以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る一実施形態の燃料電池1の構成を示す断面図である。図2は、本発明に係る一実施形態の燃料電池においてポンプ90を備えた場合の燃料電池1の構成を示す断面図である。
図1に示すように、燃料電池1は、起電部を構成する燃料電池セル10と、この燃料電池セル10のアノード(燃料極)側およびカソード(空気極)側にそれぞれ設けられたアノード導電層18、カソード導電層19と、このアノード導電層18に対向させて設けられた複数の開口部31を有する燃料分配層30と、この燃料分配層30の燃料電池セル10側とは異なる側に配置され、燃料分配層30に液体燃料Fを供給する燃料供給機構40と、カソード導電層19に積層された保湿層50と、この保湿層50に積層された蓄熱部材60と、この蓄熱部材60に積層された、複数の空気導入口71を有する表面カバー70とを備える。また、燃料電池1は、燃料供給機構40を構成する燃料供給部本体42の周囲を覆うように蓄熱部材80を備えている。
ここで、図1に示した燃料電池1において、蓄熱部材60を保湿層50と表面カバー70との間に配置した一例を示しているが、この構成に限られるものではなく、カソード(空気極)側で発生した熱を蓄熱可能に配置されていればよい。例えば、蓄熱部材60を表面カバー70上に積層して配置してもよい。なお、蓄熱部材60は、カソード(空気極)16に供給される空気やカソード(空気極)16で生成した水(水蒸気)が通過可能な構成になっている。また、図1に示した燃料電池1において、カソード(空気極)側およびアノード(燃料極)側に、それぞれ蓄熱部材60および蓄熱部材80を備えた構成を示しているが、用途等に応じて、どちらか一方のみを備える構成としてもよい。
燃料電池セル10は、いわゆる膜電極接合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)であり、アノード触媒層11とアノードガス拡散層12とを有するアノード(燃料極)13と、カソード触媒層14とカソードガス拡散層15とを有するカソード(空気極)16と、アノード触媒層11とカソード触媒層14とで挟持されたプロトン(水素イオン)伝導性を有する電解質膜17とから構成される。
アノード触媒層11やカソード触媒層14に含有される触媒としては、例えばPt、Ru、Rh、Ir、Os、Pd等の白金族元素の単体、白金族元素を含有する合金等が挙げられる。アノード触媒層11として、例えば、メタノールや一酸化炭素等に対して強い耐性を有するPt−RuやPt−Mo等を用いることが好ましい。カソード触媒層14として、例えば、Pt、Pt−Ni、Pt−Co等を用いることが好ましい。ただし、触媒は、これらに限定されるものではなく、触媒活性を有する各種の物質を使用することができる。触媒は、炭素材料のような導電性担持体を使用した担持触媒、あるいは無担持触媒のいずれであってもよい。
電解質膜17を構成するプロトン伝導性材料としては、例えばスルホン酸基を有するパーフルオロスルホン酸重合体のようなフッ素系樹脂、スルホン酸基を有する炭化水素系樹脂等の有機系材料、あるいはタングステン酸やリンタングステン酸等の無機系材料が挙げられる。電解質膜17は、具体的には、ナフィオン(商品名、デュポン社製)、フレミオン(商品名、旭硝子社製)、アシプレックス(商品名、旭化成工業社製)等により構成される。なお、プロトン伝導性の電解質膜17は、これらに限られるものではなく、例えば、トリフルオロスチレン誘導体の共重合膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、芳香族ポリエーテルケトンスルホン酸膜、あるいは脂肪族炭化水素系樹脂獏などのプロトンを輸送可能な電解質膜で構成することができる。
アノード触媒層11に積層されるアノードガス拡散層12は、アノード触媒層11に燃料を均一に供給する役割を果たすと同時に、アノード触媒層11の集電体も兼ねている。カソード触媒層14に積層されるカソードガス拡散層15は、カソード触媒層14に酸化剤を均一に供給する役割を果たすと同時に、カソード触媒層14の集電体も兼ねている。また、アノードガス拡散層12およびカソードガス拡散層15は、カーボンペーパ、カーボンクロス、カーボンシルク等の多孔性炭素質材、チタン、チタン合金、ステンレス、金などの金属材料からなる多孔質体またはメッシュなどで構成される。
