JP2009092030A - スタータ - Google Patents
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Abstract
【解決手段】二組の減速機に用いられる二つのインターナルギヤ25、29のどちらか一方と機械的に係合して、その一方のインターナルギヤの回転を規制すると共に、他方のインターナルギヤの回転を許容するギヤ切替部材34を有し、このギヤ切替部材34は、ヨーク36を介して衝撃吸収機構8の回転摩擦板39に連結されている。これにより、エンジン側からスタータの出力軸3に過大な衝撃が伝達されると、インターナルギヤ25またはインターナルギヤ29に係合するギヤ切替部材34からヨーク36を介して回転摩擦板39に回転荷重が伝達される。その結果、回転摩擦板39が摩擦力に抗して回転することにより、過大な衝撃を緩和でき、スタータの動力伝達系を過大な衝撃から保護できる。
【選択図】図2
Description
一段の減速比は、エンジンのフリクションが最も大きくなるスタータの最低使用温度条件(概ね−20℃以下)における必要トルクから決められることが一般的である。このため、エンジンのフリクションが小さくなる常温での始動時には、モータの必要トルクが小さく、モータの性能曲線上の作動点が軽負荷側に移って出力が低下することにより、回転数が大きく上昇しない。
この減速比を二段に切り替えるための手段として、特許文献2、3に示される従来技術がある。
一方、特許文献3には、異なる減速比を有する二組の遊星歯車機構を設け、その遊星歯車機構のインターナルギヤを固定するために、インターナルギヤの外周をブレーキバンドにより締め付けて制動を掛ける方法が記載されている。
しかし、二つのインターナルギヤに対する制動および制動の解除を行うために2本のブレーキバンドが必要であり、その2本のブレーキバンドをどの様に操作するのか明らかではない。また、ブレーキバンドを操作するための駆動手段も開示されていないため、特許文献3に記載された公知技術を実際のスタータに適用することは困難である。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、減速比を二段に切り替えることができ、且つ、低減速比側が「1」を超える二組の遊星歯車減速機を用いることにより、低温時での良好なエンジン始動性を確保でき、且つ、常温時での始動時間を短縮できるスタータを提供することにある。更には、前記スタータの動力伝達系を過大な衝撃から保護するための衝撃吸収機構をコンパクトに構成できる構造を提供することにある。
本発明は、回転力を発生するモータと、このモータの電機子軸上に並設され、異なる減速比を有する二組の遊星歯車減速機と、二組の減速機のうち、どちらか一方の減速機を選択して減速比を切り替える減速比切替手段と、この減速比切替手段により選択された減速機を介してモータの駆動トルクが伝達される出力軸と、この出力軸の外周に配置され、エンジンのリングギヤに噛み合うピニオンギヤと、エンジン側から過大な衝撃が加わった時に、その過大な衝撃を吸収する衝撃吸収機構とを備え、減速機により増幅されたモータの駆動トルクをピニオンギヤからリングギヤに伝達してエンジンを始動させるスタータであって、減速比切替手段は、二組の減速機に用いられる二つのインターナルギヤのどちらか一方と機械的に係合して、その一方のインターナルギヤの回転を規制すると共に、他方のインターナルギヤの回転を許容するギヤ切替部材を有し、このギヤ切替部材は、二つのインターナルギヤの外周に同軸状に配設されると共に、軸方向に移動可能に設けられ、且つ、衝撃吸収機構を介して回転規制されており、ギヤ切替部材を軸方向に移動させて回転規制するインターナルギヤを切り替えることにより減速比を変更することを特徴とする。
さらに、ギヤ切替部材は、衝撃吸収機構を介して回転規制されているので、ギヤ切替部材に係合するインターナルギヤに過大な衝撃が加わった時に、衝撃吸収機構により衝撃を吸収できるので、減速機を過大な衝撃から保護できる。また、減速機に加わる衝撃値を低減できるので、二組の減速機に使用される減速ギヤのモジュールを小さくすることが可能であり、特に、外径の小型化を図ることができる。
