JP2009208119A - ナットの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ナット素材の下穴にタップのねじ加工部をねじ込んで同下穴の内周面に雌ねじを形成する際、その雌ねじの形成初期に同雌ねじのねじ山に変形が生じたり、上記ねじ加工部に設けられた形成歯に変形が生じたりすることを抑制できるようにする。
【解決手段】ナット素材21における喰付部24の傾斜角度θを15°以下とすることにより、転造タップ11を用いたナット素材21への雌ねじの形成初期における同タップ11の形成歯12による上記喰付部24への喰い付きが小さくなる。その結果、形成歯12により喰付部24に雌ねじを形成するための転造タップ11の回転方向に作用するトルクが大きくなることは抑制され、ひいては回転する同タップ11の形成歯12が上記のように喰い付いた喰付部24に対し軸線方向に強く押しつけられることが抑制される。従って、その押しつけに起因するねじ山の変形や形成歯12の変形が抑制される。
【選択図】図3
【解決手段】ナット素材21における喰付部24の傾斜角度θを15°以下とすることにより、転造タップ11を用いたナット素材21への雌ねじの形成初期における同タップ11の形成歯12による上記喰付部24への喰い付きが小さくなる。その結果、形成歯12により喰付部24に雌ねじを形成するための転造タップ11の回転方向に作用するトルクが大きくなることは抑制され、ひいては回転する同タップ11の形成歯12が上記のように喰い付いた喰付部24に対し軸線方向に強く押しつけられることが抑制される。従って、その押しつけに起因するねじ山の変形や形成歯12の変形が抑制される。
【選択図】図3
Description
本発明は、ナットの製造方法に関する。
従来より、内周面に雌ねじを備えたナットを製造する際には、その雌ねじを形成するために以下のような作業が行われる。すなわち、ナット素材に形成された下穴の一端からタップのねじ加工部を挿入し、そのタップを軸線周りに回転させつつ上記下穴の他端に向けて軸線方向に変位させる。このタップのねじ加工部には雌ねじを形成するための形成歯が設けられており、上述したようにタップを回転させつつ下穴の他端部に向けて変位させると、上記形成歯によってナット素材の内周面に雌ねじが形成される。
このように形成された雌ねじの始端部(下穴の一端側の端部)は、ねじ山の形状が不完全となる不完全ねじ部になる。こうした不完全ねじ部に対しボルト等が斜めにねじ込まれると、かじり等を招くおそれがあることから、その対策としてナット素材を特許文献1に示されるような構造とすることが提案されている。
同文献では、ナット素材に形成された下穴の内周面における同下穴の一端から挿入される上記タップのねじ加工部と接触する部分(入口端部)が、上記下穴の一端に向かうほど拡径するテーパ状に形成されるとともに、そのテーパ状をなす入口端部の上記軸線に対する傾斜角度(フランク角)が60°〜90°の範囲内の値に設定されている。このようにフランク角を設定することで、ナット素材の下穴における上記雌ねじの始端部に対応する部分に余肉が与えられるため、上記雌ねじにおける不完全ねじ部が小さくされるようになる。その結果、上述したかじり等の不具合が発生しにくくなる。
特開2002−227817公報(段落[0007]、図3、図4)
ところで、タップのねじ加工部をナット素材の下穴の一端から挿入し、そのタップを回転させつつ下穴の他端に向けて変位させると、上記ねじ加工部の形成歯がナット素材の下穴の内周面に喰い付き始め、同内周面への雌ねじの形成が開始される。こうした下穴の内周面への雌ねじの形成初期においては、上記形成歯の下穴の内周面への喰い付きが始まった後、その形成歯により下穴の内周面に雌ねじを形成するためのタップの回転方向に作用するトルクが大きくなる。このようにタップの回転方向に作用するトルクが大きくなるということは、回転する同タップのねじ加工部に設けられた形成歯が上記のように喰い付いた下穴の内周面に対し軸線方向により強く押しつけられることを意味する。そして、タップの形成歯が下穴の内周面に対し軸線方向に強く押しつけられると、同内周面に形成された雌ねじのねじ山が変形したり、タップの形成歯が変形したりするという不具合が生じるおそれがある。
