以下に本発明について詳細に説明する。まず、光電変換素子及び光電池の構成と材料について詳述する。色素増感した光電変換素子は、導電性支持体及びこの上に設置され、色素により増感された半導体微粒子含有層(感光層)とからなる光電極、対極、そして光電極と対極に電気的に接触し、これらを接合する電荷移動層からなる積層構成をとる。色素増感半導体微粒子含有層を設置した導電性支持体は、光電変換素子における作用電極であり、光アノードとして機能する。この光電変換素子は光照射下で外部回路に起電力と電流を発生する光電池(photoelectric cell)として利用できる。光電池の中でも、電荷移動層がイオン伝導性電解質の場合を、光電気化学電池(photoelectrochemical cell)と呼ぶ。感光層である色素増感半導体微粒子含有層は目的に応じて設計され、単層構成でも多層構成でもよい。感光層に入射した光は色素を励起する。励起状態の色素はエネルギーの高い励起電子を半導体微粒子の伝導帯に注入し、伝導体電子は更に拡散によって導電性支持体に到達する。電子注入した色素分子は電子の欠損した酸化体となり、これは色素と接する電荷輸送材料から電子を供与されて還元される。すなわち、導電性支持体上が受け取った励起電子は外部回路で電気的仕事をして対極に受け取られ、電荷移動層を経て色素酸化体に戻り、色素が再生する。なお、光電変換素子は層構成をとるものの、それぞれの層の接触部(例えば、導電性支持体の導電層と感光層の境界、感光層と電荷移動層の境界、電荷移動層と対極の境界など)においては、各層の構成成分が相互に拡散して混合した状態であってもよい。
感光層に用いる半導体材料は光エネルギーの吸収などで励起された状態で伝導性を生じる材料であり、エネルギー準位として価電子バンドと伝導バンドを有し、バンドギャップに相当する波長の光で励起すると伝導帯電子と価電子帯正孔を生じる。このときn型半導体では伝導帯電子がキャリアー、p-型半導体では正孔がキャリアーとなり伝導性を生じる。伝導に関わるキャリアーの濃度として1014〜1020個/cm3の範囲の半導体が好ましい。色素増感された半導体では、光吸収及びこれによる励起電子と正孔の発生は主として色素の分子において起こり、半導体はこの励起電子を伝導バンドで受け取り、導電性支持体の電極に伝達する役割を担う。このような半導体電極の色素増感の機構は、本多健一、藤嶋昭、化学総説No. 7、p77 (1976)、渡辺正、滝澤卓朗、本多健一、触媒、20、p370 (1978)に詳解されている。
半導体としてはシリコン、ゲルマニウムのような単体半導体の他に、金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)に代表されるいわゆる化合物半導体又はペロブスカイト構造を有する化合物等を使用することができる。金属のカルコゲニドとして好ましくはチタン、スズ、亜鉛、鉄、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、もしくはタンタルの酸化物、カドミウム、亜鉛、鉛、銀、アンチモン、ビスマスの硫化物、カドミウム、鉛のセレン化物、カドミウムのテルル化物等が挙げられる。他の化合物半導体としては亜鉛、ガリウム、インジウム、カドミウム等のリン化物、ガリウムヒ素、銅-インジウム-セレン化物、銅-インジウム-硫化物等が挙げられる。また、ペロブスカイト構造を有する化合物として好ましくはチタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸バリウム、ニオブ酸カリウムが挙げられる。
色素増感に用いる半導体は、光励起下で伝導帯電子がキャリアーとなりアノード電流を与えるn型半導体であることが好ましい。n型半導体は電極をアノード分極(正に分極)の状態で伝導帯励起電子を発生したとき、アノーディックに整流された電流を生じる。
具体的な半導体として好ましくは、Si、TiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO、Nb2O5、CdS、ZnS、PbS、Bi2S3、CdSe、CdTe、GaP、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2、TiSrO3が挙げられる。更に好ましくはTiO2、ZnO、SnO2、Fe2O3、WO3、Nb2O5、CdS、PbS、CdSe、InP、GaAs、CuInS2、CuInSe2、TiSrO3であり、特に好ましくは、TiO2、ZnO、WO3、Nb2O5又はTiSrO3であり、最も好ましくはTiO2である。
半導体は、単結晶でも、多結晶でもよい。変換効率としては単結晶が好ましいが、製造コスト、原材料確保、エネルギーペイバックタイム等の点では多結晶が好ましく、特にナノメートルからマイクロメートルサイズの微粒子半導体が好ましい。
これらの半導体微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径で一次粒子として5〜200 nmであることが好ましく、特に8〜100 nmであることが好ましい。また、分散物中の半導体微粒子(二次粒子)の平均粒径としては0.01〜100μmであることが好ましい。
また、2種類以上の粒子サイズ分布の異なる微粒子を混合して用いてもよく、この場合、小さい粒子の平均サイズは5 nm以下であることが好ましい。また、入射光を散乱させて光捕獲率を向上させる目的で、粒子サイズの大きな、例えば300 nm程度の半導体粒子を混合してもよい。
半導体微粒子の作製法は、作花済夫の「ゾル-ゲル法の科学」アグネ承風社(1988年)、技術情報協会の「ゾル-ゲル法による薄膜コーティング技術」(1995)等に記載のゾル-ゲル法、杉本忠夫の「新合成法ゲルーゾル法による単分散粒子の合成とサイズ形態制御」 まてりあ、第35巻、第9号 1012頁から1018頁(1996)記載のゲルーゾル法が好ましい。
またDegussa社が開発した塩化物を酸水素炎中で高温加水分解により酸化物を作製する方法も好ましい。また、酸化チタンの場合は上記のゾル-ゲル法、ゲルーゾル法、塩化物を酸水素炎中で高温加水分解法がいずれも好ましいが、更に清野学の「酸化チタン 物性と応用技術」技報堂出版(1997)に記載の硫酸法、塩素法を用いることもできる。
酸化チタンの場合は上記のゾル-ゲル法のうち特にバーブ等の「ジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサエティー 第80巻、第12号、3157ページから3171ページ(1997)」記載のものと、バーンサイド等の「ケミカル・マテリアルズ 第10巻 第9号、2419ページから2425ページ」記載の方法が好ましい。
光電変換素子において、感光層である色素増感半導体微粒子含有層を設ける導電性支持体及び対極の少なくとも一方は、光学的に透明である透明導電性基板とすることを特徴とする。光学的に透明とは、可視光を透過する領域を面内に持っていることを意味し、実質的に半透明であってもよい。この透明な基板を通って、電極外部から入射する光が感光層に到達する構造となっており、感光層に至るまでの光透過率が高いほど、感光層の光吸収効率が上がり、光電変換効率が改善される。透過率を高くし、かつ、電極の抵抗を減じて集電の効率を高く維持するために、上記導電性支持体又は対極として、面内に金属リードを配置した構造の透明導電性基板を用いる。金属リードが対極に用いられる場合、対極の基板は下記の半導体微粒子含有層用の導電性支持体と同様な種類の透明導電性基板を用いることができる。
半導体微粒子含有層塗設用の透明な導電性支持体、すなわち、透明導電性基板としては、透明導電層を表面に有する透明又は半透明のガラス又はプラスチックを用いることができる。透明導電層に用いる好ましい導電剤としては金属(例えば白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)の透明薄膜、炭素薄膜、又は導電性の金属酸化物(インジウム-スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)の薄膜が挙げられる。上記導電剤層の厚さは、0.02〜10μm程度であることが好ましい。
透明導電性基板の透明とは400ないし900 nmの可視光域で光透過率の最大が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、70%以上が特に好ましい。透明導電性基板としてはガラスもしくはプラスチックに導電性の金属酸化物を塗設したものが好ましい。この中でも、フッ素をドーピングした二酸化スズからなる導電層を低コストのソーダ石灰フロートガラスでできた透明基板上に堆積した導電性ガラスが特に好ましい。また、低コストでフレキシブルな光電変換素子又は太陽電池には、透明ポリマーフィルムに上記透明導電層を設けたものを用いるのがよい。透明ポリマーフィルムには、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET),ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオクタチックポリステレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ等がある。透明導電性支持体を用いる場合、光はその支持体側から入射させることが好ましい。この場合、導電性金属酸化物の塗布量はガラスもしくはプラスチックの支持体1 m2当たり0.01〜100 gが好ましい。
