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JP2009061540A - 非晶質炭素膜被覆工具 - Google Patents

非晶質炭素膜被覆工具 Download PDF

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Junya Okita
淳也 沖田
Hideki Moriguchi
秀樹 森口
Haruyo Fukui
治世 福井
Nobuyuki Kitagawa
信行 北川
Hirohito Yoshimura
博仁 吉村
Yoshikazu Toda
佳和 戸田
Susumu Amano
進 天野
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Sumitomo Electric Hardmetal Corp
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Abstract

【課題】ウェット加工はもちろん、軟金属などのドライ加工、セミドライ加工において、耐溶着性に優れる非晶質炭素膜被覆工具を提供する。
【解決手段】基材と、この基材の少なくとも一部を覆う非晶質炭素膜とを備える非晶質炭素膜被覆工具である。この炭素膜は、514.5nmの波長を持つアルゴンイオンレーザーを用いたラマン分光分析により得られるラマンスペクトルにおいて、波数1580cm−1付近に存在するピークと波数1390cm−1付近に存在するピークと波数1100cm−1付近に存在するピークに対してガウス関数による近似を行って近似関数を決定したときに、波数1390cm−1付近の近似関数のピーク強度(I1390)と波数1100cm−1付近の近似関数のピーク強度(I1100)との強度比(I1100/I1390)が0.15以上0.40以下である。
【選択図】図1

Description

本発明は、非晶質炭素膜が被覆された工具に関するものである。特に、耐溶着性や耐摩耗性が求められる切削工具に関するものである。
アルミ合金などの軟金属や、チタン、マグネシウム、銅といった非鉄金属、有機材料、グラファイトなど硬質粒子を含有する材料、プリント回路基板加工や鉄系材料とアルミ共削り加工など、部品の軽量化のため、近年被削材の材種の多様化が進んでいる。共削り加工とは鉄系材料とアルミ合金が一体になったものを同時に切削することをいう。
上述のような材料を切削する場合、切削工具の切れ刃部分に被削材が凝着していわゆる構成刃先が形成されやすい。その結果、切削抵抗が大きくなり、場合によっては形成された構成刃先が脱落するときに刃先が欠損するといった問題があった。このように、特定の被削材では、鉄系被削材に比べて材料硬度は低いものの、工具損傷が一層激しくなる場合がある。
さらに、近年においては、地球温暖化、ダイオキシンの問題など環境汚染に対する関心が高まる中で環境保全や省エネルギー化の観点から、切削油剤を用いないドライ加工化による切削加工が要求されている。このドライ加工化による切削加工の開発が進めば、切削油剤、クーラント装置設備および廃液処理などに要する経費をなくすことができるので、加工コストを大幅に低減できるためである。
しかし、機械加工で用いられる切削油剤は工具と被削材との間の潤滑作用、加工によって発生する熱を奪う冷却作用、切りくずを加工点から洗い出す排出作用、工作物および機械の防錆作用などがあり、これらの作用を無視して急激にドライ化を進めると、生産効率や加工精度が低下するなどの新たな問題が生じる。特に、上述のアルミニウム合金など軟金属の場合には、実際問題としてドライ加工化は全く進んでいない。そこで、水溶性油剤を噴霧状にして吹き付けるミスト切削、ごく微量の切削油剤を供給しながら切削するMQL(Minimal Quantity Lubricants)あるいは油付き水滴加工、と呼ばれるセミドライ加工法の有効性が近年注目されてきているが、まだ完全に実用化されるレベルではない。
従来から、上述の軟金属や非鉄金属さらには有機材料などを加工する場合には、ダイヤモンド被覆工具が用いられていた。しかし、ダイヤモンド被覆工具は、ダイヤモンド膜のコーティングなどの工程に必要な費用が高く、製造コストが非常に大きいため、工業的には慣用的に用いられていなかった。また、ダイヤモンドは多結晶質であり、結晶の自形のため、ダイヤモンド膜表面には、数μm以上の凹凸ができる。そのため、軟金属の加工では工具の凹凸が被削材に転写されて加工精度が落ちるため、高精度の加工を行うには、通常、コーティングした後にダイヤモンド膜の表面を研磨する必要がある。しかし、ダイヤモンドは非常に硬い材料であり、その研磨コストが問題であった。
そこで、ダイヤモンド被覆工具の代替工具として、非晶質の硬質炭素膜(DLC:ダイヤモンドライクカーボン) を被覆した非晶質炭素膜被覆工具が提案されている。この非晶質炭素膜は、非晶質であることから、平滑でかつ低摩擦係数を有し、ドライ加工に適していると考えられている。
例えば、特許文献1は、非晶質炭素膜の膜厚を刃先の最大厚みで0.05μm〜0.5μmと非常に薄く限定することで、工具切れ刃の先端での膜のチッピングを抑制し、切れ刃部分の耐凝着性能を向上させる工具を開示している。
特開2003-62706号公報
しかし、特許文献1に係る工具では、例えばアルミ鋳物材を加工した場合などでは必ずしも耐溶着性が十分ではなく、加工条件、加工形態によっては多量の溶着が発生するケースがあった。また、特許文献1に係る工具では、非晶質炭素膜の膜厚が0.5μm以下と非常に薄く設定されているため、特に高Si含有率でアブレッシブ摩耗が起こりやすいアルミダイキャスト合金を切削した場合などに工具寿命が短くなるなどの場合があった。さらに、特許文献1は、非晶質炭素膜の特徴である低摩擦特性を利用したドライ加工化については言及されてはいるものの、アルミニウム合金など軟金属の切削加工において注目されているセミドライ加工法の有効性に関する検討はなされていなかった。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、その目的の一つは、ウェット加工はもちろん、ドライ加工、セミドライ加工において、軟金属、非鉄金属、有機材料、硬質粒子を含有する材料、プリント回路基板、鉄系材料と軟金属材料との共削り加工などが可能な切削加工用の非晶質炭素膜被覆工具を提供することである。