本発明はこのような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ナット素材の下穴にタップのねじ加工部をねじ込んで同下穴の内周面に雌ねじを形成する際、その雌ねじの形成初期に同雌ねじのねじ山に変形が生じたり、上記ねじ加工部に設けられた形成歯に変形が生じたりすることを抑制できるナットの製造方法を提供することにある。
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、ナット素材に形成された下穴の一端からタップのねじ加工部を挿入し、そのタップを軸線周りに回転させつつ前記下穴の他端に向けて軸線方向に変位させることにより、前記タップのねじ加工部に設けられた形成歯で前記ナット素材の内周面に雌ねじを形成するナットの製造方法において、前記下穴の内周面における同下穴の一端から挿入される前記タップのねじ加工部と最初に接触する部分に、前記下穴の一端に向かうほど拡径するテーパ状の喰付部を形成し、その喰付部における前記軸線に対する傾斜角度を15°以下とした。
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明では、ナット素材に形成された下穴の一端からタップのねじ加工部を挿入し、そのタップを軸線周りに回転させつつ前記下穴の他端に向けて軸線方向に変位させることにより、前記タップのねじ加工部に設けられた形成歯で前記ナット素材の内周面に雌ねじを形成するナットの製造方法において、前記下穴の内周面における同下穴の一端から挿入される前記タップのねじ加工部と最初に接触する部分に、前記下穴の一端に向かうほど拡径するテーパ状の喰付部を形成し、その喰付部における前記軸線に対する傾斜角度を15°以下とした。
上記方法によれば、ナット素材の下穴にテーパ状の喰付部が形成され、その喰付部の傾斜角度がタップ(下穴)の軸線に対し15°とされるため、タップのねじ加工部の形成歯による上記下穴の内周面(喰付部)へのねじ山の形成初期において、上記形成歯の同喰付部への喰い付きが小さくなる。従って、形成歯による上記ねじ山の形成初期に、その形成歯により喰付部に雌ねじを形成するためのタップの回転方向に作用するトルクが小さく抑えられ、同トルクが大きくなることは抑制される。このようにタップの回転方向に作用するトルクが小さく抑えられるということは、回転する同タップのねじ加工部に設けられた形成歯が上記のように喰い付いた喰付部に対し軸線方向に強く押しつけられることが抑制されることを意味する。このため、タップの形成歯が喰付部に対し軸線方向に強く押しつけられることに起因して、同喰付部に形成された雌ねじのねじ山が変形したり、タップの形成歯が変形したりするという不具合が生じることを抑制できるようになる。
請求項2記載の発明では、請求項1記載のナットの発明において、前記タップのねじ加工部にバックテーパを設け、そのバックテーパを25mmの軸線方向変位につき0.06mm以上の外径変化を有するものとした。
上記方法によれば、タップのねじ加工部にバックテーパが設けられ、そのバックテーパが25mmの軸線方向変位につき0.06mm以上の外径変化を有するものとされているため、タップのねじ加工部の形成歯による上記下穴の内周面(喰付部)へのねじ山の形成初期において、上記形成歯の同喰付部への喰い付きが一層小さくなる。従って、形成歯による上記ねじ山の形成初期に、その形成歯により喰付部に雌ねじを形成するためのタップの回転方向に作用するトルクを一層小さく抑えることができ、回転する同タップのねじ加工部に設けられた形成歯が上記のように喰い付いた喰付部に対し軸線方向に強く押しつけられることをより的確に抑制することができる。このため、タップの形成歯が喰付部に対し軸線方向に強く押しつけられることに起因して、同喰付部に形成された雌ねじのねじ山が変形したり、タップの形成歯が変形したりするという不具合が生じることを一層的確に抑制できるようになる。
[第1実施形態]
