JP2010046057A - 癌細胞の治療感受性増強剤、癌細胞の治療感受性の判定方法、および癌細胞の治療感受性判定キット - Google Patents
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Abstract
【課題】癌(特に、食道扁平上皮癌)の治療に用いられる化学療法や放射線療法、およびこれらを組み合わせた化学放射線療法(CRT)のオーダーメイド医療化の推進に貢献しうるマーカー(遺伝子)を探索し、これにより、癌の診断や、治療効果および予後の判定に有用な手段を提供する。
【解決手段】癌細胞の治療感受性の判定方法が提供される。この判定方法は、被検組織または被検細胞における、REG1A遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子またはREG1B遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子の発現量(A1)を測定する工程と、発現量(A1)と所定の発現量(A0)とを比較する工程と、比較した結果、発現量(A1)が発現量(A0)よりも有意に多いか否かを判断することによって、放射線または抗癌剤に対する前記被検組織または前記被検細胞の感受性を予測する工程とを含む。
【選択図】図1
【解決手段】癌細胞の治療感受性の判定方法が提供される。この判定方法は、被検組織または被検細胞における、REG1A遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子またはREG1B遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子の発現量(A1)を測定する工程と、発現量(A1)と所定の発現量(A0)とを比較する工程と、比較した結果、発現量(A1)が発現量(A0)よりも有意に多いか否かを判断することによって、放射線または抗癌剤に対する前記被検組織または前記被検細胞の感受性を予測する工程とを含む。
【選択図】図1
Description
本発明は、癌細胞の治療感受性増強剤、癌細胞の治療感受性の判定方法、および癌細胞の治療感受性判定キットなどに関する。より詳細には、本発明は、REG1遺伝子(具体的には、REG1A遺伝子およびREG1B遺伝子)を用いた前記増強剤、当該遺伝子の発現量を指標とした前記判定方法/判定キットに関する。
癌(悪性腫瘍)に対する治療法は、外科的療法、化学療法、免疫療法、温熱療法、および放射線療法に大別される。これらのうち、化学療法と放射線療法とを組み合わせた化学放射線療法(CRT)は、ある種の癌に対して良好な治療成績を示すことが知られている。CRTにおいて用いられる一方の治療法である化学療法は、患者に対して化学療法剤(抗癌剤)を投与するというものであるが、あらゆる薬剤における一般的な課題として、効果/副作用の発現に個人差が存在するという問題がある。
近年、ヒトゲノム計画の進展により、薬剤に対する感受性の個人差を遺伝子レベルで理解し、医薬の開発に応用する薬理ゲノミクス(Pharmacogenomics)に関する研究が盛んに行われている。薬剤に対する感受性の個人差を遺伝子レベルで判断できるようになれば、副作用の強い医薬を真に薬効の期待できる患者だけに投与することや、試行錯誤的な投薬を実施することなく、治療の初期から適切な投薬を実施する、いわゆるオーダーメイド医療が可能となる。その結果、患者に無用の肉体的負担を負わせることもなくなり、また、近年高騰する傾向にある医療費の削減にも寄与することとなる。なかでも、抗癌剤は非常に強い副作用をもたらす場合が多く、オーダーメイド医療の適用が強く望まれている。
例えば、ある種の癌細胞のある種の抗癌剤に対する感受性を、遺伝子発現を制御することによって増強させることができれば、遺伝子レベルでの真のオーダーメイド医療が実現されることとなる。
その一方で、CRTにおいて用いられる他方の治療法である放射線療法についても、これに対する感受性には個人差が存在することが知られている。このような放射線感受性における個人差の存在もまた、各人間の遺伝子レベルの差異によってもたらされることが強く推定されている。したがって、薬理ゲノミクスの趣旨・思想は、放射線感受性の個人差の解明にも同様に適用可能であり、より適切な治療方針の決定に貢献しうるものと考えられる。
ところで、食道扁平上皮癌は予後が非常に悪く、急速な進行過程をたどる悪性度の高い癌の1つである。しかし近年、食道扁平上皮癌には上述した化学放射線療法(CRT)が良好な治療成績を示すことが報告され、化学放射線療法(CRT)が功を奏した患者には外科的手術に匹敵する効果と予後の改善が得られるようになった。その一方で、化学放射線療法(CRT)に対する感受性の低い患者にとっては、治療効果を得ないばかりか重篤な副作用が発現する結果となり、根治手術の可能性を逸する場合もあるという問題があった。このように、例えば食道扁平上皮癌のみに着目しても、個々の患者に適した治療選択を行う個別治療の研究の進展が望まれているのが現状である。
このようなオーダーメイド医療の実現に貢献すべく、病変の診断やこれに対する治療効果、予後などを判定するための各種マーカーが提案されている。例えば、急性冠状動脈症候群に対するB型ナトリウム排泄増加性ペプチドの濃度を決定する方法が提案されている(特許文献1を参照)。また、ケモカインCXCL16を検出することにより腫瘍を診断し、抗癌剤の抗癌作用を評価する手法が提案されている(特許文献2を参照)。
なお、ヒトREG(Regenerating gene)遺伝子は糖尿病に関連して膵ランゲルハンス島B細胞の再生増殖を担っている遺伝子の探索から見出されたものであり、ラットおよびマウスのreg遺伝子がこれに対応する。ヒトREG遺伝子の塩基配列は、例えば特許文献3において報告されている。ヒトREG遺伝子には、コードされるタンパク質の1次構造に応じてREG1、REG2、REG3、およびREG4の4つのサブクラスに分類される多重遺伝子ファミリーが存在することが知られている。ここで、REG1遺伝子は、90%膵切除後にニコチンアミド投与したラットの再生ランゲルハンス島で特異的に発現する遺伝子として発見された膵β細胞再生増殖因子(REG1タンパク質)をコードする遺伝子として発見されたものである。そして、REG1遺伝子にはREG1A遺伝子およびREG1B遺伝子などがあるが、これらは膵外分泌腺から分泌されるタンパク質をコードしており、2番染色体短腕(2p12)に位置している。より詳細には、REG1A遺伝子は、821bpからなる遺伝子(Refseq Accession No.NM_002909、配列番号:1)であり、166アミノ酸からなるタンパク質(REG1Aタンパク質;RefSeq Accession No.AAH05350、配列番号:2)をコードしている。また、REG1B遺伝子は、812bpからなる遺伝子(Refseq Accession No.NM_006507、配列番号:3)であり、166アミノ酸からなるタンパク質(REG1Bタンパク質;RefSeq Accession No.AAH27895、配列番号:4)をコードしている。
本発明は、癌(特に、食道扁平上皮癌)の治療に用いられる化学療法や放射線療法、およびこれらを組み合わせた化学放射線療法(CRT)のオーダーメイド医療化の推進に貢献しうるマーカー(遺伝子)を探索し、これにより、癌の診断や、治療効果および予後の判定に有用な手段を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その過程で、ある種のヒト食道扁平上皮癌由来の細胞株が、他の細胞株と比較して抗癌剤や放射線に対する感受性が有意に高いことを見出した。また、前者の細胞株において有意に高発現している遺伝子として、REG1遺伝子(REG1A遺伝子およびREG1B遺伝子)を同定し、当該遺伝子の発現が癌治療(化学療法および放射線療法)に対する高い感受性に寄与していることを確認した。さらに、当該遺伝子を強制的に導入して高発現を誘導すると、癌治療に対する感受性を増強することができることをも見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の第1の形態によれば、癌細胞の治療感受性の判定方法が提供される。前記判定方法は、被検組織または被検細胞における、REG1A遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子またはREG1B遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子の発現量(A1)を測定する工程と、前記発現量(A1)と所定の発現量(A0)とを比較する工程と、比較した結果、前記発現量(A1)が前記発現量(A0)よりも有意に多いか否かを判断することによって、前記被検組織または前記被検細胞の治療感受性を予測する工程とを含む。
この際、発現量(A1)は、例えば、REG1遺伝子から発現するmRNA量をノーザンブロット法によって測定したり、当該遺伝子から発現するタンパク質量をウェスタンブロット法により測定したりすることにより、測定されうる。また、被検組織・被検細胞は、食道扁平上皮癌などの扁平上皮癌由来の組織・細胞であることが好ましい。
本発明の第2の形態によれば、上記判定方法において、REG1遺伝子から発現するmRNA量を測定する場合に、当該mRNA量を測定するための核酸プローブまたはPCRプライマーとして用いられる核酸も提供される。この際、前記核酸は、以下の(a)または(b)である:
(a)配列番号:1もしくは配列番号:3で表される塩基配列の一部またはこれと相補的な塩基配列を有する核酸;
(b)配列番号:1もしくは配列番号:3で表される塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸またはこれと相補的な塩基配列を有する核酸。
(a)配列番号:1もしくは配列番号:3で表される塩基配列の一部またはこれと相補的な塩基配列を有する核酸;
(b)配列番号:1もしくは配列番号:3で表される塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸またはこれと相補的な塩基配列を有する核酸。
本発明の第3の形態によれば、上記判定方法において、REG1遺伝子から発現するタンパク質量を測定する場合に、当該タンパク質量の測定に用いられる抗体も提供される。当該抗体は、配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質またはその部分ペプチドあるいはその薬学的に許容されうる塩に対する抗体である。
本発明の第4の形態によれば、癌細胞の治療感受性を判定するためのキットが提供される。当該キットは、REG1A遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子またはREG1B遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子の発現を測定する発現測定手段と、前記遺伝子の発現を検出する発現検出手段とを含む。前記キットにおいて、発現測定手段は、例えば、マイクロアレイまたはPCR用プライマーでありうる。
本発明の第5の形態によれば、癌細胞の治療感受性の改善に有効な化合物の評価方法が提供される。前記評価方法は、被検動物または被検細胞に対して、被検化合物を投与しまたは接触させる工程と、前記被検動物または被検細胞における、REG1A遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子またはREG1B遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子の発現量(B1)をインビトロで測定する工程と、前記発現量(B1)を、被検化合物の投与または接触前における発現量(B0)と比較する工程と、比較した結果、前記発現量(B1)が前記発現量(B0)に対して有意に多いか否かを判断することによって、癌細胞の治療感受性の改善に対する前記被検化合物の有効性を評価する工程とを含む。
本発明の第6の形態によれば、以下の(a)〜(c)の少なくとも1つを有効成分とする、癌細胞(好ましくは、食道扁平上皮癌などの扁平上皮癌の細胞)の治療感受性(例えば、放射線および/または抗癌剤に対する感受性)増強剤が提供される;
(a)配列番号:1または配列番号:3で表される塩基配列を有する核酸;
(b)配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質またはその部分ペプチドをコードする核酸;
(c)配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質またはその部分ペプチドあるいはその薬学的に許容されうる塩。
(a)配列番号:1または配列番号:3で表される塩基配列を有する核酸;
(b)配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質またはその部分ペプチドをコードする核酸;
(c)配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質またはその部分ペプチドあるいはその薬学的に許容されうる塩。
本発明によれば、癌(特に、食道扁平上皮癌)の治療のオーダーメイド医療化の推進に貢献しうるマーカー(遺伝子)としてREG1遺伝子が提供される。REG1遺伝子をマーカーとして用いることにより、癌の診断や、治療効果および予後の判定に有用な種々の手段が提供される。
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみに限定されることはない。
本発明において用いられるタンパク質(「本発明のタンパク質」とも称する)は、配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質である。本発明のタンパク質は、ヒトや他の温血動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ニワトリ、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)の細胞[例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくは癌細胞など]もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織[例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉(例、平滑筋、骨格筋)、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、脂肪組織(例、白色脂肪組織、褐色脂肪組織)など]等から単離・精製されるタンパク質であってもよい。また、化学合成もしくは無細胞翻訳系で生化学的に合成されたタンパク質であってもよいし、あるいは上記アミノ酸配列をコードする塩基配列を有する核酸を導入された形質転換体から産生される組換えタンパク質であってもよい。
配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約70%以上、いっそう好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性(ホモロジー;homology)を有するアミノ酸配列などが挙げられる。ここで「相同性」とは、当該技術分野において公知の数学的アルゴリズムを用いて2つのアミノ酸配列をアラインさせた場合の、最適なアラインメント(好ましくは、該アルゴリズムは最適なアラインメントのために配列の一方もしくは両方へのギャップの導入を考慮し得るものである)における、オーバーラップする全アミノ酸残基に対する同一アミノ酸および類似アミノ酸残基の割合(%)を意味する。「類似アミノ酸」とは物理化学的性質において類似したアミノ酸を意味し、例えば、芳香族アミノ酸(Phe、Trp、Tyr)、脂肪族アミノ酸(Ala、Leu、Ile、Val)、極性アミノ酸(Gln、Asn)、塩基性アミノ酸(Lys、Arg、His)、酸性アミノ酸(Glu、Asp)、水酸基を有するアミノ酸(Ser、Thr)、側鎖の小さいアミノ酸(Gly、Ala、Ser、Thr、Met)などの同じグループに分類されるアミノ酸が挙げられる。このような類似アミノ酸による置換はタンパク質の表現型に変化をもたらさない(すなわち、保存的アミノ酸置換である)ことが予測される。保存的アミノ酸置換の具体例は当該技術分野で周知であり、種々の文献に記載されている(例えば、Bowieら,Science,247:1306−1310(1990)を参照)。
本明細書におけるアミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。アミノ酸配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、例えば、Karlinら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:5873−5877(1993)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはNBLASTおよびXBLASTプログラム(version2.0)に組み込まれている(Altschulら,Nucleic Acids Res.,25:3389−3402(1997))]、Needlemanら,J.Mol.Biol.,48:444−453(1970)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のGAPプログラムに組み込まれている]、MyersおよびMiller,CABIOS,4:11−17(1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはCGC配列アラインメントソフトウェアパッケージの一部であるALIGNプログラム(version2.0)に組み込まれている]、Pearsonら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,85:2444−2448(1988)に記載のアルゴリズム[該アルゴリズムはGCGソフトウェアパッケージ中のFASTAプログラムに組み込まれている]等が挙げられ、それらも同様に好ましく用いられうる。
より好ましくは、配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列とは、配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約70%以上、いっそう好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の同一性(アイデンティティ(identity))を有するアミノ酸配列である。
本発明で用いられるタンパク質は、配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、かつ配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質である。
実質的に同質の活性としては、例えば、リガンド結合活性やシグナル情報伝達作用などが挙げられる。ここで「実質的に同質」とは、それらの性質が定性的に(例、生理学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。したがって、本発明のタンパク質の活性が同等であることが好ましいが、これらの活性の程度(例、約0.01〜約100倍、好ましくは約0.1〜約10倍、より好ましくは0.5〜2倍)や、タンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。なお、リガンド結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性の測定は、それ自体公知の方法に準じて行うことができる。
また、本発明で用いられるタンパク質としては、例えば、(i)配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列中の1個または2個以上(例えば、1〜50個程度、好ましくは1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(ii)配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列に1個または2個以上(例えば、1〜50個程度、好ましくは1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(iii)配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列に1個または2個以上(例えば、1〜50個程度、好ましくは1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列、(iv)配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列中の1個または2個以上(例えば、1〜50個程度、好ましくは1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(v)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質などのいわゆるムテインも含まれる。
上記のようにアミノ酸配列が挿入、欠失または置換されている場合、その挿入、欠失または置換の位置は、特に限定されない。
本発明で用いられるタンパク質の好ましい例としては、例えば、配列番号:2で表されるアミノ酸配列を含有するヒトREG1A(Refseq Accession No.AAH05350)、配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含有するヒトREG1B(Refseq Accession No.AAH27895)などが挙げられる。
本明細書において、タンパク質およびペプチドは、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)で記載される。配列番号:2または配列番号:4で表わされるアミノ酸配列を含有するタンパク質を初めとする、本発明で用いられるタンパク質は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)のいずれであってもよい。
ここで、C末端がエステル(−COOR)である場合におけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチルなどのC1−6アルキル基、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基、ピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明で用いられるタンパク質に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明で用いられるタンパク質には、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイルなどのC1−6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