請求項1に記載したスタータにおいて、二つのインターナルギヤのうち、軸方向モータ側に配置される第1のインターナルギヤには、軸方向反モータ側の外周に凹凸部が形成され、軸方向反モータ側に配置される第2のインターナルギヤには、軸方向モータ側の外周に凹凸部が形成され、ギヤ切替部材の内周には、第1のインターナルギヤに形成された凹凸部に係合可能な第1の凹凸部と、第2のインターナルギヤに形成された凹凸部に係合可能な第2の凹凸部とが形成され、ギヤ切替部材を軸方向モータ側へ移動させることにより、第1の凹凸部が第1のインターナルギヤの凹凸部に係合して第1のインターナルギヤの回転が規制され、ギヤ切替部材を軸方向反モータ側へ移動させることにより、第2の凹凸部が第2のインターナルギヤの凹凸部に係合して第2のインターナルギヤの回転が規制されることを特徴とする。
これに対し、本発明では、第1のインターナルギヤと第2のインターナルギヤとが軸方向に向かい合う側の外周にそれぞれ凹凸部が形成されるので、第1の凹凸部と第2の凹凸部とを軸方向に近接して形成することができ、ギヤ切替部材の軸方向長さを短くすることが可能である。
請求項1または2に記載したスタータにおいて、ギヤ切替部材は、第1の凹凸部と第2の凹凸部とが軸方向に連続して一体に設けられていることを特徴とする。
この場合、第1の凹凸部と第2の凹凸部とを一体に設けることにより、加工工数を低減でき、コスト低減に寄与できる。
請求項1〜3に記載した何れかのスタータにおいて、二つのインターナルギヤは、軸方向に対向する両者の端面同士が相対回転自在に凹凸嵌合していることを特徴とする。
この場合、二つのインターナルギヤの軸心を一致させることができるので、ギヤ切替部材による二つのインターナルギヤの切り替えをスムーズに行うことが可能である。
請求項1〜4に記載した何れかのスタータにおいて、二つのインターナルギヤのうち、少なくとも一方は、樹脂材料により構成されていることを特徴とする。
二つのインターナルギヤのうち、どちらか一方は、ギヤ切替部材との係合が解除されて空転するため、インターナルギヤに質量の小さい樹脂材料を用いることで、空転するインターナルギヤの回転アンバランスによる影響を小さくでき、振動を抑制できる。
請求項1〜5に記載した何れかのスタータにおいて、減速比切替手段は、ギヤ切替部材を軸方向に移動させるための電磁駆動手段を備え、この電磁駆動手段は、通電時に電磁石を形成し、その電磁石の磁力を利用してギヤ切替部材を軸方向の一方に移動させる電磁コイルと、この電磁コイルが発生する磁束を通すためのヨークと、電磁コイルへの通電が停止して電磁石の磁力が消滅した時に、ギヤ切替部材を軸方向の他方へ押し戻すためのリターンスプリングとを有し、電磁コイルは、二つのインターナルギヤのうち、軸方向モータ側に配置される第1のインターナルギヤのモータ側、または、軸方向反モータ側に配置される第2のインターナルギヤの反モータ側に近接して配設されていることを特徴とする。
さらに、その小型化された電磁コイルをインターナルギヤの軸方向に近接して配置することにより、電磁コイルを使用することによる径方向の大型化を抑制できる。
請求項6に記載したスタータにおいて、ギヤ切替部材は、電磁石に吸引される強磁性体により構成されていることを特徴とする。
この場合、電磁石の吸引力によってギヤ切替部材を直接駆動できるので、部品点数を少なくでき、構造の簡素化を図ることが可能である。
請求項6または7に記載したスタータにおいて、電磁コイルは、第2のインターナルギヤの反モータ側に近接して配設され、ヨークは、第2のインターナルギヤと電磁コイルとの間を径方向に配設されるリング状磁路部を有し、ギヤ切替部材は、リング状磁路部の外周を軸方向に延設された円筒状鉄心部を有し、この円筒状鉄心部の内周部がリング状磁路部の外周部に凹凸係合して、両者の相対回転が規制され、且つ、軸方向には移動可能に設けられていることを特徴とする。
また、円筒状鉄心部の内周部とリング状磁路部の外周部とを凹凸係合させることにより、円筒状鉄心部の内周面とリング状磁路部の外周面との対向面積が大きくなるため、磁気抵抗が減少して、電磁コイルの吸引力を向上できる。