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1〜図8に従って説明する。
内周面に雌ねじを備えたナットを製造する際には、その雌ねじを形成するために図1に示される加工装置1が用いられる。この加工装置1を用いることにより、上記ナットにおける雌ねじを形成する前の部材であるナット素材21に対し、同雌ねじが形成されることととなる。なお、上記ナット素材21は、上記雌ねじを形成予定の内周面を有する下穴22を備えている。
以下、本発明を具体化した第1実施形態を図1〜図8に従って説明する。
内周面に雌ねじを備えたナットを製造する際には、その雌ねじを形成するために図1に示される加工装置1が用いられる。この加工装置1を用いることにより、上記ナットにおける雌ねじを形成する前の部材であるナット素材21に対し、同雌ねじが形成されることととなる。なお、上記ナット素材21は、上記雌ねじを形成予定の内周面を有する下穴22を備えている。
加工装置1においては、その基台2上にナット素材21を固定するための固定部3が設けられている。また、基台2上の固定部3の側方に位置する装置本体4には同固定部3の上方にて上下方向に往復移動可能な保持部5が設けられ、その保持部5には上記ナット素材21に雌ねじを形成するための転造タップ11及び同転造タップ11をその軸線周りに回転させる電動モータ7が設けられている。なお、転造タップ11は、保持部5に対し取り外し可能となっており、同保持部5に取り付けられた状態にあっては電動モータ7の出力軸と一体回転可能に連結される。また、転造タップ11は、ナット素材21における下穴22の内周面に上記雌ねじを形成するための複数の形成歯12を備えている。一方、ナット素材21を固定する固定部3に関しては、同ナット素材21(下穴22)の中心線と保持部5に取り付けられた転造タップ11の軸線とが一致するよう、基台2上での水平方向についての位置調節が可能となっている。
そして、上記加工装置1を用いたナット素材21への雌ねじの形成は、例えば以下のように行われる。すなわち、ナット素材21(下穴22)の中心線と転造タップ11の軸線とを一致させた状態で、電動モータ7の駆動を通じて転造タップ11をその軸線周りに回転させるとともに、保持部5を固定部3側(下側)に移動させることにより上記転造タップ11を固定部3に固定されたナット素材21の下穴22に対し一端側(図中の上端側)から挿入する。その後、保持部5を更に固定部3に近づけるように移動させることにより、転造タップ11が回転しつつ上記下穴22の他端に向けて軸線方向に変位される。その結果、下穴22の内周面に転造タップ11の形成歯12が喰い付き、その後に転造タップ11が下穴22の内周面に対し同タップ11の軸線を中心とする回転方向及び上記軸線方向に相対移動し、それに伴い下穴22の内周部が塑性変形して雌ねじが形成されることとなる。
ちなみに、上述したように雌ねじを形成する際の転造タップ11の回転速度に関しては、その周速度が15m/min以下となる値、例えば10m/minとなる値(144rpm)とされる。また、転造タップ11を回転させる電動モータ7としては、例えば15〜18.5kw程度の出力を有するものが採用される。なお、転造タップ11によりナット素材21の下穴22の内周面に雌ねじを形成(転造)する際、その形成時の摩擦低減や冷却を目的として用いられる加工油として、油性のものを用いてもよいし、水溶性のものを用いてもよい。
転造タップ11によってナット素材21の下穴22の内周面に雌ねじが形成された後には、電動モータ7が逆回転されるとともに保持部5が固定部3から離れる方向(上方)に移動され、それによって転造タップ11がナット素材21から抜き出される。こうした転造タップ11を用いた転造によりナット素材21に雌ねじが形成される。図2は、製造完了後のナット20を示す断面図である。同図から分かるように、製造後のナット20は、その内周面に上記加工装置1の転造タップ11を用いた転造により形成された雌ねじ23を備えるものとなる。なお、ナット20における雌ねじ23の形成を上述した転造により行った場合には、以下のような利点がある。