本発明で用いられるタンパク質の部分ペプチドとしては、前記した本発明で用いられるタンパク質の部分アミノ酸配列を有するペプチドであり、かつ該タンパク質と実質的に同質の活性を有する限り、いずれのものであってもよい。ここで「実質的に同質の活性」とは上記と同義である。また、「実質的に同質の活性」の測定は、前記した本発明で用いられるタンパク質の場合と同様に行うことができる。
例えば、本発明で用いられるタンパク質の構成アミノ酸配列のうち少なくとも20個以上、好ましくは50個以上、さらに好ましくは70個以上、より好ましくは100個以上、最も好ましくは150個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが用いられる。
また、本発明で用いられる部分ペプチドは、そのアミノ酸配列中の1個または2個以上(好ましくは1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1個または2個以上(好ましくは1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列に1個または2個以上(好ましくは1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が挿入され、または、そのアミノ酸配列中の1個または2個以上(好ましくは1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数(1〜5、4、3もしくは2)個)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
また、本発明で用いられる部分ペプチドはC末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)のいずれであってもよい。ここで、C末端がエステル(−COOR)である場合におけるRとしては、本発明で用いられるタンパク質について前記したと同様のものが挙げられる。本発明の部分ペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明の部分ペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては、例えば、C末端のエステルと同様のものなどが用いられる。
さらに、本発明で用いられる部分ペプチドには、前記した本発明で用いられるタンパク質と同様に、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基で保護されているもの、N末端側が生体内で切断されて生成したグルタミン残基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
本発明で用いられるタンパク質またはその部分ペプチドは遊離体であってもよいし、塩であってもよい(以下、特に断らない限り同様である)。かような塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。このような塩としては、例えば、無機酸(例、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、シュウ酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質は、前述したヒトや他の温血動物の細胞または組織から、それ自体公知のタンパク質の精製方法を用いて精製することにより、製造されうる。具体的には、例えば、哺乳動物の組織または細胞を界面活性剤の存在下でホモジナイズし、得られる組織の粗抽出物画分を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー等に付すことにより、本発明で用いられるタンパク質が調製されうる。
本発明で用いられるタンパク質またはその部分ペプチドは、公知のペプチド合成法に従って製造することもできる。
ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれであってもよい。すなわち、本発明で用いられるタンパク質またはその部分ペプチドを構成しうる部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のタンパク質(ペプチド)を製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下の(i)〜(v)に記載された方法が挙げられる。
(i)M.BodanszkyおよびM.A.Ondetti、ペプチド・シンセシス(Peptide Synthesis),Interscience Publishers,New York(1966年)
(ii)SchroederおよびLuebke、ザ・ペプチド(The Peptide),Academic Press,New York(1965年)
(iii)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株)(1975年)
(iv)矢島治明および榊原俊平、生化学実験講座1、タンパク質の化学IV、205、(1977年)
(v)矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、広川書店
このようにして得られたタンパク質(ペプチド)は、公知の精製法により精製単離することができる。ここで、精製法としては、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などが挙げられる。
(i)M.BodanszkyおよびM.A.Ondetti、ペプチド・シンセシス(Peptide Synthesis),Interscience Publishers,New York(1966年)
(ii)SchroederおよびLuebke、ザ・ペプチド(The Peptide),Academic Press,New York(1965年)
(iii)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、丸善(株)(1975年)
(iv)矢島治明および榊原俊平、生化学実験講座1、タンパク質の化学IV、205、(1977年)
(v)矢島治明監修、続医薬品の開発、第14巻、ペプチド合成、広川書店
このようにして得られたタンパク質(ペプチド)は、公知の精製法により精製単離することができる。ここで、精製法としては、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などが挙げられる。
上記方法で得られるタンパク質(ペプチド)が遊離体である場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって適当な塩に変換することができるし、逆にタンパク質(ペプチド)が塩で得られた場合は、公知の方法あるいはそれに準じる方法によって遊離体または他の塩に変換することができる。
本発明で用いられるタンパク質またはその部分ペプチド、あるいはそのアミド体の合成には、通常市販のタンパク質合成用樹脂を用いることができる。そのような樹脂としては、例えば、クロロメチル樹脂、ヒドロキシメチル樹脂、ベンズヒドリルアミン樹脂、アミノメチル樹脂、4−ベンジルオキシベンジルアルコール樹脂、4−メチルベンズヒドリルアミン樹脂、PAM樹脂、4−ヒドロキシメチルメチルフェニルアセトアミドメチル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−ヒドロキシメチル)フェノキシ樹脂、4−(2’,4’−ジメトキシフェニル−Fmocアミノエチル)フェノキシ樹脂などが挙げられる。このような樹脂を用い、α−アミノ基と側鎖官能基を適当に保護したアミノ酸を、目的とするタンパク質の配列通りに、それ自体公知の各種縮合方法に従い、樹脂上で縮合させる。反応の最後に樹脂からタンパク質または部分ペプチドを切り出すと同時に各種保護基を除去し、さらに高希釈溶液中で分子内ジスルフィド結合形成反応を実施し、目的のタンパク質もしくは部分ペプチドまたはそれらのアミド体を取得する。
上記した保護アミノ酸の縮合に関しては、タンパク質合成に使用できる各種活性化試薬を用いることができるが、特に、カルボジイミド類がよい。カルボジイミド類としては、DCC、N,N’−ジイソプロピルカルボジイミド、N−エチル−N’−(3−ジメチルアミノプロリル)カルボジイミドなどが用いられる。これらによる活性化にはラセミ化抑制添加剤(例えば、HOBt,HOOBt)とともに保護アミノ酸を直接樹脂に添加するかまたは、対称酸無水物またはHOBtエステルあるいはHOOBtエステルとしてあらかじめ保護アミノ酸の活性化を行った後に樹脂に添加することができる。
保護アミノ酸の活性化や樹脂との縮合に用いられる溶媒としては、タンパク質縮合反応に使用されうることが知られている溶媒から適宜選択されうる。例えば、N,N−ジメチルホルムアミド,N,N−ジメチルアセトアミド,N−メチルピロリドンなどの酸アミド類、塩化メチレン,クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素類、トリフルオロエタノールなどのアルコール類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類、ピリジン,ジオキサン,テトラヒドロフランなどのエーテル類、アセトニトリル,プロピオニトリルなどのニトリル類、酢酸メチル,酢酸エチルなどのエステル類あるいはこれらの適当な混合物などが用いられる。反応温度はタンパク質結合形成反応に使用されうることが知られている範囲から適宜選択され、通常約−20〜約50℃の範囲である。活性化されたアミノ酸誘導体は通常1.5〜4倍過剰で用いられる。ニンヒドリン反応を用いたテストの結果、縮合が不十分な場合には保護基の脱離を行うことなく縮合反応を繰り返すことにより十分な縮合を行うことができる。反応を繰り返しても十分な縮合が得られないときには、無水酢酸またはアセチルイミダゾールを用いて未反応アミノ酸をアセチル化することによって、後の反応に影響を与えないようにすることができる。
原料の反応に関与すべきでない官能基の保護ならびに保護基、およびその保護基の脱離、反応に関与する官能基の活性化などは公知の基または公知の手段から適宜選択されうる。
原料のアミノ基の保護基としては、例えば、Z、Boc、t−ペンチルオキシカルボニル、イソボルニルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、Cl−Z、Br−Z、アダマンチルオキシカルボニル、トリフルオロアセチル、フタロイル、ホルミル、2−ニトロフェニルスルフェニル、ジフェニルホスフィノチオイル、Fmocなどが用いられる。
カルボキシル基は、例えば、アルキルエステル化(例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、t−ブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、2−アダマンチルなどの直鎖状、分枝状もしくは環状アルキルエステル化)、アラルキルエステル化(例えば、ベンジルエステル、4−ニトロベンジルエステル、4−メトキシベンジルエステル、4−クロロベンジルエステル、ベンズヒドリルエステル化)、フェナシルエステル化、ベンジルオキシカルボニルヒドラジド化、t−ブトキシカルボニルヒドラジド化、トリチルヒドラジド化などによって保護することができる。
セリンの水酸基は、例えば、エステル化またはエーテル化によって保護することができる。このエステル化に適する基としては、例えば、アセチル基などの低級(C1−6)アルカノイル基、ベンゾイル基などのアロイル基、ベンジルオキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などの炭酸から誘導される基などが用いられる。また、エーテル化に適する基としては、例えば、ベンジル基、テトラヒドロピラニル基、t−ブチル基などである。
チロシンのフェノール性水酸基の保護基としては、例えば、Bzl、Cl2−Bzl、2−ニトロベンジル、Br−Z、t−ブチルなどが用いられる。
ヒスチジンのイミダゾールの保護基としては、例えば、Tos、4−メトキシ−2,3,6−トリメチルベンゼンスルホニル、DNP、ベンジルオキシメチル、Bum、Boc、Trt、Fmocなどが用いられる。
保護基の除去(脱離)方法としては、例えば、Pd−黒あるいはPd−炭素などの触媒の存在下での水素気流中での接触還元や、また、無水フッ化水素、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、トリフルオロ酢酸あるいはこれらの混合液などによる酸処理や、ジイソプロピルエチルアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、ピペラジンなどによる塩基処理、また液体アンモニア中ナトリウムによる還元なども用いられる。上記酸処理による脱離反応は、一般に約−20℃〜約40℃の温度で行われるが、酸処理においては、例えば、アニソール、フェノール、チオアニソール、メタクレゾール、パラクレゾール、ジメチルスルフィド、1,4−ブタンジチオール、1,2−エタンジチオールなどのようなカチオン捕捉剤の添加が有効である。また、ヒスチジンのイミダゾール保護基として用いられる2,4−ジニトロフェニル基はチオフェノール処理により除去され、トリプトファンのインドール保護基として用いられるホルミル基は上記の1,2−エタンジチオール、1,4−ブタンジチオールなどの存在下の酸処理による脱保護以外に、希水酸化ナトリウム溶液、希アンモニアなどによるアルカリ処理によっても除去される。
原料のカルボキシル基の活性化されたものとしては、例えば、対応する酸無水物、アジド、活性エステル〔アルコール(例えば、ペンタクロロフェノール、2,4,5−トリクロロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、シアノメチルアルコール、パラニトロフェノール、HONB、N−ヒドロキシスクシミド、N−ヒドロキシフタルイミド、HOBt)とのエステル〕などが用いられる。原料のアミノ基の活性化されたものとしては、例えば、対応するリン酸アミドが用いられる。
タンパク質または部分ペプチドのアミド体を得る別の方法としては、例えば、まず、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基をアミド化して保護した後、アミノ基側にペプチド(タンパク質)鎖を所望の鎖長まで延ばした後、該ペプチド鎖のN末端のα−アミノ基の保護基のみを除いたタンパク質または部分ペプチドとC末端のカルボキシル基の保護基のみを除去したタンパク質または部分ペプチドとを製造し、これらのタンパク質またはペプチドを上記したような混合溶媒中で縮合させる。縮合反応の詳細については上記と同様である。縮合により得られた保護タンパク質またはペプチドを精製した後、上記方法によりすべての保護基を除去し、所望の粗タンパク質またはペプチドを得ることができる。この粗タンパク質またはペプチドは既知の各種精製手段を駆使して精製し、主要画分を凍結乾燥することで所望のタンパク質またはペプチドのアミド体を得ることができる。
タンパク質またはペプチドのエステル体を得るには、例えば、カルボキシ末端アミノ酸のα−カルボキシル基を所望のアルコール類と縮合しアミノ酸エステルとした後、タンパク質またはペプチドのアミド体と同様にして、所望のタンパク質またはペプチドのエステル体を得ることができる。
本発明で用いられるタンパク質の部分ペプチドは、本発明で用いられるタンパク質を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。
さらに、本発明で用いられるタンパク質またはその部分ペプチドは、それをコードするポリヌクレオチドを含有する形質転換体を培養し、得られる培養物から該タンパク質または該部分ペプチドを分離精製することによって製造することもできる。本発明で用いられるタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドはDNAであってもRNAであってもよく、あるいはDNA/RNAキメラであってもよい。好ましくはDNAが挙げられる。また、該ポリヌクレオチドは二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(すなわち、コード鎖)であっても、アンチセンス鎖(すなわち、非コード鎖)であってもよい。
本発明で用いられるタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、哺乳動物(例えば、ヒト、ウシ、サル、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ハムスターなど)のあらゆる細胞[例えば、肝細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、杯細胞、内皮細胞、平滑筋細胞、線維芽細胞、線維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくはガン細胞など]もしくはそれらの細胞が存在するあらゆる組織[例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁桃核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、大脳皮質、延髄、小脳)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆嚢、骨髄、副腎、皮膚、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、前立腺、睾丸、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、脂肪組織(例、褐色脂肪組織、白色脂肪組織)、骨格筋など]由来のcDNA、合成DNAなどが挙げられる。本発明で用いられるタンパク質またはその部分ペプチドをコードするゲノムDNAおよびcDNAは、上記した細胞・組織より調製したゲノムDNA画分および全RNAもしくはmRNA画分をそれぞれ鋳型として用い、ポリメラーゼ連鎖反応(Polymerase Chain Reaction)(以下、「PCR法」とも称する)および逆転写酵素(Reverse Transcriptase)を用いたRT−PCR法によって直接増幅することもできる。あるいは、本発明で用いられるタンパク質またはその部分ペプチドをコードするゲノムDNAおよびcDNAは、上記した細胞・組織より調製したゲノムDNAおよび全RNAもしくはmRNAの断片を適当なベクター中に挿入して調製されるゲノムDNAライブラリーおよびcDNAライブラリーから、コロニーもしくはプラークハイブリダイゼーション法またはPCR法などにより、それぞれクローニングすることもできる。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。
本発明で用いられるタンパク質をコードするDNAとしては、例えば、配列番号:1または配列番号:3で表される塩基配列を含有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNAであればよい。
配列番号:1または配列番号:3で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:1または配列番号:3で表される塩基配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約70%以上、いっそう好ましくは約80%以上、特に好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性(ホモロジー(homology))を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。相同性が前記範囲の下限値より小さいと、対応する遺伝子と同じかまたは類似の機能を示さない可能性が高い傾向にある。しかしながら、相同性が前記範囲の下限値未満であっても、対応する遺伝子に特有の機能を有するドメインと、当該ドメインに対応する塩基配列との相同性が高い場合には同じかまたは類似の機能を有する場合がある。このような遺伝子(DNA)は、塩基配列の相同性が前記範囲外であっても好適に使用可能である。
本明細書における塩基配列の相同性は、例えば、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3)にて計算することができる。塩基配列の相同性を決定するための他のアルゴリズムとしては、上記したアミノ酸配列の相同性計算アルゴリズムが同様に好ましく例示される。
ハイブリダイゼーションは、それ自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、Molecular Cloning 2nd ed.(J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab.Press,1989)に記載の方法などに従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行うことができる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜約40mM、好ましくは約19〜約20mMで、温度が約50〜約70℃、好ましくは約60〜約65℃の条件を意味する。特に、ナトリウム塩濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が好ましい。当業者は、ハイブリダイゼーション溶液の塩濃度、ハイブリダゼーション反応の温度、プローブ濃度、プローブの長さ、ミスマッチの数、ハイブリダイゼーション反応の時間、洗浄液の塩濃度、洗浄の温度等を適宜変更することにより、所望のストリンジェンシーに容易に調節することができる。
本発明で用いられるタンパク質をコードするDNAは、好ましくは、配列番号:1で表される塩基配列を含有するDNA(Refseq Accession No.NM_002909)、配列番号:3で表される塩基配列を含有するDNA(Refseq Accession No.NM_006507)などが挙げられる。
本発明で用いられるタンパク質の部分ペプチドをコードするポリヌクレオチド(例えば、DNA)としては、前述した本発明で用いられるタンパク質の部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、前記した細胞・組織由来のcDNA、前記した細胞・組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれであってもよい。
