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JP2009178104A - ヘテロ接合性の消失を利用した二倍体細胞染色体特定領域のホモ化方法 - Google Patents

ヘテロ接合性の消失を利用した二倍体細胞染色体特定領域のホモ化方法 Download PDF

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JP2009178104A JP2008020848A JP2008020848A JP2009178104A JP 2009178104 A JP2009178104 A JP 2009178104A JP 2008020848 A JP2008020848 A JP 2008020848A JP 2008020848 A JP2008020848 A JP 2008020848A JP 2009178104 A JP2009178104 A JP 2009178104A
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Atsushi Odaka
敦史 小高
Hiroshi Sawara
弘師 佐原
Atsumi Ueda
充美 植田
Akihiko Kondo
昭彦 近藤
Yoji Hata
洋二 秦
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Gekkeikan Sake Co Ltd
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Abstract

【課題】本発明は、ヘテロ接合性の消失を利用した二倍体細胞において特定の位置に存在するヘテロ型の目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子をホモ化する方法。
【解決手段】ヘテロ型の目的の遺伝子を相同染色体の特定の領域に有する二倍体細胞から、該遺伝子についてホモ型である相同染色体を有する二倍体細胞を製造する方法であって、以下の工程を含む方法:
(1) 第一マーカー遺伝子を二倍体細胞におけるヘテロ型の相同染色体のいずれかに挿入および/または置換する工程;
(2) 工程(1)で得られた二倍体細胞を培養し、第一マーカー遺伝子の発現を指標にして第一マーカー遺伝子が導入された二倍体細胞を選抜する工程;
(3) 工程(2)で得られた二倍体細胞を培養し、該第一マーカー遺伝子の脱落を指標として、該特定の領域における目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子についてホモ型である相同染色体を有する二倍体細胞を得る工程。
【選択図】図1

Description

本発明は、ヘテロ接合性の消失を利用した二倍体細胞において特定の位置に存在するヘテロ接合性を目的の遺伝子型でホモ化する方法に関する。より詳細には、本発明は、ヘテロ接合性の消失を利用して、二倍体細胞における対立遺伝子(もしくは配列)の両方を破壊する方法、及び二倍体細胞における相同染色体の双方に標的遺伝子(もしくは配列)を導入する方法に関する。
今日までに種々の遺伝子組み換え方法が開発されてきたが、その殆どは遺伝子を導入する細胞が二倍体細胞である場合、相同染色体の一つのみに目的の遺伝子を挿入するものである。例えば、清酒酵母は安全な醸造微生物、高濃度のエタノールを生産、高いエタノール耐性、様々なストレスに強い、低温で発酵できる、増殖が早い、形質が安定しているといった、実験室酵母にはない、産業上有用な特徴を有している。しかしその一方で、清酒酵母は二倍体であるにもかかわらずほとんど胞子形成せず、劣性変異株の取得を困難にしている。そのため遺伝子工学用宿主としての利用の妨げになっていた。
劣勢変異株の取得方法に、変異処理が挙げられる。二倍体酵母も、一倍体酵母ほどではないが、変異処理により劣性変異株を取得することができる。特に、UV照射によって変異処理を行うと、効率的に変異株を取得することができたという報告がある。しかし、変異処理は望ましくない箇所にも変異が導入される危険性があり、ましてや複数回変異処理を行うことは望ましくないと考えられる。酵母の遺伝子破壊についても様々な報告がある。例えば、PCR産物を用いたジーンターゲッティングによる遺伝子破壊法(ワンステップ遺伝子破壊)、PCR産物もしくはプラスミドを導入後、選択マーカーを回収する遺伝子破壊法(ツーステップ遺伝子破壊)などが挙げられる。しかしこれらは一倍体酵母での研究結果であり、この方法を二倍体酵母に適用すると、ヘテロ破壊株が得られ、劣性変異は表現型として現れない。このヘテロ破壊株からホモ破壊株を作製するには、一般的には酵母に胞子形成させ、一倍体の破壊株同士を掛け合わせることによって取得することはできる。ところが、清酒酵母はほとんど胞子形成をしないので、このホモ化の方法を適用できない。そのため、Kitamotoらは清酒酵母のTRP1へテロ破壊株を作製、それを培養後、その中の約1万株から網羅的にTrp要求性へと変化した株を探索した結果、2株取得したという報告もある。このように栄養要求性株なら、時間と労力をかけても目的とする遺伝子破壊株の取得は可能ではあるが、表現型の確認に手間がかかる、もしくは表現型を確認できない遺伝子については、網羅的スクリーニングではその遺伝子破壊株の取得はほとんど不可能である。
一方で、清酒酵母に遺伝子を導入するには染色体の特定の部位に1〜2コピー組込む手法が採られる(選択圧が必要ないためおよび2μmマルチコピータイプのプラスミドを菌体内に保持できないため)。また、清酒酵母は二倍体である(相同染色体が二本ある)ため、その両方に遺伝子を組込めるはずであるが、実際は片方にだけ組込まれることがほとんどである。一般的にヘテロな領域は遺伝学的に不安定なものであると考えられているため、二倍体酵母での遺伝子導入においても、ホモ型にしておくことが望ましいと考えられる。遺伝子導入の効果を更に高めるためのコピー数の増加、形質の安定性向上のために、ホモ型組込み株を作製するのが、有効であることが示唆される。
二倍体酵母において、ヘテロ組込み株からホモ組込みを作製するのにも、一般的には酵母に胞子形成させ、一倍体の組込み株同士を掛け合わせることによって取得することはできるが、ここでも清酒酵母の胞子形成能の低さが、その妨げとなっており、ホモ型組込み株の取得は網羅的スクリーニングに頼らざるを得ない。
このように、ヘテロな領域をホモ化することによって、ホモ破壊株やホモ型遺伝子組込み株を作製することは清酒酵母の利用価値を高め、産業上有用な株を構築することができる。そこで、我々はヘテロな領域がホモ化された株を効率よく選抜する「Highly Efficient Loss of Heterozygosity method (HELOH法)」を開発し、胞子形成をほとんどしない二倍体清酒酵母の遺伝子破壊およびホモ型組込み株の作製を行った。
特開2004−49171 Hashimoto, et al., Appl. Environ. Microbiol., vol.71, p. 312-319, 2005 Kitamono et al., Agic. Biol. Chem. 54, 2979-2987 (1990)
本発明は、ヘテロ接合性の消失を利用した二倍体細胞において特定の位置に存在するヘテロ型の目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子をホモ化する方法、より詳細には、ヘテロ接合性の消失を利用して、二倍体細胞における対立遺伝子(もしくは配列)の両方を破壊する方法、及び二倍体細胞における相同染色体の双方に標的遺伝子(もしくは配列)を導入する方法を提供することを目的とする。
以上のような現状に鑑みて本願発明者らは鋭意研究を重ねた結果、マーカー遺伝子(特に、二倍体細胞の感受性または要求性を相補することによって、その導入及び除去を検出することが可能であるマーカー遺伝子もしくは2つのマーカー遺伝子の組合せ)と、ヘテロ接合性の消失(loss of heterozygosity:以下、LOHという)を利用することにより、ヘテロ接合性を有する二倍体細胞から当該遺伝子型について少なくとも1組はホモ型である二倍体細胞が非常に効率的に得られることを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、本発明は、以下の特定の領域においてヘテロ型の目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子がホモ化された二倍体細胞を製造する方法を提供する。
