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JP2010208584A - ハイブリッド車両の制御装置 - Google Patents

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JP2010208584A
JP2010208584A JP2009059620A JP2009059620A JP2010208584A JP 2010208584 A JP2010208584 A JP 2010208584A JP 2009059620 A JP2009059620 A JP 2009059620A JP 2009059620 A JP2009059620 A JP 2009059620A JP 2010208584 A JP2010208584 A JP 2010208584A
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Yoshihito Sugano
善仁 菅野
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Toyota Motor Corp
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Abstract

【課題】回転要素のロックにより固定変速モードを実現可能なハイブリッド車両において、回転要素の誤ロックによる共振を抑制する。
【解決手段】エンジン200、MG1及びMG2を有し、ハイブリッド車両の動力ユニットとして機能するハイブリッド駆動装置10は、サンギアS1の回転を阻止することによりMG1をロック状態と非ロック状態とに制御可能なブレーキ機構700を備えている。誤ロック時退避制御において、ECUは、MG1ロックフェイルの有無を判別し、MG1ロックフェイルが発生した場合には、機関回転速度収束値NEKLを算出し、この機関回転速度収束値NEKLが予め設定された共振帯域内である場合には、エンジンをフューエルカット状態とし、モータリング走行を行わしめると共に、制動装置BRを制御してハイブリッド車両を減速させる。
【選択図】図2

Description

本発明は、回転要素をロックすることにより複数の変速モードを選択可能なハイブリッド車両の制御装置の技術分野に関する。
この種のハイブリッド車両として、発電機の回転を固定するものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のハイブリッド車両によれば、発電機の回転を固定することにより、走行中にエンジン停止状態からエンジン始動を行うことができるとされている。
尚、ハイブリッド車両において、締結要素がOFF故障或いはON故障した場合に、締結要素に応じて代替モードに変更する技術も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
一方、固定変速モードと無段変速モードとを有するハイブリッド車両が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
また、固定変速モードと無段変速モードとを有するハイブリッド車両において、モータが故障した場合に固定変速モードを選択するものも提案されている(例えば、特許文献4参照)。
特開平9−109694号公報 特開2006−022844号公報 特開2004−345527号公報 特開2005−304229号公報
上記各種の従来技術においては、回転要素が誤ってロックされた場合について何らの対策も講じられていない。従って、場合によっては、内燃機関の機関回転速度が共振帯域内に入る可能性があり、ハイブリッド車両におけるNV(Noise and Vibration:騒音と振動)性能が悪化する可能性がある。
本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、回転要素の誤ロックによる車両のNV性能の低下を防止可能なハイブリッド車両の制御装置を提供することを課題とする。
上述した課題を解決するため、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、内燃機関と、発電機と、車軸に連結される駆動軸に連結され該駆動軸との間で動力の入出力が可能な電動機とを少なくとも含む動力供給要素と、前記内燃機関の機関出力軸、前記発電機の出力軸及び前記駆動軸に夫々連結されてなる回転要素を含む相互に差動回転可能な複数の回転要素を備え、前記駆動軸に対し前記内燃機関の動力の少なくとも一部を供給可能な動力分割機構と、前記複数の回転要素のうち一の回転要素の状態を、固定部材から解放された回転可能な非ロック状態と該固定部材に固定された回転不能なロック状態との間で切り替え可能なロック手段とを備え、前記非ロック状態に対応し且つ前記機関出力軸の回転速度と前記駆動軸の回転速度との比たる変速比が連続的に可変な無段変速モードと、前記ロック状態に対応し且つ該変速比が固定される固定変速モードとを選択可能に構成されてなるハイブリッド車両の制御装置であって、前記一の回転要素が誤ロック状態にあるか否かを判別する第1判別手段と、前記一の回転要素が誤ロック状態にあると判別された場合に、前記内燃機関の機関回転速度が所定の共振帯域内で収束するか否かを判別する第2判別手段と、前記機関回転速度が前記共振帯域内で収束すると判別された場合に、前記機関回転速度が前記共振帯域外で収束するように前記ハイブリッド車両を制御する第1制御手段とを具備することを特徴とする。
本発明に係る動力分割機構は、内燃機関と、好適な一形態としてモータジェネレータ等電動機としての機能を併有する構成を採り得る発電機と、好適な一形態としてモータジェネレータ等発電機としての機能を併有する電動機とを少なくとも含む動力要素と夫々接続される或いは接続可能に構成される回転要素を含む、相互に差動回転可能な複数の回転要素(即ち、各動力要素に対応する回転要素は、動力分割機構に備わる回転要素の少なくとも一部であって、必ずしも全てでなくてもよい)を備えた、例えば遊星歯車機構等の形態を採る。動力分割機構は、この回転要素の差動作用により、車軸に直接的又は間接的の別を問わず連結される駆動軸に対し、内燃機関の動力の少なくとも一部を供給可能に構成される。また、電動機は、この駆動軸との間で動力(例えば、トルク)の入出力が可能となるように動力分割機構の回転要素と連結されており、本発明に係るハイブリッド車両は、内燃機関の動力と電動機の動力とを協調的に制御すること等によって所謂ハイブリッド走行を行うことが可能である。
本発明に係るロック手段とは、これら複数の回転要素のうち一の回転要素(以下、適宜「ロック対象回転要素」と称する)を固定部材に対し直接的又は間接的の別を問わず固定可能、且つ固定部材から同様に解放可能な手段を包括する概念であり、好適な一形態として、例えばカムロック機構等を含むセルフロック式係合装置、湿式多板ブレーキ等を含む摩擦係合装置、或いは電磁ドグクラッチ機構等を含む回転同期噛合装置等の各種態様を採り得る。本発明に係るハイブリッド車両は、このロック手段の作用により、例えばクランク軸等に代表される内燃機関の機関出力軸と、駆動軸との間の回転速度比たる変速比を規定する変速モードを、無段変速モードと固定変速モードとの間で切り替え可能に構成される。この際、一の変速モードに属する変速段は単数であっても複数であってもよい。
無段変速モードとは、ロック対象回転要素が固定部材から解放され回転可能な非ロック状態にある場合に対応しており、上記変速比を、理論的に、実質的に或いは予め規定された物理的、機械的、機構的又は電気的な制約の範囲内で、連続的に(実践上連続的であるのと同等に段階的な態様を含む)変化させることが可能な変速比の制御態様を指し、好適な一形態として、発電機或いは発電機に連結された回転要素を内燃機関の反力トルクを負担する反力要素とし、発電機によりその回転速度を制御すること等により実現される。無段変速モードにおいては、内燃機関の動作点(例えば、機関回転速度とトルクとにより規定される内燃機関の一運転条件を規定する点)は、例えば、理論的に、実質的に又は何らかの制約の範囲で自由に選択され、例えば、燃費が理論的に、実質的に又は何らかの制約の範囲で最小となる最適燃費動作点等に制御される。
一方、固定変速モードとは、ロック対象回転要素が固定部材に直接的又は間接的の別を問わず固定され、回転不能なロック状態にある場合に対応しており、上記変速比が一の値に固定される制御態様を指す。例えば、内燃機関に連結された回転要素又は回転要素群と、発電機に連結された回転要素又は回転要素群と、電動機に連結された回転要素又は回転要素群の三種類の回転要素又は回転要素群のうち二要素又は二要素群の回転速度が定まる場合に、必然的に残余の一回転要素又は一回転要素群の回転速度が定まるように、動力分割機構における各回転要素の差動態様が規定されている場合、ロック対象回転要素がロック状態にあれば、内燃機関の機関回転速度は、車速に律束される駆動軸側の回転要素の回転によって一義的に規定され得るため、この種の固定変速モードが好適に実現され得る。