本発明で用いられるタンパク質の部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:1もしくは配列番号:3で表される塩基配列の部分塩基配列、または配列番号:1もしくは配列番号:3で表される塩基配列を含有するポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、かつ本発明で用いられるタンパク質と実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNAなどが用いられる。配列番号:1もしくは配列番号:3で表される塩基配列とハイブリダイズできるDNAとは、前記と同義である。また、ハイブリダイゼーションの方法およびハイストリンジェントな条件としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明で用いられるタンパク質およびその部分ペプチド(以下、これらをコードするDNAのクローニングおよび発現の説明においては、これらを単に「本発明のタンパク質」とも称する場合がある)をコードするDNAのクローニングの手段としては、本発明のタンパク質をコードする塩基配列の一部分を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のタンパク質の一部あるいは全部の領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、Molecular Cloning 2nd ed.(J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab.Press,1989)に記載の方法などに従って行うことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行うことができる。
DNAの塩基配列の変換は、PCR、公知のキット、例えば、MutanTM−super Express Km(宝酒造(株))、MutanTM−K(宝酒造(株))等を用いて、ODA−LA PCR法、Gapped duplex法、Kunkel法等のそれ自体公知の方法あるいはそれらに準じる方法に従って行うことができる。
クローン化されたタンパク質をコードするDNAは目的によりそのまま、または所望により制限酵素で消化したり、リンカーを付加したりして使用することができる。該DNAはその5’末端側に翻訳開始コドンとしてのATGを有し、また3’末端側には翻訳終止コドンとしてのTAA、TGAまたはTAGを有していてもよい。これらの翻訳開始コドンや翻訳終止コドンは、適当な合成DNAアダプターを用いて付加することもできる。
本発明のタンパク質の発現ベクターは、例えば、本発明のタンパク質をコードするDNAから目的とするDNA断片を切り出し、該DNA断片を適当な発現ベクター中のプロモーターの下流に連結することにより製造することができる。
ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルス,バキュロウイルスなどの動物ウイルスなどの他、pA1−11、pXT1、pRc/CMV、pRc/RSV、pcDNAI/Neoなどが用いられる。
本発明で用いられるプロモーターとしては、遺伝子の発現に用いる宿主に対応して適切なプロモーターであればいかなるものでもよい。例えば、動物細胞を宿主として用いる場合は、SRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター、HSV−TKプロモーターなどが挙げられる。
これらのうち、CMV(サイトメガロウイルス)プロモーター、SRαプロモーターなどを用いるのが好ましい。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、trpプロモーター、lacプロモーター、recAプロモーター、λPLプロモーター、lppプロモーター、T7プロモーターなどが、宿主がバチルス属菌である場合は、SPO1プロモーター、SPO2プロモーター、penPプロモーターなどが、宿主が酵母である場合は、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーターなどが好ましい。宿主が昆虫細胞である場合は、ポリヘドリンプロモーター、P10プロモーターなどが好ましい。
発現ベクターには、以上の他に、所望によりエンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジン(以下、「SV40ori」とも称する)などを含有しているものを用いることができる。選択マーカーとしては、例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素(以下、「dhfr」とも称する)遺伝子〔メソトレキセート(MTX)耐性〕、アンピシリン耐性遺伝子(以下、「Ampr」とも称する)、ネオマイシン耐性遺伝子(以下、「Neor」とも称する、G418耐性)等が挙げられる。特に、dhfr遺伝子欠損チャイニーズハムスター細胞を用いてdhfr遺伝子を選択マーカーとして使用する場合、目的遺伝子をチミジンを含まない培地によっても選択できる。
また、必要に応じて、宿主に合ったシグナル配列を、本発明のタンパク質のN末端側に付加する。宿主がエシェリヒア属菌である場合は、PhoA・シグナル配列、OmpA・シグナル配列などが、宿主がバチルス属菌である場合は、α−アミラーゼ・シグナル配列、サブチリシン・シグナル配列などが、宿主が酵母である場合は、MFα・シグナル配列、SUC2・シグナル配列などが、宿主が動物細胞である場合には、インシュリン・シグナル配列、α−インターフェロン・シグナル配列、抗体分子・シグナル配列などがそれぞれ利用できる。
このようにして構築された本発明のタンパク質をコードするDNAを含有するベクターを用いて、形質転換体を製造することができる。宿主としては、例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、酵母、昆虫細胞、昆虫、動物細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌の具体例としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12・DH1〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,60,160(1968)〕,JM103〔Nucleic Acids Research,9,309(1981)〕,JA221〔Journal of Molecular Biology,120,517(1978)〕,HB101〔Journal of Molecular Biology,41,459(1969)〕,C600〔Genetics,39,440(1954)〕などが用いられる。
バチルス属菌としては、例えば、バチルス・サブチルス(Bacillus subtilis)MI114〔Gene,24,255(1983)〕,207−21〔Journal of Biochemistry,95,87(1984)〕などが用いられる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)AH22,AH22R−,NA87−11A,DKD−5D,20B−12、シゾサッカロマイセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)NCYC1913,NCYC2036、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)KM71などが用いられる。
昆虫細胞としては、例えば、ウイルスがAcNPVの場合は、夜盗蛾の幼虫由来株化細胞(Spodoptera frugiperda cell;Sf細胞)、Trichoplusia niの中腸由来のMG1細胞、Trichoplusia niの卵由来のHigh FiveTM細胞、Mamestra brassicae由来の細胞またはEstigmena acrea由来の細胞などが用いられる。ウイルスがBmNPVの場合は、蚕由来株化細胞(Bombyx mori N細胞;BmN細胞)などが用いられる。該Sf細胞としては、例えば、Sf9細胞(ATCC CRL1711)、Sf21細胞〔以上、Vaughn,J.L.et al.,In Vivo,13,213−217(1977)〕などが用いられる。
昆虫としては、例えば、カイコの幼虫などが用いられる〔Maeda et al.,Nature,315巻,592(1985)〕。
動物細胞としては、例えば、サル細胞COS−1,COS−3,COS−7,Vero,チャイニーズハムスター卵巣細胞(以下、「CHO細胞」とも称する),dhfr遺伝子欠損CHO細胞(以下、CHO(dhfr−)細胞とも称する),マウスL細胞,マウスAtT−20,マウスミエローマ細胞,マウスATDC5細胞,ラットGH3,ヒトFL細胞,ヒト293細胞、ヒトHeLa細胞などが用いられる。
エシェリヒア属菌を形質転換するには、例えば、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,69,2110(1972)やGene,17,107(1982)などに記載の方法に従って行うことができる。
バチルス属菌を形質転換するには、例えば、Mol.Gen.Genet.,168,111(1979)などに記載の方法に従って行うことができる。
酵母を形質転換するには、例えば、Meth.Enzymol.,194,182−187(1991)、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,75,1929(1978)などに記載の方法に従って行うことができる。
昆虫細胞または昆虫を形質転換するには、例えば、Bio/Technology,6,47−55(1988)などに記載の方法に従って行うことができる。
動物細胞を形質転換するには、例えば、細胞工学別冊8 新細胞工学実験プロトコール,263−267(1995)(秀潤社発行)、Virology,52,456(1973)に記載の方法に従って行うことができる。
このようにして、タンパク質をコードするDNAを含有する発現ベクターで形質転換された形質転換体を得ることができる。
宿主がエシェリヒア属菌、バチルス属菌である形質転換体を培養する際、培養に使用される培地としては液体培地が適当であり、その中には該形質転換体の生育に必要な炭素源、窒素源、無機物その他が含有せしめられる。炭素源としては、例えば、グルコース、デキストリン、可溶性澱粉、ショ糖など、窒素源としては、例えば、アンモニウム塩類、硝酸塩類、コーンスチープ・リカー、ペプトン、カゼイン、肉エキス、大豆粕、バレイショ抽出液などの無機または有機物質、無機物としては、例えば、塩化カルシウム、リン酸二水素ナトリウム、塩化マグネシウムなどが挙げられる。また、酵母エキス、ビタミン類、成長促進因子などを添加してもよい。培地のpHは約5〜約8が望ましい。
エシェリヒア属菌を培養する際の培地としては、例えば、グルコース、カザミノ酸を含むM9培地〔Miller,Journal of Experiments in Molecular Genetics,431−433,Cold Spring Harbor Laboratory,New York 1972〕が好ましい。ここに必要によりプロモーターを効率よく働かせるために、例えば、3β−インドリルアクリル酸のような薬剤を加えることができる。
宿主がエシェリヒア属菌の場合、培養は通常約15〜約43℃で約3〜約24時間行い、必要により、通気や撹拌を加えることもできる。
宿主がバチルス属菌の場合、培養は通常約30〜約40℃で約6〜約24時間行い、必要により通気や撹拌を加えることもできる。
宿主が酵母である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、バークホールダー(Burkholder)最小培地〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77,4505(1980)〕や0.5%カザミノ酸を含有するSD培地〔Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81,5330(1984)〕が挙げられる。培地のpHは約5〜約8に調整するのが好ましい。培養は通常約20〜約35℃で約24〜約72時間行い、必要に応じて通気や撹拌を加える。
宿主が昆虫細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、Grace’s Insect Medium(Nature,195,788(1962))に非働化した10%ウシ血清等の添加物を適宜加えたものなどが用いられる。培地のpHは約6.2〜約6.4に調整するのが好ましい。培養は通常約27℃で約3〜約5日間行い、必要に応じて通気(例えば、5%CO2)や撹拌を加える。
宿主が動物細胞である形質転換体を培養する際、培地としては、例えば、約5〜約20%の胎仔牛血清を含むMEM培地〔Science,122,501(1952)〕,DMEM培地〔Virology,8,396(1959)〕,RPMI1640培地〔J.Am.Med.Assoc.,199,519(1967)〕,199培地〔Proc.Soc.Biol.Med.,73,1(1950)〕などが用いられる。pHは約6〜約8であるのが好ましい。培養は通常約30〜約40℃で約15〜約60時間行ない、必要に応じて通気や撹拌を加える。
以上のようにして、形質転換体の細胞内、細胞膜または細胞外に本発明のタンパク質を生成させることができる。
上記培養物からの本発明のタンパク質の分離精製は、例えば、下記の方法により行うことができる。
本発明のタンパク質を培養菌体あるいは細胞から抽出するに際しては、培養後、公知の方法で菌体あるいは細胞を集め、これを適当な緩衝液に懸濁し、超音波、リゾチームおよび/または凍結融解などによって菌体あるいは細胞を破壊したのち、遠心分離やろ過によりタンパク質の粗抽出液を得る方法などが適宜用いられる。緩衝液の中に尿素や塩酸グアニジンなどのタンパク質変性剤や、トリトンX−100TMなどの界面活性剤が含まれていてもよい。培養液中にタンパク質が分泌される場合には、培養終了後、それ自体公知の方法で菌体あるいは細胞と上清とを分離し、上清を集める。
このようにして得られた培養上清、あるいは抽出液中に含まれる本発明のタンパク質の精製は、それ自体公知の分離・精製法を適切に組み合わせて行うことができる。これらの公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの主として分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
このようにして得られる本発明のタンパク質が遊離体で得られた場合には、それ自体公知の方法あるいはそれに準じる方法によって塩に変換することができ、逆に塩で得られた場合にはそれ自体公知の方法あるいはそれに準じる方法により、遊離体または他の塩に変換することができる。
なお、組換え体が産生するタンパク質を、精製前または精製後に適当なタンパク質修飾酵素を作用させることにより、任意に修飾を加えたり、ポリペプチドを部分的に除去することもできる。タンパク質修飾酵素としては、例えば、トリプシン、キモトリプシン、アルギニルエンドペプチダーゼ、プロテインキナーゼ、グリコシダーゼなどが用いられる。
このようにして生成する本発明のタンパク質の存在は、特異抗体を用いたエンザイムイムノアッセイやウェスタンブロッティングなどにより測定することができる。
さらに、本発明で用いられるタンパク質またはその部分ペプチドは、それをコードするDNAに対応するRNAを鋳型として、ウサギ網状赤血球ライセート、コムギ胚芽ライセート、大腸菌ライセートなどからなる無細胞タンパク質翻訳系を用いてインビトロ翻訳することによっても合成することができる。あるいは、さらにRNAポリメラーゼを含む無細胞転写/翻訳系を用いて、カルモジュリンまたはその部分ペプチドをコードするDNAを鋳型としても合成することができる。無細胞タンパク質(転写/)翻訳系は市販のものを用いることもできるし、それ自体既知の方法、具体的には大腸菌抽出液はPratt J.M.ら,“Transcription and Tranlation”,Hames B.D.およびHigginsS.J.編,IRL Press,Oxford 179−209(1984)に記載の方法等に準じて調製することもできる。市販の細胞ライセートとしては、大腸菌由来のものはE.coli S30 extract system(Promega社製)やRTS 500 Rapid Tranlation System(Roche社製)等が挙げられ、ウサギ網状赤血球由来のものはRabbit Reticulocyte Lysate System(Promega社製)等、さらにコムギ胚芽由来のものはPROTEIOSTM(TOYOBO社製)等が挙げられる。このうちコムギ胚芽ライセートを用いたものが好適である。コムギ胚芽ライセートの作製法としては、例えばJohnston F.B.ら,Nature,179,160−161(1957)あるいはErickson A.H.ら,Meth.Enzymol.,96,38−50(1996)等に記載の方法を用いることができる。
タンパク質合成のためのシステムまたは装置としては、バッチ法(Pratt,J.M.ら(1984)前述)や、アミノ酸、エネルギー源等を連続的に反応系に供給する連続式無細胞タンパク質合成システム(Spirin A.S.ら,Science,242,1162−1164(1988))、透析法(木川ら,第21回日本分子生物学会,WID6)、あるいは重層法(PROTEIOSTMWheat germ cell−free protein synthesis core kit取扱説明書:TOYOBO社製)等が挙げられる。さらには、合成反応系に、鋳型のRNA、アミノ酸、エネルギー源等を必要時に供給し、合成物や分解物を必要時に排出する方法(特開2000−333673)等を用いることができる。
本発明で用いられるタンパク質またはその部分ペプチドに対する抗体(以下、「本発明の抗体」とも称する)は、本発明で用いられるタンパク質またはその部分ペプチドを認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれであってもよい。抗体のアイソタイプは特に限定されないが、好ましくはIgG、IgMまたはIgAであり、特に好ましくはIgGである。
また、本発明の抗体は、標的抗原を特異的に認識し結合するための相補性決定領域(CDR)を少なくとも有するものであれば特に制限はなく、完全抗体分子の他、例えばFab、Fab’、F(ab’)2等のフラグメント、scFv、scFv−Fc、ミニボディー、ダイアボディー等の遺伝子工学的に作製されたコンジュゲート分子、あるいはポリエチレングリコール(PEG)等のタンパク質安定化作用を有する分子等で修飾されたそれらの誘導体などであってもよい。
本発明で用いられるタンパク質またはその部分ペプチド(以下、抗体の説明においては、これらを単に「本発明のタンパク質」とも称する)に対する抗体は、それ自体公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
以下に、本発明の抗体の免疫原調製法、および当該抗体の製造法について説明する。
(1)抗原の調製
本発明の抗体を調製するために使用される抗原としては、上記した本発明のタンパク質またはその部分ペプチド、あるいはそれと同一の抗原決定基を1種あるいは2種以上有する(合成)ペプチドなど、いずれのものも使用されうる(以下、これらを単に「本発明の抗原」とも称する)。
本発明の抗体を調製するために使用される抗原としては、上記した本発明のタンパク質またはその部分ペプチド、あるいはそれと同一の抗原決定基を1種あるいは2種以上有する(合成)ペプチドなど、いずれのものも使用されうる(以下、これらを単に「本発明の抗原」とも称する)。
本発明のタンパク質またはその部分ペプチドは、上記した通り、例えば、(a)ヒト、サル、ラット、マウス、ニワトリなどの温血動物の組織または細胞から公知の方法あるいはそれに準ずる方法を用いて調製、(b)ペプチド・シンセサイザー等を使用する公知のペプチド合成方法で化学的に合成、(c)本発明のタンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNAを含有する形質転換体を培養、あるいは(d)本発明のタンパク質またはその部分ペプチドをコードする核酸を鋳型として無細胞転写/翻訳系を用いて生化学的に合成することによって製造される。
(a)温血動物の組織または細胞から本発明のタンパク質を調製する場合、その組織または細胞をホモジナイズした後、粗分画物(例えば、膜画分、可溶性画分)をそのまま抗原として用いることもできる。あるいは酸、界面活性剤またはアルコールなどで抽出を行い、得られる抽出液を、塩析、透析、ゲル濾過、逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することもできる。得られた本発明のタンパク質をそのまま免疫原とすることもできるし、ペプチダーゼ等を用いた限定分解により部分ペプチドを調製してそれを免疫原とすることもできる。
(b)化学的に本発明の抗原を調製する場合、該合成ペプチドとしては、例えば上述の(a)の方法を用いて天然材料より精製した本発明のタンパク質と同一の構造を有するもの、具体的には、該タンパク質のアミノ酸配列において3個以上、好ましくは6個以上のアミノ酸からなる任意の箇所のアミノ酸配列と同一のアミノ酸配列を1種あるいは2種以上含有するペプチドなどが用いられる。
(c)DNAを含有する形質転換体を用いて本発明の抗原を製造する場合、該DNAは、公知のクローニング方法〔例えば、Molecular Cloning 2nd ed.(J.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab.Press,1989)に記載の方法など〕に従って作製することができる。該クローニング方法としては、(1)本発明のタンパク質をコードする遺伝子配列に基づきデザインしたDNAプローブを用い、cDNAライブラリーからハイブリダイゼーション法により該抗原をコードするDNAを単離するか、(2)本発明のタンパク質をコードする遺伝子配列に基づきデザインしたDNAプライマーを用い、cDNAを鋳型としてPCR法により該抗原をコードするDNAを調製し、該DNAを宿主に適合する発現ベクターに挿入する方法などが挙げられる。該発現ベクターで宿主を形質転換して得られる形質転換体を適当な培地中で培養することにより、所望の抗原を得ることができる。
(d)無細胞転写/翻訳系を利用する場合、上記(c)と同様の方法により調製した抗原をコードするDNAを挿入した発現ベクター(例えば、該DNAがT7、SP6プロモーター等の制御下におかれた発現ベクターなど)を鋳型とし、該プロモーターに適合するRNAポリメラーゼおよび基質(NTPs)を含む転写反応液を用いてmRNAを合成した後、該mRNAを鋳型として公知の無細胞翻訳系(例えば、大腸菌、ウサギ網状赤血球、コムギ胚芽等の抽出液)を用いて翻訳反応を行なわせる方法などが挙げられる。塩濃度等を適当に調整することにより、転写反応と翻訳反応とを同一反応液中で一括して行うこともできる。