対極に金属リードを有する透明導電性基板を用いる場合は、半導体微粒子含有層用の導電性支持体は、金属のように支持体そのものに導電性があるものであってもよい。
本発明では、透明導電性基板の抵抗を下げる目的で金属リードを該導電性基板上に担持して用いる。金属リードは透明導電性基板の面内に一定のパターンで設置される。金属リードの材質はアルミニウム、銅、銀、金、白金、クロム及びニッケルから選ばれる少なくとも1種以上を含む金属であることが好ましく、特にアルミニウム又は銀を主として含むことが好ましい。
金属リードの微細パターンは、基板上にパターンマスクを介した蒸着又はスッパタリング等で設置するか、あるいは、フォトマスクを介した感光性樹脂膜の露光と化学現像処理によって設けた表面パターンを利用する各種の金属薄膜のパターニング法によって設置できる。
金属リードの設置される位置は、透明導電性基板中の特定の位置でも良いし、また複数の位置でも良い。例えば、金属リードは前記の透明導電層の下層(支持体と導電層の間)に設けてもよいし、透明導電層の上層あるいは内部に設けてもよい。好ましくは、透明導電層の下層又は内部に設ける方法であり、特に好ましくは下層に設ける方法である。透明導電層の上層に付設され、透明導電層と電気的接触をとる構成で配置される場合は、これらのリード線が電荷移動層と直接に接することを防ぐ目的で、リード線の上層に電気的絶縁性の保護層を付設することが好ましい。この場合、電気的絶縁性の保護層は、シリカ、アルミナ、ジルコア、及び絶縁性高分子樹脂から選ばれる絶縁層であることが好ましい。また、金属リードが、透明導電層が塗設された透明支持体の内部に埋め込まれて固定される場合は、透明導電層と電気的接触をとる構成で配置される。
金属リードのパターンは透明導電性基板の面内に同方向に配列された平行線状のパターン、あるいは面内で複数方向にリード線をクロスして配列させたメッシュ又は格子状のパターンが好ましい。また、金属リードはその線幅が均等であっても、複数の種類の幅を混ぜて用いてもよい。金属リードは通常、線幅が1μm以上2 mm以下、厚さが0.1μm以上10μm以下であり、線幅10μm以上1 mm以下、厚さ0.5μm以上5μm以下であることが好ましく、線幅30μm以上300μm以下、厚さ0.1μm以上5μm以下であることが更に好ましい。金属リード線が置かれているピッチ(となり合う金属リード線の同じ側のエッジの間の距離)は通常0.1 mm以上15 mm以下であり、0.2 mm以上10 mm以下であることが好ましく、0.2 mm以上6 mm以下であることが更に好ましい。
本発明の金属リードが担持された透明導電性基板において、受光可能な電極平面の面積中に占める透明な領域(実際に受光できる領域)の割合(面積率)として定義される開口率は、通常50%以上99%以下である。開口率は好ましくは、60%以上99%以下であり、更に好ましくは70%以上95%以下であり、80%以上95%以下であることが特に好ましい。
金属リードが付設された透明導電性基板の表面抵抗は、0.1〜15Ω/□の範囲であることが好ましく、1〜15Ω/□の範囲であることがより好ましく、2〜10Ω/□の範囲であることが更に好ましい。表面抵抗は4点端子接触型の表面抵抗測定装置で計測できる。
半導体微粒子を導電性支持体上に塗設する方法としては、半導体微粒子の分散液又はコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法、前述のゾル-ゲル法などが挙げられる。光電変換素子の量産化、液物性や支持体の融通性を考えた場合、湿式の膜付与方式が比較的有利である。湿式の膜付与方式としては、塗布法、印刷法が代表的である。
半導体微粒子の分散液を作製する方法としては前述のゾル-ゲル法の他、乳鉢ですり潰す方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法、あるいは半導体を合成する際に溶媒中で微粒子として析出させそのまま使用する方法等が挙げられる。分散媒としては水又は各種の有機溶媒(例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等)が挙げられる。分散の際、必要に応じてポリマー、界面活性剤、酸、もしくはキレート剤などを分散助剤として用いてもよい。
塗布方法としては、アプリケーション系としてローラ法、ディップ法、メータリング系としてエアーナイフ法、ブレード法等、またアプリケーションとメータリングを同一部分でできるものとして、特公昭58-4589号公報に開示されているワイヤーバー法、米国特許2681294号、同2761419号、同2761791号等に記載のスライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法等が好ましい。また汎用機としてスピン法やスプレー法も好ましく用いられる。
湿式印刷方法としては、従来から凸版、オフセット、グラビアの3大印刷法をはじめ、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等が好ましい。
前記方法の中から、液粘度やウェット厚みにより好ましい膜付与方式を選択する。
液粘度は半導体微粒子の種類や分散性、使用溶媒種、界面活性剤やバインダー等の添加剤により大きく左右される。高粘度液(例えば0.01〜500 Poise)ではエクストルージョン法やキャスト法が好ましく、低粘度液(例えば0.1 Poise以下)ではスライドホッパー法もしくはワイヤーバー法もしくはスピン法が好ましく、均一な膜にすることが可能である。
なお、エクストルージョン法による低粘度液の塗布の場合でも塗布量がある程度の量あれば塗布は可能である。
また半導体微粒子の高粘度ペーストの塗設にはしばしばスクリーン印刷が用いられており、この手法を使うこともできる。
このように塗布液の液粘度、塗布量、支持体、塗布速度等のパラメータに対応して、適宜ウェット膜の付与方式を選択すればよい。
更に、半導体微粒子含有層は単層と限定する必要はない。微粒子の粒径の違った分散液を多層塗布することも可能であり、また半導体の種類が異なる、あるいはバインダー、添加剤の組成が異なる塗布層を多層塗布することもでき、また一度の塗布で膜厚が不足の場合にも多層塗布は有効である。多層塗布には、エクストルージョン法又はスライドホッパー法が適している。また多層塗布をする場合は同時に多層を塗布しても良く、数回から十数回順次重ね塗りしてもよい。更に順次重ね塗りであればスクリーン印刷法も好ましく使用できる。
一般に、半導体微粒子含有層の厚みが増大するほど単位投影面積当たりの担持色素量が増えるため光の捕獲率が高くなるが、生成した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。したがって、半導体微粒子含有層には好ましい厚さが存在するが、典型的には0.1〜100μmである。光電池として用いる場合は1〜30μmであることが好ましく、2〜25μmであることがより好ましい。半導体微粒子の支持体1 m2当たりの塗布量は0.5〜400 g、更には5〜100 gが好ましい。
半導体微粒子は導電性支持体に塗布した後に粒子同士を電子的にコンタクトさせるため、及び塗膜強度の向上や支持体との密着性を向上させるために加熱処理することが好ましい。好ましい加熱処理温度の範囲は40℃以上700℃未満であり、より好ましくは100℃以上600℃以下である。また加熱処理時間は10分〜10時間程度である。ポリマーフィルムなど融点や軟化点の低い支持体を用いる場合は、高温処理は支持体の劣化を招くため、好ましくない。また、コストの観点からもできる限り低温であることが好ましい。低温化は、先に述べた5 nm以下の小さい半導体微粒子の併用や鉱酸の存在下での加熱処理等により可能である。
また、加熱処理後、半導体粒子の表面積を増大させたり、半導体粒子近傍の純度を高め、色素から半導体粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキや三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
半導体微粒子は多くの色素を吸着することができるように表面積の大きいものが好ましい。このため半導体微粒子層を支持体上に塗設した状態での表面積は、投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、更に100倍以上であることが好ましい。この上限には特に制限はないが、通常1000倍程度である。