請求項8に記載したスタータにおいて、ヨークは、リング状磁路部の内周から電磁コイルの内周側を軸方向反モータ方向に延設される円筒状磁路部を有し、電磁コイルの軸方向反減速機側には、周方向に回転規制され、且つ、軸方向に移動不能に固定されたフレーム部材が配置されると共に、このフレーム部材の径方向内周には、軸方向モータ側へ円筒状に延設されて、その内周に配置される軸受を介して出力軸の外周を回転自在に支持する軸受部が一体に設けられ、衝撃吸収機構は、軸受部の外周と円筒状磁路部の内周との間に生じる空間に配設されていることを特徴とする。
請求項9に記載したスタータにおいて、衝撃吸収機構は、フレーム部材に対し回転可能に配置され、且つ、自身の外周部が円筒状磁路部の内周部に凹凸係合して回転規制される回転摩擦板と、この回転摩擦板と軸方向に重ね合わされ、且つ、フレーム部材に回転規制される固定摩擦板と、フレーム部材との間に回転摩擦板と固定摩擦板とを挟み込んで、軸方向に押圧する押圧手段とを有し、回転摩擦板の滑りトルクを超える過大な衝撃が、ギヤ切替手段に係合するインターナルギヤに加わった時に、回転摩擦板が摩擦力に抗して滑る(回転する)ことにより過大な衝撃を吸収することを特徴とする。
請求項10に記載したスタータにおいて、衝撃吸収機構は、回転摩擦板と固定摩擦板とを、それぞれ複数枚ずつ使用し、両摩擦板を1枚毎に交互に重ね合わせて構成されることを特徴とする。
回転摩擦板と固定摩擦板とを、それぞれ複数枚ずつ使用する、つまり、両摩擦板の枚数を増やすことにより、衝撃吸収能力の大きな衝撃吸収機構を構成できる。また、回転摩擦板と固定摩擦板の枚数を増やした場合でも、衝撃吸収機構が径方向に大型化することは無く、両摩擦板を板厚方向(軸方向)に重ね合わせているので、軸方向の体格が大幅に拡大することもなく、衝撃吸収能力の大きな衝撃吸収機構をコンパクトに構成できる。
請求項6〜11に記載した何れかのスタータにおいて、減速比切替手段は、電磁コイルの非通電時に、二組の減速機のうち、低減速比側の減速機に用いられるインターナルギヤにギヤ切替部材を係合させて、その低減速比側のインターナルギヤの回転を規制し、電磁コイルの通電時に、高減速比側の減速機に用いられるインターナルギヤにギヤ切替部材を係合させて、高減速比側のインターナルギヤの回転を規制することを特徴とする。
これにより、電磁コイルへの通電と通電停止(非通電)に応じて、異なる二つの減速比(低減速比と高減速比)を切り替えて使用できる。
請求項6〜12に記載した何れかのスタータにおいて、減速比切替手段は、電磁コイルの非通電時に、二組の減速機のうち、使用頻度の多い側の減速機に用いられるインターナルギヤにギヤ切替部材を係合させて、使用頻度の多い側のインターナルギヤの回転を規制し、電磁コイルの通電時に、使用頻度の少ない側の減速機に用いられるインターナルギヤにギヤ切替部材を係合させて、使用頻度の少ない側のインターナルギヤの回転を規制することを特徴とする。
これにより、電磁コイルへの通電に要する電気エネルギーを最小限に抑えることが可能である。
請求項12または13に記載したスタータにおいて、電磁駆動手段は、電磁コイルの通電および通電停止を制御する通電制御手段を有し、この通電制御手段は、外気温度が0℃より高い時に電磁コイルを非通電とし、外気温度が0℃以下の時に電磁コイルに通電することを特徴とする。
この場合、外気温度に応じて減速比を切り替えて使用できる。つまり、外気温度が0℃より高い時は、低減速比側の減速機を使用することにより、スタータの駆動回転数が上昇して、エンジン始動時間の短縮を図ることが可能である。一方、外気温度が0℃以下の時は、高減速比側の減速機を使用することにより、エンジンのフリクションが大きくなっても、良好なエンジン始動性を確保できる。
本実施例のスタータ1は、図1に示す様に、回転力を発生するモータ2と、このモータ2の回転を減速して出力軸3に伝達する二組の減速装置(後述する)と、この減速装置の減速比を切り替えるための減速比切替手段(後述する)と、出力軸3の外周にクラッチ4と一体に配置されるピニオンギヤ5と、モータ2の通電回路に設けられるメイン接点(図示せず)を開閉すると共に、シフトレバー6を介してクラッチ4とピニオンギヤ5を一体に軸方向に移動させる働きを有する電磁スイッチ7と、スタータ1の動力伝達系を過大な衝撃から保護するための衝撃吸収機構8(図8参照)と、スタータ1をエンジン側に固定するフロントハウジング9等より構成される。
