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JP2009001004A - インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法 Download PDF

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JP2009001004A
JP2009001004A JP2008122107A JP2008122107A JP2009001004A JP 2009001004 A JP2009001004 A JP 2009001004A JP 2008122107 A JP2008122107 A JP 2008122107A JP 2008122107 A JP2008122107 A JP 2008122107A JP 2009001004 A JP2009001004 A JP 2009001004A
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pigment
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recording
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JP2008122107A
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Shinichi Sato
真一 佐藤
Hideki Takayama
日出樹 高山
Yoshihisa Yamashita
佳久 山下
Kenji Nishiguchi
憲治 西口
Aki Takano
亜紀 高野
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Canon Inc
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Abstract

【課題】自己分散型顔料とアンモニウムイオンとを含むインクと、顔料、特定の酸価の樹脂及びアルカリ金属イオンを含有するインクとで画像を形成した場合に生じるヨレ現象の発生を抑制することができるインクジェット記録装置の提供。
【解決手段】吸引キャップにより複数のインク吐出部からインクの吸引を行うことで回復動作を行う手段を有するインクジェット記録装置であって、複数のインクに、少なくとも1種の親水性基が直接又は他の原子団を介して結合している自己分散型顔料とアンモニウムイオンとを含む第1のインクと、顔料、特定の酸価の樹脂、及びアルカリ金属イオンを含む第2のインクとが少なくとも組み合わされているインクセットが用いられ、かつ、回復動作に用いられる吸引キャップが、第1のインクの吐出部と第2のインクの吐出部とのそれぞれに対し別個に設けられているインクジェット記録装置。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録装置、及びインクジェット記録方法に関する。
インクジェット記録におけるインクは、一般には水溶性染料を水性媒体に溶解させた染料インクが広く用いられているが、近年では、染料に比べて耐水性や耐光性に優れた顔料を水性媒体に分散させてなる顔料インクも提供されている。顔料インクには、分散剤によって顔料を水性媒体に分散させてなるものや、顔料の表面に親水性基を結合して顔料を分散するタイプの自己分散型顔料を色材として用い、これを水性媒体に分散してなるものがある。
例えば、画像濃度が高く、さらにはブリーディングなどの文字品位などにも優れることから、普通紙に文字や図形を記録する際に用いるブラックインクに自己分散型顔料を色材として選択することについての提案がある(特許文献1及び2参照)。
また、表面をコーティングした光沢紙などの特殊な記録媒体に画像を形成する際に用いる顔料インクには、耐擦過性や光沢性などを考慮し、樹脂を分散剤として用いて顔料を分散するタイプの樹脂分散型顔料を色材に用いることが有効であるとされている。さらに、近年では、記録媒体の種類によらずに良好な画像品位を得るために、顔料の分散方式がそれぞれに異なる、複数の顔料インクを併用することについての提案もある。例えば、樹脂分散型顔料を色材とする樹脂分散型顔料インクと、自己分散型顔料を色材とする自己分散型顔料インクと、の2種類をインクジェット記録装置に搭載して、画像を形成することが提案されている(特許文献3参照)。
特開2000−198955号公報 特開2001−089688号公報 特開2003−213180号公報
上記したような技術動向の中、本発明者らも、記録媒体の種類によらずに良好な画像品位を得ることを目的として、自己分散型顔料インクと樹脂分散型顔料インクの2種のインクを搭載したインクジェット記録装置を用いて様々な検討を行った。具体的には、形成した画像の画像品位、耐水性や耐擦過性の検討、また、当該記録装置における記録耐久性などについて検討を行った。検討の際、自己分散型顔料インクの色材には、親水性基として耐水性に優れた−COONH4が顔料粒子表面に結合した自己分散型顔料を用いた。また、樹脂分散型顔料インクの色材には、水酸化カリウムで1当量に中和された酸価160mgKOH/g以下のアクリル系樹脂により顔料を分散した顔料分散体を用いた。
本発明者らは、上記のような2種のインクを用いての様々な検討を行う過程で、下記のような試験を行った。その結果、以下のような現象が起きることを新たに確認した。すなわち、各インクを用いて特定の画像を数百枚記録する記録耐久性の試験を行い、該記録耐久性試験前後における画像品位を、それぞれの時点で、各ノズルの状態を確認するためのノズルチェックパターンを記録し、得られた画像を観察することで調査した。上記における特定の画像とは、具体的には、A4サイズの普通紙に形成した1200dpi×1200dpiの記録密度に対して記録デューティを15%としたベタ画像である。
その結果、各インクを単独でインクジェット記録装置に搭載して記録を行った場合には、上記の画像を数百枚記録しても、画像品位が低下するという現象は確認されなかった。しかし、前記自己分散型顔料インクと前記樹脂分散型顔料インクの2種のインクを共にインクジェット記録装置に搭載して、上記したような記録耐久性の試験を行うと、下記のような現象が起こることを確認した。すなわち、この場合には、自己分散型顔料インクを用いて記録したノズルチェックパターンにおいて、画像にヨレが発生するという現象を確認した。このヨレは、記録媒体へインクが付与される位置がずれることによって生じる現象(以下、「ヨレ現象」と呼ぶ)である。また、検討したインクの種類によっては、上記2種のインクを共にインクジェット記録装置に搭載した直後に、吸引回復動作を行っただけでも、このヨレ現象が起こる場合があることもあった。
そこで、本発明者らは、上記ヨレ現象を引き起こす要因を明らかにするために詳細な検討を行った。その結果、上記ヨレ現象は、樹脂分散型顔料インクに含有される樹脂の酸価が160mgKOH/g以下の場合に発生することを見出した。さらに、このヨレ現象は以下に挙げる3つの条件が満たされた場合、より顕著に起こることもわかった。
1つ目の条件は、記録装置において、自己分散型顔料インクと上記の樹脂分散型顔料インクを吐出する各吐出口列の距離が近い場合である。具体的には、自己分散型顔料インクと樹脂分散型顔料インクを隣り合う吐出口列から吐出して、その後に吸引回復動作を行い、さらにノズルチェックパターンを記録するだけでもヨレ現象の発生が確認された。
2つ目の条件は、記録装置が、自己分散型顔料インクと上記の樹脂分散型顔料インクを吐出する各吐出口列を含む吐出口領域(吐出部)を、1つのキャップでキャッピングする構造となっている場合である。
3つ目の条件は、使用するインクのうちの、樹脂分散型顔料インク中に存在する、顔料に吸着していない樹脂(以下、「フリー樹脂」と呼ぶ)が多い場合である。
したがって、本発明の目的は、自己分散型顔料とアンモニウムイオンとを含有するインクと、顔料、特定の酸価の樹脂及びアルカリ金属イオンを含有するインクと、をインクジェット記録装置に搭載して画像を形成した場合に生じるヨレ現象を解明することにある。さらに、最終的には、上記2種類のインクを使用する本来の目的である記録媒体の種類によらず十分な画像品位を得ながら、これと同時に、先に述べたヨレ現象の発生を抑制することができるインクジェット記録装置及び記録方法を提供することにある。
上記目的は、以下の本発明によって、達成される。すなわち、本発明は、複数のインクが搭載されており、吸引キャップにより複数のインク吐出部からインクの吸引を行うことで回復動作を行う手段を有するインクジェット記録装置であって、前記複数のインクに、少なくとも1種の親水性基が直接又は他の原子団を介して結合している自己分散型顔料とアンモニウムイオンとを含有してなる第1のインクと、顔料、酸価160mgKOH/g以下の樹脂、及びアルカリ金属イオンを含有してなる第2のインクとが少なくとも組み合わされているインクセットが用いられており、前記回復動作に用いられる吸引キャップが、前記第1のインクの吐出部と前記第2のインクの吐出部とのそれぞれに対して別個に設けられていることを特徴とするインクジェット記録装置である。
