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JP2010234524A - 繊維強化プラスチックの接合体及びその製造方法 - Google Patents

繊維強化プラスチックの接合体及びその製造方法 Download PDF

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JP2010234524A
JP2010234524A JP2009081721A JP2009081721A JP2010234524A JP 2010234524 A JP2010234524 A JP 2010234524A JP 2009081721 A JP2009081721 A JP 2009081721A JP 2009081721 A JP2009081721 A JP 2009081721A JP 2010234524 A JP2010234524 A JP 2010234524A
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Masanori Narutomi
正徳 成富
Naoki Ando
直樹 安藤
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Taisei Purasu Co Ltd
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Taisei Purasu Co Ltd
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Abstract

【課題】CFRP部材同士を接着剤で強固に接合する技術の提供。
【解決手段】CFRP部材21の表面を研磨紙で粗面化し、金属用脱脂液に浸漬した後、水洗し、乾燥した。粗面化した範囲に微粉タルク及びカーボンナノチューブを含む1液性エポキシ接着剤を塗布し、減圧容器に入れる。接着剤の粘度を10Pa秒以下とした状態で、減圧して数十mmHgの低圧にし、数分置いて常圧に戻す操作を3回繰り返して接着剤を染み込ませる。これらの処理を施したCFRP部材21,21同士を密着させた状態で加熱し、接着剤を硬化させて接合体20を得た。せん断破断力は60MPa以上を示し、極めて強固に接着されたCFRP接合体を得ることができた。
【選択図】図2

Description

本発明は、移動機械、電気機器、医療機器、一般機械等の製造分野において使用される繊維強化プラスチック(以下、「FRP(Fiber Reinforced Plasticsの略)」という)に関する技術である。特に、FRP同士をエポキシ系接着剤によって強固に接着した接合体と、その製造方法に関する。
炭素繊維強化プラスチック(以下、「CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plasticsの略)」という)は超軽量であり、その強度は鋼に匹敵し、現時点で最高の高強度材料である。CFRPは高価格であるため普及が遅れていたが、ゴルフクラブのシャフト、釣竿、テニスラケット等には多く使用されている。また、近年は航空機の構造材料としても使用されており、移動機械用の材料としての需要が高まりつつある。
CFRP部材の製造方法として、主として以下に示す(1)〜(3)の方法が使用されている。
(1)エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とするプリプレグを積層し、加圧容器であるオートクレーブに入れ、高温下で加圧・硬化して成形品を得るオートクレーブ法
(2)エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とするプリプレグを円筒状金型に巻き付けて、巻き付けた状態でプリプレグを硬化させた後に円筒状金型から分離して円筒状の成形品を得るシートワインディング法
(3)炭素繊維にマトリックス樹脂となるエポキシ樹脂を含浸させながら、回転しているマンドレルに所定の角度で、所定の厚さとなるまで巻き付けて、巻き付け物を硬化させた後にマンドレルと分離することで成形品を得るフィラメントワインディング法
上記のいずれの製造方法も、炭素繊維に未硬化のエポキシ樹脂を含浸させて形状化した後、硬化させることで成形品であるCFRP部材を得る方法である。そして硬化させる前に加熱しつつ一旦減圧下に置いてマトリックス樹脂中に残された空気を抜くのが通常の手順である。さらに一旦減圧した後は逆に加圧する措置を取ることが多い。この加熱によってマトリックス樹脂は軟化しているから、樹脂間の隙間に残っていた空気を抜いた後で加圧すると樹脂全体が絞られ、硬化に適した状態となる。この状態から更に昇温して樹脂を硬化させ、成形品を得る。
以上の様に、CFRP製品は炭素繊維を含んだエポキシ樹脂の硬化物である。樹脂製の部材故にその組立が難しい。即ち、金属製品の様に、金属部品同士をネジ止めやボルト・ナットで結合させるという製造プロセスを取り得ない。仮にCFRP部材にボルト穴を開けて、他部材とボルト・ナットで結合した場合、ナットを締め過ぎるとCFRP部材はボルト穴周辺の炭素繊維が千切れてボルト穴が崩れる。このことから、航空機のCFRP部材と超々ジュラルミン部材の結合組立はボルト・ナットではなく、チタン合金製リベットを使用したリベット止めによって行われている。また、特許文献1には、CFRP部材の所定位置に穿孔装置のドリルで孔をあけ、この穿孔された孔にリベットを挿入し、CFRP部材同士のリベット止めを行う技術が開示されている。
特開2008−264930号公報 WO 2008/114669 A1(アルミニウム合金) WO 2008/133096 A1(マグネシウム合金) WO 2008/126812 A1(銅合金) WO 2008/133030 A1(チタン合金) WO 2008/133296 A1(ステンレス鋼) WO 2008/146833 A1(一般鋼材)
特許文献1に示すようなリベット止めではボルトの締め過ぎのような問題は起こらないが、逆に緩みが生じやすいという問題がある。実際、チタン合金製リベットを使用して航空機を組立するに際して、最も重要なのはCFRP部材に開けるリベット打ち込み穴の穴加工である。その穴径をリベット軸の外径と一致させる必要があるからである。このように、CFRP部材のリベット止めでは緩みの発生が最大の問題となり、また、リベット止めを使用する以上、この問題を回避することはできない。特許文献1のようにCFRP部材同士のリベット止めを行う場合には、この点がさらに大きな問題となる。
CFRP部材を主要構造材として航空機のみならず自動車や自転車、移動型ロボット、その他の移動機械の構造材として広範に利用するには、上記組立工法に関する問題を解決する必要があり、リベット止め以外の接合方法を開発する必要がある。本発明はこのような観点からなされたものであり、その目的はリベット止めを使用せずにFRP部材同士を強固に接合することにある。
[コキュア法]
本発明者らは、特許文献2〜7に示すように、リベット止めを使用せずに金属合金とCFRP部材を接合する方法として、接着剤を利用した方法を提案している。特許文献2にはアルミニウム合金とCFRP部材を1液性エポキシ接着剤により接着した技術を開示している。また、特許文献3、4、5、6、及び7には、マグネシウム合金、銅合金、チタン合金、ステンレス鋼、及び一般鋼材を、各々CFRP部材と1液性エポキシ接着剤により接着した技術を開示している。
本発明者らは、上記技術により、各種金属合金とCFRP部材を接着させることができた。CFRPは超軽量で鋼並みの強度を示す先端材料である。上記技術によって部品の主構造をCFRPとし、その端部にのみ金属合金を接着接合することも可能である。即ち、全体として極めて軽量であり、且つ剛性が要求される部分は金属合金で構成することができる。このような部品は、金属合金部をネジ止め又はボルトナット等で他の部品と結合することで容易に組み立てが可能である。具体的には、超々ジュラルミン等の高強度アルミニウム合金やチタン合金をCFRPと一体化し、極めて軽量な構造部材を製造できる。
ここで、上記技術においては金属合金表面を所定の形状、構造とすることで、アンカー効果によって接着力を獲得していた。本発明者らは、この理論を「NAT(Nano Adhesion Technologyの略)」と称している。一方、CFRP部材の製造においては、エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とするプリプレグを、目的物である成形品の形状に合わせて切断し、これらを積層して固定してから加熱硬化する。それ故に、既硬化のCFRP部材同士を接着剤で接合する必要性はなかった。即ち、未硬化のプリプレグを積層して目的物の形状とした後、まとめて加熱して硬化させることでプリプレグの一体化と目的物の成形を同時に達成するため、既硬化のCFRP部材同士を接着する工程は存在しなかった。このような既硬化のCFRP部材同士を接着する技術は、一時的な措置、即ち何らかの問題により臨時的な改造や修理が生じた時に使われるに留まっていた。
また、上記特許文献2〜7に示す金属合金とCFRP部材の接着では、「NAT」に適合する表面形状及び表面構造とした金属合金に1液性エポキシ接着を塗布して表面の凹凸に染み込ませ、その塗布領域上にプリプレグを積層して固定し、加熱硬化する方法を採った。要するに接着剤とプリプレグの双方のエポキシ樹脂を同時に加熱硬化させ、プリプレグの一体化、目的物の成形、及びCFRP部材と金属合金との接着を同時に達成する接着方法であり、所謂「コキュア法」と呼ばれる方法である。
[コボンド法]
接着剤成分とプリプレグのマトリックスのいずれもが共通のエポキシ樹脂を主成分としていることから、コキュア法が最適であるとするのが通常である。即ち、得られる接合体において、接着剤とCFRP部材の接合力は問題とならず、金属合金と接着剤の接合力が問題となると考えられる。それ故、本発明者らも、コキュア法の採用を前提とした上で、いかにして金属合金と接着剤の接着力を高めるかに注力していた。即ち、金属合金とCFRP部材の接着技術は、技術的には金属合金と接着剤との強固な接合を図ったものであり、CFRP部材と接着剤の接合に関して技術開発の必要性がなかった。
前述したNATに適合する表面形状及び表面構造とした金属合金片同士を1液性エポキシ接着剤で接合して、その接合体を常温下で引っ張り破断すると、60MPa程度のせん断破断力又は引っ張り破断力を示した。この結果と、前述したように問題となるのが金属合金と接着剤の接合力であるとの推定から、コキュア法によって金属合金とCFRP部材の複合体を得た場合、この複合体についても同等の接着力を示すと考えられた。