免疫原としては、本発明のタンパク質の完全な分子やその部分アミノ酸配列を有するペプチドを用いることができる。部分アミノ酸配列としては、例えば3個以上の連続するアミノ酸残基からなるもの、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上、いっそう好ましくは6個以上の連続するアミノ酸残基からなるものが挙げられる。あるいは、該アミノ酸配列としては、例えば20個以下の連続するアミノ酸残基からなるもの、好ましくは18個以下、より好ましくは15個以下、いっそう好ましくは12個以下の連続するアミノ酸残基からなるものが挙げられる。これらのアミノ酸残基の一部(例えば、1個〜数個)は置換可能な基(例えば、Cys残基、水酸基等)によって置換されていてもよい。免疫原として用いられるペプチドは、このような部分アミノ酸配列を1個〜数個含むアミノ酸配列を有する。
あるいは、本発明のタンパク質を発現する温血動物細胞自体を、本発明の抗原として直接用いることもできる。温血動物細胞としては、上記(a)項で述べたような天然の細胞、上記(c)項で述べたような方法で形質転換した細胞などを用いることができる。形質転換に用いる宿主としては、ヒト、サル、ラット、マウス、ハムスター、ニワトリなどから採取した細胞であれば何れのものでも良く、HEK293、COS7、CHO−K1、NIH3T3、Balb3T3、FM3A、L929、SP2/0、P3U1、B16、またはP388などが好ましく用いられる。本発明のタンパク質を発現する天然の温血動物細胞または形質転換した温血動物細胞は、組織培養に用いられる培地(例えば、RPMI1640)または緩衝液(例えば、ハンクス緩衝塩類溶液(Hanks’ Balanced Salt Slution;HBSS))に懸濁された状態で免疫動物に注射することができる。免疫方法としては、抗体産生を促すことのできる方法であればいずれの方法でもよく、静脈内注射、腹腔内注射、筋肉内注射または皮下注射などが好ましく用いられる。
本発明の抗原は、免疫原性を有していれば不溶化したものを直接免疫することもできるが、分子内に1個〜数個の抗原決定基しか有しない低分子量(例えば、分子量約3,000以下)の抗原(すなわち、本発明のタンパク質の部分ペプチド)を用いる場合には、これらの抗原は通常、免疫原性の低いハプテン分子であるため、適当な担体(キャリアー)に結合または吸着させた複合体として免疫することができる。担体としては天然または合成の高分子を用いることができる。天然高分子としては、例えばウシ、ウサギ、ヒトなどの哺乳動物の血清アルブミンや例えばウシ、ウサギなどの哺乳動物のサイログロブリン、例えばニワトリのオボアルブミン、例えばウシ、ウサギ、ヒト、ヒツジなどの哺乳動物のヘモグロビン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などが用いられる。合成高分子としては、例えばポリアミノ酸類、ポリスチレン類、ポリアクリル類、ポリビニル類、ポリプロピレン類などの重合物または共重合物などの各種ラテックスなどが挙げられる。
該キャリアーとハプテンとの混合比は、担体に結合あるいは吸着させた抗原に対する抗体が効率よく産生されれば、どのようなものをどのような比率で結合あるいは吸着させてもよく、通常ハプテンに対する抗体の作製にあたり常用されている上記の天然もしくは合成の高分子キャリアーを、重量比でハプテン1に対し0.1〜100の割合で結合あるいは吸着させたものを使用することができる。
また、ハプテンとキャリアーのカップリングには、種々の縮合剤を用いることができる。例えば、チロシン、ヒスチジン、トリプトファンを架橋するビスジアゾ化ベンジジンなどのジアゾニウム化合物、アミノ基同士を架橋するグルタルアルデビトなどのジアルデヒド化合物、トルエン−2,4−ジイソシアネートなどのジイソシアネート化合物、チオール基同士を架橋するN,N’−o−フェニレンジマレイミドなどのジマレイミド化合物、アミノ基とチオール基を架橋するマレイミド活性エステル化合物、アミノ基とカルボキシル基とを架橋するカルボジイミド化合物などが好都合に用いられる。また、アミノ基どうしを架橋する際にも、一方のアミノ基にジチオピリジル基を有する活性エステル試薬(例えば、3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸N−スクシンイミジル(SPDP)など)を反応させた後還元することによりチオール基を導入し、他方のアミノ基にマレイミド活性エステル試薬によりマレイミド基を導入後、両者を反応させることもできる。
(2)モノクローナル抗体の作製
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明の抗原は、温血動物に対して、例えば腹腔内注入、静脈注入、皮下注射、皮内注射などの投与方法によって、抗体産生が可能な部位にそれ自体単独で、あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常1〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行なわれる。用いられる温血動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ハムスター、ヒツジ、ヤギ、ロバ、ニワトリが挙げられる。抗Ig抗体産生の問題を回避するためには、投与対象と同一種の哺乳動物を用いることが好ましいが、モノクローナル抗体作製には一般にマウスおよびラットが好ましく用いられる。
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明の抗原は、温血動物に対して、例えば腹腔内注入、静脈注入、皮下注射、皮内注射などの投与方法によって、抗体産生が可能な部位にそれ自体単独で、あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常1〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行なわれる。用いられる温血動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ハムスター、ヒツジ、ヤギ、ロバ、ニワトリが挙げられる。抗Ig抗体産生の問題を回避するためには、投与対象と同一種の哺乳動物を用いることが好ましいが、モノクローナル抗体作製には一般にマウスおよびラットが好ましく用いられる。
ヒトに対する人為的免疫感作は倫理的に困難であることから、本発明の抗体がヒトを投与対象とする場合には、(i)後述する方法に従って作製されるヒト抗体産生動物(例えば、マウス)を免疫してヒト抗体を得る、(ii)後述する方法に従ってキメラ抗体、ヒト化抗体もしくは完全ヒト抗体を作製する、あるいは(iii)体外免疫法とウイルスによる細胞不死化、ヒト−ヒト(もしくはマウス)ハイブリドーマ作製技術、ファージディスプレイ法等とを組み合わせてヒト抗体を得ることが好ましい。なお、体外免疫法は、通常の免疫では抗体産生が抑制される抗原に対する抗原を取得できる可能性があることや、ng〜μgオーダーの抗原量で抗体を得ることが可能であること、免疫が数日間で終了することなどから、不安定で大量調製の困難な抗原に対する抗体を得る方法として、非ヒト動物由来の抗体を調製する場合にも好ましく用いられうる。
体外免疫法に用いられる動物細胞としては、ヒトおよび上記した温血動物(好ましくはマウス、ラット)の末梢血、脾臓、リンパ節などから単離されるリンパ球、好ましくはBリンパ球等が挙げられる。例えば、マウス細胞やラット細胞の場合、4〜12週齢程度の動物から脾臓を摘出・脾細胞を分離し、適当な培地(例えば、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、RPMI1640培地、ハムF12培地等)で洗浄した後、抗原を含む胎仔ウシ血清(FCS;5〜20%程度)添加培地に浮遊させて4〜10日間程度CO2インキュベーターなどを用いて培養する。抗原濃度としては、例えば0.05〜5μgが挙げられるがこれに限定されない。同一系統の動物(1〜2週齢程度が好ましい)の胸腺細胞培養上清を常法に従って調製し、培地に添加することが好ましい。
ヒト細胞の体外免疫では、胸腺細胞培養上清を得ることは困難であるため、IL−2、IL−4、IL−5、IL−6等数種のサイトカインおよび必要に応じてアジュバント物質(例えば、ムラミルジペプチド等)を抗原とともに培地に添加して免疫感作を行うことが好ましい。
モノクローナル抗体の作製に際しては、抗原を免疫された温血動物(例えば、マウス、ラット)もしくは動物細胞(例えば、ヒト、マウス、ラット)から抗体価の上昇が認められた個体もしくは細胞集団を選択し、最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取もしくは体外免疫後4〜10日間培養した後に細胞を回収して抗体産生細胞を単離し、これと骨髄腫細胞とを融合させることにより抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。血清中の抗体価の測定は、例えば標識化抗原と抗血清とを反応させた後、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行うことができる。
骨髄腫細胞は多量の抗体を分泌するハイブリドーマを産生しうるものであれば特に制限はないが、自身は抗体を産生もしくは分泌しないものが好ましく、また、細胞融合効率が高いものがより好ましい。また、ハイブリドーマの選択を容易にするために、HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)感受性の株を用いることが好ましい。例えばマウス骨髄腫細胞としてはNS−1、P3U1、SP2/0、AP−1等が、ラット骨髄腫細胞としてはR210.RCY3、Y3−Ag1.2.3等が、ヒト骨髄腫細胞としてはSKO−007、GM1500−6TG−2、LICR−LON−HMy2、UC729−6等が挙げられる。
融合操作は既知の方法、例えばケーラーとミルスタインの方法[Nature,256,495(1975)]に従って実施することができる。融合促進剤としては、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGなどが用いられる。PEGの分子量は特に制限はないが、低毒性でかつ粘性が比較的低いPEG1000〜PEG6000が好ましい。PEG濃度としては例えば10〜80%程度、好ましくは30〜50%程度が例示される。PEGの希釈用溶液としては無血清培地(例えば、RPMI1640)、5〜20%程度の血清を含む完全培地、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、トリス緩衝液等の各種緩衝液を用いることができる。所望によりDMSO(例えば、10〜20%程度)を添加することもできる。融合液のpHとしては、例えば4〜10程度、好ましくは6〜8程度が挙げられる。
抗体産生細胞(脾細胞)数と骨髄細胞数との好ましい比率は、通常1:1〜20:1程度であり、通常20〜40℃、好ましくは30〜37℃で通常1〜10分間インキュベート(例えば、CO2インキュベート)することにより効率よく細胞融合を実施できる。
抗体産生細胞株はまた、リンパ球を形質転換しうるウイルスに抗体産生細胞を感染させて該細胞を不死化することによっても得ることができる。そのようなウイルスとしては、例えばエプスタイン−バー(EB)ウイルス等が挙げられる。大多数の人は伝染性単核球症の無症状感染としてこのウイルスに感染した経験があるので免疫を有しているが、通常のEBウイルスを用いた場合にはウイルス粒子も産生されるので、適切な精製を行うべきである。ウイルス混入の可能性のないEBシステムとして、Bリンパ球を不死化する能力を保持するがウイルス粒子の複製能力を欠損した組換えEBウイルス(例えば、潜伏感染状態から溶解感染状態への移行のスイッチ遺伝子における欠損など)を用いることもまた好ましい。
マーモセット由来のB95−8細胞はEBウイルスを分泌しているので、その培養上清を用いれば容易にBリンパ球を形質転換することができる。この細胞を例えば血清およびペニシリン/ストレプトマイシン(P/S)添加培地(例えば、RPMI1640)もしくは細胞増殖因子を添加した無血清培地で培養した後、濾過もしくは遠心分離等により培養上清を分離し、これに抗体産生Bリンパ球を適当な濃度(例えば、約107細胞/mL)で浮遊させて、通常20〜40℃、好ましくは30〜37℃で通常0.5〜2時間程度インキュベートすることにより抗体産生B細胞株を得ることができる。ヒトの抗体産生細胞が混合リンパ球として提供される場合、大部分の人はEBウイルス感染細胞に対して傷害性を示すTリンパ球を有しているので、形質転換の頻度を高めるためには、例えばヒツジ赤血球等とEロゼットを形成させることによってTリンパ球を予め除去しておくことが好ましい。また、可溶性抗原を結合したヒツジ赤血球を抗体産生Bリンパ球と混合し、パーコール等の密度勾配を用いてロゼットを分離することにより標的抗原に特異的なリンパ球を選別することができる。さらに、大過剰の抗原を添加することにより抗原特異的なBリンパ球はキャップされて表面にIgGを提示しなくなるので、抗IgG抗体を結合したヒツジ赤血球と混合すると抗原非特異的なBリンパ球のみがロゼットを形成する。従って、この混合物からパーコール等の密度勾配を用いてロゼット非形成層を採取することにより、抗原特異的Bリンパ球を選別することができる。
形質転換によって無限増殖能を獲得したヒト抗体分泌細胞は、抗体分泌能を安定に持続させるためにマウスもしくはヒトの骨髄腫細胞と戻し融合させることができる。骨髄腫細胞としては上記と同様のものが用いられうる。
ハイブリドーマのスクリーニング、育種は通常HAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加して、5〜20%FCSを含む動物細胞用培地(例えば、RPMI1640)もしくは細胞増殖因子を添加した無血清培地で行われる。ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンの濃度としては、例えばそれぞれ約0.1mM、約0.4μMおよび約0.016mM等が挙げられる。ヒト−マウスハイブリドーマの選択にはウワバイン耐性を用いることができる。ヒト細胞株はマウス細胞株に比べてウワバインに対する感受性が高いため、10−7〜10−3M程度で培地に添加することにより未融合のヒト細胞を排除することができる。
ハイブリドーマの選択にはフィーダー細胞やある種の細胞培養上清を用いることが好ましい。フィーダー細胞としては、ハイブリドーマの出現を助けて自身は死滅するように生存期間が限られた異系の細胞種、ハイブリドーマの出現に有用な増殖因子を大量に産生しうる細胞を放射線照射等して増殖力を低減させたものなどが用いられる。例えば、マウスのフィーダー細胞としては、脾細胞、マクロファージ、血液、胸腺細胞等が挙げられ、ヒトのフィーダー細胞としては、末梢血単核細胞等が挙げられる。細胞培養上清としては、例えば上記の各種細胞の初代培養上清や種々の株化細胞の培養上清が挙げられる。
また、ハイブリドーマは、抗原を蛍光標識して融合細胞と反応させた後、蛍光活性化セルソータ(FACS)を用いて抗原と結合する細胞を分離することによっても選択することができる。この場合、標的抗原に対する抗体を産生するハイブリドーマを直接選択することができるため、クローニングの労力を大いに軽減することが可能である。
標的抗原に対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマのクローニングには、種々の方法が用いられうる。
アミノプテリンは多くの細胞機能を阻害するため、できるだけ早く培地から除去することが好ましい。マウスやラットの場合、ほとんどの骨髄腫細胞は10〜14日以内に死滅するため、融合2週間後からはアミノプテリンを除去することができる。ただし、ヒトハイブリドーマについては通常融合後4〜6週間程度はアミノプテリン添加培地で維持される。ヒポキサンチン、チミジンはアミノプテリン除去後1週間以上後に除去するのが望ましい。すなわち、マウス細胞の場合、例えば融合7〜10日後にヒポキサンチンおよびチミジン(HT)添加完全培地(例えば、10%FCS添加RPMI1640)の添加または交換を行う。融合後8〜14日程度で目視可能なクローンが出現する。クローンの直径が1mm程度になれば培養上清中の抗体量の測定が可能となる。
抗体量の測定は、例えば標的抗原またはその誘導体あるいはその部分ペプチド(抗原決定基として用いた部分アミノ酸配列を含む)を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例えば、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質(例えば、125I、131I、3H、14C)、酵素(例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、ペルオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素)、蛍光物質(例えば、フルオレスカミン、フルオレセインイソチオシアネート)、発光物質(例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニン)などで標識した抗免疫グロブリン(IgG)抗体(もとの抗体産生細胞が由来する動物と同一種の動物由来のIgGに対する抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合した標的抗原(抗原決定基)に対する抗体を検出する方法、抗IgG抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、上記と同様の標識剤で標識した標的抗原またはその誘導体あるいはその部分ペプチドを加え、固相に結合した標的抗原(抗原決定基)に対する抗体を検出する方法などによって行うことができる。
クローニング方法としては限界希釈法が通常用いられるが、軟寒天を用いたクローニングやFACSを用いたクローニング(上述)も可能である。限界希釈法によるクローニングは、例えば以下の手順で行うことができるが、これに限定されない。
上記のようにして抗体量を測定して陽性ウェルを選択する。適当なフィーダー細胞を選択して96ウェルプレートに添加しておく。抗体陽性ウェルから細胞を吸い出し、完全培地(例えば、10%FCSおよびP/S添加RMPI1640)中に30細胞/mLの密度となるように浮遊させ、フィーダー細胞を添加したウェルプレートに0.1mL(3細胞/ウェル)加え、残りの細胞懸濁液を10細胞/mLに希釈して別のウェルに同様にまき(1細胞/ウェル)、さらに残りの細胞懸濁液を3細胞/mLに希釈して別のウェルにまく(0.3細胞/ウェル)。目視可能なクローンが出現するまで2〜3週間程度培養し、抗体量を測定・陽性ウェルを選択し、再度クローニングする。ヒト細胞の場合はクローニングが比較的困難であるため、10細胞/ウェルのプレートも調製しておく。通常2回のサブクローニングでモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを得ることができるが、その安定性を確認するためにさらに数ヶ月間定期的に再クローニングを行うことが望ましい。
ハイブリドーマはインビトロまたはインビボで培養することができる。インビトロでの培養法としては、上記のようにして得られるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを、細胞密度を例えば105〜106細胞/mL程度に保ちながら、また、FCS濃度を徐々に減らしながら、ウェルプレートから徐々にスケールアップしていく方法が挙げられる。
インビボでの培養法としては、例えば、腹腔内にミネラルオイルを注入して形質細胞腫(MOPC)を誘導したマウス(ハイブリドーマの親株と組織適合性のマウス)に、5〜10日後に106〜107細胞程度のハイブリドーマを腹腔内注射し、2〜5週間後に麻酔下で腹水を採取する方法が挙げられる。
(b)モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、それ自体公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法[例:塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例えば、DEAE、QEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法など]に従って行うことができる。
モノクローナル抗体の分離精製は、それ自体公知の方法、例えば、免疫グロブリンの分離精製法[例:塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例えば、DEAE、QEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法など]に従って行うことができる。
以上のようにして、ハイブリドーマを温血動物の生体内又は生体外で培養し、その体液または培養物から抗体を採取することによって、モノクローナル抗体を製造することができる。
本発明の抗体を癌の予防・治療に利用する場合、該抗体は抗腫瘍活性を持つものでなければならないため、得られたモノクローナル抗体の抗腫瘍活性の程度について調べる必要がある。抗腫瘍活性は、抗体の存在下および非存在下における癌細胞の増殖、細胞接着、アポトーシス誘導などを比較することにより測定することができる。
好ましい実施形態において、本発明の抗体はヒトを投与対象とする医薬品として使用される。このため、本発明の抗体(好ましくはモノクローナル抗体)はヒトに投与した場合に抗原性を示す危険性が低減された抗体(具体的には、完全ヒト抗体、ヒト化抗体、マウス−ヒトキメラ抗体など)であり、特に好ましくは完全ヒト抗体である。ヒト化抗体およびキメラ抗体は、後述する方法に従って遺伝子工学的に作製することができる。また、完全ヒト抗体は、上記したヒト−ヒト(もしくはマウス)ハイブリドーマより製造することも可能ではあるが、大量の抗体を安定にかつ低コストで提供するためには、後述するヒト抗体産生動物(例えば、マウス)またはファージディスプレイ法を用いて製造することが望ましい。
(i)キメラ抗体の作製
本明細書において「キメラ抗体」とは、H鎖およびL鎖の可変領域(VHおよびVL)の配列がある哺乳動物種に由来し、定常領域(CHおよびCL)の配列が他の哺乳動物種に由来する抗体を意味する。可変領域の配列は、例えばマウス等の容易にハイブリドーマを作製することができる動物種由来であることが好ましく、定常領域の配列は投与対象となる哺乳動物種由来であることが好ましい。
本明細書において「キメラ抗体」とは、H鎖およびL鎖の可変領域(VHおよびVL)の配列がある哺乳動物種に由来し、定常領域(CHおよびCL)の配列が他の哺乳動物種に由来する抗体を意味する。可変領域の配列は、例えばマウス等の容易にハイブリドーマを作製することができる動物種由来であることが好ましく、定常領域の配列は投与対象となる哺乳動物種由来であることが好ましい。
