以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る内燃機関の燃料噴射制御装置について説明する。図1は、本実施形態の燃料噴射制御装置1を適用した内燃機関(以下「エンジン」という)3の概略構成を示しており、図2は、燃料噴射制御装置1の概略構成を示している。同図2に示すように、燃料噴射制御装置1は、ECU2を備えており、このECU2は、後述するように、燃料噴射制御処理などの各種の制御処理を実行する。
エンジン3は、図示しない車両に搭載された直列4気筒型ディーゼルエンジンであり、4組の気筒3aおよびピストン3b(1組のみ図示)と、クランクシャフト3cなどを備えている。このエンジン3には、クランク角センサ20および筒内圧センサ21(図2参照)が設けられている。
このクランク角センサ20は、マグネットロータおよびMREピックアップで構成されており、クランクシャフト3cの回転に伴い、いずれもパルス信号であるCRK信号およびTDC信号をECU2に出力する。このCRK信号は、所定クランク角(例えば1゜)毎に1パルスが出力され、ECU2は、このCRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを算出する。また、TDC信号は、各気筒3aのピストン3bが吸気行程のTDC位置よりも若干、手前の所定のクランク角位置にあることを表す信号であり、所定クランク角毎に1パルスが出力される。
なお、本実施形態では、クランク角センサ20が運転状態パラメータ検出手段に相当し、エンジン回転数NEが運転状態パラメータに相当する。
また、筒内圧センサ21は、グロープラグ(図示せず)と一体型の圧電素子タイプのものであり、各気筒3a内の圧力すなわち筒内圧PCYLの変化に伴ってたわむことにより、筒内圧PCYLを表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、筒内圧センサ21の検出信号の電圧値(以下「検出電圧」という)VCPSに基づき、筒内圧PCYLを算出する。なお、本実施形態では、筒内圧センサ21が筒内圧検出手段に相当する。
さらに、エンジン3には、燃料噴射弁4が気筒3a毎に設けられており(1つのみ図示)、各燃料噴射弁4は、ECU2に電気的に接続されている。燃料噴射弁4は、ECU2によって、その開閉タイミングが制御され、それにより、後述するように、燃料の噴射量および噴射時期が制御される。
一方、エンジン3の吸気通路5には、上流側から順に、エアフローセンサ22、ターボチャージャ6および吸気絞り弁機構7などが設けられている。このエアフローセンサ22は、熱線式エアフローメータで構成されており、後述する吸気絞り弁7aを通過する新気の流量を検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、エアフローセンサ22の検出信号に基づき、吸入新気量QAIRを算出する。
また、ターボチャージャ6は、吸気通路5のエアフローセンサ22よりも下流側に設けられたコンプレッサブレード6aと、排気通路9の途中に設けられ、コンプレッサブレード6aと一体に回転するタービンブレード6bと、複数の可変ベーン6c(2つのみ図示)と、可変ベーン6cを駆動するベーンアクチュエータ6dなどを備えている。
このターボチャージャ6では、排気通路9内の排ガスによってタービンブレード6bが回転駆動されると、これと一体のコンプレッサブレード6aも同時に回転することにより、吸気通路5内の空気が加圧される。すなわち、過給動作が実行される。
また、可変ベーン6cは、ターボチャージャ6が発生する過給圧を変化させるためのものであり、ハウジングのタービンブレード6bを収容する部分の壁に回動自在に取り付けられている。可変ベーン6cは、ECU2に接続されたベーンアクチュエータ6dに機械的に連結されている。ECU2は、ベーンアクチュエータ6dを介して可変ベーン6cの開度を変化させ、タービンブレード6bに吹き付けられる排ガス量を変化させることによって、タービンブレード6bの回転速度すなわちコンプレッサブレード6aの回転速度を変化させ、それにより、過給圧を制御する。