しかしながら、コキュア法によって作成した金属合金とCFRPの複合体を常温下で引っ張り破断すると、その際のせん断破断力又は引っ張り破断力が予期した数値に達しない例が多かった。金属合金とCFRPの複合体破断面を電子顕微鏡で観察した結果、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着力が、1液性エポキシ接着剤とマトリックス樹脂(又は1液性エポキシ接着剤と炭素繊維)の接着力より低い可能性を見出した。これは、NATによって金属合金表面と1液性エポキシ接着剤との接着力が大きく向上し、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着力を超える程度にまで達していることを示す。
CFRP部材は複合材料であるから、その物性は全体と表面で異なる。超軽量で非常に高強度であるとの評価はCFRP部材全体に関するものだが、1液性エポキシ接着剤が接するCFRP部材はあくまでもその表面層の部分である。この部分に関しては、マトリックスであるエポキシ樹脂の硬化物に過ぎない。CFRP部材(即ち表面層のエポキシ樹脂硬化物)と1液性エポキシ接着剤間の接着力を向上させたとしても、炭素繊維とマトリックス樹脂間の接着力を超えてしまえば、金属合金等の被着材とCFRP部材の接着力は、炭素繊維とマトリックス樹脂間の接着力により決定されるのである。
このような観点から、本発明者らは、炭素繊維とマトリックス樹脂間の接着力向上を図らなければ被着材とCFRP部材の接着力を向上させることはできないと判断した。なお、マトリックス樹脂と炭素繊維の接着力を向上させる技術に関しては、炭素繊維メーカーも開発している。炭素繊維の表面処理技術のみならず、PAN(Polyacrylonitrile)又はPITCHの原料、即ちアクリル樹脂又は石油若しくは石炭等も、エポキシ樹脂との接着力に関係しているからである。
本発明者らは、再度、金属合金片とCFRP部材の複合体をコキュア法によって作成する試験を行った。即ち、NATに適合する表面形状及び表面構造とした金属合金表面に1液性エポキシ接着剤を塗布して凹凸に染み込ませた後、市販されている未硬化のプリプレグを接着剤塗布領域上に積層し、接着剤とプリプレグを同時に加熱し、硬化して複合体を作成した。この加熱に際しては、プリプレグメーカーの指示条件に従った。これを数日後、再度180〜190℃で複数回焼き直してから破断試験をした。その結果、せん断破断力値が明らかに向上した。この結果を得て、本発明者らは、コキュア法に代えてコボンド法によりCFRP部材と被着材の強固な接着を行うことを試みた。コボンド法とは、硬化済みのCFRP部材と被着材(金属合金又は硬化済みのFRP等)を接着剤により一体化する接着方法である。
[コボンド法による接着実験]
本発明者らは、市販のプリプレグから45mm×15mm×3mm厚の小片を切り取って、多数のプリプレグ片を作成した。これらを積層し、メーカーが指定する硬化条件(温度,時間)で硬化させてCFRP部材を得た。これを1回焼き品と称す。この1回焼き品を180〜190℃の高温で1時間程度再度加熱した。これを2回焼き品と称す。さらに2回焼き品を同条件で再度加熱した。これを3回焼き品と称す。1回焼き品同士をコボンド法により1液性エポキシ接着剤で接着したCFRP部材の接合体を複数得た。同様に2回焼き品同士、3回焼き品同士を1液性エポキシ接着剤で接着した接合体を各々複数得た。これらの常温での平均せん断破断力を比較すると、2回焼き品及び3回焼き品が高く、1回焼き品は明らかに低かった。これは、高温での再焼成によって、炭素繊維とマトリックス樹脂の接着力が向上したことを示すものである。そして、この炭素繊維とマトリックス樹脂の接着力が向上したCFRP片を使用し、コボンド法による接着を行った。
[コボンド法に適した表面処理及び接着剤]
本発明者らは試行錯誤によって、コボンド法に適したCFRPの表面処理方法及び接着剤を開発した。さらに、接着剤の開発にあたっては実用面も考慮した。即ち、実際の施工作業を考慮した場合、CFRP部材同士を接着する際に、その一方又は双方が大型部品であった場合、表面処理(粗面化等によって接着力を高めるための処理)及び硬化処理を行うのは容易ではない。数kg程度の部品であれば、粗面化後のCFRP部品を脱脂槽や水洗槽に浸漬できるし、乾燥やエポキシ接着剤の加熱硬化を熱風乾燥機やオートクレーブで行うことも出来る。しかし、大型部品であれば、洗浄や加熱用の新たな大型設備が必要となる。従って、これら表面処理や加熱硬化作業はCFRP部材が大型部品であっても、容易に行う作業とすることが好ましい。仮に大型部品であっても、接着面積自体が大きくなく、接着剤の硬化条件が100〜120℃程度であれば、バンドヒーターやホットブラスター等を使用して現場での作業が容易である。本発明では、粗面化は研磨紙により行っており、洗浄も水道水で可能なためCFRP部材の表面処理は容易である。また、接着剤の硬化温度も100〜120℃で完全硬化が認められた。
接着剤に関しては、当然接着力が高いことが必要条件であるが、上述したように硬化条件が比較的低温であり、且つ、耐熱性が高いことが好ましい。1液性の接着剤であっても、2液性の接着剤であっても、エポキシ系接着剤であればCFRP部材同士を接着することは可能である。そして、CFRPと同じくマトリックス樹脂がエポキシ樹脂である他の繊維強化プラスチックにも本発明を応用可能である。即ち、本発明に係るコボンド接着は、強化繊維がガラス繊維であって、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂であるGFRP(Glass Fiber Reinforced Plasticsの略)に応用可能であり、強化繊維がアラミド繊維であって、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂であるKFRP(Kevlar Fiber Reinforced Plasticsの略)及びAFRP(Aramid Fiber Reinforced Plasticsの略)にも応用可能である。本発明は、エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とするFRPの接着技術である。
[接着力]
本発明者らはNATに基づく表面形状及び表面構造とした金属合金片と硬化済みのCFRP片を1液性エポキシ接着剤を使用してコボンド法により接着し、複合体を得た。この場合のCFRP片には本発明に示したのと同じ表面処理を施し、使用したエポキシ接着剤も本発明に示したのと同じ物を使用した。その結果、得た金属合金とCFRP片の接着力は約60MPaであった。即ち、複合体を引っ張り破断試験で60MPa程度のせん断破断力又は引っ張り破断力を示した。これは異なる金属合金種であってもほぼ同じであり、更には破断面の観察から、破断は金属合金表面と接着剤間で生じていることも同じであることが確認された。この実験結果から、CFRP部材同士を1液性エポキシ接着剤で接着した接合体は、60MPa程度又はそれ以上のせん断破断力を示すと予測した。要するに、既硬化のCFRP部材同士の接着に関しても、接着剤及び接着方法を最適化することによって、60MPa以上の強い接着力が安定的に得られると予測し、実験を行った。
その結果、既硬化のCFRP片同士を接着して得られた接合体が、50〜65MPaのせん断破断力を安定的に示すことを確認した。更にいえば、接着剤硬化層が薄いときには60MPa以上のせん断破断力を示すが、接着剤硬化層が厚い場合、例えばCFRP片の表面凹凸が大きい場合、又は両CFRP片の被着面同士が平行面ではない場合等には50MPa台に低下する。この低下度合いを軽減するために、本発明者らは接着剤にカーボンナノチューブ(以下「CNT」という)を添加した。その結果、接着剤硬化層が比較的厚くなった場合でも、60MPa以上の高いせん断破断力を示す例が増えた。従来技術では、既硬化のCFRP片同士を接着した場合、せん断破断力が30MPa程度であり、これが上限に近いとみられていた。従って、本発明により、CFRP部材同士の接着力を劇的に向上させたことになる。また、本発明で使用する接着剤は耐熱性も具備するものである。さらに、この接着剤は低温で硬化させることが可能であるから、現場での接着作業を容易化できる。即ち、この接着剤は接着力、耐熱性、及び作業性を兼ね備えており、極めて有用であるといえる。
本発明によって、FRP部材同士をリベット法を用いずに、接着剤によって強固に接着接合することが可能である。本発明によって得られたFRP同士の接合体は、せん断破断力が60MPa以上であり、従来になく高い接着力を示した。本発明によって、エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とするCFRP部材同士、GFRP部材同士、KFRP部材同士、及びAFRP部材同士を強固に接着することができる。また、CFRP部材とGFRP部材、CFRP部材とKFRP部材、CFRP部材とAFRP部材、GFRP部材とKFRP部材、GFRP部材とAFRP部材、KFRP部材とAFRP部材を相互に強固に接着することが可能である。
上記FRP部材同士の接着に際してコボンド法を採用することで強固な接着が可能となり、強固な接着を得るのに必ずしもコキュア法に頼る必要のないことを示した。これにより、FRPの硬化とFRP部材の接着を別工程とし、別工場で行う等、製造工程を多様化することが可能となる。また、本発明において使用する1液性エポキシ系接着剤は、100〜120℃程度の比較的低い温度で完全硬化させることが可能である。それ故、前述した接着剤塗布領域周辺を加熱させる装置を簡素化することが可能である。即ち、接着作業に、必ずしもFRP全体が入るような大型の熱風乾燥機やオートクレーブの設置が必要なく、接着剤塗布領域周辺を加熱させる装置があれば接着が可能である。さらに、本発明により得られたFRP部材同士の接合体は、耐熱性が極めて高い。常温下でせん断破断力が60MPa程度の接着力を獲得している場合、100℃下で50MPa程度を示し、さらに150℃下でも40MPa程度の高いせん断破断力を示し得るので、従来になく高い耐熱性を有すると言える。
図1は、プリプレグを積層して硬化させるための焼成治具の断面図である。 図2は、FRP部材同士をエポキシ系接着剤によって接着した接合体の形状である。 図3は、熱風乾燥機を使用せずに接着剤を硬化させるための装置である。
以下、本発明を実施するための各要素について詳細に説明する。
[CFRP部材の成形]
エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とするFRPとして代表的なものはCFRPであり、以下ではCFRPに関して詳述する。但し、GFRP、並びにKFRP及びAFRPも本発明の対象となる。CFRP部材は、多数のプリプレグを積層して目的とする立体形状とし、これを治具等で固定しつつ加熱硬化して作成するのが一般的である。治具等で固定したプリプレグ積層物をオートクレーブに入れて封じ、真空にしてから昇温して90℃前後とし、その後はオートクレーブ内に空気を入れて数気圧の圧縮状態にする。そして150℃前後まで昇温してプリプレグを硬化するのが最も標準的なCFRP部材の製造方法(オートクレーブ法)である。
このようなCFRP部材の製造において、従来のプリプレグはマトリックス樹脂として現接着剤と似た粘着液状の熱硬化型エポキシ樹脂を使用していた。しかし現在では硬化剤に芳香族ジアミン類を使用して硬化物の耐熱性を上げていることもあり、そのようなエポキシ樹脂組成物は常温で固体となるから、炭素繊維を含みこんだプリプレグも粘着性のないシートになっている。厚さも0.2mm品が多く、標準化され使用し易くなっている。コンピュータ制御された自動切断機でプリプレグを1枚づつ形状を変化させつつ切断し、切断物を積層して目的とする立体形状(設計値)とする。積層物を治具に収めて立体形状を維持できるようにした状態で、上下からボルトやバネで締め付けてプリプレグシート間に圧力がかかるようにし、積層物を含む全体を密閉バッグやオートクレーブに入れる。その後は前述したオートクレーブ法によって成形品を得る。
[加熱硬化回数]
本発明者らは、後述する実験例1で作成したCFRP片の1回焼き品、2回焼き品、及び3回焼き品について、それぞれ1液性エポキシ接着剤を使用して、NATに適合する表面形状及び表面構造としたアルミニウム合金「A7075」と接着してCFRP/A7075複合体を得た。各複合体についてせん断破断力を測定したところ、1回焼き品/A7075複合体が平均58.0MPa、2回焼き品/A7075複合体が平均64.4MPa、3回焼き品/A7075複合体が平均68.5MPaであった。この例と前述したCFRP片同士の接着例(2回焼き品及び3回焼き品の接着力が高いという結果)から、硬化済みのFRP部材を再度加熱硬化することが好ましいとした。
[CFRPの表面処理]
CFRPの表面はマトリックス樹脂の硬化物が覆っているのでCFRP自体はその表面にのみ着目した場合にはエポキシ樹脂硬化物である。本発明で実施する表面処理は、このエポキシ樹脂硬化物の表面を粗面化し、粗面化時の汚れを除いてから十分に水洗し、乾燥する処理とした。マトリックス樹脂であるエポキシ樹脂組成物には通常は理論上よりも過剰の芳香族ジアミン類が含まれている。それ故、エポキシ樹脂硬化物を粗面化することで、未反応のアミン類を露出させ、これを接着力向上に利用せんとしたものである。従って、アミン類が阻害されないように、洗浄に酸性の溶液を用いることは避けるべきである。
CFRP部材の粗面化に際しては、JISR6252に規定される80番〜240番の研磨紙を使用することが好ましい。240番より目の粗いものがより好ましく、80番から120番の研磨紙を使用して、概ね3回〜20回の往復研磨(即ち6回〜40回の研磨)をすることが最適である。強化繊維の一部が剥き出しになる程度であってもよい。本発明者らによる実験では、480番〜2000番の目の細かい研磨紙で粗面化したCFRP部材は、接着力がやや低かった。
粗面化後のCFRP部材を、金属合金用脱脂剤、一般洗剤、又は家庭用洗剤などの弱塩基性又は中性の界面活性剤水溶液に浸漬し、この浸漬槽に超音波を加えて粗面化時に生じた汚れを分離する。本発明者らは、超音波振動端を設置した大型水槽に市販のアルミニウム合金用脱脂剤を7.5質量%溶かした水溶液を入れて、液温度を60℃とし、当該超音波振動端により超音波を加えた状態としたものを脱脂槽とした。粗面化したCFRP部材をこの脱脂槽に5分間浸漬し、次いで水道水を溢れさせている水洗槽3基に順次浸漬して水洗した。水洗後のCFRP部材は熱風乾燥すればよい。本発明者らは、100℃前後にした熱風乾燥機に15分程度入れて乾燥した。
一方で、脱脂槽や水洗槽が用意できないような大型のCFRP部材を想定し、他の洗浄方法を開発した。水圧が数気圧の強い水流を作り、CFRP部材の粗面化した範囲に直接水流を当てて汚れを取り除き、水洗も兼ねるという洗浄方法である。その結果、CFRP部材においては、十分な量の水道水を数気圧の水流で噴き掛ければ、上記脱脂槽への浸漬と同等の洗浄が可能であることが分かった。又、この場合の乾燥はホットブラスターで行うことができた。
[エポキシ接着剤]
エポキシ系接着剤については多数の技術が開示されており、その概要を述べる。エポキシ樹脂と硬化剤を混合すれば熱硬化性樹脂組成物となる。これが接着剤の基本組成となる。エポキシ樹脂としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、多官能ポリフェノール型エポキシ樹脂、脂環型エポキシ樹脂等が市販されている。また、エポキシ基が多官能の化合物(例えば複数の水酸基やアミノ基を有する多官能化合物やオリゴマー等)と結合した多官能エポキシ樹脂も市販されている。通常、これらを適当に混ぜ合わせて使用する。通常の市販接着剤では、全エポキシ樹脂中の大部分を占めるのは液状で粘度の低いビスフェノールA型エポキシ樹脂単量体型である。これに迅性を与えるべく分子量の大きいビスフェノール型エポキシ樹脂の多量体型を加え、耐熱性を与えるべくフェノール型エポキシ樹脂を加え、強度を獲得すべくエポキシ基が多官能型の化合物を加えて混合するのが一般的である。
本発明でも、この基本的な組成に基づいてエポキシ樹脂を作成した。後述する実験例で使用した「JER828」は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂単量体型であり、ここへ同多量体型「JER1003」、フェノール樹脂型エポキシ樹脂「JER154」、及び、エポキシ基多官能型の樹脂「JER630」を加えて、接着剤用のエポキシ樹脂を作成した。
硬化剤について述べる。1液性エポキシ接着剤と2液性エポキシ接着剤の違いは使用する硬化剤の違いによる。1液性エポキシ接着剤の場合、硬化剤として最もよく使用されるのが脂肪族アミン類以外のアミン類や広義のアミン系化合物であり、具体的にはジシアンジアミド、イミダゾール、芳香族ジアミン類である。その他には酸無水物類、フェノール樹脂もある。硬化剤を添加し、混合混練して1液性接着剤としても、常温(夏場以外)で1ヶ月間は保管できる。また、冷蔵状態であれば1年程度は保管できる。
一方、硬化剤として脂肪族ポリアミン型化合物を使用するとゲル化硬化反応が常温付近で始まり得る。それ故、この硬化剤とエポキシ樹脂を混合した状態では市販することができないので、両者を分離した状態で2液性エポキシ接着剤として提供されている。例えば、硬化剤として高速硬化型のポリアミンを使用すれば、混合後の数十分から数時間、長くとも数日間、常温で放置することにより硬化する。そのため、接着剤を硬化させるための設備が不要であり、現場作業に好適な2液性エポキシ接着剤となる。2液性エポキシ接着剤の硬化剤としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、及びジエチルアミノプロピルアミン等の鎖状脂肪族系ポリアミン、メンセンジアミン等の脂環族ポリアミン、m−キシリレンジアミン等の芳香族ポリアミン、及び、変性脂肪族系ポリアミン類等があげられる。
本発明で使用する接着剤は、作業現場で簡易な設備での接着を可能とするものであることが好ましい。そうすると、2液性エポキシ接着剤が適しているとも考えられるが、後述する表4(実験例25)に示すように、常温でのせん断破断力が1液性エポキシ接着剤と比較して劣り、また、耐熱性も低いので、高信頼性が要求される用途には、やはり1液性エポキシ接着剤の使用が好ましい。即ち1液性エポキシ接着剤であって、硬化温度が低く、かつ耐熱性が高いものが最適である。
なお、本発明者らは、硬化剤の添加量を異ならせて接着実験を行い、エポキシ樹脂に対して硬化剤添加量が多い場合には、強い接着力が得られないという傾向があることを発見した。「硬化剤には3次元的な架橋の役目もある」と仮定すると、少ない添加量で完全硬化する接着剤の方が強い接着力を発揮すると考えられる。2液性エポキシ接着剤では、エポキシ樹脂100質量部に対して硬化剤である脂肪族ポリアミン等を15〜30質量部添加するのが理論値であり、実際もこの程度の添加量となっている。1液性エポキシ接着剤では、エポキシ樹脂100質量部に対して硬化剤の添加量が20質量部程度という理論値が示されるものが多い。しかし、市販の1液性エポキシ接着剤に使用されているジシアンジアミドは、5質量部程度の添加で接着剤を完全硬化させる。
1液性エポキシ接着剤の硬化剤として使用するジシアンジアミドについて以下記述する。ジシアンジアミドをエポキシ樹脂に加えてよく混合しても、常温ではジシアンジアミドはエポキシ樹脂に殆ど溶解しない。それ故、100℃程度に昇温してジシアンジアミドを一旦完全溶解させ、これを放冷して1液性エポキシ接着剤とする方法がある。この方法では硬化剤を完全分散させることになるが、実験結果から、接着力は高くないことを確認した。即ち、ジシアンジアミドは数十μm径程度の粉体にしてエポキシ樹脂に添加混合し、そのまま1液性エポキシ接着剤として使った方が良いという結論に達した。
本発明者らは、エポキシ樹脂を50〜60℃として、その粘度を下げた状態でジシアンジアミド粉体を攪拌混合した。その結果、非常に高性能の1液性エポキシ接着剤となった。ここで、ジシアンジアミド粉体の理論添加量は、エポキシ樹脂100質量部に対して10質量部以上であるが、実験では、5質量部程度のジシアンジアミド粉体の添加で充分に高い接着力が得られた。即ち、使用する硬化剤を少なくすることができるという利点から、本発明者らは硬化剤としてジシアンジアミド粉体を使用する場合について、さらなる研究を行った。
単純にジシアンジアミド粉体をエポキシ樹脂100質量部に対して5質量部加え、よく混練するだけでは完全硬化させるための硬化条件が170℃以上となる。この硬化温度では、接着剤を硬化させるための設備を簡素化することが困難となる。従って、硬化助剤を使用することによって、より低温での硬化を図ることとした。硬化助剤として含窒素化合物を用意し、これをエポキシ樹脂100質量部に対して数質量部添加して、接着剤が完全硬化する温度を測定した。複数種の含窒素化合物についてこの実験を行った結果、劇的に完全硬化温度を下げたのは除草剤に使われる3−(3,4−ジクロルフェニル)−1,1−ジメチルウレアであった。その他、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾールも硬化温度を大きく下げた。