キメラ抗体の作製法としては、例えば米国特許第6,331,415号明細書に記載の方法あるいはそれを一部改変した方法などが挙げられる。具体的には、まず、上述のようにして得られるモノクローナル抗体産生ハイブリドーマ(例えば、マウス−マウスハイブリドーマ)から、常法に従ってmRNAもしくは全RNAを調製し、cDNAを合成する。次いで、該cDNAを鋳型として、適当なプライマー(例えば、センスプライマーとしてVHおよびVLの各N末端配列をコードする塩基配列を含むオリゴDNA、アンチセンスプライマーとしてCHおよびCLのN末端配列をコードする塩基配列とハイブリダイズするオリゴDNA(例えばBio/Technology,9:88−89,1991参照))を用い、常法に従ってPCRでVHおよびVLをコードするDNAを増幅・精製する。同様の方法により、他の哺乳動物(例えば、ヒト)のリンパ球等より調製したRNAからRT−PCR法によりCHおよびCLをコードするDNAを増幅・精製する。常法を用いてVHとCH、VLとCLをそれぞれ連結し、得られたキメラH鎖DNAおよびキメラL鎖DNAを、それぞれ適当な発現ベクター(例えば、CHO細胞、COS細胞、マウス骨髄腫細胞等で転写活性を有するプロモーター(例えば、CMVプロモーター、SV40プロモーター等)を含むベクターなど)に挿入する。両鎖をコードするDNAは別個のベクターに挿入してもよいし、1個のベクターにタンデムに挿入してもよい。得られたキメラH鎖およびキメラL鎖発現ベクターで宿主細胞を形質転換する。宿主細胞としては、動物細胞、例えば上記したマウス骨髄腫細胞の他、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、サル由来のCOS−7細胞、Vero細胞、ラット由来のGHS細胞などが挙げられる。形質転換には、動物細胞に適用可能ないかなる方法を用いてもよいが、好ましくはエレクトロポレーション法などが挙げられる。宿主細胞に適した培地中で一定期間培養後、培養上清を回収して上記と同様の方法で精製することにより、キメラモノクローナル抗体を単離することができる。あるいは、宿主細胞としてウシ、ヤギ、ニワトリ等のトランスジェニック技術が確立し、かつ家畜(家禽)として大量繁殖のノウハウが蓄積されている動物の生殖系列細胞を用い、常法によってトランスジェニック動物を作製することにより、得られる動物の乳汁もしくは卵から容易にかつ大量にキメラモノクローナル抗体を得ることもできる。さらに、トウモロコシ、イネ、コムギ、ダイズ、タバコなどのトランスジェニック技術が確立し、かつ主要作物として大量に栽培されている植物細胞を宿主細胞として、プロトプラストへのマイクロインジェクションやエレクトロポレーション、無傷細胞へのパーティクルガン法やTiベクター法などを用いてトランスジェニック植物を作製し、得られる種子や葉などから大量にキメラモノクローナル抗体を得ることも可能である。
得られたキメラモノクローナル抗体をパパインで分解すればFabが、ペプシンで分解すればF(ab’)2がそれぞれ得られる。
また、マウスVHおよびVLをコードするDNAを適当なリンカー、例えば1〜40アミノ酸、好ましくは3〜30アミノ酸、より好ましくは5〜20アミノ酸からなるペプチド(例:[Ser−(Gly)m]nもしくは[(Gly)m−Ser]n(mは0〜10の整数、nは1〜5の整数)等)をコードするDNAを介して連結することによりscFvとすることができ、さらにCH3をコードするDNAを適当なリンカーを介して連結することによりminibodyモノマーとしたり、CH全長をコードするDNAを適当なリンカーを介して連結することによりscFv−Fcとすることもできる。このような遺伝子工学的に修飾(共役)された抗体分子をコードするDNAは、適当なプロモーターの制御下におくことにより大腸菌や酵母などの微生物で発現させることができ、大量に抗体分子を生産することができる。
マウスVHおよびVLをコードするDNAを1つのプロモーターの下流にタンデムに挿入して大腸菌に導入すると、モノシストロニックな遺伝子発現によりFvと呼ばれる二量体を形成する。また、分子モデリングを用いてVHおよびVLのFR中の適当なアミノ酸をCysに置換すると、両鎖の分子間ジスルフィド結合によりdsFvと呼ばれる二量体が形成される。
(ii)ヒト化抗体
本明細書において「ヒト化抗体」とは、可変領域に存在する相補性決定領域(CDR)以外のすべての領域(すなわち、定常領域および可変領域中のフレームワーク領域(FR))の配列がヒト由来であり、CDRの配列のみが他の哺乳動物種由来である抗体を意味する。他の哺乳動物種としては、例えばマウス等の容易にハイブリドーマを作製することができる動物種が好ましい。
本明細書において「ヒト化抗体」とは、可変領域に存在する相補性決定領域(CDR)以外のすべての領域(すなわち、定常領域および可変領域中のフレームワーク領域(FR))の配列がヒト由来であり、CDRの配列のみが他の哺乳動物種由来である抗体を意味する。他の哺乳動物種としては、例えばマウス等の容易にハイブリドーマを作製することができる動物種が好ましい。
ヒト化抗体の作製法としては、例えば米国特許第5,225,539号、第5,585,089号、第5,693,761号および第5,693,762号に記載される方法あるいはそれらを一部改変した方法などが挙げられる。具体的には、上記キメラ抗体の場合と同様にして、ヒト以外の哺乳動物種(例えば、マウス)由来のVHおよびVLをコードするDNAを単離した後、常法により自動DNAシークエンサー(例えば、Applied Biosystems社製等)を用いてシークエンスを行い、得られる塩基配列もしくはそこから推定されるアミノ酸配列を公知の抗体配列データベース[例えば、Kabat database(Kabatら,「Sequences of Proteins of Immunological Interest」,US Department of Health and Human Services,Public Health Service,NIH編,第5版,1991参照)等]を用いて解析し、両鎖のCDRおよびFRを決定する。決定されたFR配列に類似したFR配列を有するヒト抗体のL鎖およびH鎖をコードする塩基配列[例:ヒトκ型L鎖サブグループIおよびヒトH鎖サブグループIIもしくはIII(Kabatら,1991(上述)を参照)]のCDRコード領域を、決定された異種CDRをコードする塩基配列で置換した塩基配列を設計し、該塩基配列を20〜40塩基程度のフラグメントに区分し、さらに該塩基配列に相補的な配列を、前記フラグメントと交互にオーバーラップするように20〜40塩基程度のフラグメントに区分する。各フラグメントをDNAシンセサイザーを用いて合成し、常法に従ってこれらをハイブリダイズさせ、ライゲーションすることにより、ヒト由来のFRと他の哺乳動物種由来のCDRを有するVHおよびVLをコードするDNAを構築することができる。より迅速かつ効率的に他の哺乳動物種由来CDRをヒト由来VHおよびVLに移植するには、PCRによる部位特異的変異誘発を用いることが好ましい。そのような方法としては、例えば特開平5−227970号公報に記載の逐次CDR移植法等が挙げられる。このようにして得られるVHおよびVLをコードするDNAを、上記キメラ抗体の場合と同様の方法でヒト由来のCHおよびCLをコードするDNAとそれぞれ連結して適当な宿主細胞に導入することにより、ヒト化抗体を産生する細胞あるいはトランスジェニック動植物を得ることができる。
ヒト化抗体もキメラ抗体と同様に遺伝子工学的手法を用いてscFv、scFv−Fc、minibody、dsFv、Fvなどに改変することができ、適当なプロモーターを用いることで大腸菌や酵母などの微生物でも生産させることができる。
ヒト化抗体作製技術は、例えばハイブリドーマの作製技術が確立していない他の動物種に好ましく投与しうるモノクローナル抗体を作製するのにも応用することができる。例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリなどの家畜(家禽)として広く繁殖されている動物やイヌやネコなどのペット動物などが対象として挙げられる。
(iii)ヒト抗体産生動物を用いた完全ヒト抗体の作製
内因性免疫グロブリン(Ig)遺伝子をノックアウト(KO)した非ヒト温血動物に機能的なヒトIg遺伝子を導入し、これを抗原で免疫すれば、該動物由来の抗体の代わりにヒト抗体が産生される。従って、マウス等のようにハイブリドーマ作製技術が確立している動物を用いれば、従来のマウスモノクローナル抗体の作製と同様の方法によって完全ヒトモノクローナル抗体を取得することが可能となる。まず、ヒトIgのH鎖およびL鎖のミニ遺伝子を通常のトランスジェニック(Tg)技術を用いて導入したマウスと、内因性マウスIg遺伝子を通常のKO技術を用いて不活性化したマウスとを交配して得られたヒト抗体産生マウス(Immunol.Today,17,391−397(1996)を参照)を用いて作製されたヒトモノクローナル抗体のいくつかは既に臨床段階にあり、現在までのところ抗ヒトIgヒト抗体(HAHA)の産生は報告されていない。
内因性免疫グロブリン(Ig)遺伝子をノックアウト(KO)した非ヒト温血動物に機能的なヒトIg遺伝子を導入し、これを抗原で免疫すれば、該動物由来の抗体の代わりにヒト抗体が産生される。従って、マウス等のようにハイブリドーマ作製技術が確立している動物を用いれば、従来のマウスモノクローナル抗体の作製と同様の方法によって完全ヒトモノクローナル抗体を取得することが可能となる。まず、ヒトIgのH鎖およびL鎖のミニ遺伝子を通常のトランスジェニック(Tg)技術を用いて導入したマウスと、内因性マウスIg遺伝子を通常のKO技術を用いて不活性化したマウスとを交配して得られたヒト抗体産生マウス(Immunol.Today,17,391−397(1996)を参照)を用いて作製されたヒトモノクローナル抗体のいくつかは既に臨床段階にあり、現在までのところ抗ヒトIgヒト抗体(HAHA)の産生は報告されていない。
その後、Abgenix社[商品名:XenoMouse(Nat.Genet.,15,146−156(1997);米国特許第5,939,598号等を参照)]やMedarex社[商品名:Hu−Mab Mouse(Nat.Biotechnol.,14,845−851(1996);米国特許第5,545,806号等を参照)]が酵母人工染色体(YAC)ベクターを用いてより大きなヒトIg遺伝子を導入したTgマウスを作製し、よりレパートリーに富んだヒト抗体を産生し得るようになった。しかしながら、ヒトIg遺伝子は、例えばH鎖の場合、約80種のV断片、約30種のD断片および6種のJ断片が様々に組み合わされたVDJエクソンが抗原結合部位をコードすることによりその多様性を実現しているため、その全長はH鎖が約1.5Mb(14番染色体)、κL鎖が約2Mb(2番染色体)、λL鎖が約1Mb(22番染色体)に達する。ヒトにおけるのと同様の多様な抗体レパートリーを他の動物種で再現するためには、各Ig遺伝子の全長を導入することが望ましいが、従来の遺伝子導入ベクター(プラスミド、コスミド、BAC、YAC等)に挿入可能なDNAは通常数kb〜数百kbであり、クローニングしたDNAを受精卵に注入する従来のトランスジェニック動物作製技術では全長の導入は困難であった。
Tomizukaら(Nat.Genet.,16,133−143(1997))は、Ig遺伝子を担持するヒト染色体の自然断片(hCF)をマウスに導入して(染色体導入(TC)マウス)、完全長ヒトIg遺伝子を有するマウスを作製した。すなわち、まず、H鎖遺伝子を含む14番染色体およびκL鎖遺伝子を含む2番染色体を例えば薬剤耐性マーカー等で標識したヒト染色体を有するヒト−マウスハイブリッド細胞を48時間程度紡錘糸形成阻害剤(例えば、コルセミド)で処理して、1本〜数本の染色体もしくはその断片が核膜に被包されたミクロセルを調製し、微小核融合法によりマウスES細胞に染色体を導入する。薬剤を含む培地を用いてヒトIg遺伝子を有する染色体もしくはその断片を保持するハイブリッドES細胞を選択し、通常のKOマウス作製の場合と同様の方法によりマウス胚へ顕微注入する。得られるキメラマウスからコートカラーを指標にする等して生殖系列キメラを選択し、ヒト14番染色体断片を伝達するTCマウス系統(TC(hCF14))およびヒト2番染色体断片を伝達するTCマウス系統(TC(hCF2))を樹立する。常法により内因性H鎖遺伝子およびκL鎖遺伝子をKOされたマウス(KO(IgH)およびKO(Igκ))を作製し、これら4系統の交配を繰り返すことにより、4種の遺伝子改変をすべて有するマウス系統(ダブルTC/KO)を樹立することができる。
上記のようにして作製されるダブルTC/KOマウスに、通常のマウスモノクローナル抗体を作製する場合と同様の方法を適用すれば、抗原特異的ヒトモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを作製することができる。しかしながら、κL鎖遺伝子を含むhCF2がマウス細胞内で不安定なため、ハイブリドーマ取得効率は通常のマウスの場合に比べて低いという欠点がある。
一方、前記Hu−Mab MouseはκL鎖遺伝子の約50%を含むが、可変領域クラスターが倍加した構造を有するため完全長を含む場合と同等のκ鎖の多様性を示し(他方、H鎖遺伝子は約10%しか含まないのでH鎖の多様性は低く、抗原に対する応答性が不十分である)、かつYACベクター(Igκ−YAC)によりマウス染色体中に挿入されているので、マウス細胞内で安定に保持される。この利点を生かし、TC(hCF14)マウスとHu−Mab Mouseとを交配してhCF14とIgκ−YACとを安定に保持するマウス(商品名:KMマウス)を作製することにより、通常のマウスと同等のハイブリドーマ取得効率および抗体の抗原親和性を得ることができる。
さらに、より完全にヒトにおける多様な抗体レパートリーを再現するために、λL鎖遺伝子をさらに導入したヒト抗体産生動物を作製することもできる。かかる動物は、上記と同様の方法でλL鎖遺伝子を担持するヒト22番染色体もしくはその断片を導入したTCマウス(TC(hCF22))を作製し、これと上記ダブルTC/KOマウスやKMマウスとを交配することにより得ることもできるし、あるいは、例えばH鎖遺伝子座とλL鎖遺伝子座とを含むヒト人工染色体(HAC)を構築してマウス細胞に導入することにより得ることもできる(Nat.Biotechnol.,18,1086−1090(2000))。
本発明の抗体を医薬品として利用する場合はモノクローナル抗体であることが好ましいが、ポリクローナル抗体であってもよい。本発明の抗体がポリクローナル抗体である場合には、ハイブリドーマの利用を要しないので、ハイブリドーマ作製技術は確立されていないがトランスジェニック技術は確立されている動物種、好ましくはウシ等の有蹄動物を用いて、上記と同様の方法によりヒト抗体産生動物を作製すれば、より大量のヒト抗体を安価に製造することも可能である(例えば、Nat.Biotechnol.,20,889−894(2002)を参照)。得られるヒトポリクローナル抗体は、ヒト抗体産生動物の血液、腹水、乳汁、卵など、好ましくは乳汁、卵を採取し、上記と同様の精製技術を組み合わせることによって精製することができる。
(iv)ファージディスプレイヒト抗体ライブラリーを用いた完全ヒト抗体の作製
完全ヒト抗体を作製するもう1つのアプローチは、ファージディスプレイを用いる方法である。この方法はPCRによる変異がCDR以外に導入される場合があり、そのため臨床段階で少数のHAHA産生の報告例があるが、その一方で宿主動物に由来する異種間ウイルス感染の危険性がない点や抗体の特異性が無限である(禁止クローンや糖鎖などに対する抗体も容易に作製可能)等の利点を有している。
完全ヒト抗体を作製するもう1つのアプローチは、ファージディスプレイを用いる方法である。この方法はPCRによる変異がCDR以外に導入される場合があり、そのため臨床段階で少数のHAHA産生の報告例があるが、その一方で宿主動物に由来する異種間ウイルス感染の危険性がない点や抗体の特異性が無限である(禁止クローンや糖鎖などに対する抗体も容易に作製可能)等の利点を有している。
ファージディスプレイヒト抗体ライブラリーの作製方法としては、例えば、以下のものが挙げられるが、これに限定されない。
用いられるファージは特に限定されないが、通常繊維状ファージ(Ffバクテリオファージ)が好ましく用いられる。ファージ表面に外来タンパク質を提示する方法としては、g3p、g6p〜g9pのコートタンパク質のいずれかとの融合タンパク質として該コートタンパク質上で発現・提示させる方法が挙げられるが、よく用いられるのはg3pもしくはg8pのN末端側に融合させる方法である。ファージディスプレイベクターとしては、1)ファージゲノムのコートタンパク質遺伝子に外来遺伝子を融合した形で導入して、ファージ表面上に提示されるコートタンパク質をすべて外来タンパク質との融合タンパク質として提示させるものの他、2)融合タンパク質をコードする遺伝子を野生型コートタンパク質遺伝子とは別に挿入して、融合タンパク質と野生型コートタンパク質とを同時に発現させるものや、3)融合タンパク質をコードする遺伝子を有するファージミドベクターを持つ大腸菌に野生型コートタンパク質遺伝子を有するヘルパーファージを感染させて融合タンパク質と野生型コートタンパク質とを同時に発現するファージ粒子を産生させるものなどが挙げられるが、1)の場合は大きな外来タンパク質を融合させると感染能力が失われるため、抗体ライブラリーの作製のためには2)または3)のタイプが用いられる。
具体的なベクターとしては、Holtら(Curr.Opin.Biotechnol.,11,45−449(2000))に記載されるものが例示される。例えば、pCES1(J.Biol.Chem.,274,18218−18230(1999)を参照)は、1つのラクトースプロモーターの制御下にg3pのシグナルペプチドの下流にκL鎖定常領域をコードするDNAとg3pシグナルペプチドの下流にCH3をコードするDNA、His−tag、c−myc tag、アンバー終止コドン(TAG)を介してg3pコード配列とが配置されたFab発現型ファージミドベクターである。アンバー変異を有する大腸菌に導入するとg3pコートタンパク質上にFabを提示するが、アンバー変異を持たないHB2151株などで発現させると可溶性Fab抗体を産生する。また、scFv発現型ファージミドベクターとしては、例えばpHEN1(J.Mol.Biol.,222,581−597(1991))等が用いられる。
一方、ヘルパーファージとしては、例えばM13−K07、VCSM13等が挙げられる。
また、別のファージディスプレイベクターとして、抗体遺伝子の3’末端とコートタンパク質遺伝子の5’末端にそれぞれシステインをコードするコドンを含む配列を連結し、両遺伝子を同時に別個に(融合タンパク質としてではなく)発現させて、導入されたシステイン残基同士によるS−S結合を介してファージ表面のコートタンパク質上に抗体を提示しうるようにデザインされたもの(Morphosys社のCysDisplayTM技術)等も挙げられる。
ヒト抗体ライブラリーの種類としては、ナイーブ/非免疫(non−immunized)ライブラリー、合成ライブラリー、免疫ライブラリー等が挙げられる。
ナイーブ/非免疫ライブラリーは、正常なヒトが保有するVHおよびVL遺伝子をRT−PCR法により取得し、それらをランダムに上記のファージディスプレイベクターにクローニングして得られるライブラリーである。通常、正常人の末梢血、骨髄、扁桃腺などのリンパ球由来のmRNA等が鋳型として用いられる。疾病履歴などのV遺伝子のバイアスをなくすため、抗原感作によるクラススイッチが起こっていないIgM由来のmRNAのみを増幅したものを特にナイーブライブラリーと呼んでいる。代表的なものとしては、CAT社のライブラリー(J.Mol.Biol.,222,581−597(1991);Nat.Biotechnol.,14,309−314(19969を参照)、MRC社のライブラリー(Annu.Rev.Immunol.,12,433−455(1994)を参照)、Dyax社のライブラリー(J.Biol.Chem.,1999(上述);Proc.Natl.Acad.Sci.USA,14,7969−7974(2000)を参照)等が挙げられる。
合成ライブラリーは、ヒトB細胞内の機能的な特定の抗体遺伝子を選び、V遺伝子断片の、例えばCDR3等の抗原結合領域の部分を適当な長さのランダムなアミノ酸配列をコードするDNAで置換し、ライブラリー化したものである。最初から機能的なscFvやFabを産生するVHおよびVL遺伝子の組み合わせでライブライリーを構築できるので、抗体の発現効率や安定性に優れているとされる。代表的なものとしては、Morphosys社のHuCALライブラリー(J.Mol.Biol.,296,57−86(2000)を参照)、BioInvent社のライブラリー(Nat.Biotechnol.,18,852(2000)を参照)、Crucell社のライブラリー(Proc.Natl.Acad.Sci.USA,92,3938(1995);J.Immunol.Methods,272,219−233(2003)を参照)等が挙げられる。
免疫(immunized)ライブラリーは、癌、自己免疫疾患、感染症等の患者やワクチン接種を受けた者など、標的抗原に対する血中抗体価が上昇したヒトから採取したリンパ球、あるいは上記体外免疫法により標的抗原を人為的に免疫したヒトリンパ球等から、上記ナイーブ/非免疫ライブラリーの場合と同様にしてmRNAを調製し、RT−PCR法によってVHおよびVL遺伝子を増幅し、ライブラリー化したものである。最初から目的の抗体遺伝子がライブラリー中に含まれるので、比較的小さなサイズのライブラリーからでも目的の抗体を得ることができる。
ライブラリーの多様性は大きいほどよいが、現実的には、以下のパンニング操作で取り扱えるファージ数(1011〜1013ファージ)と通常のパンニングでクローンの単離および増幅に必要なファージ数(100〜1,000ファージ/クローン)を考慮すれば、108〜1011クローン程度が適当であり、約108クローンのライブラリーで通常10−9オーダーのKd値を有する抗体をスクリーニングすることができる。