ここで、内燃機関には、予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて、固有の共振帯域が設定されており、内燃機関の機関回転速度が係る共振帯域内に留まると、内燃機関が起震源となってハイブリッド車両或いはハイブリッド駆動装置が共振状態となって、内燃機関を主たる起震源とする物理的振動は増幅され、例えばハイブリッド車両のNV(Noise and Vibration:騒音と振動)性能を低下させる場合がある。
ここで特に、このような共振帯域の存在が事前に認識されている点に鑑みれば、固定変速モードであれ無段変速モードであれ、基本的には、内燃機関の機関回転速度が係る共振領域内に留まることのないように、内燃機関の動作点を制御することができる。ところが、ロック対象回転要素が、本来ロックされるべきでない条件下(即ち、端的に言えば、制御上は無段変速モードが選択されていると認識される条件下)で何らかの理由により誤ってロックされた状態(このような状態を、これ以降適宜「誤ロック状態」と称する)では、内燃機関の機関回転速度がこの種の共振帯域内で収束する場合がある。本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、このようなロック対象回転要素の誤ロック時に生じ得る不具合が、以下の如くにして好適に回避されている。
即ち、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、例えばECU(Electronic Control Unit:電子制御ユニット)等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る第1判別手段により、ロック対象回転要素が誤ロック状態にあるか否かが判別される。
第1判別手段によりなされる判別に係る実践的態様は、特に限定されないが、例えば、第1判別手段は、ハイブリッド車両の運転条件が無段変速モードに該当する期間において、ロック対象回転要素又はロック対象回転要素と一体に若しくは略一体に回転する回転要素が所定期間停止していることをもってロック対象回転要素が誤ロック状態にあると判別してもよいし、ハイブリッド車両の運転条件及びそれに対応するハイブリッド車両の制御条件から推定されるロック対象回転要素の挙動と、実際のロック対象回転要素の挙動との違いに基づいて(例えば、正常であればロック対象回転要素に回転変化が生じないはずの条件下でロック対象回転要素の回転速度が急激に低下した場合等に)、ロック対象回転要素が誤ロック状態にある旨の判別を下してもよい。
一方、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、その動作時には、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る第2判別手段により、ロック対象回転要素が誤ロック状態にある場合に、機関回転速度が共振帯域内で収束するか否かが判別される。ここで、第2判別手段は、実現象としての誤ロックが生じた段階で当該判別に係るプロセスを開始してもよいし、予め誤ロックが生じているか否かとは無関係に一定又は不定の周期で予防的見地から当該判別に係るプロセスを実行していてもよい。
他方、第2判別手段により、機関回転速度が共振帯域内で収束する(或いは、既に収束している)とされた場合には、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る第1制御手段により、機関回転速度がこの共振帯域外で収束するようにハイブリッド車両が制御される。このため、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置によれば、ロック対象回転要素が誤ロック状態に陥ったとしても、ハイブリッド車両のNV性能が悪化する事態は理想的には回避され、或いは少なくとも迅速且つ的確に解消され、NV性能の悪化がもたらすドライバビリティの低下や快適性の低下を抑制することが可能となる。
補足すると、本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、(1)ロック対象回転要素が誤ロック状態に陥った場合に少なからずNV性能の低下を招来し得る点に鑑み、ロック対象回転要素が誤ロック状態に陥った際に的確な措置を講じる必要がある点に想達しており、また(2)ロック対象回転要素が誤ロック状態に陥ったとしても、機関回転速度が最終的な収束値に収束するまでに、従前の運転条件に応じた大小はあるにせよ時間的猶予が存在する点に着目し、(3)誤ロック状態の検出に伴い、例えばこの時間的猶予を利用して、ハイブリッド車両の車速及び動力分割機構のギア比等に基づいて機関回転速度の収束値を算出すると共に、予め実験的に、経験的に、理論的に又はシミュレーション等に基づいて設定された共振帯域を規定する機関回転速度の値との比較を行う等して、理想的には、機関回転速度が共振帯域内に入ることを未然に防ぐことを可能とし得る点を見出したものである。
或いは、誤ロック状態の検出が遅れてこの種の時間的猶予が殆ど得られない場合であっても、予めロック対象回転要素に誤ロックが生じる可能性がある点に想達しているため、可及的に迅速に機関回転速度を共振帯域外で収束させることを可能とするものである。
尚、誤ロック状態の検出後の時間的猶予を利用して収束値を計算する以外にも、例えば無段変速モードが選択されている期間において、予防的見地から、予め一定又は不定の周期で、ロック対象回転要素がロックされた場合の機関回転速度の収束値を計算しておけば、第2判別手段の処理負荷の時間的集中を回避することが可能である。このように時間軸上で分散可能な処理については積極的に分散することによって、誤ロック状態検出後の過渡期における第2判別手段及び第1制御手段の動作の迅速化を促すことが可能となり、より好適なフェールセーフが実現され得る。
いずれにせよ、本発明によれば、通常の固定変速モードでは予め選択されることのない共振帯域がロック対象回転要素の誤ロック時には強制的に選択され得る点を考慮した上で、第1及び第2判別手段並びに制御手段の作用によって、誤ロック状態の検出に伴い、極めて迅速に共振帯域での内燃機関の動作を回避することが可能となっており、上記ドライバビリティや快適性の低下等といった不具合を可及的に回避し得る点において、例えばこの種の誤ロックが生じた結果、機関回転速度が共振帯域で収束することによって実現象としての共振が顕在化した時点で、係る実現象としての共振を回避すべく何らかの措置を講じる場合と較べて実践上遥かに高い利益がもたらされることは言うまでもない。
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の一の態様では、前記第1制御手段は、前記ハイブリッド車両を減速させることにより前記機関回転速度を前記共振帯域外で収束させる。
この態様によれば、固定変速モードにおいて機関回転速度と車速とが一義的な関係を有する点に着目し、機関回転速度を共振帯域外で収束させるにあたって、ハイブリッド車両が減速される。従って、機関回転速度は、最終的に共振帯域よりも低回転側で収束する。第1制御手段の動作概念の範囲で言えば、機関回転速度は、共振帯域外で収束し得る限り、共振帯域よりも高回転側であっても低回転側であってもよいが、元よりロック対象回転要素の誤ロックにより退避走行を余儀なくされる点に鑑みれば、また、実践的見地から加速は制限できても減速を制限することが車両運行上困難である点に鑑みれば、共振帯域よりも低回転側で機関回転速度を収束させる方がより好適なフェールセーフを実現可能である。
尚、この態様では、前記第1制御手段は、前記駆動軸に出力されるトルクを低下させることにより前記ハイブリッド車両を減速させてもよい。
ハイブリッド車両を減速させるにあたっては、駆動軸に供給される内燃機関からの直達トルクを低減させる他にも、予めハイブリッド車両に備わる各種制動手段を作動させる等の措置を講じてもよいし、動作フリーの状態を採り得る電動機を回生駆動して所謂回生制動を試みてもよいが、共振現象の起震源は主として内燃機関であるから、減速を促す内燃機関の直達トルクの低減により、共振の度合いを略同時に緩和し得る点において、本態様は有利に作用する。無論、減速が必ずしも単一の制動プロセスに従ってなされる必要はないから、例えば上記制動手段の制動作用等と協調して、この種のトルクの低減がなされてもよい。
また、「トルクを低下させる」とは、フューエルカット等により内燃機関を機関停止状態に移行することを含む趣旨である。即ち、車両の減速を目的とした極軽負荷領域での運転は、内燃機関の燃焼性能の面からは不利であり、エミッションの悪化を招来する可能性がある場合等においては、自立回転を諦めて電動機によるモータリング運転に切り替えても有意義である。
