ヒトにおける先天及び適応免疫における不適切な抗原提示及び活性化は結果として、数多くの病原性感染及び悪性細胞成長を制御し一掃するヒト免疫系に障害をもたらす。慢性感染症及び癌に対する有効な治療用ワクチン及び免疫療法は、その病理学に関連する攻撃的抗原を制御し一掃する能力をもつ活発な免疫応答を誘発する効率のよい手段に対する新しいアプローチの開発に依存している。
抗原を認識するT細胞の能力は、主要組織適合複合体(MHC)I又はMHCIIタンパク質のいずれかと抗原の会合に左右される。例えば、細胞傷害性T細胞は、MHC−Iタンパク質と会合した状態で提示される抗原に応答する。かくしてウイルスの感染した細胞を殺すべき細胞傷害性T細胞は、その細胞が適切なMHC−Iタンパク質を発現しない場合その細胞を殺さなくなる。ヘルパーT細胞はMHC−IIを認識する。ヘルパーT細胞の活性は、一般に、抗原提示細胞上の抗原の認識及び「自己」MHC−IIタンパク質のこれらの細胞上の存在の両方に左右される。自己MHCタンパク質と会合状態にある抗原の認識に対する必要条件は、MHC制限と呼ばれている。MHC−Iタンパク質は、ほぼ全ての有核細胞の表面上に見出される。MHC−IIタンパク質は、皮膚のランゲルハンス細胞及び脾臓の樹状細胞、B細胞及びマクロファージを含めた或る種の細胞の表面上に見出される。
哺乳動物内で免疫応答を開始させる上での決定的な工程は、MHC−II制限された外因性抗原を認識するCD4+ヘルパーT細胞の活性化である。これらの抗原は、樹状細胞(DC)などの抗原提示細胞内の細胞エンドソーム経路の中で捕捉されプロセッシングされる。エンドソーム及びリソソーム内では、抗原は、抗原−MHC−II複合体を形成するべくゴルジ画分内のMHC−II上で複合化される小抗原ペプチドへとプロセシングされる。これらの複合体は細胞表面上で発現され、この発現は、CD4+T細胞の活性化を誘発する。
哺乳動物内の有効な免疫応答の誘発におけるその他の決定的な事象には、CD8+T細胞及びB細胞の活性化が関与する。CD8+細胞は、MHC−I抗原と複合化されるプロセッシング済みタンパク質として細胞表面上に提示されるような形で細胞を通して所望のタンパク質が送られた時点で活性化される。B細胞は、MHCタンパク質を必要とせずに表面免疫グロブリン(IgM及びIgD)を介して抗原と相互作用できる。しかしながら、CD4+T細胞の活性化は、免疫系の全てのアームを刺激する。活性化時点でCD4+T細胞(ヘルパーT細胞)はインターロイキンを産生する。これらのインターロイキンは免疫系のその他の腕を活性化するのを助ける。例えば、ヘルパーT細胞は、B細胞が抗体を産生するのを助けるインターロイキン−4(IL−4)及びインターロイキン−5(IL−5);CD4+及びCD8+T細胞を活性させるインターロイキン−2(IL−2);及びマクロファージを活性化させるガンマインタフェロンを産生する。MHC−II制限を受けた抗原を認識するヘルパーT細胞は、細胞傷害性T細胞、マクロファージ、ナチュラルキラー細胞及びB細胞の活性化及びクローン拡張において中心的な役割を果たすことから、抗原に応答してヘルパーT細胞を活性化させるという初期事象は、その抗原に対抗して向けられた有効な免疫応答の誘発にとって決定的である。リソソーム膜貫通タンパク質から誘導された配列を用いてヘルパーT細胞活性を刺激するための試みが報告されている。しかしながら、これらの試みは、テスト対象の哺乳動物の体内でCD8+T細胞及びB細胞に関する有効な免疫応答の誘発を結果としてもたらさなかった。
免疫応答においてT細胞が果たす決定的な役割に加えて、DCも同等に重要である。D
Cは、自己抗原に対する寛容の維持及び先天免疫及び適応免疫の活性化において主要な調節の役目を果たす専門の抗原提示細胞である(非特許文献1、非特許文献2)。DCが微生物産物などの前炎症性刺激に遭遇した場合、細胞の成熟プロセスは、細胞表面で発現された抗原ペプチド負荷されたMHC分子及び共同刺激分子をアップレギュレートすることによって開始される。成熟及び局所リンパ節への帰還の後、DCは免疫学的シナプスを形成することによりT細胞との接触を確立し、ここでT細胞レセプタ(TCR)及び共同刺激分子は接着分子がとり囲む中心部域内に集合する(非特許文献3)。ひとたび活性化された時点で、CD8+T細胞は数世代にわたり自律的に増殖し、さらなる抗原刺激無く細胞傷害機能を獲得する(非特許文献4、非特許文献5)。従って、DCにより提供されるペプチドMHC複合体(シグナル1)及び共同刺激分子(シグナル2)のレベル及び持続時間は、抗原特異的T細胞応答の規模及び運命を判定するために不可欠である(非特許文献6、非特許文献7)。
樹状細胞(DC)及びマクロファージなどの抗原提示細胞(APC)は、先天及び適合免疫の活性化ならびに免疫学的寛容の維持において重要な役割を果たす。APCが病原菌を検知し免疫応答を開始させる機序は、過去数年間にわたり充分に研究されてきた。APCは、リポ多糖類(LPS)、未メチル化細菌DNA(CpG)及びRNAなどの保存された病原菌構造を認識するために、トール様レセプタ(TLR)などのパターン認識レセプタを使用する。TLRは、TIR(トール/インターロイキン−1(IL−1)レセプタ)スーパーファミリに属し、このスーパーファミリは2つの主要亜群すなわちIL−1レセプタ及びTLRに細分される。TLRは11のメンバー(TLR1〜TLR11)からなる。このスーパーファミリ−の全てのメンバーは、共通のシグナリング経路、特に転写因子核因子−κB(NFκB)及びストレス活性化タンパク質キナーゼの活性化を導くシグナリング経路を活性化する保存されたサイトゾルTIRドメインの存在に起因して同様にシグナリングする。NF−κB活性化は、腫瘍壊因子(TNF)、IFN、インターロイキン1(IL−1)、IL−6、及びIL−12などの前炎症性サイトカインを分泌することによってか又はCD80、CD86及びCD40などの共同刺激分子を発現することによって、免疫応答の触媒として作用する。TNFα及びCD40LなどのTNFファミリーのメンバーは、そのレセプタ又はリガンドと相互作用し、同様にNF−κBを活性化させる。
腫瘍ワクチンを開発する大きな研究努力が、抗腫瘍免疫を増強させる一手段としてDCの成熟及び共同刺激を促進する目的で試みられてきた。しかしながら、自己腫瘍関連抗原(TAA)に対抗する免疫の誘発は、固有の阻害機序により制限されており、これらの機序の多くがいまだに定義づけされていない。DC又はその他の細胞上のB7ファミリー分子との細胞−細胞接触を介してエフェクタT細胞活性の規模を制御するべくT細胞上の細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA4)及びそれに関連する分子により、既知の阻害機序が利用されている。DC成熟は、自己寛容の維持から免疫誘発への臨界スイッチとして役立つ。しかしながら、成熟点を超えて適合免疫の規模及び持続時間を制御できるようにするような負の免疫調節機序を成熟抗原提示DCが有するか否かはいまだに不明である。
前炎症性シグナリングについては多くの注目が集められてきたが、炎症を抑制しかつ消散させる機序についてはほとんど知られていない。TLRが開始させる免疫応答の規模及び持続時間は、前炎症性シグナリングの強度と持続時間及びシグナル伝達経路の調節によって決定づけられる。転写因子NF−κBのTLR誘発型活性化は、多数の前炎症性遺伝子の転写にとって不可欠であることから、敗血性ショックなどの過度の免疫応答から宿主を保護するため多数のレベルでTLRシグナリングを負に調節するため、及び腸内微環境などの慢性的病原菌曝露の状態で免疫ホメオスタシスを維持するために、数多くの機序が利用されている。TLRシグナル経路の負の免疫調節因子としては、IRAK−M、MyD88s、PI3K、TOLLIP、A20、TRIAD3A、NOD2、可溶性TLR
2/4及びSIGRR及びST2などのTIRドメインを含有する膜結合分子が含まれる(非特許文献8)。
サイトカインは、多数の免疫細胞機能の調節に決定的に関与している(非特許文献9、非特許文献10)。DCは、核因子−κB(NF−κB)シグナリング経路を活性化することによりDC成熟を促進するため、リポ多糖類(LPS)などの保存された病原菌構造を認識するトール様レセプタ(TLR)を使用する(非特許文献11)。NF−κBメンバーはこのときIL−12などの前炎症性サイトカインの発現を媒介する(非特許文献11、非特許文献12、非特許文献13)。DC成熟の後、サイトカイン産生及び細胞内シグナリング経路は、過度の自己免疫活性化を制限する一方で外来性抗原に対する有益な免疫応答を促進するように綿密に調節されると思われる。しかしながら、これらの経路についての特異的フィードバック阻害機序の重要性及びその結果としての自己抗原特異的免疫応答の制御は、いまだにほとんど定義づけされていないままである。
SOCS1は、インターフェロン(IFN)−g、インターロイキン(IL)−2、IL−6、IL−7、IL−12及びIL−15を含めたさまざまなサイトカインによるシグナリングの誘発可能な負のフィードバック調節因子である(非特許文献14、非特許文献15)。SOCS1は、偽基質インヒビターとして上流側ヤーヌスキナーゼ(JAK)の活性化ループ結合しかつ/又はプロテアソーム分解についてJAKをターゲティングすることによって転写(STAT)シグナリング経路の多重シグナルトランスデューサ及び活性化因子を抑制する(非特許文献14、非特許文献15)。SOCS1は同様に、そのSOCSボックス領域を通ってユビキチン媒介型タンパク質分解についてp65タンパク質をターゲティングすることによりNF−κBシグナリングを遮断する(非特許文献16)。SOCS1欠損(−/−)マウスは、主として抑制のきかないサイトカインシグナリングの結果として、T及びNKT細胞の異常活性化及び重大な全身的炎症を伴って、新生児として死亡する(非特許文献17、非特許文献18、非特許文献19)。DCにおけるSOCS1の機能についてはほとんど知られていないが、最近の研究から、抗原提示細胞(APC)内でのシグナリングを制御する上でのSOCS1の役割が示唆されている(非特許文献14、非特許文献20)。マクロファージ内でのSOCS1の発現はLPS又はCpG−DNAの刺激によって誘発され、SOCS1−/−マウスは、その野生型同腹子に比べてよりLPS誘発型ショックに対し感受性が高い(非特許文献21、非特許文献22、非特許文献23、非特許文献24)。その上SOCS1発現がSOCS1−/−バックグラウンド上のT及びB細胞内で回復されているマウスに由来するSOCS1−/−DCは、IFNγ及びLPSに対し過反応性であり、同種異型細胞拡張を開始させ、B細胞の異常拡張及び自己反応性抗体の産生を誘発する(非特許文献20)。
DC内でのSOCS1の役割についてはほとんど知られていないが、最近の研究から、サイトカインシグナル伝達経路を調節する上でのSOCS1の役目が実証された。例えば、SOCS1−/−DCがより成熟した表現型を示し、シグナリングのためにトール様レセプタ(TLR)4と相互作用するリポ多糖類(LPS)に過反応性を有することが観察された、ということが実証されている。同様に観察されたのは、SOCS1−/−DCが自己反応性抗体産生を誘発するということであった。これらの観察事実は、場合によってJAK/STAT経路及びTLR/NF−κB経路を制御することによるDCの負の調節におけるSOCS1の考えられる役割の可能性を示唆していた。
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哺乳動物の体内で免疫応答を刺激するべく免疫療法においてDCを使用するための数多くの試みが行なわれてきた。これらの研究努力においては、DCは、抗原をそれに負荷しエクスビボ状況下でそれらを成熟させかくしてそれが癌患者の体内で抗腫瘍免疫を刺激するようにすることによって操作された。ヒト免疫不全ウイルス(HIV)を撲滅するための免疫療法の使用に関しては、有効なヒト免疫不全ウイルス(HIV)ワクチンはまだ全
く現われていない。従って、当該技術分野では、哺乳動物において疾病の治療のための免疫応答を惹起する効率のよい直接的な手段に対するニーズが長年にわたって認識されている。本発明はこのニーズを満たすものである。
本発明は、免疫細胞の免疫能力を増強させるための組成物を包含する。好ましくは、本組成物は、負の免疫調節因子のインヒビターを含んでなる。一態様においては、負の免疫調節因子は、ユビキチン化、脱ユビキチン化及びスモ化(sumoylation)により分子安定性に関与するタンパク質及びNFκBのインヒビターの発現を誘発するか又はNFκB標的遺伝子の転写を抑制する転写因子、又はその任意の組合せよりなる群から選択される。
一態様においては、ユビキチン化、脱ユビキチン化及びスモ化により分子安定性に関与する負の免疫調節因子はA20及びSUMO(SUMO1、SUMO2、SUMO3、SUMO4)よりなる群から選択される。もう1つの態様においては、NFκB標的遺伝子の転写を抑制するか又はNFκBのインヒビターの発現を誘発しNFκB標的遺伝子の転写を抑制する転写因子のファミリーの一部を成す負の免疫調節因子は、Twist−1、Twist−2、Foxj1、Foxo3a及びそれらの変異体よりなる群から選択される。
本発明はまた、負の免疫調節因子が(SOCS)をシグナリングするサイトカインのサプレッサであり、さらに、SOCSはSOCS1、SOCS2、SOCS3、SOCS4、SOCS5、SOCS6、SOCS7及びサイトカイン誘発性SH2−ドメイン含有タンパク質(CIS)よりなる群から選択される、負の免疫調節因子のインヒビターをも含む。
もう1つの態様においては、本発明はSH2含有ホスファターゼ(SHP)のインヒビターであって、SHPがSHP−1及びSHP−2よりなる群から選択されるインヒビターを含む。
さらなる態様においては、本発明は、活性化されたSTAT(PIAS)のタンパク質インヒビターであって、PIASが、PIAS1、PIAS3、PIASx及びPIASyよりなる群から選択されるインヒビターを含む。
一態様においては、負の免疫調節因子は、A20、SUMO(SUMO1、SUMO2、SUMO3、及びSUMO4)、Foxj1、Foxo3a、TWIST(Twist1、Twist2)、SOCS(SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOCS4、SOCS5、SOCS6、SOCS7、及びCIS)、PIAS(PIAS1、PIAS3、PIASx及びPIASy)、SHP(SHP−1及びSHP−2)などよりなる群から選択される。
特定の一実施形態においては、インヒビターは、小分子干渉RNA(siRNA)、マイクロRNA、アンチセンス核酸、リボザイム、トランス優性負突然変異体をコードする発現ベクター、細胞内抗体、ペプチド及び小分子よりなる群から選択される。好ましくは、インヒビターはsiRNAである。
さらなる態様においては、siRNAが2本鎖オリゴヌクレオチド、1本鎖オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチドよりなる群から選択される。
さらにもう1つの態様においては、siRNAは化学的に合成されている。
本発明のもう1つの実施形態は、負の免疫調節因子のインヒビターを含む組成物であって、生理学的に許容可能な担体をさらに含んでなる組成物を含む。好ましくは、生理学的に許容可能な担体は、リポソームである。
もう1つの実施形態においては、負の免疫調節因子のインヒビターは、発現ベクター内にクローニングされた単離ポリヌクレオチドによりコードされる。発現ベクターは、プラスミドDNA、ウイルスベクター、細菌ベクター及び哺乳動物ベクターよりなる群から選択される。もう1つの態様においては、発現ベクターは、宿主細胞のゲノム内への単離ポリヌクレオチドの組込みを容易にする組込みシグナル配列をさらに含んでなる。
本発明はまた、免疫細胞の免疫能力を増強するための組成物であって、少なくとも1つのエピトープをさらに含んでなる組成物をも含む。好ましくは、エピトープは哺乳動物の体内で免疫応答を惹起する能力をもつ。もう1つの態様においては、エピトープは、哺乳動物の体内でCD4+T細胞応答を誘発する。さらにもう1つの態様においては、エピトープは、哺乳動物の体内でCD8+T細胞応答を誘発する。さらなる態様では、エピトープは哺乳動物の体内でB細胞応答を誘発する。
もう1つの実施形態においては、抗原は発現ベクターにより発現される。さらなる態様においては、抗原は単離ポリペプチドである。
さらにもう1つの実施形態においては、抗原は1つの疾患に関連している。好ましくは、疾患は、感染性疾患、癌及び自己免疫疾患よりなる群から選択される。
一態様においては、感染性疾患はウイルス、細菌、真菌及び原生動物よりなる群から選択された病原性微生物によってひき起こされる。
もう1つの実施形態においては、抗原はウイルス遺伝子によりコードされる。好ましくは、ウイルス遺伝子は、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、乳頭腫ウイルス及びヘルペスウイルスよりなる群から選択されたウイルスから誘導されている。
一態様においては、抗原は、B型肝炎ウイルスe抗原遺伝子、B型肝炎ウイルス表面抗原遺伝子及びB型肝炎ウイルスコア抗原遺伝子よりなる群から選択されたウイルス遺伝子によりコードされている。
もう1つの態様においては、抗原は、ヒト免疫不全ウイルスEnv gp160遺伝子、Gag遺伝子、Pol遺伝子、Rev遺伝子、Tat遺伝子、Vif遺伝子及びNef遺伝子よりなる群から選択されたウイルス遺伝子によりコードされている。
さらなる態様においては、抗原は、乳頭腫ウイルスE7遺伝子及び乳頭腫ウイルスE6よりなる群から選択されたウイルス遺伝子によりコードされている。
さらにもう1つの態様においては、抗原は、1型単純ヘルペスウイルス、2型単純ヘルペスウイルス、エプスタイン・バーウイルス、サイトメガロウイルス、ヒトヘルペスウイルス6型、ヒトヘルペスウイルス7型及びヒトヘルペスウイルス8型よりなる群から選択されたヘルペスウイルスから誘導されたウイルス遺伝子によりコードされる。
1つの実施形態においては、抗原は癌に関連しており、ここで、癌は、乳癌、子宮頸癌、黒色腫、腎臓癌及び前立腺癌よりなる群から選択される。
さらなる態様においては、腫瘍関連抗原は、過剰発現された腫瘍関連抗原、睾丸−腫瘍抗原、突然変異腫瘍関連抗原、分化腫瘍関連抗原チロシナーゼ、MART、trp、MAGE−1、MAGE−2、MAGE−3、gp100、HER−2、Ras及びPSAよりなる群から選択される。
さらにもう1つの態様においては、腫瘍関連抗原は、BCR−ABL、CASP、CDK、Ras、p53、HER−2/neu、CEA、MUC、TW1、PAP、スルビビン、テロメラーゼ、EGFR、PSMA、PSA、PSCA、チロシナーゼ、MART、TRP、gp100、MART、MAGE、BAGE、GAGE、LAGE/NY−ESO、RAGE、SSX−2、CD19及びCD20よりなる群から選択される。
もう1つの実施形態においては、抗原は、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、乾癬及びクローン病よりなる群から選択される疾患に関連している。
本発明はまた、免疫応答を惹起する能力をもつ少なくとも1つのエピトープを有する抗原及び負の免疫調節因子のインヒビターを含んでなり、しかもさらにサイトカインを含んでなる組成物をも含む。好ましくは、サイトカインは、単離されたポリペプチドである。もう1つの態様においては、サイトカインは、IL−12、TNFα、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−7、IL−1、IL−2、IL−6、IL−15、IL−21及びIL−23よりなる群から選択される。
本発明はまた、免疫応答を惹起する能力をもつ少なくとも1つのエピトープを有する抗原及び負の免疫調節因子のインヒビターを含んでなり、かつさらにトール様レセプタ(TLR)アゴニストを含んでなる組成物をも含む。一態様においては、TLRアゴニストは発現ベクターにより発現される。好ましくは、TLRアゴニストは単離ポリペプチドである。
本発明はまた、負の免疫調節因子のインヒビターを含んでなる組成物であって、インヒビターがヤーヌスキナーゼ(JAK)シグナリングの阻害を抑制する、組成物をも含む。
もう1つの実施形態においては、負の免疫調節因子のインヒビターを含んでなる組成物は、トール様レセプタ(TLR)シグナリングの阻害を抑制する。
さらにもう1つの実施形態においては、負の免疫調節因子のインヒビターを含んでなる組成物はNF−κBシグナリングの阻害を抑制する。
本発明は、細胞の免疫能力を増強させるための組成物であって、前記細胞内の負の免疫調節因子を阻害するインヒビターをコードする第1のポリヌクレオチド及び哺乳動物の体内で免疫応答を誘発する少なくとも1つのエピトープを有する抗原をコードする第2のポリヌクレオチドを含んでなる組成物をも含む。
本発明はまた、細胞の免疫能力を増強させるための組成物であって、前記細胞内の負のIRMを阻害するインヒビターをコードする第1のポリヌクレオチド及びサイトカインをコードする第2のポリヌクレオチドを含んでなるベクターを含んでなる組成物をも含む。好ましくは、サイトカインをコードする第2のポリヌクレオチドは、IL−12、TNFα、IFNα、IFNβ、IFNγ、IL−7、IL−2、IL−6、IL−15、IL−21及びIL−23よりなる群から選択される。
本発明はまた、負の免疫調節因子のインヒビターを含んでなる細胞をも含む。好ましく
は、細胞はAPC、樹状細胞、単球/マクロファージ、T細胞及びB細胞よりなる群から選択された免疫細胞である。
もう1つの態様においては、細胞はさらに、少なくとも1つのエピトープを有する抗原を含んでなり、ここで少なくとも1つのエピトープは、哺乳動物の体内で免疫応答を惹起する能力をもつ。
さらにもう1つの態様においては、細胞はさらに、サイトカインをコードするポリヌクレオチドを含んでなる発現ベクターを含んでなる。
本発明はまた、負の免疫調節因子のインヒビターと細胞を接触させる工程を含んでなるサイレンシング化された細胞を生成する方法をも含む。
もう1つの実施形態においては、本発明は、サイレンシング化及びパルスを受けた細胞を生成する方法であって、細胞を負の免疫調節因子と接触させる工程及びさらに細胞を、哺乳動物の体内で免疫応答を惹起する能力をもつ少なくとも1つのエピトープを有する抗原と接触させる工程を含んでなる方法を含む。
本発明はまた、哺乳動物の体内で免疫応答を惹起する方法であって、それを必要としている哺乳動物の体内に負の免疫調節因子のインヒビターを含んでなる組成物を投与する工程を含んでなる方法をも含む。
本発明のもう1つの実施形態は、哺乳動物の体内で免疫応答を惹起する方法であって、それを必要としている哺乳動物の体内にサイレンシング化された細胞を含んでなる組成物を投与する工程を含んでなる方法であって、サイレンシング化された細胞が負の免疫調節因子のインヒビターを含んでなる方法をも含む。好ましくは、サイレンシング化された細胞は、それを必要とする哺乳動物の体内にサイレンシング化された細胞を投与する前にインビトロで抗原と接触させられる。もう1つの態様においては、それを必要としている哺乳動物内へのサイレンシング化された細胞の投与の後にインビボで抗原とサイレンシング化された細胞接触させることもできる。
本発明を例示する目的で、図面中には、本発明のいくつかの実施形態が描かれている。しかしながら、本発明は、図面中に描かれている実施形態の精確な配置及び手段に限定されるわけではない。
詳細な記述
本発明は、免疫細胞内の負の免疫調節因子を変調(modulating)させることによる免疫細胞の免疫能力の増強に関する。本発明は、負の免疫調節因子を変調させることにより免疫細胞内の抗原提示を変調させるための組成物及び方法を提供する。負の免疫調節因子は、シグナル伝達に関与するタンパク質の阻害性相同体(例えば可溶性デコイTLR、阻害性TIR相同体、阻害性シグナリング分子イソ型、阻害性サイトカイン相同体など)、分子安定性に関与するタンパク質、シグナリング分子複合体の阻害性構成要素、シグナリング分子リン酸化反応の調節に関与するタンパク質、NFκB標的遺伝子の転写を抑制する転写因子、RNA翻訳及び安定性の調節に関与するタンパク質、サイトカインシグナリング調節因子などを含む(ただしこれらに限定されるわけではない)異なるタンパク質ファミリーに属することができる。
本発明は、負の免疫調節因子の変調によって免疫細胞の免疫能力が増強されているワクチン及び療法を提供する。さらに、本発明は、同様に腫瘍ワクチン接腫における自己寛容を破るための機序をも提供している。従って本発明は、細胞の免疫刺激能力を増強するこ
とにより免疫細胞内でTLR−、TNFR−媒介型シグナリング及びサイトカインレセプタ媒介型JAK/STATシグナリングなどの前炎症性シグナル伝達経路の負の免疫調節因子に干渉することのもつ治療上の恩恵を提供している。
定義
本書で使用される通り、以下の用語の各々は、本節で関連づけされているその意味を有している。
冠詞「a」及び「an」は、本書では、その物品の文法的目的語の1つ又は2つ以上(すなわち少なくとも1つ)を意味するように用いられている。一例としては、「an element(要素)」というのは1要素又は2つ以上の要素を意味する。
「約」という用語は、当業者により理解されるものであり、それが用いられる文脈に応じて幾分か変動することになる。
「同種異系」という用語は、同じ種の異なる動物に由来する移植片を意味する。
「アロ抗原」というのは、レシピエントにより発現される抗原とは異なる抗原である。
本書で使用される「抗原」という用語は、抗原上で特定のエピトープに特異的に結合することのできる免疫グロブリン分子を意味する。抗体は、天然供給源又は組換え型供給源に由来する無傷の免疫グロブリンであり得、無傷の免疫グロブリンの免疫活性部分であり得る。抗体は標準的には免疫グロブリン分子の四量体である。本発明における抗体は、例えばポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、Fv、Fab及びF(ab)2ならびに1本鎖抗体及びヒト化抗体を含めたさまざまな形態で存在し得る(ハーロウ(Harlow)ら、1988年;ハウストン(Houston)ら、1988年;バード(Bird)ら、1988年)。
本書で使用される「抗原」又は「Ag」という用語は、免疫応答をひき起こす分子として定義される。この免疫応答には抗体産生及び免疫学的にコンピテントな細胞又はその両方が関与する。当業者であれば、ほぼ全てのタンパク質又はペプチドを含むあらゆる巨大分子が抗原として役立ち得るということを理解するであろう。さらに、抗原は組換え型又はゲノムDNAから誘導され得る。当業者であれば、かくして免疫応答を惹起するタンパク質をコードするヌクレオチド配列又は部分的ヌクレオチド配列を含んでなるあらゆるDNAが、本書で使用される通りの「抗原」をコードするということを理解することだろう。さらに、当業者は、抗原が遺伝子の全長ヌクレオチド配列のみによりコードされる必要がないということも理解するであろう。本発明が2つ以上の遺伝子の部分的ヌクレオチド配列の使用を含むがこれに限定されるわけではないということ、そしてこれらのヌクレオチド配列が所望の免疫応答を惹起するためにさまざまな組合せで配置されていることは、直ちに明らかである。その上、当業者であれば、抗原が「遺伝子」によりコードされる必要が全くないことを理解するだろう。抗原を合成した形で生成することができ、そうでなければ生体試料から誘導することもできるということは直ちに明らかである。このような生体試料としては、組織試料、腫瘍試料、細胞又は体液が含まれ得るがこれに限定されるわけではない。
「抗原提示細胞」(APC)は、T細胞を活性化する能力をもつ細胞であり、単球/マクロファージ、B細胞及び樹状細胞(DC)を含むがこれに限定されるわけではない。
「樹状細胞」又は「DC」という用語は、リンパ系組織又は非リンパ系組織の中に発見される形態学的に類似の細胞型のさまざまな集団の任意のメンバーを意味する。これらの
細胞は、その独特の形態、高レベルの表面MHC−クラスII発現によって特徴づけされる。DCは、数多くの組織供給源から単離され得る。DCは、MHC制限されたT細胞を感作させるための高い能力を有し、インサイチュでT細胞に対し抗原を提示する上できわめて有効である。抗原は、T細胞の発達及び寛容中に発現される自己抗原及び、通常の免疫プロセス中に存在する外来性抗原であり得る。
本書で使用されているように、「活性化されたDC」は、抗原でのパルスを受け免疫細胞を活性化させる能力をもつDCである。
本書で使用されている「成熟DC」という用語は、高レベルのMHCクラスII、CD80(B7.1)及びCD86(B7.2)分子を発現する樹状細胞として定義される。これとは対照的に、未成熟樹状細胞は低レベルのMHCクラスII、CD80(B7.1)及びCD86(B7.2)分子を発現するが、抗原を取り込む大きな能力を有する。
「抗原負荷を受けたAPC」又は「抗原パルスを受けたAPC」には、抗原に曝露され抗原により活性化されたAPCが含まれる。例えばAPCは、例えば抗原の存在下での培養中にインビトロでAg負荷を受けた状態となり得る。APCは同様に、抗原に対する曝露によりインビボで負荷され得る。
「抗原を負荷されたAPC」は、従来次の2つの方法のうちの1つにおいて調製される:(1)抗原ペプチドとして知られる小ペプチドフラグメントが、APCの外側に直接「パルスされる;又は(2)APCが全タンパク質又はタンパク質粒子とインキュベートされ、これらのタンパク質がその後APCにより取り込まれる。これらのタンパク質はAPCにより小ペプチドフラグメントへと消化され、場合によってはAPC表面上に提示される。さらに、抗原を負荷されたAPCは、細胞内に抗原をコードするポリヌクレオチドによっても生成され得る。
本書で使用する「サイレンシング化されたAPC」又は「サイレンシング化されたDC」という用語は、(別途負の免疫調節因子を阻害するものとして知られている)負の免疫調節因子のインヒビターに曝露され、かくして負の免疫調節因子が免疫応答の調節に関連することになるAPC又はDCをそれぞれ意味している。インヒビターはTLR、RP105、SIGIRR、ST2、NOD2、MyD88s、IRAK(IRAKM、IRAK1、IRAK2)、IRF−4、FLN29、TWEAK、TRIAD3A、CYLD、Cbl、A20、SUMO(SUMO1、SUMO2、SUMO3、及びSUMO4)、IkBタンパク質、MKPs、Foxj1、Foxo3a、TWIST(Twist1、Twist2)、Roquin、Dok(Dok−1、Dok−2)、PI3K、プロスタグランジン、TRAIL−R、アレスチン、TOLLIP、SOCS(SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOCS4、SOCS5、SOCS6、SOCS7及びCIS)、PIAS(PIAS1、PIAS3、PIASx及びPIASy)、SHP(SHP−1及びSHP−2)などを含む(ただしこれに限定されるわけではない)本書で開示されている任意の負の免疫調節因子を阻害する能力をもつ。サイレンシング化されたAPCは、負の免疫調節因子のインヒビターで処理されていないその他の点では同一のAPCに比べて増強された免疫能力を有する。
「アンチセンス」というのは特に、ポリペプチドをコードする2本鎖DNA分子の非コーディング鎖の核酸配列、又は非コーディング鎖と実質的に相同である配列を意味する。本書で定義されている通り、アンチセンス配列は、ポリペプチドをコードする2本鎖DNA分子の配列に相補的である。アンチセンス配列はDNA分子のコーディング鎖のコーディング部分のみに相補的である必要はない。アンチセンス配列は、コーディング配列の発現を制御する、ポリペプチドをコードするDNA分子のコーディング鎖上で特定された調節配列に相補的である。
本書で使用される「自己免疫疾患」という用語は、自己免疫応答の結果としてもたらされる障害として定義される。自己免疫疾患は、自己抗原に対する不適切な及び過剰な応答の結果である。自己免疫疾患の例としては、アジソン病、円形脱毛症、強直性脊椎炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性耳下腺炎、クローン病、糖尿病(I型)、栄養障害性表皮水泡症、精巣上体炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、溶血性貧血、全身性エリテマトーデス、多発性硬化症、重症筋無力症、尋常性天疱瘡、乾癬、リウマチ熱、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、脊椎関節症、甲状腺炎、脈管炎、白斑、粘液水腫、悪性貧血、潰瘍性大腸炎などが含まれるがこれに限定されるわけではない。
本書で使用される「自己移植性(autologous)」という用語は、後にその個体に再導入されるべき同じ個体に由来するあらゆる材料を意味するものとされている。
「癌」という用語は、本書では、異常細胞の急速な及び無制御の成長により特徴づけされる疾患として定義される。癌細胞は、局所的に又は血流及びリンパ系を通して、体の他の部分に蔓延し得る。さまざまな癌の例としては乳癌、前立腺癌、卵巣癌、子宮頚癌、皮膚癌、膵臓癌、直腸結腸癌、腎臓癌、肝臓癌、脳腫瘍、リンパ腫、白血病、肺癌などが含まれるが、これに限定されるわけではない。
「サイトカインシグナリング調節因子」又は「サイトカインシグナリングの調節因子」又は「サイトカインシグナル伝達の調節因子」という語は、1つの細胞内でサイトカインシグナリング伝達経路を負に調節する能力をもつタンパク質を意味する。サイトカインシグナル伝達の調節因子は、サイトカインシグナル伝達のサプレッサ(SOCS1−SOCS7、サイトカイン誘発可能SH2−ドメイン含有タンパク質(CIS))、SHS含有ホスファターゼ(SHP)、及び活性化されたSTATのタンパク質インヒビター(PIAS)を含むが、これに限定されるわけではない。
本書で使用する「DNA」という用語は、デオキシリボ核酸として定義される。
「ドナー抗原」というのは、レシピエント内に移植すべきドナー組織により発現される抗原を意味する。
「レシピエント抗原」という用語は、ドナー抗原に対する免疫応答のための標的を意味する。
本書で使用する「エフェクタ細胞」というのは、抗原に対抗する免疫応答を媒介する細胞を意味する。エフェクタ細胞の一例としてはT細胞及びB細胞が含まれるが、これに限定されるわけではない。
「コードする」という用語は、遺伝子、cDNA又はmRNAなどのポリヌクレオチド内のヌクレオチドの特定の配列が有する、定義されたヌクレオチド配列(すなわちrRNA、tRNA及びmRNA)又は定義されたアミノ酸配列のいずれかを有するその他のポリマー及び巨大分子の生物学的プロセス中の合成のために鋳型として役立つという固有の特性、及びその結果としてもたらされる生物学的特性を意味する。かくして、1つの遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写及び翻訳が細胞又はその他の生体系の中でタンパク質を産生する場合に、そのタンパク質をコードする。mRNA配列と同一でかつ通常配列のリスト中に提供されているヌクレオチド配列を有するコーディング鎖及び遺伝子又はcDNAの転写のための鋳型として使用される非コーディング鎖の両方共が、その遺
伝子又はcDNAのタンパク質又はその他の産物をコードするものとして言及され得る。
本書で使用する「内因性」というのは、生体、細胞、組織又は系由来の又はそれらの内部で産生されるあらゆる材料を意味する。
本書で使用する「外因性」という用語は、生体、細胞、組織又は系の外部から導入される又はそれらの外部で産生されるあらゆる材料を意味する。
本書で使用する「エピトープ」という用語は、免疫応答を惹起して、B及び/又はT細胞応答を誘発することのできる抗原上の小化学分子として定義される。抗原は1つもしくはそれ以上のエピトープを有することができる。大部分の抗原は数多くのエピトープを有する。すなわち多価である。一般に、エピトープは、サイズ的におおよそアミノ酸5個及び/又は糖である。当業者は、一般に分子の特定的線形配列よりもむしろ全体的に3次元の構造が抗原特異性の主たる基準であり、従ってこれがエピトープ同士を区別するということを了解している。
本書で使用する「発現」という用語は、そのプロモータにより駆動される特定のヌクレオチド配列の転写及び/又は翻訳として定義される。
本書で使用する「発現ベクター」という用語は、転写可能な遺伝子産物の少なくとも一部分についてコードする核酸配列を含有するベクターを意味している。場合によっては、RNA分子は次にタンパク質、ポリペプチド又はペプチドへと翻訳される。その他の場合には、これらの配列は、例えばアンチセンス分子、siRNA、リボザイムなどの産生において翻訳されない。発現ベクターは、特定の宿主生体内での作動的に連結されたコーディング配列の転写及び場合によってはその翻訳にとって必要な核酸配列を意味するさまざまな制御配列を含み得る。転写及び翻訳を支配する制御配列に加えて、ベクター及び発現ベクターは、その他の機能にも役立つ核酸配列を含有し得る。
本書で用いられる「ヘルパーT細胞」という用語は、その他のB及びTリンパ球及び/又はマクロファージの活性化及び機能を促進することを主たる機能とするエフェクタT細胞として定義される。ほとんどのヘルパーT細胞はCD4T細胞である。
本書で用いられる「非相同な」という用語は、異なる種から誘導されるDNA又はRNA配列又はタンパク質として定義される。
本書で用いられる「相同な」という語は、2つのポリマー分子間例えば2つの核酸分子、例えば2つのDNA分子又は2つのRNA分子の間又は2つのポリペプチド分子の間のサブユニット配列類似性を意味する。2つの分子の両方においてサブユニット位置が同じモノマーサブユニットにより占有されている場合、例えば2つのDNA分子の各々の中の1つの位置がアデニンにより占有されている場合、それらはその位置において相同である。2つの配列の間の相同性は、整合する又は相同な位置の数に正比例し、例えば2つの化合物配列内の位置の半分(例えば長さ10サブユニットのポリマー内の5位置)が相同である場合、2つの配列は50%相同であり、90%の位置、例えば10中9位が整合しているか相同である場合、その2つの配列は90%の相同性を共有する。例を挙げると、DNA配列3’ATTGCC5’と3’TATGGCは50%の相同性を共有する。
本書で使用されている「相同性な」というのは、「同一性」と同義で用いられる。
本書で使用されている「免疫原」というのは、哺乳動物の体内で液性抗体及び/又は細胞媒介型免疫応答を刺激又は誘発することのできる物質を意味する。
本書で使用されている「免疫グロブリン」又は「Ig」という用語は、抗体として機能する1種類のタンパク質として定義される。このタンパク質クラスの中に含まれている5つのメンバーは、IgA、IgG、IgM、IgD及びIgEである。IgAは、唾液、涙液、母乳、胃腸分泌物及び呼吸管及び尿生殖路の粘腋分泌などの身体の分泌物の中に存在する一次抗体である。IgGは、最も一般的な循環抗体である。IgMは、大部分の哺乳動物の体内で一次免疫応答において産生される主要な免疫グロブリンである。それは、凝集反応、補体固定及びその他の抗体応答において最も効率の良い免疫グロブリンであり、細菌及びウイルスに対する防御において重要である。IgDは、既知の抗体機能をもたないものの抗原レセプタとして役立ち得る免疫グロブリンである。IgEは、アレルゲンに対する暴露の時点でマスト細胞及び好塩基球からメディエータを放出させることにより即時型過敏性を媒介する免疫グロブリンである。
本書で使用されている「負の免疫調節因子」又は「負の調節因子」又は「免疫応答の負の調節因子」というのは、細胞中の免疫シグナリング形質導入経路を負に調節する能力をもつタンパク質を意味する。好ましくは、負の免疫調節因子は、前炎症性シグナル伝達経路を負に調節する。本書で開示されている負の免疫調節因子には、sTLR、RP105、SIGIRR、ST2、NOD2、MyD88s、IRAK(IRAKM、IRAK1、IRAK2)、IRF−4、FLN29、TWEAK、TRIAD3A、CYLD、Cbl、A20、SUMO(SUMO1、SUMO2、SUMO3及びSUMO4)、IkBタンパク質、MKPs、Foxj1、Foxo3a、TWIST(Twist1、Twist2)、Roquin、Dok(Dok−1、Dok−2)、PI3K、プロスタグランジン、TRAIL−R、アレスチン、TOLLIP、SOCS(SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOCS4、SOCS5、SOCS6、SOCS7及びCIS)、PIAS(PIAS1、PIAS3、PIASx及びPIASy)、SHP(SHP−1及びSHP−2)などが含まれるが、これに限定されるわけではない。負の免疫調節因子は、シグナル伝達に関与するタンパク質の阻害性相同体(例えば可溶性デコイTLR、阻害性TIR相同体、阻害性シグナリング分子イソ型、阻害性サイトカイン相同体など)、分子安定性に関与するタンパク質、シグナリング分子複合体の阻害性構成要素、シグナリング分子のリン酸化反応の調節に関与するタンパク質、NFκB標的遺伝子の転写を抑制する転写因子、RNA翻訳及び安定性の調節に関与するタンパク質、サイトカインシグナリング調節因子などを含む(ただしこれに限定されるわけではない)異なるタンパク質ファミリーに属し得る。一態様においては、免疫細胞内の1つもしくはそれ以上の負の免疫調節因子を阻害することが、細胞の免疫能力を増強させるのに役立つ。
「単離核酸」というのは、天然に発生する状態でそれがフランキングする配列から分離された核酸セグメント又はフラグメントすなわち通常そのフラグメントに隣接している配列つまりそれが内部で天然に発生するゲノム中でそのフラグメントに隣接している配列から除去されたDNAフラグメントを意味する。用語は同様に、天然に核酸に随伴しているその他の構成要素すなわち細胞内で天然にそれに随伴しているRNA又はDNA又はタンパク質から実質的に精製された核酸にもあてはまる。従ってこの用語は、例えば、ベクター内、自己複製プラスミド又はウイルス内、又は原核生物又は真核生物のゲノムDNA内に取込まれる組換え型DNA、又はその他の配列とは独立して別の分子として(すなわちPCR又は制限酵素消化により産生されるcDNA又はゲノム又はcDNAフラグメントとして)存在する組換え型DNAを含む。これには又、付加的なポリペプチド配列をコードするハイブリッド遺伝子の一部である組換え型DNAも含まれる。
本発明に関連して、一般に発生する核酸塩基について以下の略号が用いられる。すなわち「A」はアデノシンを意味し、「C」はシトシンを意味し、「G」はグアノシンを意味し、「T」はチミジンを意味しかつ「U」はウリジンを意味する。
本書で使用されている「主要組織適合複合体」又は「MHC」という用語は、その多くが、組織適合性の最も重要な決定因子の中に入る抗原提示に関与する進化的に関連性ある細胞表面タンパク質をコードするものである、特定の遺伝子クラスタとして定義されている。クラスIMHC、又はMHC−Iは主としてCD8Tリンパ球に対する抗原提示において機能する。クラスIIMHC、又はMHC−IIは主としてCD4Tリンパ球に対する抗原提示において機能する。
本書で使用されている「変調する」という用語は、生物学的状態の何らかの変化すなわち増加、減少などを意味するものとされている。例えば、「変調する」という用語は、所望の負の免疫調節因子mRNAの転写、所望の負の免疫調節因子mRNAの安定性、所望の負の免疫調節因子mRNAの翻訳、所望の負の免疫調節因子ポリペプチドの安定性、所望の負の免疫調節因子の翻訳後修飾又はそれらの任意の組合せを含む(ただしこれに限定されるわけではない)負の免疫調節因子の発現又は活性を正又は負に調節する能力を意味する。さらに、「変調する」という用語は、樹状細胞の免疫能力に関連している所望の負の免疫調節因子の活性を含む(ただしこれに限定されるわけではない)活性の増大、減少、マスキング、改変、オーバーライド又は復元を意味するものとして使用することができる。「変調する」という用語は、sTLR、RP105、SIGIRR、ST2、NOD2、MyD88s、IRAK(IRAKM、IRAK1、IRAK2)、IRF−4、FLN29、TWEAK、TRIAD3A、CYLD、Cbl、A20、SUMO(SUMO1、SUMO2、SUMO3及びSUMO4)、IkBタンパク質、MKPs、Foxj1、Foxo3a、TWIST(Twist1、Twist2)、Roquin、Dok(Dok−1、Dok−2)、PI3K、プロスタグランジン、TRAIL−R、アレスチン、TOLLIP、SOCS(SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOCS4、SOCS5、SOCS6、SOCS7及びCIS)、PIAS(PIAS1、PIAS3、PIASx及びPIASy)、SHP(SHP−1及びSHP−2)などを含めた(ただしこれに限定されるわけではない)本書に開示されているあらゆる負の免疫調節因子にあてはまる。相反する規定のないかぎり、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」には、互いの縮重バージョンであり同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列が含まれる。タンパク質又はRNAをコードするヌクレオチド配列という語句は同様に、タンパク質が一部のバージョンでイントロンを含有し得るかぎりにおいて、イントロンをも含み得る。
本書で使用されている「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドの鎖として定義される。さらに、核酸はヌクレオチドのポリマーである。かくして、本書で使用されている核酸及びポリヌクレオチドは互換性がある。当業者は、核酸がモノマー「ヌクレオチド」へと加水分解され得るポリヌクレオチドであるという一般的知識を有している。モノマーヌクレオチドはヌクレオシド内に加水分解され得る。本書で使用されているポリヌクレオチドには、組換え体手段、すなわち通常のクローニング技術及びPCRTMなどを用いた組換え体ライブラリ又はセルゲノムからの核酸配列のクローニング、及び合成手段を限定的意味なく含めた当該技術分野において利用可能なあらゆる手段によって得られる全ての核酸配列が含まれるが、これに限定されるわけではない。
本書で使用されている「ポリペプチド」という用語は、通常は確定した配列を有するアミノ酸残基の鎖として定義づけされる。本書で使用されているポリペプチドという用語は、「ペプチド」及び「タンパク質」という用語と相互に包含し合う。
「増殖」というのはここでは、例えば細胞の増幅といった類似の形態の実体の複製又は繁殖を意味する。すなわち、増殖には、より多くの細胞の産生が包含され、これは、なかでも、単に細胞数を計数すること、細胞内への3H−チミジンの取り込みを測定すること
などによって測定され得る。
本書で使用されている「プロモータ」という用語は、細胞の合成機構により認識されるか、又は合成機構により導入される、ポリヌクレオチド配列の特異的転写を開始するのに必要とされるDNA配列として定義される。
本書で使用されている「プロモータ/調節配列」というのは、プロモータ/調節因子配列に対して作動的に連結された遺伝子産物の発現に必要とされる核酸配列を意味する。場合によっては、この配列はコアプロモータ配列であり得、その他の場合には、この配列は、遺伝子産物の発現のために必要とされるエンハンサ配列及びその他の調節要素をも内含し得る。プロモータ/調節配列は、例えば、組織特異的に遺伝子産物を発現するものであり得る。
「構成性」プロモータは、遺伝子産物をコードするか又は特定するポリヌクレオチドと作動的に連結された時点で、遺伝子産物を細胞の大部分の又は全ての生理学的条件下でその細胞内で産生させるヌクレオチド配列である。
「誘発性」プロモータは、遺伝子産物をコードするか又は特定するポリヌクレオチドと作動的に連結された時点で、プロモータに対応するインデューサが細胞内部に存在する場合にのみ実質的に細胞内で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
「組織特異的」プロモータは、遺伝子産物をコードするか又は特定するポリヌクレオチドと作動的に連結された時点で、その細胞がプロモータに対応するタイプの組織型の細胞である場合にのみ実質的に細胞内で遺伝子産物を産生させるヌクレオチド配列である。
本書で使用されている「RNA」という用語はリボ核酸として定義される。
本書で使用されている「組換え型DNA」という用語は、異なる供給源からのDNAの小片を接合させることにより産生されるDNAとして定義される。
本書で使用されている「組換え型ポリペプチド」は、組換え型DNA方法を用いることによって産生されたポリペプチドとして定義される。
本書で使用されている「自己抗原」という用語は、宿主細胞又は組織によって発現される抗原として定義される。自己抗原は腫瘍抗原であるが、一部の実施形態においては、正常な細胞及び腫瘍細胞の両方において発現される。当業者であれば、自己抗原が細胞内で過剰発現され得るということを容易に理解するものと思われる。
本書で使用されている「実質的に精製された」細胞というのは、基本的にその他の細胞型を含まない細胞である。実質的に精製された細胞は同様に、それがその天然に発生する状態において通常会合されるその他の細胞型から分離された細胞をも意味する。場合によっては、実質的に精製された細胞の集団というのは、相同な細胞集団を意味する。その他の場合には、この用語は単純に、それがその天然の状態で天然に会合されている細胞から分離された細胞のことを意味している。一部の実施形態では、細胞はインビトロ培養である。その他の実施形態では、細胞はインビトロで培養されない。
本書で使用されている「T細胞」という用語は、さまざまな細胞媒介型免疫反応に参加する胸腺由来の細胞として定義される。
本書で使用されている「B細胞」という用語は、骨髄及び/又は脾臓に由来する細胞と
して定義される。B細胞は、抗体を産生するプラズマ細胞へと発達し得る。
本書で使用されている「治療上有効な量」というのは、組成物が投与される哺乳動物に対し有益な効果をもたらすのに充分な治療用組成物の量である。