一方、吸気絞り弁機構7は、吸気絞り弁7aおよびこれを駆動するISVアクチュエータ7bなどを備えている。吸気絞り弁7aは、吸気通路5の途中に回動自在に設けられており、当該回動に伴う開度の変化により吸気絞り弁7aを通過する空気の流量を変化させる。ISVアクチュエータ7bは、モータに減速ギヤ機構(いずれも図示せず)を組み合わせたものであり、ECU2に電気的に接続されている。
ECU2は、ISVアクチュエータ7bを介して吸気絞り弁7aの開度を制御する。より具体的には、吸気絞り弁7aは、通常運転時、全開状態に制御されるとともに、リッチスパイク制御時には、混合気の空燃比が理論空燃比よりもリッチな所定値になるように、開度が絞られた状態に制御される。
また、エンジン3には、排気還流機構8が設けられている。この排気還流機構8は、排気通路9内の排ガスの一部を吸気通路5側に還流するものであり、吸気通路5および排気通路9の間に接続されたEGR通路8aと、このEGR通路8aを開閉するEGR制御弁8bなどで構成されている。EGR通路8aの一端は、排気通路9のタービンブレード6bよりも上流側の部分に開口し、他端は、吸気通路5の吸気絞り弁7aよりも下流側の部位に開口している。
EGR制御弁8bは、そのリフトが最大値と最小値との間でリニアに変化するリニア電磁弁で構成され、ECU2に電気的に接続されている。ECU2は、EGR制御弁8bを介して、EGR通路8aの開度を変化させることにより、排ガスの還流量すなわちEGR量を制御する。
さらに、ECU2には、図2に示すように、アクセル開度センサ23が接続されている。このアクセル開度センサ23は、車両の図示しないアクセルペダルの踏み込み量(以下「アクセル開度」という)APを検出して、それを表す検出信号をECU2に出力する。なお、本実施形態では、アクセル開度センサ23が運転状態パラメータ検出手段に相当し、アクセル開度APが運転状態パラメータに相当する。
一方、ECU2は、CPU、RAM、ROM、I/Oインターフェースおよび駆動回路(いずれも図示せず)などからなるマイクロコンピュータで構成されており、前述した各種のセンサ20〜23の検出信号などに応じて、エンジン3の運転状態を判別し、運転状態に応じて、燃料噴射制御処理や吸気量制御処理などの各種の制御処理を実行する。
なお、本実施形態では、ECU2が、パイロット噴射時期算出手段、パイロット噴射量算出手段、メイン噴射時期算出手段、運転状態パラメータ検出手段、要求出力パラメータ算出手段、筒内圧検出手段、実出力パラメータ算出手段、補正手段およびメイン噴射量算出手段に相当する。
次に、図3を参照しながら、燃料噴射制御装置1の機能的な構成を具体的に説明する。同図に示すように、燃料噴射制御装置1は、基本トルク算出部30、リミット値算出部31、要求トルク算出部32、筒内圧算出部33、実トルク算出部34、減算要素35および噴射コントローラ40を備えており、これらはいずれもECU2によって構成されている。
まず、基本トルク算出部30では、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて、図示しないマップを検索することにより、基本トルクPMBASEが算出される。この基本トルクPMBASEは、運転者の操作に起因して、エンジン3に要求されている力を表す値であり、後述する実トルクPmiと同じ単位(圧力)に設定されている。
このマップでは、基本トルクPMBASEは、アクセル開度APが大きいほど、より大きな値に設定されている。これは、アクセル開度APが大きいほど、エンジン3に要求されるトルクがより大きくなるためである。また、このマップでは、基本トルクPMBASEは、低中回転域において、エンジン回転数NEが高いほど、より大きな値に設定されており、これは上述した理由による。さらに、基本トルクPMBASEは、高回転域では、エンジン回転数NEが高いほど、より小さな値に設定されている。これは、ノッキングの発生を抑制するためである。
