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JP2008212144A - アルコール脱水素酵素、これをコードする遺伝子、およびそれを用いた光学活性(r)−3−キヌクリジノールの製造方法 - Google Patents

アルコール脱水素酵素、これをコードする遺伝子、およびそれを用いた光学活性(r)−3−キヌクリジノールの製造方法 Download PDF

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JP2008212144A JP2007327439A JP2007327439A JP2008212144A JP 2008212144 A JP2008212144 A JP 2008212144A JP 2007327439 A JP2007327439 A JP 2007327439A JP 2007327439 A JP2007327439 A JP 2007327439A JP 2008212144 A JP2008212144 A JP 2008212144A
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昌 清水
Michihiko Kataoka
道彦 片岡
Fumiki Nomoto
史樹 野本
Junko Uzura
淳子 卯津羅
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Nagase and Co Ltd
Kyoto University NUC
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Abstract

【課題】3−キヌクリジノンを立体選択的に(R)−3−キヌクリジノールへと還元する新規な酵素を提供すること。
【解決手段】以下の(1)から(3)に示す生化学的性質を有する酵素が提供される:(1)作用;還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)を補酵素として、3−キヌクリジノンまたはその塩を不斉還元し、(R)−3−キヌクリジノールを生成する;(2)基質特異性;3−キヌクリジノン、p−トルキノンおよびα−ナフトキノンに作用し、その相対活性が、3−キヌクリジノン、p−トルキノンおよびα−ナフトキノンの順に高い;および(3)至適温度;pH7で反応させる場合、温度40〜45℃において作用が至適である。酵素はまた、特定なアミノ酸配列またはその改変配列を含み得る。当該酵素を利用して、高収率で高い光学純度の光学活性(R)−3−キヌクリジノールを製造することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、医薬および農薬に利用される光学活性な生理活性化合物として有用である(R)−3−キヌクリジノールの製造に関する。より詳細には、アルコール脱水素酵素、該酵素を産生する微生物、該酵素をコードする遺伝子、該酵素の製造方法、そして該酵素を利用した光学活性(R)−3−キヌクリジノールあるいはその塩の製造方法に関する。
現在、生理活性を有する多くの化合物について、その光学異性体の混合物が使用されている。しかし、所望の活性は、一方の光学異性体のみに存在する場合が多い。さらに、所望の活性を有しない他方の光学異性体が、生体に対して毒性を有し得ることも知られている。従って、有効かつ安全な医薬または生理活性化合物を提供するために、その原料または合成中間体として用いられる光学純度の高い光学活性物質の製造方法を開発することが強く要望されている。
3−キヌクリジノンの還元生成物である3−キヌクリジノールは、スクアレンシンターゼ阻害作用を有する動脈硬化の治療剤、ムスカリン受容体拮抗作用を有する気管支拡張剤、および胃腸運動抑制剤などの合成中間体として知られる化合物である(特許文献1〜5を参照)。
不斉炭素原子を有する3−キヌクリジノールには、光学異性体が存在する。従って、合成中間体として有用な光学活性3−キヌクリジノールを分離する必要があり、現在までにいくつかの試みがなされている。
光学活性3−キヌクリジノールの製法として、これまでに、例えば、1−ベンジル−3−ヒドロキシキヌクリジウムクロライドをD−酒石酸誘導体で光学分割し、(S)−(+)−3−キヌクリジノールを生産する方法(非特許文献1)、およびD−グルコースからの(S)−(+)−3−キヌクリジノールの合成方法(非特許文献2)が報告されている。3−キヌクリジノンのルイス酸付加物を不斉水素化して、光学活性3−キヌクリジノールを製造するために、ロジウム錯化合物(特許文献6)またはテルニウム錯化合物(特許文献7および8)を触媒として用いる方法も報告されているが、いずれも光学純度が低く、実用的な製造方法ではない。
微生物や酵素を利用する方法として、例えば、(R,S)−キヌクリジニルブチレートに、馬血清ブチルコリンエステラーゼを作用させ、光学活性(S)−(+)−3−キヌクリジニルブチレートを残存させる方法(非特許文献3)、およびバチルス(Bacillus)属に属する微生物由来のプロテアーゼを作用させ、高い光学純度の光学活性(R)−(−)−3−キヌクリジノールを製造する方法(特許文献9)がある。ラセミ体の3−キヌクリジノールエステルを出発物質とする例として、ズブチリシンプロテアーゼを用いて光学活性(R)−3−キヌクリジノールを製造する方法(特許文献10)、アスペルギルス(Aspergillus)属またはシュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物に由来するエステル分解酵素を用いてエステルを加水分解し、光学活性(R)−3−キヌクリジノールおよび光学活性(S)−3−キヌクリジノールを製造する方法(特許文献11)、およびアスペルギルス(Aspergillus)属、リゾプス(Rhizopus)属、キャンディダ(Candida)属、またはシュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物菌体やこれらの微生物に由来する酵素などによる不斉加水分解に基づいて、光学活性3−キヌクリジノールまたは光学活性3−キヌクリジノールエステルを製造する方法(特許文献12)も知られている。
しかし、これらの方法は、生成物の光学純度が低いこと、または合成工程の煩雑さから大量生産が容易でないなどの問題を含む。また、いずれの方法も、ラセミ体の3−キヌクリジノールを光学分割して目的の光学異性体を得る手法であるため、目的としない他方の光学異性体が残存し得る。そのため、これらの方法では、目的としない光学異性体に関して、その不斉炭素の立体配置を反転させて目的の光学異性体へ変換させる工程、あるいは目的としない光学異性体をラセミ化して、再度の光学分割により目的の光学異性体を得る工程を必要とするので、生産コストが高くなるという問題点がある。
さらに、微生物や酵素による不斉還元反応を利用して3−キヌクリジノンから光学活性3−キヌクリジノールを製造する方法(特許文献13〜16)が知られている。特許文献13には、3−キヌクリジノンから(R)−3−キヌクリジノールを生成する微生物として、ナカザワエア(Nakazawaea)属、キャンディダ(Candida)属、プロテウス(Proteus)属、アースロバクター(Arthrobacter)属、シュードモナス(Pseudomonas)属およびロドスポリジウム(Rhodosporidium)属が含まれることが記載されている。特許文献14には、ロドトルラ(Rhodotorula)属、キャンディダ(Candida)属、スポリジオボルウス(Sporidiobolus)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、クリプトコッカス(Cryptococcus)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、ゴルドナ(Gordona)属、ピキア(Pichia)属およびノカルデイア(Nocardia)属の微生物を用いることが記載されている。また、特許文献15には、アルカリゲネス(Alcaligenes)属、コリネバクテリウム(Corynebacterium)属、アースロバクター(Arthrobacter)属、フィロバシディウム(Filobasidium)属、ロドトルラ(Rhodotorula)属、オーレオバシディウム(Aureobasidium)属またはヤロウィア(Yarrowia)属に属する微生物を用いることが記載されている。特許文献16には、ゲオトリカム(Geotrichum)属、ツカムレラ(Tsukamurella)属、ミクロコッカス(Micrococcus)属、クルチア(Kurthia)属、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属、アクレモニウム(Acremonium)属、またはムコール(Mucor)属に属し、かつ3−キヌクリジノンから(R)−3−キヌクリジノールを生成する能力を有する微生物を用いることが記載されている。これらの反応は、野生型の微生物を基質化合物に作用させ、光学活性な化合物を直接的に生成する反応である。反応工程は1段階反応となり、反応工程の簡略化においては、大きく改善されたといえる。しかし依然として、生成物の光学純度が低いこと、また生成物の蓄積濃度が低いことなどの問題がある。
植物由来の酵素を利用する不斉還元反応によって、3−キヌクリジノンから(R)−3−キヌクリジノールを生成する方法が報告されている(特許文献17)。この方法では、ヨウシュチョウセンアサガオ(Datura stramonium)またはヒヨス(Hyoscyamus niger)に由来するトロンビノン還元酵素−I(TR−I)とグルコース脱水素酵素とを大腸菌で共発現させて、補酵素の再生系と組み合わせた不斉還元反応により3−キヌクリジノンから(R)−3−キヌクリジノールを製造している。
非特許文献4には、ヒヨス(Hyoscyamus niger)の培養根からトロンビノン還元酵素−IおよびII(TR−IおよびTR−II)を精製したこと、およびそれらの特徴が記載されている。TR−IおよびTR−IIは、共に還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)依存性の酸化還元酵素であるが、異なる基質特異性を示す。3−キヌクリジノンは、TR−Iの基質として受容されるが、TR−IIの基質としてほとんど受容されない。また、TR−Iは、上記のようにNADPH依存性ではあるが、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)も補酵素として利用し得る。