上記の半導体微粒子に色素を物理的あるいは化学的に吸着させて得られた色素吸着半導体微粒子を感光層に用いる。感光層では、色素の吸収波長領域での光吸収によって生じた励起電子が半導体の伝導バンドに注入され、これが導電性支持体に伝達されて電流を生じる。ここで使用する色素は錯体色素、特に金属錯体色素又はポリメチン色素が好ましい。光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ変換効率を上げるため、二種類以上の色素を混合する。そして、目的とする光源の波長域と強度分布に合わせるように混合する色素とその割合を選ぶことができる。こうした色素は半導体微粒子の表面に対する適当な結合基(interlocking group)を有していることが好ましい。好ましい結合基としては、COOH基、SO3H基、シアノ基、-P(O)(OH)2基、-OP(O)(OH)2基、又は、オキシム、ジオキシム、ヒドロキシキノリン、サリチレート及びα-ケトエノレートのようなπ伝導性を有するキレート化基が挙げられる。この中でもCOOH基、-P(O)(OH)2基、-OP(O)(OH)2基が特に好ましい。これらの基はアルカリ金属等と塩を形成していてもよく、また分子内塩を形成していてもよい。また、ポリメチン色素の場合、メチン鎖がスクアリリウム環やクロコニウム環を形成する場合のように酸性基を含有するなら、この部分を結合基としてもよい。
以下に好ましく用いられる色素を具体的に説明する。使用する色素が金属錯体色素の場合、ルテニウム錯体色素が好ましく、更に下記式(I)で表される色素が好ましい。
式(I) (A1)pRuBaBbBc
式(I)中、pは0〜2であり、好ましくは2である。Ruはルテニウムを表す。A1はCl、SCN、H2O、Br、I、CN、NCO、及びSeCNから選択される配位子である。Ba、Bb、Bcはそれぞれ独立に以下のB-1〜B-8から選択される有機配位子である。
ここで、Raは水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数(以下C数という)1〜12個で置換もしくは無置換のアルキル基、C数7〜12個で置換もしくは無置換のアラルキル基、又はC数6〜12個で置換もしくは無置換のアリール基を表す。上記のアルキル基、アラルキル基のアルキル部分は直鎖状であっても分岐状であってもよく、アリール基、アラルキル基のアリール部分は単環であっても多環(縮合環、環集合)であってもよい。
ルテニウム錯体色素としては、例えば、米国特許4927721号、同4684537号、同5084365号、同5350644号、同5463057号、同5525440号及び特開平7-249790号明細書に記載の錯体色素が挙げられる。
以下金属錯体色素の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
使用する色素がメチン色素である場合、以下で説明する式(II)、式(III)、式(IV)又は式(V)で表される色素が好ましい。
式中、Rb及びRfは各々水素原子、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表し、Rc〜Reは各々水素原子又は置換基を表す。Rb〜Rfは互いに結合して環を形成してもよい。X11及びX12は各々窒素、酸素、硫黄、セレン、テルルを表す。n11及びn13は各々0〜2の整数を表し、n12は1〜6の整数を表す。式(II)で表される化合物は分子全体の電荷に応じて対イオンを有してもよい。
上記におけるアルキル基、アリール基、複素環基は、置換基を有していてもよい。アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、アリール基、複素環基は、単環でも、多環(縮合環、環集合)であってもよい。またRb〜Rfによって形成される環は、置換基を有していてもよく、単環であっても縮合環であってもよい。
式中、Zaは含窒素複素環を形成するに必要な非金属原子群を表す。Rgはアルキル基又はアリール基である。Qaは式(III)で表される化合物がメチン色素を形成するのに必要なメチン基又はポリメチン基を表す。X13は電荷均衡対イオンを表し、n14は分子の電荷を中和するのに必要な0以上10以下の数を表す。
上記のZaで形成される含窒素複素環は置換基を有していてもよく、単環であっても縮合環であってもよい。また、アルキル基、アリール基は置換基を有していてもよく、アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、アリール基は単環であっても多環(縮合環、環集合)であってもよい。
式(III)で表される色素は、下記式(III-a)〜(III-d)で表される色素であることが好ましい。
式(III-a)〜(III-d)中、R11〜R15、R21〜R24、R31〜R33、及びR41〜R43はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表し、Y11、Y12、Y21、Y22、Y31〜Y35、及びY41〜Y46はそれぞれ独立に酸素、硫黄、セレン、テルル、-CR16R17-、又は-NR18-を表す。R16〜R18はそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、又は複素環基を表す。Y23はO-、S-、Se-、Te-、又は-NR18-を表す。
V11、V12、V21、V22、V31、及びV41はそれぞれ独立に置換基を表し、n15、n31及びn41はそれぞれ独立に1〜6の整数を表す。式(III-a)〜(III-d)で表される化合物は、分子全体の電荷に応じて対イオンを有していてもよい。
上記におけるアルキル基、アリール基、複素環基は置換基を有していてもよく、アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、アリール基、複素環基は単環であっても多環(縮合環、環集合)であってもよい。
以上のようなポリメチン色素の具体例はM. Okawara, T. Kitao, T. Hirasima, M. Matuoka著Organic Colorants (Elsevier)等に詳しく記載されている。
式(IV)中、Qbは5員又は6員の含窒素ヘテロ環を完成するために必要な原子団を表し、Qbは縮環していてもよく、また置換基を有していてもよい。Qbで完成されるヘテロ環の好ましい例としては、ベンゾチアゾール核、ベンゾオキサゾール核、ベンゾセレナゾール核、ベンゾテルラゾール核、2-キノリン核、4-キノリン核、ベンゾイミダゾール核、チアゾリン核、インドレニン核、オキサジアゾール核、チアゾール核、イミダゾール核が挙げられるが、更に好ましくはベンゾチアゾール核、ベンゾオキサゾール核、ベンズイミダゾール核、ベンゾセレナゾール核、2-キノリン核、4-キノリン核、インドレニン核であり、特に好ましくはベンゾチアゾール核、ベンゾオキサゾール核、2-キノリン核、4-キノリン核、インドレニン核である。環上の置換基としては、カルボン酸基、ホスホン酸基、スルホン酸基、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、シアノ基、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、メトキシエトキシなど)、アリーロキシ基(フェノキシなど)、アルキル基(メチル、エチル、シクロプロピル、シクロへキシル、トリフルオロメチル、メトキシエチル、アリル、ベンジルなど)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオなど)、アルケニル基(ビニル、1-プロペニルなど)、アリール基ないし複素環基(フェニル、チエニル、トルイル、クロロフェニルなど)などが挙げられる。
Zbは炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及び水素原子から選ばれる原子により構成された、3ないし9員環を完成するために必要な原子団を表す。Zbによって完成される環として好ましくは4ないし6個の炭素によって骨格が形成される環であり、より好ましくは以下の(ア)〜(オ)で表されるものであり、最も好ましくは(ア)である。
L1、L2、L3、L4及びL5はそれぞれ独立に置換基を有していてもよいメチン基を表す。置換基としては、置換又は無置換のアルキル基(好ましくは炭素原子数1ないし12、更に好ましくは1ないし7のものであり、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、2-カルボキシエチル、ベンジルなど)、置換又は無置換のアリール基(好ましくは炭素原子数6ないし10、更に好ましくは6ないし8のものであり、例えば、フェニル、トルイル、クロロフェニル、o-カルボキシフェニル)、複素環基(例えば、ピリジル、チエニル、フラニル、ピリジル、バルビツール酸)、ハロゲン原子(例えば、塩素、臭素)、アルコキシ基(例えば、メトキシ、エトキシ)、アミノ基(好ましくは炭素原子数1ないし12、更に好ましくは6ないし12のものであり、例えば、ジフェニルアミノ、メチルフェニルアミノ、4-アセチルピペラジン-1-イル)、オキソ基などが挙げられる。これらのメチン基上の置換基は互いに連結してシクロペンテン環、シクロヘキセン環、スクアリリウム環などの環を形成してもよく、あるいは助色団と環を形成することもできる。