また、リミット値算出部31では、吸入新気量QAIRおよびエンジン回転数NEに応じて、図示しないマップを検索することにより、リミット値PMLMTが算出される。このリミット値PMLMTは、吸入新気量QAIRおよびエンジン回転数NEの現在値に対して、エンジン3が出力可能なトルクの上限値を表している。
このマップでは、リミット値PMLMTは、吸入新気量QAIRが多いほど、より大きな値に設定されている。これは、吸入新気量QAIRが多いほど、エンジン3が出力可能なトルクが大きくなることによる。また、このマップでは、リミット値PMLMTは、低中回転域において、エンジン回転数NEが高いほど、より大きな値に設定されており、これは、低中回転域では、エンジン回転数NEが高いほど、エンジン3が出力可能なトルクが大きくなるためである。さらに、リミット値PMLMTは、高回転域では、エンジン回転数NEが高いほど、より小さな値に設定されている。これは、前述したように、ノッキングの発生を抑制するためである。
さらに、要求トルク算出部32では、前述した基本トルクPMBASEに、上記リミット値PMLMTを上限値とする上限リミット処理を施すことにより、要求トルクPMCMDが算出される。すなわち、要求トルクPMCMDは、下式(1),(2)により算出される。
・PMBASE<PMLMTのとき
PMCMD=PMBASE …… (1)
・PMBASE≧PMLMTのとき
PMCMD=PMLMT …… (2)
なお、本実施形態では、基本トルク算出部30および要求トルク算出部32が要求出力パラメータ算出手段に相当し、要求トルクPMCMDが要求出力パラメータに相当する。
一方、筒内圧算出部33では、筒内圧センサ21の検出電圧VCPSを用いて、本出願人が特開2006−233798号公報に記載した算出手法により、筒内圧PCYLが算出される。具体的には、モータリング圧力より推定した筒内圧の推定値と筒内圧センサ21の検出電圧VCPSより算出した算出値との偏差が最小になるように、筒内圧PCYLが算出される。
さらに、実トルク算出部34では、上記のように算出された筒内圧PCYLを用い、実トルクPmiが算出される。この実トルクPmiは、具体的には、本出願人が特開2006−52647号公報に記載した算出手法により、図示平均有効圧として算出される。なお、本実施形態では、実トルク算出部34が実出力パラメータ算出手段に相当し、実トルクPmiが実出力パラメータに相当する。
次いで、減算要素35では、要求トルクPMCMDから実トルクPmiを減算することにより、トルク偏差DPMが算出される。なお、本実施形態では、トルク偏差DPMが実出力パラメータと要求出力パラメータとの大小関係に相当する。
そして、噴射コントローラ40では、以下に述べるように、トルク偏差DPM、要求トルクPMCMDおよびエンジン回転数NEに応じて、メイン噴射量QINJ_M、パイロット噴射量QINJ_P、メイン噴射時期φINJ_Mおよびパイロット噴射時期φINJ_Pが算出される。これらのメイン噴射時期φINJ_Mおよびパイロット噴射時期φINJ_Pはいずれも、燃料噴射弁4による燃料の噴射開始タイミングとして算出される。
なお、本実施形態では、噴射コントローラ40が、パイロット噴射時期算出手段、パイロット噴射量算出手段、メイン噴射時期算出手段、補正手段およびメイン噴射量算出手段に相当する。
以下、図4を参照しながら、噴射コントローラ40について説明する。同図に示すように、噴射コントローラ40は、総噴射量算出部41、パイロット噴射量基本値算出部42、減算要素43、パイロット噴射量補正値算出部44、3つの加算要素45,48,51、メイン時期基本値算出部46、メイン時期補正値算出部47、パイロット時期基本値算出部49およびパイロット時期補正値算出部50を備えている。