これら3者のうち、エポキシ樹脂の硬化剤又は硬化助剤として使用された実績があるのは、3−(3,4−ジクロルフェニル)−1,1−ジメチルウレアと、2−メチルイミダゾールである。2−フェニルイミダゾールはエポキシ樹脂の関連物質として使用された実績がない。実際、2−フェニルイミダゾールは市販されているが、市販品に粉体はなく実験材料用の顆粒形状品であった。本発明者らは粉砕機によって2−フェニルイミダゾールの顆粒形状品を粉砕して粉体とし、これを使用した。その結果、2−フェニルイミダゾール粉体は耐熱性向上に大きく寄与することを確認した。
また、3−(3,4−ジクロルフェニル)−1,1−ジメチルウレアを硬化助剤に使用すると接着力を非常に高くした。上記の硬化助剤3種は全て2個の窒素原子を保有し、一方の窒素原子は水素原子1個、もう一方の窒素原子は水素原子ゼロ個と結びついた化合物である点で共通している。この共通点から、他に好ましい硬化助剤が存在する可能性がある。
以上から、本発明での使用に好ましいのは1液性エポキシ接着剤である。1液性エポキシ接着剤は通常、前述のエポキシ樹脂と硬化剤の他に、少なくとも無機充填材を含む。無機充填材が担う役割を以下に示す。接着剤硬化物に外力が掛かって硬化物内部に微細なヒビが発生した場合、この微細ヒビの連鎖拡大を防止して早期の壊れを止める役割である。これが結果的に接着力向上に寄与することになる。本発明でも無機充填材の配合は必要条件であり、粒径分布の中心が5〜20μmの無機充填材を使用する。具体的には、タルク、クレー(粘土、カオリン)、炭酸カルシウム、シリカ、ガラス等の粉体の分級物である。
[カーボンナノチューブ]
本発明ではエポキシ接着剤への充填材として、カーボンナノチューブ(以下「CNT」という)を添加した場合に、明らかに接着力が向上した(表2)。また、安定して高いせん断破断力を示した。CNTを含まない場合、その他の充填材や硬化剤の組成を最適化した接着剤であっても、CNTを含む接着剤と同等の接着力は得られず、接着剤層が厚めの場合には特にCNT添加効果が明確となる。
CNTには種々の製造方法が開発されている。直径が約1nmの単層円筒状物(single-walled carbon nanotubes)、直径が数nmの2層物(double-walled carbon nanotubes)、3層物(triple-walled carbon nanotubes)等があるが、最近では非常に層数の多い直径が90nm近いCNT(multi-walled carbon nanotubes、略して「MCNT」とも言う。)も製造できるようになった。このMCNTは、接着剤へ利用も検討されてはいるが実用化された例は未だ聞かない。その一方でCNTの電導性を利用する実用化が進みつつある。即ち、構造強化材としての使われ方よりも導電性物質としての使われ方が先行している。しかし、本発明では構造強化材としての物性に注目する。
[カーボンナノチューブの分散法]
上述したCNTの添加による接着力の向上は、CNTが接着剤内に充分に分散されることで達成される。しかし、実際にはその分散が困難であるという事情がある。CNTは発明直後から、各種接着剤や樹脂に混ぜ込めば接着強度や樹脂強度が増すと予期されて研究が始まった。しかしながら、未だ顕著な効果が認められていない。CNTを樹脂中に分散できた結果、導電性が大きく向上する等の効果が得られ、特定用途向けに事業化が実現している一方で、本来期待されるべき接着強度や樹脂強度が明確に向上したとの報告は見当たらない。その理由として、CNTの分散が困難であるということがある。
CNTの分散法については既に多くの技術が紹介されている。これら分散方法のうち多くは、CNT、特殊な溶剤、及び特殊な分散安定剤をボールミル等に投入してCNTを溶剤中に破壊分散させる手段を採用している。これは、製造直後のCNTは細かく絡み合っていることが発見され、分散させるには、これをある程度破壊しなければならないことが確認されたことによる。
但し、上記CNTの分散に適した溶剤や分散安定剤を使用し、接着剤組成物とCNTを混合した後において、その溶剤及び分散安定剤を完全には除去することができない。即ち、接着剤組成物に新たに加わったその溶剤成分が、接着剤性能を低下させる可能性がある。実際に、本発明者らも上記分散方法に使用されている溶剤数種と分散安定剤数種を入手し、各々を1液性エポキシ樹脂系接着剤に混入させて接着力を測定する実験を行った。その結果、全て接着力は低下した。
上記の理由から、本発明者らは新たなCNT分散方法の開発を試みた。その結果、本発明では、サンドグラインドミル型湿式粉砕機を使用することによって、溶剤や分散剤を使用することなく、CNTをエポキシ樹脂中に分散させることに成功した。なお、再度述べるが、CNTの製造方法として多くの方法があるが、何れの方法であっても個々のCNT分子が多数絡まった物が製造される。それ故、高性能の湿式粉砕機を使って、エポキシ樹脂中でCNT分子が絡まった物を破壊して、CNT分子がばらけた状態とし、これを分散させる。
但し、分散可能なCNTには制限がある。本発明においては、直径20nm以上の多層型CNTであれば、エポキシ樹脂中に分散させることができ、接着力向上に寄与した。本発明者らは、最新型のサンドグラインドミル型湿式粉砕機を使用したが、直径20nm未満の細いCNTをエポキシ樹脂中に分散させることは困難であった。直径が数nm程度の単層型、2層型、又は3層型の細いCNTである場合、繊維が柔軟すぎて高性能湿式粉砕機を使用しても破壊、分散させることができなかった。一方、直径が20nm以上のCNTは、サンドグラインドミルにより分散可能であり、特に直径40〜60nmのCNTを添加した場合に最も高い接着力を示した。このようなCNTは国内で市販されており、添加量はエポキシ樹脂100質量部に対し0.05〜0.1質量部が好ましい。
[その他の充填材]
その他の充填材として、熱可塑性樹脂粉体及び超微細無機充填材の添加を試みた。その結果、接着力及び耐熱性に影響を与えることはなく、硬化条件にも影響を与えなかった。少なくとも添加によって接着力が低下したり、耐熱性が低下するということはないといえる。本発明者らが実験で主に使用した熱可塑性樹脂粉体は粒径分布の中心が十数μmのポリエーテルスルホン樹脂(以下「PES」という)の粉体又は粒径分布の中心が20μmの水酸基付きPESの粉体であり、超微細無機充填材としては直径20nm程度のフューズドシリカ超微粒子である。
[接着剤の作成方法]
次に、接着剤作成方法について具体的に説明する。先ず、選択した各種エポキシ樹脂を大型ビーカーに取って、これらを熱風乾燥機に入れ、100〜150℃に加熱し、ガラス棒で攪拌して溶解させつつ均一化する。その後、放冷しても固化せずに高粘度の液体に留まることを確認してから、サンドグラインドミルに充填する。サンドグラインドミルでの通液を進めて湿式粉砕処理を行いつつ、CNTを添加し、少なくとも30分は粉砕を続ける。次いで、無機充填材を添加し、そのまま湿式粉砕を続ける。さらに超微細無機充填材及び熱可塑性樹脂粉体の充填を行う場合も、この湿式粉砕機の運転を利用して混合分散させる。分散後、湿式粉砕機の運転を止め、充填材を含んだエポキシ樹脂液を取り出す。そしてこのエポキシ樹脂液に硬化剤及び硬化助剤を加えて混練することで1液性エポキシ接着剤とする。
2液性エポキシ接着剤の作製も上記と同じ方法で行った。但し、2液性エポキシ接着剤の場合は、硬化剤及び硬化助剤の添加を、FRPに接着剤を塗布する当日、しかも塗布前1時間以内に行った。一方、1液性エポキシ接着剤を作成する場合には、上記サンドグラインドミルから取り出したエポキシ樹脂液に、硬化剤及び硬化助剤を加えてよく混合した後、更にこの接着剤組成物を40℃程度にした温風乾燥機に入れて暖め、それから更に攪拌混合した。そして混合物は20℃前後の室温下に1日放置して熟成させた。さらにその後、5℃とした冷蔵庫に保管し、使用30分前に40℃とした温風乾燥機に入れて使用可能状態とし、使用した。
[接着剤の塗布及び染み込まし処理]
粗面化したCFRP部材の必要箇所に上記1液性エポキシ接着剤又は2液性エポキシ系接着剤を塗布する。筆塗りでもヘラ塗りでもよい。次いで、接着剤を塗布したCFRP部材を減圧容器に入れる。CFRP部材が大きく、減圧容器や減圧可能なバッグが用意できない場合、そのCFRP部材の接着剤塗布部を外気から封じ得る治具でカバーする。但し、使用するエポキシ接着剤は室温で軟膏状であり、粗面化した表面にエポキシ接着剤を染み込ませるためには、その粘度を少なくとも15Pa秒以下、好ましくは10Pa秒以下の液状物とする必要がある。そのため、減圧容器を使用する場合は前もってこの減圧容器を50〜70℃に暖めておくことが好ましく、減圧容器を使用しない場合は接着剤を塗布する前に塗布する部分をホットブラスター等で50〜70℃に暖めておくのが好ましい。そして減圧可能な状態としたら、真空ポンプを使用して数十mmHgの低圧にし、数分置いて常圧に戻す操作をする。そしてこの減圧/常圧戻し操作を数回繰り返すのが好ましい。この操作を染み込まし処理という。減圧によって接着剤とCFRP部材の粗面上に挟まれた空気を吸い取り、その後に常圧に戻すことで、接着剤が粗面化されたCFRP部材の表面に染み込む。
[CFRP部材の固定及び接着剤の硬化]
接着剤が塗布され、染み込まし処理を経たCFRP部材を2つ用意し、それぞれの接着剤塗布領域同士を密着させ、対とした状態でクリップ等で固定する。クリップに限らず、他の治具を使用しても良く、接着面に圧力がかかる状態として固定する。押さえ付けの力は重力やバネ、又はクランプ等を利用することになる。このようにした対を、熱風乾燥機に入れて接着剤を硬化させる。CFRP部材が大きく、対応する大型熱風乾燥機がない場合、CFRP部材の必要部位だけをバンドヒーター等を巻き付けて100〜120℃程度に加熱し、接着剤を硬化する方法をとることができる。また、必要部位を断熱材でカバーしてそこへホットブラスター等で熱風を送って加熱することもできる。120℃程度又はそれ以下で完全硬化する接着剤であれば、大型の設備を要せず、前述した硬化方法によって現場で比較的容易に硬化作業を行うことができる。
熱風乾燥機を使用することができ、かつ硬化温度を高くすることが可能な環境下では、対としたCFRP部材を90℃で15〜30分間加熱し、次いで135℃に昇温して60分間加熱し、次いで165℃に昇温して30分加熱すれば接着剤が完全硬化に至る。上記条件で加熱すれば、一般的な接着剤の組成であれば、殆どのもので完全硬化に至る。一方、上記したように熱風乾燥機が使用できない環境下では、CFRP部材を直接加熱する。この場合には100〜120℃で1〜2時間加熱することで完全硬化に至る接着剤を使用する。具体的には低温硬化型の1液性エポキシ接着剤である。また、1液性より接着力は劣るものの、2液性エポキシ接着剤を使用することもできる。ただし、このような熱風乾燥機を使用しない加熱方法は温度安定性が良くない。従って、以下の手法を採用することが好ましい。