本書で使用されている「トランスフェクションを受けた」又は「形質転換を受けた」又は「形質導入を受けた」という用語は、外因性核酸を宿主細胞内に転移又は導入させるプロセスを意味する。「トランスフェクションを受けた」又は「形質転換を受けた」又は「形質導入を受けた」細胞は、外因性核酸でのトランスフェクション、形質転換又は形質導入を受けた細胞である。細胞には、一次対象細胞及びその後代が含まれる。
本書で使用される「転写制御下の」又は「作動的に連結された」という語句は、プロモータが、RNAポリメラーゼによる転写及びポリヌクレオチドの発現の開始を制御するべくポリヌクレオチドとの関係において正しい場所及び配向にあることを意味する。
本書で使用されている「ワクチン」という用語は、哺乳動物に対して材料を投与した後に免疫応答をひき起こすのに用いられる材料として定義される。
本書で使用されている「変異体」という用語は、それぞれ基準核酸配列又はペプチド配列と配列が異なっているものの基準分子の基本的特性を保持する核酸配列又はペプチド配列である。核酸変異体の配列の変化は、基準核酸によりコードされるペプチドのアミノ酸配列を改変しないかもしれず、又そうでなければ、アミノ酸の置換、付加、欠失、融合及び切断を結果としてもたらす可能性がある。ペプチド変異体の配列の変化は、標準的には制限されるか又は保存的であり、かくして、基準ペプチド及び変異体の配列は、全体的に類似しており、かつ数多くの領域で同一である。変異体及び基準ペプチドは、任意の組合せでの1つもしくはそれ以上の置換、付加、欠失によりアミノ酸配列において異なっている可能性がある。核酸又はペプチドの変異体は、対立遺伝子変異体などの天然に発生するものであり得、そうでなければ天然に発生するものとして知られていない変異体であり得る。核酸及びペプチドの天然に発生しない変異体は、突然変異誘発技術又は直接合成により作ることができる。
「ベクター」は、単離核酸を含みかつ細胞の内部に単離核酸を送達するために使用可能である物質の組成物である。線形ポリヌクレオチド、イオン又は両親媒性化合物と会合されたポリヌクレオチド、プラスミド及びウイルスを含めた(ただしこれに限定されるわけではない)数多くのベクターが当該技術分野において知られている。かくして、「ベクター」という用語には、自己複製プラスミド又はウイルスが含まれている。用語は同様に、例えばポリリシン化合物、リポソームなどの細胞内への核酸の移入を容易にする非プラスミド及び非ウイルス化合物を含むものとみなされるべきである。ウイルスベクターの例としては、アデノウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、レトロウイルスベクターなどが含まれる。
本書で使用されている「ウイルス」という用語は、全細胞内で複製する能力をもつ、外部脂質エンベロープを伴う又は伴わないタンパク膜内に封入された核酸(RNA又はDNA)からなる粒子として定義される。
「異種の」というのは、異なる種の動物に由来する移植片を意味する。
記述
哺乳動物の体内の免疫応答に応答した無制御のシグナル伝達は、生物学的に破滅的な結果をもたらし得る。従って、異なるレベルでシグナリング経路が綿密に制御される。さま
ざまなタイプの免疫応答調節因子が存在する。免疫応答を調節する1つの方法は、負の免疫調節因子を通したものである。従って、本発明は、細胞の免疫能力を増強するべく免疫細胞内の負の免疫調節因子を阻害することに関する。
負の免疫調節因子は、シグナル伝達に関与するタンパク質の阻害性相同体(例えば可溶性デコイTLR、阻害性TIR相同体、阻害性シグナリング分子イソ型、阻害性サイトカイン相同体など)、分子安定性に関与するタンパク質、シグナリング分子複合体の阻害性構成要素、シグナリング分子のリン酸化反応の調節に関与するタンパク質、NFκB標的遺伝子の転写を抑制する転写因子、RNA翻訳及び安定性の調節に関与するタンパク質、サイトカインシグナリング調節因子などを含む(ただしこれに限定されるわけではない)異なるタンパク質ファミリーに属し得る。負の免疫調節因子の例としてはsTLR、RP105、SIGIRR、ST2、NOD2、MyD88s、IRAK(IRAKM、IRAK1、IRAK2)、IRF−4、FLN29、TWEAK、TRIAD3A、CYLD、Cbl、A20、SUMO(SUMO1、SUMO2、SUMO3、及び SUMO4)、IkBタンパク質、MKPs、Foxj1、Foxo3a、TWIST(Twist1、Twist2)、Roquin、Dok(Dok−1、Dok−2)、PI3K、プロスタグランジン、TRAIL−R、アレスチン、TOLLIP、SOCS(SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOCS4、SOCS5、SOCS6、SOCS7及びCIS)、PIAS(PIAS1、PIAS3、PIASx及びPIASy)、SHP(SHP−1及びSHP−2)などが含まれるが、これに限定されるわけではない。
一態様においては、負の免疫調節因子は、サイトカインシグナル伝達のサプレッサ(SOCS)、SH2含有ホスファターゼ(SHP)及び活性化されたSTATのタンパク質インヒビター(PIAS)を含むサイトカインシグナリングの調節因子であり、これらを(ただしこれに限定されるわけではない)含む。
サイトカインシグナリングの誘発性インヒビターは、サイトカインシグナリング(SOCS)タンパク質のサプレッサであり、その中にはSOCS1〜SOCS7及びサイトカイン誘発性SH2ドメイン含有タンパク質(CIS)という8つのファミリーメンバーが存在する。SOCSタンパク質は、サイトカインレセプタ又は付随するJAKを認識し、シグナリングでの直接的干渉及びユビキチン媒介型プロテアソーム分解についてレセプタ複合体をターゲティングすることの両方によって、シグナル伝達を減衰させる。
(SHP−1及びSHP−2)を含む(ただしこれに限定されるわけではない)SHPタンパク質は、構成的に発現され、ヤーヌスキナーゼ(JAK)及びそのレセプタなどの脱リン酸化シグナリング中間体によりサイトカインシグナル伝達を減衰させることができる。PIAS1、PIAS3、PIASx及びPIASyを含むもののこれに限定されるわけではない活性化されたSTATのタンパク質インヒビター(PIAS)ファミリーのメンバーも又、構成的に発現され、STAT活性を抑止することによりシグナル伝達を減衰させる。スモ化プロセスは、STAT活性のPIAS媒介型抑止に関与してきた。
本発明は、負の免疫調節因子の阻害が哺乳動物に対して治療上の利益を提供するという発見に関係する。すなわち、免疫細胞内の負の免疫調節因子の阻害は、細胞内の免疫能力と結びつけられたシグナリング経路の増強に役立つ。一態様においては、シグナル伝達に関与するタンパク質の阻害性相同体(例えば可溶性デコイTLR、阻害性TIR相同体、阻害性シグナリング分子イソ型、阻害性サイトカイン相同体など)、分子安定性に関与するタンパク質、シグナリング分子複合体の阻害性構成要素、シグナリング分子のリン酸化反応の調節に関与するタンパク質、NFκB標的遺伝子の転写を抑制する転写因子、RNA翻訳及び安定性の調節に関与するタンパク質、サイトカインシグナリング調節因子又はそれらの任意の組合せの阻害が、哺乳動物に対して治療上の利益を提供する。
かくして、本発明は、免疫細胞内の負の免疫調節因子を阻害して免疫細胞の免疫能力を増強するための組成物及び方法を含んでなる。好ましくはA20、SUMO(SUMO1、SUMO2、SUMO3及びSUMO4)、Foxj1、Foxo3a、TWIST(Twist1、Twist2)、SOCS(SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOCS4、SOCS5、SOCS6、SOCS7及びCIS)、PIAS(PIAS1、PIAS3、PIASx及びPIASy)、SHP(SHP−1及びSHP−2)などよりなる群から選択された1つもしくはそれ以上の負の免疫調節因子を阻害することで、治療上の利益が得られる。
さらなる態様においては、サイトカインシグナル調節因子からの任意の1つもしくはそれ以上のメンバーの阻害が、治療上の利益を提供する。かくして本発明は、免疫細胞内のサイトカインシグナリング調節因子を変調させて免疫細胞内の免疫能力を増強するための組成物及び方法を含んでなる。
阻害すべき所望の負の免疫調節因子の如何に関わらず、細胞の免疫能力を増強する本発明の組成物は、負の免疫調節因子のインヒビター(例えばインヒビターは所望の負の免疫調節因子に対応するsiRNAである)、抗原、サイレンシング化された免疫細胞、パルスを受けた細胞、抗原でのパルスを受けたサイレンシング化された細胞、サイトカインなどのうちの少なくとも1つもしくはそれ以上のものの任意の組合せを含む。組成物は、インビボ免疫化及び/又はエクスビボ療法のためのワクチンであり得る。
本発明は、APC内の臨界制御点を無効化することによりワクチンの効能を増強するための包括的手段としてのサイレンシング化されたAPCを提供する。本発明のサイレンシング化されたAPC又は負の免疫調節因子のインヒビターでのワクチン接種は、負の免疫調節因子のサイレンシング化により抗原提示免疫原性APCがインビボで持続的に抗原特異的T細胞を刺激できるようになることから、抗原特異的免疫を増強する。本発明の一実施形態においては、サイレンシング化されたAPCは、調節T細胞抑制を阻害する前炎症性サイトカインの産生及びAPCの成熟を増強することによって、調節T細胞をオフ切換えする能力をもつ。
サイレンシング化されたAPCを生成することに加えて、本発明は、同様に、サイレンシング化された細胞傷害性Tリンパ球(CTL)をも含む。本開示は、本発明の方法を用いてサイレンシング化されたCTLが増強した細胞溶解活性を示すことを実証している。増強した細胞溶解活性は、細胞療法及び/又はワクチン接種において治療上の利益を提供する。
負の免疫調節因子の阻害:
本書で提示されている開示に基づき、本発明は、負の免疫調節因子を阻害しかくして負の免疫調節因子が免疫応答の調節と関係しているという包括的概念を包含している。負の免疫調節因子は異なるタンパク質ファミリーに属し得る。負の免疫調節因子の各ファミリーは、免疫応答を調節するための異なる戦略を有する。異なるファミリーには、シグナル伝達に関与するタンパク質の阻害性相同体(例えば可溶性デコイTLR、阻害性TIR相同体、阻害性シグナリング分子イソ型、阻害性サイトカイン相同体など)、分子安定性に関与するタンパク質、シグナリング分子複合体の阻害性構成要素、シグナリング分子のリン酸化反応の調節に関与するタンパク質、NFκB標的遺伝子の転写を抑制する転写因子、RNA翻訳及び安定性の調節に関与するタンパク質、サイトカインシグナリング調節因子などが含まれるが、これに限定されるわけではない。本書で提示されている開示に基づくと、免疫細胞内の負の免疫調節因子を阻害することでこの細胞中の免疫能力は増強される。
一部の態様においては、免疫細胞内の負の免疫調節因子を阻害することで、細胞内のトール様レセプタ(TLR)及び腫瘍壊死因子レセプタ(TNFR)は増強される。細胞内のTLR及びTNFRを増強した結果として、その細胞の免疫能力は増大する。
シグナル伝達に関与するタンパク質の阻害性相同体
有効な免疫応答は、病原性感染に応答したDCの活性化に起因する。この活性化には、TLRなどの病原体認識レセプタを通したシグナリングが含まれる。TLRのメンバーは、共通のシグナリング経路特にNF−κB及びストレス活性化を受けたタンパク質キナーゼの活性化を導く経路を活性化する保存されたサイトゾルトール/インターロイキン−1レセプタ(TIR)ドメインの存在に起因して、同様にシグナリングする。NF−κB活性化は、TNF、IFN、インターロイキン1(IL−1)、IL−6、及びIL−12などの前炎症性サイトカインを分泌することによって、及びCD80、CD86及びCD40などの共同刺激分子を発現することにより、免疫応答の触媒として作用する。
細胞内のTLRシグナリングに基づき免疫応答を調節するための頻繁に使用されている戦略は、TLRの細胞外部分で刺激活性をもたないその非機能的相同体又はイソ型によって主要なシグナリング分子を競合的に阻害することである。負の免疫調節因子のこのファミリー内のタンパク質としては、可溶性デコイTLR(sTLR)が含まれるが、これに限定されるわけではない。sTLRは、病原性産物(例えば病原菌産物)とTLRの相互作用を抑制する。例えば、可溶性デコイTLR2は、対応する病原菌リガンドとの相互作用についてTLR2と競合する。別の場合には、可溶性デコイTLR4はMD2と相互作用し、MD2−TLR4複合体の形成を阻害し、かくしてTLR4によるLPS媒介型シグナリングを遮断する。
本開示に基づくと、当業者であれば本発明が負の免疫調節因子を阻害するための組成物及び方法であって、負の免疫調節因子がシグナリング分子の非機能的相同体である組成物及び方法を含むことを認識するものと思われる。好ましくは、シグナリング分子の非機能的相同体は可溶性デコイTLRである。シグナリング分子の非機能的相同体を阻害すること(又はsTLRをその他の形で阻害すること)は、シグナリング分子上の非機能的相同体の阻害効果を阻害するのに役立つ。
可溶性デコイTLRを阻害することに加えて、TLRシグナリングを増強するもう1つの戦略は、TLRの細胞質領域で非機能的TIR相同体又はイソ型を含有するタンパク質を阻害することにある。これらのタンパク質は、いかなる刺激活性ももたないTIRドメインを含有する膜結合非機能的TIR相同体(別途非機能的レセプタとしても知られているもの)を共有するタンパク質のファミリーのメンバーである。かかるタンパク質には、STGIRR(単一免疫グロブリンIL−IR−関連分子)、ST2及びRP105が含まれるが、これらに限定されるわけではない。
いずれかの特定の理論により束縛されることは望まないが、これらのタンパク質は、TLRがその対応するシグナリング分子に結合するのを阻害するか又は封鎖することにより、TLRシグナリングを抑制する。例えば、SIGIRRは、シグナリング分子と相互作用するべくTLR4と競合することによりTLR4シグナリングを減衰させる。かくして、本発明は、負の免疫調節因子を阻害する組成物及び方法であって、負の免疫調節因子が免疫細胞内のTLRシグナリングを増強するための膜結合非機能的TIR相同体である組成物及び方法を含む。この戦略は、免疫細胞の免疫能力を増強するべく負の免疫調節因子を阻害するという一般的概念に対する裏づけを提供する。
TLRシグナリングは、同様に、NOD2によっても調節され得る。NOD2は、細菌
産物ムラミルジペプチド(MDP)を認識できるヌクレオチド結合オリゴマー化ドメインファミリの一員である。NOD2はTLR2シグナリングの負の調節因子である。本書に提示される本開示に基づくと、免疫細胞内でNOD2を阻害することにより、細胞内のTLRシグナリングに対するNOD2の阻害効果は抑制される。従って、免疫者の体内でNOD2を阻害すると、その細胞の免疫能力は増強される。
TLRシグナリングを調節するもう1つの戦略は、MyD88及びIRAKなどの細胞質シグナリングタンパク質を調節することにある。細胞質シグナリング分子を阻害する負の免疫調節因子は、TLRシグナリングにおける主要なシグナリング分子の非機能性イソ型(又は別途シグナリング分子イソ型としても知られている)であるものとみなされる。非機能的イソ型であるとみなされる負の免疫調節因子の一例としては、中間ドメインが欠如したMyD88の交互にスプライシングされた短い変異体がある。MyD88と表示されるMyD88のこのスプライス変異体は、TLRシグナリングを抑制することがわかっている。例えば、MyD88は、LPS誘発されたNF−κB活性を阻害する。MyD88は、IRAK4に結合しIRAK1リン酸化を促進する能力をもたないことから、LPS誘発型NF−κB活性を阻害するものと考えられている。本書に提示されている開示に基づくと、1つの細胞内の非機能的イソ型(例えばMyD88)である負の免疫調節因子を阻害することで、細胞内のTLRシグナリングを増強しかくしてその細胞の免疫能力を増強するための手段が提供される。
シグナル伝達に関与するタンパク質の阻害性相同体のファミリーに属するタンパク質のもう1つの例はIRAKである。キナーゼのIRAKファミリーは4つのメンバーすなわちIRAK1、IRAK2、IRAK4及びIRAKMを含んでなる。さらに、IRAKMにはキナーゼ活性が欠如しており、それは細胞内のTLRシグナリングの包括的な負の免疫調節因子として機能する。従って、IRAKMなどの非機能的イソ型である負の免疫調節因子を阻害することにより、免疫細胞内の負の免疫調節因子を阻害して細胞の免疫能力を増強するという一般的概念に対する裏づけが提供される。
TLRシグナリングのその他の負の免疫調節因子には、転写因子のIFN調節因子(IRF)ファミリーのメンバー、FLN29(新規インターフェロン及びLPS誘発型遺伝子)及びTWEAKが含まれるがこれに限定されるわけではない。従って、これらの負の免疫調節因子のうちの1つもしくはそれ以上のものを阻害することにより、免疫応答に対する各々の負の免疫調節因子の阻害効果を妨げることができる。従って、これらの負の免疫調節因子のうちのいずれか1つもしくはそれ以上のものを阻害することにより、細胞内でTLRシグナリングを増強しかくして細胞の免疫能力を増強するための手段が提供される。
分子安定性:
負の免疫調節因子の1つのファミリーは、シグナリング分子の安定性を調節する戦略を利用する。この戦略は、ユビキチン化/脱ユビキチン化により主要シグナリング分子の安定性を調節すること、そしてスモ化及びその他の機序によりシグナリング分子複合体の阻害構成要素の安定性を増大することと結びつけられている。TRIAD3A、Cyld、Cbl、A20及びSUMOなどのこれらの負の免疫調節因子の多くは、標的TLR及びシグナリング分子を修飾しその分解を促進してTLRシグナル伝達を減衰させる2ビキチン修飾酵素である。場合によっては、これらの負の免疫調節因子は、同様にTNFRシグナル伝達をも減衰できる。従って、本書に提示されている開示に基づくと、当業者であれば、免疫細胞内のこれらの負の免疫調節因子のうちの1つもしくはそれ以上のものを阻害することにより細胞内のTLR及び/又はTNFRシグナリングが増強されるということを認識するであろう。細胞内のTLRの増強及び/又はTNFRシグナリングの結果は、細胞の免疫能力の増大である。
分子安定性を調節することに関与するその他の負の免疫調節因子としては、アレスチンファミリーが含まれる。本開示に基づくと、当業者であれば、免疫細胞内のアレスチンファミリーメンバーを阻害することにより、NF−κBの活性化に対するアレスチンファミリーメンバーの阻害効果が抑制されるということを認識するであろう。従ってアレスチンファミリーメンバーの阻害は細胞の免疫能力を増大させる。
分子複合体をシグナリングする阻害性構成要素
シグナリング分子複合体の阻害性構成要素のファミリーのメンバーである負の免疫調節因子には、IκBタンパク質が含まれる。IκBα、IκBβ及びIκBεを含むIκBタンパク質は、細胞質内のNF−κBタンパク質を封鎖しかくして、NF−κBをその正常な機能から阻害する。IκBタンパク質は、NF−κBサブユニット上の核局在化配列(NLS)をマスキングすることによって細胞質内のNF−κBを保持する。
NF−κBの活性化における重要な事象は、IκBキナーゼ(IKK)複合体によるIκBのリン酸化である。IKK複合体は、TLR、リガンド及びTNFを含めたさまざまな刺激によるNF−κBの活性化のための合流点である。IKK複合体は、2つの触媒サブユニットIKKα及びIKKβを含有し、NF−κB転写因子の活性化を制御する。IKKβは、前炎症性サイトカイン及び病原菌産物に応答したNF−κB活性化を媒介する。NF−κBの活性化を制御する上でのIKKαについての負の調節という役目が観察されてきた。IKKαは、NF−κBサブユニットRelA及びcRelの分解及び前炎症性遺伝子プロモータからのRelA及びc−Relの除去の両方を加速することによりNF−κB活性の抑制に寄与する。
本書に提示されている開示に基づくと、NF−κBを負に調節するか又はその他の形でNF−κBの活性化を防止するタンパク質は、細胞の免疫能力を増強するべく本書に開示されている方法を用いるターゲティングされた阻害のための候補である。当業者であれば、IκBタンパク質IKKα、IKKβ又は任意の組合せを阻害することにより、NF−κB活性化に対するこれらのタンパク質の阻害効果を抑制することができるということを認識するであろう。
シグナリング分子のリン酸化の調節
MAPKシグナリング経路は、免疫応答の活性化と結びつけられる。MAPK経路は、ホスファターゼがMAPK経路の活性化の後に誘発されることから、MAPKホスファターゼ(MKP)によるフィードバック阻害を受ける。本書で提示されている開示に基づくと、MKP(例えばMKP5及びMKP6)を阻害することは、その対応するMAPK経路に対するMKPの阻害効果を抑制するのに役立つ。MKP5及びMKP6は、そのそれぞれのMAPK標的の活性を阻害することによりT細胞活性化を負に調節することが示されてきた。
本書で提示されている開示に基づくと、当業者であれば、MKP(例えばMKP5及びMKP6)を阻害することによりMAPKシグナル経路に対するホスファターゼの阻害効果を抑制できるということを認識することだろう。免疫細胞内のMKPを阻害することにより、細胞の免疫能力を増強することが可能である。
標的遺伝子転写の調節
免疫応答を調節するためのもう1つの戦略は、NFκB標的遺伝子の転写を抑制するか又はシグナリング分子複合体中の負の構成要素の転写を増強することにある。かかる戦略には、Twist−1、Twist−2、Foxj1、及びFoxo3aを含む(これに限定されるわけではない)負の免疫調節因子を抑制することが包含されている。本書で提
示されている開示は、これらのタンパク質のうちの少なくとも1つのタンパク質のレベルを抑制することで細胞の免疫能力を増強することができるということを実証している。
Foxo3a及びFoxj1は、NF−κBの負の調節に活発に関与するフォークヘッド転写因子ファミリーのメンバーである。Twistは、NF−κBのもう1つの負の免疫調節因子である。Twistは、サイトカインプロモータの中のEボックスに結合し、隣接するκB部位に結合されたNF−κBの活性を阻害する。
負の免疫調節因子を阻害する方法
本書の開示に基づくと、本発明は、細胞の免疫能力を増強するべくその細胞内の負の免疫調節因子を阻害するための包括的概念を含む。好ましくは、本発明は、A20、SUMO(SUMO1、SUMO2、SUMO3及びSUMO4)、Foxj1、Foxo3a、TWIST(Twist1、Twist2)、SOCS(SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOCS4、SOCS5、SOCS6、SOCS7及びCIS)、PIAS(PIAS1、PIAS3、PIASx及びPIASy)、SHP(SHP−1及びSHP−2)などよりなる群から選択された1つもしくはそれ以上の負の免疫調節因子を阻害する工程を含む。
一実施形態においては、本発明は免疫細胞の免疫能力を増強するための組成物を含んでなる。好ましくは、組成物は、A20、SUMO(SUMO1、SUMO2、SUMO3及びSUMO4)、Foxj1、Foxo3a、TWIST(Twist1、Twist2)、SOCS(SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOCS4、SOCS5、SOCS6、SOCS7及びCIS)、PIAS(PIAS1、PIAS3、PIASx及びPIASy)、SHP(SHP−1及びSHP−2)などよりなる群から選択された1つもしくはそれ以上の負の免疫調節因子を阻害するインヒビターを含んでなる。
負の免疫調節因子のインヒビターを含んでなる組成物は、小分子干渉RNA(siRNA)、microRNA、アンチセンス核酸、リボザイム、トランス優性遺伝子負突然変異体、細胞内抗体、ペプチド及び小分子よりなる群から選択される。
当業者であれば、本書で提供されている開示に基づき、1つの細胞内のサイトカインシグナリング調節因子などの負の免疫調節因子のmRNA及び/又はタンパク質レベルを減少させるための1つの方法が、調節因子をコードする核酸の発現を削減又は阻害することによるものである、ということを認識するであろう。かくして、細胞内の負の免疫調節因子のタンパク質レベルは、例えばアンチセンス分子又はリボザイムなどの遺伝子発現を阻害するか又は削減する分子又は化合物を用いても低減させることができる。
好ましい一実施形態においては、変調配列は、プラスミドベクターにより発現されるアンチセンス核酸配列である。アンチセンス発現ベクターは、哺乳動物細胞又は哺乳動物自体をトランスフェクトし、かくして所望の負の免疫調節因子の削減された内因性発現をひき起こすために使用される。しかしながら、本発明は、アンチセンス分子での細胞のトランスフェクションにより負の免疫調節因子の発現を阻害することに限定されるものとして解釈されてはならない。むしろ本発明は、リボザイムの使用、非機能的負免疫調節因子(すなわちトランス優性負突然変異体)の発現及び細胞内抗体の使用を含めた(ただしこれに限定されるわけではない)細胞内のタンパク質の発現又は活性を阻害するための当該技術分野において既知のその他の方法を包含している。
アンチセンス分子及び遺伝子発現を阻害するためのそれらの使用は、当該技術分野において周知である(例えば、コーエン(Cohen)、1989年、「Oligodeoxyribonucleotides、Antisense Inhibitors of
Gene Expression」、CRC Press中を参照のこと)。アンチセンス核酸は、その用語が本書の他の場所で定義されている通り、少なくとも特異的mRNA分子の一部分に相補的であるDNA又はRNA分子である(ワイントラウブ(Weintraub)、1990年、Scientific American第262号:40頁)。細胞内では、アンチセンス核酸は対応するmRNAに対しハイブリッド形成し、2本鎖分子を形成して遺伝子の翻訳を阻害する。
遺伝子の翻訳を阻害するためのアンチセンス方法の使用は、当該技術分野において既知であり、例えばマーカス−サクラ(Marcus−Sakura)(1988年、Anal.Biochem.第172号:289頁)の中で記述されている。このようなアンチセンス分子は、イノウエ(Inoue、1993年、米国特許第5,190,931号明細書)により教示されている通りアンチセンス分子をコードするDNAを用いて遺伝子発現を介して細胞に提供され得る。
あるいは、本発明のアンチセンス分子は合成的に作製しその後細胞に提供され得る。約10〜約30、より好ましくは約15個のヌクレオチドのアンチセンスオリゴマーは、容易に合成され標的細胞に導入されることから好まれる。本発明により考慮されている合成アンチセンス分子には、未修飾オリゴヌクレオチドに比べて改善された生物活性を有する当該技術分野において既知のオリゴヌクレオチド誘導体が含まれる(米国特許第5,023,243号明細書参照)。
遺伝子発現を阻害するためのリボザイム及びそれらの使用も同様に当該技術分野において周知である(例えば、チェフ(Cech)ら、1992年、J.Biol.Chem.第267号:17479〜17482頁;ハンペル(Hampel)ら、1989年、Biochemistry第28号:4929〜4933頁;エックスタイン(Eckstein)ら、国際公開第WO92/07065号パンフレット;アルトマン(Altman)ら、米国特許第5,168,053号明細書を参照のこと)。リボザイムは、DNA制限エンドヌクレアーゼと同様にその他の1本鎖RNAを特異的に分割する能力を有するRNA分子である。これらのRNAをコードするヌクレオチド配列の修飾を通して、RNA分子内の特異的ヌクレオチド配列を認識しそれを分割するように分子を工学処理することができる(チェフ、1988年、J.Amer.Med.Assn.第260号:3030頁)。このアプローチの主たる利点は、リボザイムが配列特異的である、という事実にある。
リボザイムには2つの基本型、すなわちテトラヒメナ型(ハッセルホッフ(Hasselhoff)、1988年、Nature第334号:585頁)及びハンマーヘッド型がある。テトラヒメナ型リボザイムは、4塩基の長さをもつ配列を認識し、一方ハンマーヘッド型リボザイムは、長さが11〜18塩基の塩基配列を認識する。配列が長くなるほど、配列が標的mRNA種内で専ら発生することになる確率は大きくなる。その結果として、特異的mRNA種を不活性化するためには、テトラヒメナ型リボザイムよりもハンマーヘッド型リボザイムの方が好ましく、さまざまな無関係のmRNA分子の内部で無作為に発生し得る比較的短い認識配列よりも、18塩基の認識配列が好ましい。
負の免疫調節因子の発現を阻害するのに有用なリボザイムは、所望の負の免疫調節因子のmRNA配列に相補的である基本的リボザイム構造の中に標的配列を取込むことにより設計可能である。所望の負の免疫調節因子をターゲティングするリボザイムは、市販の試薬を用いて合成され得(アプライド・バイオシステムズ社(Applied Biosystems,Inc.)、カリフォルニア州フォスターシティー(Foster City,CA))、そうでなければ、それらをコードするDNAから遺伝学的に発現され得る。
本発明のもう1つの態様においては、所望の負の免疫調節因子を不活性化及び/又は封鎖することにより、負の免疫調節因子を阻害することができる。従って、トランス優性負突然変異体を使用することにより、負の免疫調節因子の効果の阻害を達成することができる。あるいは、その他の点では負の免疫調節因子に対するアンタゴニストとして知られている所望の負の免疫調節因子に特異的な細胞内抗体を使用することが可能である。一実施形態においては、アンタゴニストは、負の免疫調節因子の結合パートナーと相互作用しかくして対応する野生型負免疫調節因子と競合するという所望の特性をもつタンパク質及び/又は化合物である。もう1つの実施形態においては、アンタゴニストは、負の免疫調節因子と相互作用しかくして負の免疫調節因子を封鎖するという所望の特性を有するタンパク質及び/又は化合物である。
小分子干渉RNA(siRNA)
小分子干渉RNA(siRNA)は、問題の遺伝子又はポリヌクレオチドに対しターゲティングされている1組のヌクレオチドを含んでなるRNA分子である。本書で使用される通り、「siRNA」という用語は、(i)2本鎖RNAポリヌクレオチド、(ii)1本鎖ポリヌクレオチド及び(iii)1、2、3、4個以上のヌクレオチド改変又は置換を内部に有する(i)又は(ii)のいずれかのポリヌクレオチドを含めた(ただしこれに限定されるわけではない)全ての形態を包含する。
2本鎖ポリヌクレオチドの形態をしたsiRNAは、長さ約18塩基対、約19塩基対、約20塩基対、約21塩基対、約22塩基対、約23塩基対、約24塩基対、約25塩基対、約26塩基対、約27塩基対、約28塩基対、約29塩基対又は約30塩基を含んでなる。2本鎖siRNAは、負の免疫調節因子の発現及び/又は活性に干渉する能力をもつ。
1本鎖siRNAは、問題の遺伝子又はポリヌクレオチドにターゲティングされているRNAポリヌクレオチド配列の一部分を含んでなる。1本鎖siRNAは長さがヌクレオチド約18個、ヌクレオチド約19個、ヌクレオチド約20個、ヌクレオチド約21個、ヌクレオチド約22個、ヌクレオチド約23個、ヌクレオチド約24個、ヌクレオチド約25個、ヌクレオチド約26個、ヌクレオチド約27個、ヌクレオチド約28個、ヌクレオチド約29個又はヌクレオチド約30個のポリヌクレオチドを含んでなる。1本鎖siRNAは、A20、SUMO(SUMO1、SUMO2、SUMO3、及びSUMO4)、Foxj1、Foxo3a、TWIST(Twist1、Twist2)、SOCS(SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOCS4、SOCS5、SOCS6、SOCS7及びCIS)、PIAS(PIAS1、PIAS3、PIASx及びPIASy)、SHP(SHP−1及びSHP−2)などの標的ポリヌクレオチドの発現及び/又は活性に干渉する能力をもつ。1本鎖siRNAは同様に、相補的配列にアニールして負の免疫調節因子の発現及び/又は活性に干渉する能力をもつdsRNAをもたらす能力も有している。
さらにもう1つの態様においては、siRNAは、2本鎖又は1本鎖のいずれかのポリヌクレオチドを含んでなるポリヌクレオチドを含んでなり、ここでsiRNAは内部に1、2、3、4個以上のヌクレオチド改変又は置換を有している。
siRNAポリヌクレオチドは、一般に転写後の遺伝子サイレンシング化機序を介して発生すると考えられているRNA活性に干渉するRNA核酸分子である。siRNAポリヌクレオチドは好ましくは、2本鎖RNA(dsRNA)を含んでなるが、そのように限定されることを意図されておらず、1本鎖RNAを含んでなっていてよい(例えば、マルチネス(Martinez)ら、2002年、Cell第110号:563〜74頁を参
照のこと)。本発明中に含まれるsiRNAポリヌクレオチドは、本書で提供されているようなヌクレオチド(リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチド又は両方の組合せ)及び/又はヌクレオチド類似体(例えば、標準的に5’〜3’中のリン酸ジエステル連結中のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドなど)のその他の天然に発生する、組換え型、又は合成1本鎖又は2本鎖ポリマーをも含んでなり得る。従って、siRNAポリヌクレオチドの転写を導く能力をもつDNA配列などの本書に開示されているいくつかの配列例は同様に、相補性ヌクレオチド塩基対合の充分に立証済みの原理を考慮して、対応するRNA配列及びその補体を記述するためにも意図されているということがわかるだろう。
RNAポリメラーゼプロモータのためのプロモータを含有するDNA(ゲノム、cDNA、又は合成)を鋳型として用いて、siRNAを転写することができる。例えば、プロモータはU6プロモータ又はHIRNAポリメラーゼIIIプロモータであり得る。あるいは、siRNAは合成的に誘導されたRNA分子であり得る。一部の実施形態においては、siRNAポリヌクレオチドは平滑末端を有し得る。いくつかのその他の実施形態においては、siRNAポリヌクレオチドの少なくとも1つのストランドが、siRNAポリヌクレオチドのいずれかのストランドの3’末端において「オーバーハングし」(すなわち相対するストランドの中の相補的塩基と塩基対合しない)少なくとも1つ、好ましくは2つのヌクレオチドを有している。本発明の好ましい実施形態においては、siRNAポリヌクレオチド2重鎖の各ストランドは、3’末端で2ヌクレオチドオーバーハングを有する。2−ヌクレオチドオーバーハングは好ましくはチミジンジヌクレオチド(TT)であるが、同様にその他の塩基例えばTCジヌクレオチド又はTGジヌクレオチド又はその他のあらゆるジヌクレオチドを含んでなり得る。オーバーハングジヌクレオチドは同様に、干渉のためにターゲティングされているポリヌクレオチドの配列の5’末端にある2つのヌクレオチドに対しても相補的であり得る。siRNAポリヌクレオチドの3’末端の論述については、例えば国際公開第01/75164号パンフレットなどを参照のこと。
好ましいsiRNAポリヌクレオチドは、約18〜30ヌクレオチド塩基対、好ましくは約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26又は約27塩基対の2本鎖ポリヌクレオチドを含んでなり、その他の好ましい実施形態においては、約19、約20、約21、約22又は約23塩基対、或いは約27塩基対を含んでなり、かくして、「約」という用語の使用は、一部の実施形態において及び一部の条件下で、選択されたポリペプチドの発現に干渉する能力をもつ機能的siRNAポリヌクレオチドを発生させ得る前進する連続的分割工程が絶対的に効果的でない可能性がある、ということを標示している。従って、siRNAポリヌクレオチドは、siRNAのプロセッシング、生合成又は人工的合成における可変性の帰結として、長さが1、2、3、4塩基対以上異なる(例えばヌクレオチド挿入又は欠失による)1つもしくはそれ以上のsiRNAポリヌクレオチド分子を内含し得る。本発明のsiRNAポリヌクレオチドは同様に、特定の配列からの1、2、3、又は4個のヌクレオチドにおいて異なることによって(例えば塩基転位又は塩基転換を含めたヌクレオチド置換による)可変性を示すポリヌクレオチド配列を含んでなることもできる。これらの差は、2本鎖ポリヌクレオチドのセンス又はアンチセンスストランドのいずれの中にあるかに関わらず、分子の長さに応じて特定のsiRNAポリヌクレオチド配列のヌクレオチド位置のいずれかで発生可能である。ヌクレオチド差は、2本鎖ポリヌクレオチドの1本のストランド上に発見され得、ここで代替ヌクレオチドと共に水素結合塩基対合を標準的に形成することになる相補的ヌクレオチドは必ずしも対応する形で置換され得ない。好ましい実施形態においては、siRNAポリヌクレオチドは、特異的ヌクレオチド配列との関係において相同である。
一部の実施形態では、本発明のsiRNAポリヌクレオチドを含んでなるポリヌクレオ
チドは、標準的にはスペーサ配列により分離された、1本鎖オリゴヌクレオチドフラグメント(例えば約18〜30ヌクレオチドの)及びその逆補体を含んでなる1本鎖ポリヌクレオチドから誘導され得る。或る種のこのような実施形態に従うと、スペーサの分割が1本鎖オリゴヌクレオチドフラグメント及びその逆補体を提供し、かくして、これらはアニールして、場合によりいずれかの又は両方のストランドの3’末端及び/又は5’末端からの1、2、3又は4個以上のヌクレオチドの付加又は除去を結果としてもたらすさらなるプロセッシング工程を伴って、本発明の2本鎖siRNAポリヌクレオチドを形成することができる。一部の実施形態においては、スペーサは、その分割に先立ってかつ場合により、いずれか又は両方のストランドの3’末端及び/又は5’末端からの1、2、3、4個以上のヌクレオチドの付加又は除去を結果としてもたらし得る後続するプロセッシング工程の前に、フラグメント及びその逆補体がアニールし2本鎖構造(例えばヘアピンポリヌクレオチドのようなもの)を形成できるようにする長さを有している。従って、スペーサ配列は、2本鎖核酸内にアニールされた時点でsiRNAポリヌクレオチドを結果としてもたらす2つの相補的ポリヌクレオチド配列領域の間にある本書で提供されている通りのあらゆるポリヌクレオチド配列であり得る。好ましくは、スペーサ配列は少なくとも4つのヌクレオチドを含んでなる。一部の実施形態においては、スペーサは5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21〜25、26〜30、31〜40、41〜50、51〜70、71〜90、91〜110、111〜150、151〜200個又はそれ以上のヌクレオチドを含んでなり得る。1つのスペーサにより分離された2つの相補的ヌクレオチド配列を含んでなる単一のヌクレオチドストランドから誘導されるsiRNAポリヌクレオチドの例が記述されてきた(例えば、ブルンメルカンプ(Brummelkamp)ら、2002年、Science第296号:550頁;パディソン(Paddison)ら、2002年、Genes Develop.第16号:948頁;ポール(Paul)ら、2002年、Nat.Biotechnol.第20号:505〜508頁;グラバレク(Grabarek)ら、2003年、BioTechniques第34号:734〜44頁)。
ポリヌクレオチド変異体は、siRNAポリヌクレオチドの活性が実質的に減少しないような形で1つもしくはそれ以上の置換、付加、欠失及び/又は挿入を含有し得る。siRNAポリヌクレオチドの活性に対してヌクレオチド含有量の何らかのこのような改変が有する効果は一般に、本書の他の箇所で記述されているように査定可能である。変異体は、好ましくは未変性A20、SUMO(SUMO1、SUMO2、SUMO3及びSUMO4)、Foxj1、Foxo3a、TWIST(Twist1、Twist2)、SOCS(SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOCS4、SOCS5、SOCS6、SOCS7及びCIS)、PIAS(PIAS1、PIAS3、PIASx及びPIASy)、SHP(SHP−1及びSHP−2)などをコードするポリヌクレオチド配列の一部分に対し、好ましくは少なくとも約75%、78%、80%、85%、87%、88%又は89%の同一性、そしてより好ましくは少なくとも約90%、92%、95%、96%又は97%の同一性を示す。同一性百分率は、当業者にとっては周知のコンピュータアルゴリズムを用いることを含めた任意の方法を用いて、標的ポリヌクレオチドの対応する部分とポリヌクレオチドの配列を比較することによって容易に判定可能である。これらのアルゴリズムとしては、Align又はBLASTアルゴリズムが含まれる(アルトシュール(Altschul)、1991年、J.Mol.Biol.第219号:555〜565頁;ヘニコフ(Henikoff)及びヘニコフ、1992年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA第89号:10915〜10919頁)。
一部のsiRNAポリヌクレオチド変異体は、標的ポリヌクレオチドをコードするポリヌクレオチドの一部分と実質的に相同であり得る。これらのポリヌクレオチド変異体から誘導された1本鎖ポリヌクレオチドは、中程度にストリンジェントな条件下で、標的ポリペプチドをコードする天然に発生するDNA又はRNA配列に対しハイブリッド形成する
能力を有する。中程度にストリンジェントな条件下で標的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に対し検出可能な形でハイブリッド形成するsiRNAポリヌクレオチドが、特定の標的ポリヌクレオチドに対し相補的である少なくとも10個の連続するヌクレオチド配列、より好ましくは11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29または30個の連続するヌクレオチドを有し得る。一部の好ましい実施形態においては、このようなsiRNA配列(又はその補体)は、発現との干渉が望まれている標的ポリペプチドをコードする単一の特定のポリヌクレオチドに固有のものとなり得る。一部のその他の実施形態においては、配列(又はその補体)は、ポリペプチド発現との干渉が望まれている標的ポリペプチドをコードする2つ以上の関係するポリヌクレオチドによって共有され得る。
適切な中程度にストリンジェントな条件としては、例えば、5×SSC、0.5%SDS、1.0mMEDTA(pH8.0)の溶液中でポリヌクレオチドを予備洗浄すること;50℃〜70℃で、5×SSCで1〜16時間(例えば一晩中)ポリヌクレオチドをハイブリッド形成すること;そしてその後に、各々0.05〜0.1%のSDSを含有する2×、0.5×及び0.2×のSSCのうちの1つもしくはそれ以上のもので20〜40分間22〜65℃で1回又は2回ポリヌクレオチドを洗浄することが含まれる。さらなるストリンジェンシーについては、ハイブリダイゼーション条件は、15〜40分間50〜60℃で0.1×SSC及び0.1%SDS中での付加的な洗浄を含む。当業者であれば、予備ハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション及び洗浄工程のために用いられる溶液の濃度及び/又は温度、時間を改変することによってハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーの変動を達成できるということを理解することだろう。適切な条件は同様に、使用されるプローブ及びブロッティングされたプロバンド核酸試料の特定の核酸配列によっても一部左右され得る。従って、或る種のその他の発端者配列にはハイブリッド形成しない一方で1つもしくはそれ以上の或る種のプロバンド配列にはハイブリッド形成するその能力に基づいて、ポリヌクレオチドの所望の選択性が同定された時点で、過度に実験せずに、適切にストリンジェントな条件を容易に選択することができるということがわかるだろう。
本発明の配列特異的siRNAポリヌクレオチドは、複数の基準のうちの1つもしくはそれ以上のものを用いて設計可能である。例えば、問題のポリペプチドをコードする配列と同一の約21個の連続するヌクレオチドを有するsiRNAポリヌクレオチドを設計するためには、以下の特徴のうちの1つもしくはそれ以上のものを有する約21の塩基配列という長さにわたりポリヌクレオチド配列の読取り枠を走査することができる:すなわち(1)約1:1、ただし2:1又は1:2以下のA+T/G+C比;(2)5’末端にあるAAジヌクレオチドもしくはCAジヌクレオチド;(3)55℃未満の内部ヘアピンループ融解温度;(4)37℃未満のホモ二量体融解温度((3)及び(4)で記述されている融解温度計算は、当業者にとっては既知のコンピュータソフトウェアを用いて決定可能である);(5)その他の何らかの既知のポリヌクレオチド配列内に存在しているものとして同定されていない少なくとも16個の連続するヌクレオチドの配列。あるいは、siRNAポリヌクレオチド配列は、例えば、オリゴエンジン(OligoEngine)TM(ワシントン州シアトル(Seattle,Wash.));ダーマコン社(Dharmacon,Inc.)(コロラド州ラファイエット(Lafayette,Colo.));アンビオン社(Ambion Inc.)(テキサス州オースティン(Austin,Tex.));及びキアゲン社(QIAGEN,Inc.)(カリフォルニア州バレンシア(Valencia,Calif.))などのさまざまな供給メーカーから市販されているコンピュータソフトウェアを用いて設計及び選択され得る。エルバシール(Elbashir)ら、2000年、Genes & Development第15号:188〜200頁;エルバシールら、2001年、Nature第411号:494〜98頁も同じく参照のこと。このときsiRNAポリヌクレオチドは、当該技術分野におい
て既知であり本書の他の場所で記述されている方法に従って、標的ポリペプチドの発現に干渉する能力についてテストされ得る。siRNAポリヌクレオチドの有効性の判定には、標的ポリペプチドの発現に干渉するその能力の考慮のみならずsiRNAポリヌクレオチドが宿主細胞に対して毒性をもつか否かが含まれる。例えば、所望のsiRNAはRNA干渉活性を示すと同時に、望ましくない生物学的帰結を示さないと思われる。望ましくない生物学的帰結の例としては、宿主細胞内へのsiRNAの導入の結果としてのその細胞死が望まれていない細胞のアポトーシスがある。
本開示に基づくと、本発明のsiRNAが異なる度合で標的ポリペプチド発現のサイレンシング化をもたらし得ることがわかるはずである。かくしてsiRNAはまずその有効性についてテストされなくてはならない。一定の与えられたsiRNAがもつ標的ポリペプチドの発現に干渉するか又はこれを変調する能力に基づいてそこからsiRNAが選択される。従って、所望の標的ポリペプチドの発現に干渉する能力をもつ特異的siRNAポリヌクレオチド配列の同定には、各siRNAの産生及び試験が必要である。本発明において使用するための適切なsiRNAの選択及び各siRNAの試験のための方法は、本書の実施例中で充分に記されている。タンパク質発現に干渉する全てのsiRNAが生理学的に重要な効果を有することにはならないことから、本開示は同様に、本発明のsiRNAを用いた標的タンパク質発現との干渉レベルが臨床的に関連する意義を有するか否かを判定するためのさまざまな生理学的に関連する検定についても説明している。
当業者であれば、遺伝コードの縮重の結果として、数多くの異なるヌクレオチド配列が同じポリペプチドをコードし得るということを容易に認識することになる。すなわち、アミノ酸は、複数の異なるコドンの1つによってコードされ得、当業者であれば、1つの特定のヌクレオチド配列は互いに異なり得るもののポリヌクレオチドは実際同一のアミノ酸配列をもつポリペプチドをコードすることができるということを容易に判定できる。従って、本発明では、コドン使用法が異なっているために変動するポリヌクレオチドが特定的に考慮されている。
siRNAのポリヌクレオチドは、特定的に望まれるsiRNAポリヌクレオチドの調製のために有用であるさまざまな技術のうちのいずれかを用いて調製可能である。例えば、適切な細胞又は組織型から調製されたcDNAからポリヌクレオチドを増幅することができる。かかるポリヌクレオチドはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を介して増幅可能である。このアプローチを用いて、本書に提供されている配列に基づき配列特異的プライマが設計され、これは購入することもできるし又直接合成することもできる。プライマの増幅された部分を用いて、周知の技術を使用して適切なDNAライブラリから全長遺伝子又はその所望の一部分を単離することが可能である。ライブラリ(cDNA又はゲノム)が、増幅に適した1つもしくはそれ以上のポリヌクレオチドプローブ又はプライマを用いてスクリーニングされる。好ましくは、ライブラリは、より大きいポリヌクレオチド配列を含むようにサイズ選択される。遺伝子の5’及びその他の上流領域を同定するためにもランダムプライミングされたライブラリが好まれる可能性がある。イントロンを獲得し5’配列を拡張するためには、ゲノムライブラリが好ましい。本発明で考慮されているsiRNAポリヌクレオチドを同様に、siRNAポリヌクレオチド配列のライブラリから選択することも可能である。
ハイブリダイゼーション技術のためには、周知の技術を用いて、部分的ポリヌクレオチド配列を(例えばニック翻訳又は32Pでの末端標識により)標識することができる。このとき、標識されたプローブを伴う変性細菌コロニーを含有するフィルタ(又はファージプラークを含有するローン)に対するハイブリダイゼーションにより、細菌又はバクテリオファージライブラリをスクリーニングすることができる(例えば、サンブルック(Sambrook)ら、「Molecular Cloning:A Laboratory
Manual」、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリーズ(Cold Spring Harbor Laboratories)、ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー(Cold Spring Harbor,N.Y.)、2001年を参照)。ハイブリッド形成用コロニー又はプラークが選択され拡張され、DNAはさらなる分析を目的として単離される。