モータ2は、電機子2aに通電される電流を回転位相に応じて切り替えるための整流子とブラシ(図示せず)を有する周知の整流子電動機である。
電機子2aは、回転力を出力する電機子軸2bを有し、この電機子軸2bの反整流子側(図1の左側)の先端部が、出力軸3のモータ側端部に凹設された空洞部の内周に軸受10を介して相対回転自在に挿入され、電機子軸2bの後端部が、エンドフレーム11に保持された軸受(図示せず)により回転自在に支持されている。
クラッチ4は、出力軸3の外周にヘリカルスプライン嵌合して、エンジン始動時に出力軸3の回転をピニオンギヤ5に伝達する。また、ピニオンギヤ5がエンジンによって回された時、つまり、ピニオンギヤ5の回転速度が出力軸3の回転速度を上回ると、ピニオンギヤ5の回転が出力軸3に伝わらない様に、両者間の動力伝達を遮断する一方向クラッチとして構成されている。
電磁スイッチ7は、始動スイッチ(図示せず)の閉操作によってバッテリから通電されるスイッチコイル(図示せず)と、このスイッチコイルの内周側を可動するプランジャ15とを有し、スイッチコイルへの通電によって電磁石が形成されると、その電磁石にプランジャ15が吸引されてメイン接点を閉操作する。また、スイッチコイルへの通電が停止して吸引力が消滅すると、図示しないスプリングに蓄えられた反力によりプランジャ15が押し戻されてメイン接点を開操作する。
シフトレバー6は、レバーホルダ18により回動自在に支持されるレバー支点部6aを有し、このレバー支点部6aより一端側のレバー端部が、電磁スイッチ7のプランジャ15に取り付けられたシフト用ロッド19に連結され、レバー支点部6aより他端側のレバー端部が、クラッチ4に係合して、プランジャ15の動きをクラッチ4に伝達する働きを有する。
減速装置は、図2に示す様に、電機子軸2bに形成された第1のサンギヤ20を中心に構成される第1の遊星歯車減速機(第1の減速機と呼ぶ)と、同じく、電機子軸2bに形成された第2のサンギヤ21を中心に構成される第2の遊星歯車減速機(第2の減速機と呼ぶ)とを有している。なお、第1の減速機に設定される減速比を第1の減速比、第2の減速機に設定される減速比を第2の減速比と呼び、第1の減速比より第2の減速比の方が大きく設定されている。
第1のサンギヤ20と第2のサンギヤ21は、第2のサンギヤ21の方が第1のサンギヤ20より電機子軸2bの先端側(図2の左側)に形成され、且つ、第1のサンギヤ20の方が第2のサンギヤ21より歯先径が大きく、歯数が多く設けられている。
遊星ピン23、27は、出力軸3と一体に設けられた遊星キャリア30に固定され、その遊星キャリア30の周方向に遊星ピン23と遊星ピン27とが交互に配設されている。また、遊星ピン23には、遊星キャリア30と第1の遊星ギヤ24との間にスペーサ部材31が嵌め合わされ、このスペーサ部材31により、第1の遊星ギヤ24が軸方向反モータ側(遊星キャリア30側)へ移動することを規制している。
減速比切替手段は、図2に示す様に、第1のインターナルギヤ25と第2のインターナルギヤ29のどちらか一方と機械的に係合するギヤ切替部材34と、このギヤ切替部材34を軸方向に移動させるための電磁駆動手段(後述する)とを有する。
ギヤ切替部材34は、強磁性体(例えば鉄)により形成され、二つのインターナルギヤ25、29の外周に同軸状に配設されるリング形状を有し、その外周が、フロントハウジング9の円筒壁部9aの内周に嵌合して径方向の移動が規制(心出し)されると共に、軸方向に摺動可能に設けられている。また、ギヤ切替部材34は、図6に示す様に、軸方向モータ側に内径が小さく設定された回転規制部34aが設けられ、この回転規制部34aより軸方向反モータ側には、内径が大きく設定された円筒状鉄心部34bが設けられている。回転規制部34aの内周および円筒状鉄心部34bの内周には、それぞれ複数の歯部34c、34dが全周に形成されている。
電磁コイル35は、図2に示す様に、樹脂製のボビン38に巻線されて、第2のインターナルギヤ29の軸方向反モータ側に配置され、ボビン38に設けられた突起部38aを介してフレーム部材12に固定されている。
