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JP2010070812A - 冷間鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼線材とその製造方法 - Google Patents

冷間鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼線材とその製造方法 Download PDF

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JP2010070812A
JP2010070812A JP2008240098A JP2008240098A JP2010070812A JP 2010070812 A JP2010070812 A JP 2010070812A JP 2008240098 A JP2008240098 A JP 2008240098A JP 2008240098 A JP2008240098 A JP 2008240098A JP 2010070812 A JP2010070812 A JP 2010070812A
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Hironari Hikasa
裕也 日笠
Koji Takano
光司 高野
Shigeo Fukumoto
成雄 福元
Takeshi Nakano
健 中野
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Nippon Steel Stainless Steel Corp
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Nippon Steel and Sumikin Stainless Steel Corp
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Abstract

【課題】オーステナイト系ステンレス鋼に環境に悪影響を及ぼす重金属(Pb、Bi、Se、Te)を使用しないで被削性と冷間鍛造性を付与させる。このことにより、これまで、すべて切削加工のみで行われてきた複雑な部品の加工を冷間鍛造とあわせて行うことができ、歩留りを向上させる。
【解決手段】
質量%で、C≦0.030%、Si:0.1〜2.0%、Mn0.1〜3.0%、P≦0.05%、S:0.01〜0.04%、Ni:8.0〜12.0%、Cr:17.0〜20.0%、Cu:1.0〜4.0%、N≦0.030%、Al:0.002〜0.010%、Ca:0.001〜0.010%、O:0.001〜0.020%、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼で、かつ質量比で0.25≦Ca/Al≦2.50および0.10≦Ca/O≦0.30の条件を満たすことにより、低軟化点を有するCaO-SiO2-Al2O3-MnO系の酸化物と(Mn,Cr)Sの硫化物との複合介在物を形成することを特徴とする冷間鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼線材。さらに上記に加え、表層から深さ1mmの間における長径2μm未満の硫化物、酸化物などの介在物数の割合が、80%以上となることを特徴とする。また、上記に加えて全熱間圧延工程での鋼材表面の最低温度を1000℃〜1200℃の高温、熱間圧延の減面率を98.0%以上の高減面率で製造することで、表層からの深さ1mm部における長径2μm未満の硫化物の割合が80%以上となるようにしたことを特徴とする冷間鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼線材およびその製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、冷間鍛造性と被削性に優れかつ環境に悪影響を与える重金属を使用しない環境にやさしいオーステナイト系ステンレス鋼とその製造方法に関するものであり、例えば、複雑な形状を有しこれまで、切削加工のみで加工を行っている精密部品などを冷間鍛造加工と切削加工をあわせて行うことにより、材料歩留よく加工することが可能なオーステナイト系ステンレス鋼およびその製造方法に関するものである。
オーステナイト系ステンレス鋼は加工性、耐食性などに優れた性質を有することから、様々な分野において広く使用されている。ネジ、ボルトなどの各種機器部品は一般に冷間鍛造によって成形加工して製造されることが多い。この冷間鍛造による方法は加工能率、歩留が高い利点を有するが、精密な加工精度に劣る。一方、複雑な形状を有する部品では、すべて切削加工で製造されている。切削加工による方法では複雑な形状への加工が可能であり、非常に精密な寸法精度を満足することができる利点があるものの、太い線径の材料から加工されるため材料歩留が悪いという欠点がある。
