以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1には、本発明の伸縮シートの一実施形態の一部破断斜視図が示されている。本実施形態の伸縮シート10は、第1の不織布11及び第2の不織布12の計2枚の不織布と、両不織布間に挟持された多数の弾性フィラメント13とから構成されている。各弾性フィラメント13は、第1及び第2の不織布11,12と接合している。第1の不織布11と第2の不織布12は、同種のものでもよく、或いは異種のものでもよい。ここで言う同種の不織布とは、不織布の製造プロセス、不織布の構成繊維の種類、構成繊維の繊維径や長さ、不織布の厚みや坪量等がすべて同じである不織布どうしを意味する。これらのうちの少なくとも一つが異なる場合には異種の不織布であるという。
各不織布11,12は何れも伸長可能なものである。各不織布11,12は、弾性フィラメント13の延びる方向と同方向に伸長可能になっている。伸長可能とは、(イ)不織布11,12の構成繊維自体が伸長する場合と、(ロ)構成繊維自体は伸長しなくても、交点において結合していた繊維どうしが離れたり、繊維どうしの結合等により複数本の繊維で形成された立体構造が構造的に変化したり、構成繊維がちぎれたり、繊維のたるみが引き伸ばされたりして、不織布全体として伸長する場合とを包含する。
各不織布11,12を構成する繊維としては、実質的に非弾性の繊維が用いられる。したがって各不織布11,12は実質的に非弾性である。各不織布11,12が弾性を有する場合には、その構成繊維として弾性樹脂を含む繊維が必要となり、弾性樹脂を含む繊維は、不織布の風合いを低下させる一因となるべたつき感を呈する傾向にある。したがって本実施形態においては、各不織布11,12を実質的に非弾性となして、その風合いの低下を防止している。なお、不織布11,12の風合いを低下させない限度において、少量の弾性繊維がこれらの不織布に含まれることは妨げられない。本発明において弾性とは、伸ばすことができ、且つ元の長さに対して100%伸ばした状態(元の長さの200%の長さになる)から力を解放したときに、元の長さの125%以下の長さまで戻る性質を言う。
各弾性フィラメント13は、伸縮シート10の全長にわたって実質的に連続している。弾性フィラメント13は弾性樹脂を含んでいる。各弾性フィラメント13は、互いに交差せずに一方向に延びるように配列している。但し、伸縮シート10の製造条件の不可避的な変動に起因して、意図せず弾性フィラメント13が交差することは許容される。各弾性フィラメント13は、互いに交差しない限り、直線状に延びていてもよく、或いは蛇行しながら延びていてもよい。弾性フィラメント13の延びる方向は、第1及び第2の不織布11,12の製造時の流れ方向と一致していてもよく、或いは不織布11,12の製造時の流れ方向と直交していてもよい。後述する好適な製造方法に従い伸縮シート10を製造すると、弾性フィラメント13の延びる方向は、第1及び第2の不織布11,12の製造時の流れ方向と一致する。
弾性フィラメント13は、実質的に非伸長状態で不織布11,12に接合されている。弾性フィラメント13が伸長していないため、伸長による緩和(クリープ)が起こらず、該弾性フィラメント13を不織布11,12と貼り合わせた後の原反保存時や延伸等の加工後における伸縮性の低下がないという利点がある。また、巻き取られた原反の巻き締まりによる変形もない。
弾性フィラメント13は、その全長にわたって各不織布11,12に接合している。ここで、「その全長にわたって接合している」とは、弾性フィラメント13と接触しているすべての繊維(不織布11,12の構成繊維)が、該弾性フィラメント13と接合していることを要せず、弾性フィラメント13に、意図的に形成された非接合部が存在しないような態様で、弾性フィラメント13と不織布11,12の構成繊維とが接合されていることを言う。弾性フィラメント13が各不織布11,12にその全長にわたって接合していることで、弾性ストランド13と各不織布11,12との接合力を十分に高めることができる。その結果、伸縮シート10を引き伸ばしても、弾性フィラメント13が各不織布11,12から剥離しづらくなる。弾性フィラメント13が各不織布11,12から剥離してしまうと、自然状態(弛緩状態)において、弾性フィラメント13と各不織布11,12との間に浮きが生じて、伸縮シート10に皺が発生しやすくなり、伸縮シート10全体としての一体感に欠けるものとなる。
本実施形態の伸縮シート10は、弾性フィラメント13と、各不織布11,12に含まれる非弾性繊維との接合状態に特徴の一つを有する。詳細には、非弾性繊維のうちの少なくとも一部が、弾性フィラメント13と融着して、該弾性フィラメント13中に埋没している。ここで言う「埋没」とは、非弾性繊維と弾性フィラメント13との交点において、非弾性繊維のうち該交点に存在している部位が、弾性フィラメント13のうち該交点に存在している部位中に潜り込んだ状態をいう。したがって、非弾性繊維と弾性フィラメント13とがそれらの表面どうしが点や線で結合している状態は、本発明に言う埋没には含まれない。
弾性フィラメント13と、各不織布11,12に含まれる非弾性繊維との接合状態が上述のとおりであることによって、弾性フィラメント13と、各不織布11,12との接合強度が高くなり、伸縮シート10を伸長させたときに両者間での剥離が起こりづらくなる。その結果、伸縮シート10を伸長させたとき、各不織布11,12が、弾性フィラメント13の伸長に追従して応答性よく伸長するので、伸縮シート10の伸縮性が良好になるという有利な効果が奏される。また、弾性フィラメント13と、各不織布11,12に含まれる非弾性繊維との接合状態が上述のとおりであることによって、弾性フィラメント13と各不織布11,12が密着しており、弾性フィラメント13の存在している部分と存在していない部分との段差をより一層感じにくいことから、伸縮シート10の風合いも良好になるという有利な効果も奏される。
弾性フィラメント13と非弾性繊維との接合強度を高める観点からは、各不織布11,12を構成する非弾性繊維のうち、弾性フィラメント13の周囲に存在するもののすべてが弾性フィラメント13中に埋没していることが最も好ましい。一方、伸縮シート10の風合いを良好にする観点からは、弾性フィラメント13の周囲に存在する非弾性繊維のうちの一部が、弾性フィラメント13中に埋没していることが好ましい。これらのバランスを図る観点から、伸縮シート10の伸縮方向と直交する方向の断面を100〜1000倍の倍率で電子顕微鏡観察したとき、1本の弾性フィラメント13中に埋没している非弾性繊維の本数が1〜20本、更に3〜10本、更に特に4〜8本であることが好ましい。弾性フィラメント13中に埋没している非弾性繊維の本数は、5箇所の観察視野において測定された非弾性繊維の本数の平均値である。