また、本発明は、複数のインクが用いられ、吸引キャップにより複数のインク吐出部からインクの吸引を行うことで回復動作を行う工程を有するインクジェット記録方法であって、前記複数のインクに、少なくとも1種の親水性基が直接又は他の原子団を介して結合している自己分散型顔料とアンモニウムイオンとを含有してなる第1のインクと、顔料、酸価160mgKOH/g以下の樹脂、及びアルカリ金属イオンを含有してなる第2のインクとが少なくとも組み合わされているインクセットが用いられており、前記第1のインクの吐出部と前記第2のインクの吐出部とのそれぞれに対して別個に設けられた吸引キャップにより前記回復動作を行うことを特徴とするインクジェット記録方法である。
本発明によれば、前記した2種類のインクが少なくとも組み合わされているインクセットを用いて画像を形成した場合に画像に生じる、特有のヨレ現象の発生を抑制することができるインクジェット記録装置及び記録方法が提供される。さらに、本発明によれば、記録媒体の種類によらず、耐擦過性や光沢性といった点でも優れた高品位の画像形成が可能なインクジェット記録装置及び記録方法が提供される。
以下、好ましい実施の形態を挙げて、本発明を詳細に説明する。以下の説明において、第1のインクとは、少なくとも1種の親水性基が直接又は他の原子団を介して結合している自己分散型顔料と、アンモニウムイオンとを含有してなるインクを意味する。また、第2のインクとは、顔料、酸価160mgKOH/g以下の樹脂、及びアルカリ金属イオンを含有してなるインクを意味する。なお、樹脂及び顔料を含有する第2のインク中では、樹脂の少なくとも一部により顔料が分散されており、以下の説明においては、第2のインクは樹脂分散型顔料を含有する、と記載する場合がある。
先ず、本発明者らは、第1のインクと第2のインクをそれぞれ単独でインクジェット記録装置に搭載して記録耐久性の試験を行った際には確認されることのないヨレ現象が、これら2種のインクを共に記録装置に搭載して記録を行うと生じる原因について検討した。本発明でいうヨレ現象とは、上記構成の2種のインクを共に搭載して記録を行った際に生じる特有の現象であり、2種類のインクのうちの第1のインクにより形成された画像にヨレが発生するという現象である。かかるヨレ現象に対して、本発明者らは、その原因を追求すべく様々な検討を行った。その結果、以下のことがわかった。
例えば、第2のインクがアクリル酸系樹脂を含有するものである場合、通常、樹脂には可溶化基としてカルボン酸イオンが存在し、さらに可溶化基の対イオンとしてアルカリ金属イオンがインク中に存在する。そして、インクが吐出される際に生じる微小なインク滴(ミスト)として、また、記録ヘッドから吐出された後に記録媒体に跳ね返された液滴として、さらには記録ヘッドの吸引回復動作などにより、フェイス面には第1のインクと第2のインクとが付着する。なお、フェイス面とは記録ヘッドの吐出口を有する面のことであり、記録ヘッドの吸引回復動作とはノズルからインクを強制的に吸引排出する動作のことである。このようにして、フェイス面上に付着した第1のインクと第2のインクとは、互いに混合される、このとき、先ず、第2のインクが含有する樹脂の対イオンの一部が、アルカリ金属イオンからアンモニウムイオンに交換される。その後、水分などの蒸発と共にアンモニウムイオンからのアンモニアの脱離が起こり、カルボン酸イオンの一部がカルボン酸型となる。このことは、インク中の樹脂においてカルボン酸型となった部位が多くなることを意味し、このため、樹脂の溶解性が低下して析出しやすくなる。さらに、アンモニウムイオンやアルカリ金属イオンが対イオンとして結合している樹脂に比べ、再溶解性も著しく低下する。そのため、カルボン酸型となった部位が相対的に多い樹脂が吐出口付近に付着して固化すると、通常のクリーニング動作で除去することが非常に困難となる。なお、通常のクリーニング動作とは、所定のタイミングで、ゴムなどの弾性材料からなる払拭部材(ワイパ)で記録ヘッドのフェイス面をワイプして、付着物を除去する動作のことである。そして、吐出口付近に付着して固化した前記樹脂により、吐出口から吐出される主インク滴が引っ張られるため、主インク滴の直進性が妨げられることがある。前述したヨレ現象は、上記で説明したようなことが生じる結果として起こっていることがわかった。
上述したように、ヨレ現象が発生する最大の原因は、自己分散型顔料とアンモニウムイオンを含有する第1のインクと、顔料と酸価が160mgKOH/g以下の樹脂、及びアルカリ金属イオンを含有する第2のインクとがフェイス面上で接触することにある。すなわち、これら2種のインクがフェイス面上で接触することによりイオン交換作用が起こり、第2のインクに含まれる樹脂の溶解性が著しく低下するといった、従来予測すらすることのなかった現象が吐出口付近で起きたことによる。
なお、本発明者らは検討の過程で、記録耐久性の試験を行った場合に生じたヨレ現象は、第2のインクで形成された画像では確認されず、第1のインクで形成された画像のみで確認されるということに気付いた。そこで、本発明者らは、さらに詳細な検討を行った結果、これら2種類のインクが接触する場合のアルカリ金属イオン量とアンモニウムイオン量との関係が、本発明の課題に大きく影響を与えているとの結論を得た。
すなわち、第2のインクの吐出口付近には、吸引回復動作の際に付着した第1のインクが存在する。しかし、第2のインクの吐出口付近に存在するアンモニウムイオンの総量は、付着した第1のインク中に含まれているアンモニウムイオンのみであるため、非常に少量である。その結果、樹脂の対イオンのごく一部しかアンモニウムイオンに交換されないこととなるため、樹脂の溶解性には殆ど影響を及ぼさない。
一方、第1のインクの吐出口付近は、吸引回復動作の際に付着した第2のインクが存在する。付着した第2のインク中のアルカリ金属イオン量は非常に少量である。その結果、第1のインクを吐出した際には、アルカリ金属イオン量をはるかに上回る量のアンモニウムイオンにさらされるため、樹脂の対イオンの多くがアンモニウムイオンに交換されやすい状態となる。したがって、水分などの蒸発に伴いアンモニアが脱離し、カルボン酸型となった部位が多くなった樹脂が急激に増加して樹脂が析出することとなり、上記ヨレ現象が起きることがわかった。さらに、本発明者らの詳細な検討の結果、下記のような場合に、上記ヨレ現象がより顕著に起こることもわかった。すなわち、第1のインク中のアンモニウムイオン濃度(mol/L)をAとし、かつ、第2のインク中のアルカリ金属イオン濃度(mol/L)をBとした場合に、これらが、A/B≧0.33の関係を満たす場合に、上記ヨレ現象がより顕著に起こる。
そこで、本発明者らは、第1のインクと第2のインクとの組み合わせを有するインクセットを用いて画像を形成する際に、これらのインク中における成分の含有量や濃度を考慮することなく、ヨレ現象を防止できる方法を見出すべく検討を行った。より具体的には、第1のインク中のアンモニウムイオン濃度と、第2のインク中のアルカリ金属イオン濃度を考慮することなく、上記ヨレ現象を引き起こさない方法を見出すことを最終的な課題として、検討を行った。
先に述べたように、下記の3つの条件が満たされた場合にヨレ現象がより顕著に起こるが、本発明者らは、ヨレ現象と、下記の3つの条件との関係をさらに詳細に検討した。
(1)記録装置において、自己分散型顔料インクと樹脂分散型顔料インクを吐出するための各吐出口列の距離が近い場合。
(2)記録装置が、自己分散型顔料インクと樹脂分散型顔料インクを吐出するための各吐出口列を含む吐出口領域(吐出部)を、1つのキャップでキャッピングする構造となっている場合。
(3)第2のインク中に存在する、顔料に吸着していない樹脂(フリー樹脂)が多い場合。
先ず、(3)の条件については、第2のインクを構成する樹脂の含有量を減らすことは、下記の理由から好ましくない。すなわち、インク中の樹脂の含有量を減らすことは、樹脂分散型顔料インクで形成した画像において達成される耐擦過性や光沢性といった画像品位が得られなくなる場合があるので、好ましくない。
次に、上記(1)については、本発明者らの検討によれば、2種のインクを吐出するための各吐出口列の距離を、吸引回復キャップを共通とするという条件の下で、通常できる範囲内で離すだけでは、ヨレ現象を解決することはできないことがわかった。
最後に、(2)については、一般に、複数の吐出口列に対して吸引キャップを分けるという方法は、互いに反応を起こすインクを組み合わせたインクセットの場合に用いられる技術であり、それ以外の場合には適用する必要のない技術である。具体的には、例えば、アニオン性インクとカチオン性インクを併用してインクセットとして使用する場合や、混合や接触によって色材などの凝集や析出を生じるインクセットを使用する場合に用いられる技術である。
本発明で使用する第1のインクと第2のインクは、両者を混合しても析出物や凝集物を生じるものではないことがわかっている。本来このような凝集や析出を起こさないインクセットに対しては、1つのキャップでキャッピングを行うことができる。しかし、本発明者らは、前記したヨレ現象が発生するメカニズムを解明する中で、互いに反応しない複数のインクを含むインクセットに対して、キャップを別個に設けることが、ヨレ現象の問題を解決する手段として極めて有効であるとの結論に到達した。
