JP2009114375A - セルロース誘導体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】低結晶性の粉末セルロースを、触媒の存在下、グリシドールを反応させて得られるセルロース誘導体の製造方法である。
【選択図】なし
Description
ヒドロキシエチルセルロースに代表される親水性セルロース誘導体の一般的な製造方法は、セルロースにエチレンオキシドのような親水化剤(親水性エーテル化剤)を直接作用させるのではなく、始めに大量の水および大過剰の水酸化ナトリウム等アルカリ金属水酸化物をスラリー状態で混合して、いわゆるアルカリセルロースとする、アルセル化またはマーセル化と呼ばれる極めて煩雑なセルロースの活性化処理が必要となる。
これらアルセル化処理により得られるアルカリセルロースは、セルロース分子中の大部分の水酸基がアルコラートとなっていると考えられており、実際にセルロース分子中のグルコース単位当たり、通常3モル量程度、少なくとも1モル量以上のアルカリが含有されている。このアルセル化により活性化したセルロースへエーテル化剤を添加することでセルロースエーテルが得られるが、アルセル化の際に残存する同重量以上の水もまたエーテル化剤であるエチレンオキシドと反応(水和)するため、例えばエチレングリコール等の副生物が大量に生じることになる。また反応後にはこれらの副生物だけでなくアルセル化に用いたアルカリに由来する大量の中和塩の除去も必要である。また更にはこのエチレンオキシドが高圧ガスの規制を受けるため、工業的な観点からも設備的な制約が多い。
したがって、簡便でかつ効率の良いセルロースへのグリシドールの付加方法の開発は、工業的な観点からもセルロースの親水性基を付与する手段として、極めて有用な課題である。
すなわち、本発明は、低結晶性の粉末セルロースを、触媒の存在下、グリシドールと反応させる、下記一般式(1)で表されるセルロース誘導体の製造方法である。
以下、本発明の製造方法について詳細に説明する。
一般にセルロースは幾つかの結晶構造が知られており、また一部に存在するアモルファス部と結晶部との割合から結晶化度として定義されるが、本発明における「結晶化度」とは、天然セルロースの結晶構造に由来するI型の結晶化度を示し、粉末X線結晶回
折スペクトルから求められる下記計算式(1)で表される結晶化度によって定義される。
結晶化度(%)=〔(I22.6−I18.5)/I22.6〕×100 ・・・計算式(1)
〔I22.6は、X線回折における格子面(002面)(回折角2θ=22.6°)の回折強度、及びI18.5は、アモルファス部(回折角2θ=18.5°)の回折強度を示す〕
また、本発明における低結晶性の粉末セルロースの「低結晶性」とは、上記のセルロースの結晶構造においてアモルファス部の割合が多い状態を示し、好ましくは上記計算式(1)から得られる結晶化度が50%以下となることが望ましい。
一般的に知られている粉末セルロースにも極めて少量のアモルファス部が存在するため、それらの結晶化度は、本発明で用いる計算式(1)によれば、概ね60〜80%の範囲に含まれる、いわゆる結晶性のセルロースであり、セルロース誘導体合成における反応性は極めて低い。
この方法に用いられる押出機としては、単軸又は二軸の押出機を用いることができ、強い圧縮せん断力を加える観点から、スクリューのいずれかの部分に、いわゆるニーディングディスク部を備えるものであってもよい。押出機を用いる処理方法としては、特に制限はないが、チップ状パルプを押出機に投入し、連続的に処理する方法が好ましい。
また、ボールミルとしては、公知の振動ボールミル、媒体攪拌ミル、転動ボールミル、遊星ボールミル等を用いることができる。媒体として用いるボールの材質に特に制限はなく、例えば、鉄、ステンレス、アルミナ、ジルコニア等が挙げられる。ボールの外径は、効率的にセルロースを非晶化させる観点から、好ましくは0.1〜100mmである。また媒体としては、ボール以外にもロッド状のものやチューブ状のものも用いることが可能である。
ボールミルの処理時間としては、結晶化度を低下させる観点から、好ましくは5分〜72時間である。またこの処理の際には、発生する熱による変性や劣化を最小限に抑えるためにも、250℃以下、好ましくは5〜200℃の範囲で処理を行うことが好ましく、さらには必要に応じて、窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うことができる。
前述のような方法を用いれば、分子量の制御も可能であり、一般には入手困難な、重合度が高く、かつ低結晶性の粉末セルロースを容易に調製することが可能であるが、好ましい重合度としては、100〜2000であり、より好ましくは100〜1000である。
