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JP2010180448A - 耐水素吸収性及び冷間加工性に優れたチタン合金並びにその製造方法 - Google Patents

耐水素吸収性及び冷間加工性に優れたチタン合金並びにその製造方法 Download PDF

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JP2010180448A JP2009024036A JP2009024036A JP2010180448A JP 2010180448 A JP2010180448 A JP 2010180448A JP 2009024036 A JP2009024036 A JP 2009024036A JP 2009024036 A JP2009024036 A JP 2009024036A JP 2010180448 A JP2010180448 A JP 2010180448A
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Satoru Kawakami
哲 川上
Hiroaki Otsuka
広明 大塚
Hideki Fujii
秀樹 藤井
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Nippon Steel Corp
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Abstract

【課題】水素吸収により脆化が起る恐れのある環境下にて、耐食性および耐水素侵入性を必要とされる部材に使用される、耐水素吸収性ならびに冷間加工性に優れたチタン合金およびその製造法を提供する。
【解決手段】質量%で0.3〜1.8%のCu、0.10%以下のFe、0.13%以下のOを含有し、残部Tiおよび0.3%以下の不純物からなり、粒径10〜1000nmのTi2Cuを最大相とする析出相を体積分率で0.05〜3.5%含むことを特徴とする、耐水素吸収性および冷間加工性に優れるチタン合金。また、最終焼鈍を460℃以上、730[%Cu]0.126−160℃で行うことを特徴とする該チタン合金の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、水素吸収により脆化が起る恐れのある環境下にて、耐食性および耐水素侵入性を必要とされる板材、管、棒線、形材など、純チタンと同等の冷間加工性を要求される、あらゆる形状の部材に使用される、耐水素吸収性ならびに冷間加工性に優れたチタン合金およびその製造法に関する。
チタンおよびチタン合金は優れた耐食性を有することから、主に海水を使用した熱交換器や、化学プラントなどの構成部材、海水淡水化プラント用部材などとして幅広く使用されてきている。このとき、特に高強度を必要とされず、冷間加工性が必要な場合には純チタンが使用されている。中でも、例えばJIS H4600(2001)「チタン及びチタン合金板」に記載される1種材(TP270C)、あるいは2種材(TP340C)が使用されることが多い。
一方、一部の使用環境においては、チタンおよびチタン合金は多量の水素を吸収し、内部にチタン水素化物が形成される場合がある。チタン水素化物は母材に比べ著しく脆いため、大量に発生するとチタンおよびチタン合金は脆化してしまう。このような現象は、高温水蒸気に晒される熱交換器用部品や、非酸化性の酸液環境に晒される部材、あるいは接触する鋼材の電気防食を行う場合などに起りやすい。したがって、チタンおよびチタン合金がこれらの環境下で使用されると、水素を吸収して水素化物が生成しやすく、水素脆化割れを起こしやすくなるため、チタンおよびチタン合金を使用できないという問題があった。
この問題を解決すべく、水素侵入を防止する製造方法や耐水素吸収特性に優れた種々の合金が提案されている。
例えば特許文献1には、窒化チタン層をチタン表面に被覆することにより水素吸収防止効果を高め、脆化を防ぐ方法が開示されている。比較的安価に耐水素吸収性が改善できる方法であるが、表面窒化チタン皮膜が異物との接触やエロージョンなどで剥離してしまうと、その効果は損なわれてしまう。