項1. ヘテロ型の目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子を相同染色体の特定の領域に有する二倍体細胞から、該特定の領域における目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子についてホモ型である相同染色体を有する二倍体細胞を製造する方法であって、以下の工程を含む方法:
(1) 第一マーカー遺伝子を二倍体細胞におけるヘテロ型の相同染色体のいずれかに挿入および/または置換する工程;
(2) 工程(1)で得られた二倍体細胞を培養し、第一マーカー遺伝子の発現を指標にして第一マーカー遺伝子が導入された二倍体細胞を選抜する工程;
(3) 工程(2)で得られた二倍体細胞を培養し、該第一マーカー遺伝子の脱落を指標として、該特定の領域における目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子についてホモ型である相同染色体を有する二倍体細胞を得る工程。
項2. ヘテロ型の目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子を相同染色体の特定の領域に有する二倍体細胞が、以下の工程を含む方法によって得られる、項1に記載の方法:
(1) 第二マーカー遺伝子と目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子とを二倍体細胞の相同染色体の特定の領域に挿入および/または置換する工程;
(2) 工程(1)で得られた二倍体細胞を培養し、第二マーカー遺伝子の発現を指標にして、ヘテロ型の目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子を相同染色体の特定の領域に有する二倍体細胞を得る工程。
項3. 第一マーカー遺伝子と第二マーカー遺伝子が異なるマーカー遺伝子である、項2に記載の方法。
項4. マーカー遺伝子が二倍体細胞の感受性又は要求性を相補するマーカー遺伝子である、項1又は2に記載の方法。
項5. マーカー遺伝子が感受性および/または要求性の相補、並びに感受性および/または要求性への復帰の双方を検出できるものである項1〜4のいずれかに記載の方法。
項6. マーカー遺伝子がURA3、URA5,LYS2、LYS5、LEU2、HIS3、KanMX、AUR1−R、CYH2、CAN1、TRP1、GAP1、及びGIN11M86から成る群から選択される一種以上のマーカー遺伝子である、項4又は5に記載の方法。
項7. 感受性が、薬剤感受性、温度感受性、UV感受性、放射線感受性から成る群から選ばれる感受性である、項4又は5に記載の方法。
項8. 二倍体細胞が酵母である項1〜7のいずれかに記載の方法。
項9. 酵母がSaccharomyces属、Candida属、Torulopsis属、Zygosaccharomyces属、Schizosaccharomyces属、Pichia属、Yarrowia属、Hansenula属、Kluyveromyces属、Debaryomyces属、Geotrichum属、Wickerhamia属、Fellomyces属、Sporobolomyces属のいずれかである項8に記載の方法。
項10. Saccharomyces属の酵母がSaccharomyces cerevisiaeである項9に記載の方法。
項11. 目的の構造遺伝子がLEU2、HIS3、PEP4、及びSED1遺伝子から成る群から選択される一種以上である項1〜10に記載の方法。
項12. 目的の調節遺伝子がプロモーターおよび/またはターミネーターを含む領域である項1〜11のいずれかに記載の方法。
項13. プロモーターがSED1プロモーターである項12に記載の方法。
項14. 目的の構造遺伝子がSED1プロモーター下流に発現可能な形で構造遺伝子を接続したものである項1〜13のいずれかに記載の方法。
項15. 目的の構造遺伝子がBGL1、BGL7、ATF1、及びATF2から成る群から選択される一種以上である項1〜10及び項12〜14のいずれかに記載の方法。
項16. 項1〜15のいずれかに記載の方法により得られた遺伝子破壊酵母。
項17. 項1〜15のいずれかに記載の方法により得られた遺伝子高発現酵母。
本発明の方法を用いることにより、ヘテロ型の遺伝子、即ち、相同染色体の一つのみに存在する目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子を有する二倍体細胞から、当該遺伝子についてホモ型(即ち、相同染色体の少なくとも1組に当該遺伝子型を有する)の二倍体細胞を効率的に製造することができる。よって、本発明の方法によって、特定の遺伝子型を完全に(相同染色体の少なくとも1組について)破壊した二倍体細胞を得ることや、新たな遺伝子を相同染色体の少なくとも1組に導入することを従来よりも極めて効率的に行うことができる。
例えば、Kitamotoらは清酒酵母のTRP1へテロ破壊株を作製、それを培養後、その中の約1万株から網羅的にTrp要求性へと変化した株を探索した結果、2株取得したという報告をしている。この場合、約1万株について全てTrp要求性を調べる必要があり、非常に手間と時間がかかるものであった。それに対し、本発明の方法では、LOHの利用をすることにより、ポジティブセレクションでホモ型変異株を容易に、かつプレート1枚から多数得ることが可能となる。また、相同染色体のヘテロ接合性をホモ接合性に変換することはすなわちその遺伝子型が細胞内でより安定に保持されることを意味する。
一実施形態において本発明は、ヘテロ型の目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子を相同染色体の特定の領域に有する二倍体細胞から、該特定の領域における目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子についてホモ型である相同染色体を有する二倍体細胞を製造する方法であって、以下の工程を含む方法である。
(1) 第一マーカー遺伝子を二倍体細胞におけるヘテロ型の相同染色体のいずれかに挿入および/または置換する工程;
(2) 工程(1)で得られた二倍体細胞を培養し、第一マーカー遺伝子の発現を指標にして第一マーカー遺伝子が導入された二倍体細胞を選抜する工程;
(3) 工程(2)で得られた二倍体細胞を培養し、該第一マーカー遺伝子の脱落を指標として、該特定の領域における目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子についてホモ型である相同染色体を有する二倍体細胞を得る工程。
本発明において特定の領域とは、タンパク質をコードする遺伝子は勿論であるが、プロモーターやエンハンサーなどの何らかの機能を有する染色体上の任意の領域を意味する。特定の領域には、変異により機能を獲得、消失、又は機能が変化したものも含まれる。特定の領域は、野生型と変異型のいずれであってもよく、遺伝子の機能は現在公知の機能だけでなく、未知の機能であってもよい。なお特定の領域においてコードされるタンパク質の機能として具体的には、アミノ酸合成系、核酸合成系、プロテアーゼ、細胞壁タンパク質、転写因子などが挙げられる。
本発明において、構造遺伝子とはタンパク質をコードする塩基配列であり、調節遺伝子とはプロモーターやエンハンサーなどの何らかの遺伝子発現調節機能を有する塩基配列を意味する。導入は構造遺伝子、調節遺伝子のいずれかのみであってもよく、調節遺伝子と構造遺伝子の組み合わせであっても良い。なお、構造遺伝子にコードされるタンパク質の機能として具体的には、アミノ酸合成系、核酸合成系、プロテアーゼ、細胞壁タンパク質、転写因子などが挙げられる。調節遺伝子として具体的にプロモーター、ターミネーター、エンハンサー、転写因子結合領域など遺伝子発現量を調節するために必要な塩基配列が挙げられる。
本発明において、ヘテロ型とは1対の相同染色体上の特定の領域に含まれる構造遺伝子および/または調節遺伝子が互いに塩基配列レベルで相違していることを意味する。同様にホモ型とは一対の相同染色体上の特定の領域に含まれる構造遺伝子および/または調節遺伝子が互いに塩基配列レベルで同一であることを意味する。
本発明で使用される第一マーカー遺伝子及び第二マーカー遺伝子は、当該技術分野において使用されるマーカー遺伝子のいずれを用いてもよい。好ましい第一マーカー遺伝子は、二機能性マーカー遺伝子である。ここで、二機能性マーカー遺伝子とは、二倍体細胞にマーカー遺伝子を導入した場合に当該マーカー遺伝子が導入されたことを検出できる機能(導入検出機能)と、一度導入されたマーカー遺伝子が除去された場合にその宿主(細胞)を直接的に検出できる機能(除去検出機能)とを有するマーカー遺伝子を意味する。二機能性マーカー遺伝子は、導入検出機能のみを有するマーカー遺伝子と、除去検出機能のみを有する別個のマーカー遺伝子を組み合せたものでもよいが、取扱いの効率化の観点から、導入検出機能と除去検出機能の両方を一つのマーカー遺伝子が備えた単一の二機能性マーカーが好ましい。好ましい単一の二機能性マーカー遺伝子としては、例えば、URA3、URA5、LYS2及びLYS5を挙げることができる。
