以下、本発明について例示物及び実施形態を示して詳細に説明するが、本発明は以下の例示物や実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において任意に変更して実施することができる。
[I.有機電界発光素子の製造方法]
本発明の有機電界発光素子(即ち、有機EL素子)の製造方法(以下適宜、「本発明の製造方法」という)は、陽極及び陰極を有するとともに、陽極と陰極との間に、少なくとも正孔注入層及び有機層を有する有機EL素子を製造する方法であって、有機層の形成を、沸点200℃以上の溶剤(以下適宜、「有機層用溶剤」という)を少なくとも1種含む粘度1〜20cpのインクを用いて行なうとともに、正孔注入層を200℃以上且つ「該有機層用溶剤の沸点−10℃」以上で加熱した後に有機層を形成するものである。また、本発明に係る有機EL素子において、正孔注入層は、陽極と陰極との間に存在し、湿式成膜法により形成される層であり、一方、有機層は、陽極と陰極との間で、かつ、正孔注入層上に存在し、湿式成膜法により形成される層である。
以下、まずは本発明の製造方法の主な特徴である正孔注入層の形成工程及び加熱工程、並びに、有機層の形成工程について説明する。一方、本発明の製造方法が適用される有機EL素子の具体的な構成等については、欄を改めて(後出の[II.有機電界発光素子]の欄で)説明する。
[I−1.正孔注入層の形成工程]
本発明に係る正孔注入層の形成方法は、正孔注入層を湿式成膜法により形成できるものであれば他に制限は無く任意である。湿式成膜法は、均質で欠陥がない薄膜を容易に得られる点、形成のための時間が短くて済む点などの利点を有する優れた形成方法である。
湿式成膜法により正孔注入層を形成する場合、通常は、正孔注入層の材料を適切な溶剤(正孔注入層用溶剤)と混合して成膜用の組成物(正孔注入層用組成物)を用意し、この正孔注入層用組成物を適切な手法により、正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布して成膜し、乾燥することにより正孔注入層を形成する。この場合、当該正孔注入層用組成物から形成される正孔注入層は、正孔注入層用組成物に含まれる化合物をそのまま含有する層として形成されてもよく、正孔注入層用組成物に含まれる化合物が反応して得られる化合物等を含有する層であってもよい。
[I−1−1.正孔注入層の材料]
正孔注入層の材料は、正孔注入層及び正孔注入層用組成物に含有されるものであり、湿式成膜法により正孔注入層を形成しうるものであれば特に制限は無い。ただし、通常は、正孔注入層の材料として、正孔輸送性化合物及び電子受容性化合物を用いる。さらに、正孔注入層の材料として、それ以外の成分を用いてもよい。以下、これらの正孔注入層の材料について説明する。
[I−1−1−1.高分子量の正孔輸送性化合物]
正孔注入層の材料として用いられる正孔輸送性化合物の種類は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、その中でも、正孔輸送性を有するポリマー(高分子量の正孔輸送性化合物。以下適宜、「正孔輸送性ポリマー」という)が好ましく、中でも、4.5eV〜5.5eVのイオン化ポテンシャルを有する化合物であることが好ましい。なお、イオン化ポテンシャルは物質のHOMO(最高被占分子軌道)レベルにある電子を真空準位に放出するのに必要なエネルギーで定義され、光電子分光法で直接測定されるか、電気化学的に測定した酸化電位を基準電極に対して補正しても求められる。後者の方法の場合は、例えば、飽和甘コウ電極(SCE)を基準電極として用いたとき、下記式で表される("Molecular Semiconductors", Springer-Verlag, 1985年, pp.98)。
イオン化ポテンシャル = 酸化電位(vs.SCE)+4.3eV
前記正孔輸送性ポリマーの例としては、芳香族アミン化合物、フタロシアニン誘導体、ポルフィリン誘導体、オリゴチオフェン誘導体等が挙げられる。中でも、非晶質性、溶剤への溶解度、可視光の透過率の点から、芳香族アミン化合物が好ましい。
芳香族アミン化合物の中でも、特に芳香族三級アミン化合物が好ましい。なお、ここでいう芳香族三級アミン化合物とは、芳香族三級アミン構造を有する化合物であって、芳香族三級アミン由来の基を有する化合物も含む。
芳香族三級アミン化合物の種類は特に制限されないが、表面平滑化効果の点から、重量平均分子量が1000以上、100万以下の高分子化合物が更に好ましい。
芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(I)で表わされる繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。
(式(I)中、Ar1及びAr2は各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表わす。Ar3〜Ar5は各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、又は、置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表わす。Xは、下記の連結基群X1の中から選ばれる連結基を表わす。)
(式中、Ar11〜Ar28は各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わす。R1及びR2は各々独立して、水素原子又は任意の置換基を表わす。)
前記式(I)において、Ar1〜Ar5及びAr11〜Ar28としては、任意の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環由来の、1価又は2価の基が適用可能である。即ち、Ar1、Ar2、Ar16、Ar21及びAr26は、それぞれ1価の基が適用可能であり、Ar3〜Ar5、Ar11〜Ar15、Ar17〜Ar20、Ar22〜Ar25、Ar27及びAr28は、それぞれ2価の基が適用可能である。これらは各々同一であっても、互いに異なっていてもよい。また、任意の置換基を有していてもよい。
前記の芳香族炭化水素環としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜5縮合環が挙げられる。その具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環などが挙げられる。
前記の芳香族複素環としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環が挙げられる。その具体例としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環などが挙げられる。
また、Ar3〜Ar5、Ar11〜Ar15、Ar17〜Ar20、Ar22〜Ar25、Ar27、Ar28としては、上に例示した1種類又は2種類以上の芳香族炭化水素環及び/又は芳香族複素環由来の2価の基を2つ以上連結して用いることもできる。
さらに、Ar1〜Ar5及びAr11〜Ar28の芳香族炭化水素環及び/又は芳香族複素環由来の基は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、更に置換基を有していてもよい。置換基の分子量としては、通常400以下、中でも250以下程度が好ましい。置換基の種類は特に制限されないが、例としては、下記の置換基群Wから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。なお、置換基は、1個が単独で置換していてもよく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
[置換基群W]
メチル基、エチル基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは8以下のアルキル基;ビニル基等の、炭素数が通常2以上、通常11以下、好ましくは5以下のアルケニル基;エチニル基等の、炭素数が通常2以上、通常11以下、好ましくは5以下のアルキニル基;メトキシ基、エトキシ基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは6以下のアルコキシ基;フェノキシ基、ナフトキシ基、ピリジルオキシ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上、通常25以下、好ましくは14以下のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等の、炭素数が通常2以上、通常11以下、好ましくは7以下のアルコキシカルボニル基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等の、炭素数が通常2以上、通常20以下、好ましくは12以下のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、N−カルバゾリル基等の、炭素数が通常10以上、好ましくは12以上、通常30以下、好ましくは22以下のジアリールアミノ基;フェニルメチルアミノ基等の、炭素数が通常6以上、好ましくは7以上、通常25以下、好ましくは17以下のアリールアルキルアミノ基;アセチル基、ベンゾイル基等の、炭素数が通常2以上、通常10以下、好ましくは7以下のアシル基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;トリフルオロメチル基等の、炭素数が通常1以上、通常8以下、好ましくは4以下のハロアルキル基;メチルチオ基、エチルチオ基等の、炭素数が通常1以上、通常10以下、好ましくは6以下のアルキルチオ基;フェニルチオ基、ナフチルチオ基、ピリジルチオ基等の、炭素数が通常4以上、好ましくは5以上、通常25以下、好ましくは14以下のアリールチオ基;トリメチルシリル基、トリフェニルシリル基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上、通常33以下、好ましくは26以下のシリル基;トリメチルシロキシ基、トリフェニルシロキシ基等の、炭素数が通常2以上、好ましくは3以上、通常33以下、好ましくは26以下のシロキシ基;シアノ基;フェニル基、ナフチル基等の、炭素数が通常6以上、通常30以下、好ましくは18以下の芳香族炭化水素環基;チエニル基、ピリジル基等の、炭素数が通常3以上、好ましくは4以上、通常28以下、好ましくは17以下の芳香族複素環基。
上述したものの中でも、Ar1及びAr2としては、高分子化合物の溶解性、耐熱性、正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、チオフェン環、ピリジン環由来の1価の基が好ましく、フェニル基、ナフチル基が更に好ましい。
また、上述したものの中でも、Ar3〜Ar5としては、耐熱性、酸化還元電位を含めた正孔注入・輸送性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環由来の2価の基が好ましく、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基が更に好ましい。
前記式(I)において、R1及びR2としては、水素原子又は任意の置換基が適用可能である。これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。置換基の種類は、本発明の趣旨に反しない限り特に制限されないが、適用可能な置換基を例示するならば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、シリル基、シロキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が挙げられる。これらの具体例としては、先に置換基群Wにおいて例示した各基が挙げられる。
式(I)で表わされる繰り返し単位を有する高分子化合物の中でも、特に、下記式(I’)で表わされる繰り返し単位を有する高分子化合物が、正孔注入・輸送性が非常に高くなるので好ましい。
前記式(I’)中、R41〜R45は各々独立に、任意の置換基を表わす。R41〜R45の置換基の具体例は、式(I)のAr1〜Ar5が有してもよい置換基(即ち、[置換基群W]に記載されている置換基)と同様である。また、式(I’)中、p、qは各々独立に、0以上、5以下の整数を表わし、r、s及びtは各々独立に、0以上、4以下の整数を表わす。
