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JP2010114200A - 希土類磁石の製造方法 - Google Patents

希土類磁石の製造方法 Download PDF

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JP2010114200A
JP2010114200A JP2008284314A JP2008284314A JP2010114200A JP 2010114200 A JP2010114200 A JP 2010114200A JP 2008284314 A JP2008284314 A JP 2008284314A JP 2008284314 A JP2008284314 A JP 2008284314A JP 2010114200 A JP2010114200 A JP 2010114200A
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Toshiharu Suzuki
俊治 鈴木
Masahiro Hiraoka
将宏 平岡
Takao Yabumi
崇生 藪見
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Daido Steel Co Ltd
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Daido Steel Co Ltd
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Abstract

【課題】高保磁力を有する希土類磁石を得やすい製造方法を提供すること。
【解決手段】R114B相(但し、R1:希土類ランタニド元素から選択される少なくとも1種の元素、X:FeまたはFeの一部をCoで置換したもの)を主相とする結晶粒を有し、かつ、結晶粒径が1μm以下である希土類磁石の表面にR2金属および/またはR2系合金(但し、R2:Dy、TbおよびHoから選択される少なくとも1種の元素)を接触させ、結晶粒径が1μmを越えないように熱処理を施し、磁石内にR2元素を拡散させる。上記R2系合金は、副元素として、Cu、Al、Ga、Ge、Sn、In、Si、P、Coから選択される少なくとも1種の元素を含んでいると良い
【選択図】なし

Description

本発明は、希土類磁石の製造方法に関するものである。
従来、Nd−Fe−B系希土類磁石は、ハードディスクドライブのボイスコイルモータ(VCM)や磁気共鳴診断装置(MRI)等、主に室温環境下で使用されてきた。そのため、これまでほとんど耐熱性は要求されていなかった。
近年では、Nd−Fe−B系希土類磁石は、一般車のEPSモータやハイブリッド自動車(HEV)の駆動モータ、FA(ロボットや工作機械)用モータ等への応用が拡大している。このように応用範囲が拡大するにつれ、Nd−Fe−B系希土類磁石には、比較的高温環境下での使用に耐えうる耐熱性が要求されるようになっている。この傾向は、特に自動車用途の場合に顕著である。
希土類磁石の耐熱性を高めるためには、保磁力を増加させることが最も一般的な方法であり、古くからNd−Fe−B系合金溶解時にDyやTb等を添加する方法がとられてきた。最近では、希土類磁石表面からDy元素を内部に拡散させることにより保磁力を増加させる試みがなされている。
例えば、非特許文献1には、Dy粉末やDyF粉末をコートしたNd−Fe−B系焼結磁石をAr雰囲気中にて800℃〜900℃、1〜10時間熱処理する技術が開示されている。
また、特許文献1には、希土類焼結磁石の表面に、スパッタリング法によりDyやTbの金属膜を成膜し、850℃で10分間熱処理することにより、Dy等を磁石内部に熱拡散させる希土類焼結磁石の製造方法が開示されている。
また、特許文献2には、還元剤であるCaHを用いてDyFを800℃〜1100℃の温度条件で還元処理し、Nd−Fe−B系焼結磁石表面から内部の粒界相にDy元素を拡散浸透させるNd−Fe−B系焼結磁石の粒界改質方法が開示されている。
また、特許文献3には、Nd−Fe−B系焼結磁石の表面にDyF粉末を付着させ、Ar雰囲気中900℃で1時間という条件で熱処理する希土類焼結磁石の製造方法が開示されている。
また、特許文献4には、蒸発させたDy原子をNd−Fe−B系焼結磁石の表面に付着させ、900℃〜1000℃で熱処理する希土類焼結磁石の製造方法が開示されている。
K.Hirota,H.Nakamura,T.Minowa,and M.Honshima,"Coercivity Enhancement by the Grain Boundary Diffusion Process to Nd-Fe-B Sintered Magnets",IEEE Trans.Magn.,vol.42,no.10,pp2909-2911,Oct.2006. 特開2004−304038号公報 国際公開第WO2006/064848号パンフレット 国際公開第WO2006/043348号パンフレット 国際公開第WO2008/023731号パンフレット
しかしながら、従来技術は、以下の点で問題があった。
すなわち、Nd−Fe−B系焼結磁石は、原料粉末の粒径を小さくし過ぎると酸化や発火の問題が生じる。そのため、原料粉末の大きさはジェットミル粉末でも3μm程度が限度であり、これを1100℃程度の温度で焼結し、磁石の結晶粒径を現行の約5μm以下とすることは工業的に困難である。それ故、焼結磁石の結晶粒径をこれ以上細かくすることで保磁力を向上させることは技術的に難易度が高かった。
一方、最近では、焼結ではなく、ホットプレス等の熱間成形や、さらに熱間成形後に熱間押し出し等の熱間塑性加工を経て製造される磁石もある。この種の磁石は、結晶粒径を約1μm以下とすることが可能である。そのため、高保磁力化に有利ではあるものの、さらにその保磁力を向上させたいという要望がある。
上記要望を満たすため、上述した従来の焼結磁石におけるDy拡散技術を適用することにより、さらなる高保磁力化を図ることが考えられる。しかしながら、上記焼結磁石の技術は、DyF粉末の還元やDy金属蒸気の発生の条件がいずれも900℃〜1000℃と高温である。
それ故、結晶粒径が1μm以下の希土類磁石に対して、上記焼結磁石の技術をそのまま適用すると、微細結晶が粒成長を生じて、Dy拡散による保磁力の増加と粒成長による保磁力の低下とが同時に生じて、保磁力向上効果が相殺されてしまう。なお、結晶粒径が大きくなると、磁区が不安定となって保磁力が低下することは理論的に解析され、広く知られている。