通電制御手段は、例えば、外気温度を直接または間接的に検出し、その外気温度に応じて電磁コイル35のON/OFF状態を切り替えることができる。具体的には、外気温度が0℃より高い時に電磁コイル35をOFFにし、外気温度が0℃以下の時に電磁コイル35をONにする。
リング状磁路部36bの外径部には、図7に示す様に、複数の歯部36dが全周に形成され、この歯部36dには、ギヤ切替部材34の円筒状鉄心部34bの内周に形成された歯部34dが噛み合わされて、ギヤ切替部材34との相対回転が規制されている。但し、ギヤ切替部材34の軸方向の移動は許容されている。なお、図7は、フレーム部材12に電磁コイル35とヨーク36とが組み付けられたコイルユニットの斜視図である。
一方、電磁コイル35の通電時には、リターンスプリング37の付勢力に抗してギヤ切替部材34が電磁石に吸引され、ギヤ切替部材34の回転規制部34aに形成された歯部34cが第2のインターナルギヤ29に形成された歯部29dと噛み合っている。この時、ギヤ切替部材34は、図3に示す様に、軸方向反モータ側の端面がフレーム部材12に当接した状態で静止している。
衝撃吸収機構8は、図8に示す様に、複数枚(例えば2枚)の回転摩擦板39と、複数枚(例えば2枚)の固定摩擦板40と、フレーム部材12との間に両摩擦板39、40を挟み込んで軸方向に押圧する皿ばね41等より構成され、フレーム部材12に設けられた軸受部12aの外周と、ヨーク36の円筒状磁路部36aの内周との間に生じる空間に配設されている。なお、フレーム部材12の軸受部12aは、フレーム部材12の径方向内周端から軸方向モータ側へ円筒状に延びて形成され、且つ、ヨーク36の円筒状磁路部36aと軸方向にラップする位置に設けられている。
回転摩擦板39は、図9に示す様に、径方向の中央部に丸穴39aを有するリング状に設けられ、外周に複数の凸部39bが形成されている。
なお、図10(a)は、固定摩擦板40を板厚方向の他方側(突起部40bが突き出ていない側)から見た斜視図であり、同図(b)は、固定摩擦板40を板厚方向の一方側(突起部40bが突き出ている側)から見た斜視図である。
嵌合溝40cは、周方向に隣り合う突起部40bと突起部40bとの間に形成され、突起部40bの幅狭部40b2が丁度嵌合できる大きさに形成されている。
皿ばね41は、回転摩擦板39の滑りトルクが規定値に設定された状態で、軸受部12aの端部にかしめ固定されている。
始動スイッチの閉操作により、電磁スイッチ7のスイッチコイルに通電されてプランジャ15が吸引されると、そのプランジャ15の移動に応じて、シフトレバー6を介してクラッチ4とピニオンギヤ5が一体に出力軸3上を反モータ方向(図1の左方向)へ押し出される。また、プランジャ15の移動により、メイン接点が閉じることで、バッテリからモータ2に通電されて電機子2aに回転力が生じる。電機子2aの回転は、第1の減速比または第2の減速比により減速されて出力軸3に伝達され、更に、出力軸3からクラッチ4を介してピニオンギヤ5に伝達される。このピニオンギヤ5がリングギヤに噛み合うことにより、ピニオンギヤ5からリングギヤに回転力が伝達されて、エンジンをクランキングする。
また、プランジャ15が押し戻されると、エンジン始動時と反対方向にシフトレバー6が揺動して、クラッチ4がモータ方向へ押し戻されるため、ピニオンギヤ5がリングギヤから離脱して、クラッチ4と一体に出力軸3上を後退し、所定の位置(図1に示す位置)で停止する。
a)第1の減速比を選択する場合。
電磁コイル35がOFFの状態であり、ギヤ切替部材34の回転規制部34aに形成された歯部34cと第1のインターナルギヤ25に形成された歯部25cとが噛み合っているため、第1のインターナルギヤ25の回転が規制され、第2のインターナルギヤ29の回転が許容されている(図2参照)。従って、電機子2aに発生する回転力は、第1のサンギヤ20から第1の遊星ギヤ24に伝達され、その第1の遊星ギヤ24が自転しながら第1のサンギヤ20の周囲を公転する。一方、第2の遊星ギヤ28は、第2のインターナルギヤ29の回転が規制されていない(回転が許容されている)ので、第2のサンギヤ21の回転に応じて自転するだけであり、公転することはない。