・雌ねじ23の形成時にばりが発生しなくなり、雌ねじ23の面粗度が向上するため、その雌ねじ23の形成後のばり取り等の後行程が不要になる。
・転造タップ11の形成歯12を高精度に形成することにより、その転造タップ11により形成加工される雌ねじ23のねじ精度が良好なものとなるため、ナット20のねじ伝達効率が向上する。
・転造タップ11の形成歯12を高精度に形成することにより、その転造タップ11により形成加工される雌ねじ23のねじ精度が良好なものとなるため、ナット20のねじ伝達効率が向上する。
・転造タップ11のナット素材21に対する進退方向への往復動作により、雌ねじ23の形成が完了するため、その雌ねじ23の形成加工に要する時間を短くすることができる。
・雌ねじ23におけるねじ山の強度が向上し、信頼性の高いナット20を製造することができる。
・転造タップ11が加工装置1の保持部5に対し取り外し可能な状態で取り付けられるため、その転造タップ11の交換を短時間で行うことができる。
・転造タップ11が加工装置1の保持部5に対し取り外し可能な状態で取り付けられるため、その転造タップ11の交換を短時間で行うことができる。
次に、転造タップ11及びナット素材21の詳細な構造について、図3を参照して説明する。
同図に示されるように、転造タップ11においては、その基端側(図中上端側)に位置するシャンク部13に、保持部5(図1)に対する同タップ11の相対回転を禁止するための断面四角形状をなす回り止め部14が形成されている。また、シャンク部13における回り止め部14よりも先端側(図中下端側)の部分には、上記保持部5に対する同タップ11の軸線方向についての相対移動を禁止するための抜け止め部15,16が凹設されている。そして、転造タップ11を上記保持部5に取り付けたときには、回り止め部14が同保持部5に対し係合されるとともに、抜け止め部15,16も同保持部5に対し係合される。これら回り止め部14及び抜け止め部15,16と上記保持部5との係合により、転造タップ11の保持部5に対する軸線周りについての相対回転が禁止されるとともに、同タップ11の保持部5に対する軸線方向についての相対移動が禁止される。
同図に示されるように、転造タップ11においては、その基端側(図中上端側)に位置するシャンク部13に、保持部5(図1)に対する同タップ11の相対回転を禁止するための断面四角形状をなす回り止め部14が形成されている。また、シャンク部13における回り止め部14よりも先端側(図中下端側)の部分には、上記保持部5に対する同タップ11の軸線方向についての相対移動を禁止するための抜け止め部15,16が凹設されている。そして、転造タップ11を上記保持部5に取り付けたときには、回り止め部14が同保持部5に対し係合されるとともに、抜け止め部15,16も同保持部5に対し係合される。これら回り止め部14及び抜け止め部15,16と上記保持部5との係合により、転造タップ11の保持部5に対する軸線周りについての相対回転が禁止されるとともに、同タップ11の保持部5に対する軸線方向についての相対移動が禁止される。
転造タップ11の先端部には、上述した複数の形成歯12が外周面に形成されるねじ加工部17が設けられている。このねじ加工部17においては、転造タップ11の基端部側に向かう25mmの軸線方向変位につき0.06mmの外径の減少が生じるようにバックテーパが設けられている。また、各形成歯12を含むねじ加工部17の外径に関しては、ナット素材21の下穴22の内径に対して70μm程度大きい値とされている。ちなみに、以上のような構造を有する転造タップ11は、例えばSKH53といった高速度工具に用いられる特殊鋼を材料に形成されており、63〜66HRC程度の硬さを有している。また、上記転造タップ11の表面には、TICNコーティング等のチタン系コーティングが施されている。