また、CaH等の水素化物を用いてDyF粉末の還元を行うことにより、より低温でDy還元を生じさせ、粒成長を抑制することも考えられる。
しかしながら、磁石内に水素が侵入すると、Nd等の磁石の主要成分と化合して、NdH等の化合物を生成し、これにより粒界組織が変質して保磁力が低下してしまう傾向がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、本発明が解決しようとする課題は、高保磁力を有する希土類磁石を得やすい製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するため、本発明に係る希土類磁石の製造方法は、R114B相(但し、R1:希土類ランタニド元素から選択される少なくとも1種の元素、X:FeまたはFeの一部をCoで置換したもの)を主相とする結晶粒を有し、かつ、結晶粒径が1μm以下である希土類磁石の表面にR2金属および/またはR2系合金(但し、R2:Dy、TbおよびHoから選択される少なくとも1種の元素)を接触させ、結晶粒径が1μmを越えないように熱処理を施し、磁石内にR2元素を拡散させることを要旨とする。
ここで、上記希土類磁石は、少なくとも熱間成形を経て形成されたものであると良い。
また、上記R2系合金は、副元素として、Cu、Al、Ga、Ge、Sn、In、Si、P、Coから選択される少なくとも1種の元素を含んでいると良い。
また、上記熱処理時の熱処理温度は、500℃〜800℃の範囲内にあることが好ましい。
また、上記熱処理の後、上記熱処理時の温度以下の温度にてさらに熱処理を行うことが好ましい。
本発明に係る希土類磁石の製造方法では、R114B相(但し、R1:希土類ランタニド元素から選択される少なくとも1種の元素、X:FeまたはFeの一部をCoで置換したもの)を主相とする結晶粒を有し、かつ、結晶粒径が1μm以下である希土類磁石の表面にR2金属および/またはR2系合金(但し、R2:Dy、TbおよびHoから選択される少なくとも1種の元素)を接触させ、結晶粒径が1μmを越えないように熱処理を施し、磁石内にR2元素を拡散させる。そのため、高保磁力を有する希土類磁石を製造することができる。この理由は以下の通り推察される。
すなわち、上記製造方法では、希土類焼結磁石にDy元素等を粒界拡散させる方法と比較して、希土類焼結磁石よりも相対的におよそ一桁結晶粒径が小さい希土類磁石にR2元素を拡散させることになる。それ故、比較的僅かなR2元素の拡散量、拡散距離でも十分にR2元素を結晶粒界に行き渡らせることができ、保磁力を向上させやすいものと推察される。
また、上記製造方法では、R2金属および/またはR2系合金を用いている。そのため、例えば、R2のフッ化物をR2へ還元する従来の方法と比較して、還元が不要になる。したがって、R2元素の拡散よりも高い温度が必要となるR2金属への還元過程を省略でき、その分、熱処理の低温化を図ることが可能となり、結晶粒成長に伴う保磁力低下を防止できる。さらに、磁石内で化合物を形成して保磁力低下の原因となる水素等の還元剤成分が磁石内に入ることもない。それ故、保磁力を向上させやすいものと推察される。
ここで、上記希土類磁石が少なくとも熱間成形を経て形成されたものである場合には、原料合金粉末の結晶粒径が超急冷法あるいはHDDR法で製造されるいずれの場合にも1μm以下であることから、焼結温度の約1100℃より低温の約700〜800℃で熱間成形しても粒成長度合が小さく、出来上がりの磁石の結晶粒径は1μm以下に留まり、その結果として焼結磁石よりも保磁力が高い磁石を得ることが容易となる。
また、副元素として特定の元素を含むR2系合金を用いる場合、R2金属単体と比較してR2系合金は融点が低い。そのため、同じ温度での熱処理であれば、R2系合金を用いる方が、R2元素の磁石内への熱拡散の進行を促進させることができる。さらに、融点が低い分、熱処理温度の低温化を図ることも可能となる。それ故、粒成長防止効果と合わせて高保磁力を有する希土類磁石を得やすくなる。
また、熱処理時の熱処理温度が500℃〜800℃の範囲内である場合には、R2元素の結晶粒界相への拡散効果と熱処理による結晶粒の粗大化抑制効果とのバランスに優れるため、高保磁力を有する希土類磁石を得やすくなる。
また、上記熱処理の後、上記熱処理時の温度以下の温度にてさらに熱処理を行う場合には、さらに保磁力を向上させやすくなる。これは、時効効果により、主結晶粒の周囲にR2元素を含む粒界相が均一に被覆されやすくなるためと推察される。
以下、本発明の一実施形態に係る希土類磁石の製造方法(以下、「本製造方法」ということがある。)について詳細に説明する。
本製造方法は、特定の希土類磁石の表面にR2金属および/またはR2系合金を接触させ、特定の熱処理を施すことにより、磁石内にR2元素を拡散させて高保磁力を有する希土類磁石を製造する方法である。
1.特定の希土類磁石の準備
ここで、本製造方法で準備する希土類磁石は、大きさが1μm以下のR114B相を主相とする結晶粒を有し、その周囲をR1元素リッチな粒界相が薄く取り囲んだ結晶組織をもっている。
上記R1は、希土類ランタニド元素から選択される少なくとも1種の元素である。好ましくは、上記R1は、希土類元素の中で比較的資源的に豊富で、かつ、優れた磁気特性を示す等の観点から、Nd、Pr、あるいは、Ndおよび/またはPrを含む組み合わせであると良い。一方、上記Xは、FeまたはFeの一部をCo等で置換したものである。上記Xは、磁気特性、特に、飽和磁束密度が大きい、廉価である等の観点から、好ましくは、Feを主体とするのが良い。
上記R114B相としては、具体的には、例えば、 NdFe14B相、PrFe14B相、Dy元素が一部置換した(Nd、Dy)Fe14B相などを例示することができる。
また、本製造方法で準備する希土類磁石は、その結晶粒径が1μm以下である。上記結晶粒径とは、R114B結晶のC面を撮影した画像(倍率:1万倍)に数本の直線を引き、総数50個の結晶粒について測定された長さの平均値のことである。
上記結晶粒径は、好ましくは、熱処理後の結晶粒径を小さくでき、高保磁力化に寄与しやすくするため、原料合金粉末を超急冷法によって製造する際にロール周速度を可変させて合金粉末内部の結晶粒径を制御する観点から、800nm以下、より好ましくは、500nm以下、さらに好ましくは、300nm以下にすると良い。なお、上記結晶粒径の下限は特に限定されるものではないが、アモルファス相の残存は保磁力を低下させる傾向があるので留意すると良い。