また、特許文献2には、表面にチタン水素化物含有層を予め設けておくと、水素吸収が進まなくなるという作用を利用して耐水素脆化特性を高める方法が開示されている。しかし、水素化物形成を制御することは困難であり、バルクの脆化が起る水素化物量に達する可能性も高く、実用性に乏しいという問題があった。
チタンにPdあるいはZr、Hfなどの元素を添加して耐食性を上げることにより耐水素吸収特性を高めた合金が、それぞれ、特許文献3、特許文献4に開示されている。これら合金の耐食性、耐水素吸収性は純チタンより大きく向上するものの、上記添加元素はいずれもチタンよりも高価であり、合金の製造コストが大幅に高くなってしまうという問題があった。また、微量の添加でも冷間加工性は損なわれることから、様々な形状の部品を製造することは困難であった。
一方、チタンに比較的安価なAlを添加すると、Ti−Al合金中での水素の拡散速度が純Tiに比べて小さくなることから、耐水素吸収性に優れ、かつ純チタン同等の冷間加工性を有するチタン合金が特許文献5に開示されている。当該合金では、Al添加量を低く抑えることにより、純チタンと同等の冷間加工性が得られるとしている。しかし、Ti中でAlはOと結びついて脆い金属間化合物を形成しやすく、それに伴い、純チタンの塑性変形能に大きな影響を与える双晶変形が抑制される。こうして、Al添加量を少量に抑えても、純チタンに比べ冷間加工性は低下するため、当該合金を純チタンと同じように冷間加工成形することは困難であった。
さらに、水素化物が生成し難く電解銅箔製造用カソード電極板として最適であるとして、Cuを添加したチタン合金が、特許文献6に開示されている。これは、TiにCuを添加することにより固溶水素量が増加する機構に基づく。すなわち、当該技術では、Cuをできるだけ多くチタンに固溶させることにより、チタン合金中の水素の固溶限を高め、水素化物発生を抑えることを目的としたものである。しかし、この発明によっても、水素の浸入量が高まる表面付近では、水素濃度が水素固溶限を上回り、水素化物を発生して、脆化が問題となる場合があった。
特開平3−243759号公報 特開2005−36314号公報 特開2000−248324号公報 特開2006−291263号公報 特開2003−129152号公報 特開2004−250753号公報 特開2005−298970号公報
本発明は、水素吸収により脆化が起る恐れのある環境下にて、耐食性および耐水素侵入性を必要とされる板材、管、棒線、形材など、あらゆる形状の部材に使用される、耐水素吸収性および冷間加工性に優れたチタン合金およびその製造法を提供することを目的とする。
耐水素吸収性に優れ、水素化物による水素脆化が生じにくく、製造コストが比較的低く、かつ冷間加工性に優れるチタン合金のニーズは高い。これに対し、本発明者らは、TiにCuを適正量添加し、さらにTi2Cuを最大相とする析出相を生成させることにより、耐水素吸収特性が向上することを見出した。
すなわち、本発明者らは、TiにCuを添加するとともに、Ti2Cuを最大相とする析出相を積極的に生成させた場合には、添加Cuの大部分をチタンに固溶させることによりチタン合金中の水素の固溶限を高めた場合よりも、さらに耐水素吸収特性に優れることを見出した。
また、Ti2Cuを最大相とする析出相は析出強化により強度上昇に寄与するが、プレス成形性、ヘッダー加工性などの冷間加工性を損ねることはないことが分った。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、耐水素吸収特性ならびに冷間加工性に優れた比較的低コストのチタン合金およびその製造方法を提供する。
即ち、本発明は以下の手段を要旨とする。
(1)質量%で0.3〜1.8%のCu、0.10%以下のFe、0.13%以下のO、残部Tiおよび0.3%未満の不純物元素からなり、粒径10〜1000nmの、Ti2Cuを最大相とする析出相を体積分率で0.05〜3.5%含むことを特徴とする、耐水素吸収特性ならびに冷間加工性に優れるチタン合金。