あるいは、部分的cDNA配列から全長コーディング配列を獲得するため、数多くの増幅技術が当該技術分野において知られている。このような技術の範囲内で、一般にPCRを介して増幅が実施される。このような1つの技術は、「cDNA末端の高速増幅」又はRACEとして知られている(例えば、サンブルックら、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリーズ、ニューヨーク州コールド・スプリング・ハーバー、2001年を参照)。
標的ポリペプチド発現に干渉するために有用な一定数の特定的siRNAポリヌクレオチド配列が本書中の実施例、図面及び配列リストの中で提示されている。siRNAポリヌクレオチドは一般に、例えば固相化学合成などを含めた当該技術分野において既知のあらゆる方法によって調製可能である。ポリヌクレオチド配列内の修飾も同様に、オリゴヌクレオチド指向の部位特異的突然変異誘発などの標準的な突然変異誘発技術を用いて導入され得る。さらに、siRNAをその他の分子で化学的に修飾するか又はそれと接合させて、その安定性及び/又は送達特性を改善させることもできる。本発明の一態様として含まれているのは、本書で記述されている通りの、1つもしくはそれ以上のリボース糖が除去されたsiRNAである。
あるいは、そのDNAが適切なRNAポリメラーゼプロモータ(例えばT7、U6、H1又はSP6、ただしその他のプロモータも同等に有用であり得る)と共にベクター内に取込まれることを条件として、適切なDNA配列(例えば標的ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列又はその所望の一部分)のインビトロ又はインビボ転写により、siRNAポリヌクレオチド分子を生成することができる。さらに、所望のsiRNAがインビボで生成されるような形で転写(及び場合により該当するプロセッシング工程)を裏づけるDNA配列(例えば本書で提供されているような組換え型核酸構成体)がそうであり得るように、siRNAポリヌクレオチドを哺乳動物に投与することが可能である。
一実施形態においては、標的ポリペプチドの発現に干渉する能力をもつsiRNAポリヌクレオチドを、サイレンシング化された細胞を生成する目的で使用することができる。一定の時間生物学的供給源と接触させられた時点で標的ポリペプチドの発現の大幅な減少を結果としてもたらすあらゆるsiRNAポリヌクレオチドが本発明に含まれる。好ましくは、減少は、siRNAの不在下で検出される標的ポリペプチドの発現レベルとの関係において約10%超、より好ましくは約20%超、より好ましくは約30%超、より好ましくは約40%、約50%、約60%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%又は約98%超である。好ましくは、細胞内のsiRNAポリヌクレオチドの存在により、例えば内部でのアポトーシスがRNA干渉の所望の効果ではない1つの細胞の死又はアポトーシスなどの何らかの望ましくない毒性効果が結果としてもたらされること又はひき起こされることはない。
もう1つの実施形態においては、siRNAポリヌクレオチドは、一定の時間生物学的供給源と接触させられた時点で標的ポリペプチドの発現の大幅な減少を結果としてもたらす。好ましくは、減少は、siRNAの不在下で検出される標的ポリペプチドの発現レベルとの関係において約10%〜20%、より好ましくは約20%〜30%、より好ましくは約30%〜40%、より好ましくは約40%〜50%、より好ましくは約50%〜60
%、より好ましくは約60%〜70%、より好ましくは約70%〜80%、より好ましくは約80%〜90%、より好ましくは約90%〜95%、より好ましくは約95%〜98%である。好ましくは、細胞内のsiRNAポリヌクレオチドの存在により望ましくない何らかの毒性効果が結果としてもたらされるか又はひき起こされるわけではない。
さらにもう1つの実施形態においては、siRNAポリヌクレオチドは、一定の時間生物学的供給源と接触させられた時点で標的ポリペプチドの発現の大幅な減少を結果としてもたらす。好ましくは、減少は、siRNAの不在下で検出される標的ポリペプチドの発現レベルとの関係において約10%以上、より好ましくは約20%以上、より好ましくは約30%以上、より好ましくは約40%以上、より好ましくは約50%以上、より好ましくは約60%以上、より好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、より好ましくは約95%以上、より好ましくは約98%以上である。好ましくは、細胞内のsiRNAポリヌクレオチドの存在により望ましくない何らかの毒性効果が結果としてもたらされるか又はひき起こされるわけではない。
従って、本発明は配列番号1〜3、21〜23及び28〜57の中で例示されている通りのsiRNAのようなsiRNAポリヌクレオチドを含む。配列番号1〜3及び21〜23は、それぞれSOCS1のためのマウス及びヒトsiRNA候補配列の配列である。配列番号28〜33、34〜39、40〜45、46〜51及び52〜57はそれぞれPIAS1、PIAS3、PIASx、PIASy及びSHP−1のためのヒトsiRNA候補配列の配列である。siRNAの配列は、図30の中で描かれている。
本発明に包含されているその他のsiRNA配列としては、マウスA20 siRNA:5’−CAAAGCACUUAUUGACAGA−3’、配列番号58;マウスSUMO−1 siRNA:5’−GAUGUGAUUGAAGUUUAUC−3’、配列番号59;マウスFoxj1 siRNA:5’−AGAUCACUCUGUCGGCCAU−3’、配列番号60;及びマウスTwist−2 siRNA:5’−GCGACGAGAUGGACAAUAA−3’、配列番号61(Twist−2siRNA1)及び5’−CAAGAAAUCGAGCGAAGAU−3’、配列番号62(Twist−2siRNA2)が含まれる。
もう1つの態様においては、本発明は所望の負の免疫調節因子にターゲティングされたsiRNAポリヌクレオチドを含んでなる。好ましくは、siRNAはA20、SUMO(SUMO1、SUMO2、SUMO3、SUMO4)、Twist−1、Twist−2、Foxj1、Foxo3a及びそれらの変異体よりなる群から選択された負の免疫調節因子にターゲティングされる。A20、SUMO1、SUMO2、SUMO3、SUMO4、Twist−1、Twist−2、Foxj1及びFoxo3aのための標的配列の例はそれぞれ配列番号63〜84、85〜92、93〜105、106〜112、113〜128、129〜136、137〜149、150〜161及び162〜185内で例示されている。これらのsiRNA標的配列の配列は図53に描かれている。
さまざまな負の免疫調節因子のためのポリヌクレオチド及びポリペプチド配列は、当業者にとって既知のコンピュータ化されたデータベースで見出すことができる。このような1つのデータベースは、米国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)のGenbank及びGenPeptデータベースである。これらの既知の遺伝子についての核酸配列は、増幅され、本書に開示されている配列と組み合わされ(例えばライゲートされる)、かつ/又は本書で開示されている技術を用いて又は当業者にとって既知であると思われるあらゆる技術によって発現され得る(例えばサンブルックら、2001年)。核酸はインビトロ発現系の中で発現され得るが、好ましい実施形態においては、核酸はインビボ
複製及び/又は発現のためのベクターを含んでなる。
siRNAの修飾
本発明のsiRNAポリヌクレオチドの生成の後、当業者であれば、siRNAポリヌクレオチドが治療用組成物としてsiRNAを改善するように修飾され得る或る種の特徴を有することになるということを理解するだろう。従って、siRNAポリヌクレオチドはさらに、ホスホロチオアート又はその他の連結、メチルホスホナート、スルホン、スルファート、ケチル、ホスホロジチオアート、ホスホルアミダート、リン酸エステルなどを含むようにそれを修飾することによって分解に耐えるように設計され得る(例えば、アグルワル(Agrwal)ら、1987年、Tetrahedron Lett.第28号:3539〜3542頁;ステック(Stec)ら、1985年、Tetrahedron Lett.第26号:2191〜2194頁; ムーディ(Moody)ら、1989年、Nucleic Acids Res.第12号:4769〜4782頁;エックスタイン、1989年、Trends Biol.Sci.第14号:97〜100頁;スタイン(Stein)、「Oligodeoxynucleotides:Antisense Inhibitors of Gene Expression」中、コーエン編、Macmillan Press、London、97〜117頁(1989年)参照のこと)。
本発明の任意のポリヌクレオチドをさらに修飾してインビボでのその安定性を増大させることができる。考えられる修飾としては、5’及び/又は3’末端でのフランキング配列の添加;主鎖の中でのホスホジエステルではなくホスホロチオアート又は2’O−メチルの使用;及び/又はイノシン、キューオシン及びワイブトシンなどといった非伝統的塩基ならびにアセチル−、メチル−、チオ−及びその他の修飾された形態のアデニン、シチジン、グアニン、チミン及びウリジンが含まれるが、これに限定されるわけではない。
ベクター
その他の関連する態様では、本発明は、インヒビターをコードする単離され核酸において、好ましくは核酸によりコードされるタンパク質の発現を導く能力を核酸がもつような形でプロモータ/調節配列を含む核酸に作動的に連結された負の免疫調節因子をインヒビター好ましくはsiRNAが阻害する、単離核酸を含む。かくして、本発明は、サンブルックら、(2001年、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー、ニューヨーク)中及びアウスベル(Ausubel)ら、(1997年、「Current Protocols in Molecular Biology」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)、ニューヨーク)の中で記述されているもののような細胞内の外因性DNAの同時発現を伴う細胞内への外因性DNAの導入のための発現ベクター及び方法を含む。
もう1つの態様においては、本発明はsiRNAポリヌクレオチドを含んでなるベクターを含む。好ましくは、siRNAポリヌクレオチドは、標的ポリペプチドの発現を阻害する能力をもち、ここで標的ポリペプチドはA20、SUMO(SUMO1、SUMO2、SUMO3及びSUMO4)、Foxj1、Foxo3a、TWIST(Twist1、Twist2)、SOCS(SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOCS4、SOCS5、SOCS6、SOCS7及びCIS)、PIAS(PIAS1、PIAS3、PIASx及びPIASy)、SHP(SHP−1及びSHP−2)またはそれらの任意の組合せよりなる群から選択される。ベクター内への所望のポリヌクレオチドの取込み及びベクターの選択は例えばサンブルックら(前掲書)及びアウスベルら(前掲書)の中で記述されている通り、当該技術分野において周知である。
siRNAポリヌクレオチドは数多くのタイプのベクターの中にクローニングされ得る。しかしながら、本発明は、いずれかの特定のベクターに限定されるものとみなされるべきではない。むしろ本発明は、当該技術分野において容易に利用可能でありかつ/又は周知である多数のベクターを包含するものと解釈されるべきである。例えば、本発明のsiRNAポリヌクレオチドは、プラスミド、ファージミド、ファージ誘導体、動物ウイルス及びコスミドを含めた(ただしこれに限定されるわけではない)ベクター内にクローニングされ得る。特に有利なベクターとしては、発現ベクター、複製ベクター、プローブ生成ベクター及び配列決定ベクターが含まれる。
特定の実施形態においては、発現ベクターは、ウイルスベクター、細菌ベクター及び哺乳動物細胞ベクターよりなる群から選択される。上述の組成物の少なくとも一部分又は全てを含む数多くの発現ベクター系が存在する。ポリヌクレオチド又はその同族ポリペプチドを産生するのに本発明と共に使用する目的で、原核生物及び/又は真核生物ベクターをベースとした系を利用することができる。数多くのこのような系が市販され広く利用可能である。
さらに、ウイルスベクターの形で細胞に対し発現ベクターを提供することができる。ウイルスベクター技術は当該技術分野において周知であり、例えばサンブルックら、(2001年)中、及びアウスベルら(1997年)中及びその他のウイルス学及び分子生物学マニュアルの中で記述されている。ベクターとして有用であるウイルスとしては、レトロウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ヘルペスウイルス及びレンチウイルスが含まれるが、これに限定されるわけではない。一般に、適切なベクターは、少なくとも1つの生体の中で機能する複製起点、プロモータ配列、便利な制限エンドヌクレアーゼ部位及び1つもしくはそれ以上の選択可能なマーカーを含有する(例えば、国際公開第01/96584号パンフレット;国際公開第01/29058号パンフレット;及び米国特許第6,326,193号明細書参照)。
siRNAの発現については、各プロモータ内の少なくとも1つのモジュールが、RNA合成のための開始部位を位置づけするように機能する。これの最高の既知の例はTATAボックスであるが、哺乳動物末端デオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ遺伝子のためのプロモータ及びSV40遺伝子のためのプロモータなどの、TATAボックスが欠如している一部のプロモータ内では、開始部位自体の上にある離散的要素が、開始場所を定める働きをする。
付加的なプロモータ要素すなわちエンハンサは、転写開始頻度を調節する。標準的には、これらは開始部位の上流側30〜110bpの領域に場所設定されるが、数多くのプロモータが開始部位の下流側にも機能的要素を含有することが近年示されてきた。プロモータ要素間の間隔どりは往々にして融通性があり、従って、要素が互いとの関係において逆転されるか又は移動された時点でプロモータ機能が保たれるようになっている。チミジンキナーゼ(tk)プロモータにおいては、プロモータ要素間の間隔どりは、活性が衰え始める前に50bp離隔するまで増大させることができる。プロモータに応じて、転写を活性化させるために個々の要素が協働的に又は独立して機能できると思われる。
プロモータは、コーディングセグメント及び/又はエキソンの上流側にある5’非コーディング配列を単離することにより得ることができるような、遺伝子又はポリヌクレオチド配列と天然に会合されたものであり得る。このようなプロモータは「内因性」プロモータと呼ぶことができる。同様にして、エンハンサは、その配列の下流側又は上流側のいずれかに位置設定されたポリヌクレオチド配列と天然に会合されたものであり得る。あるいは、通常はその天然の環境においてポリヌクレオチド配列と会合されていないプロモータを意味する組換え型又は非相同プロモータの制御下にコーディングポリヌクレオチドセグ
メントを位置づけすることによって、一部の利点が得られることになる。組換え型又は非相同エンハンサは同様に、通常はその天然の環境においてポリヌクレオチド配列と会合されていないエンハンサを意味する。このようなプロモータ又はエンハンサとしては、その他の遺伝子のプロモータ及びエンハンサ、及びその他のあらゆる原核生物、ウイルス又は真核生物細胞から単離されたプロモータ又はエンハンサ、及び「天然発生の」ものでない、すなわち異なる転写調節領域の異なる要素及び/又は発現を改変させる突然変異を含有するプロモータ又はエンハンサが含まれ得る。プロモータ及びエンハンサの核酸配列を合成的に産生させることに加えて、本書で開示されている組成物と関連させてPCRTMを含めた組換え体クローニング及び/又は核酸増幅技術を用いて配列を産生させることも可能である(米国特許第4,683,202号明細書、米国特許第5,928,906号明細書)。さらに、ミトコンドリア、葉緑体などといった非核オルガネラの内部での配列の転写及び/又は発現を導く制御配列も同様に利用可能であると考えられている。
当然のことながら、発現のために選ばれた細胞型、オルガネラ及び生体内でDNAセグメントの発現を有効に導くプロモータ及び/又はエンハンサを利用することが重要になる。分子生物学の当業者は一般に、タンパク質の発現のためのプロモータ、エンハンサ及び細胞型の組合せをいかに使用するかを知っている。例えばサンブルックら、(2001年)を参照のこと。利用されるプロモータは、組換え型タンパク質及び/又はペプチドの大規模産生において有利であるような、導入されたDNAセグメントの高レベル発現を導くために適切な条件下で有用でありかつ/又は構成性、組織特異的、誘発型であり得る。プロモータは非相同的又は内因性であり得る。
本書に提示されている実験例の中で例示されているプロモータ配列は、初前期サイトメガロウイルス(CMV)プロモータ配列である。このプロモータ配列は、作動的に連結されたあらゆるポリヌクレオチド配列の高レベルの発現を駆動する能力をもつ強い構成性プロモータ配列である。しかしながら、シミアンウイルス40(SV40)早期プロモータ、マウス乳癌ウイルス(MMTV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)長末端反復(LTR)プロモータ、モロニーウイルスプロモータ、トリ白血病ウイルスプロモータ、エプスタイン・バーウイルス初前期プロモータ、ラウス肉腫ウイルスプロモータならびにヒト遺伝子プロモータ例えば(ただしこれに限定されるわけではない)アクチンプロモータ、ミオシンプロモータ、ヘモグロビンプロモータ及び筋肉クレアチンプロモータを含めた(ただしこれに限定されるわけではない)その他の構成性プロモータ配列も同様に使用可能である。さらに、本発明は、構成性プロモータの使用に限定されるべきではない。本発明の一部分として誘発性プロモータも同様に考慮されている。本発明における誘発性プロモータの使用は、発現が望まれる場合に作動的に連結されているポリヌクレオチド配列の発現をオンに切換え、発現が望ましくない場合発現をオフに切換えることのできる分子スイッチを提供する。誘発性プロモータの例としては、メタロチオニンプロモータ、グルココルチコイドプロモータ、プロゲストロンプロモータ及びテトラサイクリンプロモータが含まれるが、これに限定されるわけではない。さらに、本発明は、所望の組織内のみで活性である組織特異的プロモータの使用を含む。組織特異的プロモータは、当該技術分野において周知であり、HER−2プロモータ及びPSA関連プロモータ配列がこれに含まれるが、これに限定されるわけではない。
siRNAの発現を査定するため、1つの細胞中に導入すべき発現ベクターは同様に、ウイルスベクターの同定及び選択を容易にするべく選択可能なマーカー遺伝子又はリポータ遺伝子のいずれか又はその両方をも含有することができる。その他の実施形態においては、選択可能なマーカーは、別のDNA片上に担持され、同時トランスフェクション手順内で使用され得る。選択可能なマーカー及びリポータ遺伝子の両方共が、宿主細胞内での発現を可能にするため適切な調節配列でフランキングされ得る。当該技術分野においては有用な選択可能なマーカーが知られており、例えばneoなどといった抗生物質耐性遺伝
子が含まれる。
潜在的にトランスフェクションを受けた細胞を同定するため及び調節配列の機能性を評価するために、リポータ遺伝子が使用される。容易に検定可能なタンパク質についてコードするリポータ遺伝子は当該技術分野において周知である。一般に、リポータ遺伝子は、レシピエント生体又は組織の中に存在しないか又はそれらにより発現されず、例えば酵素活性などのいくつかの容易に検出可能な特性によってその発現が明らかになるタンパク質をコードする遺伝子である。リポータ遺伝子の発現は、DNAがレシピエント細胞内に導入されてから適切な時間後に検定される。
適切なリポータ遺伝子としては、ルシフェラーゼ、ベーターガラクトシダーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ、分泌されたアルカリホスファターゼをコードする遺伝子又は緑色螢光タンパク質遺伝子が含まれ得る(例えば、ウイ・テイ(Ui−Tei)ら、2000年、FEBS Lett.第479号:79〜82頁参照)。適切な発現系は周知であり、周知の技術を用いて調製されるか又は商業的に入手可能である。内部欠失構成体は、固有内部制限部位を用いて、又は非固有制限部位の部分的消化より生成され得る。構成体はこのとき、高レベルのsiRNAポリヌクレオチド及び/又はポリペプチド発現を標示する細胞内にトランスフェクトされ得る。一般に、リポータ遺伝子の最高レベルの発現を示す最小限の5’フランキング領域を伴う構成体は、プロモータとして同定される。このようなプロモータ領域はリポータ遺伝子に連結され、プロモータ駆動型転写を変調させる能力について作用物質を評価するのに用いられ得る。
サイレンシング化された免疫細胞の生成
一実施形態においては、本発明は、細胞内に負の免疫調節因子のインヒビターを発現させるための細胞ベースの系を提供している。細胞ベースの系は、「サイレンシング化された細胞」を意味し、細胞とインヒビターを発現するための発現ベクターを含んでなる。しかしながら、本発明は、発現ベクターを含んでなる細胞に限定されず、むしろ本発明のサイレンシング化された細胞は、本発明のあらゆるタイプのインヒビター、すなわち化学合成されたsiRNAで修飾された細胞を含むものとして解釈されるべきである。いずれにせよ、インヒビターを含んでなるサイレンシング化された細胞は、その他の点では同一であるもののこのようにインヒビターでのサイレンシング化を受けていない細胞に比べて高い免疫能力を有している。サイレンシング化された細胞は、単独で又はその他の療法と組合せた形で、哺乳動物のレシピエントに投与するのに適している。
本発明は、負の免疫調節因子のインヒビターを含む細胞を含む。一態様においては、インヒビターは、A20、SUMO(SUMO1、SUMO2、SUMO3及びSUMO4)、Foxj1、Foxo3a、TWIST(Twist1、Twist2)、SOCS(SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOCS4、SOCS5、SOCS6、SOCS7及びCIS)、PIAS(PIAS1、PIAS3、PIASx及びPIASy)、SHP(SHP−1及びSHP−2)などのうちの少なくとも1つを阻害する能力を有する。一態様においては、細胞は、インヒビターをコードするポリヌクレオチドを含んでなるベクターでのトランスフェクションを受けることができる。ポリヌクレオチドは細胞内に組込まれている必要はない。もう1つの態様においては、細胞がベクターによるトランスフェクションを受けている必要は全くなく、むしろ、細胞はベクターから発現されないインヒビターに曝露される。かかるインヒビターの一例は、化学的に合成されたsiRNAである。
発現ベクターに関連して、ベクターは、当該技術分野のいずれかの方法により、例えば哺乳動物、細菌、酵母又は昆虫の細胞といった宿主細胞内に容易に導入され得る。例えば発現ベクターは、物理的、化学的又は生物学的手段により宿主細胞内に移入され得る。本
発明のポリヌクレオチドを含んでなる発現ベクターの導入が、負の免疫調節因子との関係においてサイレンシング化された細胞を生み出すということは容易に理解できる。
宿主細胞内にポリヌクレオチドを導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム沈降、リポフェクション、粒子衝突、マイクロインジェクション、電気穿孔などが含まれる。ベクター及び/又は外因性核酸を含んでなる細胞を産生するための方法は、当該技術分野において周知である。例えばサンブルックら、(2001年、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー、ニューヨーク)及びアウスベルら、(1997年、「Current Protocols in Molecular Biology」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ、ニューヨーク)中を参照のこと。
宿主細胞内に有利なポリヌクレオチドを導入するための生物学的方法としては、DNA及びRNAベクターの使用が含まれる。ウイルスベクター特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物例えばヒトの細胞内に遺伝子を挿入するための最も広く用いられている方法となっている。その他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス及びアデノ関連ウイルスなどから誘導可能である。例えば、米国特許第5,350,674号明細書及び第5,585,362号明細書を参照のこと。
宿主細胞内にポリヌクレオチドを導入するための化学的手段には、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ、及び水中油エマルジョン、ミセル、混合ミセル及びリポソームを含めた脂質ベースの系などのコロイド分散系が含まれる。インビトロ及びインビボでの送達ビヒクルとして使用するための好ましいコロイド系が、リポソーム(すなわち人工膜小胞)である。かかる系の調製及び用途は、当該技術分野において周知である。
宿主細胞内へ外因性核酸を導入するか又はその他の形で細胞を本発明のインヒビターに曝露して宿主細胞内の組換え型DNA配列の存在を確認するのに用いられる方法の如何に関わらず、さまざまな検定を実施することができる。かかる検定には、例えば、サザン及びノーザンブロット法、RT−PCR及びPCRなどの当業者にとって周知の「分子生物学」検定;例えば本発明の範囲内に入る作用物質を同定するための本書で記述された検定によってか又は免疫学的手段(ELISA及びウェスタンブロット)によって特定のペプチドの有無を検出することなどの「生化学的」検定が含まれる。
サイレンシング化された細胞を生成するためには、インビトロ又はインビボで免疫細胞まで所望のsiRNAポリヌクレオチドを移送するべく、任意のDNAベクター又は送達ビヒクルを利用することができる。非ウイルス送達系が利用される場合、好ましい送達ビヒクルはリポソームである。従って、上述の送達系及びプロトコルは、「Gene Targeting Protocols」、第2版、1〜35頁(2002年)及び「Gene Transfer and Expression Protocols」、第7巻、マリー(Murray)編、81〜89頁(1991年)の中に見出すことができる。
宿主細胞内に(インビトロ、エクスビボ又はインビボで)本発明の負の免疫調節因子のインヒビターを導入するために、脂質処方物の使用が考慮されている。本発明の特定の実施形態においては、インヒビターを脂質と会合させることが可能である。脂質と会合したインヒビターは、リポソームの水性内部の中にカプセル化されるか、リポソームの脂質2重層内に散在させられるか、リポソーム及びオリゴヌクレオチドの両方と会合させられた連結用分子を介してリポソームに付着させられるか、リポソーム内に取り込まれるか、リ
ポソームと複合されるか、脂質を含有する溶液中に分散されるか、脂質と混合されるか、脂質と組み合わされるか、脂質内に懸濁物として含有されるか、ミセルと共に含有されるか複合されるか複合されるか又はその他の形で脂質と会合させられ得る。本発明の脂質、脂質/siRNA又は脂質/発現ベクター会合組成物は、溶解状態の任意の特定の構造に限定されない。例えば、2重層構造内で、ミセルとして、又は「崩壊した」構造を伴って存在し得る。これらは又単に溶液中に散在させられ、場合によってはサイズ的又は形状的に均一でない凝集体を形成し得る。
脂質は、天然発生の又は合成の脂質であり得る脂肪性物質である。例えば、脂質には、細胞質内に天然に発生する脂肪性液滴ならびに、長鎖脂肪族炭化水素及びその誘導体を含有する、当業者にとって周知の化合物の種類、例えば脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール及びアルデヒトが含まれる。
本発明に係るリポソームを調製するために、リン脂質を使用することができ、これは、正味の正電荷、負電荷又は中性電荷を担持し得る。リポソーム上に負電荷を付与するためにはリン酸ジアセチルを利用することができ、リポソーム上に正電荷を付与するためには、ステアリルアミンを使用することができる。リポソームは、1つもしくはそれ以上のリン脂質からできている可能性がある。
中性荷電脂質は、無電荷の脂質、実質的に非荷電の脂質又は正と負の電荷を同数有する脂質混合物を含んでなり得る。適切なリン脂質には、当業者にとって周知であるホスファチジルコリン及びその他は含まれる。
本発明に従って用途に適した脂質は、商業的供給源から入手可能である。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」)はシグマ・ケミカル・カンパニー(Sigma Chemical Co.)(ミズーリ州セントルイス(St.Louis,MO))から入手可能であり、リン酸ジセチル(「DCP」)はKアンドKラボラトリーズ(K & K Laboratories)(ニューヨーク州プレインビュー(Plainview,NY))から入手され;コレステロール(「Chol」)はカルビオケム・ベーリング(Calbiochem−Behring)から入手され;ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」)及びその他の脂質はアヴァンティ・ポーラー・リピズ社(Avanti Polar Lipids,Inc.)(アラバマ州バーミングハム(Birmingham,AL))から入手され得る。クロロホルム又はクロロホルム/メタノール中の脂質の原液は約−20℃で貯蔵できる。好ましくは、メタノールよりも容易に蒸発することから、クロロホルムが唯一の溶媒として用いられる。
卵又は大豆ホスファチジルコリン、脳ホスファチジン酸、脳又は植物ホスファチジルイノシトール、心臓カルジオリピン及び植物又は細菌ホスファチジルエタノールアミンなどの天然供給源由来のリン脂質は、結果として得られるリポソームが不安定であり漏出しやすいことから、一次ホスファチドすなわち全ホスファチド組成物の50%以上を構成するホスファチドとしては好ましくは使用されない。
「リポソーム」というのは、封入された脂質2重層又は凝集体の生成によって形成されるさまざまな単一及び多重膜脂質ビヒクルを包含する包括的用語である。リポソームは、リン脂質2重層膜及び内部水性媒質を伴う小胞状構造をもつものとして特徴づけされ得る。多重膜リポソームは、水性媒質により分離された多重脂質層を有する。これらは、リン脂質が過剰な水溶液中に懸濁させられている場合に自然に形成する。脂質構成要素は、閉鎖構造の形成前に自己再配置を受け、脂質2重層の間に水及び溶解した溶質をカプセル化する(ゴッシュ(Ghosh)及びバチャワット(Bachhawat)、1991年)。しかしながら、本発明はまた、通常の小胞状構造と異なる溶解状態の構造を有する組成
物をも包含する。例えば、脂質は、ミセル構造をとることもでき、又単に脂質分子の不均一な凝集体として存在することもできる。同様に考慮されているのは、リポフェクタミン−核酸複合体である。
リン脂質は、脂質対水のモル比に応じて、水中に分散された場合にリポソーム以外のさまざまな構造を形成することができる。低い比率では、リポソームは好ましい構造である。リポソームの物理的特徴は、pH、イオン強度及び/又は2価のカチオンの存在に左右される。リポソームはイオン及び/又は極性物質に対する低い浸透性を示し得るが、高温では、その浸透性を著しく改変する相転移を受ける。相転移には、ゲル状態として知られる密に詰まった秩序構造から流体状態として知られる緩く詰まったあまり秩序立っていない構造までが関与する。これは、特徴的な相転移温度で起こり、かつ/又はイオン、糖及び/又は薬物への浸透性の増加を結果としてもたらす。
リポソームは、4つの異なる機序すなわちマクロファージ及び/又は好中球などの細網内皮系の食細胞によるエンドサイトーシス;非特異的弱疎水性及び/又は静電気力、及び/又は細胞−表面構成要素との特異的相互作用のいずれかによる細胞表面への吸着;細胞質内へのリポソームの中味の同時放出を伴う、原形質膜内へのリポソームの脂質2重層の挿入によるプラズマ細胞膜との融合;及び/又はリポソームの中味の会合無しの、細胞及び/又は細胞内膜へのリポソーム脂質の移送及び/又はその逆によるもの、といった機序を介して細胞と相互作用する。リポソーム処方を変動させることにより、どの機序が作動状態にあるかを改変させることができるが、2つ以上が同時に作動することもできる。
インビトロでの外来性DNAの発現及びリポソーム媒介型オリゴヌクレオチド送達はきわめて好首尾であった。ウォン(Wong)ら、(1980年)は、培養されたニワトリ胚、HeLa及びヘパトーマ細胞内での外来性DNAの発現及びリポソーム媒介型送達の実現可能性を実証した。ニコラウ(Nicolau)ら、(1987年)は、静脈注射後にラット内でリポソーム媒介型遺伝子移入の成功を収めた。
本発明の一部の実施形態においては、脂質は、センダイウイルス(HVJ)と会合され得る。これは、細胞膜との融合を容易にし、リポソームカプセル化DNAの細胞進入を促進するということが示されてきた(カネダ(Kaneda)ら、1989年)。その他の実施形態においては、脂質は、核非ヒストン染色体タンパク質(HMG−1)と複合又は併用され得る(カトー(Kato)ら、1991年)。さらにもう1つの実施形態においては、脂質は、HVJ及びHMG−1の両方と複合されるか又は併用され得る。このような発現ベクターがインビトロ及びインビボでのオリゴヌクレオチドの移入及び発現においてうまく利用されてきたことから、今度はそれらを本発明のために応用することができる。細菌プロモータがDNA構成体において利用される場合には、リポソーム内部に適切な細菌ポリメラーゼを含み入れることも望ましくなる。
本発明に従って用いられるリポソームは、異なる方法で作ることができる。リポソームのサイズは、合成方法によって変動する。水溶液中に懸濁されたリポソームは一般に、脂質2重層分子の1つもしくはそれ以上の同心層を有する球形小胞の形をしている。各層は、Xが親水性部分でありYが疎水性部分であるものとして構造式XYで表わされる分子の平行な列からなる。水性懸濁液中では、同心層は、親水性部分が水相と接触した状態にとどまる傾向をもちかつ疎水性領域が自己会合する傾向をもつように配置されている。例えば、リポソーム内部及びリポソーム限外の両方で水相が存在する場合、脂質分子は、XY−YXという配置のラメラとして知られる2重層を形成し得る。2つ以上の脂質分子の親水性及び疎水性部分が互いに会合状態となった時点で、脂質凝集体が形成し得る。これらの凝集体のサイズ及び形状は、溶媒の性質及び溶液中のその他の化合物の存在などの数多くの異なる変数により左右されることになる。
本発明の範囲内に入るリポソームは、既知の実験室技術に従って調製可能である。1つの好ましい実施形態においては、例えばガラス、梨形フラスコといったコンテナの中で溶媒中にリポソーム脂質を混合することにより、リポソームが調製される。コンテナは、予想されるリポソーム懸濁液の体積より10倍大きい体積を有するべきである。回転蒸発器を用いて、負の圧力下にて約40℃で溶媒が除去される。溶媒は通常、リポソームの所望の体積に応じて約5分乃至2時間以内に除去される。組成物は、さらに真空下のデシケータ内で乾燥され得る。乾燥された脂質は一般に、経時的に劣化する傾向があることから、約一週間後に処分される。
乾燥した脂質は、全ての脂質薄膜が再懸濁させられるまで振とうすることにより、無菌で発熱物質を含まない水中で約25〜50mMのリン脂質にて水和させることができる。このとき、リポソーム水をアリコートに分離し、各々バイアル内に置き、凍結乾燥させ、真空下で密封することができる。
代替案としては、リポソームをその他の既知の実験室手順、すなわちその内容が本発明に参照により援用されているバンガム(Bangham)ら、(1965年)の方法;その内容が本発明に参照により援用されている「Drug Carriers in Biology and Medicine」、G.グレゴリアディス(Gregoriadis)編、(1979年)、287〜341頁に記述されている通りのグレゴリアディスの方法;その内容が本発明に参照により援用されている「the method of Deamer and Uster」、1983年;及びスゾカ(Szoka)及びパパハジョポウロス(Papahadjopoulos)、1978年により記述されている通りの逆相蒸発方法に従って調製することができる。上述の方法は、水性材料を封入するそのそれぞれの能力及びそのそれぞれの水空間対脂質比に関して異なっている。
上述の通りに調製された凍結乾燥されたリポソーム又は乾燥した脂質は、脱水され阻害性ペプチドの溶液中で戻され、適当な溶媒、例えばDPBSで適切な濃度まで希釈され得る。次に、混合物は、渦流ミキサー内で激しく振とうされる。未封入の核酸は、29,000×gでの遠心分離により除去され、リポソームペレットは、洗浄される。洗浄されたリポソームは、例えば約50〜200mMといった適切な総リン脂質濃度で再懸濁される。封入された核酸の量は、標準的な方法に従って決定可能である。リポソーム調製物中に封入された核酸の量を判定した後、リポソームを適切な濃度まで希釈し、使用まで4℃で貯蔵することができる。
活性化(パルス)を受けた免疫細胞の生成
本発明は、曝露されるか又はその他の形で抗原での「パルスを受け」、抗原により活性化された細胞を含む。例えば、APCは抗原の存在下でのエクスビボ培養によってインビトロで又は抗原に対する曝露によりインビボでAg負荷された状態となり得る。
当業者であれば同様に、APCの表面上でのその抗原の提示を促進するのに充分な時間APCを抗原に曝露するような形でAPCを「パルス」することができる、ということも容易に理解するものと思われる。例えば、APCは、抗原ペプチドとして知られる小ペプチドフラグメントが直接APCの外側に「パルス」されるような形で抗原に曝露され得(メヘタ・ダマニ(Mehta−Damani)ら、1994年);そうでなければAPCは、後でAPCにより摂取されることになる全タンパク質又はタンパク質粒子と共にインキュベートされ得る。これらの全タンパク質は、APCにより小ペプチドフラグメント内に消化され、場合によってはAPC表面まで搬送されその上に提示される(コーエンら、1994年)。ペプチド形態の抗原が、本書で記述されている標準的「パルス」技術によって細胞に対し曝露され得る。
特定の理論により束縛されることは望まないが、外来性の抗原又は自己抗原の形をした抗原は、抗原の免疫原性形態を保持する目的で、本発明のAPCによりプロセッシングされる。抗原の免疫原性形態は、例えばT細胞といった免疫細胞により認識され得この細胞を刺激する抗原の一形態を産生する目的でのフラグメント化を通した抗原のプロセッシングを暗に意味している。好ましくは、かかる外来性又は自己抗原は、APCによりペプチドへとプロセッシングされるタンパク質である。APCにより産生される関連性あるペプチドは、免疫原性組成物として使用するために抽出され精製され得る。APCによりプロセッシングされたペプチドは同様に、APCによりプロセッシングされたタンパク質に対する寛容を誘発するのに使用することもできる。
自己免疫疾患は、自己抗原として別途知られている「自己タンパク質」すなわち、1つの個体の中に存在する又はその中で内因性である自己抗原に対し免疫応答が向けられていることの結果としてもたらされると考えられている。自己免疫応答において、これらの「自己タンパク質」はT細胞に提示され、こうしてT細胞は「自己反応性」を付与される。本発明の方法に従うと、APCは、関連性ある「自己ペプチド」を産生するべく抗原でのパルスを受ける。関連性ある自己ペプチドは、MHC産物がきわめて多型であり各々の個々のMHC分子が異なるペプチドフラグメントと結合する可能性があることから、各個体について異なっている。このとき「自己ペプチド」及びサイトカインシグナリングのインヒビターのアゴニストを用いて、競合するペプチドを設計するか又は治療を必要とする個体の中で自己タンパク質に対する寛容を誘発することができる。
本発明の「パルスを受けたAPC」としても別途知られている抗原活性化されたAPCは、インビトロ又はインビボのいずれかで抗原に対してAPCを曝露することによって産生される。APCがインビトロでパルスを受ける場合、APCは、培養皿上で平板固定され、抗原がAPCに結合できるのに充分な時間、充分な量で抗原に曝露される。APCに対する抗原の結合を達成するのに必要な量及び時間は、当該技術分野において既知の又は本書中にその他の形で開示されている方法を使用することにより判定され得る。抗原に対する曝露の後のAPC上の抗原の存在を検出するために、例えば免疫検定又は結合検定といった当業者にとって既知のその他の方法を使用することも可能である。
本発明のさらなる実施形態においては、APCによる特異的タンパク質に発現を可能にするベクターでAPCをトランスフェクトすることができる。このとき、APCにより発現されるタンパク質をプロセッシングし、MHCレセプタ上の細胞表面上で提示することができる。トランスフェクションを受けたAPCはこのとき、ベクターによりコードされたタンパク質に対する免疫応答を生成するための免疫原性組成物として使用することができる。
本書のその他の場所で論述されているように、ベクターは、免疫原性応答が望まれるタンパク質をコードし発現する特異的ポリヌクレオチドを含むように調製され得る。好ましくは、細胞を感染させるために、レトロウイルスベクターが使用される。より好ましくは、細胞を感染させるためにアデノウイルスベクターが使用される。
本発明のもう1つの実施形態においては、APC上のレセプタにより認識されるタンパク質又はその一部分をコードするべくウイルスベクターを修飾することによってベクターをAPCにターゲティングすることができ、かくしてベクターによるAPCレセプタの占有はウイルスベクターの核酸によりコードされる抗原のプロセッシング及び提示を可能にすることになる。ウイルスにより送達される核酸は、APC上にて発現された時点でウイルスタンパク質をコードしこれらのウイルスタンパク質が次にプロセッシングされAPCのMHCレセプタ上で提示されることになるようなウイルスに天然のものである。
本書の他の箇所で論述した通り、宿主細胞内にポリヌクレオチドをトランスフェクトするためにさまざまな方法を使用することができる。本方法には、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、粒子衝突、マイクロインジェクション、電気穿孔、コロイド分散系(すなわち、巨大分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズ及び水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル及びリポソームを含めた脂質ベース系)が含まれるがこれに限定されるわけではない。
もう1つの態様においては、抗原をコードするポリヌクレオチドを発現ベクター内にクローニングでき、ベクターをAPC内に導入してその他の形で活性化APCを生成することができる。細胞内に核酸を導入するさまざまなタイプのベクター及び方法が、本書の中の他の箇所で論述されている。例えば、当該技術分野におけるあらゆる方法により宿主細胞内に、抗原をコードするベクターを導入することができる。例えば、物理的、化学的又は生物学的手段により宿主細胞内に発現ベクターを移入することができる。例えばサンブルックら、(2001年、「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー、ニューヨーク)、及びアウスベルら、(1997年、「Current Protocols in
Molecular Biology」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ、ニューヨーク)中を参照のこと。抗原をコードするポリヌクレオチドを含んでなる発現ベクターの導入が、パルスを受けた細胞を生み出す、ということは容易に理解される。
本発明は、タンパク質、cDNA又はcRNAの形をした全抗原をAPCに負荷することを含めた(ただしこれに限定されるわけではない)、APCをパルスするためのさまざまな方法を含む。しかしながら、本発明は、APCをパルスするために用いられる抗原の特定の形態に限定されるものとして解釈されるべきではない。むしろ、本発明は、抗原負荷されたAPCを生成するための当該技術分野において既知のその他の方法をも包含している。好ましくは、APCは、規定された抗原をコードするmRNAでのトランスフェクションを受ける。その配列が既知である遺伝子産物に対応するmRNAは、適切なプライマ及び転写反応と合わせた逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を用いてインビトロで急速に生成することが可能である。mRNAでのAPCのトランスフェクションは、パルスを受けたAPCを生成するためのその他の抗原負荷技術に比べて1つの利点を提供する。例えば、微細な量の組織すなわち腫瘍組織からRNAを増幅する能力は、数多くの患者に対するワクチン接種向けにAPCの用途を拡大する。
抗原は、ウイルス、真菌又は細菌に由来するものであり得る。抗原は、感染性疾患、癌、自己免疫疾患よりなる群から選択された疾病に結びつけられた抗原又は自己抗原であり得る。
1つの抗原組成物がワクチンとして有用であるためには、その抗原組成物は、細胞、組織又は哺乳動物(例えばヒト)の中で抗原に対する免疫応答を誘発しなければならない。本書で使用される「免疫学的組成物」は、抗原(例えばペプチド又はポリペプチド)、抗原をコードする核酸(例えば抗原発現ベクター)、抗原又は細胞組成物を発現又は提示する細胞を含んでなる。特定の実施形態においては、抗原組成物は、本書に記述されているあらゆる抗原の全て又は一部分又はその免疫学的機能的等価物を含んでなるか又はコードする。その他の実施形態においては、抗原組成物は、付加的な免疫刺激性作用物質又はかかる作用物質をコードする核酸を含んでなる混合物の中にある。免疫刺激性作用物質には、付加的な抗原、免疫調節薬、抗原提示細胞又はアジュバンドが含まれるが、これに限定されるわけではない。その他の実施形態においては、付加的な作用物質のうちの1つもしくはそれ以上のものは、あらゆる組合せで抗原又は免疫刺激性作用物質に共有結合されている。一部の実施形態においては、抗原組成物はHLAアンカーモチーフアミノ酸に接合
されるか又はこれを含んでなる。
本発明のワクチンは、その核酸及び/又は細胞組成物の組成において変動し得る。限定的意味のない例においては、抗原をコードする核酸を、アジュバンドと共に処方することもできる。当然のことながら、本書で記述するさまざまな組成物がさらに付加的な組成物を含み得るということも理解できるだろう。例えば、脂質又はリポゾームの中には、1つもしくはそれ以上のワクチン組成物が含まれ得る。もう1つの限定的な意味のない例では、ワクチンが1つもしくはそれ以上のアジュバンドを含んでなる可能性がある。本発明のワクチン及びそのさまざまな構成要素は、本書で開示されているあらゆる方法によって、又は本開示に照らして当業者にとって既知のものとなるように、調製及び/又は投与可能である。
本発明の抗原組成物は、固相合成による化学合成及びHPLCによる化学反応のその他の生成物からの精製、又はインビトロ翻訳系内又は生きた細胞内での本発明の抗原を含むペプチド又はポリペプチドをコードする核酸配列(例えばDNA配列)の発現による産生を含めた(ただしこれに限定されるわけではない)当該技術分野において周知の方法により作ることができるということがわかっている。さらに、抗原組成物は、生体試料から単離された細胞組成物を含んでなり得る。好ましくは、抗原組成物は、単離され1つもしくはそれ以上の望ましくない低分子量分子を除去するべく大規模に透析されかつ/又はより容易に所望のビヒクルへと処方されるよう凍結乾燥される。さらに、ワクチン組成物中で作られる(行なわれる)付加的なアミノ酸、突然変異、化学的修飾などがある場合、これらは、好ましくはエピトープ配列の抗体認識と実質的に干渉しないということもわかっている。
本発明の1つもしくはそれ以上の抗原決定因子に対応するペプチド又はポリペプチドは、一般に長さが少なくとも5個又は6個のアミノ酸でなければならず、最高約10、約15、約20、約25、約30、約35、約40、約45又は約50個などの残基を含有し得る。ペプチド配列は、例えばアプライド・バイオシステムズ社(カリフォルニア州フォスターシティー)から入手可能なものなどの自動ペプチド合成機を用いたペプチド合成などの当業者にとっては既知の方法によって合成可能である。
組換え型手段などにより、さらに長いペプチド又はポリペプチドを調製することもできる。一部の実施形態においては、例えば、本発明のさまざまな組成物及び方法のためにインビトロ又はインビボで抗原組成物を生産する目的で、本書に記述されている抗原組成物及び/又は構成要素をコードする核酸を使用することが可能である。例えば、一部の実施形態では、抗原をコードする核酸が、例えば組換え型細胞内のベクター内に含まれる。抗原配列を含んでなるペプチド又はポリペプチドを産生するために核酸を発現することが可能である。ペプチド又はポリペプチドは細胞から分泌され得るか又は細胞の一部として又は細胞の内部に含まれ得る。
一部の実施形態においては、抗原をコードする核酸で哺乳動物をトランスフェクトするか又は接種することにより、免疫応答を促進することができる。このとき、標的哺乳動物の内部に含まれた1つもしくはそれ以上の細胞が、哺乳動物に対する核酸の投与後核酸によりコードされる配列を発現する。ワクチンは同様に、例えば1つの抗原のペプチド又はポリペプチド配列の全て又は一部分をコードする核酸(例えばcDNA又はRNA)の形をしていてもよい。核酸によるインビボでの発現は例えば、プラスミド型ベクター、ウイルスベクター又はウイルス/プラスミド構成体ベクターによるものであり得る。