本発明に係るハイブリッド車両の制御装置の他の態様では、前記ハイブリッド車両は、前記ハイブリッド車両を制動する制動手段を更に備え、前記ハイブリッド車両の制御装置は、前記ハイブリッド車両の後退走行時において前記一の回転要素が前記誤ロック状態となった場合に、前記ハイブリッド車両が停止するように前記制動手段を制御する第2制御手段を更に具備する。
ハイブリッド車両を後退走行させる場合、駆動軸と車軸との間にリバースギアが介在する場合は別として、駆動軸が負回転となるから、固定変速モードでは必然的に内燃機関が負回転領域での動作を余儀なくされる。従って、通常の後退走行は、無段変速モードにおいて電動機の動力のみによりなされ得るが、ロック対象回転要素が誤ロック状態にある場合、そのような経緯とは無関係に内燃機関が負回転駆動される可能性がある。内燃機関は通常、その正回転状態において潤滑油の円滑な供給が実現される構成となっており、逆転状態(負回転状態)では、潤滑油の循環が阻害される可能性がある。
この態様によれば、ハイブリッド車両が後退走行中に、変速モードが強制的に固定変速モードへ移行するロック対象回転要素の誤ロック状態が検出された場合には、例えばECU等の各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等の形態を採り得る第2制御手段によって、車輪に対し物理的な制動力を与えるディスクブレーキ装置やドラムブレーキ装置等の各種制動装置に代表される制動手段が制御され、ハイブリッド車両が可及的に迅速に停止される。このため、内燃機関が逆回転状態となる期間を可及的に短縮することが可能である。
本発明のこのような作用及び他の利得は次に説明する実施形態から明らかにされる。
本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両の構成を概念的に表してなる概略構成図である。 図1のハイブリッド車両におけるハイブリッド駆動装置の構成を概念的に表してなる概略構成図である。 図2のハイブリッド駆動装置に備わるエンジンの一断面構成を例示する模式図である。 図2のハイブリッド駆動装置に備わるブレーキ機構の一断面構成を例示する模式図である。 図4において矢線A方向へ見たブレーキ機構の一断面構成を例示する模式図である。 図4のブレーキ機構のロック作用によりサンギアが非ロック状態からロック状態に状態遷移する過程を説明する模式的な断面図である。 図2のハイブリッド駆動装置における動力分割機構の作用を説明する動作共線図である。 図1のハイブリッド車両においてECUにより実行される誤ロック時退避制御のフローチャートである。 MG1ロックフェイル時の動力分割機構の状態を例示する動作共線図である。 本発明の第2実施形態に係るハイブリッド駆動装置の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
<発明の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の好適な各種実施形態について説明する。
<1:第1実施形態>
<1-1:実施形態の構成>
始めに、図1を参照し、本発明の第1実施形態に係るハイブリッド車両1の構成について説明する。ここに、図1は、ハイブリッド車両1の構成を概念的に表してなる概略構成図である。
図1において、ハイブリッド車両1は、ハイブリッド駆動装置10、PCU(Power Control Unit)11、バッテリ12、車速センサ13、アクセル開度センサ14及びECU100を備えた、本発明に係る「ハイブリッド車両」の一例である。
ECU100は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM等を備え、ハイブリッド車両1の各部の動作を制御可能に構成された電子制御ユニットであり、本発明に係る「判別手段」、「第1制御手段」及び「第2制御手段」の夫々一例である。ECU100は、ROMに格納された制御プログラムに従って、後述する誤ロック時退避制御を実行可能に構成されている。尚、ECU100は、上記各手段の一例として機能するように構成された一体の電子制御ユニットであり、上記各手段に係る動作は、全てECU100によって実行されるように構成されている。但し、本発明に係る上記手段の物理的、機械的及び電気的な構成はこれに限定されるものではなく、例えばこれら各手段は、複数のECU、各種処理ユニット、各種コントローラ或いはマイコン装置等各種コンピュータシステム等として構成されていてもよい。
PCU11は、バッテリ12から取り出した直流電力を交流電力に変換して後述するモータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2に供給すると共に、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2によって発電された交流電力を直流電力に変換してバッテリ12に供給することが可能な不図示のインバータを含み、バッテリ12と各モータジェネレータとの間の電力の入出力を、或いは各モータジェネレータ相互間の電力の入出力(即ち、この場合、バッテリ12を介さずに各モータジェネレータ相互間で電力の授受が行われる)を制御可能に構成された電力制御ユニットである。PCU11は、ECU100と電気的に接続されており、ECU100によってその動作が制御される構成となっている。
バッテリ12は、モータジェネレータMG1及びモータジェネレータMG2を力行するための電力に係る電力供給源として機能する充電可能な蓄電手段である。
車速センサ13は、ハイブリッド車両1の車速Vを検出することが可能に構成されたセンサである。車速センサ13は、ECU100と電気的に接続されており、検出された車速Vは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
アクセル開度センサ14は、ハイブリッド車両1の図示せぬアクセルペダルの操作量たるアクセル開度Taを検出することが可能に構成されたセンサである。アクセル開度センサ14は、ECU100と電気的に接続されており、検出されたアクセル開度Taは、ECU100によって一定又は不定の周期で参照される構成となっている。
ハイブリッド駆動装置10は、ハイブリッド車両1のパワートレインとして機能する動力ユニットである。ここで、図2を参照し、ハイブリッド駆動装置10の詳細な構成について説明する。ここに、図2は、ハイブリッド駆動装置10の構成を概念的に表してなる概略構成図である。尚、同図において、図1と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図2において、ハイブリッド駆動装置10は、エンジン200、動力分割機構300、モータジェネレータMG1(以下、適宜「MG1」と略称する)、モータジェネレータMG2(以下、適宜「MG2」と略称する)、入力軸400、駆動軸500、減速機構600及びブレーキ機構700を備える。
エンジン200は、本発明に係る「内燃機関」の一例たるガソリンエンジンであり、ハイブリッド車両1の主たる動力源として機能するように構成されている。ここで、図3を参照し、エンジン200の詳細な構成について説明する。ここに、図3は、エンジン200の一断面構成を例示する模式図である。尚、同図において、図1及び図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。尚、本発明における「内燃機関」とは、例えば2サイクル又は4サイクルレシプロエンジン等を含み、少なくとも一の気筒を有し、当該気筒内部の燃焼室において、例えばガソリン、軽油或いはアルコール等の各種燃料を含む混合気が燃焼した際に発生する力を、例えばピストン、コネクティングロッド及びクランク軸等の物理的又は機械的な伝達手段を適宜介して駆動力として取り出すことが可能に構成された機関を包括する概念である。係る概念を満たす限りにおいて、本発明に係る内燃機関の構成は、エンジン200のものに限定されず各種の態様を有してよい。
図3において、エンジン200は、気筒201内において燃焼室に点火プラグ(符号省略)の一部が露出してなる点火装置202による点火動作を介して混合気を燃焼せしめると共に、係る燃焼による爆発力に応じて生じるピストン203の往復運動を、コネクティングロッド204を介して、本発明に係る「機関出力軸」の一例たるクランクシャフト205の回転運動に変換することが可能に構成されている。
クランクシャフト205近傍には、クランクシャフト205の回転位置(即ち、クランク角)を検出するクランクポジションセンサ206が設置されている。このクランクポジションセンサ206は、ECU100(不図示)と電気的に接続されており、ECU100では、このクランクポジションセンサ206から出力されるクランク角信号に基づいて、エンジン200の機関回転速度NEが算出される構成となっている。
尚、エンジン200は、紙面と垂直な方向に4本の気筒201が直列に配されてなる直列4気筒エンジンであるが、個々の気筒201の構成は相互に等しいため、図2においては一の気筒201についてのみ説明を行うこととする。また、本発明に係る内燃機関における気筒数及び各気筒の配列形態は、上述した概念を満たす範囲でエンジン200のものに限定されず多様な態様を採り得、例えば、6気筒、8気筒或いは12気筒エンジンであってもよいし、V型、水平対向型等であってもよい。