従来、冷間鍛造性を求められる製造方法ではSUSXM7(17%Cr−9%Ni−3%Cu−低C、N系)が、被削性を求められる製造方法ではSUS303(18%Cr−9%Ni−0.3%S)などが用いられてきた。
冷間鍛造性に優れたSUSXM7は被削性が悪く、被削性の優れたSUS303は冷間鍛造性が悪いという相反する特徴を有している。従って、複雑な形状を有する部品では材料歩留が悪くても被削性の高い鋼を使用し、切削加工にて製造しているのが通常であった。
しかしながら、近年、複雑な形状を有する部品を歩留・生産性よく製造するために、耐食性、被削性を向上させたオーステナイト系ステンレス鋼が提案され、脱酸による介在物の形態を変えることで特性を改善することが提案されている(下記特許文献1〜4)。
特許文献1に記載された文献はステンレス鋼の被削性向上を耐食性の低下を伴うことなく実現させるため、Ca、Al、O量を規制することにより、酸化物系介在物をゲーレナイト(2CaO・Al・SiO)系とし、被削性を向上させたことを特徴とするものである。
特許文献2に記載された発明は耐食性を劣化させることなく被削性を向上させるために、耐食性の低下が少ないとされているCaを添加し、また硬質な介在物であるAl23の生成を可能な限り抑制し、鋼中の介在物をCaO・SiOとMnO・SiOの複合体とすることで被削性、冷間加工性を向上させることを特徴とするものである。
特許文献3に記載された発明はAlOの生成による工具寿命の低下の問題に対応するため、脱酸時にAlを使用せず、被削性を向上させることを特徴とするものである。
特許文献4に記載された発明は硫化物が発銹や孔食の起点となり耐食性を悪化させることから、これらの硫化物を用いないで、被削性改善に有効なアノーサイト(CaO・Al・2SiO)系の酸化物を生成させ被削性を改善し、また多量のZrなどを添加することにより炭化物を生成し、耐食性を改善したことを特徴とするものである。
しかしながら、これまで、冷間鍛造性を付与させた環境に悪影響を与える重金属を使用しない環境にやさしいオーステナイト系ステンレス快削鋼は提案されていない。
本発明の目的は、環境に悪影響を与える重金属(Pb、Bi、Se、Te)を使用しないで、冷間鍛造性の優れたオーステナイト系ステンレス快削鋼およびその製造方法を提供することで、これまで切削加工のみで行われてきた部品加工の歩留を向上させることにある。
特開平6−145908号公報 特開2004−256900号公報 特開2006−249517号公報 特開2001−234298号公報
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、軟質の硫黄快削鋼の酸化物系介在物の組成をコントロールすることにより、酸化物と硫化物の複合介在物を形成させ、且つ、熱間圧延で介在物を分断して、硫化物の微細分散化を促進させることによって、冷間鍛造性を向上させようとした結果、冷間鍛造用SUSXM7(17%Cr−9%Ni−3%Cu−低C、N系)の微量S系を基本成分として、極微量のAl、Ca、Oの量を制御し、粗圧延から仕上げ圧延までの全熱間圧延工程での鋼材の最低温度、熱間圧延工程の減面率を制御することで、硫化物を中心とした介在物を著しく微細分散化でき、かつ引張強さを520MPa以下に軟質化することで、冷間鍛造性を付与させることを見出した。
すなわち、本発明の要旨とするところは、特許請求の範囲に記載したとおりの下記内容である。
(1)質量%で、C≦0.030%、Si:0.1〜2.0%、Mn0.1〜3.0%、P≦0.05%、S:0.01〜0.04%、Ni:8.0〜12.0%、Cr:17.0〜20.0%、Cu:1.0〜4.0%、N≦0.030%、Al:0.002〜0.010%、Ca:0.001〜0.010%、O:0.001〜0.020%、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼からなり、かつ、質量比で0.25≦Ca/Al≦2.50および0.10≦Ca/O≦0.30の条件を満たすことにより、低軟化点を有するCaO-SiO2-Al2O3系の酸化物と(Mn,Cr)Sの硫化物との複合介在物を形成することを特徴とする冷間鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼線材。
(2)前記鋼は、MnOの酸化物を含有すること特徴とする(1)に記載の冷間鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼線材。
(3)表層から深さ1mmの間における長径2μm未満の硫化物、酸化物などの介在物数の割合が80%以上であることを特徴とする(1)または(2)に記載の冷間鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼線材。
