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JP2009018999A - 抗癌剤抵抗性の抑制剤 - Google Patents

抗癌剤抵抗性の抑制剤 Download PDF

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JP2009018999A JP2007181465A JP2007181465A JP2009018999A JP 2009018999 A JP2009018999 A JP 2009018999A JP 2007181465 A JP2007181465 A JP 2007181465A JP 2007181465 A JP2007181465 A JP 2007181465A JP 2009018999 A JP2009018999 A JP 2009018999A
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Hisashi Narimatsu
久 成松
Takashi Okura
隆司 大倉
Hidenobu Ando
秀信 安藤
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Abstract

【課題】癌細胞の抗癌剤抵抗性を抑制できる新規な手段を提供すること。
【解決手段】O−グリカンのコア3構造の生合成を司るβ1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ6又はその特定の誘導体等を有効成分として含有する抗癌剤抵抗性の抑制剤を提供した。
【効果】本発明の抗癌剤抵抗性の抑制剤によれば、薬剤排出トランスポーターの1種であるP−糖タンパク質の薬剤排出活性が抑制されるので、抗癌剤を用いた治療において従来問題となっている抗癌剤への抵抗性を抑制し、抗癌剤の効果を維持することができる。
【選択図】図4

Description

本発明は、抗癌剤抵抗性の抑制剤に関する。
癌の化学療法においては、抗癌剤が当初は効果的であっても次第に効かなくなることがしばしば起こり、問題となっている。多剤抵抗性のメカニズムとして代表的なものは薬剤排出トランスポーターであり、上記した抗癌剤抵抗性の獲得も薬剤排出トランスポーター活性の上昇により生じているものと考えられている。
薬剤排出トランスポーターとしては、多くのATP結合部位 (ATP-binding cassette; ABC)を有するタンパク質の中の一群が知られている(非特許文献1〜4)。現在48種類のABC遺伝子が報告されているが、その中で薬剤抵抗性に重要であると言われているものは、P−糖タンパク質 (MDR1) (ABCB1遺伝子がコード)と多剤抵抗性タンパク質1(multidrug resistance protein 1; MRP1) (ABCC1遺伝子がコード)、MRP2 (ABCC2がコード)、MRP3 (ABCC3がコード)、MRP4 (ABCC4がコード)、MRP5 (ABCC5がコード)、乳癌抵抗性タンパク質 (breast cancer resistance protein; BCRP) (ABCG2がコード)などである(非特許文献2)。これらのうち最も研究されているのが、1280アミノ酸から成る170kDaのヒトP−糖タンパク質であり、2つのATP結合ドメインと12個の膜貫通領域、3本のN-グリカンを有する(非特許文献5、6)。このタンパク質の発現は副腎、腎臓に高く認められ、肺、肝臓、空腸下部、結腸、直腸にも中程度認められる(非特許文献7)ほか、脳血管内皮の血液脳関門においても血中から中枢神経系への薬物の侵入を防ぐ重要な役割を果たしていることが知られている(非特許文献8)。
薬剤排出トランスポーター活性を調節している機構が明らかになれば、癌の化学療法において診断や薬剤効果に大きな進展が見られると期待されるが、未解明な部分が多い。糖鎖との関連としては、N-グリカンがP-糖タンパク質の活性発現に重要な機能を持つ事が明らかにされている(非特許文献9、10)。また、頭頸部扁平上皮癌細胞のシスプラチン抵抗性では、α5β1インテグリンに結合したN-グリカンの中のβ1,6-N-アセチルグルコサミン分枝の減少が主要因である事が明らかになっている(非特許文献11)。一方、O−グリカンの抗癌剤抵抗性への関与については未だ報告がない。
O-グリカンは、糖タンパク質上のセリンまたはスレオニンにN-アセチルガラクトサミン残基がO-グリコシド結合を介して結合しているものであり、細胞表面のいわゆるムチン様タンパク質に多く存在する事から「ムチン型」とも呼ばれている(非特許文献12、13)。10種類以上が知られているppGalNAcTが、N-アセチルガラクトサミン残基をポリペプチド上に転移した後、2〜3糖からなるコア構造を形成し、その上にガラクトース、N-アセチルグルコサミン、フコース、N-アセチルガラクトサミン、シアル酸、硫酸基などがさらに1〜数10残基結合して側鎖を形成している。これらO-グリカンは、N-グリカンと異なり、数本から数10本がペプチド上の近い位置に並んで強い電荷や親水性を有するクラスターを作る事が多く、糖タンパク質の物理化学的性質を決定している場合も多い。また、側鎖にはルイスX、ルイスA、シリアルルイスXなどの糖鎖抗原決定基、細胞間相互作用のリガンドが結合して様々な分化、免疫、接着、癌化などの現象に関わっている事が知られている。コア構造としてはコア1(Galβ1-3GalNAcα-)、コア2[Galβ1-3(GlcNAcβ1-6)GalNAcα-]、コア3(GlcNAcβ1-3GalNAcα-)、コア4[GlcNAcβ1-3(GlcNAcβ1-6)GalNAcα-]の他、コア5〜8などの稀な構造も報告されている。側鎖を形成するグリコシルトランスフェラーゼにはコア構造を認識するものも多く(非特許文献14)、コア構造の変換は側鎖も含めた糖鎖構造の変化を伴う事が予想される。胸腺皮質細胞はその表面に多くのコア2糖鎖を発現しているが、T細胞に成熟する時、このコア2糖鎖は消失し、コア1糖鎖のみになる(非特許文献15)。T細胞は、免疫応答で一旦活性化されるとコア2糖鎖を獲得する(非特許文献16)。癌細胞においてもコア3からコア1、コア2への変化が報告されている(非特許文献17、18)。
O−グリカンと癌の転移性との関与に関する報告として、岩井らが単離したO−グリカンのコア3構造の生合成を司る酵素であるUDP-GlcNAc:GalNAc-peptideβ1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ6 (β3Gn-T6, コア3シンターゼ)(特許文献1、非特許文献19)が、癌細胞の転移性を顕著に低下する作用を有することが報告されている(特許文献2、非特許文献20)。しかし、上述した通り、O−グリカンの抗癌剤抵抗性への関与については全く報告されていない。
