以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の燃料電池の一例を示す断面図である。図1に示す燃料電池1は、起電部を構成する膜電極接合体としての燃料電池セル2と、この燃料電池セル2に燃料を供給する燃料供給機構3と、この燃料供給機構3に設けられた燃料電池用圧力調整バルブ(以下、単に圧力調整バルブと呼ぶ)4とから主として構成されている。
燃料供給機構3は、例えば燃料分配機構5と、液体燃料を収容する燃料収容部6と、これら燃料分配機構5と燃料収容部6とを接続する流路7と、この流路7中に配置されたポンプ8とから構成されている。圧力調整バルブ4は、このような燃料供給機構3のうち例えば燃料収容部6に設けられている。
燃料電池セル2は、アノード触媒層11とアノードガス拡散層12とを有するアノード(燃料極)13と、カソード触媒層14とカソードガス拡散層15とを有するカソード(空気極/酸化剤極)16と、アノード触媒層11とカソード触媒層14とで挟持されたプロトン(水素イオン)伝導性の電解質膜17とから構成される膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)を有している。
アノード触媒層11やカソード触媒層14に含有される触媒としては、例えばPt、Ru、Rh、Ir、Os、Pd等の白金族元素の単体、白金族元素を含有する合金等が挙げられる。アノード触媒層11にはメタノールや一酸化炭素等に対して強い耐性を有するPt−RuやPt−Mo等を用いることが好ましい。カソード触媒層14にはPtやPt−Ni等を用いることが好ましい。但し、触媒はこれらに限定されるものではなく、触媒活性を有する各種の物質を使用することができる。触媒は炭素材料のような導電性担持体を使用した担持触媒、あるいは無担持触媒のいずれであってもよい。
電解質膜17を構成するプロトン伝導性材料としては、例えばスルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸重合体のようなフッ素系樹脂(ナフィオン(商品名、デュポン社製)やフレミオン(商品名、旭硝子社製)等)、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂等の有機系材料、あるいはタングステン酸やリンタングステン酸等の無機系材料が挙げられる。但し、プロトン伝導性の電解質膜17はこれらに限られるものではない。
アノード触媒層11に積層されるアノードガス拡散層12は、アノード触媒層11に燃料を均一に供給する役割を果たすと同時に、アノード触媒層11の集電体も兼ねている。カソード触媒層14に積層されるカソードガス拡散層15は、カソード触媒層14に酸化剤を均一に供給する役割を果たすと同時に、カソード触媒層14の集電体も兼ねている。アノードガス拡散層12およびカソードガス拡散層15は多孔質基材で構成されている。
アノードガス拡散層12やカソードガス拡散層15には、必要に応じて導電層が積層される。これら導電層としては、例えばAu、Ni等の導電性金属材料からなる多孔質層(例えばメッシュ)、薄膜または箔体、あるいはステンレス鋼(SUS)等の導電性金属材料にAuなどの良導電性金属を被覆した複合材等が用いられる。電解質膜17と燃料分配機構5およびカバープレート18との間には、それぞれゴム製のOリング19が介在されており、これらによって燃料電池セル(MEA)2からの燃料漏れや酸化剤漏れを防止している。
図示を省略したが、カバープレート18は酸化剤である空気を取入れるための開口を有している。カバープレート18とカソード16との間には、必要に応じて保湿層や表面層が配置される。保湿層はカソード触媒層14で生成された水の一部が含浸されて、水の蒸散を抑制すると共に、カソード触媒層14への空気の均一拡散を促進するものである。表面層は空気の取入れ量を調整するものであり、空気の取入れ量に応じて個数や大きさ等が調整された複数の空気導入口を有している。
燃料収容部6には、燃料電池セル2に対応した液体燃料が収容されている。液体燃料としては、各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が挙げられる。液体燃料は必ずしもメタノール燃料に限られるものではない。液体燃料は、例えばエタノール水溶液や純エタノール等のエタノール燃料、プロパノール水溶液や純プロパノール等のプロパノール燃料、グリコール水溶液や純グリコール等のグリコール燃料、ジメチルエーテル、ギ酸、その他の液体燃料であってもよい。いずれにしても、燃料収容部6には燃料電池セル2に応じた液体燃料が収容される。