光学活性3−キヌクリジノールの製造のために、3−キヌクリジノンの不斉還元反応を触媒する新規な酵素を見出したことが報告されている(特許文献18)。この酵素は、ミクロバクテリウム(Microbacterium)属に属する微生物により産生され、NADHを補酵素として、3−キヌクリジノンあるいはその塩を還元し、(R)−3−キヌクリジノールを生成する。
このように、光学活性3−キヌクリジノールを効率よく製造するために、3−キヌクリジノンから(R)−3−キヌクリジノールに不斉還元する作用を有する酵素を発見する試みがなされている。
特開平8−134067号公報 欧州特許出願公開第404737号公報 欧州特許出願公開第424021号公報 国際特許出願公開第92/04346号公報 国際特許出願公開第93/06098号公報 特開平9−194480号公報 特開2005−306804号公報 特開2006−63028号公報 米国特許第5215918号明細書 独国特許出願第19715465号明細書 特開平10−210997号公報 特許第3129663号公報 特開平10−243795号公報 特開平11−196890号公報 特開2000−245495号公報 特開2002−153293号公報 特開2003−230398号公報 特開2003−334069号公報 エイ.カリア(A. Kalir)ら、イスラエル・ジャーナル・オブ・ケミストリー(Israel Journal of Chemistry), 1971年, 9巻, pp.267-268 ジー.ダブリュー.ジェイ.フリート(G. W. J. Fleet)ら、テトラヘドロン・レターズ(Tetrahedron Letters), 1986年, 27巻, pp.3057-3058 エム.レハビ(M. Rehavi)ら、ライフ・サイエンシーズ(Life Sciences), 1977年, 21巻, pp.1293-130 タカシ ハシモト(Takashi Hashimoto)ら、プラント・フィジオロジー(Plant Physiol.), 1992年, 100巻, pp.836-845
本発明は、3−キヌクリジノンを立体選択的に(R)−3−キヌクリジノールへと還元する新規な酵素、および該酵素を利用し、高い光学純度を有する光学活性(R)−3−キヌクリジノールを効率良く製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、3−キヌクリジノンを還元して光学活性な(R)−3−キヌクリジノールを生成する酵素を得ることを目的として、広く自然界より該酵素を生産する微生物を検索した結果、土壌中より純粋分離してアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)NK1と命名した1菌株が、立体選択的に3−キヌクリジノンを還元して光学活性な(R)−3−キヌクリジノールを生成することを見出した。次に、この菌株より目的とする活性を有する酵素を精製し、その性質を明らかにした。この酵素は、NADHを補酵素として3−キヌクリジノンまたはその塩のカルボニル基を立体選択的に還元し、(R)−3−キヌクリジノールを生成する能力を有する(以下において、この酵素を簡単に「3−キヌクリジノン不斉還元酵素」ということがある)。さらに本発明者らは、該酵素をコードする遺伝子をクローニングし、その構造を明らかにして、この遺伝子が新規な遺伝子であることを確認した。この遺伝子を異種の生物で高発現させて、NADHを補酵素として3−キヌクリジノンから立体選択的に(R)−3−キヌクリジノールを生成する形質転換株を得た。そしてこの酵素、あるいは該酵素を産生する細胞などを用いて、3−キヌクリジノンから高収率かつ高光学純度で(R)−3−キヌクリジノールが得られることを見出し、本発明を完成した。
本発明は、3−キヌクリジノン不斉還元酵素を提供する。
本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素は、以下の(1)から(3)に示す生化学的性質を有する:
(1)作用:還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)を補酵素として、3−キヌクリジノンまたはその塩を不斉還元し、(R)−3−キヌクリジノールを生成する;
(2)基質特異性:3−キヌクリジノン、p−トルキノンおよびα−ナフトキノンに作用し、その相対活性が、3−キヌクリジノン、p−トルキノンおよびα−ナフトキノンの順に高い;および
(3)至適温度:pH7で反応させる場合、温度40〜45℃において作用が至適である。
1つの実施態様では、上記3−キヌクリジノン不斉還元酵素は、SDS−PAGEで測定した場合のサブユニットの分子量が28,500であり、ゲル濾過クロマトグラフィーで測定した場合の分子量が102,000である。
本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素はまた、以下の(a)から(c)のいずれかのアミノ酸配列を有する:
(a)配列番号2に記載のアミノ酸配列;
(b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列;または
(c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列。
(a)のアミノ酸配列を有する酵素である場合は、上記の(1)から(3)に示す生化学的性質を備えている。(b)または(c)のアミノ酸配列を有する酵素である場合は、上記の少なくとも(1)の生化学的性質を備えている。
1つの実施態様では、上記3−キヌクリジノン不斉還元酵素は、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)NK1株(FERM P−21144)に由来する。
本発明はまた、アグロバクテリウム・ツメファシエンスNK1株(FERM P−21144)を提供する。
本発明はまた、上記3−キヌクリジノン不斉還元酵素をコードするポリヌクレオチドを提供する。
1つの実施態様では、上記ポリヌクレオチドは、以下の(i)から(iii)のいずれかである:
(i)配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド;
(ii)配列番号1に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ3−キヌクリジノンを不斉的に還元して(R)−3−キヌクリジノールを生成する活性を有する酵素をコードする、ポリヌクレオチド;または
(iii)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも60%の配列同一性を有する塩基配列を有し、かつ3−キヌクリジノンを不斉的に還元して(R)−3−キヌクリジノールを生成する活性を有する酵素をコードする、ポリヌクレオチド。
本発明はまた、上記ポリヌクレオチドを含むベクターを提供する。
1つの実施態様では、上記ベクターはさらに、酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)をNADHに再生する酵素をコードするポリヌクレオチドを含む。
本発明はまた、上記ベクターを発現可能に保持した形質転換体を提供する。
本発明はまた、上記ベクターおよびNADをNADHに再生する酵素をコードするポリヌクレオチドを含むベクターをそれぞれ発現可能に保持する形質転換体を提供する。
1つの実施態様では、上記形質転換体は、宿主が大腸菌である。
別の実施態様では、上記NADをNADHに再生する酵素はグルコース脱水素酵素である。
本発明はまた、(R)−3−キヌクリジノールまたはその塩の製造方法を提供し、この方法は、上記3−キヌクリジノン不斉還元酵素、該酵素を産生する微生物、上記形質転換体、または該微生物もしくは該形質転換体の培養液もしくは処理物を、3−キヌクリジノンまたはその塩に作用させる工程を含む。
1つの実施態様では、上記作用工程において、NADHまたはNADがさらに添加される。
別の実施態様では、上記微生物は、アグロバクテリウム・ツメファシエンスNK1株(FERM P−21144)である。
本発明によれば、3−キヌクリジノンを立体選択的に(R)−3−キヌクリジノールへと還元する新規な酵素および該酵素を生産する微生物が提供される。さらに、本発明によれば、該酵素を利用して光学活性(R)−3−キヌクリジノールあるいはその塩を高収率および高光学純度で製造することができる。
本発明において、「酵素」とは、精製酵素(ほぼ単一までに精製された酵素)に限定されず、粗精製物、固定化物なども含まれる。例えば、本発明の酵素は、細胞のアセトン処理物および破砕物を用いて、硫安沈澱、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーなどの、当業者に周知の方法を用いることにより得られ得る。処理に応じて、種々の精製度の酵素が得られ得る。
本発明において、「微生物」とは、野性株、変異株(例えば、紫外線照射などにより誘導される)、あるいは細胞融合もしくは遺伝子組換え法などの遺伝子工学的手法により誘導される組換え体などのいずれの微生物であってもよい。組換え体などの操作された微生物は、例えば、Molecular Cloning A Laboratory Manual、第2版(Sambrook, J.ら編、Cold Spring Harbor laboratory Press, 1989)に記載されるような、当業者に公知の技術を用いて容易に作製され得る。微生物の培養液とは、微生物菌体を含む培養液、および遠心分離などにより微生物菌体を除いた培養液の両方を意味する。微生物の処理物として、例えば、アセトン処理物、超音波処理などの機械的な方法または酵素的方法による細胞破砕物および無細胞抽出物、界面活性剤や有機溶媒などにより処理したもの、それらの固定化物などが含まれる。これらは、当業者に周知の方法により調製され得る。
<3−キヌクリジノン不斉還元酵素>
本発明は、3−キヌクリジノン不斉還元酵素を提供する。この酵素は、アルコール脱水素酵素であり、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)を補酵素として、3−キヌクリジノンまたはその塩を不斉還元し、(R)−3−キヌクリジノールを生成する能力を有する。本発明の酵素は、NADPHを補酵素として利用しない。補酵素としては、(R)−3−キヌクリジノールの生成能が発揮できれば、NADPHを除きNADH以外の一般に知られているものを併用してもよい。
本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素としては、例えば、以下に説明するアグロバクテリウム・ツメファシエンスNK1株の天然の酵素が挙げられる。この酵素は、電気泳動条件などにより若干変化し得るが、SDS−PAGE(12.5%(w/v)ポリアクリルアミドゲル)で測定したサブユニットの分子量が約28,500、ゲル濾過クロマトグラフィーで測定した分子量が約102,000である。本酵素は、ホモテトラマーである。