導入検出機能を有するマーカーと除去検出機能を有するマーカーとを組み合わせて二機能性マーカーとする場合に使用することができる導入検出機能マーカーとしては、当該技術分野において通常使用される導入検出機能を有するマーカーであれば任意のマーカーを使用することができ、例えば、薬剤耐性遺伝子や、蛍光タンパク質及び特定の反応を触媒する酵素をコードする遺伝子等のレポーター遺伝子とも呼ばれる遺伝子を挙げることができる。薬剤耐性遺伝子としては、例えば、G418耐性遺伝子、オーレオバシジン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、フレオマイシン耐性遺伝子、テトラサイクリン耐性遺伝子、ゼオシン耐性遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子などの公知の薬剤耐性遺伝子を使用することができるが、これらに限定される訳ではない。蛍光タンパク質としては、緑色蛍光タンパク質遺伝子やルシフェラーゼ遺伝子を挙げることができる。
本発明における感受性とは薬剤感受性、温度感受性、紫外線感受性、放射線感受性である。薬剤感受性とは薬剤耐性を持たないことを意味し、相補するマーカー遺伝子としては前記の薬剤耐性遺伝子を用いることが出来る。薬剤感受性相補遺伝子を導入することにより宿主細胞は薬剤存在下でも生育できる。
温度感受性とは正常な細胞が成育しうる温度範囲内の特定の温度以上あるいは以下で生育できない形質を意味し、低温感受性および高温感受性が知られている。これらの感受性を相補する遺伝子としては公知の温度感受性相補遺伝子を用いることが出来る。温度感受性相補遺伝子を導入することにより宿主細胞は正常な細胞が成育しうる温度で生育できる。
紫外線感受性および放射線感受性とは紫外線および放射線の照射による染色体遺伝子の損傷修復機能に欠陥がある形質を意味し、相補する遺伝子としては遺伝子損傷修復機能を有するRAD54遺伝子など公知の遺伝子を用いることが出来る。紫外線感受性および放射線感受性相補遺伝子を導入することにより宿主細胞は紫外線および放射線照射後も生育できる。
本発明における要求性とは栄養要求性、すなわち特定のアミノ酸、ビタミン、核酸などの非存在下では生育できないまたは生育が非常に遅い形質を意味し、そのような要求性としてウラシル要求性、リジン要求性、ロイシン要求性、ヒスチジン要求性、トリプトファン要求性、メチオニン要求性、ビオチン要求性、アデニン要求性などが知られている。これらの要求性を相補するマーカー遺伝子としてURA3遺伝子、URA5遺伝子、LYS2遺伝子、LYS5遺伝子、LEU2遺伝子、HIS3遺伝子、TRP1遺伝子、MET1遺伝子、MET3遺伝子、BIO6遺伝子のほか公知の遺伝子を利用することが出来る。栄養要求性相補遺伝子を導入することにより宿主細胞は特定のアミノ酸、ビタミン、核酸などの非存在下でも生育できる。
また、本発明における「復帰」とは宿主細胞の感受性・要求性を、それを相補する遺伝子を導入することによって相補した後、突然変異処理により導入前の感受性・要求性を再び示すようになった状態を言う。
本発明のマーカー遺伝子は、二倍体細胞中で発現できるように、その5’末端側に二倍体細胞中で機能するプロモーター配列を有し、3’末端にターミネーター配列を有する。マーカー遺伝子を二倍体細胞が本来有するプロモーターの下流に導入することによって、二倍体細胞が本来有するプロモーターを利用してマーカー遺伝子発現させることも可能である。この場合はマーカー遺伝子の5’末端側のプロモーターを省略することができる。
本発明のマーカー遺伝子は、相同組換えによって二倍体細胞の染色体に導入される。よって、マーカー遺伝子(プロモーター及びターミネーターを含む)は、その5’末端側と3’末端側に二倍体細胞の染色体DNAと相同な一対の塩基配列(以下、相同配列ともいう)を有するベクターの形態で二倍体細胞内に導入される。
この相同配列と二倍体細胞中の染色体DNAとが相同組換えを起こすことにより、二機能性マーカー遺伝子は二倍体細胞の染色体に挿入または置換によって導入される。塩基配列が明らかな二倍体細胞の染色体DNAに基づいて相同配列を設計することにより、マーカー遺伝子を染色体の特定の位置(領域)に導入することができる。
その際、染色体上の特定の領域の、5’側領域外塩基配列をマーカー遺伝子の5’側に、3’側領域外塩基配列をマーカー遺伝子の3’側に接続した形態で二倍体細胞内に導入すると置換型相同組換えを生じ、染色体上の特定の領域を目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子で置換することが出来る。
一方、染色体上の特定の領域の3’側内部塩基配列をマーカー遺伝子の5’側に、5’側内部塩基配列をマーカー遺伝子の3'側に接続した形態で二倍体細胞内に導入すると挿入型相同組換えを生じ、染色体上の特定の領域に目的の構造遺伝子及び/または調節遺伝子を挿入することが出来る。
マーカー遺伝子を二倍体細胞に導入するためのベクターは、プラスミドのような環状であってもよく、また線状のDNA断片であってもよい。二倍体細胞へのベクターの導入は、公知の遺伝子導入技術を用いて行うことができる。例えば、パーティクルガン法、エレクトロポレーション法、ポリエチレングリコール(PEG)法、リン酸カルシウム法、塩化カルシウム法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション、リポフェクション法、及び酢酸リチウム法等を挙げることができる。これらの方法は、二倍体細胞の種類に応じて適宜選択して使用することができる。二倍体細胞が二倍体酵母である場合は、例えば酢酸リチウム法を用いることが好ましい。
本発明の相同染色体の一方のみに存在する目的の遺伝子を有する二倍体細胞から、該目的の遺伝子を両方の相同染色体に有する二倍体細胞を製造する方法は、ヘテロ接合性の消失(LOH)という現象を利用した方法である。ここで、LOHとは、二倍体細胞中の一対の相同染色体の特定領域の対立する配列が異なる状態(ヘテロ接合性)が、染色体の不分離、不分離と重複、体細胞分裂における組換え、遺伝子変換、欠失、点変異などにより、その一対の相同染色体における特定の領域が塩基配列レベルで同一の状態(ホモ接合性)へと変化する現象のことである。例えば、出芽酵母の場合、細胞100万個に1個ないし1万個に1個の頻度でLOHが生じることが知られている。
本発明において、二機能性マーカー遺伝子を用いて、相同染色体の一方のみに存在する標的遺伝子(目的の遺伝子)を有する二倍体細胞から、相同染色体の両方にその標的遺伝子を有する二倍体細胞を得る原理は、次の通りであり、図1に模式的に示される。二機能性マーカーは、相同染色体の一方のみに標的遺伝子を有する二倍体細胞における、当該標的遺伝子を欠く相同染色体に導入される。二機能性マーカーが目的の相同染色体に導入された二倍体細胞は、当該マーカー遺伝子の導入検出機能を指標として検出される。例えば、ウラシル要求性の清酒酵母を二倍体細胞として用い、二機能性マーカー遺伝子としてURA3マーカー遺伝子を用いた場合、マーカー遺伝子導入操作後にウラシル非添加の選択培地上で増殖し、コロニーを形成する酵母は、染色体にURA3マーカー遺伝子を取り込んだ酵母である。よって、このようにウラシル非添加培地上で増殖する酵母を選択することによって、二機能性マーカーを相同染色体上に有する酵母を得ることができる。得られた酵母は、標的遺伝子を有する染色体と二機能性マーカー遺伝子を有する染色体からなる一対の相同染色体を有し、この相同染色体においてLOHが生じることにより、当該相同染色体を形成する両方の染色体が標的遺伝子を有することになる。この場合、マーカー遺伝子が存在する側の染色体は排除されるため、二機能性マーカー遺伝子は除去されることになる。一方、LOHが生じない場合やマーカー遺伝子を有する側の染色体が倍化する態様でLOHが生じた場合、標的遺伝子は相同染色体の片側のみに存在するか、又はいずれの染色体上にも存在せず、逆に二機能性マーカー遺伝子を染色体のいずれか又は両方に有する。このような相同染色体を有する目的外の二倍体細胞は、二機能性マーカー遺伝子の除去検出機能を指標にして排除することができる。例えば、上記のように二機能性マーカー遺伝子としてURA3を使用する場合、LOHによってマーカー遺伝子が除去された酵母だけが5−FOA培地上で生育できるため、5−FOA培地上で生育する酵母を選抜することによって、目的とする標的遺伝子についてホモ型の相同染色体を有する二倍体酵母を得ることができる。