なお、画像形成の際に、本発明において使用する第2のインクを適用する本来の目的は、表面をコーティングした光沢紙などの特殊な記録媒体に画像を形成した場合にも、耐擦過性や光沢性などに優れた画像を得ることにある。しかし、前述したように、上記目的を達成すべく第2のインクを第1のインクに組み合わせて用いた場合における、第2のインク中のアルカリ金属イオン濃度と、第1のインク中のアンモニウムイオン濃度との関係が、前記ヨレ現象の発生原因となっている。これに対し、本発明の好ましい形態によれば、第1のインク中のアンモニウムイオン濃度と、第2のインク中のアルカリ金属イオン濃度を考慮することなく、ヨレ現象を抑制しながら、形成した画像における耐擦過性や光沢性の向上効果を得ることができる。
本発明者らの検討の結果、第2のインクに使用する樹脂の酸価は、樹脂の溶解性を考慮すると、80mgKOH/g以上、さらには90mgKOH/g以上であることが好ましい。一方、本発明が解決する課題であるヨレ現象は、第2のインクが含有する樹脂の酸価が160mgKOH/g以下の場合に発生する現象である。上記したことから、本発明において実質的に問題とする範囲は、酸価が80mgKOH/g以上160mgKOH/g以下である樹脂を含有する第2のインクとの関連で生じる、第1のインクに生じるヨレ現象であると言える。
<第1のインク及び第2のインクを構成する成分>
以下、本発明で使用する第1のインク及び第2のインクをそれぞれ構成する成分などについて説明する。
(第2のインクに用いる樹脂)
第2のインクは、酸価が160mgKOH/g以下の樹脂を含有するが、このようなものであればいずれの樹脂であっても使用できる。前記したように、酸価が80mgKOH/g以上、さらには90mgKOH/g以上の樹脂であることが好ましい。第2のインクに用いる樹脂を構成するモノマー成分及び、各モノマー成分の比率などは、樹脂の酸価が上記したものとなること以外、特に制限されるものではない。本発明で使用する樹脂としては、以下に挙げるようなモノマーが重合されることにより構成された樹脂であることが好ましい。例えば、芳香族モノマー、アクリル酸エステル系モノマー、メタクリル酸エステル系モノマー、アニオン性基含有モノマー、ポリエチレンオキシド基含有モノマー、炭化水素系モノマーなどが挙げられる。好ましいモノマーの具体的なものとしては、以下のものが挙げられる。例えば、スチレン、ベンジルメタクリレート、メチルアクリレート、ブチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールアクリレート、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートなどが挙げられる。また、アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられる。
本発明で使用する樹脂は、その重量平均分子量が3,000以上10,000以下のものであることが好ましい。重量平均分子量が3,000未満であると、形成した画像において、十分な耐擦過性が得られない場合がある。一方、重量平均分子量が10,000を超えると、樹脂の水性媒体への溶解性が低下するため、樹脂の対イオンの一部がアンモニウムイオンに交換されただけでも析出しやすい状態となり、ヨレ現象がより起こりやすくなる場合がある。
第2のインク中における樹脂の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.5質量%以上5.0質量%以下、さらには1.0質量%以上4.0質量%以下であることが好ましい。樹脂の含有量を上記した範囲とすることで、形成した画像における耐擦過性を向上する効果が十分に得られるだけの樹脂量を記録媒体の表面上に残すことができる。
形成した画像における耐擦過性を向上させるためには、第2のインク中における、顔料の含有量(質量%)に対する、樹脂の含有量(質量%)の質量比率が、0.50倍以上10.0倍以下であることが好ましい。すなわち、(樹脂の含有量/顔料の含有量)=0.50倍以上10.0倍以下であることが好ましい。なお、上記の顔料及び樹脂の含有量とは、それぞれ、インク全質量中における各成分の含有量のことである。
(第2のインクに用いるアルカリ金属イオン)
本発明で用いる第2のインクは、インク中にアルカリ金属イオンが含有されてなるものであることを要する。本発明は、インクジェット記録装置に搭載された、第1のインクが有するアンモニウムイオンと、第2のインクが有するアルカリ金属イオンに起因して引き起こされると考えられるヨレ現象の発生を抑制することを目的としているからである。アルカリ金属イオンは、例えば、前記した樹脂の中和剤として用いられる塩基に起因して、又は、必要に応じて使用されるpH調整剤や塩に起因してインク中に含有されることとなる。樹脂の中和剤としては、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などの無機アルカリ剤などが使用される。また、塩としては、例えば、硫酸ナトリウム、硫酸リチウム、硫酸カリウムなどの硫酸塩や、安息香酸ナトリウム、安息香酸リチウム、安息香酸カリウムなどの安息香酸塩が挙げられる。なお、第2のインク中におけるアルカリ金属イオン濃度が低すぎたり、高すぎたりすると、第2のインクの保存安定性が充分に得られなくなる場合がある。このため、第2のインク中のアルカリ金属イオン濃度[mol/L]が、0.0076mol/L以上0.15mol/L以下の範囲となるように調整することが好ましい。特に、第2のインク中に存在するアルカリ金属イオンが、樹脂の中和剤として用いられる塩基に起因する場合は、第2のインク中のアルカリ金属イオン濃度を上記の範囲内とすることがより好ましい。
(色材)
第1のインク及び第2のインクに用いる色材は顔料である。顔料としては、例えば、下記に挙げるようなカーボンブラックや有機顔料などを用いることができる。各インク中における顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
〔カーボンブラック〕
カーボンブラックは、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック顔料で、例えば、以下の市販品などを用いることができる。なお、本発明で用いることができるカーボンブラックは、これらに限定されるものではなく、公知のカーボンブラックを用いることができる。また、マグネタイト、フェライトなどの磁性体微粒子やチタンブラックなどを用いてもよい。
レイヴァン:7000、5750、5250、5000、3500、2000、1500、1250、1200、1190ULTRA−II、1170、1255(以上コロンビア製)。ブラックパールズ:L、リーガル:400R、330R、660R、モウグル:L、モナク:700、800、880、900、1000、1100、1300、1400、ヴァルカン:XC−72R(以上キャボット製)。カラーブラック:FW1、FW2、FW2V、FW18、FW200、S150、S160、S170、プリンテックス:35、U、V、140U、140V、スペシャルブラック:6、5、4A、4(以上デグッサ製)。No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上三菱化学製)。
〔有機顔料〕
有機顔料としては、例えば、以下のものを用いることができる。
トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、ピラゾロンレッドなどの水不溶性アゾ顔料。リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2Bなどの水溶性アゾ顔料。アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーンなどの建染染料からの誘導体。フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどのフタロシアニン系顔料。キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタなどのキナクリドン系顔料。ペリレンレッド、ペリレンスカーレットなどのペリレン系顔料。イソインドリノンイエロー、イソインドリノンオレンジなどのイソインドリノン系顔料。ベンズイミダゾロンイエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッドなどのイミダゾロン系顔料。ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジなどのピランスロン系顔料。インジゴ系顔料。縮合アゾ系顔料。チオインジゴ系顔料。フラバンスロンイエロー、アシルアミドイエロー、キノフタロンイエロー、ニッケルアゾイエロー、銅アゾメチンイエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレットなど。
また、有機顔料をカラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、例えば、以下のものを用いることができる。