この燃料収容部6は、耐メタノール性を有する樹脂材料として、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:ヴィクトレックス社商標)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)等、さらには耐メタノール性と透明性を有する樹脂材料として、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、環状オレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリフェニルサルホン(PPSU)、ポリエーテルサルホン(PES)等により構成される。
燃料電池セル2のアノード13側には、燃料分配機構5が配置されている。燃料分配機構5は途中にポンプ8が設けられた配管のような液体燃料の流路7を介して燃料収容部6と接続されている。燃料分配機構5にはこのような流路7を通して液体燃料が燃料収容部6から導入される。流路7は燃料分配機構5や燃料収容部6と独立した配管に限られるものではない。例えば、燃料分配機構5と燃料収容部6とを積層して一体化する場合、これらを繋ぐ液体燃料の流路であってもよい。燃料分配機構5は流路7を介して燃料収容部6と接続されていればよい。
燃料分配機構5は、例えば図2に示すように液体燃料が流路7を介して流入する少なくとも1個の燃料注入口5aと、液体燃料やその気化成分を排出する複数個の燃料排出口5bとを有する燃料分配板5cである。燃料分配板5cの内部には、図1に示すように燃料注入口5aから導かれた液体燃料の通路となる空隙部5dが設けられている。複数の燃料排出口5bは燃料通路として機能する空隙部5dにそれぞれ直接接続されている。
燃料注入口5aから燃料分配板5cに導入された液体燃料は空隙部5dに入り、この燃料通路として機能する空隙部5dを介して複数の燃料排出口5bにそれぞれ導かれる。複数の燃料排出口5bには、例えば液体燃料の気化成分のみを透過し、液体成分は透過させない気液分離体(図示せず)を配置してもよい。これによって、燃料電池セル2のアノード13には液体燃料の気化成分が供給される。なお、気液分離体は燃料分配機構5とアノード13との間に気液分離膜等として設置してもよい。液体燃料の気化成分は複数の燃料排出口5bからアノード13の複数個所に向けて排出される。
燃料排出口5bは燃料電池セル2の全体に燃料を供給することが可能なように、燃料分配板5cのアノード13と接する面に複数設けられている。燃料排出口5bの個数は1個以上であればよいが、燃料電池セル2の面内における燃料供給量を均一化する上で、0.1〜10個/cm2の燃料排出口5bが存在するように形成することが好ましい。燃料排出口5bの個数が0.1個/cm2未満であると、燃料電池セル2に対する燃料供給量を十分に均一化することができない。燃料排出口5bの個数を10個/cm2を超えて形成しても、それ以上の効果が得られない。
燃料分配機構5から放出された燃料は、上述したように燃料電池セル2のアノード13に供給される。燃料電池セル2内において、燃料はアノードガス拡散層12を拡散してアノード触媒層11に供給される。液体燃料としてメタノール燃料を用いた場合、アノード触媒層11で下記の(1)式に示すメタノールの内部改質反応が生じる。なお、メタノール燃料として純メタノールを使用した場合には、カソード触媒層14で生成した水や電解質膜17中の水をメタノールと反応させて(1)式の内部改質反応を生起させる。あるいは、水を必要としない他の反応機構により内部改質反応を生じさせる。
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e− …(1)
この反応で生成した電子(e−)は集電体を経由して外部に導かれ、いわゆる電気として携帯用電子機器等を動作させた後、カソード16に導かれる。また、(1)式の内部改質反応で生成したプロトン(H+)は電解質膜17を経てカソード16に導かれる。カソード16には酸化剤として空気が供給される。カソード16に到達した電子(e−)とプロトン(H+)は、カソード触媒層14で空気中の酸素と下記の(2)式にしたがって反応し、この反応に伴って水が生成する。