標的遺伝子(目的の遺伝子)が相同染色体の両方に存在することは、任意の方法によって確認することができる。例えば、ホモ型になった標的遺伝子の表現型による確認や、標的遺伝子を挟んだ染色体上の領域に対してPCRを行ない、増幅された断片の大きさに基づいて確認することもできる。また、標的遺伝子に特異的なプローブを用いて検出してもよい。栄養要求性株については、培地に植菌することにより表現型を確認することもできる。
本発明において、マーカー遺伝子は、目的の遺伝子が存在しない側の相同染色体中であれば任意の位置に導入することができる。好ましくは、対立する相同染色体において目的の遺伝子が存在する特定の領域に相当する領域に導入され、最も好ましくは、対立する相同染色体において目的の遺伝子が存在する位置に相当する位置に導入される。
本発明において、マーカー遺伝子を挿入する対象となる、相同染色体の一方のみに標的遺伝子を有する二倍体細胞(ヘテロ型)は、公知の遺伝子組み換え方法によって作成することができ、その方法は特に限定されるものではない。例えば、ヘテロ型の目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子を相同染色体の特定の領域に有する二倍体細胞は、以下の工程を含む方法によって得られる。
(1) 第二マーカー遺伝子と目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子とを二倍体細胞の相同染色体の特定の領域に挿入および/または置換する工程;
(2) 工程(1)で得られた二倍体細胞を培養し、第二マーカー遺伝子の発現を指標にして、ヘテロ型の目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子を相同染色体の特定の領域に有する二倍体細胞を得る工程。
ここで、第二マーカー遺伝子は、上記に示すマーカー遺伝子のいずれであってもよい。
本発明において、二倍体細胞とは、染色体数(核相)が2nで表され、両親から由来する相同染色体を一対ずつ有する細胞を意味する。二倍体細胞には、二倍体である生物であれば任意のものが含まれ、例えば、酵母、カビ、植物、及び動物細胞を挙げることができる。好ましくは、比較的培養が容易な細胞であり、最も好ましくは二倍体酵母である。
上記本発明の実施形態における、相同染色体上の一方の遺伝子が特定の機能を有する遺伝子であって他方の遺伝子が当該機能を欠損している遺伝子であるヘテロ型標的対立遺伝子を有する二倍体細胞は、遺伝子ターゲッティングなどの公知の方法を用いて標的遺伝子についてホモ型の二倍体細胞から作成することができ、以下の工程を含む方法が一態様として挙げられる:
(1) (a)ループアウト形成配列、(b)二倍体細胞中で機能するプロモーター、(c)前記プロモーター配列の制御下にあるマーカー遺伝子の導入と除去の両方が検出可能な二機能性マーカー、並びに前記(a)〜(c)を挟んで5’末端側と3’末端側に配置される一対の相同組換え配列を含むベクターを、標的対立遺伝子について機能を有するホモ型である二倍体細胞に導入し、一方の相同染色体と相同組換えを起させる工程;
(2) 工程(1)で得られた細胞を培養し、二機能性マーカー遺伝子の発現を指標にして相同組換えされた染色体を有する二倍体細胞を選別する工程;
(3) 工程(2)で得られた細胞を培養し、二機能性マーカー遺伝子が除去された二倍体細胞を得る工程。
ここで、5’末端側に配置される相同組換え配列は、標的遺伝子の5’末端側にある塩基配列と相同な配列であり、3’末端側に配置される相同組換え配列は標的遺伝子の3’末端側にある塩基配列と相同な配列であり、ループアウト形成配列は前記二機能性マーカー遺伝子配列に対して5’末端側にある場合、該ループアウト形成配列は前記標的遺伝子の3’末端側にある塩基配列よりもさらに3’末端側にある塩基配列と相同な配列であり、該ループアウト形成配列が前記二機能性マーカー遺伝子配列に対して3’末端側にある場合、該ループアウト形成配列は前記標的遺伝子の5’末端側にある塩基配列よりもさらに5’末端側にある塩基配列である。この方法を用いた実施態様の模式図を図2に示す。
ここで、ループアウトとは、同一染色体上にある相同性を持った配列同士が組換えを起こし、その間の配列が抜け落ちる現象を言う。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
使用菌株と培地
大腸菌Escherichia coli DH5α゜ [F endA1 hsdR17 (rK -/mK -) supE44 thi-1 λrecA1 gyrA96 DlacU169 (φ80lacZΔM15)]を組換えDNA操作の宿主として用いた。大腸菌はLB(+Amp)培地(10 g/l polypeptone, 5 g/l yeast extract, and 10 g/l sodium chloride and 100 mg/l ampicillin)で37℃にて培養した。宿主およびテンプレートゲノムDNA抽出に用いる清酒酵母としてきょうかい9号(醸造協会)、GRI-117-U(特開2007−189909)、GRI-117-UK(Biochemical Engineering Journal Volume 33, Issue 3, March 2007, Pages 232-237)を用いた。酵母はその状況に応じて、YPD培地(非選択培地:10 g/l yeast extract, 20 g/l polypeptone and 20 g/l glucose)、SD培地(栄養要求性株選択培地:6.7 g/l yeast nitrogen base without amino acids, 20 g/l glucose and appropriate supplements)、5-FOA培地(Ura株選抜用:6.7 g/l yeast nitrogen base without amino acids, 20 g/l glucose, 1 g/l 5-FOA and 20 g/l uracil and appropriate supplements)、α-AA培地(Lys株選抜用:1.6 g/l yeast nitrogen base without amino acids and ammonium sulfate, 20 g/l glucose, 2 g/l DL-α-AA and 50 mg/l lysine-HCl)で30℃にて培養、寒天培地ではこれに2% agarを添加して30℃にて培養する。
実施例1
LYS2破壊株の作製
相同組換えに用いるDNA断片をジャンクションPCRで合成した。表1に示すプライマー(配列番号26〜33)を用い、酵母ゲノムDNAをテンプレートとし、5’末端側の相同組換え配列としてLYS2(-250〜220)、ループアウト形成配列としてLYS2(1881〜2380)、マーカー遺伝子としてURA3マーカー、3’末端側の相同組換え配列としてLYS2(1381〜1880)の各DNA断片をPCRにて増幅した。これらの断片を精製後、各断片を混合して、1F(配列番号26)および4R(配列番号33)のプライマーを用いて2回目のPCRを行うことにより2,602 bpの遺伝子置換用DNA断片lys2-URA3を作製した。この断片で清酒酵母GRI-117-U(ウラシル要求性)を形質転換し、片方の染色体のLYS2がlys2-URA3に置換された株を得た。この株をYPDで3日間培養し、5-FOAプレートに塗布すると、1.0×10−4の頻度でコロニーが出現した。コロニーを形成する菌体は、染色体からURA3マーカー遺伝子が除去されたものである。表3に示すプライマー(配列番号80,81)を用いて、コロニーから直接PCRを行い、増幅断片が2.6 kbと0.9 kbの2種類である株をLys2遺伝子とマーカー遺伝子URA3とがループアウトにより脱落した株として選抜した。得られた株をLYS2へテロ破壊株GKT1000とした。GKT1000は、相同染色体の一方のみにLys2遺伝子を有する。このGKT1000をYPDで3日間培養し、α-AAプレートに塗布すると、1.1×10-4の頻度でコロニーが出現した。出現したコロニーは、選択マーカーURA3がLOHにより消失し(ウラシル要求性を示し)、かつリジン要求性を示したため、これをLYS2ホモ破壊株GKT1001とした。
実施例2
LEU2破壊株の作製
