JP2009243281A - スクリュ流体機械用スクリュロータの表面処理方法及びスクリュ流体機械用スクリュロータ - Google Patents
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Abstract
【課題】スクリュ流体機械用スクリュロータのロータ部表面に,腐蝕防止や耐摩耗性,潤滑性の向上等に役立つ高硬度の被膜を形成する。
【解決手段】ロータ軸32,42の外周にSiの含有量が1wt%以下であるアルミニウム合金製のロータ部31,41を形成した構造のスクリュロータ3,4を準備し,このスクリュロータ,3,4のロータ部31,41を,ジルコニウム塩を含む電解液中に浸漬し,該ロータ部31,41を陽極とした通電による火花放電を行う。この火花放電により,前記ロータ部31,41の表面に,高硬度であり,耐摩耗性に優れると共に,潤滑性を有する主としてZrO2−Al2O3−MgOの組成を有するセラミックス被膜を形成する。
【選択図】図2
【解決手段】ロータ軸32,42の外周にSiの含有量が1wt%以下であるアルミニウム合金製のロータ部31,41を形成した構造のスクリュロータ3,4を準備し,このスクリュロータ,3,4のロータ部31,41を,ジルコニウム塩を含む電解液中に浸漬し,該ロータ部31,41を陽極とした通電による火花放電を行う。この火花放電により,前記ロータ部31,41の表面に,高硬度であり,耐摩耗性に優れると共に,潤滑性を有する主としてZrO2−Al2O3−MgOの組成を有するセラミックス被膜を形成する。
【選択図】図2
Description
本発明はスクリュ流体機械用スクリュロータの表面処理方法,及び前記表面処理が施されたスクリュ流体機械用スクリュロータに関する。
回転式ポンプ,送風機等のスクリュ流体機械,一例としてスクリュ圧縮機1は,ケーシング10内に形成されたシリンダ20内に,オス,メス一対のスクリュロータ3,4を回転可能に収容して,両スクリュロータ3,4の回転により吸入口11より吸い込んだ被圧縮気体を圧縮して吐出口12より吐出するように構成されている(図1,2参照)。
このようなスクリュ圧縮機1としては,圧縮作用空間内の潤滑・冷却・密封を行うために圧縮作用空間内に潤滑油を導入する油冷式スクリュ圧縮機が一般的に使用されているが,この油冷式スクリュ圧縮機では,消費側に供給される圧縮気体中に潤滑油が含まれることとなることから,このような油分を含む圧縮気体の供給を嫌う用途に使用するスクリュ圧縮機として,圧縮作用空間内に潤滑油を供給することなく圧縮を行うことのできるスクリュ圧縮機が提案されている。
このように,圧縮作用空間内に潤滑油を供給することなく被圧縮気体の圧縮を行うことができるようにしたスクリュ圧縮機の一例として,所謂「オイルフリースクリュ圧縮機」と呼ばれるスクリュ圧縮機がある。
このオイルフリースクリュ圧縮機1は,図3に示すようにケーシング10内に形成されたシリンダ20内に収容されるオス・メス一対のスクリュロータ3,4のそれぞれのロータ軸32,42にタイミングギヤ51,52が設けられており,両スクリュロータ3,4の回転タイミングをこのタイミングギヤ51,52によって規制することで,両スクリュロータ3,4が僅かな間隔を介した非接触の状態で回転することができるようにして圧縮作用空間内に潤滑油を導入することなく被圧縮気体の圧縮を可能としたもので,この構成により消費側には油分や水分を含まない圧縮気体を供給することができるものとなっている。
このようなオイルフリースクリュ圧縮機1では,前述のタイミングギヤ51,52による回転タイミングの規制によって,両スクリュロータ3,4は非接触の状態で回転することができるように構成されているものの,圧縮熱によってシリンダ20内の圧縮気体が高温となるとスクリュロータ3,4のロータ部31,41が熱膨張してロータ部31,41同士が僅かに接触して焼き付きが生じる場合があることや,圧縮機を停止したときに高温の圧縮空気が冷えて結露することにより,スクリュロータ3,4のロータ部31,41に水分が付着することがあることから,潤滑性と防錆効果のある二硫化モリブデンをスクリュロータ3,4のロータ部31,41表面に塗布することで,このような焼き付きと発錆を防止することが行われている(特許文献1,2参照)。
また,油分を含まない圧縮気体の供給を可能とする別の構成のスクリュ圧縮機1としては,所謂「水噴射式スクリュ圧縮機」と呼ばれるスクリュ圧縮機1がある。
この水噴射式スクリュ圧縮機では,前述の油冷式スクリュ圧縮機で圧縮作用空間内に導入していた潤滑油に代えて,冷却水を噴射することにより圧縮作用空間内の冷却と密封を行うもので,これにより油分を含まない圧縮気体を供給することが可能となっている。
このような水噴射スクリュ圧縮機では,図3を参照して説明したオイルフリースクリュ圧縮機とは異なり,両スクリュロータ3,4の回転タイミングを規制するタイミングギヤ51,52は設けられておらず,スクリュロータ3,4は一方のスクリュロータ(図示の例ではメスロータ4)に入力された回転駆動力を,ロータ部31,41の接触回転により他方のスクリュロータ(図示の例ではオスロータ3)に伝達して回転させるものである点で前述した油冷式のスクリュ圧縮機と同様の構造を有するものであるが,潤滑油に比較して潤滑性の悪い冷却水を圧縮作用空間内に導入していること,及び冷却水と接触するスクリュロータ3,4のロータ部31,41に腐蝕や発錆のおそれがあることから,油冷式のスクリュ圧縮機において一般に採用されている鋼製のスクリュロータ3,4に代え,例えばステンレス等の金属製のロータ軸32,42に,自己潤滑性を有する合成樹脂によって形成されたロータ部31,41を取り付けたスクリュロータ3,4が使用されている(特許文献3参照)。
以下はいずれもスクリュ圧縮機1のスクリュロータ3,4に対する表面処理技術として存在するものではないが,一例としてアルミニウム材に対する表面処理技術として下記のものがある。
アルミニウム材に対して広く用いられている表面処理技術としては,陽極酸化によってアルミニウム材の表面にγ−Al2O3の被膜を形成するアルマイト処理がある。
また,前記アルマイト処理に代わる表面処理技術として,電解浴中でアルミニウム材を陽極として通電し,火花放電によってアルミニウム材の表面にガラス質の保護被膜を形成する方法(以下,「陽極火花放電処理」という。)も提案されている(特許文献4参照)。
さらに,前述の陽極火花放電処理によって形成されたガラス質の保護被膜(セラミックス被膜)の表面硬度が低いという課題を解決するために,ケイ酸塩及び/又は酸素酸塩を含有する第1の電解浴での火花放電により第1の被膜を形成した後,セラミックス微粒子を懸濁状態で含有する第2の電解浴での火花放電によりセラミックス微粒子を共析させた強度,耐摩耗性等に優れる第2の被膜を形成して被膜の表面硬度を上昇させることも提案されている(特許文献5の請求項1,「0004」欄,「0013」欄他)。