一方、ナット素材21においては、円筒状に形成されるとともに長手方向中央部の内径が長手方向両端部の内径よりも小さくされており、その長手方向中央部には例えば21.06〜21.08mm程度の直径を有する上記下穴22が形成されている。このナット素材21の下穴22には、一端部(図中の上端部)側から加工装置1(図1)の転造タップ11が挿入されるようになっている。また、下穴22の一端部内周面、言い換えれば下穴22の一端部から挿入される転造タップ11のねじ加工部17と最初に接触する部分の内周面には、下穴22の一端(図中の上端)に向かうほど拡径するテーパ状の喰付部24が形成されている。この喰付部24における下穴22の中心線(転造タップ11の軸線)に対する傾斜角度θは15°とされている。
次に、上記転造タップ11を用いたナット素材21への雌ねじ23の形成について、詳しく説明する。
転造タップ11のねじ加工部17をナット素材21の下穴22の一端から挿入し、その転造タップ11を回転させつつ下穴22の他端に向けて変位させることにより、上記ねじ加工部17の形成歯12がナット素材21の下穴22の内周面(喰付部24)に喰い付き始め、雌ねじ23(図2)の形成が開始される。この雌ねじ23の形成初期において、転造タップ11(図3)の形成歯12がナット素材21の喰付部24に喰い付き始めると、その形成歯12により喰付部24に雌ねじ23を形成するための転造タップ11の回転方向に作用するトルクが大きくなる。このように転造タップ11の回転方向に作用するトルクが大きくなるということは、回転する同タップ11のねじ加工部17に設けられた形成歯12が上記のように喰い付いた喰付部24に対し軸線方向により強く押しつけられることを意味する。そして、転造タップ11の形成歯12における下穴22の喰付部24に対する軸線方向への押し付けが強くなり過ぎると、上記形成初期に形成された雌ねじ23(図2)のねじ山が変形したり、転造タップ11(図3)の形成歯12が変形したりするという不具合が生じるおそれがある。
転造タップ11のねじ加工部17をナット素材21の下穴22の一端から挿入し、その転造タップ11を回転させつつ下穴22の他端に向けて変位させることにより、上記ねじ加工部17の形成歯12がナット素材21の下穴22の内周面(喰付部24)に喰い付き始め、雌ねじ23(図2)の形成が開始される。この雌ねじ23の形成初期において、転造タップ11(図3)の形成歯12がナット素材21の喰付部24に喰い付き始めると、その形成歯12により喰付部24に雌ねじ23を形成するための転造タップ11の回転方向に作用するトルクが大きくなる。このように転造タップ11の回転方向に作用するトルクが大きくなるということは、回転する同タップ11のねじ加工部17に設けられた形成歯12が上記のように喰い付いた喰付部24に対し軸線方向により強く押しつけられることを意味する。そして、転造タップ11の形成歯12における下穴22の喰付部24に対する軸線方向への押し付けが強くなり過ぎると、上記形成初期に形成された雌ねじ23(図2)のねじ山が変形したり、転造タップ11(図3)の形成歯12が変形したりするという不具合が生じるおそれがある。
しかし、ナット素材21の下穴22にテーパ状の喰付部24が形成され、その喰付部24の傾斜角度θが転造タップ11の軸線(下穴22の中心線)に対し15°とされるため、転造タップ11の形成歯12による上記喰付部24へのねじ山の形成初期において、上記形成歯12の同喰付部24への喰い付きが図4に斜線で示されるように小さくなる。従って、形成歯12による上記ねじ山の形成初期に、その形成歯12により喰付部24に雌ねじ23(図2)を形成するための転造タップ11(図3)の回転方向に作用するトルクが小さく抑えられ、同トルクが大きくなることが抑制される。このように転造タップ11の回転方向に作用するトルクが小さく抑えられるということは、回転する同タップ11の形成歯12が上記のように喰い付いた喰付部24に対し軸線方向に強く押しつけられることが抑制されることを意味する。このため、転造タップ11の形成歯12が喰付部24に対し軸線方向に強く押しつけられることに起因して、同喰付部24に形成されたねじ山が変形したり、転造タップ11の形成歯12が変形したりするという不具合が生じることを抑制できるようになる。