n51は0から4までの整数を表し、好ましくは0から3である。n52は0又は1である。
R5は置換基を表す。置換基として好ましくは置換基を有してもよい芳香族基又は置換基を有していてもよい脂肪族基であり、芳香族基の炭素原子数は好ましくは1ないし16、更に好ましくは5ないし6である。脂肪族基の炭素原子数は好ましくは1ないし10、更に好ましくは1ないし6である。無置換の脂肪族基及び芳香族基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
W1は電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを表す。ある色素が陽イオン、陰イオンであるか、あるいは正味のイオン電荷を持つかどうかは、その助色団及び置換基に依存する。置換基が解離性基を有する場合、解離して負電荷を持っても良く、この場合にも分子全体の電荷はW1によって中和される。典型的な陽イオンは無機又は有機のアンモニウムイオン(例えばテトラアルキルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン)及びアルカリ金属イオンであり、一方、陰イオンは具体的に無機陰イオンあるいは有機陰イオンのいずれであってもよく、例えば、ハロゲン陰イオン、(例えば、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン)、置換アリールスルホン酸イオン(例えば、p-トルエンスルホン酸イオン、p-クロロベンゼンスルホン酸イオン)、アリールジスルホン酸イオン(例えば、1,3-ベンゼンジスルホン酸イオン、1,5-ナフタレンジスルホン酸イオン、2,6-ナフタレンジスルホン酸イオン)、アルキル硫酸イオン(例えば、メチル硫酸イオン)、硫酸イオン、チオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ピクリン酸イオン、酢酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオンが挙げられる。
更に電荷均衡対イオンとしてイオン性ポリマーあるいは、色素と逆電荷を有する他の色素を用いてもよいし、金属錯イオン(例えば、ビスベンゼン-1,2-ジチオラトニッケル(III))も可能である。
式(V)においてDは少なくとも4官能以上の芳香族基を示し、X1、X2はそれぞれ独立に硫黄原子、セレン原子、CR63R64又はCR65=CR66を表す。ここでR63〜R66はそれぞれ水素原子又はアルキル基である。R61、R62はそれぞれアルキル基又は芳香族基であり、P1、P2はそれぞれ独立にポリメチン色素を形成するのに必要な非金属原子群を表す。W2は電荷を中和させるのに対イオンが必要な場合の対イオンを示す。
式(V)について更に詳しく説明する。式(V)中、Dは少なくとも四官能以上の芳香族基を示す。このような芳香族基の例としては、これらの基が誘導される芳香族炭化水素としてベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレンなどが挙げられ、芳香族へテロ環としてはアントラキノン、カルバゾール、ピリジン、キノリン、チオフェン、フラン、キサンテン、チアントレンなどが挙げられ、これらは連結部分以外に置換基を有していても良い。Dで表される芳香族基として好ましくは芳香族炭化水素の誘導基であり、更に好ましくはベンゼン又はナフタレンの誘導基である。
X1、X2は、好ましくは硫黄原子又はCR63R64であり、最も好ましくはCR63R64である。
P1、P2はそれぞれ独立にポリメチン色素を形成するのに必要な非金属原子群を表す。P1、P2により、いかなるメチン色素を形成することも可能であるが、好ましくはシアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素、3核メロシアニン色素、アロポーラー色素、ヘミシアニン色素、スチリル色素などが挙げられる。この際、シアニン色素には色素を形成するメチン鎖上の置換基がスクアリウム環やクロコニウム環を形成したものも含んでいる。これらの色素の詳細については、エフ・エム・ハーマー(F. M. Harmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ-シアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes and Related Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社ーニューヨーク、ロンドン、1964年刊、デー・エム・スターマー(D. M. Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズースペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds-Special topics in heterocyclic chemistry)」、第18章、第14節、第482から515頁などに記載されている。シアニン色素、メロシアニン色素、ロダシアニン色素の式は、米国特許第5,340,694号第21、22頁の(XI)、(XII)、(XIII)に示されているものが好ましい。また、P1及びP2によって形成されるポリメチン色素の少なくともいずれか一方のメチン鎖部分にスクアリリウム環を有するものが好ましく、両方に有するものが更に好ましい。
R61、R62は芳香族基又は脂肪族基であり、これらは置換基を有していてもよい。芳香族基の炭素原子数は好ましくは5ないし16、更に好ましくは5ないし6である。脂肪族基の炭素原子数は好ましくは1ないし10、更に好ましくは1ないし6である。無置換の脂肪族基、芳香族基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
式(V)はR61、R62、P1、P2のうち少なくともひとつに酸性基を有することが好ましい。ここで酸性基とは、解離性のプロトンを有する置換基であり、例としてはカルボン酸、ホスホン酸、スルホン酸、ホウ酸などが挙げられ、好ましくはカルボン酸である。またこのような酸性基はプロトンを放出して解離した形をとっていても良い。W2は式(IV)のW1と同義である。
以下に式(II)〜(V)で表されるポリメチン色素の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例使用の色素B、Cも挙げられる。
式(II)及び式(III)で表される化合物は、エフ・エム・ハーマー(F. M. Harmer)著「複素サイクリック・コンパウンズ-シアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds-Cyanine Dyes and Related Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社-ニューヨーク、ロンドン、1964年刊、デー・エム・スターマー(D. M. Sturmer)著「複素サイクリック・コンパウンズースペシャル・トピックス・イン・複素サイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds-Special topics in heterocyclic chemistry)」、第18章、第14節、第482から515頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社-ニューヨーク、ロンドン、1977年刊、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd's Chemistry of Carbon Compounds)」2nd. Ed. vol. IV, part B, 1977刊、第15章、第369から422頁、エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)社刊、ニューヨーク、英国特許第1,077,611号などに記載の方法に基づいて合成することができる。
式(IV)で表される化合物の合成は、Dyes and Pigments第21巻227〜234頁などの文献の記載を参考にして行える。また、式(V)で表される化合物の合成は、Ukrainskii Khimicheskii Zhurnal 第40巻3号253〜258頁、Dyes and Pigments 第21巻227〜234頁及びこれらの文献中に引用された文献の記載等を参考にして行える。