癌細胞の抗癌剤抵抗性を効果的に抑制できれば、癌の治療に極めて有用である。しかしながら、上述の通り、抗癌剤抵抗性の機構には未解明な部分が多く、抗癌剤抵抗性を抑制できる有用な手段は未だ提供されていないのが現状である。
国際公開第03/033710号パンフレット 特開2006-22027号公報 Leslie EM et al. Toxicol Appl Pharmacol 2005;204:216-37. Takano M et al. Pharmacol Ther 2006;109:137-61. Borst P et al. J Natl Cancer Inst 2000;92:1295-302. Loo TW et al. J Membr Biol 2005;206:173-85. Chen CJ et al. Cell 1986;47:381-9. Schinkel AH et al. J Biol Chem 1993;268:7474-81. Fojo AT et al. Proc Natl Acad Sci U S A 1987;84:265-9. Bauer B et al. Exp Biol Med (Maywood) 2005;230:118-27. Kramer R et al. Br J Cancer 1995;71:670-5. Gribar JJ et al. J Membr Biol 2000;173:203-14. Nakahara S et al. Mol Cancer Ther 2003;2:1207-14. Fukuda M. Biochim Biophys Acta 2002;1573:394-405. Wopereis S et al. Clin Chem 2006;52:574-600 Holgersson J et al. Glycobiology 2006;16:584-93 Baum LG et al. J Exp Med 1995;181:877-87 Priatel JJ et al. Immunity 2000;12:273-83 Vavasseur F et al. Eur J Biochem 1994;222:415-24 Vavasseur F et al. Glycobiology 1995;5:351-7 Iwai T et al. J Biol Chem 2002;277:12802-9 Iwai T et al. Proc Natl Acad Sci U S A 2005;102:4572-7
従って、本発明の目的は、癌細胞の抗癌剤抵抗性を抑制できる新規な手段を提供することである。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、O−グリカンのコア3構造の生合成を司るβ1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ6(β3Gn-T6、配列番号2)を癌細胞内で発現させると、薬剤排出トランスポーターの1種であるP−糖タンパク質の薬剤排出活性が抑制され、癌細胞における抗癌剤の細胞外排出が顕著に低下して抗癌剤感受性が増大することを見出し、本願発明を完成した。
すなわち、本発明は、配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するポリペプチド又は該ポリペプチドを部分配列として含むポリペプチドであって、N−アセチルガラクトサミニル基の非還元末端にN−アセチルグルコサミンをβ-1,3結合で転移する活性を有するポリペプチドを有効成分として含有する抗癌剤抵抗性の抑制剤を提供する。
本発明により、癌細胞の抗癌剤抵抗性を抑制できる新規な医薬が提供された。本発明の抗癌剤抵抗性の抑制剤によれば、抗癌剤を用いた治療において従来問題となっている抗癌剤への抵抗性を抑制し、抗癌剤の効果を維持することができる。また、治療当初から抗癌剤と併用して本発明の抑制剤を用いれば、抗癌剤の効果を当初から高めることができる。さらに、本発明の抑制剤と抗癌剤との併用により、従来治療効果が低いために適用されていない癌と抗癌剤の組み合わせに対しても、該抗癌剤の効果が高まり、適用可能になることも期待される。以上のように、本発明は、癌の化学療法に大いに貢献するものである。
本発明の抗癌剤抵抗性の抑制剤に有効成分として含まれるポリペプチドとしては、以下のものが挙げられる。なお、本発明において、「ポリペプチド」とは、複数(2以上)のアミノ酸がペプチド結合することによって形成される分子をいい、構成するアミノ酸数が多い高分子量の分子のみならず、アミノ酸数が少ない低分子量の分子(オリゴペプチド)や、タンパク質も包含され、本発明では配列番号2の全長から成るタンパク質も包含される。
(a) 配列表の配列番号2に示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有し、N−アセチルガラクトサミニル基の非還元末端にN−アセチルグルコサミンをβ-1,3結合で転移する活性を有するポリペプチド。
(b) (a)を部分配列として含み、N−アセチルガラクトサミニル基の非還元末端にN−アセチルグルコサミンをβ-1,3結合で転移する活性を有するポリペプチド。
なお、本発明において、「アミノ酸配列を有する」及び「塩基配列を有する」とは、それぞれアミノ酸残基及び塩基がそのような順序で配列しているという意味である。従って、例えば、「配列番号3で示される塩基配列を有するポリヌクレオチド」とは、配列番号3に示されるggggacaagtttgtacaaaaaagcaggcttcatggcttttccctgccgcaggの塩基配列を持つ、52塩基のサイズのポリヌクレオチドを意味する。また、例えば、「配列番号2で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド」を「配列番号2のポリペプチド」と略記することがある。
配列番号2に示されるアミノ酸配列は、本願発明者らが単離したβ1,3-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ6(β3Gn-T6、β3GlcNAcT6、コア3シンターゼとも言う)(Iwai T, Inaba N, Naundorf A, et al. J Biol Chem (2002)277:12802-9;国際公開WO03/033710号)のアミノ酸配列である。β3Gn-T6は、O−グリカンのコア3構造(N-アセチルグルコサミニルβ1−3N-アセチルガラクトサミニルα1−R)の生合成を司る酵素であり、N−アセチルガラクトサミニル基の非還元末端にN−アセチルグルコサミンをβ-1,3結合で転移する活性によりコア3構造を合成する。該活性により触媒される反応を反応式で示すと以下の通りになる(Rは、タンパク質中のセリンやスレオニン等の側鎖の水酸基やp-ニトロフェノール等の水酸基とエーテル結合した残基を示す)。