また、本酵素は3−キヌクリジノンを基質とした場合の至適pHは、5.5〜8.0、好ましくは、5.5〜7.5の範囲内にある。
本酵素の至適温度は、25〜50℃であり、好ましくは40〜45℃付近である。本酵素は、例えば、1Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中で30分間処理した場合、35℃まで安定である。
本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素の酵素活性は、例えば、以下のようにして確認され得る。酵素溶液を、0.618mMの3−キヌクリジノン・塩酸塩および0.32mMのNADHを含む0.2Mのリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中で37℃でインキュベートし、波長340nmの吸光度の減少を測定する。上記3−キヌクリジノン不斉還元酵素の酵素量は、1分間に1マイクロモルのNADHをNADに変換させる酵素量を1単位(U)として定義される。さらに、本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素は、上記NADHをNADPHに代えて測定することにより、NADPHを補酵素として利用しないことを確認し得る。
本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素は、3−キヌクリジノンに対して基質特異性を示す。本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素は、p−トルキノンおよびα−ナフトキノンもまた還元し得る。しかし、本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素は、p−トルキノンおよびα−ナフトキノンよりも、3−キヌクリジノンに対して明らかに高い反応性を示す酵素である。本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素は、相対活性が、3−キヌクリジノン、p−トルキノンおよびα−ナフトキノンの順に高い。この相対活性は、上記のように測定される酵素活性において、3−キヌクリジノンを基質とした場合を100とし、その相対値で表したものである。
本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素は、好ましくは、配列番号2の1位から260位までの全長のアミノ酸配列を有するポリペプチドである。本明細書中では、この配列番号2の1位から260位までの全長のアミノ酸配列を、単に「配列番号2に記載のアミノ酸配列」という。本酵素は、3−キヌクリジノン不斉還元酵素活性(特に、3−キヌクリジノンを不斉的に還元して(R)−3−キヌクリジノールを生成する活性)を有する限り、天然型のアミノ酸配列(例えば、配列番号2に記載のアミノ酸配列)に対して1または複数のアミノ酸が、置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸配列を有する酵素であってもよい。当業者であれば、例えば、部位特異的変異導入法(Nucleic Acid Res., 1982年, 10巻, pp.6487;Methods in Enzymol., 1983年, 100巻, pp.448;Molecular Cloning : A Laboratory Manual, 第2版, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY. 1989年;PCR : A Practical Approach, IRL Press, 1991年, pp.200)などを用いて、適宜置換、欠失、挿入、および/または付加変異を導入することにより、タンパク質の構造を改変することができる。本発明において、置換、欠失、挿入、および/または付加することができるアミノ酸残基数は、通常50以下、例えば30以下、あるいは20以下、好ましくは16以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは0〜3である。また、アミノ酸の変異は、自然界においても生じることもあるので、人工的に変異させた酵素のみならず、自然界において変異した酵素も、3−キヌクリジノン不斉還元酵素活性を有する限り、本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素に含まれる。
上記天然型酵素のアミノ酸配列(例えば、配列番号2に記載のアミノ酸配列)に対して相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質も、3−キヌクリジノン不斉還元酵素活性を有する限り、本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素に含まれる。本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素は、好ましくは、配列番号2に記載のアミノ酸配列と少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは少なくとも99%の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であり得る。タンパク質の相同性の(ホモロジー)検索は、例えばSWISS-PROT、PIR、DADなどのタンパク質のアミノ酸配列に関するデータベース、またはDDBJ、EMBL、あるいはGene-BankなどのDNAデータベースなどを対象に、BLAST、FASTAなどのプログラムを利用して、例えば、インターネットを通じて行うことができる。タンパク質の活性の確認は、上記に記載の手順を利用して行い得る。
本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素の供給源としては特に制限されるものではないが、微生物などの生体細胞から得ることができる。この微生物は、好ましくは、以下に説明するアグロバクテリウム・ツメファシエンスNK1株である。
アグロバクテリウム・ツメファシエンスNK1株は、以下に示すような菌学的性質を有する:
A.形態
(1)細胞の形 桿菌
(2)細胞の大きさ 0.6〜0.7μm×1.5〜2.5μm
(3)運動性の有無 −
(4)グラム染色 −
(5)胞子形成 −
B.標準寒天平板培養における生育状態
クリーム色、光沢有り、正円、スムーズ、低凸状
C.生理学的性質
(1)硝硝酸塩の還元性 −
(2)脱窒反応 −
(3)インドールの生成 −
(4)澱粉の加水分解 −
(5)クエン酸の利用 −
(6)ウレアーゼ活性 +
(7)オキシダーゼ活性 +
(8)カタラーゼ活性 +
(9)生育の範囲
温度:37℃ +;41℃ −;45℃ −
(10)酸素に対する態度 好気性
(11)アミノ酸の分解
リジン −
アルギニン −
オルニチン −
(12)カゼインの分解性 −
(13)ゼラチンの分解性 −
(14)嫌気性培地における発育性 −
(15)マッコンキー培地生育性 +
(16)糖類の利用と生産性
L−アラビノース +
D−キシロース +
D−グルコース +
D−マンノース +
D−フラクトース +
D−ガラクトース +
マルトース +
スクロース +
ラクトース +
トレハロース +
D−マンニット +
イノシット +
エタノール +
(17)エスクリン加水分解 +
(18)グルコン酸の酸化 −
以上の性質を「バージェーズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー」(1984年)より検索した結果、本菌株はアグロバクテリウム・ツメファシエンスに属する菌株と同定され、アグロバクテリウム・ツメファシエンスNK1と命名した。この菌株は独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1−1−1、つくばセンター、中央第6)に寄託され、平成18年12月26日に受託番号FERM P−21144が付与されている。
本発明の酵素は、上記アグロバクテリウム・ツメファシエンスNK1株に由来する酵素に限られるものではなく、本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素を生産し得る限りいずれの微生物からも取得され得る。
本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素を得るために、本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素を天然に生産する微生物(例えば、アグロバクテリウム・ツメファシエンスNK1株)およびその天然または人為的変異株、ならびに本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素の発現に必要な遺伝子断片を人為的に取り出しそしてそれを組み入れた他の微生物(すなわち、遺伝子組換え微生物)を用いることができる。これらの微生物をまとめて、「本発明の酵素を産生する微生物」という。
本発明の酵素を産生する微生物を用いる3−キヌクリジノン不斉還元酵素の製造方法について説明する。上記微生物を適切な培地、例えば、適切な炭素源、窒素源、および無機塩類を含む培地中で培養し、酵素を蓄積させる。ここで、炭素源としては、デンプンおよびデンプン加水分解物、グルコース、スクロースなどの糖類、グリセロールなどのアルコール類、および有機酸(例えば、酢酸およびクエン酸)またはその塩(例えば、ナトリウム塩)などが挙げられる。窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、肉エキス、コーンスチープリカー、大豆粉などの有機窒素源、および硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素などの無機窒素化合物が挙げられる。無機塩類としては、塩化ナトリウム、リン酸1カリウム、硫酸マグネシウム、塩化マンガン、塩化カルシウム、硫酸第1鉄などが挙げられる。これらの栄養成分を適切な量で含む培地を用いて培養する。培地は、液体培地であっても固体培地であっても良いが、生産性の点で液体培地が好ましい。培養温度は、培養される微生物が十分に生育できる温度であり、好ましくは20〜37℃である。培養時間は、上記酵素が十分に生産される時間であり、好ましくは1〜7日間程度である。培養は、好ましくは、好気的な条件下で、例えば、通気攪拌または振盪しながら行われる。