半導体微粒子に色素を吸着させる方法は色素溶液中によく乾燥した半導体微粒子を含有する作用電極を浸漬するか、もしくは色素溶液を半導体微粒子層に塗布して吸着させる方法を用いることができる。前者の場合、浸漬法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法などが使える。後者の塗布方法としては、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法があり、印刷方法としては、凸版、オフセット、グラビア、スクリーン印刷等がある。
液粘度も半導体微粒子層の形成ときと同様に、高粘度液(例えば0.01〜500 Poise)ではエクストルージョン法の他、各種印刷法が、低粘度液(例えば0.1 Poise以下)ではスライドホッパー法もしくはワイヤーバー法もしくはスピン法が適していて、均一な膜にすることが可能である。
このように色素塗布液の液粘度、塗布量、支持体、塗布速度等のパラメータに対応して、適宜付与方式を選択すればよい。塗布後の色素吸着に要する時間は、量産化を考えた場合、なるべく短い方がよい。
未吸着の色素の存在は素子性能の外乱になるため、吸着後速やかに洗浄によって除去することが好ましい。湿式洗浄槽を使い、アセトニトリル等の極性溶剤、アルコール系溶剤のような有機溶媒で洗浄を行うのがよい。また、吸着色素量を増大させるため、加熱処理を吸着前に行うことが好ましい。加熱処理後、半導体微粒子表面に水が吸着するのを避けるため、常温に戻さず40〜80℃の間で素早く色素を吸着させることも好ましい。
色素の使用量は、全体で、支持体1 m2当たり0.01〜100 mモルが好ましい。また、色素の半導体微粒子に対する吸着量は半導体微粒子1 gに対して0.01〜1 mモルが好ましい。このような色素量とすることによって、半導体における増感効果が十分に得られる。これに対し、色素量が少ないと増感効果が不十分となり、色素量が多すぎると、半導体に付着していない色素が浮遊し増感効果を低減させる原因となる。
また、会合など色素同士の相互作用を低減する目的で無色の化合物を共吸着させてもよい。共吸着させる疎水性化合物としてはカルボキシル基を有するステロイド化合物(例えばコール酸)等が挙げられる。更には、紫外線吸収剤を併用することもできる。
また、余分な色素の除去を促進する目的で、色素を吸着した後にアミン類を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。好ましいアミン類としてはピリジン、4-tert-ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。これらが液体の場合はそのまま用いてもよいし有機溶媒に溶解して用いてもよい。
以下、電荷移動層と対極について詳しく説明する。電荷移動層は色素の酸化体に電子を補充する機能を有する層である。代表的な電荷移動層の例としては酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体(電解液)、酸化還元対を有機溶媒に溶解した液体をポリマーマトリクスに含浸したいわゆるゲル電解質、酸化還元対を含有する溶融塩などが挙げられる。更には固体電解質や正孔(ホール)輸送材料を用いることもできる。
本発明で使用する電解液は電解質、溶媒、及び添加物から構成されることが好ましい。電解質はI2とヨウ化物の組み合わせ(ヨウ化物としてはLiI、NaI、KI、CsI、CaI2などの金属ヨウ化物、あるいはテトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドなど4級アンモニウム化合物のヨウ素塩など)、Br2と臭化物の組み合わせ(臭化物としてはLiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2などの金属臭化物、あるいはテトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイドなど4級アンモニウム化合物の臭素塩など)の他、フェロシアン酸塩-フェリシアン酸塩やフェロセン-フェリシニウムイオンなどの金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール-アルキルジスルフィドなどのイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン-キノンなどを用いることができる。この中でもI2とLiIやピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイドなど4級アンモニウム化合物のヨウ素塩を組み合わせた電解質が好ましい。上述した電解質は混合して用いてもよい。また、電解質はEP-718288号、WO95/18456号、J. Electrochem. Soc., Vol. 143, No.10,3099 (1996)、Inorg. Chem. 1996, 35, 1168-1178に記載された室温で溶融状態の塩(溶融塩)を使用することもできる。溶融塩を電解質として使用する場合、溶媒は使用しなくても構わない。
好ましい電解質濃度は0.1 M以上15 M以下であり、更に好ましくは0.2 M以上10 M以下である。また、電解質にヨウ素を添加する場合の好ましいヨウ素の添加濃度は0.01 M以上0.5 M以下である。
電解質に使用する溶媒は、粘度が低くイオン易動度を向上したり、もしくは誘電率が高く有効キャリアー濃度を向上したりして、優れたイオン伝導性を発現できる化合物であることが望ましい。このような溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、3-メチル-2-オキサゾリジノンなどの複素環化合物、ジオキサン、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテルなどの鎖状エーテル類、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテルなどのアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル化合物、ジメチルスルフォキシド(DMSO)、スルフォランなど非プロトン極性物質、などを用いることができる。
また、J. Am. Ceram. Soc., 80 (12) 3157-3171 (1997)に記載されているようなtert-ブチルピリジン、2-ピコリン、2,6-ルチジン等の塩基性化合物を添加することもできる。塩基性化合物を添加する場合の好ましい濃度範囲は0.05 M以上2 M以下である。
電解質はポリマー添加、オイルゲル化剤添加、多官能モノマー類を含む重合、ポリマーの架橋反応等の手法によりゲル化(固体化)させて使用することもできる。ポリマー添加によりゲル化させる場合は、"Polymer Electrolyte Reviews-1及び2"(J. R. MacCallumとC. A. Vincentの共編、ELSEVIER APPLIED SCIENCE)に記載された化合物を使用することができるが、特にポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンを好ましく使用することができる。オイルゲル化剤添加によりゲル化させる場合はJ. Chem. Soc. Japan, Ind. Chem. Soc., 46779 (1943)、J. Am. Chem. Soc., 111, 5542 (1989)、J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1993, 390、Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 35, 1949 (1996)、Chem. Lett., 1996, 885、J. Chm. Soc., Chem. Commun., 1997, 545に記載されている化合物を使用することができるが、好ましい化合物は分子構造中にアミド構造を有する化合物である。
