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JP2008108590A - 有機el素子及びその製造方法 - Google Patents

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JP2008108590A
JP2008108590A JP2006290712A JP2006290712A JP2008108590A JP 2008108590 A JP2008108590 A JP 2008108590A JP 2006290712 A JP2006290712 A JP 2006290712A JP 2006290712 A JP2006290712 A JP 2006290712A JP 2008108590 A JP2008108590 A JP 2008108590A
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Noboru Kurata
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Description

本発明は、表示装置として用いられる有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子の製造方法に関する。
1987年にイーストマンコダック社のC.W.Tangにより2層積層構成のデバイスで高い効率の有機EL素子が発表されて以来(C.W.Tang, S.A.VanSlyke, Appl. Phys. Lett. 51, 913(1987))、現在にいたる間に様々な有機EL素子が開発されて携帯端末などに一部実用化し始めている。
有機EL素子を用いた表示装置にはパッシブマトリックス表示装置とアクティブマトリックス表示装置がある。前者は複数の陽極ラインと複数の陰極ラインが交差した画素位置に発光層が形成されており、各画素は1フレーム期間中選択された時間だけ点灯する。構造が単純であり製造コストは安価であり、小画面のパネルには優れている。
カラー化の方法には、3色塗分け法、色変換法(以下CCM法)、カラーフィルタ法などがある。この方式の中で、CCM法、カラーフィルタ法は、成膜時にメタルマスクを用いる必要が無く、色変換層やカラーフィルタはフォトプロセスで基板上に作製すればよいため大面積、高精細化に関して有利である。
カラーディスプレイとしての実用上の重要課題は、精細なカラー表示機能を有すると共に、色再現性を含め長期的な安定性を有することである。しかしながら、カラー有機ELディスプレイには、一定期間の駆動により発光特性(電流−輝度特性)が著しく低下するという欠点を有している。
この発光特性の低下原因の代表的なものは、ダークスポットの成長である。このダークスポットとは、発光欠陥点のことである。駆動時および保存中に酸化が進むとダークスポットの成長が進み、発光面全体に広がる。このダークスポットは、素子中の酸素または水分により、素子を構成する積層材料の酸化または凝集によるものと考えられている。その成長は、通電中はもちろん、保存中にも進行し、特に(1)素子の周囲に存在する酸素または水分により加速され、(2)有機積層膜中に吸着物として存在する酸素または水分に影響され、および(3)素子作製時の部品に吸着している水分あるいは製造時等における水分の侵入にも影響されると考えられている。
この水分の供給源として、カラーフィルタおよび/または色変換層に内在する水分が放出されていることが考えられている。有機EL素子への水分の侵入を妨げる手法として、基板上に膜厚0.01〜200μmの無機酸化物層を配設すること(特許文献1)、平坦化層に酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化チタン(特許文献2)とし、水分・酸素遮断層として機能させることが提案されている。このほかにも窒化物など用いられる。
しかしながら、水分・酸素遮断膜を用いたパネルにおいても長時間の駆動において、水分・酸素遮断膜上に形成した電極の間を起点としてダークスポットが成長することが、発明者らの実験によってわかっている。これは、水分・酸素遮断層を形成する際に生じるピンホールや、ゴミの付着に由来する膜形成の不良部分が生じるため、電極で被覆されない部分から水分・酸素が有機EL素子に侵入するためであった。