この総噴射量算出部41では、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じて、図示しないマップを検索することにより、総噴射量QINJが算出される。この総噴射量QINJは、1燃焼サイクルで該当気筒3a内に噴射すべき総燃料量を表しており、このマップでは、総噴射量QINJは、要求トルクPMCMDが大きいほど、それに対応するために、より大きい値に設定されている。また、総噴射量QINJは、低中回転域において、エンジン回転数NEが高いほど、より大きな値に設定されているとともに、高回転域では、エンジン回転数NEが高いほど、より小さな値に設定されている。これは、前述したように、ノッキングの発生を抑制するためである。
また、パイロット噴射量基本値算出部42では、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じて、図示しないマップを検索することにより、パイロット噴射量基本値QINJ_P_BASEが算出される。このパイロット噴射量基本値QINJ_P_BASEは、パイロット噴射時期で該当気筒3a内に噴射すべき燃料量の基本値を表している。
このマップでは、パイロット噴射量基本値QINJ_P_BASEは、メイン噴射を緩慢にして燃焼音を抑制するように設定されている。具体的には、高負荷側(高回転側)では、燃焼音が大きい状態になり、パイロット噴射が不要になるので、パイロット噴射量基本値QINJ_P_BASEは値0に設定されている。また、低回転域では、パイロット噴射量基本値QINJ_P_BASEは、エンジン回転数NEが低いほど、より大きな値に設定されている。これは、低回転域では、パイロット噴射量が少ないと、燃焼室内の温度が低くなり、メイン噴射時の拡散燃焼が不活性な状態になり、混合気の良好な着火性を確保できないので、それに対応するためである。
次いで、減算要素43では、総噴射量QINJからパイロット噴射量基本値QINJ_P_BASEを減算することにより、メイン噴射量QINJ_Mが算出される。
一方、パイロット噴射量補正値算出部44では、エンジン回転数NEおよびトルク偏差DPMに応じて、図示しないマップを検索することにより、パイロット噴射量補正値QINJ_P_CORRが算出される。
このマップでは、パイロット噴射量補正値QINJ_P_CORRは、トルク偏差DPMが正値の領域では負値に、トルク偏差DPMが負値の領域では正値にそれぞれ設定されている。また、パイロット噴射量補正値QINJ_P_CORRは、トルク偏差DPMが大きいほど、すなわち実トルクPmiが要求トルクPMCMDを下回っている度合が大きいほど、その絶対値がより大きい値に設定されている。これは、実トルクPmiが要求トルクPMCMDを下回っている度合が大きい場合、過渡運転時などには排気圧の不足などに起因してEGR量が不足し、パイロット噴射時の燃料が燃焼しすぎることで、騒音が発生してしまうので、パイロット噴射量QINJ_Pを減少側に補正することで、適切な燃焼状態を確保するためである。
次いで、加算要素45では、パイロット噴射量補正値QINJ_P_CORRをパイロット噴射量基本値QINJ_P_BASEに加算することにより、パイロット噴射量QINJ_Pが算出される。
また、メイン時期基本値算出部46では、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じて、図示しないマップを検索することにより、メイン時期基本値φINJ_M_BASEが算出される。このマップでは、メイン時期基本値φINJ_M_BASEは、圧縮行程のTDC付近の所定のクランク角に設定されている。
さらに、メイン時期補正値算出部47では、エンジン回転数NEおよびトルク偏差DPMに応じて、図示しないマップを検索することにより、メイン時期補正値φINJ_M_CORRが算出される。このマップでは、メイン時期補正値φINJ_M_CORRは、トルク偏差DPMが正値の領域では正値に、トルク偏差DPMが負値の領域では負値にそれぞれ設定されており、メイン時期補正値φINJ_M_CORRが正値のときには、メイン噴射時期φINJ_Mが遅角側に補正される。また、このマップでは、メイン時期補正値φINJ_M_CORRは、後述する理由により、トルク偏差DPMが正値の場合、トルク偏差DPMが大きいほど、より大きい値に設定されている。