1本の弾性フィラメント13中に埋没している非弾性繊維の本数を測定する場合には、上述の電子顕微鏡観察において、図2に示すように、弾性フィラメント13の外周形状を確定させ、その外周形状よりも内側に位置する非弾性繊維の本数を計測する。弾性フィラメント13の外周形状を確定させる場合、弾性フィラメント13に非弾性繊維が埋没した部分では、弾性フィラメント13の外周が不明瞭になることがある。その場合には、図2に示すように、繊維埋没部に隣接する部位であって、かつ弾性フィラメント外周の最も外側に突き出た部位を接点とし、両接点を結んで外周形状とする。
特に非弾性繊維は、弾性フィラメント13と融着している該非弾性繊維のうちの少なくとも一部が、直径の半分以上の程度をもって該弾性フィラメント13中に埋没していることが、弾性フィラメント13と非弾性繊維との接合強度を高める観点から好ましい。この場合、伸縮シート10の伸縮方向と直交する方向の断面を100〜1000倍の倍率で電子顕微鏡観察したとき、1本の弾性フィラメント13中に直径の半分以上の程度をもって埋没している非弾性繊維の本数が1〜20本、更に3〜10本、更に特に4〜8本であることが好ましい。
伸縮性や風合い等の有利な効果を一層顕著なものとする観点から、伸縮シート10においては、任意の1本の弾性フィラメント13に着目した場合、該弾性フィラメント13の延びる方向に沿ういかなる位置においても、非弾性繊維のうちの少なくとも一部が、弾性フィラメント13と融着して、該弾性フィラメント13中に埋没していることが好ましい。このような接合状態となることによって、弾性フィラメント13と非弾性繊維との接合が一層確実なものとなる。非弾性繊維の埋没状態は、伸縮シート10を、弾性フィラメント13の延びる方向と直交する方向に沿って切断し、切断によって得られた断面を電子顕微鏡観察することで評価することができる。ここで、弾性フィラメント13の延びる方向に沿ういかなる位置においても、非弾性繊維のうちの少なくとも一部が、弾性フィラメント13と融着して、該弾性フィラメント13中に埋没しているとは、上記電子顕微鏡観察において10視野観察した場合に、9視野以上において非弾性繊維のうちの少なくとも一部が、弾性フィラメント13と融着して、該弾性フィラメント13中に埋没していることが観測されることを言う。
弾性フィラメント13と非弾性繊維とが以上のとおりの状態で接合している本実施形態の伸縮シート10は、両者の接合強度の高さに起因して、弾性フィラメント13と不織布11,12との間の接合強度が30cN/25mm以上、特に40〜300cN/25mm、とりわけ60〜200cN/25mmという高い値になる。接合強度が30cN/25mm以上であることにより、伸縮シート10全体としての一体感が向上し、伸縮シート10を引き伸ばしたときや別のシートと接合したときに、弾性フィラメント13が各不織布11,12から剥離する等の不都合を効果的に防止することができる。接合強度を200cN/25mm以下とすることで、伸縮シート10の伸縮特性の低下を効果的に防止することができる。
前記の接合強度は、次の方法で測定される。伸縮シート10をその伸縮方向へ150mm、該伸縮方向と直交する方向へ25mmの大きさで切り出し試験片を得、この試験片を、一方の不織布11と他方の不織布12とに該伸縮方向に沿って約3cm剥離する。この剥離の際、弾性フィラメント13は、一層強固に接合している方の不織布と一緒に剥離する。こうして一部が剥離された試験片を、その伸縮方向が引張方向となるように引張試験機(島津製作所製オートグラフAG-1kNIS)のチャック間(チャック間距離25mm)に装着する。試験片を300mm/分の引張速度でチャック間距離が160mmになるまで引っ張って一方の不織布11と他方の不織布12とに剥離し、このときの剥離強度を計測する。剥離強度の計測区間はチャック間距離35〜150mmの範囲内とする。その計測区間中で剥離強度が極大極小点を示すように振幅する場合は、極大点(凸点)の高い方から5点の平均を平均剥離強度として算出する。極大極小点を示さない場合には平均剥離強度を算出する。なお、本発明の好ましい測定方法としては、引張試験機として島津製作所製オートグラフAG−1kNISを用い、島津製作所製の材料試験機用ソフトウェアTRAPEZIUM2を用いて計測し、凸点最大5点平均により平均剥離強度を算出する。計測は5回行い、これらの平均値を弾性フィラメントと不織布との間の接合強度とする。図1に示す実施形態と異なり、1枚の不織布と弾性フィラメントから伸縮シートが構成されている場合には、試験片を引張試験機のチャック間に装着するときに、一方のチャックに弾性フィラメントを装着し、他方のチャックに不織布を装着する。これ以外の点は、上述の手順と同様の手順で行う。
伸縮シート10は、弾性フィラメント13と不織布11,12それぞれとの間の接合強度が前記の範囲内にあることに加えて、さらに、伸縮シート10を一方向(弾性フィラメント13の延びる方向)に沿って70%伸長させた状態から、前記70%伸長した伸縮シート10の長さを、伸長前の長さを基準として130%の長さまで(伸長を開放し)回復させさせたときの該伸縮シート10の強度(30%戻り強度)が、該伸縮シート10中に含まれる弾性樹脂の坪量当たり、好ましくは1.0cN/{50mm・(g/m2)}以上、更に好ましくは2.0〜10cN/{50mm・(g/m2)}である。この30%戻り強度が前記の範囲内にあることにより、弾性フィラメント13の延びる方向に伸縮シート10を容易に伸長させることが可能となる。したがって伸縮シート10を、使い捨ておむつの外装シートをはじめ、各種吸収性物品の構成材料として用いた場合、該吸収性物品は良好な風合いのものとなる。
前記の30%戻り強度は、次の方法で測定される。先ず、伸縮シート10の30%戻り強度を求める。伸縮シートを、その伸縮方向へ200mm、それと直交する方向へ50mmの大きさで切り出し試験片を得る。引張試験機(島津製作所製オートグラフAG-1kNIS)に試験片をチャック間距離150mmで装着する。試験片をその伸縮方向へ300mm/分の速度で伸長させる。試験片を70%まで伸長させ、次いで、ただちに戻り方向(伸縮シート10が伸長した状態から伸長前の長さに戻る方向)へ同速度で伸長した長さを回復させ、30%伸長させた時点(測定開始点を基準として、30%伸ばした時点。なお測定開始点は、チャック間距離150mmの位置ではなく、たるみ補正等をしている場合は、それによって補正された開始点を測定開始点とする。)の荷重を記録し、その値を30%戻り強度とする。この30%戻り強度の値を、別途求めておいた伸縮シート10中の弾性樹脂の坪量で割ることにより、目的とする、伸縮シート中の弾性樹脂坪量当たりの30%戻り強度を算出する。伸縮シート中の弾性樹脂の坪量は、該伸縮シートの製造時における弾性樹脂の仕込み量を、伸縮シートの面積で割ることにより求められる。溶媒等を用いることで、弾性樹脂が伸縮シートから抽出可能な場合には、次の方法によって伸縮シートの弾性樹脂の坪量を求めることができる。即ち、伸縮シートから溶媒等により弾性樹脂を抽出し、その抽出分の成分割合をNMR等の分析により求める。抽出分の成分割合から算出した弾性樹脂の含有量を、伸縮シートの面積で割ることにより求められる。この方法によれば、伸縮シートを構成する弾性フィラメント中に含まれる弾性樹脂を抽出できるとともに、伸縮シートを構成する伸長可能な不織布中に弾性樹脂が含まれている場合には該不織布中に含まれる該弾性樹脂を抽出でき、伸縮シート中に含まれる弾性樹脂の坪量を正確に測定することができる。