6e−+6H++(3/2)O2 → 3H2O …(2)
ポンプ8は燃料を循環させる循環ポンプではなく、あくまでも燃料収容部6から燃料分配機構5に液体燃料を送液する燃料供給ポンプである。このようなポンプ8で必要時に液体燃料を送液することによって、燃料供給量の制御性を高めることができる。燃料分配機構5から燃料電池セル2に供給された燃料は発電反応に使用され、その後に循環して燃料収容部6に戻されることはない。図1に示す燃料電池1は燃料を循環させないことから、従来のアクティブ方式とは異なるものであり、装置の小型化等を損なうものではない。また、液体燃料の供給にポンプ8を使用しており、従来の内部気化型のような純パッシブ方式とも異なるため、例えばセミパッシブ方式と呼称されるものである。
ポンプ8の種類は特に限定されるものではないが、少量の液体燃料を制御性よく送液することができ、さらに小型軽量化が可能という観点から、ロータリーベーンポンプ、電気浸透流ポンプ、ダイアフラムポンプ、しごきポンプ等を使用することが好ましい。ロータリーベーンポンプはモータで羽を回転させて送液するものである。電気浸透流ポンプは電気浸透流現象を起こすシリカ等の焼結多孔体を用いたものである。ダイアフラムポンプは電磁石や圧電セラミックスによりダイアフラムを駆動して送液するものである。しごきポンプは柔軟性を有する燃料流路の一部を圧迫し、燃料をしごき送るものである。これらのうち、駆動電力や大きさ等の観点から、電気浸透流ポンプや圧電セラミックスを有するダイアフラムポンプを使用することがより好ましい。
ポンプ8の送液能力は燃料電池1の主たる対象物が小型電子機器であることから、10μL/分〜1mL/分の範囲とすることが好ましい。送液能力が1mL/分を超えると一度に送液される液体燃料の量が多くなりすぎて、全運転期間に占めるポンプ8の停止時間が長くなる。このため、燃料電池セル2への燃料の供給量の変動が大きくなり、その結果として出力の変動が大きくなる。これを防止するためのリザーバをポンプ8と燃料分配機構5との間に設けてもよいが、そのような構成を適用しても燃料供給量の変動を十分に抑制することはできず、さらに装置サイズの大型化等を招いてしまう。
一方、ポンプ8の送液能力が10μL/分未満であると、装置立ち上げ時のように燃料の消費量が増える際に供給能力不足を招くおそれがある。これによって、燃料電池1の起動特性等が低下する。このような点から、10μL/分〜1mL/分の範囲の送液能力を有するポンプ8を使用することが好ましい。ポンプ8の送液能力は10〜200μL/分の範囲とすることがより好ましい。このような送液量を安定して実現する上でも、ポンプ8には電気浸透流ポンプやダイアフラムポンプを適用することが好ましい。
圧力調整バルブ4は、燃料収容部6の内圧(以下、単に内圧と呼ぶ)が適正範囲内となるように設けられている。すなわち、内圧が適正範囲を下回った場合、例えばポンプ8の実質的な送液能力を回復させるために、外気を導入して内圧を上昇させ、また内圧が適正範囲よりも高くなった場合、燃料収容部6の破損を抑制するために、内気を排出して内圧を低下させるために設けられている。なお、内圧が適正範囲内となっている場合には、全体として閉塞することにより、外部から燃料収容部6への異物の侵入を抑制すると共に、燃料収容部6から外部への液体燃料の流出を抑制する。
ここで、内圧の適正範囲としては、ポンプ8の送液能力、燃料収容部6の強度等に応じて適宜選択することができるが、例えば下限が大気圧に対して0.01MPa程度低い圧力であり、上限が大気圧に対して0.6MPa程度高い圧力である。下限が大気圧に対して0.01MPaを下回るような低い圧力となると、例えばポンプ8の実質的な送液能力が低下し、燃料電池1の出力特性が不安定となるおそれがあり、上限が大気圧に対して0.6MPaを上回るような高い圧力となると、例えば燃料収容部6等が破損し、液体燃料が流出するおそれがある。
図3は、本発明の圧力調整バルブ4の第1の形態を示す断面図であり、内圧が適正範囲内となっている場合を示すものである。なお、以下の圧力調整バルブ4を示す図では、いずれも図中上側が燃料収容部6の外部側、図中下側が燃料収容部6の内部側となるように図示している。また、以下の説明では、燃料収容部6の外部側を単に外部側と呼び、燃料収容部6の内部側を単に内部側と呼んで説明する。