次いで、加算要素48では、メイン時期補正値φINJ_M_CORRをメイン時期基本値φINJ_M_BASEに加算することにより、メイン噴射時期φINJ_Mが算出される。
また、パイロット時期基本値算出部49では、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じて、図示しないマップを検索することにより、パイロット時期基本値φINJ_P_BASEが算出される。このマップでは、パイロット時期基本値φINJ_P_BASEは、前述したメイン時期基本値φINJ_M_BASEよりも進角側のクランク角に設定されている。
さらに、パイロット時期補正値算出部50では、エンジン回転数NEおよびトルク偏差DPMに応じて、図示しないマップを検索することにより、パイロット時期補正値φINJ_P_CORRが算出される。このマップでは、パイロット時期補正値φINJ_P_CORRは、トルク偏差DPMが正値の領域では正値に、トルク偏差DPMが負値の領域では負値にそれぞれ設定されており、パイロット時期補正値φINJ_P_CORRが正値のときには、パイロット噴射時期φINJ_Pが遅角側に補正される。また、このマップでは、パイロット時期補正値φINJ_P_CORRは、トルク偏差DPMが正値の場合、トルク偏差DPMが大きいほど、より大きい値に設定されている。これは、以下の理由による。
すなわち、前述したように、実トルクPmiが要求トルクPMCMDを下回っている度合が大きい場合、過渡運転時などには排気圧の不足などに起因してEGR量が不足し、パイロット噴射時の燃料が燃焼しすぎることで、騒音が発生してしまう。したがって、トルク偏差DPMが大きいほど、パイロット噴射時期φINJ_Pをより遅角側に補正することで、適切な燃焼状態を確保するためである。
次いで、加算要素51では、パイロット時期補正値φINJ_P_CORRをパイロット時期基本値φINJ_P_BASEに加算することにより、パイロット噴射時期φINJ_Pが算出される。
以上のように、パイロット噴射量基本値QINJ_P_BASEをパイロット噴射量補正値QINJ_P_CORRで補正することにより、パイロット噴射量QINJ_Pが算出され、メイン時期基本値φINJ_M_BASEをメイン時期補正値φINJ_M_CORRで補正することにより、メイン噴射時期φINJ_Mが算出され、パイロット時期基本値φINJ_P_BASEをパイロット時期補正値φINJ_P_CORRで補正することにより、パイロット噴射時期φINJ_Pが算出される。
一般的なディーゼルエンジンの場合、パイロット噴射時の燃料の燃焼時間はほぼ一定であるので、メイン噴射時に良好な拡散燃焼状態を確保しようとすると、パイロット噴射の終了タイミングからメイン噴射の開始タイミングまでの期間(以下「噴射休止期間」という)を一定に保持する必要がある。この理由により、以上の3つの補正値QINJ_P_CORR,φINJ_M_CORR,φINJ_P_CORRは、上記噴射休止期間を一定に保持できるような値に設定されている。すなわち、前述したように、パイロット時期補正値φINJ_P_CORRによるパイロット時期基本値φINJ_P_BASEの補正方向と、メイン時期補正値φINJ_M_CORRによるメイン時期基本値φINJ_M_BASEの補正方向が、互いに同じになるように設定されている。
次に、図5を参照しながら、ECU2により実行される燃料噴射制御処理について説明する。この制御処理は、以下に述べるように、メイン噴射量QINJ_M、パイロット噴射量QINJ_P、メイン噴射時期φINJ_Mおよびパイロット噴射時期φINJ_Pを気筒毎に算出するものであり、TDC信号の発生に同期して実行される。
この処理では、まず、ステップ1(図では「S1」と略す。以下同じ)で、エンジン回転数NE、吸入新気量QAIR、アクセル開度APおよび実トルクPmiなどの各種データを読み込む。なお、実トルクPmiは、図示しない制御処理において、前述した手法により、筒内圧センサ21の検出電圧VCPSを用いて算出される。
