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JP2008269902A - 膜/電極接合体及び直接メタノール型燃料電池 - Google Patents

膜/電極接合体及び直接メタノール型燃料電池 Download PDF

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修 久保田
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博史 山内
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Abstract

【課題】
本発明の目的は、カソード電極と電解質膜との境界付近に留まる生成水および電解質膜浸透水を効果的に取り除き、カソード電極と電解質膜との境界付近に反応ガスを充分に供給し、長期間安定して高い性能を発揮する燃料電池用膜/電極接合体および直接メタノール型燃料電池を提供することにある。
【解決手段】
水素イオン伝導性高分子電解質膜と、カソード電極とアノード電極を有する膜/電極接合体であって、前記カソード電極と前記水素イオン伝導性高分子電解質膜との間に拡散補助層を有することを特徴とする膜/電極接合体が提供される。
【選択図】図3

Description

本発明は、水の排出性に優れた膜/電極接合体及び直接メタノール型燃料電池に関する。
燃料電池は、燃料から電気化学的に直接電気エネルギを取り出すためエネルギ効率が高く、また、排出物の主体が水であることから環境に調和しやすいなどの利点がある。そのため、自動車,分散電源,情報電子機器などへの適用が試みられている。中でも、情報電子機器ではリチウム電池に代わる長時間連続運転可能な電源として注目され、燃料電池を搭載する種々の情報電子機器が提案されている。
特許文献1には、水素吸収合金を貯蔵する水素吸蔵ボンベを用いた燃料電池を搭載した情報電子機器が示され、また、特許文献2には、メタノールを燃料とした情報電子機器が示されている。
液体のメタノールを直接酸化して電気を取り出す方式、いわゆる直接メタノール型燃料電池(Direct Methanol Fuel Cell 、以下DMFCと称す)は、改質器等が不要なため、電池システムが比較的簡単な構成にできる利点がある。
DMFCの発電原理は式(1)〜(3)で示される。
アノード電極の反応:CH3OH+H2O → 6H++6e-+CO2 式(1)
カソード電極の反応:6H++6e-+1.5O2 → 3H2O 式(2)
全体の反応:CH3OH+1.5O2 → 2H2O+CO2 式(3)
上記の反応において、水素イオンは水素イオン伝導性高分子電解質膜(以下、電解質膜と略記する)中を、アノード電極側からカソード電極側に拡散する。電池の運転温度を
100℃前後の温度まで上昇させると、水の沸点に近いため、電解質膜に含まれる水が蒸発して失われる割合が高くなる。これに伴い、電解質膜が乾いて電解質膜の水素イオン伝導性が低下する。これを解決するため、電池に供給するガスに水分を添加して、電解質膜の乾燥を抑制する方法が、広く公知の方法として採られている。しかし、この方法では、電極及び電解質膜を湿潤状態に移行させるため、電極内に滞留する水により細孔が閉塞され、酸素ガスのカソード電極への拡散を阻害するという問題が生じる。
一方、式(2)で示されるように、DMFCではカソード電極において水が生成する。電池反応による生成水を、以下カソード生成水と称する。また、電解質膜内を拡散する水素イオンには一定量の水が同伴しており、電解質膜からカソード電極側に放出される。さらには電解質膜を浸透する水も、同じくカソード電極側に放出される。これら、水素イオン同伴水や電解質膜浸透水を、以下電解質膜透過水と称する。
水は電池反応により生成した時には、水蒸気の形態をとっているが、カソード電極の構造や材質,処理条件によって、その何割かはカソード電極で結露水となる。その結露水のうち何割かは、カソード電極の外へ排出されるが、何割かはカソード電極に残存する。これによってカソード電極側のガス拡散層やカソード電極の濡れ性が、時間の経過とともに増大するため、DMFCではカソード電極側のガス拡散層やカソード電極において、酸素ガスの供給路となっていた細孔が閉塞してしまうという問題があった。カソード電極の性能は供給される酸素量に依存するため、細孔の閉塞が起きた場合、カソード電極に酸素ガスが十分に供給されなくなり、電池性能が低下することになる。
DMFCの運転においては、上記のような水分の蒸発による電解質膜の乾燥を防止するための調湿と、カソード生成水及び電解質膜透過水が凝縮することによるカソード電極の細孔の閉塞を防止するための調湿のバランスを考慮することが重要となる。