アノードガス拡散層12の表面に積層されたアノード導電層18、およびカソードガス拡散層15の表面に積層されたカソード導電層19は、例えば、Auのような電気特性および化学安定性に優れた導電金属材料からなるメッシュ、多孔質膜等で構成される。これらの中でも、アノード導電層18やカソード導電層19は、燃料電池セル10に対応して開口された複数の開口部を有する薄膜で構成されることが好ましく、この開口部を介して、燃料電池セル10に対向して設けられている燃料分配層30の開口部31からの燃料を燃料電池セル10に導く。なお、アノード導電層18およびカソード導電層19は、それらの周縁から燃料や酸化剤が漏れないように構成されている。また、電解質膜17とアノード導電層18およびカソード導電層19との間には、それぞれゴム製のOリング20が介在されており、これらによって燃料電池セル10からの燃料漏れや酸化剤漏れを防止している。なお、ここでは、アノード導電層18およびカソード導電層19を備えた燃料電池2を示しているが、アノード導電層18およびカソード導電層19を設けずに、上記したようにアノードガス拡散層12およびカソードガス拡散層15を拡散層として機能させるとともに、導電層として機能させてもよい。
保湿層50は、カソード触媒層14で生成された水の一部が含浸して、水の蒸散を抑制するとともに、カソード触媒層14への空気の均一拡散を促進するものである。この保湿層50は、例えば、ポリエチレン多孔質膜等からなる平板で構成される。
蓄熱部材60、80は、熱を潜熱として蓄熱する潜熱蓄熱部材であって、相変化温度を境にしてゲル化と液状化を繰り返す。この潜熱蓄熱部材は、温度を均一に保つ作用があるため、温度を管理する観点からも好ましい材料である。例えば、図1に示した燃料電池1のように、カソード(空気極)側である保湿層50と表面カバー70との間、およびアノード(燃料極)側である燃料供給部本体42の周囲に、それぞれ蓄熱部材60および蓄熱部材80を備える場合、それぞれの蓄熱部材60、80における相変化温度を異なるものとし、冷却部分と保温部分を別個に温度管理してもよい。ここで、蓄熱部材60が設置されるカソード(空気極)側とは、燃料電池セル10を構成するカソード(空気極)16よりも外側、すなわち表面カバー70側を意味し、蓄熱部材80が設置されるアノード(燃料極)側とは、燃料電池セル10を構成するアノード(燃料極)13よりも外側、すなわち燃料供給部本体42側を意味する。例えば、カソード(空気極)側に設けられる蓄熱部材60における相変化温度が、アノード(燃料極)側に設けられる蓄熱部材80における相変化温度よりも低くなるように、それぞれの潜熱蓄熱部材を設定してもよい。このように設定することで、発熱反応であるカソード(空気極)16における反応は、蓄熱部材60が熱を吸収することで促進され、吸熱反応であるアノード(燃料極)13における反応は、蓄熱部材80が保温した熱で促進される。また、カソード(空気極)16で発生した熱は、蓄熱部材60に蓄熱されるとともに、燃料電池セル10、電池ケース、燃料電池を積層した状態に固定するための固定部材などを介してアノード(燃料極)13の蓄熱部材80に伝わる。
なお、蓄熱部材を設ける位置は、図1に示したように、保湿層50と表面カバー70との間、燃料供給部本体42の周囲に限られるものはなく、燃料電池1の構成部材や部品機能によって適宜に変更可能である。例えば、蓄熱部材80を、アノード(燃料極)側である、アノード導電層18と燃料分配層30との間、または燃料分配層30と燃料供給部本体42との間等に設けてもよい。また、例えば、燃料電池1が電池ケースなどの筐体に固定される場合には、前述したように、蓄熱部材60を表面カバー70上に積層して配置してもよい。これによって、カソード(空気極)側で発生した熱を蓄熱部材60が吸収するため、カソード(空気極)側で発生した熱が筐体に直接伝わることを防止できる。さらに、蓄熱部材60と接触する部分の筐体では、一様に温度が上昇する。また、燃料電池1は、外部環境における温度変化の影響を受け難くなる。なお、蓄熱部材60を表面カバー70上に積層して配置する場合、蓄熱部材60を、表面カバー70上の全面に亘って配置しても、筐体と接触する部分に対応する表面カバー70上にのみ積層して配置してもよい。