エンジン200において、外部から吸入された空気は吸気管207を通過し、吸気ポート210を介して吸気バルブ211の開弁時に気筒201内部へ導かれる。一方、吸気ポート210には、インジェクタ212の燃料噴射弁が露出しており、吸気ポート210に対し燃料を噴射することが可能な構成となっている。インジェクタ212から噴射された燃料は、吸気バルブ211の開弁時期に前後して吸入空気と混合され、上述した混合気となる。
燃料は、図示せぬ燃料タンクに貯留されており、図示せぬフィードポンプの作用により、図示せぬデリバリパイプを介してインジェクタ212に供給される構成となっている。気筒201内部で燃焼した混合気は排気となり、吸気バルブ211の開閉に連動して開閉する排気バルブ213の開弁時に排気ポート214を介して排気管215に導かれる。
一方、吸気管207における、吸気ポート210の上流側には、図示せぬクリーナを経て導かれた吸入空気に係る吸入空気量を調節可能なスロットルバルブ208が配設されている。このスロットルバルブ208は、ECU100と電気的に接続されたスロットルバルブモータ209によってその駆動状態が制御される構成となっている。尚、ECU100は、基本的には不図示のアクセルペダルの開度(即ち、上述したアクセル開度Ta)に応じたスロットル開度が得られるようにスロットルバルブモータ209を制御するが、スロットルバルブモータ209の動作制御を介してドライバの意思を介在させることなくスロットル開度を調整することも可能である。即ち、スロットルバルブ208は、一種の電子制御式スロットルバルブとして構成されている。
排気管215には、三元触媒216が設置されている。三元触媒216は、エンジン200から排出されるCO(一酸化炭素)、HC(炭化水素)、及びNOx(窒素酸化物)を夫々浄化することが可能に構成されている。尚、本発明に係る触媒装置の採り得る形態は、このような三元触媒に限定されず、例えば三元触媒に代えて或いは加えて、NSR触媒(NOx吸蔵還元触媒)或いは酸化触媒の各種触媒が設置されていてもよい。
排気管215には、エンジン200の排気空燃比を検出することが可能に構成された空燃比センサ217が設置されている。更に、気筒201を収容するシリンダブロックに設置されたウォータージャケットには、エンジン200を冷却するために循環供給される冷却水(LLC)に係る冷却水温を検出するための水温センサ218が配設されている。これら空燃比センサ217及び水温センサ218は、夫々ECU100と電気的に接続されており、検出された空燃比及び冷却水温は、夫々ECU100により一定又は不定の検出周期で把握される構成となっている。
図2に戻り、モータジェネレータMG1は、本発明に係る「発電機」の一例たる電動発電機であり、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた構成となっている。モータジェネレータMG2は、本発明に係る「電動機」の一例たる電動発電機であり、モータジェネレータMG1と同様に、電気エネルギを運動エネルギに変換する力行機能と、運動エネルギを電気エネルギに変換する回生機能とを備えた構成となっている。尚、モータジェネレータMG1及びMG2は、例えば同期電動発電機として構成され、例えば外周面に複数個の永久磁石を有するロータと、回転磁界を形成する三相コイルが巻回されたステータとを備える構成を有するが、他の構成を有していてもよい。
動力分割機構300は、中心部に設けられた、本発明に係る「回転要素」の一例たるサンギアS1と、サンギアS1の外周に同心円状に設けられた、本発明に係る「回転要素」の他の一例たるリングギアR1と、サンギアS1とリングギアR1との間に配置されてサンギアS1の外周を自転しつつ公転する複数のピニオンギアP1と、これら各ピニオンギアの回転軸を軸支する、本発明に係る「回転要素」の更に他の一例たるキャリアC1とを備えた動力伝達装置である。
ここで、サンギアS1は、サンギア軸310を介してMG1のロータRTに連結されており、その回転速度はMG1の回転速度(以下、適宜「MG1回転速度Nmg1」と称する)と等価である。また、リングギアR1は、駆動軸500及び減速機構600を介してMG2の不図示のロータに結合されており、その回転速度はMG2の回転速度(以下、適宜「MG2回転速度Nmg2」と称する)と等価である。更に、キャリアC1は、エンジン200の先に述べたクランクシャフト205に連結された入力軸400と連結されており、その回転速度は、エンジン200の機関回転速度NEと等価である。尚、ハイブリッド駆動装置10において、MG1回転速度Nmg1及びMG2回転速度Nmg2は、夫々レゾルバ等の回転センサにより一定の周期で検出されており、ECU100に一定又は不定の周期で送出されている。
一方、駆動軸500は、ハイブリッド車両1の駆動輪たる右前輪FR及び左前輪FLを夫々駆動するドライブシャフトSFR及びSFL(即ち、これらドライブシャフトは、本発明に係る「車軸」の一例である)と、デファレンシャル等各種減速ギアを含む減速装置としての減速機構600を介して連結されている。従って、モータジェネレータMG2から駆動軸500に供給されるモータトルクTm(即ち、本発明に係る「動力」の一例である)は、減速機構600を介して各ドライブシャフトへと伝達され、各ドライブシャフトを介して伝達される各駆動輪からの駆動力は、同様に減速機構600及び駆動軸500を介してモータジェネレータMG2に入力される。即ち、MG2回転速度Nmg2は、ハイブリッド車両1の車速Vと一義的な関係にある。
動力分割機構300は、係る構成の下で、エンジン200からクランクシャフト205を介して入力軸400に供給されるエンジントルクTeを、キャリアC1とピニオンギアP1とによってサンギアS1及びリングギアR1に所定の比率(各ギア相互間のギア比に応じた比率)で分配し、エンジン200の動力を2系統に分割することが可能となっている。
より具体的には、動力分割機構300の動作を分かり易くするため、リングギアR1の歯数に対するサンギアS1の歯数としてのギア比ρを定義すると、エンジン200からキャリアC1に対しエンジントルクTeを作用させた場合に、サンギア軸310に現れるトルクTesは下記(1)式により、また駆動軸500に現れるトルクTerは下記(2)式により夫々表される。
Tes=Te×ρ/(1+ρ)・・・(1)
Ter=Te×1/(1+ρ)・・・(2)
尚、本発明に係る「動力分割機構」に係る実施形態上の構成は、動力分割機構300のものに限定されない。例えば、本発明に係る動力分割機構は、複数の遊星歯車機構を備え、一の遊星歯車機構に備わる複数の回転要素が、他の遊星歯車機構に備わる複数の回転要素の各々と適宜連結され、一体の差動機構を構成していてもよい。また、本実施形態に係る減速機構600は、予め設定された減速比に従って駆動軸500の回転速度を減速するに過ぎないが、ハイブリッド車両1は、この種の減速装置とは別に、例えば、複数のクラッチ機構やブレーキ機構を構成要素とする複数の変速段を備えた有段変速装置を備えていてもよい。
制動装置BRは、駆動輪たる右前輪FR及び左前輪FL並びに不図示の左右後輪に対し、制動力を付与可能に構成された、本発明に係る「制動手段」の一例たる公知の4輪ディスクブレーキ装置である。制動装置BRは、不図示のブレーキアクチュエータと、各制動対象車輪に対応して設けられたホイルシリンダと、各ホイルシリンダに接続され、実際に各対象車輪に制動力を付与可能な制動部材とを備えており、ブレーキアクチュエータから適宜供給される油圧に応じてホイルシリンダが制動部材を駆動することによって、各対象車輪に制動力を付与することが可能である。このブレーキアクチュエータは、ECU100と電気的に接続されており、各対象車輪に対する制動力は、ECU100により制御される構成となっている。
ブレーキ機構700は、主たる構成要素としてカム710、クラッチ板720及びアクチュエータ730を含んでなり、サンギアS1の状態を、回転不能なロック状態と回転可能な非ロック状態との間で選択的に切り替え可能に構成された、本発明に係る「ロック手段」の一例たるカムロック式の係合装置である。
ここで、図4を参照し、ブレーキ機構700の詳細な構成について説明する。ここに、図4は、ブレーキ機構700の一断面構成を例示する模式断面図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図4において、ブレーキ機構700は、カム710、クラッチ板720、アクチュエータ730、リターンスプリング740及びカムボール750を備える。
カム710は、サンギア軸310に連結され、サンギア軸310と一体に回転可能な、クラッチ板720と一対をなす略円板状の係合部材である。尚、カム710は、必ずしもサンギア310と直接的に連結されている必要はなく、各種連結部材を介してサンギア310と間接的に連結されていてもよい。