カソード生成水及び電解質膜透過水による出力低下を避けるためには、カソード生成水及び電解質膜透過水の排出性を高める必要がある。排出性を高めるための試みとしては、膜/電極接合体やガス拡散層の近傍に調湿成分を付与する方法である。例えば、特許文献3では、触媒層中に硫酸または燐酸からなる保水剤を含有するものであり、また、特許文献4もしくは特許文献5では、電極とその近傍に金属酸化物やゼオライトを導入している。特許文献6や特許文献7では、電極の外側の導電性プレート表面を覆うナイロン,綿,ポリエステル/レーヨン,ポリエステル/アクリル,レーヨン/ポリクラールなどのシート状の吸水材が配置される構成が開示されている。
一方、膜/電極接合体の内部の、電解質と触媒層の界面における調湿に関しては、特許文献8では電解質膜と触媒層との間に、電解質膜の乾きを防ぐために、凝縮層と称する親水性の保湿層を設けてある。
特開平9−213359号公報 特開2002−49440号公報 特開平10−334922号公報 特開2002−289200号公報 特開2002−270199号公報 特開2000−251910号公報 特開2001−15137号公報 特開2005−85757号公報
発明者らは携帯機器向け燃料電池の開発に注力する過程で、電池特性向上のため、より効果的に電極内に滞留する、カソード生成水及び電解質膜透過水の排出性を高める方法を研究した。その結果、カソード電極と電解質膜との境界付近に生じたカソード生成水及び電解質膜透過水は、特に排出し難いことが明らかとなった。
これらの水が排出され難い主な原因は次の(1)から(3)と考えられる。
(1)電極が緻密であることと
(2)電極には親水性である水素イオン伝導性樹脂がバインダとして存在すること
(3)カソード電極のうちガス拡散層と接している側は、ガス拡散層の外側を流れる空気の流れの影響を受けるが、電解質膜と接している側は空気の流れの影響をほとんど受けないこと
これらの理由により、カソード電極と電解質膜との境界付近に生じたカソード生成水及び電解質膜透過水が排出し難いために、カソード電極の電解質膜近辺の触媒層は水に覆われていると考えられる。水によってカソード電極の触媒層の細孔が閉塞されるために、カソード電極の電解質膜側の触媒層への反応ガスの供給は不十分となり、その部分の触媒は充分に機能していないと考えられる。特に水を排出し難い、カソード電極と電解質膜との境界付近において、水及び反応ガスの拡散挙動に手を加えることが、効果的に生成水を排出して、高い電池性能を発現させるためには必要である。
本発明の目的は、カソード電極と電解質膜との境界付近に留まるカソード生成水及び電解質膜透過水を効果的に取り除き、カソード電極と電解質膜との境界付近に反応ガスを充分に供給し、長期間安定して高い性能を発揮する燃料電池用膜/電極接合体および直接メタノール型燃料電池を提供することにある。
発明の一つとしては、直接メタノール型燃料電池において、膜/電極接合体の電解質膜とカソード電極の間に、拡散補助層を設ける。より具体的には、拡散補助層は、撥水性樹脂と水素イオン伝導性樹脂部材よりなる、多孔質の部材によって構成される。すなわち、前記拡散補助層では、多孔質の撥水性樹脂よりなる部材を用いることにより、カソード電極において式(2)により生成する水蒸気及び電解質膜を透過してくる水蒸気が、カソード電極及び/あるいは電解質膜の近傍に凝縮するのを防止する。また、拡散補助層では、水素イオン伝導性樹脂部材により、電解質膜とカソード電極の間の水素イオンの移動を促進させることができる。
本発明によれば、水素イオン伝導性高分子電解質膜と、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜の裏表に配置したカソード電極とアノード電極とを有する膜/電極接合体であって、前記カソード電極と前記水素イオン伝導性高分子電解質膜との間に、撥水性樹脂と水素イオン伝導性樹脂よりなる多孔質の拡散補助層を有することを特徴とする膜/電極接合体が提供される。
また、本発明によれば、水素イオン伝導性高分子電解質膜と、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜の裏表に配置したカソード電極とアノード電極とを有する膜/電極接合体と、前記カソード電極と前記アノード電極とを覆うように、それぞれ接触したカソード電極側のガス拡散層とアノード電極側のガス拡散層とを有する膜/電極接合構造体において、前記カソード電極と前記水素イオン伝導性高分子電解質膜との間に、撥水性樹脂と水素イオン伝導性樹脂よりなる多孔質の拡散補助層を有することを特徴とする膜/電極接合構造体が提供される。