伸縮シート10においては、弾性フィラメント13の周囲に存在する非弾性繊維が該弾性フィラメント13と接合されていることから、弾性フィラメント13の周囲においては、弾性フィラメント13から離れた部位に比較して、繊維密度が高くなっている。つまり、隣り合う弾性フィラメント間の位置(図1において符号Aで示される位置)における繊維密度よりも、弾性フィラメントの周囲の位置(図1において符号Bで示される位置)における繊維密度の方が高くなっている。繊維密度の大小は、毛管力の大小と相関関係にあることから、伸縮シート10においては、隣り合う弾性フィラメント間の位置Aにおける毛管力よりも、弾性フィラメントの周囲の位置Bにおける毛管力の方が高くなっている。したがって伸縮シート10を、例えば吸収性物品の表面シートや、表面シートと吸収体との間に位置する、いわゆるサブレイヤーシートなどの、液の分配機能が必要な部材として用いると、排泄された液は、図1における位置Aから位置Bへ向かう毛管力勾配を駆動力として弾性フィラメント13の周囲に移動し、弾性フィラメント13に沿って拡散するようになる。つまり伸縮シート10は、液の拡散性が良好なものである。
各不織布11,12は、弾性フィラメント13と接合される前の原反の状態で既に伸長可能になっていてもよい。或いは、弾性フィラメント13と接合される前の原反の状態では伸長可能ではないが、弾性フィラメント13と接合された後に伸長可能となるように加工が施されて、伸長可能になるものである。不織布を伸長可能にするための具体的な方法としては、熱処理、ロール間延伸、歯溝やギアによるかみ込み延伸、テンターによる引張延伸などが挙げられる。後述する伸縮シート10の好適な製造方法に鑑みると、弾性フィラメント13を不織布11,12に融着させるときの該不織布11,12の搬送性が良好になる点から、不織布11,12はその原反の状態では伸長可能でないことが好ましい。
弾性フィラメント13は、糸状の合成ゴム糸や天然ゴムであり得る。或いは乾式紡糸(溶融紡糸)や、湿式紡糸によって得られたものであり得る。このうち、後述する好適な製造方法に鑑みると、弾性フィラメント13は、これを一旦巻き取ることなしに直接溶融紡糸によって得られたものであることが好ましい。
弾性フィラメント13は、ノズルから吐出された溶融樹脂を紡糸線上で延伸して得られたものであることが好ましい。延伸することで、弾性フィラメント13を構成する高分子が、該弾性フィラメント13の長さ方向に分子配向するので、弾性フィラメント13は、伸長させその後長さを回復させたときのヒステリシスロスが小さくなる。また、延伸によって細い弾性フィラメントが得られる。この観点から、弾性フィラメント13は、1.1〜400倍、特に4〜100倍に延伸されたものであることが好ましい。これに対して、先に述べた特許文献2においては、ダイから溶融状態で押し出された弾性ストランドが未延伸の状態でシートに接合されるので、該弾性ストランドのヒステリシスロスは十分に小さいものとはならない。
特に、弾性フィラメント13は、弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で延伸されて形成されたものであることが好ましい。弾性樹脂が溶融又は軟化した状態で延伸されることで、弾性フィラメント13を非伸長状態で不織布11,12に融着させることが可能になる。本実施形態における延伸の具体的な操作としては、(イ)弾性フィラメント13の原料となる樹脂を溶融紡糸して一旦未延伸糸を得、その未延伸糸の弾性フィラメントを再度加熱して軟化温度(ハードセグメントのガラス転移点温度Tg)以上の状態で延伸する操作や、(ロ)弾性フィラメント13の原料となる樹脂を溶融紡糸して得られた溶融状態の繊維を直接延伸する操作が挙げられる。後述する好適な製造方法に従い伸縮シート10を製造すると、弾性フィラメント13は、溶融紡糸して得られた溶融状態の繊維を直接延伸することで得られる。
延伸により得られた弾性フィラメント13は、その直径が10〜200μm、特に20〜130μmであることが好ましい。この範囲は、伸縮シート10の風合いや、弾性フィラメント13の生産性を考慮して決定されたものである。詳細には、弾性フィラメント13の直径が大きすぎると、伸縮シート10に触れたときに、弾性フィラメント13に起因する段差が知覚されやすくなってしまう。この段差は、伸縮シート10の風合いにマイナスに作用するものである。この観点からは、弾性フィラメント13の直径は小さいほど、各不織布11,12の風合いのみが知覚されやすくなるので好ましい。また、弾性フィラメント13に隠蔽性を持たせる意味でも細い方が好ましい。更に、後述する歯溝ロールによる弾性発現処理において、弾性フィラメント13の直径を歯溝ロール間の歯と歯のクリアランス以下(好ましいクリアランスとしては歯の耐久性を高める点と噛み込み量による延伸倍率を高くする点でクリアランスが小さくなり、250μm以下、より好ましくは200μm以下である)にすることで、弾性発現処理時に弾性フィラメントがダメージ(亀裂や切断)を受けにくくなるので、細い方が好ましい。弾性フィラメントの直径と上記クリアランスとの比は0.2〜1、特に0.2〜0.5が好ましい。尤も、弾性フィラメント13が細径になる程その製造が容易でなくなる。これらを考慮すると、弾性フィラメント13の直径は前記の範囲内であることが好ましい。
上述の段差を発生させないようにする観点から、伸縮シート10の厚みに対する弾性フィラメント13の伸縮シートの厚み方向の直径の割合は、1〜30%、特に5〜12%であることが好ましい。
弾性フィラメント13は、その断面が円形であり得るが、場合によっては扁平(潰れた形状)形の断面のこともある。例えば後述する製造方法に従い伸縮シート10を製造する場合には、弾性フィラメント13の断面は扁平(潰れた形状)形になりやすい傾向にある。伸縮シート10中において、弾性フィラメント13は、扁平(潰れた形状)形の長軸が伸縮シート10の平面方向と同方向になり、且つ短軸が伸縮シート10の厚さ方向と同方向になるように配置されることが好ましい。図7に示すように、後述する実施例1で得られた伸縮シートにおける弾性フィラメントは扁平(潰れた形状)形である。