本発明の酵素を産生する微生物は栄養培地で液体培養することにより、通常該酵素を菌体内に蓄積し得る。培養微生物自体だけでなく、アセトン乾燥または凍結乾燥処理して得られた微生物、機械的または酵素的方法により細胞壁を破砕した無細胞抽出物、界面活性剤、有機溶媒などにより処理した微生物、あるいは適切な担体に固定化したこれらの微生物または無細胞抽出物などとしても、用いることができる。これらをまとめて、本発明の酵素を産生する微生物の「処理物」というが、「処理物」は、酵素産生微生物により生成された酵素を反応に利用できる任意の形態を含む。同様に、微生物の培養液もまた、酵素反応に用いることができる。
本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素は、タンパク質の溶解度による分画(有機溶媒による沈澱や硫安などによる塩析など);陽イオン交換、陰イオン交換、ゲル濾過、疎水性などのクロマトグラフィー;キレート、色素、抗体などを用いたアフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を組み合わせることにより精製することができる。例えば、上記微生物の菌体を破砕して無細胞抽出液を調製した後、硫安沈澱、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過クロマトグラフィー、さらに陰イオン交換クロマトグラフィーを繰り返し行うことにより、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)においてほぼ単一のバンドとなるまで精製することができる。上記の分画または精製の途中段階で生じる粗精製酵素を用いてもよいし、精製酵素を用いてもよい。
本発明の酵素、該酵素を産生する微生物、ならびにその培養液および処理物は、以下に詳述するように、(R)−3−キヌクリジノールまたはその塩の製造に用いられ得る。
<3−キヌクリジノン不斉還元酵素をコードするポリヌクレオチド>
上で説明した本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素をコードするポリヌクレオチドもまた、本発明に含まれる。本発明のポリヌクレオチドは、DNA、RNAなどの天然のポリヌクレオチドに加え、人工的なヌクレオチド誘導体を含む人工的な分子であり得る。また、本発明のポリヌクレオチドは、DNA−RNAのキメラ分子であり得る。
本発明のポリヌクレオチドは、上記精製した酵素の部分アミノ酸配列を決定し、次いで当業者が通常用いる方法、例えば、マルチプライマーを用いるPCRおよびマルチプローブを用いるハイブリダイゼーション、によって取得され得る。
本発明のポリヌクレオチドは、例えば、配列番号1の1位から783位までの全長の塩基配列で表されるポリヌクレオチドを含む。本明細書中では、配列番号1の1位から783位までの全長の塩基配列を、単に「配列番号1に記載の塩基配列」という。この配列番号1に記載の塩基配列は、配列番号2に記載のアミノ酸配列を含むタンパク質をコードしており、このアミノ酸配列を含むタンパク質は、本発明による3−キヌクリジノン不斉還元酵素の好ましい形態を構成する。本発明のポリヌクレオチドとしては、上記の配列番号2に記載のアミノ酸配列に1または複数のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加したアミノ酸を含み、かつ3−キヌクリジノン不斉還元酵素活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドもまた挙げられる。
本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素をコードするポリヌクレオチドとしては、配列番号2に記載のアミノ酸配列と好ましくは少なくとも85%、より好ましくは少なくとも90%、なおより好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは99%の相同性を有するアミノ酸配列を有するタンパク質であって、かつ3−キヌクリジノン不斉還元酵素活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチドもまた挙げられる。タンパク質の相同性(ホモロジー)検索は、上で説明したとおりである。
本発明のポリヌクレオチドは、コードするタンパク質が本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素と実質的に同等の活性(3−キヌクリジノン不斉還元酵素活性)を有する限り、配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチドに対して1または複数の塩基が置換されていてもよい。
好ましくは、本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素をコードするポリヌクレオチドとしては、配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、さらにより好ましくは少なくとも80%、なおより好ましくは少なくとも90%、さらにより好ましくは少なくとも95%、さらにより好ましくは99%の配列同一性を有する塩基配列を有し、かつ3−キヌクリジノン不斉還元酵素活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチドもまた挙げられる。塩基配列の配列同一性の決定および検索についても、上で説明したとおりである。
本発明のポリヌクレオチドとしては、配列番号1に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件でハイブリダイズできるポリヌクレオチドであって、かつ3−キヌクリジノン不斉還元酵素活性を有するタンパク質をコードする、ポリヌクレオチドもまた挙げられる。
本発明のポリヌクレオチドは、本明細書中に記載した塩基配列情報に基づいて、目的とする遺伝子を、上記の微生物から取得することができる。遺伝子の取得には、PCRやハイブリダイズスクリーニングが用いられる。また、DNA合成によって遺伝子の全長を化学的に合成することもできる。上記塩基配列情報に基づいて、上記以外の生物に由来する上記3−キヌクリジノン不斉還元酵素をコードするポリヌクレオチドを取得することもできる。例えば、上記塩基配列もしくはその一部の塩基配列を用いてプローブを設計し、他の生物から調製したDNAに対してストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションを行うことにより、種々の生物由来の3−キヌクリジノン不斉還元酵素をコードするポリヌクレオチドを単離することができる。上記塩基配列情報に基づいて、DNA Databank of Japan(DDBJ)、EMBL、Gene-BankなどのDNAに関するデータベースに登録されている配列情報を用いてホモロジーの高い領域からPCR用のプライマーを設計することもできる。このようなプライマーを用い、染色体DNAもしくはcDNAを鋳型としてPCRを行うことにより、上記3−キヌクリジノン不斉還元酵素をコードするポリヌクレオチドを種々の生物から単離することもできる。
ストリンジェントな条件でハイブリダイズできるポリヌクレオチドとは、配列番号1に記載の塩基配列中の少なくとも20個、好ましくは少なくとも30個、例えば、40個、60個、または100個の連続した配列を一つまたは複数選択してプローブを設計し、例えばECL direct nucleic acid labeling and detection system(GE Healthcare社製)を用いて、マニュアルに記載の条件(例えば、洗浄条件:42℃、0.5×SSCを含むprimary wash buffer)において、ハイブリダイズするポリヌクレオチドを指す。
より具体的には、「ストリンジェントな条件」とは、例えば、通常、42℃、2×SSC、0.1%SDSの条件であり、好ましくは50℃、2×SSC、0.1%SDSの条件であり、さらに好ましくは65℃、0.1×SSCおよび0.1%SDSの条件であるが、これらの条件に特に制限されるものではない。ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては、温度や塩濃度などの複数の要素があり、当業者であればこれらの要素を適宜選択することで最適なストリンジェンシーを実現することが可能である。
本発明のポリヌクレオチドは、遺伝子組換え技術を用いて、同種もしくは異種の宿主中で発現され得る。
<ベクターおよび形質転換体>
本発明のベクターは、上記のポリヌクレオチドを含む。本発明の形質転換体は、本発明のベクターを発現可能に保持する。
形質転換体の作製のための手順および宿主に適合した組換えベクターの構築は、分子生物学、生物工学、遺伝子工学の分野において慣用されている技術に準じて行うことができる(例えば、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual、第2版、Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, NY, 1989年参照)。微生物中で、本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素をコードするポリヌクレオチドを発現させるためには、まず、微生物中で安定に存在するプラスミドベクターやファージベクターにこのDNAを導入し、その遺伝情報を転写・翻訳させる必要がある。そのためには、転写・翻訳を制御するユニットにあたるプロモーターを、本発明のDNA鎖の5’側上流に、より好ましくはターミネーターを3’側下流に、それぞれ組み込めばよい。このプロモーターおよびターミネーターとしては、宿主として利用される微生物中において機能することが知られているプロモーターおよびターミネーターが用いられる。これらの各種微生物において利用可能なベクター、プロモーター、ターミネーターなどに関しては、「微生物学基礎講座8遺伝子工学」、共立出版、特に酵母に関しては、Adv. Biochem. Eng., 1990年、43巻、pp.75;Yeast、1992年、8巻、pp.423などに詳細に記述されている。