クラッチ板720は、磁性金属材料により構成されると共にカム710と対向配置されてなる、カム710と一対をなす円板状の係合部材である。
アクチュエータ730は、吸引部731、電磁石732及び摩擦部733を含んで構成された装置である。
吸引部731は、磁性金属材料により構成されると共に電磁石732を収容可能に構成された、アクチュエータ730の筐体である。吸引部731は、ハイブリッド駆動装置10の外郭部材と略一体に固定された、本発明に係る「固定部材」の一例たるケースCSに対し固定されている。即ち吸引部731は、係るケースCSと共に本発明に係る「固定部材」の一例として機能する構成となっている。
電磁石732は、バッテリ12からの電力供給を受けた不図示の駆動部から所定の励磁電流が供給された励磁状態において磁力を発生可能に構成された磁石である。励磁状態において電磁石732から発せられる磁力は、磁性金属材料により構成された吸引部731を介して、先述したクラッチ板720を吸引する構成となっている。尚、この駆動部は、ECU100と電気的に接続されており、電磁石732の励磁動作は、ECU100により上位に制御される構成となっている。
摩擦部733は、吸引部731におけるクラッチ板720との対向面に形成された摩擦機能体であり、形成されない場合と較べて、接触状態にある物体の移動をより大きく阻害し得るようにその摩擦係数が設定されている。
リターンスプリング740は、一方の固定端がクラッチ板720に固定され、他方の固定端がカム710に固定されてなる弾性体であり、クラッチ板720をカム710の方向へ付勢している。このため、クラッチ板720は、通常、このリターンスプリング740の付勢を受けて、所定の間隙部GAPを隔てて吸引部731と対向する非接触位置で停止している。
カムボール750は、カム710とクラッチ板720とに挟持された、本発明に係る「介在部材」の一例たる球体である。ブレーキ機構700は、サンギアS1及びサンギア軸310を介してカム710に伝達されるモータジェネレータMG1のトルクTmg1が、このカムボール750を伝達要素としてクラッチ板720に伝達される構成となっている。
ここで、図5を参照し、ブレーキ機構700の構成について更に具体的に説明する。ここに、図5は、図4において矢線A方向にブレーキ機構700を見た模式的な断面図である。尚、同図において、図4と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図5において、カム710及びクラッチ板720の各々における対向面は、夫々中心部へ向かう程、当該各々における、サンギア軸310の伸長方向への厚みが小さくなるように形成されており、上記カムボール750は、通常、両者の対向空間が最も広い中心部付近に挟持されている。このため、クラッチ板720が上記非接触位置にある場合、カム710とクラッチ板720とは、このカムボール750をトルクの伝達要素として、モータジェネレータMG1の回転方向と等しい方向へ略一体に回転する。従って、クラッチ板720が上記非接触位置にある場合、モータジェネレータMG1の回転は、少なくとも実質的には何ら阻害されない。尚、図5では、図示下方がモータジェネレータMG1の正回転方向と定義される。補足すると、モータジェネレータMG1は、係る正回転方向のみならず、係る正回転方向と真逆の負回転方向(図示省略)にも同様に回転可能である。
<1-2:実施形態の動作>
<1-2-1:ブレーキ機構700のロック作用>
ハイブリッド駆動装置10において、ブレーキ機構700は、サンギアS1を本発明に係る「一の回転要素」、即ち先述のロック対象回転要素として、サンギアS1の状態をロック状態と非ロック状態との間で選択的に切り替えることが可能である。ここで、図6を参照して、ブレーキ機構700によるサンギアS1のロック作用について説明する。ここに、図6は、ブレーキ機構700のロック作用によりサンギアS1が非ロック状態からロック状態に状態遷移する過程を説明する模式的な断面図である。尚、同図において、図6と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図6において、図6(a)は、先の図5と同様の状態を表しており、クラッチ板720と摩擦部733との間に間隙部GAPが介在しており、クラッチ板720は、摩擦部733による抑止力の影響を受けることなく回転可能である。このため、カムボール750の作用によりカム710とクラッチ板720とは略一体に回転可能である。ここで、カム710は、サンギア軸310を介してMG1のロータRTに連結されており、このロータRTは、サンギア軸310を介してサンギアS1に連結されている。従って、ハイブリッド駆動装置10において、カム710は、サンギアS1と一体に回転する回転要素として扱うことができる。即ち、図6(a)に示される状態では、サンギアS1もまたクラッチ板720の制約を受けずに回転可能である。この状態は、本発明に係る「非ロック状態」の一例に相当する。
図6(b)には、アクチュエータ730の電磁石732に励磁電流が供給された状態が示される。即ち、この場合、電磁石732から発せられる電磁力が吸引部731を介してクラッチ板720に及び、クラッチ板720は、リターンスプリング740の付勢に打ち勝って上記非接触位置と対極の接触位置まで移動し、吸引部731に吸着される。その結果、間隙部GAPは消滅する。またそれと同時に、摩擦部733がクラッチ板720に対し摩擦力を発揮する形となり、クラッチ板720の正回転又は負回転方向への動作が阻害される。即ち、この状態において、クラッチ板720は、電磁石732と摩擦部733とにより、その動作が阻害され、アクチュエータ730に対し、即ちケースCSに対して静止する。
一方、このようにクラッチ板720が吸引部731に吸着された状態では、消滅した間隙部GAPの代わりに、カムボール750とクラッチ板720との間に間隙部が形成される。従って、カム710がMG1の回転の影響を受けて正回転方向又は負回転方向へ回転すると、カム710とカムボール750のみが、その回転方向へ移動する。尚、ここでは、これらが正回転方向へ移動するものとして説明を継続する。ここで、新たに形成された間隙部は、先に述べたように断面視逆テーパ状となっており、カムボール750が回転方向に進行するにつれて徐々に小さくなり、遂には消滅して再びカム710、カムボール750及びクラッチ板720が相互に接触した状態となる。
図6(c)には、このように再びこれらが接触した状態が示される。この状態でカム710が正回転方向に回転しようとした場合、この逆テーパ形状の対向面の作用によって、カムボール750には、クラッチ板720を更にアクチュエータ730の方向へ押圧する押圧力が発生する。その結果、カム710に対し正回転方向への正トルクが加わっている限りにおいて、電磁石732への励磁を停止しても三者の接触状態が変化することはなく、カム710は、当該押圧力と摩擦部733から与えられる摩擦力とによって所謂セルフロック状態となる。
このセルフロック状態では、カム710もまたクラッチ板720と同様にケースCSに対し静止、即ち固定された状態となる。その結果、カム710と一体に回転するサンギアS1もまたケースCSに対し固定された状態となる。この状態がロック状態である。ロック状態では、サンギアS1の回転速度、即ちMG1回転速度Nmg1がゼロとなる。
<1-2-2:変速モードの詳細>
本実施形態に係るハイブリッド車両1は、サンギアS1の状態に応じて、変速モードとして固定変速モード又は無段変速モードを選択可能である。ここで、図7を参照し、ハイブリッド車両1の変速モードについて説明する。ここに、図7は、動力分割機構300の作用を説明するハイブリッド駆動装置10の動作共線図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図7(a)において、縦軸は回転速度を表しており、横軸には、左から順にモータジェネレータMG1(一義的にサンギアS1)、エンジン200(一義的にキャリアC1)及びモータジェネレータMG2(一義的にリングギアR1)が表されている。ここで、動力分割機構300は遊星歯車機構であり、サンギアS1、キャリアC1及びリングギアR1のうち二要素の回転速度が定まった場合に、残余の一回転要素の回転速度が必然的に定まる構成となっている。即ち、動作共線図上において、各回転要素の動作状態は、ハイブリッド駆動装置10の一動作状態に一対一に対応する一の動作共線によって表すことができる。尚、これ以降適宜、動作共線図上の点を動作点mi(iは自然数)によって表すこととする。即ち、一の動作点miには一の回転速度が対応している。
図7(a)において、MG2の動作点が動作点m1であるとする。この場合、MG1の動作点が動作点m3であれば、残余の一回転要素たるキャリアC1に連結されたエンジン200の動作点は、動作点m2となる。この際、駆動軸500の回転速度を維持したままMG1の動作点を動作点m4及び動作点m5に変化させれば、エンジン200の動作点は夫々動作点m6及び動作点m7へと変化する。