(2)上記(1)に記載するチタン合金の製造方法において、最終焼鈍温度を、460℃以上、730[%Cu]0.126−160℃以下の温度域にて行うことを特徴とする耐水素吸収特性ならびに冷間加工性に優れるチタン合金の製造方法。
ここで、[%Cu]は、該チタン合金のCu含有量化学分析値(質量%)である。
冷間加工性評価形状
本発明者らは上記課題を解決すべく、チタンの耐水素吸収特性におよぼす成分元素の影響を詳しく調査した結果、チタンに一定量のCuを添加して、Ti2Cuを最大相とする析出相を微細に析出させるとともに、OならびにFeの含有量を適正に調整することにより、耐水素吸収特性ならびに冷間加工性を向上させることが可能であることを見出した。
ここで、Ti2Cuを最大相とする析出相とは、Ti、Cuおよび不純物元素からなる析出相であって、Ti2Cuを体積率で、最大相とする析出相をいう。Ti2Cuを最大相とする析出相は、薄膜試料による、X線エネルギー分散型分析器装備の透過電子顕微鏡観察における電子線回折及び特性X線分析によってその存在を確認でき、その大きさと数量を測定できる。また、電解・化学処理等によって、母相の一部を溶解させ、析出相を表面に露出させた試料による、電解放射型電子銃およびX線エネルギー分散型分析器装備の走査電子顕微鏡観察によって、その存在を確認でき、その大きさと数量を測定できる。前記透過電子顕微鏡観察または、走査電子顕微鏡観察におけるX線エネルギー分散型分析により、析出相におけるCuの原子%濃度が、TiとCu以外の不純物元素よりも2倍以上高く、TiとCuの原子%比が、1.8〜2.0:1の範囲に入る析出相は、本発明でいうTi2Cuを最大相とする析出相である。
以下に、請求項1に記載の本発明(以下、本発明(1))に示した各種添加元素を選択した理由と、その添加量範囲を限定した理由を示す。
Cuはチタンα相中に質量%で最大1.5%まで固溶する。固溶状態のCuは、固溶体強化により高温強度を高めるとともに、双晶変形発生を損なわずに強化する作用があることが知られており、その効果は特許文献7等により公開されている。また、先に述べた特許文献6に開示されている技術は、TiにCuを添加し固溶させることにより、チタン合金中の固溶水素量を増加させ、水素化物生成を抑えることを目的としたものである。
一方、Ti−Cu合金でα相中にTi2Cuを最大相とする析出相を適正量生成させると、析出強化により強度が上昇するとともに、α粒界へのピニング効果によりα相の粒成長を抑制する作用がある。これらの作用により、プレス成形やヘッダー加工などの冷間加工時に皺発生が抑えられるとともに、シャー切断性の改善がもたらされ、冷間加工性が向上することが分った。また、本発明者らは、Ti2Cuを最大相とする析出相は水素過電圧を下げて、不働態皮膜の強化をもたらすことを見出した。Ti2Cuを最大相とする析出相はチタン合金表面でカソード反応サイトとして作用し、水素ガス発生反応が当該析出相上で起りやすくなるが、このとき、チタン合金内部への水素拡散に伴う水素吸収が抑制されることを新たに知見した。このTi2Cuを最大相とする析出相のサイズと生成量を制御すると、水素吸収が特に起りにくくなることも見出した。
このとき、Ti2Cuを最大相とする析出相の粒径が、10nm未満と超微細であると、カソード反応に伴う水素ガス発生サイトとして作用しにくく、母材で主に水素ガス発生反応が起り、母材中への水素吸収は抑制できない。一方、粒径が1000nmを超えると均一なカソード反応サイトとして作用しにくく、この場合も水素ガス反応は母材でも起り、母材中に水素が吸収されてしまい、耐水素吸収特性は劣化してしまう。したがって、Ti2Cuを最大相とする析出相のうち、粒径が10〜1000nmのものが有効である。