また、前記式(I’)中、Y’は、下記の連結基群Y2の中から選ばれる連結基を表わす。
上記各式中、Ar31〜Ar37は、各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は芳香族複素環由来の1価又は2価の基を表わす。Ar31〜Ar37の具体例は、上記のAr1〜Ar5と同様である。即ち、Ar31〜Ar35及びAr37はAr3〜Ar5と同様のものが適用でき、Ar36はAr1及びAr2と同様のものを適用できる。また、有していてもよい置換基も、上記のAr1〜Ar5と同様である。
以下に、本発明において適用可能な、式(I)又は式(I’)で表わされる繰り返し単位の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、他の芳香族三級アミン高分子化合物の好ましい例として、下記式(III−1)及び/又は式(III−2)で表わされる繰り返し単位を含む高分子化合物が挙げられる。
(式(III−1)及び(III−2)中、Ar45、Ar47及びAr48は各々独立して、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表わす。Ar44及びAr46は各々独立して、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表わす。R41〜R43は各々独立して、水素原子又は任意の置換基を表わす。)
Ar45、Ar47及びAr48、並びに、Ar44及びAr46の、具体例、好ましい例、有していてもよい置換基の例及び好ましい置換基の例は、それぞれ、Ar21及びAr22、並びに、Ar23〜Ar25と同様である。R41〜R43として好ましくは、水素原子又は[置換基群W]に記載されている置換基であり、更に好ましくは、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アミノ基、芳香族炭化水素基、芳香族炭化水素基である。
以下に、本発明において適用可能な、式(III−1)及び(III−2)で表わされる繰り返し単位の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
また、本発明において適用可能な芳香族アミン高分子化合物の好ましい例としては、下記の繰り返し単位を有する高分子化合物が挙げられる。したがって、前記の好ましい高分子量の正孔輸送性化合物として例示した芳香族三級アミン化合物も、下記の繰り返し単位を有することが、特に好ましい。但し、本発明はこれらの例示に限定されるものではない。
前記の芳香族アミン化合物は、上に説明した各種の繰り返し単位のうち、何れか一種のみからなる単独重合体であってもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で含有する共重合体であってもよい。後者の場合、共重合体の形態はブロック共重合でもランダム共重合でもよい。
また、正孔注入層の材料として用いられる正孔輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。したがって、正孔輸送性ポリマーも、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。さらに、高分子量の正孔輸送性化合物と低分子量の正孔輸送性化合物(後述する)とは、一方のみを用いるようにしてもよいが、両方を組み合わせて用いてもよい。
正孔注入層の材料として用いられる正孔輸送性ポリマーの重量平均分子量は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常100以上、好ましくは500以上、より好ましくは1000以上、また、好ましくは1,000,000以下である。重量平均分子量が小さすぎると上に積層される層に用いられるインクにより溶解する可能性があり、大きすぎると正孔注入層を形成するために用いられるインクの溶剤に溶解しにくくなる可能性がある。
正孔注入層中の正孔輸送性ポリマーの割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、正孔注入層全体に対する重量比の値で、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、また、通常99.9重量%以下、好ましくは99重量%以下である。なお、2種以上の正孔輸送性ポリマーを併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにすることが好ましい。
[I−1−1−2.電子受容性化合物]
正孔注入層の材料として用いられる電子受容性化合物の種類は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。その例としては、4−イソプロピル−4’−メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンダフルオロフェニル)ボラート、トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート等の有機基の置換したオニウム塩;塩化鉄(III)(特開平11−251067号公報)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム等の高原子価の無機化合物;テトラシアノエチレン等のシアノ化合物、トリス(ペンダフルオロフェニル)ボラン(特開2003−31365号公報)等の芳香族ホウ素化合物;フラーレン誘導体;ヨウ素等が挙げられる。上記の化合物のうち、強い酸化力を有する点で、有機基の置換したオニウム塩、高原子価の無機化合物が好ましく、種々の溶剤に可溶である点で、有機基の置換したオニウム塩、シアノ化合物、芳香族ホウ素化合物が好ましい。さらに、強い酸化力と高い溶解性とを両立する点から、有機基の置換したオニウム塩が最も好ましく、下記式(II−1)〜(II−3)で表わされる化合物であることが特に好ましい。
(上記式(II−1)〜(II−3)中、R11、R21及びR31は、各々独立に、A1〜A3と炭素原子で結合する有機基を表わす。R12、R22、R23及びR32〜R34は、各々独立に、任意の基を表わす。R11〜R34のうち隣接する2以上の基が、互いに結合して環を形成していてもよい。A1〜A3は何れも長周期型周期表(以下、特に断り書きの無い限り「周期表」という場合には、長周期型周期表を指すものとする。)第3周期以降の元素であって、A1は長周期型周期表の第17族に属する元素を表わし、A2は長周期型周期表の第16族に属する元素を表わし、A3は長周期型周期表の第15族に属する元素を表わす。Z1 n1-〜Z3 n3-は、各々独立に、対アニオンを表わす。n1〜n3は、各々独立に、対アニオンのイオン価を表わす。)
上記式(II−1)〜(II−3)中、R11、R21及びR31は、各々独立に、A1〜A3と炭素原子で結合する有機基を表わす。したがって、R11、R21及びR31としては、A1〜A3との結合部分に炭素原子を有する有機基であれば、本発明の趣旨に反しない限り、その種類は特に制限されない。
R11、R21及びR31の分子量は、それぞれ、その置換基を含めた値で、通常1000以下、好ましくは500以下の範囲である。
R11、R21及びR31の好ましい例としては、正電荷を非局在化させる点から、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が挙げられる。中でも、正電荷を非局在化させるとともに熱的に安定であることから、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましい。
アルキル基としては、例えば、直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキル基であって、その炭素数が通常1以上、また、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、2−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
アルケニル基としては、例えば、炭素数が通常2以上、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。具体例としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、例えば、炭素数が通常2以上、通常12以下、好ましくは6以下のものが挙げられる。具体例としては、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
芳香族炭化水素基としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜5縮合環由来の1価の基であり、正電荷を当該基上により非局在化させられる基が挙げられる。その具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオレン環等の由来の一価の基が挙げられる。
芳香族複素環基としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環由来の1価の基であり、正電荷を当該基上により非局在化させられる基が挙げられる。その具体例としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環等の由来の一価の基が挙げられる。
上記式(II−1)〜(II−3)中、R12、R22、R23及びR32〜R34は、各々独立に、任意の置換基を表わす。したがって、R12、R22、R23及びR32〜R34の種類は、本発明の趣旨に反しない限り特に制限されない。
R12、R22、R23及びR32〜R34の分子量は、それぞれ、その置換基を含めた値で、通常1000以下、好ましくは500以下の範囲である。
R12、R22、R23及びR32〜R34の例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシルアミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、スルホニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、スルホニルオキシ基シアノ基、水酸基、チオール基、シリル基等が挙げられる。中でも、R11、R21及びR31と同様、電子受容性が大きい点から、A1〜A3との結合部分に炭素原子を有する有機基が好ましく、例としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が好ましい。特に、電子受容性が大きいとともに熱的に安定であることから、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基が好ましい。
以上、R11、R21、R31、R12、R22、R23、及びR32〜R34として例示した基は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、更に他の置換基によって置換されていてもよい。置換基の種類は特に制限されないが、例としては、上記R11、R21、R31、R12、R22、R23、及びR32〜R34としてそれぞれ例示した基の他、ハロゲン原子、シアノ基、チオシアノ基、ニトロ基等が挙げられる。中でも、耐熱性及び電子受容性の妨げにならない観点から、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基、芳香族複素環基が好ましい。なお、前記の更に置換する置換基は、1個のみで置換していてもよく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
また、上記式(II−1)〜(II−3)中、R11〜R34のうち隣接する2以上の基は、互いに結合して環を形成していてもよい。
式(II−1)〜(II−3)中、A1〜A3は、何れも周期表第3周期以降(第3〜第6周期)の元素であって、A1は、長周期型周期表の第17族に属する元素を表わし、A2は、第16族に属する元素を表わし、A3は、第15族に属する元素を表わす。