UDP-N-アセチル-D-グルコサミン + N-アセチル-D-ガラクトサミニル-R → UDP + N-アセチル-β-D-グルコサミニル-1,3-N-アセチル-D-ガラクトサミニル-R
(GalNAc-R + UDP-GlcNAc → GlcNAcβ1-3GalNAc-R + UDP)
以下、本明細書において、「N−アセチルガラクトサミニル基の非還元末端にN−アセチルグルコサミンをβ-1,3結合で転移する活性」を「β3Gn-T6酵素活性」と言う。β3Gn-T6酵素活性は、特に限定されないが、例えば国際公開WO03/033710号の実施例1に記載される方法で確認することができる。すなわち、例えば、該酵素活性を確認すべきポリペプチド溶液を、pNp-α-GalNAc及びUDP-GlcNAcと、適当な緩衝液中(例えば50mM HEPES緩衝液、10mM MnCl2、0.1% Triton-CF54等)で混合し、37℃で16時間程度反応させ、コア3構造物が生じるか否かをHPLC等で調べることにより、容易に確認できる。HPLCは、例えば、国際公開WO03/033710号に記載されるように、カラムとしてMightysil RP-18, 250x4 mm、溶媒としてアセトニトリル:H2O=10:90を用いて、210nmの吸収で検出を行うことにより実施できる。標品として用い得るGlcNAcβ1-3GalNAc-α-pNp(core3構造)、GlcNAcβ1-6GalNAc-α-pNp(core6構造)は、市販品が存在するため、容易に入手することができる。
β3Gn-T6は食道から大腸まで消化器官系に高く発現し、筋肉や肺、脳などにも低い発現が見られるが、大腸癌や胃癌などの消化器系の癌では発現の低下が見られることが知られている(Iwai T, Inaba N, Naundorf A, et al. J Biol Chem (2002)277:12802-9;国際公開WO03/033710号)。図1は、O−グリカンのコア1〜4構造の生合成反応経路を表したものである。ここに示される通り、β3Gn-T6が発現すると、コア1構造の生合成を司るcore1GalTと競合し、コア1とそれを基質にして作られるコア2が減少して、コア3とそれを基質にして作られるコア4が増加することが予測される。
下記実施例に記載される通り、ヒト結腸腺癌由来のHCT-15細胞中でβ3Gn-T6を発現させたクローンのうち、実際にβ3Gn-T6の酵素活性が発揮されてβ3Gn-T6とcore1GalTとの競合によりコア1糖鎖が減少しているクローンでは、P−糖タンパク質の薬剤排出活性が低下しており、パクリタキセル感受性の顕著な増大が認められている。従って、β3Gn-T6ないしはそれと同様の酵素活性を有するポリペプチドを癌細胞に作用させれば、P−糖タンパク質の薬剤排出活性の増大によってもたらされる抗癌剤抵抗性を抑制することができる。また、β3Gn-T6酵素活性がもたらすP−糖タンパク質の抑制効果によれば、癌細胞の抗癌剤感受性を増大させ、抗癌剤の抗癌作用を増大させる効果も期待できる。例えば、下記実施例で用いられているパクリタキセルは、HCT-15細胞と同じ種類の大腸癌には有効ではないことが知られており、臨床上そのような大腸癌への治療にパクリタキセル系抗癌剤は適用されていない。しかしながら、下記実施例に記載される通り、β3Gn-T6によりHCT-15のパクリタキセル感受性が増大している。従って、β3Gn-T6をパクリタキセル系抗癌剤と併用すれば、HCT-15と同じ種類の大腸癌の治療にパクリタキセル系抗癌剤を適用可能になる。このように、β3Gn-T6酵素活性を利用すれば、従来は臨床上適用範囲が限定されていた抗癌剤の適用範囲を拡大できる。
一般に、酵素のような生理活性を有するタンパク質において、そのアミノ酸配列のうち、1若しくは少数のアミノ酸が置換し、欠失し及び/又は挿入された場合であっても、該生理活性が維持されることがあることは周知である。従って、配列番号2に示されるアミノ酸配列において1若しくは少数のアミノ酸が置換され、欠失され及び/又は挿入されたアミノ酸配列を有し、β3Gn-T6酵素活性を有するポリペプチド(以下、便宜的に「修飾ポリペプチド」ということがある)も、抗癌剤抵抗性の抑制剤の有効成分として有用であり、本発明の範囲に包含される。このような修飾ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号2に示されるアミノ酸配列と80%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上の相同性を有することが好ましい。さらに、該修飾ポリペプチドとしては、配列番号2に示されるアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換され、欠失され及び/又は挿入されたアミノ酸配列を有するものが特に好ましい。
ここで、アミノ酸配列の「相同性」とは、比較すべき2つのアミノ酸配列のアミノ酸残基ができるだけ多く一致するように両アミノ酸配列を整列させ、一致したアミノ酸残基数を全アミノ酸残基数で除したものを百分率で表したものである。上記整列の際には、必要に応じ、比較する2つの配列の一方又は双方に適宜ギャップを挿入する。このような配列の整列化は、例えばBLAST、FASTA、CLUSTAL W等の周知のプログラムを用いて行なうことができる。ギャップが挿入される場合、上記全アミノ酸残基数は、1つのギャップを1つのアミノ酸残基として数えた残基数となる。このようにして数えた全アミノ酸残基数が、比較する2つの配列間で異なる場合には、相同性(%)は、長い方の配列の全アミノ酸残基数で、一致したアミノ酸残基数を除して算出される。なお、天然のタンパク質を構成する20種類のアミノ酸は、低極性側鎖を有する中性アミノ酸(Gly, Ile, Val, Leu, Ala, Met, Pro)、親水性側鎖を有する中性アミノ酸(Asn, Gln, Thr, Ser, Tyr Cys)、酸性アミノ酸(Asp, Glu)、塩基性アミノ酸(Arg, Lys, His)、芳香族アミノ酸(Phe, Tyr, Trp)のように類似の性質を有するものにグループ分けでき、これらの間での置換であればポリペプチドの性質が変化しないことが多いことが知られている。従って、配列番号2のアミノ酸配列中のアミノ酸残基を置換する場合には、これらの各グループの間で置換することにより、有効成分として用いるポリペプチドのβ3Gn-T6酵素活性を維持できる可能性が高くなる。