この低結晶性の粉末セルロースの平均粒径は、粉体として流動性の良い状態が保てるならば特に限定されないが、本発明における一般的な反応条件においては、300μm以下が好ましく、20〜150μmがより好ましく、25〜50μmが更に好ましい。
本発明において、上記で得られた低結晶性の粉末セルロースに、触媒存在下、グリシドールと反応させて、前記一般式(1)で表されるセルロース誘導体(以下、単に「セルロース誘導体」ということがある)を得ることができる。
前記一般式(1)で表されるセルロース誘導体において、導入される一般式(2)若しくは(3)で示される置換基のセルロース中のグルコース単位当たりの置換度として、所望の置換度とすることが可能であるが、置換度としては、好ましくは0.01〜3であり、より好ましくは0.2〜2である。なお、前記の置換度は実施例に示す方法により測定される。
なお、グリシドールをセルロース分子中のグルコース単位当たり3モル倍より多く用いると、グリシドールがグリセリル基へ付加するため、セルロース上にポリグリセリル基を導入することも可能となる。
触媒の使用量としては、セルロースおよびグリシドールの双方に対して、触媒量で十分であり、具体的には、セルロース分子中のグルコース単位当たり0.1〜50モル%に相当する量が好ましく、更には1〜30モル%に相当する量がより好ましく、5〜25モル%に相当する量が最も好ましい。
非水極性溶媒としては、一般にアルセル化処理の際に用いられるようなイソプロパノール、tert-ブタノール等の2級又は3級の低級アルコール;1,4−ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のジグライム、トリグライム、ポリエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒;ジメチルスルホキシド等の親水性極性溶媒が挙げられる。一方、一般的な低極性または非極性溶媒、例えばトルエンやベンゼン、ヘキサンや他の炭化水素油等も、本発明の効果を損なわない範囲において用いることもできる。
非水極性溶媒の使用量としては、セルロースを溶解させる必要はないため、前述した文献にあるような前処理も必要とせず、また多量に用いる必要もなくそのまま添加できるが、触媒が希釈されて反応性が低下するのを避ける等の観点から、セルロースに対して10重量倍以下とするのが好ましい。
いずれの方法においても、反応系内の水分含有量がセルロースに対して100重量%以下であることが好ましい。セルロースに対する水分含有量がこの範囲内であれば、セルロースが過度に凝集することなく、流動性のある粉末状態で反応させることができる。この観点から、80重量%以下がより好ましく、5〜50重量%が最も好ましい。
このため、触媒を水溶液で添加する場合には、例えば、方法(a)においては、グリシドールの滴下により反応を進行させながら同時に脱水を行い、反応系内の水分含有量を前述した範囲に調整することも可能である。
また、通常のグリセリル化反応では、反応に用いたアルカリ等の塩基は反応終了後に中和塩として除去されるが、本発明における反応は、触媒反応であることから、その触媒に由来する中和塩の量も低減することが可能である。つまり、グリシドールや触媒に由来する副生成物や廃棄物が極めて少ないために、反応終了後の(洗浄等の)精製も容易となり、工業的な有用性も極めて高い。
本発明で使用できる反応装置としては、低結晶性のセルロース、触媒及びグリシドールをできる限り均一に混合できるものが好ましく、前述したミキサー等の混合機の他、特開2002-114801号公報明細書段落〔0016〕で開示しているような、樹脂等の混錬に用いられる、いわゆるニーダー等の混合機が最も好ましい。
本発明における反応温度としては、グリシドール自身の重合を避ける観点から、0〜150℃の範囲が好ましく、10〜100℃の範囲がより好ましく、20〜80℃の範囲が特に好ましい。
また、本発明における反応は、常圧下で行われることが好ましい。また、反応時の着色を避ける観点から、必要に応じて窒素等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
反応終了後は、酸またはアルカリを用いて中和し、必要に応じて、含水イソプロパノール、含水アセトン溶媒等で洗浄等を行った後、乾燥することにより、前記一般式(1)で表されるセルロース誘導体を得ることができる。
セルロースに対する水分含有量の測定は、赤外線水分計として、株式会社ケット科学研究所製「FD−610」を使用し、150℃にて行った。
本発明における最適なセルロースの水分含有量を確認するため、後述する製造例1に準じた方法により得られた非晶化セルロースに所定量の水を添加した後、激しく攪拌・振とうさせ、目視によりその凝集状態を繰り返し観察した。
その結果、セルロースを流動性のある粉末状態で反応させるためには、含水量として100重量%以下とするのが好適であると判断した。結果を表1に示す。