弾性フィラメント13の断面が扁平(潰れた形状)形である場合、長軸/短軸の比率(平均偏平率)は2.0〜7.0、特に2.2〜5.0であることが、伸縮特性及び弾性フィラメント13と不織布11,12の構成繊維との接合強度、及び伸縮シート10の隠蔽性が増す点から好ましい。断面が扁平(潰れた形状)形である弾性フィラメント13は、その長軸方向が、伸縮シート10の平面方向とほぼ一致するように配されている。なお、弾性フィラメント13の断面が扁平(潰れた形状)形である場合、弾性フィラメント13の直径とは、長軸径と短軸径を平均したものを意味する。
伸縮シート10が十分な伸縮性を発現する観点から、布様の良好な風合いを発現させる観点、及び必要に応じ上述の意匠的な効果を発現させる観点、隣り合う弾性フィラメント13のピッチ(隣り合う弾性フィラメント13間の距離)は、該弾性フィラメント13の直径が上述した範囲であることを条件として、0.1〜5mm、特に0.4〜2mmであることが好ましい。
弾性フィラメント13と、第1及び第2の不織布11,12との接合の様式は、上述のとおり融着である。後述する好適な製造方法に従い伸縮シート10を製造すると、各不織布11,12に熱は加えられず、溶融紡糸により得られた弾性フィラメント13の固化前に、該弾性フィラメント13を不織布に融着させるので、該弾性フィラメント13の周囲に存在する繊維のみが該弾性フィラメント13と接合し、それよりも離れた位置にある繊維は不織布11,12の風合いを維持したままになっているので、伸縮シート10の風合いが良好に保たれるという利点がある。この場合、各不織布11,12と弾性フィラメント13とを接合させる前に、補助的な接合手段として接着剤を塗布することができる。或いは、各不織布11,12と弾性フィラメント13とを融着させた後に、補助的な接合手段として、熱処理(スチームジェット、ヒートエンボス)や、機械交絡(ニードルパンチ、スパンレース)などを行うこともできる。尤も、これらの補助的な接合手段は、得られる伸縮シート10の風合いを損なったり、弾性フィラメント13にダメージを与えたりする場合がある。したがって、弾性フィラメント13をその溶融熱で不織布11,12と融着することが好ましい。但し、補助的な接合手段として、エアスルー法による熱風吹き付けからなる熱処理を用いた場合には、得られる伸縮シート10の風合いは損なわれず、また不織布11,12の接合強度の高いものが得られる点で好ましい。
伸縮シート10は、弾性フィラメント13の延びる方向と同方向に伸縮可能になっている。伸縮シート10の伸縮性は、弾性フィラメント13の弾性に起因して発現する。伸縮シート10を、弾性フィラメント13の延びる方向と同方向に引き伸ばすと、弾性フィラメント13並びに第1及び第2の不織布11,12が伸長する。そして伸縮シート10の引き伸ばしを解除すると、弾性フィラメント13が伸長状態から伸長前の長さに戻ろうとし、それに連れて第1及び第2の不織布11,12が引き伸ばし前の状態に復帰する。
本実施形態の伸縮シート10においては、弾性フィラメント13と直交した状態で結合している他の弾性フィラメントは存在していない。したがって伸縮シート10を、弾性フィラメント13の延びる方向と同方向に引き伸ばしたときには、該伸縮シート10が幅縮みをほとんど起こさずに伸長する。つまり、伸縮シート10はその引き伸ばし状態において、その長手方向にわたり幅がほぼ一様になっている。その結果、伸縮シート10を、その伸長状態で搬送させてこれを加工するときのハンドリング性が良好になる。また、伸縮シート10を例えばパンツ型おむつの外包材として用いた場合、おむつの着用中にずれ落ちが起こったり、皺が寄ったりすることが効果的に防止される。この観点から伸縮シート10は、これを1.5倍に伸長したときの幅縮みの割合が、伸長前の幅の1%〜10%、特に1%〜5%であることが好ましい。幅縮みは(1−伸長後の幅÷伸長前の幅)×100として求めることができる。伸長後の幅は次のように測定する。サンプルを長さ方向が概ね流れ方向に沿うように(角度差15度以内)幅50mmにて切り出し、前記サンプルの両端の幅を50mmに保った状態で把持する。このときの長さ方向に力がかかっていない状態での把持間隔を150mmとし、把持間隔を1.5倍まで伸長させたときの、サンプルの長さ方向の中央部の幅を測定する。
次に、伸縮シート10を構成する第1及び第2の不織布11,12並びに弾性フィラメント13の構成材料について説明する。各不織布11,12を構成する繊維としては、上述のとおり実質的に非弾性の繊維が用いられる。その例としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエステル(PETやPBT)、ポリアミド等からなる繊維等が挙げられる。各不織布11,12を構成する繊維は、短繊維でも長繊維でもよく、親水性でも撥水性でもよい。また、芯鞘型又はサイド・バイ・サイドの複合繊維、分割繊維、異形断面繊維、捲縮繊維、熱収縮繊維等を用いることもできる。これらの繊維は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。各不織布11,12は、連続フィラメント又は短繊維の不織布であり得る。特に、伸縮シート10を厚みのある嵩高なものとする観点からは、各不織布11,12は、短繊維の不織布であることが好ましい。伸縮シート10を、肌に接触する部材として用いる場合には、肌の接触する側に風合いの良い短繊維不織布を用い、その反対面に強度の高い連続フィラメントの不織布を用いてもよい。
各不織布11,12は、その構成繊維が低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなることが好ましい。その場合には、少なくとも低融点成分の熱融着により、その構成繊維同士が繊維交点で接合される。低融点成分及び高融点成分の2成分以上からなる芯鞘型の複合繊維としては、芯が高融点PET、PPで、鞘が低融点PET、PP、PEのものが好ましい。特にこれらの複合繊維を用いると、弾性フィラメント13との融着が強くなり、両者間での剥離が起こりにくくなるので好ましい。
各不織布11,12の厚みは、好ましくは0.05〜5mm、更に好ましくは0.1〜1.0mm、一層好ましくは0.15〜0.5mmである。厚みの測定は、0.5cN/cm2の荷重にて平板間に挟み伸縮シート10の断面をマイクロスコープにより50〜200倍の倍率で観察し、各視野において平均厚みをそれぞれ求め、3視野の厚みの平均値として求めることができる。シート全体の厚みは平板間の距離を測ることで求められる。各不織布11,12の坪量は、風合い及び厚み等の観点から、それぞれ3〜100g/m2、特に10〜30g/m2であることが好ましい。
特に非弾性の繊維として、その長さ方向において繊維の太さが一様になっていないものを用いることが好ましい(以下、この繊維を不定径繊維という)。つまり不定径繊維は、その長さ方向に沿ってみたときに、繊維断面積(直径)が大きい部分もあれば、小さい部分もある。不定径繊維においては、その直径(断面積)が、最も小さい部分から最も大きい部分まで連続的に変化していてもよい。或いは、未延伸糸の延伸工程で観察されるネッキング現象のように、繊維の直径(断面積)が略ステップ状に変化していてもよい。繊維の直径(断面積)が略ステップ状に変化した状態になっている非弾性繊維の一例を図3に示す。