これにより、第1の遊星ギヤ24の公転が遊星キャリア30から出力軸3に伝達される。すなわち、電機子2aの回転が第1の減速比により減速されて出力軸3に伝達される。
通電制御手段からの信号により電磁コイル35がONされると、ギヤ切替部材34が電磁石に吸引され、リターンスプリング37の付勢力に抗して反モータ側へ移動する。その結果、回転規制部34aに形成された歯部34cと第1のインターナルギヤ25に形成された歯部25cとの噛み合いが解除され、回転規制部34aに形成された歯部34cと第2のインターナルギヤ29に形成された歯部29dとの噛み合いが行われる。この時、歯部34cと歯部29dとが噛み合い可能な位置、つまり、回転規制部34aに形成された歯部34c(凸部)が第2のインターナルギヤ29に形成された歯部29dと歯部29dとの間(凹部)に位置している場合は、そのまま、回転規制部34aに形成された歯部34cが第2のインターナルギヤ29に形成された歯部29dと歯部29dとの間に入り込んで、両者の噛み合いが完了する。これにより、第2のインターナルギヤ29の回転が規制され、第1のインターナルギヤ25の回転が許容される(図3参照)。
これにより、第2の遊星ギヤ28の公転が遊星キャリア30から出力軸3に伝達される。すなわち、電機子2aの回転が第2の減速比により減速されて出力軸3に伝達される。
なお、図11には、第1の減速機(第1の減速比)を用いた場合のトルクと回転数を実線グラフで示し、第2の減速機(第2の減速比)を用いた場合のトルクと回転数を破線グラフで示している。
先ず、常温(概ね5〜35℃)における作動点のトルクがTwで示される時に、第1の減速比を使用した場合の出力はP1、回転数はN1となる。また、第2の減速比を使用した場合の出力はP2、回転数はN2となる。本実施例のスタータ1では、0℃より高い温度条件において第1の減速比を使用するため、出力はP1、回転数はN1となり、第2の減速比を使用した場合より、出力および回転数が大幅に向上して、始動時間の短縮を図ることができる。
何らかの原因でエンジン側からスタータ側に過大な衝撃が入力されると、その衝撃的な回転荷重は、ピニオンギヤ5から出力軸3に伝達され、更に、出力軸3から減速装置に伝達される。この時、例えば、第1の減速比でスタータ1を作動していると、第1の遊星ギヤ24を介して第1のインターナルギヤ25に回転荷重が伝達されるため、第1のインターナルギヤ25は、出力軸3と反対方向に回転しようとする。しかし、第1のインターナルギヤ25は、ギヤ切替部材34と機械的に係合しているため、ギヤ切替部材34に回転荷重が伝達される。
本実施例のスタータ1は、ギヤ切替部材34との機械的な係合(歯部同士の噛み合い)によって、第1のインターナルギヤ25または第2のインターナルギヤ29の回転を確実に規制でき、且つ、ギヤ切替部材34を軸方向に移動させることで、回転規制するインターナルギヤ25、29を切り替えて減速比を変更できる。この構成によれば、一つのギヤ切替部材34で二つのインターナルギヤ25、29の回転規制と回転規制の解除を実施できるので、部品点数を低減でき、構造を簡素化できる。
また、二つのインターナルギヤ25、29の回転規制と回転規制の解除を行うために、ギヤ切替部材34を軸方向に移動させる構成であり、ギヤ切替部材34を径方向に動かす必要はないので、径方向の大型化を抑制できる。
また、二つのインターナルギヤ25、29のうち、どちらか一方は、ギヤ切替部材34との係合が解除されて空転するため、少なくとも一方のインターナルギヤに質量の小さい樹脂材料(例えば、ポリアミド樹脂)を用いることにより、空転する側のインターナルギヤに生じる回転アンバランスの影響を小さくでき、振動を抑制できる効果がある。
更に、小型化した電磁コイル35を第2のインターナルギヤ29の軸方向に隣接して配置することにより、径方向にスタータ1が大型化することを回避できる。
さらに、径方向に対向する円筒状鉄心部34bの内周とリング状磁路部36bの内周とにそれぞれ歯部34d、36dを形成することで、円筒状鉄心部34bの内周面とリング状磁路部36bの外周面との対向面積が大きくなるため、磁気抵抗が減少して、電磁コイル35の吸引力を向上できる。