また、本発明によれば、水素イオン伝導性高分子電解質膜と、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜の裏表に配置したカソード電極とアノード電極とを有する膜/電極接合体と、前記カソード電極と一体に成型されたカソード電極側のガス拡散層と、前記アノード電極と一体に成型されたアノード電極側のガス拡散層とを含む膜/電極接合構造体であって、前記カソード電極と前記水素イオン伝導性高分子電解質膜との間に、撥水性樹脂と水素イオン伝導性樹脂よりなる多孔質の拡散補助層を有することを特徴とする膜/電極接合構造体が提供される。
また本発明によれば、水素イオン伝導性高分子電解質膜と、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜の裏表に配置したカソード電極とアノード電極と、前記カソード電極と前記アノード電極とを覆うように、それぞれ接触したカソード電極側のガス拡散層とアノード電極側のガス拡散層とを有する直接メタノール型燃料電池において、前記カソード電極と前記水素イオン伝導性高分子電解質膜との間に、撥水性樹脂と水素イオン伝導性樹脂よりなる多孔質の拡散補助層を有することを特徴とする直接メタノール型燃料電池が提供される。
また本発明によれば、水素イオン伝導性高分子電解質膜と、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜の裏表に配置したカソード電極とアノード電極と、前記カソード電極と一体に成型されたカソード電極側のガス拡散層と、前記アノード電極と一体に成型されたアノード電極側のガス拡散層とを有する直接メタノール型燃料電池において、前記カソード電極と前記水素イオン伝導性高分子電解質膜との間に、撥水性樹脂と水素イオン伝導性樹脂よりなる多孔質の拡散補助層を有することを特徴とする直接メタノール型燃料電池が提供される。
本発明によれば、カソード電極と電解質膜との境界付近に留まるカソード生成水及び電解質膜透過水を効果的に取り除き、カソード電極と電解質膜との境界付近に反応ガスを充分に供給し、長期間安定して高い性能を発揮する燃料電池用膜/電極接合体および直接メタノール型燃料電池を提供することができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を図によって説明する。図3は本発明になる直接メタノール型燃料電池の構成を示す。電解質膜7を挟んで、その片側にアノード電極2を積層し、もう一方の側に、まず本発明になる拡散補助層3を、続いてその上にカソード電極1を積層して、本発明になる膜/電極接合体が構成される。膜/電極接合体の両面にカソード電極側のガス拡散層11,アノード電極側のガス拡散層12をそれぞれ積層して、直接メタノール型燃料電池が構成される。
拡散補助層3は、撥水性樹脂基材と水素イオン伝導性樹脂部材よりなる、多孔質の部材によって構成される。すなわち、前記拡散補助層では、多孔質の撥水性樹脂よりなる部材を用いることにより、カソード電極において式(2)により生成する水蒸気及び電解質膜を透過してくる水蒸気が、カソード電極1及び/あるいは電解質膜7の近傍に凝縮するのを防止する。また、前記拡散補助層3では、水素イオン伝導性樹脂部材6により、電解質膜7とカソード電極1の間の水素イオンの移動を促進させることができる。
カソード電極1と、拡散補助層3と、電解質膜7と、アノード電極2よりなる膜/電極接合体の両面には、アノード電極側のガス拡散層12,カソード電極側のガス拡散層11をそれぞれ積層し、さらにその外側にアノード電極側のセパレータ22,カソード電極側のセパレータ21をそれぞれ積層して、燃料電池が構成される。
カソード電極1あるいはアノード電極2に、それぞれカソード電極側のガス拡散層11あるいはアノード電極側のガス拡散層12を積層するに際して、カーボン等の多孔質な層を介して両者を一体形状に成型することもできる。このようにして一体成型されたものを、以下カソードガス拡散電極あるいはアノードガス拡散電極と称する。
電解質膜7としては、例えば、パーフロロカーボンスルフォン酸樹脂よりなるシート状の部材を使用する。
発電部を構成するアノード電極2の触媒としては、炭素系粉末担体に白金とルテニウムあるいは白金/ルテニウム合金の微粒子を分散担持したもの、カソード電極1の触媒としては、炭素系担体に白金微粒子を分散担持したものは容易に製造できる材料である。しかし、本形態の燃料電池のアノード電極の触媒およびカソード電極の触媒は、通常の直接メタノール型燃料電池に用いられるものであれば、特に、制限されるものではなく、これら触媒の安定化や長寿命化のために上記の貴金属成分に鉄,錫,希土類元素等から選ばれた第3の成分を添加した触媒を用いることも好ましい。