圧力調整バルブ4は、バルブ室41と、このバルブ室41に収容されるバルブ本体42とを有している。また、圧力調整バルブ4は、バルブ本体42を押圧するスプリング等の押圧用弾性体43を有している。
この押圧用弾性体43は、燃料流路内に配置され液体燃料に接液するため、表面処理が施されたものであることが好ましい。具体的には、ステンレス系のスプリングに対し不動態化処理を行い、耐食性を高めたものが好ましい。表面処理に関しては不動態化処理に限らず、金等の貴金属めっきやフッ素系樹脂等の樹脂コーティングが好適に用いられる。また、素材としてカーボンを用いたバネを使用することもできる。
バルブ室41は、例えば燃料収容部6の容器外壁を利用して形成され、具体的には容器外壁に設けられる孔部61と、この孔部61に外部側から嵌め込まれるようにして固定される固定部材44とから構成されている。
孔部61は、気体の流路となると共に、バルブ室41を主として構成するものであり、具体的には容器外壁の内部側に形成される内側孔部61aと、この内側孔部61aの外部側に形成される外側孔部61bとから構成されており、外側孔部61bがバルブ室41を主として構成している。
固定部材44は、筒状とされ、例えば外側孔部61bに挿入される挿入部44aと、この挿入部44aの外部側に形成され、外側孔部61bの縁部に引っかかるようにして形成される径大部44bと、これらを貫通する筒孔44cとを有している。挿入部44aは、バルブ本体42を外部側から抑えるようにして外側孔部61bに保持し、径大部44bは、外側孔部61bの縁部に引っかかるようにすることで全体が外側孔部61bに埋没しないように設けられている。また、筒孔44cは、気体の流路とするために設けられている。
この固定部材44は、耐メタノール性を有する樹脂材料として、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:ヴィクトレックス社商標)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)等、さらには耐メタノール性と透明性を有する樹脂材料として、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、環状オレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリフェニルサルホン(PPSU)、ポリエーテルサルホン(PES)等により構成される。特に、固定部材44は、燃料収容部6と同様の材料とすることにより、燃料収容部6への超音波接合などによる固定が良好となるため好ましい。
一方、バルブ本体42は、筒状部材46と、この筒状部材46の外部側の端部に配置される弾性部材47とから構成されており、全体が外部側、すなわち弾性部材47側へと押圧用弾性体43によって押圧されている。
筒状部材46は、バルブ本体42を主として構成し、外部側、すなわち弾性部材47側に径大部46aが形成され、反対側の端部に径小部46bが形成されると共に、全体を貫通するようにして軸孔46cが形成されている。
この筒状部材46は、耐メタノール性を有する樹脂材料として、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:ヴィクトレックス社商標)、液晶ポリマー(LCP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)等、さらには耐メタノール性と透明性を有する樹脂材料として、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、環状オレフィンコポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ポリメチルペンテン(TPX)、ポリフェニルサルホン(PPSU)、ポリエーテルサルホン(PES)等により構成される。特に、筒状部材46は、固定部材44と異なる材料を使用することにより、固定部材44へ意図しない密着固定の発生を防止できるため好ましい。