本発明者らは、いくつかの非晶質炭素膜被覆工具を作製して、アルミダイキャスト合金を切削したところ、そのうちの多くは、すくい面に溶着が認められたが、一部の被覆工具には、ほとんど溶着が認められない場合があることに着目した。そこで、このほとんど溶着が見られない工具について、非晶質炭素膜の特性を種々分析・検討した結果、特定のラマンスペクトルを有するとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
本発明は、基材と、この基材の少なくとも一部を覆う非晶質炭素膜とを備える非晶質炭素膜被覆工具であって、514.5nmの波長を持つアルゴンイオンレーザーを用いたラマン分光分析により得られるラマンスペクトルにおいて、波数1580cm−1付近に存在するピークと波数1390cm−1付近に存在するピークと波数1100cm−1付近に存在するピークに対してガウス関数による近似を行って近似関数を決定したときに、波数1390cm−1付近の近似関数のピーク強度(I1390)と波数1100cm−1付近の近似関数のピーク強度(I1100)との強度比(I1100/I1390)が0.15以上0.40以下であることを特徴とする。
従来、非晶質炭素膜のラマンスペクトルは、波数1580cm−1付近に存在するピークと波数1390cm−1付近に存在するピークとを備えることが知られている。本発明工具の非晶質炭素膜では、さらに波数1100cm−1付近にもピークが存在するラマンスペクトルを有する。そして、ピーク強度比(I1100/I1390)を上記の特定の範囲に限定することで、高Si含有率のアルミニウム合金などを切削した場合でも、溶着を格段に低減することができる。
この工具の一態様として、前記ラマンスペクトルにおいて、波数1390cm−1付近の近似関数と基線に囲まれる面積(S1390)と、波数1100cm−1付近の近似関数と基線に囲まれる面積(S1100)との面積比(S1100/S1390)が0.06以上0.25以下であることが挙げられる。
ラマンスペクトルにおける面積(S1390)と面積(S1100)との面積比(S1100/S1390)も上記の特定の範囲に限定することで、高Si含有率のアルミニウム合金などを切削した場合でも、溶着を格段に低減することができる。
この工具の一態様として、前記非晶質炭素膜中における水素量を5原子%以下とすることが好適である。
この構成により、水素をより多く含む非晶質炭素膜に比べてsp3結合の割合が高くなることで膜の硬度を高くすることができ、工具として用いた場合に、耐摩耗性を向上させることができる。
この工具の一態様として、前記非晶質炭素膜は、グラファイトを原料とした実質的に水素を含まない雰囲気下の物理的蒸着法により形成されてなることが挙げられる。
グラファイトを原料とした実質的に水素を含まない雰囲気下の物理的蒸着法により水素量を5原子%以下、特に炭素のみからなる非晶質炭素膜を得ることができる。
この工具の一態様として、前記非晶質炭素膜表面に存在するマクロパーティクルの密度を5×105個/mm2以下とすることが好ましい。
非晶質炭素膜表面に存在するマクロパーティクル密度が小さいほど被削材の溶着が少なく、切削抵抗が小さくなる。そのため、この密度を限定することで、低い切削抵抗にて切削を行うことができ、ドライ切削やセミドライ切削を行うことができる。また、マクロパーティクルの密度が上記所定値以下の非晶質炭素膜をドリルに適用した場合、切りくずの排出性が向上し、切りくず詰まりによるドリルの折損を抑制できるので好ましい。
この工具の一態様として、前記非晶質炭素膜は、前記工具のすくい面のうち、切刃稜線から同稜線に実質的に垂直な方向に10μm以下の領域に存在せず、この領域以外で切削に関与する領域に設けられていることが好ましい。
切刃稜線からごく狭い領域に非晶質炭素膜が存在しない被覆工具とすることで、詳しい理由は特定できていないが、アルミニウム合金などでも溶着し難い工具とすることができる。
この工具の一態様として、切刃稜線近傍の非晶質炭素膜が存在する箇所において、非晶質炭素膜の最大厚みを0.05μm以上3.0μm以下とすることが好ましい。
非晶質炭素膜の最大厚みを上記のように特定することで、工具の耐溶着性、耐摩耗性を実現しながら、剥離しにくい非晶質炭素膜とすることができる。この最大厚みが0.05μm未満では被覆の効果が得られにくく、3.0μm超では膜の内部応力が高くなり、剥離するおそれがある。
この工具の一態様として、前記ラマンスペクトルにおいて、波数1580cm−1付近の近似関数のピーク強度(I1580)と波数1390cm−1付近の近似関数のピーク強度(I1390)との強度比(I1390/I1580)を0.20以上0.35以下とすることが挙げられる。
強度比(I1390/I1580)を上記の範囲に特定することで、さらに耐溶着性を高めることができる。
この工具の一態様として、前記非晶質炭素膜が基材に直接被覆されていることが挙げられる。
基材に直接非晶質炭素膜を形成すれば、基材と非晶質炭素膜との間に界面層を形成する必要がない。
この工具の一態様として、前記基材と非晶質炭素膜との間に界面層を備えることが好ましい。この界面層は、周期律表IVa、Va、VIa、IIIb族元素およびC以外のIVb族元素よりなる群から選択される少なくとも1種以上の元素、またはこれら元素群から選択される少なくとも1種以上の元素の炭化物で構成する。そして、界面層の厚さは、0.5nm以上10nm未満とする。