図3を用いて説明する。図3は、大型のCFRP板材30と小型のCFRP部品31を、熱風乾燥機を使用せずに接着させるための装置である。CFRP板材30の上面(粗面化済)とCFRP部品31の底面(粗面化済)に接着剤を塗布して、染み込まし処理を行った後、両者を密着させる。接着剤層を32として示す。CFRP板材30には、上面と底面を貫通する孔33が複数設けられている。CFRP部品31にも、縁部を上下に貫通する孔34が複数設けられている。これら孔33及び孔34に針金35を通すことによって、CFRP板材30とCFRP部品31を固定する。針金35は直径1mm程度のステンレス製の針金である。CFRP部品31の縁部上面側において針金35を湾曲させて固定する。一方、CFRP板材30の底面にはバネ材36の上端が固定されており、バネ材36の下端は板材37の上面に固定されている。この板材37にも針金35を通すための孔38が複数設けられており、孔34及び孔33を通した針金35は、さらに孔38を通って板材37の底面側で湾曲されることにより固定されている。このときバネ材36は通常よりも縮んだ状態にある。これによって、バネ材36のバネ圧でCFRP板材30にCFRP部品31が押し付けられることになる。
また、ゴム製のカバー40によって接着剤層32を囲い込む。このカバー40に設けた窓から熱電対41を差し込む。カバー40には、大きめの空気孔42が設けられており、その反対側には空気出口43も設けられている。このカバー40は、その縁部を固定用の錘(図示外)で固定してある。空気孔42に近づけたホットブラスター44から200℃近い熱風を送風する。これにより接着剤層32を硬化させる。ここで、CFRP板材30の底面側からの放熱によって、安定的に加熱出来ない場合には、裏面側に断熱カバー50を設置すると良い。断熱カバー50の頂部には真空コック51が設置されており、この真空コック51は真空ライン52につながれている。これらによって断熱カバー50で覆った部分を減圧することができ、この減圧によって断熱カバー50はCFRP板材30の裏面側に吸い付き、かつ放熱が抑制されることになる。このように、熱電対41及びホットブラスター44の組み合わせによって温度制御を行い、100〜120℃で1〜2時間程度の加熱を可能とする。
[接着力の測定]
CFRP部材同士の接合体の接着力測定方法を説明する。図2は後述する実験例において作成したCFRP部材21同士の接着接合体20であり、せん断破断力を測定するための試験片である。引っ張り試験機を使用して、この接合体20の両端に力を加えて引っ張り破断し、測定された破断力を接着面積(斜線部分)で除してせん断破断力(MPa)を測定した。
以下、本発明の実施の形態を実験例によって説明する。使用した装置を以下に示す。
[走査型プローブ顕微鏡観察]
「SPM−9600(株式会社島津製作所製)」を使用した。これはダイナミックフォースモード型の走査型プローブ顕微鏡である。
[接合体の接合強度の測定]
引っ張り試験機「AG−10kNX(株式会社島津製作所製)」を使用し、引っ張り速度10mm/分で、せん断破断力を測定した。
[充填材の分散(湿式粉砕機の使用)]
直径0.1〜0.5mmのジルコニアビーズをサンドとするサンドグラインドミル「ミニツエア(アシザワ・ファインテック株式会社(日本国東京都)製)」を使用した。
[実験例1](CFRP片の作成)
本実験例では、CFRP部材の一例として、CFRP片を作成する。このCFRP片は複数のCFRPプリプレグの小片が積層されることにより構成されている。CFRPプリプレグ「パイロフィルTR3110(三菱レイヨン株式会社製)」を入手し、45mm×15mmの小片を多数切り出した。図1に示す焼成治具1を用いて長方体状のCFRP片を作成する。金型本体2及び金型底板5を組み合わせると、金型本体2の側壁と金型底板5の上面によって金型凹部が形成される。この金型凹部を覆うように、0.05mm厚の離型用フィルム17を敷いた。この離型用フィルム17の上にポリテトラフルオロエチレン樹脂(以下、「PTFE」という。)製のスペーサ11及び16を設置した。これらスペーサ11及び16の上面に、切断しておいた45mm×15mmのCFRPプリプレグの小片を3mm厚分積層した(積層物は図1中では12として示されており、硬化後にCFRP片12となる)。この積層物と金型本体2の側壁の空隙を埋めるためにPTFE製のスペーサ13を設置し、これらを覆うように離型用フィルム14を敷いた。
離型用フィルム14の上にPTFE製のブロック15を乗せ、熱風乾燥機に入れた。さらにブロック15の上に鉄製の5kgの錘18を乗せて乾燥機に通電した。90℃まで昇温して60分置き、次いで150℃まで昇温して60分置き、次いで180℃まで昇温して20分置き、通電を止めて扉を閉めたまま放冷した。翌日、錘18、ブロック15、及び台座8を外して金型本体2を床に押し付けると、金型本体2の金型貫通孔4から金型底面7の下方に突出していた底板突起部6が、金型底板5を上方に押し出す。これにより、離型用フィルム14及び17によって覆われている成形物であるCFRP片12が焼成治具1から取り出せる。この作業を繰り返し、CFRP片12を多数得た。このようにして得られたCFRP片12を1回焼き品と称す。
3日後に、上記のようにして得たCFRP片12を再び熱風乾燥機に入れ、90℃まで昇温して30分置き、次いで190℃まで昇温して60分置いた後、放冷した。即ち再焼成した。このようにして得られたCFRP片12を2回焼き品と称す。この2回焼き品を、3日後に同じ条件でもう一度焼いた。このようにして得られたCFRP片12を3回焼き品と称す。以下の実験例で使用するCFRP片は全て3回焼き品である。
[実験例2](接着剤の作成)
ビスフェノール型エポキシ樹脂の単量体型が主成分の分子量約370のエポキシ樹脂「JER828(ジャパンエポキシレジン株式会社製)」、固体である分子量約1300の多量体型のビスフェノール型エポキシ樹脂「JER1003(ジャパンエポキシレジン株式会社製)」、多官能型のフェノールノボラック型エポキシ樹脂「JER154(ジャパンエポキシレジン株式会社製)」、アニリン型の3官能エポキシ樹脂「JER630(ジャパンエポキシレジン株式会社製)」、平均粒径が十数μm程度のPES粉体「PES4100MP(住友化学株式会社製)」、平均粒径が20μm程度の水酸基付きPESの粉体「ウルトラゾーンE2020−SRMicro(BASF社製)」、平均粒径が8〜12μmの微粉タルク「ハイミクロンHE5(竹原化学工業株式会社(日本国兵庫県)製)」、直径が約50nmの多層型カーボンナノチューブ「MCNT(ナノカーボンテクノロジーズ株式会社(日本国東京都)製)」、エポキシ樹脂の硬化剤である微粉型ジシアンジアミド「DICY7(ジャパンエポキシレジン株式会社製)」、2−メチルイミダゾールの微粉「2MI(日本合成化学工業株式会社製)」、2−フェニルイミダゾール「2PI(日本合成化学工業株式会社製)」、及び、エポキシ樹脂の硬化助剤となる3−(3,4−ジクロルフェニル)−1,1−ジメチルウレアの微粉「DCMU99(保土谷化学工業株式会社(日本国東京都)製)」を入手した。
入手した薬剤のうち、「2PI」は粉末でなく顆粒であったので、直径150mmのセラミック製ボールミルに200g入れて30分粉砕してボールを篩分けし、更に325メッシュ通過品を粉末「2PI」として保管した。
[1液性エポキシ接着剤「MCNT、PES、DICY、DCMU」の作成]
「JER828」を60質量部、「JER1003」を20質量部、「JER154」を10質量部、及び「JER630」10質量部をビーカーに取り、150℃とした熱風乾燥機内に放置して加熱し、固体型「JER1003」を溶融すると同時によく撹拌し、全体を均一化した。その後、放冷し、エポキシ樹脂液として保管した。
直径0.3mmのジルコニアビーズを粉砕室容量の80%充填したサンドグラインドミル「ツエア(アシザワ・ファインテック株式会社製)」を用意し、その入口側に循環ポンプと撹拌機付きのオープンタンクを繋いだ。一方、サンドグラインドミルの出口はオープンタンクに開放した。上記のエポキシ樹脂液を60℃に再加熱して粘度を下げ、100質量部(350g)をオープンタンクに投入し、循環ポンプで粉砕室を完全に満たしてからミルの運転を開始した。ミルには水冷ラインがあるので通水を調整して粉砕室内が50〜60℃になるようにした。ミル回転子の周速は11〜12m/秒とした。
その後、オープンタンクに多層型CNT「MCNT」を0.1質量部(0.35g)入れて循環粉砕を進め、次いで微粉タルク「ハイミクロンHE5」を3質量部(10.5g)徐々に入れて循環粉砕を進め、次いでPES粉体「PES4100MP」4質量部(14g)を徐々に加えた後、60分間湿式粉砕(実質的にはエポキシ樹脂中に充填材を分散させる操作となる。)を続けた。その後、ミルの出口をオープンタンクからポリエチ瓶に向くようにし、このポリエチ瓶内に混合物を得た。この混合物107.1質量部には、エポキシ樹脂100質量部、無機充填材「ハイミクロンHE5」3質量部、カーボンナノチューブ「MCNT」0.1質量部、及び熱可塑性樹脂粉体「PES4100MP」4質量部が含まれる。
次いで乳鉢に、前記混合物107.1質量部、硬化剤「DICY7」5.4質量部、及び「DCMU99」2.7質量部を取った。この乳鉢を40℃とした温風乾燥機に30分入れて暖め、それから乳棒でよく混練した。これをポリエチ瓶に取り、1日間室内で放置してエージングし、その後5℃とした冷蔵庫に保管した。この接着剤の名称を「MCNT、PES、DICY、DCMU」とした。この接着剤の組成を表1(実験例2)に示す。
[実験例3](1液性エポキシ接着剤「PES、DICY、DCMU」の作成) MCNTを充填しないという点以外は、実験例2と同様の方法で接着剤を作成した。この接着剤の名称を「PES、DICY、DCMU」とした。この接着剤の組成を表1(実験例3)に示す。
[実験例4](1液性エポキシ接着剤「MCNT、DICY、DCMU」の作成)
PESを充填しないという点以外は、実験例2と同様の方法で接着剤を作成した。この接着剤の名称を「MCNT、DICY、DCMU」とした。この接着剤の組成を表1(実験例4)に示す。
[実験例5](1液性エポキシ接着剤「A、MCNT、PES、DICY、DCMU」の作成)
実験例2と同様の方法で接着剤を作成した。但し、サンドグラインドミルによってエポキシ樹脂液にCNTを充填した後に、ヒュームドシリカ「アエロジルR805(日本アエロジル株式会社製)」をエポキシ樹脂100質量部に対して0.5質量部(1.75g)充填した点が異なる。この接着剤の名称を「A、MCNT、PES、DICY、DCMU」とした。この接着剤の組成を表1(実験例5)に示す。
[実験例6](1液性エポキシ接着剤「MCNT、PES、水酸基PES、DICY、DCMU」の作成)
