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JP2008291298A - 浸炭用鋼、浸炭部品及び浸炭部品の製造方法 - Google Patents

浸炭用鋼、浸炭部品及び浸炭部品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ガス浸炭を行うに際して、粒界酸化の低減を図るとともに、過剰浸炭を回避し、鋼表面のC濃度を所望のC濃度に制御することができる合金組成を備えた浸炭用鋼及び浸炭部品を提供すること。
【解決手段】本発明の浸炭用鋼及び浸炭部品は、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜3.00%、Mn:0.30〜3.00%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cu:0.01〜1.00%、Ni:0.01〜3.00%、及び、Cr:0.30〜1.50%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる浸炭用鋼又は浸炭部品であって、Si[%]+Ni[%]+Cu[%]−Cr[%]>0.3を満たすことを特徴とする。本発明の浸炭部品は、本発明の浸炭用鋼に対して、純鉄に対するカーボンポテンシャルが0.90%以上である雰囲気でガス浸炭を行って得られる。
【選択図】図1

Description

本発明は、浸炭用鋼、浸炭部品及び浸炭部品の製造方法に関し、更に詳しくは、ガス浸炭を行うに際して、粒界酸化を低減するとともに、過剰浸炭を回避し、鋼表面のC濃度を所望のC濃度に制御することができる合金組成を備えた浸炭用鋼及び浸炭部品、並びに、該鋼表面のC濃度を所望のC濃度に制御することができる浸炭部品の製造方法に関する。
ガス浸炭は、鋼表面にCを侵入させて鋼表面を硬くする手法の一つであり、鋼を入れた加熱炉にガス(主成分のCOと、C濃度調整のためのCO,H等とにより構成される)を導入し、900℃以上の高温で長時間浸炭することにより行われる。ガス浸炭により得られる浸炭部品の特性は、合金組成や浸炭時のガス雰囲気によって左右される。従って、種々の問題も指摘されている。例えば、肌焼鋼として周知のJIS SCr420にガス浸炭を行うと、雰囲気中のCOガスでMn、Cr等が酸化され(粒界酸化)、焼入れ性が低下し、粒界に沿ってパーライト組織を生じ強度低下するという問題が指摘されている(非特許文献1)。
そこで、特許文献1〜3には、所定の合金組成をとることにより、この粒界酸化を低減させるとともに、Siを1.5%を上限として含有させることで、焼戻し軟化抵抗性を向上させる技術が開示されている。
特許文献1〜3においてSiの上限が1.5%とされているのは、Siがそれよりも多いと浸炭時にCの侵入を阻害し、表層のC濃度の確保が困難になる等の理由である。従って、表層のC濃度が確保されるならば、例えば、浸炭部品の強度を更に上げるには、Siを更に多く含有させることが望ましい。
電気製鋼、第65巻、P13〜P15(1994年1月) 特開2003−027142 特開2003−231943 特開2004−300550
しかしながら、構成元素のSiを1.5%より多くして一般的な浸炭条件(純鉄に対するカーボンポテンシャル(以下、単に「CP」ともいう。)にして0.8程度)で浸炭すると、雰囲気中のCOガスによってSiが酸化され、粒界酸化が起こるという問題があった。そこで、この問題を解消すべく、雰囲気中のCO濃度を低減させ、雰囲気中のCO濃度を上昇させ雰囲気を還元性として(純鉄に対するカーボンポテンシャルにして1.0程度)、ガス浸炭することが考えられる。しかしながら、これによれば、粒界酸化を低減することはできるが、同時に雰囲気のカーボンポテンシャルが高くなり、過剰なCの導入に伴う炭化物の析出・残留γの生成を生じるため、実際には利用できないという問題があった。従って、Siを1.5%より多くするとともにガス浸炭における雰囲気のカーボンポテンシャルを高めても、過剰のCが導入されず、鋼表面を所望のC濃度に制御しうる合金組成が求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その第一の目的は、ガス浸炭を行うに際して、粒界酸化の低減を図るとともに、過剰浸炭を回避し、鋼表面のC濃度を所望のC濃度に制御することができる合金組成を備えた浸炭用鋼及び浸炭部品を提供することにある。