(4)前記鋼は、質量%で、B≦0.010%を含有することを特徴とする(1)〜(3)のいずれか一項に記載の冷間鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼線材。
(5)前記鋼は、質量%で、Mo≦3.0%を含有することを特徴とする(1)〜(4)のいずれか一項に記載の冷間鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼線材。
(6)前記鋼の引張強度(TS)が520MPa以下であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか一項に記載の冷間鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼線材。
(7)(1)〜(6)のいずれか一項に記載のオーステナイト系ステンレス快削鋼線材の製造方法であって、粗圧延から仕上げ圧延までの線材圧延中の鋼材最低温度が、酸化物、硫化物の軟化点以上である1000〜1200℃の高温とし、且つ、熱間圧延工程の減面率を98.0%以上の高減面率にすること特徴とする冷間鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼線材の製造方法。
本発明による冷間鍛造性と被削性を併せ持つオーステナイト系ステンレス快削鋼およびその製造方法によれば冷間鍛造性と切削加工で効率よく部品加工が可能となり、部品加工の低コスト化の効果を発揮するなど、産業上有用な著しい効果を奏する。
以下に、先ず、本発明の請求項1記載の限定理由について説明する。下記の説明において、各成分の表示は質量%を示す。
C:≦0.030%
Cはオーステナイト安定化元素であるが多量に含有させると耐食性、冷間鍛造性、耐工具磨耗性が劣化するため上限を0.030%とした。また、Cは鋼の強度を確保するために0.003%以上が好ましい。さらに好ましくは0.005〜0.015%である。
Si:0.1〜2.0%
Siは脱酸剤として作用し、耐酸化性を向上させるにも有効な元素であるので0.1%以上含有させるが、必要以上の含有は冷間鍛造性、耐工具磨耗性を劣化させるため2.0%を上限とした。好ましくは0.1〜0.4%である。
Mn:0.1〜3.0%
本発明ではMnはMnSとして被削性を向上させる効果があるため。0.1%以上含有させるが、過剰な含有は耐食性や靭性を低下させるためその上限を3.0%とした。好ましくは1.0〜2.5%である。
P:0.05%以下
Pは含有量が多いと熱間加工性を低下させるため0.05%を上限とした。好ましくは0.04%以下である。
S:0.01〜0.04%
Sは被削性を改善する元素であるため0.01%以上含有させるが、大量に含有させると硫化物を中心とした介在物が粗大化し、冷間鍛造性が劣化する。そのため微量Al、Caを添加(制御)して、被削性と冷間鍛造性を兼備させるために0.01〜0.04%の範囲とした。好ましくは0.015〜0.03%である。
図1に17.5Cr−9.5Ni−3.0Cu−0.3Si−2.0Mn−0.002Al−0.003Ca−0.010N―0.010Oの成分系でSを変化させ、鋼材温度を圧延工程で最低となった鋼材温度を1090℃、減面率を99.4%以上で製造し、引張強度を約480〜510MPaとした材料の限界据込率に及ぼすS量の影響を示す。限界据込率の測定方法は実施例の項で述べる。一般に限界据込率が80%以上あればヘッダー加工など冷間鍛造において良好な作業性・生産性を示すことが知られている。図1から被削性を向上させる元素であるS量の増加によって冷間鍛造性が低下していることが分かる。また、0.03%のS量の鋼にCa添加すると約80%の限界据込率を示した。しかし、0.15%のSを含有した鋼ではCa添加による限界据込率の上昇は確認できなかった。この試験結果より、冷間鍛造性を高く保つためにはS量を制限する必要がある。従ってSの上限を0.04%とした。
Ni:8.0〜12.0%
Niは耐食性を向上させるとともに、冷間加工性を改善させる元素である。そのため下限を8.0%とした。また、Niは高価な元素であるためにその上限を12.0%とした。好ましくは9.0〜11.0%である。
Cr:17.0〜20.0%
Crは耐食性向上に有効な元素である。17.0%以下では耐食性が悪くなり、多いとオーステナイト相が不安定となるため上限を20.0%とした。好ましくは17.0〜19.0%である。
Cu:1.0〜4.0%
Cuはオーステナイト安定元素であり、冷間鍛造性を改善させる重要な元素である。そのためには少なくとも1.0%以上の添加が必要であるが、4.0%を超えて含有すると熱間加工性が悪化することから上限を4.0%とした。好ましくは2.0〜4.0%である。
N:0.030%以下