この発明の先行技術文献情報としては次のものがある。
特開平 2−201072号公報
特許第3267814号公報
特開2004−36586号公報
特公昭58− 17278号公報
特開平 5− 86485号公報
1.固体潤滑剤の塗布における問題点
以上で説明したスクリュ圧縮機1の構成中,圧縮作用空間内に潤滑油も冷却水も導入しないオイルフリースクリュ圧縮機では,前述のようにオス・メス一対のスクリュロータ3,4が焼き付いたり発錆したりすることを防止するために,両スクリュロータ3,4のロータ部31,41表面に,二硫化モリブデン等の固体潤滑剤を塗布する等して固体潤滑剤の被膜を形成しており,この固体潤滑剤である二硫化モリブデンの潤滑性により焼き付きを防止している。
以上で説明したスクリュ圧縮機1の構成中,圧縮作用空間内に潤滑油も冷却水も導入しないオイルフリースクリュ圧縮機では,前述のようにオス・メス一対のスクリュロータ3,4が焼き付いたり発錆したりすることを防止するために,両スクリュロータ3,4のロータ部31,41表面に,二硫化モリブデン等の固体潤滑剤を塗布する等して固体潤滑剤の被膜を形成しており,この固体潤滑剤である二硫化モリブデンの潤滑性により焼き付きを防止している。
しかし,このようにして形成された固体潤滑剤の被膜は,強くこすられると容易に剥離してしまうことから,前述したようにタイミングギヤ51,52を持たず,一方のスクリュロータ4に入力された回転駆動力をロータ部31,41の噛み合いによって他方のスクリュロータ3に伝達して駆動する水噴射式のスクリュ圧縮機用のスクリュロータに適用することはできない。
また,固体潤滑剤である二硫化モリブデンはそれ単独ではスクリュロータ3,4のロータ部31,41に付着しないことから,溶剤に二硫化モリブデンと共に耐熱性のある樹脂をバインダとして混合して塗布することにより固体潤滑剤の被膜を形成している。
しかし,オイルフリースクリュ圧縮機のシリンダ20内は,圧縮熱によって200℃から300℃の高温になることから,たとえ耐熱性のある樹脂をバインダとして使用して固体潤滑剤の付着を行ったとしても,長時間高温にさらされると耐熱性樹脂が次第に劣化して剥離することがある。
さらに,オイルフリースクリュ圧縮機では,前述のようにシリンダ20内に圧縮作用空間の密封作用を有する冷却水や潤滑油の注入を行わないことから,両スクリュロータ3,4のロータ部31,41歯間の隙間を極小とすることにより被圧縮気体の圧縮を可能とするものであるが,この極小の隙間を実現するために,オイルフリースクリュ圧縮機のスクリュロータ3,4のロータ部31,41には,必要とされる固体潤滑剤被膜の膜厚に対して厚い膜厚となるように固体潤滑剤を先ず塗布しておき,その後,オス・メスのスクリュロータ3,4を摺り合わせて余分な被膜を除去する作業を行う場合もあるが,この際,被膜を厚く形成しすぎたり,また,調整時に被膜を強くこすり過ぎると剥離することがある等,加工が困難であると共に作業に熟練を必要とする。
しかも,スクリュロータ3,4は一定の平面ではなく複雑な形状であることから,固体潤滑剤を均一な膜厚に塗布することは困難であることから膜厚にバラツキが生じ,スクリュロータ3,4のロータ部31,41同士の当たりが強い部分と,隙間が大きい部分が生じる等して製造されたスクリュ圧縮機の個体間での性能のバラツキが生じる原因ともなっている。
2.合成樹脂製ロータにおける問題点
前述した水噴射式のスクリュ圧縮機では,ロータ軸32,42の外周に自己潤滑性のある合成樹脂によって製造されたロータ部31,41を設けてスクリュロータを形成することにより,圧縮作用空間内に潤滑油に比較して潤滑性が低い水を導入することによる潤滑性の低下と,腐蝕や発錆の防止等を図っている。
前述した水噴射式のスクリュ圧縮機では,ロータ軸32,42の外周に自己潤滑性のある合成樹脂によって製造されたロータ部31,41を設けてスクリュロータを形成することにより,圧縮作用空間内に潤滑油に比較して潤滑性が低い水を導入することによる潤滑性の低下と,腐蝕や発錆の防止等を図っている。
しかし,水噴射式スクリュ圧縮機のシリンダ20内の温度は,シリンダ20内に導入された冷却水による冷却により前述のオイルフリースクリュ圧縮機のシリンダ20内温度よりも低温(約80℃程度)に維持されるものの,このシリンダ20内の温度と冷却水によりスクリュロータ3,4のロータ部31,41を構成する合成樹脂が熱膨張及び膨潤し,スクリュロータ3,4のロータ部31,41とシリンダ20の内壁面とが接触することがあり,この接触によってスクリュロータ3,4のロータ部31,41が破損する場合があるという問題がある。
また,水噴射式スクリュ圧縮機によって圧縮する被圧縮気体(例えば機外の空気)中に,ロータ部31,41を構成する合成樹脂を劣化させる成分が含まれていると,樹脂の強度が低下しスクリュロータ3,4のロータ部31,41が破損するおそれもある。
さらに,合成樹脂製のロータ部31,41は型によって成形されることから,切削加工や研削加工によって製造される金属製のスクリュロータに比較して加工精度が劣り,そのためスクリュロータ3,4が回転不可能にならないよう予め隙間を大きめに設けていることから圧縮性能が低いという問題がある。
3.アルミニウム材の表面処理技術における問題点
(1)一般的な表面処理技術における問題点
スクリュロータ3,4のロータ部31,41表面に固体潤滑剤の被膜を形成することや,スクリュロータ3,4のロータ部31,41自体を合成樹脂製とすることにより生じる前述の種々の問題点を解消するために,金属製のロータ部表面に例えば溶射や蒸着等によって硬質被膜,例えばセラミックスの被膜を形成することも考えられるが,スクリュロータ3,4の表面に形成される被膜は高精度の膜厚管理が必要であり,これを溶射等によって形成することは困難である。また,蒸着等で被膜形成を行う場合には,高価な真空装置が必要である等,多大な初期投資が必要である。
(1)一般的な表面処理技術における問題点
スクリュロータ3,4のロータ部31,41表面に固体潤滑剤の被膜を形成することや,スクリュロータ3,4のロータ部31,41自体を合成樹脂製とすることにより生じる前述の種々の問題点を解消するために,金属製のロータ部表面に例えば溶射や蒸着等によって硬質被膜,例えばセラミックスの被膜を形成することも考えられるが,スクリュロータ3,4の表面に形成される被膜は高精度の膜厚管理が必要であり,これを溶射等によって形成することは困難である。また,蒸着等で被膜形成を行う場合には,高価な真空装置が必要である等,多大な初期投資が必要である。