本発明の第二の目的は、鋼表面のC濃度を所望のC濃度に制御することができる浸炭部品の製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するため、種々の合金組成を探求したところ、Si、Ni、Cuが鋼の炭素活量(浸炭用鋼としての作用を示す炭素量をいう。以下同じ。)を上昇させる一方、Crが炭素活量を下降させるという知見を得た。そこで、本発明者は、Si、Ni、Cuを多めに添加する一方、Crを少なめに添加したところ、カーボンポテンシャルを従来より高めにしてガス浸炭を行っても、Cが過剰に侵入せず、鋼表面のC濃度を所望のC濃度に制御しうるという知見を得た。本発明者は、更に、高いカーボンポテンシャルでは粒界酸化の問題も併せて解消されるという知見を得た。
従来のガス浸炭条件では、Siを多め(特許文献1〜3との関係では、1.5%より多め)にした場合、粒界酸化、あるいは、過剰浸炭という問題が生じていたため、Siを多めにした合金組成の処理材に対してガス浸炭を行うことは困難あるいは問題外とされていたが、本発明者は、上記知見から、Siを多めにした合金組成であってもガス浸炭が適用しうるという知見を得た。
本発明はこれらの知見に基づいてなされたものであり、本発明に係る浸炭用鋼及び浸炭部品は、質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜3.00%、Mn:0.30〜3.00%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cu:0.01〜1.00%、Ni:0.01〜3.00%、及び、Cr:0.30〜1.50%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる浸炭用鋼又は浸炭部品であって、下記(1)式を満たすことを要旨とする。
Si[%]+Ni[%]+Cu[%]−Cr[%]>0.3…(1)
この場合に、更に、質量%で、Mo:0.00〜2.00%、及び/又は、Al:0.00〜0.20%を含んでもよく、これに更に、質量%で、Nb:0.00〜0.20%、Ti:0.00〜0.20%、N:0.00〜0.05%、及び、B:0.00〜0.01%からなる群の少なくともいずれかを含んでもよい。
本発明に係る浸炭部品及びその製造方法は、本発明に係る浸炭用鋼に対して、純鉄に対するカーボンポテンシャルが0.90%以上である雰囲気でガス浸炭を行って得られる浸炭部品又はその製造方法である。この場合に、前記雰囲気の温度は、800℃〜1000℃であることが望ましい。
本発明に係る浸炭用鋼は、上記組成を備えるとともに、上記(1)式を満たすものであるから、CP≧0.90の雰囲気でガス浸炭を行えば粒界酸化が低減されるとともに、その雰囲気でガス浸炭を行っても過剰な炭素が侵入せず、鋼表面のC濃度を所望のC濃度に制御することができる。そのため、浸炭時に炭化物や過剰な残留γが生成せず、高い疲労強度が得られる。
本発明に係る浸炭部品は、上記組成を備えるとともに、上記(1)式を満たすものであるから、CP≧0.90の雰囲気でガス浸炭がなされたものであれば、粒界酸化が低減されるとともに、過剰浸炭が回避され、鋼表面のC濃度が所望のC濃度に制御されている。従って、本発明に係る浸炭部品は、炭化物や過剰な残留γが生成しておらず、高い疲労強度を発揮する。