ここで、仮に喰付部24の傾斜角度θが15°よりも大きい値(例えば60°以上)に設定されると、転造タップ11の形成歯12による上記喰付部24へのねじ山の形成初期において、上記形成歯12の同喰付部24への喰い付きが図5に斜線で示されるように大きくなることは避けられない。従って、形成歯12による上記ねじ山の形成初期に、その形成歯12により喰付部24に雌ねじ23(図2)を形成するための転造タップ11(図3)の回転方向に作用するトルクが大きくなり、形成歯12の上記のように喰い付いた喰付部24に対する軸線方向への押し付けが強くなりすぎる。その結果、上記形成初期に形成された雌ねじ23(図2)のねじ山が変形したり、転造タップ11(図3)の形成歯12が変形したりするという上述した不具合が生じる。こうした不具合の発生が喰付部24の傾斜角度θを15°とすることによって抑制される。
次に、喰付部24の傾斜角度θを15°とした理由について、図6〜図8を参照して説明する。
図6は、喰付部24の傾斜角度θを5°、10°、15°、20°としたときの雌ねじ23におけるねじ山のピッチを示したものである。同図において、横軸は上記ねじ山を形成する形成歯12の番号を表しており、この番号が大きくなるほど転造タップ11の基端側に位置する形成歯12であることを示している。そして、同図においては、上記番号に対応した形成歯12により形成されたねじ山のピッチが、それぞれ上記番号に対応するようにプロットされている。
図6は、喰付部24の傾斜角度θを5°、10°、15°、20°としたときの雌ねじ23におけるねじ山のピッチを示したものである。同図において、横軸は上記ねじ山を形成する形成歯12の番号を表しており、この番号が大きくなるほど転造タップ11の基端側に位置する形成歯12であることを示している。そして、同図においては、上記番号に対応した形成歯12により形成されたねじ山のピッチが、それぞれ上記番号に対応するようにプロットされている。
図7は、転造タップ11による雌ねじ23の形成初期において、喰付部24に喰い付く形成歯12が同喰付部24に対し軸線方向に押しつけられるときに、同軸線方向に働く力(スラスト力)の大きさを示したものである。同図において、横軸は喰付部24の傾斜角度θを5°、10°、15°、20°と変化させた状態を表している。そして、同図においては、傾斜角度θを5°、10°、15°、20°としたときに測定された上記スラスト力が、各傾斜角度θに対応するようにプロットされている。
図8は、転造タップ11による雌ねじ23の形成初期において、喰付部24に喰い付く形成歯12が同喰付部24に対し軸線方向に押しつけられるときに、ナット素材21に生じる変形量を示したものである。同図において、横軸は喰付部24の傾斜角度θを5°、15°、20°と変化させた状態を表している。そして、同図においては、傾斜角度θを5°、15°、20°としたときに測定されたナット素材21における外径及び開口部端面の変形量がそれぞれ、各傾斜角度θに対応するようにプロットされている。
これらの図から分かるように、喰付部24の傾斜角度θが15°よりも大きいときには、上記傾斜角度θの増大に伴い上記スラスト力(図7)が急激に大きくなり、それに起因してナット素材21の開口部端面の変形量(図8)も急激に大きくなる。こうした関係から、傾斜角度θが15°よりも大きくなると、雌ねじ23の形成初期において、転造タップ11の形成歯12の変形、及び上記雌ねじ23のねじ山の変形が生じると推測される。このことは、図6に示されるように、傾斜角度θが5°、10°、15°のときには、形成歯12の番号「1」に対応するねじ山のピッチが正常範囲であるのに対し、傾斜角度θが20°となったときには上記ピッチが正常範囲から大きくはずれた値になることからも明らかである。
従って、雌ねじ23の形成初期でのねじ山の変形や転造タップ11の形成歯12の変形を抑制するという効果を得るため、この実施形態では喰付部24の傾斜角度θを15°としている。
以上詳述した本実施形態によれば、以下に示す効果が得られるようになる。