即ち、この場合、モータジェネレータMG1を回転速度制御装置とすることによって、エンジン200を所望の動作点で動作させることが可能となる。この状態に対応する変速モードが、無段変速モードである。無段変速モードでは、エンジン200の動作点(この場合の動作点とは、機関回転速度とエンジントルクTeとの組み合わせによって規定される)は、基本的にエンジン200の燃料消費率が最小となる最適燃費動作点に制御される。尚、当然ながら無段変速モードにおいて、MG1回転速度Nmg1は可変である必要がある。このため、無段変速モードが選択される場合、ブレーキ機構700は、サンギアS1が非ロック状態となるように、その駆動状態が制御される。
ここで補足すると、動力分割機構300において、駆動軸500に先に述べたエンジントルクTeに対応するトルクTerを供給するためには、サンギア軸310にエンジントルクTeに応じて現れる先述のトルクTesと大きさが等しく且つ符合が反転した(即ち、負トルクである)反力トルクをモータジェネレータMG1からサンギア軸310に供給する必要がある。この場合、動作点m3或いは動作点m4といった正回転領域の動作点において、MG1は正回転負トルクの発電状態となる。即ち、無段変速モードにおいては、モータジェネレータMG1(一義的にサンギアS1)を反力要素として機能させることにより、駆動軸500にエンジントルクTeの一部を供給し、且つサンギア軸310に分配されるエンジントルクTeの一部で発電が行われる。駆動軸500に対し要求されるトルクがエンジン直達のトルクで不足する場合には、モータジェネレータMG2から駆動軸500に対し適宜トルクTmg2が供給される。
一方、例えば高速軽負荷走行時等、例えばMG2回転速度Nmg2が高いものの機関回転速度NEが低く済むような運転条件においては、MG1が、例えば動作点m5の如き負回転領域の動作点となる。この場合、モータジェネレータMG1は、エンジントルクTeの反力トルクとして負トルクを出力しており、負回転負トルクの状態となって力行状態となる。即ち、この場合、モータジェネレータMG1からのトルクTmg1は、ハイブリッド車両1の駆動トルクとして駆動軸500に伝達されてしまう。
他方で、モータジェネレータMG2は、駆動軸500に出力される、要求トルクに対し過剰なトルクを吸収するため、負トルク状態となる。この場合、モータジェネレータMG2は、正回転負トルクの状態となって発電状態となる。このような状態においては、MG1からの駆動力をMG2での発電に利用し、この発電電力によりMG1を力行駆動する、といった所謂動力循環と称される非効率な電気パスが生じることとなる。動力循環が生じた状態では、ハイブリッド駆動装置10の伝達効率が低下してハイブリッド駆動装置10のシステム効率(例えば、エンジン200の熱効率×伝達効率等として定義される)が低下し、ハイブリッド車両1の燃費が悪化しかねない。
そこで、ハイブリッド車両1では、予めこのような動力循環が生じ得るものとして定められた運転領域において、ブレーキ機構700によりサンギアS1が先に述べたロック状態に制御される。その様子が図7(b)に示される。サンギアS1がロック状態となると、必然的にモータジェネレータMG1もまたロック状態となり、MG1の動作点は、回転速度がゼロである動作点m8となる。このため、エンジン200の動作点は動作点m9となり、その機関回転速度NEは、車速Vと一義的なMG2回転速度Nmg2により一義的に決定される(即ち、変速比が一定となる)。このようにMG1がロック状態にある場合に対応する変速モードが、固定変速モードである。
固定変速モードでは、本来モータジェネレータMG1が負担すべきエンジントルクTeの反力トルクをブレーキ機構700の物理的な制動力により代替させることができる。即ち、モータジェネレータMG1を発電状態にも力行状態にも制御する必要はなくなり、モータジェネレータMG1を停止させることが可能となる。従って、基本的にモータジェネレータMG2を稼動させる必要もなくなり、MG2は言わば空転状態となる。結局、固定変速モードでは、駆動軸500に現れる駆動トルクが、エンジントルクTeのうち、動力分割機構300により駆動軸500側に分割された直達成分(上記(2)式参照)のみとなり、ハイブリッド駆動装置10は、機械的な動力伝達を行うのみとなって、その伝達効率が向上する。
ハイブリッド車両1において、変速モードは、ECU100によりその都度、ハイブリッド駆動装置10のシステム効率ηsysがより高い変速モードに制御される。この際、ECU100は、予めROMに格納された変速マップを参照する。変速マップは、要求駆動力Ftと車速Vとをパラメータとするマップである。尚、要求駆動力Ftとは、各ドライブシャフトに加わる駆動力の要求値であり、車速センサ13により検出される車速Vとアクセル開度センサ14により検出されるアクセル開度Accとをパラメータとする要求駆動力マップより取得される。
<1-2-4:誤ロック時退避制御の詳細>
ハイブリッド駆動装置10では、選択可能な変速モードとして固定変速モードを備えることにより、よりハイブリッド車両1を効率的に走行させることが可能であるが、それには、前提条件として、ブレーキ機構700が正常に機能していることが必要となる。即ち、ブレーキ機構700が、本来あるべき動作状態を採らない場合には、ブレーキ機構700が、かえってドライバビリティを低下させる要因となりかねない。この際、固定変速モードが選択不能となる分には、先に述べた燃費の悪化等が生じるのみであり比較的影響は小さいものの、本来選択されるべき運転領域以外で誤って固定変速モードが選択された場合には、先に述べたように共振が発生し得るため、その影響が大きくなる。即ち、この種のハイブリッド駆動装置においては、サンギアS1が誤ロックした場合に的確な対処が必要となる。本実施形態に係るハイブリッド車両1では、ECU100により実行される誤ロック時退避制御によって、係る課題が好適に解決される。
尚、サンギアS1は、サンギア軸310を介してMG1のロータRT及びカム710と一体回転する構成となっており、サンギアS1の誤ロックとは、即ちMG1の誤ロック及びカム710の誤ロックと等価である。
ここで、図8を参照し、誤ロック時退避制御の詳細について説明する。ここに、図9は、誤ロック時退避制御のフローチャートである。
図8において、ECU100は、MG1ロックフェイルが発生したか否かを判別する(ステップS101)。尚、「MG1ロックフェイル」とは、MG1、サンギアS1及びカム710の誤ロックを指す。即ち、ステップS101は、本発明に係る「一の回転要素が誤ロック状態にあるか否かを判別する」処理の一例である。
MG1ロックフェイルの発生有無の判別に係る実践的態様は、各種の手法を適用可能である。例えば、変速モードが、先に述べたようにハイブリッド車両1の運転条件(車速V及び駆動力Ft)に応じて選択的に切り替えられる点に鑑みれば、当該運転条件が無段変速モードに該当する場合に、MG1回転速度Nmg1をモニタし、その挙動に基づいてMG1ロックフェイルの有無を判別してもよい。より具体的には、無段変速モードにおいては、過渡期を除けば、MG1回転速度Nmg1が急変することは稀である。一方でMG1ロックフェイルは、過渡期において顕著に発生する限定的現象ではないが、生じた場合には、MG1回転速度Nmg1は比較的急激にゼロ回転に向って低下する。即ち、このような挙動の不整合を検知することにより、MG1ロックフェイルの発生は好適に検出可能である。
MG1ロックフェイルが生じていない場合(ステップS101:NO)、ECU100は、処理をステップS101に戻し、MG1ロックフェイルが発生するまで処理を実質的に待機状態に制御すると共に、MG1ロックフェイルが生じた場合(ステップS101:YES)、MIL(Multi Information Lump:多機能表示灯)を点灯制御する(ステップS102)。尚、MILは、例えば、コンソールパネル、ダッシュボード、或いはメータフード内に設置され、ECU100で電気的に接続されている。少なくともこの段階において、ドライバにMG1ロックフェイルの発生が告知され、退避走行が促される。
MILを点灯制御すると、ECU100は、エンジン200の機関回転速度収束値NELKを算出する(ステップS103)。機関回転速度収束値NELKは、現時点の走行条件において固定変速モードが選択された場合の機関回転速度NEの値であり(即ち、車速と一義的な値である)、機関回転速度収束値NELKは、車速Vと動力伝達機構300のギア比とに基づいた数値演算処理の結果として特定される。ここで、これ以降、適宜図9を併用しつつ説明を継続する。ここに、図9は、MG1ロックフェイル時の動力分割機構300の状態を表す動作共線図である。尚、同図において、図7と重複する箇所には同一の符号を付してその説明を適宜省略することとする。