また、本製造方法で準備する希土類磁石の形態は、特に限定されるものではなく、用途等に応じて、円筒状、角筒状等の筒状、円柱状、角柱状等の柱状、円板状等の板状、角形状などの形態を適宜選択することができる。
上述したように、本製造方法で準備する希土類磁石は、その結晶粒径が1μm以下であるが、このような微細な結晶粒径を有する磁石は、1000℃以上の高温の焼結プロセスを用いて作製することはできない。しかしながら、上述の急冷合金粉末を原料として用い、熱間成形や、熱間成形および熱間成形加工を適用すれば比較的簡単に準備することが可能である。以下に、本製造方法で使用する希土類磁石の作製方法の一例について説明する。
先ず、R1−X−B系合金粉末を準備する。ここで、R1、Xについては上述した通りである。R1−X−B系合金におけるR1の含有量は、保磁力と残留磁束密度の双方を高く維持する観点から、好ましくは、28〜32質量%、より好ましくは28.5〜31質量%の範囲内とすると良い。
また、XとしてFeの一部をCoで置換したものを用いる場合、Coは、R114B化合物のキュリー温度を上昇させる、耐食性を向上させる効果があるが、その一方、過剰な置換は保磁力および飽和磁束密度をともに低下させる傾向があるため、好ましくは、6質量%以下、より好ましくは、3質量%以下とすると良い。
また、Bの含有量は、R114B化合物を生成させやすくなる等の観点から、好ましくは、0.8〜1.2質量%の範囲内、より好ましくは、0.9〜1.0質量%の範囲内とすると良い。Bの含有量が過度に少なくなると、R114B化合物の生成量が不足し、逆にBの含有量が過度に多くなると、FeB等のホウ化物が生成し、残留磁束密度が低下しやすくなる傾向がある。
また、R1−X−B系合金は、上記元素に加え、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Zr、Nb、Mo、In、Ga、Sn、Hf、TaおよびWから選択される少なくとも1種の添加元素を含んでいても良い。これら元素は結晶粒界相に適量介在することで、結晶粒の均一化や保磁力の向上に役立つからである。これら添加元素の含有量は、残留磁束密度の低下を抑制しつつ、保磁力の向上を図る等の観点から、好ましくは、5質量%以下、より好ましくは、2質量%以下、さらに好ましくは、1質量%以下であると良い。
上記R1−X−B系合金粉末の作製方法としては、超急冷法を好適に用いることができる。具体的には、例えば、Nd−Fe−B系合金、Nd−Fe−Co−B系合金、Pr−Fe−B系合金、Pr−Fe−Co−B系合金、(Nd,Pr)−Fe−B系合金等、所定の成分組成を有するR1−X−B系合金を、真空またはアルゴン等の不活性ガス雰囲気中、1200℃以上の温度で溶解した後、その溶湯をオリフィスから抜熱性の高い回転ロール(銅製回転ロール等)に射出して超急冷(例えば、回転ロール周速度:10m/秒〜30m/秒で冷却)する。これにより、長さが数十mmで厚さが約20〜50μm程度であり、内部が約10〜50nm程度の微結晶粒と一部がアモルファスから構成されている、薄片状粉末が得られる。そして、この薄片状粉末を、衝撃式気流粉砕機などを用いて粉砕し、必要に応じて、長辺が約300μm以下となるように篩い分けを行うなどすれば、R1−X−B系合金粉末を得ることができる。このようにして製造されるR1−X−B系合金粉末(超急冷粉末)は、磁気的に等方性の粉末である。
また、上記R1−X−B系合金粉末の他の作製方法としては、HDDR法を好適に用いることができる。具体的には、例えば、上記所定の成分組成を有するR1−X−B系合金を溶解鋳造して得たインゴットに、800℃前後の高温で水素を吸蔵させて放出させることにより、R1−X−B系合金粉末を得る方法等が挙げられる。この方法によれば、インゴットに高温で水素を吸蔵させて放出させることで、インゴットは数百μm程度に粉砕されるとともに数百nmの大きさの微細な再結晶が方位をそろえて析出した結晶組織をもつ粉末が得られる。このようにして製造されるR1−X−B系合金粉末(いわゆる、HDDR粉末)は、磁気的に異方性を有する粉末である。
次に、得られたR1−X−B系合金粉末を冷間成形し、冷間成形体を作製する。具体的には、得られたR1−X−B系合金粉末を冷間プレス機の金型に充填し、筒状、柱状、板状などの各種の形状を有する冷間成形体を成形すれば良い。
この冷間成形工程では、基本的には、R1−X−B系合金粉末を固化できれば良い。冷間成形体の真密度は、取扱い時の強度、プレス圧力や金型寿命等の観点から、好ましくは、40〜70%、より好ましくは、50〜70%の範囲内にすると良い。
冷間成形時の圧縮成形圧力としては、例えば、2〜4ton/cm程度、圧力保持時間としては、1秒〜10秒間程度を例示することができる。なお、通常、室温では酸化がほとんど進行しないため、大気雰囲気中にて成形を行うが、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気中で成形を行っても良い。
ここで、磁気的に等方性を有するR1−X−B系合金粉末を原料粉末として用いる場合には、基本的に上述の手順で冷間成形体を成形すれば良い。
一方、磁気的に異方性を有するR1−X−B系合金粉末(HDDR粉末)を原料粉末として用いる場合には、上記冷間成形時に、直流磁場またはパルス磁場等による磁場を印加し、R1−X−B系合金粉末を金型内で配向させ、磁気的に異方性の冷間成形体を成形すると良い。このようにした場合には、磁気的異方性を付与するための、後述する熱間塑性加工を行う必要がなくなり、工程簡略化等による生産性の向上に寄与できる。
次に、得られた冷間成形体を熱間成形し、熱間成形体を形成する。具体的には、得られた熱間成形体の表面に黒鉛系等の潤滑材を塗布し、これをホットプレス機に装填し、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中、真空中、あるいは大気中にて、金型を加熱し、冷間成形体を加圧緻密化させれば良い。
上記熱間成形法としては、ホットプレスを好適に適用することができるが、それ以外にも、加熱と加圧とさらに高電流を印加して緻密化を促進するSPS(スパーク・プラズマ・シンタリング)なども適用することが可能である。
上記加熱温度は、緻密化と粒成長の抑制効果とのバランス等の観点から、好ましくは、600〜900℃、より好ましくは、700〜850℃の範囲内にあると良い。