(1)ナット素材21における喰付部24の傾斜角度θを15°とすることにより、転造タップ11を用いたナット素材21への雌ねじ23の形成初期に、転造タップ11の形成歯12による上記喰付部24への喰い付きが小さくなる。その結果、形成歯12により喰付部24に雌ねじ23を形成するための転造タップ11の回転方向に作用するトルクが大きくなることを抑制でき、ひいては回転する同タップ11の形成歯12が上記のように喰い付いた喰付部24に対し軸線方向に強く押しつけられることを抑制できる。従って、転造タップ11の形成歯12が喰付部24に対し軸線方向に強く押しつけられることに起因して、同喰付部24に形成されたねじ山が変形したり、転造タップ11の形成歯12が変形したりするという不具合が生じることを抑制できるようになる。
(1)ナット素材21における喰付部24の傾斜角度θを15°とすることにより、転造タップ11を用いたナット素材21への雌ねじ23の形成初期に、転造タップ11の形成歯12による上記喰付部24への喰い付きが小さくなる。その結果、形成歯12により喰付部24に雌ねじ23を形成するための転造タップ11の回転方向に作用するトルクが大きくなることを抑制でき、ひいては回転する同タップ11の形成歯12が上記のように喰い付いた喰付部24に対し軸線方向に強く押しつけられることを抑制できる。従って、転造タップ11の形成歯12が喰付部24に対し軸線方向に強く押しつけられることに起因して、同喰付部24に形成されたねじ山が変形したり、転造タップ11の形成歯12が変形したりするという不具合が生じることを抑制できるようになる。
(2)転造タップ11のねじ加工部17にバックテーパが設けられ、そのバックテーパが同タップ11の基端側に向かう25mmの軸線方向変位につき0.06mmの外径の減少が生じるものとされている。これにより、転造タップ11のねじ加工部17の形成歯12による上記喰付部24へのねじ山の形成初期において、上記形成歯12の同喰付部24への喰い付きが一層小さくなる。従って、形成歯12による上記ねじ山の形成初期に、その形成歯12により喰付部24に雌ねじ23を形成するための転造タップ11の回転方向に作用するトルクを一層小さく抑えることができ、回転する同タップ11の形成歯12が上記のように喰い付いた喰付部24に対し軸線方向に強く押しつけられることをより的確に抑制することができる。このため、転造タップ11の形成歯12が喰付部24に対し軸線方向に強く押しつけられることに起因して、同喰付部24に形成された雌ねじ23のねじ山が変形したり、転造タップ11の形成歯12が変形したりするという上記の不具合の発生を一層的確に抑制できるようになる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態を図9に基づき説明する。
この実施形態は、第1実施形態の転造タップ11の代わりに図9に示される切削タップ31を用い、同タップ31でナット素材21の下穴22の内周面を切削することにより、ナット素材21への雌ねじ23の形成を行うようにしたものである。
次に、本発明の第2実施形態を図9に基づき説明する。
この実施形態は、第1実施形態の転造タップ11の代わりに図9に示される切削タップ31を用い、同タップ31でナット素材21の下穴22の内周面を切削することにより、ナット素材21への雌ねじ23の形成を行うようにしたものである。
上記切削タップ31は、第1実施形態の転造タップ11(図3)と同様、シャンク部33、回り止め部34、抜け止め部35,36、及びねじ加工部37を備えている。そして、ねじ加工部37の外周面には、雌ねじ23を切削により形成するための複数の形成歯32が設けられている。そして、切削タップ31によるナット素材21への雌ねじ23の切削による形成も、第1実施形態と同様の手順で加工装置1(図1)及び上記切削タップ31を用いて行われる。
こうした切削タップ31を用いた切削による雌ねじ23の形成を行う場合、第1実施形態のような転造タップ11を用いた転造による雌ねじ23の形成を行う場合の利点に加えて、次の[1]及び[2]のような利点もある。[1]雌ねじ23を形成するために切削タップ31を回転させる電動モータ7として、例えば7.5〜11kw程度の低出力のものを用いることができる。[2]ナット素材21における下穴22の寸法(径)の管理が簡単になり、例えば内径を21.38〜21.42mm程度の範囲内の値とするだけでよくなる。