また、複数設けられた蓄熱部材における各相変化温度も、燃料電池1の構成部材や部品機能によって適宜に変更可能である。また、前述したように、蓄熱部材60が、例えば、カソード(空気極)側である保湿層50と表面カバー70との間や、表面カバー70上の全面に亘って配置される場合には、蓄熱部材60は、カソード(空気極)16に供給される空気やカソード(空気極)16で生成した水(水蒸気)が通過可能な構成となっている。具体的には、例えば、表面カバー70の空気導入口71に対応する貫通口を蓄熱部材60に形成する。その他、複数の蓄熱部材を間隔をあけて配置するなどの構成によっても、空気や水(水蒸気)が通過可能となる。
蓄熱部材60、80は、具体的には、例えば、酢酸ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化ナトリウムなどの水溶液や水和物、あるいはその混合物などからなる無機塩・水和物や水溶液で構成される。また、蓄熱部材60、80は、有機物で構成されてもよく、具体的には、ペンタデカン、ヘキサデカン、ヘプタデカンなどのノルマルパラフィンやそのエマルジョン、ポリエチレングリコールなどの高分子材料で構成される。また、蓄熱部材60、80は、これらの材料をマイクロカプセル化した材料やそのマイクロカプセルを樹脂などに分散させて成形した部材や粉末、これらの材料をペースト状に他の樹脂と混合した塗料などで構成されてもよい。さらに、蓄熱部材60、80は、上記した材料を袋状のパックに充填したもので構成されてもよい。
表面カバー70は、空気の取入れ量を調整するものであり、その調整は、空気導入口71の個数や大きさ等を変更することで行われる。表面カバー70は、例えば、SUS304のような金属で構成することができるが、これに限定されるものではない。
燃料供給機構40は、燃料収容部41と、燃料供給部本体42と、流路44とを主に備える。
燃料収容部41には、燃料電池セル10に対応した液体燃料Fが収容されている。液体燃料Fとしては、各種濃度のメタノール水溶液や純メタノール等のメタノール燃料が挙げられる。液体燃料Fは、必ずしもメタノール燃料に限られるものではない。液体燃料Fとして、例えば、エタノール水溶液、純エタノール、プロパノール水溶液、ギ酸水溶液、ギ酸ナトリウム水溶液、酢酸水溶液、エチレングリコール水溶液、ジメチルエーテルなどの水素を含む有機系の水溶液、水素化ホウ素ナトリウム水溶液、水素化ホウ素カリウム水溶液、水素化リチウム水溶液などを用いてもよい。これらの液体燃料の中でも、メタノール水溶液は、炭素数が1で反応の際に発生するのが二酸化炭素であり、低温での発電反応が可能であり、産業廃棄物から比較的容易に製造することができる。そのため、液体燃料としてメタノール水溶液を使用するのが好ましい。いずれにしても、燃料収容部41には、燃料電池セル10に応じた液体燃料が収容される。
液体燃料Fは、燃料濃度が100wt%から数wt%までの範囲で種々の濃度のものを用いることができるが、特にメタノール水溶液の場合は、燃料濃度が60wt%以上のものを使用することが望ましい。その理由は、より少ない体積の燃料で発電することができ
るからである。
燃料供給部本体42は、供給された液体燃料Fを燃料分配層30に対して均一に供給するために、液体燃料Fを平坦に分散させるための凹部からなる燃料供給部43を備えている。この燃料供給部43は、配管等で構成される液体燃料Fの流路44を介して燃料収容部41と接続されている。燃料供給部43には、燃料収容部41から流路44を介して液体燃料Fが導入され、導入された液体燃料Fおよび/またはこの液体燃料Fが気化した気化成分は、燃料分配層30およびアノード導電層18を介して燃料電池セル10に供給される。流路44は、燃料供給部43や燃料収容部41と独立した配管に限られるものではない。例えば、燃料供給部43や燃料収容部41を積層して一体化する場合、これらを繋ぐ液体燃料Fの流路であってもよい。すなわち、燃料供給部43は、流路等を介して燃料収容部41と連通されていればよい。
燃料収容部41に収容された液体燃料Fは、重力を利用して流路44を介して燃料供給部43まで落下させて送液することができる。また、流路44に多孔体等を充填して、毛細管現象により燃料収容部41に収容された液体燃料Fを燃料供給部43まで送液してもよい。さらに、図2に示すように、流路44の一部に、ポンプ90を介在させて、燃料収容部41に収容された液体燃料Fを燃料供給部43まで強制的に送液してもよい。