中でも、電子受容性及び入手容易性の観点から、周期表の第5周期以前(第3〜第5周期)の元素が好ましい。即ち、A1としてはヨウ素原子、臭素原子、塩素原子のうち何れかが好ましく、A2としてはテルル原子、セレン原子、硫黄原子のうち何れかが好ましく、A3としてはアンチモン原子、ヒ素原子、リン原子のうち何れかが好ましい。
特に、電子受容性、化合物の安定性の面から、式(II−1)におけるA1が臭素原子又はヨウ素原子である化合物、又は、式(II−2)におけるA2がセレン原子又は硫黄原子である化合物が好ましく、中でも、式(II−1)におけるA1がヨウ素原子である化合物が特に好ましい。
式(II−1)〜(II−3)中、Z1 n1-〜Z3 n3-は、各々独立に、対アニオンを表わす。対アニオンの種類は特に制限されず、単原子イオンであっても錯イオンであってもよい。但し、対アニオンのサイズが大きいほど負電荷が非局在化し、それに伴い正電荷も非局在化して電子受容能が大きくなるため、単原子イオンよりも錯イオンの方が好ましい。
式(II−1)〜(II−3)中、n1〜n3は、各々独立に、対アニオンZ1 n1-〜Z3 n3-のイオン価に相当する任意の正の整数である。n1〜n3の値は特に制限されないが、何れも1又は2であることが好ましく、1であることが特に好ましい。
Z1 n1-〜Z3 n3-の具体例としては、水酸化物イオン、フッ化物イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、シアン化物イオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、硫酸イオン、亜硫酸イオン、過塩素酸イオン、過臭素酸イオン、過ヨウ素酸イオン、塩素酸イオン、亜塩素酸イオン、次亜塩素酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、次亜リン酸イオン、ホウ酸イオン、イソシアン酸イオン、水硫化物イオン、テトラフルオロホウ酸イオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサクロロアンチモン酸イオン;酢酸イオン、トリフルオロ酢酸イオン、安息香酸イオン等のカルボン酸イオン;メタンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン等のスルホン酸イオン;メトキシイオン、t−ブトキシイオン等のアルコキシイオンなどが挙げられる。
特に、対アニオンZ1 n1-〜Z3 n3-としては、化合物の安定性、溶剤への溶解性の点で、下記式(II−4)〜(II−6)で表わされる錯イオンが好ましく、サイズが大きいという点で、負電荷が非局在化し、それに伴い正電荷も非局在化して電子受容能が大きくなるため、下記式(II−6)で表わされる錯イオンが更に好ましい。
式(II−4)及び(II−6)中、E1及びE3は、各々独立に、長周期型周期表の第13族に属する元素を表わす。中でもホウ素原子、アルミニウム原子、ガリウム原子が好ましく、化合物の安定性、合成及び精製のし易さの点から、ホウ素原子が好ましい。
式(II−5)中、E2は、長周期型周期表の第15族に属する元素を表わす。中でもリン原子、ヒ素原子、アンチモン原子が好ましく、化合物の安定性、合成及び精製のし易さ、毒性の点から、リン原子が好ましい。
式(II−4)及び(II−5)中、Xは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を表わし、化合物の安定性、合成及び精製のし易さの点からフッ素原子、塩素原子であることが好ましく、フッ素原子であることが特に好ましい。
式(II−6)中、Ar61〜Ar64は、各々独立に、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わす。芳香族炭化水素基、芳香族複素環基の例示としては、R11、R21及びR31について先に例示したものと同様の、5又は6員環の単環又は2〜5縮合環由来の1価の基が挙げられる。中でも、化合物の安定性、耐熱性の点から、ベンゼン環、ナフタレン環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環由来の1価の基が好ましい。
Ar61〜Ar64として例示した芳香族炭化水素基、芳香族複素環基は、本発明の趣旨に反しない限りにおいて、更に別の置換基によって置換されていてもよい。置換基の種類は特に制限されず、任意の置換基が適用可能であるが、電子吸引性の基であることが好ましい。
中でも、Ar61〜Ar64のうち少なくとも1つの基が、フッ素原子又は塩素原子を置換基として1つ又は2つ以上有することがより好ましい。特に、負電荷を効率よく非局在化する点、及び、適度な昇華性を有する点から、Ar61〜Ar64の水素原子がすべてフッ素原子で置換されたパーフルオロアリール基であることが特に好ましい。パーフルオロアリール基の具体例としては、ペンタフルオロフェニル基、ヘプタフルオロ−2−ナフチル基、テトラフルオロ−4−ピリジル基等が挙げられる。
なお、前記の置換基は、1個のみが置換していてもよく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
式(II−4)〜(II−6)で表わされる錯イオンの式量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常100以上、好ましくは300以上、更に好ましくは400以上、また、通常5000以下、好ましくは3000以下、更に好ましくは2000以下の範囲である。該錯イオンの式量が小さ過ぎると、正電荷及び負電荷の非局在化が不十分なため、電子受容能が低下する場合があり、また、該錯イオンの式量が大き過ぎると、該化合物自体が電荷輸送の妨げとなる場合がある。
以下に式(II−4)〜(II−6)で表わされる錯イオンの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
正孔注入層の材料としては、上に説明した各種の電子受容性化合物のうち、何れか1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。2種以上の電子受容性化合物を用いる場合には、上記式(II−1)〜(II−3)のうち何れか1つの式に該当する電子受容性化合物を2種以上組み合わせてもよく、それぞれ異なる式に該当する2種以上の電子受容性化合物を組み合わせてもよい。
正孔注入層及び正孔注入層用組成物中における電子受容性化合物の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、正孔輸送性化合物に対する値で、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常100重量%以下、好ましくは60重量%以下、更に好ましくは50重量%以下である。電子受容性化合物の量は多い方が不溶化しやすいため好ましく、加熱時間が短時間で不溶化することができる。なお、2種以上の電子受容性化合物を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
なお、正孔注入層の形成時或いは形成後に、正孔輸送性化合物がこの電子受容性化合物と反応することにより、形成後の正孔注入層中では正孔輸送性化合物のカチオンラジカル及びイオン化合物が生成している場合がある。
[I−1−1−3.低分子量の正孔輸送性化合物]
正孔注入層の材料としては、必要に応じて低分子量の正孔輸送性化合物を用いることが好ましい。
低分子量の正孔輸送性化合物は、従来、有機EL素子における正孔注入・輸送性の薄膜形成材料として利用されてきた各種の化合物の中から、適宜選択することが可能である。中でも、溶剤への溶解性の高いものが好ましい。
低分子量の正孔輸送性化合物の好ましい例としては、芳香族アミン化合物が挙げられる。中でも、芳香族三級アミン化合物が特に好ましい。芳香族三級アミン化合物の好ましい具体例としては、下記式(IV)で表わされるビナフチル系化合物が挙げられる。
式(IV)中、Ar51〜Ar58は各々独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表わす。Ar51とAr52、Ar55とAr56は、各々結合して環を形成していてもよい。Ar51〜Ar58の具体例、好ましい例、有していてもよい置換基の例及び好ましい置換基の例は、それぞれ、Ar1〜Ar5について先に例示したものと同様である。即ち、Ar51〜Ar56の具体例、好ましい例、有していてもよい置換基の例及び好ましい置換基の例は、Ar1及びAr2について先に例示したものと同様であり、Ar57及びAr58の具体例、好ましい例、有していてもよい置換基の例及び好ましい置換基の例は、Ar3〜Ar5について先に例示したものと同様である。
式(IV)中、u及びvは、各々独立に、0以上、4以下の整数を表わす。但し、u+v≧1である。特に好ましいのは、u=1かつv=1である。
式(IV)中、Q1及びQ2は各々独立に、直接結合又は2価の連結基を表わす。
式(IV)中のナフタレン環は、−(Q1NAr53Ar57(NAr51Ar52))及び−(Q2NAr54Ar58(NAr55Ar56))に加えて、任意の置換基を1種のみ、又は、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で有していてもよい。また、これらの置換基−(Q1NAr53Ar57(NAr51Ar52)及び−(Q2NAr54Ar58(NAr55Ar56)は、ナフタレン環の何れの位置に置換していてもよいが、中でも、式(IV)におけるナフタレン環の、各々4−位、4’−位に置換したビナフチル系化合物がより好ましい。
また、式(IV)で表わされる化合物におけるビナフチレン構造は、2,2’−位に置換基を有することが好ましい。2,2’−位に結合する置換基としては、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルコキシカルボニル基等が挙げられる。なお、これらの置換基は、1個のみで置換していてもよく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
また、式(IV)で表わされる化合物において、ビナフチレン構造は2,2’−位以外に任意の置換基を有していてもよい。該置換基としては、例えば、2,2’−位における置換基として前掲した各基等が挙げられる。式(IV)で表わされる化合物は、2−位及び2’−位に置換基を有することにより、2つのナフタレン環がねじれた配置になるため、溶解性が向上すると考えられる。なお、これらの置換基は、1個のみで置換していてもよく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
式(IV)で表わされるビナフチル系化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常500以上、好ましくは700以上、また、通常2000以下、好ましくは1200以下の範囲である。
以下に、本発明において適用可能な、式(IV)で表わされるビナフチル系化合物の好ましい具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