拡散補助層に求められる代表的な特性としては、以下の(1)から(5)が挙げられる。
(1)アノード電極で発生した水素イオンを、電解質膜からカソード電極へ送るための水素イオン導電性
(2)アノード電極側から電解質膜を透過した水が、カソード電極へ浸透することを防ぐための撥水性
(3)カソード生成水を、カソード電極の電解質膜側から排出するための撥水性
(4)カソード電極内を拡散してきた空気の流れを、拡散補助層内に取り込むためのガス透過性
(5)上記(4)のカソード電極から拡散してきた空気の流れによって、カソード生成水をカソード電極の電解質膜側から排出するためのガス透過性
拡散補助層は上記の機能を発現させるために考案したもので、撥水性の多孔質材であり、さらに水素イオン導電性を有することを特徴とする。具体的には、拡散補助層は水素イオン伝導性樹脂部材と撥水材を包含する多孔体によって構成される。拡散補助層の詳細を図1により説明する。図1は拡散補助層の断面の概念図である。撥水性樹脂基材4の孔部分5に、水素イオン伝導性樹脂部材6が形成されている。水素イオン伝導性樹脂部材6は、撥水性樹脂基材4の孔部分5に、粒子状に分散していることが好ましい。これにより、撥水性樹脂基材4の表面積が大きくなり、撥水性を発現させることができる。
上記(1)から(5)の特性を満たすために、包含される水素イオン伝導性樹脂部材6や撥水性樹脂基材4を形成する撥水材、それぞれの添加量,拡散補助層の細孔直径,空孔率,ガス透過性や厚さ等を熟慮する必要がある。
拡散補助層は、限定的ではないが、好ましい空孔率や厚さを有する基材を選び、その基材に撥水材と水素イオン導電性樹脂部材6を含浸させて得ることができる。さらに作製プロセスの簡略化のためには、始めから好ましい空孔率や厚さを有する基材として、撥水性を示す材料で作られた多孔質の撥水性樹脂基材4を用いる方法が望ましい。例えば、パーフロロカーボンスルフォン酸樹脂のディスパージョンを、フッ素樹脂からなる多孔体に含浸させて、乾燥させることにより拡散補助層を作製することができる。
多孔質の撥水性樹脂基材4としては、撥水性を示す限りにおいて限定的ではないがポリエチレン,ポリプロピレン,ポリカーボネート等がある。他にナイロン,フェノール樹脂,アクリル樹脂等様々ある。しかしながら熱や汚れに強い点からポリテトラフロロエチレン(以下、PTFEと略記する)やテトラフロロエチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)等のフッ素樹脂からなる多孔体が最も好ましい。
水素イオン伝導性樹脂部材6としては、代表的な材料としてパーフロロカーボン系スルフォン酸樹脂,ポリパーフロロスチレン系スルフォン酸樹脂などに代表されるスルフォン酸化やアルキレンスルフォン酸化したフッ素系ポリマやポリスチレン類,ポリスルフォン類,ポリエーテルスルフォン類,ポリエーテルエーテルスルフォン類,ポリエーテルエーテルケトン類,その他の炭化水素系ポリマをスルフォン化した材料を用いることができる。
拡散補助層は電解質膜とカソード電極の間に設けられるために、拡散補助層における水素イオン伝導性樹脂部材の添加量は、膜/電極接合体の抵抗に影響を及ぼす。添加する水素イオン伝導性樹脂部材の量としては、拡散補助層の体積に対して、体積パーセントで
30%から50%であることが望ましい。水素イオン伝導性樹脂部材の添加量が体積パーセントで29%よりも少ないと、電解質膜からカソード電極への水素イオンの移動に対して障害となる。水素イオン伝導性樹脂部材の添加量が、体積パーセントで51%よりも多いと、水素イオン伝導性樹脂部材は親水性が高いため、拡散補助層の親水性が高くなり、水蒸気結露によるガス拡散性の低下と、結露水停滞による排水性の低下に繋がる。従って、水素イオン伝導性樹脂部材の量を体積パーセントで30%から50%とすることにより、電解質膜から供給される水素イオンをカソード電極に供給することができ、式(2)の反応を速やかに進行させることができる。