熱間成形時の圧縮成形圧力としては、例えば、2〜4ton/cm程度、圧力保持時間としては、5秒〜20秒間程度を例示することができる。
熱間成形後の熱間成形体の密度は、次工程の熱間塑性加工時におけるヒビや亀裂防止等の観点から、好ましくは真密度の、97〜100%、より好ましくは98〜100%、さらに好ましくは99.5〜100%の範囲内にあると良い。
なお、原料粉末として、磁気的に等方性を有するR1−X−B系合金粉末を用いた場合には、上記にて得られた熱間成形体をさらに熱間塑性加工し、得られた熱間塑性加工体が、準備する希土類磁石になる。一方、原料粉末として、磁気的に異方性を有するR1−X−B系合金粉末(HDDR粉末)を用いた場合には、上記にて得られた熱間成形体が、準備する希土類磁石になる。そのため、以下は、前者の場合について説明したものである。
原料粉末として、磁気的に等方性を有するR1−X−B系合金粉末を用いた場合、得られた熱間成形体をさらに熱間塑性加工し、熱間塑性加工体を形成する。上記熱間塑性加工法としては、具体的には、例えば、熱間押し出し、熱間引き抜き、熱間鍛造、熱間圧延などを例示することができる。これらは1または2以上組み合わせて行っても良い。筒状や板状に加工する場合には、結晶粒の配向特性や材料歩留まり等の観点から、押し出し法を好適に用いることができる。この場合、例えば、押出しプレス機を用い、熱間成形で用いた金型と寸法の異なる金型を用いて、熱間成形体を加圧押し出しするなどすれば良い。
上記熱間塑性加工では、例えば、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中、真空中、あるいは大気中にて、加熱により熱間成形体を塑性変形させる。この際、上記加熱温度は、粒成長の抑制効果と塑性変形性とのバランス等の観点から、好ましくは、600〜900℃、より好ましくは、700〜850℃の範囲内にあると良い。
上記塑性変形により、熱間成形体の内部でランダムな方位をもっていたR114B結晶のC軸が、加工応力と同一の方向に配向し、異方性磁石となる。
2.R2金属および/またはR2系合金の接触および熱処理
本製造方法では、準備した特定の希土類磁石の表面にR2金属および/またはR2系合金を接触させる。接触させるR2金属、R2系合金は、1種または2種以上であっても良い。また、1種または2種以上のR2金属と1種または2種以上のR2系合金とを併用しても良い。
ここで、R2金属は、R2元素の金属単体のことであり、R2系合金とは、R2元素を主成分とする合金のことである。
本製造方法では、上記R2は、Dy、TbおよびHoから選択される少なくとも1種の元素である。これらR2元素は、磁石内部に拡散することによって、他の希土類元素群に比べて特に保磁力向上に大きく貢献する。これは、上記R2元素は、NdやPr等と比較して、R214B化合物の結晶磁気異方性が大きいためであると考えられる。
上記R2としては、NdFe14B化合物と比較して、DyFe14BやTbFe14Bの化合物の結晶磁気異方性が前者が約2倍、後者が約3倍である観点から、好ましくは、DyまたはTbであると良い。
上記R2金属としては、具体的には、Dy金属、Tb金属、Ho金属等を例示することができる。上記R2系合金としては、具体的には、Dy系合金、Tb系合金、Dy−Tb系合金、Ho系合金等を例示することができる。なお、R2系合金は、2元系、3元系、4元系等であって良く、特に限定されるものではない。
上記R2系合金としては、より具体的には、例えば、主元素であるR2元素に加え、さらに副元素として、Cu、Al、Ga、Ge、Sn、In、Si、P、Coから選択される少なくとも1種の元素を含むものを好適に用いることができる。
上記元素を含むR2系合金は、R2金属単体と比較して、その融点が低くなる
。そのため、後述する熱処理時に、R2元素の磁石内への熱拡散の進行が促進される。さらに、熱処理温度の低温化を図ることも可能となる。それ故、高保磁力を有する希土類磁石を得やすくなる。
また、上記副元素のうちCoは、Dy等のR2と合金化することにより、例えば、Dy金属単体の融点1400℃に対して約750℃まで合金の融点を降下させ、熱拡散の促進に寄与する。また、Coは、粒界相へ富化されることにより磁石の耐食性向上にも寄与する。また、他のCu、Al、Ga、Ge、InもDy等のR2と共晶合金を形成し、Coと同様の融点降下を生じる。また、R2金属単体は、延性が富みすぎて粉砕が困難であるが、特に、Dy系共晶合金等、R2系共晶合金は、ボールミルやジェットミルなどの一般的な粉砕方法によって、数ミクロンまで粉砕することが可能であり、実際の粉末作製面でも都合が良い。
また、上記副元素は、主としてR2金属の融点降下を目的とするものであり、状態図上での共晶合金組成となるように設計するのが好ましい。一方、上記副元素は磁気的には不純物となるために、磁石内の含有量は低く抑えることが必要である。したがって、DyやTbに対する含有率は各副元素ごとに異なり、数質量%〜30質量%程度が好ましい。この場合に、拡散によって磁石内に含有される量は、好ましくは0.005%〜3質量%、より好ましくは0.01%〜2質量%が良い。
一方、希土類磁石に拡散させるR2元素の含有量は、応用製品であるモータ等の耐熱性に従い、必要とする保磁力が異なる。そのため、拡散に必要なR2元素量を規定することは困難であるが、好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.05〜3質量%、さらに好ましくは0.1〜2質量%が良い。
但し、150℃以上の耐熱性が必要な場合は、R2元素の拡散のみでは所望の保磁力を得るに不十分となるため、予め拡散前の磁石が少量のR2元素を内部に含むことが必要となる。従って、拡散処理を経た最終的な磁石中のR2含有量は、好ましくは0.01〜8質量%、より好ましくは0.02〜6質量%、さらに好ましくは、0.05〜5質量%が良い。
本製造方法では、上記R2金属および/またはR2系合金とともに、Cu、Al、Ga、Ge、Sn、In、Si、P、Coから選択される少なくとも1種の金属および/またはこれら元素を主成分とする合金を併用することも可能である。これらは1種または2種以上用いても良い。特にCuやAlは、NdやDyと共晶合金を形成して融点効果を生じ、その結果R114B結晶の周囲に均一な粒界相を形成して、保磁力向上に寄与する効果が認められる。また、他の副元素も同様な作用がある。