ゲル電解質を多官能モノマー類の重合によって形成する場合、多官能モノマー類、重合開始剤、電解質、溶媒から溶液を調製し、キャスト法、塗布法、浸漬法、含浸法などの方法により色素を担持した電極上にゾル状の電解質層を形成し、その後ラジカル重合することによってゲル化させる方法が好ましい。多官能性モノマーはエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物であることが好ましく、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートが好ましい例として挙げられる。ゲル電解質を構成するモノマー類はこの他に単官能モノマーを含んでいてもよく、アクリル酸又はα-アルキルアクリル酸(例えばメタクリル酸など)類から誘導されるエステル類もしくはアミド類(例えばN-iso-プロピルアクリルアミド、アクリルアミド、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド、メチルアクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、n-プロピルアクリレート、n-ブチルアクリレート、2-メトキシエチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレートなど)、ビニルエステル類(例えば酢酸ビニル)、マレイン酸又はフマル酸から誘導されるエステル類(例えばマレイン酸ジメチル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジエチルなど)、マレイン酸、フマル酸、p-スチレンスルホン酸のナトリウム塩、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジエン類(例えばブタジエン、シクロペンタジエン、イソプレン)、芳香族ビニル化合物(例えばスチレン、p-クロルスチレン、スチレンスルホン酸ナトリウム)、含窒素複素環を有するビニル化合物、4級アンモニウム塩を有するビニル化合物、N-ビニルホルムアミド、N-ビニル-N-メチルホルムアミド、ビニルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、ビニリデンフルオライド、ビニリデンクロライド、ビニルアルキルエーテル類(例えばメチルビニルエーテル)、エチレン、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、N-フェニルマレイミド等を好ましく使用することができる。モノマー全量に占める多官能性モノマーの好ましい重量組成範囲は0.5重量%以上70重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは1.0重量%以上50重量%以下である。
上述のモノマーは、大津隆行・木下雅悦共著:高分子合成の実験法(化学同人)や大津隆行:講座重合反応論1ラジカル重合(I)(化学同人)に記載された一般的な高分子合成法であるラジカル重合によって重合することができる。使用できるゲル電解質用モノマーは、加熱、光、電子線、また電気化学的にラジカル重合することができるが、特に加熱によってラジカル重合させることが好ましい。架橋高分子が加熱により形成される場合に好ましく使用される重合開始剤は、例えば、2,2′-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)(ジメチル2,2'-アゾビスイソブチレート)などのアゾ系開始剤、ベンゾイルパーオキシドなどの過酸化物系開始剤等である。重合開始剤の好ましい添加量はモノマー総量に対し0.01重量%以上20重量%以下であり、更に好ましくは0.1重量%以上10重量%以下である。
ゲル電解質に占めるモノマー類の重量組成範囲は0.5重量%以上70重量%以下であることが好ましく、更に好ましくは1.0重量%以上50重量%以下である。
また、ポリマーの架橋反応により電解質をゲル化させる場合、架橋可能な反応性基を含有するポリマー及び架橋剤を併用することが望ましい。この場合、好ましい架橋可能な反応性基は、含窒素複素環(例えば、ピリジン環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環など)であり、好ましい架橋剤は、窒素原子に対して求電子反応可能な2官能以上の試薬(例えば、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、スルホン酸エステル、酸無水物、酸クロライド、イソシアネートなど)である。
電解質の替わりに有機又は無機あるいはこの両者を組み合わせた正孔輸送材料を使用することができる。適用可能な有機正孔輸送材料としては、N,N'-ジフエニル-N、N'-ビス(4-メトキシフェニル)-(1,1'-ビフェニル)-4,4'-ジアミン(J. Hagen et al., Synthetic Metal 89 (1997) 215-220)、2,2',7,7'-テトラキス(N,N-ジ-p-メトキシフェニルアミン)9,9'-スピロビフルオレン(Nature, Vol. 395, 8 Oct. 1998, p583-585及びWO97/10617)、1,1-ビス{4-(ジ-p-トリルアミノ)フェニル}シクロヘキサンの3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン化合物(特開昭59-194393号公報)、4,4,‐ビス[(N-1-ナフチル)‐N-フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族アミン(特開平5-234681号公報)、トリフェニルベンゼンの誘導体でスターバースト構造を有する芳香族トリアミン(米国特許第4,923,774号、特開平4-308688号公報)、N,N'-ジフエニル-N、N'-ビス(3-メチルフェニル)-(1,1'-ビフェニル)-4,4'-ジアミン等の芳香族ジアミン(米国特許第4,764,625号)、α,α,α',α'-テトラメチル-α,α'-ビス(4-ジ-p-トリルアミノフェニル)-p-キシレン(特開平3-269084号公報)、p-フェニレンジアミン誘導体、分子全体として立体的に非対称なトリフェニルアミン誘導体(特開平4-129271号公報)、ピレニル基に芳香族ジアミノ基が複数個置換した化合物(特開平4-175395号公報)、エチレン基で3級芳香族アミンユニツトを連結した芳香族ジアミン(特開平4-264189号公報)、スチリル構造を有する芳香族ジアミン(特開平4-290851号公報)、ベンジルフェニル化合物(特開平4-364153号公報)、フルオレン基で3級アミンを連結したもの(特開平5-25473号公報)、トリアミン化合物(特開平5-239455号公報)、ピスジピリジルアミノビフェニル(特開平5-320634号公報)、N,N,N-トリフェニルアミン誘導体(特開平6-1972号公報)、フェノキザジン構造を有する芳香族ジアミン(特願平5-290728号)、ジアミノフエニルフエナントリジン誘導体(特願平6-45669号)等に示される芳香族アミン類、α-オクチルチオフェン及びα,ω-ジヘキシル-α-オクチルチオフェン(Adv. Mater. 1997, 9, N0. 7, p557)、ヘキサドデシルドデシチオフェン(Angew. Chem.Int. Ed. Engl. 1995, 34, No. 3, p303-307)、2,8-ジヘキシルアンスラ[2,3-b:6,7-b']ジチオフェン(JACS, Vol. 120, No. 4, 1998, p664-672)等のオリゴチオフェン化合物、ポリピロール(K. Murakoshi et al., ;Chem. Lett. 1997, p471)、"Handbook of Organic Conductive Molecules and Polymers Vol. 1, 2, 3, 4" (NALWA著、WILEY出版)に記載されているポリアセチレン及びその誘導体、ポリ(p-フェニレン) 及びその誘導体、ポリ( p-フェニレンビニレン) 及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリトルイジン及びその誘導体等の導電性高分子を好ましく使用することができる。また、有機正孔(ホール)輸送材料にはNature, Vol. 395, 8 Oct. 1998, p583-585に記載されているようにドーパントレベルをコントロールするためにトリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートのようなカチオンラジカルを含有する化合物を添加したり、酸化物半導体表面のポテンシャル制御(空間電荷層の補償)を行うためにLi[(CF3SO2)2N]のような塩を添加しても構わない。
有機正孔輸送材料は真空蒸着法,キャスト法,塗布法,スピンコート法、浸漬法、電解重合法、光電解重合法等の手法により電極内部に導入することができる。また、正孔輸送材料を電解液の替わりに使用するときは短絡防止のためElectorochim. Acta 40, 643-652 (1995)に記載されているスプレーパイロリシス等の手法を用いて二酸化チタン薄層を下塗り層として塗設することが好ましい。
無機固体化合物を電解質の替わりに使用する場合、ヨウ化銅(p-CuI)(J. Phys. D: Appl. Phys. 31 (1998) 1492-1496)、チオシアン化銅(Thin Solid Films 261 (1995) 307-310、J. Appl. Phys. 80 (8),15 October 1996, p4749-4754、Chem. Mater. 1998, 10, 1501-1509、Semicond. Sci. Technol. 10, 1689-1693)等をキャスト法,塗布法,スピンコート法、浸漬法、電解メッキ法等の手法により電極内部に導入することができる。
電荷移動層の形成方法に関しては2通りの方法が考えられる。1つは増感色素を担持させた半導体微粒子含有層の上に先に対極を貼り合わせておき、その間隙に液状の電荷移動層を挟み込む方法である。もう1つは半導体微粒子含有層上に直接電荷移動層を付与する方法で、対極はその後付与することになる。