このポンプ90は、燃料収容部41から燃料供給部43に液体燃料Fを単に送液する供給ポンプとして機能するものであり、燃料電池セル10に供給された過剰な液体燃料Fを循環する循環ポンプとしての機能を備えるものではない。このポンプ90を備えた燃料電池1は、燃料を循環しないことから、従来のアクティブ方式とは構成が異なり、従来の内部気化型のような純パッシブ方式とも構成が異なる、いわゆるセミパッシブ型と呼ばれる方式に該当する。なお、燃料供給手段として機能するポンプ90の種類は、特に限定されるものではないが、少量の液体燃料Fを制御性よく送液することができ、さらに小型軽量化が可能という観点から、ロータリベーンポンプ、電気浸透流ポンプ、ダイアフラムポンプ、しごきポンプ等を使用することが好ましい。ロータリベーンポンプは、モータで羽を回転させて送液するものである。電気浸透流ポンプは、電気浸透流現象を起こすシリカ等の焼結多孔体を用いたものである。ダイアフラムポンプは、電磁石や圧電セラミックスによりダイアフラムを駆動して送液するものである。しごきポンプは、柔軟性を有する燃料流路の一部を圧迫し、燃料をしごき送るものである。これらのうち、駆動電力や大きさ等の観点から、電気浸透流ポンプや圧電セラミックスを有するダイアフラムポンプを使用することがより好ましい。上記したようにポンプ90を設ける場合、ポンプ90は、制御手段(図示しない)と電気的に接続され、この制御手段によって、燃料供給部43に供給される液体燃料Fの供給量が制御される。
ここで、ポンプ90の送液量は、燃料電池1の主たる対象物が小型電子機器であることから、10μL/分〜1mL/分の範囲とすることが好ましい。送液量が1mL/分を超えると一度に送液される液体燃料Fの量が多くなりすぎて、全運転期間に占めるポンプ90の停止時間が長くなる。このため、燃料電池セル10への燃料の供給量の変動が大きくなり、その結果として出力の変動が大きくなる。これを防止するためのリザーバをポンプ90の下流側に設けてもよいが、そのような構成を適用しても燃料供給量の変動を十分に抑制することはできず、さらに装置サイズの大型化等を招いてしまう。
一方、ポンプ90の送液量が10μL/分未満であると、装置立ち上げ時のように燃料の消費量が増える際に供給能力不足を招くおそれがある。これによって、燃料電池1の起動特性等が低下する。このような点から、10μL/分〜1mL/分の範囲の送液能力を有するポンプ90を使用することが好ましい。ポンプ90の送液量は10〜200μL/分の範囲とすることがより好ましい。このような送液量を安定して実現する上でも、ポンプ90には電気浸透流ポンプやダイアフラムポンプを適用することが好ましい。
燃料分配層30は、例えば、複数の開口部31が形成された平板で構成され、アノードガス拡散層12と燃料供給部43との間に挟持される。この燃料分配層30は、液体燃料Fの気化成分や液体燃料Fを透過させない材料で構成され、具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリイミド系樹脂等で構成される。また、燃料分配層30は、例えば、液体燃料Fの気化成分と液体燃料Fとを分離し、その気化成分を燃料電池セル10側へ透過させる気液分離膜で構成されてもよい。気液分離膜には、例えば、シリコーンゴム、低密度ポリエチレン(LDPE)薄膜、ポリ塩化ビニル(PVC)薄膜、ポリエチレンテレフタレート(PET)薄膜、フッ素樹脂(例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)など)微多孔膜などが用いられる。ここで、燃料電池1において、燃料供給部43に導入された液体燃料は、燃料分配層30の複数の開口部31からアノード(燃料極)13の全面に対して供給される。このように、燃料分配層30によって、アノード(燃料極)13に供給される燃料供給量を均一化することが可能となる。
次に、上記した燃料電池1における作用について説明する。
燃料収容部41から流路44を介して燃料供給部43に供給された液体燃料Fは、液体燃料のまま、もしくは液体燃料と液体燃料が気化した気化燃料が混在する状態で、燃料分配層30およびアノード導電層18を介して燃料電池セル10のアノードガス拡散層12に供給される。アノードガス拡散層12に供給された燃料は、アノードガス拡散層12で拡散してアノード触媒層11に供給される。液体燃料としてメタノール燃料を用いた場合、アノード触媒層11で次の式(1)に示すメタノールの内部改質反応が生じる。