切削タップ31を用いた切削によりナット素材21に雌ねじ23を形成する場合でも、ナット素材21における喰付部24の傾斜角度θは15°とされる。更に、切削タップ31のねじ加工部37のバックテーパに関しては、転造タップ11と同じく、切削タップ31の基端部側に向かう25mmの軸線方向変位につき0.06mmの外径の減少が生じるように設けられている。従って、本実施形態においても、第1実施形態の(1)及び(2)と同等の効果が得られるようになる。
[その他の実施形態]
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・第1及び第2実施形態において、喰付部24の傾斜角度θを15°よりも小さい値、例えば13°以下の値としたり、10°以下の値としたりしてもよい。
なお、上記各実施形態は、例えば以下のように変更することもできる。
・第1及び第2実施形態において、喰付部24の傾斜角度θを15°よりも小さい値、例えば13°以下の値としたり、10°以下の値としたりしてもよい。
・第1及び第2実施形態におけるねじ加工部17,37のバックテーパに関して、タップの基端部側に向かう25mmの軸線方向変位につき0.06mmよりも大きい外径の減少が生じるように設けてもよい。例えば、0.08mm以上の外径の減少が生じるように上記バックテーパを設けることや、0.10mm以上の外径の減少が生じるように上記バックテーパを設けることが考えられる。
・第1及び第2実施形態において、ねじ加工部17,37のバックテーパに関しては必ずしも設ける必要はない。
・第1及び第2実施形態において、ナット素材21における下穴22の寸法(径)を適宜変更してもよい。
・第1及び第2実施形態において、ナット素材21における下穴22の寸法(径)を適宜変更してもよい。
・第1実施形態における転造タップ11、及び第2実施形態の切削タップ31における各所の寸法を適宜変更してもよい。
・第1及び第2実施形態の加工装置1における電動モータ7の回転速度や出力などの動作条件を適宜変更してもよい。
・第1及び第2実施形態の加工装置1における電動モータ7の回転速度や出力などの動作条件を適宜変更してもよい。
・第1及び第2実施形態において、加工装置1として旋盤を使用してもよい。
1…加工装置、2…基台、3…固定部、4…装置本体、5…保持部、7…電動モータ、11…転造タップ、12…形成歯、13…シャンク部、14…回り止め部、15,16…抜け止め部、17…ねじ加工部、20…ナット、21…ナット素材、22…下穴、23…雌ねじ、24…喰付部、31…切削タップ、32…形成歯、33…シャンク部、34…回り止め部、35,36…抜け止め部、37…ねじ加工部。
Claims (2)
- ナット素材に形成された下穴の一端からタップのねじ加工部を挿入し、そのタップを軸線周りに回転させつつ前記下穴の他端に向けて軸線方向に変位させることにより、前記タップのねじ加工部に設けられた形成歯で前記ナット素材の内周面に雌ねじを形成するナットの製造方法において、
前記下穴の内周面における同下穴の一端から挿入される前記タップのねじ加工部と最初に接触する部分に、前記下穴の一端に向かうほど拡径するテーパ状の喰付部を形成し、その喰付部における前記軸線に対する傾斜角度を15°以下とした
ことを特徴とするナットの製造方法。 - 前記タップのねじ加工部にバックテーパを設け、そのバックテーパを25mmの軸線方向変位につき0.06mm以上の外径変化を有するものとした
請求項1記載のナットの製造方法。
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Cited By (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
2008
- 2008-03-04 JP JP2008053820A patent/JP2009208119A/ja active Pending
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