好ましい態様では、核酸は、適切な抗原をコードする配列の全て又は一部分をコードするコーディング領域又はその免疫学的に機能的な等価物を含んでなる。当然のことながら
、核酸は、1つもしくはそれ以上の免疫調節薬又はアジュバンドを含んでなるものを含めた(ただしこれに限定されるわけではない)付加的な配列を含んでなるかつ/又はコードすることができる。
腫瘍関連抗原
本発明に関連して「腫瘍抗原」又は「過剰増殖性障害抗原」又は「過剰増殖性障害と結びつけられる抗原」という用語は、特定の過剰増殖性障害に共通の抗原を意味する。一部の態様においては、本発明の過剰増殖性障害抗原は、原発性又は転移性悪性黒色腫、胸腺腫、リンパ腫、肉腫、肺癌、肝臓癌、非ホジキンリンパ腫、ホジキンリンパ腫、白血病、子宮癌、子宮頚癌、膀胱癌、腎臓癌及び腺癌、例えば乳癌、前立腺癌、卵巣癌、膵臓癌などを含めた(ただしこれに限定されるわけではない)癌に由来する。
一実施形態においては、本発明の腫瘍抗原は、哺乳動物の癌腫瘍に由来する腫瘍浸潤性リンパ球(TIL)によって免疫学的に認識される1つもしくはそれ以上の抗原癌エピトープを含んでなる。
悪性腫瘍は、免疫攻撃のための標的抗原として役立ち得る一定数のタンパク質を発現する。これらの分子は、黒色腫におけるMART−1、チロシナーゼ及びGP−100及び前立腺癌における前立腺酸性ホスファターゼ(PAP)及び前立腺特異的抗原(PSA)などの組織特異的抗原を含むが、これに限定されるわけではない。その他の標的分子は、癌遺伝子HER−2/Neu/ErbB−2などの形質転換関連分子のグループに属する。さらにもう1つの標的抗原グループは、癌胎児性抗原(CEA)などの腫瘍胎児抗原である。B細胞リンパ腫においては、腫瘍特異的イディオタイプ免疫グロブリンは個々の腫瘍に固有の真に腫瘍特異的な免疫グロブリン抗原を構成する。CD19、CD20及びCD37などのB細胞分化抗原は、B細胞リンパ腫における標的抗原のためのその他の候補である。これらの抗原のいくつか(CEA、HER−2、CD19、CD20、イディオタイプ)が、モノクローナル抗体での受動免疫療法のための標的として使用され、或る程度の成功を収めた。
腫瘍抗原及びその抗原癌エピトープは、一次臨床分離株、細胞系列などといった天然の供給源から精製及び単離され得る。癌ペプチド及びその抗原エピトープは、当該技術分野において既知の化学合成又は組換え型DNA技術によっても得られ得る。化学合成のための技術はスチュワード(Steward)ら、(1969年);ボダンスキー(Bodansky)ら、(1976年);マイエンホッファー(Meienhofer)(1983年);及びシュローダー(Schroder)ら、(1965年)の中で記述されている。さらに、レンクヴィスト(Renkvist)ら、(2001年)の中で記述されているように、当該技術分野においては数多くの抗原が知られている。以下の表は、腫瘍抗原によってコードされるT細胞で確定されたエピトープを記述しており、T細胞により認識される腫瘍抗原(細胞傷害性CD8+又はヘルパーCD4+のいずれか)のみが列挙されている。類似体又は人工的に修飾されたエピトープは列挙されていないものの、当業者であれば、当該技術分野における標準的な手段によりこれらをいかに獲得又は生成するかを認識する。抗体により同定されSerex法(サヒン(Sahin)ら、(1997年)及びチェン(Chen)ら、(2000年)参照))により検出されるその他の抗原は、ルードゥイング・インスティチュート・フォー・キャンサー・リサーチ(Ludwig
Institute for Cancer Research)のデータベース内で同定される。
病原菌抗原
病原菌抗原は、ウイルス、細菌又は真菌由来であり得る。感染性ウイルスの例としては、レトロウイルス科(例えばヒト免疫不全ウイルス例えばHIV−1(HTLV−III
、LAV又はHTLV−III/LAV、又はHIV−III)とも呼ばれる:及びその他の分離株例えばHIV−LP;ピコルナウイルス科(Picornaviridae)(例えばポリオウイルス(polio virus)類、肝炎Aウイルス(hepatitis A virus);エンテロウイルス(enterovirus)類;ヒトコクサッキーウイルス(human coxsackie virus)類、ライノウイルス(rhinovirus)類、エコーウイルス(echovirus)類);カルシウイルス科(Calciviridae)(例えば胃腸炎を起こす株);トガウイルス科(Togaviridae)(例えばウマ脳炎ウイルス(equine encephalitis virus)類、風疹ウイルス(rubella virus)類);フラビウイルス科(Flaviviridae)(例えば、デング熱ウイルス(dengue virus)類、脳炎ウイルス(encephalitis virus)類、黄熱病ウイルス(yellow fever virus)類);コロナウイルス科(Coronaviridae)(例えば、コロナウイルス(coronavirus)類);ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)(例えば、水疱性口内炎ウイルス(vesicular stomatitis virus)類、狂犬病ウイルス(rabies virus)類);フィロウイルス科(Filoviridae)(例えばエボラウイルス(ebolavirus)類);パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)(例えば、パラインフルエンザウイルス(parainfluenza virus)類、流行性耳下腺炎ウイルス(mumps virus)、麻疹ウイルス(measles virus)、呼吸器合抱体(RS)ウイルス(respiratory syncytial virus));オルソミクソウイルス科(Orthomyxoviridae)(例えば、インフルエンザウイルス(influenza virus)類);ブンガウイルス科(Bungaviridae)(例えば、ハンターンウイルス(Hantaan virus)類、ブンガウイルス(bunga virus)類、フレボウイルス(phlebovirus)類およびナイロウイルス(Nairo virus)類);アレナウイルス科(Arena viridae)(出血性熱ウイルス(hemorrhagic fever virus)類);レオウイルス科(Reoviridae)(例えば、レオウイルス(reovirus)類、オルビウイルス(orbivirus)類およびロタウイルス(rotavirus)類);ビルナウイルス科(Birnaviridae);ヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)(B型肝炎ウイルス(Hepatitis B virus));パルボウイルス科(Parvovlridae)(パルボウイルス(parvovirus)類);パポバウイルス科(Papovaviridae)(乳頭腫ウイルス(papilloma virus)類、ポリオーマウイルス(polyomavirus)類);アデノウイルス科(Adenoviridae)(大部分のアデノウイルス(adenovirus)類);ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)(単純ヘルペスウイルス(herpes simplex virus (HSV))1および2、水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus)、サイトメガロウイルス(cytomegalovirus(CMV))、ヘルペスウイルス(herpes virus)類);ポックスウイルス科(Poxviridae)(痘瘡ウイルス(variola virus)類、ワクシニアウイルス(vaccinia virus)類、ポックスウイルス(pox
virus)類);およびイリドウイルス科(Iridoviridae)(例えばブタコレラウイルス(African swine fever virus));未分類ウイルス(例えば、海綿状脳症(Spongiform encephalopathy)の病因病原体、デルタ肝炎の病原体(B型肝炎ウイルスの不完全付随体と考えられているもの)、非A、非B型肝炎の病原体(クラス1=経口感染、クラス2=非経口感染(すなわち、C型肝炎));ノーウォーク(Norwalk)および関連ウイルス、およびアストロウイルス(astrovirus)類)が含まれる。
感染性細菌の例としては、ヘリコバクターピロリ(Helicobacter pyl
oris)、ボレリア・ブルグドルフェリBorelia burgdorferi、レジオネラ・ニューモフィリア(Legionella pneumophilia)、ミコバクテリウム(Mycobacteria)種(例えば結核菌(M.tuberculosis)、トリ結核菌(M.avium)、M.イントラセルラレ(M.intracellulare)、M.カンサイ(M.kansaii)、M.ゴルドナイ(M.gordonae))、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria
meningitidis)、リステリア菌(Listeria monocytogenes)、化膿性連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)(A群連鎖球菌)、ストレプトコックス・アガラクティアイ(Streptococcus agalactiae)(B群連鎖球菌)、連鎖球菌(Streptococcus)(ヴィリダンス群(viridans group))、糞便連鎖球菌(Streptococcus faecalis)、ストレプトコックス・ボビス(Streptococcus bovis)、連鎖球菌(Streptococcus)(嫌気性種)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、病原性カンピロバクター(Campylobacter)種、腸球菌(Enterococcus)種、インフルエンザ菌(Haemophilus influenzae)、炭疽菌(Bacillus antracis)、ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)種、ブタ丹毒菌(Erysipelothrix rhusiopathiae)、ウェルシュ菌(Clostridium perfringens)、破傷風菌(Clostridium
tetani)、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)、パスツレラ・ムルトチダ(Pasturella multocida)、バクテロイド(Bacteroides)種、フゾバクテリウム・ヌタレアツム(Fusobacterium nucleatum)、ストレプトバチラス・モニリフォルミス(Streptobacillus moniliformis)、トレポネーマ(Treponema)、フランベジアトレポネーマ(Treponema pertenue)、レプトスピラ属(Leptospira)およびイスラエル放線菌(Actinomyces israelli)が含まれる。
感染性真菌の例としては、クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)、ヒストプラズマ・カプスラーツム(Histoplasma capsulatum)、コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)、ブラストミセス・デルマティティディス(Blastomyces dermatitidis)、トラコーマ病原体(Chlamydia trachomatis)、口瘡カンジダ(Candida albicans)が含まれる。その他の感染性生体(すなわち原生生物)には、熱帯性マラリア原虫(Plasmodium falciparum)およびトキソプラズマ・ゴンジ(Toxoplasma gondii)が含まれる。
サイレンシング化された及びパルスを受けた免疫細胞
もう1つの実施形態においては、細胞を培養、組織、臓器又は生体から単離し、細胞ワクチンとして哺乳動物に投与することが可能である。かくして、本発明は「細胞ワクチン」を考慮している。当然のことながら、細胞は、免疫調節薬又はアジュバンドなどの1つもしくはそれ以上の付加的なワクチン構成要素を発現することもできる。ワクチンは、細胞の全て又は一部を含んでなっていてよい。好ましい実施形態においては、本発明の細胞ワクチンは、ヒトAPCを含んでなり、さらに好ましい実施形態においては、APCはDCである。
細胞ワクチンは、その免疫能力を増強するため本発明に従ってサイレンシング化されたAPCを含んでなり得る。サイレンシング化されたAPCはこのとき、抗原負荷された細胞を生成するべく抗原をコードする核酸でのトランスフェクションを受けることができる。もう1つの態様においては、抗原負荷細胞を生成するべく抗原を含む免疫刺激タンパク質で、サイレンシング化されたAPCをパルスすることができる。本開示に基づくと、サイレンシング化されたAPCは、抗原を負荷するためにあらゆるタイプの抗原を利用してあらゆる方法でパルス可能である。さらに、本発明のインヒビターでのAPCのサイレンシング化の前、又はそれと同時に又はその後に、任意の方法によりAPCをパルスすることができる。
本書の他の箇所で開示されているように、さまざまな方法を用いて抗原で細胞をパルスすることができる。本発明の抗原は、少なくとも1つのエピトープを含有し、ここで前記エピトープは哺乳動物内で免疫応答を惹起する能力を有する。一実施形態においては、抗原は発現ベクターにより発現される。もう1つの実施形態においては、抗原は単離されたポリペプチドである。好ましくは、抗原は、感染性疾患、癌及び自己免疫疾患よりなる群から選択された1疾患と結びつけられる。本発明の細胞をパルスする上で有用な一定数の好ましい抗原が本書の他の箇所で開示されている。抗原は、腫瘍溶解物、タンパク質、ペプチド、mRNA、ベクターから発現されたDNA、リポソームなどのうちの少なくとも1つもしくはそれ以上の形をとり得る。
負の免疫調節因子のインヒビターでのサイレンシング化されたAPCは、増大した免疫能力を有し、従って増強された免疫応答すなわち抗原を提示しそれに対する免疫応答を活性化させる増強された能力を惹起する。本発明に従ってサイレンシング化及びパルスを受けたAPCは、エフェクタT細胞を刺激し、サイレンシング化を受けていないその他の点では同一であるAPCに比べて、それに対する抗原に対して改善された免疫応答を惹起する。
治療的応用
本発明は、APCなどの免疫細胞の免疫能力を増強するのに有用な組成物を含む。APCにより提示される抗原に対する応答は、当該技術分野において周知の方法を用いて細胞溶解性T細胞応答、ヘルパーT細胞応答及び/又は抗原に対する抗体応答の誘発を監視することによって測定可能である。
本発明は、抗原組成物と1つもしくはそれ以上のリンパ球を接触させる工程を含んでなる哺乳動物の体内の免疫応答を増強する方法において、抗原がAPCなどの免疫細胞により提示される方法を含む。本開示に基づくと、APCは、負の免疫調節因子のインヒビターに対する曝露によってサイレンシング化され得、かくしてインヒビターに対する曝露はAPCの免疫能力を増強する。APCは、その他の形でAPCをパルスするべく、抗原組成物にAPCを曝露する前、又はそれと同時又はその後に本書で開示されている方法を用いてサイレンシング化され得る。
増強された免疫応答は、能動又は受動免疫応答であり得る。応答は、樹状細胞、B細胞又は単球/マクロファージといったAPCが哺乳動物(例えば患者)から得られ、その後(その他の形で免疫細胞をサイレンシング化するべく負の免疫調節因子のインヒビターに対し細胞を曝露する前、又はそれと同時又はその後に)抗原組成物を含んでなる組成物でパルスされ、次に必要としている哺乳動物に対しAPCを投与する養子免疫療法アプローチの一部であり得る。
組成物は、負の免疫調節因子、抗原、サイレンシング化された免疫細胞、パルスを受けた細胞、そして同じく抗原でのパルスも受けたサイレンシング化された免疫細胞のうちの
少なくとも1つもしくはそれ以上のもののあらゆる組合せを含む。組成物は、哺乳動物内のエクスビボ免疫化及び/又はインビボ療法のためのワクチンであり得る。好ましくは、哺乳動物はヒトである。
エクスビボ免疫化に関連して、哺乳動物内に細胞を投与する前にインビトロで以下のもののうちの少なくとも1つが起こる。すなわち、i)細胞のサイレンシング化、ii)細胞のパルス又は iii)細胞のサイレンシング化及びパルス。本発明の免疫細胞を、免疫細胞をパルスするべく抗原でAPCを処理する前、それと同時又はその後に本書の他の箇所で開示された方法を用いて、本発明の免疫細胞(すなわちAPC)をサイレンシング化することができる、ということを充分に理解すべきである。
もう1つの実施形態においてはサイレンシング化されたAPCを、抗原に予めインビトロで曝露することなく、必要としている患者に対し投与することが可能である。すなわち、本発明は、患者の体内でインビボで細胞のパルスが発生する、患者に対するサイレンシング化されたAPCの投与を包含している。
さらにもう1つの実施形態においては、パルスを受けたAPCを、負の免疫調節因子のインヒビターに対する細胞の事前のインビトロ曝露無く、それを必要とする患者に対して投与することができる。すなわち、本発明は、細胞のサイレンシング化が患者の体内においてインビボで起こる、患者に対するパルスを受けたAPCの投与を包含している。
エクスビボ手順は当該技術分野において周知であり、以下でさらに詳述されている。簡単に言うと、細胞が哺乳動物(好ましくはヒト)から単離され、負の免疫調節因子のインヒビターを発現するベクター又は本書で開示されている任意のその他の形態の負の免疫調節因子(すなわち化学的に合成されたsiRNA)でサイレンシング化(すなわちインビトロで形質導入又はトランスフェクション)される。サイレンシング化された細胞は、治療上の利益を提供するべく哺乳動物レシピエントに投与され得る。哺乳動物レシピエントはヒトであり得、このようにサイレンシング化された細胞はレシピエントとの関係において自己移植性であり得る。あるいは、細胞はレシピエントとの関係において同種異系、同系又は異種のものであり得る。
本発明に参照により援用されている米国特許第5,199,942号明細書の中で記述された造血幹及び前駆細胞のエクスビボ拡張のための手順を本発明の細胞に適用することができる。その他の適切な方法も当該技術分野において既知であり、従って本発明は細胞のエクスビボ拡張のいずれか特定の方法に限定されるわけではない。簡単に言うと、エクスビボ培養及びDCの拡張には、(1)末梢血の収穫物又は骨髄外植体から哺乳動物由来のCD34+造血幹及び前駆細胞を収集する工程及び(2)かかる細胞をエクスビボで拡張させる工程が含まれる。米国特許第5,199,942号明細書に記述されている細胞成長因子に加えて、flt3−L、TL−1、IL−3及びC−kitリガントなどのその他の因子を、細胞の培養及び拡張のために使用することができる。
細胞集団からCD34+造血幹又は前駆細胞を同定しかつ分離するためのさまざまな細胞選択技術が知られている。例えば、幹及び前駆細胞上に見られるマーカータンパク質又は表面抗原タンパク質に結合するように、モノクローナル抗体(又はその他の特異的細胞結合タンパク質)を使用することができる。造血幹細胞のためのいくつかのかかるマーカーまたは細胞表面抗原(すなわち、flt−3、CD34、My−10およびThy−1)は、当該技術分野において既知である。
収集されたCD34+細胞は適切なサイトカインと共に培養される。その後CD34+細胞は、分化して樹状系統の細胞に対応することができるようになる。これらの細胞は次
に、CD1a、HLA DR、CD80及び/又はCD86などの樹状細胞に特徴的であるマーカーを用いて、フローサイトメトリ又は類似の手段によってさらに精製される。DCの培養の単離後、細胞を本発明の方法に従って修飾することができる。あるいは、DC様の細胞に分化される前に前駆細胞を修飾することができる。
エクスビボ免疫化に関して細胞ベースのワクチンを使用することに加えて、本発明はまた、患者の体内の抗原に対し向けられた免疫応答を惹起するためのインビボ免疫化用の組成物及び方法をも提供している。
インビボ免疫化に関し、本発明は、APC内の臨界制御点を無効にすることによりワクチンの効能を増強するための包括的手段としての負の免疫調節因子のインヒビターの使用を提供している。従って、インビボ免疫化にとって有用なワクチンは、少なくとも負の免疫調節因子を阻害することのできるインヒビター構成要素を含んでなる。もう1つの態様では、ワクチンは、インヒビター構成要素と抗原構成要素の両方を含んでなり、抗原構成要素は哺乳動物の体内で免疫応答を惹起する能力をもつ。
インビボ免疫化に関しては、患者から得られた細胞は、サイレンシング化された細胞をその他の形で生成するべくインビボでトランスフェクト又は形質導入される。細胞はインビボで、サイトカインレギュレータのインヒビターを発現するベクターでサイレンシング化される。あるいは、細胞は、(化学的に合成されたsiRNAである)ベクターにより発現されない本書で開示された負の免疫調節因子のその他の任意の形のインヒビターを用いてサイレンシング化される。インビボでサイレンシング化された細胞を生成する方法については、本書のその他の箇所で論述されている。
ワクチンのもう1つの態様は、インビボで細胞をパルスするのに有用な抗原構成要素を含む。本発明の負の免疫調節因子のインヒビターと組み合わせて、任意の抗原を投与することができる。インヒビターを含んでなるワクチンでの細胞のサイレンシング化の前に、又はそれと同時に又はその後に、本書のその他の箇所で論述されている通りのあらゆる方法を用いて細胞をパルスすることができる。細胞を同時にパルスしサイレンシング化すべきである場合には、インヒビター及び抗原を両方共含んでなる単一のワクチンで哺乳動物を免疫化できるということが容易にわかる。あるいは、インヒビターを含んでなるもの及び抗原を含んでなる第2のワクチンという2つの別々のワクチンで哺乳動物を免疫化することが可能である。
本発明は、癌及び感染性疾患のためのインビボ免疫化を包含する。一実施形態においては、患者の体内の抗原に対抗する免疫応答を生成するべく抗原と組合せた形で又は単独でsiRNAをインビボで投与することにより、障害又は疾患を治療することができる。本開示に基づくと、負の免疫調節因子のインヒビター(例えばA20、SUMO(SUMO1、SUMO2、SUMO3及びSUMO4)、Foxj1、Foxo3a、TWIST(Twist1、Twist2)、SOCS(SOCS1、SOCS2、SOCS3、SOCS4、SOCS5、SOCS6、SOCS7及びCIS)、PIAS(PIAS1、PIAS3、PIASx及びPIASy)、SHP(SHP−1及びSHP−2のためのsiRNA又はそのいずれかの組合せ)を抗原処方物と組合せた形で投与することにより、負の免疫調節因子のインヒビターを使用することなくその他の点では同一であるワクチン接種プロトコルの効能が増強される。何らかの特定の理論により束縛されることを望んではいないが、患者の体内の抗原に対する免疫応答は、(1)投与されたsiRNA組成物、(2)投与の持続時間、用量及び頻度、(3)患者の全身状態、そして該当する場合には(4)投与される抗原組成物により左右されると考えられている。
一実施形態においては、哺乳動物は、腫瘍特異的抗原を発現するタイプの癌を有してい
る。本発明に従うと、腫瘍特異的抗原配列構成要素を含んでなる免疫刺激タンパク質を作ることができる。このような場合、負の免疫調節因子のインヒビターは、それを必要とする患者に対し免疫刺激タンパク質との組合せの形で投与され、その結果、例えば腫瘍特異的抗原を発現する中実腫瘍又は癌細胞の成長の減速又は減少或いは癌細胞の総数又は総全身腫瘍組織量の低減によって証明される、患者にとっての治療成果の改善がもたらされる。
関連する実施形態においては、患者は、例えばウイルス抗原といった特定の抗原の発現と結びつけられるウイルス、細菌、真菌又はその他のタイプの感染を有するとの診断を受けている。本発明に従うと、例えばHIV特異的抗原などの抗原からなる配列構成要素を含んでなる免疫刺激タンパク質を作ることができる。このような場合には、負の免疫調節因子のインヒビターが、それを必要とする患者に対して免疫刺激タンパク質と組合せた形で投与され、その結果、患者の体内の原因感染物質の成長の減速及び/又は特定の感染性疾患に標準的に付随する検出可能な症候群の低減又は除去により証明されるような患者にとっての治療成果の改善がもたらされる。
いずれの状況下でも、障害又は疾患は、それを必要とする患者に対する抗原と組合せた形での負の免疫調節因子のインヒビターの投与により治療され得る。本発明は、患者の体内で抗原に対する防御的DC誘発型免疫応答を生成するための手段を提供する。本開示に基づいて、当業者であれば、負の免疫調節因子ワクチンのインヒビターの効能を増強するため、本書に開示された治療計画に対し炎症性サイトカイン(すなわち、IL−12、TNFa、IFNa、IFNb、IFNgなど)を添加することができるということがわかるだろう。
投薬量及び処方(薬学組成物)
本発明は、治療薬例えばsiRNAの投与により哺乳動物の体内のHIV感染、癌などの疾患を治療することを想定している。本発明に係る治療薬の投与は、例えば患者の生理学的身体条件、投与の目的が治療か予防か、そして専門の医師にとって既知であるその他の要因に応じて、連続的又は間欠的であってよい。本発明の作用物質の投与は、基本的に、予め選択された期間にわたり連続的であり得、そうでなければ一連の間隔どりされた用量の形をとり得る。局所的及び全身的投与の両方が考慮される。投与される量は、選択された組成物、特定の疾患、哺乳動物の体重、身体条件及び年令、及び予防又は治療のいずれを達成すべきかを含めた(ただしこれに限定されるわけではない)さまざまな要因によって変動することになる。かかる要因は、当該技術分野において周知である動物モデル又はその他のテスト系を利用する臨床医により、容易に判定可能である。
siRNAの投与は、siRNAをコードする核酸分子の投与を通して達成され得る(例えば、フェルグナー(Felgner)ら、米国特許第5,580,859号明細書、パルドール(Pardoll)ら、1995年;スティーブンソン(Stevenson)ら、1995年;モーリング(Molling)1997年;ドネリー(Donnelly)ら、1995年;ヤン(Yang)ら、II;アブダラ(Abdallah)ら、1995年を参照)。例えば、フェルグナーら(前掲書)の中などで、核酸の薬学処方物、投薬量及び投与経路が一般的に開示されている。
以下で論述されているように場合により持続的放出のために処方され得る(例えばマイクロカプセル化を用いたもの、その開示が本発明に参照により援用されている国際公開第94/07529号パンフレット及び米国特許第4,962,091号明細書を参照)本発明の治療薬を有する1つもしくはそれ以上の適切な単位剤形を、静脈内及び筋肉を含めた非経口経路ならびに罹患組織内への直接注入を含むさまざまな経路で投与することができる。例えば、治療薬を直接腫瘍内に注射することが可能である。処方物は、該当する場
合、個別の単位剤形で便利な体裁をとり得、薬学では周知の方法のいずれかにより調製可能である。かかる方法は、液体担体、固体マトリクス、半固体担体、細分した固体担体又はそれらの組合せと治療薬を会合させ、その後必要であらば製品を所望の送達系内に導入又は整形する工程を含み得る。
本発明の治療薬が投与のために調製される場合、これらは好ましくは、薬学処方物又は単位剤形を形成するため薬学的に許容可能な担体、希釈剤又は賦形剤と組み合わされる。かかる処方物中の総活性成分は、0.1〜99.9重量%の処方物を含む。「薬学的に許容可能な」というのは、処方物のその他の成分と適合可能でありそのレシピエントに有害でない担体、希釈剤、賦形剤及び/又は塩である。投与のための活性成分は、粉末又は顆粒として、溶液、懸液又はエマルジョンとして存在し得る。
本発明の治療薬を含有する薬学的処方物は、周知の及び容易に入手可能な成分を用いて当該技術分野において既知の手順により調製可能である。本発明の治療薬は、非経口投与、例えば筋肉、皮下又は静脈内経路による投与に適した溶液としても処方可能である。
本発明の治療薬の薬学処方物は同様に、水溶液又は無水溶液又は分散の形、あるいはエマルジョン又は懸濁液の形をとることもできる。
かくして、治療薬は、非経口投与(例えば注入、例えばボーラス注入又は持続注入による投与)のために処方され得、アンプル、薬剤充填済み注射器、少量注入器又は防腐剤が添加された多回用量コンテナに入った単回剤形の体裁をとり得る。活性成分は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルジョンの形をとり得、懸濁、安定化及び/又は分散剤などの処方用作用物質を含有し得る。あるいは、活性成分は、使用前に滅菌で発熱物質を含まない水といった適切なビヒクルで構成するように、溶液からの凍結乾燥により又は滅菌固体の無菌単離によって得られる粉末形態であってもよい。
各剤形の個々のエアロゾル用量中に含有されている活性成分の単位含有量は、複数の剤形の投与によって必要な有効量を達成することが可能であるため、それ自体で特定の適応症又は疾病を治療するための1有効量を構成する必要はない、ということがわかるだろう。その上、剤形中の用量より少ない量を個別に又は一連の投与の中で用いることにより、有効量を達成することも可能である。
本発明の薬学処方物は、任意の成分として、薬学的に許容可能な担体、希釈剤、可溶化剤又は乳化剤、及び当該技術分野において周知であるタイプの塩を内含し得る。本発明の薬学処方物において有用である担体及び/又は希釈剤の限定的な意味のない特定の例としては、水及び生理学的に許容可能な緩衝生理食塩溶液、例えばpH7.0〜8.0のリン酸緩衝生理食塩溶液が含まれる。
本発明の発現ベクター、形質導入された細胞、ポリヌクレオチド及びポリペプチド(活性成分)は、生体の体内でその作用物質の作用部位と活性成分の接触を作り出すあらゆる手段によりさまざまな疾病状態を治療するように処方及び投与可能である。これらは、個々の治療用活性成分としてか又は治療用活性成分の組合せの中で、調合薬と併用する利用可能なあらゆる従来の手段によって投与され得る。これらは単独で投与され得るが、一般に、標準的な薬学的実践方法及び選択された投与経路に基づいて、薬学的担体と共に投与される。
一般に、非経口溶液のためには、水、適切な油、食塩水、水性デキストロース(グルコース)、及び関連する糖溶液及びプロピレングリコール又はポリエチレングリコールといったグリコールが適切な担体である。非経口投与のための溶液は、活性成分、適切な可溶
化剤、そして必要に応じて緩衝物質を含有する。重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又はアスコルビン酸などの酸化防止剤が、単独であれ、組み合わされた形であれ、適切な安定化剤である。同様に使用されるのはクエン酸及びその塩、そしてエチレンジアミン四酢酸(EDTA)である。さらに、非経口溶液は、塩化ベンザルコニウム、メチル又はプロピルパラベン及びクロロブタノールなどの防腐剤を含有し得る。適切な薬学的担体が、この分野での標準的な参考書である「Remington’s Pharmacentical Sciences」の中で記述されている。
本発明の活性成分は、哺乳動物特にヒトにおいて使用するのに適した薬学的に許容可能な組成物の中で懸濁されるように処方可能である。このような処方物は、米国特許第4,082,735号明細書;同第4,082,736号明細書;同第4,101,536号明細書;同第4,185,089号明細書;同第4,235,771号明細書;及び同第4,406,890号明細書の中で記述されているムラミルジペプチド誘導体(MDP)又は類似体などのアジュバンドの使用を含む。有用なその他のアジュバンドには、ミョウバン(ピアス・ケミカル・カンパニー(Pierce Chemical Co.))、脂質A、トレハロースジミコレート及び臭化ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDA)、フロインドアジュバンド及びIL−12が含まれる。その他の構成要素としては、ポリオキシプロピレン−ポリオキシレンブロックコポリマー(プルロニック(Pluronic)(登録商標))、非イオン性界面活性剤及びスクアレンなどの代謝性油(米国特許第4,606,918号明細書)が含まれ得る。
さらに、標準的な薬学的方法を利用して作用持続時間を制御することが可能である。これらの方法は、当該技術分野において周知であり、制御放出調製物を内含し、例えばポリマー、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニル、ピロリドン、エチレンビニルアセタート、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース又は硫酸プロタミンといった適切な巨大分子を含み得る。巨大分子の濃度ならびに取込み方法は、放出を制御するために調整可能である。さらに、ポリエステル、ポリアミノ酸、ヒドロゲル、ポリ(乳酸)又はエチレン酢酸ビニルコポリマーなどの作用物質をポリマー材料の粒子中に取込むことができる。取込まれることに加えて、これらの作用物質は、マイクロカプセル内に化合物を捕捉するのにも使用可能である。
従って、本発明の薬学組成物は、特定の効果を達成するべく哺乳動物の体内のさまざまな部位に対しさまざまな経路を介して送達可能である(例えば、ローゼンフェルド(Rosenfeld)ら、1991年;ローゼンフェルドら、1991年a;ジャフェ(Jaffe)ら、上掲書;バークナー(Berkner)、上掲書を参照)。当業者であれば、投与のために2つ以上の経路を用いることができるものの、特定の経路が、もう一方の経路に比べより即刻のかつより効果的な反応を提供する可能性がある、ということを認識するだろう。体腔内への処方物の点滴又は塗布、エアロゾルの吸入又は吹送又は、筋肉、静脈内、腹腔内、皮下、皮内ならびに局所的投与を含んでなる非経口導入を含んでなる投与により、局所的又は全身的送達を達成することが可能である。
本発明の活性成分は、例えば茶さじ一杯、錠剤、溶液又は座薬などの各投薬量単位が、単独で又はその他の活性作用物質と適切に組合せた形で、予め定められた量の組成物を含有している、単位剤形の形で提供され得る。本書で使用する「単位剤形」という用語は、ヒト及び哺乳動物の対象のための単一の投薬量として適切でかつ、各々該当する場合薬学的に許容可能な希釈剤、担体又はビヒクルと会合した状態で、所望の効果を生み出すのに充分な量で計算された、その他の活性作用物質と組合せた形又は単独の予め定められた数量の本発明の組成物を含有している、標準的に個別の単位を意味する。本発明の単位剤形のための仕様は、達成すべき特別な効果及び特定の宿主の中で薬学組成物に付随する特別な薬物力学によって左右される。
本書で記述されているこれらの方法は、決して包括的ではなく、当業者には特定の利用分野に適したさらなる方法が明らかになることだろう。その上、組成物の有効量は、所望の効果を及ぼすものとして知られている化合物に対する類推を通してさらに近似され得る。
遺伝子療法の投与
当業者であれば、細胞内にベクターを投与するために異なる送達方法を利用できることを認識する。例としては、(1)物理的手段、例えば電気穿孔(電気)、遺伝子統(物理的力)又は大量の液体(圧力)の付加を用いた方法、及び(2)リポソーム、凝集タンパク質又はトランスポータ分子などのもう1つの実体に対して前記ベクターを複合させる方法、が含まれる。
さらに、実際の用量及び計画は、その組成物がその他の薬学組成物と組合せて投与されているか否か又は薬物動態、薬物挙動及び代謝における個体間差に応じて変動し得る。同様に、量はインビトロ利用分野において、利用される特定の細胞系列に応じて(例えば細胞表面上に存在するベクターレセプタの数、又はその細胞系列内で複製する遺伝子移送に利用された特定のベクターの能力に基づく)変動し得る。さらに、細胞1個あたりの付加すべきベクターの量は、ベクター内に挿入された治療用遺伝子の長さ及び安定性ならびに配列の性質に応じて変動する確率が高く、特に経験的に判定される必要のあるパラメータであり、本発明の方法に固有の因子(例えば合成に付随するコスト)に起因して改変され得る。当業者であれば、特定の状況の要件に従って、任意の必要な調整を容易に行なうことができる。
治療薬を含有する細胞は同様に、自殺遺伝子すなわち細胞を破壊するのに使用可能な産物をコードする遺伝子をも含有し得る。数多くの遺伝子療法の状況下で、宿主細胞内で治療目的で遺伝子を発現できることのみならず意のままに宿主細胞を破壊する能力をもつことができることも望ましい。治療薬は、アクチベータ化合物の不在下でその発現が活性化されない自殺遺伝子に連結され得る。作用物質及び自殺遺伝子の両方が導入された細胞の死滅が望まれる場合、アクチベータ化合物は、その細胞に対し投与され、かくして自殺遺伝子の発現を活性化し、細胞を死滅させる。使用可能な自殺遺伝子/プロドラッグの組合せの例としては、単純ヘルペスウイルス−チミジンキナーゼ(HSV−tk)及びガンシクロビル、アシクロビル;オキシドレダクターゼ、及びシクロヘキシミド;シトシンデアミナーゼ及び5−フルオロシトシン;チミジンキナーゼチミジラートキナーゼ(Tdk::Tmk)及びAZT;及びデオキシシチジンキナーゼ及びシトシンアラビノシドがある。
本書で記述されているこれらの方法は、決して包括的ではなく、特定の利用分野に適したさらなる方法が当業者には明らかとなるであろう。その上、所望の効果を及ぼすものとして知られている化合物に対する類推を通して、組成物の有効量をさらに近似することが可能である。
本発明についてここで以下の実施例を参考にしながら記述する。これらの実施例は、あくまで例示を目的として提供されており、本発明はこれらの実施例に限定されず、むしろ本書で提供されている教示の結果として明白である全ての変形形態を包含する。
本書で開示されている実験は、さまざまな癌及び感染性病原体に対する有効なワクチンを開発する目的でDCを活用するためDCによる抗原提示の調節を探索するべく実施された。本書で開示されている結果は、免疫細胞内での負の免疫調節因子の阻害として別途知
られている負の免疫調節経路との干渉が、その免疫刺激能力を増強する、ということを実証している。細胞の免疫能力を強化するために負の免疫調節因子を阻害するという概念は、より効果的なワクチンを開発する新規の方法として役立つ。
本書で開示されている実験において利用される材料及び方法についてここで記述する。
siRNAオリゴによるDCのトランスフェクション
21、26又は同等の塩基対siRNAオリゴスクレオチドで、骨髄DCをトランスフェクトした。例えば、メーカーのプロトコルに従いジーンポーター(GenePorter)(ゲンランティス(Genlantis)、カリフォルニア州サンディエゴ(San
Diego,CA))を用いて、DCをSOCS1−siRNA3(5’−CTACCTGAGTTCCTTCCCCTT−3’;配列番号3)でトランスフェクトした。ただし、本書の他の箇所で論述されているいずれのsiRNAオリゴヌクレオチドでも、本書で論述されている方法を用いてDC内にトランスフェクト可能である。簡単に言うと、20μMのオリゴヌクレオチドの溶液3μlを3μlのジーンポーター試薬及び94μlの無血清RPMI1640に添加した。30分間25℃で混合物をインキュベートし、その後、100μlのジーンポーター/オリゴヌクレオチドの混合物を骨髄−DCの各ウェルに添加し、37℃で4時間インキュベートした。インキュベーションの後、20%のFBSで捕足された500μl/ウェルのRPMI1640を骨髄DCに添加した。
骨髄由来のDCのレンチウイルスベクターによる形質導入
マウスの骨髄由来のDCを、当該技術分野において既知の方法を用いて調製した。簡単に言うと、マウス骨髄を四肢から洗い流し、ナイロンメッシュを通し、塩化アンモニウムで赤血球を枯渇させた。RPMI−1640での広範な洗浄の後、細胞を、10%のFBS、mGM−CSF/ml(20ng/ml)及び組換え型マウスIL−4(20ng/ml:ペプロテック社(PeproTech.Inc.)ニュージャージー州ロッキーヒル(Rocky Hill,NJ))で補足された2.5mlのRPMI−1640と共に培養した。培養2日目と4日目に、上清を除去し、20ng/mlのrmGM−CSF及び20ng/mlのrmIL−4を含有する新鮮な培地と交換した。5%加湿したCO2中で37℃で全ての培養をインキュベートした。48時間の培養の後、非接着性顆粒球を除去し、新鮮培地を添加した。7日間の培養後、80%を超える細胞が、FACSにより決定される通り、特徴的なDC特異的マーカーを発現した。マウス骨髄由来のDCの形質導入(培養5日目〜7日目)を、5μg/mlのポリブレン(Polybrene)(シグマ、ミズーリ州セントルイス)の添加により、24ウェルのプレート上で実施した。DCを洗浄し、400μlの無血清RPMI1640中2×105細胞/ウェルの濃度で24ウェルのプレート内にプレート固定した。5×105細胞/mlという細胞密度で、異なる感染多重度(MOI)をもつレンチウイルスベクターに細胞を曝露した。8時間の形質導入の後、細胞をPBSで洗浄し、さらに新鮮な組織培地内でインキュベートした。
サイトカイン及びウェスタンブロット法
メーカーの指示に従って、ELISA分析(BDバイオサイエンシーズ(Biosciences)、ニュージャージー州リンカーンパーク(Lincoln Park,NJ))を用いて細胞培養の上清を使用してさまざまなサイトカインレベルを定量化した。ウェスタンブロット分析のためには、SOCS1、A20、Foxj1、SUMO及びTwist2−siRNA又は対照siRNA(例えばGFP−siRNA)を含めた(ただしこれに限定されるわけではない)所望のsiRNAを発現するpSUPERベクター及び対応するタグ付き発現ベクターで、293T細胞を同時トランスフェクトした。
例えば、293T細胞を、10:1の比のマウスSOCS1−siRNA又は無関係のGFP−siRNAとFLAGタグ付きSOCS1ベクターで同時トランスフェクトした
。細胞を48時間後に収穫し、SDS−PAGEに付した。Hybond−P膜(アマシャム(Amersham)、イリノイ州アーリントンハイツ(Arlington Heights,IL))への移送の後、試料を、抗Flag(シグマ、ミズーリ州セントルイス)又はアクチン((サンタクルス・バイオテクノロジー社(Santa Cruz Biotechnology,Inc.)、カリフォルニア州サンタクルス(Santa
Cruz,CA)))抗体でのウェスタンブロット法とそれに続くECL−Plus試薬(アマシャム、イリノイ州アーリントンハイツ)での検出により分析した。フィルムをデンシトメータ(Densitometer)SIで走査し、SOCS−1/アクチンバンドをイメージ・クアント(ImageQuant)ソフトウエア(モレキュラー・ダイナミクス(Molecular Dynamics)、ニュージャージー州ピスカタウェイ(Piscataway,NJ))で定量した。SOCS1バンドの強度をベータアクチンバンドの強度に正規化した。
SOCS1の定量RT−PCR分析
トランスフェクションを受けたマウスBM−DC内のSOCS1の相対的発現を、定量的実時間PCRにより評価した。トリゾール試薬(インビトロジェン、カリフォルニア州カールズバッド(Carlsbad,CA))を用いて3.5〜5×105BM−DCから、全RNAを抽出した。各試料についての全RNA1.0μgをランダム六量体プライマ及びSuperScript First−Strand Synthesisキット(インビトロジェン、カリフォルニア州カールズバッド)を用いて逆転写した。鋳型として反応一回につき5ngの出発RNA材料の当量を用い20μlの四重反応中のABI7900HTシーケンス・デテクション・システム(Sequence Detection System)(アプライド・バイオシステムズ社、カリフォルニア州フォスターシティー)上で、実時間5’−ヌクレアーゼ螢光性PCR分析を実施した。マウスSOCS1(6FAM)及び18Sリボソーム対照(VIC)のための予め開発されたプライマ/プローブセットをアプライド・バイオシステムズ社(カリフォルニア州フォスターシティー)(SOCS1のためのプライマ、5’−ACCTTCTTGGTGCGCGAC−3’;配列番号12及び5’−AAGCCATCTTCACGCTGAGC−3’;配列番号13及びハイブリダイゼーションプローブ、6FAM−TCGCCAACGGAACTGCTTCTTCG−TAMRA;配列番号14)から購入した。PCRパラメータは、SOCS1及び18S反応を別々の管で実施して、タクマン・ユニバーサルPCRマスター・ミックス・キット(TaqMan Universal PCR Master Mix kit)(アプライド・バイオシステムズ社、カリフォルニア州フォスターシティー)のために推奨された通りであった。SOCS1レベルを18SrRNAに正規化した。モックトランスフェクション及び刺激を受けたBM−DCの対照値との関係におけるSOCS1発現を、コンパラティブ(Comparative)Ct方法(ライバック(Livak)ら、2001年、Methods第25号:402〜408頁)を用いて計算した。
A20、Foxj1及びSUMO1の定量的RT−PCR分析
定量的実時間PCRにより、トランスフェクションを受けたマウスBM−DC内のA20、Foxj1及びSUMO1の相対的発現を評価した。全RNAを、トリゾール試薬(インビトロジェン、カリフォルニア州カールズバッド)を用いて3.5〜5×105BM−DCから抽出した。各試料についての全RNA1.0μgをランダム六量体プライマ及びSuperScript First−Strand Synthesisキット(インビトロジェン、カリフォルニア州カールズバッド)を用いて逆転写した。鋳型として反応一回につき5ngの出発RNA材料の当量を用い20μlの四重反応中のABI7900HT Sequence Detection System(アプライド・バイオシステムズ社、カリフォルニア州フォスターシティー)上で、実時間5’−ヌクレアーゼ螢光性PCR分析を実施した。マウスA20、Foxj1及びSUMO1及び18Sリボソ
ーム対照(VIC)のための予め開発されたプライマ/プローブセットをアプライド・バイオシステムズ社(カリフォルニア州フォスターシティー)から購入した(A20のためのプライマ、5’−GCATCTGCAGTACCTGTTTC’−3;配列番号186及び5’−GACAGGAGGCAGGGATA−3’;配列番号187及びハイブリダイゼーションプローブ:5’−ACTACAGCAGAGCCCAGCTCCAGCC−3’;配列番号188;Foxj1のためのプライマ、5’−GCCATGCAAGCCAGCAA−3’;配列番号189及び5’−GCAGAAGTTGTCCGTGATCCA−3’;配列番号190;及びハイブリダイゼーションプローブ:5’−AAGATCACTCTGTCGGCCATCTACAA−3’;配列番号191;SUMO1のためのプライマ、5’−GAAGGTCAGAGAATTGCTGATAATCAT−3’;配列番号192及び5’−CCCCGTTTGTTCCTGATAAACT−3’;配列番号193、及びハイブリダイゼーションプローブ:5’−TCCGAAAGAACTGGGAATGGAGGAAGAA−3’;配列番号194)。PCRパラメータは、本書の他の箇所で論述されたものに従った。
OT−I細胞のインビトロ検定
OT−Iマウスから脾臓を収穫し、プールし、単一の細胞懸濁液を得るべく分断した。MACSCD8+T細胞単離キット(ミルテニー・バイオテク社(Miltenyi Biotec Inc.)、カリフォルニア州オウバーン(Auburn,CA))を用いて負の選択によりCD8+OT−IT細胞を収集した。簡単に言うと、細胞を、CD4(L3T4)、CD45R(B220)、DX5、CD11b(Mac−1)及びTer−119に特異的なビオチン標識された抗体でコーティングした。抗ビオチン磁気ミクロビーズ(MicroBeads)(ミルテニー・バイオテク社、カリフォルニア州オウバーン)を細胞に添加し、これらを、MACS磁石に取付けられた分離カラム全体に通過させた。カラムに結合しなかった細胞を収集し、それはFACSにより判定されるとき95%超のCD8+であった。10%のFCS、4mMのL−グルタミン、1mMのピルビン酸ナトリウム、100U/mlのペニシリン及びストレプトマイシン、10mMのHEPES及び5μMの2−MEで補足された200μlのRPMI1640培地の中で丸底96ウェルのマイクロタイタープレートの各ウェル内に、合計5×104個の精製済みCD8+OT−IT細胞及び5×103の未熟なDCを入れた。最後の8時間の培養中、1ウェルあたり1μのCi[3H]TdRを添加することにより2日後に増殖を測定した。3重判定を行ない、これは3通りの実験に相当する。OT−I/DC同時培養内のサイトカイン分泌を、指示されたサイトカインについてELISA分析を用いて判定した(BDバイオサイエンシーズ、カリフォルニア州サンノゼ(San Jose,CA))。
フローサイトメトリ分析
FCγレセプタを予め遮断した後、0.1%のNaN3及び2%のFCSを含有するPBS中のFITC、PE、アロフィコシアニン(APC)又はPerCP接合型mAbsで細胞を染色した。ラットCD4(RM4−5)、CD8(53−6.7)、CD11c(HL3)、CD40(3/23)、CD80(16−10A1)、CD86(GL1)に特異的なラットmAbs及び整合したイソタイプ対照をBDバイオサイエンシーズ(カリフォルニア州サンノゼ)から購入した。染色した細胞をFACSCalibur(ベクトン・ディッキンソン(Becton Dickinson)、ニュージャージー州リンカーンパーク)フローサイトメーター及びセルクエスト(CELLQuest)ソフトウエア上で分析した。
四量体染色
オボアルブミン特異的CD8+T細胞を検出するためにH2−Kb/オボアルブミン四量体検定を使用した。免疫化したマウスに由来する脾細胞又はT細胞を、DC免疫化から異なる日数後に抗CD8α−FITC及びH2−Kb/オボアルブミン(SIINFEK