また、上記したβ3Gn-T6タンパク質又は修飾ポリペプチドを部分配列として含み(すなわち、β3Gn-T6タンパク質又は修飾ポリペプチドの一端又は両端に他のアミノ酸又はポリペプチドが付加されたもの)、β3Gn-T6酵素活性を有するポリペプチド(以下、便宜的に「付加ポリペプチド」ということがある)も、上記したβ3Gn-T6及び修飾ポリペプチドと同様に抗癌剤抵抗性の抑制剤の調製に用いることができる。このような付加ポリペプチドの具体例としては、特に限定されないが、Hisタグ、FLAGタグ、GFPなど各種タグを付加した融合タンパク質等が挙げられる。
一般に、ポリペプチドから成る医薬において、生体内でのポリペプチドの安定性を高めるために、ポリペプチドに糖鎖やポリエチレングリコール(PEG)鎖を付加したり、ポリペプチドを構成するアミノ酸の少なくとも一部としてD体アミノ酸を用いたりする技術が広く知られており、用いられている。糖鎖やPEG鎖を付加したり、ポリペプチドを構成するアミノ酸の少なくとも一部としてD体アミノ酸を用いたりすることにより、生体内でのペプチダーゼによる分解を受けにくくなり、生体内におけるポリペプチドの半減期が長くなる。本発明で用いられるポリペプチドは、β3Gn-T6活性を有する限り、生体内安定化のためのこれらの公知の修飾を施したものであってもよく、本明細書及び特許請求の範囲における「ポリペプチド」という語は、文脈上そうでないことが明らかな場合を除き、生体内安定化のための修飾を施したものも包含する意味で用いている。
ポリペプチドに対する糖鎖付加は周知であり、例えば、Sato M, Furuike T, Sadamoto R, Fujitani N, Nakahara T, Niikura K, Monde K, Kondo H, Nishimura S., "Glycoinsulins: dendritic sialyloligosaccharide-displaying insulins showing a prolonged blood-sugar-lowering activity.",J Am Chem Soc. 2004 Nov 3;126(43):14013-22やSato M, Sadamoto R, Niikura K, Monde K, Kondo H, Nishimura S,"Site-specific introduction of sialic acid into insulin.", Angew Chem Int Ed Engl. 2004 Mar 12;43(12):1516-20等に記載されている。糖鎖は、N末端、C末端又はそれらの間のアミノ酸に結合可能であるが、ポリペプチドの活性を阻害しないためにN末端又はC末端に結合することが好ましい。また、付加する糖鎖の個数は、1個又は2個が好ましく、1個が好ましい。糖鎖は、単糖から4糖が好ましく、さらには2糖又は3糖が好ましい。糖鎖は、ポリペプチドの遊離のアミノ基又はカルボキシル基に直接又は例えば炭素数1〜10程度のメチレン鎖等のスペーサー構造を介して結合することができる。
ポリペプチドに対するPEG鎖の付加も周知であり、例えば、Ulbricht K, Bucha E, Poschel KA, Stein G, Wolf G, Nowak G., "The use of PEG-Hirudin in chronic hemodialysis monitored by the Ecarin Clotting Time: influence on clotting of the extracorporeal system and hemostatic parameters.", Clin Nephrol. 2006 Mar;65(3):180-90.やDharap SS, Wang Y, Chandna P, Khandare JJ, Qiu B, Gunaseelan S, Sinko PJ, Stein S, Farmanfarmaian A, Minko T., "Tumor-specific targeting of an anticancer drug delivery system by LHRH peptide.", Proc Natl Acad Sci USA. 2005 Sep 6;102(36):12962-7."等に記載されている。PEG鎖は、N末端、C末端又はそれらの間のアミノ酸に結合可能であり、通常、1個又は2個のPEG鎖が、ポリペプチド上の遊離のアミノ基やカルボキシル基に結合される。PEG鎖の分子量は、特に限定されないが、通常3000〜7000程度、好ましくは5000程度のものが用いられる。
ポリペプチドを構成するアミノ酸の少なくとも一部をD体とする方法も周知であり、例えば、Brenneman DE, Spong CY, Hauser JM, Abebe D, Pinhasov A, Golian T, Gozes I., "Protective peptides that are orally active and mechanistically nonchiral.", J Pharmacol Exp Ther. 2004 Jun;309(3):1190-7やWilkemeyer MF, Chen SY, Menkari CE, Sulik KK, Charness ME., “Ethanol antagonist peptides: structural specificity without stereospecificity.”, J Pharmacol Exp Ther. 2004 Jun;309(3):1183-9.等に記載されている。ポリペプチドを構成するアミノ酸の一部をD体としてもよいが、ポリペプチドの活性をできるだけ阻害しないため、一部のみをD体にするよりは、ポリペプチドを構成するアミノ酸の全てをD体アミノ酸とすることが好ましい。
本発明で有効成分として用いられる上記ポリペプチドは、例えば市販のペプチド合成機を用いて常法により容易に調製することができる。また、周知の遺伝子工学的手法を用いて容易に調製することができる。例えば、β3Gn-T6遺伝子を発現している組織から抽出したRNAから、β3Gn-T6遺伝子のcDNAをRT−PCRにより調製し、該cDNAの全長を発現ベクターに組み込んで、宿主細胞中に導入し、目的とするポリペプチドを得ることができる。RNAの抽出、RT−PCR、ベクターへのcDNAの組み込み、ベクターの宿主細胞への導入は周知の方法により行なうことができる。また、用いるベクターや宿主細胞も周知であり、種々のものが市販されている。また、上記安定化修飾も、上記各文献に記載されているような周知の方法により容易に行なうことができる。