界面層を設けることで、非晶質炭素膜と基材の密着性を向上させることができる。
本発明非晶質炭素膜被覆工具によれば、ラマンスペクトルの波数1100cm−1付近に特定強度比のピークを有する非晶質炭素膜とすることで、高Si含有率のアルミニウム合金などを切削した場合でも、溶着を格段に低減することができる。そのため、ウェット切削だけでなく、セミドライ切削またはドライ切削を行うことができる。
以下に本発明をより詳しく説明する。
[基材]
本発明工具の基材には、鋼、WC基超硬合金、サーメット、ダイヤモンド焼結体、cBN焼結体、窒化珪素焼結体、酸化アルミニウムと炭化チタンとの焼結体、その他、各種セラミックスなどが利用できる。鋼では、高速度鋼、炭素工具鋼、合金工具鋼が好適である。WC基超硬合金は、炭化タングステン(WC)を主成分とする硬質相と、コバルトなどの鉄族金属を主成分とする結合相とからなる。非晶質炭素膜がWC基超硬合金基材から剥離することなく切削性能を安定化させるためには、コバルト含有量を12質量%以下とすることが好ましい。更に好ましくはWC基超硬合金基材のコバルト含有量を3質量%以上7質量%以下とする。サーメットは、炭化チタン(TiC)や炭窒化チタン(TiCN)などのチタン化合物をニッケルやコバルトなどの鉄族金属で結合したものが利用できる。ダイヤモンド焼結体は、ダイヤモンドを40体積%以上含むものが好ましい。ダイヤモンド焼結体のダイヤモンド以外の材質としては、鉄族金属、周期律表IVa、Va、VIa族元素の炭化物および炭窒化物から選択される1種以上、珪素、炭化珪素などが挙げられる。cBN焼結体は、cBNを30体積%以上含むものが好ましい。cBN焼結体のcBN以外の材質には、周期律表IVa、Va、VIa族元素の窒化物、硼化物、炭化物ならびにこれらの固溶体からなる群から選択される少なくとも1種、アルミニウム化合物、鉄族金属などが挙げられる。窒化珪素焼結体は、窒化珪素を90体積%以上含むものが好ましい。この窒化珪素焼結体において残部は、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化イットリウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、希土類、TiN、TiCの少なくとも1種から選ばれた結合材が利用できる。酸化アルミニウムと炭化チタンとの焼結体は、酸化アルミニウムを20〜80体積%、炭化チタンを15〜75体積%含むものが好ましい。この焼結体において残部は、Mg、Y、Ca、Zr、Ni、Ti、TiNの酸化物の少なくとも1種から選ばれた結合材を利用することができる。
[非晶質炭素膜]
非晶質炭素膜は、硬質炭素膜、ダイヤモンドライク炭素膜、DLC膜、a−C:H膜、i−炭素膜などと一般に呼ばれるものを含む。そして、本発明の非晶質炭素膜は、以下に説明する特性を単独でまたは複合して備える。
<ラマンスペクトル>
本発明工具の非晶質炭素膜のラマンスペクトルは、514.5nmの波長を持つアルゴンイオンレーザーを用いたラマン分光分析により得られたものである。
図1は、本発明工具の非晶質炭素膜のラマンスペクトルの一例である。このスペクトルからわかるように、波数1580cm−1付近と、波数1390cm−1付近と、波数1100cm−1付近に3つのピークが存在する。
このようなスペクトルを3つに分離するために、まずスペクトル波形からバックグラウンドを除去する。次に、スペクトルが3つのガウス関数を加算したものと仮定して、非線形最小二乗法で近似し、スペクトルを3つのピークを有するガウス関数に分離する。その際、まず1390cm-1と1580cm-1の各々をピークとするガウス関数でカーブフィッティングを行い、次に、それらのガウス関数の加算値とスペクトルとの差分に対して1100cm-1のピークでカーブフィッティングを行う。スペクトルにカーブフィッティングを行う際の各ピークを有するガウス関数の組み合わせは複数存在するため、ここでは上記の順にカーブフィッティングを行うこととする。
各ピークを有するガウス関数も合わせて図1に示す。1100cm−1付近に中心を持つピークの高さをI1100で示し、1390cm−1付近に中心を持つピークの高さをI1390で示し、1580cm−1付近に中心を持つピークの高さをI1580で示す。同様に、それぞれのガウス関数を積分した値、つまり各ガウス関数と基線(バックグラウンド)に囲まれる面積を、例えばS1100やS1390などのように表現する。これら各ピークを有するガウス関数は、波数1580cm−1付近のピークを有するガウス関数、波数1390cm−1付近のピークを有するガウス関数、波数1100cm−1付近のピークを有するガウス関数の順にピークが小さくなることがわかる。そして、このうち、ピーク強度(I1390)とピーク強度(I1100)との強度比(I1100/I1390)が0.15以上0.40以下であれば、CVDダイヤモンドコーティング工具や、PCD(Polycrystalline
Diamond;多結晶ダイヤモンド焼結体)工具に匹敵する耐溶着特性を有する非晶質炭素膜被覆工具を得ることができることがわかった。より好ましい強度比(I1100/I1390)は0.2以上0.28以下である。また、ガウス関数と基線で囲まれる面積比(S1100/S1390)が0.06以上0.25以下の場合にも同様に耐溶着特性に優れる非晶質炭素膜被覆工具を得ることができることがわかった。波数1100cm−1付近のピークが高いと、非晶質炭素膜がsp3結合のナノクラスター構造を多く含むと考えられる。より好ましい面積比(S1100/S1390)は0.08以上0.15以下である。
次に、本発明工具の非晶質炭素膜のラマンスペクトルの一例と、従来工具(特開2003-62706号公報の発明品相当)の非晶質炭素膜のラマンスペクトルの一例とを比較して図2に示す。図2(A)が本発明工具、同(B)が従来工具に係る非晶質炭素膜のラマンスペクトルである。この両者のスペクトルを破線円部に注目して比較すれば、本発明工具の非晶質炭素膜のラマンスペクトルは、波数1100cm−1付近にピークを有することがわかる。