また、本製造方法では、上記R2金属、R2系合金は、粉末状であることが好ましい。準備した希土類磁石との接触面積の確保、磁石表面への付着性の確保、R2元素の拡散性等に優れる等の利点があるからである。この場合、R2金属粉末、R2系合金粉末の平均粒径は、好ましくは、1〜300μm、より好ましくは、5〜200μm、さらに好ましくは、10〜100μmの範囲内にあると良い。粒径は小さすぎると室温においても希土類金属の酸化が進行し、一方、大きすぎると磁石表面との接触点数や面積が減少して拡散の進行に支障あるためである。
上記R2金属、R2系合金等は、種々の方法を用いて準備することができる。これらを準備する方法としては、上述の超急冷法、アトマイズ法、鋳造法、ガス中蒸発法等を例示することができる。とりわけ、R2金属は、いずれも脆さと適度な延性があるため、鋳造物からの粉砕によって1mm以下の粉末を得るのは難しい。そのため、R2金属、R2系合金ともに、R2金属溶湯、R2系合金溶湯を回転ロール上へ射出したり(超急冷法)、R2金属溶湯、R2系合金溶湯をガスまたは水中にアトマイズしたり、回転ディスク上にアトマイズしたりすることで、数十〜数百μm程度の大きさの粉末を製造すると良い。また、ガス中蒸発法によれば大きさが比較的揃った数十μmの微細な粉末を製造することができる。
また、R2金属、R2系合金は、比較的酸化性が強いため、アルゴンガスや有機溶媒などの非酸化性雰囲気中で粉砕等を行うと良い。もっとも、R2金属、R2系合金を数μmの微粉末とした場合には、粉末の移動や保管中での急な発熱酸化を抑制する等の観点から、粉末粒子表面を軽く酸化させても良く、必ずしも酸化が妨げられる雰囲気で行わなければならないということではない。
本製造方法において、上記R2金属、R2系金属等を磁石表面に接触させる方法としては、これらの単体粉末、または、これらの単体粉末を最適な比率で配合した混合粉末を磁石表面に付着させれば良い。好ましくは、上記単体粉末または混合粉末に適当な溶媒や結合剤等を加えてスラリー化し、当該スラリーを磁石表面に塗布すると良い。スラリー塗布法を適用すれば、適度な固定力で磁石表面に塗布可能だからである。
ここで、上記溶媒としては、例えば、アルコール、ヘキサン等の有機溶媒、水等を用いることが可能である。好ましくは、上記単体粉末や混合粉末との反応性を低減できる等の観点から、有機溶媒を用いると良い。また、上記結合剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、エステル類、アミド類などの粘性を示す有機物等を例示することができる。
また、数ミクロン程度の粒径を有するR2金属粉末・R2系合金粉末を用いる場合には、これら粉末を有機溶媒等の溶媒に希釈してスラリーを調製すると良い。結合剤を特に用いなくても磁石表面に付着させることができるからである。一方、数十μm程度の粒径を有するR2金属粉末・R2系合金粉末を用いる場合には、有機溶媒等の溶媒だけでは磁石表面への付着性に劣る。そのため、上述した粘性を示す有機物等の結合剤と溶媒とを併用するか、あるいは、上記結合剤中に上記粉末を分散させる等してスラリーを調製すると良い。
また、スラリー濃度は、溶媒の添加量によって調整することができる。スラリー濃度は、磁石表面に塗布されるスラリー塗布量と関係がある。つまり、スラリー濃度が相対的に低い場合にはスラリー塗布量は少なくなり、スラリー濃度が相対的に高い場合にはスラリー塗布量は多くなる。磁石内部へ拡散させるR2元素の量は、スラリー塗布量と熱処理条件によって制御することができる。そのため、所望のR2元素を拡散可能なスラリー塗布量となるように適切なスラリー濃度に調整することが望ましい。
上記スラリー濃度は、上記粉末に対する溶媒量が、好ましくは、10〜80質量%、より好ましくは、15〜50質量%、さらに好ましくは、20〜30質量%の範囲内にあると良い。スラリー濃度が上記範囲内にあれば、R2元素の拡散量の確保のしやすさ、磁石表面へのR2含有化合物等の固定性、取扱い性等のバランスに優れるからである。
磁石表面へのスラリーの塗布方法としては、当該スラリー中に磁石を浸漬して引き抜くディッピング法、当該スラリー(相対的に溶媒比率を高めることが好ましい。)を磁石表面にスプレーするスプレー法、刷毛塗り法、ドクターブレード法等、各種の塗布方法を採用することができる。スラリー塗布後は、大気中あるいは非酸化性雰囲気中にて、自然乾燥させても良いし、乾燥機等を用いて高温乾燥させても良い。
本製造方法では、準備した特定の希土類磁石の表面にR2金属および/またはR2系合金を接触させた後、または、R2金属および/またはR2系合金を接触させつつ、熱処理を行い、磁石内にR2元素を拡散させる。
ここで、上記熱処理は、R2元素の磁石内への拡散を主な目的としている。つまり、従来のように、R2化合物からR2元素への還元は不要である。そのため、上記熱処理は、R2元素の磁石内への拡散を効率良く生じさせ、当該熱処理後に磁石の結晶粒径が1μmを越えないように行えば良い。熱処理後の磁石の結晶粒径が1μmを越えると、粒成長による保磁力低下の影響が大きくなり、R2元素の拡散による保磁力向上効果が相殺されてしまうからである。
熱処理後の磁石の結晶粒径が1μmを越えないように熱処理を行うには、熱処理時の熱処理温度、熱処理時間を主に制御すれば良い。このうち、とりわけ、熱処理温度の制御が結晶粒径の大きさに影響を及ぼしやすい。熱処理温度が相対的に高温になると、R2元素の拡散の進行が早くなるが、同時に粒成長も生じやすくなる。熱処理温度としては、具体的には、好ましくは、500℃〜800℃、より好ましくは、600℃〜750℃の範囲内とすると良い。熱処理温度が500℃未満になると、R2元素の実質的な拡散量が少なくなる傾向がある。一方、熱処理温度が800℃を越えると、磁石の粒成長が数倍〜十数倍となってR2元素の拡散による保磁力の増加が減殺されやすくなる。また、拡散したR2元素が粒界相にとどまらず、R114B結晶内のR1元素と置換し、残留磁束密度を低下させてしまう。
一方、熱処理時間は、上記熱処理温度との兼ね合いで調整することができる。基本的には、磁石の粒成長と保磁力増加効果とを考慮して、低温側では長時間、高温側では短時間とすると良い。熱処理時間は、具体的には、好ましくは、0.15〜8時間、より好ましくは、0.15〜6時間、さらに好ましくは、0.5〜4時間の範囲内から選択すると良い。
本製造方法では、熱処理を1回行っても良いし、磁石材質や処理コスト等を考慮し、熱処理を複数回行っても良い。熱処理を複数回行う場合、2回目以降の熱処理における熱処理温度は、1回目の熱処理時の熱処理温度以下の温度とすると良い。さらに保磁力を向上させやすくなるからである。これは、時効効果により、主結晶粒の周囲にR2元素を含む粒界相が均一に被覆されやすくなるためであると推察される。