β3Gn-T6酵素活性を有するポリペプチドを有効成分として含有する本発明の抑制剤は、ポリペプチドのみから成っていてもよいし、各投与形態に適した、薬理学的に許容される担体及び/又は希釈剤を用いて製剤することができる。製剤方法及びそのための各種担体は、医薬製剤の分野において周知である。薬理学的に許容される担体又は希釈剤は、例えば、生理緩衝液のような緩衝液や、賦形剤(砂糖、乳糖、コーンスターチ、リン酸カルシウム、ソルビトール、グリシン等)であってよく、結合剤(シロップ、ゼラチン、アラビアゴム、ソルビトール、ポリビニルクロリド、トラガント等)、滑沢剤(ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、タルク、シリカ等)等が適宜混合されていてもよい。投与形態としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤などによる経口剤、吸入剤、注射剤、座剤、液剤などによる非経口剤などを挙げることができる。これらの製剤は一般的に知られている製法によって作ることができる。
上記ポリペプチドを有効成分とする本発明の抑制剤の生体への投与経路は、経口投与でも非経口投与でもよいが、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与等の非経口投与が好ましい。特に、全身投与よりも、癌組織ないしその周辺組織への局部投与が好ましい。局部投与によれば、健常組織が該抑制剤に曝露するのを回避でき、また、より少量で効率的に癌細胞に働きかけることができる。投与量は、生体内(好ましくは癌細胞内)において、P−糖タンパク質の薬剤排出活性を低下させるのに有効な量であればよい。投与量は、症状、年齢、体重、投与方法等に応じて適宜選択され、特に限定されないが、通常、成人に対し有効成分量として1日1μg〜1 g程度、特に1 mg〜100 mg程度であり、1回ないし数回に分けて投与される。
本発明の抑制剤の投与対象は哺乳動物であり、例えばヒト、イヌ、ネコ、ウサギ、ハムスター等が挙げられる。特に限定されないが、好ましくはヒトである。
また、β3Gn-T6酵素活性を有する上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを対象動物の癌細胞内で発現させることによっても、抗癌剤抵抗性を抑制することができる。この場合、上記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、投与対象となる生体の細胞内で発現可能なベクターに組み込んだ組換えベクターの形態で対象動物に投与される。このような組換えベクターを対象動物に投与し、対象動物細胞内で有効成分である上記ポリペプチドを生産させることも、上記ポリペプチドを対象動物に投与することの一形態と考えられ、本発明の抑制剤の範囲に包含される。
ベクターに挿入するポリヌクレオチドとしては、配列番号1に示される塩基配列を有するポリヌクレオチドであってもよく、また、その保存的置換塩基配列(コードするアミノ酸配列が同じで塩基配列が異なるもの)を用いることができる。また、各アミノ酸をコードするコドンは公知であるから、特定のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの塩基配列は容易に特定することができる。従って、上記したいずれのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドの塩基配列も容易に特定することができる。これらのポリヌクレオチドは、市販の核酸合成機を用いて常法により合成することができる。配列番号1に示される塩基配列を有するポリヌクレオチドであれば、周知の遺伝子工学的手法を用いて容易に調製することができ、例えば、β3Gn-T6を発現する細胞から抽出したRNAから、β3Gn-T6遺伝子のcDNAをRT−PCRにより調製することで、容易に得ることができる。ポリヌクレオチドはDNAでもRNAでもよい。
発現ベクターとしては、生体細胞内、好ましくは哺乳動物細胞内で発現可能なベクターであればいかなるものであってもよく、プラスミドベクターでもウイルスベクターでもよい。哺乳動物細胞内で発現可能なベクターは周知であり、種々のものが市販されているので、入手は容易である。例えば、市販のベクターのマルチクローニング部位に上記したポリヌクレオチドを挿入することにより、前記組換えベクターを容易に得ることができる。
上記組換えベクターの投与経路は、遺伝子ワクチンや遺伝子医薬等の投与方法に通常用いられている投与経路を用いることができ、特に限定されないが、筋肉内投与、皮下投与、静脈内投与、動脈内投与等の非経口投与経路が好ましい。癌組織ないしその周辺組織に局部投与すると、癌組織において効率的に上記ポリペプチドを生産させ、健常組織の該ポリペプチドへの曝露を回避できるため、局部投与が好ましい。該組換えベクターは、投与経路に応じて好ましい剤形に調製することができ、通常、注射剤等の形態で投与される。必要に応じて、慣用の担体を加えてもよい。投与量は、投与経路等に応じて適宜選択することができるが、通常、成人への1回の治療当たり、組換えベクター量で1x108〜1x1014ベクター粒子/kg程度、特に1x1010〜1x1013ベクター粒子/kg程度である。
本発明の抑制剤により抵抗性の変化が起こる抗癌剤は、P−糖タンパク質の基質であり、P−糖タンパク質の作用により細胞外に排出される抗癌剤である。P−糖タンパク質の基質は、非特許文献2(Takano M et al. Pharmacol Ther (2006)109:137-61)に記載される通り公知である。P−糖タンパク質の基質である抗癌剤の具体例としては、パクリタキセル、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、メトトレキセート及びビンクリスチン等が挙げられるが、これらに限定されない。P-糖タンパク質基質の中には、他の薬剤トランスポーターの基質ともなる薬剤があるが、P-糖タンパク質への特異性がより高い抗癌剤ほど、本発明の抑制剤によって抵抗性の変化を生じ易いものと考えられる。
本発明の抑制剤が対象とする抗癌剤抵抗性とは、P-糖タンパク質の薬剤排出活性の増大が主要因となって生じる抗癌剤抵抗性である。他の薬剤トランスポーターが関与していてもよいが、P-糖タンパク質の寄与率が高い抗癌剤抵抗性ほど、本発明の抑制剤の効果が高いと考えられる。P-糖タンパク質の薬剤排出活性の影響を受けやすい抗癌剤が投薬治療中に効かなくなった場合には、その抗癌剤抵抗性は、P-糖タンパク質の薬剤排出活性の増大が主要因となっている可能性が高い。そのため、本発明の抑制剤は、P-糖タンパク質基質である抗癌剤を用いた治療過程で抗癌剤抵抗性が生じた場合に、好ましく抑制効果を発揮し得る。