この欠陥を補うため、上記の構造に付加し、電極間に水分・酸素遮断層を形成する方法がある(特許文献3)。この水分・酸素遮断層(以下「第2バリア層」ともいう。)としては遮断性と共に、ドライエッチングなどのパターニングが可能であることが求められる。前述のように酸化珪素などの酸化物や窒化珪素などの窒化物が用いられる。なかでも窒化珪素は遮断性に優れることからもっとも望ましい材料である。
パッシブマトリックス表示装置の場合、ストライプ状にパターニングされた下部第1電極(陽極)と直交する方向に形成された上部第2電極(陰極)ラインが交差する箇所に電圧が印加され発光にいたる。そのため陰極はマスク製膜によって分離されるか、あるいは特許文献4に記載されるように陰極分離隔壁によって分離される。前者には蒸着装置内にマスク製膜機構が必要であり、高精彩パネルには向かない方法であり、コスト及び高精細の点からは後者の方法が優れており陰極分離隔壁が必要となる。
特開平8−27939号公報 特許第3304287号公報 特開2004−39311号公報 特開平8−315981号公報
上記隔壁の材料には、その形状を逆メサ構造とするため、ノボラック樹脂、アクリル樹脂などの感光性樹脂が用いられる。隔壁は前記パターニングされた遮断膜(第2バリア層)上に形成される。
しかし、水分・酸素遮断層(第2バリア層)として用いられる窒化珪素などの窒化物は、前述の材料の陰極分離隔壁との密着性が悪いという問題がある。紫外線照射などの表面処理を施しても密着性は不十分である。このためバリア膜から分離隔壁が剥離する不具合が生じ、分離が不十分になる不良が発生してしまうという課題があった。
本発明によれば、上記の課題は、
(A)基板上に樹脂を主成分とする領域を形成し、この領域の上に第1バリア層を形成する工程と、
(B)前記第1バリア層の上に第1電極を形成する工程と、
(C)前記第1バリア層の上に第2バリア層を形成し、この第2バリア層の表面を粗面化する工程と、
(D)前記第2バリア層の上に第2電極分離隔壁を形成する工程と、
を有する有機EL素子の製造方法、
により解決される。
第2バリア層の表面を粗面化することにより、その表面積を大きくし、第2電極(陰極)分離隔壁のアンカー効果を高めることができ、密着性の向上に寄与することができる。
また、前記第2バリア層の粗面化は、ドライエッチング法、ドライアイス粒子によるブラスト、または不活性ガスイオンによるスパッタリングのいずれかによって行うのが好ましい。
有機EL素子の製造では、粗面化工程でバリア層のバリア性を損なわないようにすることが必要であり、クラックや欠陥などを生じさせないプロセスでなければならない。また、粗面化しても残渣や汚染が存在しては密着性を向上させる目的に反することから、残渣や汚染の生じないプロセスが望ましい。また、残渣があると洗浄工程を導入しなければならず、水分の混入によるパネルの信頼性の低下及びコストの面からも好ましくない。よって通常用いられる砥粒などによる粗面化の場合、砥粒の除去が困難であり、下部へのダメージもあることから難しい。また、前記理由によりウェットプロセスを含む方法は好ましくない。
前記ドライエッチング法、ドライアイス粒子ブラスト法乃至不活性ガスイオンによるスパッタリング法(逆バイアススパッタリング法)は、このような不都合がないうえ、アンカー効果を持ち、密着性を満足するのに十分で微小な粗面を形成することができ、有機EL素子の製造に用いる手段として好適である。
本発明では、第2バリア層の表面を、その算術平均粗さが1nm以上になるよう粗面化することが好ましい。この範囲の表面粗さとすることにより、第2バリア層と第2電極分離隔壁との密着性が、従来に比べ向上し、電極間の短絡もなく、良好な有機EL素子を提供することができる。なお、第2バリア層の表面粗さについては、AFMで測定した際の算術平均粗さを1nm以上とすることに加え、その最大突起高さを10nm以上とすることが好ましく、さらに最大突起高さの上限を第2バリア層の膜厚の1/5以下とすることが望ましい。
上記の構成によれば、水分・酸素遮断性に優れたバリア層と、このバリア層上に密着性の優れた電極分離隔壁を形成することができるので、ダークスポットが発生することなく、陰極分離が適正に行なわれ短絡することのない、長期間にわたって優れた発光特性を維持するパッシブマトリックス駆動の有機EL素子を提供することができる。
以下に本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