さらに、1580cm−1付近に存在するピークの強度(I1580)と1390cm−1付近に存在するピークの強度(I1390)との強度比(I1390/I1580)が0.20以上0.35以下であれば、正確な理由はわからないが、耐溶着性が向上するため好ましい。本発明工具の非晶質炭素膜のスペクトルを面積比(S1390/S1580)で表すと、0.4以上0.56以下の範囲が好ましい。
<水素含有量>
非晶質炭素膜中における水素量は5原子%以下であることが好ましい。つまり、本発明工具の非晶質炭素膜は、成膜中に不可避的に含まれる不純物を除いて実質的に炭素原子のみから構成されることが好適である。その結果、水素を含む非晶質炭素膜よりもsp3結合の割合が高くなることで硬度を高くすると同時に耐酸化特性もダイヤモンドと同等の約600℃近くにまで改善される。後述するように、水素を含まない雰囲気下で成膜しても、できあがった非晶質炭素膜には5原子%以下程度の極わずかながら水素が含有されることがある。これは、成膜時の真空度などにより、成膜装置中に残存する水素や水分が非晶質炭素膜中に取り込まれるためと考えられる。より好ましい水素含有量は2原子%以下、さらに好ましい水素含有量は1原子%以下、最も好ましい水素の含有量は0原子%である。
<マクロパーティクル密度>
カソードアークイオンプレーティング法により形成した非晶質炭素膜の表面には、マクロパーティクルと呼ばれる硬質粒子が存在する。基材の表面に非晶質炭素膜を被覆すると、その過程でイオン化しなかったグラファイトの粒子が飛散してきて、被覆面に付着する。非晶質炭素膜の表面を電子顕微鏡で見るといろいろな外径のまるい粒子が観察できる。このような粒子がマクロパーティクルである。グラファイト粒子は成膜過程で飛散してくるので、マクロパーティクルは非晶質炭素膜のいろいろな厚さの所に存在しているものと推定される。
この膜表面に存在するマクロパーティクル密度は小さいほど切削抵抗が小さくなるため望ましい。好ましいマクロパーティクル密度は、5×105個/mm2以下、より好ましくは1.5×105個/mm2以下である。もちろん、0個/mm2が最適であることは言うまでもない。マクロパーティクルの密度が5×105個/mm2よりも大きいと、被削材がこのマクロパーティクルに溶着して切削抵抗を上げるために好ましくない。
マクロパーティクルの密度は、SEM(Scanning Electron Microscope)観察によって評価することができる。SEM観察は、マクロパーティクルを観察しやすくするために、PtやPdなどの貴金属を試料表面にイオンスパッタリングなどによって蒸著してから観察すると良い。少なくとも1000倍以上の倍率で試料表面の写真撮影を行い、写真上でマクロパーティクルの数を数えることにより密度を求めると良い。
さらに、非晶質炭素膜の表面粗度をよくするために、グラファイト原料からの粒状飛散物を防止するような、例えば低エネルギーによる成膜や磁場によるフィルターを用いる方法も提案できる。
<成膜領域>
非晶質炭素膜は、工具のすくい面のうち、切刃稜線から同稜線に実質的に垂直な方向に10μm以下の領域に存在せず、この領域以外で切削に関与する領域に設けられていることが好ましい。後に実施例で詳しく説明するが、刃先稜線近傍の極わずかな範囲に非晶質炭素膜が存在しない工具は、非常に耐溶着性に優れる。その理由は、次のようであると推測される。
本発明者らが、特に高Si含有率でアブレッシブ摩耗が起こりやすいアルミ鋳物合金を切削した場合の切刃部を詳細に観察した結果、切削初期にもかかわらず、平面平滑でかつ低摩擦係数であるはずの非晶質炭素膜に被削材であるアルミ合金が強固に凝着して、いわゆる構成刃先を形成していることがわかった。
この状態の切刃部の拡大模式図を図3に示す。ここで、凝着しているアルミ合金をさらに詳細に調査したところ、特に、切刃部先端の非晶質炭素膜110とアルミ合金120の界面付近に、詳細な理由はわからないが被削材中のSi130が偏析していることもわかった。通常、非晶質炭素膜110にアルミ合金120は凝着しにくい。しかし、一般的に非晶質炭素膜110とSi130は非常に親和性が高く、またSi130は炭化物であるSiCを形成し易い。そのため、Si130の介在により非晶質炭素膜110が被覆された工具表面にアルミ合金120が凝着し、構成刃先が形成されたと考えられる。これに対し、Siは超硬合金とは親和性が低い。そのため、刃先稜線近傍の極わずかな範囲に非晶質炭素膜が存在せず、基材100が露出した領域を形成すれば、その基材100が露出した領域にはSiが偏析しにくく、結果としてアルミ合金120の溶着が抑制できるものと考えられる。そして、工具における切削に関与する領域のうち、この非晶質炭素膜が存在しない領域以外の領域には非晶質炭素膜を形成しておくことで、全体として良好な耐溶着性を得ることができる。
<表面粗さ>
非晶質炭素膜の表面粗さは、JIS B 0601で定められたRaの表示で0.002μm以上0.05μm以下であることが望ましい。ここで、切削工具として見た場合、面粗さRaはできる限り小さいことが望ましい。しかし、実際にはゼロとすることはできないので、種々切削試験を行った結果、Raが0.05μm以下であった場合には刃先での溶着性が改善され切削性能が向上することを見いだした。また、JIS B 0601で定められたRyの表示で0.02μm以上0.5μm以下であることも好ましい。ここで、Ryが0.5μmを超えると、非晶質炭素膜の突起物(マクロパーティクル)が被削材の溶着の起点となり切削抵抗上昇の原因となるため好ましくない。なお、Ryが0.5μmを超えるような場合には、例えばブラスト処理や、ブラシを使った表面処理によって表面の突起物を除去することも可能である。
<最大厚み>