CH3OH+H2O → CO2+6H++6e− ……式(1)
なお、メタノール燃料として純メタノールを使用した場合には、メタノールは、カソード触媒層14で生成した水や電解質膜17中の水と上記した式(1)の内部改質反応によって改質されるか、または水を必要としない他の反応機構により改質される。また、蓄熱部材80に蓄熱された熱を利用することによって、式(1)のメタノールの内部改質反応が促進される。
この反応で生成した電子(e−)は、集電体を経由して外部に導かれ、いわゆる電気として携帯用電子機器等を動作させた後、カソード(空気極)16に導かれる。また、式(1)の内部改質反応で生成したプロトン(H+)は、電解質膜17を経てカソード(空気極)16に導かれる。カソード(空気極)16には酸化剤として空気が供給される。カソード(空気極)16に到達した電子(e−)とプロトン(H+)は、カソード触媒層14で空気中の酸素と次の式(2)に示す反応を生じ、この発電反応に伴って水が生成する。
(3/2)O2+6e−+6H+ → 3H2O ……式(2)
なお、この式(2)に示す反応によって発生した熱の一部は、蓄熱部材60に蓄熱され、燃料電池1の急激な温度上昇、特に、カソード(空気極)側における急激な温度上昇が抑制される。
このように燃料電池1では、上記した内部改質反応が円滑に行なわれ、高出力で安定した出力が得られる。
上記した本発明に係る一実施の形態の燃料電池1によれば、例えば、カソード(空気極)側に蓄熱部材60を設けて、カソード(空気極)16における反応によって発生した熱を蓄熱部材60で吸収し、アノード(燃料極)側に蓄熱部材80を設けて、蓄熱部材80が蓄熱した熱を利用して反応を促進することができる。このように、放熱および保温などの熱の管理を適確に行うことで、安定した出力を維持することができる。さらに、燃料電池1の急激な温度上昇を抑制し、使用時における安全性を向上させることができる。
例えば、携帯機器に内蔵されることを想定した小型の燃料電池においては、冷却にフィンやファンを取り付けることが難しく、一方で、熱源としてのヒータを取り付ける場合には、ヒータに電力を供給することによる出力の低下が問題となる。しかしながら、本発明に係る燃料電池1では、相変化温度の異なる複数の蓄熱部材を備えることで、上記したフィンやヒータ等を設けずに、熱の管理を適確に行うことができるとともに、安定した出力を維持することができる。
さらに本発明においては、燃料電池1を構成する前記部材の少なくとも一つを一体型のものとして、蓄熱部材を配置することができる。すなわち、カソード(空気極)16およびカソードより外側のカソード側において、前記した蓄熱部材を構成する潜熱蓄熱材料(例えば、マイクロカプセル化された有機系蓄熱材料)を、カソード触媒層14および/または保湿層50に含有させ、これらの層自体を蓄熱部材の層(潜熱蓄熱層)とすることができる。また、アノード(燃料極)13およびアノードより外側のアノード側においては、アノード触媒層11および/または燃料分配層30に前記した潜熱蓄熱材料を含有させ、これらの層自体を蓄熱部材の層(潜熱蓄熱層)とすることができる。
次に、このように蓄熱部材を一体型に配置した燃料電池1の例として、カソード触媒層14およびアノード触媒層11に潜熱蓄熱材料を含有させた構成の燃料電池1を選び、その製造方法を以下に示す。
カーボンなどの導電性担体に白金族元素の単体や白金族元素の合金を担持させて得られたアノード触媒と、前記潜熱蓄熱材料(例えば、マイクロカプセル化されたノルマルパラフィン)を、プロトン伝導性の電解質の溶液と混合し、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコールおよびグリセリン、エチレングリコールなどの分散媒を加えて粘度調整を行い、アノード触媒スラリーとする。
こうして得られたアノード触媒スラリーを、アノードガス拡散層12となるカーボンペーパやカーボンクロスなどの導電性多孔質基材の上に、吸引ろ過法、スプレー法、ロールコータ法、バーコータ法などを用いて塗布し乾燥させて、アノード触媒層11を形成する。このようにしてアノードガス拡散層12上にアノード触媒層11が形成されたものがアノード13となる。