L)−PE四量体;配列番号11(ベックマン・カルター・イムノミクス(Beckman Coulter Immunomics)、カリフォルニア州サンディエゴ)で2重染色した。メーカーの指示に従って、細胞106個あたり1μgの抗CD8α及び10μlのオボアルブミン四量体で1時間4℃で四量体染色を行なった。
酵素連結型イムノスポット(ELISPOT)
CTLペプチドをCD8+T細胞刺激のために使用した。負の対照として、ヒトCD20分子からの無関係なペプチドも使用した。CD8+T細胞を、MACS CD4(L3T4)又はMACS CD8(Ly−2)マイクロビーズ(ミルテニー・バイオテク社、カリフォルニア州オウバーン)
を用いることで脾細胞から単離した。
CTL及びNK検定
標的細胞を溶解するインビトロ再刺激された脾細胞の能力を測定する標準クロム放出検定でCD8+CTL応答を評価した。免疫化されたマウスからプールした脾細胞を、4〜6日間ペプチドを含有するRPMI−1640内でインビボで再刺激した。標的細胞及び対照細胞を90分間、51Crクロム酸ナトリウム溶液で標識した。異なる数のエフェクタ細胞を、37℃で3時間96ウェルのV字底プレート(200μl/ウェル)の中で一定数の標的細胞(1×104/ウェル)と共にインキュベートした。三重培養からの上清(100μl)を収集した。(実験的放出−自然放出)/(最大放出−自然放出)×100として溶解百分率を計算した。500U/mlの組換え型マウスIL−2で1×106細胞/mlを培養することにより、マウスの脾細胞からNK細胞を生成した。NK細胞による溶解をきわめて受けやすいYAC−1細胞を37℃で1時間51Crでインキュベートし、洗浄し、105細胞/mlで再懸濁した。異なるE:T細胞比を得るため、標的細胞に対し三重にNK細胞を添加した。インキュベーションの後、プレートを遠心分離に付し、ガンマ計数器で上清流体中の放射能を計数した(ベックマン・カルター社(Beckman Coulter,Inc.)、カリフォルニア州フラートン(Fullerton,CA))。
DC免疫化及び腫瘍モデル
SOCS1、A20、Foxj1、Foxo3a、SUMO、Twist−1及びTwist−2−siRNAを含む(ただしこれに限定されるわけではない)所望のsiRNAを発現するレンチウイルスで、骨髄由来のDC(骨髄培養5日目)を形質導入した。例えば、骨髄由来のDCを、5のMOIでLV−SOCS1−siRNA又はLV−GFP−siRNAで形質導入した。その後DCを8時間TRP2ペプチド又はオボアルブミンタンパク質でパルスし、PBSで3回洗浄し、培養中で、さらに36時間後、免疫化のために使用した。一部の実験については、抗原パルスを受けたDCを24時間LPS(100ng/ml、シグマ、ミズーリ州セントルイス)で刺激し、PBSで洗浄し、その後C57BL/6マウス(ジャクソン・ラボラトリー)に足蹠から注入した。治療モデルにおいて、EG7又はB16腫瘍細胞(2.5〜5×105)を同系C57BL/6マウスの右脇腹内に皮下(s.c.)注射した。腫瘍接種から異なる日数後で、マウスをランダムにグループに分け、50μlの抗原パルスを受け形質導入されたDC又はPBC対照を注入した。一部のマウスにおいて、ワクチン接種から指示された日数後にLPSを腹腔内(i.p.)投与した。キャリパで一週間に2〜3回、腫瘍体積を測定した。
統計学的分析
統計学的分析のためには、スチューデントt検定が使用され、P<0.05と定義づけされる95%の信頼性限界が有意なものとされた。結果は標準的に、平均±標準誤差として提示される。
本実施例で提示されている実験の結果について、ここで記述する。
実施例1:マウスSOC−1siRNAの同定と分析
SiRNA配列ターゲティングマウスSOCS1:SOCS1−siRNA1(CCTTCCGCTCCCACTCCGA;配列番号1)、SOCS1−siRNA2(CAGTCGCCAACGGAACTGC;配列番号2)及びSOCS1−siRNA3(CTACCTGAGTTCCTTCCCCTT;配列番号3)を選択するためにコンピュータプログラムを使用した。その他の既知の遺伝子に対する相同性の欠如を確認するために、全ての標的配列をNCBI Blastクエリに付した。9ntのスペーサで分離されたセンス及びアンチセンス19nt標的配列をコードするために順方向及び逆方向オリゴを設計した。このコアsiRNA配列は、H1RNA転写開始及び5Tターミネータ配列によってフランキングされ、アニーリングの時点で5’Bg1II及び3’HindIII相溶性オーバーハングを取込んだ。DNAベースのsiRNA発現ベクターpSUPER(ブルンメルカンプら、2002年、Science第296号:550〜553頁)は、siRNAのデノボ合成を導くためにH1−RNAプロモータを使用する。合成されアニールされたオリゴヌクレオチド対を、Bg1II/HindIIIで消化されたpSUPERベクター内にクローニングした。制限消化物により正のクローンを同定し、DNA配列決定により確認した。
マウスSOCS1−siRNAのためのレンチウイルスベクターの生成及び産生
本研究において使用されたHIV移入ベクターは、内部サイトメガロウイルス(CMV)プロモータを含んでなり、かつ転写活性のある配列を除去する3’長末端反復(LTR)のU3領域内に400bpの欠失をもつ自己不活性化ベクター(SINベクター)である、pTRIP△U3 CMV eGFPであった。レンチウイルス移入ベクターpTRIP△U3 CMV GFPは、もとのpHR’主鎖の固有のClaI部位の中に中央ポリプリントラクト(cPPT)及び中央終結配列(CTS)を包含する178bpのフラグメントを含有する。pTRIPΔU3 CMV GFPは、H1 RNAプロモータからのsiRNAの発現及びビシストロンブラスチシジン耐性/eYEP選択マーカーの同時発現のために修飾された。クローニングに対処し未変性CMVプロモータを除去するために、クローニングのための5’−EcoRI及び3’−BamHI部位を挿入するべくプライマ(5’−GATCGAATTCACAAATGGC−3’;配列番号4及び5’−CTAGGGATCCATCGCCCCAAAGTGG−3’;配列番号5)を用いて、pTRIPベクターの中央ポリプリントラクト/中央終結配列(cPPT/CTS)をPCR増幅した。その後、cPPT−CTSPCR産物をEcoRI/BamHIで消化し、EcoRI/BamHI消化済みpTRIPΔU3 CMV GFPベクターの中に再挿入した。ウッドチャック転写後調節要素(wPRE)配列を、プライマ(5’−GATCCTCGAGGTCGACAATCAACCTCTGGA−3’;配列番号6及び5’−GATCGGTACCCAGGCGGGGAGG−3’;配列番号7)を用いてpBS−SK−WPREからPCR増幅して、5’−XhoI/SalI及び3’KpnI部位を添加した。その後、XhoI/KpnIでWPREフラグメントを消化し、修飾済みのpTRIPΔU3 CMV GFP主鎖の中に挿入してpTRIP−Wを生成した。siRNA及びビシストロン選択マーカーカセットをまず、pTRIP−W内への移送のためにpSUPER主鎖内で組立てた。ビシストロン選択マーカーCMV−BlastiR−IRES−eYFP(BY)をプライマ(5’−CAGTATCGATTTAATTAATCAATATTGGCCATTAG−3’;配列番号8及び5’−CAGTGTCGACTTAATTAAGTGGCCGCTTTACTTG−3’;配列番号9)を用いてプラスミドPYAP6からPCR増幅して、5’−ClaI及び3’−SalI部位を取込んだ。PCR産物をClaI及びSalIで消化し、次にClaI/SalI消化したpSUPERベクター内にライゲートさせて、H1−RNAプロモータ及びpSUPERMCSの3’末端でBYマーカーを添加し、pSUPER−BYを生成させた。その後、
pSUPER−BYをBamHI/SalI消化し、pTRIP−W主鎖内にライゲートさせて、pTRIP−H1−BY−Wを生成させた。
hrGFP又はSOCS1(3)siRNAヘアピン配列を含有する後続するpSUPERベクターを、pTRIP−H1−BY−W内への挿入のためにBstB1及びClaIで消化して、pTRIP−hrGFP−siRNA−BY−W(GFP−siRNA)、及びpTRIP−SOCS1−siRNA−BY−W(SOCS1−siRNA)を生成させた。最後の390bpのスペーサーフラグメントを、最終ベクターのClaI部位で挿入して、CMVプロモータの最初からsiRNAの終結配列を離隔させた。全てのベクターをDNA配列決定によって確認した(ローン・スター・ラブス(Lone Star Labs)、米国テキサス州ヒューストン(Houston,TX))。
293T細胞内への3つのプラスミドの同時トランスフェクションにより、組換え型シュードタイプレンチウイルスベクターを生成した。HIV由来のパッケージング構成体pCMV△R8.9は、HIV−1gag、及びpol前駆物質ならびに調節タンパク質tat及びrevをコードする。水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質G(VSV−G)が、プラスミドpMD.Gから発現された。pCMV△R8.9、pMD.G及びレンチウイルスpTRIPsiRNA移入ベクターでの293T細胞の過渡的リン酸カルシウム同時トランスフェクションによりシュードタイプレンチウイルスを産生させた。トランスフェクションから60〜72時間後に、4℃で2時間50、000×gで超遠心分離により上清を濃縮させた。ウイルスペレットをRPMI内で再懸濁し、さらなる研究のため−80℃で凍結させた。濃縮ウイルスの段階希釈物及び8μg/mlのポリブレンと共に6時間293T細胞をインキュベートしその後、72〜96時間後にeYEP−陽性細胞を判定するべく蛍光活性化細胞分類(FACS)分析を行なうことによって、ウイルス力価を決定した。ベクター力価を次のように計算した:力価=F×2×C0/V×D(なお式中Dはウイルス希釈因子、Vは接種材料の体積、FはeYFP陽性293T細胞の頻度、そしてC0は播種の時点での標的細胞の数である)。
実施例2:ジーンポーターでのSOCS1siRNAを伴うマウスBM−DCのトランスフェクション及びSOCS1mRNAダウンレギュレーション
DCによる抗原提示のSOCS1調節を調査するために、特異的にSOCS1をダウンレギュレートする短鎖干渉RNA(siRNA)を以下で記述する通りに同定した。
合成siRNAオリゴ2重鎖を、83%のトランスフェクション効率でジーンポーターにより、顆粒球マクロファージ・コロニー刺激因子(GM−CSF)及びIL−4の存在下でエクスビボでマウス骨髄細胞に由来するDCの中に効率良くトランスフェクトさせた。簡単に言うと、メーカーのプロトコルに従ってジーンポーターを用いて21の塩基対siRNAオリゴヌクレオチド(5’−CTACCTGAGTTCCTTCCCCTT−3’;配列番号3)で骨髄DCをトランスフェクトした。3μlのジーンポーター試薬及び94μlの無血清RPMI1640に対し3μlの20μMオリゴヌクレオチドを添加し、30分間25℃でインキュベートし、その後100μlのジーンポーター/オリゴヌクレオチド混合物を骨髄−DCの各ウェルに添加して37℃で4時間インキュベートした。インキュベーションの後、20%のFBSで補足された500μl/ウェルのRPMI1640を骨髄DCに添加した。本開示に基づくと、生理学的に許容可能な担体という状況下で合成siRNAオリゴが細胞に送達され得る。許容可能な担体の例としてはリポソームがある。
図1Aは、SOCS1−siRNAを発現するベクターで形質導入された細胞の中でSOCS1がダウンレギュレートされることを立証している。簡単に言うと、ジーンポーターを用いて10:1の比でマウスSOCS1−siRNA又は無関係なGFP−siRN
Aを発現するpSUPER(pSUR)ベクター及びFLAGタグ付きmSOCS1発現ベクターで293T細胞を同時トランスフェクトし、48時間後にウェスタンブロット法に付した。SOCS1バンドの強度をベータアクチンバンドのものに正規化し、相対的強度(比)を示している。SOCS−siRNAと呼ばれるSOCS1−siRNA3(5’−CTACCTGAGTTCCTTCCCCTT−3’;配列番号3)を後続する研究で使用した。
定量的RT−PCR検定によって確認される通り、SOCS1siRNAでのトランスフェクションを受けた全DC集団中のSOCS1mRNAのレベルは、SOCS1(図1B)をダウンレギュレートできないSOCS1siRNA突然変異体でのトランスフェクションを受けたDC中のレベルと比べて約60%だけ特異的に減少した。さらに、インビトロでの骨髄のDC培養中及び成熟の後、SOCS1発現はさらに高いものであることが観察された。
同様に、刺激の時点でのSTAT1、I−κB及びJNKのリン酸化の増強及びIL−6及びTNF−α(図2)などの前炎症性サイトカインの分泌の増強によって示されるように、siRNA突然変異体を伴うDCよりもSOCS1siRNAでのトランスフェクションを受けたDCの方がLPS又はIFN−γに対しより高い応答性を有するということも観察された。図1Bは、3つの独立した実験の1つからの、24時間LPS(100ng/ml)又はIFN−γ(10ng/ml)に応答してsiRNAオリゴ−又はモック−トランスフェクションを受けたDCが分泌するサイトカインのレベルを描いている。SiRNA突然変異体(5’−ACTATCTAAGTTACTACCCCTT−3’;配列番号10)は、SOCS1siRNA3配列中に4つの突然変異を含有する。
これらのデータは、JAK/STAT経路及びTLR/NF−κB経路の調節にSOCS1が関与するという報告と一致している(ハナダら、2003年、Immunity第19号:437〜450頁;チョン(Chong)ら、2003年、Immunity第18号:475〜487頁)。SOCS1siRNAでのトランスフェクションを受けたDCは、IFN−γ及びLPS刺激の前後いずれかでのsiRNA−DC突然変異体よりもわずかに成熟度の高い表現型を示した。トランスフェクションを受けた両方のDC共、モックトランスフェクションを受けたDCよりも成熟度が高かったが、このことはsiRNAによるIFN遺伝子の非特異的活性化の効果を反映しているかもしれない。
実施例3:ウイルスベクターでのマウスBM−DCのトランスフェクション
SOCS1がインビボでDC抗原提示を負に調節するか否かを評価するために、DCを安定した形で形質導入する能力をもつレンチウイルスベクター(LV)内に、SOCS1siRNA又は対照緑色蛍光タンパク質(GFP)siRNAをクローニングして(ルビンソンら、2003年、Nat.Genet.第33号:401〜406頁;スクロアーら、2004年、Methods Mol.Biol.第246号:451〜459頁)、SOCS1サイレンシング化の効果をより高い信頼性で査定できるようにした。本書の他の箇所で記述された方法に従って黄色螢光タンパク質(YFP)マーカー(図3)を共に含有するLV−SOCS1−siRNA及びLV−GFP−siRNAという2つの構成体を生成した。LV−SOCS1−siRNA又はLV−GFP−siRNAベクターのいずれかでの骨髄由来のDCの形質導入(80%超のCD11c+)は、日常的に、YFPについて陽性の培養細胞の58〜63%を生成した。siRNAオリゴトランスフェクションを受けたDCに関する先行する観察と一致して、LV−GFP−siRNA−DCと比べLV−SOCS1−siRNA−DCの刺激の時点で、形質導入を受けた全DC集団内のSOCS1mRNAのレベルの低下及び前炎症性サイトカインの分泌の増強が観察された。形質導入を受けたDC中のSOCS1mRNAレベルを判定するために、螢光活性化細胞分類(FACS)を用いてYFP+での形質導入を受けたDCを単離し、その
後、実時間定量的PCRにより、SOCS1mRNAの相対的発現を判定した。YEP+LV−SOCS1−siRNA−DC集団中のSOCS1mRNAのレベルは、モック形質導入されたDC内のレベルと比べて約90%低いことが観察された。LPS刺激を伴う又はこれを伴わないLV−SOCS1−siRNA及びLV−GFP−siRNAでの形質導入を受けたDCは、比敵するレベルのCD86及びCD40発現を示した。いずれかの特定の理論により束縛されることは望まないが、LV−GFP−siRNA−DCが結果としてモックDCよりも高いレベルのCD86及びCD40をもたらしたという観察事実は、siRNA及びレンチウイルス形質導入による非特異的活性化の効果に起因するものである確率が高いと考えられている。
実施例4:マウスSOCS1siRNA DCにより誘発されるOVA特異的CTL及び抗腫瘍活性
特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)のDC刺激がSOCS1により調節されるか否かをテストするために、次の一連の実験を実施した。成熟に至るまでさらに刺激されなかった未成熟のSOSC1−siRNA−DC又はsiRNA突然変異体DCをオボアルブミンI−ペプチド(SIINFEKL;配列番号11)でパルスされ、オボアルブミン特異的TCRT細胞(OT−I)と同時培養させた時点で、OT−I細胞は、siRNA−DC突然変異体同時培養中よりもSOCS1−siRNA−DC同時培養中で多く増殖した(図4A)。これらのデータと一致して、SOCS1−siRNA−DC同時培養中で、より高いレベルの前炎症性サイトカインが分泌された(図4B)。さらに、これらの細胞のCTL検定は、SOCS1−siRNA−DCとの同時培養の後オボアルブミン+同系EG7細胞に対するより活性な細胞傷害性を示し、このことは、SOCS1が抗原特異的T細胞のDC刺激の調節に貢献することを実証している。
インビボで抗原特異的応答をプライミングされるSOCS1サイレンシング化されたDCの能力を次に、エクスビボでの成熟の不在下でオボアルブミンでのパルスを受けた形質導入されたDCでマウスを直接免疫化することによって、テストした。四量体染色は、LV−GFP−siRNA−DC又はモックDCで免疫化されたマウスにおいてはそれぞれ0.64%及び0.43%にすぎなかった(図5A)のに比べ、LV−SOCS1−siRNA−DCで免疫化されたマウスでは、全CD8+T細胞の2.3%がオボアルブミン−四量体について陽性であることを示した。LV−SOCS1−siRNA−DC又はLV−GFPsiRNA−DC間では表面成熟マーカーにわずかしか差異がなかったことから、これらのデータは、増大したDC成熟だけがLV−SOCS1−siRNA−DCの機能的効能に貢献する要因ではなかったということを示唆している。免疫化されたマウスの体内のCD8+T細胞の機能的状態を、インターフェロンγ(IFNγ)ELISPOT検定を用いてさらに評価した。未成熟なLV−SOCS1−siRNA−DCで免疫化されたマウスは、それぞれに未成熟モックDC又はLV−GFP−siRNA−DCを与えられたものにおける1及び18スポットに比べて、2×105のCD8+T細胞あたり68のIFNγ+スポットを有していた(図5B)。これらの結果は、未成熟LV−SOCS1−siRNA−DCが与えられたマウスからの脾細胞のオボアルブミン+標的細胞に対するより強力な細胞傷害性を示しているCTL検定と一致していた(図5C)。未成熟LV−SOC1−siRNA−DCでの免疫化は同様に、観察可能な強力な抗原特異的CD4+T−ヘルパー応答をも誘発した。かくして、SOCS1サイレンシング化は、未成熟抗原提示DCが、インビボで抗原特異的CD8+CTL応答をプライミングさせる能力をもつ免疫原性状態に達することができるようにした。何らかの特定の理論により束縛されることは望まないが、SOCS1サイレンシング化されたDCは先行する成熟無く適応免疫をプライミングすることから、SOCS1は、DCの寛容原性状態を維持する上で調節の役目を果たすと考えられる。
インビボでの成熟DCのSOCS1媒介型調節
以下の実験は、SOCS1サイレンシング化されたDCによるCTL応答のプライミングが、内因性の環境刺激に応答したDCの増強された成熟の結果としてもたらされたか否かを調査するために実施された。24時間エクスビボでLPSでオボアルブミンパルスを受けたLV−SOCS1−siRNA−DCを最初に成熟させ、次にマウスの体内にそれらを投与する前に3回洗浄した。LPS−成熟LV−SOCS1−siRNA−DCは、成熟LV−GFP−siRNA−DCのものに匹敵する成熟表現型を示し、エクスビボ成熟の不在下でのDCに比べ、両DC共、CTLをより強力にプライミングした。しかしながら、成熟LV−SOCS1−siRNA−DCはなお、オボアルブミン四量体染色により実証される通り(図5A)、抗原特異的CTLを誘発する上で明らかに成熟LV−GFP−siRNA−DCよりも優れていた。IFN−γELISPOT検定は同様に、LV−SOCS1−siRNA−DCマウスにおける増強されたオボアルブミン特異的CD8+T細胞応答をも示し、SOCS1サイレンシング化が内因性環境刺激に対する成熟DCのより大きな応答性を可能にし、CTL応答の増大を導くことを示唆している。
さらなるインビボ試験においては、1日前に未成熟LV−SOCS1−siRNA−DCで免疫化されたマウスに一回LPSを注射した。この刺激は、未成熟LV−SOCS1−siRNA−DCマウス内でのCTL応答を有意に(P<0.01)高めた(CD8+T細胞内で7.87%のオボアルブミン四量体+)が、未成熟DC−GFP−siRNAマウス内ではその効果は低いものであった(CD8+T細胞内で0.64%のオボアルブミン−四量体+)(図6A)。インビボLPS刺激後の未成熟LV−SOCS1−siRNA−DCマウス中のオボアルブミン特異的CTL応答の増強は、IFN−γELISPOT検定によって確認された(図6B)。
環境刺激に応答した成熟DCのシグナリングがT細胞プライミングにおいて役割を果たすか否かをテストするために、一日前にエクスビボ成熟LV−SOCS1−siRNA−DCで免疫化されたマウスに一度又は反復的にLPSを注射した。LPS注射は、成熟LV−SOCS1−siRNA−DCマウスにおけるCTL応答を有意に(P<0.01)高め、T細胞応答をプライミングするための成熟DCのシグナリングの重要性を示した(図6C及び6D)。その上、LPS注射は、成熟LV−SOCS1−siRNA−DCで免疫化したマウスにおけるオボアルブミン特異的CTL応答を高める上でさらに有効であった。
反復されたLPS刺激に対するDC−SOCS1−siRNAの応答性を直接調べるため、インビトロで内毒素寛容を発達させるSOCS1−siRNA−DC及びGFP−siRNA−DCの能力を評価した。高レベルの前炎症性サイトカインを産生することによる反復的LPS刺激に対しSOCS1−siRNA−DCはなおも強く応答したがGFP−siRNA−DCは強く応答せず、このことは、SOCS1サイレンシング化されたDCが刺激に対し連続して応答することを示唆している。さらに、天然の危険な分子として機能する熱ショックタンパク質(HSP)などの内因性刺激に対するDC応答性の閾値は、SOCS1サイレンシング化によって低減された。
合わせて考慮するとこれらのデータは、DC内のSOCS1のサイレンシング化が、DC応答性の閾値を低減させる確率が高く、未成熟及び成熟抗原提示DCが内因性刺激に対して連続的に応答し、結果として抗原特異的CTL応答をもたらすことを可能にする、ということを表わしている。この機序は、成熟DCによる抗原提示の範囲、ひいては適応免疫の規模の制御におけるSOCS1のきわめて重要な役割を強調するものである。
インビボ刺激によるSOCS1サイレンシング化されたDCの免疫化の増強
サイトカイン又はトール様レセプタ(TLR)アゴニストでのインビボ刺激がSOCS1サイレンシング化されたDCの効力をさらに増強できるか否かを調査するために、OV
Aパルスを受けたDC−LV−SOCS1−siRNAで免疫化されたマウスに、連続3日間一日一回腹腔内でLPS(30μg/マウス)、CpG(60μg/マウス)、PolyI:C(50μg/マウス)、抗CD40(100μg/マウス)又はIFN−g(1μg/マウス)を注射した。これらの刺激がDC−LV−SOCS1−siRNAマウスにより誘発されたCTL応答を優先的に高めるということが観察された(図6E)。これらの結果は、数多くの刺激がLPSに加えてさらに、SOCS1サイレンシング化されたDCの免疫化の効力を増強し得るということを表わしている。
DC内のSOCS1サイレンシング化による抗腫瘍免疫の増強
DC抗原提示におけるSOCS1の調節機能が観察されたことで、SOCS1サイレンシング化されたDCがより強力な抗原特異的抗腫瘍免疫を誘発し、かくして事前準備された腫瘍成長の制御を導くか否かの調査が促されることになった。エクスビボ成熟の不在下でのオボアルブミンでパルスされたLV−SOCS1−siRNA−DCでの免疫化は、エクスビボ成熟の不在下でオボアルブミンパルスを受けたLV−GFP−siRNA−DC又はモックDCを与えられたマウスにおける腫瘍成長の控えめな減少とは対照的に、テスト対象の全てのマウスにおいて事前準備されたオボアルブミン+EG7腫瘍の成長を完全に遮断した(図7A)。インビボ抗体遮断実験は、抗CD4ではなく抗CD8抗体遮断が、オボアルブミンパルスを受けたLV−SOCS1−siRNA−DCにより誘発される抗腫瘍活性を無効にする(図7B)ことを立証しており、このことは、抗腫瘍応答におけるCD8+CTLの極めて重要な役割を示している。
SOCS1siRNAのオリゴ2重鎖トランスフェクションを受けたDCが、抗腫瘍活性の増強を示した否かをテストするため、DCをSOCS1siRNAオリゴ2重鎖又は対照オリゴ2重鎖でトランスフェクトした。その後マウスのグループを、OVA又はTC−1腫瘍リゼイトでパルスされた、トランスフェクションを受けたDCを用いて免疫化した。パルスされたDCでのマウスの免疫化の後、マウスをインビボで3回LPS(30μg/マウス)で刺激した。DC免疫化から2週間後に、OVA+EG7腫瘍又はTC−1腫瘍を用いて、免疫化済みマウスに抗原投与した。EG7及びTC−1の両方の腫瘍モデル(図7C及び7D)の中で、抗腫瘍活性の増強が観察された(図7C及び7D)。その上IFN−γELISPOT検定は、TC−1腫瘍リゼイトでパルスされたSOCS1siRNAオリゴ−DCで免疫化されたマウスにおける腫瘍特異的CTL応答の増強を示した(図7E)。
SOCS1サイレンシング化されたDCが自己腫瘍関連抗原に対する免疫応答を増強できるか否かがさらにテストされた。これらの実験のためには、弱免疫原性のB16黒色腫細胞の中で天然に発現されるマウス黒色腫分化抗原チロシナーゼ関連タンパク質(TRP)2を使用した。C57BL/6マウスにB16腫瘍細胞を接腫し、3日後にLPSでエクスビボで刺激された、TRP2ペプチドでのパルスを受けた成熟LV−SOCS1−siRNA−DC又はLV−GFP−siRNA−DCを用いて一回これらのマウスを処置した。成熟LV−SOCS1−siRNA−DCは、事前準備されたB16腫瘍の成長を有効に遮断し、一方成熟LV−GFP−siRNA−DCはいかなる阻害効果も有していなかった(図8A)。増強された抗腫瘍活性は、IFN−γELISPOT及びCTL検定により検出される通り(図8B及び8C)、LV−SOCS1−siRNA−DCマウスにおける強力なTRP2特異的CTL応答と相関した。成熟LV−SOCS1−siRNA−DCが与えられたマウスにおいてのみ、活発なNK活性が検出された。オボアルブミン+EG7腫瘍での結果とは対照的に、未成熟TRP2パルスを受けたLV−SOCS1−siRNA−DCでの免疫化は、B16腫瘍に対する有意な(P>0.05)阻害効果を生み出すことができず、このことは、有効な抗腫瘍免疫を生成するためにはDCの完全成熟及び成熟後の連続的シグナリングが必要とされる、ということを示唆している。外来性抗原(オボアルブミン)に対するCTL応答に及ぼすGFPsiRNA形質導入の非
特異的な刺激効果は一貫して観察された。しかしながら、非特異的刺激効果は、自己抗原(TRP2)に対するCTL応答を増強するのに不充分であった。
LV−SOCS1−siRNA−DCでの免疫化により誘発されると考えられる不利な自己免疫病変を検討した。TRP2でパルスされたSOCS1サイレンシング化されたDCで免疫化したマウスの脱色(白斑)が観察された。しかしながら、免疫化から3ヵ月目までは、オボアルブミン又はTRP2でパルスされたLV−SOCS1−siRNA−DCで免疫化された200匹超のマウスにおいて、その他の明らかな毒性は全く観察されなかった。免疫化を受けたマウスの主要な臓器及び組織の全ての組織学的分析は、病理学的炎症を全く明らかにせず、免疫組織化学的染色は、腎臓内のIgG又はIgM被着物を全く示さなかった。IgG(IgG1、IgG2a)及び抗−dsDNAのレベルは、LV−SOCS1−siRNA−DC及びモックDCマウスにおいても匹敵するものであった。これらのデータは、LV−SOCS1−siRNA−DC免疫化がマウスの体内で病的炎症をひき起こさないことを示唆している。いずれかの特定の理論により束縛されることは望まないものの、SOCS1サイレンシング化されたDCは、事前準備された弱免疫原性の腫瘍の成長を遮断することのできる有効で抗原特異的な抗腫瘍免疫を誘発する大幅に増強された能力を有するものと考えられる。
SOC1のサイレンシング化が、DCによる抗原提示及び抗原特異的抗腫瘍免疫を増強させる
本書で提示されている結果は、DCの刺激能力及び適応免疫の規模がDC中のSOCS1により決定的に調節されるということを実証している。抗原提示DC内でSOCS1をサイレンシング化することは、抗原特異的抗腫瘍免疫を大幅に増強する。SOCS1は、DCによる抗原提示及び適応免疫の規模を定性的及び定量的に制御するための阻害的機序を表わす。
本開示は、成熟したDCによる抗原提示の範囲を調節する上でのSOCS1の決定的な役割を実証し、かくして適応免疫の規模及び持続時間をDCが制御できるようにする調節機序を実証している。DCの寛容原性状態を維持する上でのSOCS1の重要性は、本書において、野生型DCとは対照的に、SOCS1サイレンシング化されたDCがエクスビボ成熟の必要性が無い状態でインビボでT細胞応答をプライミングするための刺激性抗原提示能力に恵まれている、という点で例示されている。何らかの特定の理論により束縛されることは望まないが、DC内のSOCS1が適応免疫の規模を制御する精確な機序には、サイトカイン、病原菌産物そして又恐らくは細胞と細胞の接触での刺激に応答した抗原性ペプチド提示、共同刺激/同時阻害及びサイトカイン産生に関する成熟DCのシグナリング及び産出量の調節が関与する、と考えられている。
成熟DCは一般に、限られた数の研究に基づいて、寿命が短かい。しかしながら、信頼性の高い遺伝的方法を用いた最近の研究は、成熟抗原提示DCの寿命が以前に推定されたものよりもはるかに長く、インビボで2週間持続するということを実証しており、成熟DCにより抗原提示の範囲を調節することの必要性及び重要性を裏づけている。
本発明は、DC内の決定的な抑制を無効にすることにより、腫瘍ワクチンの効力を増強するための遺伝的手段としてDC内でSOCS1をサイレンシング化する新規の原理に関する。SOCS1サイレンシング化されたDCでのワクチン接種は、SOCS1のサイレンシング化により抗原提示免疫原性DCがインビボで抗原特異的T細胞を持続的に刺激できるようになるため、抗原特異的抗腫瘍免疫を大幅に増強する。SOCS1サイレンシング化されたDCは、調節T細胞抑制を阻害するIL−6などの前炎症性サイトカインの産生及びDC成熟を増強することにより、調節T細胞をオフに切換えることができる。
T細胞上のCTLA−4の遮断は、寛容性を有効に破るが、患者の体内で重大な非特異的自己免疫炎症をひき起こす。抗原提示レベルでDC内でSOCS1をターゲティングすることにより、より抗原特異的な抗腫瘍応答を達成することが可能である。第1に、腫瘍関連抗原が豊富に負荷されているSOCS1サイレンシング化されたDCでの免疫化は、正常な腫瘍組織に対する自己反応性T細胞を不可避的に活性化させるアプローチである、エフェクタCTL上でのCTLA−4のターゲティングとは対照的に、抗原特異的免疫を誘発することになる。第2に、残留SOCS1レベルを伴う部分的にSOCS1サイレンシング化されたDCの使用は、ヘテロ接合SOCS1+/−マウスが全く又は穏やかにしか自己免疫炎症の徴候を示さないことから、重大な自己免疫炎症をひき起こさない可能性があると思われる。さらに、SOCS1−/−マウスにおいて見られる重大な自己免疫炎症は、DC内のみならずT及びNKT細胞などのその他の免疫細胞系統においてもSOCS1の完全な欠損を必要とする。本書で提示されている結果は、抗原提示及び適応免疫の定性的及び定量的調節を理解するためのみならず、DCの刺激潜在力を増強することによる癌及び感染性疾患に対する有効なワクチンの開発のためにも、見識を提供する。
実施例5:マウスSOCS1−siRNA−DCにより誘発されるTRP2特異的CTL及び抗腫瘍活性
本開示は、成熟DCにおいてSOCS1siRNAで低減されたSOCS1発現を発現するレンチウイルスベクターが、自己抗原特異的CTL応答の規模を増大できるということを実証している。この研究のためには、モデル自己抗原として、マウスメラニン細胞分化抗原であるチロシナーゼ関連タンパク質2(TRP2)が使用された。正常なメラニン細胞及び弱免疫原性のB16黒色腫細胞の両方の中で天然に発現されていること、そしてTRP2内で数多くのクラスIMHCエピトープが同定されていることから、TRP2が使用された(ファン・エルサス(van Elsas)ら、2001年、J.Exp.Med.第194号:481〜9頁)。
この実施例中で提示されている実験において用いられる材料及び方法についてここで記述する。
マウス/動物モデル
4〜6週齢の雌のC57BL/6、CD4KO、CD8KO又はp35(IL−12)KOマウスをジャクソン・ラボラトリーズ(米国メーン州バーハーバー(Bar Harbor,Main))から購入し、機関の指針に従ってベイラー・カレッジ・オブ・メディシン(Baylor College of Medicine)(米国テキサス州ヒューストン)で無菌のマウス施設の中に維持した。
ペプチド
H2−Kb制限されたTRP2a(VYDFFVWL;配列番号15)及びTRP2b(SVYDFFVWL;配列番号16)(ファン・エルサスら、2001年、J.Exp.Med.第194号:481〜9頁)及び対照H2−Kb制限されたOVA−I(SIINFEKL;配列番号11)を合成し、ジーンメッド・シンセシス社(Genemed
Synthesis Inc.)(米国カリフォルニア州サウスサンフランシスコ(South San Francisco,CA))により95%超の純度までHPLCにより精製した。内毒素を含まないPBS(シグマ、ミズーリ州セントルイス)中での最終希釈の前にDMSO中で全てのペプチドを溶解させた。
レンチウイルスベクターでのBM由来のDCの形質導入
組換え型レンチウイルスベクター(LV−SOCS1−siRNA及びLV−GFP−siRNA)を、本書の他の箇所で記述されている通りに産生し、滴定しDCを形質導入するのに使用した。
サイトカインELISA及び酵素連結型イムノスポット(ELISPOT)検定
提示された時点で指示された刺激を用いてメーカーの指示に従って、ELISA分析用のDC培養の上清(BDバイオサイエンシーズ、ニュージャージー州リンカーンパーク)を用いて様々な前炎症性サイトカインのレベルを定量した。フアン(Huang)ら、2003年、Cancer Res.第63号:7321〜9頁の中で記述されているように、単離されたCD4+又はCD8+T細胞のELISPOT検定を実施した。マウスCD8+T細胞刺激のためには、H2−Kb/TRP2クラスIペプチドを使用した。OVAからの無関係のペプチドも、負の対象として使用した。MACS CD8(Ly−2)マイクロビーズ(ミルテニー・バイオテク社、カリフォルニア州オウバーン)を用いることにより、脾細胞からCD8+T細胞を単離した。
フローサイトメトリ分析
細胞を、0.1%のNaN3及び2%のFCSを含有するPBS中のFITC又はPEmAbsで染色した。マウスのCD8(53−6.7)、CD11c(HL3)、CD40(3/23)、CD80(16−10A1)、CD86(GL1)、OX40L(RM134L)又はPDL1(MIH5)及び整合したイソタイプ対照に特異的な抗体を、BDファーミンゲン(Pharmingen)(ニュージャージー州フランクリンレイクス(Franklin Lakes,NJ))又はイーバイオサイエンス(eBioscience)(カリフォルニア州サンディエゴ)から購入した。染色した細胞をFACS Cslibur(ベクトン・ディッキンソン、ニュージャージー州リンカーンパーク、ニュージャージー州フランクリンレイクス)フローサイトメトリ上で分析した。
四量体染色
TRP2特異的マウスCD8+T細胞を検出するために、H2−Kb/TRP2−PE四量体検定を使用した。べイラー・カレッジ・オブ・メディシン、テトラマー・コアー・ファシリティー(Tetramer Core Facility)(米国、テキサス州ヒューストン)でTRP2−四量体を合成した。免疫化したマウス由来の脾臓を抗−CD8a−FITC/抗−CD3−PerCP及びH2−Kb/TRP2−PEで同時染色した。四量体染色は、メーカーの指示に従い、106個の細胞につきTRP2−PE四量体の1:100希釈物及び抗−CD8α−Fitcの1μgを用いて1時間4℃で行なった。
DC免疫化及び腫瘍マウス研究
本書の他の個所で記述されている通り、5というMOIでSOCS1−siRNA又はGFP−siRNAを用いてBM由来のDC(BM培養4〜5日目)を形質導入した。簡単に言うと、DCを20時間ペプチドでパルスし、PBSで3回洗浄し、24時間LPS(100ng/ml、シグマ、ミズーリ州セントルイス)又はTNFa(500ng/ml、アールアンドディー・システムズ(R&D Systems)、ミネソタ州ミネアポリス(Minneapolis,MN))で刺激し、PBSで3回洗浄し、次にC57BL/6、CD8KO、CD4KO又はp35KOマウスの体内に後足蹠から注射した。治療モデルにおいて、B16腫瘍細胞(2.5×105)を、同系マウスの右脇腹に皮下(s.c)注射して、腫瘍モデルを確立した。腫瘍接種の後3日目に、マウスをランダムにグループ分けし、30μlのペプチドパルスされたDC(50μg/ml)、形質導入されたDC(1.5×106)又はPBS対照を注射した。一部のマウスにおいては、DCワクチン接種から指示された日数後に、LPS(30μg/マウス)又は組換え型マウスIL−12タンパク質(1mg/マウス、ぺプロテック、ニュージャージー州ロッキーヒル)を腹腔内(i.p.)投与した。実験が完了するまで2日に一度、キャリパで腫瘍体積を測定した。
CTL検定
標的細胞を溶解するインビトロ再刺激された脾細胞の能力を測定する標準クロム放出検定で、CD8+CTL応答を査定した(ホアンら、2003年、Cancer Res.第63号:7321〜9頁)。2〜3匹の免疫化したマウスからプールした脾細胞を、4〜6日間、H2−Kb/TRP2ペプチドを含有するRPMI−1640中でインビトロで再刺激した。TRP2+標的B16細胞(H2−Kb)及び対照EG7細胞(ATCC、バージニア州マナサス(Manassas,VA))を、振とうさせながら37℃で、90分間51Crクロム酸ナトリウム溶液で標識した。異なる数のエフェクタ細胞を37℃で4時間、96ウェルのU字底平板(200μl/ウェル)内で、一定数の標的細胞(5×104/ウェル)と共にインキュベートした。3重培養から上清を収集し、分析した。(実験的放出−自然放出)/(最大放出−自然放出)×100として溶解百分率を計算した。
統計学的分析
統計学的分析のためには、スチューデントt検定が使用され、P<0.05と定義づけされる95%の信頼性限界が有意なものとされた。結果は標準的に、平均±標準誤差として提示される。
本実施例で提示されている実験の結果について、ここで記述する。
SOCS1により制限された成熟DC内のシグナリングが特異的CTL応答及び寛容を制御する
LPSで、エクスビボで成熟させられたTRP2ペプチドパルスを受けた形質導入されたDCを用いて、C57BL/6マウスを免疫化した。免疫化したマウスを次にLPSの存在下又は不在下で1回又は3回インビボで刺激し、四量体分析を用いてTRP2特異的CTL応答を測定した。誘発する前炎症性サイトカインの数が多く、その多くがSOCS1により調節されていること、ならびに、NF−κB(p65)シグナリングの直接的調節におけるSOCS1の役割が立証されていることを理由として、インビボ刺激のためにはLPSが選択された(リョーら、2003年、Mol.Cell.第12号:1413〜26頁)。インビボLPS刺激の不在下で、GFP−siRNA−DCで免疫化されたマウス内では3.1%にすぎなかったのに比べ、SOCS1−siRNA−DCで免疫化されたマウスにおいては、TRP2−四量体について総CD8+T細胞の5.1%が陽性であった(図9A)。1回又は3回のインビボLPS刺激で、TRP2−四量体について陽性であるCD8+T細胞の百分率は、SOCS1−siRNA−DCで免疫化されたマウスにおいて実質的に増大し(それぞれ9.7%及び19.4%)、GFP−siRNA−DCで免疫化されたマウスにおいては概して変化がなかった(それぞれ3.0%及び4.0%)(図9A)。これと一致して、CTL検定(図9C)及びインターフェロンγ(IFNγ)ELISPOTは類似の結果を示した。その上、免疫化から3ヵ月後に、LPSが同時注入され(図9B)、TRP2ペプチドパルスを受けたSOCS1−siRNA
DCで免疫化されたマウスの大部分に、白斑(外被の明色化、脱色及び/又は脱毛)がはっきりと見え、このことは、宿主メラニン細胞内で通常発現されるTRP2に対する自己寛容の破壊を表わしていた。これとは対照的に、反復的にインビボでLPSを投与した場合でさえGFP−siRNA DCで免疫化されたマウスのいずれにも全く白斑が観察されず、これは、自己抗原に対する寛容を維持するためのDC内のSOCS1の決定的な役割を示唆していた。これらの結果は、成熟抗原提示DC内でのシグナリングがCTL応答及び自己寛容の規模を制御すること、そして成熟DCのシグナリングがSOCS1により厳格に制限されることを実証している。
SOCS1−制限されたシグナリングが、自己寛容を破断し有効な抗腫瘍免疫を誘発するDCの能力を制御する
腫瘍ワクチン接種の第1の目的は、腫瘍細胞上で優先的に発現される自己抗原に対する強い適応免疫応答を誘発することにより自己寛容を破断することにある。自己抗原特異的CTL応答及び自己寛容の規模を調節する上でのSOCS1の役割が観察されたことから、有効な抗腫瘍免疫を誘発する成熟DCの能力がSOCS1発現により制御されるか否かの調査が促されることになった。これをテストするために、C57BL/6マウスをB16腫瘍細胞で皮下接種し、3日後に、LPSによりエクスビボで成熟させたTRP2パルスされ形質導入されたDCで一回免疫化した。図10Aは、SOCS1−siRNADC免疫化だけで、GFP−siRNA−DC免疫化と比べたB16腫瘍の成長を著しく阻害することができた(P<0.01)ということを示している。しかしながら、SOCS1−siRNA−DCで免疫化したマウスの50%は、腫瘍接種から30日後に1,500mm3を上回る全身腫瘍組織量のため最終的に死亡した。前炎症性シグナルを増強することによりSOCS1−siRNA−DCで免疫化したマウスにおけるマウス生存率を改善できるか否かを判定するために、マウスをDC免疫化から一日後にLPSによりインビボで一回刺激した。免疫化プロトコルに対するLPS刺激の付加は、SOCS1−siRNA−DCで免疫化したマウスにおけるB16腫瘍の成長を実質的に遮断した(図10B)。このことは、LPS刺激を受けていないマウスに比べて全身腫瘍組織量の減少を全く示さなかったGFP−siRNA−DC及びモック形質導入を受けたDC対照と好対照を成していた(図10Aと10Bを比較のこと)。SOCS1−siRNA−DCでの免疫化とLPS抗原投与の組合せは同様に、マウスの生存率を60日超の間100%まで大幅に増大させた(図10C)。抗腫瘍活性の増強は、SOCS1−siRNA−DCで免疫化されたマウスの体内の強力なTRP2特異的CTL活性と相関された(図10D)。SOCS1−siRNA−DCでCD4及びCD8ノックアウト(KO)マウスを免疫化することにより、免疫化されたCD4KOマウスにおいては弱い抗腫瘍活性しか観察されなかったものの、抗腫瘍活性がCD8+及びCD4+細胞の両方を必要とすることがさらに実証された(図10B−10D)。集合的に、これらの結果は、成熟DCにおけるSOCS1で制限されたシグナリングが、寛容を破断し有効な抗腫瘍免疫を誘発するそれらの能力を制御すること、そして通常SOCS1により調節される付加的な前炎症性シグナルが、事前準備された全身腫瘍組織量を制御する誘発された抗腫瘍免疫応答の能力をさらに増大し得ることを表わしている。
自己寛容及び抗腫瘍免疫の制御におけるSOCS1で制限されたシグナル3の決定的役割
SOCS1は、抗原ペプチド/MHC提示/共同刺激及び/又はサイトカインシグナリング及び分泌を調節することにより、成熟DCのシグナリング及び産出量に影響を及ぼす確率が高い。以下の実験は、自己抗原特異的CTL応答及び抗腫瘍免疫の制御のためにこれらの3つのシグナルのうちのどれが主としてSOCS1により調節されるかを調査するために着手された。
まず第1に、SOCS1サイレンシング化が、共同刺激分子の発現に影響を及ぼすか否かがテストされた(シグナル2)。フローサイトメトリ検定により、LPS誘発型成熟の前後両方で、GFP−siRNA−DC上に比べSOCS1−siRNA−DC上には検出不能な又はわずかにしか増強されていない共同刺激/阻害分子(B7.1、B7.2、OX40L、CD40又はPDL1)表面レベルが存在する、ということが一貫して観察された(図11A)。匹敵するレベルのMHC−I及びII分子がSOCS1−siRNA−DC及びGFP−siRNA−DC上でも検出された。
抗腫瘍免疫を誘発する上でのCD8+T細胞の重要性のため、MHC−I制限型ペプチド免疫原性(TCR親和性)がインビボでのSOCS1制限型抗原提示において重要な役割を果たすか否かがさらに調査された。高親和性形態(TRP2b)及び低親和性形態(TRP2a)のTRP2CTLペプチドが以前に同定された(ファン・エルサス(van
Elsas)ら、2001年、J.Exp.Med.第194号:481〜9頁)こと
から、抗腫瘍免疫応答を誘発する形質導入済みDCの能力に対しシグナル1の強度が影響を及ぼし得るか否かをテストするために、両方のTRP2ペプチドを使用した。図11Bは、TRP2bペプチドで負荷されたGFP−siRNA−DCはほんの少しの抗腫瘍活性(統計学的には重要でない)しか示さなかったものの低(TRP2a)又は高(TRP2b)親和性ペプチドのいずれかが負荷された成熟GFP−siRNA−DCはインビボLPS刺激でB16腫瘍の退行を誘発できなかったということを示している。これとは対照的に、低又は高親和性TRP2ペプチドのいずれかで負荷されたSOCS1−siRNA−DCは両方共、腫瘍の成長を有効に遮断した。免疫化されたマウスにおけるTRP2特異的CTL活性も同様に、IFNγELISPOT検定を用いて調査された。図11Cは、高親和性ペプチドで負荷されたGFP−siRNA−DCが低親和性ペプチドで負荷されたGFP−siRNA−DCよりも強いIFNγ応答を誘発したことを示している。しかしながら、低又は高親和性ペプチドのいずれかで負荷された両方のSOCS1−siRNA−DCグループが、高親和性ペプチドで負荷されたGFP−siRNA−DCよりもはるかに強いIFNγ応答を誘発しており(P<0.01)、このことは観察された抗腫瘍活性と一致している(図11B)。さらに、低又は高親和性ペプチドで負荷されたSOCS1−siRNA−DCが類似のIFNγ応答を誘発した(図11C)。
これらの実験の結果は、SOCS1サイレンシング化が、成熟の存在下又は不在下でDC上の共同刺激/阻害性分子(シグナル2)及びMHC−I及びII分子の発現に対し有意な影響を及ぼさないこと、そしてSOCS1がサイレンシング化されないかぎり、高親和性又は低親和性TRP2ペプチド(シグナル1)で負荷された成熟DCが強力なIFNγ応答を誘発する上で有効でないこと、を実証している。
実施例6:マウスのSOCS1−siRNA−DCにより誘発されたCTL及び抗腫瘍活性のインビボIL−12増強
樹状細胞(DC)による細胞傷害性T細胞(CTL)応答の開始は充分に研究されてきているものの、自己寛容の維持又は破断を調節するための機序はなおも充分に定義されていないままである。この実施例では、成熟野生型DCではなく、サイトカインシグナリング(SOCS)1のサプレッサが内部でシグナリングされた成熟DCが、特に病原菌産物又はIL−12によりインビボで刺激された場合に、自己寛容を破断する上で有効である、ということが実証されている。本書で開示される実験は、抗原提示DCにより提供される(抗原親和性(シグナル1)及び共同刺激分子レベル(シグナル2)ではなく)SOCS1制限されたシグナル3(IL−12)が自己寛容を制御することを実証している。さらに、本開示は、SOCS1サイレンシング化されたDCが自己抗原に対する強力な免疫応答を誘発し、事前準備されたB16腫瘍の成長を遮断することを実証している。その上、ヒトのSOCS1サイレンシング化されたDCは、溶解エフェクタ機能で自己抗原特異的ヒトCTLを完全に活性化するさらに優れた能力を有し、このSOCS1サイレンシング化アプローチの翻訳上の潜在性を暗示している。
自己抗原特異的CTL活性化及び寛容の制御においてSOCS1で制限されたシグナル3が重要である確率が高いことから、成熟DCにおいてSOCS1により調節される主要なサイトカインの同定が促された。CTL活性化に影響を及ぼすものとして知られている複数の前炎症性サイトカイン候補の重要性は、当初、SOCS1サイレンシング化と組合せた形でのDCワクチン接種のために遺伝子的にホモ接合性の異なるKOマウスに由来するDCを用いることによってテストされた。IL−12(p35−/−)KOマウス由来のDCが免疫化のために使用された場合、TRP2ペプチドで負荷されたp35−/−SOCS1−siRNA−DCは、もはやB16腫瘍を阻害しないことが観察され(図12A−12B)、このことは、腫瘍の退行のためにSOCS1制限されDC産生されたIL−12の決定的役割を示唆していた。SOCS1制限されたDCの機能におけるIL−12の役割をさらに判定するため、p35−/−SOCS1−siRNA−DCにより誘発
