53. 幹細胞、および幹細胞上の請求項1〜18のいずれかに記載のグリカン構造と結合する結合剤を有する、請求項1〜18のいずれかに記載のグリカン構造を含んだ組成物。
  54. 幹細胞調製物の状態を評価する方法であって、前記調製物中のグリカン構造またはグリカン構造の群の存在を検出する工程を含み、前記グリカン構造またはグリカン構造の群が式T11:
    [M]Galβ1‐x[Nα]Hex(NAc)
    [式中、m、nおよびpは独立に0または1の整数であり
    HexはGalまたはGlcであり、Xは結合位置であり;
    MおよびNは単糖残基であって
    独立に無(前記位置の遊離水酸基)
    ならびに/または
    Galの3位もしくは/およびHexNAcの6位に結合したシアル酸であるSAα
    Galの3もしくは4位に結合したGalα、または
    Galの4位に結合するGalNAcβ、ならびに/または
    Galの2位;および/もしくは、Galが他の位置(4または3)に結合し、HexNAcがGlcNAcである場合、HexNAcの3もしくは4位;または、Galが他の位置(3)に結合する場合、Glcの3位;に結合したFuc(L‐フコース)残基であり、
    ただし、mおよびnの合計は2であり
    好ましくはmおよびnは独立に0または1であり、ならびに
    MがGalαである場合、Galβ1に結合するシアル酸は存在せず、ならびに
    nは0であり、xは好ましくは4であり。
    MがGalNAcβである場合、Galβ1にα6結合するシアル酸は存在せず、nは0であり、xは4である]
    によるものである方法。
  55. 請求項54記載の方法であって、前記構造が式T12:
    [M][SAα3]Galβ1‐4Glc(NAc)
    [式中、nおよびpは独立に0または1の整数であり、
    MはGalの3もしくは4位に結合したGalα、またはGalの4位に結合したGalNAcβであり、および/またはSAαはGalの3位に結合したシアル酸分岐であり
    MがGalαである場合、Galβ1に結合するシアル酸は存在しない(nは0である)]
    によるものである方法。
  56. 前記構造がグロボトリオース(Gb3)非還元末端の末端構造Galα4Galを含む、請求項54または55に記載の方法。
  57. 新規標的/マーカー構造を含む幹細胞からの細胞成分の単離のための、上記請求項のうちいずれかに記載の結合剤分子の使用。
  58. 前記の単離された細胞成分が遊離グリカン、またはタンパク質もしくは脂質もしくはその断片に結合したグリカンである、請求項57記載の使用。
  59. 57〜58に記載の結合剤分子を用いる次の工程を含む、細胞成分を単離するための方法であって、
    1)幹細胞試料を提供すること。
    2)本発明の結合剤分子を対応する標的構造に接触させること。
    3)前記結合剤および標的構造の複合体を少なくとも細胞材料の一部から単離すること。
    である工程を含む方法。
  60. 請求項59記載の方法により産生される標的構造組成物であって、幹細胞において、または幹細胞に特徴的な割合で特異的に発現する、前記結合剤構造に対応するグリカン構造およびペプチドまたはタンパク質エピトープを含む糖タンパク質または糖ペプチドを含み、前記組成物が請求項記載の方法で産生される標的構造組成物。

  61. NeuAcNeuGcHexHexNAcdHexHexAPenAcModX (I)
    [式中、m、n、o、p、q、r、s、t、およびxは≧0および約100未満の値の独立の整数であり、ただし各グリカンマス成分(glycan mass components)に対して主鎖単糖変数o、p、またはrのうち少なくとも2つは≧1であり、そして
    式中、Hexはヘキソースを表し、Penはペントースを表し、ModXは修飾を表す]