カソード電極近傍からの水分の排出を促進するためには、細孔分布プロファイルが重要な要件である。拡散補助層の細孔分布は、水銀圧入法等の公知の方法により測定することができる。それによると、平均細孔直径が0.060μmから2.0μmの範囲にあることが望ましい。平均細孔直径が0.059μm 以下であると、細孔径が小さくなりすぎて、ガスの透過性が低下するため望ましくない。逆に、平均細孔直径が2.1μm 以上になると、ガスの透過性は向上するが、大きな細孔内の空間に凝縮した水滴が存在できるようになる。すなわち、細孔径が2.0μm 以下であれば、水は毛管凝縮しかできず、拡散補助層の基材が撥水性であれば、拡散補助層の細孔内への毛管凝縮は抑制される。しかし、平均細孔直径が2.1μm 以上になると、大きな細孔の中央部に凝縮した水滴が形成され、細孔が閉塞されてガスの透過性を低下させるため、拡散補助層としては望ましくない。
拡散補助層の空孔率はガス透過性に関係するため、拡散補助層の空孔率は20%から
40%であることが好ましい。拡散補助層の空孔率を20%から40%とすることにより、水素イオンに同伴して電解質膜から排出される水蒸気を、ガスの流れに同伴させて、カソード電極へ速やかに拡散できるようにすることができる。拡散補助層の空孔率が19%以下であると、ガスの拡散が阻害されるため好ましくない。また拡散補助層の空孔率が
41%以上であると膜/電極接合体を作製する際に、加圧により変形して電解質膜とカソード電極層が直接接触するおそれがあるため好ましくない。
さらに、また、拡散補助層のガス透過性をカソード電極側より大きくすることにより、水素イオンに同伴して電解質膜から排出される水蒸気を、カソード電極へ速やかに拡散できるようにする。これにより、水がカソード電極層の細孔を閉塞して、電極反応が阻害されるのを抑制することができる。カソード電極のガス透過性はカソード電極の作り方によって様々であるが、おおよそ30cm3/m2・24h・atm(23℃,酸素,0%RHの条件下) 程度の水準である。拡散補助層のガス透過性は、20000cm3/m2・24h・atm(23℃,酸素,0%RHの条件下)以上あることが好ましい。拡散補助層のガス透過性が、カソード電極のガス透過性より小さいと、カソード電極への酸素の供給が阻害されるため好ましくない。
拡散補助層の厚さは、15μm以上,200μm以下であることが好ましい。拡散補助層の厚さが14μm以下であると、拡散補助層の細孔部分の容積が小さすぎて、電解質膜あるいはカソード電極から水分を取り込む量が不充分であり、拡散補助層による排水性を低下させる。拡散補助層の厚さが210μm以上であると、拡散補助層の電気抵抗が大きくなり、膜/電極接合体の内部抵抗を増加させ、電池の出力を低下させるため望ましくない。より好ましくは、拡散補助層の厚さは15μm以上,40μm以下であることが望ましい。
なお、本形態の拡散補助層を用いることの付随する効果としては、メタノールクロスオーバの低減効果がある。拡散補助層がない場合には、メタノールは燃料タンクからアノード電極,電解質膜,カソード電極と順に透過してしまうが、拡散補助層がある場合には、電解質膜からカソード電極への透過が抑制される。また、拡散補助層に白金やパラジウム等のメタノールを分解する能力を持つ触媒金属を含ませることで、更にメタノールクロスオーバを低減させることもできる。
続いて以下に、実施例を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
以下に、本発明になる膜/電極接合体の作製方法を示す。
カソード電極は、炭素担体上に白金/ルテニウムの原子比が1/1の白金/ルテニウム合金微粒子を30wt%分散担持した触媒粉末と、パーフロロカーボンスルフォン酸(商品名:Nafion(登録商標),DuPont社製)をバインダとして混合した、水/アルコール混合溶媒〔水:イソプロパノール:ノルマルプロパノールが1:2:2(重量比)の混合溶媒〕のスラリーを調製して、スクリーン印刷法でPTFEフィルム上に厚さ約25μmの多孔質膜に形成した。
アノード電極は、炭素担体上に白金/ルテニウムの原子比が1/1の白金/ルテニウム合金微粒子を50wt%分散担持した触媒粉末と、パーフロロカーボンスルフォン酸(商品名:Nafion(登録商標),DuPont社製)をバインダとして、水/アルコール混合溶媒
〔水:イソプロパノール:ノルマルプロパノールが1:2:2(重量比)の混合溶媒〕のスラリーを調製し、スクリーン印刷法でPTFEフィルム上に厚さ約20μmの多孔質膜に形成した。
こうして調製したカソード多孔質膜およびアノード多孔質膜を、それぞれ10mm幅×
20mm長さに切り出して、カソード電極およびアノード電極とした。
拡散補助層は、多孔性樹脂シート(商品名:NTF1033,日東電工社製)に2wt%パーフロロカーボンスルフォン酸(商品名:Nafion(登録商標),DuPont社製)電解質をバインダとして混合した水/アルコール混合液〔水:イソプロパノール:ノルマルプロパノールが1:2:2(重量比)の混合溶媒〕を含浸し、80℃で1時間乾燥させて作製した。拡散補助層の厚さは15μm、パーフロロカーボンスルフォン酸電解質の含浸量は、多孔性樹脂シートに対して50体積パーセントであった。水銀圧入法により細孔分布を測定した結果、拡散補助層の平均細孔直径は1.0μm、空孔率は36%であった。ガス透過率は、20,000cm3/(m2・24h・atm)であった。