本発明の形質転換体は、補酵素NADのNADHへの再生系が導入されていることが好ましい。3−キヌクリジノンを立体選択的に(R)−3−キヌクリジノールへと還元する過程で、本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素はNADHを要求する。この3−キヌクリジノン不斉還元酵素による還元反応に付随して、NADHからNADが生成する。NADは、適当な基質の酸化反応を利用することによって、再び還元型であるNADHに再生することができる。したがって、基質の還元反応を効率化するために、本発明の形質転換体では、NADをNADHに再生する酵素(「NADH再生酵素」)が発現されることが好ましい。本発明におけるNADH再生酵素としては、グルコース脱水素酵素、グルタミン酸脱水素酵素、ギ酸脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、グルコース−6−リン酸脱水素酵素、ホスホグルコン酸脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、およびグリセロール脱水素酵素などが挙げられる。好ましくは、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)に由来するグルコース脱水素酵素であり、より好ましくは、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)IWG3株およびIAM1030株に由来するグルコース脱水素酵素である。これらをコードする遺伝子はすでに単離され、その配列情報は、データベースに登録されている(UniProtKB/Swiss-Prot Accession No. P39482およびP39482)。データベースに登録されている塩基配列に基づいてPCRやハイブリダイズスクリーニングを行うことによって、当該微生物から取得することもできる。
単一のベクター中に複数の遺伝子導入する場合には、プロモーター、ターミネーターなどの発現制御に関わる領域をそれぞれの遺伝子に連結する方法、あるいはラクトースオペロンのように複数のシストロンを含むオペロンとして発現させる方法などがある。
これらの2つの遺伝子の宿主への導入には、不和合性を避けるために複製起点の異なる複数のベクターに別々に遺伝子を挿入した組換えベクターにより宿主を形質転換する方法、単一のベクターに両遺伝子を挿入した組換えベクターにより宿主を形質転換する方法、一方、もしくは両方の遺伝子を宿主の染色体中に挿入する方法などを利用できる。
本発明のポリヌクレオチドを発現させるために形質転換の対象となる宿主は、上記ポリヌクレオチドを含むベクターにより形質転換され、3−キヌクリジノン不斉還元酵素活性を発現することができる生物であれば特に制限はない。例えば、エシェリヒア(Escherichia)属、バチルス(Bacillus)属、シュードモナス(Pseudomonas)属、セラチア(Serratia)属、ブレビバクテリウム(Brevibacterium)属、コリネバクテリイウム(Corynebacterium)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、ラクトバチルス(Lactobacillus)属などの宿主ベクター系の開発されている細菌;ロドコッカス(Rhodococcus)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属などの宿主ベクター系の開発されている放線菌;サッカロマイセス(Saccharomyces)属、クルイベロマイセス(Kluyveromyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属、チゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属、ヤロウィア(Yarrowia)属、トリコスポロン(Trichosporon)属、ロドスポリジウム(Rhodosporidium)属、ピキア(Pichia)属、キャンディダ(Candida)属などの宿主ベクター系の開発されている酵母;ノイロスポラ(Neurospora)属、アスペルギルス(Aspergillus)属、セファロスポリウム(Cephalosporium)属、トリコデルマ(Trichoderma)属などの宿主ベクター系の開発されているカビなどが挙げられる。遺伝子組換えの操作の容易性から、大腸菌が好ましい。
また、微生物以外でも、植物、動物において様々な宿主・ベクター系が開発されており、例えば、蚕を用いた昆虫(Nature, 1985年, 315巻, pp.592-594)、菜種、トウモロコシ、ジャガイモなどの植物中に、大量に異種タンパク質を発現させる系が開発されており、これらを利用してもよい。
<(R)−3−キヌクリジノールの製造方法>
本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素(上記の精製酵素または粗精製酵素の両方を含む)、該酵素を生産する微生物(上記形質転換体をも含む)、または該微生物もしくは形質転換体の培養液もしくは処理物を、3−キヌクリジノンまたはその塩に作用させることにより、(R)−3−キヌクリジノールまたはその塩が効率よく生成される。「3−キヌクリジノンまたはその塩」とは、その窒素原子において有機酸、鉱酸などと塩を形成しているものもまた、上記3−キヌクリジノン不斉還元酵素による3−キヌクリジノンの不斉還元に使用できることを意図する。具体的には、有機酸塩としては酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、フマル酸、マロン酸、シュウ酸などの脂肪族有機酸塩、安息香酸等の芳香族有機酸塩などが挙げられる。鉱酸塩としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩などが挙げられる。以下の説明において「3−キヌクリジノン」とのみ表示している場合も、上記のような3−キヌクリジノンの塩が使用可能である。
本発明の方法では、本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素(上記の精製酵素または粗精製酵素の両方を含む)、該酵素を生産する微生物(上記形質転換体をも含む)、または該微生物もしくは形質転換体の培養液もしくは処理物(以下では、これらをまとめて「生物学的触媒」ともいう)を含有する適切な反応液中で、3−キヌクリジノンまたはその塩を不斉還元し、生成物として(R)−3−キヌクリジノールを得る。
本発明の方法の1つの実施態様において、作用させる工程(以下、「作用工程」ともいう)では、3−キヌクリジノンの存在下で、3−キヌクリジノン還元酵素を発現する微生物を培養する。培養液に添加する3−キヌクリジノンの量は、好ましくは0.1〜50%(w/v)、より好ましくは0.1%〜10%(w/v)である。添加された3−キヌクリジノンは必ずしも完全に溶解させなくてもよい。3−キヌクリジノンが完全に溶解しない場合、例えば、塩(例えば、塩酸塩)として溶解性を向上させてもよく、あるいはエタノールのような有機溶媒を、還元反応を実質的に阻害しない程度(例えば、5%(v/v))まで添加してもよい。
本発明の方法の別の実施態様において、作用工程では、適切な反応液(水または緩衝液)中で、培養された微生物の菌体またはその処理物(例えば、アセトン処理物、風乾処理物、凍結乾燥処理物)を3−キヌクリジノンと接触させる。反応液に添加する3−キヌクリジノンの量は、好ましくは0.1〜30%(w/v)、より好ましくは0.1〜20%(w/v)である。添加された3−キヌクリジノンは必ずしも完全に溶解させなくてもよい。3−キヌクリジノンが完全に溶解しない場合、例えば、塩(例えば、塩酸塩)として溶解性を向上させてもよく、あるいはエタノールのような有機溶媒を、還元反応を実質的に阻害しない程度(例えば、5%(v/v))に添加してもよい。特に菌体処理物を使用する場合は、補酵素としてNADHを添加することが好ましい。この補酵素の添加量は、好ましくは0.1〜1000mg/L、より好ましくは2〜200mg/Lである。
反応は、制御されたpHのもとで行われ得る。反応のための至適なpHを保持するために、反応液として、例えば、リン酸緩衝液などの緩衝液が使用される。反応液のpHは好ましくは5〜9、より好ましくは6〜8である。あるいは、反応の進行に伴って変化するpHをモニターしながら、酸(例えば、硫酸)およびアルカリ(例えば、水酸化ナトリウム)を添加することによって反応液のpHを至適なpHに維持および調節し得る。
上記の生物学的触媒の量は、その形状および活性により適宜決定され、特に制限はない。その基質の3−キヌクリジノンに対して、約0.1〜10g/基質mol、好ましくは約1〜5g/基質molであることが望ましい。
反応温度は、好ましくは10℃〜55℃、より好ましくは25℃〜45℃である。
反応時間は、用いる生物学的触媒の量、反応温度、反応pHなどに依存して変動するが、通常1〜72時間程度である。
本発明の製造方法においては、作用工程に、上記の補酵素再生系を組み合わせることが好ましい。NADからNADHへの再生は、植物、微生物、形質転換体の含有するNADからNADHを再生する酵素によって行うことができる。NADHの再生反応を触媒する酵素は、単一であってもよいし、複数の酵素で構成される多段階反応であってもよい。NAD還元能は、反応系にグルコース、スクロースなどの糖、有機酸、またはエタノール、イソプロパノールなどのアルコールを添加することにより増強できる。NADHの再生に有用な酵素としては、グルコース脱水素酵素、グルタミン酸脱水素酵素、ギ酸脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、グルコース−6−リン酸脱水素酵素、ホスホグルコン酸脱水素酵素、アルコール脱水素酵素、およびグリセロール脱水素酵素が挙げられる。これらの酵素としては、精製酵素のみならず、該酵素を有する微生物、その処理物、あるいは部分精製酵素などを用いることができる。例えば、グルコース脱水素酵素の場合には、グルコースからグルコノラクトンへの酸化に伴ってNADからNADHへの再生が行われる。
これらのNADH再生に必要な成分は、本発明の方法における3−キヌクリジノン不斉還元酵素反応系に添加され、もしくはこれらの成分が固定化されたものを添加してもよい。あるいは、NADHの交換が可能な膜を介して上記反応系に接触させることができる。
(R)−3−キヌクリジノールの製造方法において、本発明の3−キヌクリジン不斉還元酵素をコードするポリペプチドを含む組換えベクターで形質転換した形質転換体を利用する場合には、NADH再生のための反応系を付加しなくてもよい。すなわち、NADH再生活性の高い生物を宿主と用いることにより、形質転換体を用いた還元反応において、NADH再生酵素を添加することなく効率的に反応を行い得る。あるいは、上記NADH再生に利用可能な酵素遺伝子を、本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素をコードするポリヌクレオチドと同時に導入した宿主を利用することもできる。両酵素を発現する形質転換体には、上で説明したように、3−キヌクリジノン不斉還元酵素をコードするポリヌクレオチドを含むベクターと上記NADH再生に利用可能な酵素遺伝子を含むベクターとをそれぞれ発現可能に保持する形質転換体、および3−キヌクリジノン不斉還元酵素をコードするポリヌクレオチドおよび上記NADH再生に利用可能な酵素遺伝子を含むベクターを発現可能に保持する形質転換体が含まれる。このような形質転換体を用いることにより、本発明の3−キヌクリジノン不斉還元酵素およびNADH再生酵素の発現、および基質の不斉還元反応を、より効率よく行うこともできる。