その他、低分子量の正孔輸送性化合物として適用可能な芳香族アミン化合物としては、例えば、有機EL素子における正孔注入・輸送性の層形成材料として利用されてきた、従来公知の化合物が挙げられる。その具体例を挙げると、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン等の3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン化合物(特開昭59−194393号公報);4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルで代表される2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族アミン(特開平5−234681号公報);トリフェニルベンゼンの誘導体でスターバースト構造を有する芳香族トリアミン(米国特許第4923774号明細書);N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族ジアミン(米国特許第4764625号明細書);α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−p−キシレン(特開平3−269084号公報);分子全体として立体的に非対称なトリフェニルアミン誘導体(特開平4−129271号公報);ピレニル基に芳香族ジアミノ基が複数個置換した化合物(特開平4−175395号公報);エチレン基で3級芳香族アミンユニットを連結した芳香族ジアミン(特開平4−264189号公報);スチリル構造を有する芳香族ジアミン(特開平4−290851号公報);チオフェン基で芳香族3級アミンユニットを連結したもの(特開平4−304466号公報);スターバースト型芳香族トリアミン(特開平4−308688号公報);ベンジルフェニル化合物(特開平4−364153号公報);フルオレン基で3級アミンを連結したもの(特開平5−25473号公報);トリアミン化合物(特開平5−239455号公報);ビスジピリジルアミノビフェニル(特開平5−320634号公報);N,N,N−トリフェニルアミン誘導体(特開平6−1972号公報);フェノキサジン構造を有する芳香族ジアミン(特開平7−138562号公報);ジアミノフェニルフェナントリジン誘導体(特開平7−252474号公報);ヒドラゾン化合物(特開平2−311591号公報);シラザン化合物(米国特許第4950950号明細書);シラナミン誘導体(特開平6−49079号公報);ホスファミン誘導体(特開平6−25659号公報);キナクリドン化合物等が挙げられる。これらの芳香族アミン化合物は、必要に応じて2種以上を混合して用いてもよい。
また、低分子量の正孔輸送性化合物として適用可能な芳香族アミン化合物のその他の具体例としては、ジアリールアミノ基を有する8−ヒドロキシキノリン誘導体の金属錯体が挙げられる。上記の金属錯体は、中心金属がアルカリ金属、アルカリ土類金属、Sc、Y、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Sm、Eu、Tbの何れかから選ばれ、配位子である8−ヒドロキシキノリンはジアリールアミノ基を置換基として1つ以上有するが、ジアリールアミノ基以外に任意の置換基を有することがある。
また、低分子量の正孔輸送性化合物として適用可能なフタロシアニン誘導体又はポルフィリン誘導体の好ましい具体例としては、ポルフィリン、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリンコバルト(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン銅(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリン亜鉛(II)、5,10,15,20−テトラフェニル−21H,23H−ポルフィリンバナジウム(IV)オキシド、5,10,15,20−テトラ(4−ピリジル)−21H,23H−ポルフィリン、29H,31H−フタロシアニン銅(II)、フタロシアニン亜鉛(II)、フタロシアニンチタン、フタロシアニンオキシドマグネシウム、フタロシアニン鉛、フタロシアニン銅(II)、4,4’,4’’,4’’’−テトラアザ−29H,31H−フタロシアニン等が挙げられる。
また、低分子量の正孔輸送性化合物として適用可能なオリゴチオフェン誘導体の好ましい具体例としては、α−セキシチオフェン等が挙げられる。
なお、これらの低分子量の正孔輸送性化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常200以上、好ましくは400以上、より好ましくは600以上、また、通常5000以下、好ましくは3000以下、より好ましくは2000以下、更に好ましくは1700以下、特に好ましくは1400以下の範囲である。分子量が小さ過ぎると耐熱性が低くなる傾向がある一方で、低分子量の正孔輸送性化合物の分子量が大き過ぎると合成及び精製が困難となる傾向がある。
なお、低分子量の正孔輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正孔注入層及び正孔注入層用組成物中における低分子量の正孔輸送性化合物の含有量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、正孔輸送性ポリマーと併用する場合には、低分子量の正孔輸送性化合物の含有量は、正孔輸送性ポリマーに対する値で、通常0.01重量%以上、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは1重量%以上、また、通常80重量%以下、好ましくは70重量%以下、更に好ましくは50重量%以下である。低分子量の正孔輸送性化合物が少なすぎると正孔輸送性が低下する可能性があり、多すぎると上に積層した層へ溶出する可能性がある。なお、低分子量の正孔輸送性化合物を2種以上併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
ところで、本発明の製造方法においては、正孔注入層用組成物及び正孔注入層に、正孔輸送性ポリマー及び低分子量の正孔輸送性化合物などの正孔輸送性化合物と、電子受容性化合物とを組み合わせて含有させることが好ましい。これにより、高い正孔注入・輸送性を得ることができる。
[I−1−1−4.その他の成分]
正孔注入層の材料としては、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した正孔輸送性ポリマー、電子受容性化合物及び低分子量の正孔輸送性化合物に加えて、さらに、その他の成分を含有させても良い。その他の成分の例としては、各種の発光材料、電子輸送性化合物、バインダ樹脂、塗布性改良剤などが挙げられる。なお、その他の成分は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[I−1−2.正孔注入層の形成]
本発明に係る正孔注入層は、湿式成膜法により形成する。この場合、正孔注入層用組成物を、スピンコート法やディップコート法等の手法により、正孔注入層の下層に該当する層(通常は、陽極)上に塗布し、乾燥することにより正孔注入層を形成する。
正孔注入層用組成物に含有させる正孔注入層用溶剤としては、正孔注入層の形成が可能である限り任意のものを用いることができる。ただし、前述の正孔輸送性ポリマー、電子受容性化合物及び低分子量の正孔輸送性化合物のうち、少なくとも1種、中でも2種以上、特には3種全てを、溶解することが可能なものが好ましい。具体的な溶解性としては、常温・常圧下で、正孔輸送性ポリマーを通常0.005重量%以上、中でも0.5重量%以上、特には1重量%以上溶解することが好ましく、電子受容性化合物を通常0.001重量%以上、中でも0.1重量%以上、特には0.2重量%以上溶解することが好ましく、低分子量の正孔輸送性化合物を通常0.005重量%以上、中でも0.5重量%以上、特には1重量%以上溶解することが好ましい。
また、正孔注入層用溶剤としては、正孔輸送性ポリマー、電子受容性化合物、低分子量の正孔輸送性化合物及びそれらの混合から生じるフリーキャリア(カチオンラジカル)を失活させる可能性のある失活物質又は失活物質を発生させるものを含まない溶剤が好ましい。
正孔注入層用溶剤の好適な例を挙げると、エーテル系溶剤及びエステル系溶剤が挙げられる。具体的に、エーテル系溶剤としては、例えば、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコール−1−モノメチルエーテルアセタート(Propyleneglycol−1−monomethylether acetate:以下適宜「PGMEA」と略する。)等の脂肪族エーテル;1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、アニソール、フェネトール、2−メトキシトルエン、3−メトキシトルエン、4−メトキシトルエン、2,3−ジメチルアニソール、2,4−ジメチルアニソール等の芳香族エーテルなどが挙げられる。一方、エステル系溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル等の脂肪族エステル;酢酸フェニル、プロピオン酸フェニル、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸n−ブチル等の芳香族エステルなどが挙げられる。なお、これらは、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
上述のエーテル系溶剤及びエステル系溶剤以外に使用可能な溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤;ジメチルスルホキシド等が挙げられる。なお、これらは1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で用いてもよい。また、これらの溶剤のうち1種又は2種以上を、上述のエーテル系溶剤及びエステル系溶剤のうち1種又は2種以上と組み合わせて用いてもよい。特に、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤は、電子受容性化合物と正孔輸送性ポリマーを溶解する能力が低いため、エーテル系溶剤及びエステル系溶剤と混合して用いることが好ましい。
正孔注入層用組成物に対する正孔注入層用溶剤の濃度は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10重量%以上、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50%重量以上、また、通常99.999重量%以下、好ましくは99.99重量%以下、更に好ましくは99.9重量%以下の範囲である。なお、正孔注入層用溶剤として2種以上の溶剤を混合して用いる場合には、これらの溶剤の合計がこの範囲を満たすようにする。
なお、有機EL素子は、通常、多数の有機化合物からなる層(有機層)を積層して形成するため、各層が何れも均一な層であることが好ましい。ここで、湿式成膜法で層形成する場合、各層の形成用の組成物中にある程度以上の水分が存在すると、塗膜に水分が混入して膜の均一性が損なわれるため、溶液中の水分含有量はできるだけ少ない方が好ましい。また、一般に有機EL素子は、陰極等の水分により著しく劣化する材料が多く使用されているため、素子の劣化の観点からも水分の存在はできるだけ少ない方が好ましい。以上の理由から、正孔注入層用組成物中に含まれる水分量は、通常1重量%以下、中でも0.1重量%以下、更には0.05重量%以下に抑えることが好ましい。
正孔注入層用組成物中の水分量を低減する方法としては、例えば、窒素ガスシールの使用、乾燥剤の使用、溶剤を予め脱水すること、水の溶解度が低い溶剤を使用すること、等の手法が挙げられる。中でも、正孔注入層用組成物を塗布する際に塗膜が大気中の水分を吸収して白化する現象を防ぐという観点からは、水の溶解度が低い溶剤を使用することが好ましい。具体的には、正孔注入層用組成物は、水の溶解度が低い溶剤、具体的には、例えば25℃における水の溶解度が1重量%以下、好ましくは0.1重量%以下である溶剤を、正孔注入層用組成物全体に対して通常10重量%以上、中でも30重量%以上、特に50重量%以上の濃度で含有することが好ましい。
正孔注入層用組成物を湿式成膜法により塗布・成膜する手法は特に制限されない。塗布・成膜の手法の例としては、スピンコート、スプレーコート、ディップコート、ダイコート、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット法等、公知の各種の手法を選択して用いることが可能である。
正孔注入層用組成物の塗布・成膜後、得られた塗膜を乾燥し、正孔注入層用溶剤を除去することにより、正孔注入層が形成される。乾燥の手法は特に限定されないが、例としては加熱乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。乾燥の際の具体的な条件は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、例えば、温度条件としては、通常80℃以上、好ましくは100℃以上、また、通常350℃以下、好ましくは280℃以下である。また、圧力としては、通常1.3Pa以上、好ましくは13.3Pa以上、また、通常101325Pa以下、好ましくは1013Pa以下である。さらに、乾燥時間は、通常1分以上、好ましくは10分以上、また、通常12時間以下、好ましくは6時間以下である。