2回目以降の熱処理における熱処理温度は、好ましくは、500℃〜750℃、より好ましくは、550℃〜700℃の範囲内から選択すると良い。また、2回目以降の熱処理における熱処理時間は、好ましくは、0.5〜24時間、より好ましくは、1〜8時間の範囲内から選択すると良い。
本製造方法において、上記熱処理は、真空雰囲気中、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中にて行うことができ、基本反応は磁石固体内への拡散であるため、真空とアルゴン雰囲気の影響はなく、適宜選択することができる。
本製造方法において、磁石内に含有させるR2元素の含有量(拡散量)は、保磁力増加に対する残留磁束密度の低下を抑制するため、および、コスト面を考慮して使用量を抑制する等の観点から、好ましくは、0.01〜5質量%、より好ましくは、0.05〜3質量%、さらに好ましくは、0.1〜2質量%の範囲内とすると良い。
本製造方法により得られた希土類磁石は、室温よりも高温で動作するモータ、あるいは、高速高出力で回転することにより発熱が大きなモータ、例えば、車載用のEPSモータや駆動モータ、工作機械やロボットなどにおける高出力モータ、その他にエアコン室外機用モータ、エレベータ駆動用モータなどの用途に好適に用いることができる。
以下、本発明を実施例を用いてより具体的に説明する。
1.実験1
1.1 希土類磁石の準備
(原料粉末の作製)
質量%で、29.5Nd−1B−0.4Ga−bal.Feの成分組成を有する希土類合金を、BN製るつぼ内で1350℃で溶解した後、その溶湯をるつぼ下端のオリフィスからCrめっきを施したCu製の回転ロールに射出(回転ロール周速度:18m/秒)し、急冷合金薄片を作製した。この急冷合金薄片をカッターミルで粉砕し、篩分けによって最大粒径が350μm以下の超急冷粉末を作製した。なお、SEM観察の結果、この粉末内部はアモルファスと微細なナノサイズの結晶からなっていた。
(冷間成形)
上記作製した超急冷粉末50gを、冷間プレス機の金型に装填して2ton/cmの圧力を加えて成形し、円筒形状の冷間成形体(外径24mm、内径14mm、高さ25mm)を作製した。
(熱間成形)
上記作製した冷間成形体をホットプレス機の金型にセットし、アルゴン雰囲気中で金型を820℃に加熱し、3ton/cmの圧力を約10秒間かけて成形し、高さ約18mmの緻密化した円筒状の熱間成形体を作製した。
(熱間塑性加工)
上記作製した熱間成形体を後方押出し装置の金型にセットし、大気中で金型を850℃に加熱して後方押出しを行い、内径および高さが変形した熱間塑性加工体(外径24mm、内径18mm、高さ36mm)を製作し、押しきれなかった底面部を切り落とした。
得られた円筒状の希土類磁石を高さ方向4mmに切断し、さらに円周16分割に切断した円弧状磁石片(縦4mm×横4mm×厚み2.5mm)を作製した。
(準備した磁石の微細構造)
上述のようにして準備した磁石片をその結晶のC面が観察面となるように樹脂に埋め込み、研磨、エッチングした後、SEMを用いて観察した。その結果、多数の板状結晶粒とその周りを取り囲む粒界相とからなる微細組織が観察された。
また、SEMに付属しているEDX分析装置を用いて、希土類元素濃度を調べた結果、結晶粒はNdFe14B相を主相としていることが確認された。
また、結晶のC面を撮影した画像(倍率:1万倍)に数本の直線を引き、総数50個の結晶粒の長さを測定し、これら長さの平均値を磁石の結晶粒径とした。その結果、準備した円弧状磁石片の結晶粒径は、360nm(比較例1)であることが確認された。
1.2 R2系合金の準備
質量%で、85%Dy−15%Cuの成分組成を有する希土類合金を、上記と同様にして溶解して急冷合金薄片を作製した。この急冷合金薄片をカッターミルで粉砕し、最大粒径を350μm以下とした後、鋼球とヘキサンとともに遊星ボールミルに装填して当該ミルを運転することにより、平均粒径20μmの粉末を作製した。この際、Dy−Cu合金は、共晶組成の合金であるため、純Dyと比較して、微粉末の作製が容易であった。また、Dy−Cu合金の融点は、約800℃程度にまで低下することがDSC測定結果より明らかになった。上記作製した粉末とエタノールとを質量比で2:1に混合し、スラリーを調製した。
1.3 R2系合金との接触および熱処理
(実施例1〜5、比較例2)
調製したスラリー中に上記準備した円弧状磁石片を浸漬して引き上げることにより、当該磁石片の表面全体に粉末を薄く均一に塗布し、30分間自然乾燥させた。その後、この微粉末が付着した円弧状磁石片をSUS製容器に入れて、アルミナルツボ上に並べた。
次いで、これをアルゴンガスをフローした電気炉に装填し、毎分10℃の昇温速度で所定温度(500℃〜900℃)とし、所定温度で1時間保持した後、電気炉の電源を切って自然冷却した。これにより実施例1〜5に係る磁石片、比較例2に係る磁石片を得た。
(比較例1)
上記において、スラリーによる微粉末の塗布および熱処理を全く行わなかった円弧状磁石片(準備した円弧状磁石片そのもの)を比較例1に係る磁石片とした。
(磁気特性の測定)
実施例1〜5、比較例1、2に係る磁石片につき、振動試料型磁力計(VSM)を用いて磁気測定を行い、保磁力Hcjおよび残留磁束密度Brを求めた。また、上述した手順に準拠して熱処理後の磁石片の結晶粒径を求めた。また、磁石中のR2元素(ここではDy)の含有量をICP分析により求めた。
実験1の各種条件、結果をまとめて表1に示す。
Figure 2010114200
表1によれば主に以下のことが分かる。すなわち、比較例1は、超急冷粉末を原料に用い、熱間成形、熱間加工を経て形成されている。そのため、結晶粒径が1μm以下であるが、Dy−Cu合金(R2系合金)との接触および熱処理を全く施していないので、相対的に保磁力Hcjが低い。
これに対して、実施例1〜5は、Dy−Cu合金(R2系合金)を接触させ、かつ、結晶粒径が1μmを越えないように熱処理を施している。そのため、いずれも比較例1に比較して、残留磁束密度Brの低下をほとんど招くことなく保磁力Hcjが増加していることが分かる。これは、実施例1〜5は、いずれも磁石内にDyを含有していることから、磁石表面から磁石内の粒界相へ優先的にDyが拡散したためであると推察される。