実験例2と同様の方法でエポキシ樹脂液を作成した。また、実験例2と同様に、サンドグラインドミル「ツエア」を使用して、実験例2と同様の混合物を得た。即ち、この混合物107.1質量部には、エポキシ樹脂100質量部、無機充填材「ハイミクロンHE5」3質量部、カーボンナノチューブ「MCNT」0.1質量部、及び熱可塑性樹脂粉体「PES4100MP」4質量部が含まれる。次いで乳鉢に、前記混合物107.1質量部、水酸基付きPESの粉体「ウルトラゾーンE2020−SRMicro」を4質量部、硬化剤「DICY7」5.6質量部、及び「DCMU99」2.8質量部を取った。この乳鉢を40℃とした温風乾燥機に30分入れて暖め、それから乳棒でよく混練した。これをポリエチ瓶に取り、1日間室内で放置してエージングし、その後5℃とした冷蔵庫に保管した。この接着剤の名称を「MCNT、PES、水酸基PES、DICY、DCMU」とした。この接着剤の組成を表1(実験例6)に示す。
[実験例7](1液性エポキシ接着剤「MCNT、PES、DICY、2MI」の作成)
DCMU99に代えて2−メチルイミダゾールを加えたという点以外は、実験例2と同様の方法で接着剤を作成した。この接着剤の名称を「MCNT、PES、DICY、2MI」とした。この接着剤の組成を表1(実験例7)に示す。
[実験例8](1液性エポキシ接着剤「MCNT、PES、DICY、2PI」の作成)
DCMU99に代えて2−フェニルイミダゾールの粉体を加えたという点以外は、実験例2と同様の方法で接着剤を作成した。この接着剤の名称を「MCNT、PES、DICY、2PI」とした。この接着剤の組成を表1(実験例8)に示す。
Figure 2010234524
[実験例9](CFRP片の粗面化と洗浄(1))
実験例1で得たCFRP片の端部を、JISR6252に規定される80番の研磨紙でしっかり10回往復研磨(即ち20回研磨)して粗面化した。超音波振動端付きの水槽に水道水250リットルを入れ、これにアルミニウム合金用脱脂剤「NE−6(メルテックス株式会社製)」を20kg投入したものを脱脂液とした。この脱脂液を60℃に加熱して超音波をかけた状態とし、これに粗面化したCFRP片を5分間浸漬した。その後、このCFRP片を水道水の溢流のある水洗槽3基に順次浸漬して十分に水洗した。次いでCFRP片を90℃にセットした熱風乾燥機に15分入れて乾燥し、アルミ箔で包んで保管した。
[実験例10](CFRP片の粗面化と洗浄(2))
実験例1で得たCFRP片の端部を、JISR6252に規定される80番の研磨紙でしっかり16回往復研磨(即ち32回研磨)して粗面化した。水道(群馬県太田市)口に6mm径銅管を直接?ぎ、先端部を絞って水道水の高速流を作った。この高速流を粗面化したCFRP片に各2分間あてた。次いでCFRP片をヘヤードライヤーで乾燥し、アルミ箔で包んで保管した。
[実験例11](CFRP片同士の接着(1))
実験例9で得たCFRP片6個の各々の粗面部に実験例2で得た1液性エポキシ接着剤「MCNT、PES、DICY、DCMU」を塗布した。一方、前もって67℃にセットした温風乾燥機にデシケータを入れてデシケータを暖めておき、これに前記接着剤を塗布したCFRP片を入れた。デシケータ内を真空ポンプで3分間減圧してから空気を入れて常圧に戻した。この減圧/常圧戻し操作を計3回行った後、CFRP片をデシケータから取り出した。この染み込まし処理を経た2個のCFRP片の接着剤塗布領域同士を密着させ、クリップ2個で固定して対とした。接着面積は0.7〜0.8cm程度になるようにした。このようにして図2に示すようなCFRP片同士の対を3組作成した。
この3組の対を、90℃にセットした熱風乾燥機に入れて5分加熱し、その後135℃に昇温して135℃で50分加熱し、その後165℃に昇温して165℃で30分加熱した。その後、熱風乾燥機から取り出したCFRP片同士の接合体3組を、常温下で引っ張り破断し、せん断破断力を測定した。接合体3組の平均のせん断破断力を表2に示した(実験例11)。
[実験例12](CFRP片同士の接着(2))
実験例9で得たCFRP片6個の各々の粗面部に実験例3で得た1液性エポキシ接着剤「PES、DICY、DCMU」を塗布した。その後、実験例11と同様の方法でCFRP片同士の対である接合体を3組作成し、せん断破断力を測定した。接合体3組の平均のせん断破断力を表2に示した(実験例12)。
[実験例13](CFRP片同士の接着(3))
実験例9で得たCFRP片6個の各々の粗面部に実験例4で得た1液性エポキシ接着剤「MCNT、DICY、DCMU」を塗布した。その後、実験例11と同様の方法でCFRP片同士の対である接合体を3組作成し、せん断破断力を測定した。接合体3組の平均のせん断破断力を表2に示した(実験例13)。
[実験例14](CFRP片同士の接着(4))
実験例9で得たCFRP片6個の各々の粗面部に実験例5で得た1液性エポキシ接着剤「A、MCNT、PES、DICY、DCMU」を塗布した。その後、実験例11と同様の方法でCFRP片同士の対である接合体を3組作成し、せん断破断力を測定した。接合体3組の平均のせん断破断力を表2に示した(実験例14)。
[実験例15](CFRP片同士の接着(5))
実験例9で得たCFRP片6個の各々の粗面部に実験例6で得た1液性エポキシ接着剤「MCNT、PES、水酸基PES、DICY、DCMU」を塗布した。その後、実験例11と同様の方法でCFRP片同士の対である接合体を3組作成し、せん断破断力を測定した。接合体3組の平均のせん断破断力を表2に示した(実験例15)。
Figure 2010234524
表2より、MCNTを添加した接着剤を使用した実験例11、13、14、及び15に関しては全てせん断破断力が62MPa以上であり、極めて強固にCFRP片同士が接着されているといえる。MCNTを添加していない接着剤を使用した実験例12においても、51.6MPaという結果が得られており、CFRP片同士が充分強固に接着されているといえるが、MCNTを充填している接着剤と比較して、せん断破断力は10MPa以上劣る。このことからカーボンナノチューブの添加は接着力向上に極めて有効であるといえる。
一方で、PES4100MPに関しては、これを添加していない接着剤を使用した実験例13において、せん断破断力が62.2MPaであった。PES4100MPを添加した実験例11、14、15と比較して接着力が明らかに劣っているとはいえないので、PES4100MPの添加は、必ずしも接着力の向上に寄与しないと考えられる。同様に、アエロジルR802に関しても、これを添加した接着剤を使用した実験例14において、せん断破断力が63.3MPaであったことから、アエロジルR802を添加していない実験例11、13、及び15と比較して接着力が向上しているとは言い難い。故に、アエロジルR802の添加は、必ずしも接着力の向上に寄与しないと考えられる。なお、PES4100MPに加え、水酸基付きPESを添加した接着剤を使用した実験例15において、最も高いせん断破断力65.3Paを示したことから、水酸基付きPESの添加は少なくとも接着力を低下させるものではないことが確認された。
[実験例16](CFRP片同士の接着(6))
実験例10で得たCFRP片6個の各々の粗面部に実験例2で得た1液性エポキシ接着剤「MCNT、PES、DICY、DCMU」を塗布した。その後、実験例11と同様の方法でCFRP片同士の対である接合体を3組作成し、せん断破断力を測定した。接合体3組の平均のせん断破断力を表2に示した(実験例16)。せん断破断力は62.8MPaであり、実験例11と同等であった。このことから、研磨回数が往復10回であっても、往復16回であっても明確な差異は生じず、また洗浄手段として脱脂液を使用しても、水道水を使用しても明確な差異は生じないと考えられる。
[実験例17(CFRP片同士の接着(7))]
実験例9で得たCFRP片24個の各々の粗面部に実験例2で得た1液性エポキシ接着剤「MCNT、PES、DICY、DCMU」を塗布した。一方、前もって67℃にセットした温風乾燥機にデシケータを入れてデシケータを暖めておき、これに前記接着剤を塗布したCFRP片を入れた。デシケータ内を真空ポンプで3分間減圧してから空気を入れて常圧に戻した。この減圧/常圧戻し操作を計3回行った後、CFRP片をデシケータから取り出した。この染み込まし処理を経た2個のCFRP片の接着剤塗布領域同士を密着させ、クリップ2個で固定して対とした(図2)。接着面積は0.7〜0.8cm程度になるようにした。このようにしてCFRP片同士の対を12組作成した。
このようにして得られた12組のうち、3組を100℃にセットした熱風乾燥機に入れて90分間加熱した後、取り出した。また、別の3組を110℃にセットした熱風乾燥機に入れて60分間加熱した後、取り出した。また、別の3組を120℃にセットした熱風乾燥機に入れて60分間加熱した後、取り出した。さらに残りの3組を130℃にセットした熱風乾燥機に入れて60分間加熱した後、取り出した。このように各硬化条件下で得られた3組、計12組の接合体について、常温下で引っ張り破断試験を行い、せん断破断力を測定した。4つの硬化条件各々についてのせん断破断力(3組平均)を表3(実験例17)に示す。
[実験例18(CFRP片同士の接着(8))]
実験例9で得たCFRP片24個の各々の粗面部に実験例7で得た1液性エポキシ接着剤「MCNT、PES、DICY、2MI」を塗布した。その後、実験例17と同じ方法で、計12組(3組×4)の接合体を作成した。このように各硬化条件下で得られた3組、計12組の接合体について、常温下で引っ張り破断試験を行い、せん断破断力を測定した。4つの硬化条件各々についてのせん断破断力(3組平均)を表3(実験例18)に示す。
[実験例19(CFRP片同士の接着(9))]
実験例9で得たCFRP片24個の各々の粗面部に実験例8で得た1液性エポキシ接着剤「MCNT、PES、DICY、2PI」を塗布した。その後、実験例17と同じ方法で、計12組(3組×4)の接合体を作成した。このように各硬化条件下で得られた3組、計12組の接合体について、常温下で引っ張り破断試験を行い、せん断破断力を測定した。4つの硬化条件各々についてのせん断破断力(3組平均)を表3(実験例19)に示す。
[実験例20(CFRP片同士の接着(10))]
実験例9で得たCFRP片24個の各々の粗面部に、市販の1液性エポキシ接着剤「EP106NL(セメダイン株式会社製)」を塗布した。その後、実験例17と同じ方法で、計12組(3組×4)の接合体を作成した。このように各硬化条件下で得られた3組、計12組の接合体について、常温下で引っ張り破断試験を行い、せん断破断力を測定した。4つの硬化条件各々についてのせん断破断力(3組平均)を表3(実験例20)に示す。
Figure 2010234524