相同組み換えに用いるDNA断片をジャンクションPCRにて合成した。表1に示すプライマー(配列番号34〜41)を用い、酵母ゲノムDNAをテンプレートとして、5’末端側の相同組換え配列としてLEU2(−150〜−1)、ループアウト形成配列としてLEU2(643〜1198)、マーカー遺伝子としてURA3マーカー、3’末端側の相同組換え配列としてLEU2(493〜642)の各DNA断片をPCRにて増幅した。これらの断片を精製後、各断片を混合して、1F(配列番号34)および4R(配列番号41)のプライマーを用いて2回目のPCRを行うことにより1,987 bpの遺伝子置換用DNA断片leu2-URA3を作製した。この断片で清酒酵母GKT1001を形質転換し、片方の染色体のLEU2がleu2−URA3に置換された株を得た。この株をYPDで3日間培養し、5-FOAプレートに塗布すると、1.6×10−5の頻度でコロニーが出現した。表3に示すプライマー(配列番号34、82)を用いて、コロニーから直接PCRを行い、増幅断片が1.4 kbと0.8 kbであるコロニーを選択マーカーURA3がループアウトにより脱落した株として選抜した。得られた株をLEU2へテロ破壊株GKT2000とした。
このGKT2000のLEU2の破壊領域をホモ化するために相同組換えによりURA3マーカーを含むプラスミドpRSU-LEU2でマーキングした。pRSU-LEU2構築は以下の通りである。まず、表2に示すプライマー(配列番号66〜69)を用いて、酵母ゲノムDNAをテンプレートとしてPCR、続けてジャンクションPCRを行った。得られたDNA断片を精製後、EcoR I, Sal Iで制限酵素処理し、これをEcoR I, Sal Iで制限酵素処理したpRS406へと挿入した。pRSU-LEU2を Hpa Iで制限酵素処理、線状化したのち、酢酸リチウム法でGKT2000へ導入することにより、LEU2非破壊領域がマーキングされた株GKT2000/pRSU-LEU2を得た。GKT2000/pRSU-LEU2をYPDで3日間培養し、5-FOAプレートに塗布すると、6.5×10-5の頻度でコロニーが出現した。本発明の方法を用いた場合、1枚のプレートでコロニーの検出が可能であるが、従来の網羅的スクリーニングで行う場合は100枚程度のプレートが必要である。出現したコロニーを表3に示すプライマー(配列番号34,82)を用いて、コロニーから直接PCRを行い、増幅断片が0.8 kbのみのコロニーを選択マーカーURA3がLOHにより消失した株として選抜した。出現したコロニーのおよそ4割がLEU2がホモ破壊された株であり、これをGKT2001とした。ウラシル、リジン、ロイシン要求性である。
実施例3
HIS3破壊株の作製
遺伝子置換に用いるDNA断片をジャンクションPCRにて合成した。表1に示すプライマー(配列番号42〜49)を用い、酵母ゲノムDNAをテンプレートとして、5’末端側の相同組換え配列としてHIS3(-400〜-251)、ループアウト形成配列としてHIS3(251〜750)、マーカー遺伝子としてURA3マーカー、3’末端側の相同組換え配列としてHIS3(101〜250)の各DNA断片をPCRにて増幅した。これらの断片を精製後、各断片を混合して、1F(配列番号42)および4R(配列番号49)のプライマーを用いて2回目のPCRを行うことにより1,932 bpの遺伝子置換用DNA断片his3-URA3を作製した。この断片で清酒酵母GKT2001を形質転換し、片方の染色体のHIS3がhis3-URA3に置換された株を得た。この株をYPDで3日間培養し、5-FOAプレートに塗布すると、2.4×10-5の頻度でコロニーが出現した。表3に示すプライマー(配列番号42,83)を用いて、コロニーから直接PCRを行い、増幅断片が1.2 kbと0.6 kbであるコロニーを選択マーカーURA3がループアウトにより脱落した株として選抜した。得られた株をHIS3へテロ破壊株GKT3000とした。
このGKT3000のHIS3の破壊領域をホモ化するために相同組換えによりURA3マーカーを含むプラスミドpRSU-HIS3でマーキングした。pRSU-HIS3構築は以下のとおり。まず、表2に示すプライマー(配列番号70〜73)を用いて、酵母ゲノムDNAをテンプレートとしてPCR、続けてジャンクションPCRを行った。得られたDNA断片を精製後、EcoR I, Sal Iで制限酵素処理し、これをEcoR I, Sal Iで制限酵素処理したpRS406へと挿入した。pRSU-HIS3でGKT3000をHpa Iで制限酵素処理して、線状化したのち、酢酸リチウム法でGKT3000へ導入することにより、HIS3非破壊領域がマーキングされた株GKT3000/pRSU-HIS3を得た。GKT3000/pRSU-HIS3をYPDで3日間培養し、5-FOAプレートに塗布すると、3.2×10-3の頻度でコロニーが出現した。本発明の方法を用いた場合、1枚のプレートでコロニーの検出が可能であるが、従来の網羅的スクリーニングで行う場合は100枚程度のプレートが必要である。出現したコロニーを表3に示すプライマー(配列番号42、83)を用いて、コロニーから直接PCRを行い、増幅断片が0.6 kbのみであるコロニーを選択マーカーURA3がLOHにより消失した株として選抜した。選択したコロニーのおよそ1割がHIS3がホモ破壊された株であり、これをGKT3001とした。この株は、ウラシル、リジン、ロイシン要求性である。
実施例4
PEP4破壊株の作製
遺伝子置換に用いるDNA断片をジャンクションPCRにて合成した。表1に示すプライマー(配列番号50〜57)を用い、酵母ゲノムDNAをテンプレートとして、5’末端側の相同組換え配列としてPEP4(-160〜-1)、ループアウト形成配列としてPEP4(1219〜1728)、マーカー遺伝子としてURA3マーカー、3’末端側の相同組換え配列としてPEP4(1069〜1218)の各DNA断片をPCRにて増幅した。これらの断片を精製後、各断片を混合して、1F(配列番号50)および4R(配列番号57)のプライマーを用いて2回目のPCRを行うことにより1,952 bpの遺伝子置換用DNA断片pep4-URA3を作製した。この断片で清酒酵母GKT2001を形質転換し、片方の染色体のPEP4がpep4-URA3に置換された株を得た。この株をYPDで3日間培養し、5-FOAプレートに塗布すると、5.3×10-5の頻度でコロニーが出現した。表3に示すプライマー(配列番号50、84)を用いて、コロニーから直接PCRを行い、増幅断片が1.9 kbと0.7 kbであるコロニーを選択マーカーURA3がループアウトにより脱落した株として選抜した。得られた株をPEP4へテロ破壊株GKT2100とした。
このGKT2100のPEP4の破壊領域をホモ化するために相同組換えによりURA3マーカーを含むプラスミドpRSU-PEP4でマーキングした。pRSU-PEP4構築は以下のとおりである。まず、表2に示すプライマー(配列番号74、75)を用いて、酵母ゲノムDNAをテンプレートとしてPCRを行った。得られたDNA断片を精製後、EcoR I, SalIで制限酵素処理し、これをEcoR I, Sal Iで制限酵素処理したpRS406へと挿入した。pRSU-PEP4をHpa Iで制限酵素処理、線状化したのち、酢酸リチウム法でGKT2100へ導入することにより、PEP4非破壊領域がマーキングされた株GKT2100/pRSU-PEP4を得た。GKT2100/pRSU-PEP4をYPDで3日間培養し、5-FOAプレートに塗布すると、5.5×10-5の頻度でコロニーが出現した。本発明の方法を用いた場合、1枚のプレートでコロニーの検出が可能であるが、従来の網羅的スクリーニングで行う場合は100枚程度のプレートが必要なうえに、この中から目的とするコロニーの選抜はほぼ不可能である。出現したコロニーを表3に示すプライマー(配列番号50、84)を用いて、コロニーから直接PCRを行い、増幅断片が0.7 kbのみであるコロニーを選択マーカーURA3がLOHにより消失した株として選抜した。出現したコロニーのおよそ4割がPEP4がホモ破壊された株であり、これをGKT2101とした。この株は、ウラシル、リジン、ロイシン要求性であり、PEP4遺伝子がホモ型に破壊されている。
実施例5
SED1破壊株の作製