なお、正孔注入層の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは500nm以下の範囲である。
[I−2.正孔注入層の加熱工程]
本発明の製造方法においては、形成された正孔注入層を加熱する加熱工程を行なってから、正孔注入層上に有機層を形成する。ここで、加熱とは加熱雰囲気の温度を昇温させることをいう。これにより、正孔注入層が、正孔輸送層上に形成される有機層を成膜する際に用いる有機層用溶剤に対して不溶化して、有機層用溶剤の浸透により正孔注入層が膨潤すること、及び、正孔注入層に含有される材料が有機層用溶剤に溶出することを抑制できる。
ただし、本発明の製造方法においては、加熱工程における加熱温度は、以下の加熱条件(1)及び加熱条件(2)を共に満たすようにする。なお、ここで、前記の加熱温度とは雰囲気の温度のことをいい、例えば、オーブン内の温度やホットプレートの温度をいう。
[加熱条件(1)]
加熱工程における加熱温度は、200℃以上、好ましくは210℃以上、より好ましくは230℃以上である。加熱温度が低すぎると、有機層用溶剤に対する不溶化が不十分となる可能性がある。なお、加熱温度の上限に特に制限は無いが、通常は350℃以下、好ましくは280℃以下である。加熱温度があまりに高温であると、正孔注入層の材料の一部が分解する可能性がある。本発明者らの検討によれば、前記の分解が生じると、正孔注入層中のアクセプタが消失し、有機EL素子の駆動電圧が上昇していくものと推察される。
[加熱条件(2)]
有機層用溶剤の沸点を「Tbp」で表わした場合に、加熱工程における加熱温度は、「Tbp−10℃」以上、好ましくは「Tbp−8℃」以上、より好ましくは「Tbp」以上、更に好ましくは「Tbp+10℃」以上、特に好ましくは「Tbp+20℃」以上である。また、加熱温度の上限は、好ましくは350℃以下である。加熱温度が低すぎると、有機層用溶剤に対する不溶化が不十分となる可能性がある。なお、有機層用溶剤が2種以上使用される場合は、最も沸点が低い有機層用溶剤の沸点を上記Tbpとして加熱工程における加熱温度を定める。
加熱工程において前記の加熱温度で加熱する時間は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常30分以上、中でも1時間以上が好ましく、また、通常5時間以下、中でも3時間以下が好ましい。加熱時間が短すぎると有機層用溶剤に対する不溶化が不十分となる可能性があり、加熱時間が長すぎると製造コストの増加を招く可能性がある。
加熱工程における雰囲気は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、正孔注入層を確実に不溶化する観点からは、当該雰囲気中に酸素が存在していることが好ましい。具体的には、酸素濃度を、通常1%以上、中でも10%以上、更には15%以上とすることが好ましく、また、通常99%以下、中でも50%以下、更には30%以下の範囲とすることが好ましい。よって、雰囲気は大気中、又は、乾燥空気中であることが好ましい。
また、加熱工程において、加熱は連続的に行なってもよく、断続的に行なってもよい。
加熱工程において使用する加熱手段に特に制限は無い。加熱手段の例を挙げると、クリーンオーブン、ホットプレート、赤外線、ハロゲンヒーター、マイクロ波照射などが挙げられる。中でも、クリーンオーブン及びホットプレートが好ましい。
なお、加熱工程の後に、必要に応じて、後処理を施しても良い。
また、加熱工程後に素子を長期保存する場合は、例えば窒素等の不活性ガス雰囲気において保存することが好ましい。
さらに、加熱工程は、前記の正孔注入層の乾燥と一体の工程として行なってもよい。
このようにして得られた正孔注入層は、更に上の層を形成する際に使用する有機層用溶剤中に10分間浸しても、その膜厚の減少量が通常10%以下、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下の、好適な膜である。
[I−3.有機層の成膜工程]
加熱工程の後、正孔注入層の上に有機層の形成を行なう。正孔注入層の上に形成される有機層の種類は、目的とする有機EL素子の積層構造によって異なるが、有機化合物を含有し湿式成膜法により形成される層であれば他に制限は無い。例えば、有機発光層、正孔阻止層、正孔輸送層、電子輸送層などが挙げられるが、中でも、発光層(有機発光層)又は正孔輸送層であることがより好ましく、発光層であることが特に好ましい。ただし、正孔注入層と有機層とは、少なくともその一部において、また、好ましくはその全面において、直接に接していることを要する。
本発明の製造方法においては、有機層の形成は、湿式成膜法により行なう。具体的には、有機層の材料を適切な有機層用溶剤に溶解させてインク(塗布溶液)を作製し、それを塗布して成膜し、その膜を乾燥させることにより有機層を形成する。
ただし、有機層用溶剤としては、沸点が、200℃以上、好ましくは210℃以上のものを用いる。有機層用溶剤の沸点が低すぎると、乾燥速度が速く、膜質が悪化する可能性がある。なお、有機層用溶剤の沸点の上限は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常350℃以下、中でも260℃以下であることが好ましい。有機層用溶剤の沸点が高すぎると乾燥工程で溶剤が有機層に残存する可能性がある。
有機層用溶剤のうち、好適なものの例を挙げると、シクロヘキシルベンゼン、安息香酸イソアミル、ジフェニルエーテル、炭素数5以上のアルキル鎖を有するベンゼン(例えば、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル等)、テトラリン、1,4−ブタンジオール、グリセリン、ニトロベンゼンなどが挙げられる。中でも、ヘテロ原子を含まない炭化水素系溶剤が好ましい。
また、有機層用溶剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用することが好ましい。なお、インクに有機層用溶剤が2種以上含まれる場合は、有機層用溶剤のうちの少なくとも1種が、前記の範囲に沸点を有するものであればよい。
さらに、有機層用溶剤のうち少なくとも1種は、正孔輸送性化合物(正孔輸送性ポリマー及び低分子量の正孔輸送性化合物を含む)または電子受容性化合物を溶解しうる溶剤であることが好ましい。ここで、有機層用溶剤が正孔輸送性化合物又は電子受容性化合物を溶解しうるとは、有機層用溶剤が正孔輸送性化合物又は電子受容性化合物を、室温において、通常0.001重量%以上、好ましくは0.05重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上溶解することをいう。このように正孔輸送性化合物又は電子受容性化合物を溶解しうる有機層用溶剤を用いた場合であっても、上述した加熱工程により正孔注入層を不溶化してあるため、有機層の形成の際に、有機層用溶剤の浸透により正孔注入層が膨潤すること、及び、正孔注入層に含有される材料が有機層用溶剤に溶出することを抑制できる。
また、有機層の形成に用いるインクは、その粘度が、1cp以上、好ましくは1.5cp以上、より好ましくは1.8cp以上であり、また、20cp以下、好ましくは15cp以下、より好ましくは12cp以下である。インクの粘度が低すぎても高すぎても、成膜時、例えばインクジェット法では吐出性が下がったり、スピンコート法では膜厚の制御が困難になったりする可能性がある。なお、粘度の測定は、回転型粘度計により測定できる。通常は、25℃、ローター回転数100rpm、剪断速度750(1/sec)で行なう。
インクの粘度の調整方法に制限は無い。例えば、高い粘度の溶剤を用いて調製したり、増粘剤を含有させたりすることにより調整することができる。
インク中における有機層の材料の濃度は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.002重量%以上、中でも0.02重量%以上、特には0.2重量%以上が好ましく、また、通常20重量%以下、中でも10重量%以下、特には5重量%以下が好ましい。有機層の材料の濃度が低すぎると膜厚が薄くなり、膜質が悪くなる可能性があり、多すぎると膜厚が厚くなり、駆動電圧が上昇する可能性がある。
インクを塗布・成膜する手法に制限は無く、適切な方法を任意に採用すればよい。その例を挙げると、スピンコート、スプレーコート、ディップコート、ダイコート、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット法などが挙げられる。
インクの塗布・成膜後、得られた塗膜を乾燥し、有機層用溶剤を除去することにより、有機層が形成される。乾燥の手法は特に限定されないが、例としては加熱乾燥、減圧乾燥等が挙げられる。乾燥の際の具体的な条件は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、例えば、温度条件としては、好ましくは20℃以上であり、また、通常、有機層に含まれる材料のガラス転移温度以下である。また、圧力としては、通常1.3Pa以上、好ましくは13.3Pa以上、また、通常101325Pa以下、好ましくは1013Pa以下である。さらに、乾燥時間は、通常10分以上、好ましくは13.3分以上、また、通常12時間以下、好ましくは3時間以下である。
[I−4.前記の製造方法の利点]
上述した正孔注入層の形成工程及び加熱工程、並びに、有機層の形成工程を行なうことにより、本発明の製造方法では、長寿命でかつ発光効率の高い有機EL素子を製造することができる。また、通常は、前記の利点に加え、本発明の製造方法により製造される有機EL素子は、素子の駆動電圧を低減できるという利点も有する。このような優れた利点を発揮できる理由は定かではないが、本発明者らの検討によれば、次のとおりであると推測される。
従来、スピンコート法、インクジェット法、印刷法などに代表される湿式成膜法では、インクの塗布特性や乾燥速度などを緻密に制御することが要求されるため、沸点が200℃を超える溶剤の使用が好ましいとされていた。しかし、これらの高沸点溶剤は乾燥速度が遅く、正孔注入層上にこれら高沸点溶剤を含有するインクを湿式成膜した場合、正孔注入層の表面が長時間溶剤に接触した状態に保持される。その結果、溶剤の浸透に起因する正孔注入層の膨潤や、正孔注入層を構成する材料の溶出などが生じていたものと考えられる。そして、これが、発光効率の著しい低下や素子駆動寿命の低下などを引き起こす原因となっていたものと考えられる。
そこで、本発明の製造方法では、正孔注入層に対して、200℃以上且つ「溶剤の沸点−10℃」以上の温度で焼成処理を施している。これにより、正孔注入層中の正孔輸送性化合物と電子受容性化合物との間の相互作用がより強固なものとなると考えられる。これは、正孔注入層中にアクセプタ由来のラジカルがより多く発生するためと思料される。その結果、正孔注入層を構成する材料の分子間の静電的な結合力が大幅に増大し、正孔注入層への上層のインクに含まれる溶剤の浸透による正孔注入層の膨潤(膜質の低下、電荷輸送性の低下)、あるいは正孔注入層の材料の溶出(有機層への不純物の混入)などが大幅に抑制されると考えられる。その結果、得られる有機EL素子の発光効率および駆動寿命が向上するものと推測される。
[II.有機電界発光素子]
本発明の製造方法により製造される有機EL素子(以下適宜「本発明の有機EL素子」と略称する。)は、陽極及び陰極を有するとともに、陽極と陰極との間に前記の正孔注入層及び有機層を有するものである。また、本発明の有機EL素子は通常は基板を備え、当該基板上に積層された積層型の構成を有するものである。
図1は、本発明の有機EL素子の構造の一例を模式的に示す断面図である。図1に示す有機EL素子10aは、基板1の上に、陽極2、正孔注入層3、有機発光層4、電子注入層5及び陰極6を、この順に積層して構成される。この構成の場合、通常は正孔注入層3が上述の正孔注入層に該当し、有機発光層4が正孔注入層上に形成される有機層に該当する。
[II−1.基板]