図1、2、3は有機EL素子の実施の形態を示す。図1は本発明に係る有機EL素子の透視平面図、図2は図1のA−A’矢視断面図、図3は図1のB−B’矢視断面図である。
本発明の有機EL素子100は、透明基板1上に、ストライプ状の複数の第1電極(陽極)7、第2バリア層8、有機EL層9および第2電極(陰極)10を順に積層した構造を有する。有機EL層9と第2電極10は、第1電極7の長辺方向と直交する方向に伸びる、複数の第2電極分離隔壁11により分離されている。第2電極10の端部は取り出し電極12に接続される。
図2に示すように、透明基板1と第1電極7との間には、ブラックマトリクス2、カラーフィルタ3、色変換層4(4R,4G,4B)、平坦化層5と第1バリア層6を有する。図3に示すように、第2電極分離隔壁11は、第2バリア層8上に形成される。第2バリア層は、図1に示すように、発光領域が開口するよう格子状に形成され、第2電極分離隔壁は第1電極と直交する方向に延在する。このような構成により、各第1電極7と、有機EL層9および第2電極10は直交するように配列され、第1電極と第2電極の重なる部分にひとつの画素が形成される(図1〜3)。
透明基板1は、可視光(波長400〜700nm)に対して透明であり、積層される層の形成に用いられる条件(溶媒、温度等)に耐え、寸法安定性に優れていることが好ましい。好ましい透明基板は、ガラス基板、およびポリオレフィン、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレートを含む)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレートを含む)、ポリカーボネート樹脂、またはポリイミド樹脂などの樹脂で形成された剛直性の樹脂基板を含む。あるいはまた、ポリオレフィン、アクリル樹脂(ポリメチルメタクリレートを含む)、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレートを含む)、ポリカーボネート樹脂、またはポリイミド樹脂などから形成される可撓性フィルムを、基板として用いてもよい。
透明基板1上には、カラーフィルタ3、色変換層4、またはカラーフィルタと色変換層との積層体からなる色変調部を設けることができる。これらは樹脂を主成分とする領域を構成する。カラーフィルタは、所望される波長域の光のみを透過させる層である。また、色変換層との積層構成を採る場合、色変換層にて波長分布変換された光の色純度を向上させることにカラーフィルタは有効である。カラーフィルタは、例えば、市販の液晶用カラーフィルタ材料(富士フイルムエレクトロマテリアルズ製カラーモザイクなど)を用いて形成することができる。
色変換層4は、色変換色素とマトリクス樹脂からなる層である。色変換色素は、入射光の波長分布変換を行って、異なる波長域の光を放射する色素であり、好ましくは有機発光層からの近紫外光または青色〜青緑色の光の波長分布変換を行って、所望の波長域の光(たとえば、青色、緑色または赤色)を放射する色素である。色変換色素としては、赤色光を放射するローダミン系色素、シアニン系色素など;緑色光を放射するクマリン系色素、ナフタルイミド系色素など;青色光を放射するクマリン系色素など、当該技術で知られている任意のものを用いることができる。
1つの透明基板1に、複数種の色変調部、たとえば有機発光層からの光を吸収して赤色光を放射する赤色変調部(3R,4R)、緑色光を放射する緑色変調部(3G,4G)、青色光を放射する青色変調部(3B,4B)などを設けてもよい。本発明においては、複数種の色変調部をマトリクス状に配置することによってフルカラー表示を可能にする構成を採ってもよい。
色変調部は、スピンコート法、ロールコート法、キャスト法、ディップコート法などを用いて各層の材料を塗布し、続いてフォトリソグラフ法などを用いてパターニングすることによって形成することができる。
色変調部間および色変調部上には必要に応じて、ブラックマトリクス2や平坦化層5を形成することができる。平坦化層は、色変調部の段差を緩和し、第1バリア層6の密着性を確保するため樹脂からなる。平坦化層には、アクリル材料等、可視光の透過率の高い材料が用いられる。平坦化層は、通常1μm以上、好ましくは2μm〜10μmの範囲内の厚さを有することが望ましい。