径大部46aは、弾性部材47、特にその枠部47aを押圧すると共に、押圧用弾性体43による押圧のために設けられている。また、径小部46bは、内側孔部61aに挿入されることで、筒状部材46、すなわちバルブ本体42を軸方向に沿って適切に移動させるために設けられている。なお、内側孔部61aと径小部46bとの間には、気体の流路となる程度の隙間が設けられている。さらに、軸孔46cも気体の流路とするために設けられている。
弾性部材47は、例えば弾性材料から一体に形成されるものであり、筒状部材46の外部側の端部の表面に配置される枠部47aと、筒状部材46、具体的には軸孔46cに嵌め込まれる嵌合部47bと、枠部47aに嵌合部47bを移動可能に保持し、孔部47cが形成される保持部47dとを有している。
枠部47aは、筒状部材46と固定部材44との間、具体的にはこれらの対向する端部(縁部)をシール状態とすると共に、保持部47dを介して嵌合部47bを保持するために設けられている。また、嵌合部47bは、軸孔46cに嵌め込まれることによって、この軸孔46cを開閉させるために設けられている。さらに、保持部47dは、枠部47aに嵌合部47bを保持するために設けられている。また、孔部47cは、軸孔46cが開放された際の気体の流路とするために設けられている。
この弾性部材47は、例えば、耐メタノール性を有するエチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)によって形成される。しかしながら、例えば保持部47dを構成する可動膜の材質についてはEPDMに限らず、シリコーンゴム(VMQ)、フロロシリコーンゴム(FVMQ)、フッ素ゴム(FKM)、ニトリルゴム(NBR)、水素化ニトリルゴム(HNBR)が好適に用いられる。また、可動膜の材質について上記列挙した材質を好適に用い、枠部47aに関しては耐メタノール性を有した樹脂、例えばポリエーテルイミド(PEI)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:ヴィクトレックス社商標)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等のフィルムを使用し、フィルム上にリップ形状の枠部47aを形成した構成としてもよい。
図4は、弾性部材47の一例を示す外観図であり、図4(a)は筒状部材46側、また図4(b)はその反対側をそれぞれ示したものである。
例えば図4(a)に示すように、枠部47aは、例えば外観が略環状とされており、筒状部材46と固定部材44との間を周方向に渡って全体的にシール状態とすることができるようになっている。なお、この枠部47aは、例えば断面が図3に示すような円状とされており、筒状部材46と固定部材44との間をより確実にシール状態とすることができるようになっている。また、嵌合部47bは、例えば枠部47aの軸心部分に形成され、軸孔46cへの挿入、位置決め等が容易となるように外観が略円錐状とされている。
嵌合部47bの側面部には、例えば軸方向に延びる溝部47eが形成されており、気体の流通が容易となるようになっている。なお、溝部47eは嵌合部47bの径大側には形成されておらず、この溝部47eが形成されていない環状部分が軸孔46cに密着してシール状態とするシール部47fとなっている。また、保持部47dは、枠部47aに嵌合部47bを保持するように膜状に形成されており、例えば嵌合部47bの周囲に均等な間隔を設けて4個の孔部47cが形成されている。
このような圧力調整バルブ4によれば、内圧が適正範囲内となっている場合、図3に示すように、枠部47aと嵌合部47bとが保持部47dによって繋がれているために、嵌合部47bが軸孔46cに嵌め込まれ、軸孔46cが閉塞される。また、この軸孔46cが閉塞されたバルブ本体42の全体が押圧用弾性体43によって外部側へと押圧されることで、筒孔44cの周囲にバルブ本体42が接触し、筒孔44cが閉塞される。これにより、外部側からの異物の侵入が抑制されると共に、内部側からの液体燃料の流出が抑制される。
一方、内圧が適正範囲の下限値を下回った場合、図5に示すように、この内圧と外圧(燃料収容部6の外部側の圧力;大気圧)との差を利用してバルブ本体42を内部側へと移動させ、筒孔44cを開放させることができる。これにより、筒孔44cから外側孔部61bとバルブ本体42の外径側との間に外気を導入し、さらにこの外気を内側孔部61aと径小部46bとの隙間から内側孔部61aを通して燃料収容部6へと導入することができる。結果として、燃料収容部6の内圧が上昇し、内圧を適正範囲内へと戻すことができる。このようにして内圧が適正範囲内へと戻った後は、再び押圧用弾性体43によってバルブ本体42の全体が外部側へと押圧されることで、図3に示すように筒孔44cが閉塞される。