また、外気温度が0℃より高い時に第1の減速比を選択すると、例えば、日本を初めとして、アメリカ、ヨーロッパ等、地球上の多くの地域では、第1の減速比の方が第2の減速比より使用頻度が多くなる。このため、使用頻度の多い第1の減速比を選択する時に、電磁コイル35をOFFにすることで、電磁コイル35への通電に要する電気エネルギーを最小限に抑えることが可能である。
2 モータ
2b 電機子軸
3 出力軸
5 ピニオンギヤ
8 衝撃吸収機構
12 フレーム部材
12a フレーム部材に設けられた軸受部
13 軸受
25 第1のインターナルギヤ
25c 第1のインターナルギヤに形成された歯部(凹凸部)
29 第2のインターナルギヤ
29d 第2のインターナルギヤに形成された歯部(凹凸部)
34 ギヤ切替部材(減速比切替手段)
34b ギヤ切替部材の円筒状鉄心部
34c 回転規制部の内周に形成された歯部(第1の凹凸部、第2の凹凸部)
35 電磁コイル(電磁駆動手段)
36 ヨーク(電磁駆動手段)
36a ヨークの円筒状磁路部
36b ヨークのリング状磁路部
37 リターンスプリング
39 回転摩擦板
40 固定摩擦板
41 皿ばね(押圧手段)
Claims (14)
- 回転力を発生するモータと、
このモータの電機子軸上に並設され、異なる減速比を有する二組の遊星歯車減速機と、 前記二組の減速機のうち、どちらか一方の減速機を選択して減速比を切り替える減速比切替手段と、
この減速比切替手段により選択された減速機を介して前記モータの駆動トルクが伝達される出力軸と、
この出力軸の外周に配置され、エンジンのリングギヤに噛み合うピニオンギヤと、
前記エンジン側から過大な衝撃が加わった時に、その過大な衝撃を吸収する衝撃吸収機構とを備え、
前記減速機により増幅された前記モータの駆動トルクを前記ピニオンギヤから前記リングギヤに伝達して前記エンジンを始動させるスタータであって、
前記減速比切替手段は、前記二組の減速機に用いられる二つのインターナルギヤのどちらか一方と機械的に係合して、その一方のインターナルギヤの回転を規制すると共に、他方のインターナルギヤの回転を許容するギヤ切替部材を有し、このギヤ切替部材は、前記二つのインターナルギヤの外周に同軸状に配設されると共に、軸方向に移動可能に設けられ、且つ、前記衝撃吸収機構を介して回転規制されており、前記ギヤ切替部材を軸方向に移動させて回転規制するインターナルギヤを切り替えることにより減速比を変更することを特徴とするスタータ。 - 請求項1に記載したスタータにおいて、
前記二つのインターナルギヤのうち、軸方向モータ側に配置される第1のインターナルギヤには、軸方向反モータ側の外周に凹凸部が形成され、軸方向反モータ側に配置される第2のインターナルギヤには、軸方向モータ側の外周に凹凸部が形成され、
前記ギヤ切替部材の内周には、前記第1のインターナルギヤに形成された凹凸部に係合可能な第1の凹凸部と、前記第2のインターナルギヤに形成された凹凸部に係合可能な第2の凹凸部とが形成され、
前記ギヤ切替部材を軸方向モータ側へ移動させることにより、前記第1の凹凸部が前記第1のインターナルギヤの凹凸部に係合して前記第1のインターナルギヤの回転が規制され、前記ギヤ切替部材を軸方向反モータ側へ移動させることにより、前記第2の凹凸部が前記第2のインターナルギヤの凹凸部に係合して前記第2のインターナルギヤの回転が規制されることを特徴とするスタータ。 - 請求項1または2に記載したスタータにおいて、
前記ギヤ切替部材は、前記第1の凹凸部と前記第2の凹凸部とが軸方向に連続して一体に設けられていることを特徴とするスタータ。 - 請求項1〜3に記載した何れかのスタータにおいて、
前記二つのインターナルギヤは、軸方向に対向する両者の端面同士が相対回転自在に凹凸嵌合していることを特徴とするスタータ。 - 請求項1〜4に記載した何れかのスタータにおいて、
前記二つのインターナルギヤのうち、少なくとも一方は、樹脂材料により構成されていることを特徴とするスタータ。 - 請求項1〜5に記載した何れかのスタータにおいて、
前記減速比切替手段は、前記ギヤ切替部材を軸方向に移動させるための電磁駆動手段を備え、この電磁駆動手段は、
通電時に電磁石を形成し、その電磁石の磁力を利用して前記ギヤ切替部材を軸方向の一方に移動させる電磁コイルと、