該非弾性繊維は、一定の繊維径を有する高伸度(例えば繊維の最大伸度が80〜800%、特に120〜650%)の繊維を原料とすることが、最大強度の高い伸縮シート10が得られる点で好ましい。繊維の伸度は、JIS L−1015に準拠し、測定環境温湿度20±2℃、65±5%RH、引張試験機のつかみ間隔20mm、引張速度20mm/minの条件での測定を基準とする。なお、既に製造された不織布から繊維を採取して伸度を測定するときをはじめとして、つかみ間隔を20mmにできない場合、つまり測定する繊維の長さが20mmに満たない場合には、つかみ間隔を10mm又は5mmに設定して測定する。
前記の高伸度の繊維は、低延伸の非弾性繊維であることが好ましい。低延伸の非弾性繊維を原料として、後述する製造方法に従い本実施形態の伸縮シート10を製造すると、その弾性発現処理において低延伸の繊維が引き伸ばされることで、繊維に細い部分が生じて後述の不定径繊維が形成される。その結果、本実施形態の伸縮シートの弾性発現処理において、不織布が構造的に伸ばされ易い形に変更させることになるが、繊維が伸ばされることで、不織布構造全体でも、伸ばされ易くなり、不定形繊維間の接合点や、各不織布11,12と弾性フィラメント13との接合点が破壊されることを最小限にすることが可能になり、伸縮性能を維持しつつ伸縮シート10の強度を高くすることができる。つまり、高伸度と高強度とが両立した伸縮シート10が得られる。また、弾性発現処理において、前記不定径繊維間の接合も破壊されにくくなることは、各不織布11,12が毛羽立ち様になりにくくなる効果もある。このことは、本実施形態の伸縮シート10の外観を向上させる点から有利である。
更に、前記の低延伸の繊維を原料とすることで、繊維の引き伸ばしの前に比較して、細い繊維の本数(長さ)が実質的に増加する。それによって本実施形態の伸縮シート10の光不透過性が向上する。伸縮シート10の光不透過性が向上することは、例えば伸縮シート10を生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品の表面シートとして用いた場合、吸収体に吸収された体液が表面シート越しに見えづらくなるという隠蔽性能が向上する点から有利である。
その上、不定径繊維が密に存在している領域が、不織布上で周期的に変化していると、各不織布11,12の表面が細かに波打った状態になり、その肌触りが良好になるという付加的な効果もある。不定形繊維の径の測定は、以下の(1)〜(5)の手順で測定される。
(1)伸縮シート10の表面における5mm×5mm以上の領域から不織布11又は不織布12をサンプリングする。このときサンプルは、不織布11,12を、弾性フィラメント13から切り離して採取してもよく、或いは伸縮シート10全体を採取してもよい。
(2)採取されたサンプルを、SEMの観察用試料台に固定する。このとき、サンプルを観察しやすいように、サンプルの構造を破壊しない程度にサンプルを引き伸ばした状態で(不織布の弛みが取れる程度まで)、サンプルを両面テープで試料台に固定してもよい。このときの引き伸ばし量は、例えば伸縮シート10を製造する工程において(弾性発現処理)工程を用いる場合は、延伸工程で伸縮シート10の前駆体を延伸した延伸倍率以下程度とする。
(3)SEM観察は倍率200で行う。1箇所の視野面積は0.4mm×0.4mm程度以上とし、5箇所を観察する。
(4)無作為に繊維を抽出し、径を0.1μm単位で繊維軸方向に10μmおきに20箇所以上測定する(繊維同士の融着点や破壊している部分は、測定に含めない。)。繊維は各視野4本以上測定し、5視野について、計20本について測定を行う。
(5)これらの値から10本のそれぞれの繊維の最大径と最小径を抽出する。
1本の繊維の最大径と最小径の差が1μmあり、繊維軸方向の位置と径の変化の関係をグラフ化した場合、極大位置又は極小位置が2以上あるものを不定径繊維と呼ぶ。
以上の各効果を一層顕著なものとする観点から、不定径繊維はその太さが、最も細い部分において好ましくは2〜15μm、更に好ましくは5〜12μmであり、最も太い部分において好ましくは10〜40μm、更に好ましくは12〜30μmである。不定径繊維の最大径と最小径の差は3μm以上、特に5μm以上、とりわけ10μm以上が好ましい。また、「最大繊維径/最小繊維径」で定義される繊維径比の値は、1〜15であることが好ましく、1.2〜10であることが更に好ましく、2〜5であることが一層好ましい。
不定径繊維はその繊維間融着点強度が、該不定径繊維の100%伸長時強度よりも高いものであることが好ましい。これによって、伸縮シート10を製造するときの弾性発現処理工程において、弾性発現処理前の伸縮シート10を引き伸ばし弾性発現処理加工する際に、弾性発現処理前の伸縮シート10の繊維同士の融着点の破壊が起こりにくくなり、弾性発現処理前の伸縮シート10の強度に比べて、前記弾性発現処理工程を経て得られた伸縮シート10の強度が低下しづらくなる点から好ましい。融着点強度は、本出願人の先の出願に係る特開2004−218183号公報の段落〔0040〕の記載に従い測定される。100%伸長時強度は、引張試験機を用い、チャック間距離20mm、引張速度20mm/minの条件で測定される。
上述した低延伸の非弾性繊維とは、紡糸後に低延伸倍率で延伸された繊維及び延伸されていない繊維、即ち未延伸繊維の両方を包含する。低延伸の繊維としてはその伸度が上述のとおり80〜800%、特に120〜650%の高いものを用いることが好ましい。この範囲の伸度を有する低延伸の繊維を用いることで、該繊維が後述する図5に示す延伸装置22で首尾良く引き伸ばされて、不定径繊維が容易に形成される。低延伸の繊維の繊維径は10〜35μm、特に12〜30μmであることが好ましい。
先に述べたとおり、不定径繊維は、一定の繊維径を有する低延伸の繊維を原料とすることが好ましい。この場合、低延伸の繊維は、単一の原料からなる繊維でもよく、或いは2種以上の原料を用いた複合繊維、例えば芯鞘型複合繊維やサイド・バイ・サイド型複合繊維であってもよい。不定径繊維どうしの接合のさせやすさや、各不織布11,12と弾性フィラメント13との接合のさせやすさを考慮すると、複合繊維を用いることが好ましい。芯鞘型の複合繊維の場合、芯がポリエステル(PETやPBT)、ポリプロピレン(PP)、鞘が低融点ポリエステル(PETやPBT)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)が好ましい。特にこれらの複合繊維を用いると、弾性フィラメント13がポリオレフィン系エラストマーを含む場合、弾性フィラメント13と各不織布11,12の構成繊維との熱融着が強くなり、層剥離が起こりにくい点で好ましい。