    の単糖組成を含む、複数のオリゴ糖の本質的に純粋なオリゴ糖グライコーム組成の分析のための方法であって、前記方法は
    a)単離されたヒト幹細胞試料を提供すること;
    b)前記幹細胞試料から全グリカンまたは全グリカン群を遊離させること、または前記幹細胞試料から遊離グリカンを抽出すること;
    c)前記試料からグライコームを単離すること
    d)質量分析プロファイリングにより組成を分析すること
    である工程を含む方法。
  62. 請求項61または1に記載の方法であって、前記方法が質量分析プロファイルの定量的な比較を伴い、前記方法が抗体、酵素および またはレクチン等の結合分子による分析のためのマーカーの選択に用いられる方法。
  63. 細胞表面上の本質的にグライコーム組成の分析のための方法であって、
    a)単離されたヒト幹細胞試料を提供すること;
    b)前記細胞試料を、前記グライコーム組成内のグリカン構造またはグリカン構造群を認識する少なくとも1種の結合分子と接触させること;
    c)結合した結合分子の量を分析すること
    である工程を含む方法。
  64. 請求項62または63に記載の方法であって、前記方法が群:
    a)好ましくは混入細胞の表面上にある、マンノース型構造、特にレクチンPSAのようなアルファ‐Man構造
    b)好ましくは造血型幹細胞の識別のための、MAA‐レクチンによるものと類似のα3‐シアル化および/またはフコシル化構造
    c)Gal/GalNac結合特異性、好ましくはGal1‐3/GalNAc1‐3結合特異性、より好ましくはPNAに類似のGalβ1‐3/GalNAcβ1‐3結合特異性
    からの1つまたはいくつかの構造に対する結合特異性を有する好ましい結合分子を必要とする方法。
  65. 前記検出が、モノクローナル抗体、グリコシダーゼ、グリコシル転移酵素、植物レクチン、動物レクチンまたはそれらのペプチド模倣物からなる群より選択される組み替えタンパク質である結合剤により行われる、請求項62または63に記載の方法。
  66. 前記組み替えタンパク質が、少なくとも部分的に2つの単糖構造および前記単糖残基間の結合構造を認識する高特異性結合剤である、請求項62または63に記載の方法。
  67. 前記結合剤が、異なるヒト幹細胞型間の選別または選択のために用いられる、請求項62または63に記載の方法。
  68. 前記結合剤が、胚性幹細胞およびフィーダー細胞集団の選別または選択のために用いられる、請求項62または63に記載の方法。
  69. 請求項61または62に記載の方法であって、前記方法が:
    a)前記分析のためのグリカンを含んだ幹細胞試料を調製すること;
    b)前記幹細胞試料から全グリカンまたは全グリカン群を遊離すること、または前記幹細胞試料から遊離グリカンを抽出すること;
    c)任意にグリカンを修飾すること;
    d)前記試料の生体材料からグリカン画分/画分群を精製すること;
    e)任意にグリカンを修飾すること;
    f)遊離されたグリカンの組成を質量分析により分析すること;
    g)任意に、遊離されたグリカンに関するデータを定量的に示し、前記定量的データセットを他の幹細胞試料からの他のデータセットと比較すること;
    h)前記の遊離したグリカンに関するデータを定量的にまたは定性的に他の幹細胞試料から生成されたデータと比較すること;
    である工程を含む方法。
  70. 前記二糖エピトープが
    式CGN:
    [Manα3]n1(Manα6)n2Manβ4GlcNAcβ4(Fucα6)n3GlcNAcxR
    [式中、n1、n2およびn3は0または1の整数であり、独立に残基の存在または非存在を表し、そして