セルロースの結晶化度の算出は、株式会社リガク製「Rigaku RINT 2500VC X-RAY diffractometer」を用いて以下の条件で測定した回折スペクトルのピーク強度から前記計算式に従って行った。
X線源:Cu/Kα−radiation,管電圧:40kv,管電流:120mA,測定範囲:2θ=5〜45°,測定用サンプル:面積320mm2×厚さ1mmのペレットを圧縮し作製,X線のスキャンスピード:10°/min
(3)粉末セルロースの重合度の測定
粉末セルロースの重合度は、ISO−4312法に記載の銅アンモニア法により測定した。
(4)置換度の算出
置換度は、セルロース中のグルコース単位当たりのグリセリル基の平均導入量を示し、生成物の分析(置換度等)は、無水酢酸/ピリジンを用いた常法でのアセチル化を行い、このアセチル化体での各種NMR分析から行った。
(5)粉末セルロースの平均粒径の測定
粉末セルロースの平均粒径は、株式会社堀場製作所製レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置「LA−920」を用いて測定した。
木材パルプシート(ボレガード社製パルプシート、結晶化度74%)をシュレッダー(株式会社明光商会製、「MSX2000−IVP440F」)にかけてチップ状にした。
次に、得られたチップ状パルプを二軸押出機(株式会社スエヒロEPM製、「EA−20」)に2kg/hrで投入し、せん断速度660sec-1、スクリュー回転数300rpm、外部から冷却水を流しながら、1パス処理して粉末状にした。
次に、得られた粉末セルロースを、バッチ式媒体攪拌ミル(五十嵐機械社製「サンドグラインダー」:容器容積800mL、5mmφジルコニアビーズを720g充填、充填率25%、攪拌翼径70mm)に投入した。容器ジャケットに冷却水を通しながら、攪拌回転数2000rpm、温度30〜70℃の範囲で、2.5時間粉砕処理を行い、粉末セルロース(結晶化度37%、重合度500、平均粒径40μm)を得た。この粉末セルロースの反応には更に32μm目開きの篩をかけた篩下品(投入量の90%)を使用した。
なお、各結晶化度の異なる粉末セルロースは,ボールミル処理における処理時間を変えることで調製した。
1Lニーダー(株式会社入江商会製、PNV―1型)中に、前記製造例1で得られた低結晶性セルロース(結晶化度 37%、重合度500)100gおよびグリシドール37g(0.50mol)を加え、窒素雰囲気下室温で2時間攪拌した。次いで攪拌しながら48%水酸化ナトリウム水溶液5.8gを噴霧して加えて50℃に昇温し、そのまま6時間反応させた。反応中、セルロースは流動性のある粉末状態を保っていた。その後、酢酸で中和し、生成物をニーダーから取り出した後、含水イソプロパノール(含水量15%)およびアセトンで洗浄し、減圧下乾燥して、セルロース誘導体を130gの白色固体として得た。セルロースへのグリセリル基としての置換度は0.72、グリシドールのセルロースへの反応率は90%であった。
セルロースとして高結晶性の粉末セルロース(日本製紙ケミカル株式会社製セルロースパウダー KCフロック W-50(S);結晶化度 74%、重合度 500)を用いる以外は、実施例1と同様にして反応を行ったが、生成物の重量増加は全く見られず、セルロースへのグリセリル基としての置換度は0.02、グリシドールのセルロースへの反応率はわずか2%であった。
溶媒としてポリエチレングリコールジメチルエーテル(メルク製試薬、ポリエチレングリコールジメチルエーテル500)を400ml添加し、更に反応時間を20時間とする以外は実施例1と同様にして反応を行ったところ、凝集することなく極めて分散性の良好な状態を保持していた。セルロースへのグリセリル基としての置換度は0.74、グリシドールのセルロースへの反応率は91%であった。
セルロースとして高結晶性の粉末セルロース(日本製紙ケミカル株式会社製セルロースパウダー KCフロック W-50(S);結晶化度 74%、重合度 500)を用いる以外は、実施例2と同様にして反応を行ったが、グリシドールのセルロースへの反応は全く確認されなかった。
Claims (6)
- 触媒量の触媒の存在下で反応させる、請求項1に記載のセルロース誘導体の製造方法。
- 低結晶性の粉末セルロースの結晶化度が50%以下である、請求項1又は2に記載のセルロース誘導体の製造方法。
- 低結晶性の粉末セルロースに対する水分含有量が100重量%以下である、請求項1〜3のいずれかに記載のセルロース誘導体の製造方法。
- 低結晶性の粉末セルロースに対して10重量倍以下の非水極性溶媒を用いて反応させる、請求項1〜4のいずれかに記載のセルロース誘導体の製造方法。
- 触媒としてアルカリ金属水酸化物を用いる、請求項1〜5のいずれかに記載のセルロース誘導体の製造方法。
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