不定径繊維は、ステープルファイバのような短繊維でもよく、或いは連続フィラメントのような長繊維でもよい。後述する伸縮シート10の好適な製造方法に鑑みると、短繊維を用いることが好ましい。また、不定径繊維は親水性でも撥水性でも良い。
各不織布11,12は、不定径繊維のみから構成されていてもよく、或いは不定径繊維に加えて、他の一定径の非弾性繊維が含まれていてもよい。他の非弾性繊維としては、先に述べたものが挙げられる。各不織布11,12に、不定径繊維に加えて他の一定径の非弾性繊維が含まれている場合、他の非弾性繊維の配合量は1〜30重量%、特に5〜20重量%であることが好ましい。
不定径繊維は2つの不織布11,12の両方に含まれていることが特に好ましいが、2つの不織布11,12のうちの一方にのみ含まれていてもよい。
弾性フィラメント13は、例えば熱可塑性エラストマーやゴムなどを原料とするものである。特に熱可塑性エラストマーを原料として用いると、通常の熱可塑性樹脂と同様に押出機を用いた溶融紡糸が可能であり、またそのようにして得られたフィラメントは熱融着させやすいので、本実施形態の伸縮シートに好適である。熱可塑性エラストマーとしては、SBS(スチレン−ブタジエン−スチレン)、SIS(スチレン−イソプレン−スチレン)、SEBS(スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン)、SEPS(スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン)等のスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー(エチレン系のα-オレフィンエラストマー、エチレン・ブテン・オクテン等を共重合したプロピレン系エラストマー)、ポリエステル系エラストマー、ポリウレタン系エラストマーを挙げることができる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。またこれらの樹脂からなる芯鞘型又はサイド・バイ・サイド型の複合繊維を用いることもできる。特にスチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、又はそれらを組み合わせて用いることが、弾性フィラメント13の成形性、伸縮特性、コストの面で好ましい。
弾性フィラメント13と不織布11,12を構成する繊維との好適な組み合わせは、弾性フィラメント13にSEBS樹脂又はSEPS樹脂を用い、不織布11,12の構成繊維にPP/PE芯鞘型複合繊維又はPET/PE芯鞘型複合繊維を用いる組み合わせである。この組み合わせを採用することで、融着をしっかりと行うことができる。また芯の融点が高いので、繊維が融着時に溶けきらず(芯が残る)、最大強度の高い伸縮シート10が得られる。
次に、本実施形態の伸縮シート10の好適な製造方法を、図4を参照しながら説明する。本製造方法においては、紡糸ノズル16から紡出された溶融状態の多数の弾性フィラメント13を所定速度で引き取って延伸しつつ、該弾性フィラメント13の固化前に、該弾性フィラメント13が互いに交差せず一方向に配列するように該弾性フィラメント13を不織布11,12に融着させ、次いで該弾性フィラメント13が融着した不織布11,12からなる複合体19を、該弾性フィラメント13の延びる方向に沿って弾性発現処理して該複合体19に伸縮性を付与する。
紡糸ノズル16は、紡糸ヘッド17に設けられている。紡糸ヘッド17は、押出機に接続されている。ギアポンプを介して紡糸ヘッド17へ樹脂を供給することもできる。該押出機によって溶融混練された弾性樹脂は、紡糸ヘッド17に供給される。紡糸ヘッド17には、多数の紡糸ノズル16が直線状に一列に配置されている。紡糸ノズル16は、第1及び第2の不織布11,12の幅方向に沿って配置されている。隣り合う紡糸ノズル16の間隔は、目的とする伸縮シート10における弾性フィラメント13の間隔に相当する。紡糸ノズル16は通常円形であり、その直径は弾性フィラメント13の直径及び延伸倍率に影響を及ぼす。この観点から、紡糸ノズル16の直径は0.1〜2mm、特に0.2〜0.6mmであることが好ましい。不織布11,12との接合強度を高める目的、弾性フィラメント13の紡糸性を上げる目的、及び伸縮シート10の伸縮特性を向上させる目的で、弾性フィラメント13を複合の形態(サイドバイサイド、芯鞘、海島構造)とすることもできる。具体的にはPP系のエラストマー樹脂とスチレン系のエラストマー樹脂とを組み合わせることが好ましい。
紡出された溶融状態の弾性フィラメント13は、それぞれ原反から同速度で繰り出された第1の不織布11及び第2の不織布12と合流し、両不織布11,12間に挟持されて所定速度で引き取られる。弾性フィラメント13の引き取り速度は、両不織布11,12の繰り出し速度と一致している。弾性フィラメント13の引き取り速度は、該弾性フィラメント13の直径及び延伸倍率に影響を及ぼす。延伸によって弾性フィラメント13に生じる張力は、該弾性フィラメント13を不織布11,12と貼り合わせるときの風や静電気に起因する該弾性フィラメント13の乱れを防止する。それによって弾性フィラメントどうしを交差させずに一方向へ配列させることができる。これらの観点から、弾性フィラメント13の引き取り速度は、紡糸ノズル孔内の樹脂吐出速度に対し、その延伸倍率が1.1〜400倍、特に4〜100倍、更に10〜80倍となるように調整されることが好ましい。
弾性フィラメント13は、その固化前に、即ち融着可能な状態で第1及び第2の不織布11,12と合流する。その結果、弾性フィラメント13は、第1及び第2の不織布11,12に挟持された状態で、これらの不織布11,12に融着する。つまり、固化前の弾性フィラメントを、搬送される不織布11,12に融着させながら、弾性フィラメント13は引き取られて延伸される。弾性フィラメント13の融着に際しては第1及び第2の不織布11,12には、外部から熱は付与されていない。つまり、固化前のまだ完全に冷却される前の弾性フィラメント13が有する熱によってのみ、該弾性フィラメント13と両不織布11,12とが融着する。その結果、両不織布11,12の構成繊維のうち、弾性フィラメント13の周囲に存在する繊維のみが該弾性フィラメントと融着し、それよりも離れた位置に存在する繊維は融着しない。その結果、両不織布11,12に加わる熱は最小限にとどまるので、該不織布自身が本来的に有する良好な風合いが維持される。それによって、得られる伸縮シート10の風合いが良好になる。
紡出された弾性フィラメント13が、第1及び第2の不織布11,12と合流するまでの間、該弾性フィラメント13は延伸されて延伸方向に分子が配向する。また直径が小さくなる。分子配向によって、弾性フィラメント13は、伸長させその後長さを回復させたときのヒステリシスロスの小さな弾性フィラメント13が得られる。弾性フィラメント13を十分に延伸させる観点及び弾性フィラメント13の糸切れを防止する観点から、紡出された弾性フィラメント13に所定温度の風(熱風、冷風)を吹き付けて、該弾性フィラメント13の温度を調整してもよい。