一方,アルミニウム材に対する表面処理技術を適用するために,スクリュロータ3,4のロータ部31,41をアルミニウム材によって形成すると共に,その表面に陽極酸化によりアルマイト(γ−Al2O3)の被膜を形成することも考えられる。
しかし,このようにして形成されるアルマイトの被膜は,多孔質構造を有するものであるために,例えばこれを水噴射式のスクリュ圧縮機のスクリュロータ3,4に適用すると,シリンダ20内では圧縮気体や冷却水が勢いよく吸入側から吐出側に向かって流れているので,多孔質で表面平滑性が低いアルマイト被膜にこのような高圧,かつ,流速の速い冷却水が接触すると,被膜が浸食されたり剥離したりするおそれがあり,また,多孔質構造ゆえにピンホールが生じやすく,ピンホールが生じればこの部分から母材の腐蝕が始まる。
また,アルマイトの被膜は比較的高硬度ではあるものの,スクリュロータ3,4同士の接触や,シリンダ20内壁等との接触が生じた際の衝撃に耐え得る程の強度を有するものではなく,また,前述した多孔質構造により表面平滑性に欠け,潤滑性が低く接触時に摺動性を発揮し得ない。
(2)陽極火花放電処理の問題点
このような多孔質構造を持つアルマイトの被膜に代えて,前掲の特許文献4,5に記載された陽極火花放電処理によれば,ガラス質のセラミックス被膜を形成することができることから,スクリュロータ3,4のロータ部31,41表面にこの陽極火花放電処理によるセラミックス被膜を形成することも考えられる。
このような多孔質構造を持つアルマイトの被膜に代えて,前掲の特許文献4,5に記載された陽極火花放電処理によれば,ガラス質のセラミックス被膜を形成することができることから,スクリュロータ3,4のロータ部31,41表面にこの陽極火花放電処理によるセラミックス被膜を形成することも考えられる。
しかし,陽極火花放電処理により形成されたセラミックス被膜は,被膜の表面硬度が低いために打こんや擦過による損傷に弱いことが指摘されており,(前掲の特許文献5「0004」欄),この点においてスクリュ圧縮機のスクリュロータ3,4の表面処理には適していない。
また,このような表面硬度が低いという問題を解消するために,前掲の特許文献5に記載の発明のように,第1の電解浴による火花放電処理の後,セラミックス微粒子を懸濁状態で含有する第2の電解浴での火花放電によりセラミックス微粒子を共析させた強度,耐摩耗性等に優れる第2の被膜を形成する方法を採用すれば,セラミックス被膜の形成に二段階の処理工程が必要であり,また,含有成分の異なる二種類の電解液を使用して第1の電解浴と第2の電解浴を行う必要がある等,被膜の形成作業が繁雑である。
さらに,本発明の発明者は,鋳造用のアルミニウム合金であるAC4C(JIS記号:以下同じ)製のスクリュ圧縮機のスクリュロータ3,4表面に対し,前述した陽極火花放電処理によりセラミックス被膜の形成試験を行ったところ,アルマイトとは異なり多孔質構造を持たないセラミックス被膜を形成することはできたものの,形成されたセラミックス被膜は硬度が低く,しかも,形成されたセラミックス被膜中には多数の空孔が形成されていることが確認された。
このような空孔の発生は,例えば特許文献5に記載されているように電線等の絶縁被膜としてセラミックス被膜を形成する場合には特に問題とはならないものと言えるが,スクリュ圧縮機1のスクリュロータ3,4表面の保護被膜中にこのような空孔が発生すると,空孔発生部分において被膜の強度や硬度が低下して,これを特に水噴射式のスクリュ圧縮機に使用すれば,空孔の発生部分を基点としてキャビテーション損傷や,高圧かつ流速の速い冷却水との接触による浸食や剥離,スクリュロータ3,4のロータ部31,41同士やシリンダ20内壁面との接触等による破壊や剥離が生じることとなり,また,スクリュロータ3,4のロータ部31,41母材としたアルミニウム合金がこの空孔を介して冷却水と接触すれば,冷却水中の金属イオンの影響を受けて溶出する等,腐蝕の原因となる。
なお,スクリュロータ3,4のロータ部31,41をアルミニウム合金によって製造する場合,鋳造によって製造したロータ部31,41をさらに切削加工や研削加工によって最終的な形状に加工するものとなるが,鋳造に使用するアルミニウム合金としては,溶融状態で高い流動性を有し鋳造性に優れると共に,凝固時の収縮や熱間もろさも少なく,耐食性に比較的優れている,前掲のAC4C等に代表されるAl−Si系合金が一般に使用される。
しかし,本発明の発明者による鋭意研究の結果,陽極火花放電処理によって形成されるセラミックス被膜では,アルミニウム合金中に含まれるSi含有量が増加するに従い,形成される被膜の機械的特性が低下すること,アルミニウム合金中のSi成分は,形成された被膜中に不純物として介在して被膜の硬度を低下させていると共に,この不純物としてのSiの介在が,被膜中に空孔を生じさせていることを突き止めた。
その一方で,形成されるセラミックス被膜に悪影響を及ぼす可能性のある合金成分を全て排し,例えば純アルミによってスクリュロータ3,4のロータ部31,41を製造しようとすれば,形成される被膜中に不純物が介在することは防止できるものの,母材自体の機械的強度が低下する。
4.本発明の課題
上記従来技術の欠点に鑑み,本発明はスクリュ流体機械のスクリュロータのロータ部を,金属であるアルミニウム合金によって製造するものとし,合成樹脂製のロータ部等を採用することによる前記問題点の解消を図る一方で,アルミニウム合金製のロータ部を採用したことに伴い生じた新たな課題,すなわち,ロータ部表面に,多孔質構造を持たず,空孔の発生がないと共に,硬度等の機械的特性においても優れたセラミックス被膜を比較的簡単な方法により形成することにより,腐蝕や焼き付き,破損を防止することのできるスクリュロータの表面処理方法,及び前記方法で処理されたスクリュ流体機械用スクリュロータを提供することを目的とする。
上記従来技術の欠点に鑑み,本発明はスクリュ流体機械のスクリュロータのロータ部を,金属であるアルミニウム合金によって製造するものとし,合成樹脂製のロータ部等を採用することによる前記問題点の解消を図る一方で,アルミニウム合金製のロータ部を採用したことに伴い生じた新たな課題,すなわち,ロータ部表面に,多孔質構造を持たず,空孔の発生がないと共に,硬度等の機械的特性においても優れたセラミックス被膜を比較的簡単な方法により形成することにより,腐蝕や焼き付き,破損を防止することのできるスクリュロータの表面処理方法,及び前記方法で処理されたスクリュ流体機械用スクリュロータを提供することを目的とする。