されたCTL応答がさらに査定された。IFNγELISPOT及びCTL検定を用いて、野生型SOCS1−siRNA−DCに比べ、p35−/−SOCS1−siRNA−DCのTRP2特異的CTL応答を誘発する能力が著しく減少していたことが観察された(図12C及び12D)。さらにLPSでのインビボ刺激は、TRP2−四量体分析により測定される通り、p35−/−SOCS1−siRNA DCにより誘発されるCTL応答を高めることができなかった(図9A)。興味深いことに、抗原提示DCによって産生されたIL−12の基本的な役割とは対照的に、野生型SOCS1−siRNA−DCで免疫化されたIL−12(p35−/−)KOマウスは、活発な抗腫瘍免疫及びCTL応答をも誘発することが観察され、このことは、自己抗原特異的CTL応答の誘発のために常在宿主細胞により産生されたIL−12は必要とされないということを示していた(図12A−12B)。合わせて考えた場合これらの結果は、抗原提示DCにより産生されたSOCS1制限型IL−12が、強力なTRP2特異的CTL応答及びB16腫瘍の根絶を誘発する上で重要であることを表わしている。
SOCS1サイレンシング化されたDCによるIL−12及びIL−12誘発型サイトカインの持続的かつ増強された産生とwtDCによる過渡的で低い産生の関係
DCは、LPS及びCD40ライゲーションなどの病原菌産物に応答して有意な量のIL−12を産生する(シュルツ(Schulz)ら、2000年、Immunity第13号:453〜62頁)。DCによるIL−12の産生は、成熟の誘発後の短い期間(8〜16時間)に綿密に制限され(ランゲンカンプ(Langenkamp)ら、2000年、Nat.Immunol.第1号:311〜6頁)、SOCS1により調節される(アイルズ(Eyles)ら、2002年、J.Biol.Chem.第277号:43735〜40頁)。適応免疫の調節におけるSOCS1制限型IL−12の重要な役割が識別されたことから、免疫寛容を破断しTRP2に対する有効な抗腫瘍免疫応答を誘発するSOCS1−siRNA−DCの能力に密に関係し得るDCによるIL−12産生の強度及び持続時間に対するSOCS1サイレンシング化の効果が検討された。
図13Aは、GFP−siRNA−DC及びモック形質導入を受けたDCに比べて、72時間にわたるLPS及び抗CD40mAbでの連続的刺激に応答してSOCS1−siRNA−DCによって著しく増大したレベルのIL−12(p70)が産生されたということを示している。次に、24時間にわたりLPS/抗−CD40で刺激し次にLPSを含まない新鮮な培地の中のDCを新しい培養平板に移すことにより、もとの刺激の除去にも関わらずIL−12レベルを維持するSOCS1−siRNA−DCの能力を検討した。図13Bは、GFP−siRNA−DC及びモック形質導入を受けたDCが刺激時点で過渡的にのみIL−12を産生し、一方SOCS1−siRNA−DCは刺激の除去に関わらずはるかに高いレベルのIL−12を持続的に産生したことを示している。何らかの特定の理論により束縛されることを望まないが、LPS/抗CD40の除去の後のSOCS1−siRNA−DCによるIL−12の長時間にわたる増強した産生は、IL−12又はその他のDCが分泌した前炎症性サイトカインによる場合によって自己分泌/傍分泌の刺激及び/又はもとの刺激によって誘発されるシグナリング経路の長時間にわたる活性化に起因する可能性がある。これらの結果は、SOCS1サイレンシング化によりDCが刺激に応答して持続的な増加したレベルのIL−12を産生でき、これが、寛容を破断し事前準備された腫瘍を根絶するSOCS1サイレンシング化されたDCの能力の原因であり得る、ということを示している。
SOCS1は、IL−12及びその他のサイトカインのシグナリングを媒介するJak/Stat経路の決定的調節因子であることから(クボら、2003年、Nat.Immunol.第4号:1169〜76頁;アレキサンダーら、2004年、Annu.Rev.Immunol.第22号:503〜29頁)、互いの間及び場合によってはその他の近傍のDCの間でのサイトカインフィードバックループの発達を通してDC内のSOC
S1サイレンシング化がサイトカインの産生を増大させるか否かをテストするために、次の実験セットに着手した。これに対応するため、SOCS1−siRNA−DCによる腫瘍壊死因子(TNF)α及びIL−6の産生を測定した。かかるサイトカインはIL−12刺激により誘発されるものとして知られていることから、(TNF)α及びIL−6をテストした(トリンキエリ(Trinchieri)ら、2003年、Nat.Rev.Immunol.第3号:133〜46頁)。
図13Cは、過渡的に低レベルのTNFα及びIL−6を産生したにすぎないGFP−siRNA−DC及びモック形質導入を受けたDCとは異なり、SOCS1−siRNA−DCがもとの刺激の除去後も持続的により高いレベルのTNFα及びIL−6を産生したことを示している。フィードバックループの発達のためのIL−12の重要性をさらに判定するために、p35−/−SOCS1−siRNA−DC及びwtSOCS1−siRNA−DCによるTNFα及びIL−6の産生を比較した。図13Dは、p35−/−SOCS1−siRNA−DCかもはや増大した長時間にわたる量のTNFα及びIL−6を産生することができなかったということを示しており、これは、IL−12のフィードバックがSOCS1−siRNA−DCによるTNFα及びIL−6産生の主要な誘発因子であることを表わしている。これらのデータは、SOCS1サイレンシング化がDC中の決定的なシグナリング抑制を無効化し、従ってこれらが増強されたフィードバックループを介して連続的にIL−12のみならずIL−12誘導型前炎症性サイトカインに対しても応答しこれを産生することができるようにしている、ということを表わしている。本書で開示されている結果は、白斑及びB16腫瘍細胞に対する有効な抗腫瘍免疫の両方を誘発するTRP2負荷されたSOCS1−siRNA−DCの能力を説明する確立の高い機序を提供している。
自己寛容を破断するDCの能力を制御するためのSOCS1制限型IL−12シグナリングの重要性
自己腫瘍関連抗原に対する強力なCTL応答を誘発するSOCS1−siRNA−DCの能力は、SOCS1サイレンシング化戦略の治療適応用を示唆する。患者の体内での刺激としてのLPSの臨床的使用には過度に毒性があるため、SOCS1によりシグナリングが調節されているIL−12がSOCS1−siRNA−DCの効能を高める上でも有効であるか否かを査定した。
C57BL/6マウスにB16腫瘍細胞を接種し、3日後に、組換え型マウスTNFαによりエクスビボで成熟させられたTRP2パルスを受け形質導入されたDCで一度、マウスを免疫化した。DC免疫化の後、レシピエントマウスをインビボで3回、低用量の組換え型マウスIL−12(マウス一匹あたり1μg)で刺激した。図14Aは、SOCS1−siRNA−DCで免疫化されたマウス内のB16の腫瘍の成長が効率よく遮断されたことを示している。これとは対照的に、IL−12を用いたインビボ投与を伴うGFP−siRNA−DCでの免疫化は、PBS対照に比べて腫瘍の効果に対しほとんど効果をもたらさなかった。抗腫瘍活性は、IFNγELISPOT検定により示される通り、SOCS1−siRNA−DCで免疫化されたマウスにおけるTRP2特異的CTL活性の増大と相関された(図14B)。先の観察事実(図10A)と一致して、インビボでのIL−12刺激の不在下でのTRP2パルス、TNFα成熟を受けたSOCS1−siRNA−DCでの免疫化は、同様に、GFP−siRNA−DC対照に比べて増大した抗腫瘍活性をも示した。
これらの結果は、おそらくはIL−12及びIL−12誘発型サイトカインの増強されたシグナリングに由来して、IL−12のインビボ投与は、SOCS1サイレンシング化されたDCの免疫刺激能力を著しく増強するものの野生型DCのものは増強しないということを示している。これらの結果はさらに、IL−12などのサイトカインの全身的濃度
ではなく抗原提示DC内のSOCS1制限型サイトカインシグナリングが、自己腫瘍関連抗原に対する有効な抗腫瘍免疫を誘発するために重要である、ということを暗示している。
白斑以外のいかなる明白な毒性も、免疫化から6ヵ月までは、LPS又はIL−12のいずれかが同時注射されたTRP2パルスを受けたSOCS1−siRNA−DCマウスにおいて観察されなかった。免疫化されたマウスの全ての主要な器官及び組織の組織学的分析は、いかなる病的炎症も明らかにしなかった。IgG及び抗dsDNAのレベルは、SOCS1−siRNA−DC及びモックDCマウスにおいて比較可能なものであった。これらのデータは、TRP2パルスを受けたSOCS1−siRNA−DCでの免疫化が、マウスにおいて病的炎症をひき起こさないということを示唆している。
SOCS1制限型シグナル3の強度は、CTL活性化、寛容及び抗腫瘍免疫を制御する
本書に開示されている結果は、腫瘍ワクチンの開発に深いかかわりを有するはずである成熟DCによるCTL応答の調節への新たな見識を提供する。成熟は未成熟の寛容原性状態から成熟した免疫原性状態へのDC遷移のための制御点であることが知られている(バンシュローら、1998年、Nature第392号:245〜52頁;スタインマンら、2003年、Annu.Rev.Immunol.第21号:685〜711頁)。抗原提示DC及びT細胞の間の初期接触(シグナル1及び2)の強度は、成熟DCが限られた数の研究に基づいて短命であると考えられていることから、CTL応答の規模及び命運を決定すると考えられている(ポルガドール(Porgador)ら、1998年、Journal of Experimental Medicine第188号:1075〜82頁;インガリ(Ingulli)ら、1997年、J.Exp.Med.第185号:2133〜41頁;リュードル(Ruedl)ら、2000年、J.Immunol.第165号:4910〜6頁)。しかしながら、成熟抗原提示DCの寿命は以前に推定されたものよりもはるかに長く、インビボで2週間持続するということが、信頼性の高い遺伝子方法を用いたさらに近年の研究により実証されており(ガルグ(Garg)ら、2003年、Nat.Immunol.第4号:907〜12頁)、このことはT細胞との初期係合の後に成熟DCが調節の役割を果たすことを示唆している。
この結果は、SOCS1により綿密に制限される成熟DC内での前炎症性シグナリングが、自己抗原特異的CTL反応の規模を決定的に制御することを実証している。このことは、CTL応答が少なくとも2つのレベル、すなわち、SOCS1発現によりその規模が調節される、CTL反応の開始に必要なDC成熟及び自らと及びCTLとの成熟DCの進行中のサイトカインシグナリングというレベルでDCにより制御されるということを表わしている。当該結果は、さらに、さまざまな免疫細胞のDC及びその周囲環境とサイトカイン及び病原菌産物の組成及び濃度の間の動的相互作用を暗示しており、これが集合的に、自己寛容の維持又は破断、ひいては自己抗原特異的CTL反応の命運を決定している。
本書で開示されている結果は、自己寛容の維持又は破断を調節するための新規の機序を明らかにしている。DCにより提供される(ペプチド親和性及び共同刺激分子レベルではなく)SOCS1制限型シグナル3(IL−12)が自己寛容を決定的に制御することが発見された。自己免疫疾患(バンシュローら、2004年、Immunity第20号:539〜50頁)及びその他のモデル(カートシンガーら、2003年、J.Exp.Med.第197号:1141〜51頁;バレンズエラら、2002年、J.Immunol.第169号:6842〜9頁)の数多くの研究において、T細胞のDC媒介型活性化又は過剰活性化のためのサイトカインの重要性が暗示されてきた。
wtDCによるIL−12といったサイトカインの産生は、過渡的であり、本書で及び他の研究(ランゲカンプら、2000年、Nat.Immunol.第1号:311〜6
頁)内で実証されている通り、刺激時点でSOCS1により阻害される。wtDCとは対照的に、SOCS1サイレンシング化されたDCは、この経路の誘発可能なフィードバックインヒビターを無効化した後、DC内のJak/Statシグナリング経路を通って入り組んだ自己分泌(そして場合によっては傍分泌も)シグナリングループを形成することにより、初期刺激に応答して、著しく増強したIL−12及びIL−12誘発型サイトカインレベルを連続的に産生することができるということが観察された。これと一致して、低用量のIL−12でのインビボ投与は、自己寛容を破断する(wtDCではなく)SOCS1サイレンシング化されたDCの能力を有効に増強することが発見された。
集合的にこれらの結果は、SOCS1サイレンシング化されたDCにより産生されたIL−12及びIL−12誘発型サイトカインの連続的かつ増強された産生及びシグナリングが、自己寛容の破断及び抗腫瘍CTL反応の増強において主要な役割を果たす確率が高い、ということを表わしている。これらの結果はさらに、DC内のSOCS1による刺激性シグナリングの細胞内阻害が自己寛容の維持に寄与することを示唆している。SOCS1は、そのSOCSボックス領域を通してのユビキチン媒介型タンパク質分解のためにp65タンパク質をターゲティングすることによりNF−κBシグナリングを直接遮断することが発見された(リョーら、2003年、Mol.Cell.第12号:1413〜26頁)が、ギングラらは、SOCS1が、I型IFNのシグナリングを阻害することによってLPS誘発型毒性についてのマクロファージ内のTLR シグナリングを間接的に調節することを報告した(ギングラ(Gingras)ら、2004年、J.Biol.Chem.第279号:54702〜7頁)。I型IFNシグナリングを通したLPS誘発型毒性とは異なり、本書中の結果は、SOCS1サイレンシング化されたDCにより誘発されたCTL応答がIL−12により主として媒介されることを実証している。本書中の結果は同様に、LPSに応答したSOCS1サイレンシング化されたDCによるTNF−α、IL−6及びIL−12などのさまざまなサイトカインの産生の増強をも実証している。
本研究は、自己腫瘍関連抗原に対する有効な抗腫瘍免疫を誘発するためにDC内でSOCS1をサイレンシング化することの必要性を実証している。DCワクチンは、近年において1000人超の患者が関与した98件の公表されたDCワクチン治験において証明されているように、腫瘍ワクチン接種のための最も見込みある戦略の1つと考えられている(ローゼンバーグ(Rosenberg)ら、2004年、Nat.Med.第10号:909〜15頁)。主として多様なアプローチによりDCの成熟及び抗原提示を促進することを目的としたこれらの試みは、目標の臨床反応奏功率がきわめて低く、大いに失望させるものである(ローゼンバーグら、2004年、Nat.Med.第10号:909〜15頁)。本書中のデータは、高親和性ペプチドで負荷されたwtDCが、LPS又はIL−12でのインビボ刺激の後でさえ自己寛容を破断することがなおもできなかったということを実証している。従って、本書中の結果は、現在記述されている腫瘍ワクチン(ローゼンバーグら、2004年、Nat.Med.第10号:909〜15頁)の全般的無効性を説明することができ、DC抗原の提示及び成熟を促進する現行の戦略と組合せた形でSOCS1といった決定的なシグナリングインヒビターをサイレンシング化させることを介してさらに有効な腫瘍ワクチンを開発するための新たな途を提供する(ギルボア(Gilboa)、2004年、Nat.Rev.Cancer第4号:401〜11頁;ユー(You)ら、2000年、J.Immunol.第165号:4581〜4592頁;ソイファー(Soiffer)ら、2003年、J.Clin.Oncol.第21号:3343〜50頁;パルドール(Pardoll)、2002年、Nat.Rev.Immunol.第2号:227〜38頁)。
抗原負荷されたDCにより誘発される抗原特異的免疫応答を特異的に増強する能力をもつこのSOCS1サイレンシング化アプローチは同様に、主要組織又は器官に対するもの
を含めた自己反応性T細胞を差別なく過剰活性化する、エフェクタT細胞上でCTLA4を全身的に遮断するアプローチよりもさらに魅力的なものでもある(ホッジ(Hodi)ら、2003年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA第100号:4712〜7頁;ファン(Phan)ら、2003年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA第100号:8372〜7頁)。要約すると、腫瘍ワクチンを増強するための集約的な努力が抗原親和性/用量及び共同刺激の改善に焦点を合わされてきたことから、本研究の中で見出されるSOCS1サイレンシング化されたDCの増強された免疫刺激能力及び自己寛容を調節するための新しい機序は、腫瘍に対する自己寛容制限を破断する一般的に応用可能な新規のワクチン接種戦略を提供するはずである。
実施例7:マウスSOCS1−siRNA−DCにより誘発されるHIV、特異的抗体及びCTL応答
この例は、宿主の天然免疫インヒビターを阻害することにより抗HIV免疫応答を誘発するための代替的戦略を実証している。本研究は、DC内のJAK/STAT経路の負の免疫調節因子であるSOCS1がHIV特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)のみならず抗体応答をも制御することを実証している。SOCS1サイレンシング化されたDCは、HIVエンベロープ媒介型抑制に対する耐性を有し、マウスの体内でバランスのとれたメモリーHIVエンベロープ特異的抗体及びCTL応答を有効に誘発する。本開示は、宿主の免疫インヒビターを阻害することによりHIV特異的抗体及びCTL応答を惹起する最初の試みである。
この実施例中で提示される実験において使用される材料及び方法についてここで記述する。
レンチウイルスベクターでのBM由来のDCの形質導入
組換え型レンチウイルスベクター、LV−SOCS1−siRNA及びLV−GFP−siRNAを、本書の他の箇所で記述されている通りに産生し、滴定しDCを形質導入するのに使用した。
サイトカイン及び抗体ELISA検定
細胞培養上清中のサイトカインレベルを、メーカーの指示に従ってELISA分析(BDバイオサイエンシーズ、ニュージャージー州リンカーンパーク)により定量化した。Gp120特異的抗体及びサブクラスの力価を判定するためgp120タンパク質(炭酸塩緩衝液中5μg/ml[pH9.6])を4℃で一晩コーティングし、室温で1時間、壁にPBS−5%FBS中の血清の12倍階段希釈物を添加した。8回の洗浄後、ビオチニル化した抗マウス抗体(抗マウスIgM、IgG、IgG1、IgG2a、IgG2b又はIgG3)を室温で1時間ウェルに添加した。ペルオキシダーゼ基質としてストレプトアビジン−HRPを使用した。50μlの2MのH2SO4を添加することにより、反応を停止させた。バイオアッセイリーダー(Bio Assay Reader)上にて450nmで光学密度を読み取った。χ軸目盛がその対数であるものとして、χ軸に希釈物−1をy軸に光学密度(OD)値をとった散布図から判定した相互終点力価として、結果を表現している。データをプロットした後、個々の希釈系列の各々に対し対数曲線フィットを適用し、曲線フィットが正負カットオフ値と交差する点を決定した。対照マウスの血清由来の全ての希釈物の平均(+3SD)として各抗体イソタイプについてカットオフ値を計算した。各実験中でテストした全ての試料を同時に検定した。
T細胞酵素連結型イムノスポット(ELISPOT)検定
単離されたCD4+又はCD8+T細胞のELISPOT検定を、本書の他の個所で記述されている通りに実施した。
B細胞単離及びgp120抗体産生B細胞ELISPOT検定
完全RPMI1640培地内で脾臓から調製された単細胞懸濁液を、5%のCO2中で、37℃で1時間プラスチック皿の上で平板固定して、接着性マクロファージを除去した。非接着性細胞を抗Thg1.2及びウサギ補体で37℃で45分間処置してT細胞を溶解させた。残りのB細胞の純度は通常90%を超えていた。前述のような修正された方法により、B細胞ELISPOT検定を実施した((ル・ボン(Le Bon)ら、2001年、Immunity第14号:461〜7023頁))。簡単に言うと、96ウェルのニトロセルロースベース平板(ミリポアマルチスクリーンPI)を一晩PBS中のgp120でコーティングした。平板を6回PBSで洗浄し、2時間37℃で10%のFBSを含有するRPMI1640で遮断した。単離したB細胞をウェル内に播種し(5×105細胞/ウェル)、5%のCO2中で、37℃で20時間インキュベートした。その後、PBS0.5%トゥイーン(Tween)20(シグマ、ミズーリ州セントルイス)で6回洗浄して細胞を除去した。0.5%のFBSを含むPBS内で1μg/mlまで希釈させたビオチニル化抗マウスIgG(BDファーミンゲン)を添加し、混合物を2時間37℃でインキュベートした。アビジン:ビオチニル化酵素複合体(ABC、ベクター・ラボラトリーズ社(Vector Laboratories,Inc.)、カリフォルニア州バーリンゲーム(Burlingame,CA))をさらに1時間添加した。AEC(3−アミノ−9−エチルカバゾール;シグマ、ミズーリ州セントルイス)で4分間反応させた後、抗gp120IgGを検出した。KSELISPOT4.3ソフトウエアを用いて、自動ELISPOT読取り機システム(カール・ツァイス社(Carl Zeiss,Inc.)、ニューヨーク州ソーンウッド(Thornwood,NY))で、ゼルネット・コンサルティング社(ZellNet Consulting Inc.)(ニューヨーク州ニューヨーク(New York,NY))が結果を評価した。
BAFF及びAPRILの定量的RT−PCR分析
トランスフェクションを受けたマウスBM−DC中のSOCS1の相対的発現を定量的実時間PCRによって評価した。トリゾール試薬(インビトロジェン、カリフォルニア州カールズバッド)を用いて、全RNAをDCから抽出し、ランダム六量体プライマ及びスーパー・スクリプト・ファースト・ストランド・シンセシス・キット(SuperScript First Strand Synthesis Kit)(インビトロジェン、カリフォルニア州カールズバッド)を用いて、各試料について1.0μgの全RNAを逆転写させた。鋳型として1回の反応につき5ngの出発RNA材料の当量を用いて20μlの4重反応でABI7900HT シーケンス・デテクション・システム(Sequence Detection System)(アプライド・バイオシステムズ社、カリフォルニア州フォスターシティー)上で、実時間5’−ヌクレアーゼ蛍光発生PCR分析を実施した。BAFT及びAPRILのためには次のプライマを使用した:BAFF、センス5’−TGCTATGGGTCATGTCATCCA−3’(配列番号17)及びアンチセンス5’−GGCAGTGTTTTGGGCATATTC−3’(配列番号18);APRIL、センス5’−TCACAATGGGTCAGGTGGTATC−3’(配列番号19)及びアンチセンス5’−TGTAAATGAAAGACACCTGCACTGT−3’(配列番号:20)。18Sのための順方向及び逆方向プライマであるTag Manプローブを、タックマン・ローデント(Taqman Rodent)18S対照試薬(アプライド・バイオシステムズ社、カリフォルニア州フォスターシティー)から得た。PCRパラメータは、タックマン・ユニバーサル・PCR・マスター・ミックス・キット(TaqMan Universal PCR Master Mix kit)(アプライド・バイオシステムズ社、カリフォルニア州フォスターシティー)のために推奨されたものであり、BAFF、APRIL及び18S反応は別々の管内で行なった。BAFF及びAPRILのレベルを18SrRNAに正規化し、一方BAFF又はAPRIL発現(モックトランスフェクションを受けたシミュレーションされたDCの対照値との関係におけるもの)は、コンパラティブCt方法(ライバックら、2001年、Met
hods第25号:402〜8頁)により計算した。
CTL検定
標的細胞を溶解するインビトロ再刺激された脾細胞の能力を測定する本書の他の個所で記述されている通りの標準クロム放出検定で、CD8+CTL応答を査定した。免疫化したマウスからプールした脾細胞を、4〜6日間、gp120タンパク質(20μg/ml)を含有するRPMI−1640中でインビトロで再刺激した。一晩20μg/mlのgp120タンパク質でパルスした標的細胞を90分間51Crクロム酸ナトリウム溶液で標識した。異なる数のエフェクタ細胞を37℃で3時間、96ウェルのV字底平板(200μl/ウェル)内で、一定数の標的細胞(1×104/ウェル)と共にインキュベートした。3重培養から上清(100μl)を収集した。(実験的放出−自然放出)/(最大放出−自然放出)×100として細胞溶解百分率を計算した。
T及びB細胞増殖検定
本書の他の個所で記述されている通りに単離したCD4+又はCD8+T細胞(1ウェルにつき1×106個)及びB細胞(1ウェルにつき1×105個)を、さまざまな刺激の存在下又は不在下で96ウェル平板の3重ウェルの中で完全培地内で培養した。培養4日目に、ウェルを16時間、1μのCi[3H]−チミジンでパルスした。その後平板を収獲し、ミクロ・ベータ(Micro Beta)シンチレーションカウンタ(トップ・カウント(Top Count)NXT、パッカード(Packard))を用いて、取込まれた[3H]−チミジンを測定した。
DC免疫化
本書の他の個所で記述されている通りの5のMOIで、骨髄由来のDC(BM培養5日目)をLV−SOCS1−siRNA又はLV−GFP−siRNAで形質導入した。
この実施例で提示されている実験の結果についてここで記述する。
DC中のSOCS1のサイレンシング化が、HIVEnv特異的抗体応答を増強する
抗HIV抗体を誘発するDCの能力に対するSOCS1サイレンシング化の効果についてまず調査した。HIVEnvは、細胞及び中和抗体の両方の応答を誘発できることから、この研究ではこれを使用した。本書の他の個所で記述されている通り、トランスフェクションを受けた細胞内でSOCS1mRNAの約90%をダウンレギュレートする能力をもつSOCS1siRNAを発現する組換え型レンチウイルスベクター(LV−SOCS1−siRNA)及び対照ベクター(LV−GFP−siRNA)を生成した。マウス骨髄(BM)由来のDCをLV−SOCS1−siRNA又はLV−GFP−siRNAで形質導入し、組換え型HIVgp120タンパク質を負荷し、LPSによりエクスビボで成熟させた。マウスのグループを次に週間隔で2回、形質導入されたDCで免疫化し、続いて各DC免疫化の後にインビボでLPS刺激を行なった。本書の他の個所で記述されている通り、SOCS1サイレンシング化されたDCによって誘発された腫瘍関連抗原に対するCTL応答をさらに増強することができるという観察事実に基づき、インビボ刺激が使用された。図15Aは、LV−SOCS1−siRNA−DCが、対照のLV−GFP−siRNA−DCよりも著しく頑強なgp120特異的IgM及びIgG反応を惹起したということを示している。
そのプロファイルが全く異なる免疫学的状態を表わしている異なる抗体サブクラスの産生は、CD4+T−ヘルパー(Th)1及びTh2−分極サイトカイン及びTh細胞の機能によって左右される(アーレン(Allen)ら、1997年、Immunol.Today第18号:387〜92頁)。図15Bは、LV−GFP−siRNA−DCマウス内の対応するサブクラスに比べた、LV−SOCS1−siRNA−DCで免疫化されたマウスにおける全てのIgGサブクラス内のHIVEnv特異的抗体力価の大幅な増加
を示す。Env特異的抗体サブクラスのプロファイルは、Th2応答の産物であるIgG1とTh1応答と結びつけられたサブクラスであるIgG2aの混合応答を標示し、これは、Th1−及びTh2−依存性免疫応答の両方がLV−SOCS1−siRNA−DCにより誘発されたということを表わす。反復実験においても、類似の結果が得られた。マウスはHIV中和抗体の信頼性の高い試験のために適した種でないことから、中和検定は実施しなかった((バートン(Burton)ら、2004年、Nat.Immunol.第5号:233〜6頁))。さらに、SOCS1サイレンシング化が、HIVEnvタンパク質のその他の株及びオボアルブミン(OVA)といった抗原に対する抗体反応を増強することが観察された。これらの結果は、全てのIgGサブクラスを包含するHIVEnv特異的抗体応答が、DC内のSOCS1のサイレンシング化によって大幅に増強されることを実証しており、このことは、抗原特異的抗体応答を制御する上でのDC内のSOCS1の決定的役割を暗示している。
DC内のSOCS1のサイレンシング化はHIVgp120特異的CTL応答を増強する
以下の実験は、SOCS1サイレンシング化がHIVEnv特異的CTL応答を増強できるか否かを査定するために実施された。免疫化されたマウスの体内のCD8+T細胞の機能的状況をテストするために、IFNγELISPOT、細胞内サイトカイン染色及びCTL検定を使用した。LV−SOCS1−siRNA−DCマウス体内でのgp120パルスされた標的細胞に対するCTL活性は、LV−GFP−siRNA−DCマウスにおけるものと比べはるかに強力であった(P<0.01)(図15C)。これらの検定において検出されたCTL活性は、LV−SOCS1−siRNA−DCマウス由来の脾細胞に、gp120パルスを受けていない標的細胞に対する明白なあらゆるCTL活性が欠如していたことから、gp120特異的であった。これと一致して、LV−SOCS1−siRNA−DCで免疫化されたマウスにおいては、それぞれ、LV−GFP−siRNA−DCマウスにおける191スポットに比べ、5×105のCD8+T細胞あたり363のIFNγ+スポットが検出された(図15D)。IFN−γでの脾細胞の細胞内染色は同様に、LV−SOCS1−siRNA−DCマウス内のIFN−γ+T細胞のさらに高い百分率を示した。これらの結果を合わせて考慮すると、SOCS1サイレンシング化されたDCで免疫化されたマウスにおけるHIVEnvに対するバランスのとれた増強された抗体及びCTL応答が実証され、このことは、DC中のSOCS1が液性免疫及び細胞性免疫の両方を決定的に調節することを示唆している。
SOCS1サイレンシング化されたDCにより誘発された混合型の増強されたTh1及びTh2応答
何らかの特定の理論により束縛されることは望まないが、Th1対Th2応答をプログラミングする上でのサイトカインの役目からみて(マクドナルド(MacDonald)ら、2002年、J.Immunol.第168号:3127〜30頁;ゴール(Gor)ら、2003年、Nat.Immunol.第4号:503〜5頁)、SOCS1サイレンシング化が、DCによるサイトカインの産生を調節することによってCTL及び抗体応答に影響を及ぼす可能性があると考えられている。図16Aは、LPSでの刺激の後のGFP−siRNA−DCと比べた、LV−SOCS1−siRNA−DCにより産生されたTh1分極された応答を促進するIL−12、IFN−γ及びTNFαのレベルの著しい増大を実証している。興味深いことに、SOCS1サイレンシング化されたDC内でも、Th2分極された応答を促進するIL−4、IL−6及びIL−10の著しい応答が見られた(P<0.01)。SOCS1サイレンシング化されたDCにより産生されたTh1及びTh2促進サイトカインの両方のより高いレベルによって、HIV Env特異的CTL及び抗体応答の両方を誘発するSOCS1サイレンシング化されたDCの能力増強を説明することができる。
これらの結果に基づくと、DCの中のSOCS1サイレンシング化は、抗体及びCTL
の応答を明らかに促進した。以下の実験は、抗体及びCTL応答の誘発に密接に関与するHIVEnv特異的CD4+Th応答がSOCS1サイレンシング化によっても増強されるか否かに注目している。CD4+T細胞は、CD4+マイクロビーズを用いて、免疫化されたマウスから単離され、さまざまな検定を用いて分析された。図16Bで描かれているように、gp120特異的CD4+T細胞の頻度は、LV−GFP−siRNA−DCマウス内よりもLV−SOCS1−siRNA−DCマウス内で著しく高いものであった。3H−チミジン取込み検定は、LV−SOCS1−siRNA−DC由来のCD4+T細胞が、gp120パルスを受けたDCでの刺激に応答してLV−GFP−siRNA−DCマウスからのものに比べより活発に増殖することを示した(図16C)。gp120パルスを受けたDCでの刺激の後にLV−SOCS1−siRNA−DCから単離されたCD4+T細胞が生成したサイトカインプロファイルの分析は、Th1分極(IFN−γ、IL−2及びTNFα)及びTh2分極(IL−4及びIL−10)の両方のサイトカインの増大したレベルを明らかにした(図16D)。これらの結果は、SOCS1サイレンシング化されたDCが、HIVEnvに対する増強した混合型Th1及びTh2応答を誘発することを示しており、これは、図15B中の混合型gp120特異的IgGサブクラスプロファイルと一致している。
SOCS1サイレンシング化されたDCによる増強されたgp120特異的B細胞の活性化
DCは、TNFスーパーファミリのメンバーであるAPRIL(増殖誘発リガンド)及びBAFF(BLySとしても知られているB−リンパ球刺激因子)を産生することによりB細胞増殖、成熟及びクラススイッチ組換えを直接誘発することが示されてきた(バラーシ(Balazs)ら、2002年、Immunity第17号:341〜52頁;リチンスキー(Litinskiy)ら、2002年、Nat.Immunol.第3号:822〜9頁;マクレナン(MacLennan)ら、2002年、Immunity第17号:235〜8頁)。従って実時間RT−PCRを用いたDCによるAPRIL及びBAFFの産生に対するSOCS1サイレンシング化の効果を査定した。LV−SOCS1−siRNA−DCは、SOCS1−/−DCにおけるBAFF及びAPRILの発現の増加と一致して、LV−GFP−siRNA−DCよりも高いレベルのAPRIL及びBAFFmRNAをLPS刺激時点で発現した(図17A)(ハナダら、2003年、Immunity第19号:437〜50頁)。
gp120特異的B細胞の活性化を増強するべくSOCS1サイレンシング化されたDCの能力をテストするために、免疫化されたマウスの体内の抗gp120IgG産生B細胞の頻度を直接検討するべく、抗gp120IgG特異的B細胞Elispot検定を使用した。抗gp120IgG産生B細胞の頻度は、LV−GFP−siRNA−DCマウスよりもLV−SOCS1−siRNA−DCマウスにおいて著しく高いものであった(P<0.01)(図17B)。LV−GFP−siRNA−DCマウス由来のB細胞と比べてより高い百分率のB細胞が、LV−SOCS1−siRNA−DCマウスにおいて高レベルのCD69、CD40及びCD86で特徴づけされる活性化済み表現型を示した。さらに、免疫化されたマウスの脾臓に由来するB細胞を精製し、さまざまな刺激物で刺激させた。図17Cは、LV−SOCS1−siRNA−DCマウス由来のB細胞が、LV−GFP−siRNA−DCマウス由来のB細胞に比べ、抗CD40及びIL−4で同時刺激した際にさらに激しく増殖したことを示している。興味深いことに、LV−GFP−siRNA−DCマウス由来のものではなくLV−SOCS1−siRNA−DCマウス由来のB細胞がIL−4又は抗−CD40のみに対し強く応答しており、このことは、LV−SOCS1−siRNA−DCでの免疫化により増大した数のB細胞がインビボですでに活性化されたということを示唆している。同様に、LV−SOCS1−siRNA−DCマウスからのB細胞がさまざまな刺激に応答してIL−6、IL−2及びTNF−αを含めたさまざまなサイトカインをより高いレベルで産生することも観察された(図17
D)。集合的に、これらの結果は、SOCS1サイレンシング化されたDCが、増強したレベルのB−リンパ球刺激因子(BAFF及びAPRIL)及びTh2分極サイトカインを産生し、HIVEnv特異的B細胞及びTh細胞のより効果的な活性化を導くということを示唆している。
SOCS1サイレンシング化されたDCにより誘発された長期HIVEnv特異的CTL及び抗体応答
DC内でのSOCS1サイレンシング化は一次的HIVEnv特異的CTL及び抗体応答を増強するということを示してきたが、SOCS1サイレンシング化されたDCがメモリーHIV特異的CTL及び抗体応答を誘発することになるか否かということもさらに査定した。図18Aは、LV−GFP−siRNA−DCで免疫化されたマウスが免疫化から6カ月後にきわめて低レベルのgp120特異的抗体を有し、一方LV−SOCS1−siRNA−DCマウスはなおもその血清中にgp120特異的IgG1及びIgG2抗体を有意な力価で保持していたということを示している。追加免疫化から1週間目に、LV−SOCS1−siRNA−DCマウスは強いリコール抗体応答を示し、抗gp120IgG1の平均力価は2×105及び抗gp120IgG2の平均力価は1×105であり、一方、LV−GFP−siRNA−DCマウスは低いリコール抗体応答を示し、IgG1の平均力価は3×103、IgG2は4×102であった。これらのデータは、SOCS1サイレンシング化されたDCがGFP−siRNA−DCに比べてそれぞれIgG1及びIgG2aの抗体の力価の約64倍及び255倍の増加を示すことを表わしている。
メモリーHIV特異的CTL及びThの維持を、IFNγ−ELISPOT検定でgp120特異的CD8+及びCD4+T細胞応答を検査することによって査定した。図18Bは、免疫化から6カ月目に、LV−GFP−siRNA−DCマウスではなくLV−SOCS1−siRNA−DCマウスの体内で強いgp120特異的CTL応答が検出されたということを示している((LV−SOCS1−siRNA−DCマウスの体内でCD8+T細胞5×105個あたりIFNγスポット249個対LV−GFP−siRNA−DCマウスの体内でIFNγスポット3個))。LV−SOCS1−siRNA−DCマウスにおける勢いのよいgp120特異的CTL応答が追加免疫化によって急速に誘発されたが、LV−GFP−siRNA−DCマウス内では誘発されなかった((追加免疫後7日目にLV−SOCS1−siRNA−DCマウスの体内でCD8+T細胞5×105個あたりIFNγスポット446個対LV−GFP−siRNA−DCマウスの体内でIFNγスポット16個)(図18B)。CD8+T細胞の表面CD44メモリーマーカー及び細胞内IFN−γの同時染色も又、免疫化から6カ月後にLV−GFP−siRNA−DCマウスと比べて、LV−SOCS1−siRNA−DCマウスの体内でより高い百分率のCD44hi及びIFNg+CD8+T細胞を示した(図18C)。同様にして、免疫化から6カ月目に、LV−SOCS1−siRNA−DCマウス内でgp120特異的CD4+Th応答が維持され急速に誘発された(追加免疫後7日目にLV−SOCS1−siRNA−DCマウスの体内でCD4+T細胞5×105個あたりIFNγスポット391個対LV−GFP−siRNA−DCマウスの体内でIFNγスポット37個)(図18D)。かくして、SOCS1サイレンシング化されたDCでの免疫化は、長期HIV Env特異的CTL、Th及び抗体応答を有効に誘発する。
免疫化から7カ月目までは、gp120でパルスされたLV−SOCS1−siRNA−DCで免疫化されたマウスの体内には明白な毒性は全く観察されなかった。免疫化されたマウスの全ての主要器官及び組織の組織学的分析が、病的炎症を全く、明らかにしなかった。IgG及び抗dsDNAのレベルは、DC−LV−SOCS1−siRNA及びモックDCマウス内で匹敵するものであった。これらのデータは、gp120パルスを受けたLV−SOCS1−siRNA−DCの免疫化がマウスの体内で病的炎症をひき起こさ
ないということを示唆している。
HIVEnv媒介型免疫抑制に対するSOCS1サイレンシング化されたDCの耐性
gp120タンパク質を含むHIVウイルスは、前炎症性サイトカインを産生しT細胞を刺激するDCの能力を抑制することができる(ファントゥッジ(Fantuzzi)ら、2004年、J.Virol.第78号:9763〜72頁;グラネッリ・ピペルノ(Granelli−Piperno)ら、2004年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.第101号:7669〜74頁;バロン(Barron)ら、2003年、J.Infect.Dis.第187号:26〜37頁;パカノウスキー(Pacanowski)ら、2001年、Blood第98号:3016〜21頁)。SOCS1サイレンシング化によるDCの増強された活性化がDCのサイトカイン産生及び免疫刺激能力に対するgp120タンパク質の阻害効果を克服できるか否かを査定するために、以下の実験に着手した。DC由来のIL−12は、Th1の発達を駆動することならびに液性応答を発生させるためにB細胞を直接シグナリングすることという2重の役割を果たすことが発見されたことから、これらの実験のための代表的サイトカインとしてIL−12が選択された(デュボア(Dubois)ら、1998年、J.Immunol.第161号:2223〜31頁;デュボアら、1997年、J.Exp.Med.第185号:941〜51頁;スコック(Skok)ら、1999年、J.Immunol.第163号:4284〜91頁)。
図19Aに示されているように、gp120タンパク質の存在下でのLV−SOCS1−siRNA−DCは、LPSに応答する能力を保持していた。これとは対照的に、LPS刺激に対するLV−GFP−siRNA−DCの応答は、gp120タンパク質の存在によりひどく低下した。gp120媒介型抑制に対するSOCS1サイレンシング化されたDCの感受性をさらにインビボで調査した。gp120タンパク質のエクスビボでの予備処置を伴って又は伴わずに、OVAでのパルスを受けた形質導入されたDCでマウスを免疫化した。gp120タンパク質に対する予備曝露は、OVA特異的抗体応答を誘発するLV−SOCS1−siRNA−DCの能力に対する明白な効果をもたず(図19B及び19C)LV−SOCS1−siRNA−DCにより誘発されるOVA特異的CD8+CTL及びCD4+Th応答を低下させることもなかった(P>0.05)(図19D及び19E)。しかしながら、このような予備処置は、OVA特異的抗体及びCTL応答を誘発するLV−GFP−siRNA−DCの能力を著しく低減させた(P<0.05)(図19B〜19E)。これらの結果は、SOCS1サイレンシング化が、おそらくは増強されたサイトカイン産生及びSOCS1サイレンシング化されたDCの過剰活性化状態に起因して、DCにHIVgp120媒介型抑制に対する耐性を付与する、ということを表わしている(ハナダら、2003年、Immunity、第19号:437〜50頁)。
実施例8:HIV特異的抗体及びCTL応答を増強するためのインビボDNAワクチン接種
本実施例は、SOCS1siRNA発現DNAでの同時免疫化によりHIVDNAワクチン接種の効力が著しく増強されるということを実証している。この研究は、宿主の免疫インヒビターを阻害することによりHIV−特異的抗体及びCTL応答を惹起する最初の試みを表わしており、これは、より有効なHIVワクチンを開発するための新たな途を提示している。
本実施例の中で提示されている実験において使用される材料及び方法についてここで記述する。
DNAワクチン接種
先に本書の他の個所で記述されている通りに、pSuper−SOCS1−siRNA
発現ベクターを生成した。HIVEnvレトロゲン発現ベクターを生成するためには、HIVEnvの分泌を促進するべくHIVgp160のgp120/gp41切断部位及びgp41の融合ドメイン(コドン使用頻度最適化されたJRFL)を欠失させることにより、gp140CFプラスミドをまず構築した。結果として得たpCMV/R−gp140CF−Fcレトロゲンベクタは、CMVプロモータの制御下でIgGFcフラグメントに融合されたgp140CF遺伝子を含有している。CHO細胞から組換え型gp120(JFRL)タンパク質が産生され、これは、NIHAIDS研究参照プログラムによって提供された。キアゲン(Qiagen)キットで内毒素を含まないDNAを調製し、1μg/μlの最終濃度で、内毒素を含まないPBS(シグマ、ミズーリ州セントルイス;アルドリッチ社、ミズーリ州セントルイス)の中に再懸濁させ、注入のために使用するまで−20℃で保管した。ワクチン接種予定日に、50μgのgp140CF−FcDNA又は、gp140CF−FcDNA(50μg)とpSuper−SOCS1−siRNAエクスプレッサDNA(150μg)の混合物200μgを各マウスの大腿四頭筋内に筋内注射した(ハウザー(Hauser)ら、2004年、Gene Ther.第11号:924〜32頁;ユーら、2001年、Cancer Research第61号:3704〜11頁)。免疫化したマウスをその後、各々のDNA免疫化の後1、3及び5日目に3回LPS(30μg/マウス)(IP)で処置した。
本実施例中に提示された実験の結果についてここで記述する。
SOCS1 siRNA DNAでの同時免疫化により増強されたHIVDNAワクチンの効能
HIVEnv特異的CTL及び抗体の両方の応答を増強するSOCS1サイレンシング化されたDCの能力は、HIVDNAワクチン接種の効能を改善する上でこのSOCS1サイレンシング化アプローチが有用であり得るということを示唆していた。抗原のDCターゲティング及びMHC提示を増強するためにレセプタ媒介型エンドサイトーシスを用いる「レトロゲン」免疫化戦略を、ハウザー(Hauser)ら、2004年、Gene Ther.第11号:924〜32頁及びユーら、2001年、Cancer Research第61号:3704〜11頁に従って使用した。簡単に言うと、gp120/gp41分割部位及びgp41の融合ドメインが欠失されているgp140CF遺伝子に対してIgGFcフラグメントを枠内融合させることによってgp140CFレトロゲンを産生させた。結果として得られたgp140CF−Fc融合タンパク質を発現させ、gp140CF−Fcベクターでのトランスフェクションを受けた細胞から分泌させた。
DNAワクチン接種の時点でのSOCS1 siRNAの効果をテストするために、gp140CF−FcDNAのみで又はgp140CF−FcDNAとp Super−SOCS1−siRNA発現DNAの混合物を一週間に一回3週間にわたりマウスに注射し、次に一週間後のHIVEnv特異的免疫応答についてマウスを監視した。HIVEnv特異的抗体力価の増強は、pSuper−SOCS1−siRNA DNAで同時免疫化されたマウスにおいて明白であった(図20A)。CTL及びELISPOT検定(図20B及び20C)により実証されているように、pSuper−SOCS1−siRNA
DNAの同時注射により、HIVEnv特異的CTL応答を著しく増強させた。その上、SOCS1−siRNADNAの同時注入により、HIVEnc特異的CD4+Th応答を増強させた(図20D)。サイトカインでの細胞内染色も同様に、pSuper−SOCS1 siRNA DNAで同時免疫化されたマウス内のgp120特異的CD4+T細胞応答の増強を示した。これらの結果は、免疫化されたマウスの体内での同時トランスフェクションを受けた抗原提示細胞の免疫刺激能力の増強に起因して、pSuper−SOCS1 siRNA DNAの同時免疫化がHIVDNAワクチン接種の効能を増強することを表わしている。かくして、本書で提示されているSOCS1サイレンシング化戦略は、エクスビボDCベースの及びインビボワクチン接種の設定に応用可能である。
DC内の天然免疫インヒビターの阻害に基づく代替的かつ有効なHIVワクチン接種アプローチ
本開示は、DC中の負のシグナリング調節因子SOCS1のサイレンシング化が、マウスの体内のHIV Env−特異的抗体及びCTL応答の両方の大幅な増強を結果としてもたらすということを実証している。SOCS1サイレンシング化されたDCにより誘発されたHIV Env−特異的抗体及びCTL応答の両方が長く持続することが観察された。さらに、結果は、SOCS1 siRNA DNAでの同時免疫化が、HIVDNAワクチン接種の効能を著しく増強するということを実証した。かくして、HIVに対するバランスのとれたメモリー液性及び細胞応答がSOCS1サイレンシング化されたDCで誘発され得、このSOCS1サイレンシング化戦略は、治療的及び予防的HIVワクチン接種という両方の設定に応用可能である。
液性応答の誘発におけるDCの役割は伝統的に、T細胞とB細胞の間の同族相互作用のためのCD4+Thプライミングの当然の結果と考えられてきた。しかしながら、液性応答の刺激におけるDCの直接的役割は、インビトロ及びインビボで実証されてきた(デュボアら、1997年、J.Exp.Med.第185号:941〜5138頁;イナバ(Inaba)ら、1983年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA第80号:6041〜5頁)。特に、DCは、CD40で活性化されたB細胞の増殖及び抗体産生の両方を強く増強することが発見された(デュボアら、1997年、J.Exp.Med.第185号:941〜51頁)。抗原で負荷されたDCでの免疫化は、防御的液性応答を誘発することができる(フラマンド(Flamand)ら、1994、Eur.J.Immunol.第24号:605〜10頁))。本書の結果は、SOCS1サイレンシング化されたDCが、SOCS1サイレンシング化されたDCで免疫化されたマウスの中で見られる増強されたTh及びB細胞活性化の原因である確率の高い、Th2分極サイトカインならびにB−リンパ球刺激性サイトカイン(BAFF及びAPRIL)の産生を増強する、ということを実証している。この知見は、SOCS1−/−DCがB細胞の異常な拡張及び自己反応性抗体産生を誘発するという以前の報告((ハナダら、2003年、Immunity第19号:437〜50頁))により裏づけされている。従って、本研究は、HIV特異的抗体応答を制御する上でのDC中のSOCS1の決定的役割を実証しており、SOCS1のサイレンシング化を包括的に用いてHIVEnv以外の抗原に対する抗体応答を高めることができるということを暗示している。