標的抗原に対する抗体をファージディスプレイ法で選別する工程をパンニングという。具体的には、例えば、抗原を固定化した担体とファージライブラリーとを接触させ、非結合ファージを洗浄除去した後、結合したファージを担体から溶出させ、大腸菌に感染させて該ファージを増殖させる、という一連の操作を3〜5回程度繰り返すことにより抗原特異的な抗体を提示するファージを濃縮する。抗原を固定化する担体としては、通常の抗原抗体反応やアフィニティークロマトグラフィーで用いられる各種担体、例えばアガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス、金属などからなるマイクロプレート、チューブ、メンブレン、カラム、ビーズなど、さらには表面プラズモン共鳴(SPR)のセンサーチップなどが挙げられる。抗原の固定化には物理的吸着を用いてもよく、また、通常タンパク質あるいは酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。例えばビオチン−(ストレプト)アビジン系等が好ましく用いられる。標的抗原である内因性リガンドがペプチドなどの小分子である場合には、抗原決定基として用いた部分が担体との結合により被覆されないように特に注意する必要がある。非結合ファージの洗浄には、BSA溶液などのブロッキング液(1−2回)、Tween等の界面活性剤を含むPBS(3−5回)などを順次用いることができる。クエン酸緩衝液(pH5)などの使用が好ましいとの報告もある。特異的ファージの溶出には、通常酸(例えば、0.1M塩酸など)が用いられるが、特異的プロテアーゼによる切断(例えば、抗体遺伝子とコートタンパク質遺伝子との連結部にトリプシン切断部位をコードする遺伝子配列を導入することができる。この場合、溶出するファージ表面には野生型コートタンパク質が提示されるので、コートタンパク質のすべてが融合タンパク質として発現しても大腸菌への感染・増殖が可能となる)や可溶性抗原による競合的溶出、あるいはS−S結合の還元(例えば、前記したCysDisplayTMでは、パンニングの後、適当な還元剤を用いて抗体とコートタンパク質とを解離させることにより抗原特異的ファージを回収することができる)による溶出も可能である。酸で溶出した場合は、トリスなどで中和した後で溶出ファージを大腸菌に感染させ、培養後、常法によりファージを回収する。
パンニングにより抗原特異的抗体を提示するファージが濃縮されると、これらを大腸菌に感染させた後プレート上に播種してクローニングを行う。再度ファージを回収し、上述の抗体価測定法(例えば、ELISA、RIA、FIA等)やFACSあるいはSPRを利用した測定により抗原結合活性を確認する。
選択された抗原特異的抗体を提示するファージクローンからの抗体の単離・精製は、例えば、ファージディスプレイベクターとして抗体遺伝子とコートタンパク質遺伝子の連結部にアンバー終止コドンが導入されたベクターを用いる場合には、該ファージをアンバー変異を持たない大腸菌(例えば、HB2151株)に感染させると、可溶性抗体分子が産生されペリプラズムもしくは培地中に分泌されるので、細胞壁をリゾチームなどで溶解して細胞外画分を回収し、上記と同様の精製技術を用いて行うことができる。His−tagやc−myc tagを導入しておけば、IMACや抗c−myc抗体カラムなどを用いて容易に精製することができる。また、パンニングの際に特異的プロテアーゼによる切断を利用する場合には、該プロテアーゼを作用させると抗体分子がファージ表面から分離されるので、同様の精製操作を実施することにより目的の抗体を精製することができる。
ヒト抗体産生動物およびファージディスプレイヒト抗体ライブラリーを用いた完全ヒト抗体作製技術は、他の動物種のモノクローナル抗体を作製するのにも応用することができる。例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリなどの家畜(家禽)として広く繁殖されている動物やイヌやネコなどのペット動物などが対象として挙げられる。非ヒト動物においては標的抗原の人為的免疫に対する倫理的問題が少ないので、免疫ライブラリーの利用がより有効である。
ヒト抗体産生動物およびファージディスプレイヒト抗体ライブラリーを用いた完全ヒト抗体作製技術は、他の動物種のモノクローナル抗体を作製するのにも応用することができる。例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリなどの家畜(家禽)として広く繁殖されている動物やイヌやネコなどのペット動物などが対象として挙げられる。非ヒト動物においては標的抗原の人為的免疫に対する倫理的問題が少ないので、免疫ライブラリーの利用がより有効である。
(3)ポリクローナル抗体の作製
本発明のポリクローナル抗体は、それ自体公知の方法あるいはそれに準じる方法に従って製造することができる。例えば、免疫抗原(タンパク質もしくはペプチド抗原)自体、あるいはそれとキャリアータンパク質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に温血動物に免疫を行い、該免疫動物から本発明のタンパク質に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行うことにより製造することができる。
本発明のポリクローナル抗体は、それ自体公知の方法あるいはそれに準じる方法に従って製造することができる。例えば、免疫抗原(タンパク質もしくはペプチド抗原)自体、あるいはそれとキャリアータンパク質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に温血動物に免疫を行い、該免疫動物から本発明のタンパク質に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行うことにより製造することができる。
温血動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアータンパク質との複合体に関し、キャリアータンパク質の種類およびキャリアータンパク質とハプテンとの混合比は、キャリアータンパク質に架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どのようなものをどのような比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミンやウシサイログロブリン、ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜約20、好ましくは約1〜約5の割合でカップリングさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアータンパク質のカップリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体として、あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約1〜約6週毎に1回ずつ、計約2〜約10回程度行なわれる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された温血動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行うことができる。
以下に、本発明のタンパク質またはその部分ペプチド(以下、単に「本発明のタンパク質」とも称する)、本発明のタンパク質またはその部分ペプチドをコードする核酸(以下、単に「本発明の核酸」とも称する)、上述の本発明の抗体の用途を説明する。以下の用途はいずれも、「REG1遺伝子(REG1A遺伝子およびREG1B遺伝子)の発現が癌治療(化学療法および放射線療法)に対する高い感受性に寄与している」という、本発明者らによって初めて見出された知見に基づくものである。なお、REG1遺伝子の発現が癌治療に対する高い感受性に寄与するメカニズムは完全には明らかとはなっていない。ただし、放射線照射や化学療法剤(抗癌剤)の投与による癌細胞の死滅は、当該癌細胞におけるアポトーシス経路の活性化によるものであることが知られており、このことから、REG1遺伝子は癌細胞におけるアポトーシス経路の活性化に何らかの影響を及ぼすことで高い治療感受性に貢献していることが強く推測される。
(1)癌細胞の治療感受性の判定方法
第1に、REG1遺伝子をマーカーとして用いて、癌細胞の治療感受性を判定することができる。すなわち、本発明の第1の形態によれば、癌細胞の治療感受性の判定方法が提供される。なお、本願において「治療感受性」とは、癌を治療する目的で癌細胞に対して施される任意の処置(例えば、放射線の照射や化学療法剤(抗癌剤)の投与など)に対する感受性を意味する。より具体的には、放射線の照射に対する感受性(放射線感受性)とは、放射線によって癌細胞がどの程度殺傷されるかを意味する。同様に、化学療法剤(抗癌剤)の投与に対する感受性(化学療法感受性)とは、化学療法剤(抗癌剤)の投与によって癌細胞がどの程度殺傷されるかを意味する。なお、本願において、「治療感受性」は、1種の治療(処置)のみに対する感受性であってもよいし、2種以上の治療(処置)に対する感受性であってもよい。また、本明細書において「癌細胞」とは、将来的に癌化するように方向づけられている細胞をも含む概念として用いられる。
第1に、REG1遺伝子をマーカーとして用いて、癌細胞の治療感受性を判定することができる。すなわち、本発明の第1の形態によれば、癌細胞の治療感受性の判定方法が提供される。なお、本願において「治療感受性」とは、癌を治療する目的で癌細胞に対して施される任意の処置(例えば、放射線の照射や化学療法剤(抗癌剤)の投与など)に対する感受性を意味する。より具体的には、放射線の照射に対する感受性(放射線感受性)とは、放射線によって癌細胞がどの程度殺傷されるかを意味する。同様に、化学療法剤(抗癌剤)の投与に対する感受性(化学療法感受性)とは、化学療法剤(抗癌剤)の投与によって癌細胞がどの程度殺傷されるかを意味する。なお、本願において、「治療感受性」は、1種の治療(処置)のみに対する感受性であってもよいし、2種以上の治療(処置)に対する感受性であってもよい。また、本明細書において「癌細胞」とは、将来的に癌化するように方向づけられている細胞をも含む概念として用いられる。
本形態の「癌細胞の治療感受性の判定方法」は、被検組織または被検細胞における、REG1A遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子(以下、単に「REG1A遺伝子」とも称する)またはREG1B遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子(以下、単に「REG1B遺伝子」とも称する)(これらの遺伝子をすべて総称して「REG1遺伝子」とも称する)の発現量(A1)を測定する工程と、前記発現量(A1)と所定の発現量(A0)とを比較する工程と、比較した結果、前記発現量(A1)が前記発現量(A0)よりも有意に多いか否かを判断することによって、前記被検組織または前記被検細胞の治療感受性を予測する工程とを含む。以下、工程順に詳細に説明する。
本形態の「癌細胞の治療感受性の判定方法」では、まず、被検組織または被検細胞における、REG1A遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子またはREG1B遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子の発現量(A1)を測定する。
遺伝子発現量の測定にあたっては、測定対象となる被検組織/被検細胞を生体(例えば、ヒトの生体)から採取することとなるが、被検組織/被検細胞を生体から採取するための具体的な手法については特に制限はなく、従来公知の知見が適宜参照されうる。
ここで、「被検組織」とは、治療感受性の判定の対象となる生体から抽出可能な組織であり、治療感受性の判定の必要のある癌組織であればその種類は特に限定されない。かかる組織の例としては、例えば、扁平上皮癌(食道扁平上皮癌など)、神経芽腫、網膜芽細胞腫、脳腫瘍、頭頸部癌、下垂体腺腫、神経膠腫、聴神経鞘腫、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、甲状腺癌、胸腺腫、中皮腫、乳癌、肺癌、胃癌、食道癌、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌、膵内分泌腫瘍、胆道癌、陰茎癌、外陰癌、腎盂尿管癌、腎臓癌、精巣癌、前立腺癌、膀胱癌、子宮癌、絨毛性疾患、膣癌、卵巣癌、卵管癌、卵巣胚細胞腫瘍、皮膚癌、菌状息肉症、悪性黒色腫、軟部肉腫、骨腫瘍、悪性リンパ腫、白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、リンパ浮腫由来の組織が挙げられる。なかでも、扁平上皮癌由来の組織であることが好ましく、食道扁平上皮癌由来の組織であることが特に好ましい。
また、本発明における「被検細胞」も同様に、治療感受性の判定の対象となる生体から抽出可能な組織であり、治療感受性の判定の必要のある癌組織由来の細胞であればその種類は特に限定されない。かかる細胞の例としては、例えば、扁平上皮癌(食道扁平上皮癌)、神経芽腫、網膜芽細胞腫、脳腫瘍、頭頸部癌、下垂体腺腫、神経膠腫、聴神経鞘腫、口腔癌、咽頭癌、喉頭癌、甲状腺癌、胸腺腫、中皮腫、乳癌、肺癌、胃癌、食道癌、大腸癌、肝臓癌、膵臓癌、膵内分泌腫瘍、胆道癌、陰茎癌、外陰癌、腎盂尿管癌、腎臓癌、精巣癌、前立腺癌、膀胱癌、子宮癌、絨毛性疾患、膣癌、卵巣癌、卵管癌、卵巣胚細胞腫瘍、皮膚癌、菌状息肉症、悪性黒色腫、軟部肉腫、骨腫瘍、悪性リンパ腫、白血病、骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、リンパ浮腫由来の細胞が挙げられる。なかでも、扁平上皮癌由来の細胞であることが好ましく、食道扁平上皮癌由来の細胞であることが特に好ましい。
次に、本発明において被検対象となる遺伝子であるREG1遺伝子について説明する。
REG遺伝子には、コードされるタンパク質の1次構造に応じてREG1、REG2、REG3、およびREG4の4つのサブクラスに分類される多重遺伝子ファミリーが存在することが知られている。そして、REG1遺伝子にはREG1A遺伝子およびREG1B遺伝子などがあるが、これらは膵外分泌腺から分泌されるタンパク質をコードしており、2番染色体短腕(2p12)に位置している。より詳細には、REG1A遺伝子は、821bpからなる遺伝子(Refseq Accession No.NM_002909、配列番号:1)であり、166アミノ酸からなるタンパク質(REG1Aタンパク質;RefSeq Accession No.AAH05350、配列番号:2)をコードしている。また、REG1B遺伝子は、812bpからなる遺伝子(Refseq Accession No.NM_006507、配列番号:3)であり、166アミノ酸からなるタンパク質(REG1Bタンパク質;RefSeq Accession No.AAH27895、配列番号:4)をコードしている。本形態の判定方法において使用される遺伝子は、REG1遺伝子(REG1A遺伝子またはREG1B遺伝子)と機能的に等価な遺伝子であってもよい。
ここで、「REG1遺伝子(REG1A遺伝子またはREG1B遺伝子)と機能的に等価な遺伝子」とは、REG1遺伝子と塩基配列は異なるものの、比較的高い相同性を示し、REG1遺伝子によりコードされるタンパク質と同じかまたは類似の活性を有するタンパク質をコードする遺伝子を意味する。具体的には、「配列番号:1または配列番号:3で表される塩基配列を含有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を含有し、配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質をコードするDNA」として上述したDNAが、「REG1遺伝子と機能的に等価な遺伝子」として用いられうる。
本工程においては、被検組織または被検細胞における、REG1遺伝子の発現量(A1)を測定する。REG1遺伝子の発現量の測定手法について特に制限はない。本工程において、REG1遺伝子の発現量(A1)は、当該遺伝子から発現するmRNA量を測定することにより測定されうる。この際、前記mRNA量は、例えば、配列番号:1もしくは配列番号:3で表される塩基配列またはそれらの一部を含有する核酸をプローブとして用いるノーザンブロット法やマイクロアレイ法、配列番号:1もしくは配列番号:3またはそれらの一部を含有する核酸をPCRプライマーとして用いるPCR法やRT−PCR法またはそれに準じる方法により測定されうる。一方、本工程において、REG1遺伝子の発現量(A1)を、当該遺伝子から発現するタンパク質量を測定することにより測定してもよい。この際、前記タンパク質量は、配列番号:2もしくは配列番号:4で表されるアミノ酸配列またはそれらの一部を認識する抗体を用いて、細胞抽出液中などに存在する前記タンパク質を、ウェスタンブロット法やELISA法、免疫組織化学法などの方法またはそれに準じる方法により測定されうる。ここで、遺伝子の「発現量」とは、遺伝子転写産物の絶対量または相対量をいい、相対量の場合は、後述する比較対象(例えば、正常組織/正常細胞)における発現量との相対的な比較において当該遺伝子の発現量を決定すればよい。なお、本工程において、発現量を測定する遺伝子はREG1A遺伝子またはREG1B遺伝子のいずれか一方のみであってもよいし、双方について発現量を測定し、癌細胞の治療感受性を総合的に判断してもよい。
本形態の「癌細胞の治療感受性の判定方法」では、続いて、上記工程において測定された発現量(A1)を、所定の発現量(A0)と比較する。ここで、「所定の発現量(A0)」とは、被検組織または被検細胞の治療感受性を判定する際の基準となる発現量であって、予め任意に設定可能な値である。「所定の発現量(A0)」を予め設定するにあたっては、本発明者らによって初めて見出された、「REG1遺伝子の発現量が癌細胞の治療感受性(例えば、放射線の照射や化学療法剤(抗癌剤)の投与など)に対して正の相関関係を示す」という知見が考慮される。すなわち、後述する工程において被検組織/被検細胞の治療感受性の有無・高低を判断する際に基準となるような、「この程度の発現量であれば『治療感受性がある』または『治療感受性が高い』」と判断される発現量を、所定の発現量(A0)として予め設定することができる。より具体的には、ある特定の組織や当該組織由来の細胞について、予めREG1遺伝子の発現量と治療感受性(放射線感受性および/または化学療法剤感受性)との相関関係を求めておき、これに基づいて所望の「所定の発現量(A0)」を設定することができる。
本形態の「癌細胞の治療感受性の判定方法」では、続いて、上記で行った比較の結果、発現量(A1)が発現量(A0)よりも有意に多いか否かを判断する。有意差の有無の判断手法について特に制限はなく、当業者に周知の統計学的手法が用いられうる。一例として、統計学的に「有意に多い」とは、有意水準0.05(5%)で帰無仮説H0が棄却されることを意味することが多い。そして、この判断の結果に基づき、前記被検組織または前記被検細胞の治療感受性を予測する。すなわち、発現量(A1)が発現量(A0)よりも有意に多い場合には、判定の対象となった被検組織/被検細胞について、「治療感受性がある」または「治療感受性が高い」と予測される。一方、発現量(A1)が発現量(A0)よりも有意に多くはない場合には、判定の対象となった被検組織/被検細胞について、「治療感受性があるとはいえない」または「治療感受性が高いとはいえない」と予測される。このような判定に基づくことで、より適切な治療方針の決定が促進されうる。例えば、本形態の判定方法によって化学療法および/または放射線治療に対する感受性が「ある(高い)」と判定された組織/細胞が由来とする癌病変を有する患者に対しては、化学療法および/または放射線治療を第1選択とした治療方針が決定されることになる。これにより、かような患者に対しては、肉体的・精神的負担を伴う外科的切除術を回避することが可能となり、当該患者にとってより負担や副作用リスクが少なくしかも有効な治療を提供することが可能となる。一方、本形態の判定方法によって化学療法および/または放射線治療に対する感受性が「ない(低い)」と判定された組織/細胞が由来とする癌病変を有する患者に対しては、化学療法/放射線治療以外の選択肢(例えば、外科的切除術)による治療を施すことで、有効ではないために副作用をもたらすばかりの無駄な投薬・放射線照射を回避することが可能となる。
(2)核酸プローブ/PCRプライマー
本発明の核酸は、上述した「癌細胞の治療感受性の判定方法」において、mRNA量を測定するための核酸プローブまたはPCRプライマーとして用いられうる。すなわち、本発明の第2の形態によれば、上述した判定方法においてmRNA量を測定するための核酸プローブまたはPCRプライマーとして用いられる、以下の(a)または(b)の核酸が提供される:
(a)配列番号:1もしくは配列番号:3で表される塩基配列の一部またはこれと相補的な塩基配列を有する核酸;
(b)配列番号:1もしくは配列番号:3で表される塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸またはこれと相補的な塩基配列を有する核酸。
本発明の核酸は、上述した「癌細胞の治療感受性の判定方法」において、mRNA量を測定するための核酸プローブまたはPCRプライマーとして用いられうる。すなわち、本発明の第2の形態によれば、上述した判定方法においてmRNA量を測定するための核酸プローブまたはPCRプライマーとして用いられる、以下の(a)または(b)の核酸が提供される:
(a)配列番号:1もしくは配列番号:3で表される塩基配列の一部またはこれと相補的な塩基配列を有する核酸;
(b)配列番号:1もしくは配列番号:3で表される塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸またはこれと相補的な塩基配列を有する核酸。
ここで、上記(a)または(b)の核酸は、上述した判定方法において、REG1遺伝子の発現量を当該遺伝子から発現するmRNA量を測定することにより測定する場合に用いられうる。上記核酸は、例えば、ノーザンブロット法やマイクロアレイ法における核酸プローブとして用いられうる。この際、上記核酸は、放射性同位元素などにより標識されたものであってもよい。また、上記核酸は、PCR法やRT−PCR法におけるPCRプライマーとしても用いられうる。REG1遺伝子の発現量を測定するためのこれらの手法は、本技術分野において周知の知見を参照することにより、行われうる。
(3)抗体
本発明のタンパク質に対する抗体は、上述した「癌細胞の治療感受性の判定方法」において、タンパク質量を測定するのに用いられうる。すなわち、本発明の第3の形態によれば、上述した判定方法においてタンパク質量を測定するために用いられる、配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質またはその部分ペプチドあるいはその薬学的に許容されうる塩に対する抗体が提供される。
本発明のタンパク質に対する抗体は、上述した「癌細胞の治療感受性の判定方法」において、タンパク質量を測定するのに用いられうる。すなわち、本発明の第3の形態によれば、上述した判定方法においてタンパク質量を測定するために用いられる、配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質またはその部分ペプチドあるいはその薬学的に許容されうる塩に対する抗体が提供される。
ここで、上記抗体は、上述した判定方法において、REG1遺伝子の発現量を当該遺伝子から発現するタンパク質量を測定することにより測定する場合に用いられうる。上記抗体を用いてREG1遺伝子の発現量を測定する具体的な手法について特に制限はなく、本技術分野において周知の知見が適宜参照されうる。一例としては、例えば、ウェスタンブロット法やELISA法、ラジオイムノアッセイ、「サンドイッチ」免疫検定法、免疫組織化学法、免疫沈降検定法、沈降素反応、ゲル拡散沈降素反応、免疫拡散検定法、凝集検定法、補体結合検定法、免疫放射線検定法、蛍光免疫検定法、プロテインA免疫検定法などの各種の競合的・非競合的な検定法な手法が挙げられる。