また、Ti2Cuを最大相とする析出相のうち、粒径10〜1000nmのものの体積分率が0.05%未満では、水素ガス発生反応が析出相上のみで起らず母材でも起ることから、母材への水素吸収は避けられない。一方、Ti2Cuを最大相とする析出相のうち、粒径10〜1000nmのものの体積分率が3.5%を超えると、析出相の偏在および凝集粗大化が起りやすくなる。このとき、水素ガス発生反応サイトが不均一に分布することとなり、水素ガス発生反応は系内で不均一に起るようになり、母材中でもその反応が起ってしまうため耐水素吸収性は低下する。そのため、Ti2Cuを最大相とする析出相のうち、粒径10〜1000nmのものが体積分率で0.05〜3.5%析出していることが必要である。さらに、特に、高い耐水素脆性を要求される用途においては、Ti2Cuを最大相とする析出相のうち、粒径10〜1000nmのものが体積分率で0.08〜2.0%析出していることが望ましい。
Cu添加量の上限を1.8%としたのは、これを超えて添加すると、Ti2Cuを最大相とする析出相が体積分率で3.5%を超えて生成するため、析出相が偏在しやすくなり、さらに析出相粒径が1000nmを超えるような粗大化が起り、耐水素吸収性が低下してしまうからである。また、合金中に、Ti2Cuを最大相とする析出相を均一に分散析出させ、水素ガス発生サイトとして有効に作用させるCuの最低添加量は0.3%であるため、Cuは0.3%以上添加する必要がある。
Feはチタンのβ相を安定化する元素であり、室温から高温域にかけβ相を発現させる。さらに、チタンのβ相に固溶したFeは水素を吸収しやすい。このとき、Fe含有量が0.10%以下であれば、発生するβ相は実用上問題のない量であるが、これを超えて添加されると、β相の量が急激に増え、β相に濃化しやすいCuがβ相に集中しやすくなる。こうしてCuの濃化したβ相中に、Ti2Cuを最大相とする析出相が集中して析出するため、析出物は粗大化しやすくなり、均一な分布状態ならびに水素ガス発生サイトが得られないこととなる。同時に、0.10%を超えるFeを含有すると、Feが固溶したβ相の分率が高まる。Feが固溶したβ相は水素を吸収しやすいため、これにより耐水素吸収性の低下を招いてしまう。したがって、Feの含有量は0.10%以下である必要がある。Fe含有量は少ないほど好ましい。
Oはα相中に固溶し固溶体強化する作用を有するため、過度に添加すると、冷間加工性の低下をもたらすこととなる。プレス成形、ヘッダー加工などの冷間加工により製造される部品に使用されるべく、純チタン2種相当の高い冷間加工性を維持するには、O量は0.13%以下に抑える必要があるため、O量の上限を0.13%とした。O含有量は少ないほど好ましい。
その他に、不純物元素として、N、C、Ni、Cr、Al、Sn、Si、Hなど、通常のチタン材に含まれる元素については、これらの総和が0.3%を超えなければ、耐水素吸収性ならびに冷間加工性に悪影響をもたらさない。したがって、これら不純物元素の総和が0.3%以下であれば、含有しても問題はない。
次に、本発明のチタン合金の製造方法について説明する。
本発明のチタン合金は、本発明の上記チタン合金成分を有する製品の製造方法において、最終焼鈍を460℃以上、730[%Cu]0.126−160℃以下の温度域にて行った場合に、粒径10〜1000nmのTi2Cuを最大相とする析出相を体積分率で0.05〜3.5%含有させることができる。
すなわち、460℃以上、730[%Cu]0.126−160℃以下の温度域はTi2Cuを最大相とする析出相が粒径10〜1000nm程の微細なサイズで、かつ、0.05〜3.5%の体積分率で均一に析出しやすい温度範囲であり、この温度域で最終焼鈍することにより、耐水素吸収特性を高めることができる。
なお、730[%Cu]0.126℃は、Ti−Cu二元系平衡状態図における、Ti2Cu析出曲線から求めた式である。すなわち、460℃以上で、該Ti2Cu析出曲線よりも160℃低い温度以下で最終焼鈍することで、請求項1に示される化学組成範囲内のチタン合金においては、請求項1に示される、Ti2Cuを最大相とする析出相の所定の状態が、工業的に得られることを知見したものである。ただし、460℃未満の温度では効果を生み出す焼鈍時間が長くなることから、極力避けた方が望ましい。
なお、上記最終焼鈍は、冷間圧延製品における冷間圧延後の最終焼鈍であっても、熱間圧延製品における熱間圧延後の最終焼鈍であっても良く、製品出荷前の最終焼鈍を示している。