前者の場合の電荷移動層の挟み込み方法として、浸漬等による毛管現象を利用する常圧プロセスと常圧より低い圧力にして気相を液相に置換する真空プロセスが利用できる。
後者の場合、湿式の電荷移動層においては未乾燥のまま対極を付与し、エッジ部の液漏洩防止措置も施すことになる。またゲル電解質の場合には湿式で塗布して重合等の方法により固体化する方法もあり、その場合には乾燥、固定化した後に対極を付与することもできる。電解液の他湿式有機正孔輸送材料やゲル電解質を付与する方法としては、半導体微粒子含有層や色素の付与と同様に、浸漬法、ローラ法、ディップ法、エアーナイフ法、エクストルージョン法、スライドホッパー法、ワーヤーバー法、スピン法、スプレー法、キャスト法、各種印刷法等が考えられる。固体電解質や固体の正孔(ホール)輸送材料の場合には真空蒸着法やCVD法等のドライ成膜処理で電荷移動層を形成し、その後対極を付与することもできる。
量産化を考える場合、固体化できない電解液や湿式の正孔輸送材料の場合には、塗設後速やかにエッジ部分を封止することで対応も可能であるが、固体化可能な正孔輸送材料の場合は湿式付与により正孔輸送層を膜形成した後、例えば光重合や熱ラジカル重合等の方法により固体化することがより好ましい。このように膜付与方式は液物性や工程条件により適宜選択すればよい。
なお、電荷移動層中の水分としては10,000 ppm以下が好ましく、更に好ましくは2,000 ppm以下であり、特に好ましくは100 ppm以下である。
対極は、色素増感半導体微粒子含有層を塗設した光電極が光アノードとしてはたらくとき、カソードとして電荷輸送層への電子移動を行う。感光層に光が到達するためには、前述のように色素増感半導体微粒子含有層を塗設する導電性支持体及び対極の少なくとも一方が実質的に透明な透明導電性基板でなければならない。色素増感半導体微粒子含有層を塗設した導電性支持体が透明であって太陽光をその支持体の側から入射させるのが好ましい。この場合、対極は光を反射する材料構成であることが好ましい。この場合の対極に用いる導電性材料としては白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の金属材料、特に、電気化学的に安定な貴金属類(白金、金)が好ましく、また、光反射材料の上に金属酸化物(インジウム-スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)の透明導電層を設けたものも好ましい。
一方、対極を透明導電性基板とするときは、対極は、前述の色素増感半導体微粒子含有層を塗設する導電性支持体を透明導電性基板とするときの構成と同様にすればよい。
好ましい対極は、貴金属又は導電性の酸化物を蒸着したガラス又はプラスチックである。この場合、導電層の厚さは、特に制限はないが、3 nm以上10μm以下であることが好ましい。金属材料である場合は、その膜厚は好ましくは5μm以下であり、更に好ましくは5 nm以上3μm以下の範囲である。
対極の塗設については電荷移動層の付与で記したように、電荷移動層の上に付与する場合と先に半導体微粒子含有層上に付与する場合の2通りある。いずれの場合も、対極材の種類や電荷移動層の種類により、適宜、電荷移動層上又は半導体微粒子含有層上に対極材を塗布、ラミネート、蒸着、貼り合わせなどの方法により形成可能である。例えば、対極を貼り合わせる場合は、上記の導電性材料を塗布、蒸着、CVD等の手法により導電層として設けられた基板を貼り合わせることができる。また、電荷移動層が固体の場合には、その上に直接、前述の導電性材料を塗布、メッキ、PVD、CVD等の手法で対極を形成することができる。
更に、作用電極の導電性支持体又は対極に保護層、反射防止膜など、必要な他の機能の層を設けることも可能である。このような層を多層にて機能分離させる場合、同時多層塗布や逐次で塗布することが可能であるが、生産性を優先させると同時多層塗布がより好ましい。同時多層塗布では、生産性及び膜付与均一性を考えた場合、スライドホッパー法やエクストルージョン法が適している。また、これらの機能層はその材料により、蒸着や貼り付けなどの手法を用いて設けることもできる。
光電池では構成物の劣化や内容物の揮散を防止するために電池の側面をポリマーや接着剤等で密封するのが好ましい。
次に光電変換素子を光電池に適用した場合のセル構造について説明する。色素増感型光電池のセル内部の構造は、基本的には上述した光電変換素子と同じであるが、図2に示すように目的に合わせいくつかの形態が可能である。大きく二つに分ければ、片面からのみ光の入射が可能な構造[図2(a)(b)]と、両面から可能なタイプ[図2(c)]である。
図2(a)は、透明基板13上に一部金属リード9を設け、更に透明導電層12を設け、下塗り層14、色素吸着半導体微粒子含有層10、電荷移動層11及び金属層8をこの順で設け、更に支持基板15を配置した構造である。図2(b)は、支持基板15上に更に金属層v8を有し、下塗り層14を介して色素吸着半導体微粒子含有層10を設け、更に電荷移動層11と透明導電層12とを設け、一部に金属リード9を設けた透明基板13を、金属リード9側を内側にして配置した構造である。図2(c)は、透明基板13上に一部金属リード9を設け、更に透明導電層12を設けたものの間に下塗り層14と色素吸着半導体微粒子含有層10と電荷移動層11とを介在させた構造である。
次に光電変換素子をいわゆる太陽電池に適用する場合のモジュール構造について説明する。色素増感型太陽電池のモジュール構造は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様の構造をとりうる。一般的には、金属・セラミック等の支持基板の上にセルが構成され、その上を充填樹脂や保護ガラス等で覆い、支持基板の反対側から光を取り込む構造とすることができるが、支持基板に強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを構成してその透明の支持基板側から光を取り込むことも可能である。具体的には、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ、ポッティングタイプと呼ばれるモジュール構造あるいはアモルファスシリコン太陽電池などで用いられる基板一体型などのモジュール構造が可能である。これらのモジュール構造は使用目的や使用場所(環境)により適宜選択できる。素子を基板一体型でモジュール化した例を図3に示す。
図3の構造は、透明基板13の一方の面上に金属リード9及び透明導電層12を有し、この上に更に色素吸着半導体微粒子含有層10、固体の電荷移動層16及び金属層8を設けたセルをモジュール化した模式図であり、透明基板13の他方の面には反射防止層17が設けられている。この場合、入射光の利用効率を高めるためには、感光部である色素吸着半導体微粒子含有層10の面積比率(光の入射面である透明基板13側から見たときの面積比率)を大きくした方が好ましい。
スーパーストレートタイプやサブストレートタイプの代表的な構造は、片側又は両側が透明で反射防止処理を施された支持基板の間に、一定間隔にセルが配置され、隣り合うセル間が金属リード又はフレキシブル配線等によって接続されており、外縁部に集電電極を配置して、発生した電力を外部に取り出す構造になっている。基板とセルの間には、セルの保護や集電効率アップのため、目的に応じ、エチレンビニルアセテート(EVA)等様々な種類のプラスチック材料をフイルム又は充填樹脂の形で用いることができる。また、外部からの衝撃が少ないところなど表面を硬い素材で覆う必要のない場所に使う場合には、表面保護層を透明プラスチックフイルムで構成したり、又は、上記充填・封止材料を硬化させることによって保護機能を付与し、片側の支持基板をなくすことも可能である。支持基板の周囲は、内部の密封及びモジュールの剛性確保のため、金属製のフレームでサンドイッチ状に固定し、支持基板とフレームの間は封止材で密封シールする。
また、セルそのものや支持基板、充填材及び封止部材に可撓性の素材を用いれば、曲面の上に太陽電池を構成することもできる。このように、使用目的や使用環境に合わせて様々な形状・機能を持つ太陽電池を製作することができる。
スーパーストレートタイプの太陽電池モジュールは、例えば、基板供給装置から送り出されたフロント基板をベルトコンベヤ等で搬送しながら、その上にセルを封止材・セル間接続用リード線・背面封止材等と共に順次積層した後、背面基板又は背面カバーを乗せ、外縁部にフレームをセットして作ることができる。
一方、サブストレートタイプの場合、基板供給装置から送り出された支持基板をベルトコンベヤ等で搬送しながら、その上にセルをセル間接続用リード線・封止材等と共に順次積層した後、フロントカバーを乗せ、周縁部にフレームをセットして作製することができる。