本研究の重要な知見は、SOCS1サイレンシング化されたDCが、HIV感染を予防又は制御するために望ましい可能性のあるバランスのとれたメモリーHIV−Env−特異的抗体及びCTL応答で誘発するということにある((バートン(Burton)ら、2004年、Nat.Immunol.第5号:233〜6頁;マクマイケル(McMichael)ら、2003年、Nat.Med.第9号:874〜80頁;Nabel、2001年、Nature第410号:1002〜7頁;レトビン(Letvin)ら、2002年、Annu.Rev.Immunol.第20号:73〜99頁;Zolla−Pazner、2004年、NatRev.Immunol.第4号:199〜210頁;イマイ(Imami)ら、2002年、J.Virol.第76号:9011〜23頁;レトビンら、2003年、Nat.Med.第9号:861〜6頁))。何らかの特定の理論により束縛されることは望まないが、SOCS1サイレンシング化がバランスのとれたメモリー液性及び細胞性応答を誘発する機序には、SOCS1サイレンシング化されたDC及びgp120特異的CD4+T細胞によるTh1及びTh2分極サイトカインの混合パターンの産生が関与し得る。これらの結果は、ウイルスなどの数多くの病原体に対して天然に生成される混合型抗体及びCTL応答と一貫性をもつものであり(アーレン(Allen)ら、1997年、Immunol.Today第18号:387〜92頁)、Th1及びTh2分極が互いに排他的でないことを表わしている(ゴール(Gor)
ら、2003年、Nat.Immunol.第4号:503〜5頁;コロナ(Colonna)、2001年、Nat.Immunol.第2号:899〜900頁))。
SOCS1は、さまざまなサイトカインにより用いられるJAK/STATシグナリング経路のフィードバックインヒビターとして機能し、直接的又は間接的にTLRシグナリング経路を調節することに関与している(ベッツ(Baetz)ら、2004年、J.Biol.Chem.第279号:54708〜15頁;ギングラら、2004年、J.Biol.Chem.第279号:54702〜7頁)。本書中の結果は、LPSに応答した、SOCS1サイレンシング化されたDCによるTNF−α、IL−6及びIL−12などのさまざまなサイトカインの産生の増強を、一貫して標示している。LPS−TLRシグナリングは、自己分泌及び傍分泌に機能することのできる数多くの炎症性サイトカインを含めた豊富なNF−κβ応答性遺伝子を活性化する(ベッツら、2004年、J.Biol.Chem.第279号:54708〜15頁;グローマン(Grohmann)ら、1998年、Immunity第9号:315〜23頁;パン(Pan)ら、2004年、Immunol.Lett.第94号:141〜51頁)。SOCS1がTLRSGLを間接的に減衰させるのに関与しているという事実を考慮すると、JAK/STAT経路の臨界的抑制を無効化にすることでサイトカインが自己分泌又は/及び傍分泌刺激ループを確立できるようになるはずであり、こうしてサイトカイン産生の削減ではなく増強が導かれることになる。サイトカイン及びサイトカインレセプタノックアウトマウスの使用が関与する本書に開示されている結果は、自己分泌サイトカイン刺激ループがSOCS1サイレンシング化されたDCによるサイトカインの過剰産生に貢献することを示唆している。
HIV感染した個体においては、DCの機能的欠陥及び枯渇が一般的であり、漸進的な免疫不全に寄与する確率が高い。HIVgp120タンパク質は、前炎症性サイトカインを産生しT細胞を刺激するDCの能力を抑制することができる(ファントゥッジら、2004年、J.Virol.第78号:9763〜72頁;カルボネイル(Carbonneil)ら、2004年、J.Immunol.第172号:7832〜40頁)。SOCS1サイレンシング化されたDCは、前炎症性サイトカインの産生の増強及びSOCS1サイレンシング化されたDCの過剰活性化状態のため、HIVgp120媒介型抑制に耐える、ということが実証された((ハナダら、2003年、Immunity第19号:437〜50頁))。この知見は、免疫抑制されたHIV感染個体の中で使用されると思われる治療用HIVワクチンの開発と特に関連性が高い(リュー(Lu)ら、2004年、Nat.Med.第10号:1359〜1365頁)。
ここで記述されているワクチン接種戦略は、DC内で宿主の免疫インヒビターを阻害することにより抗HIV免疫応答を増強するための最初の努力である。自然免疫はHIV−1感染を制御するのに有効でないことから、宿主の免疫インヒビターを無効化することは、有効な抗HIV免疫応答を生成するのに決定的であり得る。しかしながら、HIV特異的免疫応答の増強だけでは防御的HIV抗体及びCTL応答の誘発を導き得ない。この点において、当該戦略は、DNAワクチンとSOCS1siRNADNAの同時免疫により実証されるように、現在利用可能なワクチンとの組合せ免疫化の機会を提供する。改良されたHIV免疫原と送達系((バートンら、2004年、Nat.Immunol.第5号:233〜6頁;ヤン(Yang)ら、2002年、J.Virol.第76号:4634〜42頁))と共に使用された場合、このワクチン接種アプローチは、弱防御免疫応答を増強するか又は優性エピトープに対してのみならず弱免疫原性又は潜在性でしかも防御的なエピトープに対してもより広くより強い応答を生成する新たな途を提供し得る。要約すると、本開示は、HIV特異的抗体及びCTL応答の両方を増強するべくDC内の宿主のシグナリングインヒビターを阻害するという原則を実証しサルそして究極的にはヒトにおいてこの戦略により防御的抗HIV応答を誘発できるか否かを判定するためにさらな
る調査を要請している。さらにこのSOCS1サイレンシング化戦略は、その他の病原体に対する免疫応答を増強するために使用することができると思われる。
実施例9:ヒトSOCS1siRNAの同定及び分析
ヒトSOCS1:hSOCS1−siRNA1(CACGCACUUCCGCACAUUC.dT.dT;配列番号21)、hSOCS1−siRNA2(UUCCGUUCGCACGCCGAUU.dT.dT;配列番号22)及びhSOCS1−siRNA3(GAGCUUCGACUGCCUCUUC.dT.dT;配列番号23)をターゲティングするsiRNA配列を選択するためにはコンピュータプログラムを使用した。全ての標的配列は、その他の既知の遺伝子に対する相同性の欠如を確認するためにNCBIBlastクエリに付した。「.dT.dT」という呼称は、siRNA標的配列のすぐ下流側のポリdT配列を意味する。
実施例10:ジーンポーターでのヒト単球−DCのトランスフェクション
ヒトDCの調節におけるヒトSOCS1の役目を調査するために、ヒトSOCS1を特異的にダウンレギュレートする能力をもつ小型干渉RNA(siRNA)がまず同定された。ヒトSOCS1及び293T細胞をターゲティングするsiRNA配列を選択するために、コンピュータプログラムが使用された。その後、各々の合成ヒトSOCS−1−siRNAオリゴヌクレオチド2重鎖を、293T細胞へとジーンポータートランスフェクション試薬を用いて10:1の比でフラグでタグ付けされたヒトSOCS1発現と共に同時トランスフェクトさせた。トランスフェクションから48時間後に、細胞を採取し、本書の他の個所で記述されている通りに、ウェスタンブロット法により分析した。
図21Aは、ヒトSOCS1siRNA1がヒトSOCS1発現を効率良くダウンレギュレートしたことを示している。siRNAによるヒトSOCS1mRNAダウンレギュレーションの特異性は、スクランブルされたsiRNA1オリゴヌクレオチドがSOCS1mRNAをダウンレギュレートすることができないことによって確認された。従って、ヒトSOCS1siRNA1が、さらなる調査のために選択された。合成siRNA2重鎖がジーンポーターにより、85.5%のトランスフェクション効率で、ヒト単球に由来するDC内にトランスフェクトされた(図21B)。定量的RT−PCR検定によって確認される通り、hSOCS1siRNA2重鎖でのトランスフェクションを受けた全DC集団内のhSOCS1mRNAのレベルは、モックトランスフェクションを受けたDC内でのレベルと比べて約60%だけ特異的に減少した(図21C、P<0.01)。siRNAの効率及びSOCS1RNAの減少は、全マウス骨髄由来DC集団内のマウスSOCS1をターゲティングする合成siRNA2重鎖を用いた実験において観察されたものと類似している。
ヒトDCにおけるヒトSOCS1の相対的発現を、本書の他の個所で記述されている通りに定量的実時間RT−PCRによって評価した。カリフォルニア州フォスターシティーのアプライド・バイオシステムズ社製のヒトSOCS1用予め開発されたプライマ/プローブセット(プライマ、5’−TTTTTCGCCCTTAGCGGGAA−3’;配列番号24及び5’−CTGCCATCCAGGTGAAAGC−3’;配列番号25、及びプローブ、6FAM−ATGGCCTCGGGACCCACGAG−TAMRA;配列番号26)を使用した。
ヒトのSOCS1サイレンシング化されたDCの特徴づけ
ヒトSOCS1がフローサイトメトリ分析によってDC上の共同刺激分子の発現を調節するか否かを査定するために、次の実験セットを実施した。本書の他の個所で記述されている通りに、マウスSOCS1を査定する上で使用されたものに従って、ヒトSOCS1のためのフローサイトメトリ分析を進めた。マウスDCにおける観察事実と一致して、h
SOCS1−siRNAでのトランスフェクションを受けたDC及び対照のhSOCS1−siRNA突然変異体でのトランスフェクションを受けたDCが、LPS誘発型成熟の前後に代表的な同時刺激性分子のそれらの発現における差異をわずかしか示さないということが観察された(図22A)。hSOCS1−siRNADC及び突然変異体−siRNADC上では、比較可能なレベルのMHC−I及びII分子も検出された。これとは対照的に、IL−12、IL−6及びTNF−αなどの前炎症性サイトカインの大幅に増強された分泌によって示されているように、hSOCS1siRNAでのトランスフェクションを受けたDCは、siRNA突然変異体でのトランスフェクションを受けたヒトDCよりもLPSでの刺激に対する応答性が高いということが観察された(図22B及び22C)。
ヒトSOCS1siRNAを発現する組換え型アデノウイルスベクターの生成
アドイージ・システム(AdEasy system)(E1及びE3を削除したAd(5);カンタム・バイオテクノロジーズ社(Quantum Biotechnologies Inc.)、カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto,CA))を用いて、複製欠損アデノウイルスを構築し生成した。アドイージーベクターの中にH1−ヒトSOCS1−siRNADNAフラグメントを挿入することによってシャトルベクターAd−hSOCS1−siRNAを、構築した(図28)。ヒトSOCS1−siRNAの挿入をDNA配列決定によって確認した。その後、メーカー(カンタム・バイオテクノロジーズ社、カリフォルニア州パロアルト)の指示に従って、組換え型アデノウイルスAd−hSOCS1−siRNAを生成した。メーカー(カンタム・バイオテクノロジーズ社、カリフォルニア州パロアルト)の指示に従って、組換え型アデノウイルスを293個の細胞中で産生させ滴定した。組換え型Ad(5)がヒト単球由来のDCをトランスフェクトできるということが観察された。
実施例11:ヒトSOCS1−siRNADCによりプライミングされたMAGE3特異的CTL応答
ヒトDCの免疫刺激能力を調節する上でのヒトSOCS1の役割を調査するために以下の実験に着手した。この実施例で提示されている結果は、ヒトのSOCS1サイレンシング化されたDCが病原菌産物での刺激に対し過剰反応し、自己抗原特異的ヒト細胞傷害性Tリンパ球(CTL)をプライミングする増強された、刺激能力を有することを実証している。重要なことに、野生型DCではなく、ヒトのSOCS1サイレンシング化されたDCは、天然の抗原発現ヒト腫瘍細胞に対する活発な溶解活性を有するCTLを完全に活性化する能力をもつ。同様に、CTLをプライミングするヒトのSOCS1サイレンシング化されたDCの能力は、IL−12産生及びシグナリングのSOCS1制限によって制御される確率が高いと考えられている。これらの結果は、ヒトDCを負に調節する上でのヒトSOCS1の決定的な役割を標示し、ヒトの患者のためのより有効な腫瘍ワクチンを開発するためのこのSOCS1サイレンシング化アプローチの翻訳潜在能力が関係するとみなしている。
本書で開示されている実験において利用される材料及び方法についてここで記述する。
ペプチド
ジーンメッド・シンセシス社(米国カリフォルニア州サウスサンフランシスコ)により、HPLCを用いて95%超の純度までHLA−A2−制限されたMAGE3 CTLペプチド(FLWGPRALV;配列番号27)(ファン・デル・ブルゲン(van der Bruggen)ら、1994年、European Journal of Immunology第24号:3038〜43頁)及び対照H−2Kb−制限されたOVA−I(SIINFEKL;配列番号11)が合成され精製された。内毒素を含まないPBS中での最終希釈の前に、ペプチドをDMSO中で溶解させた(シグマ、ミズーリ州セン
トルイス)。
ヒトSOCS1発現のウェスタンブロット分析
293T細胞を、本書の他の個所で記述されている通りにジーンポーター試薬を用いて10:1の比で合成ヒトSOCS−1−siRNAオリゴヌクレオチド2重鎖(21bp)又は無関連オリゴ2重鎖及びフラグタグ付きヒトSOCS1発現ベクター(pCMV−hSOCS1)と同時トランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後に、細胞を採取し、SDS−PAGEに付した。ハイボンド(Hybond)−P膜(アマシャム、イリノイ州アーリントンハイツ)への移送の後、抗−Flag(シグマ、ミズーリ州セントルイス)又はアクチン(サンタクルス・バイオテクノロジー社、カリフォルニア州サンタクルス)抗体でのウェスタンブロット法に続けて、ECL−Plus試薬(アマシャム、イリノイ州アーリントンハイツ)での検出により試料を分析した。薄膜を密度計SIで走査し、SOCS−1/アクチンバンドをイメージ・クアントソウトウェア(モレキュラー・ダイナミクス、ニュージャージー州ピスカタウェイ)で定量した。SOCS1バンドの強度をベータアクチンバンドの強度に正規化した。
ヒトSOCS1発現の定量的RT−PCR分析
ヒトDC中のヒトSOCS1の相対的発現を、本書の他の個所で記述されている通り、定量的実時間RT−PCRにより評価した。
ヒト単球由来のDCのトランスフェクション及びヒトT細胞のインビトロプライミング
スクロアース(Schroers)ら、2003年、Clinical Can.Res.第9号:4743〜4755頁;及びスクロアースら、2004年、Methods
Mol.Biol.第246号:451〜9頁に記述されている通りに、PBMCに由来するヒトDCを生成し培養した。HLA−A2+の健康なボランティアからヘパリン化された血液を収集した。PCR−SSP−DNAベースの手順によりHLA分類を実施した(メソジスト・ホスピタル(The Methodist Hospital)、テキサス州ヒューストン)。無血清DC培地(セルジェニックス(CellGenix)、イリノイ州アンティアック(Antioch,Il))の中にPBMCを再懸濁させ、加湿した5%CO2中で37℃でインキュベートした。プラスチックに接着した細胞画分を、1000IU/mlの組換え型ヒトGM−CSF(rhGM−CSF;アールアンドディー・システムズ社、ミネソタ州ミネアポリス)及び1000IU/ml rhIL−4(アールアンドディー・システムズ社、ミネソタ州ミネアポリス)を伴う無血清DC培地内で培養させた。5日目又は6日目に、メーカーの指示に従ってジーンポーターを用いて120nMのsiRNAオリゴヌクレオチドで単球由来のDCをトランスフェクトした。その後、トランスフェクションを受けたDCを一晩MAGE3ペプチド(20μg/ml)でパルスした。24ウェルの平板の1ウェルあたり合計1×106のヒトT細胞を、5%ABヒト血清、rhIL−2(50U/ml)、及びTNFa(10ng/ml、アールアンドディー・システムズ社、ミネソタ州ミネアポリス)で補足された0.5mlのRPMI−1640中で、5×104個のMAGE3パルスされたトランスフェクションを受けたDCと同時培養させた(20:1)。同時培養したT細胞を、同時培養7日目に、自己移植性MAGE3パルスされたトランスフェクションを受けたDCで一回再刺激した。一部の実験については、3日に一度DCとT細胞の同時培養の中に抗−ヒトIL−12(p70)抗体(20mg/ml、アールアンドディー・システムズ社、ミネソタ州ミネアポリス)を添加した。2週間の同時培養の後、T細胞を免疫検定のために使用した。
サイトカインELISA及び酵素連結型イムノスポット(ELISPOT)検定
メーカーの指示に従い、指示された時点で指示された刺激物で、ELISA分析(BDバイオサイエンシーズ、ニュージャージー州リンカーンパーク)のためのDC培養の上清を用いてさまざまな前炎症性サイトカインのレベルを定量化した。ヒト末梢リンパ球のE
LISPOT検定を、本書の他の個所で記述されている通りに実施した。
フローサイトメトリ分析
0.1%のNaN3及び2%のFCSを含有するPBS中のFITC又はPEmAbsを用いて、細胞を染色した。ヒトCD40、CD80及びCD86に特異的な抗体及び整合したイソタイプ対照をBDバイオサイエンシーズ(カリフォルニア州サンノゼ)から購入した。染色した細胞をFACSCalibur(ベクトン・ディッキンソン、ニュージャージー州リンカーンパーク)フローサイトメーター上で分析した。
四量体染色
ベイラー・カレッジ・オブ・メディシン・テトラマー・コア・ファシリティー(米国テキサス州ヒューストン)において、ヒトMAGE3/HLA−A2四量体が合成された。同時培養中のリンパ球又はヒト末梢血リンパ球を抗−hCD8a−FITC/抗−hCD3−PerCP及びMAGE3−PE三量体と同時染色した。四量体染色を4℃で1時間、メーカーの指示に従い、106個の細胞あたり1μlの抗CD8α及びMAGE3−PE四量体の1:100希釈物を用いて行なった。
HLA−A2遺伝子導入マウスのDC免疫化
4〜6週令の雌のHLA−A2.1遺伝子導入マウスをジャクソン・ラボラトリー(米国メーン州)から購入し、制度的指針に従ってベイラー・カレッジ・オブ・メディシン(米国テキサス州ヒューストン)において無菌のマウス施設内に維持した。本書の他の個所で記述されている通りマウスBM由来のDCを、HLA−A2.1遺伝子導入マウスから調製し、5のMOIで組換え型レトロウイルスベクターLV−SOCS1−siRNA又はLV−GFP−siRNAで形質導入した。その後DCを20時間、MAGE3ペプチドでパルスし、PBSで3回洗浄し、TNFαで24時間刺激した(500ng/ml、アールアンドディー・システムズ社、ミネソタ州ミネアポリス)。その後DCを、後足蹠を介してHLA−A2遺伝子導入マウス内に注入した。一部のマウスにおいて、DCワクチン接種から指示された日数後に、LPS(30μg/マウス)又は組換え型マウスIL−12(1μg/マウス、ペプロテック社、ニュージャージー州ロッキーヒル)を腹腔内(i.p.)投与した。
CTL検定
本書の他の個所で記述されている通り標的細胞を溶解するインビトロ再刺激された脾細胞の能力を測定する標準クロム放出検定で、CD8+CTL応答を査定した(フアンら、2003年、Cancer Res.第63号:7321〜9頁)。2〜3匹の免疫化したマウスからプールした脾細胞を、4〜6日間、MAGE3ペプチドを含有するRPMI−1640中でインビトロで再刺激した。ヒトMAGE3+、HLA−A2+黒色腫細胞(SK−Mel−37)及び対照ヒトMAGE3+、HLA−A2−黒色腫細胞(NA−6−Mel)を37℃で90分間51Crクロム酸ナトリウム溶液で標識した。異なる数のエフェクタ細胞を37℃で4時間、96ウェルのU字底平板(200μl/ウェル)内で、一定数の標的細胞(5×104/ウェル)と共にインキュベートした。3重培養から上清を収集し、分析した。(実験的放出−自然放出)/(最大放出−自然放出)×100として溶解百分率を計算した。
本実施例で提示されている実験の結果について、ここで記述する。
抗原特異的CTL応答をプライミングするためのヒトのSOCS1サイレンシング化されたDCの増強された免疫刺激性効能
サイレンシング化されたヒトSOCS1が自己抗原特異的CTLをプライミングする上でヒトDCの刺激効能を増強し得るか否かを査定するために、次の実験セットに着手した
。成人のヒトの睾丸及び黒色腫細胞の中で発現されるものとして知られている胚芽腫抗原であるヒトMAGE3由来のHLA−A2制限されたペプチド(ファン・デル・ブルゲンら、1994年、European Journal of Immunology第24号:3038〜43頁)を、モデルヒト自己抗原として用いた。HLA−A2+の健康なボランティアからのヒト単球由来DCをhSOCS1siRNAオリゴヌクレオチドでトランスフェクトし、次に一晩MAGE3ペプチド(20μg/ml)でパルスした。TNFα(成熟刺激物)(10ng/ml、アールアンドディー・システムズ社、ミネソタ州ミネアポリス)の存在下で5×104個のMAGE3パルスされたトランスフェクションを受けたDCと、1ウェルあたり合計1×106個の自己移植性ヒトT細胞を同時培養した(20:1)。同時培養したT細胞を、同時培養7日目に、自己移植性MAGE−3パルスされたトランスフェクションを受けたDCで一回再刺激した。2週間の同時培養後、免疫検定のためにT細胞を用いた。MAGE3ペプチドでパルスされたhSOCSsiRNAでのトランスフェクションを受けたDCとの同時培養中では、MAGE3でパルスされたmut−siRNADC又はモックDCとの同時培養中でそれぞれ5.4%及び4.3%にすぎなかったのに比べて、13.9%のCD8+T細胞がMAGE3−四量体について陽性であった(図23A)。同じドナーからの実験未使用の(刺激を受けていない)一次ヒトリンパ球の四量体染色は、低レベルの陽性MAGE3四量体染色を示した(0.5%のCD8+T細胞)。これと一致して、細胞内IFNγ染色(図23B)は、MAGE3ペプチドパルスを受けたmut−siRNADC(6.9%のIFNγ+CD8+T細胞)又はモックDC(5.7%のIFNγ+CD8+T細胞)に比べて、hSOCS1−siRNADCがMAGE3特異的CTL応答を実質的に改善する(11.18%のIFNγ+CD8T細胞)ことを示した。さらに、IFNγELISPOT検定(図23C)は、hSOCS1−siRNADCにより、増大した数のMAGE3特異的CTLが活性化されることを示した。HLA−A2+ドナーからの繰り返しの実験は同様の結果を示した。一次ヒトT細胞の大部分は、抗原でパルスされていないDCとの2週間の同時培養後死滅した。集合的に、これらの結果は、ヒトのSOCS1サイレンシング化されたDCが自己抗原特異的CTLをプライミングする増強された免疫刺激能力を有することを表わしている。
CTLプライミングにおけるSOCS1制限されたIL−12の決定的役割
SOCS1サイレンシング化されたDCは、病原菌産物での刺激に応答してCTL応答の活性化における主要なサイトカインであるIL−12を増強された量だけ産生すること(トリンキエリ、2003年、Nat.Rev.Immunol.第3号:133〜46頁)そしてIL−12シグナリングがSOCS1により制限されていること(アイルズら、2002年、J.Biol.Chem.第277号:43735〜40頁))から、ヒトのSOCS1サイレンシング化されたDCによりCTLをプライミングする上でのIL−12の役割を検査した。従って、T細胞とMAGE3でパルスされたトランスフェクションを受けたDCの同時培養に対して抗ヒトIL−12抗体を3日に1度添加した。図23A〜23Cは、抗IL12(p70)抗体を用いたIL−12の阻害が、四量体染色、細胞内IFN−γ染色及びELISPOT検定により実証される通り、MAGE3特異的CTLを刺激するhSOCS1−siRNADCの増強した能力を無効にしたということを示している。
ヒト化されたHLA−A2.1遺伝子導入マウスを用いて、SOCS1サイレンシング化されたDCにより誘発された増強されたCTL応答におけるIL−12の役割をさらにテストした。マウスSOCS1−siRNAを発現する組換え型レンチウイルスベクター(LV−mSOC1siRNA)又は対照のベクターLV−GFPsiRNAで、HLA−A2.1遺伝子導入マウスBM由来DCを形質導入し、A2制限MAGE3ペプチドでパルスした。TNFαでの成熟の後、一週間に一度の間隔で、HLA−A2.1遺伝子導入マウスの体内に2回足蹠から形質導入されたDCを投与した。各々のDC免疫化の後、
マウスを、LPSか又は低用量の組換え型TL−12サイトカインで、3回インビボで刺激した。LPSは多数の前炎症性サイトカインを誘発し、その多くがSOCS1により調節されていること、そしてNF−κB(p65)シグナリングの調節におけるSOCS1の直接的役割が可能であることから、LPSが使用された(リョーら、2003年、Mol.Cell、第12号:1413〜26頁)。インビボのIL−12刺激で、MAGE3でのパルスを受けたGFP−siRNA−DCで免疫化されたマウスの体内では2×105個のT細胞あたりわずか10IFNγ+スポットであるのに比べ、MAGE3パルスを受けたSOCS1−siRNA−DCで免疫化されたマウスにおいては、2×105個のT細胞あたり239のIFNγ+スポットが検出された(図24)。インビボでのLPS刺激は同様に、SOCS1−siRNA DCs(SOCS1−siRNA−DCマウス中T細胞2×105個あたりIFNγ+スポット63個対GFP−siRNA−DCマウスの体内でT細胞2×105個あたりIFNγ+スポット24個)により誘発されたCTL応答を優先的に増強した(図24)。しかしながらIL−12刺激は、SOCS1−siRNA−DCで免疫化されたマウスにおけるMAGE3特異的CTL応答を高めるために、LPS刺激よりもさらに有効であった(P<0.01)。IL−12のこのさらに優れた刺激能力は、Jak/Stat経路を通してIL−12刺激を直接的に調節するSOCS1の能力、ならびに、SOCS1−siRNA−DCで免疫化されたマウスの体内で活性化されたCTLに対するIL−12の直接的効果((トリンキエリ、2003年、Nat.Rev.Immunol.第3号:133〜46頁))に起因している確率が高い。合わせて考慮すると、これらの結果は、SOCS1が抗原提示細胞内でIL−12のシグナリングを制限することのさらなる証拠を提供する。これらの結果は同様に、サイトカインベースの腫瘍療法の効き目を判定する上でのサイトカインシグナリングの重要性をも強調している。
野生型DCによってではなく、ヒトのSOCS1サイレンシング化されたDCにより活性化されたヒトCTLは、腫瘍溶解エフェクタ機能を有する
自己腫瘍関連抗原MAGE3に特異的な活性化されたT細胞が腫瘍溶解エフェクタ機能を有するか否かを判定するため、CTL検定のための標的細胞として、天然MAGE3+ヒト腫瘍細胞を使用した。MAGE3パルスを受けたSOCS1−siRNA−DC又はmut−siRNADCによって活性化されたヒトT細胞は、MAGE3ペプチドパルスされたMAGE3+HLA−A2+黒色腫細胞(SK−Mel−37)を容易に殺した。しかしながら、MAGE3パルスを受けたmut−siRNADCは、MAGE3でパルスされていない天然SK−Mel−37細胞に対しては弱い細胞溶解活性しか示さなかった(図25)。これとは対照的に、MAGE3−パルスを受けたSOCS1−siRNA−DCによって活性化されたこれらのT細胞は、MAGE3でパルスされていない天然のSK−Mel−37細胞に対し強い細胞溶解活性をなおも有していた(図25)。hSOCS1−siRNA−DCとの同時培養中でのT細胞の腫瘍溶解活性は、抗hIL−12抗体処置により著しく低下させられた。MAGE3パルスを受けたSOCS1−siRNA−DCにより活性化されたヒトT細胞のみがHLA−A2−陰性、MAGE3+黒色腫細胞(NA−6−Mel)に対する背景細胞溶解活性を有していたことから、腫瘍細胞溶解活性はCTLにより特異的に媒介された。異なるドナーからの反復実験が、類似の結果を示した。
以上の観察事実を確認するために、MAGE3パルスされたSOCS1−siRNA−DC又はGFP−siRNA−DCで免疫化されたHLA−A2.1遺伝子導入マウス由来のT細胞の腫瘍溶解活性をテストした。図26は、MAGE3パルスされたmSOCS1−siRNA−DCで免疫化された遺伝子導入マウスに由来するT細胞が、天然のMAGE3+HLA−A2陽性黒色腫細胞SK−Mel−37に対する活発な細胞溶解活性を有していたことを示している。これとは対照的に、MAGE3でのパルスを受けたGFP−siRNA−DCで免疫化された遺伝子導入マウス由来のT細胞のみが、図25に示さ
れた結果と一致して、天然黒色腫細胞に対する弱い細胞溶解活性を有していた。さらに、低用量の組換え型IL−12でのインビボ刺激が、GFP−siRNA−DCではなくSOCS1−siRNA−DCにより誘発されたCTL応答を著しく増強することも観察された(図26)。合わせて考えると、本書中の結果は、おそらくは抗原提示細胞によるIL−12の増強された産生及びシグナリングに起因して、天然腫瘍細胞に対する活発な溶解エフェクタ機能を有するCTLを完全に活性化させる固有の能力を、ヒトのSOCS1サイレンシング化されたDCが有することを示している。
ヒトのSOCS−サイレンシング化されたDCによる自己抗原特異的ヒトCTLの完全な活性化
本開示は、ヒトDC中でのヒトSOCS1の調節の役割を実証しており、JAK/STATシグナリング経路のインヒビターをサイレンシング化することによりヒトDCの免疫刺激効能を増強する代替的戦略を提供している。本書で開示している結果は、抗原特異的CTLをプライミングするヒトDCの免疫刺激能力を負に調節する上でのヒトSOCS1の決定的な役割を実証している。ヒトのSOCS1サイレンシング化されたDCは、天然の抗原発現腫瘍細胞に対する頑強な溶解機能を有するヒトCTLを完全に活性化する固有の能力を有する。CTLをプライミングするヒトのSOCS1サイレンシング化されたDCの能力は、IL−12の産生及びシグナリングのSOCS1制限により制御される確率が高い。かくして、本開示は、より有効な腫瘍ワクチンを開発するためのこの一般的に応用可能なSOCS1シグナリングアプローチの翻訳潜在能力を実証している。
本発明のSOCS1シグナリングアプローチは、腫瘍関連抗原が負荷されたDCにより誘発された抗原特異的免疫応答を増強する能力を有する。過去10年間に、腫瘍免疫学における主要な進歩は、ヒト腫瘍特異的又は関連抗原を数多く同定し認証したということにあった((ファン・デン・アインデ(Van den Eynde)ら、1997年、Current Opinion in Immunology第9号:684〜93頁))。かくして、腫瘍関連抗原で負荷されたSOCS1サイレンシング化されたDCでのワクチン接種は、抗原特異的抗腫瘍応答を誘発するのに、CTL上でのCTLA4の遮断よりもさらに魅力的なものであると思われる。ヘテロ接合のSOCS1+/−マウスが自己免疫炎症の徴候を全く又は軽度にしか示さないことから、SOCS1サイレンシング化されたDCは重大な自己免疫炎症をひき起こさないかもしれないという点で、SOCS1サイレンシング化されたDC免疫化の使用は、付加的な治療上の利点を提供する。その上、SOCS1−/−マウスの体内にみられる重大な自己免疫炎症には、DC中のみならずT及びNKT細胞といった免疫細胞のその他の系統においてもSOCS1の完全な欠損が必要である(クボら、2003年、Nat.Immunol.第4号:1169〜76頁;アレキサンダーら、2004年、Annu.Rev.Immunol.第22号:503〜29頁;メトカーフ(Metcalf)ら、2003年、Proc.Natl.Acad.Sci.USA第100号「8436〜41頁;チョン(Chong)ら、2003年、Immunity第18号:475〜87頁;ハナダら、2003年、Immunity第19号:437〜50頁;キンジョーら、2002年、Immunity第17号:583〜91頁)。
腫瘍ワクチンの効能を増強する大規模な研究努力は、腫瘍関連抗原の親和性/用量(シグナル1)及び共同刺激分子媒介型シグナル2のレベルの改善に焦点があてられてきた(ギルボア、2004年、Nat.Rev.Cancer第4号:401〜11頁;ローゼンバーグら、2004年、Nat.Med.第10号:909〜15頁)。本開示は、抗原特異的CTLをプライミングするヒトのSOCS1サイレンシング化されたDCのより優れた能力が、IL−12の増強された産生及びシグナリングに起因する確率が高い(シグナル3)ということを示している。この結論は、以下の観察事実に基づいている。すなわち、1)ヒトのSOCS1サイレンシング化されたDCは、病原菌産物での刺激に応答
して、増強されたレベルのIL−12を産生する;2)IL−12の抗体遮断は、ヒトのSOCS1サイレンシング化されたDCの免疫刺激能力を低下させる、そして3)低用量のIL−12のインビボ投与は、野生型DCではなく、SOCS1サイレンシング化されたDCにより誘発された抗原特異的CTL応答を大幅に増強する。これらの結果は、アイルズ(Eyles)J.L、ら(アイルズら、2002年、J.Biol.Chem.第277号;43735〜40頁)によるIL−12シグナリングのマウスSOCS1調節の知見及び本書の他の箇所で開示されている結果によって裏づけされている。
サイトカインは、CTLを活性化するためDCにより提供される第3のシグナルとして提案されてきた(カートシンガーら、2003年、J.Exp.Med.第197号:1141〜51頁)。サイトカインの産生及びシグナリングは、過度の自己免疫活性化を制限する一方で外因性抗原に対する免疫応答を活性化するために綿密に調節される(ダーネル(Darnell)ら、1994年、Science第264号:1415〜21頁)。サイトカインは一般にJAKを活性化し、これは次にサイトカインレセプタの細胞質ドメインをリン酸化して、シグナリング物質及び転写活性化剤(STAT)のメンバーのドッキング部位を作り上げる(アレキサンダーら、2004年、Annu.Rev.Immunol.第22号:503〜29頁)。サイトカインは同様に、フィードバックインヒビターとしてSOCS1の発現をアップレギュレートし、このことが次にDCによる前炎症性サイトカインの産生及びシグナリングをオフ切換えし、かくして進行中の免疫応答を減衰させ自己寛容を維持する(アレキサンダーら、2004年、Annu.Rev.Immunol.第22号:503〜29頁)。SOCS1は、そのSH2ドメインを介して偽基質インヒビターとしてJAK活性ループに特異的に結合すること及びユビキチン依存性タンパク質分解のためのJAK2をターゲティングすることにより、STATを抑制する(クボら、2003年、Nat.Immunol.第4号:1169〜76頁; アレキサンダーら、2004年、Annu.Rev.Immunol.第22号:503〜29頁)。合わせて考えると、本書で開示されている結果は、CTL応答の規模を決定する上で抗原提示細胞内のSOCS1により制限されるIL−12の産生及びシグナリングの決定的重要性を表わしている。
本研究の1つの有意な知見は、ヒトのSOCS1サイレンシング化されたDCが活発な溶解エフェクタ機能で自己反応性T細胞を完全に活性化させる固有の能力を有するということにある。臨床及び実験室研究において、四量体染色及びELISPOT検定などのさまざまな免疫検定によって決定されるように、自己抗原特異的T細胞がDCワクチン接種又はインビトロ感作によって活性化され得るということが、頻繁に観察されてきた。しかしながら、このような活性化されたT細胞は、自己抗原を発現するように遺伝子修飾された人工的な抗原パルスを受けた腫瘍細胞を有効に殺すことができるものの、通常、天然腫瘍細胞に対する弱い細胞溶解活性を示し、これが現行の腫瘍ワクチンの効き目の低さの主たる理由である(ザックス(Zaks)ら、1998年、Cancer Research第58号:4902〜8頁;ユー(Yu)ら、2002年、J.Clin.Invest.第110号:289〜94頁)。本書で開示されている結果は、SOCS1サイレンシング化されたDCにより提供される持続的かつ増強された抗原提示/刺激が、自己反応性の低親和性T細胞を完全に活性化するため及び天然の腫瘍細胞に対する活発な溶解エフェクタ機能をそれらに与えるために必要とされ得るということを示唆している。
実施例12:SOCS1 siRNAオリゴ2重鎖がタンパク質免疫化を増強する
SOCS1 siRNAオリゴ2重鎖でのインビボ免疫化がタンパク質免疫化を増強できるか否かをテストするために、1)BCGを伴うOVAタンパク質での免疫化により誘発されるCTL応答を、2)BCGを伴うOVAタンパク質及びSOCS1−siRNAオリゴ2重鎖リポソームでの同時免疫化、と比較した。マウスのグループを、一週間間隔で2回足蹠を介して、OVAタンパク質とBCGの混合物、SOCS1−siRNAオリ
ゴ2重鎖−リポソーム及びOVAタンパク質とBCGの混合物で免疫化させるか又は、OVAタンパク質とBCG及びSOCS1 siRNAオリゴ2重鎖−リポソームの混合物を同時注入した。2回目の免疫化から2週間後に、細胞内サイトカイン染色及びELISPOT検定(IFNγ)から、SOCS1 siRNAオリゴ2重鎖で同時免疫化されたマウスの中により強力なOVA特異的CTL応答が誘発されることがわかる、ということが観察された(図27A及び図27B)。
実施例13:SOCS1サイレンシング化されたCTLは増強された細胞溶解活性を有する
T細胞内のSOCS1がCTL活性を調節する上で1つの役割を果たすか否かを調査するために、OT−I遺伝子導入マウスから単離されたOVAエピトープに特異的な遺伝子導入TCRを有するCD8+OT−I細胞(ジャクソン・ラボラトリー、メーン州バーハーバー)を、ジーンポーターを用いてSOCS1又は突然変異体siRNAオリゴでトランスフェクトした。トランスフェクションを受けたOT−I細胞を、さらなる刺激無しでCTL検定のために使用した。SOCS1−siRNAオリゴのトランスフェクションを受けたOT−Iは、突然変異体siRNA−オリゴでのトランスフェクションを受けたOT−I細胞と比較して同系のOVA陽性EG7細胞に対する増強した細胞溶解活性を有することが観察された(図29)。この結果は、T細胞中のSOCS1シグナリングがそれらの細胞溶解活性を増強することを示している。
実施例14:A20を変調させることによる免疫細胞の免疫能力の増強
A20は、多数の細胞型によって発現されるジンクフィンガータンパク質である。A20は、TLR4リガンド及びTNFによって急速に誘発される。A20は、NF−κBシグナリングに決定的に関与するシグナリングタンパク質のユビキチン化と脱ユビキチン化の調節において2重の機能を有している。A20は、タンパク質中に見出される脱ユビキチン化酵素ドメインを通して脱ユビキチン化に参加する。このドメインは、TNFレセプタ複合体の重要な構成要素であるレセプタ相互作用性タンパク質(RIP)からK63連結型ユビキチン鎖を除去することができる。A20によるRIP上でのK63連結型ユビキチン鎖の除去は、RIP分解を導く。その上、A20のカルボキシル末端にあるジンクフィンガーは、プロテアソーム分解のためにRIPとK48連結型ユビキチン鎖を接合させることによってユビキチンリガーゼとして役立つ。従って、RIPからのK63ユビキチン鎖の除去及びA20によるK48連結型ユビキチン鎖の付加が、RIPの分解に導く。
さらに、A20は同様に、TRAF6中でK63連結型ユビキチン鎖を脱ユビキチン化し、これがTRAF6の分解という結果をもたらす。TRAF6がTLRファミリーの全メンバーによって共有されている共通のシグナル構成要素であるという事実を考えると、A20は、MyD88依存性及びMyD88非依存性TLRシグナリング経路の両方を抑制することができる固有の負の免疫調節因子である。
以下の実験及び結果の組合せが、免疫細胞中でA20を変調させることで細胞の免疫能力がもたらされることを実証している。
ジーンポーターを用いたA20siRNAオリゴでのマウスBM−DCのA20mRNAダウンレギュレーション
DCによる抗原提示のA20調節を調査するため、A20を特定的にダウンレギュレートする小さな干渉性RNA(siRNA)を最初に以下に記述する通りに同定した。
合成siRNAオリゴ2重鎖を、約83%のトランスフェクション効率でジーンポーターを用い、顆粒球・マクロファージ・コロニー刺激因子(GM−CSF)及びIL−4の
存在下で、エクスビボでマウス骨髄細胞由来のDC内にトランスフェクトした。簡単に言うと、ジーンポーターを用い、メーカーのプロトコルに従って、21塩基対siRNAオリゴヌクレオチドで骨髄DCをトラスフェクトした。3μlの20μMオリゴヌクレオチドを3μlのジーンポーター試薬及び94μlの無血清RPMI1640に添加し、30分間25℃でインキュベートし、その後100μlのジーンポーター/オリゴヌクレオチド混合物を骨髄−DCの各ウェルに添加して、37°Cで4時間インキュベートした。インキュベーション後、20%FBSで補足された1ウェルあたり500μlのRPMI1640を骨髄DCに添加した。本開示に基づき、合成siRNAオリゴは、生理学的に許容可能な担体という状況下で細胞に対して送達することが可能である。許容可能な担体の一例としては、リポソームがある。
図31は、A20がA20−siRNAオリゴで形質導入を受けた骨髄−DC中でダウンレギュレートされたことを実証している。定量的RT−PCR検定により判定された通り、20siRNA−2オリゴでのトランスフェクションを受けた全DC集団中のA20mRNAレベルは、A20をダウンレギュレートすることができないA20siRNA突然変異体でのトランスフェクションを受けた骨髄−DC中のレベルと比較しておよそ70%だけ減少した。マウスA20siRNA配列は、5’−CAAAGCACUUAUUGACAGA−3’;配列番号58であった。
マウスA20siRNAオリゴDCによって誘発された、増強された抗原特異的T細胞応答
抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球(CTL)及びCD4+TヘルパーのDC刺激がA20によって調節されたか否かをテストするために一連の実験を実施した。A20siRNAオリゴ2重鎖でのトランスフェクションを受けたDCが、抗原特異的T細胞応答を誘発する増強された効能を有する否かをテストするために、A20siRNA−2オリゴ2重鎖又は対照オリゴ2重鎖でDCをトランスフェクトした。次に、マウスのグループを、OVAでパルスされたトランスフェクトを受けたDCで免疫化した。パルスを受けたDCを用いたマウスの免疫化の後、インビボで3回PolyI:C(50μg/マウス)を伴って又は伴わずにマウスを刺激した。DC免疫化から2週間後に、免疫化されたマウス体内の免疫応答を検査した。四量体染色及びIFNγELISPOT検定は、インビボPolyI:C刺激を伴って又は伴わずにA20siRNAオリゴ−DCで免疫化されたマウスの体内で増強されたOVA特異的CD8+及びCD4+T細胞応答を示した(図32〜34を参照)。これと一致して、IFNγELISPOT検定は、インビボPolyI:C刺激を伴って又は伴わずにA20siRNAオリゴ−DCで免疫化されたマウスの体内で増強されたTRP2−特異的CD8+T細胞応答を示した(図35)。
マウスA20siRNAオリゴDCにより誘発された増強された抗腫瘍応答
抗腫瘍免疫を誘発するその能力に関してDC中においてA20を阻害することの影響をテストするために、DCをA20siRNA−2オリゴ2重鎖又は対照オリゴ2重鎖でトランスフェクトした。マウスのグループを、OVA抗原でパルスされたトランスフェクトを受けたDCで免疫化した。パルスを受けたDCを用いたマウスの免疫化の後、インビボで3回CpG(50μg/マウス)を伴って又は伴わずにマウスを刺激した。DC免疫化から2週間後に、免疫化されたマウスにOVA+EG7腫瘍で抗原投与した。インビボ刺激を伴って又は伴わずに免疫化されたマウスの体内で、増強された抗腫瘍活性が観察された(図36及び37)。siA20オリゴ−トランスフェクトしたDCを受けた免疫化が、インビボで事前準備されたEG.7腫瘍を根絶する観察された。
マウスA20siRNAオリゴDCによって誘発された増強された抗体応答
A20siRNAオリゴ2重鎖トランスフェクションを受けたDCが、抗原特異的抗体応答を誘発する増強された効能を有するか否かをテストするために以下の実験を設計した
。簡単に言うと、DCをA20siRNA−2オリゴ2重鎖又は対照オリゴ2重鎖を用いてトランスフェクトした。次にマウスのグループを、OVAでパルスされたトランスフェクションを受けたDCで免疫化した。パルスを受けたDCを用いたマウスの免疫化の後、マウスを、インビボで3回PolyI:C(50μg/マウス)で刺激した。DC免疫化から2週間後に、免疫化されたマウスの体内の抗体応答を検査した。ELISA検定は、A20siRNAオリゴ−DCで免疫化したマウスの体内の増強されたOVA特異的抗体応答を示した(図38)。さらに、SUMO1siRNAオリゴ−DC及びFoxj1 siRNAオリゴ−DCも同様に、免疫化されたマウスの体内でOVA−特異的抗体応答を誘発する増強された効能を示した(図38)。
ウイルスベクターでの形質導入を受けたマウスBM−DCの増強された免疫刺激効能
A20がインビボでのDC抗原提示を負に調節するか否かを評価するために以下の実験を設計した。簡単に言うと、A20siRNA又は対照緑色蛍光タンパク質(GFP)siRNAをレンチウイルスベクター(LV)中にクローニングした。レンチウイルスベクターは、DCを安定した形で形質導入する能力をもち(ルビンソン(Rubinson)ら、2003年、Nat.Genet.第33号:401〜406頁;スクロアースら、2004年、Methods Mol.Biol.第246号:451〜459頁)、そのためA20サイレンシング化の効果をより高い信頼性で評価し得ると考えられることから選択された。本書中の他の個所で記述されている方法に従い、共に黄色蛍光タンパク質(YFP)マーカーを含むLV−A20−siRNA及びLV−GFP−siRNAという2つの構成体が生成された(図33)。LV−A20−siRNA又はLV−GFP−siRNAベクターのいずれかを用いた骨髄由来のDCの形質導入(>80%CD11c+)は、YFPについて陽性である約58〜63%の培養細胞を日常的に生成した。LV−GFP−siRNA−DCの場合と比較してLV−A20−siRNA−DCの刺激時点で、形質導入を受けた全DC集団中のより低いレベルのA20mRNA及び増強された前炎症性サイトカインの分泌が観察された。
次の実験セットは、LV−A20−siRNA−DCが増強された免疫応答誘発能力を有するか否かをテストするように設計された。マウスのグループを、OVA又はTRP2でパルスを受けたLV−A20−siRNA−DCで免疫化した。パルスを受けたDCを用いたマウスの免疫化の後に、インビボ刺激の不在下でマウスを刺激した。DC免疫化から2週間後に、免疫化されたマウス体内の免疫応答を検査した。細胞内IFNγ染色は、LV−A20−siRNA−DCで免疫化されたマウスにおいて、増強されたTRP2特異的CD8+T細胞又はOVA特異的CD4+T細胞応答を示した(図39及び40)。
抗腫瘍応答を誘発するLV−A20−siRNA−DCの能力をテストするために、C57BL/6マウスにB16−OVA腫瘍細胞を接種した。3日後、マウスを、LPSでエクスビボ刺激されたOVA−パルスを受けた成熟LV−A20−siRNA−DC又はLV−GFP−siRNA−DCで1回処置した。LV−A20−siRNA−DCが事前準備されたB16−OVA腫瘍の成長を効果的に遮断することが観察された(図41及び42)。LV−Foxj1−siRNA−DCが抗腫瘍応答の誘発において効果的であることも同様に観察された。
LV−A20−siRNA DCにより誘発される、増強されたHIV特異的T細胞応答
A20siRNAオリゴ2重鎖トランスフェクションを受けたDCが、HIVに対する免疫応答を誘発する増強された効能を有するか否かをテストするために以下の実験を設計した。簡単に言うと、DCを、LV−A20siRNA−2又は対照でトランスフェクトした。次にマウスのグループを、HIVgp120でパルスを受けた形質導入されたDCで免疫化した。パルスを受けたDCを用いてマウスを免疫化した後、マウスを、インビボで3回PolyI:C(50μg/マウス)で刺激した。DC免疫化から2週間後に、免
疫化されたマウス体内の免疫応答を検査した。細胞内IFNγ染色は、A20siRNAオリゴ−DCで免疫化したマウスにおいて、増強されたHIVgp120−特異的CD8+T細胞応答を示した(図43)。
実施例15:Foxj1−サイレンシング化されたDCの増強された免疫刺激効能
何らかの特定の理論に束縛されることは望まないが、IκB発現の誘発は、DCの免疫刺激効能を調節すると考えられている。IκBの発現は動的制御下にあり、IκBは活性化シグナルが無くても定常代謝回転を受け、新しいIκB分子の合成を通して恒常的に補充されて、NF−κBが活性化されないようにしている。Foxo3a及びFoxj1は、IκB転写の活性化因子として近年同定されたフォークヘッド転写因子ファミリーのメンバーである。Foxj1及びFoxo3aは、NF−κBの負の調節に積極的に寄与する。foxj1遺伝子のノックアウトは、子宮内早期死亡に導く。RAG-/-バックグラウンド中にfoxj1-/-リンパ系を伴うキメラ動物は、多臓器全身性炎症、TH1サイトカイン産生の上昇及びT細胞過剰増殖を示すことが分かった。これはNF−κBシグナリング経路の調節異常が原因であると考えられている。
IκBの1つの主要なイソ型であるIκBβは、foxj1欠損T細胞中には不在であり、このことが、休止状態のfoxj1−/−T細胞中のNF−κBの過剰活性化及びTCR刺激に対するこれらの細胞の過敏性を説明している。Foxo3a−欠損T細胞は、foxj1−/−T細胞中の場合のようなIκBβ、そしてIκBεという2つのIκBイソ型の発現の欠落のためにNF−κB活性の高い基底レベルを有し、このことはFoxo3aが、Foxj1と同様に、休止状態のT細胞中におけるIκBの産生に求められることを示している。Foxo3a欠損T細胞は、TCRシグナリング後に過剰増殖とTH1サイトカイン及びTH2サイトカインの両方の実質的上昇を示した。Foxj1及びFoxo3aは、重複するものの、完全に冗長ではない機能を有するように思われる。IκBαの存在は、foxj1−/−及びfoxo3a−/−マウスの両方におけるNF−κBアップレギュレーションに対して観測可能な影響は及ぼさず、このことはNF−κB活性の基底レベル制御において3つのIκBタンパク質中に機能的冗長性が欠落していることを示している。