この電磁コイルが発生する磁束を通すためのヨークと、
前記電磁コイルへの通電が停止して電磁石の磁力が消滅した時に、前記ギヤ切替部材を軸方向の他方へ押し戻すためのリターンスプリングとを有し、
前記電磁コイルは、前記二つのインターナルギヤのうち、軸方向モータ側に配置される第1のインターナルギヤのモータ側、または、軸方向反モータ側に配置される第2のインターナルギヤの反モータ側に近接して配設されていることを特徴とするスタータ。 - 請求項6に記載したスタータにおいて、
前記ギヤ切替部材は、前記電磁石に吸引される強磁性体により構成されていることを特徴とするスタータ。 - 請求項6または7に記載したスタータにおいて、
前記電磁コイルは、前記第2のインターナルギヤの反モータ側に近接して配設され、
前記ヨークは、前記第2のインターナルギヤと前記電磁コイルとの間を径方向に配設されるリング状磁路部を有し、
前記ギヤ切替部材は、前記リング状磁路部の外周を軸方向に延設された円筒状鉄心部を有し、この円筒状鉄心部の内周部が前記リング状磁路部の外周部に凹凸係合して、両者の相対回転が規制され、且つ、軸方向には移動可能に設けられていることを特徴とするスタータ。 - 請求項8に記載したスタータにおいて、
前記ヨークは、前記リング状磁路部の内周から前記電磁コイルの内周側を軸方向反モータ方向に延設される円筒状磁路部を有し、
前記電磁コイルの軸方向反減速機側には、周方向に回転規制され、且つ、軸方向に移動不能に固定されたフレーム部材が配置されると共に、このフレーム部材の径方向内周には、軸方向モータ側へ円筒状に延設されて、その内周に配置される軸受を介して前記出力軸の外周を回転自在に支持する軸受部が一体に設けられ、
前記衝撃吸収機構は、前記軸受部の外周と前記円筒状磁路部の内周との間に生じる空間に配設されていることを特徴とするスタータ。 - 請求項9に記載したスタータにおいて、
前記衝撃吸収機構は、前記フレーム部材に対し回転可能に配置され、且つ、自身の外周部が前記円筒状磁路部の内周部に凹凸係合して回転規制される回転摩擦板と、この回転摩擦板と軸方向に重ね合わされ、且つ、前記フレーム部材に回転規制される固定摩擦板と、前記フレーム部材との間に前記回転摩擦板と前記固定摩擦板とを挟み込んで、軸方向に押圧する押圧手段とを有し、
前記回転摩擦板の滑りトルクを超える過大な衝撃が、前記ギヤ切替手段に係合するインターナルギヤに加わった時に、前記回転摩擦板が摩擦力に抗して滑る(回転する)ことにより過大な衝撃を吸収することを特徴とするスタータ。 - 請求項10に記載したスタータにおいて、
前記衝撃吸収機構は、前記回転摩擦板と前記固定摩擦板とを、それぞれ複数枚ずつ使用し、両摩擦板を1枚毎に交互に重ね合わせて構成されることを特徴とするスタータ。 - 請求項6〜11に記載した何れかのスタータにおいて、
前記減速比切替手段は、
前記電磁コイルの非通電時に、前記二組の減速機のうち、低減速比側の減速機に用いられるインターナルギヤに前記ギヤ切替部材を係合させて、その低減速比側のインターナルギヤの回転を規制し、
前記電磁コイルの通電時に、高減速比側の減速機に用いられるインターナルギヤに前記ギヤ切替部材を係合させて、高減速比側のインターナルギヤの回転を規制することを特徴とするスタータ。 - 請求項6〜12に記載した何れかのスタータにおいて、
前記減速比切替手段は、
前記電磁コイルの非通電時に、前記二組の減速機のうち、使用頻度の多い側の減速機に用いられるインターナルギヤに前記ギヤ切替部材を係合させて、使用頻度の多い側のインターナルギヤの回転を規制し、
前記電磁コイルの通電時に、使用頻度の少ない側の減速機に用いられるインターナルギヤに前記ギヤ切替部材を係合させて、使用頻度の少ない側のインターナルギヤの回転を規制することを特徴とするスタータ。 - 請求項12または13に記載したスタータにおいて、
前記電磁駆動手段は、前記電磁コイルの通電および通電停止を制御する通電制御手段を有し、この通電制御手段は、外気温度が0℃より高い時に前記電磁コイルを非通電とし、外気温度が0℃以下の時に前記電磁コイルに通電することを特徴とするスタータ。
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