また、内圧が適正範囲の上限値を上回った場合、図6に示すように、この内圧と外圧との差を利用して枠部47aに対して嵌合部47bを外部側へと移動させ、軸孔46cから嵌合部47b、特にシール部47fが外れるようにすることで、軸孔46cを開放させることができる。これにより、燃料収容部6の内気を内側孔部61a、軸孔46c、孔部47c、筒孔44cを順に通して外部側へと排出することができる。結果として、燃料収容部6の内圧が低下し、内圧を適正範囲内へと戻すことができる。このようにして内圧が適正範囲内へと戻った後は、再び枠部47aに繋がれた保持部47dに引っ張られるようにして嵌合部47bが内部側へ移動し、軸孔46cに嵌合部47bが嵌め込まれることで、図3に示すように軸孔46cが閉塞される。
なお、圧力調整バルブ4は、内圧が適正範囲の下限値を下回ったときに、この内圧と外圧との差によってバルブ本体42が内部側へと移動することができるように押圧用弾性体43の反発力が調整されている。また、内圧が適正範囲の上限値を上回ったときに、この内圧と外圧との差を利用して枠部47aに対して嵌合部47bが外部側へと移動することができるように、すなわち軸孔46cから嵌合部47bが外れるように保持部47dの収縮力が調整されている。このような保持部47dの収縮力の調整は、例えば保持部47dの構成材料、厚さ、孔部47cの個数等を適宜選択することにより行うことができる。
次に、本発明の圧力調整バルブ4の第2の形態について説明する。
図7は、第2の形態の圧力調整バルブ4を示す断面図であり、内圧が適正範囲内となっている場合を示すものである。この圧力調整バルブ4は、押圧用弾性体43も含めたバルブ本体42の向きが第1の形態の圧力調整バルブ4とは反対となっている。
すなわち、バルブ本体42は、弾性部材47側が内側孔部61aの周囲、具体的には内側孔部61aと外側孔部61bとの間に形成される段部に接触し、また径小部46b側が筒孔44cに挿入されるように配置されている。そして、全体が内部側、すなわち弾性部材47側へと押圧用弾性体43によって押圧されている。なお、筒孔44cと径小部46bとの間には、気体の流路となる程度の隙間が設けられている。
この圧力調整バルブ4では、第1の形態の圧力調整バルブ4に対して押圧用弾性体43も含めたバルブ本体42の向きを反対にすることで、内圧の調整方法も第1の形態の圧力調整バルブ4と反対となっており、具体的には、内圧が適正範囲を下回った場合の調整を弾性部材47による軸孔46cの開閉により行い、内圧が適正範囲を上回った場合の調整をバルブ本体42と押圧用弾性体43とによる内側孔部61aの開閉により行うようにしている。
従って、この圧力調整バルブ4では、内圧が適正範囲の下限値を下回ったときに、この内圧と外圧との差を利用して枠部47aに対して嵌合部47bが内部側へと移動することができるように、すなわち軸孔46cから嵌合部47bが外れるように保持部47dの収縮力が調整されている。また、内圧が適正範囲の上限値を上回ったときに、この内圧と外圧との差によってバルブ本体42が外部側へと移動することができるように押圧用弾性体43の反発力が調整されている。
なお、この圧力調整バルブ4では、押圧用弾性体43も含めたバルブ本体42の向きが変更されると共に、これに合わせて弾性部材47の保持部47dの収縮力および押圧用弾性体43の反発力が変更される以外は、バルブ室41の構成、バルブ本体42の構成については第1の形態の圧力調整バルブ4と同様なものとなっている。
このような圧力調整バルブ4によれば、内圧が適正範囲内となっている場合、枠部47aと嵌合部47bとが保持部47dによって繋がれているために、嵌合部47bが軸孔46cに嵌め込まれ、軸孔46cが閉塞される。また、この軸孔46cが閉塞されたバルブ本体42の全体が押圧用弾性体43によって内部側へと押圧されることで、内側孔部61aの周囲にバルブ本体42が接触し、内側孔部61aが閉塞される。これにより、外部側からの異物の侵入が抑制されると共に、内部側からの液体燃料の流出が抑制される。