抗原提示の調節におけるFoxj1の役割を検査するために以下の実験セットを設計した。図44は、Foxj1が、Foxj1siRNAオリゴ(5’−AGAUCACUCUGUCGGCCAU−3’;配列番号60)でトランスフェクトされた細胞中でダウンレギュレートされたことを実証している。簡単に言うと、ジーンポーターを用いて10:1の比で、Foxj1 siRNAオリゴとFLAG−タグ付きmFoxj1発現ベクターで、293T細胞を同時トランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後に、細胞を処理し、対応する細胞溶解物をウェスタンブロット法に付した。ウェスタンブロット法は、ベータアクチンバンドの強度に正規化されたFoxj1バンドの強度を示している。(後続の研究ではFoxj1−siRNAと呼称されている)Foxj1−siRNA2オリゴでのトランスフェクションを受けたDCが、例えばIL−6のような、前炎症性サイトカインの分泌の増強が示す通り、siRNA突然変異体でのトランスフェクトを受けたDCと比較して、IL−6LPSに対する応答性がより高いことが観察された(図45)。
Foxj1−siRNAオリゴがIL−6の分泌の増強において効果的であったという事実に基づき、形質導入を受けたDCの免疫刺激効能を増強させるLV−Foxj1−siRNAの能力を査定するために組換え型LV−Foxj1−siRNAを生成した。LV−Foxj1−siRNA又はLV−GFP−siRNAベクターのいずれかを用いたDC形質導入(CD11c+80%超)は、YFPについて陽性である60%の培養細胞を日常的に生成した。形質導入を受けたDCを、LV−A20−siRNA−DCが増強
された免疫応答誘発能力を有するか否かをテストするために用いた。
次にマウスのグループを、例えばTRP2又はHIVgp120といった所望の抗原でのパルスを受けたLV−Foxj1−siRNA−DCで免疫化した。パルスを受けたDCを用いたマウスの免疫化の後、マウスをインビボ刺激無しで刺激した。DC免疫化から2週間後に、免疫化されたマウス体内の免疫応答を検査した。細胞内IFNγ染色は、LV−Foxj1−siRNA−DCで免疫化したマウスの体内で増強されたTRP2特異的CD8+T細胞応答を示した(図46)。さらに、細胞内IFNγ染色は、LV−Foxj1−siRNA−DCで免疫化したマウスで、増強されたHIVgp120特異的CD8+及びCD4+T細胞応答を示した(図47)。
実施例16:Twist2−サイレンシング化されたDCの増強された免疫刺激効能
何らかの特定の理論に束縛されることは望まないが、NF−κB標的遺伝子発現の阻害は、DC免疫刺激効能をもたらすと考えられている。Twistは、NF−κBシグナリングの負の免疫調節因子である。哺乳動物中にはTwist−1とTwist−2の2つのtwistタンパク質が存在し、広範囲の生後組織中において低レベルで発現される。twist−2遺伝子の欠損は、結果としての悪液質及び成長障害を伴う多組織中の増強された前炎症性サイトカイン遺伝子発現という結果をもたらす。この表現型は、twist−1及びtwist−2複合ヘテロ接合体中で反復され、サイトカイン発現の阻害におけるこれらの遺伝子の冗長性及び投薬量依存性を反映している。twist−2ノックアウトマウスの表現型は、Twistが通常はNF−κBのp65と結びつきサイトカインプロモータを抑制する負のフィードバックループの喪失を反映しているように思われる。Twistは、サイトカインプロモータ中のEボックスに結合し、隣接するNF−κB部位に結合したNF−κBの活性を阻害する。Twistは、p65とのタンパク質−タンパク質コンタクトを通して、DNA結合とは独立して標的プロモータのNF−κB−媒介型活性化も同様に阻害することができる。
抗原提示の調節におけるTwist2の役割を検査するために以下の実験セットを設計した。図48は、Twist2が、Twist2siRNAオリゴでトランスフェクトされた細胞中においてダウンレギュレートされることを実証している。簡単に言うと、ジーンポーターを用いて10:1の比で、Twist2siRNAオリゴ及びFLAG−タグ付きTwist2発現ベクターで293T細胞を同時にトランスフェクトした。トランスフェクションから48時間後に、細胞を処理し、対応する細胞溶解物をウェスタンブロットに付した。ベータアクチンバンドの強度にTwist2バンドの強度を正規化し、相対的強度(比)を示す(図48)。Twist発現は、Twist−2siRNAオリゴ(5’−GCGACGAGAUGGACAAUAA−3’;配列番号61及び5’−CAAGAAAUCGAGCGAAGAU−3’;配列番号62)によってダウンレギュレートされた。
Twist2siRNAオリゴ2重鎖でのトランスフェクションを受けたDCが、抗原特異的T細胞応答を誘発する増強された効能を有するか否かをテストするために、Twist2siRNA−2オリゴ2重鎖又は対照オリゴ2重鎖をDCにトランスフェクトした。次にマウスのグループを、OVAでのパルスを受けたトランスフェクトされたDCで免疫化した。パルスを受けたDCを用いたマウスの免疫化の後に、インビボで3回PolyI:C(50μg/マウス)を用いてマウスを刺激した。DC免疫化から2週間後に、免疫化されたマウス体内の免疫応答を検査した。四量体染色及びIFNγELISPOT検定は、インビボPolyI:C刺激を伴うTwist2siRNAオリゴ−DCでの免疫化を受けたマウスの体内で、増強されたOVA−特異的CD8+T細胞応答を示した(図49及び50)。
実施例17:SUMO1サイレンシング化されたDCの増強された免疫刺激効能
SUMOタンパク質は、その輸送、位置づけ及び安定性(別途SUMO化(SUMOylation)としても知られている)を改変することによってその結合パートナーを負に調節する。SUMOは、脊椎動物種中においてSUMO1、SUMO2、SUMO3及びSUMO4という4つのメンバーを有している。SUMO1は、ユビキチンリガーゼによってK48−連結型ユビキチン鎖と接合させることのできる部位であるK21上でIκBαをSUMO化することによってNF−κBシグナリングを負に調節する。SUMOによるIκBαの修飾は、IκBαをユビキチン媒介型分解から保護し、かつその結果としてNF−κBの活性化を阻害する。さらに、保存されたメチオニン(Met55)が内部でバリン残基(M55V)によって置換されているSUMO4の機能的変異体が、NF−κB活性化に対するSUMO4の阻害効果を低減させかつI型糖尿病に関連することが発見された。
抗原提示の調節におけるSUMO1の役割を検査するために以下の実験セットを設計した。SUMO1siRNAオリゴ2重鎖でのトランスフェクションを受けたCが、抗原特異的T細胞応答を誘発する増強された効能を有するか否かをテストするために、DCを所望のSUMO1siRNAオリゴ2重鎖(5’−GAUGUGAUUGAAGUUUAUC−3’;配列番号59)でトランスフェクトした。次にマウスのグループを、OVAでのパルスを受けたトランスフェクトされたDCで免疫化した。パルスを受けたDCでのマウスの免疫化の後に、インビボで3回LPS(30μg/マウス)によりマウスを刺激した。DC免疫化から2週間後に、免疫化されたマウス体内の免疫応答を検査した。IFNγELISPOT検定は、インビボPolyI:C刺激を伴うSUMO1siRNAオリゴ(2及び3)−DCでの免疫化を受けたマウスの体内で、増強されたOVA特異的CD8+T細胞応答を示した(図51)。さらに、100ng/mlLPSでの刺激の時点でSUMO1siRNAオリゴ(3)でのトランスフェクションを受けたDC中に観測可能なIKβαのリン酸化反応の増大が存在した(図52)。
実施例18:分子安定性の調節に関連する遺伝子の阻害
様々な負の免疫調節因子によって頻繁に利用される戦略は、ユビキチン化/脱ユビキチン化によって主要なシグナリング分子の安定性を調節すること及びSUMO化及びその他の機序によってシグナリング分子複合体の阻害構成要素の安定性を増大させることである。これらの負の免疫調節因子の多くのもの、例えばTRIAD3A、Cyld、SUMO、Clb及びA20などは、標的Toll様レセプタ(TLR)及びシグナリング分子を修飾し、かつそれらの分解を促進してTLR及び腫瘍壊死因子レセプタ(TNFR)シグナル伝達を減衰させるユビキチン修飾酵素である。
TRIAD3Aは、TRIAD3ファミリーのRINGフィンガーE3ユビキチンリガーゼである。TRIAD3Aは、TLR4とTLR9の細胞質ドメインを結合させかつユビキチル化することができ、これがそれらの分解という結果をもたらす。TRIAD3Aの過剰発現は、LPS及びCpGDNAに応答した、TLR4及びTLR9媒介型のNF−κBの活性化を低減させる。従って、本開示に基づくと、本書中に開示されている方法を用いたTRIAD3A発現レベルのダウンレギュレーションは、TLR発現の増強及びインビトロでのLPS及びCpGに対する応答の増大を導き得る。従って、本発明は、TRIAD3Aを阻害することよって免疫細胞の免疫能力を増強させることを含む。
タンパク質の安定性調節に関与するもう一つの遺伝子はCYLDである。CYLDは、956個のアミノ酸でタンパク質をコードする腫瘍サプレッサ遺伝子である。早期終結又はフレームシフト改変を含むCYLD遺伝子の突然変異は、多数の良性皮膚付属器腫瘍に付随する疾病である円柱腫症中で発見された。NF−κBシグナリングカスケード中において、TRAF2及びIKKγは、リジン63(K63)連結型ポリユビキチン鎖と接合
される。プロテアソーム分解のためのK48ポリユビキチン鎖によるタンパク質の通常のユビキチン化とは異なり、TRAF2、IKKγ及び場合によってはTRAF6のK63ユビキチン化は、IKK複合体の組立て及び活性化のために必要である。CYLDは、TRAF2及びIKKγ上で、K63ポリユビキチン鎖を脱ユビキチン化する能力をもち、IKK複合体の分解及びNF−κB活性化の阻害という結果をもたらす。突然変異CYLDの脱ユビキチン化活性の喪失は、NF−κBの持続的活性化と相関している。従って、本書中に開示されている方法を用いた免疫細胞中でのCYLDの阻害は、細胞の免疫能力を増強する。
分子の安定性に関与するもう一つの遺伝子は、Cbl(Casitas Bリンパ腫に相当)である。Cblタンパク質ファミリーは3つのメンバー、すなわちCbl、Cbl−b及びCbl−cを有している。Cblタンパク質ファミリーのシグネチュアモチーフは、チロシンキナーゼ結合(TKB)ドメイン及びユビキチン接合酵素(E2)と相互作用するRINGフィンガードメインという、2つの高度に保存されたN−末端ドメインである。これら2つのドメインは、合わさって、活性化されたチロシンキナーゼに向けられたユビキチンリガーゼであるCblタンパク質の基本的機能ユニットを画定している。本書中に提示されている開示に基づくと、Cblを阻害することは、活性化されたチロシンキナーゼ、好ましくは免疫応答の増強に関連するチロシンキナーゼが分解されるのを予防するのに役立つ。従って、本書中に開示されている方法を用いて免疫細胞中のCblを阻害することによって、細胞の免疫能力は増強される。
アレスチンファミリーは、分子安定性の調節に関連するタンパク質のもう一つのファミリーである。アレスチンファミリーは、4つのメンバー、すなわちβ−アレスチン1、β−アレスチン2、x−アレスチン及びs−アレスチンを含む。β−アレスチン1及びβ−アレスチン2の1つの機能は、β2−アドレナリン作動性レセプタにより媒介されるセカンドメッセンジャーシグナリングを脱感作することにある。β−アレスチン1及びβ−アレスチン2のもう一つの機能は、IκBαリン酸化反応/分解に対する対策に由来する、NF−κBのシグナル誘発型活性化を消滅させることにあると考えられている。β−アレスチンは、IκBαのカルボキシ末端と結合し、IKKはIκBαのPESTドメインにアクセスできないことになり、PESTドメインのリン酸化反応がIκBα分解を促進することから、IκBαタンパク質の安定化が導かれる。従って、本書中に開示されている方法を用いて免疫細胞中でアレスチンファミリーのメンバーを阻害することによって、細胞の免疫能力は増強される。
TOLLIP(Toll相互作用性タンパク質)は、IRAK1のユビキチン化及び後続するその分解を容易にする。TOLLIPはIRAK1と相互作用し、IRAK1の自己リン酸化反応のレベルは、TOLLIPの存在下で減少する。TOLLIPの過剰発現は、TLR2及びTLR4媒介型NF−κB活性化の阻害という結果をもたらす。本書中に提示されている本開示に基づくと、本書中に開示されている方法を用いて免疫細胞中のTOOLIPを阻害することで、細胞の免疫能力は増強される。
実施例19:その非機能的相同体によるシグナリング分子の阻害
Toll様レセプタ(TLR)及び腫瘍壊死因子レセプタ(TNFR)のシグナリングを調節するためのもう一つの戦略は、刺激活性を全く有していない非機能的相同体又はイソ型によって主要シグナリング分子を競合的に阻害することにある。RP105、ST2、SIGIRR、IRAK−2、IRAK−M、sMyD88及びsTLRといった負の免疫調節因子がこの戦略を例示している。
可溶性デコイTLR(sTLR)は、TLRと病原菌産物の相互作用を抑制する。可溶性TLR2は、病原菌リガンドとの相互作用についてTLR2と競合することができる。
可溶性TLR4はMD2と相互作用し、MD2−TLR4複合体の形成を阻害することができ、かくしてTLR4によるLPS媒介型シグナリングを遮断する。
何らかの特定の理論に束縛されることは望まないが、本書中に開示されている方法を用いて免疫細胞中で、RP105、ST2、SIGIRR、IRAK−2、IRAK−M、sMyD88及びsTLRといった負の免疫調節因子を阻害することにより、細胞の免疫能力が増強されると考えられている。
非機能的TIR相同体
免疫細胞の免疫刺激効能を増強するためのもう一つの戦略は、SIGIRR、ST2及びRP105といった、TIRドメインを含有しかつ刺激活性を有していない膜結合非機能的TIR相同体と結びつけられたタンパク質を阻害することにある。これらのタンパク質は、TLRシグナリングを抑制することができる。RP105はTLR4の相同体であり、APC上で発現される。RP105はMD−1と複合体を形成し、これがTLR4−MD−2と直接相互作用し、LPSに対するTLR4−MD−2複合体の結合を阻害する。RP105は、一次樹状細胞におけるTLR4シグナリング及びインビボでの内毒素に対する応答の生理学的調節因子である。
SIGIRR欠損マウスは、LPSにより誘発される内毒素ショックに対して非常に感受性が高いことが分かった。SIGIRRは、シグナリング分子と相互作用するべくTLR4と競合することによってTLR4シグナリングを減衰させる。同様にして、ST2欠損マウスは、LPSに応答した炎症性サイトカインの産生の増大とLPS寛容の誘発不良を示した。ST2がMyD88及びTIRAPと会合しこれらを封鎖したことから、ST2の過剰発現は、NF−κBの活性化を阻害すると考えられている。
シグナリング分子イソ型
MyD88及びIRAKといった主要シグナリング分子のいくつかの非機能的イソ型は、TLRシグナリングを抑制することが分かっている。中間ドメインが欠如しているMyD88の代替的にスプライシングされた短い変異体であるMyD88sは、LPSで刺激された場合に単球内で誘発される。MyD88sは、IRAK4に対しての結合しIRAK1のリン酸化反応を促進することができないことから、LPS誘発型NF−κB活性化を阻害する。
IRAK−Mはキナーゼ活性が欠如し、APCs中においてTLRシグナリングの包括的な負の免疫調節因子として機能する。キナーゼのIRAKファミリーは、IRAK1、IRAK2、IRAK4及びIRAKMという4つのメンバーを含んでなる。偏在的に発現されるその他のIRAKと異なり、非刺激性IRAK−Mの発現は、単球及びマクロファージに制限され、かつTLRリガンドでの刺激の後に誘発可能な形で発現される。IRAK−M−欠損マウスは、TLRリガンドに応答した炎症性サイトカイン産生の増大及びLPS寛容誘発の欠損を示した。IRAK−Mは、IRAK1及びIRAK4のリン酸化反応を阻害すること、又はTLR−MyD88−IRAK4複合体を安定化させることのいずれかによって、IRAK1−IRAK4複合体のMyD88からの解離を予防し、かくしてIRAK1−TRAF6複合体の形成を予防する。
IRAK2は、マウスの体内で、IRAK2a、IRAK2b、IRAK2c及びIRAK2dという4つのスプライス変異体を有する。IRAK2c及びIRAK2dには、全長IRAK2中及びIRAK2a及びIRAK2bイソ型中に見出される死ドメインが欠如し、かつLPS刺激の後にマクロファージ中において誘発可能な形で発現される。IRAK2c及びIRAK2dの過剰発現が、LPSで誘発されたNF−κBの活性化を、用量非依存的に阻害し、これにはシグナリングに対する負のフィードバック効果が関与す
ることが示された。
転写因子のIFN調節因子(IRF)ファミリーの2つのメンバーであるIRF−5及びIRF−7は、MyD88と相互作用し、それぞれ前炎症性サイトカイン及びI型IFNsを誘発させる。しかしながら、IRF−4は同様にMyD88とも相互作用し、TLRシグナリングの負の免疫調節因子として作用する。IRF−4mRNAはTLR活性化によって誘発され、IRF−4はMyD88相互作用のためにIRF−5と競合する。前炎症性サイトカインのTLR依存性誘発は、Irf4遺伝子欠損マウス由来の腹腔マクロファージ中において顕著に増強され、一方、誘発はマクロファージ細胞系統中IRF−4の異所性発現によって阻害される。インビボでのTLRシグナリングにおけるIRF−4の機能の決定的な機能は、Irf4−欠損マウスが、高い血清前炎症性サイトカインレベルを伴って、DNA誘発性のショックに対して過敏性を示すという観察事実によって強調されている。
FLN29は、TRAF6関連ジンクフィンガーモチーフ及びTANK(TRAFファミリーのメンバー関連NFカッパB活性化因子)関連配列を含有する新規のインターフェロン及びLPS誘発性遺伝子である。マクロファージ様RAW細胞中でのFLN29の発現は、TLR媒介型NF−カッパB及びMAPキナーゼ活性化の抑制という結果をもたらし、一方小分子干渉性RNAによるFLN29の発現の低減は、LPSシグナリングのダウンレギュレーションを部分的に無効にした。さらにTRAF6及びTAB2によって誘発されたNF−カッパB活性化は、FLN29の同時発現によって損なわれたことが実証されており、このことは、FLN29がTRAF6の下流側で調節し得ることを表している。FLN29はTLRシグナリングの負のフィードバック調節因子であると考えられている。
シグナリング分子複合体の負の構成要素
NF−κBタンパク質は、IκBα、IκBβ及びIκBεを含むIκBタンパク質とのその会合の結果として不活性形態で細胞質中に封鎖されている。IκBタンパク質は、NF−κBサブユニット上の核局在化配列(NLS)をマスキングすることによって、又は核及び細胞質の間の核内輸送プロセスよりも核外輸送プロセスの方をより効果的に促進することによって、細胞質中にNF−κBを保持している。IκBαは、過渡的NF−κB活性化を調節し、IκBβは、持続的なNF−κB活性化を維持する。IκBαは、刺激物に応答して急速に分解され、かつそのプロモータ中にNF−κB応答要素が存在するために急速に再合成される。これとは対照的に、IκBβはIκBαに比べて刺激物誘発型分解に対する反応性が低い。遺伝学研究は、NF−κB活性化を制御する上でのIκBα、IκBβ及びIκBεの全く異なる機能及び冗長性のある機能の両方を示した。IκBαの欠損は、造血組織内における高いNF−κB活性という結果をもたらす。
NF−κBの活性化における決定的な事象は、IKK複合体により媒介されるIκBsのリン酸化反応である。IKK複合体は、TLRリガンド及びTNFを含む様々な刺激物によるNF−κB活性化の合流点である。IκBキナーゼ(IKK)複合体は、2つの触媒サブユニットIKKα及びIKKβを含有し、NF−κB転写因子の活性化を制御する。IKKβは、前炎症性サイトカイン及び病原菌産物に応答してNF−κB活性化を媒介する。
IKKαは、NF−κB活性化の制御において負の免疫調節の役割に関与することが実証された。IKKαは、NF−κBサブユニットRelA及びc−Relの分解並びに前炎症性遺伝子プロモータからのRelA及びc−Relの除去の両方を加速することによって、NF−κB活性の抑制に寄与する。マウスの体内でのIKKαの不活性化は、炎症及び細菌クリアランスを増強する(Lawrenceら、2005年Nature第43
4号:1138頁)。
何らかの特定の理論によって拘束されることは望まないが、本書中で論述されている何らかの遺伝子又はそれらの組合せを阻害することは、インヒビターを阻害する方法として役立つ。本開示に基づくと、免疫者の体内で負の免疫調節因子を阻害することによって細胞の免疫能力を増強することができる。
実施例20:シグナリング分子リン酸化反応の調節
MAPK経路は、MAPKホスファターゼ(MKPs)によるフィードバック阻害を受ける。MKPsは、MAPK経路の活性化後に誘発される。MKPs、MKP5及びMKP6のうちの2つは、そのそれぞれのMAPK標的の活性を阻害することによってT細胞活性化を負に調節する。
MKP5は当初、JNK及びp38上で優先的に作用するホスファターゼとして特徴づけされた。Mkp5ノックアウト動物は、JNK活性のアップレギュレーション及びその結果としての先天免疫及び適応免疫の両方の応答の調節異常を示した。MKP6は、CD28コレセプタの細胞質テールと相互作用するタンパク質として同定された。
MKP6はCD28が一次ヒトT細胞を同時刺激した際に誘発される。MKP6の優性阻害形態のレトロウイルス駆動型異所性発現は、TCR及びCD28の同時刺激に応答してIL−2の発現を増大させる。IL−2産生の増大は同様に、MKP6ともはや相互作用することができない突然変異体CD28コレセプタを用いることによって得られた。合わせて考えれば、MKP6が、CD28同時刺激に応答したMAPK経路の負の調節に関与するということをこれらの観察が実証している。
何らかの特定の理論によって拘束されることは望まないが、ホスファターゼが免疫応答シグナル伝達経路に関与するキナーゼの阻害に関連している1細胞の中でホスファターゼを阻害することは、細胞の免疫能力を増強する1つの方法として役立つ。
実施例21:その他の調節因子機序
Dok−1及びDok−2
Dok−1及びDok−2が元来多数のタンパク質チロシンキナーゼ(PTK)の基質として同定された(シノハラ(Shinohara)ら、2005年、J Exp Med.第3号:333−339)。Dok−1及びDok−2は、PTKの下流側でRas−Erkシグナリングを負に調節するアダプタータンパク質である。LPSは、Dok−1及びDok−2のアダプター機能及びチロシンリン酸化反応を急速に誘発した。Dok−1又はDok−2が欠如したマウス由来のマクロファージのLPSによる刺激は、高いErk活性化を誘発したが、その他のMAPキナーゼ又はNF−κBを誘発せず、TNF−α及び酸化窒素の過剰産生という結果をもたらした。さらに、突然変異体マウスは、TNF−αの過剰産生とLPSに対する過敏性を示した。マクロファージ中のDok−1又はDok−2何らかの強制発現は、LPS−誘発型Erk活性化及びTNF−α産生を阻害した。従って、Dok−1及びDok−2は、TLR4シグナリングの負の免疫調節因子とみなされている。
NOD2
NOD2は、細菌産物ムラミルジペプチド(MDP)を認識することのできるヌクレオチド結合オリゴマー化ドメインファミリのメンバーである。NOD2欠損マウス由来の脾細胞は、TLR2アゴニスへの暴露に応答して高いTH1細胞応答を発生させたが、その他のTLRリガンドに応答してはこれを発生させなかった。従って、NOD2は、TLR2シグナリングの負の免疫調節因子であるとみなされる。これと一致して、クローン病を
患う患者は、NOD2遺伝子ロイシンリッチ反復領域中に突然変異を担持し、これがMDP認識障害という結果をもたらす。さらに、NOD2機能障害は、TLR2刺激での単核細胞の刺激後に前炎症性サイトカインのバイアスという結果をもたらす。
PI3K
PI3Kは、p85調節サブユニット及びp110触媒鎖で構成されるヘテロ二量体である。PI3Kは、大半の細胞よって構成的に発現され、数多くの細胞内事象中で早期シグナルとして機能する。p85欠損マウスは、増強されたTLRシグナリング及び優性なTH1細胞応答を示した。PI3K欠損マウス由来の樹状細胞によるIL−12合成は、それぞれTLR4、TLR2及びTLR9リガンドLPS、ペプチドグリカン及びCpGDNAに応答して顕著に増大した。インビボで、感受性の高いBALB/cバックグラウンドのPI3K欠損マウスは、プロトタイプのTH2媒介型寄生虫病であるリーシュマニア・メジャーによる感染に対して野生型マウスよりも耐性が高かった。これらの結果は、PI3KがTLRシグナリングの有効な負の免疫調節因子であり、それがIL−12合成の阻害という結果をもたらし、かつTH1応答の過剰発現を予防することを示している。何らかの特定の理論に束縛されることは望まないが、PI3KがTLRシグナリングを阻害する機序には、p38、JNK、ERK1/ERK2及びNF−κBの抑制が関与していると考えられている。
プロスタグランジン
cyPG15−デオキシ−D12,14−プロスタグランジンJ2(15d−PGJ2)は、天然のリガンド及びシクロペンテノンプロスタグランジンのアゴニストである。15d−PGJ2は、シクロオキシゲナーゼ代謝産物プロスタグランジンD2の脱水及び異性化から誘発される。ペルオキソーム増殖因子活性化レセプタγ(PPARγ)の活性化は、NF−κBの転写活性に拮抗する可能性がある。15d−PGJ2は、IKKβのキナーゼ活性の阻害を通してIBαのリン酸化反応並びに分解を阻害する。15d−PGJ2及びその代謝産物の特徴的な構造は、求電子反応性α,β不飽和カルボニル基を含有するシクロペンテノン環にある。15d−PGJ2のシクロペンタノン環構造によって同様に、NF−κBのDNA結合活性を損なうp50及びp65サブユニット内のシステイン残基の共有結合による修飾を説明することもできる。
TRAIL−R
TRAILに対するレセプタであるTRAIL−Rは、TIRドメインを有しておらず、TNFスーパーファミリに属している。TRAIL欠損及びTRAILR欠損マウスは、マウスサイトメガロウイルス感染のクリアランスの増強を示し、これはIL−12、IFN−β及びIFN−γのレベルの増大と相関関係を有していた。さらに、TLR2、TLR3及びTLR4リガンドによるマクロファージの刺激は、TRAILR欠損細胞中においてより高レベルのTRAILアップレギュレーションと増強されたサイトカイン産生という結果をもたらした。これらの結果は、TRAILRシグナリングが、TLRの選択的な負の免疫調節因子であることを示している。
ロキン(Roquin)(Rc3h1)
ロキンは、RING型E3ユビキチンリガーゼタンパク質ファミリーの高度に保存されたメンバーである。ロキンタンパク質は、RNA−結合タンパク質中に見出されるCCCHジンクフィンガーの存在及びそのシトゾールRNA顆粒への局在化によって特徴づけされる。ロキンは、メッセンジャーRNAの翻訳と安定性の調節に関与していると考えられている。何らかの特定の理論に束縛されることは望まないが、成熟T細胞内のロキン遺伝子の突然変異(そうでなければロキンの阻害)は、過剰な数の濾胞性ヘルパーT細胞及び胚中心を形成させる原因であると考えられている。本開示に基づくと、ロキンを阻害することは、免疫細胞の免疫能力を増強するのに役立ち得る。
本書中に引用されている各々及び全ての特許、特許出願及び公開の開示は、その全体が本明細書に参照により援用されている。
特定の実施形態を参照しながら本発明を開示してきたが、当業者であれば本発明の真の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本発明のその他の実施形態及び変形形態も考案し得ることは明白である。添付の特許請求の範囲は、かかる全ての実施形態及び等価の変形形態を包含するように解釈されるものである。
図1A及び1Bを含んでなるこの図はSOCS1の発現がSOCS1−siRNAによってダウンレギュレートされることを実証する一連の図表である。図1AはマウスSOCS1siRNAで同時トランスフェクションを受けた293T細胞のウェスタンブロット検定を描いている。図1Bは、SOCS1siRNAでのオリゴトランスフェクションを受けたDCの定量的RT−PCR検定を描いている。
IL−6及びTNF−αといった前炎症性サイトカインの増強された分泌によって標示されるようにsiRNA突然変異体に比べてSOCS1siRNAでのトランスフェクションを受けたDCがLPS又はIFN−γに対してさらに高い反応性を有していたことを実証する図表である。
組換え型レンチウイルスベクター、LV−SOCS1−siRNA及びLV−GFP−siRNAの概略的表現である。
図4A及び4Bを含んでなる図4は、SOCS1がインビトロで抗原特異的CTLを刺激するDCの能力を負に調節することを実証する一連の図表である。図4Aは、オボアルブミン特異的TCRT細胞(OT−I)がsiRNA−DC突然変異体同時培養中よりもSOCS1−siRNA−DC同時培養中でより多く増殖したという事実を描いている。これらのデータと整合して、SOCS1−siRNA−DC同時培養中でより高いレベルの前炎症性サイトカインが分泌された(図4B)。
図5A〜図5Cを含んでなる図5は、SOCS1がインビトロで抗原特異的T細胞応答をプライミングするDCの能力を負に調節することを実証する一連の図表である。図5Aは、合計ゲーテッドCD8+T細胞集団内のH2−Kb/オボアルブミン−PE四量体+T細胞の百分率を標示する。図5Bは、インターフェロン−γ(IFNγ)ELISPOT検定を描いている。図5Cは、未成熟LV−SOCS1−siRNA−DCを与えられたマウス由来の脾細胞のオボアルブミン+標的細胞に対するより強力な細胞傷害性を実証するCTL検定を描いている。
図6A〜6Eを含んでなる図6は、SOCS1−サイレンシング化されたDCにより誘発されるCTL応答を、インビボLPS刺激が強力に増強することを実証する一連の図表である。図6は、ゲーテッドされたCD8+T細胞内のオボアルブミン−PE四量体陽性T細胞の百分率を描いている。図6Bは、インビボLPS刺激が後続する、LPS誘発型成熟無しの、オボアルブミンパルスを受けたDC、形質導入を受けたDC又はモックDCで免疫化されたマウスにおけるCD8+T細胞のIFN−γELISPOT数を描いている。図6C及び図6Dは、インビボLPS刺激が後続する、成熟DCで免疫化されたマウスにおけるCD8+T細胞のそれぞれオボアルブミン−PE四量体+百分率及びIFN−γELISPOT数を描いている。図6Eは、さまざまなサイトカイン及びTLRアゴニストでのインビボ刺激が、SOCS1サイレンシング化されたDCによるCTL応答(ELISPOT)を増強することを実証している。
図7A〜7Eを含んでなる図7は、SOCS1サイレンシング化されたDCにより誘発される増強された抗腫瘍免疫を実証する一連の図表である。図7Aは、事前準備されたオボアルブミンパルスを受けたLV−SOCS1−siRNA−DCでの免疫化が、事前準備されたオボアルブミン+EG7腫瘍の成長を遮断するという事実を描いている。図7Bは、抗CD8抗体がオボアルブミンパルスを受けたLV−SOCS1−siRNA−DCにより誘発された抗腫瘍活性を無効にするものの抗−CD4抗体はそれをしなかったという事実を描いている。図7C〜7Eは、マウス体内のSOCS1siRNAのオリゴ2重鎖トランスフェクションを受けたDCによる増強した抗腫瘍活性を描いている。
図8A〜8Cを含んでなる図8は、SOCS1サイレンシング化されたDCによる自己腫瘍関連抗原に対する増強したCTL応答を実証する一連の図表である。図8は、成熟LV−SOCS1−siRNA−DCが、事前準備されたB16腫瘍の成長を有効に遮断した一方で、成熟LV−GFP−siRNA−DCが、観察可能な阻害効果を全く有していなかったという事実を描いている。図8B及び図8Cは、LV−SOCS1−siRNA−DCマウスにおける強力なTRP2特異的CTL応答の、それぞれIFN−γELISPOT及びCTL検定を描いている。
図9A〜9Cを含んでなる図9は、SOCS1により制限されている成熟DCシグナリングが自己抗原及び抗腫瘍免疫に対抗するCTL応答を制御することを実証する一連の画像である。図9Aは、免疫化から2週間後のマウスにおける脾細胞のCD8+T細胞内のH2−Kb−TRP2−PE四量体陽性T細胞の百分率を描いている。図9Bは、免疫化から3ヶ月後に1回又は3回、インビボLPS刺激を受けるTRP2aパルスを受けたSOCS1−siRNADC免疫化済みマウスにおける代表的白斑を描いている。図9Cは、免疫化されたマウスのグループからプールされた脾細胞のTRP2+B16(上部図版)に対する、及びTRP2aペプチドでのインビトロ再刺激の後にSOCS1siRNADCで免疫化された野生型マウスの脾細胞のTRP2−EG.7標的細胞(下部図版)に対する細胞傷害性を描いている。
図10A〜10Dを含んでなる図10は、SOCS1−siRNA DC免疫化による事前準備されたB16腫瘍の根絶を実証する一連の図表である。図10A及び10Bは、それぞれLPSインビトロ刺激を伴わない及びそれを伴う野生型マウスにおける腫瘍成長曲線を描いている。図10Cは、60日間監視したマウスの生存百分率を描いている。図10Dは、LPSの同時注入を受け、TRP2aペプチドでの刺激に付された免疫化済みマウスのプールされた脾細胞から単離されたCD8+T細胞のIFN−γELISPOT検定を描いている。
図11A〜11Cを含んでなる図11は、低又は高親和性ペプチドのいずれかでのパルスを受けたSOCS1サイレンシング化されたDCにより誘発された強力なCTL応答及び抗腫瘍活性を実証する一連の図表である。図11Aは、LPS刺激を伴わない(図11A−1)又は伴う(図11A−2)形質導入されたDC上の共同刺激/阻害分子のフローサイトメトリ分析を描いている。図11Bは、低及び高親和性ペプチドでのパルスを受けたSOCS1−siRNA DCによる事前準備されたB16腫瘍の根絶を描いている。図11Cは、TRP2a又はTRP2bペプチドで刺激されたIFNγELISPOT検定により測定される通りの抗原特異的CTL応答の比較を描いている。
図12A〜12Dを含んでなる図12は、IL−12KOSOCS1siRNA−DCによる有効な抗腫瘍応答の誘発の欠如を実証する一連の図表である。図12A及び図12Bは、それぞれに腫瘍体積及び生存率を描いている。図12Cは、TRP2aペプチドでのインビトロ刺激後のIFNγELISPOT検定を描いている。図12Dは、TRP2+B16標的細胞を用いたTRP2aペプチドでのインビトロ刺激の後のCTL検定を描いている。
図13A〜13Dを含んでなる図13は、SOSC1が、DCによるIL−12及びIL−12誘発型サイトカインの産生を制御することを実証する一連の図表である。図13Aは、LPS及び平板コーティングされた抗−CD40mAbでの連続的刺激に応答してSOCS1siRNADCにより分泌されたIL−12のレベルを描いている。図13Bは、IL−12レベルとそれに続く最初の24時間の刺激の後のこれらの刺激物の除去を描いている。図13Cは、24時間のLPS及び平板コーティングされた抗CD40mAbでの刺激とそれに続く刺激の除去に応答した、SOCS1 siRNA DCにより分泌されるTNFα及びIL−6のレベルを描いている。図13Dは、LPS及び平板コーティングされた抗−CD40mAbでの連続的刺激に応答してp35−/−又はwtSOCS1−siRNA DCにより分泌されたTNFα及びIL−6のレベルを描いている。
図14A及び14Bを含んでなる図14は、インビボIL−12投与がSOCS1サイレンシング化されたDCの免疫化を増強することを実証する一連の図表である。図14Aは、インビボIL−12投与により増強される抗腫瘍活性を描写している。図14Bは、IL−12によるTRP2特異的CTL応答を描いている。
図15A〜15Dを含んでなる図15は、gp120特異的抗体及びCTL応答がDC内のSOCS1のサイレンシング化によって増強されることを実証する一連の図表である。図15Aは、対照のLV−GFP−siRNA−DCに比べて、LV−SOCS1−siRNA−DCが、はるかに強固なgp120特異的IgM及びIgG応答を惹起したことを例示している。図15Bは、対応するLV−GFPsiRNA−DCマウス内のサブクラスと比べた、LV−SOCS1−siRNA−DCで免疫化されたマウス内の全てのIgGサブクラスにおけるHIVEnv−特異的抗体力価の大幅な増大を示している。図15Cは、LV−SOCS1−siRNA−DCマウスにおけるgp120パルスを受けた標的細胞に対するCTL活性がLV−GFP−siRNA−DCマウスにおけるものよりもはるかに強力であったことを示している。図15Dは、LV−SOCS−siRNA−DCマウスにおけるIFN−γ+T細胞のより高い百分率を示している。
図16A〜16Dを含んでなる図16は、SOCS1サイレンシング化されたDCによるTh1及びTh2分極の両方のサイトカインの増強された産生を実証する一連の図表である。図16Aは、LPSでの刺激の後のGFP−siRNA−DCに比べた、LV−SOCS1−siRNA−DCにより産生されたIL−12、IFN−γ及びTNFαのレベルを描いている。図16Bはgp120特異的CD4+T細胞の頻度を描いている。図16Cは、LV−SOCS1−siRNA−DCマウス由来のCD4+T細胞が、gp120パルスを受けたDCでの刺激に応答してLV−GFP−siRNA−DCマウス由来のものよりも活発に増殖したことを例示している。図16Dは、SOCS1サイレンシング化されたDCにおけるTh1分極(IFN−γ、IL−2及びTNFα)及びTh2分極(IL−4及びIL−10)の両方のサイトカインの増大したレベルを示している。
図17A〜図17Dを含んでなる図17は、SOCS1サイレンシング化されたDCによる増強されたgp120特異的B細胞活性化を実証する一連の図表である。図17Aは、LPS刺激の時点でのAPRIL及びBAFFmRNAの発現レベルを描写している。図17Bは、LV−SOCS1−siRNA−DC及びLV−GFP−siRNA−DCマウス内の抗−gp120IgG産生B細胞の頻度を描いている。図17Cは、抗CD40及びIL−4で共同刺激された場合に、LV−SOCS1−siRNA−DCマウス由来のB細胞がLV−GFP−siRNA−DCマウス由来のB細胞に比べてより激しく増殖したということを描いている。図17Dは、LV−SOCS1−siRNA−DCマウス由来のB細胞が、さまざまな刺激物に応答してIL−6、IL−2、及びTNF−αを含めたさまざまなサイトカインをより高いレベルで産生した、ということを描いている。
図18A〜18Bを含んでなる図18は、SOCS1サイレンシング化されたDCにより誘発される長期gp120特異的抗体及びCTL応答を実証する一連の図表である。図18Aは、LV−SOCS1−siRNA−DCで免疫化されたマウスと比べたLV−GFP−siRNA−DCで免疫化されたマウス内のgp120特異的抗体を描いている。図18Bは、LV−GFP−siRNA−DCマウスと比べたLV−SOCS1−siRNA−DCマウス体内のgp120特異的CTL応答を例示している。図18Cは、免疫化から6カ月目におけるLV−GFP−siRNA−DCマウスと比べた、LV−SOCS1−siRNA−DCマウス内のCD44hi及びIFNγ+CD8+T細胞の百分率を例示している。図18Dは、免疫化から6カ月目のLV−SOCS1−siRNA−DCマウスにおいて、gp120特異的CD4+Th応答が維持され急速に誘発されたということを例示している。
図19A〜19Eを含んでなる図19は、HIVEnv媒介免疫抑制に対するSOCS1サイレンシング化されたDCの耐性を実証する一連の図表である。図19Aは、gp120タンパク質の存在下にあるLV−SOCS1−siRNA−DCがLPSに応答する能力を保持していたことを例示している。gp120タンパク質に対する後曝露は、OVA特異的抗体応答を誘発するLV−SOCS1−siRNA−DCの能力に対し明らかな効果をもたず(図19B及び19C)、LV−SOCS1−siRNA−DCにより誘発されたOVA特異的CD8+CTL及びCD4+Th応答を危うくすることもなかった(図19D及び19E)。
図20A〜20Dを含んでなる図20は、SOCS1siRNAによるHIVDNAワクチンの増強を実証する一連の図表である。図20Aは、pSuper−SOCS1−siRNADNAで同時免疫化されたマウスにおけるHIVEnv−特異的抗体力価の増強を描いている。図20B及び20Cは、HIVEnv特異的CTL応答が、それぞれに、CTL及びELISPOT検定により実証されているように、p Super−SOCS1−siRNADNAの同時注入により著しく増強させられた、ということを例示している。図20Dは、HIVEnv特異的CD4+Th応答がSOCS1−siRNADNAの同時注入により増強されたという事実を描いている。
図21A〜図21Cを含んでなる図21は、ヒト単球由来のDCの中のヒトSOCS1のサイレンシング化を実証する一連の図表である。図21Aは、ヒトSOCS1siRNAがヒトSOCS1発現を効率良くダウンレギュレートしたことを例示している。図21Bは、ヒト単球から誘導されたDC内への合成siRNA2重鎖のトランスフェクション効率を例示している。図21Cは、hSOCS1siRNA2重鎖でのトランスフェクションを受けた総DC集団内のhSOC1mRNAのレベルを描いている。
図22A〜22Cを含んでなる図22は、ヒトのSOCS1サイレンシング化されたDCを特徴づけする一連の図表である。図22Aは、標示されたヒトSOCS1についてのフローサイトメトリ分析を描いている。図22B及び22Cは、siRNA突然変異体でのトランスフェクションを受けたヒトDCと比較した、hSOCS1siRNAでのトランスフェクションを受けたDCにおけるIL−12、IL−6及びTNF−αなどの前炎症性サイトカインの分泌レベルを例示している。
図23A〜23Cを含んでなる図23は、抗原特異的CTL応答をプライミングするヒトのSOCS1サイレンシング化されたDCの増強された免疫刺激効能を実証する一連の図表である。異なるHLA−A2+ドナーを用いた4回の独立した実験の1つから、MAGE3−PE四量体+T細胞百分率(図23A)、ゲーテッドCD3+及びCD8+T細胞集団内の細胞内IFNγ+T細胞百分率(図23B)、及びIFN−γ+ELISPOT数(図2C)が示されている。
ヒト化HLA−A2,1トランスジェニックマウスにおける増強されたヒトMAGE3−特異的CTL応答を描いた図表である。
図25A及び25Bを含んでなる図25は、ヒトSOCS1−siRNA−DCにより活性化されたヒトCTLの腫瘍溶解活性を実証する一連の図表である。4回の独立した実験から、抗ヒトIL−12抗体の不在下又は存在下での自己T細胞及びMAGE3パルスを受けたhSOCS1−siRNADC又は対照DCの2週間の同時培養の後のヒトMAGE3+、HLA−A2+黒色腫細胞(SK−Mel−37)(図25A)及び対照ヒトMAGE3+、HLA−A2−黒色腫細胞(NA−6−Mel)(図25B)に対する細胞溶解活性が示されている。
図26A及び図26Bを含んでなる図26は、免疫化されたHLA−A2.1トランスジェニックマウスの活性化されたCTLの腫瘍溶解活性を実証する一連の図表である。3つの実験のうちの1つから、5日間MAGE3ペプチドでのインビトロ再刺激の後に、ヒトSK−Mel−37細胞(図26A)及び対照ヒトHLA−A2−NA−6−Mel細胞(図26B)に対する細胞傷害性が決定され、提示されている。
図27A及び27Bを含んでなる図27は、SOCS1siRNAオリゴ2重鎖での同時免疫化がインビボでのタンパク質免疫化を増強することを実証する一連の図表である。
ヒトSOCS1siRNAを発現する複製欠損アデノウイルスベクターの概略図を描いた図表である。図28は同様に、Ad−ヒトSOCS1siRNAによるヒトDCのトランスフェクションをも実証している。
T細胞のSOCS1siRNAオリゴ2重鎖トランスフェクションによる増強されたCTL活性を描く図表である。
siRNA候補の核酸配列を描く図表である。
A20−siRNA(siA20)でのトランスフェクションを受けたBM−DC内のA20mRNAの発現が、定量的RT−PCR検定を用いて測定されるようにsiA20オリゴによりダウンレギュレートされることを実証する図表である。
図32A〜32Dを含んでなる図32は、OVAパルスを受けsiA20オリゴトランスフェクションを受けたBM−DCのインビボでの増強された免疫刺激効能を実証する一連の図表である。図32A〜32Dは、それぞれ突然変異体siRNADC(CpG不在下)、A20−2siRNADC(CpG不在下)、突然変異体siRNADC(CpG不在下)及びA20−2siRNADC(CpG不在下)で免疫化されたマウスの体内のゲーテッドを受けた総CD8+T細胞集団内のH2−Kb/オボアルブミン−PE四量体+T細胞の百分率を描いている。
図33A及び33Bを含んでなる図33は、それぞれPolyI:C刺激の存在下及び不在下でのインビボのOVAパルスを受けたsiA20オリゴトランスフェクションを受けたBM−DC内の抗−OVACD8T細胞応答の増強を実証する一連の図表である。
図34A及び34Bを含んでなる図34は、それぞれPolyI:C刺激の存在下及び不在下でのインビボのOVAパルスを受けたsiA20オリゴトランスフェクションを受けたBM−DC内の抗−OVACD4T細胞応答の増強を実証する一連の図表である。
図35A及び35Bを含んでなる図35は、インビボのTRP2パルスを受けたsiA20オリゴトランスフェクションを受けたBM−DC内の抗−TRP2CD8T細胞応答の増強を実証する一連の図表である。図35A及び35Bは、それぞれPolyI:C刺激の存在下及び不在下でのTRP2パルスを受けた、トランスフェクションを受けた又はモックDCで免疫化されたマウスにおけるCD8+T細胞のIFN−γELISPOTの数を描いている。
CpGインビボ刺激の不在下でのOVAパルスを受けたsiA20オリゴトランスフェクションを受けたDC免疫化による、事前準備されたEG.7腫瘍の根絶を実証する腫瘍成長曲線の図表である。
CpGインビボ刺激の不在下でのOVAパルスを受けたsiA20オリゴトランスフェクションを受けたDC免疫化による、事前準備されたEG.7腫瘍の根絶を実証する腫瘍成長曲線の図表である。
DC内のSOCS1、A20、SUMO1又はFoxj1のサイレンシング化によってOVA特異的抗体応答が増強されることを実証する図表である。
TRP2−パルスを受けた、LV−siA20−形質導入を受けたDCで免疫化されたマウスの体内のCD8T細胞のTRP2特異的IFN−γ+百分率を描く図表である。
OVAパルスを受けたLV−siA20−形質導入を受けたDCで免疫化されたマウスの体内のCD4+T細胞のOVA特異的IFN−γ+百分率を描く図表である。
OVAパルスを受けた、LV−siA20又はsiFoxj1−形質導入を受けたDCの免疫化による事前準備されたB16−OVA腫瘍の阻害を実証するグラフである。
OVAパルスを受けた、LV−siA20−形質導入を受けたDC又はsiFoxj1形質導入を受けたDCで免疫化されたマウスの生存率を描くグラフである。
HIVgp120パルスを受けた、LV−siA20−形質導入を受けたDCで免疫化されたマウスの体内での、増強されたHIVgp120特異的CD8+T細胞応答を実証する図表である。
Foxj1発現DNA及びFoxj1−siRNA(siFoxj1)オリゴで同時トランスフェクションされた293個の細胞内のFoxj1タンパク質のダウンレギュレーションを立証するウェスタンブロット検定の画像である。
siFoxj1オリゴでのトランスフェクションを受けたDCは、IL−6分泌の増強により標示される通り、siRNA突然変異体でのトランスフェクションを受けたDCに比べLPS刺激に対する応答性が高かったということを実証する図表である。
TRP2パルスを受け、形質導入を受けたDCで免疫化されたマウスの体内でのTRP2特異的CD8及びCD4T細胞を実証する図表である。
HIVgp120パルスを受け、形質導入を受けたDCで免疫化されたマウスの体内でのHIVgp120特異的CD8及びCD4T細胞を実証する図表である。
Twist2−siRNA(siTwist2)オリゴと組み合わされた状態でTwist1及びTwist2の発現DNAでの同時トランスフェクションを受けた293個の細胞内のTwist2タンパク質のダウンレギュレーションを実証するウェスタンブロット検定の図表である。
インビボでのOVAパルスを受け、siTwist2オリゴトランスフェクションを受けたBM−DCの免疫刺激効能の増強を実証するOT−I四量体染色の図表である。
インビボでのOVAパルスを受けsiTwist2オリゴトランスフェクションを受けたBM−DCの免疫刺激効能をTwist2サイレンシング化が増強することを実証するIFNγ−ELISPOT検定のグラフである。
インビボでのsiSUMO1(SUMO1−2及びSUMO1−3)オリゴトランスフェクションを受けたBM−DCの免疫刺激効能をSUMO1サイレンシング化が増強することを実証するグラフである。図51は、インビボPolyI:C刺激を伴うオボアルブミンパルスを受けた、トランスフェクションを受けたDC又はモックDCで免疫化されたマウスの体内でのCD8+T細胞のIFNγ−ELISPOT検定を描いている。
SUMO1siRNA(siSUMO1)でのトランスフェクションを受けたDC内でのIKβαの活性化の増強を実証するウェスタンブロット検定の画像である。
A20、SUMO1、SUMO2、SUMO3、SUMO4、Twist−1、Twist−2、Foxj1及びFoxo3aのためのsiRNAターゲティングされた配列を描く図表である。