次いで、ステップ2に進み、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APに応じて、前述したマップを検索することにより、基本トルクPMBASEを算出する。その後、ステップ3で、エンジン回転数NEおよび吸入新気量QAIRに応じて、前述したマップを検索することにより、リミット値PMLMTを算出する。
ステップ3に続くステップ4で、基本トルクPMBASEがリミット値PMLMTよりも小さいか否かを判別する。この判別結果がYESのときには、ステップ5に進み、要求トルクPMCMDを基本トルクPMBASEに設定する。
一方、ステップ4の判別結果がNOで、PMBASE≧PMLMTのときには、ステップ6に進み、要求トルクPMCMDをリミット値PMLMTに設定する。
ステップ5または6に続くステップ7で、トルク偏差DPMを、要求トルクPMCMDと実トルクPmiとの偏差PMCMD−Pmiに設定する。次いで、ステップ8に進み、以下に述べるように、噴射量&噴射時期算出処理を実行した後、本処理を終了する。
次に、図6を参照しながら、上記ステップ8の噴射量&噴射時期算出処理について説明する。この処理では、まず、ステップ10で、総噴射量QINJを、前述したように、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じて、マップを検索することにより算出する。
次いで、ステップ11で、パイロット噴射量基本値QINJ_P_BASEを、前述したように、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じて、マップを検索することにより算出する。その後、ステップ12に進み、メイン噴射量QINJ_Mを、総噴射量からパイロット噴射量基本値を減算した値(QINJ−QINJ_P_BASE)に設定する。
ステップ12に続くステップ13で、パイロット噴射量補正値QINJ_P_CORRを、前述したように、エンジン回転数NEおよびトルク偏差DPMに応じて、マップを検索することにより算出する。その後、ステップ14で、パイロット噴射量QINJ_Pを、パイロット噴射量基本値とパイロット噴射量補正値の和(QINJ_P_BASE+QINJ_P_CORR)に設定する。
次に、ステップ15に進み、メイン時期基本値φINJ_M_BASEを、前述したように、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じて、マップを検索することにより算出する。その後、ステップ16で、メイン時期補正値φINJ_M_CORRを、前述したように、エンジン回転数NEおよびトルク偏差DPMに応じて、マップを検索することにより算出する。
次いで、ステップ17で、メイン噴射時期φINJ_Mを、メイン時期基本値とメイン時期補正値の和(φINJ_M_BASE+φINJ_M_CORR)に設定する。
ステップ17に続くステップ18で、パイロット時期基本値φINJ_P_BASEを、前述したように、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じて、マップを検索することにより算出する。その後、ステップ19で、パイロット時期補正値φINJ_P_CORRを、前述したように、エンジン回転数NEおよびトルク偏差DPMに応じて、マップを検索することにより算出する。
次いで、ステップ20で、パイロット噴射時期φINJ_Pを、パイロット時期基本値とパイロット時期補正値の和(φINJ_P_BASE+φINJ_P_CORR)に競ってした後、本処理を終了する。
次に、図7を参照しながら、ECU2により実行される吸気量制御処理について説明する。同図に示すように、この制御処理では、まず、ステップ30で、過給圧制御処理を実行する。具体的には、エンジン回転数NEおよび前述した基本トルクPMBASEに応じて、図示しないマップを検索することにより、目標過給圧を算出する。そして、この目標過給圧に応じた制御入力がベーンアクチュエータ6bに供給されることにより、過給圧が目標過給圧になるように制御される。