また、本発明の抑制剤は、抗癌剤抵抗性の抑制以外の用途にも用いることができる。例えば、P-糖タンパク質基質である抗癌剤と組み合わせて用いることにより、癌細胞における該抗癌剤の細胞外排出を抑制し、該抗癌剤の効果を高めることができる。例えば、パクリタキセル系抗癌剤が望ましい効果を奏さず、従来は臨床上適用されていない結腸腺癌に対し、パクリタキセル系抗癌剤と本発明の抑制剤を併用して投与すれば、パクリタキセル系抗癌剤の癌細胞からの排出が抑制され、該抗癌剤による治療が可能になる(下記実施例参照)。従って、本発明の抑制剤によれば、抗癌剤の適用範囲を拡大することも可能である。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。
材料及び方法
1.材料
[3H]パクリタキセル(740 GBq/mmol)及び[3H]グルコサミン塩酸塩(1480 GBq/mmol)は、American Radiolabeled Chemicals社(米国ミズーリ州St. Louis)より購入した。ベラパミル、パクリタキセル(タキソール)、ローダミン123はシグマ社(米国ミズーリ州St. Louis)より購入した。アルスロバクター由来シアリダーゼはナカライテスク社(日本国京都)より得た。PNA−ビオチンはVector Laboratories社(米国カリフォルニア州Burlingame)より得た。MTSアッセイ試薬はプロメガ社(米国ウィスコンシン州Madison)より得た。リポフェクタミン2000試薬及びジェネティシンはインビトロジェン社(米国カリフォルニア州Carlsbad)より得た。ヒトP-糖タンパク質特異的モノクローナル抗体UIC2はBeckman Coulter社(仏国Marseilles)より購入した。
2.細胞培養
ヒト結腸腺癌由来のHCT-15細胞はAmerican Type Cell Collectionより入手し、5%CO2環境の湿式インキュベーター内で37℃にて、10%ウシ胎児血清を添加したRPMI-1640培地中で培養した。β3GlcNAcT6を安定発現する4つの純系セルラインと1つの純系偽トランスフェクト(mock)コントロールセルラインを、ジェネティシン(1.0 mg/ml)存在下、上記と同様の培地中で培養した。
3.発現構築物及びトランスフェクション
β3GlcNAcT6をコードするORF断片は、ヒト胃組織のMarathon-Ready cDNA(クロンテック社)を鋳型として用いたPCRにより増幅した。フォワードプライマー(配列番号3:5'-ggggacaagtttgtacaaaaaagcaggcttcatggcttttccctgccgcagg-3')及びリバースプライマー(配列番号4:5'-ggggaccactttgtacaagaaagctgggtctggcctcaggagacccggtg-3')にはそれぞれattB1及びattB2配列を付加して組換え部位を作製した。GATEWAY system (Invitrogen社)を用いて、増幅断片をpDONR 201エントリーベクターのattP1部位とattP2部位の間に挿入し、次いで挿入断片をpDEST12.2哺乳動物発現ベクター中に移した。このプラスミドをpDEST12.2-β3GlcNAcT6と名付けた。
HCT-15細胞は、リポフェクタミン2000試薬を用いて、pDEST12.2-β3GlcNAcT6発現プラスミドDNAにてトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞はジェネティシン(1.0 mg/ml)存在下で3週間の選択を行なった。細胞をトリプシン処理で分離し、96ウェルプレート中でジェネティシンによる選択を続けながら限界希釈法によりクローニングした。β3GlcNAcT6を安定発現する4つの純系セルライン(#30, #36, #40, #46)及び1つの純系偽トランスフェクト(mock)コントロールセルラインを確立した。なお、mockセルラインとは、β3GlcNAcT6を含まないpDEST12.2でトランスフェクトして得たものである。
4.薬剤蓄積アッセイ
パクリタキセル蓄積アッセイのため、5%CO2環境の湿式インキュベーター内で37℃にて1日間、10%ウシ胎児血清を添加したRPMI-1640培地を用いて、12ウェル組織培養プレート上でHCT-15細胞を培養した(1 x 105個/ウェル)。[3H]パクリタキセル(74 GBq/mmol)を終濃度26.7μMとなるように添加し、37℃でインキュベートした。各時点で収集した細胞は、氷冷したリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で4回洗浄し、液体シンチレーターOptiPhase HiSafe 3 (Wallac Perkin Elmer Life Sciences社)と混合した。液体シンチレーションカウンター(ALOKA, LSC-6101)で放射活性をカウントした。
5.薬剤感受性アッセイ
パクリタキセル感受性アッセイのため、96ウェル培養プレート中でHCT-15細胞(1 x 104個/ウェル)を上記した条件下で1日間培養し、次いで、培地に種々の濃度のパクリタキセルを添加してさらに72時間培養した。3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-5-(3-カルボキシメトキシフェニル)-2-(4-スルフォフェニル)2H-テトラゾリウム内塩 (MTS)を用いて、96 AQueous One Solution Cell Proliferation Assay (Promega社、米国ウィスコンシン州Madison)により細胞生存率を測定した。
6.P−糖タンパク質活性阻害アッセイ
12ウェル組織培養プレート上でHCT-15細胞(mock及び #30トランスフェクタントクローン細胞)を培養した(1 x 105個/ウェル)。0.3μMサイクロスポリンAおよび機能性P-糖タンパク質特異的中和抗体UIC2 (10μg/ml)の存在下、非存在下で1時間培養し、その後[3H]パクリタキセル(74 GBq/mmol)を用いて、上記と同様2時間の薬剤蓄積アッセイを行った。
7.フローサイトメトリーによるローダミン123排出アッセイ