遺伝子置換に用いるDNA断片をジャンクションPCRにて合成した。表1に示すプライマー(配列番号58〜65)を用い、酵母ゲノムDNAをテンプレートとして、5’末端側の相同組換え配列としてSED1(-1334〜-1104)、ループアウト形成配列としてSED1(1260〜1759)、マーカー遺伝子としてURA3マーカー、3’末端側の相同組換え配列としてSED1(1060〜1259)の各DNA断片をPCRにて増幅した。これらの断片を精製後、各断片を混合して、1F(配列番号58)および4R(配列番号65)のプライマーを用いて2回目のPCRを行うことにより2,062 bpの遺伝子置換用DNA断片sed1-URA3を作製した。この断片で清酒酵母GRI-117-UKを形質転換し、片方の染色体のSED1がsed1-URA3に置換された株を得た。この株をYPDで3日間培養し、5-FOAプレートに塗布すると、3.4×10-5の頻度でコロニーが出現した。表3に示すプライマー(配列番号85,86)を用いて、コロニーから直接PCRを行い、増幅断片が3.2 kbと0.9 kbであるコロニーを選択マーカーURA3がループアウトにより脱落した株として選抜した。得られた株をSED1へテロ破壊株GRI-117-UK(sed1/SED1)とした。
このGRI-117-UK(sed1/SED1)のSED1の破壊領域をホモ化するために相同組換えによりURA3マーカーを含むプラスミドpRSU-SED1でマーキングした。pRSU-SED1構築は以下のとおり。まず、表2に示すプライマー(配列番号76−79)を用いて、酵母ゲノムDNAをテンプレートとしてPCR、続けてジャンクションPCRを行った。得られたDNA断片を精製後、EcoR I, Sal Iで制限酵素処理し、これをEcoR I, Sal Iで制限酵素処理したpRS406へと挿入した。pRSU-SED1を Hpa Iで制限酵素処理、線状化したのち、酢酸リチウム法でGRI-117-UK(sed1/SED1)に導入することにより、SED1非破壊領域がマーキングされた株GRI-117-UK(sed1/SED1)/pRSU-SED1を得た。GRI-117-UK(sed1/SED1)/pRSU-SED1をYPDで3日間培養し、5-FOAプレートに塗布すると、3.8×10-5の頻度でコロニーが出現した。本発明の方法を用いた場合、1枚のプレートでコロニーの検出が可能であるが、従来の網羅的スクリーニングで行う場合は100枚程度のプレートが必要なうえに、この中から目的とするコロニーの選抜はほぼ不可能である。出現したコロニーを表3に示すプライマー(配列番号85,86)を用いて、コロニーから直接PCRを行い、選択マーカーURA3がLOHにより消失した株を選抜した(増幅断片0.9 kbのみ)。出現したコロニーのおよそ5%がSED1がホモ破壊された株であり、これをGRI-117-UK(sed1/sed1)とした。この株は、ウラシル、リジン要求性であり、SED1遺伝子がホモ型に破壊されている。
Figure 2009178104
Figure 2009178104
Figure 2009178104
実施例1〜5におけるループアウト及びLOHの頻度を以下の表4及び5に示す。
Figure 2009178104
Figure 2009178104
実施例1〜5において得られた変異株の遺伝子型を以下の表6に示す。
Figure 2009178104
実施例6
表現型の確認
<栄養要求性株>SD, SD-Ura, SD-Lys, SD-Leu, SD-Hisの各プレートに取得した栄養要求性株を植菌したところ、図3のようにそれぞれ栄養要求性を示した。また、それぞれの株のYPDでの増殖をバイオフォトレコーダー(アドバンテック東洋社製)で計測したところ、栄養要求性が追加されるごとに増殖の立ち上がりはやや遅れるものの、概ね良好な生育を示した(図4)。
<PEP4破壊株>Methods Enzymol., 194, 429-453 (1991)に従ってPEP4破壊株を評価した。その結果、表7に示すように、ヘテロ破壊株では親株の約半分の、ホモ破壊株ではほとんど活性を検出できなかった。
Figure 2009178104
<SED1破壊株>YPDで3日間培養した菌体を0.5 U/ml Zymolyase (pH 7.5)にOD600=0.5となるように懸濁し、30℃で反応させた。その結果、Shimoiらの報告(J Bacteriol., 180, 3381-3387 (1998))にあるようにSED1ホモ破壊株ではZymolyase感受性が高まっていることがわかった(図5)。
実施例7
β−グルコシダーゼ活性の確認
麹菌b-グルコシダーゼ(BGL7)を酵母細胞表層に提示させる発現カセット(特願2007-228373)を1コピー導入した酵母を作製し、5日間培養した菌体の表層でのb-グルコシダーゼ活性を測定したところ、SED1ヘテロ破壊株は親株の1.11倍、SED1ホモ破壊株は親株の1.16倍の活性を示した(表8)。
Figure 2009178104
実施例8
β−グルコシダ−ゼ分泌生産株の作製
本発明において、酵素活性の検出、及び酵素活性の測定は以下の方法で行った。
<β−グルコシダーゼ活性の定量>
β−グルコシダーゼ活性は、供試菌体の培養液上清を1mM 4-Nitrophenylβ-D-glucopyranosideを含む50mM酢酸緩衝液(pH5.0)中に添加し、37℃で3分間静置した後、等量のNaCOを加え反応を停止し、遊離した4-Nitrophenol量から求めた。β−グルコシダーゼ活性1U=4-Nitrophenyl-β-D-glucopyranosideから1分間に1μmolの4-Nitrophenolを生成するのに必要な酵素量、と定義した。
<ヘテロ型発現株の作製>
β−グルコシダ−ゼを発現するためのプラスミドとして、pK112-BG1(特開2007-28912)を用いた。本プラスミドは酵母SED1遺伝子のプロモーター(PSED1)と酵母ADH1遺伝子のターミネーター(TADH1)をもち、麹菌(Aspergillus oryzae)由来のβ−グルコシダ−ゼ遺伝子(BGL1)を過剰発現するように設計されている。本プラスミドを制限酵素Sse8387Iで一カ所を切断して線状としたDNAを、実施例1で得た酢酸リチウム法で清酒酵母Saccharomyces cerevisiae GKT1001に導入した。0.67% Yeast nitrogen base w/o amino acids(Difco社)、0.077% CSM−URA(MPBIO社)、2%グルコースを含むSD−U寒天培地で培養し、生育してきた酵母を選択した。本培地ではプラスミドpK112-BG1が染色体に導入され、ウラシル要求性が相補された株のみが生育できる。
生育株を次に示すプライマーを用いてPCRした結果とβ−グルコシダーゼ活性から、プラスミドpK112-BG1の染色体への組込みパターンを確認した。
プライマーA 5'- ATGTGGCTGTGGTTTCAGGGTCCATAAAGC -3'(配列番号1)
プライマーB 5'- TCATTATAGAAATCATTACGACCGAGATTC -3'(配列番号2)
プライマーC 5'- GGTTACGCGCAGCGTGACCGCTACACTTGC -3(配列番号3)
これらのプライマーは、プライマーAとBの組合せの場合に野生型(pK112-BG1が組み込まれていない)染色体をもつ株だけが1.1kbの増幅断片を示し、プライマーAとCの組み合わせの場合、組換え型(pK112-BG1が組み込まれた)染色体をもつ株だけが1.6kbの増幅断片を示すように設計されている。
よって、親株(WT/GKT1001株)はプライマーAとBとの組み合わせによって1.1kbの断片が増幅され、一方生育株は、プライマーAとBの組合せ及びプライマーAとCの組合せにより、1.1kbと1.6kbの理論長の断片が増幅されたが、β−グルコシダーゼ活性は高/低の2種類存在した。これは、pK112-BG1がヘテロ型に1コピー組み込まれた株と2コピー組み込まれた株が存在することを示す。ヘテロ型に1コピーのプラスミドが染色体に組み込まれた株を(×1)、ヘテロ型に2コピーのプラスミドが染色体に組み込まれた株を(×2)とした。
<マーキング用プラスミドの作製>
内部に存在する制限酵素HpaI認識配列を破壊したLYS2マーカー:LYS2(dHpaI)をジャンクションPCRにて合成した。酵母ゲノムDNAを鋳型として5’-gcggacgtcCACTTGCAATTACATA-3’(小文字は後のAatII消化を効率化するための予備配列、下線小文字はAatII認識配列)と5’-TATTTGAGTACGATCGTTCCTattaacAAC-3’(配列番号4:小文字がHpaI認識配列を破壊した部分)、5’-TTGAACGTTCAGCTACTAGTTgttaatAGG-3’ (配列番号5:小文字がHpaI認識配列を破壊した部分)と5’-CTGCACGTGATTTACAGTTCTTATTCAATA -3’(配列番号6:を用いてPCRを行い、2つのDNA断片を得た。各断片を精製した後混合して、再度5’-gcggacgtcCACTTGCAATTACATA-3’(配列番号7)および5’-CTGCACGTGATTTACAGTTCTTATTCAATA-3’(配列番号8)のプライマーを用いてPCRを行うことによりLYS2(dHpaI)を得た。LYS2(dHpaI)を制限酵素Aat IIで処理した断片をAat II, Nae Iで制限酵素処理したプラスミドpRS406に挿入し、pAKK2とした。