(4)癌細胞の治療感受性判定キット
本発明によれば、上述した第1の形態として提供される判定方法を実施するための、癌細胞の治療感受性判定キット(「本発明のキット」とも称する)もまた、提供されうる(第4の形態)。本発明の第4の形態に係る治療感受性判定キットは、REG1A遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子またはREG1B遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子の発現を測定する発現測定手段と、前記遺伝子の発現を検出する発現検出手段とを含む。
本発明によれば、上述した第1の形態として提供される判定方法を実施するための、癌細胞の治療感受性判定キット(「本発明のキット」とも称する)もまた、提供されうる(第4の形態)。本発明の第4の形態に係る治療感受性判定キットは、REG1A遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子またはREG1B遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子の発現を測定する発現測定手段と、前記遺伝子の発現を検出する発現検出手段とを含む。
本発明のキットにおいて、所定の遺伝子の発現を測定する発現測定手段としては特に制限はないが、例えば、上記所定の遺伝子の発現を測定するノーザンブロット法に用いられる核酸プローブ、上記所定の遺伝子を増幅するためのPCRプライマー、または、上記所定の遺伝子がプロットされてなるマイクロアレイが挙げられる。また、上記所定の遺伝子の発現を検出する発現検出手段についても特に制限はないが、例えば、ノーザンブロット用の核酸プローブを可視化するための蛍光標識試薬やラジオアイソトープ(RI)標識試薬などが挙げられる。その他、本技術分野において周知の知見が適宜参照されうる。
かようなキットを用いると、被検組織や被検細胞からゲノムDNAを抽出して塩基配列を確認することによって癌細胞の治療感受性を判定するという工程を経ることなく、簡易かつ迅速に癌細胞の治療感受性を判定することが可能となる。
(5)癌細胞の治療感受性の改善に有効な化合物の評価方法
上述したように、本発明者らによって、「REG1遺伝子(REG1A遺伝子およびREG1B遺伝子)の発現が癌治療(化学療法および放射線療法)に対する高い感受性に寄与している」という知見が初めて見出されている。かような知見に基づき、本発明によれば、癌細胞の治療感受性の改善に有効な化合物を評価するための方法もまた、提供されうる。すなわち、本発明の第5の形態に係る、癌細胞の治療感受性の改善に有効な化合物の評価方法は、被検動物または被検細胞に対して、被検化合物を投与しまたは接触させる工程と、前記被検動物または被検細胞における、REG1A遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子またはREG1B遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子の発現量(B1)をインビトロで測定する工程と、前記発現量(B1)を、被検化合物の投与または接触前における発現量(B0)と比較する工程と、比較した結果、前記発現量(B1)が前記発現量(B0)に対して有意に多いか否かを判断することによって、癌細胞の治療感受性の改善に対する前記被検化合物の有効性を評価する工程とを含む。以下、工程順に詳細に説明する。
上述したように、本発明者らによって、「REG1遺伝子(REG1A遺伝子およびREG1B遺伝子)の発現が癌治療(化学療法および放射線療法)に対する高い感受性に寄与している」という知見が初めて見出されている。かような知見に基づき、本発明によれば、癌細胞の治療感受性の改善に有効な化合物を評価するための方法もまた、提供されうる。すなわち、本発明の第5の形態に係る、癌細胞の治療感受性の改善に有効な化合物の評価方法は、被検動物または被検細胞に対して、被検化合物を投与しまたは接触させる工程と、前記被検動物または被検細胞における、REG1A遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子またはREG1B遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子の発現量(B1)をインビトロで測定する工程と、前記発現量(B1)を、被検化合物の投与または接触前における発現量(B0)と比較する工程と、比較した結果、前記発現量(B1)が前記発現量(B0)に対して有意に多いか否かを判断することによって、癌細胞の治療感受性の改善に対する前記被検化合物の有効性を評価する工程とを含む。以下、工程順に詳細に説明する。
まず、被検動物または被検細胞に対して、被検化合物を投与しまたは接触させる。ここで、被検化合物としては、癌の治療、予防または診断を目的とする薬剤の候補化合物であれば、その構造や性質は特に問われず、化合物種も限定されない。また、被検化合物を被検動物に投与する方法に特に制限はなく、その都度好適な投与方法を選択すればよい。例えば、経口投与、非経口投与(例えば、経皮投与、筋肉内注射、静脈内注射、皮下注射)が挙げられる。また、被検化合物を被検細胞に接触させる方法についても特に制限はなく、例えば、細胞と被検化合物とを培養液や緩衝液(例えば、リン酸緩衝液)等の溶液中で混合し、両者を接触させる方法が挙げられる。
続いて、被検動物または被検細胞における、REG1A遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子またはREG1B遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子の発現量(B1)をインビトロで測定する。当該遺伝子の発現量の測定方法について特に制限はなく、上記「(1)癌細胞の治療感受性の判定方法」の欄において上述した形態が同様に採用されうる。
その後、上記で測定した投与/接触後の発現量(B1)を、被検化合物の投与/接触前における発現量(B0)と比較する。すなわち、本工程では、測定対象の遺伝子の発現量について、投与/接触後の発現量(B1)が、投与/接触前の発現量(B0)よりも優位に多いか否かを判断する。有意差の有無の判断手法について特に制限はなく、当業者に周知の統計学的手法が用いられうる。そして、この判断の結果に基づき、癌細胞の治療感受性の改善に対する前記被検化合物の有効性を評価する。すなわち、発現量(B1)が発現量(B0)よりも有意に多い場合には、判定の対象となった被検化合物について、「癌細胞の治療感受性の改善に有効である」と予測される。一方、発現量(B1)が発現量(B0)よりも有意に多くはない場合には、判定の対象となった被検化合物について、「癌細胞の治療感受性の改善に有効であるとはいえない」と予測される。このような判定に基づくことで、簡易かつ迅速な手法により、癌細胞の治療感受性の改善に有効な化合物をスクリーニングすることが可能となる。
(6)癌細胞の治療感受性増強剤
上記(1)〜(5)では、被検組織/被検細胞の治療感受性を判定する目的で、REG1遺伝子をマーカーとして用いる技術が提供された。
上記(1)〜(5)では、被検組織/被検細胞の治療感受性を判定する目的で、REG1遺伝子をマーカーとして用いる技術が提供された。
ここで、本発明者らは、「REG1遺伝子(REG1A遺伝子およびREG1B遺伝子)の発現が癌治療(化学療法および放射線療法)に対する高い感受性に寄与している」という知見をさらに一歩発展させて、REG1遺伝子を被検組織/被検細胞に強制的に導入して高発現を誘導することを試みた。そして、かような高発現の誘導によって被検組織/被検細胞の癌治療に対する感受性を増強することができることをも見出したのである。そこで、以下では、かような知見に基づき提供されることとなった、本発明のタンパク質または本発明の核酸の治療感受性増強剤としての用途について、詳細に説明する。
本発明の第6の形態によれば、以下の(a)〜(c)の少なくとも1つを有効成分とする、癌細胞(好ましくは、食道扁平上皮癌などの扁平上皮癌の細胞)の治療感受性(例えば、放射線および/または抗癌剤に対する感受性)増強剤が提供される;
(a)配列番号:1または配列番号:3で表される塩基配列を有する核酸;
(b)配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質またはその部分ペプチドをコードする核酸;
(c)配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質またはその部分ペプチドあるいはその薬学的に許容されうる塩。
(a)配列番号:1または配列番号:3で表される塩基配列を有する核酸;
(b)配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質またはその部分ペプチドをコードする核酸;
(c)配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質またはその部分ペプチドあるいはその薬学的に許容されうる塩。
これらの治療感受性増強剤に有効成分として含まれる上記(a)〜(c)の具体的な形態については、上述したとおりであるため、ここでは詳細な説明を省略する。
本形態の治療感受性増強剤を用いる際には、上記(a)〜(c)の少なくとも1つを含む組成物を、治療を要する患者に対して、癌の治療(放射線治療および/または化学療法)前に、有効量(すなわち、適当な投与量)投与する。この際、配列番号:1で表される塩基配列を有する核酸および配列番号:3で表される塩基配列を有する核酸は、それぞれ単独で医薬組成物に含有されて投与されてもよいし、両方の合剤として医薬組成物に含有されて投与されてもよい。同様に、配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質またはその部分ペプチドをコードする核酸、および配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質またはその部分ペプチドをコードする核酸は、それぞれ単独で医薬組成物に含有されて投与されてもよいし、両方の合剤として医薬組成物に含有されて投与されてもよい。さらに、配列番号:2で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質またはその部分ペプチドあるいはその薬学的に許容されうる塩、および配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質またはその部分ペプチドあるいはその薬学的に許容されうる塩は、それぞれ単独で医薬組成物に含有されて投与されてもよいし、両方の合剤として医薬組成物に含有されて投与されてもよい。
上記の目的で本発明の核酸を放射線感受性増強剤として用いる場合には、当該核酸を遺伝子運搬に使用されるベクターに導入して、任意の発現プロモーターにより導入遺伝子として治療を要する患者の体内で発現させればよい。この際、配列番号:1で表される塩基配列を有する核酸および配列番号:3で表される塩基配列を有する核酸は、それぞれ単独で前記ベクターに導入されてもよいし、両方同時に導入されてもよい。前記核酸を導入するベクターは、好ましくは、DNAまたはRNAウイルスをもとに作製される。このようなウイルスベクターの種類は特に限定されないが、MoMLVベクター、ヘルペスウイルスベクター、アデノウイルスベクター、AAVベクター、HIVベクター、SIVベクター、センダイウイルスベクター等が挙げられる。
また、ウイルスベクターの構成タンパク質群のうち1つ以上を、異種ウイルスの構成タンパク質で置換する、あるいは、遺伝子情報を構成する核酸配列のうち一部を異種ウイルスの核酸配列で置換する、シュードタイプ型のウイルスベクターも用いられうる。例えば、HIVの外皮タンパク質であるEnvタンパク質を、小水痘性口内炎ウイルス(Vesicular stomatitis Virus:VSV)の外皮タンパク質であるVSV−Gタンパク質に置換したシュードタイプウイルスベクターが用いられうる(Naldini L等:Science 272 263−(1996))。
さらに、遺伝子導入を可能にするウイルスであれば、ヒト以外の宿主域を持つウイルスもウイルスベクターとして使用可能である。ウイルス由来でないベクターとしては、リン酸カルシウムと核酸の複合体、リポソーム、カチオン脂質複合体、センダイウイルスリポソーム、ポリカチオンを主鎖とする高分子キャリアー等が使用可能である。さらに、遺伝子導入系としてはエレクトロポレーション、遺伝子銃等も使用可能である。
上述したようなベクターに本発明の核酸を導入して遺伝子発現させるためには、発現プロモーターを備えた発現カセットを用いることが好ましい。用いられる発現カセットは、標的細胞内で遺伝子を発現させることができるものであれば特に制限されない。当業者であればそのような発現カセットを容易に選択することができるが、好ましくは、動物由来の細胞内で遺伝子発現が可能な発現カセットであり、より好ましくは、哺乳類由来の細胞内で遺伝子発現が可能な発現カセットであり、特に好ましくは、ヒト由来の細胞内で遺伝子発現が可能な発現カセットが選択される。前記発現カセットには、本発明の核酸のほか、遺伝子を転写するためのプロモーターやエンハンサー、ポリAシグナル、遺伝子が導入された細胞の標識および/または選別のためのマーカー遺伝子、細胞のゲノムDNA配列内に効率よく該遺伝子を挿入するためのウイルス由来の遺伝子配列、遺伝子発現により産生されるタンパク質を細胞外に分泌および/または細胞内の局所に滞留させるためのシグナル配列等、いかなる配列も用いられうる。
発現カセットに用いられるプロモーターとしては、例えばアデノウイルス、サイトメガロウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、シミアンウイルス40、ラウス肉腫ウイルス、単純ヘルペスウイルス、マウス白血病ウイルス、シンビスウイルス、A型肝炎ウイルス、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、パピローマウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、インフルエンザウイルス、日本脳炎ウイルス、JCウイルス、パルボウイルスB19、ポリオウイルス等のウイルス由来のプロモーター、アルブミン、SRα、熱ショック蛋白、エロンゲーション因子等の哺乳類由来のプロモーター、CAGプロモーター等のキメラ型プロモーター、テトラサイクリン、ステロイド等によって発現が誘導されるプロモーター等が挙げられる。
本発明の核酸およびタンパク質は、上述した治療感受性増強剤として用いられる場合、適当な医薬組成の形態として構成されうる。このため、該核酸等を下記の調剤方法に従い、製剤化し、好ましい投与経路を設定して、所望の治療感受性増強効果を達成するように投与量を決定することができる。
本発明の核酸またはタンパク質を含む医薬組成物は、特に限定されないが、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル内への被包、組換え細胞による発現、レセプター媒介飲食法、レトロウイルスまたは他のベクターの部分として医薬品への構築が可能である。
より具体的には、例えば、本発明の核酸を含む組換えウイルスベクターを、水、生理食塩水、等張化した緩衝液等の適当な溶媒に溶解することで本発明の核酸を含む組成物が調製されうる。また、本発明のタンパク質を、水、生理食塩水、等張化した緩衝液等の適当な溶媒に溶解することで本発明のタンパク質を含む組成物が調製されうる。この際、ポリエチレングリコール、グルコース、各種アミノ酸、コラーゲン、アルブミン等を保護材として添加して、組成物を調製してもよい。さらに、前記組成物は、所望により薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、安定化剤等を含み、これが好ましい場合が多い。これらの製剤化の助剤については、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16(1980)(Mack出版社)に詳細に記載されている。
本発明の核酸および/またはタンパク質を有効成分として含む医薬組成物は、適切な投与経路を設定して、患者に投与されると所望の治療線感受性増強効果をもたらす。医薬組成物を生体へ投与する際の投与方法については、特に制限はない。しかし、皮膚内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内へ注射投与することが好ましい。または、連続して、血流内に投与できるように注入等の他の投与方法も好ましく採用されうる。特に好ましい投与の形態は、静脈内への投与である。本発明の医薬組成物の投与量は、投与経路、投与を受ける患者の状態、年齢、体重、性別、その他により異なるが、処置する医者は、該患者に最適な投与量を決定することが可能である。例えば、注射投与する場合には、1日用量約0.1μg/kg〜1000mg/kgを投与することが好ましく、より好ましくは、1日用量約1μg/kg〜100mg/kgである。
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
REG1Aタンパク質をコードするDNA(CDS)の塩基配列を示す。
〔配列番号:2〕
REG1Aタンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:3〕
REG1Bタンパク質をコードするDNA(CDS)の塩基配列を示す。
〔配列番号:4〕
REG1Bタンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:5〕
ヒトREG1α遺伝子の増幅に用いたフォワードプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:6〕
ヒトREG1α遺伝子の増幅に用いたリバースプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:7〕
ヒトGAPDH遺伝子の増幅に用いたフォワードプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:8〕
ヒトGAPDH遺伝子の増幅に用いたリバースプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:1〕
REG1Aタンパク質をコードするDNA(CDS)の塩基配列を示す。
〔配列番号:2〕
REG1Aタンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:3〕
REG1Bタンパク質をコードするDNA(CDS)の塩基配列を示す。
〔配列番号:4〕
REG1Bタンパク質のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:5〕
ヒトREG1α遺伝子の増幅に用いたフォワードプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:6〕
ヒトREG1α遺伝子の増幅に用いたリバースプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:7〕
ヒトGAPDH遺伝子の増幅に用いたフォワードプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:8〕
ヒトGAPDH遺伝子の増幅に用いたリバースプライマーの塩基配列を示す。
以下、実施例および参考例により本発明をより具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されない。
実施例1:インビトロでの基礎的検討
インビトロでの基礎的検討として、食道扁平上皮癌細胞系であるTE−4、TE−5、TE−9、およびTE−12の4種の細胞系を用い、REG1α遺伝子の発現と、化学療法および/または放射線療法後の生存率との相関性の有無を検討した。なお、これらの細胞系はいずれも、東北大学加齢医学研究所附属医用細胞資源センターより入手したものである。
インビトロでの基礎的検討として、食道扁平上皮癌細胞系であるTE−4、TE−5、TE−9、およびTE−12の4種の細胞系を用い、REG1α遺伝子の発現と、化学療法および/または放射線療法後の生存率との相関性の有無を検討した。なお、これらの細胞系はいずれも、東北大学加齢医学研究所附属医用細胞資源センターより入手したものである。
本実施例においては、RT−PCR(逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応法)により各細胞系におけるREG1α mRNAの発現量を測定し、また、免疫組織化学法により各細胞系におけるREG1αタンパク質の発現量を測定した。具体的な手法は以下の通りである。
(RT−PCR法)
各細胞系から、ISOGEN(株式会社ニッポンジーン社製)を用いて全RNAを単離した。次いで、当該全RNAの1μgのサンプルからSuperScriptIII逆転写酵素キット(インビトロジェン社製)を用いてcDNAを逆転写した。その後、Platinum Taq DNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)を用いてPCRを行った。PCRの際に用いたプライマーの塩基配列は以下の通りである:
(ヒトREG1α)
フォワード:5’−AACATGAATTCGGGCAACC−3’(配列番号:5)
リバース:5’−AGGAGAACTTGTCTTCACAA−3’(配列番号:6)
(ヒトGAPDH)
フォワード:5’−CGGAGTCAACGGATTTGGTCGTAT−3’(配列番号:7)
リバース:5’−AGCCTTCTCCATGGTGGTGAAGAC−3’(配列番号:8)
増幅物を1.5%アガロースゲル電気泳動に供し、臭化エチジウムを用いて染色することで、各細胞系におけるREG1α mRNAの発現を確認した。その結果を図1に示す。図1に示すように、陽性対照であるAGS以外ではTE−12のみでREG1α mRNAの発現が確認された。
各細胞系から、ISOGEN(株式会社ニッポンジーン社製)を用いて全RNAを単離した。次いで、当該全RNAの1μgのサンプルからSuperScriptIII逆転写酵素キット(インビトロジェン社製)を用いてcDNAを逆転写した。その後、Platinum Taq DNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)を用いてPCRを行った。PCRの際に用いたプライマーの塩基配列は以下の通りである:
(ヒトREG1α)
フォワード:5’−AACATGAATTCGGGCAACC−3’(配列番号:5)
リバース:5’−AGGAGAACTTGTCTTCACAA−3’(配列番号:6)
(ヒトGAPDH)
フォワード:5’−CGGAGTCAACGGATTTGGTCGTAT−3’(配列番号:7)