HCT-15細胞を、1μg/mlのローダミン123(Rho-123)存在下、10%ウシ胎児血清を添加したRPMI-1640培地中で37℃にて1時間インキュベートした。該細胞をPBSで洗浄し、Rho-123を含まない新しい培地中で37℃にて4時間インキュベートして、Rho-123を流出させた。インキュベート後、細胞をPBSで洗浄し、直ちにRho-123の蓄積を解析した。解析は、励起波長488 nm(575/26 nmバンドパスフィルター使用)にて、FACSAria flow cytometer (Becton, Dickinson and Campany社、米国ニュージャージー州Franklin Lakes)を用いて行なった。
9.O−グリカンの分析
HCT-15細胞(1 x 106個)は、グルコース濃度を5分の1としたRPMI1640培地を用いて、[3H]グルコサミン(1Mbq/ml)及び5%透析FBSの存在下、5%CO2環境で20時間培養した。細胞を収集した後、細胞ホモジネートをPBSで透析し、これを0.05N KOH/1M NaBH4を用いて45℃にて15時間、βー脱離反応に付した。遊離したオリゴ糖をアルスロバクター由来シアリダーゼで消化し、Yamashita K et al., Methods Enzymol 1982;83:105-26に記載される方法により、Bio-Gel P-4カラムクロマトグラフィー(<45μm, 1.5cm i.d. x 50cm long, Bio-Rad Laboratory社)を用いて中性のシアリダーゼ消化オリゴ糖を解析した。標準オリゴ糖Galβ1-3GalNAcOT及びGlcNAcβ1-3GalNAcOTは、既報(Guo JM et al., FEBS Lett (2002)524:211-8;Tachibana K et al., Glycobiology (2006)16:46-53)の方法に従って、酵素学的に合成したコア1−及びコア3−Muc5ACペプチドから調製し、β脱離/ラベリング(1MBq NaB3H4含有0.05N KOH/1M NaBH4)を行なった。Galβ1-3(Galβ1-4GlcNAcβ1-6)GalNAcOT及びGalβ1-4GlcNAcβ1-3GalNAcOTは、同様の方法により、コア2−及びコア3−Muc5ACペプチドから調製後、組換えβ4GalT1を用いてβ4−ガラクトシル化して得た。Galβ1-4GlcNAcβ1-3(Galβ1-4GlcNAcβ1-6)GalNAcOTは、組換えコア2GlcNAcT1及びβ4GalT1を用いてコア3オリゴ糖から調製した。
結果
1.β3GlcNAcT6発現クローンの作出
HCT-15株にβ3GlcNAcT6遺伝子をトランスフェクトし、β3GlcNAcT6発現量の異なる4種のクローンを分離した。β3GlcNAcT6が発現すると、図1に示すように、細胞内でcore1GalTと競合して、コア1(Galβ1-3GalNAcα-)とそれを基質にして作られるコア2が減少し、コア3が増加する事が予想される。そこで、それぞれのクローンのβ3GlcNAcT6タンパク質の発現量について、コア1を認識するPNAを利用して、細胞上のコア1結合量の減少量として分析した(図2A)。ただし、細胞上では、コア1はシアリルコア1 (Siaα2-3Galβ1-3GalNAcα-) になっている事が多く、この構造はPNAレクチンには認識されない事から、ノイラミニダーゼで消化した後に分析した。
コア1結合量はコントロールのmockが一番高く、#40, #46, #36, #30と減少しており、実際に発現しているβ3GlcNAcT6活性量は#30 が最も高い事が明らかになった。そこで、mock, #30 細胞を3H-グルコサミンによって代謝標識し、これらの膜画分からβ−脱離反応によりO−グリカンを切り出して、どのように構造変化したかを分析した。O−グリカンはシアリダーゼ消化により中性オリゴ糖にし、Bio-Gel P-4ゲル濾過クロマトグラフィーを用いて分離した(図2B)。mock 細胞では コア1 (Galβ1-3GalNAcOT)、コア2由来のGalβ1-3(Galβ1-4GlcNAcβ1-6)GalNAcOTと同じ溶出位置になるピークであったが、#30 細胞ではコア1、コア2オリゴ糖がほとんど消失し、コア3構造を持つGalβ1-4GlcNAcβ1-3GalNAcOTと同じ溶出位置のピーク成分が大部分であった。
2.多剤トランスポーター活性の測定
各クローンの多剤トランスポーター活性を次の2通りの方法により測定した。
(1) [3H]パクリタキセル (タキソール) 存在下で各クローンをインキュベートし、一定時間後に収集した。細胞をPBSで洗浄し、細胞内[3H]パクリタキセルからの放射活性を測定して、パクリタキセルの細胞内蓄積量を調べた。結果を図3Aに示す。
(2) 各クローンにローダミン123を取り込ませた後、ローダミンを含まない培地に交換して各クローンをさらに4時間インキュベートして、細胞内のローダミン残存量をフローサイトメトリーで測定した。結果を図3Bに示す。
両者の結果は全く一致して、β3GlcNAcT6の発現の高いクローンである#30と#36において、[3H]パクリタキセル及びローダミンの細胞外排出活性が顕著に低下している事を示した。β3GlcNAcT6の発現が低いクローンである#40や#46では、mockとほとんど変わらないトランスポーター活性を示した。図3Aでmockと野生型細胞株(Wt)の違いは認められない事から、トランスフェクションやクローニングの過程の影響は無いと考えられる。これらの結果から、β3GlcNAcT6の発現によって引き起こされたO-結合型糖タンパク質糖鎖のコア1+コア2からコア3構造への変換が、HCT-15細胞の多剤トランスポータータンパク質の作用に大きな変化を引き起こしたと考えられる。
3.パクリタキセル感受性の測定
mockとクローン#30について、パクリタキセルに対する感受性を調べた。それぞれの細胞を1 x 104 個/ウェルの密度で培養し、1 x 10-5 - 10-10 Mの濃度のパクリタキセル存在下でさらに72時間培養し、その生存率をMTSアッセイを用いて測定した。その結果を図4に示す。mockではIC50(50%阻害濃度)が3 x 10-7Mであるのに対し、#30クローンでは3 x 10-9Mと100倍の感受性の上昇が認められ、β3GlcNAcT6の発現によって引き起こされたO-結合型糖タンパク質糖鎖の変換がHCT-15細胞の薬剤耐性を著しく変化させた事が示された。
4.P−糖タンパク質活性の阻害がパクリタキセル排出活性に及ぼす影響