基板1は有機EL素子10aの支持体となるものであり、例えば、石英やガラスの板、金属板や金属箔、プラスチックフィルムやシート等が用いられる。特にガラス板や、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホン等の透明な合成樹脂の板が好ましい。ただし、合成樹脂基板を使用する場合にはガスバリア性に留意することが好ましい。基板1のガスバリア性が小さすぎると、基板1を通過した外気により有機EL素子10aが劣化する可能性があるからである。このため、合成樹脂基板の少なくとも片面に緻密なシリコン酸化膜等を設けてガスバリア性を確保する方法も好ましい方法の一つである。
[II−2.陽極]
基板1上には陽極2が設けられる。陽極2は、有機発光層4側の層(正孔注入層3または有機発光層4等)への正孔注入の役割を果たすものである。
この陽極2は、通常、アルミニウム、金、銀、ニッケル、パラジウム、白金等の金属;インジウムおよび/またはスズの酸化物等の金属酸化物;ヨウ化銅等のハロゲン化金属;カーボンブラック、或いは、ポリ(3−メチルチオフェン)、ポリピロール、ポリアニリン等の導電性高分子等により構成される。なお、陽極2の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
陽極2の形成方法に制限は無いが、通常、スパッタリング法、真空蒸着法等により行われる。また、銀等の金属微粒子、ヨウ化銅等の微粒子、カーボンブラック、導電性の金属酸化物微粒子、導電性高分子微粉末等を用いて陽極2を形成する場合には、適当なバインダ樹脂溶液にそれらを分散させて、基板1上に塗布することにより陽極2を形成することもできる。さらに、導電性高分子の場合は、電解重合により直接基板1上に薄膜を形成したり、基板1上に導電性高分子を塗布して陽極2を形成することもできる(Appl.Phys.Lett.,60巻,2711頁,1992年)。
また、陽極2は通常は単層構造であるが、所望により複数の材料からなる積層構造とすることも可能である。
陽極2の厚みは、必要とする透明性により異なる。透明性が必要とされる場合は、可視光の透過率を、通常60%以上、中でも80%以上とすることが好ましく、この場合、陽極2の厚みは、通常5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常1000nm以下、中でも500nm以下が好ましい。一方、陽極2が不透明でよい場合、陽極2の厚みは任意である。また、陽極2は基板1と同一に構成してもよく、陽極2が基板1を兼ねていてもよい。さらに、上記の陽極2の上に異なる導電材料を積層することも可能である。
また、陽極2に付着した不純物を除去し、イオン化ポテンシャルを調整して正孔注入性を向上させることを目的として、陽極2の表面を紫外線(UV)/オゾン処理したり、酸素プラズマ、アルゴンプラズマ処理したりすることが好ましい。
さらに、正孔注入の効率を更に向上させ、かつ、有機層全体の陽極への付着力を改善させる目的で、正孔注入層3と陽極2との間に公知の陽極バッファ層を挿入してもよい。
[II−3.正孔注入層]
正孔注入層3は、陽極2から有機発光層4へ正孔を輸送する層である。正孔注入層3に含有される成分の詳細については、先の〔I−1−1.正孔注入層の材料〕の欄において説明したとおりである。また、正孔注入層3の形成方法については、[I−1.正孔注入層の形成工程]の欄において説明したとおりである。
さらに、本発明の有機EL素子では、上述したとおり、加熱工程により正孔注入層3は不溶化されている。
[II−4.有機発光層]
正孔注入層3の上には本発明に係る有機層として有機発光層4が設けられる。有機発光層4は、電界を与えられた電極間において、陽極2から正孔注入層3を通じて注入された正孔と、陰極6から電子注入層5を通じて注入された電子との再結合により励起されて、主たる発光源となる層である。
有機発光層4は、その構成材料として、少なくとも、発光の性質を有する材料(発光材料)を含有するとともに、好ましくは、正孔輸送の性質を有する化合物(正孔輸送性化合物)、或いは、電子輸送の性質を有する化合物(電子輸送性化合物)とを含有する。更に、有機発光層4は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の成分を含有していてもよい。これらの材料としては、湿式成膜法で有機発光層4を形成する観点から、何れも低分子量の材料を使用することが好ましい。
発光材料としては、任意の公知の材料を適用可能である。例えば、蛍光発光材料であってもよく、燐光発光材料であってもよいが、内部量子効率の観点から、好ましくは燐光発光材料である。
なお、溶剤への溶解性を向上させる目的で、発光材料の分子の対称性や剛性を低下させたり、或いはアルキル基などの親油性置換基を導入したりすることが好ましい。
以下、発光材料のうち蛍光色素の例を挙げるが、蛍光色素は以下の例示物に限定されるものではない。
青色発光を与える蛍光色素(青色蛍光色素)としては、例えば、ペリレン、ピレン、アントラセン、クマリン、p−ビス(2−フェニルエテニル)ベンゼン及びそれらの誘導体等が挙げられる。
緑色発光を与える蛍光色素(緑色蛍光色素)としては、例えば、キナクリドン誘導体、クマリン誘導体等が挙げられる。
黄色発光を与える蛍光色素(黄色蛍光色素)としては、例えば、ルブレン、ペリミドン誘導体等が挙げられる。
赤色発光を与える蛍光色素(赤色蛍光色素)としては、例えば、DCM(4−(dicyanomethylene)−2−methyl−6−(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)系化合物、ベンゾピラン誘導体、ローダミン誘導体、ベンゾチオキサンテン誘導体、アザベンゾチオキサンテン等が挙げられる。
次に、発光材料のうち、燐光発光材料について説明する。燐光発光材料としては、例えば、周期表第7〜11族から選ばれる金属を含む有機金属錯体が挙げられる。
燐光性有機金属錯体に含まれる、周期表第7〜11族から選ばれる金属として、好ましいものの例を挙げると、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金、金等が挙げられる。これらの有機金属錯体として、好ましくは下記式(V)又は式(VI)で表わされる化合物が挙げられる。
{式(V)中、Mは金属を表わし、qは上記金属の価数を表わす。また、L及びL’は二座配位子を表わす。jは0、1又は2の数を表わす。}
{式(VI)中、M
7は金属を表わし、Tは炭素原子又は窒素原子を表わす。R
92〜R
95は、それぞれ独立に置換基を表わす。但し、Tが窒素原子の場合は、R
94及びR
95は無い。}
以下、まず、式(V)で表わされる化合物について説明する。
式(V)中、Mは任意の金属を表わし、好ましいものの具体例としては、周期表第7〜11族から選ばれる金属として前述した金属が挙げられる。
また、式(V)中、二座配位子Lは、以下の部分構造を有する配位子を示す。
上記Lの部分構造において、環A1”は、置換基を有していてもよい、芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わす。
環A1”を構成する芳香族炭化水素基としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜5縮合環が挙げられる。その具体例としては、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンズピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環由来の1価の基などが挙げられる。
環A1”を構成する芳香族複素環基としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環が挙げられる。その具体例としては、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、チエノチオフェン環、フロピロール環、フロフラン環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、シノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環、アズレン環由来の1価の基などが挙げられる。
また、上記Lの部分構造において、環A2は、置換基を有していてもよい、含窒素芳香族複素環基を表わす。
環A2を構成する含窒素芳香族複素環基としては、例えば、5又は6員環の単環又は2〜4縮合環が挙げられる。その具体例としては、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、ピロロイミダゾール環、ピロロピラゾール環、ピロロピロール環、チエノピロール環、フロピロール環、チエノフラン環、ベンゾイソオキサゾール環、ベンゾイソチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、イソキノリン環、キノキサリン環、フェナントリジン環、ベンゾイミダゾール環、ペリミジン環、キナゾリン環、キナゾリノン環由来の1価の基などが挙げられる。
環A1”又は環A2がそれぞれ有していてもよい置換基の例としては、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基;フェニル基、ナフチル基、フェナンチル基等の芳香族炭化水素基等が挙げられる。
なお、前記置換基は、1個のみが置換していてもよく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
また、式(V)中、二座配位子L’は、以下の部分構造のうちの少なくともいずれかを有する配位子を示す。但し、以下の式において、「Ph」はフェニル基を表わす。
中でも、L’としては、錯体の安定性の観点から、以下に挙げる配位子が好ましい。
式(V)で表わされる化合物として、更に好ましくは、下記式(Va)、(Vb)及び(Vc)の少なくともいずれかで表わされる化合物が挙げられる。
{式(Va)中、M4は、Mと同様の金属を表わし、wは、上記金属の価数を表わし、環A1”は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を表わし、環A2は、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表わす。}
{式(Vb)中、M5は、Mと同様の金属を表わし、wは、上記金属の価数を表わし、環A1”は、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わし、環A2は、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表わす。}
{式(Vc)中、M6は、Mと同様の金属を表わし、wは、上記金属の価数を表わし、jは、0、1又は2を表わし、環A1”及び環A1’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基を表わし、環A2及び環A2’は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい含窒素芳香族複素環基を表わす。}
上記式(Va)、(Vb)及び(Vc)において、環A1”及び環A1’の好ましい例としては、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、アントリル基、チエニル基、フリル基、ベンゾチエニル基、ベンゾフリル基、ピリジル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基等が挙げられる。
上記式(Va)、(Vb)及び(Vc)において、環A2及び環A2’の好ましい例としては、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジル基、トリアジル基、ベンゾチアゾール基、ベンゾオキサゾール基、ベンゾイミダゾール基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリル基、フェナントリジル基等が挙げられる。
上記式(Va)、(Vb)及び(Vc)のいずれかで表わされる化合物が有していてもよい置換基としては、例えば、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基;ジフェニルアミノ基等のジアリールアミノ基;カルバゾリル基;アセチル基等のアシル基;トリフルオロメチル基等のハロアルキル基;シアノ基等が挙げられる。