次に、酵母染色体のURA3遺伝子の5’上流領域と3’下流領域を増幅し、ジャンクションPCRにより結合した。詳しくは5’-cccgtcgacGGGAATCTCGGTCGTAATGATTTCTA-3’(配列番号9:小文字は後のSalI消化を効率化するための予備配列、下線小文字はSalI認識配列)と5’- TCCATCTCATTAgttaacTATTGAATTTTGTTTGG -3’(配列番号10:小文字はHpaI認識配列)、5’- CAAAATTCAATAgttaacTAATGAGATGGAATCGG -3’ (配列番号11:小文字はHpaI認識配列)と5’- cccgaattcTATGGACCCTGAAACCACAGCCACAT -3’ (配列番号12:小文字は後のEcoRI消化を効率化するための予備配列、下線小文字はEcoRI認識配列)を用いてPCRを行い、2つのDNA断片を得た。各断片を精製した後混合して、再度5’-cccgtcgacGGGAATCTCGGTCGTAATGATTTCTA-3’(配列番号13:および5’- cccgaattcTATGGACCCTGAAACCACAGCCACAT -3’(配列番号14:のプライマーを用いてPCRを行った。得られたURA3遺伝子の5’上流領域と3’下流領域を結合した断片をURA3-UTRとした。
URA3-UTRを制限酵素SalI、EcoRIで消化し、同様にSalI、EcoRIで消化したpAKK2に挿入し、マーキング用プラスミドpURA3-UTRとした。
<ヘテロ型発現株のマーキング>
pURA3-UTRを制限酵素HpaIで切断して線状としたDNAを、酢酸リチウム法で×1、×2株それぞれに導入した。0.67% Yeast nitrogen base w/o amino acids(Difco社)、0.067% CSM-LYS-URA(MPBIO社)、2%グルコースを含むSD-UK寒天培地で培養し、生育してきた酵母を選択した。本培地ではプラスミドpURA3-UTRが染色体に導入され、リジン要求性が相補された株(マーキング株)のみが生育できる。
マーキング株のβ−グルコシダーゼ活性を測定し、×1、×2株と同程度の酵素活性を持つことを確認した。得られたマーキング株をそれぞれ×1M、×2M株とした。
<ホモ型発現株の作製>
×1M、×2M株をYPD培地で3日間培養した後、α-AAプレートへ塗布した。7日間培養後、生育してきた酵母を選択し、リジン要求性が回復した株を取得した。取得した株を先ほどのプライマーAとBを用いてPCRを行い、目的であるホモ型株であることを確認した。得られたホモ型株をそれぞれ×1H、×2H株とした。
作製した×1、×1H、×2、×2H株の染色体プラスミド組込み部位(URA3近傍)の模式図を図6示す。
実施例9
ホモ型株のβ−グルコシダーゼ活性の評価
実施例8で作製した×1、×1H、×2、×2H株をYPD培地にて48時間培養し、培養液上清のβ−グルコシダーゼ活性を測定した。この際、親株のGKT1001株をコントロール(WT)とした。その結果、ホモ型株はヘテロ型株の約2倍(×1→×1H:2.1倍、×2→×2H:1.8倍)のβ−グルコシダーゼ活性を示した。このことは酵素生産性を倍化できたことを示しており、実施例12で示す形質の安定性と合わせて、本発明の有用性を示している(図7)。
実施例10
酢酸イソアミル高生産株の作製
<ヘテロ型発現株の作製>
アルコールアセチルトランスフェラーゼを過剰発現させるための遺伝子置換に用いるDNA断片をジャンクションPCRにて合成した。まずはpK112(特開2007-28912)を鋳型として、5’- TATTGCGGGATAATGAGTAAACGAATTCAAACGTCTTCAATTCAT-3’(配列番号15)と5’- CGTTAATTTTCTATATCCAAGGTACCAGGGTAATAACTGA-3’(配列番号16)を用いURA3マーカーを、5’- ATTATATCAGTTATTACCCTGGTACCTTGGATATAGAAAAT-3’(配列番号16)と 5’- ATGTGGTTCGTATCCTTCTATATCTTCCATCCTTAATAGAGCGAA-3’(配列番号17)を用いてPCRを行い、SED1プロモーターを増幅した。
これらの断片を精製後、各断片を混合して、5’-CTACATTGAACTCTGTAGGCCACCGATAAATATTGCGGGATAATG-3’(配列番号18)および5’- ATGGCCACGGTCTATCAACTCTTGAGTGATATGTGGTTCGTATCC-3’(配列番号19)のプライマーを用いて2回目のPCRを行うことにより、2,030 bpの遺伝子置換用DNA断片PSED1_ATF2を作製した。このDNA断片を酢酸リチウム法でGKT1001株に導入し、SD−U寒天培地で生育してきた酵母を選択した。本培地ではPSED1_ATF2が染色体上のATF2プロモーター領域と置換し、ウラシル要求性が相補された株のみが生育できる。
生育株を次に示すプライマーを用いてPCRを行い、ヘテロ型にPSED1_ATF2が染色体上のATF2プロモーター領域と置換した株であること確認した。
プライマーD 5'- CTACATTGAACTCTGTAGGCCACCGATAAA -3'(配列番号20)
プライマーE 5'- ATCCACTGACACCGTCGGAGCCGCAGTGGT-3'(配列番号21)
プライマーDとEとの組合せにより、野生型(PSED1_ATF2が置換していない)染色体からは0.9kbp、組換え型(PSED1_ATF2が置換した)染色体からは2.5kbpの断片が増幅するようにプライマーを設計した(図8)。親株(WT/GKT1001株)からは0.9kbpのみ断片が増幅され、一方生育株は、0.9kbpと2.5kbp、2つの断片が増幅された。この結果から、ヘテロ型にPSED1_ATF2が染色体上のATF2プロモーター領域と置換した株であることが分かった。この株をヘテロ型株とした。
<マーキング用プラスミドの作製>
酵母ゲノムDNAを鋳型として、5’- gggaagcttACGTCAGAAAAAGCAATATATAGTAA-3’(配列番号22:小文字は後のHindIII消化を効率化するための予備配列、下線小文字はHindIII認識配列)と5’- gggtctagaAATTAACCTGGACAATTTTTATTGCT-3’ (配列番号23:小文字は後のXbaI消化を効率化するための予備配列、下線小文字はXbaI認識配列)を用いてPCRを行い、ATF2プロモーター領域を増幅した。このDNA断片をPATF2とした(配列4)。次にPATF2を制限酵素HindIIIとXbaIで消化し、同様にSalI、EcoRIで消化したpAKK2に挿入し、マーキング用プラスミドpPATF2とした。
<ヘテロ型発現株のマーキング>
pPATF2を制限酵素EcoRIで切断して線状としたDNAを、酢酸リチウム法でヘテロ型株に導入した。0.67% Yeast nitrogen base w/o amino acids(Difco社)、0.067% CSM-LYS-URA(MPBIO社)、2%グルコースを含むSD-UK寒天培地で培養し、生育してきた酵母を選択した。本培地ではプラスミドpPATF2が染色体に導入され、リジン要求性が相補された株(マーキング株)のみが生育できる。
マーキング株とヘテロ型株をYPD培地にて24時間培養した培養上清に含まれる酢酸イソアミルをヘッドスペース固相抽出ガスクロマトグラフィー(SPME-GC/VARIAN社CP-3800)にて定量し、同程度の酢酸イソアミルを生成することを確認した。得られた株をマーキング株とした。
<ホモ型発現株の作製>
マーキング株をYPD培地で3日間培養した後、α-AAプレートへ塗布した。7日間培養後、生育してきた酵母を選択し、リジン要求性が回復した株を取得した。取得した株について上記プライマーDとEを用いてPCRを行い、2.5kbpの断片のみを増幅したことから、得られた株が目的であるホモ型株であることを確認した。
実施例11
<ホモ型株の酢酸イソアミル生産性の評価>
清酒の小仕込試験は仕込み配合(α化米320g、乾燥麹86g、水840ml、酵母600 OD600Unit、90%乳酸 400μl)で行なった。この際、親株GKT1001株にプラスミドpRS406(遺伝子非導入プラスミド)を導入した株をコントロール株とした。仕込みビンを15℃、20日間静置し、醪を経時的にサンプリングした。サンプルのエタノールと香気成分をガスクロマトグラフィーにて定量し、株の発酵性能と酢酸イソアミル生産性を評価した。