色変調部等、樹脂を主成分とする領域の上部には第1バリア層6が形成される。第1バリア層は被覆する色変調部および平坦化層5から放出される水分が有機EL層側に伝播することを防止するバリア層として機能する。材料としてSiOx、SiNx、SiNxOy、AlOx、TiOx、TaOx、ZnOxなどの絶縁性の無機酸化物、無機窒化物、無機酸化窒化物などを用いて形成することができる。望ましくは色変調部材料と屈折率差の小さなSiOx、SiNxOyを選択する。通常の場合、バリア層は100nm〜1μmの膜厚を有して形成される。第1バリア層はプラズマCVD法や、スパッタ法を用いて形成される。
第1バリア層の上に形成される第1電極(陽極)7は、複数の透明電極から構成され、スパッタ法を用いてSnO、In、ITO、IZO、ZnO:Alなどの導電性金属酸化物を堆積させることによって形成される。第1電極は、波長400〜800nmの光に対して好ましくは50%以上、より好ましくは85%以上の透過率を有することが好ましい。第1電極は、通常50nm以上、好ましくは50nm〜1μm、より好ましくは100〜300nmの範囲内の厚さを有することが望ましい。
第1電極は、表示部から外部駆動回路と接続するための取り出し端子としても形成される。また、第2電極の端部には、第2電極と外部駆動回路とを接続するための引き出し部が形成される。
第1電極の抵抗を抑制するためにAl,Mo,Ni,Cr,W等の金属を補助電極として用いることも可能である。補助電極は、表示部、第1電極の外部駆動回路との引き出し部、第2電極の取り出し電極12のいずれに形成しても抵抗を抑制する効果がある。
特に、第2電極と、第2電極の引き出し線が接合する部位では、第2電極と第1電極が接触し、酸化することを防止するために、補助電極と第2電極を直接接合する構造をとることもできる。
第1電極7は、第2電極10を第1の方向と交差する(好ましくは直交する)方向に延びる複数のストライプ状電極として形成することによって、パッシブマトリクス駆動を行うことができるように構成することが好ましい。
第1バリア層6の上部に第2バリア層8を形成する。このとき第2バリア層を、第1バリア層に接し、第1電極の間を埋めるように形成する(図1,2)。第2バリア層は、画素領域(有機EL層が第1電極と第2電極に挟持され発光領域として機能する部位)、第2電極と、第2電極の取り出し電極の接続部位と取り出し電極と外部駆動回路との接続部位を除いて形成される。
基板全面に第2バリア層8はバリア性の点から材料としてSiNx、SiNxOyなどの絶縁縁性の無機窒化物などを用いて形成することができる。通常の場合、第2バリア層は100nm〜1μmの膜厚を有して形成される。第2バリア層はプラズマCVD法や、スパッタ法を用いて形成される。
次いで粗面化工程をおこなう。これにはドライアイス粒子を高圧高速のガスと共に第2バリア層表面に吹き付けて凹凸を形成する方法乃至Arなどの不活性ガスによるスパッタリングにより表面を荒らす方法によってなされる。粗面化後の表面性状は、算術平均粗さ1nm以上で、最大突起高さ10nm以上が望ましい。最大突起高さの上限は、バリア性の点から、第2バリア層膜厚の1/5以下が望ましい。測定はAFM(SPI3800(商品名)、セイコーインスツル株式会社)で行い、測定領域としては10μm×10μm程度が好ましい。プローブにはDF20(商品名、セイコー製)を用い、測定モードはDFMである。
ドライアイスブラスト法は数ミクロンの大きさのドライアイス粒子を高圧高速の不活性ガスとともに基板表面に吹き付ける方法で一種のブラスト法であるが衝突したドライアイスは気化するため残渣を残さない。
逆バイアススパッタリング法は基板をマイナスに印加し、基板と対じする位置にある平板電極をプラスに電圧を印加することによりAr等の不活性ガスのプラズマを発生させる。発生したガスイオンは基板表面に導引され基板をスパッタリングし、それにより表面を粗面化させる方法である。そのため使用するガスはKrやXeなど重い元素の方が効果的である。
ドライエッチングは真空容器内にエッチングガスを導入し、ガスを高周波、マイクロ波などにより励起し、プラズマを発生させラジカル、イオンを生成する。プラズマにより生成されたラジカル、イオンと第2バリア層と反応させ、反応生成物を揮発性ガスにし真空排気系により外部に排気する事により行われる。その際表面が微小に粗面されるのでその効果を用いる。このエッチングは最表面より進行するため処理時間を制御することによりバリア性を保持したまま表面のみを粗面化することができる。