非晶質炭素膜の最大厚みは0.05μm以上3.0μm以下とすることが好ましい。この最大厚みが0.05μm未満の場合、耐摩耗性に問題があり、3.0μmを超えると被膜に蓄積される内部応力が大きくなって剥離しやすくなったり、被膜の欠けを生ずる問題があるからである。ただし、この規定範囲内では、厚さが薄い場合でも耐溶着性に優れる。より好ましい膜厚の上限は、1.2μm、さらに好ましい膜厚の上限は0.8μmである。また、膜厚を0.8μm以下、特に0.5μm以下とすることにより、表面のマクロパーティクルの大きさと密度を小さくし、表面粗さを前記のRa表示で0.05μm以下、Ry表示で0.5μm以下に抑えやすいという効果もある。
<硬度>
本発明工具の非晶質炭素膜の硬度は、ナノインデンテーション法で荷重100mgfの条件で測定した場合に、80GPa以上であることが望ましい。この硬度が80GPa未満であると耐摩耗性の点で問題が生じる。さらに好ましい非晶質炭素膜のナノインデンテーション硬度は、100GPa以上である。
[非晶質炭素膜の成膜方法]
本発明工具の非晶質炭素膜は、グラファイトを原料とし、水素を含まない雰囲気下で物理的蒸着法により形成することが好適である。この膜はダイヤモンドに匹敵する高い硬度と切削工具として優れた耐摩耗性を有する。一方、炭化水素を原料として化学的蒸着法により形成される非晶質炭素膜は水素を含有するので、上記した物理的蒸着法により形成される非晶質炭素膜とは異なるものである。
グラファイトを出発原料とした物理的蒸着法の中でも、一般に工業的に用いられるカソードアークイオンプレーティング法、レーザーアブレーション法やスパッタリング法などであれば、成膜速度も高く、ダイヤモンド膜で問題となっていた製造コストの問題もなくなる。特に、被膜の密着力、膜硬度の点で、カソードアークイオンプレーティング法による成膜が好ましい。このカソードアークイオンプレーティング法は、原料のイオン化率が高いため、主にカーボンイオンが基材に照射されることにより非晶質炭素膜が形成される。そのため、sp3結合の比率が高く、緻密で硬度の高い膜が得られ、工具寿命を大きく向上させることができる。
成膜時の基板の温度は、50℃から200℃とすることが好適である。基材の温度が350℃を超えると、グラファイトが析出しやすくなる。成膜時にはカーボンイオンが基材に照射され、非晶質炭素が形成されるので、その時、基材の温度は上昇する。従って、基材をヒーターによって加熱しなくても、実用上支障のない程度まで温度上昇する場合もある。また、加熱や冷却によって、基材の温度調整することもできる。成膜時の基材温度は、更に好ましくは50℃から150℃である。
また、基材のバイアス電圧は-80〜-150V程度が好適である。この電圧が小さすぎると膜のグラファイト化が進む。逆に大きすぎると基材温度が上がりやすく、やはり膜のグラファイト化が進む。
非晶質炭素膜の成膜に先立っては、不活性元素のプラズマによる基材表面のクリーニングやメタルイオンボンバードを行うことが好ましい。その際、基材のバイアス電圧は-600V〜-1000V程度、基材温度:300℃以上程度が好適である。
[界面層]
本発明工具は、非晶質炭素膜の密着力を強固なものにするために、基材と非晶質炭素膜との間に界面層を設けることが好ましい。
<材質>
この界面層は、周期律表IVa、Va、VIa、IIIb族元素およびC以外のIVb族元素の元素よりなる群から選択される少なくとも1種以上の元素、またはこれら元素群から選ばれた少なくとも1種以上の元素の炭化物が好適である。
中でもTi、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Siの元素よりなる群から選ばれた少なくとも1種以上の元素、またはこの元素群から選ばれた少なくとも1種以上の元素の炭化物であることがさらに望ましい。とりわけ、CrやCrCが界面層として好適である。これらの金属元素などは炭素と強い結合を作りやすいため、これらの金属元素などあるいは金属炭化物の界面層上に非晶質炭素膜を形成することによって、より強固な密着力が得られる。
<厚み>
界面層の厚さは0.5nm以上10nm未満とする。膜厚がこの範囲よりも薄いと、界面層としての役割を果たさず、この範囲よりも厚いと従来技術と同等の密着力しか得られない。このように極めて薄い界面層を形成することにより、従来技術では達成できなかった極めて強固な密着力が得られ工具寿命を大きく改善することが可能となる。
<混合組成層・傾斜組成層>
界面層と非晶質炭素膜との間に、各被膜の組成が混合した混合組成層または組成が連続的に変化した傾斜組成層を介在させれば、さらに強固な密着力が得られるため一層望ましい。この混合組成層と傾斜組成層とは、必ずしも明確に区別できるものではない。界面層の成膜から非晶質炭素膜の成膜に製造条件を切り替える際、通常、わずかに界面層と非晶質炭素膜との組成に混合が起こり、これら混合組成層や傾斜組成層が形成される。これらは、直接確認することは難しいが、XPS:(X‐ray Photo-electronic Spectroscopy)やAES:(Auger Electron Spectroscopy)などの結果から十分推定できる。
[工具の用途]
本発明非晶質炭素膜被覆工具は、その耐摩耗性と耐溶着性から、特にアルミニウムおよびその合金を加工するための工具に適する。アルミニウム合金はSiを2質量%以上18質量%以下含有するものが挙げられる。また、チタン、マグネシウム、銅など非鉄材に使用することが最適である。さらに、グラファイトなどの硬質粒子を含有する材料、有機材料などの切削や、プリント回路基盤加工や鉄系材料とアルミニウムとの共削り加工などにも有効である。加えて、本発明工具の非晶質炭素膜は非常に高硬度であることから、非鉄材だけではなく、ステンレス鋼などの鋼や鋳物などの加工にも用いることができる。
[工具の種類]