<実施例1>
真空アーク溶解法により表1に示す組成のチタン材を溶解し、これを熱間鍛造してスラブとし、860℃に加熱した後、熱間圧延により厚さ3mmの板材とした。
この熱間圧延した板材をショットブラストおよび酸洗して酸化スケールを除去した後、冷間圧延により厚さ1mmの薄板材とした。それに490℃×5時間、炉冷の真空焼鈍を施した後、形状矯正を施した。この薄板材より切出した25mm×50mmのクーポンサンプルを600番エメリー紙で湿式研磨した後、60℃、1%のH2SO4水溶液中に24時間浸漬した場合の耐食性を評価した。また、腐食試験後のサンプルより分析用試験片を切出して、溶融法により水素濃度を測定した。冷間加工性は、エリクセン試験(JIS Z 2247)における成形高さにより評価した。また、冷間加工時の皺発生は、図1に示す円錐台成形を、径20mm、肩半径2mmの円柱状ポンチと、径50mm、肩半径2mmのダイ金型を用いて、φ100mmの大きさのブランクを高さ20mmまで成形加工する試験を行い、試験後の縦壁部分の表面を肉眼で観察し、皺の有無によって評価した。
また、金属組織観察用試験片を採取し、長手方向断面を2%弗酸水溶液でエッチングして、電解放射型電子銃およびX線エネルギー分散型分析器装備の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、直径10〜1000nmのTi2Cuを最大相とする析出相を観察し、体積分率を調査した。析出相におけるCuの原子%濃度が、不純物元素よりも2倍以上高く、TiとCuの原子%比が、1.8〜2.4:1の範囲に入る析出相は、Ti2Cuを最大相とする析出相として、その大きさと数量を画像解析装置を併用して解析した。観察視野では、析出相の大きさによって適宜倍率を変え、50〜100視野を観察した。
ここで求まった球相当直径10〜1000nmのTi2Cuを最大相とする析出相の、球相当体積の総計を求めた。さらに、予め計測しておいた、試料の前記エッチング前後における質量差から、エッチングによる母相の溶出量を算出し、試料中に含まれていた前記Ti2Cuを最大相とする析出相の球相当体積による体積分率を求めた。
これらの評価結果も併せて表1に示す。また、表1中のT(℃)はT(℃)=730[%Cu]0.126−160℃により計算される、請求項2に示した焼鈍上限温度である。表1及び後述の表2〜4において、本発明範囲から外れる数値にアンダーラインを付している。
Figure 2010180448
表1において、試験番号1、2はそれぞれJIS1種およびJIS2種純チタンの例である。試験番号1、2ではいずれも、腐食速度はやや大きく、水素吸収性も十分ではない。一方、試験番号3はAlを数%含有する合金の例である。この合金では、エリクセン試験で十分な張出し高さが得られず、冷間加工性は十分とはいえない。試験番号1、2、3ともに、Ti2Cuを最大相とする析出相生成は認められない。
これに対し、本発明(1)の実施例である試験番号5、6、7、9、11、12、14、15、16、17、18、19では、腐食速度、水素吸収量ともに低く抑えられている。また、エリクセン試験での張り出し高さもJIS2種純チタンと同様であり、良好な冷間加工性を有する。これらはいずれも、10〜1000nmのTi2Cuを最大相とする析出相を体積分率で0.05〜3.5%含んでおり、その析出量が適正な範囲にあることは明らかである。
一方、試験番号4、4−2、8、10では腐食速度は低いものの、水素侵入量は本発明材に比べて高くなっていた。このうち、試験番号4はCu添加量が本発明の下限値である0.3%を下回っており、試験番号4−2は焼鈍温度が本発明範囲を外れ、いずれもTi2Cuを最大相とする析出相の生成量も0.05%未満である。この材料では、水素ガス発生サイトとして十分に機能するだけの析出相が得られなかったため、水素吸収量は比較的高かった。また、試験番号8では、Cu添加量が本発明の上限値である1.8%を越えて添加されたため、Ti2Cuを最大相とする析出相が、体積分率で3.5%を超えて多量に析出して凝集粗大化を招き、水素ガス発生反応サイトとして有効に機能しなかったためである。一方、試験番号10では、一部に1000nmを超える粗大なTi2Cuを最大相とする析出相が生成していた。これは、β安定化元素であるFeの含有量が、本発明の上限である0.10%を越えて添加されたためβ相の量が増え、Cuがそこに集中的に濃縮して粗大な析出相が生成し、カソード反応サイトとして有効に機能しなかったことと、固溶するFeが水素吸収を促進したことから、耐水素侵入性が低下したものである。