補酵素の再生系が組み合わせられる場合、補酵素NADおよび/またはグルコース、スクロース、エタノール、メタノールなどのエネルギー源が上記培養液または反応液に添加され得る。上記補酵素NADまたはエネルギー源の添加量は、基質である3−キヌクリジノンおよび上記生物学的触媒の量などに基づいて適宜決定され得る。反応は、上述したように反応温度、必要により反応液のpHを制御しながら行い得る。必要に応じて、反応の途中で反応基質である3−キヌクリジノンおよび/または上記補酵素、エネルギー源を適宜加えて、反応を継続させてもよい。
生成した(R)−3−キヌクリジノールは、基質の3−キヌクリジノンおよび生成した(R)−3−キヌクリジノールの化学的特性または物理学的特性の差異を利用して分離され得る。例えば、反応終了後、その性質(例えば、溶解度、疎水性)に応じて、溶媒抽出法、結晶析出法、カラムクロマトグラフ法などの当該分野で通常用いられる分離操作を用いて、未反応の3−キヌクリジノンと分離される。例えば、溶媒抽出法では、塩基性条件下、トルエンで反応液から未反応の3−キヌクリジノンを抽出除去した後、クロロホルム、ジクロロメタンなどの有機溶媒を用いて、生成した(R)−3−キヌクリジノールを回収することができる。
得られた生成物は、必要に応じて、上記の手段を用いて、さらに精製され得る。この場合、第2の手段は、第1の手段と異なることが好ましい(例えば、第1の手段として溶媒抽出を用いた場合、第2の手段として、例えばカラムクロマトグラフィーが挙げられる)。
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
((R)−3−キヌクリジノールの変換率ならびに光学純度の測定)
反応液中の3−キヌクリジノンの定量および還元反応により生成した3−キヌクリジノールの定量ならびに光学純度の測定は、以下の分析条件を用いて、ガスクロマトグラフィーにより行った。
ガスクロマトグラフィー分析条件:
カラム:gamma-DEX120(長さ:30m、内径:0.25mmID;スペルコ社製)
カラム初期温度:140℃(10分)
インジェクター温度:220℃
検出器温度:220℃
キャリアーガス:ヘリウム(200kPa)
検出器:FID
(実施例1:アグロバクテリウム・ツメファシエンスNK1株の乾燥菌体の調製)
アグロバクテリウム・ツメファシエンスNK1株(独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センターに寄託され、平成18年12月26日に受託番号FERM P−21144が付与された株)は、土壌より分離した株である。この株を予め、培地(グルコース20g/L、酵母エキス(日本製薬製)3g/L、ポリペプトン(日本製薬製)5g/L、レンダーエキス(ミクニ化学産業製)3g/L、硫酸アンモニウム2g/L、硫酸マグネシウム・7水和物0.5g/L、リン酸ニ水素カリウム1.0g/L、pH7.0)で、28℃にて前培養しておいた。
3L容量の三角フラスコに500mLの上記組成の培地を入れ、121℃で20分間、オートクレーブ滅菌した。予め同培地で前培養した上記アグロバクテリウム・ツメファシエンスNK1株の培養液5mLをオートクレーブ滅菌した上記培地に接種し、28℃で3日間、ロータリーシェーカーで振盪培養(80rpm)した。得られた培養液から遠心分離(11,300×g、20分、4℃)により菌体を集め、300mLの蒸留水により1回洗浄した。このようにして得られた洗浄菌体を減圧条件下(50mmHg)、25℃にて24時間静置し、乾燥菌体を得た。
(実施例2:アグロバクテリウム・ツメファシエンスNK1株の乾燥菌体を用いた3−キヌクリジノンの還元)
2mL容量のエッペンドルフチューブに0.2mLの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)を入れ、そして3−キヌクリジノン・塩酸塩、NAD、グルコース脱水素酵素(GLUCDH Amano II、アマノエンザイム製)、およびグルコースを、それぞれ終濃度300mM、0.9mM、14U/mL、および450mMとなるように添加した。さらに、5.6mgの実施例1の乾燥菌体を添加し、25℃にて転倒攪拌することにより、5時間反応を行った。
反応終了後、反応液に200μLの飽和炭酸カリウム水溶液および200μLのクロロホルムを添加して攪拌し、そして得られたクロロホルム層をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、変換率は5%であり、そして得られた(R)−3−キヌクリジノールの光学純度は99%ee以上であった。
(実施例3:pH制御下におけるアグロバクテリウム・ツメファシエンスNK1株の乾燥菌体を用いた3−キヌクリジノンの還元)
5mLの0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に、0.5gの実施例1の乾燥菌体、6mgのNAD、1mgのグルコース脱水素酵素(GLUCDH Amano II、アマノエンザイム製)、0.5gの3−キヌクリジノン塩酸塩、および0.8gのグルコースを添加し、25℃でスターラー攪拌することにより、反応を行った。反応中、pHスタットにより48%(w/v)KOHを滴下しながら、生成するグルコン酸を中和した。19時間の反応後、反応液100μLをサンプリングし、100μLの飽和炭酸カリウム水溶液、および200μLのクロロホルムを添加して攪拌し、そして得られたクロロホルム層をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、変換率は99%であり、そして得られた(R)−3−キヌクリジノールの光学純度は88.3%eeであった。
(実施例4:3−キヌクリジノン不斉還元酵素の精製)
以下の方法に従って、実施例1と同じアグロバクテリウム・ツメファシエンスNK1株より、3−キヌクリジノンを不斉的に還元して(R)−3−キヌクリジノールを生成する活性を有する酵素を、電気泳動的に単一に精製した。
(a)培養
培地(グルコース1%(w/v)、ペプトン1.5%(w/v)、酵母エキス0.1%(w/v)、リン酸水素二カリウム0.3%(w/v)、硫酸マグネシウム・7水和物0.02(w/v)%、塩化ナトリウム0.2%(w/v)、pH7)12,500mLを調製し、2L容の坂口フラスコに500mLずつ分注して、121℃で20分間蒸気殺菌した。実施例1と同じアグロバクテリウム・ツメファシエンスNK1株を予め同培地で前培養した。この微生物培養液を上記蒸気殺菌した培地に10mLずつ接種し、28℃で48時間振盪培養した。この培養液から遠心分離(8,000rpm、20分間、4℃)により菌体を集めた。菌体を0.85%塩化ナトリウム水溶液で2回洗浄し、そして遠心分離して回収した。
(b)無細胞抽出液の調製
湿菌体84.5gを170mLの10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に懸濁し、そして30分間の超音波処理により菌体を破砕した。この菌体破砕物から遠心分離(10,000rpm、20分間、4℃)にて菌体残渣を取り除き、無細胞抽出液195mLを得た。
(c)硫安分画
無細胞抽出液に60%(w/v)飽和となるように硫酸アンモニウムを添加し、これを溶解させ、次いで生じた沈殿を遠心分離により集めた。この沈澱を、0.1M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)に溶解し、同一緩衝液で透析した。
(d)DEAE-Sephacelバッチクロマトグラフィー
得られた粗酵素液を、0.1M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で予め平衡化したDEAE-Sephacel(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)樹脂600mLに添加した。濾過し、同一緩衝液で樹脂を洗浄し、1M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で活性画分を溶出させた。
(e)Phenyl Superoseカラムクロマトグラフィー
得られた活性画分を集め、限外濾過(Amicon YM-10、ミリポア社製)により脱塩濃縮および4M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)への置換を行った。同緩衝液で平衡化したPhenyl Superose HR 10/10(GE製)カラムに上記酵素液の5分の1量を添加した。同緩衝液でカラムを洗浄し、そして4Mから0Mまでの塩化ナトリウムのリニアグラジエントにより、活性画分を溶出させた。残りの酵素液についても、同じ操作を4回繰り返した。
(f)Superdex 200カラムクロマトグラフィー
得られた活性画分を集め、限外濾過(Amicon YM-10、ミリポア社製)により脱塩濃縮した。予め0.2M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で平衡化したSuperdex 200 HR 10/30カラム(GE製)に上記酵素液の8分の1量を添加し、同一緩衝液で活性画分を溶出させた。残りの酵素液についても、同じ操作を7回繰り返した。
(g)MonoQカラムクロマトグラフィー(1回目)
得られた活性画分を集め、限外濾過(Amicon YM-10、ミリポア社製)により脱塩濃縮および0.1M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)への置換を行った。最終的に2mLに濃縮した。0.1M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で予め平衡化したMonoQ HR 5/5 カラム(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)に上記酵素液の2分の1量を添加した。同緩衝液でカラムを洗浄し、そして0.1Mから0.5Mまでの塩化ナトリウムのリニアグラジエントにより、活性画分を溶出させた。残りの酵素液についても、同じ操作を繰り返した。
(h)MonoQカラムクロマトグラフィー(2回目)