画素部(発光領域)上のバリア層は、次に説明するパターニングの際、エッチング除去されることから、粗面化は基板全面にわたっての処理が可能であり、マスキングなどは不要である。また、密着性が問題となる箇所は画素部以外であることから粗面化させてもなんら悪影響を与えることはない。また、前記粗面化により第2バリア層のパターニングの際のレジストの密着性も向上し、エッチング品質の向上にもつながる。
次に第2バリア層8を所定の形状にパターニングする。第2バリア層をパターニングするためのエッチング方法にはRIEプラズマやICPプラズマを用いたドライエッチング法を用いることが望ましい。そのためレジスト剤(「OFRP−800」(商品名、東京応化製)など)を塗布し、所定のパターンに形成する。第2バリア層の第1電極と接する角度を鋭角とし、かつ第1電極、補助電極として用いる金属電極との選択比を大きく取るためにドライエッチングはフッ素系ガスと酸素の混合ガスを用いる。例えば、第2バリア層にSiNxを用いた場合、ドライエッチングにはSFガスと酸素の混合ガス、SFとHClと酸素の混合ガスなどを用いることができる。SiOxを用いた場合、CFと酸素の混合ガス、SFとCHFと酸素の混合ガスなどを用いることができる。
第2バリア層8は、図4に示すように、画素領域では第1電極7の端部を被覆するとともに隣接する第1電極間に形成され、また第2電極(図示せず)の端部の下部に形成される。その結果、1つの画素の発光領域13を規定する。また、第1電極間に形成することにより、第1バリア層6を浸透する水分の透過を防止する機能をもつ。
次いで第2バリア層8上に第2電極分離隔壁11を形成する。ノボラック樹脂などの樹脂を用いてフォトリソグラフィにより逆テーパー状の断面形状を有し、第2電極(陰極)伸長方向に分離隔壁を形成する。これにより上部に形成される第2電極10は電気的に分離される。前記第2バリア層8と分離隔壁11とは粗面化処理がなされているため密着性は良いが、紫外線/オゾン処理をあわせて施すことによりさらに密着性は向上する。
有機EL層9は、有機発光層を少なくとも含み、必要に応じて正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層および/または電子注入層を含む。これらの各層は、それぞれにおいて所望される特性を実現するのに充分な膜厚を有して形成される。例えば、下記のような層構成からなるものが採用される。
(1)有機発光層
(2)正孔注入層/有機発光層
(3)有機発光層/電子注入層
(4)正孔注入層/有機発光層/電子注入層
(5)正孔輸送層/有機発光層/電子注入層
(6)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子注入層
(7)正孔注入層/正孔輸送層/有機発光層/電子輸送層/電子注入層
(上記の構成において、陽極として機能する電極が左側に接続され、陰極として機能する電極が右側に接続される)
有機発光層の材料としては、任意の公知の材料を用いることができる。青色から青緑色の発光を得るためには、例えば、縮合芳香環化合物、環集合化合物、金属錯体(Alqのようなアルミニウム錯体など)、スチリルベンゼン系化合物(4,4’−ビス(ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)など)、ポルフィリン系化合物、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、べンゾオキサゾール系などの蛍光増白剤、芳香族ジメチリディン系化合物などの材料が好ましく使用される。あるいはまた、ホスト化合物にドーパントを添加することによって、種々の波長域の光を発する有機発光層を形成してもよい。ホスト化合物としては、ジスチリルアリーレン系化合物(例えば、出光興産製IDE−120など)、N,N’−ジトリル−N,N’−ジフェニルビフェニルアミン(TPD)、アルミニウムトリス(8−キノリノラート)(Alq)等を用いることができる。ドーパントとしては、ペリレン(青紫色)、クマリン6(青色)、キナクリドン系化合物(青緑色〜緑色)、ルブレン(黄色)、4−ジシアノメチレン−2−(p−ジメチルアミノスチリル)−6−メチル−4H−ピラン(DCM、赤色)、白金オクタエチルポルフィリン錯体(PtOEP、赤色)などを用いることができる。