C.I.ピグメントイエロー:12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、151、153、154、166、168。C.I.ピグメントオレンジ:16、36、43、51、55、59、61。C.I.ピグメントレッド:9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、170、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240。C.I.ピグメントバイオレット:19、23、29、30、37、40、50。C.I.ピグメントブルー:15、15:3、15:1、15:4、15:6、22、60、64。C.I.ピグメントグリーン:7、36、C.I.ピグメントブラウン:23、25、26などが例示できる。勿論、上記以外でも公知の有機顔料を用いることができる。
(第1のインクに用いる顔料)
第1のインクに用いる顔料は、上記に挙げたような顔料粒子表面に、少なくとも1種の親水性基が直接又は他の原子団を介して結合している自己分散型顔料であることが必須である。自己分散型顔料は、樹脂(分散剤)を用いることなくインクを構成する水性媒体中に分散可能な顔料である。このような顔料としては、例えば、自己分散型カーボンブラックを挙げることができる。自己分散型カーボンブラックの一例として、アニオン性基がカーボンブラック粒子表面に結合したアニオン性カーボンブラックを挙げることができる。本発明で用いる第1のインクは、インク中にアンモニウムイオンが含有されてなるものであることを要する。本発明は、インクジェット記録に使用するインクセットの、第1のインクが有するアンモニウムイオンと、第2のインクが有するアルカリ金属イオンに起因して引き起こされると考えられるヨレ現象の発生を抑制することを目的としているからである。なお、アンモニウムイオンは、後述するように、顔料粒子表面に結合したアニオン性基に起因してインク中に含まれる場合がある。
〔アニオン性カーボンブラック〕
アニオン性カーボンブラックは、例えば、−COOM、−SO3M、−PO3HM、−PO32などの、少なくとも1種のアニオン性基がカーボンブラックの表面に結合したものが挙げられる。上記式中、Mは、水素原子、アンモニウム、又は、有機アンモニウムである。中でも特に、−COOMや−SO3Mがカーボンブラックの表面に、必要に応じて他の原子団を介して結合してアニオン性に帯電したカーボンブラックは、インク中における分散性が良好であるため特に好ましい。なお、上記で「M」として表したもののうち、有機アンモニウムの具体例は、以下のものが挙げられる。例えば、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、メタノールアンモニウム、ジメタノールアンモニウム、トリメタノールアンモニウムなどが挙げられる。
(第1のインクに用いるアンモニウムイオン)
本発明においては特に、アニオン性基の対イオン(上記で「M」として表したもの)として、アンモニウム又は有機アンモニウムを用いることが特に好ましい。上述の通り、本発明で用いる第1のインクは、アンモニウムイオンを含有することを要する。本発明は、インクジェット記録に使用するインクセットの、第1のインクが有するアンモニウムイオンと、第2のインクが有するアルカリ金属イオンに起因して引き起こされると考えられるヨレ現象の発生を抑制することを目的としているからである。本発明においては、第1のインク中に含有させる自己分散型顔料として、アニオン性基の対イオンとしてアンモニウムを含む自己分散型顔料を用いることが特に好ましい。このような自己分散型顔料を用いることで、インク中ではアニオン性基に結合した対イオンが解離して、アンモニウムイオンとなることができる。この結果、他の成分をインクに添加することなく、第1のインクに必要な条件である、インクがアンモニウムイオンを含有するという構成を容易に満足することができる。また、前記他の原子団の具体例は、例えば、アルキレン基、芳香環などが挙げられる。アルキレン基の具体例は、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基などが挙げられる。また、芳香環の具体例は、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環などが挙げられる。なお、第1のインク中のアンモニウムイオン濃度が低すぎると、第1のインクの保存安定性が充分に得られない場合がある。このため、第1のインク中のアンモニウムイオン濃度[mol/L]は、0.0035mol/L以上0.050mol/L以下であることが好ましい。
(第2のインクに用いる顔料)
第2のインクに用いる顔料は、樹脂により顔料を水性媒体中に分散させる樹脂分散タイプの樹脂分散型顔料である。上記したように、本発明においては、顔料及び樹脂を含有してなり、樹脂の少なくとも一部により顔料が分散されているインクのことを樹脂分散型顔料インクとしている。分散剤として用いる樹脂は、特に限定されないが、前記に挙げた酸価160mgKOH/g以下の水溶性樹脂を用いることができる。また、該樹脂の中和剤として前記に挙げたようなアルカリ金属を含む中和剤を使用することができる。
(第1のインクに用いる化合物)
本発明で使用する第1のインクを構成する成分に、さらに、(A)非イオン系界面活性剤から選ばれる化合物、及び/又は、下記(B)の化合物群から選ばれる化合物を含有させることで、下記に述べるように、本発明の効果をさらに向上させることができる。(B)の化合物群としては、平均分子量600乃至2,000のポリエチレングリコール、炭素数6のα,ω−アルカンジオール、及びイミダゾリジノン誘導体が挙げられる。本発明の構成を、第1のインクとして、上記の形態のものを使用することで、第2のインクのアンモニウムイオン濃度と第1のインクのアルカリ金属イオン濃度に関係なく、本発明の課題を解決できるようになる。上記構成によって、上記の効果が得られる理由について、本発明者らは以下のように推測している。
前述した通り、本発明者らが検討した結果、本発明で課題とするヨレ現象は、第1のインクと第2のインクの2種のインクが混合されることで生じる、下記の現象が原因となっていることがわかっている。すなわち、樹脂の対イオンがアルカリ金属イオンからアンモニウムイオンとなり、その後にアンモニアの蒸発により一部がカルボン酸となった樹脂が吐出口付近で析出したことに起因する。
これに対して、(B)成分として挙げた化合物は、難溶性である樹脂のアンモニウム塩に働き、溶解を補助する作用を持つ特異な化合物であるため、2種のインクの混合によって生じるアンモニウム塩の析出が始まるのを未然に抑制する効果がある。この理由は、(B)成分として挙げた化合物には、いずれも、イオン交換によってアンモニウムイオン型となり、電気的反発力が弱くなった樹脂を、水和により溶解性を維持させる機能があるものと考えている。また、(A)成分の非イオン系界面活性剤は、析出初期のアンモニウムイオン型の樹脂及びカルボン酸型の樹脂を分散安定化させる機能を持つので、析出物をこれ以上成長させずに可溶性の状態に保つことが可能となると考えられる。
つまり、(A)成分及び(B)成分が作用して効果が発現する段階はそれぞれ異なるものの、結果として吐出口付近での樹脂の析出を抑制することとなり、ヨレ現象の抑制に対してさらに有効に働いたものと考えている。また、これらのメカニズムから考えても明らかなように、第1のインクに、(A)成分の非イオン系界面活性剤と(B)成分として挙げた化合物とを併用すると、ヨレ現象を抑制する上でさらに好ましい効果が得られる。
第1のインク中に含有させることのできる非イオン系界面活性剤としては、具体的には、下記のものが挙げられる。例えば、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体などが挙げられる。上記ポリオキシエチレンモノアルキルエーテルの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテルなどの炭素数12乃至22のアルキル基を有するポリオキシエチレンモノアルキルエーテル類が挙げられる。上記ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどの炭素数9乃至18のアルキル基を有するポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類が挙げられる。上記ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体の具体例としては、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンとの組成比(質量比)が1:5乃至5:1のブロック共重合体などが挙げられる。勿論、本発明は、これらに限定されるものではない。第1のインクを調製する場合には、上記に挙げた中から適宜に選択した単独又は複数種類の化合物を含有させればよい。
第1のインク中に、上記に挙げたような(A)成分に該当する非イオン系界面活性剤を含有させた場合には、その含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.05質量%以上5.0質量%以下であることが好ましい。さらには、含有量(質量%)が、0.05質量%以上1.25質量%以下であることがより好ましい。含有量が0.05質量%未満であると、(A)成分を使用することでヨレ現象をより抑制するという効果が得られない場合があり、5.0質量%超えると、インクの粘度が高くなりすぎてインクジェット用インクとして用いるのに適さない場合がある。