アノード電極の電解質膜側表面に、5wt%のNafion(登録商標)のアルコール水溶液〔水:イソプロパノール:ノルマルプロパノールが1:2:2(重量比)の混合溶媒、
Fluka Chemika社製〕を約0.5ml浸透させた後、電解質膜の発電部に接合し、約1kgの荷重を加えて80℃,3時間乾燥した。次に、カソード電極の電解質膜側表面に5wt%の前記Nafion(登録商標)のアルコール水溶液を約0.5ml 浸透させた後、図2に示すように、先に接合したアノード電極と重なるように、電解質膜に拡散補助層を配置した上から接合し、約1kgの荷重を加えて80℃,3時間乾燥することによって、膜/電極接合体を調製した。
このようにして調製した膜/電極接合体を用いて、図3に示すように燃料電池を構成して、電流−電圧特性を評価した。測定では、膜/電極接合体の電極部分の両側に、ガス拡散層としてカーボンペーパー(東レ株式会社製,TGP−H−090)を当てた。カーボンペーパーは、焼成後の重量で5wt%となるよう撥水材であるPTFE微粒子の水性分散液(ポリフロン(登録商標)ディスパージョンD−1,ダイキン工業製)を含浸し、
340℃で3時間焼成したものを用いた。
試験条件は、アノード電極側には10wt%のメタノール水溶液をマイクロチューブポンプで6cm3/minの速度で供給し、カソード電極側は自然呼気の条件で行った。環境温度は約30℃、湿度は約40%RHであった。試験結果を、図4に示す。それによると、電流が0.8A、電流密度に換算すると0.4A/cm2のとき、0.4V以上の高い電圧が得られ、直接メタノール型燃料電池用の膜/電極接合体として十分な性能を示した。
〔比較例〕
以下に、従来法による膜/電極接合体の作製方法を示す。
アノード電極及びカソード電極は、実施例1と同様にして、PTFEフィルム上に厚さ約20μmの多孔質膜として作製した。アノード多孔質膜およびカソード多孔質膜は、それぞれ10mm幅×20mm長さに切り出して、アノード電極およびカソード電極とした。
アノード電極の電解質膜側表面に、5wt%のNafion(登録商標)アルコール水溶液
〔水:イソプロパノール:ノルマルプロパノールが1:2:2(重量比)の混合溶媒、
Fluka Chemika社製〕を約0.5ml浸透させた後、上記の電解質膜の発電部に接合し、約1kgの荷重を加えて80℃,3時間乾燥する。次に、カソード電極の電解質膜側表面に5wt%の前記Nafion(登録商標)のアルコール水溶液を約0.5ml 浸透させた後、電解質膜に先に接合したアノード電極と重なるように上から接合し、約1kgの荷重を加えて
80℃,3時間乾燥することによって、膜/電極接合体を調製した。
このようにして調製した膜/電極接合体を用いて、図3に示す燃料電池を構成して、電流−電圧特性を評価した。試験条件は、アノード電極側には10wt%のメタノール水溶液をマイクロチューブポンプで6cm3/minの速度で供給し、カソード電極側は自然呼気の条件で行った。環境温度は約30℃、湿度は約40%RHであった。試験結果を、図4に示す。それによると、電流が0.8A 、電流密度に換算すると0.4A/cm2のとき、電圧は0.3Vであり、実施例1に比べて低い電圧しかえられなかった。
図4で明らかなように、本発明になる、実施例1の膜/電極接合体の方が、比較例の膜/電極接合体に比べて、高電流側で電圧が高く、高出力が得られている。高電流側は、ガス拡散性と排水性が性能に影響を与える領域である。つまり、本発明になる、実施例1の膜/電極接合体では、ガス拡散性と排水性が改善されていることがわかる。
以下に、本発明の請求項3記載の膜/電極接合構造体の作製方法を示す。
本実施例で述べるガス拡散電極とは、アノード電極,カソード電極それぞれの触媒層をガス拡散層上に形成して、アノード電極とカソード電極を、それぞれガス拡散層と一体に成型したものである。
カーボンペーパー(東レ株式会社製,TGP−H−090)は、焼成後の重量で5wt%となるよう撥水材PTFE微粒子の水性分散液(ポリフロン(登録商標)ディスパージョンD−1,ダイキン工業製)を含浸し、340℃で3時間焼成したものを用いた。
なお、カーボンペーパーの面に直接スラリーをスプレーするとの細孔部分を多少触媒やバインダで埋めることになる。この場合、ガスや燃料の拡散性が低下し、高電流密度運転時の出力低下に繋がるため、高電流密度運転をする場合には、次に述べるようにして、スプレーしたスラリーでカーボンペーパーの細孔を埋めない工夫をした。