図3に示した構造のモジュールは、支持基板上に透明電極・感光層・電荷移動層・裏面電極等が立体的かつ一定間隔で配列されるように、選択メッキ・選択エッチング・CVD・PVDといった半導体プロセス技術、あるいはパターン塗布又は広幅で塗布した後にレーザースクライビングやプラズマCVM(Solar Energy Materials and Solar Cells, 48, p373-381等に記載)又は研削等の機械的手法などの方法でパターニングすることができ、これらにより所望のモジュール構造を得ることができる。
以下にその他の部材や工程について詳述する。封止材料としては、液状のEVA(エチレンビニルアセテート)やフッ化ビニリデン共重合体とアクリル樹脂混合物フイルム状のEVA等、耐候性付与・電気絶縁性付与・集光効率向上・セル保護性(耐衝撃性)向上等の目的に応じ様々な素材が使用可能である。
これらを、セル上に固定する方法としては、封止材の物性に合わせ、フイルム状の素材ではロール加圧後加熱密着や真空加圧後加熱密着、液又はペースト状の材料ではロールコート、バーコート、スプレーコート、スクリーン印刷等の様々な方法がある。
また、透明フィラーを封止材に混入して強度を上げたり、光透過率を上げることができる。
モジュール外縁と周縁を囲むフレームとの間は、耐候性・防湿性が高い樹脂を使って封止するとよい。
支持基板としてPET・PEN等の可撓性素材を用いる場合は、ロール状の支持体を繰り出してその上にセルを構成した後、上記の方法で連続して封止層を積層することができ、生産性の高い工程を造ることができる。
発電効率を上げるため、モジュールの光取り込み側の基板(一般的には強化ガラス)の表面には反射防止処理が施される。これには、反射防止膜をラミネートする方法、反射防止層をコーティングする方法がある。
また、セルの表面をグルービング又はテクスチャリング等の方法で処理することによって入射した光の利用効率を高めることが可能である。
発電効率を上げるためには、光を損失なくモジュール内に取り込むことが最重要だが、光電変換層を透過してその内側まで到達した光を反射させて光電変換層側に効率良く戻すことも重要である。このためには、支持基板面を鏡面研磨した後、AgやAl等を蒸着又はメッキする方法、セルの最下層にAl-Mg又はAl-Tiなどの合金層を反射層として設ける方法、あるいは、アニール処理によって最下層にテクスチャー構造を作り反射率を高める方法等がある。
発電効率を上げるためには、セル間接続抵抗を小さくすることが、内部電圧降下を抑える意味で重要である。
ワイヤーボンディングや導電性のフレキシブルシートで接続するのが一般的だが、導電性粘着テープや導電性接着剤を使ってセルの固定機能と電気的な接続機能を兼ねる方法、導電性ホットメルトを所望の位置にパターン塗布する方法等がある。
ポリマーフィルムなどのフレキシブル支持体を使った太陽電池では、ロール状の支持体を送り出しながら半導体の塗設の説明で示した方法によって、順次、セルを形成・所望のサイズに切断した後、周縁部をフレキシブルで防湿性のある素材でシールして、電池本体を作製できる。また、Solar Energy Materials and Solar Cells, 48, p383-391記載の「SCAF」と呼ばれるモジュール構造とすることもできる。
フレキシブル支持体の太陽電池では、更にこれを曲面ガラス等に接着固定して使用することもできる。
以下、本発明を比較例と共に示す実施例によって具体的に説明する。実施例及び比較例で用いた色素は下記に示す通りである。
[実施例1]
1.透明導電性基板の作製
(1)金属リードを有しない(比較例用)透明導電性基板の作製
厚さ1.9 mmの無アルカリガラスの基板に、CVD法によってフッ素ドープ型の二酸化スズを全面に均一にコーティングし、厚さ600 nm、表面抵抗約20Ω/□、500 nmでの光透過率(が85%の導電性二酸化スズ膜を片面に被覆した透明導電性基板(基板R1)を形成した。
(2)本発明の金属リード付設透明導電性基板
厚さ1.9 mmの無アルカリガラスの基板の片面に、金属の薄膜を真空蒸着法によって設け、フォトレジストを塗布した後、レジスト膜のパターン露光、現像の工程を経て、表1に示す金属材料と形状の微細金属リードの各種パターンを設けた。この金属リードのパターン上にCVD法によってフッ素ドープ型の二酸化スズからなる厚さ600 nmの上記の(1)と同様な性質の導電性膜を全面に均一にコーティングした。このようにして金属リードパターンを持つ本発明の透明導電性基板P1〜P7を作製した。これらの基板が与えた表面抵抗と開口率を表1に整理した。また、同様にして表1の比較用金属リード付き透明導電性基板R2も作製した。
表1中、P3、P4、P7の金属パターンは、総厚み5μmのうちの4μmは、支持体のガラスに設けた凹部(深さ4μm)に埋め込まれている構造(in-plane構造)をとっている。
2.二酸化チタン粒子含有塗布液の作製
C. J. BarbeらのJ. Am. Ceramic Soc.80巻, p3157の論文に記載の製造方法に従い、チタン原料にチタニウムテトライソプロポキシドを用い、オートクレーブ中での重合反応の温度を230℃に設定して二酸化チタン濃度11重量%の二酸化チタン分散物を合成した。得られた二酸化チタン粒子の平均サイズは約10 nmであった。この分散物に、二酸化チタンに対し30重量%のポリエチレングリコール(分子量20,000、和光純薬製)を添加し、混合して塗布液を得た。
3.色素を吸着した二酸化チタン電極の作製
上記1で作製した透明導電性基板の導電面側に、上記2の塗布液をドクターブレード法で100μmの厚みで塗布し、25℃で30分間乾燥した後、電気炉で450℃にて30分間焼成した。二酸化チタンの塗布量は15g/m2であり、膜厚は8μmであった。
ガラスを取り出し冷却した後、表2に示す色素の溶液(色素3×10-4モル/リットル、溶媒:2-プロパノール)に40℃で12時間浸漬した。色素の染着したガラスをエタノールで洗浄し暗所にて自然乾燥させた。色素の吸着量は、二酸化チタンの塗布面積1 m2あたりおよそ1.5×10-3モルであった。
4.光電気化学電池の作製
上述のようにして作製した色増感されたTiO2電極(2 cm×1.5 cm)をこれと同じ大きさの対極基板(表2参照)と、ポリエチレン製のフレーム型スペーサー(厚さ20μm)を挟んで、長辺方向に端子用の末端部である幅2 mmを交互に外へ出して重ね合わせた(図1参照)。セルを受光部であるTiO2電極の面を残して全体をエポキシ樹脂接着剤でシールした。次に、スペーサーの側面に注液用の小孔を空け、電極間の空間に毛細管現象を利用して非水電解液(ヨウ化テトラブチルアンモニウム0.65モル/リットル,ヨウ素0.05モル/リットルのアセトニトリル溶液)をしみこませた。このようにして、受光面積が約2 cm2であり、図1に示した基本層構成の通り、ガラス基板1上に金属リード9及び導電剤層2を付設し、TiO2電極3、色素層4、電解液5、白金層6及び支持体ガラス7を順に積層した光電気化学電池を組み立てた。表2は実施例及び比較例の各光電気化学電池の金属リードパターン、使用色素及び対極の内容をまとめたものである。
5.光電変換効率の測定
500 Wのキセノンランプ(ウシオ電気)に太陽光シミュレーション用補正フィルター(Oriel社製AM1.5)を装着し、電池への入射光強度が100 mW/cm2に調整された模擬太陽光を照射した。作製した光電気化学電池の導電性ガラスと白金蒸着ガラスの末端に設けた端子に導線でオーミックコンタクトをとり、両電極の電気応答を電流電圧測定装置(ケースレー製ソースメジャーユニット238型)に入力した。光源の照射光を電池の透明電極側から入射し、電流―電圧特性を測定した。これにより求められた光電気化学電池の開放電圧(Voc)、短絡電流密度(Jsc)、形状因子(FF)、光電変換効率を一括して表3に記載した。
上記実施例の結果から本発明に示す開口率の条件で金属リードを電極に付設した透明導電性基板を用いた光電気化学電池が、電極抵抗の軽減によって、開口部当たりの光電変換効率が増加しているとともに、全受光部当たりの変換効率も良化し、光電変換において優れた性能を与えることがわかる。なお、電池番号A1、A5、A6、A8、B1及びB5は、全受光部当たりの変換効率が比較1に比べてやや低くなっているが、これは実施例1でのセル面積が2 cm×1.5 cmと小サイズであり、開口率が低いことが反映された結果である。しかし、下記実施例2で示すように、セルを大面積化した場合、比較例の構成では変換効率低下が著しくなるが、本発明の構成にすることによりその低下が抑えられた。
[実施例2]
6.大面積の光電気化学電池の作製と評価
上記の表2に示したような金属リードパターン電極を持つ構成の電池のうちでA3について、透明電極と対極の面積をそれぞれ増加し、4×3 cm、6×4 cm、及び8×4 cmの3種のサイズの大面積セルを作製した。また、比較のために金属リードパターンを持たない電池について同様な大サイズ化を行った。これらの大面積セルで得られた性能を表4に示した。
この結果から、大面積化によって本発明の特徴を持つリードパターンを付設した電池が、大面積化による性能劣化が少ないことがわかる。