表3において、引っ張り試験機にかけるまでもなく壊れた接合体については「−」と示した。また、接着剤が完全に硬化していない接合体については、せん断破断力を示す数値に()を付した。表3に示すように、接着剤「MCNT、PES、DICY、DCMU」を使用した実験例17では、100℃で1.5時間加熱することで63.5MPaという極めて高いせん断破断力を示しており、完全に接着剤が硬化しているとみられる。
一方、硬化助剤としてDCMUを使用していない接着剤を使用した実験例18(2−メチルイミダゾール)及び実験例19(2−フェニルイミダゾール)では、100℃で1.5時間加熱した場合にはCFRP同士が全く接着されておらず、110℃で1時間加熱した場合であっても接着剤が完全には硬化しなかった。これらに関しては、120℃で1時間加熱することにより接着剤が完全に硬化した。故に、硬化温度を低くすることを要する場合には、3−(3,4−ジクロルフェニル)−1,1−ジメチルウレアの微粉を硬化助剤として使用することが好ましい。
なお、実験例20の接着剤「EP106NL」はジシアンジアミドが硬化剤として使われている。この点は実験例17、18、19の接着剤に使用されているDICY7と同様である。しかしながら、実験例20において、100℃で1.5時間加熱した場合、110℃で1時間加熱した場合、及び120℃で1時間加熱した場合のいずれにおいてもCFRP同士が全く接着されておらず、130℃で1時間加熱した場合であっても接着剤が完全には硬化しなかった。さらに高温の140℃〜150℃程度で加熱しなければ接着剤が完全に硬化しないことを示している。
これらの結果から、硬化助剤として3−(3,4−ジクロルフェニル)−1,1−ジメチルウレア、2−メチルイミダゾール、又は2−フェニルイミダゾールを使用することで、より低温度での確実な硬化を可能とするものと考えられる。特に、3−(3,4−ジクロルフェニル)−1,1−ジメチルウレアの使用が好ましいということになる。なお、本発明者らの実験によると、硬化助剤なしでジシアンジアミドを使用すると、170℃で1時間程度加熱しなければ接着剤が硬化しなかったことから、「EP106NL」にも何らかの硬化助剤が含まれているものと推定される。
[実験例21](2液性エポキシ接着剤の作成)
「JER828」を60質量部、「JER1003」を20質量部、「JER154」を10質量部、及び「JER630」10質量部をビーカーに取り、150℃とした熱風乾燥機内に放置して加熱し、固体型「JER1003」を溶融すると同時によく撹拌し、全体を均一化した。その後、放冷し、エポキシ樹脂液として保管した。
直径0.3mmのジルコニアビーズを粉砕室容量の80%充填したサンドグラインドミル「ツエア」を用意し、その入口側に循環ポンプと撹拌機付きのオープンタンクを繋いだ。一方、サンドグラインドミルの出口はオープンタンクに開放した。上記のエポキシ樹脂液を60℃に再加熱して粘度を下げ、100質量部(350g)をオープンタンクに投入し、循環ポンプで粉砕室を完全に満たしてからミルの運転を開始した。ミルには水冷ラインがあるので通水を調整して粉砕室内が50〜60℃になるようにした。ミル回転子の周速は11〜12m/秒とした。
その後、オープンタンクに多層型CNT「MCNT」を0.1質量部(0.35g)入れて循環粉砕を進め、次いで微粉タルク「ハイミクロンHE5」を3質量部(10.5g)徐々に入れて循環粉砕を進め、次いでPES粉体「PES4100MP」4質量部(14g)を徐々に加えた後、60分間湿式粉砕(実質的にはエポキシ樹脂中に充填材を分散させる操作となる。)を続けた。その後、ミルの出口をオープンタンクからポリエチ瓶に向くようにし、このポリエチ瓶内に混合物を得た。この混合物107.1質量部には、エポキシ樹脂100質量部、無機充填材「ハイミクロンHE5」3質量部、カーボンナノチューブ「MCNT」0.1質量部、及び熱可塑性樹脂粉体「PES4100MP」4質量部が含まれる。
次いで乳鉢に、前記混合物107.1質量部及び硬化助剤「2−フェニルイミダゾール」2.7質量部を取って、よく混練し、1日放置してから再度混練した。次いで、混練後の混合物に硬化剤であるm−キシリレンジアミンを25質量部加え、ガラス棒でよく混練した。これによって得られた2液性エポキシ接着剤には、PES4100MPが3.0質量%、ハイミクロンHE5が2.2質量%、MCNTが0.07質量%、m−キシリレンジアミンが18.5質量%、2−フェニルイミダゾールが2.0質量%含まれている。この2液性エポキシ接着剤の名称を「MCNT、PES、mXy、2PI」とした。この2液性エポキシ接着剤は硬化剤を混練した後、直ちに使用した。
[実験例22](2液性エポキシ接着剤での接着実験)
実験例9で得たCFRP片24個の各々の粗面部に実験例21で得た2液性エポキシ接着剤「MCNT、PES、mXy、2PI」を塗布した。一方、前もって40℃にセットした温風乾燥機にデシケータを入れてデシケータを暖めておき、これに前記接着剤を塗布したCFRP片を入れた。デシケータ内を真空ポンプで3分間減圧してから空気を入れて常圧に戻した。この減圧/常圧戻し操作を計3回行った後、CFRP片をデシケータから取り出した。この染み込まし処理を経た2個のCFRP片の接着剤塗布領域同士を密着させ、クリップ2個で固定して対とした。接着面積は0.7〜0.8cm程度になるようにした。このようにしてCFRP片同士の対を12組作成した。
このようにして得られた12組のうち、3組を100℃にセットした熱風乾燥機に入れて90分間加熱した後、取り出した。また、別の3組を110℃にセットした熱風乾燥機に入れて60分間加熱した後、取り出した。また、別の3組を120℃にセットした熱風乾燥機に入れて60分間加熱した後、取り出した。さらに残りの3組を130℃にセットした熱風乾燥機に入れて60分間加熱した後、取り出した。このように各硬化条件下で得られた3組、計12組の接合体について、常温下で引っ張り破断試験を行い、せん断破断力を測定した。4つの硬化条件各々についてのせん断破断力(3組平均)を表3(実験例22)に示す。
本実験例22で使用した2液性エポキシ系接着剤は、常温でも終日放置すれば硬化するので、100℃で1.5時間加熱することでほぼ完全に硬化すると予測された。表3に示す結果においても予想した通りであった。1液性エポキシ系接着剤を使用した実験例17、18、及び19と比較すると相対的に接着力そのものは劣るが、いずれの硬化条件においても50MPa前後の強いせん断破断力を示していた。故に、2液性エポキシ接着剤を使用しても実用上充分に強い接着力を得られ、低温での硬化が可能であることから、1液性エポキシ系接着剤を使用する場合と比較して、加熱、硬化用設備を簡素化することが可能であるという利点がある。なお、2液性エポキシ接着剤を使用した本実験例では、硬化温度を上げた場合でも、接着力は1液性エポキシ接着剤を使用した実験例17、18、及び19より低い。
[実験例23](耐熱性試験(1))
実験例9で得たCFRP片12個の各々の粗面部に実験例2で得た1液性エポキシ接着剤「MCNT、PES、DICY、DCMU」を塗布した。一方、前もって67℃にセットした温風乾燥機にデシケータを入れてデシケータを暖めておき、これに前記接着剤を塗布したCFRP片を入れた。デシケータ内を真空ポンプで3分間減圧してから空気を入れて常圧に戻した。この減圧/常圧戻し操作を計3回行った後、CFRP片をデシケータから取り出した。この染み込まし処理を経た2個のCFRP片の接着剤塗布領域同士を密着させ、クリップ2個で固定して対とした。接着面積は0.7〜0.8cm程度になるようにした。このようにしてCFRP片同士の対を6組作成した。
表3から、この接着剤を100℃で90分間加熱することで完全に硬化することが確認されているので、この6組の対を当該条件で加熱した。その後、熱風乾燥機から取り出したCFRP片同士の接合体3組を、100℃下で引っ張り破断し、せん断破断力を測定した。また、他の3組を、150℃下で引っ張り破断し、せん断破断力を測定した。各温度下における接合体3組の平均のせん断破断力を表4に示した(実験例23)。また、常温でのせん断破断力(実験例19)も併せて示した。
[実験例24](耐熱性試験(2))
実験例9で得たCFRP片12個の各々の粗面部に実験例8で得た1液性エポキシ接着剤「MCNT、PES、DICY、2PI」を塗布した。その後、実験例23と同様の方法でCFRP片同士の対を6組作成した。表3から、この接着剤を120℃で60分間加熱することで完全に硬化することが確認されているので、この6組の対を当該条件で加熱した。その後、熱風乾燥機から取り出したCFRP片同士の接合体3組を、100℃下で引っ張り破断し、せん断破断力を測定した。また、他の3組を、150℃下で引っ張り破断し、せん断破断力を測定した。各温度下における接合体3組の平均のせん断破断力を表4に示した(実験例24)。また、常温でのせん断破断力(実験例17)も併せて示した。
[実験例25](耐熱性試験(3))
実験例9で得たCFRP片12個の各々の粗面部に実験例21で得た2液性エポキシ接着剤「MCNT、PES、mXy、2PI」を塗布した。一方、前もって40℃にセットした温風乾燥機にデシケータを入れてデシケータを暖めておき、これに前記接着剤を塗布したCFRP片を入れた。デシケータ内を真空ポンプで3分間減圧してから空気を入れて常圧に戻した。この減圧/常圧戻し操作を計3回行った後、CFRP片をデシケータから取り出した。この染み込まし処理を経た2個のCFRP片の接着剤塗布領域同士を密着させ、クリップ2個で固定して対とした。接着面積は0.7〜0.8cm程度になるようにした。このようにしてCFRP片同士の対を6組作成した。
表3から、この接着剤を100℃で90分間加熱することで完全に硬化することが確認されているので、この6組の対を当該条件で加熱した。その後、熱風乾燥機から取り出したCFRP片同士の接合体3組を、100℃下で引っ張り破断し、せん断破断力を測定した。また、他の3組を、150℃下で引っ張り破断し、せん断破断力を測定した。各温度下における接合体3組の平均のせん断破断力を表4に示した(実験例25)。また、常温でのせん断破断力(実験例22)も併せて示した。
Figure 2010234524
接着剤「MCNT、PES、DICY、DCMU」を使用した実験例23の結果では、常温下における接着力は最も高く(63.5MPa)、100℃下においても58.5MPaという高い接着力を維持している。150℃下においては33.1MPaに接着力が低下したが、この程度であれば殆どの用途で使用可能と考えられる。一方、接着剤「MCNT、PES、DICY、2PI」を使用した実験例24の結果では、常温下における接着力は実験例23に劣らず(62.3MPa)、100℃下においても55.9MPaという高い接着力を維持している。また、150℃下においても42.3MPaという高い接着力を維持しており、実験例23との比較で耐熱性が優れているということがいえる。即ち、耐熱性が要求される用途では、助硬化剤として3−(3,4−ジクロルフェニル)−1,1−ジメチルウレアを使用するより、2−フェニルイミダゾールを使用することが好ましい。