また、試験番号13では、エリクセン試験での張り出し高さが低く、低い冷間加工性を示した。これはOが、当該発明の上限である0.13%を超えて添加されたため、強度が上昇し延性が低下したためである。
以上のように、本発明に規定された元素含有量およびTi2Cuを最大相とする析出相の体積分率からなるチタン合金は、JIS2種純チタンよりも優れた耐水素侵入性と、同等の冷間加工性を有しているが、本発明に規定された合金元素量ならびに、Ti2Cuを最大相とする析出相の体積分率を外れると、所望の耐水素侵入特性および冷間加工性を得ること、または、冷間加工時の皺発生防止を図ることはできない。
<実施例2>
表1の試験番号9、11、17の素材を製造する際の中間製品である板厚3mmの熱間圧延板を使用して、ショットブラストおよび酸洗して酸化スケールを除去した後、冷間圧延により厚さ1mmの薄板材とした。それに表2〜4に示す条件にて真空焼鈍を施した後、形状矯正を施した。この薄板材を25mm×50mmのクーポンサンプルに切断し、600番エメリー紙で湿式研磨した後、60℃、1%のH2SO4水溶液中に24時間浸漬した場合の耐食性を評価するとともに、腐食試験後に分析用試験片を切出して溶融法により水素濃度を測定した。冷間加工性は、エリクセン試験(JIS Z 2247)により成形高さを調査して評価した。また、冷間加工時の皺発生は、図1に示す円錐台成形を、径20mm、肩半径2mmの円柱状ポンチと、径50mm、肩半径2mmのダイ金型を用いて、φ100mmのブランクを高さ20mmまで成形加工する試験を行い、試験後の縦壁部分表面を目視観察して、皺有無によって評価した。
また、金属組織観察用試験片を採取し、長手方向断面を2%弗酸水溶液でエッチングして、電解放射型電子銃およびX線エネルギー分散型分析器装備の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、直径10〜1000nmのTi2Cuを最大相とする析出相を観察し、体積分率を調査した。析出相におけるCuの原子%濃度が、不純物元素よりも2倍以上高く、TiとCuの原子%比が、1.8〜2.4:1の範囲に入る析出相は、Ti2Cuを最大相とする析出相として、その大きさと数量を画像解析装置を併用して解析した。観察視野では、析出相の大きさによって適宜倍率を変え、50〜100視野を観察した。
ここで求まった球相当直径10〜1000nmのTi2Cuを最大相とする析出相の、球相当体積の総計を求めた。さらに、予め計測しておいた、試料の前記エッチング前後における質量差から、エッチングによる母相の溶出量を算出し、試料中に含まれていた前記Ti2Cuを最大相とする析出相の球相当体積による体積分率を求めた。
これらの評価結果も併せて表2〜4に示す。また、表2〜4中のT(℃)はT(℃)=730[%Cu]0.126−160℃により計算される、請求項2に示した焼鈍上限温度である。
Figure 2010180448
Figure 2010180448
Figure 2010180448
表2、3、4はそれぞれ、表1の試験番号9、試験番号11、試験番号17に示す組成を素材にした薄板試験材における結果である。最終焼鈍を460℃以上、730[%Cu]0.126−160℃以下の温度域で実施した、本発明例の試験番号20〜31は水素吸収量が非常に低く、優れた耐水素吸収性を示した。円錐台成形試験後の皺発生もない。一方、比較例の試験番号40〜42の水素吸収量は、水素吸収量が高かった。これは、焼鈍温度が730[%Cu]0.126−160℃を超え、Ti2Cuを最大相とする析出相の生成量が低くなったためである。これにともない、エリクセン値が低く、円錐台成形時には皺発生が認められた。