また、前記置換基の炭素数は本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。ただし、置換基がアルキル基である場合は、その炭素数は通常1以上6以下である。また、置換基がアルケニル基である場合は、その炭素数は通常2以上6以下である。また、置換基がアルコキシカルボニル基である場合、その炭素数は通常2以上6以下である。また、置換基がアルコキシ基である場合は、その炭素数は通常1以上6以下である。また、置換基がアリールオキシ基である場合は、その炭素数は通常6以上14以下である。また、置換基がジアルキルアミノ基である場合は、その炭素数は通常2以上24以下である。また、置換基がジアリールアミノ基である場合、その炭素数は通常12以上28以下である。また、置換基がアシル基である場合は、その炭素数は通常1以上14以下である。また、置換基がハロアルキル基である場合は、その炭素数は通常1以上12以下である。
なお、前記の置換基は互いに連結して環を形成してもよい。具体例としては、環A1”が有する置換基と環A2が有する置換基とが結合するか、又は、環A1’が有する置換基と環A2’が有する置換基とが結合するかして、一つの縮合環を形成してもよい。このような縮合環としては、7,8−ベンゾキノリン基等が挙げられる。
上述した置換基の中でも、環A1”、環A1’、環A2及び環A2’の置換基として、より好ましくは、アルキル基、アルコキシ基、芳香族炭化水素基、シアノ基、ハロゲン原子、ハロアルキル基、ジアリールアミノ基、カルバゾリル基が挙げられる。なお、環A1”、環A1’、環A2及び環A2’の置換基は、1個のみが置換していてもよく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
また、式(Va)、(Vb)及び(Vc)におけるM4〜M6の好ましい例としては、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられる。
上記式(V)、(Va)、(Vb)及び(Vc)のいずれかで示される有機金属錯体の具体例を以下に示す。但し、下記の化合物に限定されるものではない。
さらに、上記式(V)で表わされる有機金属錯体の中でも、特に、配位子L及び/又はL’として2−アリールピリジン系配位子(即ち、2−アリールピリジン、これに任意の置換基が結合したもの、及び、これに任意の基が縮合してなるもの)を有する化合物が好ましい。
また、国際特許公開第2005/019373号明細書に記載の化合物も、発光材料として使用することが可能である。
次に、式(VI)で表わされる化合物について説明する。
式(VI)中、M7は金属を表わす。具体例としては、周期表第7〜11族から選ばれる金属として前述した金属が挙げられる。中でも好ましくは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、レニウム、オスミウム、イリジウム、白金又は金が挙げられ、特に好ましくは、白金、パラジウム等の2価の金属が挙げられる。
また、式(VI)において、R92及びR93は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アラルキル基、アルケニル基、シアノ基、アミノ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシル基、アルコキシ基、アルキルアミノ基、アラルキルアミノ基、ハロアルキル基、水酸基、アリールオキシ基、芳香族炭化水素基及び芳香族複素環基からなる群より選ばれる少なくとも1種を表わす。なお、各R92及びR93はそれぞれ同じでもよく異なっていても良い。
更に、式(VI)においてTが炭素原子である場合、R94及びR95は、それぞれ独立に、R92及びR93と同様の例示物で表わされる置換基を表わす。また、式(VI)においてTが窒素原子である場合は、R94及びR95は無い。なお、各Tは同じでもよく異なっていても良い。
また、式(VI)においてR92〜R95は、更に置換基を有していてもよい。置換基を有する場合、その種類に特に制限はなく、任意の基を置換基とすることができる。また、その置換基は、1個のみが置換していてもよく、2個以上が任意の組み合わせ及び比率で置換していてもよい。
さらに、式(VI)においてR92〜R95のうち任意の2つ以上の基が互いに連結して環を形成してもよい。
式(VI)で表わされる有機金属錯体の具体例(T−1、T−10〜T−15)を以下に示す。但し、下記の例示物に限定されるものではない。また、以下の化学式において、Meはメチル基を表わし、Etはエチル基を表わす。
発光材料として用いる化合物の分子量は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは4000以下、更に好ましくは3000以下、また、通常100以上、好ましくは200以上、より好ましくは300以上、更に好ましくは400以上の範囲である。分子量が小さ過ぎると、耐熱性が著しく低下したり、ガス発生の原因となったり、膜を形成した際の膜質の低下を招いたり、或いはマイグレーションなどによる有機電界発光素子のモルフォロジー変化を来したりする場合がある。一方、分子量が大き過ぎると、有機化合物の精製が困難となってしまったり、用材に溶解させる際に時間を要したりする傾向がある。
なお、上述した発光材料は、いずれか1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
有機発光層4における発光材料の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.001重量%以上、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは30重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。発光材料が少なすぎると他の材料が発光する可能性があり、多すぎると濃度消光などにより発光効率が低下する可能性がある。なお、2種以上の発光材料を併用する場合には、これらの合計の含有量が上記範囲に含まれるようにする。
また、有機発光層4には、構成材料として、正孔輸送性化合物を含有させてもよい。正孔輸送性化合物としては、正孔輸送性ポリマーと低分子量の正孔輸送性化合物とのうち、一方のみを用いてもよく、両方を組み合わせて用いてもよい。ここで、正孔輸送性化合物のうち、低分子量の正孔輸送性化合物の例としては、前述の[I−1−1−3.低分子量の正孔輸送性化合物]の欄で例示した各種の化合物のほか、例えば、4,4’−ビス[N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ]ビフェニルに代表される、2個以上の3級アミンを含み2個以上の縮合芳香族環が窒素原子に置換した芳香族ジアミン(特開平5−234681号公報)、4,4’,4”−トリス(1−ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン等のスターバースト構造を有する芳香族アミン化合物(Journal of Luminescence, 1997年, Vol.72−74, pp.985)、トリフェニルアミンの四量体から成る芳香族アミン化合物(Chemical Communications, 1996年, pp.2175)、2,2’,7,7’−テトラキス−(ジフェニルアミノ)−9,9’−スピロビフルオレン等のスピロ化合物(Synthetic Metals, 1997年, Vol.91, pp.209)等が挙げられる。なお、有機発光層4において、正孔輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
有機発光層4における正孔輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
また、有機発光層4には、構成材料として、電子輸送性化合物を含有させてもよい。ここで、電子輸送性化合物のうち、低分子量の電子輸送性化合物の例としては、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール(BND)や、2,5−ビス(6’−(2’,2”−ビピリジル))−1,1−ジメチル−3,4−ジフェニルシロール(PyPySPyPy)や、バソフェナントロリン(BPhen)や、2,9−ジメチル−4,7−ジフェニル−1,10−フェナントロリン(BCP、バソクプロイン)、2−(4−ビフェニリル)−5−(p−ターシャルブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(tBu−PBD)や、4,4’−ビス(9−カルバゾール)−ビフェニル(CBP)等が挙げられる。なお、有機発光層4において、電子輸送性化合物は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
有機発光層4における電子輸送性化合物の割合は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意である。
湿式成膜法により有機発光層4を形成する場合、上述の材料を適切な有機層用溶剤に溶解させてインクを調製し、それを加熱工程後の正孔注入層3の上に塗布・成膜し、乾燥して溶剤を除去することにより形成する。その詳細は、先の[I−3.有機層の形成工程]の欄で説明した内容と同様である。
有機発光層4の膜厚は本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常3nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常200nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。有機発光層4の膜厚が、薄すぎると欠陥及びダークスポットが発生する可能性があり、厚すぎると駆動電圧が上昇する可能性がある。
[II−5.電子注入層]
電子注入層5は、陰極6から注入された電子を効率良く有機発光層4へ注入する役割を果たす。電子注入を効率よく行なうには、電子注入層5を形成する材料は、仕事関数の低い金属が好ましい。例としては、ナトリウムやセシウム等のアルカリ金属、バリウムやカルシウムなどのアルカリ土類金属等が用いられる。その膜厚は通常0.1nm以上、5nm以下が好ましい。
更に、バソフェナントロリン等の含窒素複素環化合物や8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体に代表される有機電子輸送化合物に、ナトリウム、カリウム、セシウム、リチウム、ルビジウム等のアルカリ金属をドープする(特開平10−270171号公報、特開2002−100478号公報、特開2002−100482号公報などに記載)ことにより、電子注入・輸送性が向上し優れた膜質を両立させることが可能となるため好ましい。この場合の膜厚は、通常5nm以上、中でも10nm以上が好ましく、また、通常200nm以下、中でも100nm以下が好ましい。
なお、電子注入層5の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子注入層5の形成方法に制限は無い。電荷注入層5は、通常、湿式成膜法或いは真空蒸着法により、有機発光層4上に積層することにより形成される。
湿式成膜法で電子注入層5を形成する場合の詳細は、上述した有機層の成膜工程で説明した方法と同様にして形成できる。
一方、真空蒸着法で電子注入層5を形成する場合には、例えば、真空容器内に設置されたるつぼ又は金属ボートに蒸着源を入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10-4Pa程度にまで排気した後、るつぼ又は金属ボートを加熱して蒸発させ、るつぼ又は金属ボートと向き合って置かれた基板上の有機発光層4上に電子注入層5を形成することができる。
アルカリ金属の蒸着は、通常、クロム酸アルカリ金属と還元剤をニクロムに充填したアルカリ金属ディスペンサーを用いて行なう。このディスペンサーを真空容器内で加熱することにより、クロム酸アルカリ金属が還元されてアルカリ金属が蒸発される。有機電子輸送化合物とアルカリ金属とを共蒸着する場合は、有機電子輸送化合物を真空容器内に設置されたるつぼに入れ、真空容器内を適当な真空ポンプで10-4Pa程度にまで排気した後、各々のるつぼ及びディスペンサーを同時に加熱して蒸発させ、るつぼ及びディスペンサーと向き合って置かれた基板上に電子注入層5を形成することが好ましい。このとき、電子注入層5の膜厚方向において均一に共蒸着されるが、膜厚方向において濃度分布があっても構わない。