さらに、Dy拡散に必要な熱処理の処理温度も比較的低温化できていることが分かる。これは、本発明では、R2金属・R2系合金(ここではDy−Cu合金)を磁石表面に接触させて熱処理を行うため、従来のように、DyFの還元やDy蒸気を発生させるために必要となる熱を余分に加える必要がないからである。
また、実施例1〜5を比較すると、熱処理温度の上昇に伴ってDy含有量が増加し(Dy拡散量が増加し)、保磁力Hcjが増加して750℃〜800℃で最大となり、その後、保磁力Hcjは減少に転じる傾向があることが分かる。つまり、保磁力Hcjの増加と残留磁束密度Brの低下抑制との観点から、750℃〜800℃での熱処理が最適であるといえる。そして、比較例2のように熱処理温度が900℃を越えると、Dy含有量が増加しているにもかかわらず、粒成長(結晶粒径360nm→1430nm)によって熱処理を施す前よりも保磁力Hcjが低下してしまっていることが分かる。これらのことから、結晶粒径が1μmを越えないように条件(とりわけ熱処理温度)を制御して熱処理を行うことにより、粒成長による保磁力の相殺を回避しつつ、効率良く高保磁力化を図ることができるといえる。
2.実験2
(実施例6〜14)
質量%で、85%Dy−15%Cu、80%Dy−12%Cu−8%Al、88%Dy−12%Co、90%Dy−10%Ga、90%Dy−10%Sn、80%Dy−20%Ge、70%Dy−15%Tb−15%Cuの成分組成を有する希土類合金を用いて、実験1と同様にして、平均粒径10〜20μmの各微粉末を作製した(実施例8〜14)。
また、ガスアトマイズ法によりDy金属微粉末、Tb金属微粉末を作製した(実施例6、7)。ここでは、サイクロン内の最も粒径が細かい15μm(以下)の各粉末を回収して使用した。なお、ガスアトマイズ法を利用したのは、Dy金属、Tb金属は、延性があるために機械的な粉砕が困難なためである。
これら各微粉末について、微粉末とエタノールとを質量比で2:1に混合し、各スラリーを調製した。実験1において、実験1で調製したスラリーに代えて、実験2で調製した各スラリーを用い、各微粉末が付着したそれぞれの円弧状磁石片を700℃で3時間熱処理した以外は同様にして、実施例6〜14係る磁石を作製し、結晶粒径、Dy含有量、Tb含有量、磁気特性を測定した。
実験2の各種条件、結果をまとめて表2に示す。
Figure 2010114200
表2によれば主に以下のことが分かる。すなわち、DyまたはTbの拡散により、いずれも大幅に保磁力Hcjが向上することが分かる。また、例えば、実施例6と実施例8との比較等から分かるように、Dy(R2金属)よりもDy系合金(R2系合金)を用いた場合には、同じ温度で熱処理したときに、合金化による融点降下によって磁石中へのDy(R2元素)拡散量を増加させやすく、保磁力Hcjを向上させやすいことが分かる。
3.実験3
(実施例15〜19、比較例4)
質量%で、29Pr−2Co−0.9B−0.2Cu−bal.Feの成分組成を有する希土類合金を用いて超急冷粉末を作製し、この超急冷粉末を用いて磁石片を作製した点、85%Dy−15%Cuの成分組成を有する合金粉末(平均粒径70μm)をガスアトマイズ法で作製し、この粉末にPVA(ポリビニルアルコール)粉末と純水とを加えて室温で混合し、スラリーを調製した点、調製したスラリー中に準備した円弧状磁石片を浸漬して引き上げることにより、当該磁石片の表面全体に粉末を薄く均一に塗布し、2時間真空排気して水分を乾燥除去した点、真空中にて所定温度(500℃〜900℃)で3時間の熱処理を行った点以外は実験1と同様にして、実施例15〜29、比較例4に係る磁石片を作製した。
なお、ガスアトマイズ法にて作製した85%Dy−15%Cu合金粉末の酸素量を、酸素分析計(LECO社製)にて測定した結果、0.35質量%であった。一方、実験2でボールミル法にて作製した同一成分の85%Dy−15%Cu合金粉末の酸素量を、酸素分析計(LECO社製)にて測定した結果、0.56質量%であった。
また、上記において、スラリーによる粉末の塗布および熱処理を全く行わなかった円弧状磁石片(準備した円弧状磁石片そのもの)を比較例3に係る磁石片とした。そして、実験1と同様にして、結晶粒径、Dy含有量、磁気特性を測定した。
実験3の各種条件、結果をまとめて表3に示す。
Figure 2010114200
表3によれば主に以下のことが分かる。すなわち、Nd−Fe−B系磁石に代えてPr−Fe−B系磁石を用いても、Dy拡散による保磁力Hcjの向上を図ることが可能なことが分かる。また、アルゴン雰囲気に代えて、真空雰囲気中にて熱処理しても保磁力Hcjの向上を図ることが可能なことが分かる。ただし、実験1と同様に、熱処理温度が900℃を越えると、熱処理温度が高くなりすぎるために、粒成長によってDy拡散による保磁力増加分が相殺されてしまうことが分かる(比較例4を参照)。
また、同じ熱処理条件で熱処理した実験1の結果と実験3との結果とを比較すると、実験3の方が、より高い保磁力Hcjを有していることが分かる。これは、Nd系化合物よりPr系化合物の方が結晶磁気異方性が大きいため、および、Nd−Fe−B系磁石は、Ndの融点が1024℃であるのに対し、Pr−Fe−B系磁石は、Prの融点が935℃であるため、後者の方が粒界相融点が低下し、熱処理によってDyの拡散が促進された、複合効果のためであると推察される。
また、用いた合金粉末の酸素量は低いほど基本的に磁気特性を高くできるが、上記粉末の酸素量0.35質量%と0.56質量%は大きな相違があるものの、磁石内部に実際に取り込まれる酸素量はわずかであるために、実施例試料間で磁気特性の相違は見分けられなかった。
4.実験4
(実施例20、21、比較例5)
実験1と同様の手順により、質量%で、29Pr−2Co−0.9B−0.2Cu−bal.Feの成分組成を有する希土類合金を用いて超急冷粉末を作製した。次いで、この超急冷粉末55gを、冷間プレス機の金型に装填して4ton/cmの圧力を加えて成形し、円柱形状の冷間成形体(外径20mm、高さ20mm)を作製した。次いで、この冷間成形体をホットプレス機の金型にセットし、アルゴン雰囲気中で金型を820℃に加熱し、3ton/cmの圧力を約10秒間かけて成形し、高さ約14mm、密度99%の緻密化した熱間成形体を作製した。次いで、この熱間成形体をプレス機にセットし、Ar雰囲気中で金型を820℃に加熱して圧縮変形させ、外径32mm、高さ5.5mmの円板状に塑性加工した。次いで、この塑性加工体をワイヤ放電加工機を用いて4mm×4mm×4mmに切断し、試料となる角形状磁石片を作製した。