また,本発明は上記目的に加え,前述のような優れた特性を有する被膜を,母材自体の強度,耐食性等の機械的特性を犠牲とすることなしに形成することのできるスクリュ流体機械用スクリュロータの表面処理方法,及び前記方法で処理されたスクリュ流体機械用スクリュロータを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために,本発明のスクリュ流体機械用スクリュロータ3,4の表面処理方法は,スクリュ流体機械1のスクリュロータ3,4を,例えばステンレス材で形成したロータ軸32,42の外周にSiの含有量が1wt%以下であるアルミニウム合金製のロータ部31,41を形成した構造とし,
前記ロータ部31,41を電解液中に浸漬して該ロータ部31,41を陽極とした通電により火花放電を行うことにより,前記ロータ部31,41表面にアルミニウムの酸化物を組成中に含むセラミックスの被膜を析出させたことを特徴とする(請求項1)。
前記ロータ部31,41を電解液中に浸漬して該ロータ部31,41を陽極とした通電により火花放電を行うことにより,前記ロータ部31,41表面にアルミニウムの酸化物を組成中に含むセラミックスの被膜を析出させたことを特徴とする(請求項1)。
前記方法において,前記電解液にジルコニウム塩を含め,前記ロータ部31,41表面に主としてZrO2−Al2O3の組成を有するセラミックスの被膜を析出させるものとすることができる(請求項2)。
さらに,前記方法において,ロータ部31,41を構成する前記アルミニウム合金をAl−Mg系合金とすれば好適である(請求項3)。
このように,Al−Mg系合金で製造したロータ部31,41は,前記電解液にジルコニウム塩を含めて前記火花放電を行うことにより,前記ロータ部31,41表面に主としてZrO2−Al2O3−MgOの組成を有するセラミックスの被膜を析出させるものとしても良い(請求項4)。
さらに,前述のようにしてロータ部31,41表面に形成されたセラミックス被膜の表面には,さらに,フッ素樹脂や,二硫化モリブデン等の固体潤滑剤を分散させた樹脂等の固体潤滑剤被膜を形成することもできる(請求項5)。
なお,前記表面処理方法は,オイルフリースクリュ圧縮機,又は水噴射式スクリュ圧縮機のスクリュロータ3,4に対して行うに適している(請求項6)。
また,本発明のスクリュ流体機械のスクリュロータ3,4は,ロータ軸32,42の外周にロータ部31,41を形成したスクリュ流体機械1のスクリュロータ3,4において,前記ロータ部31,41をSiの含有量が1wt%以下のアルミニウム合金で製造すると共に,前記ロータ部31,41の表面を,電解液中における火花放電により析出されたアルミニウムの酸化物を組成中に含むセラミックスの被膜で被覆したことを特徴とする(請求項7)。
前記構造のスクリュロータ3,4において,前記電解液にジルコニウム塩を含め,主としてZrO2−Al2O3の組成を有するセラミックス被膜で前記ロータ部31,41の表面を被覆したものとしても良い(請求項8)。
さらに,前記スクリュロータ3,4のロータ部31,41を構成するアルミニウム合金としては,Al−Mg系合金,例えばAC7A,ADC5,ADC6,A5000番系のアルミニウム合金(いずれもJIS記号)とすることが好ましい(請求項9)。
さらに,ロータ部31,41をAl−Mg系合金とした前述の構成において,前記電解液にジルコニウム塩を含め,主としてZrO2−Al2O3−MgOの組成を有するセラミックスの被膜で前記ロータ部31,41の表面を被覆することもできる(請求項10)。
なお,前記スクリュロータ3,4は,前記セラミックス被膜の表面を,さらに固体潤滑剤被膜で被覆したものとすることもでき(請求項11),
これらのスクリュロータ3,4は,オイルフリースクリュ圧縮機,又は水噴射式スクリュ圧縮機のスクリュロータ3,4として使用するに好適である(請求項12)。
これらのスクリュロータ3,4は,オイルフリースクリュ圧縮機,又は水噴射式スクリュ圧縮機のスクリュロータ3,4として使用するに好適である(請求項12)。
以上説明した本発明の構成により,本発明の表面処理方法及びこの表面処理方法が施されたスクリュ流体機械用スクリュロータにあっては,以下の顕著な効果を得ることができた。
(1)スクリュロータ3,4のロータ部31,41表面に対する被膜の形成を,電解液中でロータ部31,41を陽極とした火花放電(以下,「陽極火花放電処理」という。)により行ったことにより,ロータ部30,41の表面に多孔質構造を持たないセラミックス被膜を形成することができた。
このようにして形成されたセラミックス被膜は,樹脂と共に塗布された二硫化モリブデンの被膜等に比較して高硬度であると共に,母材に対する付着強度が高く,また,耐熱性にも優れる等,優れた特性を発揮するものであった。
しかも,処理対象としたスクリュロータ3,4のロータ部31,41を,Siの含有量が1wt%以下であるアルミニウム合金製としたことにより,被膜中にSi,その他の不純物の介在がなく,かつ,空孔が殆ど生じていないセラミックス被膜を形成することができた。
このように,多孔質構造を持たず,かつ,不純物の介在や空孔が形成されていないセラミックス被膜は,それ自体が高硬度である等,機械的特性に優れたものであり,また,多孔質構造を持たないために表面が平滑でロータ部表面に潤滑性を付与するものであり,スクリュロータ3,4のロータ部31,41同士の接触やロータ部31,41がケーシング20内壁面と接触しても破壊や剥離が生じ難く,また,被膜が多孔質構造であることや,空孔を有することにより生じる各種の弊害,例えば,このスクリュロータ3,4を水噴射型のスクリュ圧縮機1で使用する場合に生じる被膜の浸食や剥離,空孔の発生部分を基点としたキャビテーション損傷,母材が空孔を介して冷却水と接触して金属イオンの影響を受けて溶出する等して生じる腐蝕の発生を解消することが可能であった。
さらに,機械的特性に優れたセラミックス被膜を形成することができたことから,形成する被膜の薄膜化が可能となった。その結果,一般に被膜は膜厚を増すに従い厚みに不均一性が生じたり,表面平滑性が失われたりするが,このような弊害を薄膜化によって容易に解消することができた。
しかも,このような表面処理方法は電解液にロータ部31,41を浸漬して行われることから,複雑な形状を有するスクリュロータ3,4のロータ部31,41に対しても均一な膜厚で被膜を形成することができ,オス,メスロータのロータ部31,41の当たりや間隔を均一なものとすることができ,このようにスクリュロータ3,4を組み込んだスクリュ圧縮機1の個体間における性能のバラツキを小さくすることができると共に,腐蝕や剥離の基点となる薄膜部の発生を防止することができた。
(2)電解液中にジルコニウム塩を含めるという比較的簡単な方法により,スクリュロータ3,4のロータ部31,41表面に高硬度のZrO2−Al2O3の組成を有するセラミックスの被膜を析出させることができた。