本発明に係る浸炭部品の製造方法は、上記組成を備えるとともに、上記(1)式を満たす浸炭用鋼に対してCP≧0.90の雰囲気でガス浸炭を行うものであるから、得られる浸炭部品は、粒界酸化が低減されるとともに、過剰浸炭が回避され、鋼表面のC濃度が所望のC濃度に制御されたものとなる。従って、得られる浸炭部品は、炭化物や過剰な残留γが生成せず、高い疲労強度を発揮する。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。尚、以下の説明において、「%」は、特に説明がない限り「質量%」を意味する。
(成分組成及びその関係並びにそれらの限定理由)
本発明の一実施形態に係る浸炭用鋼及び浸炭部品は、基本的構成元素として、以下の(1)から(8)の元素を含む。
(1)C:0.10〜0.30%。
Cは、機械部品として必要な強度を得る上で必要な元素である。Cの下限を0.10%としたのは、Cが少なすぎると心部にフェライトが生成し、強度が低下するためである。一方、Cの上限を0.30%としたのは、Cが多すぎると加工性、特に被削性が劣化するためである。
(2)Si:0.50〜3.00%。
Siは、後述するCu、Niと共に、炭素活量を上昇させる元素であり、強度を高めるとともに、焼戻し軟化抵抗を高めるために含有させる元素である。Siの下限を0.50%としたのは、Siが少なすぎると焼入性が低下し、強度が低下するためである。一方、Siの上限を3.00%としたのは、Siが多すぎると加工性、特に被削性が劣化するためである。
(3)Mn:0.30〜3.00%。
Mnは、脱酸剤として鋼の溶製時に添加される元素であるが、ガス浸炭には影響を与えない。Mnの下限を0.30%としたのは、Mnが少なすぎると心部にフェライトが生成し、強度が低下するためである。一方、Mnの上限を3.00%としたのは、Mnが多すぎると加工性、特に被削性が劣化するためである。
(4)P:0.030%以下。
Pは、不純物であり不可避的に含まれる元素である。Pの上限を0.030%としたのは、Pが多すぎると脆化するためである。
(5)S:0.030%以下。
Sは、不純物であり不可避的に含まれる元素である。Sの上限を0.030%としたのは、Sが多すぎると脆化するためである。
(6)Cu:0.01〜1.00%。
Cuは、前述したSi、後述するNiと共に、炭素活量を上昇させる元素であり、強度を高めるために含有させる元素である。Cuの下限を0.01%としたのは、Cuが少なすぎると焼入性が低下し、強度が低下するためである。一方、Cuの上限を1.00%としたのは、Cuが多すぎると加工性、特に熱間鍛造性が劣化するためである。
(7)Ni:0.01〜3.00%。
Niは、Si、Cuと共に、炭素活量を上昇させる元素であり、強度を高めるために含有させる元素である。Niの下限を0.01%としたのは、Niが少なすぎると焼入性が低下し、強度が低下するためである。一方、Niの上限を3.00%としたのは、Niが多すぎると加工性、特に熱間鍛造性が劣化するためである。
(8)Cr:0.30〜1.50%。
Crは、炭素活量を減少させる元素であるため、多量に含有させることができない。また、Crが多すぎると加工性、特に被削性を劣化させるため、上限を1.50%とした。一方、Crが少なすぎると焼入性が低下し、強度が低下するため、その下限を0.30%とした。
本発明の一実施形態に係る浸炭用鋼及び浸炭部品は、任意的構成元素として、以下の(9)から(11)の元素を含んでもよい。
(9)Mo:0.00〜2.00%。
Moは、焼入性を向上させ、焼戻し軟化抵抗性を高めるために添加することができるが、多すぎると加工性、特に被削性を劣化させるため、上限を2.00%とした。
(10)Al:0.00〜0.20%。
Alは、結晶粒を微細化し、強度を向上させるために添加することができるが、多すぎると鋼中でアルミナを生じ強度を低下させるため、上限を0.20%とした。
(11)Nb:0.00〜0.20%、Ti:0.00〜0.20%、N:0.00〜0.05%、及び、B:0.00〜0.01%からなる群の少なくともいずれか。
Nb及びTiは、ガス浸炭で生じる結晶粒の成長を抑制し、整粒組織を保つために添加することができる。一方、Nb又はTiが多すぎると、加工性に悪影響が出るため、いずれも上限を0.20%とした。