また、前記アノード触媒と同様にして製造されたカソード触媒と、前記潜熱蓄熱材料(例えば、マイクロカプセル化されたノルマルパラフィン)を、プロトン伝導性の電解質の溶液と混合し、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコールおよびグリセリン、エチレングリコールなどの分散媒を加えて粘度調整を行い、カソード触媒スラリーとする。
次いで、得られたカソード触媒スラリーを、カソードガス拡散層15となるカーボンペーパやカーボンクロスなどの導電性多孔質基材の上に、吸引ろ過法、スプレー法、ロールコータ法、バーコータ法などを用いて塗布し乾燥させて、カソード触媒層14を形成する。こうしてカソードガス拡散層15上にカソード触媒層14が形成されたものがカソード16となる。
次に、こうして得られたアノード13のアノード触媒層11とカソード16のカソード触媒層14との間に、プロトン伝導性の電解質膜17を挟み込んだ後、これらをロールまたはプレスによって熱圧着することにより、燃料電池セル10を得る。さらに、この燃料電池セル10にアノード導電層18およびカソード導電層19を積層する。そして、アノード導電層18の外側に燃料分配層30および燃料供給機構40を配置し、カソード導電層19の外側に保湿層50、表面カバー70を順に重ね合わせて一体化することにより、燃料電池1を製造することができる。
このように、蓄熱部材を他の燃料電池構成部材と一体型のものとして配置する構成では、シート状などの蓄熱部材を別に配置する構成に比べて、製造の際の工程追加を必要とせず、また燃料電池全体の厚さや体積を増大させることがないという利点がある。
次に、本発明に係る燃料電池が優れた出力特性および温度特性を有することを実施例1〜実施例3、比較例1に基づいて説明する。
(実施例1)
実施例1で使用した燃料電池は、図2に示した燃料電池1において、蓄熱部材80を設けずに、蓄熱部材60のみを設けた構成としたものであるので、図2を参照して説明する。
まず、燃料電池セル10の作製方法について説明する。
アノード用触媒粒子(Pt:Ru=1:1)を担持したカーボンブラックに、プロトン伝導性樹脂としてパーフルオロカーボンスルホン酸溶液と、分散媒として水およびメトキシプロパノールを添加し、アノード用触媒粒子を担持したカーボンブラックを分散させてペーストを調製した。得られたペーストをアノードガス拡散層12としての多孔質カーボンペーパ(40mm×30mmの長方形)に塗布することにより、厚さが100μmのアノード触媒層11を得た。
カソード用触媒粒子(Pt)を担持したカーボンブラックに、プロトン伝導性樹脂としてパーフルオロカーボンスルホン酸溶液と、分散媒として水およびメトキシプロパノールを添加し、カソード用触媒粒子を担持したカーボンブラックを分散させてペーストを調製した。得られたペーストをカソードガス拡散層15としての多孔質カーボンペーパに塗布することにより、厚さが100μmのカソード触媒層14を得た。なお、アノードガス拡散層12と、カソードガス拡散層15とは、同形同大であり、これらのガス拡散層に塗布されたアノード触媒層11およびカソード触媒層14も同形同大である。
上記したように作製したアノード触媒層11とカソード触媒層14との間に、電解質膜17として厚さが30μmで、含水率が10〜20重量%のパーフルオロカーボンスルホン酸膜(商品名:nafion膜、デュポン社製)を配置し、アノード触媒層11とカソード触媒層14とが対向するように位置を合わせた状態でホットプレスを施すことにより、燃料電池セル10を得た。
続いて、この燃料電池セル10を、複数の開孔を有する金箔で挟み、アノード導電層18およびカソード導電層19を形成した。なお、電解質膜17とアノード導電層18との間、電解質膜17とカソード導電層19との間には、それぞれゴム製のOリング20を挟持してシールを施した。
また、保湿層50として、厚さが500μmで、透気度が2秒/100cm3(JIS P−8117に規定の測定方法による)で、透湿度が4000g/(m2・24h)(JIS L−1099 A−1に規定の測定方法による)のポリエチレン製多孔質フィルムを用いた。
この保湿層50の上に、蓄熱部材60として、マイクロカプセル化された有機系蓄熱材料を樹脂に混合した、相変化温度が40℃で厚さが1mmの蓄熱シートを設置した。この蓄熱シートには、空気取り入れのための空気導入口(直径3.6mmの円形、口数35個)が形成されている。