ステップ30に続くステップ31で、ISV制御処理を実行する。具体的には、通常運転時は、吸気絞り弁7aの目標開度を所定の全開値に設定し、リッチスパイク制御時は、目標開度を、エンジン回転数NEおよび基本トルクPMBASEに応じて、図示しないマップを検索することにより算出する。そして、この目標開度に応じた制御入力がISVアクチュエータ7bに供給されることにより、吸気絞り弁7aの開度が目標開度になるように制御される。
次いで、ステップ32で、EGR制御処理を実行する。具体的には、エンジン回転数NEおよびに応じて、図示しないマップを検索することにより、目標新気量QAIR_CMDを算出し、所定のフィードバック制御アルゴリズムにより、吸入新気量QAIRが目標新気量QAIR_CMDに収束するように、EGR制御弁8bへの制御入力が算出される。そして、この制御入力がEGR制御弁8bに供給されることにより、吸入新気量QAIRが、目標新気量QAIR_CMDに収束するようにフィードバック制御される。その後、本処理を終了する。
以上の吸気量制御処理では、各種の制御入力が、前述した基本トルクPMBASEをリミット処理した要求トルクPMCMDではなく、基本トルクPMBASEに基づいて算出される。これは、吸気量制御が、ターボチャージャ6、吸気絞り弁機構7および排気還流機構8を介して実行されることで、燃料噴射制御と比べて応答遅れが大きいので、それを考慮して、吸入新気量QAIRを燃料量よりも先にエンジン3に要求されている値に制御するためである。
以上のように、本実施形態の燃料噴射制御装置1によれば、実トルクPmiと要求トルクPMCMDとの偏差であるトルク偏差DPMに応じて、3つの補正値QINJ_P_CORR,φINJ_P_CORR,φINJ_M_CORRがそれぞれ算出され、これらの値で3つの基本値QINJ_P_BASE,φINJ_P_BASE,φINJ_M_BASEをそれぞれ補正することにより、パイロット噴射量QINJ_P、パイロット噴射時期φINJ_Pおよびメイン噴射時期φINJ_Mが算出される。したがって、これらの値QINJ_P,φINJ_P,φINJ_Mを、トルク偏差DPMを迅速に反映させながら、適切に補正することができる。それにより、補正値を逐次型最小2乗法アルゴリズムで算出する従来の手法と異なり、エンジン3が過渡運転状態にある場合でも、トルク偏差DPMの変化を、パイロット噴射量QINJ_P、パイロット噴射時期φINJ_Pおよびメイン噴射時期φINJ_Mに迅速に反映させることができ、良好な燃焼状態を確保することができる。その結果、排ガス特性を向上させることができるとともに、エンジン3の騒音や振動の発生を抑制できることで、運転性を向上させることができる。
また、実トルクPmiとして、図示平均有効圧Pmiが用いられるので、3つの補正値QINJ_P_CORR,φINJ_P_CORR,φINJ_M_CORRを、図示平均有効圧Pmiを用いて算出することができる。一般に、図示平均有効圧Pmiは、エンジン3での燃焼による実際の出力状態を精度よく表すものであるので、そのような値を用いて算出した3つの補正値QINJ_P_CORR,φINJ_P_CORR,φINJ_M_CORRにより、パイロット噴射量QINJ_P、パイロット噴射時期φINJ_Pおよびメイン噴射時期φINJ_Mをいずれも、エンジン3の実際の出力状態を精度よく反映させながら補正することができ、燃料噴射制御の制御精度を向上させることができる。
さらに、メイン噴射量QINJ_Mが要求トルクPMCMDに応じて算出されるとともに、その算出値が、補正されることなくそのまま用いられるので、エンジン3が過渡運転状態にある場合でも、エンジン3において要求される出力を適切に確保することができ、それにより、良好な運転性を確保することができる。
なお、実施形態は、実出力パラメータとして、実トルクPmiすなわち図示平均有効圧Pmiを用いた例であるが、本発明の実出力パラメータはこれに限らず、内燃機関の実際の出力状態を表すものであればよい。例えば、実出力パラメータとして、図示平均有効圧Pmiをトルク換算した値を用いてもよい。