すなわち、炭素粉末に焼成後の重量で40wt%となるよう撥水材PTFE微粒子の水性分散液(ポリフロン(登録商標)ディスパージョンD−1,ダイキン工業製)を添加,混練し、ペースト状になったものを、カーボンペーパー上の片面に厚さ約20μmとなるようにブレード塗布し、室温で乾燥後、270℃,3時間焼成して炭素シートを形成した。得られたシートを前記の膜/電極接合体の電極サイズと同じ形状に切り出してガス拡散層を調製した。
アノードガス拡散電極は、炭素担体上に白金/ルテニウムの原子比が1/1の白金/ルテニウム合金微粒子を50wt%分散担持した触媒粉末と、パーフロロカーボンスルフォン酸(商品名:Nafion(登録商標),DuPont社製)をバインダとして混合した、水/アルコール混合液〔水:イソプロパノール:ノルマルプロパノールが1:2:2(重量比)の混合溶媒〕をスラリーとして、スプレー法で上記カーボンペーパー上に電極を形成して作製した。
カソードガス拡散電極は、炭素担体上に白金/ルテニウムの原子比が1/1の白金/ルテニウム合金微粒子を30wt%分散担持した触媒粉末と、パーフロロカーボンスルフォン酸(商品名:Nafion(登録商標),DuPont社製)をバインダとして混合した、水/アルコール混合溶媒〔水:イソプロパノール:ノルマルプロパノールが1:2:2(重量比)の混合溶媒〕のスラリーを調製し、スプレー法で上記カーボンペーパー上に電極を形成して作製した。
こうして調製したアノードガス拡散電極およびカソードガス拡散電極を、それぞれ10mm幅×20mm長さに切り出した。
拡散補助層は、実施例1と同様の方法により調製した。拡散補助層の厚さは15μm、パーフロロカーボンスルフォン酸電解質の含浸量は、多孔性樹脂シートに対して50体積パーセントであった。水銀圧入法による細孔分布測定の結果、平均細孔直径は1.0μm、空孔率は36%であった。ガス透過率は、20,000cm3/(m2・24h・atm)であった。
アノードガス拡散電極の電解質膜側表面に、5wt%のNafion(登録商標)アルコール水溶液〔水:イソプロパノール:ノルマルプロパノールが1:2:2(重量比)の混合溶媒、Fluka Chemika社製〕を約0.5ml浸透させた後、上記の電解質膜の発電部に接合し、約1kgの荷重を加えて80℃,3時間乾燥する。次に、カソードガス拡散電極の電解質膜側表面に5wt%の前記Nafion(登録商標)アルコール水溶液を約0.5ml 浸透させた後、電解質膜に先に接合したアノードガス拡散電極と重なるよう拡散補助層を配置した上から接合し、約1kgの荷重を加えて80℃,3時間乾燥することによって、膜/電極接合構造体を調製した。
このようにして調製したガス拡散電極を使用した膜/電極接合構造体を用いて燃料電池を構成して、電流−電圧特性を評価した。
試験条件は実施例1及び比較例と同様に、アノード電極側には10wt%のメタノール水溶液をマイクロチューブポンプで6cc/min の速度で供給し、カソード電極側は自然呼気の条件で行った。環境温度は約30℃、湿度は約40%RHであった。
試験結果は実施例1とほぼ同様に、電流が0.8A、電流密度に換算すると0.4A/
cm2のとき、0.4V以上の高い電圧が得られ、燃料電池用の膜/電極接合構造体として十分な性能を示した。
上記実施例1及び実施例2によれば、多孔性樹脂シートにパーフロロカーボンスルフォン酸電解質を含浸させた拡散補助層を、カソード電極の電解質膜側に積層して調製した膜/電極接合体、あるいは多孔性樹脂シートにパーフロロカーボンスルフォン酸電解質を含浸させた拡散補助層を、カソードガス拡散電極の電解質膜側に積層して調製した膜/電極接合構造体を使用することにより、電流密度が0.4A/cm2のとき、0.4V 以上の高い電圧が得られ、直接メタノール型燃料電池用の膜/電極接合体として十分な性能を示した。
本発明になる膜/電極接合体及び直接メタノール型燃料電池は、ノートPCや携帯電話等の携帯機器や、災害時の非常用電源としての利用可能性がある。
本発明になる拡散補助層の断面を表す概念図。 本発明になる膜/電極接合体の作製方法を表す図。 本発明になる燃料電池の構成を表す図。 本発明になる実施例と比較例の電池特性を示す図。
符号の説明
1 カソード電極
2 アノード電極
3 拡散補助層
4 撥水性樹脂基材
5 孔部分
6 水素イオン伝導性樹脂部材
7 電解質膜
11 カソード電極側ガス拡散層
12 アノード電極側ガス拡散層
21 カソード電極側セパレータ
22 アノード電極側セパレータ

Claims (15)