しかもこのようにして形成されるジルコニア系のセラミックス被膜は,高硬度で粘りを有することから,熱膨張率が高いアルミニウムを母材とした,スクリュロータ3,4のロータ部31,41に適用した場合であってもロータ部31,41の熱膨張で被膜が割れることを防止できた。
(3)スクリュロータ3,4のロータ部31,41をAl−Mg系合金により形成したことにより,合金成分であるMgは,Siのように形成されたセラミックス被膜に空孔を形成する等の悪影響を及ぼすものではなく,また,Mgは酸化により硬質被膜を形成し,形成されるセラミックス被膜に,硬度低下や空孔発生等の悪影響を及ぼすことがない。
一方,Mg成分を含むアルミニウム合金は,高強度で耐食性に優れる等,母材自体の機械的特性をも向上させることができ,形成されるセラミックス被膜が高硬度,高耐食性を有することと相俟ってスクリュロータ3,4のロータ部31,41破損や腐蝕をより好適に防止することができた。
(4)さらにAl−Mg系合金により形成したスクリュロータ3,4のロータ部31,41をジルコニウム塩を含む電解液中で陽極火花放電処理することにより,ロータ部31,41の表面には前述したZrO2−Al2O3−MgOを主体とした高硬度,高耐食性,高耐熱性の被膜が形成され,合金成分の影響により被膜の硬度等が低下することを防止することができた。
また,このようにして形成されるセラミックス被膜は,前述したように高硬度で粘りを有することから,熱膨張率が高いアルミニウムを母材としたスクリュ圧縮機1のスクリュロータ3,4に適用した場合であっても,スクリュロータの熱膨張で被膜が割れることを防止できた。
(5)前記セラミックスコーティングの表面に,さらにフッ素樹脂や二硫化モリブデンを含有した樹脂を塗布する等して固体潤滑剤被膜を形成することにより,スクリュロータ3,4のロータ部31,41表面の潤滑性をより一層高めることができた。
しかも,スクリュロータ3,4の表面に直接固体潤滑剤の被膜を形成していた従来のオイルフリースクリュ圧縮機のスクリュロータに比較して,固体潤滑剤被膜の膜厚を薄く形成した場合であっても,十分な耐腐蝕性,耐摩耗性等を付与することができ,また,固体潤滑剤被膜の薄膜化が可能であることから,前述したすりあわせによる膜厚調整を行う場合であっても,その作業が容易であると共に,すりあわせ時に固体潤滑剤被膜が剥離等することを防止できた。
次に,本発明の一実施形態につき以下説明する。
1.スクリュ流体機械のスクリュロータ
(1)構造説明
本発明は,スクリュ流体機械のスクリュロータを処理対象とするものであり,特に水噴射式又はオイルフリーのスクリュ圧縮機1のスクリュロータ3,4に適用するに適している。
(1)構造説明
本発明は,スクリュ流体機械のスクリュロータを処理対象とするものであり,特に水噴射式又はオイルフリーのスクリュ圧縮機1のスクリュロータ3,4に適用するに適している。
スクリュ圧縮機1は,ケーシング10内に形成されたシリンダ20内にオス・メス一対のスクリュロータ3,4を収容し,両スクリュロータ3,4の回転によりシリンダ20内に外気を吸入して,圧縮したのち圧縮空気を吐出するように構成されている。
本発明で処理対象とするスクリュロータ3,4は,ステンレス等によって形成されたロータ軸32,42の周りに,アルミニウム合金製のロータ部31,41を成形し,このロータ部31,41を切削又は研削により所定の歯形に加工したものであり,例えば鋳造によって先ず大まかな歯形が形成されたロータ部31,41を製造しておき,これを切削,研磨して最終的な歯形のロータ部31,41に形成したものであっても良く,また,棒材等のアルミニウム合金製のビレットを切削,研磨することにより所定の歯形を有するロータ部31,41を形成したものであっても良く,その加工方法等は特に限定されない。
このスクリュロータ3,4のロータ部31,41の歯形は,運転時に正規の歯形となるよう,すなわち,運転時にオス・メスのスクリュロータ3,4のロータ部31,41の隙間及びスクリュロータ3,4とシリンダ20の内壁面との隙間が適正値となるように,運転時に生じる圧縮熱に伴う熱膨張による変形や,後述する陽極火花放電処理によって形成される被膜(その後に固体潤滑剤被膜を形成する場合には,この固体潤滑剤被膜を含む)の膜厚等を考慮して予め求められた加工歯形に従って加工されている。
なお,処理対象が水噴射式スクリュ圧縮機のスクリュロータである場合には,シリンダ20内の温度がオイルフリースクリュ圧縮機の場合に比較して低く保たれていることから,このような熱膨張による変形量等を考慮せずに正規の歯形に加工したものを本発明の処理対象としても良い。
(2)処理対象範囲
本発明における表面処理は,前述したスクリュロータ3,4のロータ部31,41の表面に対して行うものであり,その処理範囲は,ロータ部31,41の周面(歯や歯溝等を形成した部分)のみならず,吐出側及び吸入側における両端面31a,31b,41a,41bを含む。
本発明における表面処理は,前述したスクリュロータ3,4のロータ部31,41の表面に対して行うものであり,その処理範囲は,ロータ部31,41の周面(歯や歯溝等を形成した部分)のみならず,吐出側及び吸入側における両端面31a,31b,41a,41bを含む。
本発明の表面処理は,後述する陽極火花放電処理についてはオス,メスいずれのスクリュロータ3,4共に対象とするが,後述する固体潤滑剤被膜の形成については,オス,メス,いずれか一方のスクリュロータ(3又は4)に対してのみ行うものとしても良い。もっとも,好ましくは固体潤滑剤被膜の形成についてもオス,メスの両スクリュロータ3,4に対して行う。
(3)材質
本発明の表面処理方法により処理対象とするスクリュロータ3,4のロータ部31,41は,これを,Siの含有量が1wt%以下のアルミニウム合金によって製造する。
本発明の表面処理方法により処理対象とするスクリュロータ3,4のロータ部31,41は,これを,Siの含有量が1wt%以下のアルミニウム合金によって製造する。
スクリュロータ3,4のロータ部31,41を鋳造によって製造する場合,前述したように溶融状態で高い流動性を有し鋳造性に優れると共に,凝固時の収縮や熱間もろさも少なく,耐食性に比較的優れているAl−Si合金の使用が適しているが,前述したようにアルミニウム合金中のSi成分は,陽極火花放電処理によって形成されるセラミックス被膜の機械的特性を低下させるものであるところ,このSiの含有量を1wt%以下に抑えることで,Hv500程度を上限とする硬質アルマイトに比較して遙かに高硬度であるHv600〜1900のセラミックス被膜を形成することができると共に,このようにして形成されたセラミックス被膜中には,不純物としてのSiの介在も,空孔の発生も殆ど確認できなかった。