パクリタキセルおよびローダミン123はP-糖タンパク質の非常に良い基質である事が知られているが、他のトランスポーターの基質にもなり得る事が報告されているので(Takano M et al., Pharmacol Ther (2006)109:137-61; Deeley RG et al., FEBS Lett (2006)580:1103-11; Lagas JS et al., Clin Cancer Res (2006)12:6125-32; Hopper-Borge E et al., Cancer Res (2004)64:4927-30; Wang Y et al., Biochim Biophys Acta (2006)1758:1671-6)、この結果のみではO-グリカン構造の変換に影響を受けたトランスポーターがP-糖タンパク質であるとは断定出来ない。そこで、P-糖タンパク質特異的阻害剤であるベラパミルと、P-糖タンパク質のトランスポーター活性を阻害する抗体UIC2を用いて、[3H]パクリタキセル排出活性に対する阻害効果を確かめた。
ベラパミルによる阻害実験の結果を図5Aに示す。ベラパミルの無い条件では、#30クローンではmock細胞に比べ3倍近い濃度の[3H]パクリタキセルの蓄積が認められたが、ベラパミル濃度を上昇させると両者の[3H]パクリタキセル排出活性に差が無くなっている事が明らかになった。
一方、抗P-糖タンパク質抗体UIC2は、薬剤と結合した構造に特異的に結合してそのトランスポーター活性を阻害する事が知られている(Mechetner EB et al., Proc Natl Acad Sci U S A (1992)89:5824-8; Ghosh P et al., Arch Biochem Biophys (2006)450:100-12; Hochman JH et al., J Pharmacol Exp Ther (2001)298:323-330)。そこで、mock細胞ではあまり[3H]パクリタキセル排出活性を阻害しない低濃度のシクロスポリンA (0.3μM) の存在下でUIC2 (10μg/ml) を加えて、パクリタキセル排出活性への影響を調べた。その結果、図5Bに示される通り、mockと#30はほぼ同じレベルまで細胞内[3H]パクリタキセル濃度が上昇し、P-糖タンパク質抗体により排出活性が阻害されている事が示された。これらの結果から、β3GlcNAcT6導入によって活性が低下したHCT-15細胞の多剤トランスポータータンパク質はP-糖タンパク質である事が明らかになった。
O−グリカンのコア1〜4構造の生合成反応経路を示す。 HCT-15細胞クローンにおけるβ3GlcNAcT6の発現を示す。(A) 各クローンについて、細胞表面糖タンパク質をノイラミニダーゼで消化した後、フローサイトメトリーによりPNAの結合を解析した。(B) Bio-Gel P-4カラムクロマトグラフィーにより、HCT-15 mock細胞(上段)及び#30クローン細胞(下段)由来の3H標識O-グリカンを分離した。I〜VIは標品の溶出位置を示す(I; GlcNAcOT + GalNAcOT, II; Gal-GalNAcOT, III; GlcNAc-GalNAcOT, IV; Gal-GlcNAc-GalNAcOT, V; Gal-(Gal-GlcNAc)GalNAcOT, VI; Gal-GlcNAc(Gal-GlcNAc)GalNAcOT)。上部の矢印はグルコースオリゴマーの溶出位置を示す(数字はグルコース単位数を表す)。 HCT-15細胞クローンにおける薬剤排出アッセイの結果を示す。(A) 野生型細胞(Wt)、mock細胞及びクローン4ラインについて[3H]パクリタキセル蓄積量を測定した結果を示す。(B) mock細胞及びクローン4ラインについてローダミン123排出量を測定した結果を示す。 mock細胞及びクローン#30におけるパクリタキセル感受性アッセイの結果を示す。種々のパクリタキセル濃度条件下で各細胞を72時間培養し、細胞生存率をMTSアッセイにより測定した。データは4回の反復実験の平均値を表す。 ベラパミル又はモノクローナル抗体を用いてHCT-15セルラインにおけるP-糖タンパク質の活性を阻害した結果を示す。mock細胞及び#30クローンにおける[3H]パクリタキセルの蓄積量について、(A)は種々のベラパミル濃度条件下で測定した結果、(B)はP-糖タンパク質特異的モノクローナル抗体UIC2(10μg/ml)及びシクロスポリンA(CsA、0.3μM)の存在下又は非存在下で測定した結果を示す。データは3回の反復実験の平均値を表す。バーは+/-SD。*は有意差あり(p<0.05)。

Claims (8)

  1. 配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するポリペプチド又は該ポリペプチドを部分配列として含むポリペプチドであって、N−アセチルガラクトサミニル基の非還元末端にN−アセチルグルコサミンをβ-1,3結合で転移する活性を有するポリペプチドを有効成分として含有する抗癌剤抵抗性の抑制剤。
  2. 前記ポリペプチドが、配列表の配列番号1に示されるアミノ酸配列と90%以上の相同性を有するポリペプチド又は該ポリペプチドを部分配列として含むポリペプチドである請求項1記載の抑制剤。
  3. 前記ポリペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列又は該配列において1若しくは数個のアミノ酸が置換し若しくは欠失し、若しくは該アミノ配列に1若しくは数個のアミノ酸が挿入され若しくは付加されたアミノ配列を有するポリペプチド、又は該ポリペプチドを部分配列として含むポリペプチドである請求項1記載の抑制剤。
  4. 前記ポリペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチド、又は該ポリペプチドを部分配列として含むポリペプチドである請求項3記載の抑制剤。
  5. 前記ポリペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドである請求項4記載の抑制剤。
  6. 前記有効成分は、前記ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含み生体内で該ポリペプチドを発現可能なベクターにより生体内で生産される請求項1ないし5のいずれか1項に記載の抑制剤。
  7. 前記抗癌剤はP-糖タンパク質の基質である請求項1ないし6のいずれか1項に記載の抑制剤。
  8. 前記抗癌剤は、パクリタキセル、アクチノマイシンD、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、メトトレキセート及びビンクリスチンから成る群より選ばれる少なくとも1種である請求項7記載の抑制剤。
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