Nは固溶作用によって冷間鍛造性を低下させる元素であるため、できる限り低下させることが望ましく、上限を0.030%とした。しかしながら低N量化は製造コストを増加させるため0.01%以上が好ましい。さらに好ましくは0.010〜0.015%である。
Al:0.002〜0.01%
Alは脱酸剤として作用するとともに、後述の低軟化点を有するCaO-SiO2-Al2O3-MnO系の介在物を生成し、硫化物との複合介在物とさせ、介在物の微細分散に重要な元素であるが、多量に含有すると硬質な粗大非金属介在物として存在するために冷間鍛造性を低下させる。そこで、その範囲を0.002〜0.01%とした。好ましくは0.002〜0.005%である。
Ca:0.001〜0.01%
Caは低軟化点のCaO-SiO2-Al2O3系の酸化物を生成させるのに重要な元素である。Al、Siなどの脱酸元素とOの微妙なコントロールにより後述する低融点のCaO-SiO2-Al2O3系酸化物を生成し、硫化物との複合介在物として、硫化物を微細に分散させる。これらの効果を得るためには少なくとも0.001%以上の添加が必要である。しかし、多量に含有させると、これらの効果が得られなくなることに加え、製造性も低下することから、その上限を0.01%とした。好ましくは0.001〜0.005%である。
O:0.001〜0.020%
OはAl、Caと同じく、CaO-SiO2-Al2O3系酸化物となり、硫化物との複合介在物として、微細に分散させるため、Oの含有は必須である。0.001%未満ではその効果は小さく、0.020%を超えると硬質のCrが増大して冷間鍛造性及び被削性を低下させるので、その範囲を0.001〜0.020%とした。好ましくは0.005〜0.015%である。
質量比で0.25≦Ca/Al≦2.50
CaO-SiO2-Al2O3系の酸化物を生成させ、介在物をCa系の酸化物と(Mn,Cr)Sの硫化物の複合介在物とするためにはCa/Al量をコントロールすることが必要である。Ca/Al量が0.25未満であると、CaO量が少なくなり、SiO2-Al2O3系の酸化物が多く存在し、複合介在物になりにくくなる。また、Ca/Al量が2.50以上であると、2CaO・SiO2が多く生成され、複合介在物になりにくくなることに加え、鋳造時にノズルが溶損し、製造性に問題が発生するため、質量比で0.25≦Ca/Al≦2.5とした。
質量比で0.10≦Ca/O≦0.30
Ca/OについてもCaO-SiO2-Al2O3系を生成させ、介在物をCa系の酸化物と(Mn,Cr)Sの硫化物の複合介在物とするためにコントロールすることが重要である。Ca/O量が0.10未満であると、SiO2-MnO-Cr2O3系の介在物が多くなり、CaO-SiO2-Al2O3系の介在物が少なくなり、複合介在物が生成しにくくなる。また0.30以上であると、MnO量が減少し、複合介在物を生成しにくくなるとともに、鋳造時にノズルが溶損し、製造性に問題が発生するため、質量比で0.10≦Ca/Al≦0.30とした
CaO-SiO2-Al2O3系酸化物
極微量のAl、O、Caをコントロールすることにより、CaO-SiO2-Al2O3系の介在物が生成し(Mn,Cr)S系の硫化物の接種核として働き、複合介在物として、硫化物を微細に分散させる。また、これらの酸化物の軟化点1050〜1200℃であることを見出した。これらの効果を得るためには、各元素の酸化物は少なくとも3mass%以上含有することが必要である。また、好ましくは、CaO-SiO2-Al2O3-MnO系の酸化物にすることが好ましく、MnOが1mass%以上含有することが必要である。さらに熱間圧延工程で圧延温度が最低となる鋼材温度を酸化物の軟化点以上である1050℃以上の高温で圧延し、熱間圧延の減面率を98.0%以上の高減面率にすることで、これらの低軟化点の介在物が分断され微細分散する。硫化物の微細分散化により、冷間鍛造性向上につながる。
本発明の請求項3記載の限定理由について述べる。
表層から深さ1mmの間における長径2μm未満の硫化物、酸化物などの介在物数の割合が80%以上
図2にS量を0.03%と同レヘ゛ル、引張強度を約480〜510MPaとした材料における2μm未満の硫化物、酸化物などの介在物数の割合と限界据込率の関係を示す。硫化物の大きさとその数についての測定方法は実施例の項で述べる。介在物は加工時に破壊の起点となりやすいため、その大きさは非常に重要である。また、表層から深さ1mmの間は加工時に応力の集中が大きいため、今回は表層から深さ1mmの間の硫化物、酸化物などの介在物の大きさとその数を測定した。2μm未満の介在物数の割合が少なくなるほど冷間鍛造性が低下していることがわかる。すなわち硫化物、酸化物などの介在物の微細分散により、冷間鍛造性の向上が見られる。一般に限界据込率が80%以上あればヘッダー加工など冷間鍛造において良好な作業性・生産性を示すことが知られており、80%以上の限界据込率を確保するためは長径が2μm未満の硫化物、酸化物などの介在物数の割合が80%以上必要であるため、この値とした。