この蓄熱部材60の上に、空気取り入れのための空気導入口71(直径3.6mmの円形、口数35個)が形成された厚さが1mmのステンレス板(SUS304)を配置して表面カバー70とした。
上記したように作製された燃料電池セル10を用いて、燃料電池1を作製した。液体燃料Fとして、純度99.9重量%の純メタノールを使用し、ポンプ90によって純メタノールを燃料供給部43に供給した。また、カソード(空気極)側の保湿層50の直下で、カソード(空気極)16の集電体となる金箔の表面温度が45℃より高温となったときにはポンプ90を停止し、45℃以下ではポンプ90を作動した。
そして、温度が25℃、相対湿度が50%の環境の下、燃料電池1の出力電圧が0.3Vで一定になるように燃料電池1を作動させた。
上記した条件の下、カソード(空気極)側の保湿層50の直下で、カソード(空気極)16の集電体となる金箔の表面であり、電極全体の中心部にあたる長辺方向に20mm、短辺方向に15mmの位置の温度の時間的変化を計測した。さらに、燃料電池1の出力密度(mW/cm2)の時間的変化を計測した。ここで、燃料電池1の出力密度(mW/cm2)とは、燃料電池1に流れる電流密度(発電部の面積1cm2当りの電流値(mA/cm2))に燃料電池1の出力電圧を乗じたものである。また、発電部の面積とは、アノード触媒層11とカソード触媒層14とが対向している部分の面積である。本実施例では、アノード触媒層11とカソード触媒層14の面積が等しく、かつ完全に対向しているので、発電部の面積はこれらの触媒層の面積に等しい。
図3は、実施例1および後述する比較例1における、カソード(空気極)側の保湿層50の直下で、カソード(空気極)16の集電体となる金箔の表面であり、電極全体の中心部にあたる長辺方向に20mm、短辺方向に15mmの位置における温度の時間的変化および燃料電池1の出力密度の時間的変化の計測結果を示す図である。
(実施例2)
実施例2では、図2に示した燃料電池1において、蓄熱部材60を設けずに、蓄熱部材80のみを設けた燃料電池1を使用した。この燃料電池1は、蓄熱部材60を設けずに、蓄熱部材80のみを設けた構成以外は、実施例1で使用した燃料電池1と同じ構成である。
図2に示すように、この燃料電池1では、マイクロカプセル化された有機系蓄熱材料を樹脂に混合した、相変化温度が30℃で厚さが1mmの蓄熱シートを、燃料供給部本体42の周囲、すなわち底面および側面を覆うように設置した。この蓄熱シートを設置することで、燃料供給部本体42の温度が30℃前後に保たれた。
また、カソード(空気極)側の保湿層50の直下で、カソード(空気極)16の集電体となる金箔の表面であり、電極全体の中心部にあたる長辺方向に20mm、短辺方向に15mmの位置における温度の時間的変化および燃料電池1の出力密度の時間的変化の計測方法および計測条件は、実施例1における計測方法および計測条件と同じである。
図4は、実施例2および後述する比較例1における、カソード(空気極)側の保湿層50の直下で、カソード(空気極)16の集電体となる金箔の表面であり、電極全体の中心部にあたる長辺方向に20mm、短辺方向に15mmの位置における温度の時間的変化および燃料電池1の出力密度の時間的変化の計測結果を示す図である。
(実施例3)
実施例3では、図2に示した燃料電池1と同じ構成を有する燃料電池1を使用した。この燃料電池1は、実施例1で使用した蓄熱部材60および実施例2で使用した蓄熱部材80の双方の蓄熱部材を備え、それ以外の構成は実施例1で使用した燃料電池1と同じ構成である。
また、空気極側の保湿層50の直下で、空気極の集電体となる金箔の表面であり、電極全体の中心部にあたる長辺方向に20mm、短辺方向に15mmの位置における温度の時間的変化および燃料電池1の出力密度の時間的変化の計測方法および計測条件は、実施例1における計測方法および計測条件と同じである。
図5は、実施例3および後述する比較例1における、カソード(空気極)側の保湿層50の直下で、カソード(空気極)16の集電体となる金箔の表面であり、電極全体の中心部にあたる長辺方向に20mm、短辺方向に15mmの位置における温度の時間的変化および燃料電池1の出力密度の時間的変化の計測結果を示す図である。
(比較例1)
比較例1で使用した燃料電池1は、実施例1で使用した燃料電池1における蓄熱部材60を備えない以外は、実施例1で使用した燃料電池1と同じ構成である。