正孔注入層の材料としては、Pc類(CuPcなどを含む)またはインダンスレン系化合物などを用いることができる。正孔輸送層は、トリアリールアミン部分構造、カルバゾール部分構造、オキサジアゾール部分構造を有する材料を用いて形成することができる。用いることができる材料は、好ましくは、TPD、α−NPD、MTDAPB(o−,m−,p−)、m−MTDATAなどを含む。
電子輸送層の材料としては、Alqのようなアルミニウム錯体;PBD、TPOBのようなオキサジアゾール誘導体;TAZのようなトリアゾール誘導体;以下に示す構造を有するもののようなトリアジン誘導体;フェニルキノキサリン類;BMB−2Tのようなチオフェン誘導体などを用いることができる。電子注入層の材料としては、Alqのようなアルミニウム錯体、あるいはアルカリ金属ないしアルカリ土類金属をドープしたアルミニウムのキノリノール錯体などを用いることができる。
また、任意選択的に、有機EL層9と陰極として用いる第2電極との界面に、アルカリ金属、アルカリ土類金属またはそれらを含む合金、アルカリ金属フッ化物などの電子注入性材料の薄膜(膜厚10nm以下)で形成されるバッファ層を設けて、電子注入効率を高めてもよい。
有機EL層9を構成するそれぞれの層および任意選択的には、蒸着(抵抗加熱または電子ビーム加熱)などの当該技術において知られている任意の手段を用いて形成することができる。
第2電極10は、複数の電極群からなり、高反射率の金属、アモルファス合金、微結晶性合金を用いて形成されることが好ましい。高反射率の金属は、Al、Ag、Mo、W、Ni、Crなどを含む。高反射率のアモルファス合金は、NiP、NiB、CrPおよびCrBなどを含む。高反射率の微結晶性合金は、NiAlなどを含む。第2電極は、陰極として用いてもよいし、陽極として用いてもよい。第2電極を陰極として用いる場合には、第2電極と有機EL層との界面に、前述のバッファ層を設けて有機EL層に対する電子注入の効率を向上させてもよい。
第2電極10は、用いる材料に依存して、蒸着(抵抗加熱または電子ビーム加熱)、スパッタ、イオンプレーティング、レーザーアブレーションなどの当該技術において知られている任意の手段を用いて形成することができる。
(実施例1)
本実施例は、本発明の実施態様の有機EL素子を作成する例である。画素数160×120(RGB)、画素ピッチ0.33mmの有機EL素子を作製した。透明基板1としてのフュージョンガラス(コーニング製1737ガラス,100×100×1.1mm)上に、スピンコート法を用いてブラックマトリクス材料(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ株式会社製:カラーモザイクCK−7800)を塗布し、フォトリソグラフィ法によってパターニングを実施し、幅0.03mm、ピッチ0.11mm、膜厚1μmの開口部をもつブラックマトリクス2を得た。
次いで、スピンコート法を用いて青色フィルタ材料(富士フィルムエレクトロニクスマテリアルズ株式会社製:カラーモザイクCB−7001)を塗布し、フォトリソグラフィ法によってパターニングを実施し幅0.08mm、ピッチ0.33mm、厚さ10μmの複数のストライプからなる青色変換フィルタ層(カラーフィルタ3Bのみで構成されている。)を得た。
蛍光色素としてクマリン6(0.7重量部)を溶剤のプロピレングリコールモノエチルアセテート(PGMEA)120重量部へ溶解させた。該溶液に対して100重量部の新日鐵化学製V259PA/P5を加えて溶解させ、塗布液を得た。この塗布液を塗布し、フォトリソグラフィ法にてパターニングを実施して、幅0.08mm、ピッチ0.33mm、厚さ10μmの複数のストライプからなる緑色変換フィルタ層(色変換層4Gのみで構成されている。)を得た。
蛍光色素としてクマリン6(0.6重量部)、ローダミン6G(0.3重量部)およびベーシックバイオレット(0.3重量部)を120重量部のPGMEA中へ溶解させた。該溶液に対して100重量部の新日鐵化学製B259PA/P5を加えて溶解させ、塗布液を得た。この塗布液を塗布し、フォトリソグラフ用にてパターニングを実施して、幅0.08mm、ピッチ0.33mm、厚さ10μmの複数のストライプからなる赤色変換フィルタ層(色変換層4Rのみで構成されている)を得た。
次いで、青、緑、赤の各色変調部の段差を緩和する目的で、平坦化層5を形成した。平坦化アクリル材料材料(JSR株式会社製:NN810)を塗布し、ブラックマトリクス2形成領域よりも広い開口部をもつフォトマスクで露光を行い、厚さ5μmのパターンを形成した。