<実施例3>
表1の試験番号9、11、17の素材を製造する際の中間製品である板厚3mmの熱間圧延後の焼鈍前の板を使用して、ショットブラストおよび酸洗して酸化スケールを除去した後、表5に示す条件にて真空焼鈍を施した。この熱間圧延後の焼鈍材の板厚中心から厚さ1mm×25mm×50mmのクーポンサンプルを機械研削で採取し、600番エメリー紙で湿式研磨した後、60℃、1%のH2SO4水溶液中に24時間浸漬した場合の耐食性を評価するとともに、腐食試験後に分析用試験片を切出して溶融法により水素濃度を測定した。冷間加工性は、板厚中心から厚さ1mm、直径90mmの試験片を機械研削および600番エメリー紙湿式研磨により採取し、エリクセン試験(JIS Z 2247)により成形高さを調査して評価した。また、冷間加工時の皺発生は、図1に示す円錐台成形を、径20mm、肩半径2mmの円柱状ポンチと、径50mm、肩半径2mmのダイ金型を用いて、φ100mmのブランクを高さ20mmまで成形加工する試験を行い、試験後の縦壁部分表面を肉眼で観察し、皺の有無によって評価した。また、金属組織観察用試験片を採取し、長手方向断面を2%弗酸水溶液でエッチングして、電解放射型電子銃およびX線エネルギー分散型分析器装備の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、直径10〜1000nmのTi2Cuを最大相とする析出相を観察し、体積分率を調査した。析出相におけるCuの原子%濃度が、不純物元素よりも2倍以上高く、TiとCuの原子%比が、1.8〜2.4:1の範囲に入る析出相は、Ti2Cuを最大相とする析出相として、その大きさと数量を画像解析装置を併用して解析した。観察視野では、析出相の大きさによって適宜倍率を変え、50〜100視野を観察した。
ここで求まった球相当直径10〜1000nmのTi2Cuを最大相とする析出相の、球相当体積の総計を求めた。さらに、予め計測しておいた、試料の前記エッチング前後における質量差から、エッチングによる母相の溶出量を算出し、試料中に含まれていた前記Ti2Cuを最大相とする析出相の球相当体積による体積分率を求めた。
これらの評価結果も併せて表5に示す。また、表5中のT(℃)はT(℃)=730[%Cu]0.126−160℃により計算される、請求項2に示した焼鈍上限温度である。
Figure 2010180448
表5より、いずれも高い耐食性を有し、水素吸収量も低い。円錐台成形時の皺発生も認められない。
以上より、熱間圧延材においても、本発明規定の成分範囲内で、かつ、最終焼鈍温度を制御することで、粒径10〜1000nmのTi2Cuを最大相とする析出相を体積分率で0.05〜3.5%の範囲内で含ませることができ、耐水素吸収性および冷間加工性に優れ、冷間加工時の皺発生を抑えられるチタン合金を製造できることがわかる。
本発明のチタン合金製品は、純チタンでは水素吸収による水素脆化が問題となる環境に使用されるとともに、純チタン2種材同等のプレス成形性、ヘッダー加工性などの冷間加工性を要求される用途において、あらゆる形状の部品に活用することができる。

Claims (2)

  1. 質量%で0.3〜1.8%のCu、0.10%以下のFe、0.13%以下のOを含有し、残部Tiおよび0.3%未満の不純物元素からなり、粒径10〜1000nmのTi2Cuを最大相とする析出相を体積分率で0.05〜3.5%含むことを特徴とする、耐水素吸収性および冷間加工性に優れるチタン合金。
  2. 請求項1に記載するチタン合金の製造方法において、最終焼鈍温度を、460℃以上、730[%Cu]0.126−160℃以下の温度域にて行うことを特徴とする、耐水素侵入性および冷間加工性に優れるチタン合金の製造方法。
    ここで、[%Cu]は、該チタン合金のCu含有量化学分析値(質量%)である。
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