第1のインク中に含有させることのできる(B)成分の具体的なものとしては、下記に挙げる化合物群が該当する。平均分子量600乃至2,000のポリエチレングリコールとしては、例えば、平均分子量600、1,000、2,000などのポリエチレングリコールを用いることができる。また、炭素数6のα,ω−アルカンジオールの具体例としては、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオールなどを用いることができる。また、イミダゾリジノン誘導体の具体例としては、エチレン尿素、N,N’−ジメチルイミダゾリジノンなどを用いることができる。第1のインクを調製する場合には、上記に挙げた中から適宜に選択した単独又は複数種類の化合物を含有させればよい。
第1のインク中に、上記に挙げたような(B)成分に該当する化合物を含有させた場合には、その含有量は、インク全質量を基準として、2.0質量%以上20.0質量%以下、さらには2.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。(B)成分の化合物の含有量が2.0質量%未満であると、(B)成分を使用することでヨレ現象をより抑制するという効果が得られない場合がある。一方、(B)成分の化合物の含有量が20.0質量%を超えると、インクの粘度が高くなりすぎてインクジェット用インクとして用いるのに適さない場合がある。
本発明者らの検討によれば、(A)成分の非イオン系界面活性剤の方が、(B)成分として挙げた化合物よりも少量でヨレ現象をより顕著に抑制する効果が得られ、また、効果の程度も高い。また、ヨレ現象をより効果的に解決するためには、(A)成分の非イオン系界面活性剤と(B)成分として挙げた化合物を併用することが特に好ましい。さらに、これらを併用する際のインク中の含有量としては、その質量比率が下記のようになるようにインクを設計することが好ましい。具体的には、第1のインク中の、(A)成分の非イオン系界面活性剤の含有量が、(B)成分として挙げた化合物の含有量に対して、質量比率で、0.005乃至0.5、すなわち、0.005≦(A)/(B)≦0.5とすることが好ましい。なお、上記の(A)成分及び(B)成分の含有量とは、それぞれ、インク全質量中における各成分の含有量のことである。
上述の通り、本発明が課題とするヨレ現象は、樹脂の対イオンがアルカリ金属イオンからアンモニウムイオンに交換され、さらに該アンモニウムイオンがアンモニアとして蒸発することによって生じる。仮に、第1のインクがアンモニウムイオンやアンモニウムイオンを発生させ得る化合物を含有すると、第1のインク単独でも上記と同様のメカニズムによりヨレ現象が発生する場合がある。このため、第1のインクはアンモニウムイオンやアンモニウムイオンを発生させ得る化合物、より具体的には樹脂やエマルジョンなどを含有しないことが好ましい。
(水性媒体)
本発明で使用する第1のインク及び第2のインクはいずれも、上記成分に加えて、水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を含有するものであることが好ましい。水としては、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、50.0質量%以上95.0質量%以下であることが好ましい。また、インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、先に説明した(B)成分に該当する水溶性有機溶剤を使用する場合、これを含む含有量として、インク全質量を基準として、3.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤としては、例えば、以下に挙げるものを用いることができる。1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオールなどのアルカンジオール類。ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテルなどのグリコールエーテル類。エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、第2ブタノール、第3ブタノールなどの炭素数1乃至4のアルカノール類。N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのカルボン酸アミド類。アセトン、メチルエチルケトン、2−メチル−2−ヒドロキシペンタン−4−オンなどのケトン、又は、ケトアルコール。テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの環状エーテル類。グリセリン。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−又は1,3−プロピレングリコール、1,2−又は1,4−ブチレングリコールなどのアルキレングリコール類。チオジグリコール、1,2,6−ヘキサントリオールなどの多価アルコール類。2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−メチルモルホリンなどの複素環類、ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物。
(その他の成分)
本発明で使用する第1のインク及び第2のインクはいずれも、保湿性維持のために、上記成分の他に、尿素、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの保湿性固形分を含有してもよい。インク中の保湿性固形分の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.10質量%以上20.0質量%以下、さらには3.0質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。
また、本発明で使用する第1のインク及び第2のインクはいずれも、上記成分以外にも必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、水溶性樹脂の中和剤、塩などの、種々の添加剤を含有してもよい。例えば、水溶性樹脂の中和剤として塩基を用いてもよい。例えば、塩としては、硫酸塩(例えば、硫酸カリウムや硫酸アンモニウムなど)や安息香酸塩(例えば、安息香酸アンモニウムなど)などを用いることができる。
<インクジェット記録装置>
本発明のインクジェット記録装置は、複数のインクが組み合わされているインクセットが搭載されており、吸引キャップにより複数のインク吐出部からインクの吸引を行うことで回復動作を行う手段を有するインクジェット記録装置である。そして、その特徴は、インクセットが、第1のインク及び第2のインクが少なくとも組み合わせされているものであり、回復動作に用いられる吸引キャップが、第1のインクの吐出部と第2のインクの吐出部とのそれぞれ対して別個に設けられていることにある。この点については、後に詳述する。その他の構成については、従来公知のインクジェット記録装置と同様であればよい。例えば、本発明のインクジェット記録装置は、従来の装置と同様に、上記2種類のインクをそれぞれ収容するためのインク収容部と、これらのインクを吐出する記録ヘッドとを備える。本発明の効果は特に、記録ヘッドが熱エネルギーをインクに付与することにより、インクを吐出するインクジェット記録装置である場合に、顕著に得ることができるため、特に好適である。以下に、本発明のインクジェット記録装置の機構部とできる概略構成を説明する。インクジェット記録装置は、各機構の役割から、通常、給紙部、搬送部、キャリッジ部、排紙部、クリーニング部、及びこれらを保護し、意匠性を持たせる外装部で構成される。以下、これらの概略を説明する。
図1は、インクジェット記録装置の斜視図である。また、図2及び図3は、インクジェット記録装置の内部機構を説明するための図であり、図2は右上部からの斜視図、図3はインクジェット記録装置の側断面図をそれぞれ示したものである。
給紙を行う際には、先ず、給紙トレイM2060を含む給紙部において所定枚数の記録媒体が、給紙ローラM2080と分離ローラM2041から構成されるニップ部に送られる(図1及び図3参照)。記録媒体はニップ部で分離され、最上位の記録媒体のみが搬送される。搬送部に送られた記録媒体は、ピンチローラホルダM3000及びペーパーガイドフラッパーM3030に案内されて、搬送ローラM3060とピンチローラM3070とのローラ対に送られる。搬送ローラM3060とピンチローラM3070とからなるローラ対は、LFモータE0002の駆動により回転され、この回転により記録媒体がプラテンM3040上を搬送される(以上、図2及び図3参照)。
画像を形成する際には、キャリッジ部は記録ヘッドH1001(図4参照)を目的の画像形成位置に配置して、電気基板E0014(図2参照)からの信号にしたがって記録媒体にインクが吐出される。なお、記録ヘッドH1001についての詳細な構成は後述する。記録ヘッドH1001により記録を行いながらキャリッジM4000(図2参照)が列方向に走査する主走査と、搬送ローラM3060(図2及び図3参照)が記録媒体を行方向に搬送する副走査とを交互に繰り返すことにより、記録媒体に画像を形成する。最後に、記録媒体は、排紙部で第1の排紙ローラM3110と拍車M3120とのニップに挟まれ(図3参照)、搬送されて排紙トレイM3160(図1参照)に排出される。