  1. 水素イオン伝導性高分子電解質膜と、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜の裏表に配置したカソード電極とアノード電極とを有する膜/電極接合体であって、前記カソード電極と前記水素イオン伝導性高分子電解質膜との間に拡散補助層を有することを特徴とする膜/電極接合体。
  2. 水素イオン伝導性高分子電解質膜と、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜の裏表に配置したカソード電極とアノード電極とを有する膜/電極接合体と、前記カソード電極と前記アノード電極とを覆うように、それぞれ接触したカソード電極側のガス拡散層とアノード電極側のガス拡散層とを有する膜/電極接合構造体において、前記カソード電極と前記水素イオン伝導性高分子電解質膜との間に拡散補助層を有することを特徴とする膜/電極接合構造体。
  3. 水素イオン伝導性高分子電解質膜と、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜の裏表に配置したカソード電極とアノード電極とを有する膜/電極接合体と、前記カソード電極と一体に成型されたカソード電極側のガス拡散層と、前記アノード電極と一体に成型されたアノード電極側のガス拡散層とを含む膜/電極接合構造体であって、前記カソード電極と前記水素イオン伝導性高分子電解質膜との間に拡散補助層を有することを特徴とする膜/電極接合構造体。
  4. 請求項1に記載の膜/電極接合体であって、前記拡散補助層が撥水性樹脂と水素イオン伝導性樹脂を有することを特徴とする膜/電極接合体。
  5. 請求項1に記載の膜/電極接合体であって、前記拡散補助層が多孔体と撥水材と水素イオン伝導性樹脂を有することを特徴とする膜/電極接合体。
  6. 請求項1及び請求項4から5に記載の膜/電極接合体であって、前記拡散補助層の平均細孔直径が0.060μmから2.0μmであることを特徴とする膜/電極接合体。
  7. 請求項1及び請求項4から6に記載の膜/電極接合体であって、前記拡散補助層の厚さが15μm以上,200μm以下であることを特徴とする膜/電極接合体。
  8. 請求項1及び請求項4から7に記載の膜/電極接合体であって、前記拡散補助層の水素イオン伝導性樹脂の体積パーセントが、前記拡散補助層の体積に対して30%から50%であること特徴とする膜/電極接合体。
  9. 水素イオン伝導性高分子電解質膜と、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜の裏表に配置したカソード電極とアノード電極と、前記カソード電極と前記アノード電極とを覆うように、それぞれ接触したカソード電極側のガス拡散層とアノード電極側のガス拡散層とを有する直接メタノール型燃料電池において、前記カソード電極と前記水素イオン伝導性高分子電解質膜との間に拡散補助層を有することを特徴とする直接メタノール型燃料電池。
  10. 水素イオン伝導性高分子電解質膜と、前記水素イオン伝導性高分子電解質膜の裏表に配置したカソード電極とアノード電極と、前記カソード電極と一体に成型されたカソード電極側のガス拡散層と、前記アノード電極と一体に成型されたアノード電極側のガス拡散層とを有する直接メタノール型燃料電池において、前記カソード電極と前記水素イオン伝導性高分子電解質膜との間に拡散補助層を有することを特徴とする直接メタノール型燃料電池。
  11. 請求項9から10に記載の直接メタノール型燃料電池であって、前記拡散補助層が撥水性樹脂と水素イオン伝導性樹脂を有することを特徴とする直接メタノール型燃料電池。
  12. 請求項9から10に記載の直接メタノール型燃料電池であって、前記拡散補助層が多孔体と撥水材と水素イオン伝導性樹脂を有することを特徴とする直接メタノール型燃料電池。
  13. 請求項9から12に記載の直接メタノール型燃料電池であって、前記拡散補助層の平均細孔直径が0.060μmから2.0μmであることを特徴とする直接メタノール型燃料電池。
  14. 請求項9から13に記載の直接メタノール型燃料電池であって、前記拡散補助層の厚さが15μm以上,200μm以下であることを特徴とする直接メタノール型燃料電池。
  15. 請求項9から14に記載の直接メタノール型燃料電池であって、前記拡散補助層の水素イオン伝導性樹脂の体積パーセントが前記拡散補助層の体積に対して30%から50%であること特徴とする直接メタノール型燃料電池。
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