弾性フィラメント13の延伸は、弾性樹脂の溶融状態での延伸(溶融延伸)だけでなく、その冷却過程における軟化状態の延伸(軟化延伸)であってもよい。溶融状態とは、外力を加えたとき樹脂が流動する状態である。樹脂の溶融温度は粘弾性測定による(例えば円形並行平板間に挟んだ樹脂に回転方向の振動歪を加えて測定される)Tanδのピーク温度として測定される。弾性樹脂の延伸時に糸切れが起こらないようにするために、延伸区間を長く確保することがよい。また、同様に糸切れが起こらないようにするために、弾性樹脂の溶融温度は130〜300℃が好ましい。さらに、弾性樹脂は、耐熱性の観点から、溶融温度が220℃以下のものが好ましい。弾性フィラメント13の成形温度(ダイスの温度)は樹脂の流動性を上げて成形性をよくするために原料樹脂の溶融温度の+50℃以上が好ましく、耐熱性のため原料樹脂の溶融温度+110℃以下が好ましい。軟化温度は、シート状にした弾性樹脂の測定試料の粘弾性特性におけるTg温度として測定される。軟化温度から溶融温度までの範囲を軟化状態という。また、軟化温度より低い温度の状態を固化状態という。軟化温度は、伸縮シート10の保存時における弾性樹脂の結晶の成長や、体温による伸縮シート10の伸縮特性の低下の観点から、60℃以上が好ましく、80℃〜180℃がより好ましい。
弾性フィラメント13と不織布11,12とを接合させるときの弾性フィラメント13の温度は、繊維融着を確実にするために100℃以上であることが好ましい。また弾性フィラメント13の形状を保持して伸縮特性の良好な伸縮シート10を得る観点から、弾性フィラメントの温度は180℃以下であることが好ましい。より好ましくは120〜160℃の範囲である。接合時の温度は、弾性フィラメント13と接合させるラミネート基材として、弾性フィラメントを構成する弾性樹脂の融点と異なる融点を有する変性ポリエチレンや変性ポリプロピレンなどからなるフィルムを用いて、その接合状態を観察することで測定できる。このとき、弾性フィラメントとラミネート基材が融着していれば、接合温度はラミネート基材の融点以上である。
弾性フィラメント13を第1及び第2の不織布11,12と合流させるときには、各弾性フィラメント13が互いに交差せず一方向に配列するようにする。そして、弾性フィラメント13を第1及び第2の不織布11,12と合流させて両不織布11,12間に該弾性フィラメント13を挟持させた状態で、これら三者を一対のニップロール18,18によって挟圧することが有利である。ニップロール18,18による挟圧の条件は、弾性フィラメント13と、不織布11,12に含まれる非弾性繊維との融着状態に影響を及ぼす。非弾性繊維を弾性フィラメント中に埋没させるためには、ニップロール18,18のクリアランスをゼロにした状態で弾性フィラメント13と不織布11,12とを挟圧する。つまり強い挟圧力のもとで両者を挟圧する。この挟圧によって溶融又は軟化状態の弾性フィラメント中に、非弾性繊維が確実にかつ十分に埋没する。挟圧の条件をニップ線圧で表すと、線圧が0.2〜20kgf/cm、特に1.0〜15kgf/cm、とりわけ3.0〜10kgf/cmであることが好ましい。なお線圧は、押付け力を前記材料の挟持幅で除すことで算出される。押付け力は、ニップロールの設定条件から算出される。ニップロールの設定条件から算出できない場合は、各種ロードセル又は感圧紙(代表的なものとしては富士フィルム製プレスケール)によってニップ押付け力を算出する。
ニップロール18による挟圧の別の条件として、ニップロール18の温度が挙げられる。本発明者らの検討の結果、ニップロール18を加熱した状態で挟圧を行うよりもむしろ、加熱しないか(つまり成り行きにまかせるか)、又は冷却しながら挟圧を行う方が、風合いの良好な伸縮シート10が得られることが判明した。成形速度や温度を変更するのに伴い、ニップロール18を温度調節する場合には、冷媒や熱媒を用い、ニップロール18の表面設定温度が10〜80℃になるようにすることが好ましい。
このようにして2枚の不織布11,12間に弾性フィラメント13が挟持された複合体19が得られる。不織布11,12として本来的に伸長性を有するものを用いた場合には、この複合体19が伸縮シート10そのものとなる。一方、不織布11,12として本来的に伸長性を有しないものを用いた場合には、該不織布11,12を含む複合体19を、弾性フィラメント13の延びる方向に沿って弾性発現処理して、該複合体19に伸縮性を付与する操作を行う。本製造方法においては、この操作を、それぞれ歯と歯底が周方向に交互に形成された一対の歯溝ロール20,21を備えた弾性発現処理装置22を用い、複合体19をその搬送方向、即ち弾性フィラメント13の延びる方向に沿って延伸させることで行う。
弾性発現処理装置22は、一方又は双方の歯溝ロール20,21の枢支部を上下に変位させる公知の昇降機構(図示せず)を有し、歯溝ロール20,21間の間隔が調節可能になっている。本製造方法においては、各歯溝ロール20,21を、一方の歯溝ロール20の歯が他方の歯溝ロール21の歯間に遊挿され、他方の歯溝ロール21の歯が一方の歯溝ロール20の歯間に遊挿されるように組み合わせ、その状態の両歯溝ロール20,21間に、複合体19を挿入してこれを弾性発現処理する。
弾性発現処理装置22においては、一対の歯溝ロール20,21の両方が駆動源によって駆動するようになっていてもよく(共回りロール)、一方の歯溝ロール20又は21のみが駆動源によって駆動するようになっていてもよい(連れ回りロール)が、本製造方法においては、下側の歯溝ロール21のみが駆動源によって駆動し、上側の歯溝ロール20は駆動源に接続されておらず、歯溝ロール21の回転に伴って従動する(連れ回る)ようになっている。歯溝ロール20,21の歯形としては、一般的なインボリュート歯形、サイクロイド歯形が用いられ、特にこれらの歯幅を細くしたものが好ましい。
図5には、複合体19が弾性発現処理される状態が模式的に示されている。複合体19が歯溝ロール20,21間を通過する際には、複合体19は、歯溝ロール20,21の歯23,24に当接する領域(P3−P2間、P1−P4間)においては、ほとんど延伸されない。これに対し、駆動ロールである歯溝ロール21の歯24の歯面によって、従動ロールである歯溝ロール20の歯23の歯面に向けて押圧される領域(P2−P1間)においては、両歯20,21によって大きく延伸される。また、歯溝ロール21の歯24の先端部によって、歯溝ロール20の歯23から引き離される領域(P4−P3間)においては、前記領域(P2−P1間)程ではないが、大きく延伸される。
また複合体19は、歯溝ロール20,21の歯23,24の先端部に当接する領域(P3−P2間、P1−P4間)においては、前述のとおりほとんど延伸されないが、歯23,24の先端部によって、その径方向に、つまり複合体19の厚み方向に片押しされるので、厚み方向に薄くなる。但し領域(P3−P2間)と領域(P1−P4間)とは片押しされる方向が反対向きであるため、薄くなる方向が反対向きとなる。