本発明非晶質炭素膜被覆工具は、ドリル、マイクロドリル、エンドミル、エンドミル加工用刃先交換型チップ、フライス加工用刃先交換型チップ、旋削用刃先交換型チップ、メタルソー、歯きり工具、リーマおよびタップからなる群より選ばれた1種として好適に利用できる。
[加工手法]
本発明非晶質炭素膜被覆工具は、ウェット加工はもちろん、ドライもしくはセミドライ加工などで利用することが好適である。
次に、非晶質炭素膜被覆工具について、実施例により具体的に説明する。
基材として、WC基超硬合金製の刃先交換型チップを用意した。その基材表面に下記のように公知のカソードアークイオンプレーティング装置を用いて表1に示す非晶質炭素膜被覆工具の試料No.1-1〜1-11を作製した。
図4に示すように、成膜装置1内に複数個のターゲット2、3を配置し、ターゲットの中心点を中心としてターゲット間で回転する基材保持具4に刃先交換型チップ5を装着する。アーク電源7、8を調整して真空アークの放電電流を適宜60〜200Aの間で調整し、ターゲット材料の蒸発量を制御しながら非晶質炭素膜をコーティングする。
まず、基材加熱ヒーター6を用いて刃先交換型チップ5を150℃まで加熱させながら成膜装置1内の真空度を2×10−4Paの雰囲気となるまで真空排気した。ついでアルゴンガスを導入して2×10-1Paの雰囲気に保持しながら、バイアス電源9により基材保持具4に−1000Vの電圧をかけてアルゴンプラズマによる刃先交換型チップ5の表面クリーニングを行った後、アルゴンガスを排気した。成膜装置内へのガスの導入は供給口10より行い、排気は排気口11より行う。次に、成膜装置1内にアルゴンガスを50sccmの割合で導入しながら、真空アーク放電によりグラファイトのターゲットを蒸発・イオン化させて、刃先交換型チップ上に直接非晶質炭素膜を形成する。このとき、バイアス電源9による電圧は、負の30Vとした。合わせて、非晶質炭素膜の成膜時において基材である刃先交換型チップの温度は150℃になるよう設定した。
ここで、サンプルによっては、非晶質炭素膜の成膜に先立ち、周期律表IVa、Va、VIa族金属元素のターゲットを蒸発・イオン化させながらバイアス電源9により基材保持具4に−800Vの電圧をかけてメタルイオンボンバードメント処理を行い、非晶質炭素膜の密着性を高めるための基材表面のエッチング処理を行った。
あるいは、非晶質炭素膜の成膜に先立ち、サンプルによっては、さらに炭化水素ガスを導入して、周期律表IVa、Va、VIa、IIIb族元素およびC以外のIVb族元素の元素よりなる群から選ばれたターゲットを蒸発・イオン化し、バイアス電源9により基材保持具4に負の50Vの電圧をかけて、これらの金属炭化物の界面層を形成した。界面層から非晶質炭素膜の形成は、ターゲットや雰囲気の切り替えにより行われ、この切り替え時には、通常、わずかながらも両層の組成の混合が生じる。このことから、両層の間には、原料の混合組成層や傾斜組成層が存在していると推定される。
また、比較のため表1に示すNo.1-12と非晶質炭素膜のないノンコート品も作製した。No.1-12は通常のプラズマCVD成膜装置を使用して上記と同じ刃先交換型チップの表面に非晶質炭素膜を形成した。
次に、得られた工具試料について、すくい面側から光学顕微鏡にて平面視して工具の刃先部における非晶質炭素膜の被覆状態を確認した。その際、理由は特定できていないが、基材保持具4に設置されたチップ5のうち、カソード正面にあたるチップのみ、刃先の非晶質炭素膜が消失していた。より具体的には、図5(A)に示すように、チップの外縁部、つまりすくい面側から見た切刃稜線から所定幅に亘って非晶質炭素膜110が存在せず基材100が露出した消失領域140が存在し、その領域以外の箇所には非晶質炭素膜110が被覆されていた。そのため、この消失領域140の幅、つまり切刃稜線から同稜線に実質的に垂直な方向に非晶質炭素膜が存在しない幅(刃先膜なし幅)を測定した。また、同図(B)に示すように、逃げ面側はほぼ切刃稜線にまで非晶質炭素膜110が被覆されていた。
刃先の非晶質炭素膜が消失している工具と、全面が非晶質炭素膜で覆われている工具とをすくい面側から見た顕微鏡写真を図6に示す。この写真から明らかなように、刃先の非晶質炭素膜が消失している工具は切刃稜線付近に、白く光って見える細い帯状の領域が存在し、基材の超硬合金が露出していることがわかる。これに対して、全面が非晶質炭素膜で覆われている工具は、このような帯状の領域が存在しない。
その他、非晶質炭素膜の最大厚み、水素含有量、マクロパーティクル密度、ナノインデンテーション硬度、表面粗さRaおよびRyを測定した。非晶質炭素膜の最大厚みは、刃先断面のSEMにより評価した。刃先稜線の近傍に非晶質炭素膜の消失領域が形成されている場合、すくい面における非晶質炭素膜の外縁部の最大厚みを求めた。非晶質炭素膜中の水素量は、ERDA(Elastic Recoil Detection Analysis:弾性反跳粒子検出法)により評価した。マクロパーティクルの密度は、SEM(Scanning Electron Microscope)により試料表面の写真撮影を行い、写真上で単位面積当たりのマクロパーティクルの数を数えることにより求めた。各表面粗さは、JIS B 0601の規格に準じて測定した。ナノインデンテーション硬度については以下の装置、条件にて測定を実施した。
装置:株式会社エリオニクス製 ENT-1100a
圧子:株式会社東京ダイヤモンド工具製作所製 三角圧子
荷重:100mgf
測定は5回の平均値とした。
そして、これら非晶質炭素膜の評価として、アルミニウム合金の切削加工における溶着量の比較を行った。用いた工具の基材はJIS K20種相当の超硬合金製チップ(型番:TPGN220404)であり、コーティング前の基材すくい面はRz0.01μ程度の研磨加工を施している。被削材はアルミニウム合金JIS