2液性接着剤「MCNT、PES、mXy、2PI」を使用した実験例25では、常温下における接着力(47.5MPa)と比較して、100℃下における接着力(28.5MPa)、150℃下における接着力(5.3MPa)は急激に低下した。故に接着剤の耐熱性は低く、常温下で使用することは可能であるが、高温環境下での使用には適さないということがいえる。
[実験例26](GFRP片同士の接着)
強化繊維がガラス繊維であって、マトリックス樹脂がエポキシ樹脂である硬化済みのGFRP(所謂ガラエポ)板材「G−15(多摩岡産業株式会社(日本国東京都)製)」を入手した。このGFRP板材の厚さは5mmであった。これを45mm×15mmの小片に切断した。このGFRP片を180℃で1時間再焼成し、翌日に再度180℃で1時間再焼成した。このGFRP片を、実験例9の方法で粗面化及び洗浄した。
洗浄したGFRP片6個の各々の粗面部に実験例2で得た1液性エポキシ接着剤「MCNT、PES、DICY、DCMU」を塗布した。一方、前もって67℃にセットした温風乾燥機にデシケータを入れてデシケータを暖めておき、これに前記接着剤を塗布したGFRP片を入れた。デシケータ内を真空ポンプで3分間減圧してから空気を入れて常圧に戻した。この減圧/常圧戻し操作を計3回行った後、GFRP片をデシケータから取り出した。この染み込まし処理を経た2個のGFRP片の接着剤塗布領域同士を密着させ、クリップ2個で固定して対とした。接着面積は0.7〜0.8cm程度になるようにした。このようにして図2に示したものと同様のGFRP片同士の対を3組作成した。
この3組の対を、90℃にセットした熱風乾燥機に入れて5分置き、その後135℃に昇温し、135℃に50分置き、その後165℃に昇温し、165℃に30分置いた。その後、熱風乾燥機から取り出したGFRP片同士の接合体3組を、常温下で引っ張り破断し、せん断破断力を測定した。接合体3組の平均のせん断破断力は62.3MPaと高く、本発明がCFRPのみならずGFRPの接着に対しても効果を奏することを確認した。
12…CFRPプリプレグ積層物
20…CFRP同士の接合体
21…CFRP部材
30…CFRP板材
31…CFRP部品
32…接着剤層

Claims (15)

  1. エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とする第1の繊維強化プラスチックの成形品である第1のFRP部材と、エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とする第2の繊維強化プラスチックの成形品である第2のFRP部材の接合体であって、
    前記第1のFRP部材と前記第2のFRP部材は、粒径分布の中心が5〜20μmの無機充填材及び直径20nm以上のカーボンナノチューブを少なくとも含むエポキシ接着剤を介して接着されていることを特徴とする繊維強化プラスチックの接合体。
  2. 請求項1に記載した繊維強化プラスチックの接合体であって、
    前記エポキシ接着剤は、1液性エポキシ接着剤又は2液性エポキシ接着剤であって、
    前記第1の繊維強化プラスチックは、CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)、KFRP(Kevlar Fiber Reinforced Plastics)、及びAFRP(Aramid Fiber Reinforced Plastics)から選択されるいずれか1種であり、
    前記第2の繊維強化プラスチックは、CFRP、GFRP、KFRP、及びAFRPから選択されるいずれか1種であることを特徴とする繊維強化プラスチック。
  3. 請求項2に記載した繊維強化プラスチックの接合体であって、
    前記エポキシ接着剤は1液性エポキシ接着剤であって、
    前記第1の繊維強化プラスチック及び前記第2の繊維強化プラスチックは、いずれもCFRPであることを特徴とする繊維強化プラスチックの接合体。
  4. 請求項2に記載した繊維強化プラスチックの接合体であって、
    前記エポキシ接着剤は1液性エポキシ接着剤であって、
    前記第1の繊維強化プラスチック及び前記第2の繊維強化プラスチックは、いずれもGFRPであることを特徴とする繊維強化プラスチックの接合体。
  5. エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とするFRP(Fiber Reinforced Plastics)の成形品であるFRP部材を粗面化する粗面化工程と、
    前記粗面化工程を経たFRP部材の表面を洗浄する洗浄工程と、
    粒径分布の中心が5〜20μmの無機充填材及び直径20nm以上のカーボンナノチューブを少なくとも含むエポキシ接着剤を作成する接着剤作成工程と、
    前記洗浄工程を経たFRP部材の表面に、前記エポキシ接着剤を塗布する塗布工程と、
    前記塗布工程でFRP部材の表面に塗布したエポキシ接着剤の粘度を15Pa秒以下とした状態で、このエポキシ接着剤の塗布領域を減圧し、次いで加圧することによって当該エポキシ接着剤を前記表面に染み込ませる染み込まし工程と、
    前記染み込まし工程を経た複数のFRP部材について、各表面のエポキシ接着剤の塗布領域同士を密着させた状態で固定し、加熱することによって前記エポキシ接着剤を硬化させて当該複数のFRP部材を接合させる接着剤硬化工程と、
    を含むことを特徴とする繊維強化プラスチックの接合体の製造方法。
  6. エポキシ樹脂をマトリックス樹脂とするCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)のプリプレグに対して加熱硬化処理を行うことにより成形品であるCFRP部材を作成するCFRP部材作成工程と、
    前記CFRP部材の表面を粗面化する粗面化工程と、
    前記粗面化工程を経たCFRP部材の表面を洗浄する洗浄工程と、
    粒径分布の中心が5〜20μmの無機充填材及び直径20nm以上のカーボンナノチューブを少なくとも含むエポキシ接着剤を作成する接着剤作成工程と、
    前記洗浄工程を経たCFRP部材の表面に、前記エポキシ接着剤を塗布する塗布工程と、
    前記塗布工程でCFRP部材の表面に塗布したエポキシ接着剤の粘度を15Pa秒以下とした状態で、このエポキシ接着剤の塗布領域を減圧し、次いで加圧することによって当該エポキシ接着剤を前記表面に染み込ませる染み込まし工程と、
    前記染み込まし工程を経た複数のCFRP部材について、各表面のエポキシ接着剤の塗布領域同士を密着させた状態で固定し、加熱することによって前記エポキシ接着剤を硬化させて当該複数のCFRP部材を接合させる接着剤硬化工程と、
    を含むことを特徴とする繊維強化プラスチックの接合体の製造方法。
  7. 請求項6に記載した繊維強化プラスチックの接合体の製造方法であって、
    前記CFRP部材作成工程後、前記粗面化工程前に、前記CFRP部材に対して再度の加熱硬化処理を行う再焼成工程を含むことを特徴とする繊維強化プラスチックの接合体の製造方法。
  8. 請求項6に記載した繊維強化プラスチックの接合体の製造方法であって、
    前記粗面化工程において、前記CFRP部材の表面をJISR6252に規定される80番〜240番の研磨紙に相当する粗さの研磨部材によって研磨し、
    前記洗浄工程において、前記CFRP部材をアルミニウム合金用脱脂溶液に浸漬することを特徴とする繊維強化プラスチックの接合体の製造方法。
  9. 請求項6に記載した繊維強化プラスチックの接合体の製造方法であって、
    前記粗面化工程において、前記CFRP部材の表面をJISR6252に規定される80番〜240番の研磨紙に相当する粗さの研磨部材によって研磨し、
    前記洗浄工程において、前記CFRP部材の表面に水流を噴き掛けることを特徴とする繊維強化プラスチックの接合体の製造方法。
  10. 請求項6に記載した繊維強化プラスチックの接合体の製造方法であって、
    前記エポキシ接着剤は1液性エポキシ接着剤であって、
    前記接着剤作成工程において、硬化剤としてジシアンジアミドの粉体を添加し、さらに、硬化助剤として、3−(3,4−ジクロルフェニル)−1,1−ジメチルウレア、2−フェニルイミダゾール、及び2−メチルイミダゾールから選択されるいずれか1種を添加し、
    かつ、前記ジシアンジアミドの粉体をエポキシ樹脂に完全溶解させない状態で前記接着剤硬化工程を行うことを特徴とする繊維強化プラスチックの接合体の製造方法。
  11. 請求項10に記載した繊維強化プラスチックの接合体の製造方法であって、
    前記接着剤作成工程において、硬化助剤として3−(3,4−ジクロルフェニル)−1,1−ジメチルウレアを添加することにより、接着剤の硬化温度を低下させることを特徴とする繊維強化プラスチックの接合体の製造方法。
  12. 請求項10に記載した繊維強化プラスチックの接合体の製造方法であって、
    前記接着剤作成工程において、硬化助剤として2−フェニルイミダゾールを添加することにより、接着剤の耐熱性を向上させることを特徴とする繊維強化プラスチックの接合体の製造方法。
  13. 請求項6に記載した繊維強化プラスチックの接合体の製造方法であって、
    前記エポキシ接着剤は2液性エポキシ接着剤であって、
    前記接着剤作成工程において、硬化剤としてm−キシリレンジアミンを添加し、さらに、硬化助剤として、2−フェニルイミダゾールを添加することを特徴とする繊維強化プラスチックの接合体の製造方法。
  14. 請求項6に記載した繊維強化プラスチックの接合体の製造方法であって、
    前記接着剤作成工程において、サンドグラインドミル型の湿式粉砕機を使用してエポキシ樹脂中でカーボンナノチューブを破壊分散させることを特徴とする繊維強化プラスチックの接合体の製造方法。
  15. 請求項5に記載した繊維強化プラスチックの接合体の製造方法であって、
    前記FRP部材は、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)の成形品であるGFRP部材であり、
    前記粗面化工程前に、前記GFRP部材に対して再度の加熱硬化処理を行う再焼成工程を含むことを特徴とする繊維強化プラスチックの接合体の製造方法。
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