図9にエタノールと酢酸イソアミル量の経時的変化を示した。すべての供試株は良好に発酵し、最終的なエタノール濃度は約19%(v/v)に達した。一方、酢酸イソアミルは、コントロール<ヘテロ型株(コントロール比3倍)<ホモ型株(同6倍)の順で増加していた。このことから、ホモ化によりコピー数が倍加したホモ型株はATF2の発現量が増大し、ヘテロ型株より酢酸イソアミル生産性が向上することが明らかとなった。清酒醸造のような、初発菌体を抑えた低温かつ長期間の培養環境において、選択圧をかけずに優れた物質生産性を示したことから、ホモ型株の工業的有用性が証明された。
実施例12
<ホモ型株の形質安定性の評価>
ヘテロ型株、ホモ型株それぞれのシングルコロニーをYPD培地にて3回植継いだ後、106 cellを5-FOAプレートに撒いた。その結果、ヘテロ型株からは5-FOAプレートにおいて生育する株が確認された(図10)。このことは本来持っていたはずのURA3マーカーが脱落したことを示している。これら生育した12株のATF2上流域の塩基配列を調べた結果、すべてが非組換え型に戻っていることを確認した。ヘテロ型株は野生型染色体を持っているため、選択圧の無いYPD培地での植え継ぎの過程で(通常の)LOHを生じ、組換え型染色体を持たない株に戻ったものと考えられた。そしてコロニー数から、出現頻度は10-4程度だと予想された。これらの株の酢酸イソアミル生産性は親株程度に低下していると考えられ、このことは、ヘテロ型株は物質生産性が不安定であり、実用的には獲得形質が脱落していないかを管理する必要があることを示唆している。一方、ホモ型株は生育株が全く無く、このことから組み込んだ形質が、選択圧をかけずとも、極めて安定的に保持されることが確認できた。これは、本発明によって得られたホモ型変異株は、植え継ぎに強く、安定性が高いため、実用性が極めて高いことを示す。
本発明の方法は、ヘテロ型では表現型として現れない劣性形質でも、その表現型を示すホモ型株を容易に取得することができるだけでなく、表現型の確認が困難なDNA領域にも適用できる。さらに、有用なヘテロ組換え株でも、ホモ型組み換え株にすることにより、有用な形質をさらに強く示すことができる。例えば、実用性に優れた二倍体細胞に栄養要求性を付与できるため、産業上有用な遺伝子組換え体の作製が容易になる、プロテアーゼ欠損の株の取得により、有用タンパク質生産の向上が見込まれる、また、細胞壁タンパク質を破壊することで、近年研究が進んでいる表層提示工学における表層提示の効率を向上させる、等が挙げられる。さらに本方法ではヘテロ型に存在する有用な形質を、ホモ化することで、一層強化することが可能である。例えば、ヘテロ型に導入した有用物質生産に関する遺伝形質をホモ化することにより、発現量を増加させ、有用物質の生産性を向上させることができる。
このように、本発明の方法を用いることにより、従来技術では困難であった実用性に優れた二倍体細胞の遺伝子組換え操作が極めて容易になり、さらには遺伝子組換えの効果も向上できるため、本発明は産業上有用な遺伝子組換え体の創生に大きく貢献できる。また、株の取得により有用物質を従来よりも大量に生産させることなどができる。
さらに、本発明の方法で得られたホモ型株は、ヘテロ型株とは違い、獲得形質が脱落せず、安定性が高く、工業的実用性が極めて高い。
図1は、本発明の概要を模式的に示す。 図2は、本発明の一実施形態を模式的に示す。 図3は、二倍体清酒酵母栄養要求性株の各培地での生育を示す。 図4は、二倍体清酒酵母栄養要求性株のYPDでの増殖を示す。 図5は、SED1破壊株のZymolyase感受性を示す。 図6は、作成株の染色体プラスミド組込み位置を模式的に示す。 図7は、作製株培養液上清のβ-グルコシダーゼ活性を示す。 図8は、PCRによる作製株の染色体遺伝子置換部位(ATF2プロモーター近傍)の確認原理を示す。 図9は、作製株による清酒小仕込み試験結果を示す。 図10は、作成株の形質安定性の比較結果を示す。

Claims (17)

  1. ヘテロ型の目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子を相同染色体の特定の領域に有する二倍体細胞から、該特定の領域における目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子についてホモ型である相同染色体を有する二倍体細胞を製造する方法であって、以下の工程を含む方法:
    (1) 第一マーカー遺伝子を二倍体細胞におけるヘテロ型の相同染色体のいずれかに挿入および/または置換する工程;
    (2) 工程(1)で得られた二倍体細胞を培養し、第一マーカー遺伝子の発現を指標にして第一マーカー遺伝子が導入された二倍体細胞を選抜する工程;
    (3) 工程(2)で得られた二倍体細胞を培養し、該第一マーカー遺伝子の脱落を指標として、該特定の領域における目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子についてホモ型である相同染色体を有する二倍体細胞を得る工程。
  2. ヘテロ型の目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子を相同染色体の特定の領域に有する二倍体細胞が、以下の工程を含む方法によって得られる、請求項1に記載の方法:
    (1) 第二マーカー遺伝子と目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子とを二倍体細胞の相同染色体の特定の領域に挿入および/または置換する工程;
    (2) 工程(1)で得られた二倍体細胞を培養し、第二マーカー遺伝子の発現を指標にして、ヘテロ型の目的の構造遺伝子および/または調節遺伝子を相同染色体の特定の領域に有する二倍体細胞を得る工程。
  3. 第一マーカー遺伝子と第二マーカー遺伝子が異なるマーカー遺伝子である、請求項2に記載の方法。
  4. マーカー遺伝子が二倍体細胞の感受性又は要求性を相補するマーカー遺伝子である、請求項1又は2に記載の方法。
  5. マーカー遺伝子が感受性および/または要求性の相補、並びに感受性および/または要求性への復帰の双方を検出できるものである請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. マーカー遺伝子がURA3、URA5、LYS2、LYS5、LEU2、HIS3、KanMX、AUR1−R、CYH2、CAN1、TRP1、GAP1、及びGIN11M86から成る群から選択される一種以上のマーカー遺伝子である、請求項4又は5に記載の方法。
  7. 感受性が、薬剤感受性、温度感受性、UV感受性、放射線感受性から成る群から選ばれる感受性である、請求項4又は5に記載の方法。
  8. 二倍体細胞が酵母である請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 酵母がSaccharomyces属、Candida属、Torulopsis属、Zygosaccharomyces属、Schizosaccharomyces属、Pichia属、Yarrowia属、Hansenula属、Kluyveromyces属、Debaryomyces属、Geotrichum属、Wickerhamia属、Fellomyces属、Sporobolomyces属のいずれかである請求項8に記載の方法。
  10. Saccharomyces属の酵母がSaccharomyces cerevisiaeである請求項9に記載の方法。
  11. 目的の構造遺伝子がLEU2、HIS3、PEP4、及びSED1遺伝子から成る群から選択される一種以上である請求項1〜10に記載の方法。
  12. 目的の調節遺伝子がプロモーターおよび/またはターミネーターを含む領域である請求項1〜11のいずれかに記載の方法。
  13. プロモーターがSED1プロモーターである請求項12に記載の方法。
  14. 目的の構造遺伝子がSED1プロモーター下流に発現可能な形で構造遺伝子を接続したものである請求項1〜13のいずれかに記載の方法。
  15. 目的の構造遺伝子がBGL1、BGL7、ATF1、及びATF2から成る群から選択される一種以上である請求項1〜10及び請求項12〜14のいずれかに記載の方法。
  16. 請求項1〜15のいずれかに記載の方法により得られた遺伝子破壊酵母。
  17. 請求項1〜15のいずれかに記載の方法により得られた遺伝子高発現酵母。
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