次いで、平行平板型プラズマCVD装置を用い、第1バリア層6(SiNx膜)をおよそ300nm成膜した。雰囲気をSiHガス50sccmとNガス200sccmとし、RF印加電力を150W、基板ステージ温度を100℃とした。
DCスパッタ法(ターゲットIn−Zn酸化物、スパッタガス:OおよびAr)を用い、室温において200nmのIZOを第1バリア層6上の全面に堆積させた。ついで、シュウ酸水溶液をエッチング液として用いるフォトリソグラフィ法によってパターニングして、色変換フィルタ層の上方に位置し、色変換フィルタのストライプと同一方向に伸びる、幅0.1mm、ピッチ0.11mmの複数のストライプからなる第1電極7を形成した。
次いで、平行平板型プラズマCVD装置を用い、第2バリア層8(SiNx膜)をおよそ膜厚300nm成膜した。雰囲気をSiHガス50sccmとNガス200sccmとし、RF印加電力を150W、基板ステージ温度を100℃とした。
この後、粗面化工程をおこなう。ドライアイス粒子製造装置から供給されるドライアイス粒子を加圧したAr、N、He、Krなどの不活性ガスとともに基板表面に吹き付けることによりなされる。本実施例ではArガスを用いて、粒子の平均粒子径は約5μm程度の条件とし、ガス圧は10kg/cmとした。また、基板温度は50℃とした。処理前の算術平均粗さは0.5nmであったのに対して処理後は3.5nmであった。測定はAFMで行い、測定領域を10μm×10μmとした。
次いで、ポジ型レジスト(東京応化工業株式会社製:TFR−1250)を塗布し、画素部ではブラックマトリクス2の開口部にあわせ80×300μmの開口部をもち、第2電極10と取り出し電極の接合部および外部駆動回路との接合部に開口部をもつマスクを用いて露光を行い、レジストパターンを形成した。
次いで、前記装置を用いて雰囲気をSFガス100sccm、酸素ガス50sccm、印加電力1500Wとし、露出した第2バリア層のエッチングを行った。この後、レジストの剥離を行い、第2バリア層8のパターンを得た。
引き続いて、低圧水銀ランプを用いて、UV/オゾン処理をおこなう。1.35mW/cmの照度で5分間照射し、その後直ちに、ネガ型フォトレジスト(日本ゼオン製ZPN1168)をスピンコート法によって塗布する。その後プリベークを行い、フォトマスクを用いて所定のパターンを焼き付け、60秒間にわたって110℃のホットプレート上でポストエクスポージャーベークを行った後に現像を行い、最後に15分間にわたって160℃のホットプレート上で加熱を行い、第1電極7のストライプと直行する方向に伸び、逆テーパー形状の断面を有する複数のストライプからなる陰極分離隔壁11を形成した。
次いで、陰極分離隔壁11以下の構造を形成した基板を抵抗加熱蒸着装置内に装着し、正孔注入層、正孔輸送層、有機発光層、電子注入層を、真空を破らずに順次成膜した。成膜に際して、真空槽内圧を1×10−4Paまで減圧した。正孔注入層として、膜厚100nmの銅フタロシアニン(CuPc)を、正孔輸送層として、膜厚20nmの4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(α−NPD)を、有機発光層として、膜厚30nmの4,4’−ビス(2,2’−ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)を、そして電子注入層として、膜厚20nmのAlqを積層した。
次に、真空を破ることなしに、膜厚200nmのMg/Ag(質量比10/1)を堆積させて第2電極10を形成して、図1に示した構造を有する有機EL素子100を得た。
こうして得られた有機EL素子をグローブボックス内乾燥窒素雰囲気下(酸素および水分濃度ともに10ppm以下)において、封止ガラスとUV硬化接着剤を用いて封止した。
(実施例2)
前記実施例1の第2バリア層8の粗面化工程としてArイオンによるスパッタリングを行うこと以外は実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
第2バリア層を形成後、前記スパッタリング装置(逆スパッタリング装置)にいれ、Arガス圧1Pa、パワーを1.5kW、3分間処理した。処理前の算術平均粗さは0.5nmであったのに対して処理後は3.1nmであった。測定はAFMで行い、測定領域を10μm×10μmとした。
(実施例3)