リバース:5’−AGCCTTCTCCATGGTGGTGAAGAC−3’(配列番号:8)
増幅物を1.5%アガロースゲル電気泳動に供し、臭化エチジウムを用いて染色することで、各細胞系におけるREG1α mRNAの発現を確認した。その結果を図1に示す。図1に示すように、陽性対照であるAGS以外ではTE−12のみでREG1α mRNAの発現が確認された。
(免疫組織化学法)
TE−5、TE−9、およびTE−12、並びにAGS(陽性対照)の各細胞系におけるREG1αタンパク質の発現を確認する目的で、Dako Cytomation Envision+system−HRP(ダコ社製)を用いて免疫組織化学染色を行った。具体的には、これらの各細胞系を24プレート中で48時間培養し、次いで4%パラホルムアルデヒドを含有するTBSで10分間固定した。この細胞を3%過酸化水素溶液中で10分間インキュベートすることにより内因性ペルオキシダーゼの活性をブロックし、さらにこの細胞を1%BSA中で60分間インキュベートすることにより非特異的なタンパク質の結合をブロックした。その後、細胞を抗ヒトREG1モノクローナル抗体(TBSで1:100に希釈、17.2μg/mL)とともに4℃にて一晩インキュベートし、次いでEnvision Plus試薬(ダコ社製)とともに60分間インキュベートした。次いで、この細胞を基質−クロモゲン溶液中で10分間インキュベートすることにより、シグナルを現像した。最後に、封入剤を数秒間アプライした(VectaMount、ベクター ラボラトリーズ社製)。得られた免疫複合体を、共焦点レーザ走査型顕微鏡(MRC−2000、バイオラッド社製)を用いて観察した。その結果、陽性対照であるAGS以外ではTE−12のみにおいて、REG1タンパク質の発現が確認された。
TE−5、TE−9、およびTE−12、並びにAGS(陽性対照)の各細胞系におけるREG1αタンパク質の発現を確認する目的で、Dako Cytomation Envision+system−HRP(ダコ社製)を用いて免疫組織化学染色を行った。具体的には、これらの各細胞系を24プレート中で48時間培養し、次いで4%パラホルムアルデヒドを含有するTBSで10分間固定した。この細胞を3%過酸化水素溶液中で10分間インキュベートすることにより内因性ペルオキシダーゼの活性をブロックし、さらにこの細胞を1%BSA中で60分間インキュベートすることにより非特異的なタンパク質の結合をブロックした。その後、細胞を抗ヒトREG1モノクローナル抗体(TBSで1:100に希釈、17.2μg/mL)とともに4℃にて一晩インキュベートし、次いでEnvision Plus試薬(ダコ社製)とともに60分間インキュベートした。次いで、この細胞を基質−クロモゲン溶液中で10分間インキュベートすることにより、シグナルを現像した。最後に、封入剤を数秒間アプライした(VectaMount、ベクター ラボラトリーズ社製)。得られた免疫複合体を、共焦点レーザ走査型顕微鏡(MRC−2000、バイオラッド社製)を用いて観察した。その結果、陽性対照であるAGS以外ではTE−12のみにおいて、REG1タンパク質の発現が確認された。
(化学療法剤/放射線処理)
上記で分類されたTE−5、TE−9、およびTE−12の各細胞系に対して、化学療法および/または放射線療法を模した環境に曝露し、それに対する感受性を評価した。具体的には、まず、96ウェルプレートに細胞を1×103細胞/ウェルの濃度で播種し、37℃にて24時間インキュベートした。その後、放射線療法を想定した単独環境として、放射線を5Gyまたは10Gy照射した。一方、化学療法を想定した単独環境として、化学療法剤(抗癌剤)であるシスプラチン(CDDP)を1μMまたは10μMの濃度で添加した。さらに、化学放射線療法(CRT)を想定した併用環境として、放射線を5Gy照射し、CDDP1μMまたは10μMを放射線照射と同時に添加した。
上記で分類されたTE−5、TE−9、およびTE−12の各細胞系に対して、化学療法および/または放射線療法を模した環境に曝露し、それに対する感受性を評価した。具体的には、まず、96ウェルプレートに細胞を1×103細胞/ウェルの濃度で播種し、37℃にて24時間インキュベートした。その後、放射線療法を想定した単独環境として、放射線を5Gyまたは10Gy照射した。一方、化学療法を想定した単独環境として、化学療法剤(抗癌剤)であるシスプラチン(CDDP)を1μMまたは10μMの濃度で添加した。さらに、化学放射線療法(CRT)を想定した併用環境として、放射線を5Gy照射し、CDDP1μMまたは10μMを放射線照射と同時に添加した。
(細胞増殖の評価;MTTアッセイ)
上記で処理された各細胞系およびそれぞれについて上記処理を行なわなかったコントロールについて、MTTアッセイにより細胞増殖(生存率)を評価した。
上記で処理された各細胞系およびそれぞれについて上記処理を行なわなかったコントロールについて、MTTアッセイにより細胞増殖(生存率)を評価した。
具体的には、上記処理後72時間さらにインキュベーションを行った後、培地に5.5mg/mL濃度のMTT(3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)を10μL添加し、37℃にて4時間インキュベートした。その後、抽出溶液(40%N,N−ジメチルホルムアミド、2%酢酸、20%SDS、および0.03N HCl)90μLを添加し、室温にて2時間インキュベートした。そして、マイクロプレートリーダー(モデル550、バイオラッド社製)により波長570nmにおける吸光度を測定することで、細胞の増殖(生存率)を評価した。
(結果)
以上の手法により評価を行った結果を図2〜図4に示す。図2は、放射線療法を想定した単独環境に各細胞系を曝露した結果を示すグラフである。図2に示すように、REG1α陽性細胞であるTE−12は、同陰性細胞であるTE−5およびTE−9のそれぞれに対して、5Gyおよび10Gyの2水準ともに、有意水準1%で有意に高い感受性を示した。
以上の手法により評価を行った結果を図2〜図4に示す。図2は、放射線療法を想定した単独環境に各細胞系を曝露した結果を示すグラフである。図2に示すように、REG1α陽性細胞であるTE−12は、同陰性細胞であるTE−5およびTE−9のそれぞれに対して、5Gyおよび10Gyの2水準ともに、有意水準1%で有意に高い感受性を示した。
図3は、化学療法を想定した単独環境に各細胞系を曝露した結果を示すグラフである。図3に示すように、REG1α陽性細胞であるTE−12は、同陰性細胞であるTE−5およびTE−9のそれぞれに対して、CDDPの濃度が1μMの場合に、有意水準5%で有意に高い感受性を示した。
図4は、化学放射線療法(CRT)を想定した併用環境に各細胞系を曝露した結果を示すグラフである。図4に示すように、REG1α陽性細胞であるTE−12は、同陰性細胞であるTE−5およびTE−9のそれぞれに対して、CDDPの濃度が1μMの場合に、有意水準5%で有意に高い感受性を示した。
このように、REG1α陽性細胞は、放射線療法および化学療法のそれぞれの単独環境下、並びにこれらの併用環境下のいずれに対しても、REG1α陰性細胞と比較して高い生存率を示し、治療感受性が高いことが確認された。
(放射線処理によるアポトーシス活性の評価;カスパーゼ−3アッセイ)
上述した4種の細胞系について、5Gyの放射線照射処理によるアポトーシスの活性化の程度を評価することを目的として、以下の手法によりカスパーゼ−3アッセイを行った。
上述した4種の細胞系について、5Gyの放射線照射処理によるアポトーシスの活性化の程度を評価することを目的として、以下の手法によりカスパーゼ−3アッセイを行った。
CPP32 Colorimetric Assay Kit(クローンテック社製)を改変したキットを用いて、アポトーシス経路における重要な初期のイベントであるCPP32プロテアーゼ(カスパーゼ−3)の活性を測定した。溶解バッファ(5mL/100mg肝)中で細胞を超音波処理し、氷上で10分間インキュベートし、次いで、4℃にて150×gで3分間遠心分離した。上清をインキュベートし、10mMのジチオスレイトールおよび5μMの基質を含有する反応バッファ50μLと混合して、37℃にて1時間インキュベートした。得られたサンプルの光学濃度を405nmでの分光光度法により測定した。その結果を図4に示す。図4に示すように、REG1α陽性細胞であるTE−12においては、同陰性細胞であるTE−5およびTE−9のそれぞれと比較して、有意水準0.5%で有意にカスパーゼ−3の活性が亢進していることが示された。このことから、REG1α陽性細胞が示す高い治療感受性は、アポトーシス活性の亢進によるものであることが推測される。
実施例2:インビトロでのREG1α遺伝子の導入
上記と同様のTE−5細胞系およびTE−9細胞系にREG1α遺伝子を導入(トランスフェクション)し、当該遺伝子の発現を強制的に誘導した。具体的には、配列番号:1で表される塩基配列を有するcDNA断片を、pCI−neo哺乳動物発現ベクター(プロメガ社製)のXhoI/XBaI部位に挿入し、発現ベクターを構築した。次いで、上記で構築した発現ベクターまたは挿入cDNAを含まないコントロールベクターをそれぞれエレクトロポレーション法により上記細胞系に導入し、次いで2週間インキュベートして、REG1α遺伝子を安定発現する細胞系を得た。
上記と同様のTE−5細胞系およびTE−9細胞系にREG1α遺伝子を導入(トランスフェクション)し、当該遺伝子の発現を強制的に誘導した。具体的には、配列番号:1で表される塩基配列を有するcDNA断片を、pCI−neo哺乳動物発現ベクター(プロメガ社製)のXhoI/XBaI部位に挿入し、発現ベクターを構築した。次いで、上記で構築した発現ベクターまたは挿入cDNAを含まないコントロールベクターをそれぞれエレクトロポレーション法により上記細胞系に導入し、次いで2週間インキュベートして、REG1α遺伝子を安定発現する細胞系を得た。
得られたREG1α陽性細胞およびコントロール細胞について、上述した実施例1と同様の手法により、MTTアッセイを用いた細胞増殖(生存率)の評価を行った。
その結果、REG1α遺伝子を強制的に導入したREG1α陽性細胞は、放射線療法および化学療法のそれぞれの単独環境下、並びにこれらの併用環境下のいずれに対しても、コントロール細胞と比較して有意に高い生存率を示した。このことから、REG1α遺伝子を強制発現させることは、癌細胞の治療感受性を増強させることにつながることが示された。
実施例3:インビボでの臨床的検討
本実施例では、インビボでの臨床的検討を行った。なお、本検討は、秋田大学医学部倫理委員会で承認され、実施されたものである。
本実施例では、インビボでの臨床的検討を行った。なお、本検討は、秋田大学医学部倫理委員会で承認され、実施されたものである。
対象患者は、2003年から2005年の間に秋田大学病院において継続的に化学放射線療法を施した62名の患者のうち、化学療法および45Gy(総量の75%)以上の放射線療法を同時に施行し、生検標本からパラフィン標本を良好な状態で得られた42名の患者である。なお、すべての患者は内視鏡下での生検組織に基づいて扁平上皮細胞食道扁平上皮癌であると診断された。すべての患者に関して、食道扁平上皮癌のステージおよび治療方針は、放射線研究者、医師、および外科医からなる検討会で決定された。なお、ステージの分類は、Malignant Tumors(第6版)のUICC国際対癌連合の腫瘍ノード転移(TNM)分類に従った。
まず、パラフィン標本の作製にあたり、治療前段階で内視鏡的組織摘出を施行した。次いで、得られた食道扁平上皮癌脱パラフィン標本を、121℃にて15分間オートクレーブ処理した。次いで、0.3%の過酸化水素を含むメタノール溶液を用いて室温にて30分間、さらに10%BSA/TBSを用いて室温にて30分間ブロックした。その後、PBS中の抗ヒトREG1αポリクローナル抗体(1:400希釈、2.5μg/mL、バイオベンダー ラボラトリー メディスン、チェコ)とともに4℃にて一晩インキュベートした。その後、Envision(Dako Corporation、デンマーク)とともに30分間インキュベートし、DAB(株式会社同仁科学研究所社製)と2分間反応させた。最後に、切片を30秒間、マイヤーのヘマトキシリンで対比染色した。なお、コントロールとして、抗ヒトREG1αポリクローナル抗体による処理を行なわないサンプルを作製した。染色の結果、目視による観察において染色領域が10%以上のサンプルをREG1α陽性と分類し、10%未満のサンプルをREG1α陰性と分類した。この染色領域の判定は、1名の病理学者および2名の外科医によって行われた。
下記の表1に、化学放射線療法(CRT)を行った症例におけるREG1αの発現と臨床所見との相関性を示す。表1に示すように、免疫組織化学法による評価の結果、42名の患者のうち23名がREG1α陽性(REG positive)であり、19名がREG1α陰性(REG negative)であった。なお、これらの2つのグループ(REG1α陽性およびREG1α陰性)間で各種の病態パラメーター(年齢(Age (years, Averages±SD))から追加化学療法(Additional Chemotherapy)まで)を比較したが、有意確率(P value)が0.7907〜0.0554であり、いずれも0.05よりも大きく、有意水準5%で有意差はないと判断された。
一方、それらの化学放射線療法感受性(化学放射線療法によって引き起こされた完治比=Clinical response for CRT)については、有意確率(P value)が0.0268であり、0.05よりも小さいため帰無仮説は棄却され、有意水準5%で有意差ありと判断された。つまり、REG1α陽性の患者については、化学放射線療法が奏功する確率が有意に高いことが示されたのである。
その詳細は、表1から明らかなように、23名のREG1α陽性患者のうち、8名(35%)は根治的化学放射線療法によって完治(Complete Response(CR))に至った。一方、19名のREG1α陰性患者では、完治(CR)に至ったのは1名(5%)のみであった。
図5および図6に、化学放射線療法を行ったREG1α陽性患者および化学放射線療法を行ったREG1α陰性患者のそれぞれの生存率の変化を表すグラフを示す。なお、図5において、縦軸はすべての死因の総計(総合的死因)に対する生存率(Overall survival rate)であり、横軸は月数(Time(months))である。また、図6において、縦軸は死因が食道扁平上皮癌である場合のみに対する生存率(Esophageal cancer-specific survival rate)であり、横軸は月数である。
この図5および図6を比較すると、総合的死因に対する生存率および食道扁平上皮癌のみの死因による生存率のいずれにおいても、REG1α陽性患者の生存率はREG1α陰性患者の生存率よりも有意に高かった。実際に、REG1α陰性患者のほとんど(95%)は診断後12カ月以内に死亡したが、REG1α陽性患者23名のうち10名(43%)は診断後少なくとも2年間生存していた。
さらに表1においてこれらの調査結果と、年齢・腫瘍部位(Tumor location (上部対中間部または下部))・侵潤の深度(Depth of invasion (T2-3対T4))、リンパ節転移(Lymph node metastasis (N1対N0))、遠隔転移(Distant metastasis (M0対M1))・腫瘍分化度(Tumor differentiation(低分化対非低分化(中・高分化)))・臨床病期(Clinical stage (ステージII-III対IV))、およびREG1αの発現(陽性対陰性)の一変量および多変量解析と一致していた。以上のことから、REG1αの発現が、化学放射線療法を施行した食道扁平上皮癌患者の重要な予後因子であることが示される。
参考例:外科的手術とREG1α発現との関係
表1、図5〜図6には直接記載されてはいないが、外科的摘出術を施された76名の食道扁平上皮癌患者を対象として、外科的手術の予後とREG1α発現との関係を検討した。なお、上述した患者76名のうち、外科的摘出術のみを施された患者は21名(28%)であり、癌再発のために補助的に化学療法または追加化学療法を施された患者は55名(72%)であった。
表1、図5〜図6には直接記載されてはいないが、外科的摘出術を施された76名の食道扁平上皮癌患者を対象として、外科的手術の予後とREG1α発現との関係を検討した。なお、上述した患者76名のうち、外科的摘出術のみを施された患者は21名(28%)であり、癌再発のために補助的に化学療法または追加化学療法を施された患者は55名(72%)であった。
これらの患者76名を、上述したのと同様の免疫組織化学法によって分類したところ、REG1α陽性患者が54名(71%)、REG1α陰性患者が22名(29%)であった。これらの2つの群間で、臨床病態パラメーターにおける有意な差は見られなかった。また、総合的死因や食道扁平上皮癌のみの死因による生存率からも、REG1α陽性患者とREG1α陰性患者との間で有意な差は見られなかった。
Claims (19)
- 被検組織または被検細胞における、REG1A遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子またはREG1B遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子の発現量(A1)を測定する工程と、
前記発現量(A1)と、所定の発現量(A0)とを比較する工程と、
比較した結果、前記発現量(A1)が前記発現量(A0)よりも有意に多いか否かを判断することによって、前記被検組織または前記被検細胞の治療感受性を予測する工程と、
を含む、癌細胞の治療感受性の判定方法。 - 前記発現量(A1)を、前記遺伝子から発現するmRNA量を測定することにより測定する、請求項1に記載の判定方法。
- 前記mRNA量をノーザンブロット法により測定する、請求項2に記載の判定方法。
- 前記発現量(A1)を、前記遺伝子から発現するタンパク質量を測定することにより測定する、請求項1に記載の判定方法。
- 前記タンパク質量をウェスタンブロット法により測定する、請求項4に記載の判定方法。
- 前記治療感受性が、放射線および/または化学療法剤に対する感受性である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の判定方法。
- 前記癌が扁平上皮癌である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の判定方法。
- 前記扁平上皮癌が食道扁平上皮癌である、請求項7に記載の判定方法。
- 請求項2または3に記載のmRNA量を測定するための核酸プローブまたはPCRプライマーとして用いられる、以下の(a)または(b)の核酸:
(a)配列番号:1もしくは配列番号:3で表される塩基配列の一部またはこれと相補的な塩基配列を有する核酸;
(b)配列番号:1もしくは配列番号:3で表される塩基配列からなる核酸とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸またはこれと相補的な塩基配列を有する核酸。 - 請求項4または5に記載のタンパク質量を測定するために用いられる、配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質またはその部分ペプチドあるいはその薬学的に許容されうる塩に対する抗体。
- REG1A遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子またはREG1B遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子の発現を測定する発現測定手段と、
前記遺伝子の発現を検出する発現検出手段と、
を含む、癌細胞の治療感受性判定キット。 - 前記発現測定手段が、マイクロアレイまたはPCR用プライマーである、請求項11に記載のキット。
- 被検動物または被検細胞に対して、被検化合物を投与しまたは接触させる工程と、
前記被検動物または被検細胞における、REG1A遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子またはREG1B遺伝子もしくはこれと機能的に等価な遺伝子の発現量(B1)をインビトロで測定する工程と、
前記発現量(B1)を、被検化合物の投与または接触前における発現量(B0)と比較する工程と、
比較した結果、前記発現量(B1)が前記発現量(B0)に対して有意に多いか否かを判断することによって、癌細胞の治療感受性の改善に対する前記被検化合物の有効性を評価する工程と、
を含む、癌細胞の治療感受性の改善に有効な化合物の評価方法。 - 配列番号:1または配列番号:3で表される塩基配列を有する核酸を有効成分とする、癌細胞の治療感受性増強剤。
- 配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質またはその部分ペプチドをコードする核酸を有効成分とする、癌細胞の治療感受性増強剤。
- 配列番号:2または配列番号:4で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含むタンパク質またはその部分ペプチドあるいはその薬学的に許容されうる塩を有効成分とする、癌細胞の治療感受性増強剤。
- 前記治療感受性が、放射線および/または化学療法剤に対する感受性である、請求項14〜16のいずれか1項に記載の治療感受性増強剤。
- 前記癌が扁平上皮癌である、請求項14〜17のいずれか1項に記載の治療感受性増強剤。
- 前記扁平上皮癌が食道扁平上皮癌である、請求項18に記載の治療感受性増強剤。
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Cited By (5)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2013122383A (ja) * | 2011-12-09 | 2013-06-20 | Kochi Univ | 膀胱癌の測定方法、または癌治療後の予後の判定方法 |
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| JP2020173528A (ja) * | 2019-04-09 | 2020-10-22 | 日本電気株式会社 | 学習装置、学習方法、及び制御プログラム |
| US10881680B2 (en) | 2012-09-06 | 2021-01-05 | Epizyme, Inc. | Method of treating leukemia |
| WO2023284579A1 (zh) * | 2021-07-14 | 2023-01-19 | 深圳市盛波尔生命科学技术有限责任公司 | 针对再生胰岛衍生蛋白1α的抗体组合以及包含其的检测试剂盒 |
-
2009
- 2009-07-22 JP JP2009171403A patent/JP2010046057A/ja active Pending
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