Nは、結晶粒の粗大化を防止するために添加することができるが、その効果は、0.05%程度で飽和するため、0.05%を上限とした。
Bは、焼入性を向上させるために添加することができるが、多すぎると加工性に悪影響を及ぼすため、0.01%を上限とした。
(12)Si[%]+Ni[%]+Cu[%]−Cr[%]>0.3…(1)
前述のように、Si、Cu、及び、Niは、炭素活量を上昇させ、Crは、炭素活量を減少させるため、Si、Cu、及び、Niの量の合計からCrの量を差し引いた値を炭素活量を判断する目安とした。この値を0.3超としたのは、後述する実施例により経験的に求めた値である。上記(1)式の関係を満たせば、ガス浸炭においてカーボンポテンシャルを高くしても過剰な炭素が侵入せず、鋼表面のC濃度を所望のC濃度に制御することができ、かつ、カーボンポテンシャルを高くすれば粒界酸化を低減することができる。
(製造方法)
本発明の一実施形態に係る浸炭用鋼は、上記組成になるように原料を溶解し、造塊し、鍛造により所定の形状に加工し、更に、必要な熱処理(焼きならし)を行うことにより得られる。
本発明の一実施形態に係る浸炭部品は、次のようにして製造される。すなわち、まず、本発明の一実施形態に係る浸炭用鋼に対して、純鉄に対するカーボンポテンシャルが0.90%以上で、温度が800℃〜1000℃である雰囲気で数時間ガス浸炭を行い、続いて焼入れを行う(ガス浸炭焼入れ)。ここで、ガス浸炭は、930℃前後の温度での浸炭と、850℃前後での拡散により行うとよい。次に、150℃〜200℃で数時間、油焼戻しを行う。これにより、本発明の一実施形態に係る浸炭部品が得られる。
(作用)
本発明の一実施形態に係る浸炭用鋼は、上記組成を備えるとともに、上記(1)式を満たすものであるから、これに対して、本発明の一実施形態に係る浸炭部品の製造方法、すなわち、CP≧0.90の雰囲気でガス浸炭をする方法を実施すれば、そもそもCPが高いため粒界酸化が低減される。また、成分組成に由来する炭素活量が高いため、CP≧0.90の雰囲気でガス浸炭を行っても過剰な炭素が侵入せず、鋼表面のC濃度が0.70〜0.88%程度の所望のC濃度に制御される。また、ガス浸炭の際に炭化物や過剰な残留γは生成せず、得られる浸炭部品は高い疲労強度が備わる。
以下、本発明の実施例及び比較例について説明する。
(実施例1〜21及び比較例1〜6)
(浸炭用鋼の作製)
実施例1〜21及び比較例1〜6について、表1に示す成分組成となるように原料を電気炉に投入し、溶解・鋳造し、鋼塊を作製した。表1には、成分組成のほか、上記式(1)の値を併せて示す。
Figure 2008291298
(浸炭部品の作製)
次に、各実施例及び比較例について、上記の鋼塊を圧延により棒材(φ100mm)に加工した後、熱間鍛造により、一組の歯車形状、すなわち、駆動側歯車の形状(モジュール2.5、歯数26、歯幅20mm、圧力角20°、ネジレ角25°)と、従動側歯車の形状(モジュール2.5、歯数30、歯幅20mm、圧力角20°、ネジレ角25°)とに加工した。
次に、加工した駆動側・従動側それぞれの歯車形状の各鋼塊を炉に入れて、930℃に加熱し、表2に示すカーボンポテンシャル(純鉄に対するカーボンポテンシャル)になるようにガス(CO、CO、H)を導入しながら、930℃で120分間浸炭処理(浸炭)を行い、その後、炉冷により炉の温度を850℃に下げ、850℃で30分間浸炭処理(拡散)を行った。次いで、油焼入れを行った。そして、180℃で1時間油焼戻しを行った(図1参照)。これにより、各実施例及び比較例について鋼表面のC濃度を高めた一組の歯車、すなわち、駆動側歯車及び従動側歯車(浸炭部品)を得た。
尚、表2に示すカーボンポテンシャルにするためのガス導入は、図2に示すCO%−CO%と純鉄に対するカーボンポテンシャルとの関係のうち、930℃におけるこれらの関係に基づいて行った。他の温度で行う場合には、他の温度におけるそれらの関係に基づいて行えばよい。同図には、他の温度の一例として、816℃、843℃、871℃、900℃の例を併せて示す。