    式中、非還元末端の末端Manα3/Manα6‐残基は、幹細胞の状態の分析および/または幹細胞の操作のための、複合型、特に二分岐構造に、またはマンノース型(高Manおよび/または低Man)に、またはハイブリッド型構造に伸長してよく、式中、xRはβAsnもしくはβAsn‐ペプチドもしくはβAsn‐タンパク質等のタンパク質もしくはペプチドに結合するN‐グリカンの還元末端構造、またはN‐グリカンの遊離還元末端、またはヒト胚幹細胞の分析のために生成された前記還元の化学的誘導体を表す]
    のN‐結合グリカンのコア構造におけるManβ4GlcNAc構造である、N‐グリカンコアマーカー構造。
  71. 請求項70記載のマーカー構造を含むN‐グリカンコアであって、前記構造が式M2:
    [Mα2]n1[Mα3]n2{[Mα2]n3[Mα6)]n4}[Mα6]n5{[Mα2]n6[Mα2]n7[Mα3]n8}Mβ4GNβ4[{Fucα6}]GNyR
    [式中、n1、n2、n3、n4、n5、n6、n7、n8、およびmは独立に0または1のいずれかであり;ただしn2が0である場合、n1も0であり;n4が0である場合、n3も0であり;n5が0である場合、n1、n2、n3およびn4も0であり;n7が0である場合、n6も0であり;n8が0である場合、n6およびn7も0であり;
    yはアノマー結合構造αおよび/もしくはβまたは誘導体化アノマー炭素からの結合であり、そして
    は還元末端水酸基、化学的還元末端誘導体、または、タンパク質由来のアスパラギンN‐グリコシドアミノ酸および/もしくはペプチドを含むアスパラギンN‐グリコシド等の天然アスパラギンN‐グリコシド誘導体であり;
    []はn1、n2、n3、n4、n5、n6、n7、n8、およびmの値によって存在するかまたは存在しないかのいずれかである決定基を表し;そして
    {}は前記構造中の分岐を表し;
    そして前記構造は任意に高マンノース構造であり、これはさらにグルコース残基またはn6で表されるマンノース残基に結合する残基で置換される]
    のマンノース型グリカンであるN‐グリカンコア。
  72. 請求項71記載の方法であって、少なくとも1つの構造の量が分化中の幹細胞における減少または増加によって変化し、前記構造が単糖
    組成H [式中、Hはヘキソース、好ましくはManまたはGlcであり、NはN‐アセチルヘキソサミン、好ましくはGlcNAcであり、Fはデオキシヘキソース、好ましくはフコースであり、nは1〜11の整数であり、mは0または1である]
    に対応する方法。
  73. それに由来する分化した細胞よりも、前記構造は造血幹細胞と関連している、請求項72記載の方法。
  74. 前記構造の量が、造血幹細胞において、その分化したバリアントにおけるよりも増加する、請求項72または73に記載の方法。
  75. 前記構造が、造血幹細胞に特異的な単糖組成を表す表に示される、請求項74に記載の方法
  76. 前記構造の量が造血幹細胞において、その分化したバリアントにおけるよりも減少する、請求項72または73に記載の方法。
  77. 表中に示されるものが造血幹細胞に特異的な単糖組成を示す、請求項76記載の方法
  78. 請求項70記載の方法であって、前記構造が式GNβ2:
    [RGNβ2]n1[Mα3]n2{[Rn3[GNβ2]n4Mα6}n5Mβ4GNXyR
    [任意に、Mα6、Mα3、またはMβ4に結合する1または2または3個の式[RGNβz]nxのさらなる分岐を有し、Rは各分岐で異なっていて良く
    式中、n1、n2、n3、n4、n5およびnxは独立に0または1のいずれかであり、
    ただしn2が0である場合、n1は0であり、n3が1および/またはn4が1である場合、n5も1であり、少なくともn1もしくはn4は1、またはn3は1であり;
    n4が0であり、かつn3が1である場合、Rはマンノース型置換基または無であり、そして
    式中、Xはグリコシド結合二糖エピトープβ4(Fucα6)GNであり、ここでnは0もしくは1、またはXは無であり、そして
    yはアノマー結合構造αおよび/もしくはβ、または誘導体化アノマー炭素からの結合であり、そして