クリーニング部は、記録ヘッドH1001のクリーニングを行う。クリーニング部は、キャップM5010(図2参照)を記録ヘッドH1001の吐出口に密着させた状態で、ポンプM5000(図2参照)を作動すると、記録ヘッドH1001からインクなどを吸引する。また、キャップM5010を開いた状態で、キャップM5010に残っているインクを吸引すると、インクの固着やその他の弊害が起こらないようになっている。
(ヘッドカートリッジ(記録ユニット)の構成)
ヘッドカートリッジH1000の構成について説明する(図4参照)。ヘッドカートリッジH1000は、記録ヘッドH1001と、インクカートリッジH1900を搭載する手段、及びインクカートリッジH1900から記録ヘッドにインクを供給する手段を有する。そして、ヘッドカートリッジH1000は、キャリッジM4000(図2参照)に対して着脱可能に搭載される。
図4は、ヘッドカートリッジH1000にインクカートリッジH1900を装着する様子を示した図である。インクジェット記録装置は、例えば、7種のインクで画像を形成する。したがって、インクカートリッジH1900も7色分が独立に用意されている。そして、図4に示すように、それぞれのインクカートリッジは、ヘッドカートリッジH1000に対して着脱可能となっている。なお、インクカートリッジH1900の着脱は、キャリッジM4000(図2参照)にヘッドカートリッジH1000が搭載された状態で行うことができる。
図5は、ヘッドカートリッジH1000の分解斜視図である。ヘッドカートリッジH1000は、記録素子基板、プレート、電気配線基板H1300、タンクホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700、シールゴムH1800などで構成される。記録素子基板は第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101で構成され、プレートは第1のプレートH1200及び第2のプレートH1400で構成される。
第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101はSi基板であり、その片面にインクを吐出するための複数の記録素子(ノズル)がフォトリソグラフィ技術により形成されている。各記録素子に電力を供給するAlなどの電気配線は、成膜技術により形成されており、個々の記録素子に対応した複数のインク流路もまた、フォトリソグラフィ技術により形成されている。さらに、複数のインク流路にインクを供給するためのインク供給口が裏面に開口するように形成されている。
図6は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101の構成を説明する正面拡大図である。H2000〜H2600は、それぞれ異なるインクを供給する記録素子の列(以下吐出口列ともいう)である。第1の記録素子基板H1100には、3色分の吐出口列H2000〜H2200が形成されている。第2の記録素子基板H1101には、4色分の吐出口列H2300〜H2600が形成されている。各吐出口列は、記録媒体の搬送方向に1,200dpi(dot/inch;参考値)の間隔で並ぶ768個のノズルによって構成され、約2ピコリットルのインクを吐出する。各吐出口における開口面積は、およそ100μm2に設定されている。
以下、図4及び図5を参照して説明する。前記した第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101は第1のプレートH1200に接着固定されている。ここには、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101にインクを供給するためのインク供給口H1201が形成されている。さらに、第1のプレートH1200には、開口部を有する第2のプレートH1400が接着固定されている。この第2のプレートH1400は、電気配線基板H1300と第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101とが電気的に接続されるように、電気配線基板H1300を保持する。
電気配線基板H1300は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101に形成されている各ノズルからインクを吐出するための電気信号を印加する。この電気配線基板H1300は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101に対応する電気配線と、この電気配線端部に位置し、インクジェット記録装置からの電気信号を受け取るための外部信号入力端子H1301とを有する。外部信号入力端子H1301は、タンクホルダーH1500の背面側に位置決め固定されている。
インクカートリッジH1900を保持するタンクホルダーH1500には、流路形成部材H1600が、例えば、超音波溶着により固定され、インクカートリッジH1900から第1のプレートH1200に通じるインク流路H1501を形成する。インクカートリッジH1900と係合するインク流路H1501のインクカートリッジ側端部には、フィルターH1700が設けられており、外部からの塵埃の侵入を防止し得るようになっている。また、インクカートリッジH1900との係合部にはシールゴムH1800が装着され、係合部からのインクの蒸発を防止し得るようになっている。
さらに、上記したように、タンクホルダー部と記録ヘッド部H1001とを接着などで結合することで、ヘッドカートリッジH1000が構成される。なお、タンクホルダー部は、タンクホルダーH1500、流路形成部材H1600、フィルターH1700、及びシールゴムH1800から構成される。また、記録ヘッド部H1001は、第1の記録素子基板H1100及び第2の記録素子基板H1101、第1のプレートH1200、電気配線基板H1300及び第2のプレートH1400から構成される。
なお、ここでは記録ヘッドの一形態として、電気信号に応じた膜沸騰をインクに生じさせるための熱エネルギーを生成する電気熱変換体(記録素子)を用いて記録を行うサーマルインクジェット方式の記録ヘッドについて述べた。この代表的な構成や原理については、例えば、米国特許第4,723,129号明細書、同第4,740,796号明細書に開示されている基本的な原理を用いて行うものが好ましい。この方式は、いわゆる、オンデマンド型、コンティニュアス型のいずれにも適用することができる。
サーマルインクジェット方式は、オンデマンド型に適用することが特に有効である。オンデマンド型の場合には、インクを保持する液流路に対応して配置されている電気熱変換体に、記録情報に対応していて核沸騰を超える急速な温度上昇を与える少なくとも一つの駆動信号を印加する。このことによって、電気熱変換体に熱エネルギーを発生せしめ、インクに膜沸騰を生じさせて、結果的にこの駆動信号に一対一で対応したインク内の気泡を形成できる。この気泡の成長及び収縮により吐出口を介してインクを吐出することで、少なくともひとつの滴を形成する。駆動信号をパルス形状とすると、即時、適切に気泡の成長及び収縮が行われるので、特に応答性に優れたインクの吐出が達成でき、より好ましい。
また、前記のサーマルインクジェット方式に限らず、下記に述べるような、力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置も好ましく用いることができる。かかる形態のインクジェット記録装置は、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備えてなる。そして、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクをノズルから吐出する。
インクジェット記録装置は、上記したように、記録ヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、それらが分離不能に一体になったものを用いてもよい。さらに、インクカートリッジは記録ヘッドに対して分離可能又は分離不能に一体化されてキャリッジに搭載されるもの、また、インクジェット記録装置の固定部位に設けられて、チューブなどのインク供給部材を介して記録ヘッドにインクを供給するものでもよい。また、記録ヘッドに対して、好ましい負圧を作用させるための構成をインクカートリッジに設ける場合には、以下の構成とすることができる。すなわち、インクカートリッジのインク収容部に吸収体を配置した形態、又は可撓性のインク収容袋とこれに対してその内容積を拡張する方向の付勢力を作用するばね部とを有した形態などとすることができる。また、インクジェット記録装置は、上記したようなシリアル型の記録方式を採るもののほか、記録媒体の全幅に対応した範囲にわたって記録素子を整列させてなるラインプリンタの形態をとるものであってもよい。
(吸引キャップシステム)