次いで、実験2で作製した80%Dy−12%Cu−8%Alの成分組成を有する合金粉末とエタノールとを質量比で3:1に混合し、スラリーを調製した。調製したスラリー中に上記準備した角形状磁石片を浸漬して引き上げることにより、当該磁石片の表面全体に粉末を薄く均一に塗布し、30分間自然乾燥させた。その後、この微粉末が付着した角形状磁石片をSUS製容器に入れて、アルミナルツボ上に並べた。
次いで、これをアルゴンガスをフローした電気炉に装填し、1回目の熱処理として、750℃で1時間熱処理を行った。これにより実施例20に係る磁石片を得た。また、この1回目の熱処理の後に、引き続き2回目の熱処理として、600℃で1時間熱処理を行った。これにより実施例21に係る磁石片を得た。そして、実験1と同様にして、結晶粒径、Dy含有量、添加元素の含有量、磁気特性を測定した。なお、上記において、熱処理を全く行わなかった磁石片を比較例5に係る磁石片とした。
実験4の各種条件、結果をまとめて表4に示す。
Figure 2010114200
表4によれば主に以下のことが分かる。すなわち、熱処理を1回行った場合も、2回行った場合も、いずれも保磁力Hcjが向上するが、熱処理を複数回行うと、より保磁力Hcjを向上させやすくなることが分かる。これは、時効効果により、主結晶粒の周囲にR2元素を含む粒界相が均一に被覆されやすくなるためであると推察される。
5.実験5
(実施例22〜実施例25、比較例6)
(原料粉末の準備)
質量%で、30.5Nd−3Co−1B−0.3Ga−bal.Feの成分組成を有する希土類合金を、溶解鋳造してインゴットを作製した。このインゴットを真空炉に装填し、真空排気後に室温から820℃までの昇温過程で水素ガスを供給して合金インゴットに水素を吸蔵させた後、真空排気して水素を放出させた。この処理によって崩壊したインゴットをスタンプミルを用いて粉砕し、最大粒径が250μm以下のHDDR合金粉末を作製した。
(冷間成形)
上記作製したHDDR合金粉末34gを、冷間プレス機の金型に装填して、1600kA/mの磁場を印加しながら2ton/cmの圧力を加えて成形し、角柱形状の冷間成形体(8mm×8mm×12mm)を製作した。なお、実験1〜実験4における冷間成形体は、磁気的に等方性であったが、この実験5における冷間成形体は、磁気的異方性を有している。磁気的異方性を有するHDDR粉末を用い、磁場中で冷間成形したためである。
(熱間成形)
上記作製した冷間成形体をットプレス機の金型にセットし、アルゴン雰囲気中で金型を760℃に加熱し、3ton/cmの圧力を約10秒間かけて成形し、高さ方向に圧縮した角柱状の熱間成形体(8mm×8mm×7mm)を作製した。
(熱処理)
上記作製した熱間成形体にショットブラスト加工を加えて表面酸化膜を除去した。その後、実験2で作製した80%Dy−12%Cu−8%Al合金の粉末とエタノールとを所定の質量比(4:1〜1:1)で混合し、スラリーを調製した。
調製したスラリー中に上記ショットブラスト加工を加えた磁石片を浸漬して引き上げることにより、当該磁石片の表面全体に粉末を薄く均一に塗布し、15分間自然乾燥させた。その後、この粉末が付着した磁石片をSUS製容器に入れて、アルミナルツボ上に並べた。
次いで、これをアルゴンガスをフローした電気炉に装填し、毎分15℃の昇温速度で700℃とし、この温度で6時間保持した後、電気炉の電源を切って自然冷却した。これにより実施例22〜25に係る磁石片を得た。
また、上記において、スラリーによる粉末の塗布および熱処理を全く行わなかった磁石片を比較例6に係る磁石片とした。そして、実験1と同様にして、結晶粒径、Dy含有量を測定するとともに、BHトレーサーを用いて磁気特性を測定した。
実験5の各種条件、結果をまとめて表5に示す。
Figure 2010114200
表5によれば主に以下のことが分かる。すなわち、HDDR合金粉末を用いて作製した磁石の表面にR2系合金(ここでは、Dy−Cu−Al合金)を接触させて熱処理した場合でも、同様に、保磁力Hcjを向上させることが可能なことが分かる。
また、スラリーによりR2系合金粉末を磁石表面に接触させる場合、スラリー濃度が相対的に濃い(R2系合金の質量比が大きい)ほど、R2元素(ここでは、Dy)の拡散量が増加し、保磁力も増加させやすくなることが分かる。もっとも、スラリー濃度が過度に濃いと、R2合金粉末の磁石表面への堆積量は増加するものの、磁石表面との距離が遠くなるため、実質R2元素(ここでは、Dy)拡散量はあまり増加しない点は留意しておくと良い。
さらに、HDDR合金粉末を用いて作製した磁石を用いた場合には、冷間成形時に磁気的異方性を付与することができるため、熱間塑性加工を省略することができる。そのため、生産工程の簡略化等、生産性の向上に寄与することができる。
以上、本発明に係る希土類磁石の製造方法について説明したが、本発明は、上記実施形態、実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。

Claims (5)

  1. R114B相(但し、R1:希土類ランタニド元素から選択される少なくとも1種の元素、X:FeまたはFeの一部をCoで置換したもの)を主相とする結晶粒を有し、かつ、結晶粒径が1μm以下である希土類磁石の表面にR2金属および/またはR2系合金(但し、R2:Dy、TbおよびHoから選択される少なくとも1種の元素)を接触させ、結晶粒径が1μmを越えないように熱処理を施し、磁石内にR2元素を拡散させることを特徴とする希土類磁石の製造方法。
  2. 前記希土類磁石は、少なくとも熱間成形を経て形成されたものであることを特徴とする請求項1に記載の希土類磁石の製造方法。
  3. 前記R2系合金は、副元素として、Cu、Al、Ga、Ge、Sn、In、Si、P、Coから選択される少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の希土類磁石の製造方法。
  4. 前記熱処理時の熱処理温度は、500℃〜800℃の範囲内にあることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の希土類磁石の製造方法。
  5. 前記熱処理の後、前記熱処理時の温度以下の温度にてさらに熱処理を行うことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の希土類磁石の製造方法。
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