図8において、機関回転速度収束値NELKが算出されると、ECU100は、NELKが予め設定された共振帯域内の値であるか否かを判別する(ステップS104)。共振帯域に相当する機関回転速度NEの範囲は、予め実験的に、経験的に、理論的又はシミュレーション等に基づいて、エンジン200の工場出荷前にROMに記憶されている。機関回転速度収束値NELKが共振帯域内である場合(ステップS104:YES)、ECU100は、エンジン200に対する燃料の供給を停止しエンジン200をフューエルカット状態として(即ち、本発明に係る「内燃機関のトルクを低下させる」旨の制御の一例である)、ハイブリッド車両1の走行態様を、駆動軸500に対しMG2のモータトルクTmg2を供給することによって実現されるモータリング走行に切り替える(ステップS105)。
続いて、ECU100は、予め設定された退避走行処理を実行する(ステップS106)。ここで、退避走行処理とは、(1)ハイブリッド車両1の前後輪に対し車速Vを所定の退避走行速度Vsfまで低下させるための制動力が付与されるように制動装置BRを制御すること(以下、適宜「制動制御」とする)、及び(2)ハイブリッド車両1の車体後部に設置されたブレーキランプを点灯制御して後続車に減速を知らしめることの二点を含む、事前に策定された安全確保処理である。退避走行処理が実行されると、処理はステップS101に戻され、一連の処理が繰り返される。
図9(a)には、このように機関回転速度収束値NELKが共振帯域内である場合が例示される。即ち、MG1ロックフェイル発生前後でMG2の動作点が動作点m10のまま不変である(即ち、駆動軸500の回転速度が不変である)場合、MG1ロックフェイル発生前後でMG1の動作点が動作点m12から動作点m13に変化したことに伴い、エンジン200の動作点は動作点m11から動作点m14に変化する。ここで、エンジン200の共振帯域が図示ハッチング領域とすると、動作点m14が共振帯域内の動作点であるため、図8ステップS104に係る判断分岐が「YES」となる。
その結果、エンジンモータリングが実行され、先ず起震源となるエンジントルクTeがゼロに低減される。このようにエンジントルクTeを低下させた段階で、ハイブリッド車両1の車速Vは、積極的ではないにせよ低下するが、このような自然減速では、特に高速走行中のMG1ロックフェイルに対する措置としては実践上不十分となり得る。そこで、ステップS106に係る退避走行処理による制動制御によって、車速Vは、エンジン200の動作点を共振帯域よりも低回転側に収束させ得る駆動軸500の回転速度に対応する車速としての退避走行速度Vsfまで低下させられる。
ここで、本実施形態では、MG1ロックフェイルの発生に際して、エンジン200の動作点が共振帯域よりも低回転側に制御される。ここで、概念上は、例えばMG2からのモータトルクTmg2を増大させ、駆動軸500の回転速度を上昇させることによってエンジン200の動作点を共振帯域よりも高速側に引き上げることも可能である。然るに、視覚的にも明らかなように、共振帯域よりも高速側にエンジン200の動作点を維持し続けることは、車両の走行運用上極めて困難である(信号、歩行者、右左折、一時停止等、車両の減速を促す要素が多いため、頻繁に共振帯域を頻繁に通過せざるを得なくなる)。そのため、退避走行処理においては、共振帯域よりも低速側にエンジン200の動作点が制御されるのである。
図9(b)には、機関回転速度収束値NELKが共振帯域よりも高速側である場合が示される。即ち、MG1ロックフェイル発生前後でMG2の動作点が動作点m15のまま不変である(即ち、駆動軸500の回転速度が不変である)場合、MG1ロックフェイル発生前後でMG1の動作点が動作点m17から動作点m13に変化したことに伴い、エンジン200の動作点は動作点m16から動作点m18に変化する。ところが、動作点m18は、共振帯域よりも高速側の動作点であり、共振は、少なくともMG1ロックフェイルの発生に伴う形では生じない。尚、この場合、後述するように、ステップS107に係る判断分岐が「NO」となる。
図8において、機関回転速度収束値NELKが共振帯域外である場合(ステップS104:NO)、ECU100は、更に、機関回転速度収束値NELKが共振帯域よりも低速側であるか否かを判別する(ステップS107)。機関回転速度収束値NELKが共振帯域よりも高速側に位置する場合(ステップS107:NO)、ECU100は、その走行状態を維持し、処理をステップS101に戻す。但し、係る走行状態の維持が困難となり、エンジン200の動作点が共振帯域内に入らざるを得なくなった時点で、上述したステップS105及びS106と同等の退避措置が講じられる。
一方、図9(c)には、機関回転速度収束値NELKが共振帯域よりも低速側である場合が示される。即ち、MG1ロックフェイル発生前後でMG2の動作点が動作点m19のまま不変である(即ち、駆動軸500の回転速度が不変である)場合、MG1ロックフェイル発生前後でMG1の動作点が動作点m21から動作点m13に変化したことに伴い、エンジン200の動作点は動作点m20から動作点m22に変化する。ところが、動作点m22は、共振帯域よりも低速側の動作点であり、共振帯域は、エンジン200の動作点遷移に伴って過渡的に通過するに過ぎない。従って、共振は、少なくともMG1ロックフェイルの発生に伴う形では生じない。尚、この場合、後述するように、ステップS107に係る判断分岐が「YES」となる。
機関回転速度収束値NELKが共振帯域よりも低速側である場合(ステップS107:YES)、何らの対策を講じずとも、エンジン200の動作点は共振帯域よりも低速側に移動する。このため、ハイブリッド車両1が前進走行中である限りにおいて、ECU100は、処理をステップS101に戻してもよい。一方、ハイブリッド車両1が後退走行を行っている場合には、然るべき対策が必要となる。
引き続き図9(c)を参照すると、無段変速モードにおいてハイブリッド車両1を後退走行させる場合、例えば、MG2の動作点を動作点m23とし、エンジン200の動作点が共振領域を回避するため動作点m22に制御されているとする。この場合、MG1の動作点は、動作点m24である。この状態においてMG1ロックフェイルが生じ、MG1の動作点が動作点m13に変化すると、MG2の動作点が動作点m23のまま変化しないとすれば、エンジン200の動作点は動作点m25となる。
ここで、動作点m25は、負回転領域の動作点であり、即ちこの場合、エンジン200は、逆回転状態となる。エンジン200は、MG1及びMG2と異なり、基本的に正回転領域での使用のみに適合するように構成されており、負回転領域で動作させた場合には、例えば、エンジンオイルの循環に不具合が生じて、場合により、一部焼き付き等が生じかねない。
図8に戻り、このように、ハイブリッド車両1では、後退走行時にMG1ロックフェイルが生じると、エンジン200が予め想定されていない動作環境での動作を余儀なくされる。このため、ECU100は、機関回転速度制限値NELKが共振帯域よりも低回転側である場合(ステップS107:YES)、ハイブリッド車両1が後退走行中であるか否かを判別する(ステップS108)。ハイブリッド車両1が後退走行中である場合(ステップS108:YES)、ECU100は、ステップS105及びステップS106と同様にして、エンジン200をフューエルカット状態とし(ステップS109)且つ退避走行処理を実行する(ステップS110)。
また、ECU100は、車速Vがゼロ以上であるか否か、即ち、エンジン200が少なくとも逆回転状態を脱したか否かを判別する(ステップS111)。車速Vがゼロ未満である場合(ステップS111:NO)、ECU100は、ステップS109及びステップS110を繰り返し実行する。車速Vがゼロ以上となった場合(ステップS111:YES)、ECU100は、処理をステップS101に戻し一連の処理を繰り返す。
一方、ステップS108においてハイブリッド車両1が後退走行中でない場合(ステップS108:NO)、ECU100は、車速Vの上昇側に、エンジン200の動作点を共振帯域に進入させないための制限値を設定し、この制限値以下でハイブリッド車両1を走行させる(ステップS112)。ステップS112が実行されると、処理はステップS101に戻される。誤ロック時退避制御は、以上のようにして実行される。
このように、本実施形態に係る誤ロック時退避制御によれば、MG1ロックフェイルが生じた場合に、エンジン200の動作点が共振帯域内で収束する場合には、エンジントルクTeの低減(フューエルカット)及びブレーキングによって、迅速且つ正確にエンジン200の動作点が共振帯域よりも低速側の領域に変更される。このため、MG1ロックフェイルによるハイブリッド車両1のNV性能の低下を好適に抑制することが可能である。
本実施形態に係る効果について補足すると、MG1ロックフェイルの発生及びそれに伴う共振の発生について何らの考慮もされない場合、例えば共振が回避されずにハイブリッド車両1が過剰な振動状態に置かれる可能性がある。また、実現象としての共振が生じたことを例えば振動センサ等により検出して共振現象の回避を図ることは実践上必ずしも困難ではないものの、実現象としての共振が生じない限りは、実践することは困難であるから、共振が抑制されるまでの相応の期間については、何らの効果も得られない。それに対し、本実施形態によれば、予めMG1ロックフェイルの存在が、少なからず生じ得る現象として考慮されており、MG1ロックフェイル発生時に機関回転速度収束値NELKが共振帯域内にあるか否かを判別することにより、極めて迅速にMG1ロックフェイルへの対処が可能となっている。このため、理想的には、共振が生じることを未然に防ぐことが可能となり、例え生じたとしてその期間を可及的に短縮することが可能となるのである。