一方,アルミニウム合金中のSi成分は,前述したように鋳造性の改善に役立つものであることから,ロータ部31,41を鋳造によって形成する場合には,必要に応じて1wt%以下,好ましくは0.2wt%以下でSiを含有するアルミニウム合金を使用する。
さらに,スクリュロータ3,4のロータ部31,41を形成するアルミニウム合金として,好ましくはAl−Mg系合金を使用する。Al−Mg系合金は,溶解の際,溶湯表面にできる酸化被膜のために鋳造が困難であることから,鋳造によってスクリュロータ3,4のロータ部31,41を製造する場合を考えると,ロータ部31,41の形成材としては前述したAl−Si系合金の使用が好ましいと言えるが,合金成分であるMgは,陽極火花放電処理を行っても前述のSiのように形成されるセラミックス被膜の強度低下や空孔の発生等の悪影響を及ぼすものではなく,後述するようにジルコニウム塩を含む電解液によって陽極火花放電を行うことにより酸化マグネシウム(MgO)を含むZrO2−Al2O3−MgO組成のセラミックス被膜を析出させて,ロータ部31,41表面を保護する保護被膜として機能する。
なお,Mgを合金成分に含むアルミニウム合金は,それ自体が機械的特性に優れると共に,耐食性,耐熱性等が高いために,Al−Mg系合金の使用は,母材自体の機械的特性や耐食性を向上させて高硬度のセラミックス被膜の形成とも相俟ってロータ部31,41表面を摩耗や腐蝕等から保護することができるものとなっている。
ここで,使用するAl−Mg合金のMgの含有量は2〜11wt%の範囲であり,11wt%を越えると鋳造性が著しく低下してスクリュロータ3,4のロータ部31,41を鋳造により製造することが困難となり,2wt%未満であると母材の機械的特性の向上が得られない。より好ましくは,Mgの含有量は3.5〜5.5wt%である。
このような条件を満たすAl−Mg合金としては,鋳物用アルミニウム合金であるAC7A,ダイキャスト用アルミニウム合金であるADC5,ADC6,展伸材であるA5000番系のアルミニウム合金を挙げることができ,特にAC7Aの使用が適している。
2.陽極火花放電処理
スクリュ圧縮機1のスクリュロータ3,4に設けられたロータ部31,41表面に対する本発明による表面処理は,電解液中に浸漬されたスクリュロータ3,4のロータ部31,41を陽極とした通電により電解液中で火花放電を行うことにより行われる。
スクリュ圧縮機1のスクリュロータ3,4に設けられたロータ部31,41表面に対する本発明による表面処理は,電解液中に浸漬されたスクリュロータ3,4のロータ部31,41を陽極とした通電により電解液中で火花放電を行うことにより行われる。
この陽極火花放電処理に使用する電解装置は特に限定されず,既知の各種の電解装置を用いることができる。
また,ロータ部31,41を浸漬する電解液としては,陽極火花放電処理に使用する既知の各種の電解液を使用することができるが,好ましくはジルコニウム塩を含む電解液を使用する。
使用する電解液としては,水とジルコニウム化合物,及び,アルカリ金属イオン,アンモニウムイオン,有機アルカリのいずれか1種以上を含有する電解液の使用が好ましく,一例として,水と,ジルコニウム化合物と,アルカリ金属イオン及び/又はアンモニウムイオンとを含有する電解液を好適に使用することができる。
電解液に含めるジルコニウム化合物は特に限定されないが,水溶性ジルコニウム化合物であることが好ましく,このような水溶性ジルコニウム化合物を使用することにより緻密な構造を有する被膜の形成が可能である。
また,使用する電解液は,二種以上のジルコニウム化合物を含んでいても良く,この場合,ジルコニウム化合物の少なくとも一種,より好ましくはその全てが水溶性ジルコニウム化合物であるのが好ましい。
この水溶性ジルコニウム化合物としては,酢酸ジルコニウム,ギ酸ジルコニウム,乳酸ジルコニウム等の有機酸のジルコニウム塩;炭酸ジルコニウム,炭酸ジルコニウムカリウム,酢酸ジルコニウムアンモニウム,シュウ酸ジルコニウムナトリウム,クエン酸ジルコニウムアンモニウム,乳酸ジルコニウムアンモニウム,グリコール酸ジルコニウムアンモニウム等のジルコニウム錯塩が使用可能であるが,使用可能な水溶性ジルコニウム化合物はこれらに限定されない。
特に,化学式M2ZrO(CO3)2(式中のMはアンモニウムまたはアルカリ金属を示す。)で表される炭酸ジルコニウム化合物は,アルカリ性電解液中に溶解して安定して存続しやすい点で好ましく,このような炭酸ジルコニウム化合物としては,例えば,炭酸ジルコニウムアンモニウム,炭酸ジルコニウムカリウムが挙げられる。
また,ジルコニウム化合物としては,水酸化ジルコニウムも好適に用いることができる。
電解液中におけるジルコニウム化合物の含有量は,ジルコニウム換算で0.0001〜5mol/Lであるのが好ましく,より好ましくは0.001〜0.5mol/Lである。
このようなジルコニウム塩を含む電解液を使用した陽極火花放電処理により,ロータ部31,41表面に形成されたセラミックス被膜を主としてZrO2−Al2O3−MgOを組成とする機械的特性に優れたジルコニア系のセラミックス被膜とすることができる。
電解液の温度は特に限定されず,各種の温度において行うことが可能であるが,陽極火花放電処理の経済性,及び陽極となるロータ部31,41が陽極火花放電処理によって溶解することを抑制できる点で10〜60℃の範囲として行うことが好ましく,この温度に維持するために,電解浴を冷却するものとしても良い。
電解処理の方法は特に限定されず,例えば直流電解法,バイポーラ電解法,パルス電解法等の既知の各種の方法を適用可能であるが,直流電解法は電解液が沸騰してしまうため経済性に優れないという欠点があり,比較的高電圧で行うバイポーラ電解法,パルス電解法の適用が好ましい。特にバイポーラ電解法では,直流成分に交流成分を重畳した電圧波形を用いるのが好ましい。
パルス電解法においては,直流成分または交流成分に,デューティー比0.5以下の矩形波,正弦波及び三角波からなる群から選択される少なくとも一つのパルス波を重畳した電圧波形を用いるのが好ましい。
電解処理の条件は,使用する上記電解液の種類,処理対象とするロータ部31,41の材質やサイズ,形成する被膜の厚み等に応じて適宜選択することができるが,アルミニウム合金製のロータ部31,41を処理対象とする本願発明において,電極には少なくとも200V以上の電圧を印加する必要があり,一例としてアルカリ性電解液中でバイポーラ電解法またはパルス電解法により電解処理(陽極酸化処理)を行う場合,電圧波形の最大値(ピーク電圧)は,好ましくは300〜800Vであり,より好ましくは400〜800Vである。
電圧波形の最大値が300V以上,特に400V以上であると,火花放電を生じさせやすく,一方,電圧波形の最大値が800V以上であると,形成された被膜の表面粗さが大きくなりすぎるためである。