特に、不織布11,12に、低延伸の繊維が含まれる場合には、上述した(P2−P1)間及び(P4−P3)間において、該繊維が引き伸ばされて細くなりその太さが周期的に変化した不定径繊維が形成される。低延伸の繊維の引き伸ばしは、(P2−P1)間及び(P4−P3)間の距離に応じて変化する。
歯溝ロール20,21による引き伸ばし力は、低延伸の繊維の引き伸ばしに主として作用し、不織布11,12と弾性フィラメント13との接合部位には過度の力が加わらない。その結果、該接合部位の破壊や、不織布11,12と弾性フィラメント13との剥離が生じるのを防止しつつ、複合体19を効率的に延伸させることができる。また、この延伸により、図6に示すように、繊維間の接合が破壊されずに不織布11,12が十分に伸長され、それによって不織布11,12が、弾性フィラメント13の自由な伸縮を阻害する程度が大きく低下する。その結果、本製造方法によれば、高強度・高伸縮性であり、また、破れや毛羽立ちの少ない外観の良好な伸縮シート10を効率的に製造することができる。なお図6においては、延伸によって生じた非弾性繊維の太さは便宜的に一様に表されている。
上述のとおり、不織布11,12に低延伸の繊維が含まれる場合には、該繊維が首尾良く延伸されて、それらの繊維間の接合が延伸によって破壊されないので、弾性発現処理による不織布11,12強度の低下が極力抑えられる。具体的には、弾性発現処理前の複合体19の引張強度に対する、弾性発現処理後に得られた伸縮シート10の引張強度の比は0.3〜0.99、特に0.5〜0.99、更には0.7〜0.99という1に近い値となる。ここでいう引張強度は、以下に述べる最大強度の測定法に従い測定される。
<最大強度の測定>
伸縮シート10の伸縮方向へ200mm、それと直交する方向へ50mmの大きさで矩形の試験片を切り出した。チャック間距離は150mmとした。試験片を伸縮シート10の伸縮方向へ300mm/分の速度で伸長させ、そのときの荷重を測定した。そのときの最大点の荷重を最大強度とした。同様の方法によって、弾性発現処理前の複合体19についても最大強度を測定した。最大強度は、測定環境を20±2℃、湿度65±5%RHの条件で、好ましくは島津製作所製の引張試験機AG−1kNISを用いて測定される。
複合体19が一対の歯溝ロール20,21によって弾性発現処理されることで、目的とする伸縮シート10が得られる。得られた伸縮シート10は、歯溝ロール20,21を通過した後、自身の収縮復元力により速やかにMD方向への延伸状態が解放される。その結果、伸縮シート10は、搬送方向へ長さが概ね復元する。なお、延伸状態を解放する場合、延伸状態が完全に解放されるようにしてもよく、伸縮性が発現する限度において、ある程度の延伸状態が維持された状態で延伸状態を解放してもよい。
前記の弾性発現処理加工によって、伸縮シート10の厚みは、弾性発現処理加工前の複合体19の厚みに対して1.1倍〜4倍、特に1.3倍〜3倍に増すことが好ましい。これによって、両不織布11,12の構成繊維が塑性変形して伸びることで繊維が細くなる。これと同時に、両不織布11,12が一層嵩高となり、肌触りが良く、クッション性が良好になる。
また、具体的な用途にもよるが、伸縮シート10は、その全体の坪量が10〜150g/m2、特に25〜50g/m2であることが好ましい。伸縮シート10の厚みに関しては、0.05〜5mm、特に0.5〜2mmであることが好ましい。伸縮シート10の厚みは、先に述べた各不織布11,12の厚みの測定と同様の方法で測定される。
本実施形態の伸縮シート10は、先に述べたとおりパンツ型使い捨ておむつの外装シートとして好適に用いられる。またこの用途以外に、その良好な風合いや、毛羽立ち防止性、伸縮性、通気性等の利点を生かし、医療用使い捨て衣類や清掃シート、眼帯、マスク、包袋等の各種の用途に用いることもできる。特に生理用ナプキンや使い捨ておむつなどの吸収性物品の構成材料として好ましく用いられる。該構成材料としては、例えば、吸収体よりも肌側に位置する液透過性のシート(表面シート、サブレイヤー等を含む)や、使い捨ておむつの外面を構成するシート、胴回り部やウエスト部、脚周り部等に弾性伸縮性を付与するためのシート等が挙げられる。また、ナプキンの伸縮性ウイングを形成するシート等として用いることができる。また、それ以外の部位であっても、伸縮性を付与したい部位等に用いることができる。伸縮シート10の坪量や厚みは、その具体的な用途に応じて適切に調整できる。例えば吸収性物品の構成材料として用いる場合には、坪量20〜60g/m2程度、厚み0.5〜1.5mm程度とすることが望ましい。
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記実施形態に制限されない。例えば前記実施形態の伸縮においては、2枚の不織布11,12間に多数の弾性フィラメント13が挟持された構造になっていたが、これに代えて、1枚の不織布の表面に多数の弾性フィラメントを接合して伸縮シートとなしてもよい。
また前記実施形態においては、弾性フィラメント13はすべて同径で、等ピッチで配置されていたので、伸縮シート10のどの部分をとっても伸長応力は同じになっていた。しかし、これに代えて、弾性フィラメントの伸長方向における伸長応力が異なる2以上の領域からなるように伸縮シートを構成してもよい。2つ以上の該領域は、該伸長方向に対してほぼ並列配置されている。この場合、伸長応力が異なる各領域間では、隣り合う弾性フィラメントのピッチが異なっているか、及び/又は、弾性フィラメントの直径が異なっている。それによって各領域間での伸長応力を異ならせることができる。伸縮シートの製造時に、2種以上の異なる樹脂を、任意の紡糸ノズルに導入して紡糸を行うことでも、各領域間での伸長応力を異ならせることができる。
伸縮シート10に部分的にエンボス加工を行ったり、弾性フィラメント13を部分的にカットしたり部分的に熱シールしたりすることもできる。これらの操作は、伸縮シート10に伸縮しない部分を形成したり、強度を部分的に上げたりする目的で行われる。或いは、他の部材と貼り合わせたり、デザイン性を持たせたりする目的で行う。
また、弾性フィラメント13を不織布11,12に接合した後に行う弾性発現処理に関し、延伸方向は不織布11,12の流れ方向のみでなく、例えば斜めであっても良い。更に、2種以上の延伸方法を組み合わせたり、段階的に延伸倍率を上げたり、部分的に延伸を行ったりすることもできる。延伸方向は一方向のみでなく、直交する二方向であってもよい。一方向に伸縮する不織布とこれに直交する方向に伸縮する不織布とを接合して、伸縮シートの全方向に伸縮性を持たせることもできる。
また前記実施形態の製造方法においては、複合体19の弾性発現処理加工に一対の歯溝ロール20,21を備えた延伸装置を用いたが、これに代えてテンターを備えた延伸装置を用いて延伸加工を行ってもよい。