得られた活性画分を集め、限外濾過(Amicon YM-10、ミリポア社製)により脱塩濃縮および0.1M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)への置換を行った。最終的に2.5mLに濃縮した。0.1M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で予め平衡化したMonoQ HR 5/5(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)カラムに得られた濃縮液を添加し、同緩衝液でカラムを洗浄し、そして0.1Mから0.5Mまでの塩化ナトリウムのリニアグラジエントにより、活性画分を溶出させた。
(i)MiniQカラムクロマトグラフィー(1回目)
得られた活性画分を集め、限外濾過(Amicon YM-10、ミリポア社製)により脱塩濃縮および0.1M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)への置換を行った。最終的に0.8mLに濃縮した。0.1M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で予め平衡化したMiniQ PC 3.2/3(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)カラムに上記酵素液の4分の1量を添加し、同緩衝液でカラムを洗浄し、そして0.1Mから0.25Mまでの塩化ナトリウムのリニアグラジエントにより、活性画分を溶出させた。残りの酵素液についても、同じ操作を3回繰り返した。
(j)MiniQカラムクロマトグラフィー(2回目)
得られた活性画分を集め、限外濾過(Amicon YM-10、ミリポア社製)により脱塩濃縮および0.1M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)への置換を行った。最終的に0.2mLに濃縮した。0.1M塩化ナトリウムを含む10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)で予め平衡化したMiniQ PC 3.2/3(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)カラムに得られた濃縮液を添加し、同緩衝液でカラムを洗浄し、そして0.1Mから0.25Mまでの塩化ナトリウムのリニアグラジエントにより、活性画分を溶出させた。活性画分を集め、SDS−PAGEにより解析した。その結果、単一バンドであることが確認できた。精製酵素の3−キヌクリジノンに対する比活性は132U/mgであった。
精製の要約を以下の表1に示す。
Figure 2008212144
(実施例5:3−キヌクリジノン不斉還元酵素の性質の測定)
実施例4で得た精製酵素の酵素学的性質について検討した。酵素活性の測定のための標準的な反応条件は以下の通りであった。0.2Mリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中に、基質3−キヌクリジノン・塩酸塩0.618mM、補酵素NADH 0.32mM、および酵素を含む反応液を用いた。反応は、基質を含まない反応液を37℃で保温し、そして2分後に基質を添加することにより、開始させた。反応に伴うNADHの減少を340nmの波長の吸光度変化で測定した。酵素活性は、1分間に1マイクロモルのNADHをNADに変換させる酵素量を1単位(U)とした。
(1)作用:NADHを補酵素として、3−キヌクリジノンに作用し、光学純度99%ee以上の(R)−3−キヌクリジノールを生成した。
(2)基質特異性:各種カルボニル化合物を基質として、3−キヌクリジノンと同様の条件で反応を行った。結果は、3−キヌクリジノンを基質とした場合の酵素活性を100とした相対割合で表す。3−キヌクリジノンおよび各種カルボニル化合物を基質とした酵素活性を表2に示す。さらに、比較のために、特許文献18に記載の酵素(NADHを補酵素とするミクロバクテリウム属由来のアルコール脱水素酵素)および非特許文献4に記載のTR−Iの結果も示す。
Figure 2008212144
(3)補酵素:NADH依存性であり、NADPHは補酵素として利用しない。また、NADを補酵素とする3−キヌクリジノールの酸化反応は、6.18mM(R)−3−キヌクリジノールおよび2mM NADを含むTris-HCl(pH9.0)中37℃で、3.27U/mgの酸化活性を示した。
(4)作用至適pH:緩衝液として酢酸緩衝液(pH3.5〜5.5)、リン酸カリウム緩衝液(pH5.5〜7.5)、トリス−塩酸緩衝液(pH7.5〜9.0)、グリシン−水酸化ナトリウム緩衝液(pH8.5〜11.0)を用いてpHを変化させて、3−キヌクリジノン還元活性を測定した。反応の至適pHは7.0であり、5.5から8.0の広い範囲のpHで最大活性の50%以上の活性を示した。
(5)作用至適温度:標準反応条件のうち温度だけを変化させて、3−キヌクリジノン還元活性を測定した。反応の至適温度は40〜45℃付近にあった。
(6)温度安定性:精製酵素を10mMリン酸カリウム緩衝液(pH7.0)中で種々の温度にて30分間処理し、残存活性を標準条件で測定した。35℃以下では、処理前の90%以上の活性が残存していた。
(7)阻害剤:標準反応液に各種金属イオンまたは阻害剤を添加して3−キヌクリジノン還元活性を測定した。結果は、無添加条件を100とした相対活性として以下の表3および表4に示した。Ag+、Ca2+、Mn2+、Be2+、Hg2+、Pb2+、NaIO4によって阻害を受けた。
Figure 2008212144
Figure 2008212144
(8)分子量:精製酵素のサブユニットの分子量をSDS−PAGE(12.5%(w/v)ポリアクリルアミドゲル)により求めた結果、約28,500であった。また、TSK G-3000SWカラム(東ソー株式会社製)によるゲル濾過クロマトグラフィーで測定した分子量は、約102,000であった。これらの結果より、本発明の3−キヌクリジノン還元酵素は、ホモテトラマーと予想された。
(9)K値:標準反応液中の基質濃度を変化させて反応を行い、ミカエリス定数Kをラインウエーバー・バークのプロットにより得た。得られたミカエリス定数Kは1.57mMであった。さらに、標準反応液中の基質濃度を20mMにして、補酵素NADHの濃度を変化させて、同様にミカエリス定数Kを求めた。この場合のミカエリス定数Kは0.109mMであった。基質とNADH濃度がともにK値より十分高い状態のとき、Vmax値は794U/mgであった。
(実施例6:3−キヌクリジノン不斉還元酵素の部分アミノ酸配列の解析)
実施例4で得られた精製酵素を8M尿素存在下で変性させ、アクロモバクター由来のリジルエンドペプチダーゼ(和光純薬製)で消化した。得られた消化物を、予め0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸溶液で平衡化した逆相カラムμRPC C2/C8 SC2.1/10(GE社製)に添加し、アセトニトリルのリニアグラジエント(0から80%)により分離し、ペプチドK27、ペプチドK31、およびペプチドK35を得た。精製酵素ならびに分取したこの3種のペプチドをそれぞれプロテインシーケンサー(Applied Biosystems製、model 491 HT)により配列解析した。精製酵素のN末端、ペプチドK27、ペプチドK31、およびペプチドK35のアミノ酸配列は、それぞれ配列表中の配列番号3、配列番号4、配列番号5、および配列番号6に示すとおりである。
(実施例7:3−キヌクリジノン不斉還元酵素遺伝子のコア領域のクローニング)
実施例1と同じアグロバクテリウム・ツメファシエンスNK1株の培養菌体から、Nucl. Acids Res., 1980年, 8巻, pp.4321-4325に記載の方法に従って染色体DNAを抽出した。
実施例6で得られた精製酵素のN末端およびペプチドK35のアミノ酸配列に基づいて、PCR用の縮重オリゴヌクレオチドプライマーとしてセンスプライマーS7(配列番号7)およびアンチセンスプライマーA3(配列番号8)を設計した。PCRの反応液組成は次の通りである:鋳型染色体DNA 150ng、10×Ex Taq buffer 5μL、プライマー各150nM、dNTP混合物各0.2mM、およびEx Taqポリメラーゼ1.5Uに、蒸留水を全量50μLとなるように添加した。PCR反応条件は次の通りであった:ステップ1;94℃、30秒;ステップ2;61℃、30秒;ステップ3;72℃、2分;ステップ1からステップ3を33サイクル繰り返す;ステップ4;72℃、7分;ステップ5;4℃、∞。PCRによって約700bpの特異的な増幅産物を得た。このPCR反応液についてアガロースゲル電気泳動を行った。目的の約700bpのバンド部分を切り出し、TOPO TA Cloning Kit for Sequencing(Invitrogen製)を用いて、pCR4−TOPOベクターに結合させた。得られたベクターで大腸菌TOP10株を形質転換した。形質転換株をアンピシリン50μg/mLを含むLB培地(ペプトン1%(w/v)、酵母エキス0.5%(w/v)、塩化ナトリウム1%(w/v)、pH7.0)で培養し、QIAprep Spin Miniprep Kit(Qiagen製)を用いてDNAシーケンス用のプラスミドを抽出および精製した。続いて、pCR4−TOPOベクターに由来するT7プライマーおよびM13リバースプライマーを用いて自動シークエンサーによって、挿入断片の塩基配列を決定した。
図1は、得られた塩基配列およびその推定アミノ酸配列を示す。図1において下線付きのアミノ酸配列は、実施例6のアミノ酸配列解析によって得られた実施例4の精製酵素の部分アミノ酸配列と一致している。図1に示す配列解析の結果から、PCR産物が694bpのヌクレオチドからなり、推定アミノ酸配列が、実施例4で精製した天然の3−キヌクリジノン不斉還元酵素の部分アミノ酸配列と一致することが明らかとなった。
(実施例8:3−キヌクリジノン不斉還元酵素遺伝子のコア領域周辺のクローニング)
実施例7で決定した遺伝子配列の周辺領域の配列を明らかにするために、その上流側と下流側とに分けて、それぞれをBD GenomeWalker kit(クロンテック社製)を用いてPCRにより増幅した。
(a)上流側のクローニング