(歯元疲労試験)
歯元疲労試験は、大きな荷重が連続的に負荷される場合における変形による疲労強度の劣化を歯元で調査する試験である。歯元疲労試験では、上記の一組の歯車、すなわち、駆動側歯車(モジュール2.5、歯数26、歯幅20mm、圧力角20°、ネジレ角25°)と、従動側歯車(モジュール2.5、歯数30、歯幅20mm、圧力角20°、ネジレ角25°)とを噛み合わせ、10回、回転させてもピッティング破壊を生じない負荷応力を歯元曲げ疲労強度として求めた。歯元疲労試験では、回転数を3500rpmとし、油温を80℃とした。その結果を表2に示す。
(歯元表面炭素濃度)
歯元表面炭素濃度は、作製した歯車から試料を採取し、その板厚方向の断面をEPMAで面分析することにより求めた。その結果を表2に示す。
(粒界酸化深さ及び炭化物の有無)
粒界酸化深さは、作製した歯車から試料を採取し、その表面にNiメッキ(顕微鏡写真を見やすくするため)を行い、板厚方向の断面をナイタールで腐食した後、黒くなった部分の板厚方向の長さを測定して求めた。その結果を表2に示す。
また、図3(a)(b)に、実施例9及び一般的な肌焼鋼であるSCr420(比較例には入っていない)の板厚方向の断面のナイタールで腐食した後の顕微鏡写真を比較して示す。実施例9は、粒界酸化が認められなかったが、SCr420では粒界酸化(ひげ状の黒い部分)が顕著に認められた。
更に、図4(a)(b)に、実施例9及び一般的な肌焼鋼であるSCM420(比較例1)の板厚方向の断面のナイタールで腐食した後の顕微鏡写真を比較して示す。実施例9は、炭化物の生成が認められなかったが、SCM420(比較例1)では炭化物の生成が認められた。
Figure 2008291298
(評価)
比較例1及び2は、一般的な肌焼鋼であるSCM420を対象にしたもので、これらは、CPを異ならせたものである。比較例1は、CPを従来通りの0.8としたものであるが、この場合、歯元表面炭素濃度は所望の値になるが、粒界酸化深さが深く、歯元曲げ疲労強度も低くなった。そこで、比較例2のように、CPを本発明の実施例1〜21と同様に高めの1.09にしてみると、粒界酸化深さは低減できても、Cが表面に入りすぎて歯元表面炭素濃度が高くなりすぎ、歯元曲げ疲労強度が低くなった。これらのことから、一般的な肌焼鋼では、CPの調整だけでは所望の特性がでないこと、及び、所望の特性を出すには成分組成を工夫する必要があることが確認できた。
そこで、実施例1〜21のように、所定の成分組成とし、上記(1)式を満たすようにすると、CP≧0.90の雰囲気でガス浸炭を行っても過剰な炭素が侵入せず、歯元表面炭素濃度を0.70〜0.88%程度の所望のC濃度にすることができた。また、実施例1〜21は、CP≧0.90の雰囲気でガス浸炭を行ったものであるから、粒界酸化深さが低減される結果になった(図3(a)参照)。また、実施例1〜21は、上述のように過剰な炭素が侵入しないため、ガス浸炭の際に炭化物や過剰な残留γが生成せず(実施例1〜21の残留γは25vol%以下、比較例2〜6の残留γは40vol%超)、得られた歯車は、比較例1〜6に比べて顕著に高い980MPa以上の高い歯元曲げ疲労強度を示した。
比較例2の他、比較例3〜5は、成分バランスが悪く、上記(1)式を満たさないため、実施例1〜21と同様のCPでガス浸炭を行うと、粒界酸化深さを低減できても、Cが過剰に入りすぎ、歯元表面炭素濃度が高くなりすぎた。そのため、歯元曲げ疲労強度も低かった。これは、歯元表面炭素濃度が高いため、残留γが残り、マルテンサイトに変態しなかったためと考えられる。
比較例6は、Siが少なかったため、上記(1)式を満たしていても、実施例1と同様のCPでガス浸炭を行うとCが過剰に入りすぎ、歯元表面炭素濃度が高くなりすぎた。そのため、歯元曲げ疲労強度も低かった。これは、歯元表面炭素濃度が高いため、残留γが残り、マルテンサイトに変態しなかったためと考えられる。
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改変が可能である。