図7は、本発明のインクジェット記録装置を特徴づけるメンテナンスシステムを示す斜視図である。吸引キャップ部材1401は、記録ヘッド1100を構成する記録ヘッドA(1100)及び記録ヘッドB(1101)のそれぞれに対して、別個にキャップできるように、キャップA(1401−1)及びキャップB(1401−2)が設けられた構成を有する。該吸引キャップ部材1401は、記録ヘッドのノズルが形成された面に当接、又は圧接することができるように構成されている。吸引キャップ部材1401のキャップA(1401−1)及びキャップB(1401−2)の内部には、それぞれにインク吸収体が設けられている。さらに、吸引キャップ部材1401のキャップA(1401−1)及びキャップB(1401−2)には、大気開放弁1404及び1405が設けられている。さらに、これらのキャップA(1401−1)及びキャップB(1401−2)の各々からインク排出用チューブ1402及び1403が独立に設けられている。このインク排出用チューブ1402及び1403それぞれに吸引ポンプを独立に設けると、メンテナンスシステムの容積がかさみ、インクジェット記録装置が大型化することや、コストが高くなることが懸念される。このため、図7に示したように、2本のインク排出用チューブ1402及び1403に対して、1台の吸引ポンプ1406を設けるようにすることが好ましい。つまり、図示した例では、吸引キャップ部材1401の各キャップ(1401−1及び1401−2)、大気開放弁1404及び1405、並びにインク排出用チューブ1402及び1403は、記録ヘッドに対応するように、それぞれ独立に設けられている。これに対し、吸引ポンプ1406は共通化している。本発明のインクジェット記録装置における、インク吐出部からインクの吸引を行うことでなされる回復動作(以下、吸引回復動作という)は、下記のようにして行われる。先ず、吸引回復動作時に、吸引回復したい記録ヘッドに対応した吸引キャップ部材の各キャップに設けられている大気開放弁だけを閉め、吸引回復する必要のない記録ヘッドに対応した吸引キャップ部材の各キャップに設けられた大気開放弁を開けるようにする。このようにすることで、吸引回復動作を行う記録ヘッドを、複数の記録ヘッドの中から選択することができる。
なお、本発明においては、下記の一連の動作を、吸引回復動作という。先ず、記録ヘッド1100のインクを吐出する吐出口が形成された面に、吸引キャップ部材1401に設けられている2つのキャップのうちの記録ヘッド1100に該当するキャップでキャッピングする。そして、記録ヘッド1100に対応する大気開放弁(大気連通弁ともいう)を閉じた状態で、吸引ポンプ1406を回動する。これによって、吸引キャップ部材1401の該当するキャップ内のインク、又は記録ヘッド1100のノズル内にあるインクを吸引する。この吸引動作を行うことによって、記録ヘッド1100からのインクの吐出状態が良好に保たれるようになる。この結果、記録ヘッドの機能の回復がなされる。本発明のインクジェット記録装置では、記録ヘッド1101に対しても、吸引キャップ部材1401に設けられている2つのキャップのうちの記録ヘッド1101に該当するキャップでキャッピングし、上記と同様に吸引回復動作を行う。本発明の記録装置を構成する吸引キャップ部材1401は、図7に示したように、第1のインクと、第2のインクの記録ヘッドのそれぞれに対して別個にキャッピングできるように構成されていることを要する。しかし、インクセットを構成するそれ以外のインクに対しては、複数の記録ヘッドを同時にキャッピングできる構造の吸引キャップを用いてもよい。また、上記した吸引回復動作において、吸引ポンプの回転量、回転数を変えることで記録ヘッドに与える負圧を変えることができ、記録ヘッドからインクを排出する回復量を変えることができる。また、吸引ポンプを動作する時間を変えることでも記録ヘッドからインクを排出する回復量を変えることができる。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、複数のインクが組み合わされているインクセットが用いられ、吸引キャップにより複数のインク吐出部からインクの吸引を行うことで回復動作を行う工程を有するインクジェット記録方法である。そして、その特徴は、インクセットが、第1のインク及び第2のインクが少なくとも組み合わされているものであり、第1のインクの吐出部と第2のインクの吐出部とのそれぞれに対して別個に設けられている吸引キャップを用いて回復動作を行うことにある。本発明のインクジェット記録方法は、例えば、上記でその構成の概略を述べたインクジェット記録装置を用いて行うことができる。
以下、実施例及び比較例を用いてさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらに限定されるものではない。なお、以下の記載で「部」又は「%」とあるものは、特に断りのない限り質量基準である。
<顔料分散液及び樹脂水溶液の調製>
(自己分散型顔料及び顔料分散液Aの調製)
5.5gの水に5gの濃塩酸を溶かした溶液に、5℃に冷却した状態で4−アミノフタル酸1.5gを加えた。次に、この溶液が入った容器をアイスバスに入れて液を撹拌することにより溶液を常に10℃以下に保った状態にし、これに、5℃の水9gに亜硝酸ナトリウム1.8gを溶かして得た溶液を加えた。この溶液をさらに15分間撹拌後、比表面積が220m2/gでDBP吸油量が105mL/100gであるカーボンブラック6gを撹拌下で加えた。その後、さらに15分間撹拌した。得られたスラリーをろ紙(商品名:標準用濾紙No.2;アドバンテック製)でろ過した後、粒子を十分に水洗し、110℃のオーブンで乾燥させ、自己分散型カーボンブラックを調製した。さらに、上記で得られた自己分散型カーボンブラックを塩酸で処理した後、アンモニア水を用いて中和処理することで、自己分散型カーボンブラックAを調製した。その後、上記で得られた自己分散型カーボンブラックAに水を加えて顔料濃度が10.0%となるように分散させて、分散液を調製した。上記の方法により、カーボンブラック粒子表面に、−C63−(COONH4)2基が導入されてなる自己分散型カーボンブラックAが水中に分散された状態の顔料分散液Aを得た。顔料分散液A中のアンモニウムイオン濃度を、アンモニウムイオン電極を接続したイオンメーター(Orion290A+;サーモエレクトロン製)を用いて測定したところ、1,500ppmであった。
(樹脂分散型顔料及び顔料分散液Bの調製)
顔料分散液Aの調製で用いたカーボンブラック10部と、分散剤として、スチレン/メトキシトリエチレングリコールメタクリレート/アクリル酸のブロック共重合体を2.5部と、イオン交換水87.5部とを混合し、ペイントシェーカーで3時間分散させた。上記で使用したブロック共重合体は、酸価160mgKOH/g、1当量の水酸化カリウムで中和した重量平均分子量10,000のものである。上記の分散処理後、遠心分離処理によって粗大粒子を除去し、さらに、ポアサイズ3.0μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、樹脂分散型カーボンブラックBを調製した。その後、顔料濃度10.0%となるように水で調整して、顔料濃度10.0%、樹脂濃度2.5%の顔料分散液Bを得た。
(樹脂水溶液Cの調製)
酸価160mgKOH/g、重量平均分子量7,500のスチレン/n−ブチルアクリレート/アクリル酸のランダム共重合体を水酸化カリウムで1当量に中和した。その後、樹脂濃度が10.0%となるように水で調整して、樹脂水溶液Cを得た。
<インクの調製>
上記で調製した顔料分散液Aを用い、自己分散型顔料及びアンモニウムイオンを含有するBK1−1〜BK1−30を調製し、実施例及び比較例で用いる第1のインクとした。また、上記で調製した顔料分散液Bと樹脂水溶液Cとを用い、樹脂及びアルカリ金属イオンを含有するBK2を調製し、実施例及び比較例で用いる第2のインクとした。表1〜表7に示す各成分をそれぞれ混合し、十分に撹拌処理した後、ポアサイズ2.5μmのミクロフィルター(ポール製)にて加圧ろ過して各インクを得た。得られたBK1−1〜BK1−30中のアンモニウムイオン濃度は0.037mol/Lであり、BK2中のアルカリ金属イオン濃度は、0.11mol/Lであった。なお、表1〜表7中、ポリエチレングリコールに付した数値(400、600、1,000、2,000、及び4,000)は、それぞれ平均分子量を示す。また、ポリオキシエチレンセチルエーテルは、ポリオキシエチレンの繰り返し数20の非イオン系界面活性剤である。また、プルロニックF68(アデカ製)は、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体であり、ポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンの組成比(質量比)が4:1の非イオン系界面活性剤である。また、アセチレノールE100(川研ファインケミカル製)は、アセチレングリコールにポリオキシエチレンが付加した非イオン系界面活性剤である。
Figure 2009001004
Figure 2009001004
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Figure 2009001004
Figure 2009001004
Figure 2009001004
<実施例及び比較例>
(比較例)