本発明の請求項4記載の限定理由について述べる。
B:≦0.010%
Bは熱間加工性や軟質化を改善するために添加される元素であり、0.002%以上の添加により安定した効果が得られる。しかし過剰に添加するとBの化合物が析出し、熱間加工性を劣化させるので、その上限を0.010%とした。好ましくは0.002〜0.004%である。
本発明の請求項5記載の限定理由について述べる。
Mo:≦3.0%
MoはCrと同様に耐食性を向上させるのに有効な元素であり0.1%以上の添加により安定した効果が得られる。しかし、多量に添加させると熱間加工性が低下するために上限を3.0%とした。好ましくは0.1〜2.5%である。
本発明の請求項6記載の限定理由について述べる。
引張強度≦520MPa
図3にS量を約0.03%とし、C,N量を変化させた材料の限界据込率に及ぼす引張強度の影響を示す。図3から引張強度(TS)の上昇によって冷間鍛造性が低下していることが分かる。この試験結果より、冷間鍛造性を高く保つためには引張強度を制限する必要がある。従って引張強度の上限を520MPaとした。
本発明の請求項7記載限定理由について述べる。
粗圧延から仕上げ圧延までの全熱間圧延工程でのる鋼材表面の最低温度を1000℃〜1200℃
圧延温度は硫化物の更なる微細分散化に重要な因子である。鋼材の温度は表面温度が最も低く、またその鋼材の表面温度は加熱後、粗圧延、中間圧延工程にかけて次第に低下し、中間圧延工程付近で全工程の最低温度(通常850〜950℃)となる。その後、線材径が小さくなるにつれ、圧延速度が上昇し、それに伴い加工発熱が発生しにて温度が上昇する温度経過を示す。本発明では、高温加熱、IH、中間保定炉、保熱カバー、高速圧延化を行うことにより、圧延工程における粗圧延から中間圧延までの温度低下を少なくし、中間圧延後での鋼材温度を1000℃〜1200℃高温での恒温圧延を実施している。圧延工程中の鋼材の表面温度が低いとCa系酸化物の軟化点温度以下となり分断しにくく、酸化物の分断による介在物の微細分散化が困難になるため1000℃以上とした。また、1200℃以上では粒界溶融による脆化や有害元素の完全固溶・再析出による脆化が生じやすくなるため上限を1200℃とした。好ましくは1050℃〜1200℃である。
熱間圧延の減面率を98.0%以上
熱間圧延の減面率は硫化物の微細分散化に重要な因子である。減面率は{1−(熱間圧延後の断面積)/(鋳片の断面積)}×100(%)で表せ、減面率が小さいと鋼中のCa系酸化物、硫化物の分断が起こりにくく、微細化が困難である。本開発において98.0%以上の減面率があれば効率よく分断され、硫化物の微細分散化が可能であることを見出した。
以下に本発明の実施例について説明する。
表1、2に本発明の実施例の化学成分と冷間鍛造性、被削性(切屑処理性、耐工具磨耗性)および引張強度の評価結果を示す。
Figure 2010070812
Figure 2010070812
これら化学成分の鋼は100kg真空溶解炉にてφ180mm角の鋳片に鋳込み、その後、最低鋼材表面温度を990〜1210℃、減面率を97.5〜99.7%で熱間圧延を行い、1050℃(オーステナイト系ステンレス鋼線で組織を安定化させる温度)で溶体化処理を施し、棒鋼サンプルを製造した。その後、冷間鍛造性、被削性(切屑処理性、耐工具磨耗性)および引張強度を調査した。
冷間鍛造性は圧縮試験によって得られる限界据込率によって評価した。圧縮試験は直径11mmの線材から高さ12mm、直径8mmの円柱状の試験片を作製して供試材とし、同心円状の溝をもつ拘束型ダイスでの圧縮試験により評価した。試験片の初期の高さをH、割れが発生した圧縮後の高さをHとし以下の式で求めた値を限界据込率とした。
(1−H/H)×100(%)
圧縮試験機によって一定速度で試験片を圧縮し、試験片側面の割れの有無を目視で判定し、限界据込率によって大小で評価した。
本発明鋼No.1〜18は限界据込率が80%以上であった。
硫化物、酸化物などの介在物のサイズ及びその数の測定は、試験片のL断面について埋め込み・鏡面研磨を行ったものについて、表層から深さ1mmの間を光学顕微鏡にて1画素0.125μm観察できるカメラを用いて400倍で250視野観察し、確認された硫化物、酸化物などの介在物について圧延方向に平行の長さを測定し、その数の割合を求め評価した。
本発明鋼No.1〜18は2μm以下の硫化物、酸化物の介在物数の割合が80%以上であった。
切削試験は直径22mmに熱間鍛伸した棒鋼を供試材として、超硬工具(P20種)を用いて、切削速度(50〜200m/min)、切込み(0.1〜1.0mm)、送り速度(0.01〜0.1mm/rev)で外周切削をおこなった。被削性の評価は切屑処理性、耐工具磨耗性にて評価した。