本発明に係る浸炭用鋼は、シャフト、歯車等の機械構造用部品の鋼材として適し、本発明に係る浸炭部品は、各種機械の部品として適しているため、いずれも鋼材メーカーや機械構造部品メーカーにとって産業上の利用価値が極めて高い。
本発明に係る浸炭部品の製造方法は、成分バランスを工夫することにより、特定の元素に着目すれば、従来ではガス浸炭では困難とされてきた量の特定元素(例えば、Si)を含むような処理材に対しても適用できる点で、製造方法の選択余地が拡がり、鋼材メーカーや機械構造部品メーカーにとって産業上の利用価値が極めて高い。
実施例1〜21及び比較例1〜6のガス浸炭焼入れ処理を模式的に示した図である。 800℃〜930℃におけるCO%−CO%と純鉄に対するカーボンポテンシャルとの関係を示すグラフである。 実施例9とSCr420のガス浸炭焼入れ、焼戻し後の板厚方向断面をナイタールで腐食した後の顕微鏡写真である。 実施例9とSCM420(比較例1)のガス浸炭焼入れ、焼戻し後の板厚方向断面をナイタールで腐食した後の顕微鏡写真である。

Claims (10)

  1. 質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜3.00%、Mn:0.30〜3.00%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cu:0.01〜1.00%、Ni:0.01〜3.00%、及び、Cr:0.30〜1.50%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる浸炭用鋼であって、下記(1)式を満たすことを特徴とする浸炭用鋼。
    Si[%]+Ni[%]+Cu[%]−Cr[%]>0.3…(1)
  2. 更に、質量%で、Mo:0.00〜2.00%、及び/又は、Al:0.00〜0.20%を含むことを特徴とする請求項1に記載の浸炭用鋼。
  3. 更に、質量%で、Nb:0.00〜0.20%、Ti:0.00〜0.20%、N:0.00〜0.05%、及び、B:0.00〜0.01%からなる群の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項2に記載の浸炭用鋼。
  4. 質量%で、C:0.10〜0.30%、Si:0.50〜3.00%、Mn:0.30〜3.00%、P:0.030%以下、S:0.030%以下、Cu:0.01〜1.00%、Ni:0.01〜3.00%、及び、Cr:0.30〜1.50%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる浸炭部品であって、下記(1)式を満たすことを特徴とする浸炭部品。
    Si[%]+Ni[%]+Cu[%]−Cr[%]>0.3…(1)
  5. 更に、質量%で、Mo:0.00〜2.00%、及び/又は、Al:0.00〜0.20%を含むことを特徴とする請求項4に記載の浸炭部品。
  6. 更に、質量%で、Nb:0.00〜0.20%、Ti:0.00〜0.20%、N:0.00〜0.05%、及び、B:0.00〜0.01%からなる群の少なくともいずれかを含むことを特徴とする請求項5に記載の浸炭部品。
  7. 請求項1から3のいずれかに記載の浸炭用鋼に対して、純鉄に対するカーボンポテンシャルが0.90%以上である雰囲気でガス浸炭を行って得られる浸炭部品。
  8. 請求項7に記載の前記雰囲気の温度が800℃〜1000℃であることを特徴とする請求項7に記載の浸炭部品。
  9. 請求項1から3のいずれかに記載の浸炭用鋼に対して、純鉄に対するカーボンポテンシャルが0.90%以上である雰囲気でガス浸炭を行うことを特徴とする浸炭部品の製造方法。
  10. 請求項9に記載の前記雰囲気の温度が800℃〜1000℃であることを特徴とする請求項9に記載の浸炭部品の製造方法。
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