    、RおよびRは独立に、コア構造に結合する1、2または3個の天然置換基を表し、
    は還元末端水酸基、化学的還元末端誘導体、または、タンパク質由来のアスパラギンN‐グリコシドアミノ酸および/もしくはペプチドを含むアスパラギンN‐グリコシド等の天然アスパラギンN‐グリコシド誘導体であり。
    []は直鎖配列中に存在するまたは存在しない基を表し。{}もまた存在しても存在しなくてもよい分岐を表す]
    の複合型N‐グリカンである方法。
  79. それに由来する分化した細胞よりも、前記構造は胚性幹細胞と関連している、請求項78記載の方法。
  80. 請求項79記載の方法であって、前記構造が、H6N5、およびH6N5F1等の大型の複合型N‐グリカンであるhESC‐iiの群に属する。
    または、前記構造が、H5N4F1、H5N4F2、およびH5N4F3等の二分岐サイズ複合型N‐グリカンであるhESC‐iiiの群に属する。
    または、前記構造が、H5N4F2、H5N4F3、およびH4N5F3等の複合フコシル化N‐グリカンであるhESC‐ivの群に属する。
    または、前記構造が、H4N3、およびH4N3F1等の単分岐型N‐グリカンであるhESC‐viiの群に属する。
    または、構造が、H4N5F3等の末端HexNAc N‐グリカンであるhESC‐viiiの群に属する。
    または、前記構造が、胚性幹細胞よりも、胚幹細胞に由来する分化した胚性幹細胞と関連する。
    または、前記構造が、H5N6F2、H3N4、H3N5、H4N4F2、H4N5F2、H4N4、H4N5F1、H2N4F1、H3N5F1、およびH3N4F1等の末端HexNAc N‐グリカンであるDiff‐ivの群に属する。
    または、前記構造が、H3N3、H3N3F1、およびH2N3F1等の末端HexNAc単分岐N‐グリカンであるDiff‐viの群に属する。
    または、前記構造が、H5N5F1、H5N5、およびH5N5F3等のH=N型末端HexNAc N‐グリカンであるDiff‐viiの群に属する。
    または、前記構造が、H4N3F2等の複合フコシル化単分岐型N‐グリカンであるDiff‐ixの群に属する。
    または、前記構造が、胚性幹細胞よりも、胚幹細胞に由来する分化した胚性幹細胞と関連する、ハイブリッド型N‐グリカンである。
    または、前記構造が、H6N4、およびH7N4等の伸長ハイブリッド型N‐グリカンであるDiff‐viiiの群に属する。
    または、前記構造が、H5N3F1、H5N3、H6N3F1、およびH6N3等のハイブリッド型N‐グリカンであるDiff‐vの群に属する。
    方法。
  81. Manα3/Manα6残基が複合型、特に二分岐構造に伸長し、n3が1であり、Manβ4GlcNAcエピトープがGlcNAc置換または置換群を含む、請求項70記載のN‐グリカンコアマーカー構造。
  82. ヒト血液関連、好ましくは造血、幹細胞調製物および/または混入細胞集団の状態を評価する方法であって、伸長グリカン構造、または、少なくとも2つの、前記調製物中のグリカン構造の群の存在を検出する工程を含み、ここで前記グリカン構造またはグリカンの群Tnおよびシアリル‐Tn構造は、式MUC
    (R)GalNAcα(Ser/Thr)
    [式中、nおよびmは独立に0または1であり、RはSAα6またはGalβ3であり、SAはシアル酸、好ましくはNeu5Acであり、RがGalβ3の場合、nは1である]、好ましくはTn抗原:
    (SAα6)GalNAcα(Ser/Thr)
    [式中、nおよびmは独立に0または1であり、SAはシアル酸、好ましくはNeu5Acである]、
    またはTF抗原
    Galβ3GalNAcα(Ser/Thr)
    によるものである方法。
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