一方、内圧が適正範囲の下限値を下回った場合、例えば図8に示すように、この内圧と外圧との差を利用して枠部47aに対して嵌合部47bを内部側へと移動させ、軸孔46cから嵌合部47b、特にシール部47fが外れるようにすることで、軸孔46cを開放させることができる。これにより、筒孔44c、軸孔46c、孔部47c、内側孔部61aを通して燃料収容部6へと外気を導入することができる。結果として、燃料収容部6の内圧が上昇し、内圧を適正範囲内へと戻すことができる。このようにして内圧が適正範囲内へと戻った後は、再び枠部47aに繋がれた保持部47dに引っ張られるようにして嵌合部47bが外部側へ移動し、軸孔46cに嵌合部47bが嵌め込まれることで、図7に示すように軸孔46cが閉塞される。
また、内圧が適正範囲の上限値を上回った場合、例えば図9に示すように、この内圧と外圧との差を利用してバルブ本体42を外部側へと移動させ、内側孔部61aを開放させることができる。これにより、燃料収容部6の内気を内側孔部61aから外側孔部61bとバルブ本体42の外径側との間に排出し、さらに筒孔44cと径小部46bとの隙間を通して外部側へと排出することができる。結果として、燃料収容部6の内圧が低下し、内圧を適正範囲内へと戻すことができる。このようにして内圧が適正範囲内へと戻った後は、再び押圧用弾性体43によってバルブ本体42の全体が内部側へと押圧されることで、図7に示すように内側孔部61aが閉塞される。
以上、本発明の圧力調整バルブ4について第1の形態と第2の形態とを例に挙げて説明したが、これらの中では通常は第1の形態の圧力調整バルブ4を用いることが好ましい。第1の形態の圧力調整バルブ4を用いることで、内圧が適正範囲を下回ったときの調整を迅速かつ厳密に行うことができ、例えばポンプ8の実質的な送液能力の低下を効果的に抑制し、燃料電池1の出力特性をより向上させることができる。
すなわち、スプリング等の押圧用弾性体43を利用して圧力の調整を行うものと、弾性部材47、具体的には枠部47aに保持部47dを介して保持される嵌合部47bを利用して圧力の調整を行うものとでは、スプリング等の押圧用弾性体43を用いたものの方が迅速かつ正確に圧力の調整を行うことができる。このため、このようなスプリング等の押圧用弾性体43を内圧が適正範囲を下回ったときの調整に用いる第1の形態の圧力調整バルブ4によれば、内圧が適正範囲を下回ったときの調整を迅速かつ正確に行うことができ、例えばポンプ8の実質的な送液能力の低下を効果的に抑制し、燃料電池1の出力特性をより向上させることができる。
なお、内圧が適正範囲を上回るのは、例えば燃料電池1(燃料収容部6等)が100℃以上の高温となるときであり、このような高温となることはめったになく、またこのような場合の内圧の調整は必ずしも正確でなくてもよいことから、第1の形態の圧力調整バルブ4についても内圧が適正範囲を上回るときの調整を過不足なく十分に行うことができる。
以上、本発明の圧力調整バルブとこれを利用した燃料電池とについて説明したが、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。また、燃料電池セルへ供給する液体燃料についても、全て液体燃料の蒸気を供給してもよいが、一部が液体状態で供給される場合であってもよい。
例えば、圧力調整バルブは必ずしも燃料収容部の容器外壁に直接形成する必要はなく、容器外壁に別途バルブケース等を設けてバルブ室としてもよい。また、圧力調整バルブは、必ずしも燃料収容部に設ける必要はなく、燃料分配機構の他の部分、例えば流路等に設けてもよい。なお、流路に圧力調整バルブを設ける場合、ポンプの送液能力の低下を抑制する観点から、ポンプに対して燃料収容部側となる流路に設けることが好ましい。
1…燃料電池、2…燃料電池セル、3…燃料供給機構、4…圧力調整バルブ、5…燃料分配機構、6…燃料収容部、7…流路、8…ポンプ、11…アノード触媒層、12…アノードガス拡散層、13…アノード(燃料極)、14…カソード触媒層、15…カソードガス拡散層、16…カソード(空気極/酸化剤極)、17…プロトン(水素イオン)伝導性の電解質膜、41…バルブ室、42…バルブ本体、43…押圧用弾性体、44…固定部材、44a…挿入部、44b…径大部、44c…筒孔、46…筒状部材、46a…径大部、46b…径小部、46c…軸孔、47…弾性部材、47a…枠部、47b…嵌合部、47c…孔部、47d…接続部、47e…溝部、47f…シール部、61…孔部、61a…内側孔部、61b…外側孔部