AC2B-T6相当材(Si含有量は5〜7質量%)である。加工方法は2次元切削であり、図7のように角柱材の上面に幅1mm、長さ40mmの突条310を形成した被削材300を、チップホルダに固定されたチップ5に対して直線送り装置(図示略)により直線的な相対運動を与えて切削加工を行う。この際、三角形状のチップ5の1辺を被削材の幅方向と平行に配置し、その1辺の一部分(被削材の突条幅に相当)を工具切刃として使用する。また、被削材を直線送り装置に固定する際には切削3分力動力計(日本キスラー株式会社製9257B)を介して固定しており、2次元切削時の主分力および背分力が測定できるようにした。さらに、加工はミスト加工であり、工具すくい面側から約20cc/hourで油剤を噴霧した。この油剤はエステル系油剤(ユシロ化学工業株式会社製CM30T)である。
加工条件は切削速度(直線送り装置の駆動速度)を15m/min、切取り厚さを0.1mm、工具すくい角を0°とし、被削材を1度加工した後の工具すくい面の溶着面積、および加工中の摩擦係数(背分力/主分力)によって各チップの耐溶着性を評価した。
Figure 2009061540
表1に評価結果も合わせて示す。評価結果としては切削抵抗値から算出されたすくい面平均摩擦係数、およびすくい面の溶着面積を示している。この中では非晶質炭素膜被覆工具のほか、比較としてノンコート品についても結果を示している。これよりノンコート品ではすくい面平均摩擦係数が0.5を超える値を示しており、すくい面への溶着も非常に多いことが分かる。また、全面が非晶質炭素膜で覆われているNo.1-9でも、やや摩擦係数が低減し、溶着面積も減少しているものの、その効果は大きいとはいえない。これに対し刃先部分に非晶質炭素膜のないNo.1-1〜1-8では摩擦係数が0.3前後まで低下し、すくい面の溶着面積も大きく減少している。このように刃先部分に膜がないことにより、大きな溶着低減効果が得られる。一方、非晶質炭素膜のない範囲が大きいNo.1-10、1-11では摩擦係数、溶着面積ともNo.1-1〜1-8と比較して悪化し、ノンコート品の結果に近づいていることから、膜のない範囲は刃先から10μm程度にとどめることが効果的であることが分かる。また、No.1-8はおおむね良好な結果ではあるが、加工後の刃先を観察したところ膜厚が厚いために一部に微細な膜剥離が見られたことから、膜厚は3μm以下にとどめることが望ましい。プラズマCVD法で製作したNo.1-12は摩擦係数、溶着量ともに大きく、十分な効果が得られないことが分かる。なお、No.1-12を除く試料では、水素含有量は5atm%以下(一部の試料は0atm%)、マクロパーティクル密度は最大厚みが0.5μm以下の試料は1.5×105個/mm2以下、最大厚みが0.5μm超3μm以下の試料は5×105個/mm2以下、ナノインデンテーション硬度は荷重100mgfにて100GPa以上、非晶質炭素膜の表面粗さRaは0.01以下、Ryが0.10以下であった。
上記No.1-1、非晶質炭素膜が全面に被覆されたNo.1-9に加え、CVD法でダイヤモンド膜を被覆した工具、およびPCD(Polycrystalline Diamond;多結晶ダイヤモンド焼結体)工具でも上記切削試験を行って、試験後のすくい面側から見た工具の拡大写真を撮影した。図8に示すこれらの写真において、白く見える部分が被削材の溶着した領域である。この写真の比較から明らかなように、No.1-1は、No.1-9に比べて格段に溶着の少ないことが一目瞭然であり、CVDダイヤモンド被覆工具と比べても溶着が少ないことがわかる。さらに、No.1-1は、PCD工具と比較しても遜色ない耐溶着性を有することがわかった。
次に、非晶質炭素膜の膜質と耐溶着性の関係を調査するため、刃先の膜のない領域の幅は3μm、最大膜厚は0.1μm、界面層CrC(厚さ5nm)の条件に固定した各No.2-1〜2-4、同じ最大膜厚で基材の全面に非晶質炭素膜を被覆したNo.2-5、2-6に対し、514.5nmの波長を持つアルゴンイオンレーザーを用いたラマン分光分析を実施した。ここでの試料における非晶質炭素膜は、全て水素含有量が5原子%以下、マクロパーティクル密度が100000個/mm2以下、ナノインデンテーション硬度が100GPa以上、表面粗さRaが0.01以下、Ryが0.10以下であった。
そして、既に図1、図2で説明した手法に基づいて、得られたラマンスペクトルから、強度比(I1100/I1390)、面積比(S1100/S1390)、強度比(I1390/I1580)を求めた。これらは全て、チップの中央部における非晶質炭素膜を測定点としてラマン分光分析を行った。測定装置および条件を下記に、測定結果を表2に示す。
装置:Ramanar T-64000(Jobin Yvon/愛宕物産株式会社)
条件:測定モード;顕微ラマン
測定倍率;90倍
ビーム径;〜1μm
光源;Arレーザー/514.5nm
レーザーパワー;10mW(at tube)
回折格子;Single 600gr/mm
スリット;100μm
検出器;CCD/Jobin Yvon 1024channel
なお、No.2-1〜2-4のいずれも、図2(A)に示したように、ラマンスペクトルにおいて、波数1100cm−1付近にピークが存在した。これに対し、No.2-5、No.2-6は、図2(B)に示すように、波数1100cm−1付近に高いピークが認められなかった。
Figure 2009061540
これら試料についても、実施例1と同様の手法により再度2次元切削評価を行った。また、比較例としてノンコート品についても合わせて再度評価した。切削評価の結果も合わせて表2に示す。
この結果より、No. 2-1〜2-4は比較例のノンコート品に対しては良好な結果となっていることがわかる。
まず、No.2-1〜2-4に係る強度比(I1100/I1390)は0.2以上0.28以下であり、面積比(S1100/S1390)は0.09以上0.15以下であった。これに対し、No.2-5、2-6に係る強度比(I1100/I1390)は0.03以上0.12以下であり、面積比(S1100/S1390)は0.01以上0.04以下であった。