本実施形態にあっては一例として600Vの電圧を周波数60Hzで印加した。
また,電流密度は,正のピーク時が1〜250A/dm2の範囲とすることが好ましく,より好ましくは20〜150A/dm2の範囲である。電流密度を正のピーク時で1A/dm2以上とすることにより被膜の形成速度が速くなり加工性が向上するだけでなく,アルミニウムの酸化および酸化ジルコニウムの結晶化が進みやすいためであり,一方,電流密度が正のピーク時で250A/dm2以上とすると,形成される被膜の表面粗度が大きくなり好ましくないためである。
本電解処理の際,その表面に明らかな発光現象が見られる場合がある。発光は目視で容易に確認することができる。本電解処理では,この発光を伴いながら処理を行うのが好ましい。この液中で生じる発光現象については不明な点が多く,発光については,グロー放電,アーク放電,マイクロアーク放電,プラズマ放電などと呼ばれている。これら発光が生じる際の温度は,1000℃を上回るとされており,そのために電解液中のジルコニウムを結晶化させて析出させることができる。
電解処理時間は特に限定されず,所望の被膜厚さとなるように適宜選択することができるが,一例として1〜45分間であるのが好ましく,5〜30分間であるのがより好ましい。
本発明の方法により得られる被膜は,厚さを特に限定されず所望の厚さとすることができ,通常0.01〜500μmであるのが好ましく,0.5〜50μmであるのが好ましい。上記範囲であると,耐衝撃性が優れたものとなり,また,電解処理の時間が長すぎて経済性に劣るということもない。本実施形態にあっては一例として処理時間を10分として約2〜10μm程度のセラミック被膜を形成した。
以上の陽極火花放電処理により,スクリュ圧縮機1のスクリュロータ3,4に設けられたロータ部31,41表面には,母材中のAl,Mg,及び電解液中のジルコニウムにより,ZrO2−Al2O3−MgO組成を有するジルコニウムセラミックス層が形成される。
このジルコニウムを含有するセラミックスは,エンジニアリングセラミックスとしても知られる高硬度で靱性の高い材質であり,これにより,ロータ部31,41の耐摩耗性や耐熱性,耐食性を飛躍的に向上させることが可能である。
この表面処理方法は電解液にロータ部31,41を浸漬して表面処理を行うことから,複雑な歯形を有するロータ部31,41であっても均一な膜厚で被膜を形成することができ,圧縮機毎の性能のバラツキを小さくすることができ,また,このような膜厚の均一性から,腐蝕や剥離の基点となり易い薄膜部の発生を防止することができる。
3.固体潤滑剤被膜の形成処理
以上のようにして,陽極火花放電処理によるセラミックス被膜が形成されたスクリュロータ3,4のロータ部31,41の表面に対しては,必要に応じて固体潤滑剤被膜を形成する(図4参照)。
以上のようにして,陽極火花放電処理によるセラミックス被膜が形成されたスクリュロータ3,4のロータ部31,41の表面に対しては,必要に応じて固体潤滑剤被膜を形成する(図4参照)。
この固体潤滑剤被膜の形成は,前述したようにオス,メスのスクリュロータ3,4のいずれか一方に対して行うものとしても良いが,好ましくはオス・メスいずれのスクリュロータ3,4共に固体潤滑剤被膜を形成する。
固体潤滑剤被膜の形成は,既知の各種の方法により行うことができ,例えばフッ素樹脂の塗布や,耐熱性の樹脂をバインダとした二硫化モリブデン等の固体潤滑剤粉末の塗布などによって形成することができる。
固体潤滑剤被膜は,最初に必要とされる膜厚よりも厚く形成しておき,これを従来技術として説明したすりあわせによって摩耗させて,最終的な膜厚に調整するものとしても良い。
一例として,このようなすりあわせは,同一のシリンダ20内に組み込まれて使用される1組のオス,メスロータ3,4を略平行軸線上に噛み合わせて回転自在に支持すると共に,両スクリュロータ3,4に付与すべきバックラッシュと同等のバックラッシュを有する同期歯車を両スクリュロータ3,4のロータ軸32,42に固定し,この状態で一方のスクリュロータにブレーキトルクをかけた状態で他方のスクリュロータを正転及び逆転して駆動しながら両スクリュロータの芯間距離を徐々に狭めることで,この駆動の際の乾摩擦によりスクリュロータの固体潤滑剤被膜に摩耗を生じさせて調整することができる。
以上のように,セラミックス被膜の表面にさらに固体潤滑剤被膜を形成した場合には,ロータ部31,41表面の潤滑性をより一層向上させることができる。
しかも,スクリュロータ3,4のロータ部31,41表面に直接固体潤滑剤の被膜を形成していた従来のオイルフリースクリュ圧縮機のスクリュロータ3,4に比較して,固体潤滑剤被膜の膜厚を薄く形成した場合であっても,十分な耐腐蝕性,耐摩耗性等を付与することができ,また,固体潤滑剤被膜の薄膜化が可能であることから,前述のすりあわせが容易であると共に,すりあわせ時に固体潤滑剤被膜が剥離等することも防止できた。
以下に塩水噴霧による耐食性試験を行った結果を示す。
(1)実施例
実施例として,アルミニウム合金であるAC7A(Si:0.2%以下,Mg:3.5〜5.5%)を使用し,これにジルコニウム塩を含む電解液によって陽極火花放電を行うことにより,表面にセラミックス被膜を30μm(実施例1),10μm(実施例2)の厚みで形成した試料をそれぞれ用意した。
実施例として,アルミニウム合金であるAC7A(Si:0.2%以下,Mg:3.5〜5.5%)を使用し,これにジルコニウム塩を含む電解液によって陽極火花放電を行うことにより,表面にセラミックス被膜を30μm(実施例1),10μm(実施例2)の厚みで形成した試料をそれぞれ用意した。
(2)比較例
比較例として,アルミニウム合金であるAC4C(Si:6.5〜7.5%,Mg0.2〜0.4%)を使用し,これにジルコニウム塩を含む電解液によって陽極火花放電を行うことにより表面に厚さ30μmのセラミックス被膜を形成した試料(比較例1),及び,同様のアルミニウム合金(AC4C)に対し,既知の方法によって表面に厚さ30μmの硬質アルマイト被膜を形成した試料(比較例2)をそれぞれ用意した。
比較例として,アルミニウム合金であるAC4C(Si:6.5〜7.5%,Mg0.2〜0.4%)を使用し,これにジルコニウム塩を含む電解液によって陽極火花放電を行うことにより表面に厚さ30μmのセラミックス被膜を形成した試料(比較例1),及び,同様のアルミニウム合金(AC4C)に対し,既知の方法によって表面に厚さ30μmの硬質アルマイト被膜を形成した試料(比較例2)をそれぞれ用意した。
(3)試験方法
上記の各試料(実施例1,2,比較例1,2)に対し,塩水濃度5%の塩水を噴霧し,35℃の温度にて200時間,600時間,1000時間放置した後の表面状態を観察した。