また、実施形態は、要求出力パラメータとして、要求トルクPMCMD(図示平均有効圧と同じ単位の値)を用いた例であるが、本発明の要求出力パラメータはこれに限らず、内燃機関に要求される出力を表すものであればよい。例えば、要求出力パラメータとして、要求トルクPMCMDをトルク換算した値を用いてもよい。
さらに、実施形態は、「実出力パラメータと要求出力パラメータとの大小関係」として、トルク偏差DPMを用いた例であるが、本願発明における「実出力パラメータと要求出力パラメータとの大小関係」はこれに限らず、実出力パラメータと要求出力パラメータとの大小関係を表すものであればよい。例えば、大小関係として、要求トルクPMCMDから実トルクPmiを減算した値すなわちトルク偏差DPMの負値を用いてもよい。さらに、要求トルクPMCMDおよび実トルクPmiの一方と他方の比を、「実出力パラメータと要求出力パラメータとの大小関係」として用いてもよい。
また、実施形態は、「実出力パラメータと要求出力パラメータとの大小関係に応じて、パイロット噴射量、パイロット噴射時期およびメイン噴射時期の少なくとも一つを補正する」手法の一例として、エンジン回転数NEおよびトルク偏差DPMに応じて、マップ検索により、3つの補正値QINJ_P_CORR,φINJ_P_CORR,φINJ_M_CORRを加算項として算出し、これらの補正値QINJ_P_CORR,φINJ_P_CORR,φINJ_M_CORRを3つの基本値QINJ_P_BASE,φINJ_P_BASE,φINJ_M_BASEにそれぞれ加算した例であるが、エンジン回転数NEおよびトルク偏差DPMに応じて、マップ検索により、3つの補正係数を算出し、これらの補正係数を3つの基本値QINJ_P_BASE,φINJ_P_BASE,φINJ_M_BASEにそれぞれ乗算することにより、パイロット噴射量QINJ_P、パイロット噴射時期φINJ_Pおよびメイン噴射時期φINJ_Mを算出するように構成してもよい。
さらに、実施形態は、エンジン回転数NEおよびトルク偏差DPMに応じて、マップを検索することにより、3つの補正値をそれぞれ算出した例であるが、3つの補正値QINJ_P_CORR,φINJ_P_CORR,φINJ_M_CORRとトルク偏差DPMとの関係が予め設定された3つのテーブルを準備し、トルク偏差DPMのみに応じて、このテーブルを検索することにより、3つの補正値QINJ_P_CORR,φINJ_P_CORR,φINJ_M_CORRを算出してもよい。
これに加えて、実施形態は、パイロット噴射量QINJ_P、パイロット噴射時期φINJ_Pおよびメイン噴射時期φINJ_Mをすべて、補正値で補正された値として算出した例であるが、本発明の燃料噴射制御装置はこれに限らず、パイロット噴射量QINJ_P、パイロット噴射時期φINJ_Pおよびメイン噴射時期φINJ_Mの少なくとも一つを補正するように構成してもよい。その場合には、3つの補正値QINJ_P_CORR,φINJ_P_CORR,φINJ_M_CORRの少なくとも一つを算出し、それ以外の補正値を値0に設定すればよい。
また、実施形態は、本発明の燃料噴射制御装置を、燃料をパイロット噴射時期とメイン噴射時期の2回に分割して噴射する内燃機関に適用した例であるが、本発明の燃料噴射制御装置はこれに限らず、燃料をパイロット噴射時期とメイン噴射時期を含む複数の噴射時期に分割して噴射する内燃機関に適用可能である。例えば、燃料を、早い方から順に、パイロット噴射時期、プレ噴射時期、メイン噴射時期、アフター噴射時期およびポスト噴射時期の5回に分割して噴射する内燃機関に適用してもよい。その場合、エンジン回転数NEおよびトルク偏差DPMに応じて算出した補正値により、メイン噴射量以外の4つの噴射量を補正するとともに、5回の噴射時期をそれぞれ補正してもよい。
一方、実施形態は、運転状態パラメータとして、エンジン回転数NEおよびアクセル開度APを用いた例であるが、本発明の運転状態パラメータはこれ限らず、内燃機関の運転状態を表すもので、かつ、要求出力を表す要求出力パラメータの算出に用いることができるものであればよい。例えば、運転状態パラメータとして、吸気通路内の圧力を用いてもよい。