[II−6.陰極]
陰極6は、有機発光層4側の層(電子注入層5又は有機発光層4など)に電子を注入する役割を果たすものである。
陰極6の材料としては、前記の陽極2に使用される材料を用いることが可能であるが、効率良く電子注入を行なうには、仕事関数の低い金属が好ましく、スズ、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属又はそれらの合金が用いられる。具体例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、アルミニウム−リチウム合金等の低仕事関数合金電極が挙げられる。なお、陰極6の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
陰極6の膜厚は、通常、陽極2と同様である。
さらに、低仕事関数金属から成る陰極6を保護する目的で、この上に更に、仕事関数が高く大気に対して安定な金属層を積層すると、素子の安定性が増すので好ましい。この目的のために、アルミニウム、銀、銅、ニッケル、クロム、金、白金等の金属が使われる。なお、これらの材料は、1種のみで用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
[II−7.その他の層]
以上、図1に示す層構成の有機EL素子を中心に説明してきたが、本発明の有機EL素子は、その趣旨を逸脱しない範囲において、別の構成を有していてもよい。例えば、その性能を損なわない限り、陽極2と陰極6との間に、上記説明にある層の他に任意の層を有していてもよく、また、任意の層が省略されていてもよい。
図2は、本発明の有機EL素子の構造の別の例を模式的に示す断面図である。なお、図2において、図1と同様の構成要素については同一の符号を付して表わし、その説明は省略する。
図2に示す有機EL素子10bは、図1の有機EL素子10aと同様の構成に加えて、正孔注入層3と有機発光層4との間に正孔輸送層7を有している。この構成の場合、この正孔輸送層7が、正孔注入層3上に形成される有機層に該当することになる。
正孔輸送層7を形成する材料としては、上記正孔注入層3に混合して用いてもよい正孔輸送化合物として例示した化合物と同様なものが挙げられる。また、例えば、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルトリフェニルアミン、テトラフェニルベンジジンを含有するポリアリーレンエーテルサルホン等の高分子材料も用いることができる。また、高分子材料を用いて正孔輸送層7を形成する場合、正孔輸送性モノマーを湿式成膜した後に、重合させた高分子材料によって正孔輸送層7を形成するものであってもよい。なお、正孔輸送層7の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正孔輸送層7は、これらの材料を湿式成膜法又は真空蒸着法により正孔注入層3上に積層することにより形成できる。ただし、この正孔輸送層7を本発明に係る有機層として正孔注入層3上に形成する場合、正孔輸送層7は、[I−3.有機層の成膜工程]の欄で説明したように湿式成膜法により形成する。これにより、長寿命及び高発光効率という、上記と同様の利点を得ることができる。
このようにして形成される正孔輸送層7の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常10nm以上、好ましくは30nm以上である。但し、通常、300nm以下、好ましくは100nm以下である。
図3は、本発明の有機EL素子の構造の別の例を模式的に示す断面図である。なお、図3においても、図1と同様の構成要素については同一の符号を付して表わし、その説明は省略する。図3に示す有機EL素子10cは、図1の有機EL素子10aと同様の構成に加えて、正孔注入層3と有機発光層4との間に電子阻止層8を有している。この構成の場合、この電子阻止層8が、正孔注入層3上に形成される有機層に該当することになる。
電子阻止層8は、有機発光層4から移動してくる電子が正孔注入層3に到達するのを阻止することで、有機発光層4内で正孔と電子との再結合確率を増やし、生成した励起子を発光層4内に閉じこめる役割と、正孔注入層3から注入された正孔を効率よく有機発光層4の方向に輸送する役割とがある。特に、発光材料として燐光材料を用いたり、青色発光材料を用いたりする場合は効果的である。
電子阻止層8に求められる特性としては、正孔輸送性が高く、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いこと等が挙げられる。更に、本発明においては、有機発光層4を本発明に係る有機層として湿式成膜法で作製する場合には、電子阻止層8にも湿式成膜の適合性が求められる。このような電子阻止層8に用いられる材料としては、F8−TFBに代表されるジオクチルフルオレンとトリフェニルアミンの共重合体(国際公開第2004/084260号公報記載)等が挙げられる。なお、電子阻止層8の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子阻止層8は、本発明に係る有機層として正孔注入層3上に形成する場合には、[I−3.有機層の成膜工程]の欄で説明したように湿式成膜法により形成する。これにより、長寿命及び高発光効率という、上記と同様の利点を得ることができる。ただし、電子阻止層8は、正孔注入層3上に形成しない場合には、真空蒸着法により形成することも可能である。真空蒸着法の手順の詳細は、電子注入層5の場合と同様である。
以上、図1〜3を用いて説明した各構成の他にも、本発明の有機EL素子の構成としては、様々な変形例が考えられる。
例えば、有機発光層4と電子注入層5の間に、電子輸送層を設けてもよい。電子輸送層は、素子の発光効率を更に向上させることを目的として設けられるもので、電界を与えられた電極間において陰極6から注入された電子を効率よく有機発光層4の方向に輸送することができる化合物より形成される。
電子輸送層に用いられる電子輸送性化合物としては、通常、陰極6又は電子注入層5からの電子注入効率が高く、かつ、高い電子移動度を有し注入された電子を効率よく輸送することができる化合物を用いる。このような条件を満たす化合物としては、例えば、8−ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体などの金属錯体(特開昭59−194393号公報)、10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリンの金属錯体、オキサジアゾール誘導体、ジスチリルビフェニル誘導体、シロール誘導体、3−又は5−ヒドロキシフラボン金属錯体、ベンズオキサゾール金属錯体、ベンゾチアゾール金属錯体、トリスベンズイミダゾリルベンゼン(米国特許第5645948号明細書)、キノキサリン化合物(特開平6−207169号公報)、フェナントロリン誘導体(特開平5−331459号公報)、2−t−ブチル−9,10−N,N’−ジシアノアントラキノンジイミン、n型水素化非晶質炭化シリコン、n型硫化亜鉛、n型セレン化亜鉛などが挙げられる。なお、電子輸送層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
電子輸送層の形成方法に制限は無い。したがって、電子輸送層は正孔注入層3や有機発光層4と同様、湿式成膜法を用いて形成することもできるが、通常は真空蒸着法により形成される。真空蒸着法の手順の詳細は、電子注入層5の場合と同様である。
電子輸送層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常1nm以上、好ましくは5nm以上、また、通常300nm以下、好ましくは100nm以下の範囲である。
また、例えば、有機発光層4と電子注入層5との間に、正孔阻止層を設けてもよい。正孔阻止層は、有機発光層4の上に、有機発光層4の陰極6側の界面に接するように積層される層である。この正孔阻止層は、陽極2から移動してくる正孔を陰極6に到達するのを阻止する役割と、陰極6から注入された電子を効率よく有機発光層4の方向に輸送する役割とを有する。
正孔阻止層を構成する材料に求められる物性としては、電子移動度が高く正孔移動度が低いこと、エネルギーギャップ(HOMO、LUMOの差)が大きいこと、励起三重項準位(T1)が高いことが挙げられる。このような条件を満たす正孔阻止層の材料としては、例えば、ビス(2−メチル−8−キノリノラト),(フェノラト)アルミニウム、ビス(2−メチル−8−キノリノラト),(トリフェニルシラノラト)アルミニウム等の混合配位子錯体、ビス(2−メチル−8−キノラト)アルミニウム−μ−オキソ−ビス−(2−メチル−8−キノリラト)アルミニウム二核金属錯体等の金属錯体、ジスチリルビフェニル誘導体等のスチリル化合物(特開平11−242996号公報)、3−(4−ビフェニルイル)−4−フェニル−5(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール等のトリアゾール誘導体(特開平7−41759号公報)、バソクプロイン等のフェナントロリン誘導体(特開平10−79297号公報)などが挙げられる。更に、国際公開第2005−022962号公報に記載の2,4,6位が置換されたピリジン環を少なくとも1個有する化合物も、正孔阻止層の材料として好ましい。なお、正孔阻止層の材料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
正孔阻止層の形成方法に制限は無い。したがって、正孔阻止層は正孔注入層3や有機発光層4と同様、湿式成膜法を用いて形成することもできるが、通常は真空蒸着法により形成される。真空蒸着法の手順の詳細は、電子注入層5の場合と同様である。
正孔阻止層の膜厚は、本発明の効果を著しく損なわない限り任意であるが、通常0.3nm以上、好ましくは0.5nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下である。
また、陰極6と有機発光層4又は電子輸送層との界面に、例えばフッ化リチウム(LiF)、フッ化マグネシウム(MgF2)、酸化リチウム(Li2O)、炭酸セシウム(II)(CsCO3)等で形成された極薄絶縁膜(0.1〜5nm)を挿入することも、素子の効率を向上させる有効な方法である(Applied Physics Letters, 1997年, Vol.70, pp.152;特開平10−74586号公報;IEEE Transactions on Electron Devices, 1997年, Vol.44, pp.1245;SID 04 Digest, pp.154等参照)。
また、以上説明した層構成において、基板以外の構成要素を逆の順に積層することも可能である。例えば、図1の層構成であれば、基板1上に他の構成要素を陰極6、電子注入層5、有機発光層4、正孔注入層3、陽極2の順に設けることになる。
更には、少なくとも一方が透明性を有する2枚の基板の間に、基板以外の構成要素を積層することにより、本発明の有機EL素子を構成することも可能である。
また、基板以外の構成要素(発光ユニット)を複数段重ねた構造(発光ユニットを複数積層させた構造)とすることも可能である。その場合には、各段間(発光ユニット間)の界面層(陽極がITO、陰極がAlの場合は、それら2層)の代わりに、例えば五酸化バナジウム(V2O5)等からなる電荷発生層(Carrier Generation Layer:CGL)を設けると、段間の障壁が少なくなり、発光効率・駆動電圧の観点からより好ましい。
更には、本発明の有機EL素子は、単一の有機EL素子として構成してもよく、複数の有機EL素子がアレイ状に配置された構成に適用してもよく、陽極と陰極がX−Yマトリックス状に配置された構成に適用してもよい。
また、上述した各層には、本発明の効果を著しく損なわない限り、材料として説明した以外の成分が含まれていても良い。
さらに、本発明の効果を著しく損なわない限り、上述した正孔注入層の形成工程、加熱工程、及び、有機層の形成工程において、各工程の前、後、最中に、その他の工程を行なってもよい。