上記の各試料(実施例1,2,比較例1,2)に対し,塩水濃度5%の塩水を噴霧し,35℃の温度にて200時間,600時間,1000時間放置した後の表面状態を観察した。
(5)試験結果の考察
硬質アルマイトの被膜を形成した比較例2の試料にあっては,200時間の経過時に既に錆び(腐蝕)が発生していた。
硬質アルマイトの被膜を形成した比較例2の試料にあっては,200時間の経過時に既に錆び(腐蝕)が発生していた。
また,陽極火花放電によりセラミックスの被膜を形成した比較例1の試料にあっては,200時間,600時間の経過後においては錆びの発生を確認することができず,硬質アルマイト被膜を形成した比較例2の試料に比較して高い耐食性を有することが確認できたものの,1000時間の経過により錆びが発生していることが確認された。
これに対し,本願発明の方法によりセラミックス被膜を形成した実施例1,2の試料にあっては,いずれ共に1000時間の経過後においても錆びの発生を確認することができず,このことから,母材中の合金成分を適切に調整することにより,耐食性の飛躍的な向上を得ることができることが確認できた。
特に,実施例2の試料にあっては,形成されたセラミックス被膜の厚みが10μmと,比較例1の試料に形成されたセラミックス被膜に比較して1/3の厚みであるにも拘わらず,比較例2の試料に対しても高い耐食性を示していることから,本発明の表面処理方法によれば被膜の薄膜化が可能であり,被膜形成前の流体機械用スクリュロータを製品の最終形状に近付けた形状とすることも可能である。
1 スクリュ圧縮機
3 スクリュロータ(オスロータ)
31 ロータ部(オスロータの)
31a 吐出側端面(オスロータのロータ部の)
31b 吸入側端面(オスロータのロータ部の)
32 ロータ軸(オスロータの)
4 スクリュロータ(メスロータ)
41 ロータ部(メスロータの)
41a 吐出側端面(メスロータのロータ部の)
41b 吸入側端面(メスロータのロータ部の)
42 ロータ軸(メスロータの)
10 ケーシング
11 吸入口
12 吐出口
20 シリンダ
51,52 タイミングギヤ
3 スクリュロータ(オスロータ)
31 ロータ部(オスロータの)
31a 吐出側端面(オスロータのロータ部の)
31b 吸入側端面(オスロータのロータ部の)
32 ロータ軸(オスロータの)
4 スクリュロータ(メスロータ)
41 ロータ部(メスロータの)
41a 吐出側端面(メスロータのロータ部の)
41b 吸入側端面(メスロータのロータ部の)
42 ロータ軸(メスロータの)
10 ケーシング
11 吸入口
12 吐出口
20 シリンダ
51,52 タイミングギヤ
Claims (12)
- スクリュ流体機械のスクリュロータを,ロータ軸の外周にSiの含有量が1wt%以下であるアルミニウム合金製のロータ部を形成した構造とし,
前記ロータ部を電解液中に浸漬して該ロータ部を陽極とした通電により火花放電を行うことにより,前記ロータ部表面にアルミニウムの酸化物を組成中に含むセラミックスの被膜を析出させたことを特徴とするスクリュ流体機械用スクリュロータの表面処理方法。 - 前記電解液にジルコニウム塩を含め,前記ロータ部表面に主としてZrO2−Al2O3の組成を有するセラミックスの被膜を析出させることを特徴とする請求項1記載のスクリュ流体機械用スクリュロータの表面処理方法。
- 前記アルミニウム合金をAl−Mg系合金としたことを特徴とする請求項1記載のスクリュ流体機械用スクリュロータの表面処理方法。
- 前記電解液にジルコニウム塩を含め,前記ロータ部表面に主としてZrO2−Al2O3−MgOの組成を有するセラミックスの被膜を析出させることを特徴とする請求項3記載のスクリュ流体機械用スクリュロータの表面処理方法。
- 前記セラミックス被膜の表面に,さらに固体潤滑剤被膜を形成することを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載のスクリュ流体機械用スクリュロータの表面処理方法。
- 前記処理を,オイルフリースクリュ圧縮機,又は水噴射式スクリュ圧縮機のスクリュロータに対して行うことを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載のスクリュ流体機械用スクリュロータの表面処理方法。
- ロータ軸の外周にロータ部を形成したスクリュ流体機械のスクリュロータにおいて,
前記ロータ部をSiの含有量が1wt%以下のアルミニウム合金で製造すると共に,前記ロータ部の表面を,電解液中における火花放電により析出されたアルミニウムの酸化物を組成中に含むセラミックスの被膜で被覆したことを特徴とするスクリュ流体機械用スクリュロータ。 - 前記電解液にジルコニウム塩を含め,主としてZrO2−Al2O3の組成を有するセラミックス被膜で前記ロータ部の表面を被覆したことを特徴とする請求項7記載のスクリュ流体機械用スクリュロータ。
- 前記アルミニウム合金をAl−Mg系合金としたことを特徴とする請求項7記載のスクリュ流体機械用スクリュロータ。
- 前記電解液にジルコニウム塩を含め,主としてZrO2−Al2O3−MgOの組成を有するセラミックスの被膜で前記ロータ部の表面を被覆したことを特徴とする請求項9記載のスクリュ流体機械用スクリュロータ。
- 前記セラミックス被膜の表面をさらに固体潤滑剤被膜で被覆したことを特徴とする請求項7〜10いずれか1項記載のスクリュ流体機械用スクリュロータ。
- 前記スクリュロータが,オイルフリースクリュ圧縮機,又は水噴射式スクリュ圧縮機のスクリュロータである請求項7〜11いずれか1項記載のスクリュ流体機械用スクリュロータ。
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2008
- 2008-03-28 JP JP2008087402A patent/JP2009243281A/ja active Pending
Cited By (2)
| Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
|---|---|---|---|---|
| JP2015183572A (ja) * | 2014-03-24 | 2015-10-22 | 樫山工業株式会社 | 真空ドライポンプのローターアセンブリおよびドライスクリューポンプ |
| JP2018131969A (ja) * | 2017-02-15 | 2018-08-23 | 三菱重工サーマルシステムズ株式会社 | 冷媒圧縮機における摺動部材、及び同部材を有する冷媒圧縮機 |
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