前記実施例1の第2バリア層8の粗面化工程としてドライエッチング法を行うこと以外は実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
第2バリア層を形成後、前記ドライエッチング装置にいれ、エッチングガスとしてSFガス、HClガス、酸素を流量比で15:100:50で導入し全圧を26.7Paとする。高周波周波数を100MHz、パワーを0.45kWとし、15秒間処理した。処理前の算術平均粗さは0.5nmであったのに対して処理後は2.1nmであった。測定はAFMで行い、測定領域を10μm×10μmとした。
(比較例)
第2バリア層8の上の粗面化処理を行わず、UV/オゾン処理のみを行った以外は実施例1と同様の方法で有機EL素子を作製した。
(評価)
陰極10の分離度合いを評価するため、各実施例で複数の有機EL素子を作成し、陰極ライン1000本の内、短絡した割合を求めた。また、第2バリア層8と陰極分離隔壁11との密着性をJIS K 5400に準拠した付着性試験により評価した。結果を表1にまとめる。実施例1〜3では短絡割合が0%であったのに対し、第2バリア層の粗面化をしない比較例では23%にもなった。また、付着性も実施例ではいずれも10点であったのに対し、比較例では0点となった。
また、実施例及び比較例の素子を表面観察した結果、比較例には陰極分離隔壁の形状には倒れなどの変形部や剥離箇所が見られた。しかし、実施例では密着性が向上したため、前記の異常は見られず、短絡のないEL素子が可能になった。
本発明に係る有機EL素子の透視平面図である。 図1のA−A’矢視断面図である。 図1のB−B’矢視断面図である。 図1の端部を拡大した平面図である。
符号の説明
1 透明基板
2 ブラックマトリクス
3 カラーフィルタ
4 色変換層
5 平坦化層
6 第1バリア層
7 第1電極
8 第2バリア層
9 有機EL層
10 第2電極
11 第2電極分離隔壁
12 取り出し電極
13 発光領域
100 有機EL素子

Claims (9)

  1. (A)基板上に樹脂を主成分とする領域を形成し、この領域の上に第1バリア層を形成する工程と、
    (B)前記第1バリア層の上に第1電極を形成する工程と、
    (C)前記第1バリア層の上に第2バリア層を形成し、この第2バリア層の表面を粗面化する工程と、
    (D)前記第2バリア層の上に第2電極分離隔壁を形成する工程と、
    を有する有機EL素子の製造方法。
  2. 前記(A)において、樹脂を主成分とする領域がカラーフィルタまたは色変換層、もしくはカラーフィルタと色変換層の両方を有する請求項1記載の有機EL素子の製造方法。
  3. 前記(B)において、第1電極は複数あり、夫々がストライプ形状であり、
    前記(C)において、第2バリア層を、第1バリア層に接し、前記第1電極の間を埋めるように形成する請求項1または2に記載の有機EL素子の製造方法。
  4. 前記(C)において、ドライアイス粒子を高圧ガスと共に吹き付け第2バリア層の表面を粗面化する請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
  5. 前記(C)において、不活性ガスを用いるスパッタリングにより第2バリア層の表面を粗面化する請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
  6. 前記(C)において、エッチングガスを用いるドライエッチングにより第2バリア層の表面を粗面化する請求項1〜3のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
  7. 前記(C)において、粗面化した第2バリア層の表面の算術平均粗さが1nm以上である請求項1〜6のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
  8. 前記第2電極分離隔壁が樹脂を主成分とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の有機EL素子の製造方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか一項に記載された有機EL素子の製造方法により製造される有機EL素子。
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