染色体DNAをStuIで完全消化し、キットに付属のGenomeWalker Adaptorを連結させてライブラリーを作製した。これを鋳型にしてキットに付属のアダプタープライマーAP2と3−キヌクリジノン不斉還元酵素の部分遺伝子配列に基づいて作成したアンチセンスプライマーNN(配列番号9)とを用いて、PCRにより増幅した。PCR反応液は、実施例8と同様である。PCR反応条件は次の通りであった:ステップ1;94℃、1分;ステップ2;94℃、20秒;ステップ3;72℃、4分;ステップ2からステップ3を7サイクル繰り返す;ステップ4;94℃、20秒;ステップ5;68℃、4分;ステップ4から5を30サイクル繰り返す;ステップ6;68℃、7分;ステップ7;4℃、∞。このPCRにより約150bpの特異的な増幅産物が得られた。これをpCR4−TOPOベクターにサブクローニングし、配列決定した。
(b)下流側のクローニング
染色体DNAをApaIおよびPvuIIで完全消化し、ライブラリーを作製した。実施例7で得られた約700bpのヌクレオチドをプローブとしてサザン解析を行った。その結果、約1.1kbpの断片がハイブリダイゼーションにより得られた。この断片をGenomeWalker Adaptorに連結させ、これを鋳型としてアダプタープライマーAP2と3−キヌクリジノン不斉還元酵素の部分遺伝子配列に基づいて作成したセンスプライマーCC(配列番号10)とを用いて、PCRにより増幅した。このPCRにより約200bpの特異的な増幅産物が得られた。これをpCR4−TOPOベクターにサブクローニングし、配列決定した。
実施例7および8で決定した3−キヌクリジノン不斉還元酵素遺伝子を含む領域の塩基配列を図2に示す。さらに、この塩基配列の構造遺伝子部分について、その塩基配列から推定されるアミノ酸配列を図2中の塩基配列の下段に示す。図2に示す配列解析の結果から、3−キヌクリジノン不斉還元酵素をコードする構造遺伝子は783bpのヌクレオチドからなり、260残基のアミノ酸をコードしていることが明らかとなった。図2に示す塩基配列から推定されるアミノ酸配列中に、実施例6のアミノ酸配列解析によって得られた実施例4の精製酵素の部分アミノ酸配列が見られた(図2中、下線付きで示す)。N末端のメチオニンが欠失していることを除くとその部分で一致した。N末端のメチオニンはタンパク質合成後の修飾により除去されるものと考えられる。
配列類似性検索プログラムBLASTおよびFASTAを用いて、3−キヌクリジノン不斉還元酵素の推定アミノ酸配列を3種類のタンパク質配列データベース(PTR、PRF、およびSWISS-PROT)内の配列と比較した。その結果、ロドスピリラム・ルブラム(Rhodosprillum rubrum)ATCC11170株の短鎖型脱水素酵素/還元酵素(SDR)ファミリーに属するタンパク質と高い類似性を示した(81%)。
(実施例9:3−キヌクリジノン不斉還元酵素遺伝子を含む組換えプラスミドの作製)
大腸菌において3−キヌクリジノン不斉還元酵素を発現させるために、形質転換に用いる組換えプラスミドを作製した。まず、実施例8で決定された塩基配列に基づいて、3−キヌクリジノン不斉還元酵素の構造遺伝子の開始コドン部分にNdeI部位を付加したセンスプライマー(配列番号11)と、終止コドンの直後にXhoIを付加したアンチセンスプライマー(配列番号12)とを設計した。これらのプライマーを用いて、実施例7の染色体DNAを鋳型としてPCRを行い、約800bpの特異的な増幅産物を得た。この増幅された断片をプラスミドpT7-Blue T-vector(Novagen社製)にサブクローニングし、M13プライマーを用いてシーケンスして、PCRによるエラーが起こっていないクローンを選別し、pT7QRとした。得られたpT7QRをNdeIおよびXhoIで二重消化し、3−キヌクリジノン不斉還元酵素の構造遺伝子を取り出し、プラスミドpET-21a(+)(Novagen社製)中のT7プロモーターの下流に位置するNdeI-XhoI部位に挿入し、pETQRを作製した。
(実施例10:3−キヌクリジノン不斉還元酵素およびグルコース脱水素酵素を発現する組換え大腸菌の作製)
実施例9で作製した組換えプラスミドpETQRを用いて大腸菌BL21(DE3)株を形質転換した。組換え大腸菌BL21(DE3)[pETQR]を、定法に基づいてコンピテントセル化し、バチルス・メガテリウム(Bacillus megaterium)IWG3株のグルコース脱水素酵素遺伝子を含む組換えプラスミドpACGD(Appl. Microbiol. Biotechnol., 1999年, 51巻, pp.486-490に記載)を導入し、組換え大腸菌BL21(DE3)[pETQR&pACGD]を作製した。
得られた組換え大腸菌BL21(DE3)[pETQR&pACGD]を50μg/mLのアンピシリンおよび25μg/mLのカナマイシンを添加した5mLのLB培地中で37℃にて300rpmで3時間培養し、終濃度0.1mMとなるようにIPTGを添加して、さらに18℃にて12時間、振盪培養して、タンパク質の発現を誘導した。この菌体を遠心分離により集め、蒸留水にて1回洗浄し、そして凍結乾燥し、組換え大腸菌BL21(DE3)[pETQR&pACGD]の乾燥菌体を作製した。
(実施例11:組換え大腸菌を用いた3−キヌクリジノン還元)
2mL容量のエッペンドルフチューブに100μLの1Mリン酸緩衝液(pH7.0)、10μLの60mg/mL NAD水溶液、10μLの50%(w/v)グルコース水溶液、250μLの2mg/mL 実施例10で調製した乾燥菌体の水懸濁液、620μLの蒸留水、および100μLの10%(w/v)3−キヌクリジノン・塩酸塩水溶液を添加し、37℃にて24時間振盪した。続いて、反応液200μLをサンプリングし、200μLの飽和炭酸カリウム水溶液および200μLのクロロホルムを添加して攪拌し、得られたクロロホルム層をガスクロマトグラフィーで分析した。その結果、変換率は98%であり、そして得られた(R)−3−キヌクリジノールの光学純度は99%ee以上であった。
本発明によれば、光学活性3−キヌクリジノール、特に(R)−3−キヌクリジノールを高い光学純度で効率よく製造することができる。得られる光学活性3−キヌクリジノールは、動脈硬化、気管支喘息、または胃腸運動抑制などの治療剤を製造するための合成中間体として有用である。
アグロバクテリウム・ツメファシエンスNK1株由来染色体DNAを鋳型としてセンスプライマーS7(配列番号7)およびアンチセンスプライマーA3(配列番号8)を用いたPCRにより得られた断片の塩基配列およびその推定アミノ酸配列を示す。 3−キヌクリジノン不斉還元酵素遺伝子を含む領域の塩基配列および該酵素の推定アミノ酸配列を示す。

Claims (17)

  1. 以下の(1)から(3)に示す生化学的性質を有する酵素:
    (1)作用:還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)を補酵素として、3−キヌクリジノンまたはその塩を不斉還元し、(R)−3−キヌクリジノールを生成する;
    (2)基質特異性:3−キヌクリジノン、p−トルキノンおよびα−ナフトキノンに作用し、その相対活性が、3−キヌクリジノン、p−トルキノンおよびα−ナフトキノンの順に高い;および
    (3)至適温度:pH7で反応させる場合、温度40〜45℃において作用が至適である。
  2. SDS−PAGEで測定した場合のサブユニットの分子量が28,500であり、ゲル濾過クロマトグラフィーで測定した場合の分子量が102,000である、請求項1に記載の酵素。
  3. 以下の(a)から(c)のいずれかのアミノ酸配列を有する、還元型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)を補酵素として、3−キヌクリジノンまたはその塩を不斉還元し、(R)−3−キヌクリジノールを生成する酵素:
    (a)配列番号2に記載のアミノ酸配列;
    (b)配列番号2に記載のアミノ酸配列において1もしくは複数個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列;または
    (c)配列番号2に記載のアミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列。
  4. 前記酵素が、アグロバクテリウム・ツメファシエンスNK1株(FERM P−21144)に由来する、請求項1から3のいずれかの項に記載の酵素。
  5. アグロバクテリウム・ツメファシエンスNK1株(FERM P−21144)。
  6. 請求項1から4のいずれかの項に記載の酵素をコードするポリヌクレオチド。
  7. 以下の(i)から(iii)のいずれかである、請求項6に記載のポリヌクレオチド:
    (i)配列番号1に記載の塩基配列を有するポリヌクレオチド;
    (ii)配列番号1に記載の塩基配列に相補的な塩基配列とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ3−キヌクリジノンを不斉的に還元して(R)−3−キヌクリジノールを生成する活性を有する酵素をコードする、ポリヌクレオチド;または
    (iii)配列番号1に記載の塩基配列と少なくとも60%の配列同一性を有する塩基配列を有し、かつ3−キヌクリジノンを不斉的に還元して(R)−3−キヌクリジノールを生成する活性を有する酵素をコードする、ポリヌクレオチド。
  8. 請求項6または7に記載のポリヌクレオチドを含むベクター。
  9. さらに酸化型ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)をNADHに再生する酵素をコードするポリヌクレオチドを含む、請求項8に記載のベクター。
  10. 前記NADをNADHに再生する酵素がグルコース脱水素酵素である、請求項9に記載のベクター。
  11. 請求項8から10のいずれかの項に記載のベクターを発現可能に保持した形質転換体。
  12. 請求項8に記載のベクターおよびNADをNADHに再生する酵素をコードするポリヌクレオチドを含むベクターをそれぞれ発現可能に保持する形質転換体。
  13. 前記NADをNADHに再生する酵素がグルコース脱水素酵素である、請求項12に記載の形質転換体。
  14. 宿主が大腸菌である、請求項11から13のいずれかの項に記載の形質転換体。
  15. (R)−3−キヌクリジノールまたはその塩の製造方法であって、請求項1から4のいずれかの項に記載の酵素、該酵素を産生する微生物、請求項11から14のいずれかの項に記載の形質転換体、または該微生物もしくは該形質転換体の培養液もしくは処理物を、3−キヌクリジノンまたはその塩に作用させる工程を含む、方法。
  16. 上記作用工程において、NADHまたはNADがさらに添加される、請求項15に記載の方法。
  17. 前記微生物が、アグロバクテリウム・ツメファシエンスNK1株(FERM P−21144)である、請求項15または16に記載の方法。
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