また、No.2-1〜2-4に係る強度比(I1390/I1580)は、0.22〜0.35であることがわかる。これに対し、No.2-5、2-6の強度比(I1390/I1580)は0.4以上であった。さらに、No.2-1〜2-4の中でも効果の程度に差異があることが分かる。すなわち、強度比(I1390/I1580)の低いNo.2-1、2-2が、No.2-3、2-4よりもさらに耐溶着性が高く、摩擦係数も低い。このことから強度比(I1390/I1580)が0.29以下のものでより効果的であるといえる。
なお、本発明は、以上の実施例に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。例えば、グラファイトを用いたPVD法で成膜されたものであれば、カソードアークイオンプレーティング以外の方法で非晶質炭素膜の成膜を行ってもよい。
本発明工具は、耐摩耗性と耐溶着性を兼備することで、工具の切削・耐摩寿命を著しく延長させることができる。従って、転削工具(ドリル、エンドミル、リーマなど)、フライス工具や旋削工具に使用される刃先交換型切削チップ、切断工具(カッター、ナイフ、スリッターなど)への効果的な利用が期待される。
本発明工具の一例における非晶質炭素膜のラマンスペクトルを示す説明図である。 工具における非晶質炭素膜のラマンスペクトルを示し、(A)は本発明工具の一例に係るスペクトルの説明図、(B)は従来例に係るスペクトルの説明図である。 工具の刃先部に構成刃先が形成された状態を示す模式説明図である。 本発明工具の非晶質炭素膜を成膜する装置の概略図である。 本発明工具の一例の刃先部を示し、(A)はすくい面側から見た平面図、(B)は(A)のA-A縦断面図である。 (A)は本発明工具の一例の刃先部を示す顕微鏡写真、(B)は比較例に係る刃先部を示す顕微鏡写真である。 切削試験条件の説明図である。 切削試験後の各工具におけるすくい面の状態を示す顕微鏡写真である。
符号の説明
1 成膜装置
2,3 ターゲット 4 基材保持具 5 チップ
6 基板加熱ヒーター 7,8 アーク電源 9 バイアス電源
10 供給口 11 排気口
100 基材 110 非晶質炭素膜
120 アルミ合金 130 Si 140 消失領域(基材が露出した領域)
300 被削材 310 突状

Claims (10)

  1. 基材と、この基材の少なくとも一部を覆う非晶質炭素膜とを備える非晶質炭素膜被覆工具であって、
    前記非晶質炭素膜は、514.5nmの波長を持つアルゴンイオンレーザーを用いたラマン分光分析により得られるラマンスペクトルにおいて、波数1580cm−1付近に存在するピークと波数1390cm−1付近に存在するピークと波数1100cm−1付近に存在するピークに対してガウス関数による近似を行って近似関数を決定したときに、波数1390cm−1付近の近似関数のピーク強度(I1390)と波数1100cm−1付近の近似関数のピーク強度(I1100)との強度比(I1100/I1390)が0.15以上0.40以下であることを特徴とする非晶質炭素膜被覆工具。
  2. 前記ラマンスペクトルにおいて、波数1390cm−1付近の近似関数と基線に囲まれる面積(S1390)と、波数1100cm−1付近の近似関数と基線に囲まれる面積(S1100)との面積比(S1100/S1390)が0.06以上0.25以下であることを特徴とする請求項1に記載の非晶質炭素膜被覆工具。
  3. 前記非晶質炭素膜中における水素量が5原子%以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の非晶質炭素膜被覆工具。
  4. 前記非晶質炭素膜は、グラファイトを原料とした実質的に水素を含まない雰囲気下の物理的蒸着法により形成されてなることを特徴とする請求項3に記載の非晶質炭素膜被覆工具。
  5. 前記非晶質炭素膜表面に存在するマクロパーティクルの密度が5×105個/mm2以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非晶質炭素膜被覆工具。
  6. 前記非晶質炭素膜は、前記工具のすくい面のうち、切刃稜線から同稜線に実質的に垂直な方向に10μm以下の領域に存在せず、
    この領域以外で切削に関与する領域に設けられていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の非晶質炭素膜被覆工具。
  7. 切刃稜線近傍の非晶質炭素膜が存在する箇所において、非晶質炭素膜の最大厚みが0.05μm以上3.0μm以下であることを特徴とする請求項6に記載の非晶質炭素膜被覆工具。
  8. 波数1580cm−1付近の近似関数のピーク強度(I1580)と波数1390cm−1付近の近似関数のピーク強度(I1390)との強度比(I1390/I1580)が0.20以上0.35以下であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の非晶質炭素膜被覆工具。
  9. 前記非晶質炭素膜は基材に直接被覆されていることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の非晶質炭素膜被覆工具。
  10. 前記基材と非晶質炭素膜との間に界面層を備え、
    この界面層は、周期律表IVa、Va、VIa、IIIb族元素およびC以外のIVb族元素よりなる群から選択される少なくとも1種以上の元素、またはこれら元素群から選択される少なくとも1種以上の元素の炭化物からなり、界面層の厚さが0.5nm以上10nm未満であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の非晶質炭素膜被覆工具。
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