また、カソード(空気極)側の保湿層50の直下で、カソード(空気極)16の集電体となる金箔の表面であり、電極全体の中心部にあたる長辺方向に20mm、短辺方向に15mmの位置における温度の時間的変化および燃料電池1の出力密度の時間的変化の計測方法および計測条件は、実施例1における計測方法および計測条件と同じである。
なお、比較例1におけるカソード(空気極)側の保湿層50の直下で、カソード(空気極)16の集電体となる金箔の表面であり、電極全体の中心部にあたる長辺方向に20mm、短辺方向に15mmの位置における温度の時間的変化および燃料電池1の出力密度の
時間的変化の計測結果は、上記したように各実施例における計測結果とともに、図3〜図5に示されている。
(実施例1〜実施例3、比較例1のまとめ)
図3に示すように、実施例1におけるカソード(空気極)側の保湿層50の直下で、カソード(空気極)16の集電体となる金箔の表面であり、電極全体の中心部にあたる長辺方向に20mm、短辺方向に15mmの位置における温度の変化は、表面温度が40℃付近から鈍くなり、その後46℃程度の均一な温度に保たれ、カソード(空気極)16の表面が過剰に加熱されるのを防止できることがわかった。また、出力密度も、表面温度と同様に、変動が非常に小さく、安定した出力が得られることがわかった。一方、実施例1における計測結果に比べて、比較例1におけるカソード(空気極)16の集電体である金箔の表面温度および燃料電池1の出力密度ともに、大きく変動し安定性に欠けることがわかった。特に、カソード(空気極)16の集電体である金箔の表面温度においては、温度が55℃を超える状態もあり、カソード(空気極)16の表面が過剰に加熱されることが明らかとなった。
図4に示すように、実施例2におけるカソード(空気極)側の保湿層50の直下で、カソード(空気極)16の集電体となる金箔の表面であり、電極全体の中心部にあたる長辺方向に20mm、短辺方向に15mmの位置における温度は、比較例1における同一箇所における温度よりも、過剰な上昇が抑えられることがわかった。また、時間の経過に伴って生じる出力密度の低下は、実施例2の方が比較例1よりも小さいことがわかった。そこで、計測後、比較例1で使用した燃料電池1を分解したところ、燃料供給部43に10wt%程度のメタノール水溶液が残留していた。一方、実施例2で使用した燃料電池1を分解したところ、燃料供給部43にほとんど液体は残存していなかった。
図5に示すように、実施例3におけるカソード(空気極)側の保湿層50の直下で、カソード(空気極)16の集電体となる金箔の表面であり、電極全体の中心部にあたる長辺方向に20mm、短辺方向に15mmの位置における温度は、比較例1における同一箇所における温度よりも、過剰な上昇が抑えられることがわかった。また、時間の経過に伴って生じる出力密度の低下は、実施例3の方が比較例1よりも小さいことがわかった。
なお、本発明は液体燃料を使用した各種の燃料電池に適用することができる。また、燃料電池の具体的な構成や燃料の供給状態等も特に限定されるものではなく、燃料電池セルに供給される燃料の全てが液体燃料の蒸気、すべてが液体燃料、または一部が液体状態で供給される液体燃料の蒸気等、種々形態に本発明を適用することができる。実施段階では本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。さらに、上記実施形態に示される複数の構成要素を適宜に組み合わせたり、また実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除する等、種々の変形が可能である。本発明の実施形態は本発明の技術的思想の範囲内で拡張もしくは変更することができ、この拡張、変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれるものである。
1…燃料電池、10…燃料電池セル、11…アノード触媒層、12…アノードガス拡散層、13…アノード(燃料極)、14…カソード触媒層、15…カソードガス拡散層、16…カソード(空気極)、17…電解質膜、18…アノード導電層、19…カソード導電層、20…Oリング、30…燃料分配層、31…開口部、40…燃料供給機構、41…燃料収容部、42…燃料供給部本体、43…燃料供給部、44…流路、50…保湿層、60、80…蓄熱部材、70…表面カバー、71…空気導入口。