また、機関回転速度収束値NELKは、MG1ロックフェイルの発生とは無関係に算出することが可能であり、現時点でMG1ロックフェイルが生じた場合にエンジン200の動作点或いは機関回転速度が共振帯域内に収束するか否かについては、MG1ロックフェイルの発生以前にその判断を下しておくこともできる。この場合、MG1ロックフェイルが発生した場合には、既になされた判断(例えば、実践上は、フラグ等により管理されてもよい)に基づいて、極めて迅速な対処が可能であり、処理負荷を分散できる点においても顕著に効果的である。
<第2実施形態>
上記第1実施形態においては、ハイブリッド駆動装置10が固定変速モードを採るに際して、MG1がロックされる(正確には、サンギアS1及びカム710を介してMG1がロックされる)構成を採る。然るに、固定変速モードを得るに際してのハイブリッド駆動装置の構成は、この種のMG1ロックに限定されない。ここで、図10を参照し、他のハイブリッド駆動装置の構成について説明する。ここに、図10は、本発明の第2実施形態に係るハイブリッド駆動装置20の構成を概念的に表してなる概略構成図である。尚、同図において、図2と重複する箇所には同一の符合を付してその説明を適宜省略することとする。
図10において、ハイブリッド駆動装置20は、動力分割機構300に代えて、動力分割機構800を備える点において、ハイブリッド駆動装置10と相違する構成となっている。動力分割機構800は、複数の回転要素により構成される差動機構として、シングルピニオンギア型の第1遊星歯車機構810及びダブルピニオン型の第2遊星歯車機構820を備えた、所謂ラビニヨ型遊星歯車機構の形態を採る。
第1遊星歯車機構810は、サンギア331、キャリア812及びリングギア813並びに軸線方向に自転し且つキャリア812の自転により公転するようにキャリア812に保持された、サンギア811及びリングギア813に噛合するピニオンギア814を備え、サンギア811にモータジェネレータMG1のロータが、キャリア812に入力軸400が、またリングギア813に駆動軸500が夫々連結された構成となっている。
第2遊星歯車機構820は、サンギア821、キャリア822及びリングギア823並びに軸線方向に自転し且つキャリア822の自転により公転するように夫々キャリア822に保持された、サンギア821に噛合するピニオンギア825及びリングギア823に噛合するピニオンギア824を備え、サンギア821にブレーキ機構700のカム710(不図示)が連結された構成となっている。即ち、本実施形態においては、サンギア821が、本発明に係る「一の回転要素」の他の一例として機能する。
このように、動力分割機構800は、全体として第1遊星歯車機構810のサンギア811、第2遊星歯車機構820のサンギア821(ロック対象回転要素)、相互に連結された第1遊星歯車機構810のキャリア812及び第2遊星歯車機構820のリングギア823からなる第1回転要素群、並びに相互に連結された第1遊星歯車機構810のリングギア813及び第2遊星歯車機構820のキャリア822からなる第2回転要素群の、合計4個の回転要素を備えている。
ハイブリッド駆動装置20によれば、サンギア821がロック状態となり、その回転速度がゼロとなると、車速Vと一義的な回転速度を有する第2回転要素群と、このサンギア821とによって、残余の一回転要素たる第1回転要素群の回転速度が規定される。第1回転要素群を構成するキャリア812は、エンジン200(不図示)のクランクシャフト205に連結された入力軸400に連結されているため、結局エンジン200の機関回転速度Neは、車速Vと一義的な関係となって、固定変速モードが実現されるのである。このように、固定変速モードは、ハイブリッド駆動装置10以外の構成においても実現可能であり、それに合わせて、ブレーキ機構700のロック対象も適宜変更されてよい。いずれにせよ本発明に係るハイブリッド車両の制御装置は、ロック対象回転要素が誤ロック状態にある場合にもNV性能の低下を好適に抑制可能である。
尚、エンジン200の動作点が共振帯域内で収束する場合の退避走行処理(例えば、ステップS106)の実践的態様は、本実施形態のものに限定されない。例えば、起震源たるエンジン200の物理振動を低減する観点からは、エンジン200におけるシリンダ201の内圧を低下させるのも有効である。この場合、エンジン200に通常備わり得るVVT(Variable Valve Timing)等の各種可変動弁装置を利用して、フューエルカット後の吸排気弁のバルブタイミングを変更し、例えば圧縮工程において排気バルブ213を開弁させ、所謂デコンプを実行してもよい。
尚、本実施形態においては、本発明に係る「ロック手段」の一例として、カムロック装置としてのブレーキ機構700を備えるが、本発明に係る「ロック手段」としては、係るセルフロック式の係合装置の他に、湿式多板ブレーキ等の油圧係合装置或いは電磁ドグクラッチ等の回転同期噛合装置等の各種装置を適用可能である。いずれにせよ、ロック対象回転要素(上記実施形態ではカム710でありサンギアS1である)が誤ロック状態に陥る可能性はゼロとはならない。
本発明は、上述した実施形態に限られるものではなく、請求の範囲及び明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う誤ロック防止装置もまた本発明の技術的範囲に含まれるものである。
本発明は、回転要素のロックにより変速モードとして固定変速モードと無段変速モードとを採り得るハイブリッド車両に利用可能である。
1…ハイブリッド車両、10…ハイブリッド駆動装置、20…ハイブリッド駆動装置、100…ECU、200…エンジン、205…クランクシャフト、300…動力分割機構、310…サンギア軸、S1…サンギア、C1…キャリア、R1…リングギア、MG1…モータジェネレータ、MG2…モータジェネレータ、400…入力軸、500…駆動軸、600…減速機構、700…ブレーキ機構、800…動力分割機構、BR…制動装置。

Claims (4)

  1. 内燃機関と、発電機と、車軸に連結される駆動軸に連結され該駆動軸との間で動力の入出力が可能な電動機とを少なくとも含む動力供給要素と、
    前記内燃機関の機関出力軸、前記発電機の出力軸及び前記駆動軸に夫々連結されてなる回転要素を含む相互に差動回転可能な複数の回転要素を備え、前記駆動軸に対し前記内燃機関の動力の少なくとも一部を供給可能な動力分割機構と、
    前記複数の回転要素のうち一の回転要素の状態を、固定部材から解放された回転可能な非ロック状態と該固定部材に固定された回転不能なロック状態との間で切り替え可能なロック手段と
    を備え、
    前記非ロック状態に対応し且つ前記機関出力軸の回転速度と前記駆動軸の回転速度との比たる変速比が連続的に可変な無段変速モードと、前記ロック状態に対応し且つ該変速比が固定される固定変速モードとを選択可能に構成されてなるハイブリッド車両の制御装置であって、
    前記一の回転要素が誤ロック状態にあるか否かを判別する第1判別手段と、
    前記一の回転要素が誤ロック状態にあると判別された場合に、前記内燃機関の機関回転速度が所定の共振帯域内で収束するか否かを判別する第2判別手段と、
    前記機関回転速度が前記共振帯域内で収束すると判別された場合に、前記機関回転速度が前記共振帯域外で収束するように前記ハイブリッド車両を制御する第1制御手段と
    を具備することを特徴とするハイブリッド車両の制御装置。
  2. 前記第1制御手段は、前記ハイブリッド車両を減速させることにより前記機関回転速度を前記共振帯域外で収束させる
    ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両の制御装置。
  3. 前記第1制御手段は、前記駆動軸に出力されるトルクを低下させることにより前記ハイブリッド車両を減速させる
    ことを特徴とする請求項2に記載のハイブリッド車両の制御装置。
  4. 前記ハイブリッド車両は、前記ハイブリッド車両を制動する制動手段を更に備え、
    前記ハイブリッド車両の制御装置は、
    前記ハイブリッド車両の後退走行時において前記一の回転要素が前記誤ロック状態となった場合に、前記ハイブリッド車両が停止するように前記制動手段を制御する第2制御手段を更に具備する
    ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のハイブリッド車両の制御装置。
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