切屑処理性の評価は短く破損しているものおよび規則的ならせん状のものを○、無規則で長く繋がったものを×とした。これは、短く破損した切屑を排出するものは切削中に表面に疵をつける可能性が低いが、無規則で長く繋がった切屑は表面に疵をつけたり、工具に絡まったりするためである。本発明鋼は短く破損したものと規則的ならせん状の切屑が観察された。
耐工具磨耗は約4000m切削時の工具を観察して評価した。工具磨耗がないものは○、局所的に大きな工具磨耗が観察されるものを×とした。本発明鋼は一部微量の工具磨耗が観察されるものもあるが、大きな工具磨耗は観察されなかった。
引張強度はJIS9号A(G.L100mm)を用いて試験を行い、引張強度を測定した。本発明鋼の引張強度は520MPa以下であった。
一方、比較例No.19〜48は本発明に比べ、冷間鍛造性、被削性(切屑処理性、耐工具磨耗性)、引張強度、2μm以下の硫化物の割合、熱間加工性、コスト、表面疵、鋳片脆化ノズル溶損のいずれかが劣っていた。
以上実施例から分かるように本発明例に優位性は明らかである。
以上に実施例から明らかなように、本発明により冷間鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼およびその製造方法を提供することが可能であり、これまで切削加工のみで複雑な形状を製造していた部品を冷間鍛造と切削加工によって、材料歩留まり、生産性よく製造する上で極めて有用である。
限界据込率に及ぼすS量の影響を示す図である。 2μm未満の硫化物、酸化物などの介在物数の割合と限界据込率の関係を示す図である。 限界据込率に及ぼす引張強度の影響を示す図である。

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C≦0.030%、
    Si:0.1〜2.0%、
    Mn0.1〜3.0%、
    P≦0.05%、
    S:0.01〜0.04%、
    Ni:8.0〜12.0%、
    Cr:17.0〜20.0%、
    Cu:1.0〜4.0%、
    N≦0.030%、
    Al:0.002〜0.010%、
    Ca:0.001〜0.010%、
    O:0.001〜0.020%、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼からなり、
    かつ、質量比で0.25≦Ca/Al≦2.50および0.10≦Ca/O≦0.30の条件を満たすことにより、
    低軟化点を有するCaO-SiO2-Al2O3系の酸化物と(Mn,Cr)Sの硫化物との複合介在物を形成することを特徴とする冷間鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼線材。
  2. 前記鋼は、MnOの酸化物を含有すること特徴とする請求項1に記載の冷間鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼線材。
  3. 表層から深さ1mmの間における長径2μm未満の硫化物、酸化物などの介在物数の割合が80%以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の冷間鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼線材。
  4. 前記鋼は、質量%で、B≦0.010%を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の冷間鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼線材。
  5. 前記鋼は、質量%で、Mo≦3.0%を含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の冷間鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼線材。
  6. 前記鋼の引張強度(TS)が520MPa以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の冷間鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼線材。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載のオーステナイト系ステンレス快削鋼線材の製造方法であって、粗圧延から仕上げ圧延までの線材圧延中の鋼材最低温度が、酸化物、硫化物の軟化点以上である1000〜1200℃の高温とし、且つ、熱間圧延工程の減面率を98.0%以上の高減面率にすること特徴とする冷間鍛造性に優れるオーステナイト系ステンレス快削鋼線材の製造方法。
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