上記で調製したBK1−1とBK2の2種類のインクを組み合わせてインクセットとした。このインクセットを用い、PPC用紙オフィスプランナー(キヤノン製)に、下記の記録装置を用い、下記のようにして記録耐久試験を行った。この際、記録装置には、記録信号に応じた熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出するオンデマンド型記録ヘッドを有するインクジェット記録装置PIXUS PRO9000(キヤノン製)を用いた。そして、当該装置のグリーンのポジションにインクBK1−1を、レッドのポジションにインクBK2を装着し、下記のようにして記録耐久性の評価を行った。なお、上記のポジションに各インクを装着した場合には、インクBK1−1の吐出部とインクBK2の吐出部とは、同じ吸引キャップを用いることになる。
(評価)
[記録耐久性]
〔ヨレ現象の評価〕
比較例で使用するインクセットを構成する、インクBK1−1及びインクBK2の各インクをインクジェット記録装置PIXUS PRO9000の所定のポジションに搭載した後、吸引回復動作を1回行った。その後、PIXUS PRO9000のノズルチェックパターンを記録して、得られたノズルチェックパターンを目視で確認して、下記に示したヨレ現象の評価基準に従い、ヨレ現象の発生についての評価を行った。
(ヨレ現象の評価基準)
A:チェックパターンに乱れがなく正常に記録できる。
B:チェックパターンに若干の乱れがある。
この時点でヨレ現象の評価結果がAランクであった場合には、そのインクセットを用いて、上記した記録媒体に、1200dpi×1200dpiの記録密度で記録デューティを15%としたベタ画像をデフォルトモードで10枚連続して記録した。そして、記録終了後に、PIXUS PRO9000のノズルチェックパターンを記録し、上記と同様にヨレ現象の評価を行った。この時点でのヨレ現象の評価結果がAランクであった場合には、そのインクセットを用いて、再度上記の記録媒体に、上記と同様にして画像を90枚連続で記録した。記録終了後にPIXUS PRO9000のノズルチェックパターンを記録し、再度、上記のヨレ現象の評価基準にしたがって評価を行った。そして、再び評価結果がAランクであった場合には、そのインクセットを用いて、再度上記と同様にして、上記画像を100枚連続で記録した。そして、記録終了後に、PIXUS PRO9000のノズルチェックパターンを記録して、上記のヨレ現象の評価基準にしたがって評価を行った。その後は、100枚単位で上記のようにして連続して記録を繰り返し、100枚毎にヨレ現象の評価を行った。100枚単位での記録は、上記に示したヨレ現象の評価基準による記録物の評価結果がBランクとなるまで続け、ヨレ現象の評価結果でBランクを示した時点で試験を終了し、それまでの記録枚数を記録耐久性の評価に用いた。なお、10,000枚の記録を行ってもヨレ現象の評価結果がAランクの場合は、その時点で試験を終了し、10,000枚でAと評価した。
〔吐出口周辺の状態の評価〕
上記のようにして記録物に生じるヨレ現象の評価に用いたインクジェット記録装置の記録ヘッドを、記録の終了後に記録装置から取り外して、吐出口周辺の状態を光学顕微鏡で観察した。そして、吐出口周辺に生じた堆積物の状態によって下記の基準で堆積物の評価をした。なお、10,000枚の記録を行ってもヨレ現象の評価結果がAランクの場合は、10,000枚の記録が終了した時点での記録ヘッドの吐出口周辺の状態を光学顕微鏡で観察した。
〔吐出口周辺の状態の評価基準〕
A:吐出口周辺に樹脂の塊がない。
B:吐出口周辺の一部に樹脂の塊がある。
C:吐出口周辺に全体的に樹脂の塊がある。
上記した試験の結果、比較例で実施した第1のインク及び第2のインクを用い、これらのインクに同じ吸引キャップを用いるインクのセットポジションとの組み合わせでは、10枚の時点で早くもヨレ現象の評価ランクはBとなった。また、その時点の吐出口の状態は、Cランクであった。
(実施例1〜30)
実施例1〜30の装置では、先に調製したBK1−1〜BK1−30の各インクをそれぞれ第1のインクとし、先に調製したインクBK2を第2のインクとし、これらの2種類のインクを下記表8に示す組み合わせとした各インクセットをそれぞれ用いた。PIXUS PRO9000(キヤノン製)のグリーンのポジションに第1のインク(インクBK1−1〜BK1−30)を、シアンのポジションに第2のインク(インクBK2)をそれぞれ装着する以外は、比較例と同様の記録耐久性の評価を行った。なお、このポジションにインクを装着した場合は、第1のインクの吐出部と第2のインクの吐出部とは、別個の吸引キャップを用いることになる。
下記表8に、比較例及び実施例1〜30の評価結果をまとめて示した。
Figure 2009001004
表8からわかるように、実施例1の第1のインク及び第2のインクを用い、これらのインクに別個の吸引キャップを用いるインクのセットポジションとの組み合わせでは、1,000枚の時点まで、ヨレ現象の評価ランクはBとはならなかった。また、その時点の吐出口状態はBランクであり、比較例と比べて大幅な性能向上が認められた。第1のインクが(A)成分及び/又は(B)成分を含有する実施例2〜12、15〜17、21〜24、29、及び30では、2,500枚の時点でもヨレ現象の評価ランクはAであり、より良好な性能が認められた。さらに、第1のインクが(A)成分及び(B)成分を共に含有する実施例12、及び21〜24ではより優れた性能が認められた。中でも、(A)成分及び(B)成分の質量比率が特定の範囲を満足する実施例12、22、及び24では特に優れた性能が認められた。
インクジェット記録装置の斜視図である。 インクジェット記録装置の機構部の斜視図である。 インクジェット記録装置の断面図である。 ヘッドカートリッジにインクカートリッジを装着する状態を示す斜視図である。 ヘッドカートリッジの分解斜視図である。 ヘッドカートリッジにおける記録素子基板を示す正面図である。 インクジェット記録装置のメンテナンスシステム示す斜視図である。
符号の説明
1000:記録ヘッド
1100:記録ヘッドA
1101:記録ヘッドB
1401:吸引キャップ部材
1401−1:キャップA
1401−2:キャップB
1402、1403:インク排出用チューブ
1404、1405:大気開放弁
1406:吸引ポンプ

Claims (8)

  1. 複数のインクが搭載されており、吸引キャップにより複数のインク吐出部からインクの吸引を行うことで回復動作を行う手段を有するインクジェット記録装置であって、
    前記複数のインクに、少なくとも1種の親水性基が直接又は他の原子団を介して結合している自己分散型顔料とアンモニウムイオンとを含有してなる第1のインクと、顔料、酸価160mgKOH/g以下の樹脂、及びアルカリ金属イオンを含有してなる第2のインクとが少なくとも組み合わされているインクセットが用いられており、
    前記回復動作に用いられる吸引キャップが、前記第1のインクの吐出部と前記第2のインクの吐出部とのそれぞれに対して別個に設けられていることを特徴とするインクジェット記録装置。
  2. 前記第1のインクが、さらに、(A)非イオン系界面活性剤から選ばれる化合物、及び/又は、(B)平均分子量600乃至2,000のポリエチレングリコール、炭素数6のα,ω−アルカンジオール、及びイミダゾリジノン誘導体からなる群から選ばれる化合物を含有してなる請求項1に記載のインクジェット記録装置。
  3. 前記非イオン系界面活性剤が、ポリオキシエチレンモノアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、及びポリオキシエチレンとポリオキシプロピレンのブロック共重合体からなる群から選ばれる化合物である請求項2に記載のインクジェット記録装置。
  4. 前記炭素数6のα,ω−アルカンジオールが、1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、及び3−メチル−1,5−ペンタンジオールからなる群から選ばれる化合物である請求項2に記載のインクジェット記録装置。
  5. 前記イミダゾリジノン誘導体が、エチレン尿素及びN,N’−ジメチルイミダゾリジノンから選ばれる請求項2に記載のインクジェット記録装置。
  6. 前記第1のインクが、(A)非イオン系界面活性剤及び(B)の化合物を共に含有してなる請求項2乃至5のいずれか1項に記載のインクジェット記録装置。
  7. 前記第1のインク中の、インク全質量を基準とした(A)非イオン系界面活性剤の含有量(質量%)が、インク全質量を基準とした(B)の化合物の含有量(質量%)に対して、質量比率で、0.005乃至0.5である請求項6に記載のインクジェット記録装置。
  8. 複数のインクが用いられ、吸引キャップにより複数のインク吐出部からインクの吸引を行うことで回復動作を行う工程を有するインクジェット記録方法であって、
    前記複数のインクに、少なくとも1種の親水性基が直接又は他の原子団を介して結合している自己分散型顔料とアンモニウムイオンとを含有してなる第1のインクと、顔料、酸価160mgKOH/g以下の樹脂、及びアルカリ金属イオンを含有してなる第2のインクとが少なくとも組み合わされているインクセットが用いられており、
    前記第1のインクの吐出部と前記第2のインクの吐出部とのそれぞれに対して別個に設けられた吸引キャップにより前記回復動作を行うことを特徴とするインクジェット記録方法。
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